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エネルギア総研レビュー No.15 Page 6 研究レポート まえがき ミズク などの トの にし し, トの げるため, および めて たらしている。 われている ゲにどう 応するかという ぎないため, した いつかず じており,また, したク の運 しているの である。 からの と,ク として するポ プ( )の とで れる。 したク ゲと, することで するポ プ( )のコ ー( )を遺 によって し, することにより, うことを としている。 また,ポ としてポ プの したので せて する。 研究成果 (1)ポリプ調査 域沿 および 域沿 い, プの および遺 のポ プを した。 沿 ,ポ プの 側の宇 側の 辺に きく れる にあることが した( )。 図1 イガイに付着したクラゲポリプ 図2 ストロビレーション(分裂)したクラゲポリプ エネルギア総合研究所 環境技術担当 @] 発電所へ来襲するミズクラゲ群の発生源特定 および対策に関する研究 沿 におけるポ が圧 きいことが した( )。 図3 山口県沿岸のクラゲポリプの分布(H17) 図4 岡山県沿岸のクラゲポリプの分布(H18)

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研究レポート

1 まえがき

ミズクラゲ群は火力・原子力発電所などの海水利用プラントの取水口付近にしばしば大量に来襲し,海水利用プラントの取水を妨げるため,各種機器の性能低下,発電機出力の低下,取水および発電機停止等の極めて深刻な被害をもたらしている。現在行われている対策は全て来襲クラゲにどう対応するかという対症療法的な対策に過ぎないため,突発的に大量来襲した場合,対策が追いつかず深刻な被害が生じており,また,回収したクラゲ成体の運搬・処理にも苦慮しているのが現状である。

2 概  要

クラゲは成体からの有性生殖と,クローンとして増殖するポリプ(図1)の無性生殖とで世代交代が行われる。本研究では,発電所に大量来襲したクラゲと,分裂することで爆発的に増殖するポリプ(図2)のコロニー(集落)を遺伝子解析技術によって解析し,発生源を特定することにより,抜本的な対策を行うことを目的としている。また,ポリプ対策としてポリプの除去・抑制手法も検討したので併せて報告する。

3 研究成果

(1)ポリプ調査

山口県の下関・新小野田発電所周辺海域沿岸および岡山県の水島・玉島発電所周辺海域沿岸の現地踏査を行い,野生ポリプの探索調査および遺伝子解析用のポリプを採取した。山口県沿岸の場合,ポリプの多数着生地点は,発電所東側の宇部方面と西側の下関周辺に大きく2極化される傾向にあることが判明した(図3)。

図1 イガイに付着したクラゲポリプ

図2 ストロビレーション(分裂)したクラゲポリプ

エネルギア総合研究所 環境技術担当 �� 司

発電所へ来襲するミズクラゲ群の発生源特定および対策に関する研究

岡山県沿岸の場合,寄島漁港におけるポリプ着生量が圧倒的に規模が大きいことが判明した(図4)。

図3 山口県沿岸のクラゲポリプの分布(H17)

図4 岡山県沿岸のクラゲポリプの分布(H18)

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b.海水電解気泡(図8)

(a)手法ミズクラゲポリプに海水電解による気泡(水素ガス気泡および溶解微量塩素)を継続的に接触させることにより,ポリプの除去・抑制を試みた。

(b)効果海水電解気泡に接触した瞬間に,ポリプは触手を急速に萎縮し,続いて体部も大きく萎縮する行動が観察された。10分間気泡に接触し続けたポリプについては,組織が崩壊し触手・体部とも流失した。

(c)問題点海水電解気泡を発生させるには電源装置と電極が必要となるため,広範囲のポリプコロニーに暴露し続けるのが困難である。

発電所へ来襲するミズクラゲ群の発生源特定および対策に関する研究

(2)ミズクラゲ成体およびポリプDNA解析

発電所に来襲したミズクラゲの成体,および採取したポリプに関して,CO1(cytochrome c oxidasesubunit-1)遺伝子を用いて遺伝子解析を行った。その結果,下関・新小野田発電所沿岸の場合,クラゲ成体は発電所においてはDタイプの来襲が多く,それに対してクラゲポリプは発電所の西の下関漁港ではCタイプが,東の宇部漁港ではDタイプが多数派となることがわかった(図5)。また,水島・玉島発電所沿岸の場合,CO1遺伝子による解析では発電所におけるクラゲ成体および沿岸域のポリプのほとんどがDタイプで占められていた(図6)。

(3)クラゲポリプ除去・抑制手法

a.エアバブリング(図7)

(a)手法ポリプ付着部位にエアバブリング・空気滞留処理することにより,ポリプの除去・抑制を試みた。

(b)効果常時空気の滞留した部位では99%のポリプが崩壊・消失した。

(c)問題点ムラサキイガイ等の表面にポリプが付着している場合,凹凸があり,木枠などで囲わないと空気が滞留しにくいため,効果が薄い。

図7 エアバブリングによるポリプ抑制図8 海水電解気泡によるポリプ抑制

(上:試験装置,中央:処理前のポリプ,下:処理中のポリプ)

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c.気泡緩衝シート※被覆(図9)

(a)手法ポリプが付いている基盤面に気泡緩衝シートを被覆することにより,ポリプの除去・抑制を試みた。

(b)効果シートの被覆により,ポリプはほぼ完全に除去・抑制できた。

(c)問題点シートと基盤面との間に空気が入り込んだ場合,シートが剥離しやすい。

ることが確認された。一方,シートが剥離した部分や十分に密着していない部分では,ポリプが生存しストロビレーション(分裂)を進行させることが判明した。

※気泡緩衝シート:梱包等に使用される緩衝材(下図)

4 ま と め

実地踏査にCO1遺伝子による解析を組み合わせることで,下関発電所ならびに新小野田発電所の大量来襲に関わる可能性のあるポリプコロニーは宇部漁港である可能性が高いと推察できた。水島・玉島発電所にはCO1遺伝子による解析の結果,Dタイプの成体が大量に来襲していることが判明した。両発電所の周辺海域においては,着生量では寄島漁港が他を圧倒していることが判明したものの,CO1遺伝子による解析では寄島漁港,正頭漁港,沙美漁港,日生港のいずれもDタイプに分類されるポリプが非常に多く,遺伝子解析によって,その4箇所に存在しているどのポリプコロニーが大量来襲の発生源であるかを特定することは困難であった。より精度を上げるため,別の遺伝子による解析と組み合わせることで,Dタイプの中をさらに細分化して分類することが必要であると考えられた。ポリプ対策に関しては,広範囲のポリプコロニーに対して対策を行うには,今回試みた3手法のうちでは,処理の簡便さ,またその効果から,気泡緩衝シートによる処理法がもっとも有効であると考えられた。シート周縁部の浮力を増すなどの改良を行い,処理中にシートが剥離しないようにすることによって,さらにポリプコロニーの除去・抑制に効果的な手法となると期待される。なお,本研究は関西電力㈱ 研究開発室 電力技術研究所 環境技術研究センターと共同で実施したものである。

研究レポート

気泡緩衝シート被覆によるポリプコロニーの抑制対策法の野外試験を行ったところ,シートが密着被覆した部分ではポリプが1カ月以内で急速に退行・消失す

図9 気泡緩衝シート被覆によるポリプ抑制(上:シート被覆状況,中央:無処理区,下:シート被覆処理区)

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発電所へ来襲するミズクラゲ群の発生源特定および対策に関する研究

図5 山口県沿岸におけるクラゲのCO1遺伝子解析結果(H17)

図6 岡山県沿岸におけるクラゲのCO1遺伝子解析結果(H19)

南風泊港

6月24日

下関発電所下関発電所下関発電所

新小野田発電所

C7%

C5%

A5%

D8%

A6%

C4%

C7%

C7%

C5%

A5%

A17%

A8%

D30%

D8%

D-193%

下関漁港

C42%

D-133%

宇部漁港

C8%

D-171%

床波漁港

C18%

D-170%

D-160%

7月7日

C13%

A6%

D16%D-1

65%

8月29日

C4%

A12%

D16%D-1

68%

9月13日

C7%

D22%

D-171%

9月28日

C7%

A10%

D17%D-1

66%

7月8日

C13%

A13%

B3%

D13%

D12%

D13%

D-158%

8月23日

遺伝子の出現頻度

発電所

A

BC

D

E

ポリプ採取地点

C5%C5%

D19%

D-176%

6月21日

玉島発電所 水島発電所

水島港

渋川港

A27%

A25%

A7%A7%

D19%

寄島漁港

D-158%

D-154%

7月2日

A16%

D42%

D17%

正頭漁港

D-193%

D7%D7%

沙美漁港

D-177%

D23%

沙美漁港(新埠頭)

D-180%

D13%

A7%

日生港

D-179%

D14%

D-142%

6月25日

C4%

A4%

C4%

A4%

D20%

D-172%

6月26日

旭川 吉井川

高梁川

A19%

D15%D-1

66%

遺伝子の出現頻度

発電所

ポリプ無生息地点

A

BC

D

E

ポリプ採取地点