生活習慣をモニタリングするための バイオセンサの開発 - JST...1...
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生活習慣をモニタリングするためのバイオセンサの開発
東洋大学 生命科学部 食環境科学科
准教授 宮西 伸光
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研究背景近年の食生活の多様化とともに、現代病と呼ばれる様々な生活習慣病が蔓延してきており、この事は現代社会の大きな問題となっている。
この原因として、様々な生活習慣が引き起こす個々の生活習慣を規定づけられたパラメータで客観的に評価する測定系が確立されていなかった。
AGEは、アミノ化合物(アミノ酸、ペプチドおよびタンパク質)と還元糖を加熱した時に生じる褐色物質(メラノイジン)が生成される糖化反応(glycation)の最終生成物の事であり、生体内において、糖尿病患者の血管壁や骨格筋、神経組織の病変部にその存在や蓄積が確認されていることから、様々な病体のマーカー候補として注目を集めている。しかしながら、AGEはその生成反応が一様ではなく複雑であり、また微量であることから、その詳細は殆ど明らかにされていない。
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研究背景ガレクチン(β-ガラクトシド認識レクチン)
ガレクチンファミリーのうち、特にガレクチン-3はAGEの受容体である事が明らかにされているが、その詳細は不明。
(GlycoWordより抜粋)
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研究背景
種々の生活習慣病を引き起こす原因の一つである糖化 (advanced glycation end products; AGE) に着目し、AGEの生体内での挙動をモニタリングする事ができれば、様々な形態を有するAGEと疾病との関連性の詳細をもっと明らかにすることができるのではないか?
さらに研究開発を進める事によって、食生活改善に向けた生活習慣モニタリング用“高感度”バイオセンサの開発が可能?
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D-グルコース
グリオキサール
グリコールアルデヒド
グリセロアルデヒド-3-リン酸
Nε-(カルボキシメチル)リジン
Nε-(カルボキシエチル)リジン グリセロアルデヒド
メチルグリオキサール
AGE-3
AGE-5
AGE-1 アマドリ転移産物
AGE-2
AGE-4
グリコリシス
シッフ塩基
HC=O
HC=O |
NH-P
CH2 C=O
OH
|
|
|
CH2OH
HC=O
HCOH
HOCH
HCOH
HCOH
|
|
|
|
| HC=O
CH2OH |
CH2OH
HC=O
HCOH |
|
CH3
HC=O
C=O |
| NH-P CH(CH3)
C=O
OH
|
|
|
様々なAGEの反応経路
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糖尿病
腎症
骨疾患
変形性骨関節症
神経障害
疾病
関節リウマチ
アルツハイマー病
カルボキシメチルリジン (Makino et al., 1995)
カルボキシメチルリジン、カルボキシエチルリジン、ハイドロイミダゾール由来メチルグリオキサール、フルクトシルリジン (Karachalias et al., 2003)
ペントシジン、カルボキシメチルリジン (Verzijl et al., 2000; Pokharna et al., 1997)
ペントシジン (Takahashi et al., 1997; Chen et al., 1998)
老化
老人斑 ペントシジン、ピラリン、グルコース-AGE (Sasaki et al., 1998; Smith et al., 1994)
ペントシジン、ピラリン、グルコース-AGE、カルボキシメチルリジン (Sasaki et al., 1998; Smith et al., 1994; Kimura et al., 1995)
神経原線維変化(変性)
ペントシジン、カルボキシメチルリジン (Jono et al., 2002)
AGEs*
* 中間生成物を含む
AGEと疾病の発生
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SPRの原理説明
反射光強度
入射角
共鳴角屈折率変化
入射光
θ
サンプル(屈折率: )
表面プラズモン波
プリズム(屈折率: )
金属膜
反射光
エバネッセント波
(誘電率: )
光をプリズムで全反射
エバネッセント波が発生
エバネッセント波の波数 ||
表面プラズモンの波数
表面プラズモン共鳴
反射光強度が減少
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新技術の基となる研究成果・技術
グルコース-AGE カルボキシエチルリジン
グリセロアルデヒド-AGE メチルグリオキサール-AGE
Time (s) Time (s)
Res
onan
ce U
nits
(RU
) R
eson
ance
Uni
ts (R
U)
Res
onan
ce U
nits
(RU
) R
eson
ance
Uni
ts (R
U)
a
b c d
e f
a
b
c
d e f
a
b
c d e
a b c d
e f
f
Time (s) Time (s)
a: 200 µg/ml、b: 100 µg/ml、c: 50 µg/ml、d: 25 µg/ml、e: 12.5 µg/ml、f: 6.3 µg/ml
リガンド: ガレクチン-3(全長)
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新技術の基となる研究成果・技術
a b c d
a
b c d e f
a
b
c d e f
a b
Res
onan
ce U
nits
(RU
) R
eson
ance
Uni
ts (R
U)
Res
onan
ce U
nits
(RU
) R
eson
ance
Uni
ts (R
U)
Time (s)
Time (s)
Time (s)
Time (s)
e f
d e f
c
a: 200 µg/ml、b: 100 µg/ml、c: 50 µg/ml、d: 25 µg/ml、e: 12.5 µg/ml、f: 6.3 µg/ml
グルコース-AGE カルボキシエチルリジン
グリセロアルデヒド-AGE メチルグリオキサール-AGE
リガンド: ガレクチン-3(糖認識部位のみ)
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10
1.0×105
1.0×104
1.0×103
1.0×102
1.0×10
1.0
k on
1.0×10-8
k off
1.0×10-6
1.0×10-4
1.0×10-2
1.0
新技術の基となる研究成果・技術
ガレクチン-3(全長)
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11
1.0×105
1.0×104
1.0×103
1.0×102
1.0×10
1.0
k on
1.0×10-8
k off
1.0×10-6
1.0×10-4
1.0×10-2
1.0
新技術の基となる研究成果・技術
ガレクチン-3(糖認識部位のみ)
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SPRを用いて測定された、ガレクチン3と各種AGEの解離定数 (Kd )
アシアロフェツイン
グリオキサール-AGE
カルボキシメチルリジン
カルボキシエチルリジン
グリコールアルデヒド-AGE
グリセロアルデヒド-AGE
メチルグリオキサール-AGE
グルコース-AGE
2.01×10-8
2.38×10-7
1.72×10-7
4.56×10-8
1.62×10-7
アナライトガレクチン-3全長 ガレクチン-3糖認識部位
2.10×10-8
1.33×10-11
9.37×10-8
1.08×10-7
8.01×10-8
1.79×10-7
N.D. N.D.
N.D.
N.D. N.D.
N.D., アフィニティ無し
固定化リガンド
新技術の基となる研究成果・技術
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Time (s)
Bc
d
Resonance Units (RU)
Time (s)
A
a
b
Resonance Units (RU)
新技術の基となる研究成果・技術
グリコールアルデヒド グリセロアルデヒド
a: グリコールアルデヒド-AGEb: グリコールアルデヒド
c: グリセロアルデヒド-AGEd: グリセロアルデヒド
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従来技術とその問題点
• 既に実用化されているもので特定のAGEを測定するものはあるが、AGEを網羅的に測定する技術はない。
• リアルタイムにモニタリングする装置はない。
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本センサの特徴・従来技術との比較
• 従来技術と比較し、複数のAGEを網羅的に測定する事が可能。
• リアルタイムモニタリングが可能。
• 本技術の適用により、AGEの種類と疾患の関連性について詳細な情報を得ることができる。
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1620万人 �
糖尿病患者(740万人) � 糖尿病予備軍(880万人) �
成人 (約1億人) �
世の中のバイオセンサの約9割が血糖値センサ
例えば代表的なバイオセンサの例に挙げると、、、
血糖値自己測定群�70万人 �274億円/年�
国内の糖尿病関連市場
1/6�
潜在需要�1550万人 �?�?�?�億円 �
想定される利用者・対象および業界
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実用化に向けた課題
• 前処理法の検討が必要。あるいは前処理が要らないバイオチップの開発が必要(現在開発中)
• 本センサの特徴を生かすためには、デバイス側の小型化、検出感度の向上が必要(使用する血液の量を抑えることができる。
• 今後、前処理法について実験データを取得し、最適化を進めていく。 • 実用化に向けて、SPR以外の検出デバイス(QCM、電気化学的測定)も試験検討していく。
• 低侵襲(無侵襲)で測定が可能なセンシングの開発
赤血球
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侵 襲
痛みなどを伴う
測定を回避したがる
低 侵 襲
痛みなどを軽減
定期的な測定の習慣化
無 侵 襲
痛みなどがない
潜在的患者測定
新市場の創出 市場の拡大
実用化に向けた課題
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企業への期待
• 未解決の前処理技術については、チップ表面の微細加工技術、あるいは既存の血液前処理法の最適化。
• 痛みを伴わない採血の開発。 • デバイス側の開発として、SPRやQCM、電気化学測定等の技術を持つ、あるいはそれらの関連企業。
• ガレクチンの改変や最適化において、生化学技術や診断技術、医療技術を有する、あるいはそれらの関連企業。
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称: 糖化タンパク質の検出方法および糖化タンパク質の検出のためのバイオセンサーチップ
• 出願番号 特願2011-93403
• 出願人 東洋大学
• 発明者 宮西 伸光
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産学連携の経歴
• 2005~-2009年 宝食品株式会社と共同研究実施
• 2008年~2009年 隆祥産業(現:Rexxam)と共同研究実施
• 2011年~現在 丸大オヲツヤ商店と共同研究実施
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お問い合わせ先
東洋大学
知財管理アドバイザー 野原 時男
TEL 03‐3945 ‐ 7008
e-mail nohara@toyo.jp