海底生産システムの現状: Subsea Production …...1-3....

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作成日: 2009/5/18 調査部: 伊原 賢 海底生産システムの現状: Subsea Production System (SPS) -どこまで信頼性を保ち、機器を海底に設置できるか- (技術調査部、SPE、PennWell 社資料ほか) 海底生産システム(Subsea Production System:SPS)は、海底仕上げ井、パイプライン、マニホールドほ かの海底機器で構成され、小規模油ガス田や大水深油ガス田の開発に適用されている。技術進歩に伴 い、生産・処理設備、貯油設備及び積出設備なども海底に設置され、海底で完結した生産システムも実 用化されつつある。 本稿では、まず、海洋石油開発の傾向、大水深開発の進展、SPS の概略・歴史・適用基準、他の海洋 生産システムに対する SPS の利点を整理する。次に SPS の設置、操作、信頼性、設計基準、廃鉱につい て、説明したい。SPS の効果を読者に知ってもらうために、実フィールドにおけるケーススタディを 3 例(ア ンゴラ Greater Plutonio、メキシコ湾 Thunder Horse、ノルウェーTordis)紹介する。最後に、今後の技術進 歩への期待も込めて、SPS の位置付けをまとめたい。 SPS を構成する要素技術(クリスマスツリー/坑口装置、マニホールド/テンプレート、昇圧ポンプ、セパ レーター、圧入システム、多相流量計、パイプライン、アンビリカル、ライザー、フローアシュアランス、動 力とコントロール機器、ROV と AUV については、ページ 29 から<参考技術情報>として解説を加えた。 なお、本稿の図・写真と見解の一部は、JOGMEC 技術調査部が 2009年 3 月 12 日に主催した「海底 生産システムの最新動向調査」報告会の成果に基づいていることを申し添える。 1. 海洋石油開発技術の動向 1-1. 海洋石油開発の傾向 昨今の海洋石油開発の対象は、大水深化(図1)と極地化に向かう傾向にある。また、2005 年にメキシ コ湾で立て続けに発生した大型ハリケーンのカトリーナとリタが同海域での石油開発・生産操業に著しい 被害をもたらしたのを契機に、海洋構造物の設計基準の見直しが議論された。更には上流の開発投資 を行う際、廃鉱及び HSE (Health Safety & Environment) についても、地域ごとの規制の関連情報を把握 し、対応することが年々重要視されている。 1/46 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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作成日: 2009/5/18

調査部: 伊原 賢

海底生産システムの現状: Subsea Production System (SPS)

-どこまで信頼性を保ち、機器を海底に設置できるか-

(技術調査部、SPE、PennWell 社資料ほか)

海底生産システム(Subsea Production System:SPS)は、海底仕上げ井、パイプライン、マニホールドほ

かの海底機器で構成され、小規模油ガス田や大水深油ガス田の開発に適用されている。技術進歩に伴

い、生産・処理設備、貯油設備及び積出設備なども海底に設置され、海底で完結した生産システムも実

用化されつつある。

本稿では、まず、海洋石油開発の傾向、大水深開発の進展、SPS の概略・歴史・適用基準、他の海洋

生産システムに対する SPS の利点を整理する。次に SPS の設置、操作、信頼性、設計基準、廃鉱につい

て、説明したい。SPSの効果を読者に知ってもらうために、実フィールドにおけるケーススタディを3例(ア

ンゴラ Greater Plutonio、メキシコ湾Thunder Horse、ノルウェーTordis)紹介する。 後に、今後の技術進

歩への期待も込めて、SPS の位置付けをまとめたい。

SPS を構成する要素技術(クリスマスツリー/坑口装置、マニホールド/テンプレート、昇圧ポンプ、セパ

レーター、圧入システム、多相流量計、パイプライン、アンビリカル、ライザー、フローアシュアランス、動

力とコントロール機器、ROVとAUVについては、ページ29から<参考技術情報>として解説を加えた。

なお、本稿の図・写真と見解の一部は、JOGMEC 技術調査部が 2009年 3 月 12 日に主催した「海底

生産システムの 新動向調査」報告会の成果に基づいていることを申し添える。

1. 海洋石油開発技術の動向

1-1. 海洋石油開発の傾向

昨今の海洋石油開発の対象は、大水深化(図 1)と極地化に向かう傾向にある。また、2005 年にメキシ

コ湾で立て続けに発生した大型ハリケーンのカトリーナとリタが同海域での石油開発・生産操業に著しい

被害をもたらしたのを契機に、海洋構造物の設計基準の見直しが議論された。更には上流の開発投資

を行う際、廃鉱及び HSE (Health Safety & Environment) についても、地域ごとの規制の関連情報を把握

し、対応することが年々重要視されている。

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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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図1 海洋開発の大水深化

更には、2004 年あたりからの油価上昇を背景に、大水深対応の掘削リグのデイレート(リグのレンタル

料・搭乗員の人件費・資材調達等からなる一日あたりの傭船費、図2)を始めとして、開発コストが急騰し、

開発コスト全体は 2000 年度比2 倍以上に膨れ上がった。

また、海底仕上げ技術や、海洋のリモート地域での適用が期待されている天然ガス輸送技術など、技

術開発の進歩は目覚しいものがある。

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図2 大水深向け掘削リグのデイレートの推移 出所: ODS-Petrodata

(水深2,001~5,000ft 対応のセミサブリグの場合)

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1-2. 大水深開発の進展

大水深の定義は、その時代の技術レベルや石油会社が掲げる目標と共に変化している。1990 年頃は

300m 以深が大水深の共通認識となっていたが、種々のシステムが技術的に完成し、かつ、ある程度の

実績のある水深を“大水深”、それ以上を“超大水深”と仮定すれば、現時点での大水深は 1,500m が一

つの目安になる。一方、浅海域は、プラットフォームとしてジャケットや重力式構造物が十分な競争力を

持つ 300m 以浅と考える事が出来る。ちなみに、大水深開発をリードしているブラジルのペトロブラスで

は、1,700m を大水深と定義している。

掘削の 大水深記録は、メキシコ湾におけるトランスオーシャン社保有のドリルシップ Discovere Deep

Seas が持つ 3,051m(図1)であり、既に 3,000m を超えているが、開発井における海底仕上げとなると、同

じくメキシコ湾でトランスオーシャン社のドリルシップDeepwater Millenniumが記録したCheyenneフィール

ド(オペレータ:Anadarko)の 2,747m になる。

これまでに、大水深開発プロジェクトに採用された各種生産システムの適用 大水深を図 3 に示す。

例外はあるものの、基本的に300m以浅では、ジャケット(Jacket)、コンプライアントタワー(CPT)、重力式

構造物(Gravity Based Structure)などの固定式生産システムが採用され、それ以深では、TLP (Tension

Leg Platform)、SPAR (Stationary Production Platform)、FPSO (Floating Production, Storage and Offloading

System)、FPS (Floating Production System)、SPS (Subsea Production System / サブシータイバックシステ

ム)などの浮遊式生産システムが採用されている。

ブシータイバックシステム(Subsea Tie-Back System): 既存の洋上プラットフォームの周囲にある小規模油田に

サテライトの海底仕上げ井を設け、この坑井を既存のプラットフォームにフローラインとライザーで接続して開発す

るシステム。

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Gravity Jacket CPT TLP SPAR FPSO FPS SPS

図3 各種生産システムの適用 大水深

出所: JOGMEC 技術調査部資料より作成

海洋石油開発は今後ますます盛んになると見込まれるが、水深、離岸距離、高温・高圧の貯留層、海

底の低温環境といった要因からの様々な技術課題やそれに伴う開発コストの増加などが予想される。そ

れらに対応すべく、 も効率的な開発システムが要素技術と共に日々開発されている。

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1-3. SPS の概略・歴史・適用基準

(1) 概略

海洋石油開発方式の一つの選択肢である海底生産システム(Subsea Production

Systems:SPS)は、海底仕上げ井(Subsea Completion Well)と海底機器、海底に設

置された生産・処理設備、貯油設備及び積出設備などから成る海底で完結された生産

システムを言う。しかし、海底仕上げ井とフローラインやマニホールドで構成される

システムを海底生産システムと言うことも多い。前者は実用化されつつあり、後者は

次のように広範囲に適用されている。

1) 小規模油田の開発

既存の洋上プラットフォームの周囲にある小規模油田にサテライトの海底仕上げ井を設け、

この坑井を既存のプラットフォームにフローラインとライザーで接続して開発する(Subsea

Tie-Back System)。小規模油田を単独で開発するよりも、初期投資が少なく工期も短くて済み、

経済的な開発が可能となる。

2) 大水深油田の開発

大水深ではプラットフォームの建造コストが大きいが、SPS は水深増加に対するコスト増が

少ない。

3) 氷海域油田の開発

海面上の海氷の影響を受けないため、氷海域の油田開発に適すると言われる。

海上坑口方式は、海上坑口装置(ドライツリー)と大偏距掘削/Extended Reach Drilling の組

み合わせで使われることが多い。

海底仕上げ方式: 坑口装置を海底に設置、他の機器も信頼性があれば海底に設置、海

底面にフローラインを張り巡らして広範囲の貯留層にアクセス、海上坑口方式に比べ機器

が複雑となり 4~6 倍のコストを要す。

海上坑口方式 海底仕上げ方式

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海底生産システム(アンゴラ沖合Greater Plutonio の初期開発コンセプト)とサブシータイバ

ックシステム(メキシコ湾 Troika サテライト)の例

(2) 歴史

初の海底仕上げ井は 1960 年シェルがメキシコ湾に設置。1,000 基目は 1997 年、2,000

基目は 2002 年に実現、3,000 基目は 2010 年に設置予定。

1) 海底仕上げ井は、1960 年Shell がメキシコ湾の水深17m のWest Cameron 192 フィールド

に世界で初めて採用した。この坑井は400m 離れたプラットフォームにフローラインで接

続されて、61 年から65 年までの4 年間生産を行った。1975 年には、英領北海の水深81m

のArgyll フィールドに世界で初めてセミサブ型のFPS(Floating Production Systems:

Transworld 58)が採用され、海底仕上げ井からの生産を開始した。

2) 当初、海底仕上げ井はダイバーにより設置されていたが、水深300m 以深ではダイバー作

業ができないため、ダイバーレスの海底坑口装置(Subsea Wellhead)と作業用のROV

(Remotely Operated Vehicle)が開発された。その作業はワイヤーラインを通じて行わ

れたが、大水深でのワイヤーライン操作の煩雑さを解消するためワイヤーラインレスの海

底坑口装置が開発され、1991 年ブラジルの水深721mのMarlimフィールドに設置された。

3) その後1993 年末には、世界において789 坑の海底仕上げ井(内、北海282 坑、ブラジル

沖221 坑、メキシコ湾89 坑ほか)が存在するに至った。大水深開発の進展とともに海底

仕上げ井は急速に数が増え、2001年末には北海だけで800 余基の海底仕上げ井の存在が報

告された(Offshore Engineer, January 2002)。2001 年以降は毎年300~500 基の海底

坑口装置が製作されている(Quest-Subsea-Data-Base、Quest Offshore Resources, Inc.)。

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坑井、油田、ガス田の大水深化が見られる(北海ではサブシータイバック距離が長く、メキ

シコ湾では水深が深くなる傾向)。 図4~図6

図4 坑井の大水深化

出所: JOGMEC 技術調査部資料より作成

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図5 油田の大水深化 出所: JOGMEC 技術調査部資料より作成

図6 ガス田の大水深化 出所: JOGMEC 技術調査部資料より作成

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(3) 適用基準

エンジニアリングスタディに基づき、開発方式のコンセプトをデザインする。スタディへの主

要な入力パラメーターとして、貯留層の広がり・インフラ(他の生産システムや近隣パイプラ

イン)の有無・水深・貯留層特性・オペレーターの開発方針/哲学・必要坑井数が挙げられ

る。

インフラの有無: サブシータイバックシステム(ページ 3)によるサテライト貯留層の開発の

目安は、1 坑当りの可採埋蔵量が原油換算で 2,500 万バレル未満といわれる。逆に 1 坑当

り 3,000 万バレル以上の可採埋蔵量が期待できると、洋上生産システムの検討も可能とさ

れる。

水深: 固定式プラットフォームは水深 500mまで設置可能で(図 3)、それより深いと浮遊式

プラットフォームが使われる。海上坑口方式(ドライツリー)の場合、海面下に吊り下げられ

るライザーの自重を支えなければならないが、水深が 1,500mより深くなると重くて支えきれ

なくなり、浮遊式プラットフォームの登場となる。その場合でも海上坑口方式を採用するとプ

ラットフォームのサイズが大きくなりすぎて現実的ではない。一方、海底仕上げ井を使う海

底生産システムではライザーの本数は少なくサイズも小さくて済み、水深の影響を受けな

い。

貯留層特性: 大水深において、低圧で高粘性の貯留層からは自噴困難である。海底仕

上げ井からの生産流体を海底昇圧ポンプにより洋上のプラットフォームまで移送する事例

あり(ノルウェーのTordisサテライト、ページ 23)。ガス油比が低い場合ガスリフトによる坑井

の産出能力アップはあまり期待できず、坑井内にポンプを設置し、生産を確保する場合も

ある。

オペレーターの開発方針/哲学: 海上坑口方式の場合、(フレキシブルで段階的な貯留

層開発が可能な海底仕上げ井に比べ)初期投資が膨大となる。海上坑口方式か海底仕上

げ井かの採用には、オペレーターの機器に対するメンテナンスや信頼性への考え方が大

きく影響する。

必要坑井数: 海上坑口方式の場合、坑井数はプラットフォームのデッキスペースに制限

を受ける(ジャケット型固定式プラットフォームであるメキシコ湾コニャックの場合、坑井数の

上限は 61 スロット。浮遊式テンションレグプラットフォームである北海スノーレAの場合、坑

井数の上限は 46 スロット。)。多くの坑井が必要となる場合、あるいは、周辺の貯留層開発

が将来必要となる場合には、海底仕上げ井が通常採用される(アンゴラのDaliaフィールド

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における海底仕上げ井71坑のサブシータイバックシステム/他の生産システムへのつなぎ

こみ。浮遊式プラットフォーム 1 基としては 120 坑以上の海底仕上げ井へ対応可能。)。1

つのシステムにおいて海底仕上げ井と海上坑口装置の併用は可能である。

1-4. 他の海洋生産システムに対する SPS の利点

海底に坑口装置を置いてフローラインで洋上のプラットフォームと接続する海底生産システム

は次のような特徴がある。

1) 海底仕上げ井は、メキシコ湾で初めて採用された後、ブラジルのカンポス海盆(Campos Basin)で

実用化され、メキシコ湾でも大水深開発の有力な手段となった。海底仕上げ井は、掘削リグによっ

てワークオーバー作業がなされるので、坑井の改修が頻繁にある場合は、経済的に不利になる。

2) 現在、プラットフォームから10km 程度離れたサテライトの油ガス田構造は、プラットフォーム上から

大偏距に掘削することで開発が可能となりつつある。海底仕上げ井にて開発すれば、さらに遠距

離の油ガス田も開発できる。しかし、フローラインが長距離になるほど、また大水深になるほど、フ

ローラインでの圧力低下が大きく、さらに、温度低下によるパラフィン・ハイドレートの析出などの問

題が発生しやすくなり、生産性を阻害する要因が増加する。

3) 生産流体を処理できる生産設備が、坑井から近ければ、坑井と生産設備をフローラインやライザー

で接続することが一般的である。しかし、坑井までの距離が大きい場合には、所定の生産量を確

保するために、坑口近傍にて十分な移送圧力を確保する昇圧ポンプが必要となる。自噴圧での

長サブシータイバックシステムの実績は、油田で50km 程度、ガス田で140km 程度である。Statoil

のSnohvit フィールドにおけるガスライン内は、長距離移送に伴い液体分が凝縮し、少量の液体分

を含む多相流挙動を示すとされる。液単相流に比べ大きい、気液二相流による圧力損失を減じる

ために、井戸元で生産流体を油・水・ガスに分離する方法も有力となる。

4) このような技術的背景に基づき、海底セパレーター(Subsea Separator)や多相流ポンプ

(Multi-phase Pump)は、大水深のサテライト油ガス田構造の生産性向上や可採埋蔵量増大を目指

して、本格導入の時期を迎えている。

従って、他の海洋生産システムに対する SPS の利点は、以下のようなポイントが挙げられる。

1) 海上坑口装置(ドライツリー)が使えないケース: 大水深(1,500m以深)、弱い排油機構(貯留層圧

力が低く、海底面まで上がってきた産出流体を長距離パイプライン移送できるように、海底昇圧ポ

ンプにて坑口圧力を上げる必要がある場合)、貯留層の広がり(大偏距掘削/Extended Reach

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Drillingにおける偏距の限界は7~15 km)、高ウォーターカット(産出液体中の水分率が高いこと。

移送する産出水量が多い場合、海底で水を分離する海底セパレーターも検討対象となる。)、重質

油(高粘性油も含む)。

2) 場合によって海底昇圧ポンプ/多相流ポンプや海底セパレーターを採用すれば、石油・天然ガス

回収量の増大や操業費/OPEXの低減につながる(洋上施設が小さくて済む)。

3) 可採埋蔵量が原油換算で5,000万バレル未満の小規模フィールドの開発: サブシータイバック方

式にて当該フィールドをサテライトとみなし、他の生産システムへつなぎこむことで開発可能(メキ

シコ湾のTroikaサテライト タイバック距離14マイル、ページ6)。

4) フィールドの段階開発が可能: CAPEXの分散(初期投資を抑える)。本格生産の前に試験生産が

可能(貯留層特性および経済性に対応した開発計画の検討が可能)。うまく適用できれば、早期生

産が可能となり、当該開発プロジェクトの経済性は向上する。タイバック方式の設計や現地敷設は

2年程で済み、他の生産方式の適用(通常5年以上)に比べ、生産に至るリードタイムが短い。

5) 海底生産システムは海洋石油開発方式の一つの選択肢であるが、他の生産方式の適用が技術的

に、また、経済的に困難である場合に、信頼性さえ確保されれば、海洋における究極的な石油・天

然ガス生産方式となりうる。

2. SPS のオペレーション

2-1. 設置

海底クリスマスツリー/坑口装置は通常、掘管を介して掘削リグにて設置される(リグレート 40~

50万ドル/日、吊り下げ荷重は500トンまで、リグ数少ない)。他の機器はそのあと設置専門のコ

ントラクターが作業船を使い、ウィンチやワイヤーロープを介して海底面に据え付ける(作業船

のレート 12~25 万ドル/日、吊り下げ荷重は 150 トンまで、比較的十分な作業船隻数あり、作業

効率は海気象条件に左右されやすい)。

多くのサブコンが介在しその責任範囲を調整しなければならない。また、設置作業自体が海気

象条件に左右されるため、フィールド開発において、 も複雑なオペレーション。

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パイプラインの敷設法

Reel Lay S-Lay J-Lay

Reel Lay: パイプは陸上にて溶接、多くの作業船にて対応可、敷設時間が短い、パイプ径に制限あ

り、コーティングパイプはリールに巻き取り不可。

S-Lay: パイプは船上にて溶接、パイプは船外に張り出した Stinger に沿って海中へ、船上-海

中-海底へ送り出されるパイプの形状は S 字状に、敷設速度は 6km /日程度と比較的早

い、大水深向け、パイプへの曲げ荷重は水深と共に増加、パイプの曲げすぎに注意が

必要。

J-Lay: パイプは船上にて垂直方向に溶接、S-Lay よりもパイプへの曲げ荷重を軽減できるため

大水深向け、大口径パイプも敷設可、敷設速度は 3km /日と遅い。

Stinger

設置への考慮点: 水深、海気象条件、海底条件、作業船や機器組み立ての場所、機器重量

2-2. 操作

他の生産方式とは違う操作が必要(生産流体が流れるパイプラインやライザーは長距離・長期

間低温下/4℃以下にさらされるため流体挙動が変化する場合あり、海底機器へのアクセス[モ

ニタリング、動力伝達とそのコントロール]、海洋環境への配慮)

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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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流体挙動の変化としては、管内における化学的沈澱、ガスハイドレート生成、腐食、エマル

ジョン、間欠流/スラグ流、物理的摩耗ほかがあげられる。

海底機器へのアクセス(検査・メンテナンス・修理)は、ダイバーの潜水深度の限界は 300m

であることから、もっぱら ROV(Remotely Operated Vehicle)や AUV(Autonomous

Underwater Vehicle)を用いて行われる。

洋上施設からのケーブルとコネクターを介して、海底機器へ動力が伝達され、そのコントロ

ールが実施される。数十から数百 km と長距離の動力伝達が必要になることがある。ケーブ

ルとコネクターには電気的および機械的な完成度と信頼性が求められる。また、環境基準

に対応した海洋環境への配慮が必要となる。

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2-3. 信頼性

海底生産システムの信頼性確保には、宇宙開発と同じ位の高度な技術力が必要とも言われる。

両者の共通点は、地表環境と比べ厳しい環境にあること、修理や回収のためのアクセスが簡単

にできないことが挙げられる。両者とも信頼性を維持し、良好に作動することが求められる。

機器の作動トラブルは、フィールドからの生産の初期に起こることが多く、トラブルの要因は大水

深・高圧力・腐食・物理的摩耗・海水の侵入によることが多い。機器ごとに設計年数がまとめられ

ている(図7)。

図7 海底機器ごとの平均設計年数

出所: JOGMEC 技術調査部資料より作成

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信頼性確保へのアプローチ: 信頼性のマネージメント、信頼性データの共有化(OREDA デー

タベース)、機器ベンダーの意見も取り入れて、フィールドを開発するオペレーターの考え方を

整理する。

OREDAデータベース: 一覧表・故障・メンテナンスの 3 部から構成されるハンドブック( 新は

2004 年版)。各ページには、一覧表からの部品/機器リスト、機器の設置数、可能性のある故障事例、

故障率や修理回数の統計が記載。海底生産システムはフィールド毎にテイラーメイドで製作・設置

されることが多いため、信頼性は定量的というよりは定性的に記述される。操業経験の共有化を目

指す(API RP 17N)。データベース作りに参加した会社は、Eni, BP, Total, ExxonMobil,

ConocoPhillips, Shell, StatoilHydro, Gassco(ノルウェー国営の天然ガス移送会社)。2009 年よりDNV

が管理。このデータベースの目的は、参加会社間での信頼性データの収集と交換を行い、データ

を調整・管理するフォーラムの役割を果たすことである。

信頼性の評価: 設計段階(機器の重複機能)、機器開発(加速寿命試験、早期故障検知)、設

置前(工場出荷試験、システム統合試験)

ExxonMobil の信頼性評価法: 故障モード評価のテンプレートと機器評価シートを使用。この方

法は絶え間ない改善を通じて、事後よりも事前対策となるアプローチを採用。機器の部品レベ

ルでの評価に焦点を当てる。機器の製造プロセスと技術仕様がベンダーの部品番号で参照で

きる。例えば、部品「Hydraulic Flying Lead」の故障モード評価からは51件の故障メカニズムを抽

出。それをグループ化することで、全ての故障要因を調べるには 9 件の評価試験で十分であっ

た。

BP の信頼性評価法: メキシコ湾 Thunder Horse プロジェクトにおいて、高温・高圧環境下での

坑井仕上げ技術が 2004 年 FMC 社より提供。部品の調達目標は 98.4%にセット。高温・高圧坑

井仕上げの設計では、設計段階初期から信頼性に焦点を当てることが大事。その検討結果から、

水深10,000 ftにおいて密閉時の坑口条件(15,000 psi、350oF)に対応した5インチ径の高温・高

圧坑井仕上げが可能となった。ベンダーとの連携の中で、問題を認識し、信頼性評価を行い、

その結果に基づく必要な投資を行うことが肝要。

2-4. 設計基準

ISO, API, NORSOK (standard norge)他が海底生産システムの設計基準を設定(表1)。

ISO 13628: Design and operation of subsea production systems

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表1 海底生産システムの設計基準

出所: JOGMEC 技術調査部資料より作成

海底での生産・処理機器(海底昇圧ポンプ、海底セパレーター、海底多相流量計)、システム設

計、海底構造物(マニホールド/テンプレート)、採油機器(ガスリフト/坑井内ポンプ)、色、およ

び標識については、”ISO 13628-1: 2005”の中で記述。

新しい基準作りへの動き: 灰色

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大水深開発を巡る厳しい環境下において、海底生産システムの標準化を目指すに当たり、①そ

の重要性を再認識し、②どのような障害が存在しており、③標準化に移行できる、検討できるも

のはどのようなものがあるのか、そして、④どのような標準化であれば広く受け入れられ活用さ

れるのか、といった基本的事項について、オペレーターと機器ベンダーの双方が共に、海底機

器の標準化に関する現在の問題点や将来の可能性を確認、再認識することが大事。

これまでも多くのオペレーターと機器ベンダーがイニシアティブを取り、少しずつではあるが海

底機器の標準化に取り組んできたが、各企業レベルの標準化にとどまっており、産業全体での

標準化に発展するまでには至っていない。近年の大水深開発においては、更なる高温・高圧環

境下での開発を余儀なくされ、またより高い信頼性が要求されるなど、開発コストが増加する要

因はより複雑化している。加えて、供給サイクル長期化、特に若い世代における海底機器開発

の経験豊富な技術者不足という問題も生じており、石油・天然ガス産業レベルの大きな課題の

一つとなっている。

2-5. 廃鉱

フィールド操業の停止、廃坑、機器の除去と再利用、(出来る限りの)原状復帰。

北海(OSPAR decision 98/3)、メキシコ湾: 海底に設置された機器は、海底面下や漁業に影響

を与えるものを除き、除去。廃鉱の実践には関係業者との調整が必要。

海底面下、数m のケーシングを切断して船上に揚げられた海底坑口装置の一部

廃鉱プロセスの段階: 計画、調査、坑井のセメントによるプラグとケーシング上部切断、パイプ

ライン/フローライン内の洗浄、海底機器の切断、海底面の(出来る限りの)原状復帰、陸上での

機器分解。

坑井のセメントによるプラグとケーシング上部切断: 坑井内機器は必ずしも除去する必要はな

い。通常の廃坑では坑井内をセメントで数か所プラグし、ケーシング上部を海面(Mud line)の下

3~5m で切断し、海底坑口装置と共に除去する。小口径の坑井ではアニュラスに残すゲージや

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バルブがセメント・プラグの効き具合を弱くする障害物。

パイプライン/フローライン内の洗浄: 水分中の油分濃度が20 ppm(百万分率)以下となるように

ビグにてライン内を洗浄する。洗浄後のラインの処置は、海底面にそのまま放置、埋設放置、洋

上へ全部あるいは部分回収と、環境条件によって変わる。

海底機器の切断: 爆破、機械的切断(含む、研磨ウォータージェット、ダイヤモンドワイヤー)。

廃鉱プロセスの安全性と環境対策: 単純に設置の逆のプロセスというわけにはいかない(重力

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に逆らう作業、海底機器の切断、機器内に汚染物質を含有、機器の荷重分布が不確か[設置前

と比べ付着物あり]、長期間使用)。BPEO (Best Practicable Environmental Option): technical

feasibility, environmental impact, safety implication and cost, & public acceptability。

パイプライン/フローラインの撤去コスト: 2004年メキシコ湾、パイプライン総延長2万ft、作業船

は 2 日以内で動員可能、Reverse Lay 法を用いラインを洋上回収(図8)。

回収・撤去時間の目安: 海底仕上げ井 5~8日、パイプライン1 km当たり 2~3日、海底マニ

ホールド 1 週間、海底マットレス(沈床) 10 枚/日。

図8 2004 年メキシコ湾におけるパイプライン/フローラインの撤去コスト(水深、ライン径別)

出所: JOGMEC 技術調査部資料より作成

3. SPS のケーススタディ

さて、上述した SPS の適用基準、他の海洋生産システムに対する利点、オペレーションを念頭に、

SPS 技術の実フィールドへの適用事例を 3 例紹介しよう。開発の概要と操業上の問題を調べてみた。

3-1. アンゴラ Greater Plutonio

BP が西アフリカのアンゴラ沖合で初めて手掛けた石油開発ロジェクト

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アンゴラ石油会社Sonangol、中国Sinopec が開発のパートナー

開発概要: 1999年~2001年にかけて6構造(Cobalto, Cromio, Galio, Paladio, Plutonio, Platina)

を発見、(可採)埋蔵量 7.5 億バレル、2007 年Platinaを除く(35 km離れた)5 構造から生産開始、

水深 1,200~1,500m、FPSO(全長 310m、貯油能力 177 万バレル、ガスタービン発電の電気駆動、

韓国にて建造、650百万ドル、処理能力 油25万バレル/日 水45万バレル/日 ガス400MMcfd)、

シャトルタンカー(100 万バレル)、海底仕上げ井(43 坑[生産井20 坑、水圧入井20 坑、ガス圧入

井 3 坑]計画のうち 17 坑掘削仕上げ済み、270 百万ドル)、マニホールド(9 基、海底でのセパレ

ーションなし、Framo社の海底多相流量計)、FPSOとマニホールドをつなぐ高さ 1,250mのSingle

Riser Tower (Single Catenary Riser / SCR、8本のライザーを束ねた、重量4,200トン、730百万ド

ル)、フローライン総延長150km、コントロールライン総延長110km、23~25 OAPIの原油を現在20

万バレル/日で生産中。

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ホリゾンタル型海底坑口装置、Single Riser Tower、マニホールド

開発検討: Granherne社によるFEED (Front End Engineering Design)。同じくアンゴラのブロック

15 のKizombaフィールドでExxonMobilが採用した海上坑口方式のテンションレグプラットフォーム

が初期設計段階で少し検討されたが、(貯留層の広がりが 35kmにも及ぶため)その後の検討は

見送られた。採用されたFPSO以外にSPARも検討。

開発方式: BPがアンゴラ海洋で初めて手掛けるプ石油開発ロジェクト(開発のパートナーへの

技術力アピール)。

油層の広がり、油層特性、離岸距離、複数構造の段階的開発、油層圧維持のための水圧入(45

万バレル/日)の必要性が、大型FPSO、ハイブリッド型ライザータワー、Reel Lay と J-Lay 法を併

用したフローライン敷設の導入につながった。

Local Contentの積極的活用(地元下請けの活用、海底クリスマスツリー43基の内25基を製造)。

初期の開発投資10億ドル、全体で40億ドルを予定、機器据え付け時間(作業船稼働日数)は延

べ 1,650 日。

ニュース: 2009 年1 月に操業停止を経験(FPSO上のガス処理トラブルと予想)。

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3-2. メキシコ湾Thunder Horse

メキシコ湾で も大きな洋上のホスト設備(11.7 万トンのセミサブ型掘削生産処理プラットフォー

ム)、権益(75% BP オペレーター、25% ExxonMobil)、1999 年発見、推定可採埋蔵量 15 億バ

レル、2008 年生産開始(BP はメキシコ湾Thunder Horse Field の生産を 6 月14 日に開始[OGI、

2008.6.11] BP はメキシコ湾 Thunder Horse 油田の生産量 10 万バレル/日を達成[OGI、

2008.10.28] BP Executive: US Thunder Horse Oil Production At 260,000

bbl/D[Morningstar.com、2009.3.3])、水深 1,900m、処理された生産流体(原油と随伴ガス)は

Mardi Gras パイプラインにより出荷。

上載デッキスペースはフットボールフィールド 3 面分、成熟層の中新世/Miocene からの生産を

補完する貯留層として期待されるサブソルトのイメージング(古第三系、imaging and reservoir

surveillance)、HP/HT (18,000 psi / 132℃)、一坑当りの生産量の上限は 5 万バレル/日。

海底機器: 貯留層挙動に応じた計画(22 生産井、11 水圧入井)。海底機器と洋上のセミサブ型

掘削生産処理プラットフォームとは Single Catenary Riser / SCR で結ばれ、生産流体の流路と動

力や制御ラインを確保(フレキシブルライザーでは大水深のため開発コストが 2 倍に上昇との試

算)。1999 年に発見されてから、一部採用技術は開発されたとのこと。

2005 年ハリケーン・デニスの後で、プラ

ットフォームが傾く事故が発生したが、

主要因はハリケーンではなく、ハルの

バラスト制御システムの故障と判明。

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生産開始前の 2006 年に実施したプレ・コミッショニングテストにおいて、海底マニホールドにお

ける溶接が不調に終った。これはプラットフォームがシャットダウンしていた間、海底マニホール

ドが冷温下にさらされ発生した腐食の一種Hydrogen Induced cracking/水素脆化が主因と言わ

れる。これは、腐食の過程でH+発生し、H+が金属内部へ拡散・侵入する。H+が不連続に結合し、

金属の内部圧を上昇させ、金属を脆くし割れを発生させるのだ。温度が上昇すると腐食の程度

は減じる。この腐食のため海底機器の多くを作り直さねばならなかった。

3-3. ノルウェーTordis

世界で 初のフルスケールの海底分離及び水圧入システム「SSBI」: オペレーター

StatoilHydro、パートナー(Petroro, ExxonMobil, Total, RWE, 出光)、海底分離及び水圧入シス

テムは 2007 年稼動開始(Tordis サテライト自体は 1994 年に生産開始)、水深200m、ピーク生産

7万バレル/日(1995年)、分離された産出油は10 km離れたホストのGullfaks Cプラットフォーム

(コンクリート製重力式)へタイバックされたフローラインを通じて、移送。

SSBI(Subsea Separation, Boosting and Injection system)

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課題と計画: 大量の産出水(高いウォーターカット)により、2005 年には生産量が 1.2 万バレル/

日まで減退(その時点での残存確認可採埋蔵量 35 百万バレル)。この可採埋蔵量を地上に取り

出すために、海底にて産出された水を分離し、水圧入井を通じて地層(帯水層)へ圧入し、分離

された産出油は 10km 離れたホストの Gullfaks C プラットフォーム(コンクリート製重力式)へタイ

バックされたフローラインを通じて、移送することを計画。Gullfaks C プラットフォームの設備は必

要に応じてアップグレード(図9)。

図9 Tordis サテライトのレイアウトと SSBI のシステムフロー 出所: StatoilHydro 社資料

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SSBI 出所: StatoilHydro 社、FMC 社資料

SSBI: 総重量1,300 トン、100 百万ドル、(点検・修理しやすいように)機器はモジュール化、セパ

レーター(ガスはサイクロンで、水は重力にて分離、産出砂も週2回分離)、海底昇圧ポンプにて

分離された油とガスを Gullfaks C プラットフォームへ移送。分離された水(16,000 m3 /日)と砂

(500kg/日)は水圧入井を通じて帯水層(海底面下800~1,000m の Utsira 層)へ圧入。

問題発生: 水圧入開始の 6 ヶ月後の 2008 年5 月に海水面に油検知。海底面に陥没(幅40 m、

深さ7 m)発生。陥没個所はもっと近いテンプレートからは60 m、水圧入井からは東に310 mと近

かった。水圧入井の坑底にて、圧入特性と帯水層特性の不適合(地層の不十分な事前調査)か

ら複数の大きな人工のフラクチャーを発生させる結果となり、帯水層が地下で崩壊し、水圧入井

から 310 m離れた場所で海底面が大きく陥没。産出水には 100 から 500 ppmの油分を含み、そ

れが陥没面から浸みだし、海面で検知された。50~150 m3の油流出と推定(図10)。

対処: 陥没の原因としては、地層の不十分な事前調査のほかに、海底面の不安定性、水圧入

井位置がSSBIからのジャンパーホースの長さに依存したことが挙げられたが、水圧入井の仕様

をチェック・改善した後、産出水量(水圧入量)を抑えるべく幾つかの生産井からの産出流体量を

制限し、生産継続。SSBIの導入によりTordisサテライトからの産出寿命は17年延び、19百万バレ

ルもの採油増収量が期待されている。

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図10 Tordis サテライトの平面図(水圧入井、SSBI、海底面の陥没) 出所: StatoilHydro 社資料

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4. まとめ(SPS の位置付け)

今後、大水深における石油・ガス開発が継続される限り、これに係る標準化技術を進展させること

は、信頼性、安全性、経済性の向上の観点からも避けては通れない課題。自動車、電気等の他産

業の例を見ても歴史的に証明されている。エネルギーの分野でも原子力産業や省エネルギー産

業も着実に標準化が進んでいる。

しかしながら、石油・天然ガス産業、とりわけ、海底生産システムにおける標準化となると、オペレ

ーター、サプライヤー双方の協力・歩み寄り(一定の妥協)が必要であると考えられるが、標準化

の今後を議論する会議では、総論賛成、各論反対という雰囲気が少なからずあり、それぞれが自

社技術を標準化に適用させたいという意向が見え隠れしており、標準化までの道のりはそう平坦

ではないだろう。

大水深開発は、既に北海、メキシコ湾、ブラジル沖、西アフリカ等と世界中で開発されており、い

わばグローバル化している。しかしながら、海底生産システムにおける標準化の議論となると、オ

ペレーターと機器ベンダーの両サイドがお互いに協力をして双方がメリットのある標準化環境を設

定する必要は再認識しつつも、実現への足取りが重いのは、標準化の直接の利害関係にない第

3 者(ISO などの標準化機関、API(American Petroleum Institute)などの石油ガス産業界、そして各

国政府)の介入、圧力が少ないことであろう。一方で、石油ガス産業の上流分野においては、サー

ビスが我々消費者に直結している自動車産業や通信機器産業とは異なり、そのエンドユーザー

がオペレーターとサプライヤーという利害関係であるため、一定の安全性、信頼性を確保するた

めの政府規制等も他産業に比べて少ないという背景もあるであろう。産業界からの第 3 者機関へ

の積極的な働きかけが必要不可欠である。

今後、大水深における石油ガス開発は着実に進むであろうし、大水深域に少なからず依存せざる

を得ないのは否定できない。その意味では、大水深開発に必要な技術革新、コスト低減、安全性・

信頼性の向上等の観点からも、海底生産システムの標準化は必要不可欠である。

技術の適用と開発のトレンド(関係者へのインタビューまとめ): 今後 5 年で 3,800 基の海底仕上

げ井が計画(800 億ドルの投資)、海底での産出流体処理、海底機器のオール電化(コストやHSE

の観点から油圧の機器やケーブルを使わない、2008 年Total社設置)、設計基準の充実、ワイヤ

ーロープに比べて軽く同等な強度を持つファイバーロープの大水深への適用、リアルタイム・モニ

タリング、洋上のホスト設備をなくす(海底機器から陸上までの長距離の多相流移送/フローアシュ

アランス技術の向上)、パイプラインの形状変化(伸び、収縮、捩れ)の吸収。

要素技術やケーススタディを眺めてみても、海底生産システムにおける課題は流体系と情報系に

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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

係るものが多そうだ。この流体系と情報系に関する技術への知見の蓄積は、人体の血液や神経の

動きを理解することにも通じている。その意味で、特に大水深に係る要素技術の内、「海底昇圧ポ

ンプ」、「海底セパレーター」、「フローアシュアランス」、「動力とコントロール機器」とその設計基準

や標準化の動向を注視していくことは重要である。

海底生産システムの構築には、オペレーターは(待ちの姿勢ではなく)自らシステムのアイデアを

出し、機器やソフト技術を提供する業者との意思疎通や連携が重要である。それが大水深開発と

いう難しい石油開発のコストを適正化し、可採埋蔵量を 大化し、経済的な開発プロジェクトへと

つながると考える。

本邦企業が大水深開発を通じた石油・天然ガス生産を行う場合、オペレーターではなく、パートナ

ーとしての参画が多いと考えられるが、大水深開発システムを進める先人たちの戦略や事業の進

め方を理解・分析することは、その際重要となろう。

以上 <参考資料>

・ JOGMEC 技術調査部 / OTM Consulting 「海底生産システムの 新動向調査」、2009 年3 月

・ JOGMEC 技術調査部「海洋工学ハンドブック(第4 版)」、2007 年11 月

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<参考技術情報>

海底生産システムを構成する要素技術

出所: JOGMEC 技術調査部 / OTM Consulting 「海底生産システムの 新動向調査」、2009 年3 月

要素技術のイメージ

クリスマスツリー/坑口装置 マニホールド/テンプレート 昇圧ポンプ/セパレーター

多相流量計 パイプライン アンビリカル

ライザー 動力とコントロール機器 ROV と AUV(Autonomous Underwater Vehicle)

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フローアシュアランス(管内の流体挙動制御、生産流体の流路保全)

(1) クリスマスツリー/坑口装置

坑口装置は海底面下のケーシングをシールし、吊り下げ支持する。

コントロールバルブの配置によって横型と縦型に分類。縦型の海底クリスマスツリーは 60 年代に導入開

始。横型は 1993 年水深115 m に初めて設置。

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横型と縦型の海底クリスマスツリーの特性(坑井仕上げとツリー据え付け、坑井への介入、アニュラスへの

アクセス、初期投資、操業費)についての比較。

全て電動駆動の海底クリスマスツリー: 油圧ライン不要、2008年Cameron社は全て電動駆動の海底処理

システムの据え付けに成功(ホストシステムから192 km離れた遠隔地でも作動可能、水深4,500 mまで対

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応可)、FMC 社も提供(既存坑井へも改造・据え付け可能、充電式バッテリー、水深 4,500 m まで対応

可)。

ベンダー: Aker Solutions, Cameron, FMC, GE Vetco, NOV

価格: 1 基当たり 200 万ドル~300 万ドル

(2) マニホールド/テンプレート

テンプレート: 複数の海底仕上げ井を掘削・仕上げできる枠組みの基礎構造物で海底面に設置。

マニホールド: 海底で生産井や圧入井からのバルブ、配管やフィッティングほかを集約させた構造物。

各部品はコンパクトにモジュール化され、据え付けや回収が比較的容易。海底昇圧ポンプとのインター

フェースあり(BP 社King フィールドにおける Cameron 社の MARS システム)。

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課題: 軽量化とコンパクト化、機器の修理にはアクセスコストが高いので信頼性の向上、全て電動駆動、

5 年~25 年の稼働期間が前提。

ベンダー: Cameron, FMC, Framo, GE Vetco, JP Kenny, McDermott

価格: 水深1,200 m 対応で 6 スロットのマニホールド 100 万ドル~200 万ドル

(3) 海底昇圧ポンプ

海底生産システムにおいて、まだ一般的とは言えない新しい技術。ポンプとコンプレッサーにて坑口に

おける産出流体(液体と気体の多相流)の圧力を上げる(「坑口圧力をかつぐ」、「坑口での背圧を減じる」

とも言われる)ことで、ポンプなしの場合と比べ産出流体量を増やすことができ、また、その下流への移送

が可能となる。その結果、生産井の寿命が延び、また、同じ量を短い期間で生産できるため操業費も軽

減可能。

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水圧入ポンプは単相流(水相のみ)を取り扱うため、多相流を扱う海底昇圧ポンプに比べ、仕組みは簡

単。

多相流ポンプは容積型(positive displacement / hydrostatic)と多段式ターボ型(hydrodynamic)に大別。

容積型は、流体をポンプ内部において機械的に動かす。一方、多段式ターボ型は回転翼(impeller)を高

速回転させ、流体を加速する。

<容積型>

<多段式ターボ型>

容積型と多段式ターボ型多相流ポンプの適用範囲(ガスの体積比率、パイプラインの閉塞や固体物への

対処)の比較。

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容積型と多段式ターボ型多相流ポンプの適用例(北海、南シナ海)

ベンダー: Aker, FMC, Framo

価格: 2,000 万ドル(BP 社King フィールドにおける多相流ポンプ)

(4) 海底セパレーター

海底生産システムにおいて、まだ一般的とは言えない新しい技術。坑井からの産出流体を油、水、ガス、

砂に分離。

例えば、海底でガスが分離できると貯留層へのガス圧入という(貯留層圧の維持を通して)採油増進につ

ながる。砂の分離は、砂によるパイプライン・チョーク・バルブの侵食の防止や軽減につながる。また、洋

上施設のセパレーター配管が砂により詰まることを防ぐ。水の分離は、配管内のハイドレート防止、小径

パイプラインの適用、腐食の低減、貯留層への水圧入ほかにつながる。

海底セパレーターは重力式(重力分離)とサイクロン式(各相がサイクロン内で加速され分離)に大別。

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<重力式> Tordis Gravity type Subsea Separator

<サイクロン式>

ベンダー: FMC, Twister

価格: 980 百万ドル(アンゴラの Pazflor フィールド、海底クリスマスツリー含む)

100 百万ドル(ノルウェーの Tordis サテライト)

(5) 海底圧入システム

通常の海底生産システムにおいては、産出水は洋上のホスト設備で分離され、投棄ないし再圧入される。

海底昇圧ポンプや海底セパレーターと併用すれば、産出水はそのまま海底面下に再圧入できる。水分

率が低い場合、また(水圧入に)多くの水が必要な場合、海水を一次処理して圧入水として使われる。

産出水をそのまま海底下に再圧入できると、その分のライザーやフローラインを省くことができ、投資を

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削減できる。また洋上のホスト設備から水処理セパレーターを軽減できる。全ての産出水を海底面下に

再圧入できると、環境負荷が減る。

海底圧入システム(水圧入ポンプ、フィルター、流量調整バルブ)

ベンダー: Aker, FMC, Framo

価格: 100 百万ドル(ノルウェーの Tordis サテライト)

(6) 海底多相流量計

海底仕上げ井からの産出流体の各相(油・水・ガス)流量を、海底で計測・モニタリングする。海底多相流

量計がない場合、洋上のホスト設備でのセパレーターによる坑井毎の産出試験により流量を計測するこ

ととなるが、手間やコストのかかる月一回ないし年一回の計測となり、海底多相流量計によるリアルタイム

の流量計測は出来ない。体積流量・質量流量・気液相の成分率を計測することで、各相の流量が判る。

気液相の成分率の計測原理には、各相へのガンマ線減衰率や静電容量の違いが使われる。下の海底

設置型の多相流量計は、ベンチュリ管による流量計測部、ガンマ線源とガンマ線の減衰検知器、圧力・

差圧計、フローコンピューター、それらを格納するケーシングより構成される。

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ベンダー: Framo (Schlumberger), MPM, Roxar

価格: 一基当り 25 万ドル~100 万ドル(型式や仕様による)

(7) パイプライン

要件: 内圧と外力に耐える機械的強度、耐食性材料、シャットイン時のハイドレート・ワックス析出防止の

ための保温

形状: 熱絶縁(シンタクチックフォーム、二重管/pipe-in-pipe)、フレキシブルパイプ、埋設管(敷設長さ

は一分当り 3~20 m と短い)、束/bundle

シンタクチックフォームを施したパイプ(敷設や検査が容易くない)

二重管(S-Lay や J-Lay 法により敷設するため、敷設時間が長くなる)

フレキシブルパイプ(多重層から成り曲げ特性に優れる、Reel Lay 法により敷設可)

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束/bundle

(動力ケーブル・アンビリカル・フローラインを同一管内に内蔵、修理は無理、敷設コストは 1,500 ドル/m)

(8) アンビリカル

洋上のホスト設備と海底機器をつなぐ動力・通信ケーブルや薬品圧入ラインの束。技術課題は大水深、

長距離、高温・高圧環境下での長期間の材質強度の維持、信頼性の確保。

ベンダー: Cabett Subsea Products, DUCO, JDR Cable Systems, Kvaerner Oilfield Products, Nexans,

Oceaneering International

価格: 1 m 当り 150 ドル~6,000 ドル(型式や仕様による)

(9) ライザー

洋上のホスト設備と海底機器の間で流体を移送させるパイプの総称(生産用と圧入用に大別:生産流体、

ガスリフト、ガス・水・薬品圧入)。洋上のスイベル、ライザーパイプ、ブイ、海底機器との接続部位から構

成される。

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設計時の検討項目: 水深、高圧、高温、伝熱管理、H2S・CO2対応、洋上のホスト設備、設置・据え付け。

種類: カテナリー/フレキシブルライザー、自立/タワーライザー、ハイブリッドライザー、(海上坑口装置

用)上部懸垂ライザー/top tensioned riser

Steel Catenary Riser (SCR)

2,000 m 大水深向け、偏距10 km、曲げ疲労の解析重要

フレキシブルライザー Vortex Induced Vibration (VIV)のフレキシブルライザー挙動への影響

Snorre B プロジェクトでのコスト:17 百万ドル(300 m x 3 本、5 インチ 2 本と 8 インチ 1 本、”Subsea 7”社)

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自立/タワーライザー 西アフリカ Girassol プロジェクト(産出原油温度>40℃を保つため)

自立式のため材質や溶接部の疲労はあまり問題とならず、洋上のホスト設備と比較的容易に接続可能。

ハイブリッドライザー

黄色のシンタクチックフォームブイ、ライザー、洋上のホスト設備との接続ジャンパーホースにて構成。

300 m を越す水深でもライザーの保温が十分でき、生産流体の流路保全(フローアシュアランス)に有効。

ライザー敷設の作業船も小さくて済み、コストも低減可。

大水深対応へ向けた将来の課題: フローアシュアランスの確保、ハイブリッド型バンドルライザー、軽量

化、設置法。

(10) フローアシュアランス

管内の流体挙動制御、あるいは生産流体の流路保全のことを指す。海底機器を介して信頼性を確保し、

貯留層からの産出流体を経済的に洋上のホスト設備まで移送する、あるいは、逆に圧入用として海底下

まで戻すソフト技術。貯留層流体の特性をよく理解し、生産流体の流路保全を化学・機械工学・熱力学の

視点から検討・実施する。多相流挙動において検討する具体的な事象は、アスファルト/ワックス/スケー

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ル析出、ガスハイドレート、腐食、伝熱、砂の産出、油と水のエマルジョン、スラグ流、機械的侵食や損傷

が挙げられる。

具体的には貯留層流体と海水の温度差(ブラジル 86℃/4℃、メキシコ湾の高温高圧 132℃/15℃)がも

たらす相挙動の変化。丘谷形状パイプライン内の多相流体挙動解析が大事な要素技術。

解析ソフトウェア: OLGA, STAR, Oilphase, PIPESYS, PIPESIM, Pipephase

解析ソフトウェアを用いて、パイプ径の設定、間欠流(スラグ流)の発生予測、シャットインあるいはリスタ

ート時という過渡状態における流体挙動予測を、操業のガイドラインへの指針とする。

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ソフトウェア OLGA によるシミュレーション結果イメージ

海底パイプラインから取り出されたガスハイドレートの塊 腐食によるパイプの割れ

スラグキャッチャー

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産出流体に含まれる砂によるバルブ内部の機械的損傷(エロージョン)

将来の課題: 長距離タイバック、1,000 m 以深の大水深、パイプの保温(二重管/pipe-in-pipe)、詳細な

流体挙動予測の精度向上。

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(11) 動力とコントロール機器

海底機器コントロールシステム: 洋上のホスト設備から信号を伝達し、海底機器のバルブを駆動させる。

海底機器センサーからの信号はケーブルを介して、洋上のホスト設備へ戻る。海底機器は、電気・光フ

ァイバー信号や油圧動力で操作される。坑井内の動力ケーブルの故障個所(過荷重によるケーブルの

捩れ、留め金、フィッティング)を仕上げ流体との相性を念頭に良く理解し、修理コストの低減を目指した

信頼性を確保することが大事。

コントロールシステム概念図 海底機器コントロールモジュールの概観

(Subsea interface)

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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

Page 46: 海底生産システムの現状: Subsea Production …...1-3. SPSの概略・歴史・適用基準 (1) 概略 9 海洋石油開発方式の一つの選択肢である海底生産システム(Subsea

基準(standardization): IWIS, SIIS (Subsea Instrumentation Interface Standardization), SEAFOM

HIPPS: High Integrity Pipeline Protection System

Shut-off valve + actuator

将来の課題: 連続運転性能や信頼性の向上。修理・取替えの簡便化。機器のオール電化を目指した

システムの簡略化(油圧動力をなくす)。高電力化(ケーブルの数を減らすための電力分散システムは

開発中)。

(12) ROV(Remotely Operated Vehicle)と AUV(Autonomous Underwater Vehicle)

ダイバーの潜水深度の限界は 300 m であることから、それより深い水深での海底機器の設置、オペレー

ション(バルブ操作、修理、回収)、モニタリングにはロボットである ROV や自律型AUV を使う。

ベンダー: Cybermetix, FMC, Saab, SMD, Triton

価格: 1 台10 万ドル~500 万ドル(ROV レンタル 1 万ドル/日)

以上

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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。