第4号議案 令和2年度事業計画の設定について · 2020. 7. 2. · 0.7 0.0 83.4 84.1 項目 Ⅰ類 Ⅱ類 Ⅰ類 Ⅱ類 Ⅲ類 Ⅳ類甲 Ⅳ類乙 Ⅴ類 Ⅵ類 Ⅶ類
現生人類の大拡散(ギリヺテヹザメヺドヺ) 文化人類学概論...
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文化人類学概論/人類の大いなる旅
5月22日
5 南アジア:
生業・経済・開発/発展
小田博志研究室小田博志研究室小田博志研究室小田博志研究室
http://skyandocean.sakura.ne.jp/
現生人類の大拡散(グレート・ジャーニー)
(出典:国立科学博物館ウェブサイト)
ラダック 谷間の村
マルセル・モース(Marcel Mauss)• 1872-1950
• フランスの社会学者、人類学者
• ボアズやマリノフスキの研究を踏まえた1924年の『贈与論(Essai sur le don)
』で、物の贈与・交換を、「互酬性・相
互性(reciprocity)」の概念で捉え、そ
れが法、経済、親族関係、人間の身
体的・生理的現象から宗教、象徴表
現までを含む「全体的社会的事象」と
して理解した。この視点はレヴィ=ス
トロースの構造主義に影響を与えた。
• この他、身体技法論、人格論の先駆者でもあり、主な論文は『社会学と人
類学』に再録されている。
カール・ポランニー(Karl Polanyi)• 1886-1964
• オーストリア=ハンガリー帝国で生まれ育ちアメリカ、カナダで生活をした経済人類学者
• 産業革命後の貨幣経済・資本主義・市場社会は普遍的ではないと論じ、非市場社会を
含めた経済の原理を「互酬」「再分配」「交換
」の3つに類型化した。
• 「社会に埋め込まれた(embedded)」非市場
社会の経済、「経済が社会から離床した
(disembedded)」市場社会の経済という捉え方をした。
• 経済成長至上主義の弊害が顕著な現代において、別の社会のあり方を構想するため
に、モース、ポランニーらによる近代社会の
外部に立つ人類学的視点は今日的な重要
性をもつ。
生業(Subsistence)
•人間が生存するために必要なもの(多くは食料)を得る活動のこと。
•多くの場合、市場経済以外の自給自足的な活動を指す。
•狩猟採集、漁労、牧畜、農耕などがある。
•生業研究は文化人類学の重要な一分野を成してきた。
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農耕(farming, horticulture, agriculture)•土地を耕して畑にし、そこで生活に有用な植物を栽培する生業の形態。
•鍬(くわ)農耕/犂(すき)農耕、焼畑移動耕作/常畑耕作などに分けられる。
•狩猟採集に基づく旧石器時代に対し、農耕の開始が「新石器革命」(G.チャイルド)と呼ばれることがある。
• その一方で、「狩猟採集民」とされてきたアイヌやアボリジニが農耕民でもあったとの指摘もなされている。
• 「高度な近世アイヌ農耕」((((https://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200801220056.html)
• 「伊達で作物痕跡からアイヌ民族のカブ栽培可能性示す」(http://www.muromin.co.jp/murominn-web/back/2018/08/22/20180822m_06.html)
• “the first Australians had complex systems of agriculture that went far beyond the hunter-gatherer tag” (https://www.abc.net.au/radionational/programs/archived/bushtelegraph/rethinking-indigenous-australias-agricultural-
past/5452454?fbclid=IwAR1tjZ_FO9v82OrnhXD2J5VPI0cXo_1JZOaejiPom5dHb1-e6psYa0iPNNc)
アイヌ民族 17世紀にも農耕
「開発/発展」を問い直す
•伝統的生業社会を工業社会に移行させること、また例えば農耕を工業化すること(高収量品種を、化学肥料・農薬
・除草剤および機械を投入して栽培する「緑の革命」、「遺
伝子組み換え作物」の導入など)が、「開発/発展(development)」とみなされてきた。
• 「発展途上国(developing countries)⇒先進国(industrialized countries)」という図式には、工業化と経済成長に価値があるとする暗黙の前提がある。
• しかしそのような「開発/発展」が、本当に人間の幸せや豊かさ、自然環境の持続につながっているのか?
•南アジアの現場から「開発/発展」という近代において自明の価値を相対化してみよう(川田のテクストをも参照)。
ワタ(棉・綿)
Photo by Margaret Bourke-White, LIFE magazine, May 27, 1946 北インド ナヴダーニャ農場
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ヴァンダナ・シヴァ(Vandana Shiva)• ガンディーの影響を受け「種のサッティヤーグラハ」を実践
• 1952年 インド北部デラドゥー
ンに生まれる
• カナダのウェスタン・オンタリオ大学で物理学を専攻、学位
を得る
• 1991年 デラドゥーンにNPO「ナヴダーニャ(Navdanya=9つの種)」設立
• 2004年 「種の学校(Bija Vidyapeeth)」設立
いのちの種を抱きしめて
•映像「ヴァンダナ・シヴァのいのちの種を抱きしめて」2014年、ナマケモノ倶楽部
• 0:00-6:00 ガンディー
• 11:20-14:00 ナヴダーニャ農場
• -17:00 チプコ運動
• 37:20- 生きる歓び
• 40:30-41:50 コモンズ
• 48:15-51:50 ローカル
• -55:20 アースデモクラシー
• Web of life(生命の織物):多様な生きものが、多様なままに互いに関わり合っている様。
• 「自然-文化」、「生物多様性-文化多様性」をシームレスに捉える視座
「懐かしい未来:ラダックから学ぶ」
• ラダックでは農耕と牧畜を主な生業形態としてきた。
• スウェーデン出身の言語学者ノーバーグ=ホッジが1975年以来ラダックに滞在し、現地でその言語・文
化・社会に関して行ってきたフィールドワークの結果
を記録すると共に、「開発」がラダックにもたらしたイ
ンパクト、そして「開発」を問い直す「カウンターディベ
ロップメント」について論じた『懐かしい未来』(ノーバ
ーグ=ホッジ2011、原書1991)と、同書に基づいた映画(監督ジョン・ペイジ1992)
問 い
•今日学んだことを踏まえて、貨幣経済・資本主義・市場社会の方向へ進むことが「開発/発展」だと
する、近代にあたりまえの単線的な価値観を問い
直し、多様な社会のあり方について思いをめぐら
せてみよう。
文 献
青柳まちこ(編)2000『開発の文化人類学』古今書院
ガンディー,M.K.2001『真の独立への道』岩波書店
川田順造他(編)1997『岩波講座開発と文化〈1〉:いま、なぜ「開発と文化」なのか」岩波書店
シヴァ,V.2003『生物多様性の危機:精神のモノカルチャー』明石書店
2007 『アース・デモクラシー:地球と生命の多様性に根ざした民主主義』明石書店
2014『ヴァンダナ・シヴァのいのちの種を抱きしめて』ナマケモノDVDブック
中尾佐助1966『栽培植物と農耕の起源』岩波書店
ノーバーグ=ホッジ,H.2011『懐かしい未来:ラダックから学ぶ』懐かしい未来の本
モース,M.2014『贈与論 他二編』岩波書店
ポランニー,K.2009『大転換―市場社会の形成と崩壊』東洋経済新報社
2003『経済の文明史』筑摩書房