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S P E C I A L F E A T U R E 総特集 DiNQL データ活用事例集 日本看護協会は、看護職の労働環境改善と看護の質向上を めざして 2012 年度より「労働と看護の質向上のためのデー タベース(Database for improvement of Nursing Quality and Labor:DiNQL)事業」に取り組んでいます。 同事業では、各病院が専用のシステムに「労働状況」「看護 実践の内容」「患者アウトカム」などの評価指標データを入力 すると、他の医療施設と比較したベンチマーク評価がグラフ 等の形ですぐにフィードバックされます。これにより、自施 設内の他病棟との比較や、自施設・自病棟の経年変化の確認 も可能となり、病棟ごとのデータマネジメントなどに活用が 期待されます。 本誌 2014 年 6 月臨時増刊号では、入力画面の見本ととも に試行事業参加病院の評価指標収集・入力体制などを掲載し ました。本臨時増刊号では、同事業に参加している 583 病院 4964 病棟(2016 年度)の中から、DiNQL のデータを活用し た多様なマネジメント事例を厳選! これまでの事業参加病 院の分析結果から明らかになったことも含め、“病棟で役立 つデータ活用”のヒントを紹介します。 ※ 本号では登録商標の ® 記号は省略しています ※表紙イラスト:DiNQL事業マスコットキャラクター「ディンキー」

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S P E C I A L F E A T U R E

総特集

DiNQLデータ活用事例集

デ ィ ン ク ル

 日本看護協会は、看護職の労働環境改善と看護の質向上をめざして 2012 年度より「労働と看護の質向上のためのデータベース(Database for improvement of Nursing Quality and Labor:DiNQL)事業」に取り組んでいます。 同事業では、各病院が専用のシステムに「労働状況」「看護実践の内容」「患者アウトカム」などの評価指標データを入力すると、他の医療施設と比較したベンチマーク評価がグラフ等の形ですぐにフィードバックされます。これにより、自施設内の他病棟との比較や、自施設・自病棟の経年変化の確認も可能となり、病棟ごとのデータマネジメントなどに活用が期待されます。 本誌 2014 年 6 月臨時増刊号では、入力画面の見本とともに試行事業参加病院の評価指標収集・入力体制などを掲載しました。本臨時増刊号では、同事業に参加している 583 病院4964 病棟(2016 年度)の中から、DiNQL のデータを活用した多様なマネジメント事例を厳選! これまでの事業参加病院の分析結果から明らかになったことも含め、“病棟で役立つデータ活用”のヒントを紹介します。

※本号では登録商標の®記号は省略しています

※表紙イラスト:DiNQL事業マスコットキャラクター「ディンキー」

Page 2: 総特集 DiNQL データ活用事例集1684 316 54 14 1774 304 59 10 1865 308 60 6 ⑸退院患者総数 ⑸-2):死亡患者数 ⑸-3):一日平均退院患者数 1603 58

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1章 労働と看護の質向上につながるDiNQLの活用

1-1 日本の看護のあるべき姿の羅針盤として・・・・・・・・・ ・ ・川本・利恵子・岩澤・由子・ 006

1-2 看護の質データベース構築に係る 看護の質向上のための取り組みへの支援・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 草間・直子・ 014

2章 DiNQL事業の基礎知識・ITシステム等について

2-1 データマネジメントで必要な看護部長・師長・チームの役割・ ・・・ ・ 岩澤・由子・ 018

2-2 労働環境の改善と看護の質向上のための「7つのステップ」・・・・ ・岩澤・由子・ 022

2-3 IT システム・お役立ちツール紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・岩澤・由子・長谷川・陽一・ 026

2-4 データ活用による質向上活動・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 岩澤・由子・ 037

2-5 2017年度のDiNQL事業スケジュール・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 岩澤・由子・ 050

3章 看護部門でのデータ活用

3-1 [QI 活動との関連]

データを生かした組織的な医療の質改善活動の取り組み・・・・ ・済生会熊本病院・ 054

3-2 [長年にわたる医療・看護データの活用]

データマネジメントの足跡とDiNQLの活用・ ・・・・順天堂大学医学部附属順天堂医院・ 060

臨時増刊号2017年3月 第69巻 第 4号

総特集

日本看護協会機関誌Journal of the Japanese Nursing Association March 2017 Volume 69 / Number 4

DiNQLデータ活用事例集デ ィ ン ク ル

Page 3: 総特集 DiNQL データ活用事例集1684 316 54 14 1774 304 59 10 1865 308 60 6 ⑸退院患者総数 ⑸-2):死亡患者数 ⑸-3):一日平均退院患者数 1603 58

3-3 [BSCとの連動]

病棟再編後の医療安全推進に・ BSCとDiNQLのデータを連携して活用・・・・・・・・・・・・・・・・・ 長浜赤十字病院・ 068

3-4 [目標管理への活用]

部署独自のデータと組み合わせた分析・活用サイクルを作成・ ・・・・ 江南厚生病院・ 074

3-5 [人材育成]

効率的なデータ収集とベンチマーク結果の活用をめざした・ 看護管理者育成と看護副部長の役割・ ・・・・・・・・・・ ・横浜市立みなと赤十字病院・ 079

3-6 [小規模病院での活用・物品等の予算獲得]

物品購入や教育制度の整備にデータを有効利用・・・・ ・沼田脳神経外科循環器科病院・ 085

3-7 [中小規模病院での活用]

可視化を課題改善の足がかりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・岡村一心堂病院・ 091

4章 病棟でのデータ活用

4-1 [データを使った改善活動]

褥瘡発生件数減少に向けたKaizen 事例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・飯塚病院・ 098

4-2 [認定看護師と病棟の連携]

皮膚・排泄ケア認定看護師としてのDiNQL活用・ ・・・・・・・藤枝市立総合病院・ 103

4-3 [転倒・転落防止]

病床機能の特徴を生かした転倒・転落防止の取り組み・・・・・・・芳珠記念病院・ 109

4-4 [組織の活性化]

見える化でやる気を引き出す・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・市立岸和田市民病院・ 116

4-5 [人材育成]

DiNQL活動を人材育成に生かしてみよう・ みんなでやってみようデータ分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・長野赤十字病院・ 122

5章 資料1 評価指標データの分析結果例(時間外労働時間・認知症・誤薬) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・岩澤・由子・相澤・恵子・ 130

6章 資料2 2017年度 DiNQL評価指標一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・日本看護協会・看護開発部看護情報課・ 138

本誌を無断で複写複製 ・転載すると著作権 ・出版権の侵害となることがありますのでご注意ください。

Page 4: 総特集 DiNQL データ活用事例集1684 316 54 14 1774 304 59 10 1865 308 60 6 ⑸退院患者総数 ⑸-2):死亡患者数 ⑸-3):一日平均退院患者数 1603 58

060 看護 2017. 3月臨時増刊号

3−23章 看護部門でのデータ活用

 20 年以上にわたり目標管理やデータ活用をし

てきた順天堂大学医学部附属順天堂医院には、本

誌 2014 年 6月臨時増刊号でもデータを活用した

業務改善等の期待を述べていただきました。今回

は、病棟師長による看護の質改善事例も含めて、

同院の取り組みを紹介していただきます。

今、なぜデータマネジメントか

 データマネジメントとは、データに基づく組織

運営や組織管理を行うことを指し、医療において

は「科学的・統計的データを用いた意思決定を行

うことが重要である」と言われています。近年、

急速な IT の進化によりデータの収集と分析を行

う環境が整い、よりデータマネジメントの重要性

玉本 和紀

順天堂大学医学部附属順天堂医院看護部 情報管理担当師長

が強調されるようなりました 1)。

 「IT 化」の変遷を当院で振り返ってみると、

2003 年から始まった DPC(診断群分類包括評価)

とレセプトの電算化、2008 年の電子カルテシス

テム導入、そして院内外のインターネット普及な

ど、急速に情報ネットワークが拡大しています。

わずか 10 数年の間に、大量のデジタル化された

データにアクセスし、取り出すことが可能になっ

たのです。病院機能の IT 化は、一見、データを

さらに発展的に活用していくためのシステムとし

て有益な変化であると見ることができますが、一

方で多様かつ大量なデータであるため数値に翻弄

されがちで、利用価値のあるデータへ意味づけし

ていくことが難しいという側面も持っています。

このような状況の中でも、看護管理者によるデー

タマネジメントは、「看護の質をより高める」と

いう目的を見失わずに実践していくものでなけれ

ばいけません。

 当院は DiNQL 事業に 2012 年度のパイロット

スタディから参加してきました。参加から 5 年目

になりますが、まだ満足できる活用には至ってい

ません。しかし、これまで取り組んできた経験に

順天堂大学医学部附属順天堂医院の概要(2017 年 1 月現在)

病床数 1020 床診療科数 37 診療科看護職員数 1097 人DiNQL参加病棟数 30 病棟データ入力体制 集約型

[長年にわたる医療・看護データの活用]

データマネジメントの足跡とDiNQLの活用

照沼 則子

同看護部 前看護部長

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Vol. 69 No. 4 061

データマネジメントの足跡とDiNQLの活用

よって、DiNQL は私たちが持つ目的や目標に沿っ

た「価値あるデータ」へ変化しています。

データマネジメントの足跡

 当院のデータマネジメントに関する最初の資

料は、「平成 5 年~平成 9 年度 5 年間のまとめ」

と題された看護部年報にまとめられています(資

料)。過去のデータ項目を見ていくと、20 年近く

経過した今でも、患者状況・勤務状況・感染対策・

看護事故等に関して、現在と遜色なく編集された

貴重な資料であることが読み取れます。

 次に、年代が進んだ平成 23(2011)年度の年報

から、目標評価の指標として取り扱っていたデー

タ項目を列挙しました(表 1)。ここでは、同年に

開始した BSC による目標管理から、看護職員実

態データや医療安全、患者数、病床運用に関する

ことなどを KPI(業績評価指標)として収集して

います。以前と比較してデータ量・項目とも増え

た理由には、先に述べた電子カルテや DPC、看

護必要度の情報、看護勤務システムの登場などに

よって看護職員・患者状況に加え、褥瘡や感染な

ど患者の有害事象に関する詳細なデータが収集さ

れるようになったことが挙げられます。

 一方で、過去から近年まで目標評価の指標とし

ていたデータ項目を概念的な枠組みで比較する

と、大きく変わっているわけではありません。こ

のことは、看護部として組織的にめざしてきた目

的や目標が、常に一貫としたものであったと理解

できます。一貫とした目標をもつ指標であるから

こそ、比較・検討・評価を可能にするデータとし

て蓄積する意義があることにもなります。では、

これらデータの視点が、もっと標準的かつ網羅的

な指標であるとしたらどうでしょうか。上記に述

べたデータの数々は、これまでも適正な人員の確

保と看護の質を評価するため積極的に用いられて

きましたが、よりいっそう有用で説得力のある

データとして活用することができるのではないか

と想像できます。

項目・月別 4月 5月 6月 7月⑴ 勤務計画表に関する問い合わせ

総数 120 125 125 96⑵ MRSA 発生件数 51 38 57 48⑶平均在院患者数(0 時現在) 878 876 899 906⑷入院患者総数⑷ -2):即時入院患者数⑷ -3):一日平均入院患者数⑷ -4):休日予定入院患者総数

1588270

5311

1684316

5414

1774304

5910

1865308

606

⑸退院患者総数⑸ -2):死亡患者数⑸ -3):一日平均退院患者数

16035853

16374253

17523258

18455650

⑹新生児入院数 38 45 43 50⑺看護事故発生件数(申告数) 73 73 79 114⑻家族付き添い者数(月平均)

一般病室母子室

2215

1817

1916

2117

【資料】�看護部年報「平成 5年~平成 9年度 5年間のまとめ」より一部抜粋

【表 1】平成 23 年度年報 各種統計項目のまとめ

病院概況・看護職員実態 患者状況 医療安全関連 褥瘡 感染関連

看護職員配置 離職率 病床利用率 事象レベル別インシデント・アクシデント件数

褥瘡推定発生率 手指消毒剤消費量

勤務体制 勤務時間・超過勤務時間 平均在院日数 新規褥瘡発生件数 多剤耐性菌感染数

資格別看護要員数 1 日平均外来患者数 看護必要度基準超え割合 要因別看護事故件数 手術時褥瘡発生件数 中心静脈カテーテル関連感染率年齢・経験年数 手術件数 平均外来患者数 与薬事故発生件数 持ち込み褥瘡件数

認定看護師数 非常勤職員実態 91 日以上長期入院患者数 カテーテル関連事故件数

専門看護師数 理由別退職者数 平均看護師配置数 転倒・転落件数

※ 多くの指標で前年度比を算出

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発行・発売 2017 年 3 月 15 日

発 行 所 株式会社日本看護協会出版会

東京都渋谷区神宮前 5-8-2 日本看護協会ビル 4階

Tel.0436-23-3271(コールセンター:ご注文)

振替 00190-8-168557

東京都文京区関口 2-3-1

Tel.03 -5319 -8017(編集直通)

発 行 人 井部俊子

編   集 米丸未央子/濵田拓男/阿部真里子

編集協力 株式会社自由工房

編集委員 井伊久美子/和田幸恵/長田晋一/伊藤雄介(日本看護協会)

企画協力 日本看護協会看護開発部看護情報課

表紙イラスト・デザイン 網野義彦(株式会社テクトセンス)

印  刷 三報社印刷株式会社

定  価 本体 1,800 円+税

March3 2017

Volume 69 Number 4