総合商社と海外投資 : 経済開発のマーチャント URL...

12
Hitotsubashi University Repository Title � : Author(s) �, �; �, Citation �, 27(11): 29-38, 57 Issue Date 1983-11 Type Journal Article Text Version publisher URL http://hdl.handle.net/10086/16784 Right

Transcript of 総合商社と海外投資 : 経済開発のマーチャント URL...

Page 1: 総合商社と海外投資 : 経済開発のマーチャント URL Righthermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/16784/1/... · 2017-05-19 · - 総合商社と海外投資-投資母国とホスト国双方のったからである。日本のDFIは'またそれを先ど-した直接投資であ位パターンの相互の変化に即応した'果たしたのである。それは'比較優

Hitotsubashi University Repository

Title 総合商社と海外投資 : 経済開発のマーチャント

Author(s) 小島, 清; 小沢, 輝智

Citation 世界経済評論, 27(11): 29-38, 57

Issue Date 1983-11

Type Journal Article

Text Version publisher

URL http://hdl.handle.net/10086/16784

Right

Page 2: 総合商社と海外投資 : 経済開発のマーチャント URL Righthermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/16784/1/... · 2017-05-19 · - 総合商社と海外投資-投資母国とホスト国双方のったからである。日本のDFIは'またそれを先ど-した直接投資であ位パターンの相互の変化に即応した'果たしたのである。それは'比較優

数と海外投資

-

経済開発のマーチャ

ント-

滞大学護済学部教授

)

-

『海外直接投資の新形態

かづて

「商社斜陽論」さ

には

「商社無用論」が叫ばれ、今や

「商

・冬の時代」と突つかれ心配さ

ている。それなのに他方'外国では

'

日本のユニークな

「総合商社」の

済開発への創造的貢献に対し'高

評値が与えられ'それを理解し'

習いたいとの機運がも-上っている

韓国では既に

10社に及ぶ酪合商

が育ったし,マレーシアを姶めい

つかの開発途上国が商社づ--に

手した.共産圏の中国'ソ連-、

貿

易公社とか公団の改組を考慮してい

ると聞-Oそしてアメリカすら'

九八二年

一〇月に'「輸出商社法

(DISC)」を通し'商社設立に

-組みはじめたO今日'総合商社

活動と在-万が重大な転換期にあ

ことはまざれもない事実だ。その

態を詳細にふ-かえ-、将来を卜

てみることは'内外にとって緊急

必要な課題であ-'その絶好のチ

ンスでもある

われわれ両名は、過去三年間に

た-'OECDの開発センターで

「海外直接投資の新形態」なる共同

研究に参加し、その

一環

して

'

Japan'sGeneralTradingCompa

niesJMerchalitOfEconomicDe

veloPmeJu

なる報告書をまとめた

今年の、宋頃のOECD出版物と

て公刊されることになっている。

たその日本版を同時公表したいも

と努力している。そのエッセンスを

'

ここに披露しておきたい

H

多国籍企業活動と日本

歴史は古いのであるがtと-に

後隆盛をきわめた海外直接投資

(D

FI)は'圧倒的にアメ-カ企業

よるものであるが'それに若干のヨ

.(コDラド州立大学題辞学部救援

)

-ロッパ系のものも'

「旧形態D

Ⅰ」が大部分であった。ここに

「旧

形態」というのは

「完全所有

(含九

九%或は九六%以上)子会社」形

での海外企業進出ということに代

される。だがもう少し広げて言うと

'

巨大企業が海外に

(或いは'世界

地に)多数の生産

・販売の拠点を

出させ'その企業の収益と市場シ

アの拡大のために世界戦略

(それ

大体において独占的ないし寡占的

動である)をとるのである。これが

'

「多国籍企業

(MNC)活動」で

る。完全所有形態は'完全なコン

ロール'統

一的経営'企業秘密保持

-29-

Page 3: 総合商社と海外投資 : 経済開発のマーチャント URL Righthermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/16784/1/... · 2017-05-19 · - 総合商社と海外投資-投資母国とホスト国双方のったからである。日本のDFIは'またそれを先ど-した直接投資であ位パターンの相互の変化に即応した'果たしたのである。それは'比較優

などのために不可欠な要因として選

好され固執されているOしたがって'

「旧形態DFI」とはtMNC世界

戦略の一環として行われるDFIt

かつMNC的行動とコントロールの

下にあるDFIであ-、

「MNC型

DFI」と略称してよいものである。

MNC型DFIが'まったく私企

業のミクロ的行動理論に立脚してい

ることは明白だ。それはすでに'国

家とか国民経済とかいう枠を飛び越

え'それは恰も存在しないものかの

ごと-受けと-'かれらの行動の投

資母国とホスト国へのマクロ経済的

効果といったものは眼中に入れない。

一〇年程前までのDFI理論は'ヴ

ァーノンの

『プロダクト・サイクル

論』であったO今日

では'ダ

ニン

グらの

『市場内部化論

interna-iza・

tioコ』が支配的である。

そのエッセ

スは'多国籍企業活動化或いは企

業の国際化をはかることにより、生

産'販売'決済、資産運用などの諸

取引

(-市場)を

一つの巨大企業の

中にとりこみ'もって取引コストの

節約がはかれる。それが世界中に拠

点を進出させる最大の動機であると

いうのである。結局tMNC型DF

Iは'ミクロ的私企業行動論の枠を

一歩も出るものではない。

これに対して日本経済は'貿易拡

大に主力を注ぎ'海外直接投資には

遅れた参入者

(-atecomer)として

登場し、漸く

一九六〇年代末から本

格的企業進出に乗-出した。そのス

ピードは早く'アメリカ'イギ-ス

につぎ'西ドイツと並んだか'既に

それを追い越すまでに成長したOだ

が日本のDFIは'層に遅れた参入

者であったとい-理由からだけでな

-'いろいろな点で

「MNC型DF

I」とは著し-異なった特色をもつ

に至った。執筆者の

一人は

「日本型

T⊥I

DFI」と総称した

であるが'そ

れを今や

「新形態DFI」と言い直

しておいた万がよ-適切であろうO

「新形態」とは何ぞやという定義

はまだ確立されてはいない。開発途

上諸国に経済ナショナリズムが高揚

LtMNC型DFIの性悪さを憎み'

その反省を求めたことに端を発して

いることは言うまでもない

(このた

めOECDや国連での

「多国籍企業

行動規範」作-が

進められた)。そ

の詳細は後に展開するのであるが'

日本のDFIには'

「新形態」を受

け容れる性向が強い'とい-特色が

-つき-と現れている。そのい-つ

かを要約的に言うとこうである。

糾マイノリティ所有の合弁形態が

い〇三人四胸型といわれるような

商社が参加する独得の形態さえ生ん

ど.榊融資買鉱へターンキイ方式、

長期購買契約へ技術の分割

(unpa・

ck爵e)移転など'非出資形態(non-

e

quityarrangements)も多い。

日本に不足して

いる資源調達のため

と'日本の労働力不足を克服し産業

構造を高度化するための製造工業海

外進出が多い。これは日本のマクロ

経済的必要に発するものだが'同時

にホスト国の順を追った経済発展に

調和的に貢献した。3:多分余り儲か

らない

(独

・寡占的行動の好対象で

はない)という理由からか'米欧M

NC型DFIが進出したがらない'

開発途上諸国の製造工業の創設と拡

大に、しか-半数以上中小企業が進

出していったO脚資源開発とかプラ

ント輸出など大型プロジェクトにつ

いてはグループ投資が典型であ-'

商社がそのオーガナイザ.-となって

いる。口日

本型DF-の特徴

このように日本がDFIの新形感

を作り出し'開発途上国の要請によ

-多-柔軟に対応してきたについて

は'数多-の理由があろう。その中

で二つだけキイ・エレメントを指摘

しておきたい。第

一は'個々の直接

投資

(企業進出)は'たしかに各企

業の慎重な収益採算に基いて行われ

るO資本主義経済として当然である。

MNC型DFIとその点で違いがあ

るわけではない。だが、日本のDF

Iは、わが国経済に必要不可欠な資

源'その比較劣位化した労働集約工

(ならびに労働集約的生産工程)

を域外生産

(offshoreproduction)

によって補い

'

もってマ

クロ経

造の高度化と維率化に資する'そし

てまた対外貿易の創造

・拡大をもた

らすtというマクロ経済的動因が強

く助らいていた。その意味で'日本

のDFIが自国中心(ethnocentriC)

であったことは香定できな

い。だが

同時に'明治以来盲年余を要してこ

こまで発展してきた日本経済のプロ

セスをへその半分とか三分の

一の年

月をもって急速にキャッチアップLt

第二'第三の日本経済になろうとし

ている開発途上諸国の'着実な'順

を追った工業化'経済発展'貿易拡

大に'日本のDFIがちょうど-ま

くミートLtクルーシァルな貢献を

- 30-

Page 4: 総合商社と海外投資 : 経済開発のマーチャント URL Righthermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/16784/1/... · 2017-05-19 · - 総合商社と海外投資-投資母国とホスト国双方のったからである。日本のDFIは'またそれを先ど-した直接投資であ位パターンの相互の変化に即応した'果たしたのである。それは'比較優

- 総合商社と海外投資-

果たしたのである。それは'比較優

位パターンの相互の変化に即応した'

またそれを先ど-した直接投資であ

ったからである。日本のDFIは'

投資母国とホスト国双方の経済発展

の媒体

(ca邑

yzer)であり促進者で

あった

のである。またこれを解明す

るには、ミクロ的企業行

動論だけで

は不十分であって'

マクロ経済的ア

ローチを構築し'両者を統合した

理論によって裏づけられねばならな

いのである。

第二は'日本経済が

「新形態DF

I」を推進しえたについては'わが

国だけに存在するユニークな総合商

社の活動へさらに広げて言えば'商

社の役割の大きい独得の企業間組織

と密接な関連があるのではあるまい

かtという問題意識である。この着

想'このファインディングを実証的

に裏づけてみたのが'以下に要約を

示すわれわれのOECDレポートで

ある。このファインディングが正し

ければ-

われわれはそう確信する

のだが-

、総合商社はまさに

(投

資母国とホスト国双方の)

「経済開

発のマーチャント」と称するにふさ

わしいのである。

われわれのOECDレポートの貢

敵は、東洋経済新報社

『海外企業進

出総覧』その他の原資料から九大商

社が参加している海外進出企業のす

べてについて個票を作成し'それを

い-つかの分析目的に応じて分類す

るとい-'手間のかかる作業を'試

みたことである。三十余に及ぶ諸表

(うち図が

一つ)がわれわれのレポ

ートの生命である。これによって実

に広範な'常に創造的なtかつ縦横

無尽に柔軟な

「経済開発のマーチャ

ント」の開拓者的活動の実態が'客

観的に'数字によって明確化された。

もとよ-'総合商社がどうやってビ

ジネス機会を発見し'収益をあげ'

時に失敗し、生き残-かつ成長する

かの'ほんとうのメカニズムは'外

側からと-にわれわれのごとき学究

にとって'わかるはずがないOその

ことは十分に承知している。だが'

Ce.・_

今や

「小島

・小滞パラダ

とし

て海外でも広く注目されている海外

直接投資理論に裏づけられた客観的

分析は'日々苦闘されているビジネ

スの万々にも'参考になる点があれ

ば幸いと患-。またこの塩の問題に

関心を-たれる研究者や学生諸兄の

恰好の検討文献たるに値すると期待

している。

われわれのOECDレポートは、

海外で関心の高まっているわが総合

商社の実態を'外国人によりよく理

解してもらうことを第

一目的として

いる。もともと国内向けではない。

また'開発途上国

への

「新形膿DF

I」を明示することに優先的力点を

おいているOこのため対先進国投資

(そこでは

「新形態」は余-とられ

ていないLtそれは問題ではない)

の分析が手薄になっている。OEC

Dレポートではそこまで言及してい

ないのだが'本稿では'今後の商社

活動について'われわれの分析から

導かれるサジェッショ.ンをもいくつ

か捷示してみたい。

世界にまたがる商事ネ

ットワーク

H総合商社こそ日本の

多国籍企業

わが国にユニークな総合商社の誕

生は'明治初期に'外国マーチャン

ト支配下の

"商館貿易〃

にとって代

-'日本人の手によって

'自らの貿

易と産業発展の意思決定や方向づけ

を果たすという'いわば日本経済運

営の独立宣言であった。創造性と活

性に富む総合商社は'水先案内人と

して'常に日本経済の発展をリード

し、ビジネス機会を開拓しっづけて

きたOだがこの種の歴史的考察は'

日本の読者には周知のことがらであ

-、.ここで繰返す必要はあるまい。

今日'総合商社こそ日本の最も代

表的な多国籍企業であると'断定で

きよう。商社本来の機能たる商事活

動について世界にまたがるネ

ットワ

ークを築きあげている。それだけで

はない。いな、コミッションを稼ぐ

〝商権″

拡大のために'製造工業と

資源開発

〝海外生産〟

開拓を先導

Ltその運営に参加して

いる。さら

に'海外生産に必要な資本財

・原材

・部品の調達と製品の販売

(それ

らが商権だ)・だけでな-'融資'配

船'倉庫'保険など'

一括して

〝ビ

ジネス・インフラ″

と称しうべき諸

サービスを'世界に

またがって'適

時適切に捷供している。

われわれが調査の対象にしたのは、

九大商社の総計

一'四九八に及ぶ海

外事業体であるが'その内訳は'商

社本来の商事活動を行う事業体三八

七'商社が参加している製造業合弁

企業六八二へ資源開発合弁企業

一三

- 31-

Page 5: 総合商社と海外投資 : 経済開発のマーチャント URL Righthermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/16784/1/... · 2017-05-19 · - 総合商社と海外投資-投資母国とホスト国双方のったからである。日本のDFIは'またそれを先ど-した直接投資であ位パターンの相互の変化に即応した'果たしたのである。それは'比較優

九が主要なもので'この他に'ビジ

ネス・インフラ提供事業として'プ

ラント輸出促進事業三九㌧倉庫業二

三'海運事業五五へその他の諸サー

ビス事業二五

一に達するのである。

このように'商社の提供するビジ

、ネスインフラ

・サービスを媒体とし

調整者として'海外生産が推進され

る。つま-海外生産とそれをサポー

トするインフラ

・サービス捷供とが

異なる企業の間で分業され分担さ

れ'しかも相互に協力するという関

係にある。これを

「企業間機能分業

divisionof

corporatefunctionsJ

【旦

って

い.

日本

の海

接投資の全システムとしての特色が

見出される。すなわち'個々の海外

生産はそれ自陣として

lつ1つバラ

バラに行われるのであるが'その生

産を創始し運営するために必要なイ

ンフラ

・サービス

(つま-情報の提

供、原材料の調達'製品

の販売

ど)は別の企業

つせり商社によって

捷供される。さらにバラバラに行わ

れる海外生産は商社を通じて結びあ

わされ'協力しあえるようにシステ

ム化されるのである。

この点が米欧

「MNC型

DF

I」と大いに異なっている。多国籍

企業は'試蕗

・生産というアブ

・ス

ト-1ムから'ダウン・ストリーム

の覇送

・加工

・精製

・販売まで'す

べて

1企業の中に内部化Ltもつて

取引コストの節約というゲインを実

現しょうとするのである.日本のD

FIと対称的である。日本でも自動

車企業などこの方式を採る傾向が出

てきたoいわゆる

「商社離れ」の傾

向である。

どちらの方式がよ-望ましいかは'

慎重な価値判断を要しょう。MNC

型DFIは独

・寡占的利益の追求に

脂-易いと懸念される。他方日本の

企業間機能分業型のメ-ットは、総

合商社の情報と流通サービスの規模

経済のいかんに依存するが'それは

非常に大き-tMNC型の内部化利

益をはるかに上回るものと思われる。

総合商社の貢献の源泉が'世界に

またがる広汎かつ機敏な情報網にあ

ることはいうまで-ない。このこと

は日

本のDFIを成功させる上で重

要な意義をもっていた。世界にまた

がるtかつ

「ミサイルから

ン」に至る広汎な商品に関する最新

の情報をも

っているが故に'有望な

ビジネス・チャンスが発見でき開拓

できる。個々

の生産企業

(メー

-)ではわからない'日本と外国と

の比較優位とその変化が'総合商社

によってはじめて的確に判断できる

のだ。ホスト国が比較優位をもちう

る分野に海外生産を進出させたこと

が、日本のDFIの成功の重要な要

因だと判断されるOそしてこの点も

MNC型DFIとは対称的なのであ

る。情

報というのは、技術ノウハウと

同様に'私的企業の貴重な無形資産

であ-'相応な対価をもって譲渡さ

れて然るべきものである。だが日本

では殆んど無償である。商品やサー

ビスの取引の仲介ということも価値

創造的な不可欠のピジ・*ス・インフ

ラであるが'総合商社の得るコミッ

ションはきわめて低い。有望な海外

企業進出の情報を提供し'その設立

を進出先に関する語学へ環境へコネ

など専門知識をもって助ける

(それ

なくしては中小企業の海外進出はと

ても実現しなかったであろう)など

を商社がやっても'それに対する直

接の報酬は提供されないのが普通で

ある。商社はそういうDFIの道案

内をしオーガナイザーとなるという

重要な役割を果たすのだが、設立さ

れる合弁企業に若手の出資をし'多

額の融資をすることによって'企業

建設と運営に必要な資本財'原材料'

部品'時に第三国からの技術の調達

と'他方'生産された製品の販売と

を仲介するという

「商権」を獲得し'

コ,,(ッシTnンを稼ぐにすぎない。こ

れは多分'商社の数が多-'過当競

争と言われるほど激しい自由競争を

闘わせている結果であろう。それ故'

日本の海外活動

(貿易と直接投資)

は、商社を媒休とする

「企業間横領

的統合」であ-'公開市場における

自由競争による

「市場的統合」と異

なるところがない。この点でtMN

C型DFIが、関連諸取引を

一企業

の中に

「内部化」して'独

・寡占的

行動をとる「機関的

(或いは制度的)

institutional統合」とは、大いに異

なる

ので

ある。

三人EI脚型合弁企業

さて'情報蒐集を含め、本来の機

能たる商事活動のグローバル・ネッ

トワークを'九大総合商社はどのよ

うに形成し運営しているであろうか。

各総合商社は'日本にある本社のほ

か'世界の主要都市に

「地域本部」

(九大商社合計で

1四六)を設けて

いるが'それは大部分完全所有の現

- 32-

Page 6: 総合商社と海外投資 : 経済開発のマーチャント URL Righthermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/16784/1/... · 2017-05-19 · - 総合商社と海外投資-投資母国とホスト国双方のったからである。日本のDFIは'またそれを先ど-した直接投資であ位パターンの相互の変化に即応した'果たしたのである。それは'比較優

地法人の形鰻をとっている.内国民

待遇をうけ、起債や税金の優遇'そ

れに情報の専有などの便益が得られ

るからである。

この列に、支店をはじめ各種の合

弁会社を世界中に進出させているO

それは次の八つのタイプに分けられ

るが'このタイプ分けは商事活動プ

ロパーについてだけでな-、製造業

その他の海外投資活動についても'

共通している。

タイプ

A=商社本店が完全所有す

る子会社。

タイプ〃=商社地域本部が完全所

有する子会社。

タイプB=商社本店と日本の会社

(時

に複数)の所有になる合弁

会社。日本の経営の完全な

コン

トロール下にある。

タイプa3-商社地域本部と日本の

会社

(時に複数)の所有になる

合弁会社。日本の経営の完全な

コントロール下にある。

タイプ

C=商社本店とローカルか

らの出資による合弁会社

タイプbI商社地域本部とローカ

ルからの出資による合弁会社

- 総合商社と海外投資-

表 l タイ プ別 海 外 商事 拠 点 1980

A B C D 小計 A'B'C'D'小計

頂 訂三 井 物 産 4 1 711 23 12 12 7 4

3 5 58三 斐 商 事 2 8 610 26

1 3 4 7 15 41丸 紅 5 7 6 4 2

2 3 11 3 6 23 45伊藤忠商事

3 8 9 3 23 7 1 1 09 32住 友 商 事 3 2 4 1 10 0 3 2 1 6 1

6日商 岩 井 0 2 3 6 11 001 01 12トー メ ン 3 4 2 3 12

3 02 1 6 18兼 松 江 商

1 2 1 5 9 00 3 03 12日 綿 2 1 2 1 6 1 04 05 ll合 計 23354044'142 27 30 27 19 103 24

5表 2 海 外 商 事拠 点 の取 扱 商 品, 1980蒜 高言 姐 伊艶

蒜 器 ;; 維 日射 ヨ コ計堤 .漁 ,林I確:_-局12 2 5 1 01 3 02 26(10.6%)金属鉱物 .

燃料 2 01 1 01 2 007( 2,9%)一 般 蘭 :l_L

Fi 2 3 1 1 2 3 2 1 1 16( 6.5%)製 造 工

業1.食料 .飲 料 4 000001 1 06( 2.4

%)2.歳 維 類 6 1 5 6■003 1 3 25(.10.2%)3.金 属 製 品 6 ●4 2 2 4 2 2 0022( 9.

0%)4.自動車.二給車お よ び 部 品 5 3 8 9 5 1 1 0133(13.5%)5.化 学 品 2 1 0001 01 05( 2.0%)6.電気儀伐.債券 0 17 4 3 002 1 128(ll

.4%)7.

非電気機械301154211330(12.2%)

.8.その 他(惟製品)161084 1116

047(19.2%)

タイプD-商社本店、日本の

会社

(時に複数)ならびにロー

カルからの出資

(第三国からの

も含む)による合弁会社。

タイ

プⅣ=商社地域本部'日本の

社(時に複数)ならびにローカルからの出資(第三国からのも含む)になる合弁会社。タイプDとt)がいわゆる「三人四脚型合弁企業」である。/(ダッシ表 3 九大 商 社 の タ イ プ

別製 造 業投 資 1980A A' B B' C C' D D' ヨコ計1食 品 加 工 4 1 3 27 2 23 3 63(

9.2%2幾 程 頬 3 12 1 22 5 109 1

52(22.3%)3金環及び'同臥Pu 11 11 2 21 7 55 6 1000日(.9.6%,日 タン板) (2) (27) (

1)4化 学 品 6 4 14 4 88 2 11

8(17,3%)5電気惰性

.銭器 2 1 4 34 6 47(6.9%6非電気憤

械 5 .22 21(3.9%)7輸 送 城 詰

2 5 18 1 26日.8%)8石紙粘土ーガラス 2 1 9 12日,8%)9鉄 鋼 15 lSf2.7%

10.

准製品1134 1235238 8(12.9%

タテ計5656 121082145 222682(0.7%日0 .9

%日8.2%) (1.8

%日15.

8%)(3.1%) (66.3

%日3.2%(100 %)

ユ)のないのとあ

るのとは

'商社本

店がやる

か地域本

部がやる

かの差で

ある。そ

の差を無

視すると

'完全所

有子会社

、日本企業

Page 7: 総合商社と海外投資 : 経済開発のマーチャント URL Righthermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/16784/1/... · 2017-05-19 · - 総合商社と海外投資-投資母国とホスト国双方のったからである。日本のDFIは'またそれを先ど-した直接投資であ位パターンの相互の変化に即応した'果たしたのである。それは'比較優

する。

Cte)tpta)の現地側参加

の合弁

企業が一三〇社で五三%の多

きに連することが注目される。当然

のこ.とながら'商社の出資率は低-'

九大商社の総計で見ると、三〇~四

九%のレンジ'次いで

一〇~二九%

のレンジの頻度が最-高く'両者合

計で四六

・五%を占めるOもう

1つ'

八〇~

100%のレンジの頻度が高

(二二・五%)。米

先進国への

企業進出は完全またはそれに近い所

有が許されるからである。

なぜ出資比率の低い沢山の合弁会

社拠点を作るのか。総合商社は限ら

れた資金をもってできるだけ広汎な

取引を仲介したいからである。各拠

点は取扱商品と地域を専門化Lt独

立採算制をとり'もって-スクの分

■散をはかっているのである。

次に表2によって'海外商事拠点

の取扱商品をみると'広汎な殆んど

すべての商品を取扱っていることが

わかる。

一次産品合計は

一三

・五%

に達する。新製品'繊維類のウエイ

トが高い。同時に「商社離れ」慣向を

見せていろ自動車や電気

・非電気機

械の取扱割合も依然としてかな-大

きいことに注目しなければならない。

このように'本店

・地域本部とな

らんで世界にまたがる商事拠点網が

形成されてお-'実に広汎な商品を

取扱い「.しかも輸出するだけでなく

輸入もするという機能を備えている

ため'三国間貿易もやれるし、為替

のマリーをやって相場変動の-スク

を回避することもできるのであるO

以上のような総合商社の世界にま

たがる商事拠点ネットワークによっ

てへ規模の経済が実現できへ流通コ

ストが低廉にされ'もって日本の輸

入と輸出を大いにファシ-ティトし

たことは言うまでもない。今や三国

間貿易の拡大に乗-出し'商事活動

は真に国際化されグローバル化され

つつある。・だが同時に'次節以下に

見るように、この商事活動ネットワ

ークが'海外直接投資の媒体とな-

促進者となったのである。

総合商社の海外投資活動

既述のように、日本の海外直接投

資の主軸は'マクロ経済的必要を動

因として'㈲産業構造の高度化を促

進し労働力不足をカバーするよう'

日本が比較劣位に陥ってきた労働集

約的工業

(ならびに労働集約的生産

工程)を'労働豊富な近隣開発途上

国に移植することと、仙急速な重化

学工業化に必要不可欠

な資源

(鉱物、

燃料'農林産原料並びに食料)の開

発輸入tに向けられた。

総合商社はかかる海外生産

(offS・

boreproduction)のオーガ

ナイザ

コ-オーディネイクーとして

重要な役割を演じた。製造業投資に

ついては商社は

〝コング

7-タ-〟

機能を果たしたと要約してよい。

ま-進出海外生産プロジェクトへの'

必要資本財'技術'原材料の調達と'

生産された製品のマーケッティング

を'既述のグローバルな商事機能を

通じて'また商権を獲得してその商

事活動を拡大すべ-'きわめて能率

的に受けもつた

のである。有望な

「海外生産」を発掘し'専門知識と

若干の出資や融資によってその設立

を助け'水先案内人の役割を果たし

たことは言うまでもないが'商社の

ねちいは

Converter機能であった

のである。こ

に対し資源開発投資

については商社は〟デブェローバー″

の役割を果したと特徴づけてよい。

その代表例は'国内での石油や食品

コンビナートの建設をオーガナイズ

したことである。同じ方式を、鉄鉱

石'石炭'石油tLNGt銅など粗

鉱石の開発だけでなく'それを加工

するアルミ'石油化学製品などの工

場建設'さらに地域開発

(モンバサ

空港建設など)などの海外プロジェ

クトに適用した。このデブェローバ

ーとしての商社の関心は'プラント

輸出と生産物の販売

の取扱権

(商

檀)を得ることにあったことは言う

までもない。

H

海外製造業投資

表3に見られるように'九大商社

が参加している海外製造業投資の対

象商品

は'逓推類

(二二・三%)、

金属製品

(一九

・六%)'化学品

(1

七.二二%-

プラスチック製品、イ

ンク'肥料'農薬など)'新製品

(一

二・九%-

はきもの'ベニヤ、玩

具など).に集中し

お-合計で七

二・一%を占める。つまり労働集約

的な'生産技術が単純で標準化され

た製品に集中している。これらは日

本が高賃金化から比較優位を好めた

か失

った産業である。開発途上ホス

ト諸国にとっては雇用拡大効果が大

きく'技術と経営を最初に修得する

学習効果も大きい。またその経済発

- 34-

Page 8: 総合商社と海外投資 : 経済開発のマーチャント URL Righthermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/16784/1/... · 2017-05-19 · - 総合商社と海外投資-投資母国とホスト国双方のったからである。日本のDFIは'またそれを先ど-した直接投資であ位パターンの相互の変化に即応した'果たしたのである。それは'比較優

展の初期需要を満たす'いわば必需

財である。

同じく表3に示されて

いる

よう

にへ現地側との合弁企業が圧倒的に

多い。タイプcte)、Dtbの合計

は八八・四%に達

する。つまり日本

の製造業海外投資は'商社を媒体と

した新形態を非常に多-採用してい

るのである。もう少し詳し-見ると'

新形煤は、先にあげた労働集約的標

準化商品においてよ-多-採用され

ていることがわかる。逆に、商社が

完全所有するタイプAt舟がきわめ

て少ないのは'商社自体は

生産をや

るスキルを十分に備えていないこと

を'反映している。商社はコング7

1タ-機能において'その能率を十

分に発揮しうるのである。

現地側との合弁形態が多いことと'

日本メーカーとタイアップしている

ことから当然に、商社の出資率はき

わめて低い。表4のように'商社の

出資率は

一〇~二九%のレンジに最

も多-

(四八%)属しており'次い

で'

一~九%のレンジが多い

(二七

%)のである。だが他方'推計がむ

ずかしいのだが、商社は出資額を上

- 総合商社と海外投資-

表 4 海外製遺業 合弁企業 -の商社 の 出資率 1980

出 資 率 諾 諾 姐 絡 忠 芸雲 量雷 鮒 5; 目線 ヨ コ

計1-9%10-2〇% ヰ0妻≡27!≡20書手22妻享23妻妾20享…10妻.11H11蔓国 国 頭 EZ]同 園 国 国 国 0327(47.9%)30-49% 21 16 17 !22! 3 8 7 1 5 10

0(14.7%)50% 0 6 6 1 1 001 116(2.3%)51-79% 3 2 2 3 1 2

1 3 2 19(2.8%)80-100%T1.a, 5 1 54 3 03 4 1 26(3,8%)(2)'(0)(3) (3) (0) (i)(1)(1)(ll)

02 3 04 100010( 1.5%)タ テ計 13198 103 99 60 59 43 44 45 682(100.

0%)*かソコ内は100%.tbで

Eの件数。表 5 九大 商社 の参加 す る資源 開

発 事業蒜豊 詔 旭 伊藤忠 詮 量要 兼松 5; 日綿

ヨ コ 計鉄 鉱 石 2 3 3 4 3 2 1 2 1 21(15.1%)非 鉄 金 属 7 3 6 3 10 3 0 0 0

32(23.0%)石 炭 4 4 2 03 00 0013(9.4%)石油.天然ガス 1 2 2 00 1 0

0 0 6(4.3%)石油.天然ガス混合 002

1 000 003(2.0%)農産 .畜産物 46 4 6 1 0 0 2 1 24(17,3%)漁 業

.加 工 4 5 3 6 0 1 02 1 22(15.8%)木 材

5 6 1 3 0 1 2 0018(12.9%)タ テ 計 27 29 23 23 17 8 3 6 ′3 139く

100.0%)表 6 資源開発 事業 につ いての商社

出資率 1980出 資 率 謡 諾 姐 伊藤忠 詰 星空 鮒 5; 日綿

ヨ コ 計1%以下 3 1 3 2 4 1 0 0 0 14

(10.1%)1-9% 3 3匹] 7 4 恒] o 匝] o

30(21.6%)10-29% 匡司匡司 5 匡】回 2 1 1 0 直垂二匹 ]30-49

% 5 3 2 3 1 1 1 1 1 18(12.9%)50%1 3 0000 0 0 0 4(2.8%)51-

79% 02 1001 0 1 0 5(3.6%)80-100%563,22010匡]21(15.1%)

n.a. 012

0000

003(2.2%)

タテ計272923231 78363139(100,0%)

回る多額の融資をしている。この出

(株式取得)と融資とで'

コング

7-タ-機能に伴う商権を獲得し'

コミッションを稼いでいるので

ある。

すなわち新形態の採用が'商社

の利

害とも

一致する。それゆえ日本

の高

「新形態DFI受容性向」と

'商

社の先導

・参加といぅこととは深

関連があると言えるのである。

表をかかげる紙幅の余裕がないが'

日本の製造業投資は開発途上諸国に

集中している。

アジア地域に五三

四%へラテン

アメ-カ地域に

一九

六%へそれ

にア7-カ

(四

・七%)

と中近東

(二・五%)を加えると実

に八〇

・二%

までが第三世界向けな

のである

もう

一つ'中小規模メーカーの

出が件数では半分を越え

るし、大企

業からの進出でも'現地で

の生産規

模は'現地の実情に即応す

るよう申

小規模である。雇用規模で

見ると'

100-二九九人のレンジ

に属する

ものが最も多いのである。

以上のよ

Page 9: 総合商社と海外投資 : 経済開発のマーチャント URL Righthermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/16784/1/... · 2017-05-19 · - 総合商社と海外投資-投資母国とホスト国双方のったからである。日本のDFIは'またそれを先ど-した直接投資であ位パターンの相互の変化に即応した'果たしたのである。それは'比較優

象地域'進出規模'それに商社の参

加という点に特色が見出せる。それ

は米欧のMNC型DFIの活動対象

と行動様式とは大きく相違Ltきわ

めて対称的であると断定できるので

(・40

。胃

資源開発投資

戦後日本の資源政策'オイルショ

ック

(一九七三年

一〇月)後の資源

外交などの問題から説きおこすこと

が必要かもしれないが、それは省略

する。総合商社は'資源産品の単な

る輸入エージェントからその開発エ

ージェントへと大き-前進した。

表5に見られるように'九大商社

がオーガナイザーとして'水先案内

役をつとめ若干の資本参加をしてい

る海外資源開発プロジェクトは

二二

九件に達する。

一九六〇年代の急速

な重化学工業化を支え

るために'単

品としては鉄鉱石

(一五

・一%)~

原料炭

(九

・四%)の開発輸入

へ集

中した。非鉄金属は全体として二三

%を占めるが、アルミニューム'銅'

ニッケルなどかな-多-の単品を含

んでいる。他方'石油、天然ガスの

開発

への商社の参加は比較的少ない。

この面では日本の開発エンジニアリ

ングが遅れているせいと開発途上国

の資源ナショナリズムによる制約が

ある。三菱商事によるブルネイでの

GNP開発のごとき成功例もある。

先の鉄鉱石'石炭はオーストラリア

と関連が深かった。

・漁

・林業関係の資源開発も多

-'合計で四六%を占める。これは

東南アジア諸国との関連が深い。

さきの表3と同様なタイプ別投資

割合の表が資源開発についても作成

できる。それによると'タイプDが

四四

二ハ%'タイプCが二三

・七%

を占め、商社本店と現地側の合弁が

圧倒的に多い。地域本部がやるタイ

プe)は七・11%、t)は三

二ハ%と少

いがこれらを合計すると七九

%

に達する。資渡開発でも商社参

新形態が'圧倒的に多く採用されて

いるのである。

資源開発プロジェクトへの商社の

出資率は製造業の場合よりもいっそ

ぅ少-'表、6に示すよ-に'

10-

二九%レンジに属するものがいちば

ん多

-

(三

一・七%)へ

一~九%レ

ンジのもの

(二

1・六%)がそれに

次いでいる。商社の関心は'資源産

品の生産自体から生ずる利益を配当

金という形で受取ることにあるので

はなく'資源産品の日本

への輸入を

取扱う商権の獲得にあるからである。

資源産品の日本のユーザーは'証券

出資することなく'融資買鉱とか長

期購買契約の方法で輸入調達を確保

した部分も多いoその撞契約の有利

な成立を商社が機敏に仲介し'商権

を獲得した。したが

ってこれら非出

資の新形態まで考慮に入れると、資

源の開発と安定輸入に果たした商社

の貢献は'きわめて大きいのである。

さらに商社は'以上のよ-な開発帝

人分とスポット買い

(二〇%ぐらい

か)とを巧妙に組合わせることによ

って'資源産品調達の量的確保と価

格の安定化にも貢献したのである。

ホスト国にとっては'臥本経済の

高度成長と商社の伸介とによって'

大量の需要が保証されることが'資

源開発への最大のインセンチイヴに

なったのである。また新形態によっ

て所有権がホスト国の手中にとどま

ることは'資源ナショナ-ズムの強

いホスト国によって歓迎されたはず

である。

もう

1つ'

「グループ投資」とい

-特色がある。

「インドネシア・ア

サハン・アルミプ

ロジェクト」とか

「イラン・パンダル

・ホメイニ石油

化学プ

ロジェクト

(IJPC)」と

かの

「大壊模

経済協力プ

ロジェク

ト」について代表的にあらわれてい

るのだが、三井系とか三菱系とか'

それぞれに属する関連企業が多数出

資に参加する。総合商社がオーガナ

イザーにな-'対象資源産品のユー

ザーはl亨っまでもな-'資本財'原

材料、技術さらに建設'プロジェク

+

・コンサルタントなどプロジェク

ト創業関係の企業'それに商社'銀

行'船会社'航空、保険会社など'

われわれの言うビジネス・インフラ

の担い手まで参加する0そのうえ'

海外経済

協力

基金

(OECF)'日

本輸出入銀行など政府系金融機関か

らの低利出資や融資'海外経済協力

事業団からの技術協力なども加わる

のである.愚称

「ナシnナル・プロ

ジェクト」といわれる右のようなも

のに政府系機関の参加

・協力が目立

つのであるが'そうでないも

っと小

規模のものでも'政府系機関も参加

するグループ投資が普通になってい

る。か

かるグループ投資は'第

一に'

旧財閥とか系列とかいわれる日本独

得の企業組織の反映であるぞれによ

って-スクの分散

・分担をはかるこ

- 36-

Page 10: 総合商社と海外投資 : 経済開発のマーチャント URL Righthermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/16784/1/... · 2017-05-19 · - 総合商社と海外投資-投資母国とホスト国双方のったからである。日本のDFIは'またそれを先ど-した直接投資であ位パターンの相互の変化に即応した'果たしたのである。それは'比較優

- 総合商社と海外投資-

と'各種企業はそれぞれ多少とも自

社の活動拡大に役立つ

(商社にとっ

て商権の拡大になるのと同様に)こ

と'或いは別のプロジェクトについ

て他のグループ企業から協力を得な

ければならないから

「おっきあい」

で参加するtなどいくつかの理由が

あろうOtLJが基本的には'こうした

「城外生産」それ自体は独立の会社

を設立してやるが'それをとりまく

コング

71タIの協力がなければ'

成果が結実しないとのビジネスの認

識に立脚していよう。商社が参加す

る三人四戯型投資が生まれたのと全

-同じ原理である.もう

1つ第二に、

資源産品の安定的確保'低廉調達と

いう日本のマクロ経済的必要事だと

いうモーティベイションが強-働い

ていることを反映している。個々の

参加企業の利益採算だけにとらわれ

ずに

(それを軽視するわけではもち

ろんないが)、グループ投資

する

であり、さらに政府系機関の後押し

さえ加わるのである。

石油メジャーに代表される

「MN

C型DFI」とは明らかに異なるO

この型

では第

一に'城外生産という

上流活動から'輸送'精製'販売の

下流活動まで'

一つの巨大企業の手

中にとり入れ'その全活動から独占

.的内部化利益の獲得をはかる。第二

に、世界各地で生産し世界中に販売

して企業利益を極大にするという私

企業動機が優先され'投資母国のマ

クロ経済的必要といった要EEIは基本

的な動機になっていないのである。

ビジネ

・インフラ投資

われわれは

「ビジネス・インフラ

(Lr))

ストラクチュア

なる概念を唱え出

し'それを重視している。第

一に'

潅概施設へ道路、港湾といった

「物

理的インフラ」が'第二に'教育'

医療'村づく-といった

「社会的イ

ンフラ」が'経済開発には必要だと

言われてきた。だが第三に'商社'

銀行、.陸海輸送会社'倉庫'保険な

どの

「ビジネス・インフラ」の整備

が'開発途上国でも必要になってき

た。単

に財を生産するだけではダメで

ある。先ず需要のあるへ消費者やユ

ーザーの好みに合-商品を'低廉コ

ストで生産できる工場をつ-らねば

ならない。さらに'生産された商品

を'いかに内列国に販売し'代金を

回収するかということこそ-つと大

切である。企業の資産をいかに運営

するか-重要であるOそういう機能

を果たすものを、

「生産」を創設し

その成果を結実させる

「ビジネス・

インフラ」と呼びたいのである。

総合商社は、既述の'製造業と資

源開発という主流の直接投資に参加

し'ビジネス・インフラ・サービス

を提供しているだけでなく'次のよ

うな広汎かつ多様なビジネス・イン

フラ・サービスを提供しており'ま

たそれを果たすために資本参加をし

た-'別会社を作っている。

川プラント輸出支援事業-建設作

'エンジニア-ング'コンサルテ

ィング-

。九大商社合計で三九の

海外合弁会社を設けている。これま

での分析と同様'三人四戯塾Dタイ

プが圧倒的に多-二五に達する。商

社自体の出資率はきわめて低い。

脚倉庫業

(穀物エレベーターや積

荷作業を含む)。九大商社合計で二

三の洛外倉庫会社をもっているO

川シッビングとチャーターリング.

社の伸介による有利かつ機敏な配

船が運送費を大いに節約しているこ

とは周知の事実である。日本の船会

社との提携は言うまでもないが'そ

の他に海外に-'九大商社合計で五

五の子会社や合弁会社を設立してい

る。3

:銀行'株式会社'保険業.これ

にも三六の合弁会社

(ただしうち四

つは完全所有の子会社)を海外に設

けている。日本の銀行の海外進出に

対する

「おつきあい出資」が多い。

持株会社の場合は商社のイニシァテ

ィヴによる現地側との合弁形態が多

い。保険業の場合は'保険代理店程

度のものである。

糾以上のほかへ現地日本企業向け

の印刷サービス業'航空機

・コンテ

・建設機械などのリース会社、金

コンサルタント、市場調査'海外

進出

へのサービス・エージェントな

どへも'商社が参加している。

糊最後に'ビジネス・インフラと

は言えないかもしれないが、二三の

不動産業、

一のホテル、二つのゴ

ルフコース、ならびにいくつかのレ

ストランにも商社は手を差しのペて

いる。

以上のように'総合商社の貿易以

外のサービスへの参加も全く広汎に

多様化されていると驚-の外はない。

総合商社は'貿易と海外投資を促進

し能率化

「ビジネス・イ

ンフ

・ビルダー」でもあるのだ。

- 37-

Page 11: 総合商社と海外投資 : 経済開発のマーチャント URL Righthermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/16784/1/... · 2017-05-19 · - 総合商社と海外投資-投資母国とホスト国双方のったからである。日本のDFIは'またそれを先ど-した直接投資であ位パターンの相互の変化に即応した'果たしたのである。それは'比較優

おわ-に-

海外直接投資の基本方向を求めて

海外直接投資は転換期に突入した。

商社は

「冬の時代」に苦悩している

と言われる。いな'日本経済さらに

世界経済全体が重大な曲-角に来て

いるのだ。

一体、今後の見通しはど

うなるのか。どうしたらよいのか。

もとより性急

・軽薄な診断は危険で

あり、慎しまねばならない。ただ以

上の分析から導かれる若手の基本方

向を書きとどめておきたい。

H

「商社

斜陽論」と

「商

」という議論は'自動車などの大

企業が生産だけでなくビジネス・イ

ンフラ機誰をも自社内にと-こんで'

米欧の

「MNC型DFI」に転身し

たことが'大きな原EEIであろ-.し

かし日本がやってきた

「新形態

DF

I」'と

-

「海外生産」と

「コン

グアークI機能」の企業間分業と協

力と

いうシステムは'能率的であ-~

いくたのメ-

ットをも

っている。商

社離れ産業の再考をうながしたい。

自動車など'アメ-カのごとき大市

への輸出と企業進出に関してはM

NC的企業内垂直統合が可能であろ

うが、それにも限度があるかも

っと

小さな市場

へ進出するためには、総

合商社とタイアップすることが不可.

欠であ-'よ-能率的であろう.

31過去数

カ年

「冬の時代」であっ

たのは何-商社に限られない。素材

産業をはじめ'ご-

一部のハイテク

部門を例外として、日本産業のすべ

てが

「冬の時代」を苦しんできたの

だ。今や春が訪れつつあるか'既に

「春の時代」に入ったのだC総合商

社は常に創造的であり'柔軟性に富

み'讃力に満ちている.必ずや新し

い活動方向を開拓してい-であろう。

白総合商社の有望な活動分野とし

〕「れエ

てはへ

一つは三国間貿易の拡大があ

る。二つには'工業化がここまで世

界的に普及し'さらにもう

一段と進

むと'資源の稀少性と'資源開発の

重要性はいっそう高まるであろ-0

三つには'

ハイテク部門をどう商社

がこなすかはむつかしい問題だが、

もうしばらくすれば技術と製品が標

準化する時期が来よう。その時に大

量取教いができる準備を現段階では

ととのえるべきであろ-。最後に'

細かなテイストの差にミートする'

中小企業の多塩小量製品が重要性を

増してこよう。それらについてはこ

れまでの過当競争による低

コミッシ

ョンでなく'そのマージンを高くし

てよいから'商社がも

つとよくめん

どうを見るべきであろ-。

紳海外直接投資は戦後これまでに

かな-世界中に行きわた-、飽和の

感さえ出てきた。海外進出企業の撤

退が増えてきてさえいる。

米欧の

「MNC型DFI」の有望

な投資対象

は、資源開発でも製造業

分野でも少-なってきたLtMNC

型行動は開発途上国では歓迎

されな

くな

ってきている。これにくらペ'

日本の

「新形態D

FI」は対象開発

途上地域を広げ'対象業種を高度化

することによ

って、なお

一段と増加

させうる余地が大きいLtそれはホ

スト国から歓迎されもしよう。

㈲開発途上国としては

「生産」能

力はかなり構

ってきた。それを支え

る商社'銀行、倉庫'運輸へ保険な

どのビジネス

・インフラを拡充整備

することが緊急に必要な段階に来て

いる。そういう整備を日本の企業へ

政府'それにADB

(アジア開発銀

行)など国際

機関が1体とな

って'

助ける必要があろう。

(1)小島清

『多国籍企業の直鐘投資』

ダイヤモンド社、初版

一九七七'増補

新版

l九八T。

DirectFore山gnlnve・

stment:AJapaneseModetofMulti・

nationalBusinessOperatio.ns.Croon

Helm.London.)978.

(2)

この

言葉

は次

に用いられた.

TerutomoO2:aWa.(.TheRoleofTra・

n

snationa]Corporations

intheEco・

nomic

DevetopmentoftheESCAP

R

egion;SomeAvai)ableEvidence

fromRecentExperience'.,ESCAPJ

UNCTC

Pubtication

SeriesB.Not

2.Bangkok.1982.p.821

(

3

)

宗迫氏

は、その著

『糸合有社

-

情報戦略と全体像』TBSブリタ

ニカ

'一九八三、九八貢において'企

業間の契約的統合

(contractintegral

tion)と表現され

ている。われわれ

同じ意味であろう。

(4)

次を参殿.小島清

「対開発途上国

投資の新形態」輸銀海外投資研究所報'

1九八1・一〇。同'「海外直接投資

〝新形闇″の進展」同所報'八二・九。

(5)

Kiyos

hiKojima.JFDevetopment

OrientedDirectFore山gnlnvestment

andtheRoteofADB.一.AsianDevelo・

pmentBank.Economi

cOfhceRe・

portSeries,Report.No14.Aprilt982,

「発展志向的海外直接投資

を提

案す

る」世界蓮済評論'一九八二・六。

(6)

日産ビジネス編

『商社・冬の時代l

日本経済新聞社'一九八三。

(

7)

日本貿易会

『わが国における三国

間貿易の1考察』

一九八三・五。

(小溝氏の葉音略歴は57巧へつづく)

- 38-

Page 12: 総合商社と海外投資 : 経済開発のマーチャント URL Righthermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/16784/1/... · 2017-05-19 · - 総合商社と海外投資-投資母国とホスト国双方のったからである。日本のDFIは'またそれを先ど-した直接投資であ位パターンの相互の変化に即応した'果たしたのである。それは'比較優

(38巧からつづく)

おざOてるとも

葦昔時歴-

小港輝智

l九三五

横浜市に生まれる。

一九五八

東京外国語大学卒業。

1九六二

コロンビア大学経営学修

士。

1九六六

コロンビア大学経済学博

士。

現在

コロラド州立大学経済学部教

授。

マサチューセッツ工科大学'政策

オールタナティブ研究所招

へい研

究員

(一九七五~七六)

サンプリッヂ大学客員学者

(7九

八二~八三)。

OECD.UNITAR.

E

SCAP.UN・

CTADなどにコンサ

ルタ

ント。

主な

JaLlan.S

TecJmoEogical

ChalleJ1gelo

the

West.

]951・

)974(MET

Press.1974)

M

u

liinalionalismJ

A

Jap

anease

StyterPrincetonUnivesityPress.

79797

- 57-