社会福祉施設の災害対策 - Ehime Prefecture...改:土砂災害防止法 ・ 周囲...

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社会福祉施設の災害対策 ~非常災害対策計画 ( 避難確保計画)の着眼点~ 平成30年度 愛媛県社会福祉施設管理者研修会 愛媛県社会福祉施設管理者研修会 NPO法人兵庫県防災士会顧問(防災士) 認定NPO法人はりま総合福祉評価センター理事(主任評価者)

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社会福祉施設の災害対策~非常災害対策計画(避難確保計画)の着眼点~

平成30年度

愛媛県社会福祉施設管理者研修会

愛媛県社会福祉施設管理者研修会

寺 岡 芳 孝 NPO法人兵庫県防災士会顧問(防災士)

認定NPO法人はりま総合福祉評価センター理事(主任評価者)

kutsuna-hideo
資料3
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愛媛県社会福祉施設管理者研修会

本日の内容

災害とは 災害因(ハザード)・社会のぜい弱性(デイザスター)

社会福祉施設の防災責務(義務) 背景と法改正(水防法・土砂災害防止法など)

非常災害対策計画と水防法など (避難確保計画)

非常災害対策計画の着眼点 各施設等の実情に応じた、実効性のある計画策定

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ゲリラ豪雨

火山の噴火 津波

土砂崩れ 地震

台風 災害因(ハザード)

豪雨(洪水) 暴風(台風) 崖崩れ(地滑り)

地震

津波

噴火など

改正:災害対策基本法・定義より

愛媛県社会福祉施設管理者研修会

災害とは・・

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【改正:災害対策基本法】 (災害の定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一 災害 暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土

石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう。

改正:災害対策基本法(平成25年6月21施行)より

追記!

災害因!

愛媛県社会福祉施設管理者研修会

災害とは・・

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社会のぜい弱性

(ディザスター)

地域の災害リスク (立地条件・周辺環境等)

個人のぜい弱性 (災害時要援護者) (要配慮者)

避難行動要支援者

要配慮者

愛媛県社会福祉施設管理者研修会

災害とは・・

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災害因(ハザード)

豪雨(洪水) 暴風(台風) 崖崩れ(地滑り)

地震

津波

噴火など

社会のぜい弱性

(ディザスター)

地域の災害リスク (立地条件・周辺環境)

個人のぜい弱性 (要配慮者)

災害の

発生!

災害因(ハザード)とぜい弱性が

重なり合って被害が生じる。

平成28年8月台風10号に伴う豪雨災害

岩手県岩泉町の認知症グループホーム入居者9名死亡

災害想定 事前対策 被害軽減

非常災害対策計画の策定及び避難訓練

愛媛県社会福祉施設管理者研修会

災害とは・・

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震災は (地震・津波など)

気象災害は (洪水・内水・高潮

土砂災害など)

地震は精度の高い予知は

きわめて困難!

大雨や台風などは

ある程度予測ができる!

非常災害対策計画には、これらの要素に配慮が必要!

【災害の特徴と避難の考え方(事例)】

【大規模地震対策特別措置法(大震法)】の見直し】

【新たなステージに対応した防災気象情報の活用】

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自然災害は 予知(予測)ができるか?

いつ・・どこで・・どんな規模で・・?

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地 震 土砂災害 洪水(内水)

特徴 突然襲ってくるので、精度の高い予知 (予測)は困難

事前避難は困難

降雨を起因として、突発的に発生する。(精度の高い予測は困難) 「土砂災害警戒情報」や

「避難準備・高齢者等避難開始」等の発令で

事前避難は可能

通常、気象情報や「避難準備・高齢者等避難開始」等の発令で発生が予測できる。

事前避難は可能

避 難 の考え方 ・救助が必要かどうか

安否確認が急がれる。

・施設が危険な場合、施設に被害がない場合でもライフラインの不通等で通常の生活が送れない場合は指定避難所等へ避難する。

・指定避難所への避難が危険な場合は「近隣の安全な建物」へ避難や「屋内安全確保」として、より安全な部屋への移動をする。

改:土砂災害防止法

・周囲が浸水するなど、既に指定避難所への避難が困難な場合は「建物の2階」など自分でできる最低限の命を守る行動を選択する必要がある。

改:災害対策基本法

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災害の特徴と避難の考え方(事例)

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(運営規定) *介護保険法(運営に関する基準)より

・非常災害対策

第13条 非常災害対策に備えて、消防計画、風水害、地震等に対処する計画を

作成し、防火管理者または火気・消防等について責任者を定め、年2回定期的に

避難、救出その 他必要な訓練を行う。

介護保険法など

消防法 災害対策基本法

運営基準

行政指導

消防計画 避難確保計画 地区防災計画

避難確保計画の義務化(改:水防法 改:土砂災害防止法)

非常災害対策計画の策定及び避難訓練

厚労省の通知

水防法 土砂災害防止法

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社会福祉施設の防災責務(義務)

・社会福祉施設の防災対策では

消防法に基づく、消防計画の策定や消防訓練が定期的に実施され、消防部局の立ち入りや査察も行われている。しかし自然災害等に対する非常災害対策計画や避難訓練等の取り組みには至っていないのが実態である。

(リスクマネジメントのぜい弱性)

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(1)施設の立地条件、周辺環境

(2)災害発生時の組織体制

(3)災害発生時の緊急連絡網、通信手段

(4)施設の利用者に関する情報把握

(5)災害に関する情報の入手方法

(6)災害警戒体制の確立と避難を開始する時

期、判断基準

(7)避難行動の確認

(8)物資の備蓄、施設・設備の定期点検

(9)避難訓練等の実施、検証

(10)地域の関係機関や住民等との協力体制

1.計画の目的

2.計画の適用範囲

3.防災体制・・・ 4.情報収集及び伝達・・・ 5.避難の誘導・・・ 6.施設の整備・・・ 7.防災教育及び訓練・・・ 8.自衛水防組織の業務・・・

(非常災害対策計画の項目)

非常災害対策計画と避難確保計画

(厚労省通知:愛媛県ガイドライン)

※ 策定すべき非常災害対策計画の内容について

水害・土砂災害を含む地域の実情に応じた非常災害対策計画が策定されているか。

・【避難確保計画】は新たに作成してもよく、また、既存の【非常災害対策計画】等に必要な項目を追加して作成してもかまいません。 *(国土交通省手引き)より

(避難確保計画の項目)

(改:水防法:改:土砂災害防止法)

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*義務付けの対象は、市町村地域防災計画に、その名称及び所在地が定められている施設です。

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非常災害対策計画(避難確保計画)の着眼点

(1)施設の立地条件、周辺環境

施設の立地条件や周辺で想定される自然災害について、その被害の程度や影響範囲等を確認しているか。 洪水ハザードマップ等で地域の危険性を知る ・洪水ハザードマップ(浸水域・浸水深及び災害種別避難所) ・内水ハザードマップ(浸水域・浸水深及び災害種別避難所) ・高潮ハザードマップ(浸水域・浸水深及び災害種別避難所)

土砂災害ハザードマップで地域の危険性を知る ・警戒区域・特別警戒区域・危険箇所及び災害種別避難所

施設の防災マップの作成 ・地形・環境・避難所等(複数) ・避難経路(複数)・関係機関等の位置図

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社会福祉施設などにおける非常災害対策計画の点検・見直しガイドライン(愛媛県)

【水防法や土砂災害防止法に基づく法的根拠を明記】

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■ 想定すべき主な風水害(洪水・高潮) (1)河川(八家川)の洪水による浸水

台風や集中豪雨で河川が氾濫して、道路が冠水し施設が浸水することが想定さ

れます。まれに、それに伴う停電等に見舞われることもありえます。

*氾濫による浸水想定では、施設周辺で1m未満となっている。(図表2参照) (2)高潮による浸水

大きな台風に見舞われた時は、潮位が高くなり海水が河川を逆流し氾濫すること

で、八家川流域が浸水し施設が孤立する恐れがあります。

さらに、電気や水道、ガス等が使えなくなることも想定されます。

*高潮による浸水想定では、施設周辺で2m以上となっている。(図表3参照)

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非常災害(風水害)対策計画(事例) 1、計画の目的

水防法第15条の3第1項に基づく洪水時の円滑かつ迅速な避難の確保を図ることを目的とする。(土砂災害防止法第8条の2に基づく土砂災害時の・・・・目的とする。)

2、計画の適用範囲

この計画は、本施設に勤務又は利用する全ての者に適用するものとする。

3、施設管理者の責務

本施設の総括責任者として非常災害(風水害)による被害の軽減について、全ての責任を有するとともに、本計画に基づき職員を指揮し、利用者等の人命を確保する。

社会福祉施設などにおける非常災害(風水害)対策計画の作成例(愛媛県)

4、施設の立地条件、周辺環境

二級河川の八家川が施設の近隣を経由し、姫路市木場にて播磨灘に注いでいる。

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非常災害対策計画(避難確保計画)の着眼点

(2) 災害発生時の組織体制

災害発生時に迅速かつ確実に組織体制を整備するため、事業所・施設の規模や形態、利用者の心身の状況に応じた職員の役割分担及び必要人員を事前に検討し、明確にして職員に周知しているか。 災害対策本部の班編制(代行者等) ・役割分担(任務)の明確化

*ガイドラインP3【役割分担表の記載例】参照

職員参集基準の作成と周知方法 ・夜間等に災害発生時の参集基準(事例) *ガイドラインP3【職員参集基準の記載例】参照

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社会福祉施設などにおける非常災害対策計画の点検・見直しガイドライン(愛媛県)

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参集体制

行動基準 参集範囲

連絡体制

警戒参集 前兆現象

・施設のエリア(地域)に、「大雨・洪水・高潮警報」が気象庁より発表された場合

・施設管理者 ・各班責任者 ・あらかじめ定めた職 員

・自主(自動)参集 ・メール等により、参集の可否に関わらず連絡する。

非常参集 災害対策本部体制

・施設のエリア(地域)に行政より「避難準備・高齢者等避難開始」「避難勧告」「避難指示(緊急)」等が発令された場合

・「土砂災害警戒情報」が発表された場合

・全員

・自主(自動)参集 ・メール等により、参集の可否に関わらず連絡する。

警戒参集(気象警報等)、非常参集(避難準備情報等)での参集範囲や連絡方法(自主・自動等)を定め、迅速に対応するための体制を整備しておく。

また夜間の当直者(責任者)が、河川の氾濫の前兆現象や停電等を確認した際

には、迅速に対応するための連絡方法等の体制を整備しておく。

*参集しなくてもよい場合

「職員や家族が被災したり、参集に危険が伴うような状況の場合は強要しない。」

夜間等に災害発生時の参集基準(事例)

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非常災害対策計画(避難確保計画)の着眼点

(3)災害発生時の緊急連絡網、通信手段

避難に関する情報・指示等が市町等関係機関及び職員間で迅速かつ確実に伝達されるよう、連絡体制を具体的に整備しているか。なお、停電により電話やメール等の通常の連絡手段が通じない場合には、携帯電話を活用するなど、緊急連絡の方法についても検討しているか。 関係機関の緊急連絡先一覧

*ガイドラインP4【緊急連絡先一覧の記載例】参照

職員の緊急連絡網と連絡方法 ・緊急時・夜間の伝達方法(系統図)

・「職員参集基準」に準じ

利用者家族の緊急連絡先一覧表 ・通所の場合(引き取り支援ルールの整備)

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社会福祉施設などにおける非常災害対策計画の点検・見直しガイドライン(愛媛県)

取扱責任者を明記

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非常災害対策計画(避難確保計画)の着眼点

(4) 施設の利用者に関する情報把握

施設の利用者を安全かつ迅速に避難させるため、利用者個々の特性を十分に把握した上で、利用者の氏名、生年月日、服用薬、家族の連絡先などの利用者情報を一覧にして整理し、非常時には持ち出し可能な状態で保管しているか。 利用者台帳等(緊急時情報一覧表)

*ガイドラインP5【利用者情報一覧の記載例】参照

非常持ち出し重要書類 ・個人情報保護の観点から、保管方法や持ち出しルール化

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社会福祉施設などにおける非常災害対策計画の点検・見直しガイドライン(愛媛県)

取扱責任者を明記

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非常災害対策計画(避難確保計画)の着眼点

(5)災害に関する情報の入手方法

気象情報や避難情報など必要な情報を漏れなく迅速に入手するため、情報収集すべき項目を整理し、その入手先や担当者、具体的な入手方法を確認しているか。特に、停電時においても有効な情報収集・通信手段を準備しているか。 気象庁HP(「新たなステージ」に対応した防災気象情報) ・最新の防災気象情報の収集につとめる

愛媛県防災メール・ひめシェルター等の登録 *資料参照

・ 緊急気象情報(地震・津波、気象注警報、土砂災害警戒情報等) ・ 緊急防災情報(避難勧告、避難指示(緊急)、避難所開設等)

洪水(氾濫)・土砂災害等の前兆現象の確認 ・避難の判断基準(自主避難・行政避難発令等)

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社会福祉施設などにおける非常災害対策計画の点検・見直しガイドライン(愛媛県)

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「新たなステージ」に対応した防災気象情報

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(気象庁HPより) 「新たなステージ」に対応した防災気象情報の改善

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知りたい項目をクリック

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気象庁

「新たなステージ」に対応した防災気象情報の改善 (気象庁HPより)

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非常災害対策計画(避難確保計画)の着眼点

(6) 災害警戒体制の確立と避難を開始する時期、

判断基準

災害の危険性の高まりに応じて、情報収集や避難準備、職員配備など災害警戒体制を強化し、市町から「避難準備・高齢者等避難開始」等が発令された場合は避難を開始するなど適切に行動することとしているか。また、市町からの避難情報が発令される前であっても、周辺の状況から災害の前兆現象を察知した場合には直ちに自主的に避難できるよう、避難を開始する時期や判断基準を定めているか。 事前対策(防災気象情報の把握と職員参集等) ・避難準備(防災行動計画・タイムライン)

避難判断基準(自主避難・市町避難発令等) ・自主判断、自主避難できるか・・総合判断(施設管理者)

愛媛県社会福祉施設管理者研修会

社会福祉施設などにおける非常災害対策計画の点検・見直しガイドライン(愛媛県)

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流れ

避難準備・高齢者等避難開始

避難勧告

避難指示

(緊急)

警戒参集

非常参集

自主判断・自主避難

(気象庁HPより)

防災気象情報とタイムライン(行動計画) <事例>

愛媛県社会福祉施設管理者研修会

前兆

現象

避難行動開始

防災気象

情報の収集

「新たなステージ」に対応した防災気象情報の改善

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<河川の氾濫の前兆現象>

・短時間で危険水位を超え、強い降雨が続く。

・堤防の川側が崩れ始めている。

・堤防の側面から水が漏れだしている。

・堤防にひび割れが生じている。

・堤防近くの地盤から水が噴き出ている。

①自主避難

次に示す河川の氾濫の前兆現象や土砂災害の前兆現象を確認した際には、行政等からの連絡を待つことなく直ちに避難誘導を開始する。

施設管理者(本部長)が判断することになるが、不在等の場合は、代行者又はその場における責任者「事務長(副本部長)や各班長等」は判断を行うものとする。

②市町等からの避難発令に基づく対応

タイムライン(事前防災行動計画)に基き、避難準備・高齢者等避難開始、避難勧告、避難指示(緊急)等を受けて、施設管理者が対応(避難指示等)を行う。

<土砂災害の前兆現象>

・ がけの表面に水が流れ出す。

・ がけから水が噴き出す。

・ 小石がパラパラと落ちる。

・ がけからの水が濁りだす。

・ がけの樹木が傾く。

・ 樹木の根の切れる音がする。

・ 樹木の倒れる音がする。

・ がけに割れ目が見える。

・ 斜面がふくらみだす。

・ 地鳴りがする。

避難の判断基準(自主避難・行政避難発令等)

<事例> 愛媛県社会福祉施設管理者研修会

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非常災害対策計画(避難確保計画)の着眼点

(7) 避難行動の確認

安全かつ確実な避難を実施するため、災害の種類や規模、施設の立地条件や周辺環境、施設種別や規模、利用者の状況などを考慮し、各施設等の実情に応じて予め避難場所、避難経路及び避難方法を設定し、職員と利用者がその認識を共有しているか。 施設内避難(2階以上・避難経路図等) ・エレベーターを使える場合

・使えない場合

施設外避難(災害種別避難所・複数経路・距離・時間等) ・自動車を用いる場合

・車椅子、ストレッチャー等による場合

・徒歩介助等

愛媛県社会福祉施設管理者研修会

社会福祉施設などにおける非常災害対策計画の点検・見直しガイドライン(愛媛県)

【災害の特徴と避難の考え方】

*洪水(内水)・高潮の場合

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土砂災害 洪水(内水)

特 徴 降雨を起因として、突発的に土砂災害が発生する。

(精度の高い予測は困難) 「土砂災害警戒情報」や「避難準備・高齢者等避難開始」等発令で災害発生が予測できる。

事前避難は可能

通常、気象情報・警報級の可能性等の情報収集や「避難準備・高齢者等避難開始」等の発令で災害発生が予測できる。

事前避難は可能。

避難の

考え方 ・指定避難所への避難が危険な場合は「近隣の安全な建物」への避難や「屋内安全確保」として、より安全な部屋への移動をする。

改:土砂災害防止法

周囲が浸水するなど、既に安全な場所への避難が困難な場合は「建物の2階」など自分でできる最低限の命を守る行動を選択する必要がある。

改:災害対策基本法

愛媛県社会福祉施設管理者研修会

災害の特徴と避難の考え方(事例)

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非常災害対策計画(避難確保計画)の着眼点

(8)物資の備蓄、施設・設備の定期点検

避難生活に備えて生活必需品を備蓄するとともに、利用者情報一覧など非常時持ち出し品リストを作成し、利用者の特性を踏まえた対応に努めるほか、施設の耐震性・耐火性を確保するとともに定期的に防災設備を点検しているか。 非常用備蓄品リスト(最低3日分) *ガイドラインP8【備蓄品リストの記載例】参照

非常持ち出し品リスト(緊急時情報一覧表等) 定期的な防災設備等の点検 ・法定点検と自主安全点検(家具等の転倒防止)

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社会福祉施設などにおける非常災害対策計画の点検・見直しガイドライン(愛媛県)

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非常災害対策計画(避難確保計画)の着眼点

(9)避難訓練等の実施、検証

緊急時に安全かつ確実に避難を実現するため、職員が各自の役割を理解し迅速に行動できるようにするとともに、施設利用者の避難行動の習熟に向けて、避難訓練や防災教育を実施しているか。 洪水(内水)・土砂災害時の避難誘導訓練(夜間想定等) ・地域の参加、連携、協力の呼びかけ

・職員参集訓練(緊急連絡訓練等)

・訓練実施後の検証と計画の見直し

防災教育、勉強会(非常災害対策計画等) ・災害に関する基礎知識

・図上訓練(シュミレーション訓練等) ・応急手当に関する講習会

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社会福祉施設などにおける非常災害対策計画の点検・見直しガイドライン(愛媛県)

【避難準備・高齢者等避難開始】の周知・共有

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避難情報が発令されていなくても、身の危険を感じる場合は避難を開始してください。

※平成28年12月に避難情報の名称が下記の通り変更されました。

避難準備・高齢者等避難開始等の発令

内閣府:防災情報ページ

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対象者 合 理 的 配 慮 事 項 ねたきり高齢者

肢体不自由者 ・自力で行動することができないため、避難時は車いす、ストレッチャー等の移動用具の使用が望ましいが、確保できない場合には、担架やリヤカーの使用、おんぶ隊などにより避難する。

認知症高齢者 ・自力で避難することが困難な場合には、車いすやストレッチャー等の移動用具等を確保することが望ましいが、移動用具等が確保できない場合には、担架やリヤカーの使用、おんぶ隊などにより避難する。

おんぶ隊 おんぶ隊

シーツで・・ 車いす ストレッチャー 特別養護老人ホーム提供

救助・避難支援時の「合理的配慮事項(例)」

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徒歩介助

*障害者差別解消法(2016年4月施行) 資料参照

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参集と事前ミーティング 班分け(役割分担)

環境設定班

洪水(内水)時の施設内避難訓練(例)

愛媛県社会福祉施設管理者研修会

「職員に伝えます。只今大雨の為、兵庫県南西部に「避難準備・高齢者等避難開始」が発令されました。当事業所の近隣にある八家川の氾濫の可能性もあります。

今後の対策をお伝えしたいので医務職員・また各ユニットから1名

以上、玄関フロアに速やかにお集まりください。入居者の皆さま方はそのままユニット内で待機していただきますようお願いいたします。」 特別養護老人ホーム提供

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避難誘導班

・体調不良者や寝たきりの状態の方については、各階にあるストレッチャーを使用し移動。

・車いすの方の移動では、接触事故のないよう手足の位置に留意しながら行う。

・どちらも落ち着いて対応し、入所者等が不安がらないよう声掛けを行う。

1階エレベーター前で1人待機し、歩行可能者から誘導するよう指示。

2階エレベーター前でもスムーズにフロアに移動できるよう待機し指示する。

2階及び3階の上層階に1階の入所者や近隣の事業所の利用者を避難

誘導する前に、環境を設定する。寝たきりや体調不良者等はストレッチャーで移動。スクリーン等を活用しプライバシー保護に留意する。

避難誘導班

愛媛県社会福祉施設管理者研修会

特別養護老人ホーム提供

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避難終了(安全点検)

車いすの運搬方法 階段で運ぶシュミレーション

・各班責任者より訓練での問題点や改善点について報告します。

・今後の体制や訓練のあり方についても話し合います。

今回はエレベーターを使用しての避難誘導でしたが、停電等によりエレベーターが使えない場合を想定して車いすの入所者を階段で運ぶシュミレーションを行いました。

・皆さん無事に避難されました。

・防災士さんより、災害についてのミニ講座がありました。

愛媛県社会福祉施設管理者研修会

特別養護老人ホーム提供

避難訓練振り返り

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非常災害対策計画(避難確保計画)の着眼点

(10) 地域の関係機関や住民等との協力体制

災害発生時には様々な支援が必要となり、事業所・施設単独では対応が困難な事態も想定されるため、市町、消防等の関係機関や近隣病院、他の社会福祉施設等と連携をとり、いざという時に協力が得られる体制を構築するほか、近隣住民の協力を得られるよう、日頃から地域との交流を積極的に図り、良好な関係を保っているか。 地域自治会組織等への加入 ・地域の防災訓練への参加等

施設運営推進会議の開催(協力関係の構築) ・地域関係者の参加(自治会、民生、包括、家族代表、近隣施設等)

福祉避難所(地域の安心拠点)への協力(施設の使命) ・地域住民との良好な関係(災害時の協力関係の構築)

愛媛県社会福祉施設管理者研修会

社会福祉施設などにおける非常災害対策計画の点検・見直しガイドライン(愛媛県)

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<おわりに> 管理者の責務(PDCAサイクル)

各施設等の実情に応じた、実効性のある非常災害対策計画(避難確保計画)の策定

計画に基づいた職員研修や避難訓練の実施(施設利用者の避難行動の習熟)

避難訓練等の検証(改善・実効性の検討)

各施設等の実情に応じた、実効性のある非常災害対策計画(避難確保計画)の変更

*非常災害対策計画(避難確保計画)を変更した時は、市町村長へ報告する

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*【管理者の責務】 従業者及び業務の管理を、一元的に行い、従業者に規定を遵守させるために必要な指揮命令を行う。(介護保険法など)

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出典:厚労省:国交省・気象庁・愛媛県・兵庫県・社会福祉施設等

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