大学生における生活習慣の経時的変化が メンタルヘルスに与...

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題目 T h e e f f e c t s o f c o n t i n u o u s l y c h a n g i n g l i f e s t y l e o n m e n t a l h e a l t h o f t h e c o l l e g e s t u d e n t s T a k a s h i S U Z U K I , S u s u m u S A T O , T a t s u y a K A W A S H I R I , M a s a f u m i Y A M A G U C H I 睡眠、食事、運動などの生活習慣の乱れは、大学生の学業全般や生活面に様々な影 響を及ぼすことは周知の事実である。入学当時は慎重に過ごしていた者も、時間の経 過に伴い自己実現に向けて挑戦したりする。また、入学当時は挑戦していた者も、時 間の経過に伴いモチベーションが低下し目標の喪失などが起こったりする。このよう に入学時の生活習慣は、環境への慣れに伴い変化をしていく。 本研究では、新入生に対し、生活習慣及びメンタルヘルスに関する調査を 2 回(入 学当初および 1 年終了時)実施し、追跡が可能であった 1,411 名を対象に、その経時 的変化がメンタルヘルスに与える影響を検討した。 キーワード:生活習慣、メンタルヘルス、経時的変化 It is common knowledge that an irregular sleeping pattern, unhealthy diet or lack of exercise, greatly impacts on the academic and daily lives of college students. Even those who begin college life with a cautious attitude can find themselves trying new things and discovering how to express themselves, as time goes on. On the other hand, sometimes those who start their college life with a more industrious attitude can become demotivated, even losing sight of their goals completely. It seems that as students become more familiar with the college environment, their habits begin to change. For this study, the daily habits and mental health of 1,411 newly- enrolled college students were examined twice (once around when they enrolled; once again approximately a year later), and the influences on their mental health as time passed were considered. Keywords: life style, mental health, time-dependent change 現代社会はストレスの時代と言われており、学校ストレスは、不登校や心身症などの不適応状態の原 因やいじめなどの問題行動を引き起こす原因となっている 1) 。また、日本における自殺者の総数が年間 3 万人を超える状態が続いていることから、職場でのうつ病やその予備軍に相当する労働者の増加が懸 念され、メンタルヘルス対策への関心は高まっている 2) 。大学生は、小学校から高等学校までのクラス のように、結びつきの強い集団に所属することなく大学生活を開始する。入学と同時に単身生活を開始 101 大学生における生活習慣の経時的変化がメンタルヘルスに与える影響 KIT Progress 24

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論文 KIT Progress №24

題目

大学生における生活習慣の経時的変化が メンタルヘルスに与える影響

The effects of continuously changing lifestyle on mental health of the college students

鈴木貴士,佐藤 進,川尻達也,山口真史

Takashi SUZUKI,Susumu SATO,Tatsuya KAWASHIRI, Masafumi YAMAGUCHI

睡眠、食事、運動などの生活習慣の乱れは、大学生の学業全般や生活面に様々な影

響を及ぼすことは周知の事実である。入学当時は慎重に過ごしていた者も、時間の経

過に伴い自己実現に向けて挑戦したりする。また、入学当時は挑戦していた者も、時

間の経過に伴いモチベーションが低下し目標の喪失などが起こったりする。このよう

に入学時の生活習慣は、環境への慣れに伴い変化をしていく。 本研究では、新入生に対し、生活習慣及びメンタルヘルスに関する調査を 2 回(入

学当初および 1 年終了時)実施し、追跡が可能であった 1,411 名を対象に、その経時

的変化がメンタルヘルスに与える影響を検討した。 キーワード:生活習慣、メンタルヘルス、経時的変化

It is common knowledge that an irregular sleeping pattern, unhealthy

diet or lack of exercise, greatly impacts on the academic and daily lives of college students. Even those who begin college life with a cautious attitude can find themselves trying new things and discovering how to express themselves, as time goes on. On the other hand, sometimes those who start their college life with a more industrious attitude can become demotivated, even losing sight of their goals completely. It seems that as students become more familiar with the college environment, their habits begin to change.

For this study, the daily habits and mental health of 1,411 newly-enrolled college students were examined twice (once around when they enrolled; once again approximately a year later), and the influences on their mental health as time passed were considered. Keywords: life style, mental health, time-dependent change

1.はじめに

現代社会はストレスの時代と言われており、学校ストレスは、不登校や心身症などの不適応状態の原

因やいじめなどの問題行動を引き起こす原因となっている 1)。また、日本における自殺者の総数が年間

3 万人を超える状態が続いていることから、職場でのうつ病やその予備軍に相当する労働者の増加が懸

念され、メンタルヘルス対策への関心は高まっている 2)。大学生は、小学校から高等学校までのクラス

のように、結びつきの強い集団に所属することなく大学生活を開始する。入学と同時に単身生活を開始

101大学生における生活習慣の経時的変化がメンタルヘルスに与える影響

KIT Progress №24

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題目

する者も多く、入学後は就職という大きな問題と向き合わなければならないなど、大学生はストレスフ

ルな出来事に数多く直面する 3)。ライフサイクル上、青年期後期に位置づけられる大学生の時期(学生

期)は、身体健康面では比較的問題の少ない時期である反面、精神健康面では、うつ、引きこもり、摂

食障害、自殺などさまざまな問題が起こりやすい時期と言われている。基本的な生活習慣は、大学生活

を支える基盤であり、睡眠・食事・運動などの基本的生活習慣の乱れは、メンタルヘルスの悪化に伴い、

大学生活や日常生活にさまざまな影響を及ぼす。大学生においては就床時間および起床時間が顕著に後

退することが報告されている 4)。またひとり暮らし等で自由な環境にある学生ほど夜型傾向が強いとの

指摘もなされている 5)。

我々は、大学 1年生を対象に生活習慣とメンタルヘルスに関する調査を実施し、基本的生活習慣(朝

食習慣・運動習慣)が定着している者、友人とコミュニケーションのある者、active/communicativeな

活動(気分転換活動や積極的に取り組む活動)を他者と関わりを持って行なっている者、平日や休日の

あまり遅くない時間帯にアルバイトをしている者、インターネット依存度の低い者、学生生活における

メンタルヘルスが良好で、日常生活におけるストレス度、疲労度、うつ度が低い者、ストレスに対し

positive対処行動を取ることができる者、睡眠習慣(起床時間・就床時間・睡眠時間)が規則正しい(0

時台までには就床、7時前後には起床、5時間以上の睡眠時間を確保している)者のメンタルヘルスが、

良好な傾向にあることを明らかにした 6-7)。しかし、入学当時の生活習慣やメンタルヘルス特性が 1年終

了時にはどのように変化するのかなどについては不透明である。

上記を踏まえ、本研究では、基本的な生活習慣(睡眠習慣、朝食習慣、運動習慣、アルバイト実施状

況)に焦点をあて、それらの経時的変化が、学生生活や日常生活におけるメンタルヘルスや疲労自覚症

状、インターネット依存度の変化に対してどのような関連性を持つのかを明らかにすることを目的とす

る。本研究の成果は、今後の修学指導に対する有効な知見を提供しうると考えられる。

2.研究方法

2.1 調査対象および調査方法

本学の平成 25年度 1年生を対象とした。調査は、春(5月下旬)および冬(12月から 2月)に 2回実

施した。1回目の調査では 1,889名、2回目の調査では 1,484名の有効回答を得た。その後、データの照

合を行い、2回の調査で追跡が可能であった 1,411名を本研究の分析対象とした。

生涯スポーツ科目(健康・体力づくりおよび生涯スポーツ演習)の授業時に調査票の配布および回収

を行った。書面にて研究の目的、データ処理法、プライバシーの保護等について説明し同意を得た。な

お、本研究は金沢工業大学研究倫理員会の承認を得て実施した。

2.2 調査内容

調査はメンタルヘルス特性を捉える項目(後述)に加え、基本属性や生活習慣、気分転換として行っ

ている活動、家族・友人・教員とのコミュニケーション頻度、アルバイト実施状況、積極的に取り組ん

でいる活動の有無についても調査した。但し、本研究では生活習慣として、睡眠習慣(起床時間・就床

時間・睡眠時間)、朝食習慣、運動習慣、アルバイト実施状況といった基本的生活習慣についてのみ着目

している。

2.2.1 生活習慣

起床時間については「7時以前」「7時台」「8時以降」の 3段階、就床時間については「24時以前」「0

時台」「1時台」「2時以降」の 4段階、睡眠時間については「5時間未満」「5時間以上 8時間未満」「8時

間以上」の 3段階に分類した。

朝食習慣については、「ほぼ毎日食べる」「時々食べる」「食べない」の 3 段階、運動習慣については

「なし」「週 1日未満(2週間に 1回など)」「週 1~2回」「週 3回以上」の 4段階、アルバイト実施状況

102 大学生における生活習慣の経時的変化がメンタルヘルスに与える影響

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題目

については「している」「していない」の 2つに分類した。

2.2.2 学生生活におけるメンタルヘルス

学生生活におけるメンタルヘルスに関しては、大学生を対象とした受動的健康状態のみではなく、能

動的、全人的な学校生活全体の適応状態を総合的に測り、大学教育に役立てることを目的に開発された、

松原らのメンタルヘルス尺度を一部改編して用いた 8)。5因子(学業のつまずき・大学への不本意感・不

規則な日常生活・大学生活への充実感の乏しさ・自分への自信のなさ)30項目(5段階評価)から構成

され、要因得点の平均値により、その学生が各要因に関して問題症状があるかを判定する。レベル 1(3

点未満:あてはまらない)、レベル 2(3点以上 4点未満:どちらでもない)、レベル 3(4点以上:あて

はまる)の 3段階に分類した。

2.2.3 日常生活におけるメンタルヘルス

日常生活におけるメンタルヘルスの測定に関しては、(財)能率増進研究開発センター発行(監修 総

務省人事・恩給局)の「メンタルヘルス・シート」を用いた 9)。但し、内容が「仕事」に関するものを

「学業」や「勉強」に置き換えたものを使用し、評価を行った。60項目(3段階評価)から構成され、

合計得点により「ストレス度」「疲労度」「うつ度」それぞれの症状の程度を 5段階で判定した。

2.2.4 インターネット依存度

インターネット依存度の測定に関しては、先行研究を参考にインターネット利用状況や社会的活動へ

の影響、情緒面・心理面・経済面への影響などに関する 13項目(5段階評価)からなる質問項目を作成

し、合計得点の平均値±1SDに基づき 3段階に分類した。平均値-1SD未満をレベル 1、平均値-1SD以上

平均値+1SD未満をレベル 2、平均値+1SD以上をレベル 3とした。

2.3 統計解析

生活習慣(起床・就床・睡眠時間、朝食頻度、運動頻度、アルバイト実施状況)については、各質問

項目のカテゴリーごとに、2回の調査それぞれの度数および相対度数を算出した。

さらに各対象者の経時的変化を確認し、起床・就床時間においては、春に比べ時間が「早くなった」

者、「変化なし」の者、「遅くなった」者に分類し、度数および相対度数を算出した。睡眠時間において

は、春に比べ時間が「少なくなった」者、「変化なし」の者、「多くなった」者に分類し、度数および相

対度数を算出した。朝食・運動頻度においては、春に比べ「低くなった(減った)」者、「変化なし」の

者、「高くなった」者に分類し、度数および相対度数を算出した。アルバイト実施状況においては、春と

比べ「変化なし」の者、新たに「はじめた」者、春は実施していたが「やめた」者に分類し、度数およ

び相対度数を算出した。

メンタルヘルス特性については、学生生活におけるメンタルヘルス、日常生活におけるメンタルヘル

ス、インターネット依存度について得点を集計し、2回の調査の傾向を比較した。

学生生活におけるメンタルヘルスについては各下位要因(学業へのつまずき、大学への不本意感、不

規則な日常生活、大学生活への充実感の乏しさ、自分への自身のなさ)得点の評定平均から「あてはま

らない(3 点未満)」「どちらでもない(3 点以上 4 点未満)」「あてはまる(4 点以上)」に分類し、該当

者の度数および相対度数を算出した。さらに各対象者の要因得点の変化を確認し、メンタルヘルス特性

が「悪化」した(あてはならない→どちらでもない orあてはまる、どちらでもない→あてはまる)者、

変化しなかった(春と冬で変化がなかった)者、「改善」した(あてはまる→どちらでもない orあては

まらない、あてはまる→どちらでもない)者の度数および相対度数を算出した。

日常生活のメンタルヘルスは、ストレス度、疲労度、うつ度の各下位尺度得点について、総務省のメ

ンタルヘルス・シート 10)で定められた基準に基づき 5段階(レベル 1~5)に分類し、各レベルの該当者

数および相対度数を算出した。さらに各対象者の要因得点の変化を確認し、メンタルヘルス特性が「悪

化」した(レベルが上がった)者、変化しなかった(春と冬で変化がなかった)者、「改善」した(レベ

題目

する者も多く、入学後は就職という大きな問題と向き合わなければならないなど、大学生はストレスフ

ルな出来事に数多く直面する 3)。ライフサイクル上、青年期後期に位置づけられる大学生の時期(学生

期)は、身体健康面では比較的問題の少ない時期である反面、精神健康面では、うつ、引きこもり、摂

食障害、自殺などさまざまな問題が起こりやすい時期と言われている。基本的な生活習慣は、大学生活

を支える基盤であり、睡眠・食事・運動などの基本的生活習慣の乱れは、メンタルヘルスの悪化に伴い、

大学生活や日常生活にさまざまな影響を及ぼす。大学生においては就床時間および起床時間が顕著に後

退することが報告されている 4)。またひとり暮らし等で自由な環境にある学生ほど夜型傾向が強いとの

指摘もなされている 5)。

我々は、大学 1年生を対象に生活習慣とメンタルヘルスに関する調査を実施し、基本的生活習慣(朝

食習慣・運動習慣)が定着している者、友人とコミュニケーションのある者、active/communicativeな

活動(気分転換活動や積極的に取り組む活動)を他者と関わりを持って行なっている者、平日や休日の

あまり遅くない時間帯にアルバイトをしている者、インターネット依存度の低い者、学生生活における

メンタルヘルスが良好で、日常生活におけるストレス度、疲労度、うつ度が低い者、ストレスに対し

positive対処行動を取ることができる者、睡眠習慣(起床時間・就床時間・睡眠時間)が規則正しい(0

時台までには就床、7時前後には起床、5時間以上の睡眠時間を確保している)者のメンタルヘルスが、

良好な傾向にあることを明らかにした 6-7)。しかし、入学当時の生活習慣やメンタルヘルス特性が 1年終

了時にはどのように変化するのかなどについては不透明である。

上記を踏まえ、本研究では、基本的な生活習慣(睡眠習慣、朝食習慣、運動習慣、アルバイト実施状

況)に焦点をあて、それらの経時的変化が、学生生活や日常生活におけるメンタルヘルスや疲労自覚症

状、インターネット依存度の変化に対してどのような関連性を持つのかを明らかにすることを目的とす

る。本研究の成果は、今後の修学指導に対する有効な知見を提供しうると考えられる。

2.研究方法

2.1 調査対象および調査方法

本学の平成 25年度 1年生を対象とした。調査は、春(5月下旬)および冬(12月から 2月)に 2回実

施した。1回目の調査では 1,889名、2回目の調査では 1,484名の有効回答を得た。その後、データの照

合を行い、2回の調査で追跡が可能であった 1,411名を本研究の分析対象とした。

生涯スポーツ科目(健康・体力づくりおよび生涯スポーツ演習)の授業時に調査票の配布および回収

を行った。書面にて研究の目的、データ処理法、プライバシーの保護等について説明し同意を得た。な

お、本研究は金沢工業大学研究倫理員会の承認を得て実施した。

2.2 調査内容

調査はメンタルヘルス特性を捉える項目(後述)に加え、基本属性や生活習慣、気分転換として行っ

ている活動、家族・友人・教員とのコミュニケーション頻度、アルバイト実施状況、積極的に取り組ん

でいる活動の有無についても調査した。但し、本研究では生活習慣として、睡眠習慣(起床時間・就床

時間・睡眠時間)、朝食習慣、運動習慣、アルバイト実施状況といった基本的生活習慣についてのみ着目

している。

2.2.1 生活習慣

起床時間については「7時以前」「7時台」「8時以降」の 3段階、就床時間については「24時以前」「0

時台」「1時台」「2時以降」の 4段階、睡眠時間については「5時間未満」「5時間以上 8時間未満」「8時

間以上」の 3段階に分類した。

朝食習慣については、「ほぼ毎日食べる」「時々食べる」「食べない」の 3 段階、運動習慣については

「なし」「週 1日未満(2週間に 1回など)」「週 1~2回」「週 3回以上」の 4段階、アルバイト実施状況

103大学生における生活習慣の経時的変化がメンタルヘルスに与える影響

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題目

ルが下がった)者の度数および相対度数を算出した。

インターネット依存レベルは、合計得点の平均値±1SD に基づき 3 段階に分類し、各レベルの該当者

数および相対度数を算出した。さらに各対象者の要因得点の変化を確認し、インターネット依存レベル

が「悪化」した(レベルが上がった)者、変化しなかった(春と冬で変化がなかった)者、「改善」した

(レベルが下がった)者の度数および相対度数を算出した。

本研究では生活習慣(起床時間・就床時間・睡眠時間・朝食習慣・運動習慣・アルバイト実施状況)

の経時的変化とメンタルヘルスの関係について検討した。生活習慣の経時的変化のグループ別(減った、

変化なし、増えたなど)に各特性(不良度レベルや種類)の経時的変化(悪化、変化なし、改善)にお

けるカテゴリーの該当者数をクロス集計し、相対度数(%)を算出した。カテゴリー間の差の検定は、

カイ二乗検定により分析した。有意な主効果が認められた場合には、残差分析を行った。なお、本研究

の有意水準は 5%とした。

3.結果

3.1 生活習慣の変化

表 1は生活習慣に関する解答(カテゴリ度数、相対度数)の変化を示している。入学当初と1年終了

時で傾向の変化が顕著であったのは、起床時間、就床時間、朝食摂取頻度、アルバイト実施状況であっ

た。起床時間については、入学当時は 7時前に起きる者が 33%程度、8時過ぎに起きる者が 10%未満で

あったが、1年終了時には 7時前に起きる者が 20%程度、8時過ぎに起きる者が 25%以上であった。起

床時間が入学当時と比べ早くなった者は 6%程度、遅くなった者は 33%であった。就床時間については、

1年終了時には 24時前、0時台に就床する者が減少し、1時台、2時以降に就床する者が増加した。就床

時間が入学当時と比べ早くなった者は 15%程度、遅くなった者は 33%程度であった。朝食摂取頻度につ

いては、入学当時は 7割以上の学生が毎日摂取していたが、1年終了時にはその割合は 5割まで減少し、

「食べない」と回答した者も倍増(7.9%→18.0%)している。朝食摂取頻度が増加した者は 4.9%のみ

であり、31.6%が減少している。アルバイト実施状況については、入学当時からアルバイトを実施して

いるのは 17%程度であったが、1年終了時には 41.9%の学生がアルバイトを実施していた。1年終了時

までにアルバイトをやめた者は 2.2%で、27.2%の学生が新たにアルバイトを実施している。

その他の項目については、各カテゴリの回答の割合に顕著な違いは認められなかったが、運動頻度が

減少した者は 18.5%のみであり、増加した者は 28.3%であった。

表 1 生活習慣の変化

起床時間 7時以前 7時台 8時以降 計 N/A 遅くなった 変化なし 早くなった春 468(33.5) 794(56.8) 137(9.8) 1399 12 461(33.0) 852(60.9) 86(6.1)冬 295(21.1) 737(52.7) 367(26.2)

就床時間 24時以前 0時台 1時台 2時以降 計 N/A 遅くなった 変化なし 早くなった春 190(13.6) 624(44.6) 381(27.2) 204(14.6) 1399 12 467(33.4) 712(50.9) 220(15.7)冬 147(10.5) 509(36.4) 432(30.9) 311(22.2)

睡眠時間 5時間未満 5~8時間未満 8時間以上 計 N/A 減少 変化なし 増加春 71(5.1) 1206(86.2) 122(8.7) 1399 12 117(8.4) 1106(79.1) 176(12.6)冬 61(4.4) 1164(83.2) 174(12.4)

朝食摂取 ほぼ毎日 時々 食べない 計 N/A 減少 変化なし 増加春 1022(73.2) 264(18.9) 111(7.9) 1397 14 441(31.6) 887(63.5) 69(4.9)冬 710(50.8) 435(31.1) 252(18.0)

運動習慣 ない 週1未満 週1,2 週3以上 計 N/A 減少 変化なし 増加春 577(41.5) 317(22.8) 310(22.3) 188(13.5) 1392 19 257(18.5) 741(53.2) 394(28.3)冬 642(46.1) 352(25.3) 248(17.8) 150(10.8)

アルバイト している していない 計 N/A やめた 変化なし はじめた春 238(17.0) 1164(83.0) 1402 9 31(2.2) 990(70.6) 381(27.2)冬 588(41.9) 814(58.1)

※N/A:欠損値

104 大学生における生活習慣の経時的変化がメンタルヘルスに与える影響

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題目

3.2 メンタルヘルス特性の変化

表 2は学生生活におけるメンタルヘルス、日常生活におけるメンタルヘルスに関する集計結果を示し

ている。

学生生活におけるメンタルヘルスについては、「全くあてはならない」から「よくあてはまる」の 5段

階で求めた回答に対し、「あてはまらない」(3点未満)、「どちらでもない」(3点以上 4点未満)、「あて

はまる」(4 点以上)として集計した。「学業のつまずき」は約 20%、「大学への不本意感」は約 10%の

学生が入学当初に有しており、その割合は 1年終了時点でも同等であった。「不規則な日常生活」は入学

当初 11.3%であったものが 1年終了時には 20.9%、「大学生活への充実感の乏しさ」は 4.1%から 7.5%

となり、1 年終了時の方がやや割合が高くなる傾向が窺えた。個人内の変化をみると、改善した割合が

悪化した割合を上回ったのは「学業のつまずき(改善 22%、悪化 16.2%)」「自分への自信のなさ(改善

18.7%、悪化14.3%)」であり、悪化が改善を上回ったのは「不規則な日常生活(悪化32.5%、改善12.7%)」

「大学生活への充実感の乏しさ(悪化24.2%、改善11.3%)」「大学への不本意感(悪化18%、改善16.2%)」

であった。

日常生活におけるメンタルヘルスについてみると、レベル 4(ある程度加療が必要である)以上のス

トレス度、うつ度、疲労度にある学生が 3 割~4 割認められた。各レベルの割合は、入学当初と 1 年終

了時では大きな変化はなかったが、個人内の変化についてみると、ストレス度、疲労度、うつ度ともに、

学生の 50%に変化はなく、25%が改善傾向、25%が悪化傾向にある。

表 2 メンタルヘルスの変化

3.3 インターネット依存度の変化

表 3はインターネット依存度に関する集計結果を示している。

インターネット依存度については入学当初と 1年終了時に大きな差は見られなかった。個人内の変化

をみると、悪化 14.8%、改善 10.0%と悪化が改善を上回っていた。

表 3 インターネット依存度の変化

3.4 生活習慣の変化からみた学生生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化

表 4は生活習慣の変化と学生生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化の割合をそれぞれ

示している。但し、有意差のなかった項目については除いている。

学生生活におけるメンタルヘルス あてはまらない どちらでもない あてはまる 計 N/A 悪化 変化なし 改善学業へのつまずき 春 496(35.4) 621(44.3) 285(20.3) 1402 9 227(16.2) 866(61.8) 309(22.0)

冬 582(41.5) 549(39.2) 271(19.3)大学への不本意感 春 825(58.8) 430(30.7) 147(10.5) 1402 9 253(18.0) 922(65.8) 227(16.2)

冬 783(55.8) 480(34.2) 139(9.9)不規則な日常生活 春 685(48.9) 559(39.9) 158(11.3) 1402 9 455(32.5) 769(54.9) 178(12.7)

冬 498(35.5) 611(43.6) 293(20.9)大学生活への充実感の乏しさ 春 860(61.3) 484(34.5) 58(4.1) 1402 9 339(24.2) 902(64.5) 159(11.3)

冬 716(51.1) 581(41.4) 105(7.5)自分への自信のなさ 春 400(28.5) 808(57.6) 194(13.8) 1402 9 201(14.3) 939(67.0) 262(18.7)

冬 446(31.8) 781(55.7) 175(12.5)日常生活におけるメンタルヘルス レベル1 レベル2 レベル3 レベル4 レベル5 計 N/A 悪化 変化なし 改善ストレス度 春 72(5.1) 248(17.7) 616(43.9) 388(27.7) 78(5.6) 1402 9 372(26.5) 686(48.9) 344(24.5)

冬 76(5.4) 218(15.5) 626(44.7) 396(28.2) 86(6.1)疲労度 春 43(3.1) 386(27.5) 567(40.4) 356(25.4) 50(3.6) 1402 9 350(25.0) 720(51.4) 332(23.7)

冬 61(4.4) 351(25.0) 576(41.1) 363(25.9) 51(3.6)うつ度 春 54(3.9) 262(18.7) 658(46.9) 369(26.3) 59(4.2) 1402 9 346(24.7) 750(53.5) 306(21.8)

冬 60(4.3) 242(17.3) 653(46.6) 381(27.2) 66(4.7)※N/A:欠損値

ネット依存度 レベル1 レベル2 レベル3 計 N/A 悪化 変化なし 改善春 227(16.2) 1064(75.7) 114(8.1) 1405 6 208(14.8) 1056(75.2) 141(10.0)冬 190(13.5) 1068(76.0) 147(10.5)

※N/A:欠損値

題目

ルが下がった)者の度数および相対度数を算出した。

インターネット依存レベルは、合計得点の平均値±1SD に基づき 3 段階に分類し、各レベルの該当者

数および相対度数を算出した。さらに各対象者の要因得点の変化を確認し、インターネット依存レベル

が「悪化」した(レベルが上がった)者、変化しなかった(春と冬で変化がなかった)者、「改善」した

(レベルが下がった)者の度数および相対度数を算出した。

本研究では生活習慣(起床時間・就床時間・睡眠時間・朝食習慣・運動習慣・アルバイト実施状況)

の経時的変化とメンタルヘルスの関係について検討した。生活習慣の経時的変化のグループ別(減った、

変化なし、増えたなど)に各特性(不良度レベルや種類)の経時的変化(悪化、変化なし、改善)にお

けるカテゴリーの該当者数をクロス集計し、相対度数(%)を算出した。カテゴリー間の差の検定は、

カイ二乗検定により分析した。有意な主効果が認められた場合には、残差分析を行った。なお、本研究

の有意水準は 5%とした。

3.結果

3.1 生活習慣の変化

表 1は生活習慣に関する解答(カテゴリ度数、相対度数)の変化を示している。入学当初と1年終了

時で傾向の変化が顕著であったのは、起床時間、就床時間、朝食摂取頻度、アルバイト実施状況であっ

た。起床時間については、入学当時は 7時前に起きる者が 33%程度、8時過ぎに起きる者が 10%未満で

あったが、1年終了時には 7時前に起きる者が 20%程度、8時過ぎに起きる者が 25%以上であった。起

床時間が入学当時と比べ早くなった者は 6%程度、遅くなった者は 33%であった。就床時間については、

1年終了時には 24時前、0時台に就床する者が減少し、1時台、2時以降に就床する者が増加した。就床

時間が入学当時と比べ早くなった者は 15%程度、遅くなった者は 33%程度であった。朝食摂取頻度につ

いては、入学当時は 7割以上の学生が毎日摂取していたが、1年終了時にはその割合は 5割まで減少し、

「食べない」と回答した者も倍増(7.9%→18.0%)している。朝食摂取頻度が増加した者は 4.9%のみ

であり、31.6%が減少している。アルバイト実施状況については、入学当時からアルバイトを実施して

いるのは 17%程度であったが、1年終了時には 41.9%の学生がアルバイトを実施していた。1年終了時

までにアルバイトをやめた者は 2.2%で、27.2%の学生が新たにアルバイトを実施している。

その他の項目については、各カテゴリの回答の割合に顕著な違いは認められなかったが、運動頻度が

減少した者は 18.5%のみであり、増加した者は 28.3%であった。

表 1 生活習慣の変化

起床時間 7時以前 7時台 8時以降 計 N/A 遅くなった 変化なし 早くなった春 468(33.5) 794(56.8) 137(9.8) 1399 12 461(33.0) 852(60.9) 86(6.1)冬 295(21.1) 737(52.7) 367(26.2)

就床時間 24時以前 0時台 1時台 2時以降 計 N/A 遅くなった 変化なし 早くなった春 190(13.6) 624(44.6) 381(27.2) 204(14.6) 1399 12 467(33.4) 712(50.9) 220(15.7)冬 147(10.5) 509(36.4) 432(30.9) 311(22.2)

睡眠時間 5時間未満 5~8時間未満 8時間以上 計 N/A 減少 変化なし 増加春 71(5.1) 1206(86.2) 122(8.7) 1399 12 117(8.4) 1106(79.1) 176(12.6)冬 61(4.4) 1164(83.2) 174(12.4)

朝食摂取 ほぼ毎日 時々 食べない 計 N/A 減少 変化なし 増加春 1022(73.2) 264(18.9) 111(7.9) 1397 14 441(31.6) 887(63.5) 69(4.9)冬 710(50.8) 435(31.1) 252(18.0)

運動習慣 ない 週1未満 週1,2 週3以上 計 N/A 減少 変化なし 増加春 577(41.5) 317(22.8) 310(22.3) 188(13.5) 1392 19 257(18.5) 741(53.2) 394(28.3)冬 642(46.1) 352(25.3) 248(17.8) 150(10.8)

アルバイト している していない 計 N/A やめた 変化なし はじめた春 238(17.0) 1164(83.0) 1402 9 31(2.2) 990(70.6) 381(27.2)冬 588(41.9) 814(58.1)

※N/A:欠損値

105大学生における生活習慣の経時的変化がメンタルヘルスに与える影響

Page 6: 大学生における生活習慣の経時的変化が メンタルヘルスに与 …を行った。書面にて研究の目的、データ処理法、プライバシーの保護等について説明し同意を得た。な

題目

表 4 生活習慣の変化と学生生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化の割合

起床時間の変化と学生生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化については、「起床時間が

遅くなり、不規則な日常生活レベルが悪化した者」「起床時間、不規則な日常生活レベルともに変化のな

かった者」が有意に大きく、「起床時間が早くなり、不規則な日常生活レベルが悪化した者」「起床時間

に変化なく、不規則な日常生活が悪化した者」「起床時間が遅くなり、不規則な日常生活に変化のなかっ

起床時間 度数(人) 計早くなった 86 20.9 (-2.4) 61.6 (1.3) 17.4 (1.3) 100.0変化なし 848 29.7 (-2.8) 57.9 (3.0) 12.4 (-0.5) 100.0遅くなった 461 39.9 (4.1) 47.5 (-3.8) 12.6 (-0.1) 100.0

計 1395 32.5 54.7 12.8 100.0欠損 16

就床時間 度数(人) 計早くなった 220 21.8 (-3.7) 58.6 (1.3) 19.5 (3.3) 100.0変化なし 709 28.3 (-3.4) 58.9 (3.1) 12.8 (0.1) 100.0遅くなった 466 44.0 (6.5) 46.6 (-4.3) 9.4 (-2.6) 100.0

計 1395 32.5 54.7 12.8 100.0欠損 21

朝食頻度 度数(人) 計低くなった(減った) 441 46.5 (7.5) 44.0 (-5.5) 9.5 (-2.4) 100.0

変化なし 883 26.0 (-6.9) 60.7 (5.9) 13.3 (0.8) 100.0高くなった(増えた) 69 27.5 (-0.9) 46.4 (-1.4) 26.1 (3.4) 100.0

計 1393 32.6 54.7 12.7 100.0欠損 18

運動頻度 度数(人) 計高くなった(増えた) 393 30.0 (3.1) 60.8 (-1.7) 9.2 (-1.6) 100.0

変化なし 738 22.2 (-2.0) 66.0 (1.4) 11.8 (0.6) 100.0低くなった(減った) 257 21.8 (-1.1) 65.0 (0.2) 13.2 (1.1) 100.0

計 1388 24.4 64.3 11.3 100.0欠損 23

アルバイト 度数(人) 計はじめた 380 15.5 (-0.4) 61.3 (-0.2) 23.2 (0.6) 100.0変化なし 985 15.8 (-0.6) 62.6 (0.9) 21.6 (-0.6) 100.0やめた 31 35.5 (2.9) 41.9 (-2.3) 22.6 (0.1) 100.0計 1396 16.2 61.7 22.1 100.0欠損 15

アルバイト 度数(人) 計はじめた 380 40.8 (4.0) 50.3 (-2.0) 8.9 (-2.6) 100.0変化なし 985 29.6 (-3.6) 56.4 (2.1) 13.9 (2.0) 100.0やめた 31 25.8 (-0.8) 51.6 (-0.3) 22.6 (1.7) 100.0計 1396 32.6 54.7 12.8 100.0欠損 15

不規則な日常生活χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

21.629*** 0.000

注)***:p<.001(両側検定),表中の数値は相対度数(%),括弧内の数値は調整済み標準化残差を示している.χ2検定の結果、有意であった場合、調整済み

標準化残差を参照する.調整済み標準化残差は,絶対値が1.96以上であれば有意水準5%で有意に特徴的であり,数値が「+」であれば「多い」,「-」であれば

「少ない」を意味する.例えば「起床時間が遅くなった」者のうち,「不規則な日常生活レベルが悪化」した割合は39.9%,調整済み標準化残差は4.1であり,「起床

時間が遅くなり,不規則な日常生活レベルが悪化した」者は有意に大きいことを示している.

 学生生活におけるメンタルヘルス:5段階評価の素点合計の平均得点により3段階(レベル1:3点未満(あてはまらない),レベル2:3点以上4点未満(どちらでもな

い),レベル3:4点以上(あてはまる)に分類.春に比べレベルが上がった場合を「悪化」,変化がない場合を「変化なし」,レベルが下がった場合を「改善」と分類.

 起床時間:春冬それぞれ「7時以前」「7時台」「8時以降」の3段階に分類し、春に比べ起床時間が早くなった場合を「早くなった」,変化がない場合を「変化なし」,

遅くなった場合を「遅くなった」と分類.

 就床時間:春冬それぞれ「24時以前」「0時台」「1時台」「2時以降」の4段階に分類し、春に比べ就床時間が早くなった場合を「早くなった」,変化がない場合を「変

化なし」,遅くなった場合を「遅くなった」と分類.

 朝食頻度:春冬それぞれ「ほぼ毎日食べる」「時々食べる」「食べない」の3段階に分類し、春に比べ朝食頻度が低くなった場合を「低くなった」,変化がない場合

を「変化なし」,高くなった場合を「高くなった」と分類.

 運動頻度:春冬それぞれ「なし」「週1未満」「週1.2」「週3以上」の4段階に分類し、春に比べ運動頻度が低くなった場合を「低くなった」,変化がない場合を「変化

なし」,高くなった場合を「高くなった」と分類.

不規則な日常生活χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

50.790*** 0.000

不規則な日常生活χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

67.641*** 0.000

大学生活への充実感の乏しさχ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

10.942* 0.027

学業のつまずきχ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

20.566*** 0.000

9.685* 0.046

不規則な日常生活χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

106 大学生における生活習慣の経時的変化がメンタルヘルスに与える影響

Page 7: 大学生における生活習慣の経時的変化が メンタルヘルスに与 …を行った。書面にて研究の目的、データ処理法、プライバシーの保護等について説明し同意を得た。な

題目

た者」は有意に小さかった。

就床時間の変化と学生生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化の割合については、「就床

時間が早くなり、不規則な日常生活レベルが改善した者」「就床時間、不規則な日常生活レベルともに変

化のなかった者」「就床時間が遅くなり、不規則な日常生活レベルが悪化した者」が有意に大きく、「就

床時間が早くなり、不規則な日常生活レベルが悪化した者」「就床時間に変化なく、不規則な日常生活レ

ベルが悪化した者」「就床時間が遅くなり、不規則な日常生活に変化のない者」「就床時間が遅くなり、

不規則な日常生活が改善された者」は有意に小さかった。

朝食の摂取頻度の変化と学生生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化の割合については、

「朝食摂取頻度が減り、不規則な日常生活レベルが悪化した者」「朝食摂取頻度、不規則な日常生活レベ

ルともに変化のなかった者」「朝食摂取頻度が増え、不規則な日常生活レベルが改善された者」が有意に

大きく、「朝食摂取頻度が減り、不規則な日常生活レベルが改善された者」「朝食摂取頻度が減り、不規

則な日常生活レベルに変化のなかった者」「朝食摂取頻度に変化なく、不規則な日常生活レベルが悪化し

た者」は有意に小さかった。

運動頻度の変化と学生生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化の割合については、「運動

頻度が増え、大学生活への充実感の乏しさレベルが悪化した者」が有意に大きく、「運動頻度に変化なく、

大学生活への充実感の乏しさレベルが悪化した者」は有意に小さかった。

アルバイトの実施状況の変化と学生生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化の割合につ

いては、「アルバイトをやめ、学業のつまずきレベルが悪化した者」が有意に大きく、「アルバイトをや

め、学業のつまずきレベルに変化のなかった者」は有意に小さかった。また、「アルバイトをはじめ、不

規則な日常生活レベルが悪化した者」「アルバイト実施状況に変化なく、不規則な日常生活レベルが改善

された者」「アルバイト実施状況、不規則な日常生活レベルともに変化のない者」が有意に大きく、「ア

ルバイトをはじめ、不規則な日常生活レベルに変化のない者」「アルバイトをはじめ、不規則な日常生活

レベルが改善された者」「アルバイト実施状況に変化なく、不規則な日常生活が悪化した者」は有意に小

さかった。

3.5 生活習慣の変化からみた日常生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化

表 5は生活習慣の変化と日常生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化の割合をそれぞれ

示している。但し、有意差のなかった項目については除いている。

就床時間の変化と日常生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化の割合については、「就床

時間が早くなり、ストレス度に変化のない者」「就床時間が遅くなり、ストレス度が悪化した者」が有意

に大きく、「就床時間が早くなり、ストレス度が悪化した者」「就床時間が遅くなり、ストレス度に変化

のなかった者」は有意に小さかった。

睡眠時間の変化と日常生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化の割合については、「睡眠

時間が少なくなり、疲労度が悪化した者」「睡眠時間、疲労度ともに変化のなかった者」が有意に大きく、

「睡眠時間に変化なく、疲労度が悪化した者」は有意に小さかった。また、「睡眠時間が少なくなり、う

つ度が悪化した者」が有意に大きく、「睡眠時間が少なくなり、うつ度が改善された者」「睡眠時間に変

化なく、うつ度が悪化した者」は有意に小さかった。

朝食の摂取頻度の変化と日常生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化の割合については、

「朝食摂取頻度が減り、ストレス度が悪化した者」「朝食摂取頻度、ストレス度ともに変化のなかった者」

が有意に大きく、「朝食摂取頻度が減り、ストレス度に変化のない者」「朝食摂取頻度に変化なく、スト

レス度が悪化した者」は有意に小さかった。

題目

表 4 生活習慣の変化と学生生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化の割合

起床時間の変化と学生生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化については、「起床時間が

遅くなり、不規則な日常生活レベルが悪化した者」「起床時間、不規則な日常生活レベルともに変化のな

かった者」が有意に大きく、「起床時間が早くなり、不規則な日常生活レベルが悪化した者」「起床時間

に変化なく、不規則な日常生活が悪化した者」「起床時間が遅くなり、不規則な日常生活に変化のなかっ

起床時間 度数(人) 計早くなった 86 20.9 (-2.4) 61.6 (1.3) 17.4 (1.3) 100.0変化なし 848 29.7 (-2.8) 57.9 (3.0) 12.4 (-0.5) 100.0遅くなった 461 39.9 (4.1) 47.5 (-3.8) 12.6 (-0.1) 100.0

計 1395 32.5 54.7 12.8 100.0欠損 16

就床時間 度数(人) 計早くなった 220 21.8 (-3.7) 58.6 (1.3) 19.5 (3.3) 100.0変化なし 709 28.3 (-3.4) 58.9 (3.1) 12.8 (0.1) 100.0遅くなった 466 44.0 (6.5) 46.6 (-4.3) 9.4 (-2.6) 100.0

計 1395 32.5 54.7 12.8 100.0欠損 21

朝食頻度 度数(人) 計低くなった(減った) 441 46.5 (7.5) 44.0 (-5.5) 9.5 (-2.4) 100.0

変化なし 883 26.0 (-6.9) 60.7 (5.9) 13.3 (0.8) 100.0高くなった(増えた) 69 27.5 (-0.9) 46.4 (-1.4) 26.1 (3.4) 100.0

計 1393 32.6 54.7 12.7 100.0欠損 18

運動頻度 度数(人) 計高くなった(増えた) 393 30.0 (3.1) 60.8 (-1.7) 9.2 (-1.6) 100.0

変化なし 738 22.2 (-2.0) 66.0 (1.4) 11.8 (0.6) 100.0低くなった(減った) 257 21.8 (-1.1) 65.0 (0.2) 13.2 (1.1) 100.0

計 1388 24.4 64.3 11.3 100.0欠損 23

アルバイト 度数(人) 計はじめた 380 15.5 (-0.4) 61.3 (-0.2) 23.2 (0.6) 100.0変化なし 985 15.8 (-0.6) 62.6 (0.9) 21.6 (-0.6) 100.0やめた 31 35.5 (2.9) 41.9 (-2.3) 22.6 (0.1) 100.0計 1396 16.2 61.7 22.1 100.0欠損 15

アルバイト 度数(人) 計はじめた 380 40.8 (4.0) 50.3 (-2.0) 8.9 (-2.6) 100.0変化なし 985 29.6 (-3.6) 56.4 (2.1) 13.9 (2.0) 100.0やめた 31 25.8 (-0.8) 51.6 (-0.3) 22.6 (1.7) 100.0計 1396 32.6 54.7 12.8 100.0欠損 15

不規則な日常生活χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

21.629*** 0.000

注)***:p<.001(両側検定),表中の数値は相対度数(%),括弧内の数値は調整済み標準化残差を示している.χ2検定の結果、有意であった場合、調整済み

標準化残差を参照する.調整済み標準化残差は,絶対値が1.96以上であれば有意水準5%で有意に特徴的であり,数値が「+」であれば「多い」,「-」であれば

「少ない」を意味する.例えば「起床時間が遅くなった」者のうち,「不規則な日常生活レベルが悪化」した割合は39.9%,調整済み標準化残差は4.1であり,「起床

時間が遅くなり,不規則な日常生活レベルが悪化した」者は有意に大きいことを示している.

 学生生活におけるメンタルヘルス:5段階評価の素点合計の平均得点により3段階(レベル1:3点未満(あてはまらない),レベル2:3点以上4点未満(どちらでもな

い),レベル3:4点以上(あてはまる)に分類.春に比べレベルが上がった場合を「悪化」,変化がない場合を「変化なし」,レベルが下がった場合を「改善」と分類.

 起床時間:春冬それぞれ「7時以前」「7時台」「8時以降」の3段階に分類し、春に比べ起床時間が早くなった場合を「早くなった」,変化がない場合を「変化なし」,

遅くなった場合を「遅くなった」と分類.

 就床時間:春冬それぞれ「24時以前」「0時台」「1時台」「2時以降」の4段階に分類し、春に比べ就床時間が早くなった場合を「早くなった」,変化がない場合を「変

化なし」,遅くなった場合を「遅くなった」と分類.

 朝食頻度:春冬それぞれ「ほぼ毎日食べる」「時々食べる」「食べない」の3段階に分類し、春に比べ朝食頻度が低くなった場合を「低くなった」,変化がない場合

を「変化なし」,高くなった場合を「高くなった」と分類.

 運動頻度:春冬それぞれ「なし」「週1未満」「週1.2」「週3以上」の4段階に分類し、春に比べ運動頻度が低くなった場合を「低くなった」,変化がない場合を「変化

なし」,高くなった場合を「高くなった」と分類.

不規則な日常生活χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

50.790*** 0.000

不規則な日常生活χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

67.641*** 0.000

大学生活への充実感の乏しさχ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

10.942* 0.027

学業のつまずきχ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

20.566*** 0.000

9.685* 0.046

不規則な日常生活χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

107大学生における生活習慣の経時的変化がメンタルヘルスに与える影響

Page 8: 大学生における生活習慣の経時的変化が メンタルヘルスに与 …を行った。書面にて研究の目的、データ処理法、プライバシーの保護等について説明し同意を得た。な

題目

表 5 生活習慣の変化と日常生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化の割合

3.6 生活習慣の変化からみたインターネット依存レベルの変化

表 6は生活習慣の変化とインターネット依存レベルの変化の割合をそれぞれ示している。但し、有意

差のなかった項目については除いている。

表 6 生活習慣の変化とインターネット依存レベルの変化の割合

就床時間 度数(人) 計早くなった 218 21.1 (-2.0) 56.0 (2.2) 22.9 (-0.5) 100.0変化なし 706 24.9 (-1.4) 50.3 (0.9) 24.8 (-0.4) 100.0遅くなった 466 31.8 (3.1) 44.0 (-2.7) 24.2 (0.0) 100.0

計 1390 26.6 49.1 24.3 100.0欠損 21

睡眠時間 度数(人) 計少なくなった 116 35.3 (2.7) 45.7 (-1.4) 19.0 (-1.2) 100.0変化なし 1101 23.3 (-2.6) 53.2 (2.1) 23.5 (0.2) 100.0多くなった 173 27.7 (1.0) 46.8 (-1.4) 25.4 (0.7) 100.0

計 1390 24.8 51.8 23.4 100.0欠損 21

睡眠時間 度数(人) 計少なくなった 116 36.2 (3.0) 50.0 (-0.8) 13.8 (-2.1) 100.0変化なし 1101 23.1 (-2.8) 54.8 (1.6) 22.2 (1.0) 100.0多くなった 173 27.7 (1.0) 49.1 (-1.3) 23.1 (0.5) 100.0

計 1390 24.7 53.7 21.6 100.0欠損 21

朝食頻度 度数(人) 計低くなった(減った) 436 32.3 (3.3) 44.0 (-2.6) 23.6 (-0.4) 100.0

変化なし 883 24.2 (-2.6) 51.3 (2.1) 24.5 (0.2) 100.0髙くなった(増えた) 69 20.3 (-1.2) 53.6 (0.8) 26.1 (0.4) 100.0

計 1388 26.6 49.1 24.3 100.0欠損 23

ストレス度χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

12.886* 0.012

注)*:p<.05(両側検定),**:p<.01(両側検定),表中の数値は相対度数(%),括弧内の数値は調整済み標準化残差を示している.χ2検定の結果、有意であっ

た場合、調整済み標準化残差を参照する.調整済み標準化残差は,絶対値が1.96以上であれば有意水準5%で有意に特徴的であり,数値が「+」であれば「多

い」,「-」であれば「少ない」を意味する.例えば「就床時間が遅くなった」者のうち,「ストレス度が悪化した」割合は31.8.%,調整化残差は3.1であり,「就床時間

が遅くなり,ストレス度レベルが悪化した」者は有意に大きいことを示している.

 ストレス度,疲労度,うつ度におけるレベル分けは総務省「メンタルヘルス・シート」の分類に準拠.春に比べレベルが上がった場合を「悪化」,変化がない場合を

「変化なし」,レベルが下がった場合を「改善」と分類.

 就床時間:春冬それぞれ「24時以前」「0時台」「1時台」「2時以降」の4段階に分類し、春に比べ就床時間が早くなった場合を「早くなった」,変化がない場合を「変

化なし」,遅くなった場合を「遅くなった」と分類.

 睡眠時間:春冬それぞれ「5時間未満」「5~8時間未満」「8時間以上」の3段階に分類し、春に比べ睡眠時間が少なくなった場合を「少なくなった」,変化がない場

合を「変化なし」,多くなった場合を「多くなった」と分類.

 朝食頻度:春冬それぞれ「ほぼ毎日食べる」「時々食べる」「食べない」の3段階に分類し、春に比べ朝食頻度が低くなった場合を「低くなった」,変化がない場合

を「変化なし」,高くなった場合を「高くなった」と分類.

疲労度χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

10.249* 0.036

うつ度χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

11.908* 0.018

12.860* 0.012

ストレス度χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

睡眠時間 度数(人) 計少なくなった 176 25.6 (3.5) 66.7 (-2.3) 7.7 (-0.9) 100.0変化なし 1106 13.6 (-2.2) 76.3 (1.8) 10.1 (0.1) 100.0多くなった 117 14.2 (-0.2) 74.4 (-0.3) 11.4 (0.6) 100.0

計 1399 14.7 75.2 10.1 100.0欠損 12

12.840* 0.012

注)*:p<.05(両側検定),表中の数値は相対度数(%),括弧内の数値は調整済み標準化残差を示している.χ2検定の結果、有意であった場合、調整済み標準

化残差を参照する.調整済み標準化残差は,絶対値が1.96以上であれば有意水準5%で有意に特徴的であり,数値が「+」であれば「多い」,「-」であれば「少な

い」を意味する.例えば「睡眠時間が少なくなった」者のうち,「インターネット依存レベルが悪化」した割合は25.6%,調整済み標準化残差は3.5であり,「睡眠時

間が少なくなり,インターネット依存レベルが悪化した」者は有意に大きいことを示している.

 睡眠時間:「5時間未満」「5~8時間未満」「8時間以上」の3段階に分類し、春に比べ睡眠時間が少なくなった場合を「少なくなった」,変化がない場合を「変化な

し」,多くなった場合を「多くなった」と分類.

 インターネット依存レベル:5段階評価13項目の合計得点の平均値±1SDに基づき3段階(レベル1:平均値-1SD未満、レベル2:平均値-1SD以上平均値+1SD未

満、レベル3:5点以上(ややある~非常にある)に分類.春に比べレベルが上がった場合を「悪化」,変化がない場合を「変化なし」,レベルが下がった場合を「改

善」と分類.

インターネットネット依存レベルχ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

108 大学生における生活習慣の経時的変化がメンタルヘルスに与える影響

Page 9: 大学生における生活習慣の経時的変化が メンタルヘルスに与 …を行った。書面にて研究の目的、データ処理法、プライバシーの保護等について説明し同意を得た。な

題目

「睡眠時間が減り、インターネット依存レベルが悪化した者」が有意に大きく、「睡眠時間が減り、イン

ターネット依存レベルに変化のない者」「睡眠時間に変化なく、インターネット依存レベルが悪化した

者」は有意に小さかった。

3.7 インターネット依存レベルの変化からみたメンタルヘルスの変化

表 7は、インターネット依存レベルと学生生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化の割

合を示したものである。但し、有意差のなかった項目については除いている。「インターネット依存レベ

ルが悪化し、不規則な日常生活レベルが悪化した者」が有意に大きく、「インターネット依存レベルが悪

化し、不規則な日常生活レベルに変化のない者」は有意に小さかった。また、「インターネット依存レベ

ルが改善され、充実感の乏しさが悪化した者」も有意に小さかった。

表 8は、インターネット依存レベルの変化と日常生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変

化の割合を示したものである。但し、有意差のなかった項目については除いている。ストレス度におい

ては、「インターネット依存レベルが悪化し、ストレス度が悪化した者」「インターネット依存レベル、

ストレス度ともに変化のない者」が有意に大きく、「インターネット依存レベルが悪化し、ストレス度に

変化のない者」「インターネット依存レベルに変化なく、ストレス度が悪化した者」は有意に小さかった。

疲労度においては、「インターネット依存レベルが悪化し、疲労度が悪化した者」「インターネット依存

レベルが改善し、ストレス度が改善した者」が有意に大きく、「インターネット依存レベルが悪化し、ス

トレス度が改善された者」「インターネット依存レベルが改善し、ストレス度が悪化した者」は有意に小

さかった。うつ度においては、「インターネット依存レベルが改善し、うつ度が改善された者」は有意に

大きく、「インターネット依存レベルが改善し、うつ度が悪化した者」は有意に小さかった。

表 7 インターネット依存レベルと学生生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化の割合

ネット依存レベル 度数(人) 計悪化 208 26.9 (3.4) 64.4 (-2.1) 8.7 (-1.1) 100.0

変化なし 1052 17.6 (-1.6) 71.3 (0.9) 11.1 (0.7) 100.0改善 141 13.5 (-1.6) 75.2 (1.2) 11.3 (0.2) 100.0計 1401 18.6 70.6 10.8 100.0欠損 10

ネット依存レベル 度数(人) 計悪化 208 29.3 (1.9) 63.0 (-0.5) 7.7 (-1.8) 100.0

変化なし 1052 24.1 (0.0) 64.4 (-0.2) 11.5 (0.3) 100.0改善 141 16.3 (-2.3) 68.1 (0.9) 15.6 (1.7) 100.0計 1401 24.1 64.5 11.3 100.0欠損 10

不規則な日常生活χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

12.982* 0.012

注)***:p<.05(両側検定),表中の数値は相対度数(%),括弧内の数値は調整済み標準化残差を示している.χ2検定の結果、有意であった場合、調整済み標

準化残差を参照する.調整済み標準化残差は,絶対値が1.96以上であれば有意水準5%で有意に特徴的であり,数値が「+」であれば「多い」,「-」であれば「少

ない」を意味する.例えば「ネット依存レベルが悪化した」者のうち,「不規則な日常生活レベルが悪化」した割合は26.9%,調整済み標準化残差は3.4であり,

「ネット依存レベルが悪化し,不規則な日常生活レベルが悪化した」者は有意に大きいことを示している.

 ネット依存レベル:5段階評価13項目の合計得点の平均値±1SDに基づき3段階(レベル1:平均値-1SD未満、レベル2:平均値-1SD以上平均値+1SD未満、レベ

ル3:5点以上(ややある~非常にある)に分類.春に比べレベルが上がった場合を「悪化」,変化がない場合を「変化なし」,レベルが下がった場合を「改善」と分

類.

 学生生活におけるメンタルヘルス:5段階評価の素点合計の平均得点により3段階(レベル1:3点未満(あてはまらない),レベル2:3点以上4点未満(どちらでもな

い),レベル3:4点以上(あてはまる)に分類.春に比べレベルが上がった場合を「悪化」,変化がない場合を「変化なし」,レベルが下がった場合を「改善」と分類.

0.027

大学生活への充実感の乏しさχ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

10.980*

題目

表 5 生活習慣の変化と日常生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化の割合

3.6 生活習慣の変化からみたインターネット依存レベルの変化

表 6は生活習慣の変化とインターネット依存レベルの変化の割合をそれぞれ示している。但し、有意

差のなかった項目については除いている。

表 6 生活習慣の変化とインターネット依存レベルの変化の割合

就床時間 度数(人) 計早くなった 218 21.1 (-2.0) 56.0 (2.2) 22.9 (-0.5) 100.0変化なし 706 24.9 (-1.4) 50.3 (0.9) 24.8 (-0.4) 100.0遅くなった 466 31.8 (3.1) 44.0 (-2.7) 24.2 (0.0) 100.0

計 1390 26.6 49.1 24.3 100.0欠損 21

睡眠時間 度数(人) 計少なくなった 116 35.3 (2.7) 45.7 (-1.4) 19.0 (-1.2) 100.0変化なし 1101 23.3 (-2.6) 53.2 (2.1) 23.5 (0.2) 100.0多くなった 173 27.7 (1.0) 46.8 (-1.4) 25.4 (0.7) 100.0

計 1390 24.8 51.8 23.4 100.0欠損 21

睡眠時間 度数(人) 計少なくなった 116 36.2 (3.0) 50.0 (-0.8) 13.8 (-2.1) 100.0変化なし 1101 23.1 (-2.8) 54.8 (1.6) 22.2 (1.0) 100.0多くなった 173 27.7 (1.0) 49.1 (-1.3) 23.1 (0.5) 100.0

計 1390 24.7 53.7 21.6 100.0欠損 21

朝食頻度 度数(人) 計低くなった(減った) 436 32.3 (3.3) 44.0 (-2.6) 23.6 (-0.4) 100.0

変化なし 883 24.2 (-2.6) 51.3 (2.1) 24.5 (0.2) 100.0髙くなった(増えた) 69 20.3 (-1.2) 53.6 (0.8) 26.1 (0.4) 100.0

計 1388 26.6 49.1 24.3 100.0欠損 23

ストレス度χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

12.886* 0.012

注)*:p<.05(両側検定),**:p<.01(両側検定),表中の数値は相対度数(%),括弧内の数値は調整済み標準化残差を示している.χ2検定の結果、有意であっ

た場合、調整済み標準化残差を参照する.調整済み標準化残差は,絶対値が1.96以上であれば有意水準5%で有意に特徴的であり,数値が「+」であれば「多

い」,「-」であれば「少ない」を意味する.例えば「就床時間が遅くなった」者のうち,「ストレス度が悪化した」割合は31.8.%,調整化残差は3.1であり,「就床時間

が遅くなり,ストレス度レベルが悪化した」者は有意に大きいことを示している.

 ストレス度,疲労度,うつ度におけるレベル分けは総務省「メンタルヘルス・シート」の分類に準拠.春に比べレベルが上がった場合を「悪化」,変化がない場合を

「変化なし」,レベルが下がった場合を「改善」と分類.

 就床時間:春冬それぞれ「24時以前」「0時台」「1時台」「2時以降」の4段階に分類し、春に比べ就床時間が早くなった場合を「早くなった」,変化がない場合を「変

化なし」,遅くなった場合を「遅くなった」と分類.

 睡眠時間:春冬それぞれ「5時間未満」「5~8時間未満」「8時間以上」の3段階に分類し、春に比べ睡眠時間が少なくなった場合を「少なくなった」,変化がない場

合を「変化なし」,多くなった場合を「多くなった」と分類.

 朝食頻度:春冬それぞれ「ほぼ毎日食べる」「時々食べる」「食べない」の3段階に分類し、春に比べ朝食頻度が低くなった場合を「低くなった」,変化がない場合

を「変化なし」,高くなった場合を「高くなった」と分類.

疲労度χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

10.249* 0.036

うつ度χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

11.908* 0.018

12.860* 0.012

ストレス度χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

睡眠時間 度数(人) 計少なくなった 176 25.6 (3.5) 66.7 (-2.3) 7.7 (-0.9) 100.0変化なし 1106 13.6 (-2.2) 76.3 (1.8) 10.1 (0.1) 100.0多くなった 117 14.2 (-0.2) 74.4 (-0.3) 11.4 (0.6) 100.0

計 1399 14.7 75.2 10.1 100.0欠損 12

12.840* 0.012

注)*:p<.05(両側検定),表中の数値は相対度数(%),括弧内の数値は調整済み標準化残差を示している.χ2検定の結果、有意であった場合、調整済み標準

化残差を参照する.調整済み標準化残差は,絶対値が1.96以上であれば有意水準5%で有意に特徴的であり,数値が「+」であれば「多い」,「-」であれば「少な

い」を意味する.例えば「睡眠時間が少なくなった」者のうち,「インターネット依存レベルが悪化」した割合は25.6%,調整済み標準化残差は3.5であり,「睡眠時

間が少なくなり,インターネット依存レベルが悪化した」者は有意に大きいことを示している.

 睡眠時間:「5時間未満」「5~8時間未満」「8時間以上」の3段階に分類し、春に比べ睡眠時間が少なくなった場合を「少なくなった」,変化がない場合を「変化な

し」,多くなった場合を「多くなった」と分類.

 インターネット依存レベル:5段階評価13項目の合計得点の平均値±1SDに基づき3段階(レベル1:平均値-1SD未満、レベル2:平均値-1SD以上平均値+1SD未

満、レベル3:5点以上(ややある~非常にある)に分類.春に比べレベルが上がった場合を「悪化」,変化がない場合を「変化なし」,レベルが下がった場合を「改

善」と分類.

インターネットネット依存レベルχ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

109大学生における生活習慣の経時的変化がメンタルヘルスに与える影響

Page 10: 大学生における生活習慣の経時的変化が メンタルヘルスに与 …を行った。書面にて研究の目的、データ処理法、プライバシーの保護等について説明し同意を得た。な

題目

表 8 インターネット依存レベルと日常生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化の割合

4.考察

本研究の結果、本学学生の生活習慣や日常生活や大学生活におけるメンタルヘルス特性、インターネ

ット依存度に関するいくつかの実態が浮かび上がった。

生活習慣に関しては、睡眠時間に変化はないが、就床時間と起床時間については入学当時より早くな

った者が就床時間は 15.7%、起床時間は 6.1%に対し、遅くなった者は、就床時間は 33.4%、起床時間

は 33.0%と「遅く寝て、遅く起きる者」が増加していることが明らかになった。それに伴い、朝食を毎

日食べる学生が入学当初は 7 割以上であったが、1 年終了時には 5 割程度まで減少している。朝食を食

べない者は入学当時 8%程度であったが、1 年終了時には 18%まで増加している。大学 1 年生の生活習

慣の悪化は多くの関連研究でも報告されており 11-12)、本学学生も同様な傾向にある。運動頻度は減少し

た者が 18.5%、増加した者が 28.3%、アルバイトの実施は、やめた者が 2.2%、新たにはじめた者が

27.2%と、生活の慣れに伴い、学業以外の事柄にも取り組む学生が増加している状況を窺うことができ

る。

学生生活におけるメンタルヘルスに関しては、「不規則な日常生活」以外は、入学当時と 1年終了時の

割合に大きな変化はない。「不規則な日常生活」については、「食事を摂るのが不規則である」「寝る時間

が不規則である」「起床する時間が不規則である」「帰宅時間が遅い」「睡眠時間が短い」「自分の食事の

栄養バランスは良くないと思う」に対する回答を得点化した。先に述べた生活習慣に関する質問項目と

重複する項目が多いことから、この変化については十分予測が可能である。しかし、個人内での変化に

関しては、それぞれの項目において、悪化と改善が見られる。特に「大学生活への充実感の乏しさ」は、

改善された者が 11.3%に対し、悪化が 24.2%となっている。今回、「大学生活への充実感の乏しさ」に

ついては、「大学の行事にはあまり参加していない」「暇をもてあますことがある」「学内の友人は少ない」

「学生生活(勉強を除く)がおもしろい(逆転項目)」「サークル活動(学内外問わず)にはあまり参加

していない」「ゲームを長時間する」に対する回答に基づく。少子化が進み全入時代にある現在では、目

ネット依存レベル 度数(人) 計悪化 206 36.9 (3.6) 41.3 (-2.4) 21.8 (-0.9) 100.0

変化なし 1049 24.8 (-2.7) 50.9 (2.4) 24.3 0.0 100.0改善 141 25.5 (-0.3) 46.8 (-0.6) 27.7 (1.0) 100.0計 1396 26.6 49.1 24.3 100.0欠損 15

ネット依存レベル 度数(人) 計悪化 206 35.0 (3.6) 47.0 (-1.4) 18.0 (-2.0) 100.0

変化なし 1049 24.2 (-1.2) 52.6 (1.4) 23.2 (-0.4) 100.0改善 141 16.3 (-2.5) 50.4 (-0.3) 33.3 (2.9) 100.0計 1396 25.0 51.6 23.4 100.0欠損 15

ネット依存レベル 度数(人) 計悪化 206 28.6 (1.4) 51.5 (-0.7) 19.9 (-0.6) 100.0

変化なし 1049 25.3 (0.7) 53.8 (0.1) 21.0 (-0.9) 100.0改善 141 15.6 (-2.7) 56.0 (0.6) 28.4 (2.1) 100.0計 1396 24.8 53.6 21.6 100.0欠損 15

ストレス度χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

注)*:p<.05(両側検定),**:p<.01(両側検定),***:p<.001(両側検定),表中の数値は相対度数(%),括弧内の数値は調整済み標準化残差を示している.χ2

検定の結果、有意であった場合、調整済み標準化残差を参照する.調整済み標準化残差は,絶対値が1.96以上であれば有意水準5%で有意に特徴的であり,

数値が「+」であれば「多い」,「-」であれば「少ない」を意味する.例えば「ネット依存レベルが悪化した」者のうち,「ストレス度が悪化」した割合は36.9%,調整済

み標準化残差は3.6であり,「ネット依存レベルが悪化し,ストレス度が悪化した」者は有意に大きいことを示している.

ネット依存レベル:5段階評価13項目の合計得点の平均値±1SDに基づき3段階(レベル1:平均値-1SD未満、レベル2:平均値-1SD以上平均値+1SD未満、レベル

3:5点以上(ややある~非常にある)に分類.春に比べレベルが上がった場合を「悪化」,変化がない場合を「変化なし」,レベルが下がった場合を「改善」と分類.

日常生活におけるメンタルヘルス:ストレス度,疲労度,うつ度におけるレベル分けは総務省「メンタルヘルス・シート」の分類に準拠.春に比べレベルが上がった場

合を「悪化」,変化がない場合を「変化なし」,レベルが下がった場合を「改善」と分類.

うつ度

14.139** 0.007

疲労度χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

9.926* 0.420

悪化 変化なし 改善

22.310*** 0.000

χ2=(df=4) p

110 大学生における生活習慣の経時的変化がメンタルヘルスに与える影響

Page 11: 大学生における生活習慣の経時的変化が メンタルヘルスに与 …を行った。書面にて研究の目的、データ処理法、プライバシーの保護等について説明し同意を得た。な

題目

的意識を持たず「なんとなく」大学に進学する者、入学後も目標が見つからず、課題などのノルマとし

ての学習のみをこなすだけといった者がいることが考えられることから、今後他大学の傾向については

合わせて検討し、現代の大学生が有する問題と、本学学生特有の問題を整理する必要があろう。

日常生活におけるメンタルヘルス(ストレス度、うつ度、疲労度)、疲労自覚症状、インターネット依

存度に関しては、すべてにおいて、入学当時と 1年終了時の割合に大きな変化はない。

生活習慣の変化に伴う学生生活におけるメンタルヘルスの変化については、アルバイトをやめた者は

「学業のつまずき」が悪化している割合が有意に大きい。これは、アルバイトをやめたことが「学業の

つまずき」を悪化させたのではなく、アルバイトにより「学業のつまずき」が悪化し、アルバイトをや

めたという解釈が妥当であろう。また、新たにアルバイトを始めた者は「不規則な日常生活」が悪化し

ている割合が有意に大きく、変化のない者(アルバイトをずっとしていない者、アルバイトを入学当時

から継続している者)の悪化割合は有意に小さく、改善割合は有意に大きい傾向にある。学業との両立

に関しては個人のもつ資質が大きいこともあるが、安易に取り組むことも多いアルバイトに関しては、

入学して早い時期にアルバイトが学業面に及ぼすリスクについて指導することも重要であると考える。

日常生活におけるメンタルヘルスの変化に関しては、「ストレス度」において、就床時間が遅くなった

者は悪化している割合が有意に大きく、早くなった者は悪化している割合が有意に小さい。また、朝食

摂取頻度が低く(少なく)なった者も悪化している割合が有意に大きい。「疲労度」「うつ度」に関して

は、睡眠時間が減少した者は悪化している割合が有意に大きいことが窺えた。

インターネット依存レベルの変化に関しては、睡眠時間が少なくなった者は悪化している割合が有意

に大きい。インターネット依存レベルの変化とメンタルヘルスの変化に関しては、「大学生活への充実感

の乏しさ」において、インターネット依存レベルが改善された者は悪化している割合が有意に小さい。

「ストレス度」「疲労度」においては、インターネット依存レベルが悪化した者が悪化した割合が有意に

大きく、インターネット依存レベルが改善された者が改善された傾向が窺える。「うつ度」においても、

インターネット依存レベルが改善された者は、改善された割合が有意に大きかった。起床時間と就床時

間、朝食摂取頻度はストレス度に、睡眠時間は疲労度とうつ度に、インターネット依存は日常生活にお

けるメンタルヘルス全ての項目に影響を及ぼすことが窺えた。特にインターネット依存は睡眠時間や「大

学生活への充実感の乏しさ」との関連も大きいことから、インターネット依存に関する観察や修学指導

を入学初期から夏休み明けに行うと有効かもしれない。今後も継続的な調査を実施し、経時的な変化を

及ぼした学生のサンプルサイズを確保したうえで詳細な分析を試みることが期待される。

5.まとめ

1年生の生活習慣やメンタルヘルス特性の変化について検討した結果、「遅く寝て、遅く起きる」学生

が増加し、それに伴い朝食の摂取頻度が低下している傾向が窺えた。アルバイトを新たにはじめた学生

は大きく増え、やめた学生は少なく、アルバイトをやめた学生は「学業に対してのつまずき」を感じて

いる。アルバイトの実施に加え、運動頻度は増加傾向にある。運動はストレス対処としては望ましい方

法であり、日常生活のメンタルヘルスには良い影響を及ぼすが、運動頻度の増加は「大学生活への充実

感の乏しさ」の裏返しとも考えられる。

インターネット依存は生活習慣や種々のメンタルヘルスに影響を及ぼしている。逆を言えば、インタ

ーネット依存を改善させることができれば、生活習慣や大学生活・日常生活におけるメンタルヘルスの

改善に繋がってくるものと考えられる。また、「大学生活への充実感の乏しさ」とネット依存の関係も大

きいことから、大学生活で何か積極的に取り組める事柄を発見できればネット依存は改善できるかもし

れない。修学指導において、大学生活で何かに積極的に取り組むことは、就職のためだけでなく心身と

もに健康に生きていくために重要な取り組みであることを理解させるような指導が有効と考えられる。

題目

表 8 インターネット依存レベルと日常生活におけるメンタルヘルス(不良度)レベルの変化の割合

4.考察

本研究の結果、本学学生の生活習慣や日常生活や大学生活におけるメンタルヘルス特性、インターネ

ット依存度に関するいくつかの実態が浮かび上がった。

生活習慣に関しては、睡眠時間に変化はないが、就床時間と起床時間については入学当時より早くな

った者が就床時間は 15.7%、起床時間は 6.1%に対し、遅くなった者は、就床時間は 33.4%、起床時間

は 33.0%と「遅く寝て、遅く起きる者」が増加していることが明らかになった。それに伴い、朝食を毎

日食べる学生が入学当初は 7 割以上であったが、1 年終了時には 5 割程度まで減少している。朝食を食

べない者は入学当時 8%程度であったが、1 年終了時には 18%まで増加している。大学 1 年生の生活習

慣の悪化は多くの関連研究でも報告されており 11-12)、本学学生も同様な傾向にある。運動頻度は減少し

た者が 18.5%、増加した者が 28.3%、アルバイトの実施は、やめた者が 2.2%、新たにはじめた者が

27.2%と、生活の慣れに伴い、学業以外の事柄にも取り組む学生が増加している状況を窺うことができ

る。

学生生活におけるメンタルヘルスに関しては、「不規則な日常生活」以外は、入学当時と 1年終了時の

割合に大きな変化はない。「不規則な日常生活」については、「食事を摂るのが不規則である」「寝る時間

が不規則である」「起床する時間が不規則である」「帰宅時間が遅い」「睡眠時間が短い」「自分の食事の

栄養バランスは良くないと思う」に対する回答を得点化した。先に述べた生活習慣に関する質問項目と

重複する項目が多いことから、この変化については十分予測が可能である。しかし、個人内での変化に

関しては、それぞれの項目において、悪化と改善が見られる。特に「大学生活への充実感の乏しさ」は、

改善された者が 11.3%に対し、悪化が 24.2%となっている。今回、「大学生活への充実感の乏しさ」に

ついては、「大学の行事にはあまり参加していない」「暇をもてあますことがある」「学内の友人は少ない」

「学生生活(勉強を除く)がおもしろい(逆転項目)」「サークル活動(学内外問わず)にはあまり参加

していない」「ゲームを長時間する」に対する回答に基づく。少子化が進み全入時代にある現在では、目

ネット依存レベル 度数(人) 計悪化 206 36.9 (3.6) 41.3 (-2.4) 21.8 (-0.9) 100.0

変化なし 1049 24.8 (-2.7) 50.9 (2.4) 24.3 0.0 100.0改善 141 25.5 (-0.3) 46.8 (-0.6) 27.7 (1.0) 100.0計 1396 26.6 49.1 24.3 100.0欠損 15

ネット依存レベル 度数(人) 計悪化 206 35.0 (3.6) 47.0 (-1.4) 18.0 (-2.0) 100.0

変化なし 1049 24.2 (-1.2) 52.6 (1.4) 23.2 (-0.4) 100.0改善 141 16.3 (-2.5) 50.4 (-0.3) 33.3 (2.9) 100.0計 1396 25.0 51.6 23.4 100.0欠損 15

ネット依存レベル 度数(人) 計悪化 206 28.6 (1.4) 51.5 (-0.7) 19.9 (-0.6) 100.0

変化なし 1049 25.3 (0.7) 53.8 (0.1) 21.0 (-0.9) 100.0改善 141 15.6 (-2.7) 56.0 (0.6) 28.4 (2.1) 100.0計 1396 24.8 53.6 21.6 100.0欠損 15

ストレス度χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

注)*:p<.05(両側検定),**:p<.01(両側検定),***:p<.001(両側検定),表中の数値は相対度数(%),括弧内の数値は調整済み標準化残差を示している.χ2

検定の結果、有意であった場合、調整済み標準化残差を参照する.調整済み標準化残差は,絶対値が1.96以上であれば有意水準5%で有意に特徴的であり,

数値が「+」であれば「多い」,「-」であれば「少ない」を意味する.例えば「ネット依存レベルが悪化した」者のうち,「ストレス度が悪化」した割合は36.9%,調整済

み標準化残差は3.6であり,「ネット依存レベルが悪化し,ストレス度が悪化した」者は有意に大きいことを示している.

ネット依存レベル:5段階評価13項目の合計得点の平均値±1SDに基づき3段階(レベル1:平均値-1SD未満、レベル2:平均値-1SD以上平均値+1SD未満、レベル

3:5点以上(ややある~非常にある)に分類.春に比べレベルが上がった場合を「悪化」,変化がない場合を「変化なし」,レベルが下がった場合を「改善」と分類.

日常生活におけるメンタルヘルス:ストレス度,疲労度,うつ度におけるレベル分けは総務省「メンタルヘルス・シート」の分類に準拠.春に比べレベルが上がった場

合を「悪化」,変化がない場合を「変化なし」,レベルが下がった場合を「改善」と分類.

うつ度

14.139** 0.007

疲労度χ2=(df=4) p

悪化 変化なし 改善

9.926* 0.420

悪化 変化なし 改善

22.310*** 0.000

χ2=(df=4) p

111大学生における生活習慣の経時的変化がメンタルヘルスに与える影響

Page 12: 大学生における生活習慣の経時的変化が メンタルヘルスに与 …を行った。書面にて研究の目的、データ処理法、プライバシーの保護等について説明し同意を得た。な

題目

6.謝辞

本研究は、金沢工大学園平成 24・25年度「若手教員研究助成金」による助成、及び科学研究費補助金

(基盤研究(C)課題番号 15K01667)を受けて実施した。ここに感謝の意を表します。

参考文献

1)岡安孝弘.学校ストレスと不登校への行動科学的アプローチ.[In]新しいストレスマネジメントの

実際-e-healthから筆記療法まで-,pp.103-106.至文堂,東京,2006.

2)三島徳雄.積極的傾聴法による職場のストレスマネジメント.[In]新しいストレスマネジメントの

実際-e-healthから筆記療法まで-,157-160.至文堂,東京,2006.

3)荒井弘和,木内敦詞,中村友浩,浦井良太郎.大学 1年生における身体活動量と性別・運動経験・日常

生活行動との関係.大学体育,30:21-26,2003.

4)Fukuda K,Ishihara K.:Age-related changes of sleep pattern during adolesceace.Psychiatr

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5)Carskadon MA.:Patterns os sleep and sleepiness in adolescents.Pediatrician,17:5-12,1990.

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慣とメンタルヘルスの関係.KIT Progress-工学研究,21:147-155,2014.

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8)松原達哉,宮崎圭子,三宅拓郎.大学生のメンタルヘルス尺度の作成と不登校傾向を規定する要因.

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9)総務省人事・恩給局.メンタルヘルスシート解説と活用の手引 (財)能率増進研究開発センター

10)総務省 情報通信政策研究所.青少年のインターネット利用と依存傾向に関する調査.2013.

11)森谷潔,新国三千代,福地保馬.大学生にみるライフスタイルと心身諸機能の連関.北海道大學教育

學部紀要 57, 185-221, 1992.

12)川崎晃一,實藤美帆,他 9名.大学生の健康度・生活習慣に関する研究-第 4報:新入生の入学時と夏

休み終了後の比較-.健康・スポーツ科学研究,6:1-7,2004.

[受理 平成 27 年 9 月 3 日]

鈴木 貴士 講師 基礎教育部 修学基礎教育課程

佐藤 進 准教授・博士(学術) 基礎教育部 修学基礎教育課程

川尻 達也 助教 基礎教育部 修学基礎教育課程

山口 真史 講師 金沢工業高等専門学校 一般教養

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