炭素繊維複合糸から成る織物を活用 したCFRTP製品の事業化 …炭素繊維とは...

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炭素繊維複合糸から成る織物を活用 したCFRTP製品の事業化試験 株式会社槌屋 技術開発本部 新製品開発センター 松本 将和 目次 1.CFRP概要 2.開発の背景 3.育成試験内容 4.結果 5.まとめ

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  • 炭素繊維複合糸から成る織物を活用したCFRTP製品の事業化試験

    株式会社槌屋

    技術開発本部

    新製品開発センター

    松本 将和

    目次

    1.CFRP概要

    2.開発の背景

    3.育成試験内容

    4.結果

    5.まとめ

    http://ord.yahoo.co.jp/o/image/_ylt=A2Rivchcfs1WVCEA3zGU3uV7/SIG=1358ueo9t/EXP=1456394204/**http:/www.sato-kigata.com/blog/wp-content/uploads/2014/10/img_film_L-530x397.jpg

  • 炭素繊維とは 鉄と比較して

    ○比重: 1/4 →軽い

    ○比強度: 10倍以上 →高強度

    航空機・自動車の軽量化に

    期待される材料

    1.CFRP概要

    炭素繊維の需要は年々高まってきている ※東レ技術資料より

    年代ごとの炭素繊維使用状況

  • 炭素繊維強化プラスチック(CFRP) (Carbon Fiber Reinforced Plastic)

    強化材に炭素繊維、マトリックス材に熱硬化or熱可塑樹脂を用いた複合材料

    樹脂

    炭素繊維

    熱硬化性樹脂: エポキシ、ビニルエステル等 熱可塑性樹脂: 6ナイロン、ポリカーボネート等

    CFRPの採用例(自動車) ○トヨタ Mirai

    水素タンク

    FCスタックプレート

    ○ BMW i3

    ※東レ技術資料より

    CFRPボディ

    ※BMW HPより

  • CFRTPとは (Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastic)

    マトリックス樹脂に熱可塑性樹脂を使用したもの (加熱すると軟化し、冷却すると固化する樹脂)

    特長: ・CFRPと比較し成形サイクルが短い ・再成形可能(2次加工性に優れる)

    自動車

    航空機

    医療

    BMW HPより

    LORD Corporation 資料より

    CFRTP製品の展開先

  • 開発の背景 ・炭素繊維の製織に専用の織機・建屋が必要… ⇒コストがかかり、新規参入が困難

    毛羽が発生

    ⇒飛散し周りの 機器に悪影響

    あらかじめ炭素繊維をマトリックス樹脂で 被覆することで、汎用の織機で製織できないか?

    炭素繊維+樹脂一体の複合糸から 成る織物(CFRTP用基材)の開発

    2.開発の背景

    開発当初

    炭素繊維 カバリング糸

    製織

    成形

    開発協力:尾張繊維技術センター 三河繊維技術センター

    炭素繊維をナイロン糸で 巻きつけてカバリング

    織物基材

    CFRTP

    (CFRTP製造までの流れ)

  • 性能評価

    ・断面観察(走査電子顕微鏡:SEMによる) 繊維間に隙間がある ⇒樹脂の含浸が不十分

    200μm 20μm

    課題

    成形

    成形不良になりやすい

    繊維束の中まで樹脂が 含浸しにくい

    カバリングの工程で 炭素繊維束が丸くなる

    炭素繊維 (3K)

    ナイロン糸

  • カバリング糸の断面

    炭素繊維が丸く(太く)なっている

    炭素繊維

    ナイロン糸

    改良案 薄いため中まで樹脂が 含浸しやすい

    成形

    含浸性良好

    フィルムor 不織布

    炭素繊維束(3K)

    炭素繊維束が薄い状態で カバリング

  • 開発①~フィルムタイプ~ マトリックス樹脂:6ナイロンフィルム(t=30μm) →8mm幅にスリット加工したものを炭素繊維に被覆 して複合糸を作製 →複合糸を試織

    ○結果・・・ なんとか製織は出来たが 織密度が大きくばらついて しまった

    フィルムが硬く、汎用の 織機で織るのが難しい

    複合糸

    織物

    3.育成試験内容

    フィルムタイプのCFRTP成形~評価

    積層枚数: 8枚 成形方法: 熱プレス成形(250℃) サイズ : 80㎜×180㎜

    3点曲げ試験にて強度を評価 (N=5)

    最小値45MPa、最大値471MPa

    サンプルの採取場所により大きくばらついた

  • CFRTPの成形方法

    成形工程は比較的シンプル

    CF織物

    熱可塑性樹脂 熱プレス成形 成形品

    冷却 金型へ投入

    開発②~不織布タイプ~

    マトリックス樹脂:6ナイロン不織布(目付:25g/㎡) →7mm幅にスリットしたものを炭素繊維に被覆して 複合糸を作製 → 試織

    ○結果・・・ 通常の糸を織る要領で、問題なく製織出来た

  • 不織布タイプのCFRTP成形~評価

    積層枚数: 8枚 成形方法: 熱プレス成形(250℃) サイズ : 80㎜×180㎜

    3点曲げ試験にて強度を評価 (N=5)

    最小値97MPa、最大値153MPa

    フィルムタイプより強度が低い

    糸の断面観察(フィルムタイプ)

    炭素繊維

    フィルム

    炭素繊維は薄くつぶれている

  • 糸の断面観察(不織布タイプ)

    炭素繊維は丸くなっている

    炭素繊維 不織布

    ○フィルムタイプ 長所: 炭素繊維を比較的薄い状態で被覆できる 短所: 製織が困難で織密度が大きくばらつく

    ○不織布タイプ 長所: 製織が問題なく可能 短所: 被覆時、炭素繊維が丸くなりやすい

    それぞれの短所は織機の改良および製織条件の 調整により改善可能?

  • 改良検討(織機の調整)

    ○織機の変更 前回:少量試作用の 見本織機 今回:量産を見据えた 実機生産向けの織機

    試作: 三河繊維技術センター

    改良検討に使用した織機

    タテ糸とポリウレタンフォームを同時に巻き付ける

    ポリウレタンフォーム

    ◇調整点その1

  • ◇調整点その2

    扁平な糸に対応した特殊綜絖の採用

    ◇調整点その3

    ヨコ糸給糸時、超鋼の特殊カッターを使用

  • 試作結果 ◇フィルムタイプ 織物形状:平織

    設計値:タテ糸、ヨコ糸 13本/1インチ 実測値:タテ糸13本/1インチ、ヨコ糸12本/1インチ

    4.結果

    ◇不織布タイプ 織物形状:平織

    設計値:タテ糸、ヨコ糸 13本/1インチ 実測値:タテ糸14本/1インチ、ヨコ糸12本/1インチ

  • 糸の断面観察(フィルムタイプ)

    炭素繊維は薄くつぶれている

    炭素繊維 フィルム

    一部イレギュラーな形状や、つぶれていない ものも見受けられた

    炭素繊維 フィルム 炭素繊維 フィルム

  • 糸の断面観察(不織布タイプ)

    織機調整前よりも薄くなった

    炭素繊維

    不織布

    ◇炭素繊維のつぶれ方=扁平率として数値化

    a

    b

    扁平率 = 1-a/b

    炭素繊維

    扁平率が1に近い程薄くつぶれている =樹脂の含浸性において有利

  • 各種織物基材から糸を抽出 ⇒断面形状から扁平率を計算

    フィルムタイプ 不織布タイプ フィルム 不織布タイプ カバリング糸

    扁平率 0.9 0.7 0.9 0.6 0.2

    織機調整後 調整前

    CFRTP成形検討

    あいち産業科学技術総合センターHPより

    200tf ホットプレス

    ◇成形条件 プレス機: 200tfホットプレス※

    積層枚数: 8枚 成形サイズ: 200㎜×300㎜ 成形温度: 280℃ 成形圧力: 約30MPa

    ※あいち産業科学技術総合センター 産業技術センター所有設備

  • ◇成形したCFRTP(フィルムタイプ)

    成形品端部に炭素繊維のうねりがみられる

    ◇成形したCFRTP(不織布タイプ)

    フィルムタイプより炭素繊維のうねりが顕著

  • CFRTPの評価 (ベンチマーク含む)

    評価方法② 3点曲げ試験 JIS K7074「炭素繊維強化プラスチックの曲げ 試験方法」

    評価方法① Vf(繊維体積含有率)の測定

    Vfの測定方法

    試作したCFRTPの密度ρCFRTPを測定し 既知の炭素繊維密度ρCFと樹脂密度ρ樹脂から算出

    密度計(気相置換法)

    ρCFRTP=ρCFVf+ρ樹脂(1-Vf)

  • 3点曲げ試験

    JIS K7074「炭素繊維強化プラスチックの曲げ 試験方法」 準拠

    CFRTPサンプル

    フィルムタイプ 不織布タイプ 他社品

    63 64 51

    曲げ応力[MPa] 555 563 573

    曲げ弾性率[MPa] 61 58 47

    3点曲げ試験

    Vf[%]

    評価結果 他社品CFRTPシート材(使用樹脂:PA66)と比較

    開発品はVfに対して曲げ応力がやや低い 曲げ弾性率はVf相応の数値となった

  • 曲げ応力の比較

    いずれのタイプも他社製品同等の強度 不織布タイプのばらつきがやや大きい

    フィルムタイプ 不織布タイプ 他社製品

    CFRTPの観察(SEM 1000倍画像)

    フィルムタイプ

    不織布タイプ

    他社品

    カバリング糸

    曲げ試験後の破断面観察

  • 断面観察

    φ10μm以下の空隙が一部存在

    フィルムタイプ

    不織布タイプ

    ×250

    10μm

    10μm 50μm

    50μm

    まとめ

    汎用織機に各種調整を行うことで複合糸を問題なく製織出来た

    専用の織機・建屋を必要とせず、既製品同等性能のCFRTP用基材を製造可能

    5.まとめ

    CFRTP

    炭素繊維の扁平率

    製織性 曲げ強度

    × ○ ×

    フィルムタイプ ○ × △

    不織布タイプ × ○ ×

    フィルムタイプ ○ ○ ○

    不織布タイプ △ ○ ○

    カバリング糸

    織機調整前

    織機調整後

    織り基材

  • 今後の課題 ・マトリックス樹脂の目付等、仕様の確立 ・CFRTP成形条件の確立 ・フィルムタイプ、不織布タイプそれぞれの 特長、優位性を模索

    織物基材、CFRTPの作りこみにより 更なる品質向上をめざす

    ご清聴ありがとうございました