航空交通の運用データとその活用 CARATS Opendata: FIT2016

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航空交通の運用データとその活用 FIT2016 15回情報科学技術フォーラム 2016.9.7-9 1 平成2898国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所 岡 恵

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航空交通の運用データとその活用

FIT2016 第15回情報科学技術フォーラム 2016.9.7-9

1

平成28年 9月8日

国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所

電子航法研究所 岡 恵

電子航法研究所の概要

国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所

電子航法研究所(ENRI: Electronic Navigation Research Institute)

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昭和42年 運輸省 電子航法研究所 設立 今年4月~ 3研究所の統合により 国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所

電子航法研究所は、

航空交通管理(ATM)とそれを支える通信・

航法・監視技術などからなる航空交通システム

に関する我が国唯一の研究機関として

航空の安全性・効率性の向上、地球環境保全

などを目指して研究開発を行っています。

発表内容

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航空管制とデータ公開

CARATS Open Dataの取り組み

CARATS Open Dataの活用例

航空交通管理における課題

航 空 管 制

ターミナル空域

飛行経路

制限空域

ターミナル空域 ターミナル空域

ターミナル

レーダ管制 ターミナル

レーダ管制

飛行場管制 飛行場管制

空港 空港

制限空域

航 空 路 管 制

空域の境界線

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出典: 国土交通省

運航の安全性と効率性を確保 航空機相互間の衝突を防止する 秩序正しい流れを促進し維持する

航空管制の主な目的

航空管制の例

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(出典:国土交通省 航空管制官公式HP) http://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr14_000003.html

実運用データ公開の便益

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海外では多くの航空交通に関するデータが公開されている ASPM(米国)、BADA(欧州)など

利用者の便益

・複数の研究報告間の結果の比較

・下処理の一元化による処理効率の向上

・異なる分野からの研究参入の促進

公開元の便益

・社会的信頼性や認知度の向上

・現実の課題に即した研究成果

・当該分野における人材育成

航空会社の判断

気象 パイロットの判断

管制官の判断

航空機型式による 特性の違い

実際の航空機の運航には様々な不確実性の要因が存在する

現状の正確な把握 複雑な構造に対する理解の促進 データを元にした未知の指標の推定

データ公開により

研究の裾野の拡大 複数の視点からの評価

航空交通管理では・・・

CARATS Open Data の取り組み

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CARATS Open Dataの公開

研究の裾野拡大 → 航空交通システムの運用改善

2015年 2月~ 国土交通省航空局が提供開始

“ CARATS Open Data ” (2012年度の6週間分の航空交通データ)

CARATS・・・Collaborative Actions for Renovation of Air Traffic Systems

「将来の航空交通システムに関する長期ビジョン」

2025年に向けて目指すべき目標、変革の方向性等を記述

・安全性等6つの項目の数値目標

・目標達成のための8つの変革の方向性

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研究・開発 今年8月3日に新しいデータがリリース

CARATS Open Data 2013 & 2014

CARATS Open Dataの作成 各管制部の 処理装置

管制卓

座 標 系

Open Data作成

緯度、経度

変換 ・角距離の算出 ・球面三角法

レーダーサイトからの

距離 r と方位 θ

管制部を原点とした

x, y座標

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航空路監視レーダー

札幌管制部

東京管制部

福岡管制部

那覇管制部

管制部毎に データが 記録される

出典:国土交通省

管制卓表示画面

出典:国土交通省

OpenData2013&2014では羽田空港のデータも使用

PlotTrack

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再生時刻 便名 高度(100ft単位)

ファイル選択 動画開始・停止 ボタン

時刻選択リスト

表示範囲

表示モード

倍速選択

デモ

PlotTrack : 航跡動画表示プログラム だれでも簡単にOpenDataの内容を動画で見ることが可能 JAVAで動作 OpenDataに添付して配布 電子航法研究所が製作

CARATS Open Dataの概要

2012年度、2013年度、2014年度の奇数月の1週間(計18週間)

日本が管轄する福岡FIR内のレーダー管制を行っている範囲

のべ約46.8万便の航跡データ (14.8万便(2012)、 15.7万便(2013)、 16.4万便(2014))

レーダーデータ(航空路管制、羽田空港ターミナル管制(2013~)) 飛行計画データを使用して作成

計器飛行方式による定期便(軍用機、自家用機などは対象外)

約10秒間隔、時系列のCSV形式 (例:1便1時間分のデータ 360行)

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00:00:00,FLT0001,43.876627,138.214323,32000,B77W

時刻 便名 緯度 経度 高度 型式

時:分:秒 (日本時間)

データ時刻 (2013から、 1/10秒単位)

仮想 便名

“FLT”+ 4桁の番号

平滑xy座標から変換

度単位 小数点以下6桁

ft単位

平滑高度 飛行計画 の型式

国際的 略号

国内大学43%

国内

研究機関5%

国内産業界36%

その他8%

海外8%

データ提供状況 提供先 件数

国内大学 17

国内研究機関 2

国内産業界 14

その他 3

海外 3

合計 39機関

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平成28年7月時点 同一提供先で異なるグループへの提供もあるため、 提供先グループ数は上記総数より多い

提供の流れ

① メールで申し込み → 返信

② DVDを郵送 → データを複写して返送

研究成果のフィードバック

CARATSオープンデータ 活用促進フォーラム 開催日:平成27年9月4日

参加者:研究機関、大学など 64名

発表された研究成果

航空交通管理、気象の影響と航跡、

滑走路容量と離着陸運航効率 等

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会場の様子

実運用 オープンデータ

0

5

10

7 8 9 10 11

研究成果 研究成果を出したところで 終わらせるのではなく、 実運用にフィードバック させることが大事

フィードバックの一環として…

CARATS推進協議会

分科会、WG 産学官の参加者間で議論

CARATSオープンデータ活用促進フォーラム

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「CARATSオープンデータ活用促進フォーラム」の開催について ~将来の航空交通システム構築に資するため、航跡データを元に議論を

産学官で行えるプラットホームを提供します~

平成28年12月9日(金) 13:30~17:00

グランフロント大阪 北館 タワーB 10F カンファレンスルーム(Room B05+B06+B07)

①基調講演 屋井鉄雄 東京工業大学大学院教授 「CARATSオープンデータの今後の活用と期待について」

②CARATSオープンデータの概要説明: 電子航法研究所 岡

③研究成果発表/討論: 宮沢与和 九州大学大学院工学研究院航空宇宙工学部門教授

武市 昇 首都大学東京システムデザイン研究科准教授

手塚 亜聖 早稲田大学理工学術院准教授

平田 輝満 茨城大学工学部都市システム工学科准教授

日時

場所

議題

参加申し込み方法

参加申込表(http://www.mlit.go.jp/common/001149765.doc)を以下までメールorFAXで送信してください。

E-mail: [email protected] FAX: 03-5253-1664

詳しくは、http://www.mlit.go.jp/report/press/kouku13_hh_000087.htmlをご覧ください。

CARATS Open Data の活用例

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数値予報

GPVデータ

BADA

性能モデル

抗力

推力

燃料流量

時刻

位置情報

対地速度

飛行方位

大気圧

大気温度

風速

対気速度

較正対気速度

マッハ数

【燃料消費量の推定】

空力データ

推進データ

燃料流量データ

気象庁 EUROCONTROL

運動

モデル

Σ(燃料流量)=

燃料消費量

交通流全体での燃料消費量の推定

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CARATS

Open Data

“Optimization-Based Performance Assessment on 4D-Trajectory Based Operations with Track Data”

Navinda Kithmal Wickramasinghe, EIWAC2015

選択した日の 定期便ほぼ全体の 燃料消費量

航空機の効率性の評価には燃料消費量の指標が重要

燃料消費量は運航の効率性の重要な指標(運航コストや排出ガス量) 現状認識や改善のための施策の便益評価 精度の高い評価

解析結果の一例 航空機型式毎の燃料消費量

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Type B:中型機

Type A:小型機

Type C:大型機

オープンデータである、「CARATS Open Data」 ・ 「気象庁GPVデータ」 ・ 「BADA機体性能モデル」から、多数の便について燃料消費量を推定した。

どのような特徴量が影響を強く与えるのか? ・季節による違い ・航空機の大きさによる違い

2013年1月

飛行時間に対する正規化した燃料消費量

2012年5月

気象情報可視化ツール Wvis

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気象情報可視化ツール Wvis 東海大学 航空操縦学専攻 新井直樹教授 作成

http://www.cybernet.co.jp/avs/download/wvis.html

気象庁の数値予報GPVデータを読み込み、気象を3次元で表示し、マ

ウスで画面を自由に動かして、気象現象の立体的な構造を見ることができる。

CARATS Open Dataのインポートが可能になり、気象と航跡を3次元で重畳表示できるようになった。

Wvisは無償のユーティリティツール、GPVデータ、CARATS Open Dataはオープンデータである。

航跡 (高度での色分け)

羽田空港への 到着機

風向・風速 (矢印)

等風速面の形状

上昇流

航空交通管理における課題

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・安全性の向上(安全性を5倍に向上)

・航空交通量増大への対応

(混雑空域における管制の処理容量を2倍に向上)

・利便性の向上(サービスレベルを10%向上)

等、7項目

CARATSの目標

CARATSの目標

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CARATS・・・「将来の航空交通システムに関する長期ビジョン」 2025年に向けて目指すべき目標、変革の方向性等を記述

・軌道ベース運用の実現 ・予見能力の向上 ・性能準拠型の運用 ・全飛行フェーズでの 衛星航法の実現

等、8項目

変革の方向性

空域ベースのATM運用に起因する課題 分割された空域、固定的な経路により特定の空域及び経路への交通流の集中 短期的な経路予測しか行えないため、全体を通した効率性の最適化が不可能

情報共有に起因する課題 情報共有が部分的であるため、協調した意思決定が十分行われていない

現行の航空交通システムにおける課題

ブレークスルー の期待

データから得られる便益への期待

便数を増やせば処理機数が拡大する?

様々な不確実性の要因が存在する

「複雑系のシステム」

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例えば・・・

数多くのデータから知識を得る データマイニング

実際の航空機の挙動・気象の影響・管制官の運用がデータに含まれている

複雑な構造に対する理解の促進、現実の事象のモデル化

航空交通システムの改善

経験則や専門的知識に裏付けられた判断 → 航空システムは長らく改善を繰り返してきた 高度に複雑なシステム

航空交通量の増大への対応 混雑空域のピーク時間帯における処理機数の拡大

情報工学的アプローチの例

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従来的な手法では・・・ 管制官への聞き取り → 個々人の考え方の違い シミュレーション → 現実とのギャップ、 モデルの精度に依存 統計解析 → 結果が表す意味

新たなアプローチ データから知見を得る ディープラーニング データマイニング

数理モデル化 可視化 など

複数の航空機が一点に合流する場合、

どのような順序にするか?

管制官は何を考慮するか? ・航空機の位置・高度・速度

・飛行経路の構成

・風向・風速

・レーダー誘導を行う際の空域

・・・・など

情報工学的アプローチを活用したフィードバック

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軌道予測

電子航法研究所では大学等との共同研究を積極的に行っております 電子航法研究所HP : http://www.enri.go.jp/

運用への応用 管制支援機能

航空交通 システム は複雑系

管制処理の モデル化

ソフトウェア開発分野など

早期に社会に公開し フィードバックを得ながら開発 オープンスパイラルモデル

航空交通システムでは安全性が極めて重要!

実際の環境での評価が難しい

現実を模擬したシミュレーションや 数理モデルでの評価が大事

気象予測

データ マイニング、 人工知能等の

情報処理 技術

高精度の モデル 評価への応用

施策便益評価 シミュレーション

まとめ

CARATS Open Data が2015年2月に国土交通省から公開 2012~2014年度の奇数月の1週間、合計18週間分 のべ46.8万便

レーダーデータから作成した日本全国の航空機の航跡

CARATSで示される長期ビジョンを実現するための 研究開発が期待されている

航空機の運航は気象など様々な不確実要因により複雑な構造

複雑な構造の現象の数理モデル化 → 要因の推定、施策便益の評価

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CARATS オープンデータ申請窓口

国土交通省 航空局 交通管制部 交通管制企画課 将来の航空交通システムに関する推進協議会事務局

e-mail: [email protected] プレスリリースURL: http://www.mlit.go.jp/report/press/kouku13_hh_000086.html

“交通管制部データ 2013”で検索してください