第63回(2019年度) 北海道開発技術研究発表会論文 郊外部での ......Yutaka Saito,...

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Yutaka Saito, Mitsuyo Honma, Kazuyuki Kuwabe 第63回(2019年度) 北海道開発技術研究発表会論文 郊外部での自転車路面表示の効果について -継続的に整備することの効果検証結果- 旭川開発建設部 道路計画課 ○齋藤 浩 本間 光世 日本工営(株) 桒邊 和幸 上川層雲峡地域の国道39号では、自転車利用者の安全性向上を目的に、平成27年度から自転 車道と接続する区間に自転車走行を示す路面表示を施工し、令和元年度に全線整備(約30km) を行った。並行して「国道39号上川層雲峡方面サイクリング利用支援検討会」を開催し、路面 表示内容の検討と休憩施設の必要性・あり方の検証を行った。本論文は、平成27年度から継続 的に実施した自転車利用環境整備の取組内容をまとめて報告するものである。 キーワード:観光・景観、産業振興、事故防止 1. はじめに 平成29 5月に自転車活用推進法が施行され、今まで 以上に自転車の利用環境整備の推進が予想される。 旭川開発建設部では、道北の観光拠点である旭川市内 から主要観光地である上川町層雲峡間( 70km) のうち、 旭川層雲峡自転車道線の未整備区間( 29.3km) について、 接続する国道39 号を対象に平成27 年度から自転車用路面 表示を整備し、令和元年度に全線整備した( -1 参照) また、自転車・自動車双方が安全・安心に走行できる 環境の創出を目的に、旭川開発建設部を事務局として 「国道39号上川層雲峡方面サイクリング利用支援検討 会」( 以下、「検討会」という) を開催した。検討会では、 主に郊外部での自転車用路面表示の内容、休憩施設の必 要性・あり方の検証を行っている。 本論文では、自転車用路面表示の整備が完成したこと から、平成27 年度からの取組内容をまとめて報告する。 -1 取組区間位置図 2. 検討内容 平成27 年度から令和元年度に実施した自転車利用環境 に関する整備・取り組み概要を示す。 安全性向上を目的に、矢羽根型路面表示を中心とした 自転車走行を示す路面表示、自転車ピクトグラムの形状、 覆道等の路側帯幅員狭小部における路面表示を検討した。 また、自転車利用者を対象とした休憩機能のあり方を 検討するため、休憩機能の整備、自転車利用環境整備の 情報発信、地域活性化に向けたサービスを試行した。 (1) 矢羽根型路面表示の検討 自転車用路面表示は、「安全で快適な自転車利用環境 創出ガイドライン 平成287月」(以下、「ガイドライ ン」という) 作成前から整備を始めたこと、自動車走行 速度の高い郊外部に位置することから、路面表示の効果 検証結果を基に、年度により路面表示内容を変化させて いる。平成27 年度はブルーライン、平成28 年度は矢羽根 型路面表示(20m間隔) 、平成29年度以降は矢羽根型路面 表示(80m間隔)を整備し、最終的に矢羽根型路面表示 (80m 間隔) を採用した( -2 参照) -2 路面表示の整備状況 80m ブルーライン (平成 27 年度) 矢羽根型路面表示 (平成 29 年度~)

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Yutaka Saito, Mitsuyo Honma, Kazuyuki Kuwabe

第63回(2019年度) 北海道開発技術研究発表会論文

郊外部での自転車路面表示の効果について -継続的に整備することの効果検証結果-

旭川開発建設部 道路計画課 ○齋藤 浩

本間 光世

日本工営(株) 桒邊 和幸

上川層雲峡地域の国道39号では、自転車利用者の安全性向上を目的に、平成27年度から自転

車道と接続する区間に自転車走行を示す路面表示を施工し、令和元年度に全線整備(約30km)

を行った。並行して「国道39号上川層雲峡方面サイクリング利用支援検討会」を開催し、路面

表示内容の検討と休憩施設の必要性・あり方の検証を行った。本論文は、平成27年度から継続

的に実施した自転車利用環境整備の取組内容をまとめて報告するものである。

キーワード:観光・景観、産業振興、事故防止

1. はじめに

平成29年5月に自転車活用推進法が施行され、今まで

以上に自転車の利用環境整備の推進が予想される。 旭川開発建設部では、道北の観光拠点である旭川市内

から主要観光地である上川町層雲峡間(約70km)のうち、

旭川層雲峡自転車道線の未整備区間(約29.3km)について、

接続する国道39号を対象に平成27年度から自転車用路面

表示を整備し、令和元年度に全線整備した(図-1参照)。 また、自転車・自動車双方が安全・安心に走行できる

環境の創出を目的に、旭川開発建設部を事務局として

「国道39号上川層雲峡方面サイクリング利用支援検討

会」(以下、「検討会」という)を開催した。検討会では、

主に郊外部での自転車用路面表示の内容、休憩施設の必

要性・あり方の検証を行っている。 本論文では、自転車用路面表示の整備が完成したこと

から、平成27年度からの取組内容をまとめて報告する。

図-1 取組区間位置図

2. 検討内容

平成27年度から令和元年度に実施した自転車利用環境

に関する整備・取り組み概要を示す。 安全性向上を目的に、矢羽根型路面表示を中心とした

自転車走行を示す路面表示、自転車ピクトグラムの形状、

覆道等の路側帯幅員狭小部における路面表示を検討した。 また、自転車利用者を対象とした休憩機能のあり方を

検討するため、休憩機能の整備、自転車利用環境整備の

情報発信、地域活性化に向けたサービスを試行した。

(1) 矢羽根型路面表示の検討 自転車用路面表示は、「安全で快適な自転車利用環境

創出ガイドライン 平成28年7月」(以下、「ガイドライ

ン」という)作成前から整備を始めたこと、自動車走行

速度の高い郊外部に位置することから、路面表示の効果

検証結果を基に、年度により路面表示内容を変化させて

いる。平成27年度はブルーライン、平成28年度は矢羽根

型路面表示(20m間隔)、平成29年度以降は矢羽根型路面

表示(80m間隔)を整備し、最終的に矢羽根型路面表示

(80m間隔)を採用した(図-2参照)。

図-2 路面表示の整備状況

80m

ブルーライン (平成27年度)

矢羽根型路面表示 (平成29年度~)

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(2) 自転車ピクトグラムの形状検討

矢羽根型路面表示とともに、自転車ピクトグラムを整

備している。形状については、自動車からの視認性を高

めるため、「検討会」での意見を踏まえ改良を行い、走

行方向に引き延ばしている(L=8.0m)。

(3) 路側帯幅員狭小部の路面表示検討

覆道やトンネル等の路側帯(路肩)が狭くなる幅員狭小

部については、自動車で走行する方が自転車に注意した

走行となるように、入口手前にて注意を促す路面表示を

整備した。表示内容は、自動車利用者を対象に印象を評

価するアンケート調査結果を用いて決定した(図-3参照)。 (4) 休憩機能の整備

自転車利用者の休憩スペースの確保、安心感の向上を

目的に、既存施設に自転車利用者用の設備を配置した休

憩施設を整備した(表-1参照)。 既存施設として、パークゴルフ場管理棟、観光協会、

温泉、商業施設を活用した(図-4参照)。 (5) 自転車利用環境整備の情報発信

自転車利用環境創出の取組を広く周知するため、取組

と休憩施設位置、周辺の観光資源等の情報を掲載したパ

スター、チラシを作成し、対象地域周辺の道の駅、観光

協会加入施設、旭川市内の自転車店、ルートが通過する

町の世帯等へ掲示・配布した(図-5参照)。

図-3 幅員狭小部の路面表示

表-1 休憩施設に用意した設備 分類 設備

自転車関連設備 サイクルラック・空気入れ パンフレット 自転車走行ルール・路面表示の取組チラシ その他 サイクリングマップ

図-4 取組を行った休憩施設と自転車用設備配置状況

旭川市~上川町層雲峡間のルート・標高を表示したサ

イクリングマップを作成し配布した。マップには、交通

結節点であるJR旭川駅・旭川空港位置、休憩施設・主要

観光地・走行時の注意箇所等の位置情報と、観光資源・

自転車安全利用五則等の情報を掲載した(図-6参照)。 広報活動の一環として、上川地方で開催されたサイク

ルイベントの会場にて、取組・自転車安全利用五則の紹

介、サイクリングマップの配布等を行った(図-7参照)。 (6) 地域活性化に向けたサービスの試行

旭川市内から上川町層雲峡間の自転車ネットワークが

形成されることを活用し、両拠点間を結ぶ無料送迎バス

を利用した荷物配送サービスの適用可能性を検討した。

走行体験会時に荷物配送サービスを試行し、関係者の意

見を聴取した(図-8参照)。

図-5 広報用チラシ

図-6 サイクリングマップ

図-7 サイクルイベント時の広報活動

図-8 走行体験会と荷物配送サービスの試行

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3. 検討結果

自転車利用者や自動車利用者等へアンケート調査等を

実施し、自転車利用環境に関する路面表示等の整備内容

や休憩機能のあり方等を検討した。

(1) 矢羽根型路面表示の配置間隔の検討

矢羽根型路面表示の配置間隔を決定するため、自動車

利用者を対象にwebアンケート調査を実施した。配置間

隔を20,40,80,160,320mとた自動車目線のシミュレーショ

ン動画の視聴により路面表示の気づきやすさを評価した。 アンケート調査の結果、80m間隔の場合、気づきやす

さの評価値が10段階評価の5.4となり中間値を上回る結

果となった。そこで、コスト面も考慮し、80m間隔を採

用した(図-9,10参照)。

図-9 矢羽根型路面表示の間隔によるきづきやすさ

図-10 単路部の路面表示内容

図-11 自転車ピクトグラムの形状

(2) 自転車ピクトグラムの形状検討

自転車ピクトグラムの形状については、「検討会」で

の意見を踏まえながら改良を行った。 平成30年度は、視認性向上を目的に、平成29年度の形

状と比較し自転車の形状を4/3倍に拡大するとともに、

自転車ピクトグラムと矢印の間隔を広げた(図-11参照)。

(3) 路側帯幅員狭小部の路面表示検討

路面表示内容は、webアンケート調査(438票回収)によ

る印象実験にて決定した。 a) 路面表示内容の決定方法

印象実験では、路面表示の3要素(表示の順番、矢羽根

型路面表示の数、配置間隔)について自動車を運転する

視点から、安全性を考えるうえでどのような組み合わせ

が望ましいか検討した(表-2参照)。評価は、3要素を組み

合わせた複数パターンのフォトモンタージュを作成し、

2枚毎を比較する一対比較法による多変量解析を用いた。 b) 路面表示内容の決定

アンケート調査の結果、順番は「ピクトグラムが先」、

間隔は「5m」、矢羽根数は「3つ」が選択され、路面表

示内容として採用した(図-12参照)。なお、最も寄与度が

大きいのは「順番」となり、次いで「間隔」であった。

表-2 路面表示の要素と評価の水準(選択肢)

要素 水準(選択肢) 画像 順番 ピクトが先

矢羽根が先

矢羽根 の数

2つ 3つ

配置 間隔

5m 10m

図-12 要素別カテゴリースコア

平成29年度

平成30年度

4/3倍に拡大 間隔を2.0mに拡大

矢印を細くする

6.7 6.4 5.4 4.8 4.5

0

5

10

20m 40m 80m 160m 320m

評価の平均値

N=69

気づきにくい

気づき

やすい

※自動車利用者(自動車を週2~3回以上利用)

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27% 36% 27%5%

45%

9%32%

5%5%

9%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1.0~

1.5m

0.5~

1.0m

0.0~

0.5m

0.0~

0.5m

0.5~

1.0m

1.0~

1.5m

1.5~

2.0m

2.0~

2.5m

2.5~

3.0m

3.0~

3.5m

3.5~

4.0m

4.5~

5.0m

路側帯 車線N=22

中央線→

軽+普通自動車に追い抜かれた時の自転車走行位置

大型自動車に追い抜かれた時の自転車走行位置

軽+普通自動車の追い抜き時の走行位置

大型自動車の追い抜き時の走行位置

矢印マーク、自転車マーク

外側線寄りにシフト

中央線寄りにシフト外側線

2% 2%25% 33%

15% 4%4%

65%

13% 6%

2%6%

2%2%

6%

13%

4%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1.0~

1.5m

0.5~

1.0m

0.0~

0.5m

0.0~

0.5m

0.5~

1.0m

1.0~

1.5m

1.5~

2.0m

2.0~

2.5m

2.5~

3.0m

3.0~

3.5m

3.5~

4.0m

4.5~

5.0m

路側帯 車線N=48

外側線寄りにシフト

中央線寄りにシフト 軽+普通自動車に追い抜かれた時の自転車走行位置

大型自動車に追い抜かれた時の自転車走行位置

軽+普通自動車の追い抜き時の走行位置

大型自動車の追い抜き時の走行位置

中央線→

矢印マーク、自転車マーク外側線

(4) 休憩機能の整備

サイクリングに求める施設を把握するため、自転車利

用者を対象にアンケート調査を実施した。 調査の結果、休憩・宿泊施設、トイレのニーズが高い

結果となった。自転車に特化した施設としては、給水施

設、駐輪施設・サイクルラック、空気入れ・修理施設が

挙げられている(図-13参照)。取組区間では、観光協会や

サイクリング協会により既存施設にサイクルラックの整

備が行われており、自転車利用者のサービス向上に寄与

しているものと考えられる。

(5) 自転車利用環境整備の情報発信

上川層雲峡の取り組みを知った情報手段を把握するた

め、自転車利用者を対象にアンケート調査を実施した。 調査の結果、サイクリングマップが最も多い。「イベ

ントで知った」との回答もあり、イベントでの情報提供

は有効である。「走行している時に気づいた」との回答

が23%あり、継続的に広報を行う必要がある(図-14参照)。 (6) 地域活性化に向けたサービスの試行

地域活性化に向けたサービスとして、荷物配送サービ

スを検討した。層雲峡温泉に宿泊する自転車利用者が、

送迎バスに荷物を預け配送していただくことで手ぶらで

サイクリングを楽しむ仕組みである。送迎バスの運行状

況とサイクリングに要する時間から実現可能性を検討し

た結果、適用可能性があることを確認した。 また、走行体験会時に試行した結果、観光関係者から、

令和2年度にサービスとして実施するための検討を行う

との意見を得ている。

図-13 サイクリングに求められる施設(R1調査)

図-14 上川層雲峡の取り組みを知った情報手段(R1調査)

4. 効果検証結果

路面表示による安全性等に関する効果と自転車ネット

ワークが形成される効果について検証を行った。

(1)路面表示の効果

効果検証として、路面表示の有無による挙動調査と路

面表示があることによる道路利用者の実感を把握するア

ンケート調査を実施した。

a) 挙動把握調査結果

自転車及び自動車の挙動を把握するため、路面表示の

施工あり・なし区間にてビデオ撮影調査を実施し、走行

位置を計測した。自転車及び自動車の走行位置は、ビデ

オ画面上で道路の断面を50cm間隔に分割し、車道最端

部からの走行位置をカウントした。 整備あり区間の自動車は、外側線から0.0~1.0mの走行

が減少し、外側線から離れた挙動となっている。整備あ

り区間の自転車は、外側線付近の走行が増加する傾向に

あり、路面表示の位置に向かって走行していることが考

えられる(図-15参照)。なお、自転車と自動車の離隔は、

整備あり・なし共に、概ね1.5m以上の離隔が確保されて

おり、自転車と接触する危険が少ない状況が確保されて

いる(自転車転倒時に自動車と接触する危険が少ない)。

図-15 自転車追い抜き時の自転車・自動車走行位置

矢羽根 80m間隔 (H29施工)

※1件は、中央線を越える走行のため特異値とし除外

10%

45%19% 13%6%

81%

3%

6%

3%3%

13%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1.0~

1.5m

0.5~

1.0m

0.0~

0.5m

0.0~

0.5m

0.5~

1.0m

1.0~

1.5m

1.5~

2.0m

2.0~

2.5m

2.5~

3.0m

3.0~

3.5m

3.5~

4.0m

4.5~

5.0m

路側帯 車線

外側線→

中央線

N=31

軽+普通自動車に追い抜かれた時の自転車走行位置

大型自動車に追い抜かれた時の自転車走行位置

軽+普通自動車の追い抜き時の走行位置

大型自動車の追い抜き時の走行位置

矢羽根 20m間隔 (H28施工)

23%17%

10%9%9%

7%6%6%

4%3%3%

10%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30%

休憩・宿泊施設トイレ

整備された道路給水施設、自動販売機

飲食店、売店自転車専用道路

駐輪施設、サイクルラックその他

空気入れ、修理施設レンタサイクル・サイクルショップ

自然その他 (N=177)

29%25%

38%32%

11%23%

4%3%

1%1%2%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

チラシポスター

サイクリングマップHP

facebook走行している時にきづいた今回のイベントで知った家族・友人から聞いた

知らなかった他の場所で見て知っていた

その他 (N=213)

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Yutaka Saito, Mitsuyo Honma, Kazuyuki Kuwabe

b) 路面表示による安心感向上評価結果

路面表示による安心感を評価するため、整備区間及び

周辺施設等で自転車利用者を対象にアンケート調査を実

施した(平成27~令和元年度)。 自転車通行時の路面表示があることによる安心感は、

令和元年度で約9割が「安心、やや安心」と回答してい

る(図-16参照)。平成27年度から向上傾向にあり、整備区

間延長の増加や路面表示の認知度向上が影響していると

考えられる。 自動車通行時の路面表示があることによる行動の変化

は、自動車の速度では令和元年度で約8割が「低くした、

やや低くした」と回答、路肩からの距離では令和元年度

で約9割が「離れた、やや離れた」と回答し、安全性向

上につながる行動を行っている(図-17,18参照)。

図-16 自転車通行時の安心感

図-17 自動車速度の変化の意識

図-18 自動車の路肩からの距離の変化の意識

(2) 自転車ピクトグラムの形状変更による効果

形状変更後の自転車ピクトグラムのわかりやすさを評

価するため、形状変更前(平成29年度)と変更後(平成30年度)に整備区間及び周辺施設等で自転車利用者を対象に

アンケート調査を実施した。 自転車ピクトグラムのわかりやすさは、平成30年度の

方が向上しており、形状変更による効果が得られている

(図-19参照)。

(3) 路側帯幅員狭小部の路面表示の効果

幅員狭小部の路面表示の効果を評価するため、施工後

に整備区間及び周辺施設等で自動車利用者と自転車利用

者を対象としたアンケート調査と、施工後の動画を視聴

し評価するwebアンケート調査を実施した。 路面表示の認識は、自転車利用者では約9割、自動車

利用者では約7割が認識している(図-20参照)。自転車へ

の意識は、約8割が意識している(図-21参照)。 ただし、令和元年度に実施した走行体験会の参加者か

らは、覆道での安全対策の意見があることから、さらな

る対策を検討する必要がある。

図-19 自転車ピクトグラムのわかりやすさ

図-20 路面表示の認識(H30調査)

図-21 覆道内の自転車への意識(H30調査)

14%

9%

10%

38%

37%

28%

43%

35%

31%

43%

58%

48%

55%

30%

20%

0%

0%

0%2%

0%

0%

0%

0%

0%

0%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

H27

H28

H29

H30

R1

低くした やや低くした 変わらない やや高くした 高くした

N= 128

N=119

N= 223

N= 224

N= 154

26%

24%

24%

45%

57%

29%

38%

25%

35%

30%

45%

38%

51%

20%

13%

0%

0%

0%0%

0%

0%

0%

0%

0%

0%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

H27

H28

H29

H30

R1

離れた やや離れた 変わらない やや近づいた 近づいた

N= 129

N=119

N= 224

N= 224

N= 155

25%

27%

39%

37%

45%

47%

32%

37%

43%

47%

16%

28%

10%

10%

4%

5%

8%

8%

4%

1%

7%

5%

7%

6%

3%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

H27

H28

H29

H30

R1

安心 やや安心 変わらない やや不安 不安

N= 50

N=105

N= 60

N= 61

57%

52%

46%

18%

22%

26%

12%

22%

29%

14%

5%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

自転車利用者

自動車利用者(実際に走行)

自動車利用者(WEBアンケート)

はっきりと気づいた やや気づいた 気づかなかった 走行していない

N=412

N=120

N=51

44%

31%

35%

53%

21%

16%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

自動車利用者(実際に走行)

自動車利用者(WEBアンケート)

大変意識するようになった(と思う)

やや意識するようになった(なると思う)

変わらない(と思う)

N=293

N=120

23%

48%

32%

19%

22%

10%

15%

15%

8%

8%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

H29

H30

わかりやすい ややわかりやすい ややわかりにくい

わかりにくい 気づかなかった

N=128

N=228

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Yutaka Saito, Mitsuyo Honma, Kazuyuki Kuwabe

(4) 自転車利用環境整備のニーズ

自転車利用環境整備を望む意見は、自転車利用者と自

動車利用者ともに「望む・やや望む」が7割を上回って

おり、取り組みに対して評価が得られている(図-22参照)。 (5) 路面表示のネットワーク効果

路面表示により自転車ネットワークが旭川市から層雲

峡温泉まで構築された効果を把握するアンケート調査を

実施した。 自転車利用者では、路面表示に気付きやすくなった方

は、約9割と高い傾向にある(図-23参照)。また、整備に

より、「安心してサイクリングできる」との意見が多く

(81%)、次いで、「この地域の来訪頻度が増える」との

意見(44%)が得られた。 自動車利用者に関しても、路面表示により自転車の走

行を意識するようになった方は約8割と高い傾向にあり、

年々増加傾向にある(図-24参照)。

図-22 サイクリング利用環境の整備の希望(R1調査)

図-23 自転車利用者の路面表示の気づきやすさ(R1調査)

図-24 自動車利用者の路面表示の気づきやすさ

5. まとめ

路面表示及び休憩施設での取組の検証を行った結果、

下記の結果が得られた。 1)郊外単路部の矢羽根型路面表示の間隔は、80mとする

ことで気づきやすさの評価が中間値を上回り、自動車

利用者の自転車の安全に配慮した挙動を促すことがで

きる。また、自転車利用者に安心感を与えることがで

きる。 2) 幅員狭小部の路面表示は、自動車利用者からの認識が

得られ、安全性向上効果が得られている。ただし、自

転車利用者からは、さらなる安全性を向上する対策が

望まれている。 3)自転車利用環境としては、休憩・宿泊施設、トイレの

ニーズが高く、自転車に特化した施設としては、給水

施設、駐輪施設・サイクルラック、空気入れ・修理施

設がある。 4)広報活動としては、サイクリングマップやイベント時

の紹介は有効であるが、現地で初めて知る方も多く、

継続的な広報活動が必要である。 5)検討会を継続的に開催することで、サイクルラックの

整備や荷物配送サービス等の地域主体での取り組みに

対する意欲が向上する。 6)自転車路面表示の整備を継続的に行い、自転車ネット

ワークとして構築することで、自転車・自動車利用者

双方の認知度を高めることができる。 本論文では、「ガイドライン」では示されてない郊外

部における路面表示内容の検討を行い、路面表示の案を

示すことができた。具体には、自動車の走行速度を考慮

し、自動車利用者に自転車利用者への注意喚起を促す路

面表示として、矢羽根型路面表示の80m間隔での配置、

自転車ピクトグラムの見えやすい形状を提案した。 令和元年度から広域のサイクリングルートであるナシ

ョナルサイクルルートが創設され、郊外部の安全性向上

に向けた取組は重要となることが考えられるため、検討

における一助となれば幸いである。

謝辞:北海道大学萩原教授、NPO自転車活用推進研究会

小林理事長、北海道警察、旭川サイクリング協会、大雪

上川町サイクリング協会、旭川観光コンベンション協会、

層雲峡観光協会、東川振興公社、愛別町、上川町の皆様

にご協力いただき、心から感謝いたします。

参考文献

1)国土交通省・警察庁.安全で快適な自転車利用環境創出ガイド

ライン,2016

2)秦地大,本間光世,桑邊和幸.郊外部での自転車路面表示の効

果について,第33回日本道路会議,2019

68%

86%

77%

78%

81%

32%

14%

23%

22%

19%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

H27

H28

H29

H30

R1

意識した 意識しなかった

N= 129

N=119

N= 235

N= 188

N= 227

気付きやすくなった

87%

気付かなかった13%

N= 158

72%

43%

24%

31%

2%

5%

2%

10%

1%

11%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

自転車利用者

自動車利用者

望む やや望む やや望まない 望まない 分からない

N=128

N=158