第4節 養殖業の持続的発展のために - maff.go.jp57 第4節...

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56 今後とも養殖業を持続的に発展させるためには、①持続的な供給体制の構築、②良好な漁 場環境の確保、③天然資源の適切な利用、④環境の変化や天然資源の維持のための技術開発、 ⑤消費者が求める安全・安心な養殖生産の更なる推進、⑥食料安全保障への貢献が必要とな っています。 (1)持続的な供給体制の構築 きゅう 養殖ではえさ代が費用の過半を占めているため、養殖規模の拡大に比例してえさ代 等の費用が増加することから、中途半端な規模拡大ではコストの削減につながりにくい構造 になっています。また、貝類養殖業で大きな部分を占める人件費についても、労働者保護の 観点からこれ以上生産性を上げることが困難であり、規模拡大は雇用者の増加につながるこ とから、同様の課題を抱えています。藻類養殖業においては、加工用機器の減価償却費及び 運転費用が負担となっています。 一方、養殖水産物の価格は全般的に頭打ちとなっており、短期的に収入が大きく増加する 状況にはなっていません。このため、近年の養殖経営は赤字か、黒字であっても平均所得(利 益)が1,000万円を切る状態が続いており、資本が蓄積できず経営基盤が脆弱となっており、 必要な投資を行うことも難しい状況にあります。さらに、新しい技術を導入したり販路拡大 のための取組を行うことも個々の経営体では困難な状況となっています。 このため、短期的には機械の長期使用や 給 きゅう 量の適正化等の合理化等によってコストを 削減し、ある程度経営体力を高めた上で、海外も含めた養殖水産物の販路拡大や直販等によ る流通コストの更なる削減等で販売部門を強化することにより、養殖業者自らがコストに見 合った生産物価格を確保できるようにすることが重要です。また、生産規模の拡大を検討す る場合には、投資額に見合った利益が確保できるよう販売先を含めた規模拡大後の経営計画 を十分に検討することが重要です。 特に、現在の養殖は天然資源に依存する面もあることから、養殖水産物の過剰生産は天然 資源の無駄な利用も意味しています。このため、資源管理上からも需要に見合った養殖生産 体制の構築が重要となっています。 また、市場において養殖水産物と天然水産物が競合状態にある場合は市場において養殖水 産物と天然水産物のすみ分けを図り、養殖水産物が価格決定力をもつようにすることが必要 と考えられます。 (計画的な養殖生産の必要性) 育成期間が数年にわたるなど長期間の育成が必要な養殖種類においては、実際に収穫する 時点での需要及び供給のバランスを見据えることが重要です。しかし、個々の経営体では全 体的な需給バランスを見極めることは困難であり、このため業界全体での生産過剰による単 価の低下や、生産不足による単価の高騰とそれによる需要の減退を招きやすくなっています。 特に、えさ代及び種苗代がコストの過半を占める魚類養殖では、単価の低下はコスト割れを 招きやすく、損失が拡大する危険性があります。 このため、養殖業の安定的な経営のためには国内外の需要に見合った生産体制をとること 第4節 養殖業の持続的発展のために

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Page 1: 第4節 養殖業の持続的発展のために - maff.go.jp57 第4節 養殖業の持続的発展のために 第1部 第Ⅰ章 が重要と考えられます。 水産庁では、養殖魚の需給バランスが崩れると養殖魚の価格が急落し、養殖経営や養殖業

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第1部

第Ⅰ章

 今後とも養殖業を持続的に発展させるためには、①持続的な供給体制の構築、②良好な漁場環境の確保、③天然資源の適切な利用、④環境の変化や天然資源の維持のための技術開発、⑤消費者が求める安全・安心な養殖生産の更なる推進、⑥食料安全保障への貢献が必要となっています。

(1)持続的な供給体制の構築

 給きゅう

餌じ

養殖ではえさ代が費用の過半を占めているため、養殖規模の拡大に比例してえさ代等の費用が増加することから、中途半端な規模拡大ではコストの削減につながりにくい構造になっています。また、貝類養殖業で大きな部分を占める人件費についても、労働者保護の観点からこれ以上生産性を上げることが困難であり、規模拡大は雇用者の増加につながることから、同様の課題を抱えています。藻類養殖業においては、加工用機器の減価償却費及び運転費用が負担となっています。 一方、養殖水産物の価格は全般的に頭打ちとなっており、短期的に収入が大きく増加する状況にはなっていません。このため、近年の養殖経営は赤字か、黒字であっても平均所得(利益)が1,000万円を切る状態が続いており、資本が蓄積できず経営基盤が脆弱となっており、必要な投資を行うことも難しい状況にあります。さらに、新しい技術を導入したり販路拡大のための取組を行うことも個々の経営体では困難な状況となっています。 このため、短期的には機械の長期使用や給

きゅう

餌じ

量の適正化等の合理化等によってコストを削減し、ある程度経営体力を高めた上で、海外も含めた養殖水産物の販路拡大や直販等による流通コストの更なる削減等で販売部門を強化することにより、養殖業者自らがコストに見合った生産物価格を確保できるようにすることが重要です。また、生産規模の拡大を検討する場合には、投資額に見合った利益が確保できるよう販売先を含めた規模拡大後の経営計画を十分に検討することが重要です。 特に、現在の養殖は天然資源に依存する面もあることから、養殖水産物の過剰生産は天然資源の無駄な利用も意味しています。このため、資源管理上からも需要に見合った養殖生産体制の構築が重要となっています。 また、市場において養殖水産物と天然水産物が競合状態にある場合は市場において養殖水産物と天然水産物のすみ分けを図り、養殖水産物が価格決定力をもつようにすることが必要と考えられます。

(計画的な養殖生産の必要性) 育成期間が数年にわたるなど長期間の育成が必要な養殖種類においては、実際に収穫する時点での需要及び供給のバランスを見据えることが重要です。しかし、個々の経営体では全体的な需給バランスを見極めることは困難であり、このため業界全体での生産過剰による単価の低下や、生産不足による単価の高騰とそれによる需要の減退を招きやすくなっています。特に、えさ代及び種苗代がコストの過半を占める魚類養殖では、単価の低下はコスト割れを招きやすく、損失が拡大する危険性があります。 このため、養殖業の安定的な経営のためには国内外の需要に見合った生産体制をとること

第4節 養殖業の持続的発展のために

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第4節 養殖業の持続的発展のために

第1部

第Ⅰ章

が重要と考えられます。 水産庁では、養殖魚の需給バランスが崩れると養殖魚の価格が急落し、養殖経営や養殖業が盛んな地域の経済に大きな影響を及ぼしていることから、有識者等からなる「養殖魚需給検討会」から意見を聴取し、これを踏まえ水産庁は平成26(2014)年2月に、平成26(2014)年漁期の生産数量ガイドラインを制定し、生産目標数量を提示しました(表Ⅰ−4−1)。なお、ガイドラインは毎年漁期ごとに「養殖魚需給検討会」の意見を踏まえて制定していく予定です。 また、計画的な生産は生産過剰を抑えるため、過密養殖の防止につながり、適切な養殖漁場環境の維持に資するという利点も有しています。

(2)良好な漁場環境の確保

(漁場環境の維持) 良好な養殖漁場は魚病の発生の抑制や品質の向上につながるなど、養殖生産を行う上で欠かせない基盤であり、その環境の維持・向上が必要不可欠です。このため、養殖漁場における漁場改善計画の遵守を徹底するとともに、未だ策定されていない養殖漁場においては早急に漁場改善計画を策定することが必要です。

(沖合養殖) これまで養殖は沿岸域を主体に行われてきましたが、養殖業の拡大により適地が少なくなっているほか、沿岸域の汚染も懸念されていることから、沿岸から離れた沖合で養殖を行う技術開発も進められています。沖合は水深が深く潮流が強いことから、餌の食べ残しや糞

ふん

が拡散しやすいだけでなく、養殖魚の運動量が増え品質が良くなるなどの利点があります。一方、波が荒く潮流も強いことは、これまでよりも丈夫な養殖施設にする必要があるほか、沿岸と養殖場までの距離が遠くなるため人間が常時管理することが困難になることから、自動的に給

きゅう

餌じ

するシステムや荒天時には海中に水没するようにして波の影響を抑える技術開発等が進められています。

(閉鎖循環式陸上養殖の開発) 世界の水産物需要が増大する中で漁船漁業による漁獲量の増大は見込めないことから、今後更に増加すると考えられる需要の増大分は基本的に養殖業によって賄われる必要があると考えられます。しかし、海面の養殖場は、管理面や技術面から沿岸区域に限られているため、養殖場の設置場所も制約を受けている状況にあります。このため、陸上に養殖場を設置する技術の確立が注目されてきています。 「閉鎖循環式陸上養殖」は、①水産生物の飼育技術、②水質等の環境管理技術、③生産全体のシステム管理技術等、総合的な技術を集積したものです。完全に人間の管理下で養殖が

ブリ及びカンパチ マダイ

生産目標数量 14万トン 7万2千トン

表Ⅰ-4-1 平成26(2014)年漁期の生産目標数量

資料:水産庁

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第1部

第Ⅰ章

行われるため、常に清浄かつ無菌環境下で養殖ができるだけでなく、水流を調整して養殖魚に運動させ品質を高めたり、水温調整により成長をコントロールしたり、養殖密度を高めたり、出荷時期を調整できるなどのメリットが考えられますが、一方で生産技術面や、特にコスト低減技術面で未だに開発途上の段階にあります。特に海水魚については飼育用水が塩分を含むため、飼育用水の調製や、機器・施設の錆

さび

対策へのコスト負担も必要です(図Ⅰ−4−1、図Ⅰ−4−2)。 このため、国としても技術の高度化・システムの統合環境制御等の導入及び実証試験等を通じてコストの低減等を実現し、「閉鎖循環式陸上養殖」が早期に商業化されるよう支援しています。

(3)天然資源の適切な利用

 ウナギやクロマグロ等天然種苗に依存している養殖業においては、天然資源の持続的利用を踏まえた養殖を行うことが必要です。特に両魚種は回遊域が広く複数の国が漁獲対象としていることから、その資源状況は国際的に関心を集めており、資源の保存管理のための国際

図Ⅰ-4-2 閉鎖循環式陸上養殖のメリット及びデメリット

図Ⅰ-4-1 閉鎖循環式陸上養殖の模式図

【メリット】(1)飼育環境の安定化(気候・

赤潮・魚病等の外的要因による影響がない)による生産性・品質の向上

(2)水温を調整できるため、養殖期間の短期化や出荷時期の調整が可能

(3)排水がほとんど出ないため、環境への影響が軽微

(4)トレーサビリティー対応が容易

(5)作業量の軽減(海上での漁船・漁具を用いた作業がない)

(6)場所の制約なし(区画漁業権等の漁業法の制約がない)

【デメリット】(1)施設整備のイニシャルコス

ト、電気使用量等のランニングコストが高額

(2)複数の機材を使用するため故障等のリスクが相対的に高い

(3)ウイルス、魚病等が持ち込まれた場合や、停電等のトラブルが発生した場合の被害が極端に大きくなる可能性(飼養魚の全滅など)

排水槽

受水槽

生物餌料回収ネット

稚魚

飼育水槽

飼育水循環ポンプ

生物ろ過槽

ろ過材

ポンプ

泡沫分離装置

泡沫排水

UV

廃水ストレーナー

資料:(独)水産総合研究センター

旬をずらして赤潮被害を軽減

 生産物をコントロールできる養殖の強みを活かし、通常では旬

ではない時期に旬と同等の魚類を出荷する技術が開発されていま

す。これは、光や水温を調整し通常の産卵時期ではない時期に産

卵させて種苗を育成することにより実現しました。

 ブリ等出荷時期が秋以降になる魚種では、出荷直前の時期が赤

潮の発生しやすい夏となるため赤潮による大きな被害を受けてい

ましたが、この早期種苗生産技術を用いると夏になる前に出荷で

きるため、赤潮による被害が少なくなる効果があります。月1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9

資料:水産総合研究センター資料

6,0005,0004,0003,0002,0001,000

0

g

魚体重

出荷サイズ

20cm

早く大きくして赤潮が来る前に出荷

早期人工種苗

赤潮発生

赤潮発生天然大型群

コラム

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第4節 養殖業の持続的発展のために

第1部

第Ⅰ章

的協力も不可欠となっています。このため、養殖用種苗の採捕に当たっては採捕者、採捕量及び流通経路を透明化するとともに、資源を永続的に利用するための採捕量制限等の措置の遵守等、実効ある資源管理を行う体制を整備することが求められています。 また、養殖用餌

料りょう

が生なま

餌え

や魚粉に依存している状況においては、安定的な餌の確保という観点から浮魚類資源の適切な管理が求められています。

(4)環境の変化や天然資源の維持のための技術開発

 持続的な生産が可能という養殖の最大のメリットを活かすためにも、種苗や餌じ

料りょう

等で天然資源への依存を少なくすることが重要です。天然資源を利用している限り、許容できる漁獲量には限度があり、更に環境要因による資源変動により利用できる資源量が大きく減少することが考えられることから、現在の養殖業において自然環境に過大な負担を与えていると考えられている部分については、養殖方法の改良や技術開発等により、環境と調和した養殖業を確立することが重要と考えられます。

(人工種苗への転換) ウナギ、クロマグロ種苗については特に天然資源への依存度が大きいことから、人工種苗生産技術の開発を加速し早期に完全養殖への転換を図ることが求められています。また、ブリ類のように現時点では天然種苗の資源量に余裕がみられる種類についても、天然資源の不安定さや天然種苗よりも早期に利用できる人工種苗の導入による早期出荷の有利性を念頭に置き、人工種苗への転換を検討する時期になっていると考えられます。

(新たな養魚用餌じ料りょうの開発)

 世界的に水産物需要が高まっている現在、天然資源の状態に関わらず、食用に利用可能な魚種を養魚用飼料として魚粉に加工したり生

なま

餌え

として利用できる状況は長く続かない可能性があります。このため、長期的には食用としていない資源を養殖によって食用資源に変えることが必要となる事態が考えられます。また、我が国周辺水域の低利用・未利用資源を養魚用飼料に活用することは、水産資源をフルに活用するためにも重要です。 このため、我が国周辺水域の低利用・未利用資源を活用したり、魚粉の使用率を低くし安定した価格で供給できる配合飼料の研究を加速していくことが必要です。

(育種技術による環境悪化や経営改善等への対応) 育種技術を活かし、少ない餌で成長が良い系統を作出することにより餌の使用量を減らすことは養殖経営上も天然資源の管理上も有効です。また、養殖水産物の高付加価値化のため良い肉質の系統を作出することも有効です。 また、地球温暖化により我が国周辺海域の海水温等が上昇しており、このままでは水温の関係で既存の養殖対象種が養殖できなくなる可能性があることから、育種により高水温に強い系統を作出し既存の漁場で引き続き養殖ができるようにすることが重要です。 なお、育種は交配を繰り返して行われるので長い年月が必要です。短期的に成果を求めるのではなく長期的に研究開発を続けていくことが必要となります。

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第1部

第Ⅰ章

(5)消費者が求める安全・安心な養殖生産の更なる推進

 我が国においては食品に対する安全の確保は、既に消費者が生産者に求める基本的な要請事項であり、生産者の義務であると認識されている状況にあります。養殖水産物は天然水産物と異なり、種苗から販売まで人間の管理下にあるので、安全性に関する情報が消費者に的確に伝えられることにより消費者が安心を得られやすい水産物です。このため、この利点を活かし、市場において天然水産物とすみ分けを図ることが重要です。 以前は水産用医薬品の適正な使用に特に注目が集まっていましたが、現在ではそれだけではなく、消費者が養殖の生産過程を総合的にチェックできる体制が整っているかどうかに注目が集まっています。このため、養殖業においてもトレーサビリティを確立し消費者に必要な情報を提供する仕組みづくりが求められています。種苗段階から生産履歴が記録できることは漁船漁業にはできない養殖業の強みであり、この強みを活用することが重要です。また、これに合わせてGAP手法を導入し安全性の管理とトレーサビリティのための記録の保持を同時に行うことが有効です。

(6)食料安全保障等への貢献

 我が国の養殖生産は減少傾向にありますが、世界の養殖生産は世界人口の増加と水産物に対する需要の増加、漁船漁業の発展の限界により増加傾向にあります。世界銀行及びFAO等が予想するとおり、世界人口の増加や新興国等の経済発展により水産物需要は引き続き増

育種と遺伝子組換え技術の違い

 育種は自然に獲得されているものの自然状態では偶然によってしか発現しない優良形質について、その

形質が発現している者同士を交配させるなどによって、その形質が常に発現するような系統を作出するも

のです。水産分野では通常のフナと色や形が違うフナを交配させ、様々な色や形態を持ったキンギョを作

り出した例が広く知られています。育種はその種が元々持っている遺伝子を引き出すことなので、安全性

は高い一方、交配によって品種・系統を作成するため、個体が成熟する

まで長期間かかる種の場合は、品種・系統を作出するまで長い時間を要

します。

 一方、遺伝子組換え技術は、ある種が持っている性質を別の種に導入

したい時に、当該性質に関する遺伝子を人為的に別の種に組み込んで、

その種が持っていない性質を発現させるものです。米国ではマスノスケ

(キングサーモン)の成長ホルモンを産生する遺伝子を組み込んで非常

に早く成長するタイセイヨウサケが開発されました。遺伝子組換技術は、

その種が持っていない遺伝子を組み込むことができるため、そのような

生物については、人体への安全性や逃亡した際の生態系への影響等を慎

重に見極める必要があります。

ハダムシ抵抗性家系魚

ハダムシ抵抗性がより強力!

染色体

ブリの選抜育種の例

ハダムシ抵抗性家系魚

染色体

ハダムシ(寄生虫)に対して抵抗を持つ2種類の家系(図の青と赤)どうしを交配。得られた両方の遺伝子を持つ個体どうしを更に交配させることで、ハダムシ抵抗性がより強力な系統が得られる。資料:(独)水産総合研究センター資料を水産庁にて一部改変

コラム

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第4節 養殖業の持続的発展のために

第1部

第Ⅰ章

加する一方、天然の水産資源は有限であることから水産物供給に占める養殖水産物の割合はより高まるものと見込まれます。これは、世界的にみて水産物需要が多い我が国においても例外ではなく、将来的に水産物供給の多くを養殖業に求める状況が到来する可能性は高いものと考えられます。 さらに、餌

料りょう

効率が良いという養殖業の利点を活かし、養殖業が増大しつづける世界人口に対して必要な動物性タンパク質の重要な供給源の一つとなることが期待されています。その際には養殖業に多くの技術と知見を有する我が国の貢献が必要となると考えられます。既に我が国はアフリカや東南アジア等で内水面を中心に養殖技術の指導等を行い、開発途上国におけるタンパク質供給や生計向上に貢献しています。

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