電子回路Ⅰ 第8回 · 2018-05-20 · 電子回路Ⅰ 9 2 講義内容 1. 半導体素子(ダイオードとトランジスタ) 2. 基本回路 3. 増幅回路 小信号増幅回路(1)
第4 章 FET ラジオ(同調回路と高周波増幅回路の直...
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第 4 章 FET ラジオ(同調回路と高周波増幅回路の直接接続)
古橋 武
4.1 FET 高周波増幅回路
4.1.1 組み立て
補記 2SK241 の代替品 2SK192A とバイアス回路
4.1.2 調整
4.1.3 理論
4.2 FET ソースフォロワ回路+2SC1815 の高周波増幅回路
4.2.1 組み立て
4.2.2 調整
4.2.3 理論
4.3 FET 高周波増幅回路+2SC1815 高周波増幅回路
4.3.1 組み立て
4.3.2 調整
4.3.3 理論
本稿の Web ページ
http://mybook-pub-site.sakura.ne.jp/Radio_note/index.html
2
4.1 FET 高周波増幅回路
2.3.3 項の同調回路について再考する.高周波増幅回路の入力インピーダンスを大きくすれば,
同調回路の一次巻線から直接同調信号を取り出すことができるのではないかという着想が生ま
れる.
着想のヒントは図 3.7.2 の FET を用いたソースフォロワ回路である.この回路の入力インピ
ーダンスは抵抗 R01 = 2 [MΩ]とゲート・ソース間の入力容量 Ciss = 3 [pF]が主な要素であった.
FET と同調回路の一次巻線を直接接続しても,同調回路の周波数特性に影響を与えることは少
ないと期待される.
3
4.1.1 組み立て
図 4.1.1 は FET(2SK241)を用いた高周波増幅回路
である.2SK241 はデプレション型の N チャネル
MOSFET である.この FET はネット(例えば秋月
電子通商(H21.10 時点))等で入手が容易である.同
調回路の二次巻線を用いずに,一次巻線をコンデン
サ C2を介して FET のゲート電極に直接接続してあ
る.図 4.1.2 に立体配線図を示す.また,図 4.1.3 は
組み立て図を示す.抵抗 R’1 は FET のゲート電位を
0 [V]とするためのバイアス抵抗である.デプレシ
ョン型の FET はゲート・ソース間電圧が 0 [V]付近
で動作するため,ゲートバイアス回路は抵抗 R’1 の
みと簡単である.
図4.1.2 FET増幅回路(立体配線図)
R’2
C2
C4
Tr1
C1
L1R’1
図4.1.3 FET増幅回路(組み立て図)
R’2
C2C4
Tr1
C1
L1
R’1
同調回路
図4.1.1 FET増幅回路
0.01µC4
高周波増幅回路
Vdd
GND
S
DG
1Μ
2SK241
R’1
0.01µC2
600 [µH]
150 pmax
C1
L
2kR’
2
Vo
Vi
復調回路
4
補記 2SK241 の代替品 2SK192A とバイアス回路 (2020.1 追記)
秋月電子通商の Web ページにて,「2SK241」で検索をかけると 2SK192A が表示される.2SK192A
は 2SK241 の代替品と位置づけられている.図 4.補 1 は 2SK241 と 2SK192A の外観とピン配置
および記号をしめす.両者の外観,ピン配置は同じである.ピン配置は写真の向きに左からド
レイン(D: Drain),ソース(S: Source),ゲート(G: Gate)である.2SK241 はデプレション型 MOSFET,
2SK192A はジャンクション型 FET であり,記号はそれぞれの特徴を模して表されている.
ジャンクション型の FET は,ゲート・ソース間電圧がマイナス電圧で動作するため,ゲートバ
イアス回路を設けてゲート電極をソース電極よりも低い電位とする必要がある.図 4.補 2 は
2SK241 の代わりに 2SK192A を用いた場合の FET 増幅回路である.図 4.1.1 の回路に対して,
新たにバイアス回路として抵抗𝑅𝑅𝐵𝐵,コンデンサ𝐶𝐶𝐵𝐵を挿入してある.𝑅𝑅𝐵𝐵を流れる直流成分の電圧
降下によりゲート電位はソース電位よりも低くなる.
D S G S
D
G
(a) 2SK241
D S G S
D
G
(b) 2SK192A
図4.補1 2SK241と2SK192Aの外観とピン配置および記号
図4.補2 2SK192Aを用いた場合のFET増幅回路
0.01μC4
Vdd
GND
S
DG
1M
2SK192A
0.01μC2
600 [μH]150 pmaxC1L
2k
500RB
0.01μCB
R’1
R’2
5
4.1.2 調整
FET 増幅回路ではバイアス電圧の設定が要らないので,調整は簡単である.抵抗 R’2 のつま
みを写真の位置付近に設定し,電源スイッチを投入して,選局ダイアルを回し,ラジオ放送が
聞こえてきたら,音量が最大となるように抵抗 R’2を調整すればよい.
6
4.1.3 理論
図 4.1.4 は前項の要領で調整した場合の抵抗 R’2 の抵抗値と各部の電圧値の例である.データ
シートには,ドレイン・ソース間電圧 VDSに対する順方向伝達アドミタンスが載せられている.
図 4.1.5 に順方向伝達アドミタンスの特性を示す.VDS = 1.6 [V]にて [mS] 6≈fsY である.簡単
のためコンダクタンスのみとし gm = 6 [mS]として解析を進める.バイポーラトランジスタの
2SC1815 ではコレクタ・ベース間の接合容量 CCj (出力容量 Cob)のミラー効果により,増幅回
路の周波数特性は大きく低下していた(3.6.2,3.6.3 項参照).FET において CCj と同じ影響を与
える要素が帰還容量 Crssである.データシートによると 2SK241 の [pF] 035.0≈rssC である.図
4.1.6(a)は図 4.1.1 の FET 高周波増幅回路の小信号等価回路である.帰還容量 Crss はミラー効果
により,3.6.2 項と同様にして,入力側からはおよそ 2'11 RgA mv +=+ 倍の静電容量となって
見える.
[pF] 27.0035.0)101.1006.01()'1()1( 32 =×××+=+=+ rssmrssv CRgCA
2SK241 では帰還容量は無視できるほどに小さい.
図4.1.5 順方向伝達アドミタンス
0.01µC4
Vdd
GND
S
DG
1Μ
2SK241
R’1
0.01µC2
1.14 [kΩ]R’
2
1.58 [V]
5.1 [V]
図4.1.4 直流特性
160 4 8
12
0
4
8
ドレイン・ソース間電圧 VDS [V]
順方向伝達アドミタンス
|Yfs
| [m
S]
12
(a)
Cpbgm Vi
= 0.006 vi1.1kR’
2Vo
図4.1.6 FET増幅回路の等価回路
Ciss
3p
Vi
1M
R’1
Cpbgm Vi
= 0.006 vi1.1kR’
2Vo
Crss
Ciss
3p
0.035p
Vi
(b) 簡略等価回路
7
図 4.1.6(b)は抵抗 R’1 と帰還容量 Crss を無視した簡略等価回路である.出力にはプローブの静
電容量 Cpb を入れてある.これまでの考察で,高周波域ではブレッドボードの漂遊容量も無視
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4.2 FET ソースフォロワ回路+2SC1815 の高周波増幅回路
図 1.1.3 の 2SC1815 の増幅回路を使い,しかも,同調回路の一次巻線側から信号を取り出す
方法がある.それは,同調回路と 2SC1815 を用いた増幅回路の間に,図 3.7.2 のソースフォロ
ワ回路を挿入することである.このときソースフォロワ回路はインピーダンス変換回路として
機能する.
4.2.1 組み立て
図 4.2.1 は同調回路と 2SC1815 を用いた高周波増幅回路の間に FET ソースフォロワ回路を挿
入した回路図である.図 4.2.2 に立体配線図,図 4.2.3 に組み立て図を示す.
感度の良いラジオである.
0.01µ
3k100
2SK241
同調回路 ソースフォロワ回路
R03R04
C01
Tr01
図4.2.1 FETソースフォロワ回路+バイポーラトランジスタ高周波増幅回路
0.01µ
50k
100k5k
2k
2SC1815
0.01µ
R2
R1
R3
R4
C2
C3
Tr1
復調回路
600 [µH]
150 pmax
C1
L
Vdd
GND
2M
R01
3k
R02
高周波増幅回路
0.01µC4
9
R01C01 C2
C1
L1
100k
Vdd
0.01µ
5k
2SC1815
R1R3
R4
C4
Tr1
GND
0.01µC32kR04
Tr01
R03
R02
50kR2
0.01µ0.01µ
3k 100
2M
3k
図4.2.2 FETソースフォロワ回路+バイポーラトランジスタ高周波増幅回路(立体配線図)
2SK241
10
4.2.2 調整
高周波増幅回路は 1.2 節の調整と同じでよい.FET ソースフォロワ回路は抵抗 R01を調整要
素として持つが,この値は 2 [MΩ]で固定して問題ない.
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4.2.3 理論
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4.3 FET 高周波増幅回路+2SC1815 高周波増幅回路
FET ソースフォロワ回路は
電圧を増幅しない.FET 増幅回
路なら同調回路の一次巻線か
ら直接電圧を取り出すことが
でき,しかも,2SC1815 増幅回
路と組み合わせれば合成の増
幅度をさらに上げることがで
きる.
4.3.1 組み立て
ブレッドボードの良
いところはすぐ試して
みることができるとこ
ろにある.図 4.3.1 は FET
高 周 波 増 幅 回 路 +
2SC1815高周波増幅回路
を示す.図 4.3.2 に立体
配線図,図 4.3.3 に組み
立て図を示す.
高周波増幅回路を 2 段
設けると,増幅度が大き
くなりすぎて寄生容量
により発振するのでは
と心配されたが,製作し
た回路では問題なくラ
ジオ放送を聴くことができた.
とても感度の良いラジオである.
同調回路 FET増幅回路
図4.3.1 FET増幅回路+2SC1815高周波増幅回路
0.01µ
50k
100k5k
2k
2SC1815
0.01µ
R2
R1
R3
R4
C2
C3
Tr1
復調回路
Vdd
GND
高周波増幅回路
S
DG
1Μ
2SK241R’
1
0.01µC01
150 pmax
C1
L
2kR’
2
Tr01
0.01µC4
100k
Vdd
2k
2SC1815
R1R3
R4
C4
Tr1
GND
0.01µC32k50k
R2
0.01µ
図4.3.2 FET高周波増幅回路+2SC1815高周波増幅回路(立体配線図)
2SK241
R’2
C01
C2
Tr01
C1
L1R’1
0.01µ0.01µ
1M
13
14
4.3.2 調整
2SC1815 の高周波増幅回路は 1.2 節の調整と同じでよい.FET 増幅回路と組み合わせること
でラジオの感度が上がりすぎて,音が割れてしまう可能性が高い.製作した回路ではひどい音
割れを起こした.その場合は,抵抗 R’2の値を小さくして感度を下げ,音が割れないようにすれ
ばよい.
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4.3.3 理論
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2010 年 1 月
著者:古橋 武
名古屋大学工学研究科情報・通信工学専攻
furuhashi at nuee.nagoya-u.ac.jp
本稿の内容は,著作権法上で認められている例外を除き,著者の許可なく複写することはでき
ません.