第3章 調査の成果 - Tottori Prefecture第1節 遺跡の概要 第3章 調査の成果 第1節...

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第1節 遺跡の概要 第3章 調査の成果 第1節 遺跡の概要 1 遺跡の立地と周辺地形(第 5 図) 大山北麓には広大な火山麓扇状地が展開しており、赤坂小丸山遺跡はその一角に位置している。こ の火山麓扇状地は開析谷によって分岐を繰り返しながら、緩やかに標高を下げつつ北に延びる台地状 のなだらかな丘陵群によって構成されている。こうした丘陵群の大半は地形区分では台地に分類され ており、遺跡が位置する丘陵群は「報国台地」と命名されている(鳥取県1974)。 報国台地と西に隣接する退休寺台地は2本の中規模河川によって挟まれている。西が下市川で、東 が甲川で、両河川とも丘陵北端を過ぎてほどなく日本海に注いでいる。これらの河川とその支流によ って丘陵の開析が進んでおり、遺跡周辺は支丘陵と谷が細かく入り組んだ複雑な地形をなしている。 遺跡周辺は大きくみると3つの丘陵が北に延びており、それぞれの丘陵間には水量の少ない谷川が 蛇行しながら北流している。西の支丘陵に下甲退休原第 1 遺跡が、東の支丘陵に赤坂頭無し遺跡が立 地し、中央の最も日本海へと突出する支丘陵上に赤坂小丸山遺跡は位置している。 調査地の地形は丘陵部と谷部分からなり、比高差は最大で 13m 程ある。調査地中央に横たわる丘 陵頂部は幅 200 m程の幅広い平坦部を形成しており、この丘陵平坦部から東西両側へは比較的緩やか な斜面が続いている。西斜面は標高 66.0 m付近の肩部までは比較的緩やかに下っていくが、肩部以 下は急傾斜となって谷底へと至り谷川に達している。 東斜面は西斜面よりさらに緩やかな斜面が続き、丘陵肩部は明瞭ではない。細かくみると、北側の C 区側へは標高を減じながら徐々に地形が張り出すのに対して、南側の F、G 区側は一定の傾斜で緩 やかに下っていき、そのまま B 区との間にある谷底へと至っている。この浅い谷を隔てた東側にA、 B 区が位置する支丘陵が南から張り出してきており、丘陵は調査地内でほぼ収束している。古代末か ら中世初頭の製鉄炉や粘土採掘坑はこの丘陵先端部の西寄り斜面に位置している。さらにその東側は 赤坂頭無し遺跡が位置する丘陵とを隔てるやや深い谷が形成されており、谷底には小規模ながら谷川 が通水している。 調査前は大部分が畑として利用され、A・B 区は山林であった。そのため、丘陵平坦部の東区 C・D・E・ G 区は果樹栽培や畑等の耕作により大きく削平を受けており、B 区は植林による根撹乱や流土堆積が 著しい。 2 基本層序(第 6 ~ 8 図) 調査地内は基本的に火山砕屑物を主体とする堆積層を基盤層とし、その基盤層の上をクロボクが全 体に覆っている。調査地内の基本層序すべてに通し番号の層名を付し、以下に各層の特徴を示す。な お、XⅥⅩⅦ層については第133図の中で図示している(第3章第4節)。 Ⅰ層:表土・耕作土。 Ⅱ層:暗褐色土(10YR3/3)。出土遺物は無いが、中世以降の堆積層と考えられる。東区 B 区のみで 確認され、2層に細分される。 Ⅲ層:黒褐色土(10YR2/2・10YR2/3)。古代から中世にかけての遺物包含層と考えられる。B 区の ― 9 ― 調

Transcript of 第3章 調査の成果 - Tottori Prefecture第1節 遺跡の概要 第3章 調査の成果 第1節...

  • 第1節 遺跡の概要

    第3章 調査の成果

    第1節 遺跡の概要

    1 遺跡の立地と周辺地形(第 5 図) 大山北麓には広大な火山麓扇状地が展開しており、赤坂小丸山遺跡はその一角に位置している。こ

    の火山麓扇状地は開析谷によって分岐を繰り返しながら、緩やかに標高を下げつつ北に延びる台地状

    のなだらかな丘陵群によって構成されている。こうした丘陵群の大半は地形区分では台地に分類され

    ており、遺跡が位置する丘陵群は「報国台地」と命名されている(鳥取県 1974)。

    報国台地と西に隣接する退休寺台地は2本の中規模河川によって挟まれている。西が下市川で、東

    が甲川で、両河川とも丘陵北端を過ぎてほどなく日本海に注いでいる。これらの河川とその支流によ

    って丘陵の開析が進んでおり、遺跡周辺は支丘陵と谷が細かく入り組んだ複雑な地形をなしている。

    遺跡周辺は大きくみると3つの丘陵が北に延びており、それぞれの丘陵間には水量の少ない谷川が

    蛇行しながら北流している。西の支丘陵に下甲退休原第 1 遺跡が、東の支丘陵に赤坂頭無し遺跡が立

    地し、中央の最も日本海へと突出する支丘陵上に赤坂小丸山遺跡は位置している。

    調査地の地形は丘陵部と谷部分からなり、比高差は最大で 13m 程ある。調査地中央に横たわる丘

    陵頂部は幅 200 m程の幅広い平坦部を形成しており、この丘陵平坦部から東西両側へは比較的緩やか

    な斜面が続いている。西斜面は標高 66.0 m付近の肩部までは比較的緩やかに下っていくが、肩部以

    下は急傾斜となって谷底へと至り谷川に達している。

    東斜面は西斜面よりさらに緩やかな斜面が続き、丘陵肩部は明瞭ではない。細かくみると、北側の

    C 区側へは標高を減じながら徐々に地形が張り出すのに対して、南側の F、G 区側は一定の傾斜で緩

    やかに下っていき、そのまま B 区との間にある谷底へと至っている。この浅い谷を隔てた東側にA、

    B 区が位置する支丘陵が南から張り出してきており、丘陵は調査地内でほぼ収束している。古代末か

    ら中世初頭の製鉄炉や粘土採掘坑はこの丘陵先端部の西寄り斜面に位置している。さらにその東側は

    赤坂頭無し遺跡が位置する丘陵とを隔てるやや深い谷が形成されており、谷底には小規模ながら谷川

    が通水している。

     調査前は大部分が畑として利用され、A・B 区は山林であった。そのため、丘陵平坦部の東区 C・D・E・

    G 区は果樹栽培や畑等の耕作により大きく削平を受けており、B 区は植林による根撹乱や流土堆積が

    著しい。

    2 基本層序(第 6 ~ 8 図)調査地内は基本的に火山砕屑物を主体とする堆積層を基盤層とし、その基盤層の上をクロボクが全

    体に覆っている。調査地内の基本層序すべてに通し番号の層名を付し、以下に各層の特徴を示す。な

    お、XⅥ、ⅩⅦ層については第 133 図の中で図示している(第3章第4節)。

    Ⅰ層:表土・耕作土。

    Ⅱ層:暗褐色土(10YR3/3)。出土遺物は無いが、中世以降の堆積層と考えられる。東区 B 区のみで

    確認され、2層に細分される。

    Ⅲ層:黒褐色土(10YR2/2・10YR2/3)。古代から中世にかけての遺物包含層と考えられる。B 区の

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    第3章

    調査の成果

  • 第2章 位置と環境

    甲川

    下市川

    宮川

    真子川

    黒川

    日本海

    御来屋礫層

    名和火砕流

    溝口凝灰角礫岩

    沖積層

    0 2kmS=1:50,000

    下市築地ノ峯東通第2遺跡下市築地ノ峯東通第2遺跡

    工業技術院地質調査所 1962『5万分の1地質図幅 赤碕・大山』を基に作成

    鳥取県 1974「表層地質図」『大山山麓開発地域土地分類基本調査 赤碕・大山』を基に作成

    ローム

    名和火砕流

    ローム(大山上部火山灰)

    溝口凝灰角礫岩

    御来屋礫層

    中山砂礫層甲川

    下市川

    宮川

    日本海表層地質図表層地質図

    地質図地質図

    0 2kmS=1:50,000

    赤坂小丸山遺跡赤坂小丸山遺跡

    赤坂小丸山遺跡赤坂小丸山遺跡

    下市築地ノ峯東通第2遺跡下市築地ノ峯東通第2遺跡

    第5図 遺跡周辺の地質 【参考文献】鳥取県1974『大山山麓開発地域土地分類基本調査 赤碕・大山』中山町誌編集委員会2009「第一編 自然」『新修中山町誌』大山町

    第3章 調査の成果

    ― 10 ―

  • 第2節 歴史的環境

    64.0m 63.0m

    62.0m

    62.0m

    61.0m

    65.0m

    68.0m

    68.0m

    67.0m

    66.0m

    69.0m

    J3 J2 .

    66.0m

    64.0m

    64.0m

    63.0m

    62.0m

    63.0m

    61.0m

    I3 I2

    道5

    I6 I5

    K4 K3 K2

    M6

    G11 G10 G9

    F18

    D12D13

    69.0m

    69.0m

    69.0m

    68.0m

    67.0m

    67.0m

    67.0m

    67.0m

    68.0m

    69.0m

    66.0m

    65.0m

    65.0m

    66.0m

    70.0m

    72.0m

    71.0m

    69.0m

    K22K21

    J22 J21 J20 J18 J17 J16 J15 J14 J13 J12 J11 J10 J9 J8 J7

    I22 I21 I20 I18 I17 I16 I15 I14 I13 I12 I11 I9   I8 I7I10

    H22 H21 H20 H18 H17 H16 H15 H14 H13 H12 H11 H10 H9 H8 H7 H6 

    G22 G21 G20 G18 G17 G16 G15 G14 G13 G12

    F20 F19 F17 F16 F15 F14 F13 F12 F11 F7 F6 F5 F4 F3

    E15 E14 E13 E12 E11 E7 E5 E4 E3

    D11 D5 D4 D3D6

    C6 C5 C4 C3

    D7

    N5 N4 N4

    M5 M4 M3

    L4 L3 L2 L5L6

    J6 J5

    I4

    73.0m

    65.0m

    66.0m

    64.0m 6

    3.0m

    62.0m

    61.0m

    Y=-

    6835

    0

    Y=-

    6830

    0

    Y=-

    6820

    0

    Y=-

    6815

    0

    Y=-

    6835

    0

    Y=-

    6830

    0

    Y=-

    6825

    0

    Y=-

    6820

    0

    Y=-

    6815

    0

    X=-54250

    X=-54300

    Y=-

    6850

    0

    Y=-

    6845

    0

    Y=-

    6840

    0

    L33

    M36 M35

    H32 H31

    J30

    70.5

    68.0m

    69.0m

    66.0m

    63.0m

    70.0m

    63.0m62.0m61.0m

    64.0m

    65.0m

    67.0m

    L37 L36 L35 L34

    K38 K35 K31 K30

    J37 J36 J35 J34J32

    I39 I37I35

    H40

    K37 K36 K34K33 K32

    J38 J33 J31

    I38I36

    I34 I33 I32 I31

    H39

    Y=-

    6850

    0

    Y=-

    6840

    0

    X=-54300

    X=-54250

    K6 K5

    D14

    E区  D区 

    G区 

    F区 B区 

    A区 

    C区 

    西区 東区

    第●図 基本層序柱状図

    74 .00m

    73 .00m

    72.00m

    71.00m

    69.00m

    68.00m

    67.00m

    66.00m

    65.00m 65.00m

    74 .00m

    73 .00m

    72.00m

    71.00m

    69.00m

    68.00m

    67.00m

    66.00m

    0 S=1:80 2m

    70.00m

    地点d

    地点d 地点 e地点f

    地点g

    地点h

    地点i

    地点j

    地点 c

    地点 c

    64.00m

    63.00m

    62.00m

    70.00m

    64.00m

    63.00m

     62.00m

    地点e(E区)

    地点f(D区)

    地点g(D区)

    地点j(A区)

    地点i(C区)

    Ⅴ-0Ⅴ-1Ⅴ-2

    Ⅴ-1Ⅴ-2

    Ⅴ-3

    Ⅴ-4

    地点h (B区)

    Ⅱ-1Ⅱ-2 Ⅲ-1Ⅲ-2Ⅲ-3

    A’

    西 区 東 区

    地点a

    地点a

    地点b

    地点b

    ⅨⅩ

    ⅩⅠ

    ⅧⅨⅩⅠⅩⅡ

    ⅠⅥ

    ⅦⅧ

    ⅨⅩ

    ⅩⅠ

    ⅩⅠ

    ⅩⅠ

    ⅩⅡ

    ⅩⅡ

    ⅩⅡ

    ⅩⅡ

    ⅩⅢⅩⅣⅩⅤ Ⅶ

    Ⅰ 表土・耕作土Ⅱ-1 暗褐色土(10YR3/3)木炭を含む。:近世以降堆積層か。 Ⅱ-2 暗褐色土(10YR3/3):近世以降堆積層か。 Ⅲ-1 黒褐色土(10YR2/3)木炭を含む。Ⅲ-2 黒褐色土(10YR2/2)木炭・焼土粒を僅かに含む。Ⅲ-3 黒褐色土(10YR2/2)木炭を僅かに含む。Ⅳ 暗褐色土(7.5YR3/4)炭を含む。 :弥生~古墳時代の遺物包含層   Ⅴ-0 褐色土(7.5YR4/6)砂礫を含む。Ⅴ-1 黒褐色土(7.5YR3/2)炭・砂礫を含む。 : 縄文時代の遺物包含層Ⅴ-2 暗褐色土(7.5YR3/4)炭・砂礫を含む。  : 縄文時代の遺物包含層Ⅴ-3 黒褐色土(7.5YR3/2)炭・砂礫を含む。Ⅴ-4 褐色土(7.5YR3/3):縄文時代の遺物包含層Ⅵ 黒色土(10YR3/2):無遺物層Ⅶ 暗褐色土(10YR3/3):漸移層Ⅷ にぶい黄褐色土(10YR5/4):ソフトロームⅨ 黄褐色土(10YR5/6):ホーキ火山砂か?ATと混合。Ⅹ 黄褐色土(10YR5/8):AT(一次堆積層) ⅩⅠ にぶい黄褐色土(10YR6/4):白色ロームⅩⅡ 明褐色土(7.5YR5/6):ハードロームⅩⅢ 橙色土(7.5YR6/6)白色砂粒、雲母、角閃石を多く含む。 : 三瓶木次パミスか。   ⅩⅣ 黄褐色土(10YR5/6)下部にデイサイトの小礫を含む。  ⅩⅤ 青灰色デイサイト質火砕流層:名和火砕流 

    古代弥生時代~古墳時代

    遺構検出面

    縄文時代

    遺物包含層B

    B’ C

    C’

    第6図 基本層序柱状図 

    第1節 遺跡の概要

    ― 11 ―

  • 第3章 調査の成果

    1号製鉄炉テラス1

    道6

    Ⅰ Ⅰ

    Ⅱ-4

    Ⅱ-7

    根撹乱

    Ⅰ  表土・耕作土Ⅱ-1 暗褐色土(10YR3/3) 木炭を含む。Ⅱ-2 暗褐色土(10YR3/3)ローム細粒を含む。Ⅱ-3 暗褐色土(10YR3/4)ローム細粒を含む。しまりやや強。Ⅱ-4 暗褐色土(10YR3/4)ローム細粒・木炭・製鉄関連遺物を含む。Ⅱ-5 暗褐色土(10YR3/4)ロームブロックを含む。Ⅱ-6 暗褐色土(10YR3/3)ローム細粒・黒褐色土ブロック・木炭を含む。Ⅱ-7 暗褐色土(10YR3/4)焼土粒・木炭を密に含む。炭焼窯の可能性あり。Ⅱ-8 暗褐色土(10YR3/4)焼土粒・木炭を含む。Ⅱ-9 暗褐色土(10YR3/3)ローム細粒・焼土粒・炭・製鉄関連遺物を含む。Ⅲ-1 黒褐色土(10YR2/3)木炭を含む。Ⅲ-2 黒褐色土(10YR2/2)木炭・焼土粒を僅かに含む。Ⅲ-3 黒褐色土(10YR2/2)木炭を僅かに含む。Ⅵ  黒褐色土(10YR2/2):無遺物層

    Ⅱ-1

    Ⅱ-1

    Ⅱ-1

    Ⅱ-2

    Ⅱ-2

    Ⅱ-2Ⅱ-2

    Ⅱ-3

    Ⅱ-3

    Ⅱ-6

    Ⅱ-9

    Ⅱ-9Ⅱ-8 123

    45

    :古代の遺物包含層

    C C’

    62.00m

    63.00m

    64.00m

    65.00m

    第 断

    1 暗褐色土(10YR3/4)2 黒褐色土(10YR2/3)焼土粒・木炭を含む。3 黒褐色土(10YR2/3)焼土粒・木炭を多く含む。4 暗褐色土(10YR3/3)炭を含む。5 黒褐色土(10YR2/2)木炭・製鉄関連遺物を多量に含む。7 暗褐色土(10YR3/3):無遺物層6 黒褐色土(10YR2/2)硬化面。道路遺構の可能性あり。

    試掘トレンチ

    根撹乱 根撹乱Ⅲ-1

    Ⅲ-1Ⅲ-1

    Ⅲ-2

    Ⅲ-3 

    62.00m

    63.00m

    64.00m

    65.00m

    0 S=1:80 2m

    南北

    東 西

    B B’

    斜面裾から谷底にかけて堆積し、3層に細分される。Ⅲ - 2層上面がテラス1や排滓場1等の

    古代以降の遺構検出面となる。

    Ⅳ層:暗褐色土(7.5YR3/4)~褐色土(7.54YR4/6)。弥生時代から古墳時代の遺物包含層である。

    西区のみに堆積する。

    Ⅴ層:黒褐色土(7.5YR3/2)~褐色土(7.5YR4/6)。縄文時代の遺物包含層である。5層に細分され、

    Ⅴ -0 ~Ⅴ -3 層は西区の谷部に堆積し、Ⅴ -0 層が縄文時代晩期、Ⅴ -1、2 層が縄文時代中期か

    ら晩期と考えられる。Ⅴ - 3層は縄文時代中期の可能性がある。Ⅴ - 4層は東区 A 区の丘陵上

    に堆積し、縄文時代早期の可能性がある。

    Ⅵ層:黒褐色土(10YR3/2)。クロボク、またはクロボク由来の堆積層。丘陵平坦部では表層の土壌

    化が著しい。無遺物層である。

    Ⅶ層:暗褐色土(10YR3/3)。Ⅵ層とⅧ層の漸移層。

    Ⅷ層:にぶい黄褐色土(10YR5/4)。いわゆるソフトローム層。

    Ⅸ層:黄褐色土(10YR5/6)。ホーキ火山砂の可能性がある。AT 土と混ざる。

    Ⅹ層:黄褐色土(10YR5/8)。姶良丹沢火山灰(AT)層。

    ⅩⅠ層:にぶい黄褐色土(10YR6/4)。いわゆる白色ローム。

    第7図 東区B区土層断面図

    ― 12 ―

  • 第1節 遺跡の概要

    撹乱

    テラス2

    Ⅰ  表土・耕作土Ⅳ-2 褐色土(7.5YR4/6)砂礫を含む。Ⅴ-1 黒褐色土(7.5YR3/2)炭・砂礫を含む:縄文時代の遺物包含層Ⅴ-2 暗褐色土(7.5YR3/4)炭・砂礫を含む:縄文時代の遺物包含層Ⅴ-3 黒褐色土(7.5YR3/2)炭・砂礫を含む:縄文時代中期の遺物包含層Ⅵ  黒色土(7.5YR2/1):無遺物層1  褐色土(7.5YR4/6)1㎝以下の砂礫を含む。2  灰褐色土(7.5YR4/2)砂礫を多く含む:無遺物層

    西 A’

    64.0m

    65.0m

    63.0m

    63.0m

    62.0m

    63.0m

    62.0m

    溝2

    A

    Ⅳ-2

    Ⅴ-1

    Ⅴ-1

    Ⅴ-1

    Ⅴ-1

    Ⅴ-1

    Ⅴ-3

    Ⅴ-2 

    Ⅴ-2 

    Ⅴ-2 

    Ⅴ-2 

    ⅩⅡ層:明褐色土(7.5YR5/6)。いわゆるハードローム。

    ⅩⅢ層:橙色土(7.5YR6/6)。白色砂粒、雲母、角閃石を多く含む。三瓶木次パミスの可能性がある。

    ⅩⅣ層:黄色褐色土(10YR5/6)。下部にデイサイトの小礫を含む。

    ⅩⅤ層:青灰色土(5B6/1)。デイサイト質の石質火砕流層で、名和火砕流層とみられる。

    ⅩⅥ層:浅黄橙色土(10YR8/3)。ⅩⅦ層が風化し粘土化した堆積層。B 区のみで確認され、粘土採掘坑

    1により採取され、製鉄炉の炉体に用いられる。

    ⅩⅦ層:浅黄橙色角礫岩層(10YR8/3)。クサレ礫からなり、風化土壌を含む。古期大山の火山細屑物

    である溝口凝灰角礫岩ではなく、さらに基盤にある花崗岩類や第三紀層に由来する堆積層と

    みられる(第3章第4節)。B 区のみで確認され、粘土採掘坑1により採掘され、ⅩⅥ層と同

    様に製鉄炉の炉体に用いられたと考えられる。

    3 調査成果の概要(第9~ 11 図)  赤坂小丸山遺跡では、縄文時代から中世にいたる幅広い時期の遺構や遺物を確認している。各時代

    における遺構の詳細は次節以降に委ねるが、縄文時代中期を中心とする集石土坑や多量の土器、黒曜

    石製石器が出土した縄文時代と製鉄炉やそれに付随する粘土採掘坑が確認された古代末から中世初頭

    に特色をもつ。一方で弥生時代後期や古墳時代中期にも小規模ながら集落が形成されており、とりわ

    け、古墳時代の集落はその後の後期に至り拠点的な集落が営まれた赤坂頭無し遺跡との関連性が注目

    される。遺跡全体としての遺構密度はそれほど高くはない。とくに東区西半を中心とする丘陵平坦部

    の広範囲は希薄であり、丘陵縁辺部にかけて遺構が集中する傾向にある。

    第8図 西区谷部土層断面図

    ― 13 ―

  • 第3章 調査の成果

    第9図 赤坂小丸山遺跡遺構配置図

    ― 14 ―

  • 第1節 遺跡の概要

    Y=-68500

    Y=-68450

    L33

    M36

    M35

    H32

    H31

    J30

    70.5

    68.0m

    69.0m

    66.0m

    63.0m

    70.0m

    63.0m

    62.0m

    61.0m

    64.0m

    65.0m

    67.0m

    L37

    L36

    L35

    L34

    K38

    K35

    K31

    K30

    J37

    J36

    J35

    J34

    J32

    I39

    I37

    I35

    K37

    K36

    K34

    K33

    K32

    J38

    J33

    J31

    I38

    I36

    I34

    I33

    I32

    I31

    H39

    Y=-68500

    Y=-68450

    X=-

    5430

    0

    掘立柱建物6

    掘立柱建物7

    掘立柱建物2

    掘立柱建物4

    掘立柱建物3

    竪穴建物8 

    テラス2

    落とし穴11落とし穴15 

    落とし穴14 

    落とし穴23 

    落とし穴24  

    落とし穴17 

    落とし穴12 

    落とし穴18 

    集石土坑3 

    集石土坑4 

    集石土坑7

     集石土坑5 

    集石土坑6 

    落とし穴16 

    落とし穴13 

    落とし穴22 

    落とし穴19  

    落とし穴25  

    落とし穴21  

    落とし穴20  

    溝1

    溝2

    溝3

    土坑13

    土坑6

    土坑1

    土坑34

    土坑22

    土坑23

    土坑36

    土坑15

    土坑30 土坑31

    土坑14

    土坑33

    土坑32

    土坑12

    土坑35

    土坑38

    土坑2

    土坑11

    土坑7

    土坑8ピット1

    土坑9

    土坑10

    土坑26

    土坑40 土坑29

    土坑25

    土坑3

    土坑39

    土坑37

    土坑28

    土坑27

    土坑4

    土坑24  

    土坑5

    第10図 赤坂小丸山遺跡西区遺構配置図

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