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- 17 - 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策

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第3章 歯科保健の現状、課題及び対策

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子どもたちは、むし歯がほとんどなくなり、みんなよい歯で、よく噛み、正しく飲

み込むことができ、しっかりと顎が成長している。

<現状>

○ 毎年、乳幼児のむし歯数は減少し、むし歯のない人の割合は増加しています。

○ むし歯のない3歳児の割合は 87.5%ですが、5歳児では 66.8%となり、2年間で

約 20ポイント減少しています。(図1、2)

○ 市町村別3歳児の一人平均むし歯数は、地域差が大きい状態にあります。(図3)

0.41

0.09

1.19

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

県平均

出雲崎町

弥彦村

田上町

見附市

新発田市

加茂市

柏崎市

胎内市

三条市

小千谷市

新潟市

妙高市

聖籠町

上越市

南魚沼市

燕市

関川村

阿賀野市

長岡市

五泉市

刈羽村

魚沼市

糸魚川市

村上市

阿賀町

湯沢町

津南町

十日町市

佐渡市

平成27年度 市町村別3歳児一人平均むし歯数(乳歯)の比較 (本)

乳幼児期~青少年期

(母子保健事業報告(新潟県))

乳幼児

図1 図2

(歯科疾患実態調査(小児)(新潟県))

図3

(平成 27 年度母子保健事業報告(新潟県))

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○ フッ化物歯面塗布事業を実施している市町村は、30 市町村中 28 市町村となって

います。

そのうち、推奨される開始年齢1歳以下かつ定期的(2~6か月毎)に実施して

いる市町村は 15市町村となっています。

※ 低年齢児から乳歯列の完成時期まで継続的に実施することにより、効果が高

くなります。

○ 近年、軟らかい食物が好まれ、「噛めない」「噛もうとしない」子どもが増加して

いると言われています。

《平成 21年健康・食育・噛むカム推進事業(新潟県調査)(4・5歳児)》

・「よく噛んで食べていますか」の質問に対し、「そう思う:20.6%」、「どちらか

と言えばそう思う:57.8%」、「どちらかと言えばそう思わない:21.5%」、「全

くそう思わない:1.6%」と回答。

・乳歯列は3歳半でほぼ完成しますが、4・5歳でも2割強の幼児がよく噛んで

食べていないと答えています。

<参考>

・子どもの食事で特に気をつけていることとして、28%の保護者が「よくか

むこと」と答えています。

○ 毎年、永久歯のむし歯数は減少し、むし歯のない人の割合は増加しています。

(図4、5)

○ むし歯のない人の割合は、12歳(中学1年)で 80.1%ですが、17歳(高校3年)

では 55.3%に大きく減少しています。(図4、5)

○ 平成 27年の 12歳児一人平均むし歯数は 0.46本、むし歯有病者率は 19.9%です。

一人平均むし歯数は全国一少ない状況ですが、市町村ごとにみると地域差がみら

れます。(図6、7、8)

○ 高校3年生のコホートデータをみると、むし歯数及びむし歯有病者率は、中学1

年生から高校3年生の間で大きく増加している状況にあります。(図9)

児童・生徒

(歯科疾患実態調査(小児)(新潟県))

図4 図5

(平成 27年度乳幼児栄養調査(厚生労働省))

(歯科疾患実態調査(小児)(新潟県))

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図6

図7

(平成 27 年学校保健統計調査(文部科学省))

(平成 27 年歯科疾患実態調査(小児)(新潟県))

図8

(平成 27 年歯科疾患実態調査(小児)(新潟県))

(本)

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※1) 同一の性質を持つ集団の意味。本データは、平成 27年調査時点の高校3年生を小学1年生ま

で遡り、むし歯数及び有病者率の経年変化をみたもの

○ 学校等におけるフッ化物洗口の実施施設割合は年々増加傾向にあり、保育所・幼

稚園で約 69%、小学校では約 77%で実施されています。しかし、中学校及び特別

支援学校の実施施設割合は低い状況です。(図 10)

○ 児童・生徒の歯肉炎(GOまたはG)有病者率は、学年が上がるにつれ高くなり、

中学生の頃から明らかな歯肉炎(G)を有する人の割合が高くなっています。

(図 11)

○ 小学6年生、中学3年生及び高校3年生において、歯肉炎の有病者率はほぼ横ば

いに推移しています。(図 12)

(歯科疾患実態調査(小児)(新潟県))

図 10

図9

(歯科疾患実態調査(小児)(新潟県))

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○ むし歯又は歯肉炎になりかかった子どもたちに、必要な予防処置や指導を受けて

もらうよう、学校と連携して歯科医院への受診勧奨を平成13年度から全県で実施

しています。しかし、歯科診療所を受診する人の割合は、勧奨を受けた小学生で

1/2、中学生で1/3程度となっています。(図13)

○ 歯肉炎の改善には、歯間部清掃用具の使用が効果的です。約8割の小・中学校は、

デンタルフロスの使い方について指導を実施していますが、高等学校では、約1

割強と低い状況です。(図 14)

○ デンタルフロスの指導方法として、実際に生徒が使用してみがき方の指導をして

いる中学校の割合は増加傾向にあるものの、5割程度となっています。(図 15)

○ 食後の歯みがき等のよい習慣を成人期へつなげるためには、小・中学校での取組

の充実が重要です。昼食後の歯みがきは、小学校では9割以上が実施しています

が、中学校では7割、高等学校では2割弱の実施となっており、学年が高くなる

につれ、減少しています。(図 16)

56.3

35.5 40.8

31.4

52.6

36.4

51.7

34.9

54.6

36.2

55.8

36.2

0

10

20

30

40

50

60

70

小学生(要観察歯) 中学生(要観察歯) 小学生(歯肉炎) 中学生(歯肉炎)

(%) 予防勧奨システムによる受診状況

H16

H23

H27

歯肉炎(GO または G)有病者率 歯肉炎(GO または G)有病者率の推移

(歯科疾患実態調査(小児)(新潟県))

図 11

図 13

※要観察歯:初期のむし歯が疑われる歯

(歯科疾患実態調査(小児)(新潟県))

(歯科疾患実態調査(小児)(新潟県))

図 12

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○ 歯間部清掃用具を使用している人の割合は、全体で 36.9%に過ぎず、特に、10 ~

20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図 17)

○ 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は 17.9%であり、そのうち、若い

世代が男女ともに多く、2~3割程度が自覚していました。(図 18)

(平成 27 年歯科疾患実態調査(小児)(新潟県))

(平成 27 年歯科疾患実態調査(小児)(新潟県))

(平成 27 年県民健康・栄養実態調査)

図 14 図 15

図 17 歯間部清掃用具を使用している人の割合(男女別計)

(平成 27 年度歯科保健実態調査(高等学校)(新潟県))

(平成 27 年度歯科保健実態調査(高等学校)(新潟県))

(歯科疾患実態調査(小児)(新潟県))

図 16

(%)

(%)

(%)

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○ ネグレクト等を受けている被虐待児は、むし歯が治療しないまま放置され、食生

活や歯みがき等の生活習慣が大きく乱れる上、多数のむし歯がある等の口腔内状

態が劣悪なことが指摘されています。

○ 新潟県内の児童相談所一時保護所に入所した児童を対象とした調査では、一時保

護児童は、う蝕および歯周疾患有病状況が新潟県や全国の平均値より有意に悪い

ことが報告されています。

○ 歯科保健推進条例では、県及び県教育委員会が、児童虐待等の早期発見のため、

歯科医療機関等との連携や関係者の資質向上を行うことが定められています。

○ 子どもたちのむし歯は減少してきている一方、スポーツによる外傷により健康な

歯が失われるケースがあります。高校生のマウスガードの装着は、ラグビーでは

義務、ホッケーでは推奨となっています。

○ 歯科保健推進条例では、市町村等が行う歯・口腔に関する外傷及び障害等の防止

及びこれらの軽減を図るための対策について、県及び県教育委員会が推進するこ

とが定められています。

○ スポーツマウスガード診療に対応できる歯科診療所の割合は 77.3%です。

児童虐待と歯や口の健康

歯の外傷

(日本障害者歯科学会誌:35:P608-615,2014)

(「運動部顧問のため事故防止マニュアル」新潟県高等学校体育連盟研究部(平成 25年3月))

(平成 24年歯科医療機能連携実態調査(新潟県))

図 18

(平成 27 年県民健康・栄養実態調査)

21.6 21.7

28.1 27.0 29.2

23.9

14.5

10.6 14.5

26.7 28.3

19.5

11.2 12.9 10.1

11.9

0

10

20

30

40

総数 20-24歳 25-34歳 35-44歳 45-54歳 55-64歳 65-74歳 75歳以上

歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合

男性 女性

(%) 男女計総数17.9%

(東京都歯科医師会「被虐待児童の口腔内調査」)

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<課題>

● 市町村、地域及び学校等における取組の違いにより、子どものむし歯数に地域差

が生じています。

● よく噛んで食べること等、望ましい食習慣が身についていない子どもが少なくな

いことから、将来の生活習慣病予防のため、食べ方指導等の支援が必要です。

● 学校と歯科診療所が連携してむし歯予防等の勧奨をしていますが、歯科診療所へ

の受診率が低いことが課題となっています。受診勧奨の徹底やその後の定期的な

歯科受診を促進する必要があります。

● デンタルフロスの使用についての指導や昼食後の歯みがきの実施等、学校での取

組は増加していますが、成人期まで習慣が継続されていないことが課題です。そ

のためには、中学校及び高等学校での取組の充実が必要です。

● 3歳児の9割弱、12歳児の8割が全くむし歯のない一方で、むし歯を多くもって

いる子どもがいます。生活環境、社会環境、身体的状況等により歯・口腔の健康

格差が生じています。

● 歯科保健推進条例に基づき、児童虐待の早期発見のために、歯科医師会、児童相

談所、市町村及び地域等との連携が必要です。

1 身近な地域の歯科保健医療サービスの整備

2 県民の意識・行動の定着を支援

3 リスクの高い人への支援による格差縮小

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<重点施策>

① むし歯の地域差を縮小するため、フッ化物利用を中心としたむし歯予防対策の普

及を強化するとともに、むし歯の多い市町村を重点的に支援します。

② 子どもの頃から、よく噛んで食べる等の望ましい食習慣の定着を図るため、保育

所や学校等における普及啓発を促進します。

③ 口腔衛生習慣の定着に向け、学校歯科医等と連携し、中学校及び高等学校での歯

科保健指導等の取組や歯科診療所での定期的な指導を促進します。

④ むし歯になりやすい子どもを支援するため、低年齢児からの継続したフッ化物利

用等の取組を促進します。

1 身近な地域の歯科保健医療サービスの整備

2 県民の意識・行動の定着を支援

3 リスクの高い人への支援による格差縮小

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<評価指標> 乳幼児期~青少年期

重点

施策

評価指標 基準値 現状値 目標値 長期

目標値 目標設定の考え方

(H23) (H27) (H32) (H34)

全体

評価

指標

むし歯のない

3歳児の割合

82.8%

87.5%

89% 90% ・乳歯むし歯の評価に最も用いら

れる指標であり、全県の評価、国

との比較のために設定

・これまでの傾向や実現可能性を

踏まえ、目標値を設定

※国目標値〔90%(H34)〕

※出典:母子保健事業報告

① 5歳児一人平

均 む し 歯 数

が、2本以下

である市町村

(H23 県平均

2.05本)

23 24 24 ・乳歯むし歯の地域差を評価する

指標

・基準値時点の長期目標値を達成

したため、現状値を上回る目標値

を設定

※出典:歯科疾患実態調査(小児)

フッ化物歯面

塗布の開始年

齢が、1歳以

下かつ定期的

実施の市町村

15

15 20 21 ・乳歯むし歯予防の市町村の取組

を評価する指標

・基準値時点から 10 年間で6市

町村増を長期目標値とする。

※出典:市町村歯科保健事業実施状況報告

全体

評価

指標

12歳児の一人

平均むし歯数

0.68本 0.46本 0.4本 0.4本 ・保育所~小学校までの永久歯む

し歯予防の取組の成果を評価す

る指標

・基準値時点で 100%フッ化物洗

口実施市町村の平均値を参考に

長期目標値を設定

・これまでの傾向や実現可能性を

踏まえ、目標値を設定

※出典:歯科疾患実態調査(小児)

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重点

施策

評価指標 基準値 現状値 目標値 長期

目標値 目標設定の考え方

(H23) (H27) (H32) (H34)

全体

評価

指標

むし歯のない

12歳児の割合

71.2% 80.1% 81% 81% ・保育所~小学校までの永久歯む

し歯予防の取組の成果を評価す

る指標

・県民にわかりやすいよう、むし歯

の全くない子どもの割合を設定

・基準値時点で 100%フッ化物洗

口実施市町村の平均値を参考に

長期目標値を設定

・長期目標値を達成したため、現

状値を上回る目標値を設定 ※国目標値〔65%(H34)〕

※出典:歯科疾患実態調査(小児)

全体

評価

指標

むし歯のない

17歳の割合

49.5% 55.3% 59% 60% ・保育所~高等学校までのむし歯

予防の取組の成果を評価する指

・これまでの傾向を踏まえ、目標

値を設定

※出典:歯科疾患実態調査(小児)

① フッ化物洗口

を行っている

児童・生徒の

割合

41.0%

55.0%

56% 60% ・永久歯むし歯予防の取組を評価

する指標

・これまでの傾向を踏まえ、目標

値を設定

※出典:歯科疾患実態調査(小児)

全体

評価

指標

中学3年生の

歯肉炎(GO

又はG)有病

者率

22.1% 19.3% 17% 16% ・小学校~中学校までの歯周病予

防の取組の成果を評価する指標

・基準値時点の小学6年生の有病

者率を長期目標値とし、これまで

の傾向を踏まえ、目標値を設定

※出典:歯科疾患実態調査(小児)

③ デンタルフロ

スを実際に生

徒が使用して

みがき方の指

導をしている

中学校の割合

46.5% 52.9% 65%

70% ・中学校での歯周病予防の取組を

評価する指標

・これまでの傾向を踏まえ、目標

値を設定

※出典:歯科疾患実態調査(小児)

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<施策の展開>

1 身近な地域の歯科保健医療サービスの整備

施策 対策

実施主体

歯科医師会

県地域機関

市町村

県民

その他

● 地域差縮小のため

のフッ化物利用を

中心としたむし歯

予防を推進

○ 小児等の歯科疾患

の実態や学校等に

おける歯科保健対

策の取組状況の把

○市町村う蝕予防事業補助金による取組支援

○市町村における低年齢児からの定期的なフ

ッ化物歯面塗布事業等の普及・促進(「フッ

素塗布の手引き」を活用)

○保育所~中学校までの一貫した集団フッ化

物洗口の取組促進(「フッ化物洗口マニュア

ル」を活用)

○県立中等教育学校でのフッ化物洗口の推進

○歯科疾患実態調査(小児)の実施

●重点施策

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2 県民の意識・行動の定着を支援

施策 対策

実施主体

県 歯科医師会

県地域機関

市町村

県民

その他

● 「よく噛むこと」

や「歯みがき習慣」

等の普及啓発

● 学校等における歯

科保健指導の充実

○ 歯の外傷予防の普

及・促進

○保育所や学校等において、給食懇談会等の食

育活動と協働した啓発の促進

○食生活改善推進委員や保育所職員等に対す

る研修会の実施や活動の支援

○「にいがた健口文化推進月間」の普及

・「にいがた健口文化フォーラム」の開催

・地域における他分野と協働した普及啓発

○「歯と口の健康週間」事業の実施

○食生活改善推進委員による歯科保健の普及

啓発

○地域歯科保健活動を推進する担い手(食生活

改善推進委員等)の育成

○学校と歯科診療所が連携したむし歯予防等

の受診勧奨

○学校でのデンタルフロスを用いた指導の促

○養護教諭等を対象とした歯肉炎予防研修

○マウスガード調査研究及び外傷予防研修会

の実施

●重点施策

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3 リスクの高い人への支援による格差縮小

施策 対策

実施主体

県 歯科医師会

県地域機関

市町村

県民

その他

● フッ化物利用の取

組促進

○ 障害児施設等への

歯科健診等の実施

○ 児童虐待の早期発

見の促進

○市町村における低年齢児からの定期的なフ

ッ化物歯面塗布事業等の普及・促進(「フッ

素塗布の手引き」を活用)

○保育所~中学校までの一貫した集団フッ化

物洗口の取組促進(「フッ化物洗口マニュア

ル」を活用)

○特別支援学校での集団フッ化物洗口等の実

○施設フロリデーションの推進に向けた検討

○地域療育教室や児童発達支援事業所での歯

科健診及び保健指導の実施

○要保護児童対策地域協議会への歯科医師会

等関係団体・機関の参画(市及び県)

○乳幼児虐待予防対策事業研修会の実施

●重点施策

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● 県民は、「当たり前に定期的な歯科健診や歯・口腔のケアを受けている」、「昼食後の

歯みがきを欠かさない」、「『マイ歯科医師』『マイ歯科衛生士』を持っている」等、

自分の意志で、歯・口腔の健康づくりに取り組んでいる。

● 80 歳の8割以上が 20 本以上の歯を持っている。たとえ 20 本以下であっても、歯科

治療により、バランスのよい食事ができ、いきいきと元気に過ごせるようになって

いる。

<現状>

○ 40歳以上の約8割は、歯周病に罹患しています。(図 19)

○ 成人の平均むし歯数の推移をみると、15~34 歳の年代で明らかに減少傾向にありま

す。長年の子どものむし歯予防対策の成果が成人期に表れてきたと考えられます。

(図 20)

○ 定期的に歯石除去や歯面清掃を受けている人の割合は増加しており、特に高齢者の

割合が高い傾向にあります。(図 21)

○ 歯間部清掃用具を使用している人の割合は経年的にみると横ばい傾向であり、10~

20歳代の使用率が低い状況にあります。(図 22)

○ 過去1年間に歯科健診を受診した人の割合は増加傾向にあるものの、平成 27 年は

45.1%と半数以下の状況です。(図 23)

成人期~高齢期

成人期

(県民健康・栄養実態調査)

(平成 23 年県民健康・栄養実態調査)

図 19

1.0

6.8

11.5

15.4 15.7

17.7

0.4

4.5

10.8

15.3

17.1 17.4

0.5

3.9

8.5

14.2

16.1

17.7

0.7

3.0

7.5

11.9

15.8

17.9

0

5

10

15

20

5-14歳 15-24歳 25-34歳 35-44歳 45-54歳 55-64歳

一人平均むし歯数の年次推移(男女計)

平成11年 平成16年 平成20年 平成23年

(本)

図 20

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○ よく噛んで食べることは早食いを防止し、肥満や生活習慣病の予防につながること

が分かっています。しかし、一口 30 回噛んで食べるよう意識している人の割合は、

経年的にみると微増傾向にあるものの2割程度であり、特に男性の意識が低い傾向

にあります。年齢別にみると、30歳代が1割程度と最も低く、最も高かったのは 70

歳以上で3割強でした。(図 24、25)

(平成 27 年県民健康・栄養実態調査)

(県民健康・栄養実態調査)

図 25

(県民健康・栄養実態調査)

図 21

図 22

図 24

4.2

0.3

4.5 5.5 6.5 4.2 4.2

1.6

8.3

4.9 5.9

9.5 9.2 11.0

8.5 7.1

13.0

8.7 8.2 8.3

12.4 15.2

18.0 14.8 12.8

8.9 9.0 9.1

11.9 15.7

20.0

10.4 19.5

9.1 10.4

14.7 17.5

21.8 27.2

22.7

0

5

10

15

20

25

30

総数 15-24歳 25-34歳 35-44歳 45-54歳 55-64歳 65-74歳 75歳以上

(%) 定期的に歯石除去や歯面清掃を受けている人の割合(年次推移)

平成11年 平成16年 平成20年 平成23年 平成27年

19.2 11.4

19.3

30.0 27.1 19.3 21.7

8.1

35.6

18.7 26.3

43.3

39.8 38.7 41.2 32.6

35.7

15.8 19.0

35.6 46.8 43.6 45.1

26.2 31.4

15.2

19.4

35.1 34.5

41.3 39.2

22.0

36.9

12.8

29.6 33.6

41.7 36.9

45.6 39.7

0

20

40

60

80

総数 15-24歳 25-34歳 35-44歳 45-54歳 55-64歳 65-74歳 75歳以上

(%) 歯間部清掃用具を使用している人の割合(年次推移)

平成11年 平成16年 平成20年 平成23年 平成27年

34.3

25.2 27.9 30.1 31.8

44.9

35.8 42.0

28.5

37.4 37.2 44.8 47.5 44.1 45.1

34.0

34.2 43.7

42.7 51.3 49.0

0%

20%

40%

60%

80%

総数 20-29歳 30-39歳 40-49歳 50-59歳 60-69歳 70歳以上

過去1年間に歯科健診を受けた人の割合(年次推移)

平成20年 平成24年 平成27年

図 23

(県民健康・栄養実態調査)

(県民健康・栄養実態調査)

Page 18: 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策 · 20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図17) 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は17.9%であり、そのうち、若い

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○ 喫煙が歯周病を悪化させることを知っている人の割合は、43.6%と半数以下の状況

です。

※糖尿病患者や喫煙習慣のある人では、歯周病が悪化しやすいことが明らかになっ

ています。また、喫煙は口腔がんの危険因子として考えられています。

○ 歯周病が糖尿病に与える影響について関連があると思っている人の割合は 38.5%で

あり、特に 40歳代後半から 60歳代で多い状況です。(図 26)

○ グループインタビュー(成人対象)の結果から、歯科診療所は「治療」をするとこ

ろであり、「歯や口腔のケア」をするところという認識がないため、定期的な歯科受

診が広がらないと予想されます。

(平成 27 年県民健康・栄養実態調査)

図 26

(平成 27 年県民健康・栄養実態調査)

《歯や口の健康づくりに関するグループインタビューの結果》

◎ テーマ:歯や口の健康づくり

◎ 開催日:平成 24年 10月 20日

◎ 対象:健康づくり実践指導者研修受講者及び健康づくり指導者 7名

○ 歯科診療所は、「治療をするところ」であり、「口のケアをするところ」という認識がな

い。治療の+αで、口のケアがあるという認識がある。

○ 受診すると、むし歯を見つけられて何回も受診しなければならなくなるので、痛くなる

まで行かない。

○ 「口のケア」に関する情報は、薬局等でも様々なグッズがあり、それで自己ケアしてい

るつもりになっている。

○ 「治療」と「口のケア」をするところが分かれていると、行きやすいのではないか。

○ 予約をするのが面倒で、忙しくなると行かなくなってしまうが、「気になるきっかけ」

や「たまたま行けるタイミング」があえば行くと思う。

例)・テレビからの情報や歯科健診で自分の口の中にリスクがあることを知って、受診

するきっかけになった。

・行き始めたら、歯科医院の雰囲気が良いので行くのが楽しみになった。

Page 19: 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策 · 20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図17) 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は17.9%であり、そのうち、若い

- 35 -

○ 本県の 8020(80 歳で 20 本以上の歯をもつ)達成者の割合は4割弱、6024(60 歳で

24本以上の歯をもつ)達成者は約7割です。(図 27、28)

○ 年齢が上がるにつれ歯が失われ、一人平均現在歯数は減少してくる現状にあります。

一方、年齢ごとに推移をみると一人平均現在歯数は増加傾向にあり、今後、歯を多

く有する高齢者が増えることが予想されます。(図 29)

(県民健康・栄養実態調査)

(県民健康・栄養実態調査)

図 27

図 29

高齢期

図 28

(県民健康・栄養実態調査)

Page 20: 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策 · 20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図17) 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は17.9%であり、そのうち、若い

- 36 -

○ 60歳代の約 75%の人が何でも噛んで食べられると答えています。6024達成者の割合

は約7割であり、残存歯数も要因として影響していることが推察されます。(図 30)

○ 新潟市在住の 70 歳高齢者を調査した研究の結果、男性の 56.9%、女性の 53.5%が

歯根面むし歯※2)を所有していたことが分かっています。

(口腔衛生会誌,53,P592-599,2003)

※2)歯根面むし歯:歯の根の部分にできるむし歯。唾液が減少してくる高齢期に発生しやすい。

○ 国制度に基づく成人歯科健診は歯周疾患検診(健康増進法)のみであり、その他は

市町村が任意に取り組んでいます。(表1)

○ 歯周疾患検診の受診率は県平均 8.1%と非常に低い状況であり、関心の高い人や口腔

状態のよい人が受診する傾向にあります。

(平成 27年県民健康・栄養実態調査)

図 30

Page 21: 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策 · 20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図17) 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は17.9%であり、そのうち、若い

- 37 -

平成 23年度 平成 26 年度 備 考

65 歳

以上

地域支援事業における

二次予防事業※3)

24/30(80.0%) 26/30(86.7%)

・介護保険法

・虚弱高齢者等が

対象

※3)平成 27 年度から「介護予防・日常生活支援総合事業」開始により、従来の介護予防事業の

考え方が変更になる。

※4)歯科医師が口の中を直接診るのではなく、問診や唾液検査、咀嚼能力検査等により間接的

に歯・口腔の状態を調べる健診のこと

平成 23年度 平成 27年度 備 考

概ね 20

~30歳代

妊産婦歯科健診 18/30(60.0%) 25/30(83.3%)

乳幼児健診に併設した

保護者歯科健診 12/30(40.0%) 16/30(53.3%)

40 歳

以上

歯周疾患検診(40、50、

60、70歳の節目検診) 21/30(70.0%) 22/30(73.3%)

・健康増進法

・受診率 8.1%

(県平均)

特定健診・特定保健指導

における歯・口腔の検査 14/30(46.7%) 19/30(63.3%)

75 歳

以上

後期高齢者歯科健診

(76、80歳が対象) - 8/30(26.7%)

実施主体:

広域連合

表1 市町村の成人歯科健診の実施状況

《間接的な歯科健診※4)とメタボリックシンドロームとの関連(研究結果)》

○ 特定健康診査対象者に対し、唾液中の潜血反応を利用した歯周疾患スクリーニングテス

トを行った結果、潜血反応陽性者の割合は約6割と推定される。これらの陽性者は、肥

満及びメタボリックシンドローム該当者と判定された人が多かった。

(口腔衛生会誌 61:P573-580,2011)

○ 特定健康診査対象者に対し、チューイングガムを用いた咀嚼能力判定を行った結果、咀

嚼能力の低い人は高い人に比べ、腹囲が大きく、HDL コレステロール濃度が低い傾向に

あった。咀嚼能力が低下することにより摂取する食品や栄養素に偏りが生じ、メタボリ

ックシンドロームが発症しやすくなると考えられた。 (口腔衛生会誌 61:P573-580,2011)

(平成 28 年市町村歯科保健事業実施状況報告(新潟県))

(平成 27 年度がん検診等結果報告(新潟県))

表2 介護予防事業の実施状況

(介護予防事業(地域支援事業)の実施状況調査(新潟県))

Page 22: 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策 · 20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図17) 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は17.9%であり、そのうち、若い

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<課題>

● 成人期の取組は全県的に遅れており、個人の努力に委ねられている状況であり、そ

の結果、高齢期に多くの歯が失われてしまうことが課題となっています。

● 市町村における成人歯科健診等の実施は増加してきているが、取組状況に差がみら

れることや、歯科健診の受診率が非常に低いことが課題となっています。

● 関心の低い人も受けやすくかつ効果的な健診法の検討・普及が必要です。

● 企業等の職域における歯科保健の取組の実態が不明なため、現状を把握するととも

に、現場の実態に応じた効果的な取組方法の検討が必要です。

● 「定期的に歯石除去や歯面清掃を受けている人」及び「歯間部清掃用具を使用して

いる人」の割合は、若い世代で低い状況にあります。

● グループインタビューの結果から、何かきっかけがあれば受診行動に結びつく可能

性があることから、「歯科受診への気軽さ」や「歯や口腔のケアの爽快感」につなが

るイメージづくり及び受診のきっかけとなる仕組みづくり等が必要です。

● 県民が、歯・口腔の健康のために、自分にあった取組を選択するための情報提供が

不足しています。保健医療以外の様々な分野とも交流しながら啓発することが重要

です。

● 「一口 30回噛んで食べるよう意識している人」の割合は、年齢ごとに差がみられる

ため、世代に応じた支援方法の検討が必要です。

● 70歳高齢者の約5割が歯根面むし歯に罹患しており、予防対策の充実が課題です。

1 身近な地域の歯科保健医療サービスの整備

2 県民の意識・行動の定着を支援

Page 23: 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策 · 20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図17) 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は17.9%であり、そのうち、若い

- 39 -

● 喫煙やバランスの悪い食事など生活習慣に問題のある人は、歯科疾患のリスクが高

い人でもあるため、栄養や運動等の様々な職種と連携しながら、生活習慣病予防対

策の一環として歯・口腔の健康づくりを支援することが必要です。

3 リスクの高い人への支援による格差縮小

歯周病と全身の病気は関係しています。

○県内の中高年の約8割は歯周病

に罹っています。

○歯周病の原因である歯周病菌が

全身を巡り、様々な影響を及ぼす

ことが分かってきました。

歯周病の治療と管理を行うと、血糖コン

トロールがしやすくなります。

タバコのニコチン

は歯周病の症状を

あらわれにくくし

ます。

歯周病への

抵抗力低下

歯周病の悪化

治療の効果を

台無しにする

喫煙習慣が歯周病を悪化させる

Page 24: 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策 · 20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図17) 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は17.9%であり、そのうち、若い

- 40 -

<重点施策>

① 青少年期以降、切れ目のない成人歯科保健対策を推進するため、市町村や企業、大

学等における歯科健診や保健指導等の取組を促進します。

② 「にいがた健口文化推進月間」を通じた県民への普及啓発を推進します。

③ 県民が定期的なケアのために歯科診療所を気軽に受診できるよう、県民への啓発及

び定期受診のきっかけとなる歯科健診等を促進します。

④ 歯・口腔の健康づくりを県民が自ら考え行動できるよう、市町村や企業、地域組織

等と協働して行う住民主体の啓発活動を促進します。

⑤ 高齢者の歯根面むし歯予防のためのフッ化物利用を促進します。

⑥ 生活習慣に問題があるリスクの高い人に対し、市町村、企業及び栄養関係者等と連

携しながら、生活習慣病予防のための歯科保健指導の充実を図ります。

1 身近な地域の歯科保健医療サービスの整備

2 県民の意識・行動の定着を支援

3 リスクの高い人への支援による格差縮小

新潟は、子どものむし歯が日本一少ない県です。

県では、大人になっても、むし歯のない状態が続くよう

取組を進めており、「食べたら歯をみがく」、「定期的に

歯科医院に通う」といったよい習慣が、当たり前に親か

ら子に伝わり、やがて、新潟の文化となることを目指し

ています。

※本月間は、新潟県歯科保健推進条例第13条に規定されています。

にいがた健口文化とは

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- 41 -

<評価指標> 成人期~高齢期

重点

施策

評価指標 基準値 現状値 目標値 長期

目標値 目標設定の考え方

(H23) (H27) (H32) (H34)

全体

評価

指標

60歳(55~64

歳)で 24本以

上自分の歯を

有する人の割

65%

69.9%

70% 70% ・歯の早期喪失防止は、健康寿命

の延伸に大きく寄与するため設定

・これまでの傾向を踏まえ、現状

値を上回る目標値を設定

※国目標値〔70%(H34)〕

※出典:県民健康・栄養実態調査

全体

評価

指標

80歳(75~84)

歳で 20 本以

上自分の歯を

有する人の割

29.3%

39.1%

40% 40% ・8020運動の評価指標

・これまでの傾向を踏まえ、現状

値を上回る目標値を設定

※国目標値〔50%(H34)〕

※出典:県民健康・栄養実態調査

歯間部清掃用

具(デンタル

フロスや歯間

ブラシ等)を

使用している

人の割合

31.4% 36.9% 42% 45% ・県民の歯・口腔の健康によい習

慣の定着を評価する指標

・これまでの傾向を踏まえ、目標

値を設定

※出典:県民健康・栄養実態調査

※15歳以上

過去1年間に

歯科健診を受

診した人の割

(H24)

42.0%

45.1%

52%

55%

・県民の歯・口腔の健康によい習

慣の定着を評価する指標

・これまでの傾向を踏まえ、目標

値を設定

※国目標値〔65%(H34)〕

※出典:県民健康・栄養実態調査

※20歳以上

③ 定期的に歯石

除去や歯面清

掃を受けてい

る人の割合

12.8% 19.5% 22% 25% ・県民の歯・口腔の健康によい習

慣の定着を評価する指標

・15歳以上を対象に、これまでの

傾向を踏まえ、目標値を設定

※出典:県民健康・栄養実態調査

※15歳以上

Page 26: 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策 · 20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図17) 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は17.9%であり、そのうち、若い

- 42 -

重点

施策

評価指標 基準値 現状値 目標値 長期

目標値 目標設定の考え方

(H23) (H27) (H32) (H34)

一口 30 回噛

んで食べるよ

う意識してい

る人の割合

19.9% 20.5% 28% 30% ・県民の歯・口腔の健康によい習

慣の定着を評価する指標

・基準値時点から 10 年間で 10 ポ

イント増を長期目標値とし、これ

までの傾向を踏まえ、目標値を設

定 ※出典:県民健康・栄養実態調査

※15歳以上

全体

評価

指標

60歳代におけ

る咀嚼良好者

の割合

69.5%

75.6%

77% 78% ・咀嚼機能の維持・向上は、高齢

者の栄養摂取や運動機能にも関係

し、健康寿命の延伸に大きく寄与

するため設定

・基準値時点の 50歳代の咀嚼良好

者の割合を維持することを長期目

標値とし、これまでの傾向を踏ま

え、目標値を設定 ※国目標値〔80%(H34)〕

※出典:県民健康・栄養実態調査

① 妊産婦歯科健

診を実施して

いる市町村数

18 25 26 26 ・若い世代の成人歯科保健対策を

評価する指標

・基準値時点の長期目標値を達成

したため、現状値を上回る目標値

を設定

※出典:市町村歯科保健事業実施状況報告

① 乳幼児健診時

の保護者等を

対象とした歯

科健診等を実

施している市

町村数

12 16 17 18 ・若い世代の成人歯科保健対策を

評価する指標

・基準値時点から 10年間で5割増

を長期目標値とし、これまでの傾

向を踏まえ、目標値を設定

※出典:市町村歯科保健事業実施状況報告

① 特定健康診査

と連携した歯

の健康に関す

る検査を実施

している市町

村数

14 19 20 21 ・40歳以降の成人歯科保健対策を

評価する指標

・基準値時点から 10年間で5割増

を長期目標値とし、これまでの傾

向を踏まえ、目標値を設定

※出典:市町村歯科保健事業実施状況報告

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- 43 -

<施策の展開>

1 身近な地域の歯科保健医療サービスの整備

施策 対策

実施主体

歯科医師会

県地域機関

市町村

県民

その他

● 市町村・企業等に

おける成人歯科健

診等の取組促進

○ 市町村等の口腔機

能向上の取組促進

○市町村における成人歯科健診の取組促進

・乳幼児健診時の保護者等を対象とした成人

歯科健診

・健康増進法に基づく歯周疾患検診

・特定健診と連携した歯の健康に関する検査

・妊産婦歯科健診

○行動変容を支援する新たな成人歯科健診※5)

の普及

※5)従来の疾病発見を目的とした口腔内診査とは

異なり、問診等により行動・環境リスクを発

見し、その人にあった個別指導を継続的に行

い、行動変容を支援する歯科健診のこと

○企業等を対象とした歯科保健の取組に関す

る調査

○企業等への歯・口腔の健康づくりに関する情

報提供

○市町村の介護予防事業等への支援

・口腔機能向上に係る市町村職員等の研修

○県健康ビジネス連峰政策による口腔機能向

上の取組促進(「健口くん」等)

●重点施策

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- 44 -

2 県民の意識・行動の定着を支援

施策 対策

実施主体

県 歯科医師会

県地域機関

市町村

県民

その他

● 「にいがた健口文

化推進月間」等を

通じた県民への普

及啓発

● 定期受診のきっか

けとなる歯科健診

等の促進

● 市町村等が行う住

民主体の啓発活動

を支援

● 高齢者の歯根面む

し歯予防対策の推

○「にいがた健口文化推進月間」の普及

・「にいがた健口文化フォーラム」の開催

・地域における他分野と協働した普及啓発

○「歯と口の健康週間」事業

○食生活改善推進委員による歯科保健の普及

啓発

○行動変容を支援する成人歯科健診の普及

○医療保険者と連携した企業等への取組促進

○県民一人一人の意識向上を図るため、住民

主体の草の根活動の担い手育成等を支援(食

生活改善推進委員、健康推進員等)

○フッ化物利用を中心とした歯根面むし歯予

防対策の普及

●重点施策

Page 29: 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策 · 20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図17) 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は17.9%であり、そのうち、若い

- 45 -

3 リスクの高い人への支援による格差縮小

施策 対策

実施主体

県 歯科医師会

県地域機関

市町村

県民

その他

● 生活習慣病予防の

ための歯科保健指

導の充実

○特定健康診査と連携した歯の健康に関する

検査の推進

○指導の受け皿となる歯科診療所の整備

(研修会等の実施)

●重点施策

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- 46 -

● 歯・口腔の健康は全身の健康につながることを県民が意識し、要介護状態にな

らないよう、自ら口腔ケア等を実践できる。

● たとえ障害があっても、介護が必要な人でも、生涯、口から食べられるよう、

誰もが安心して自分の歯・口腔を管理してもらえるようになっている。

<現状>

○ 要介護認定申請者を対象とした調査(新潟県内のモデル地区で実施)から

・ 歯科治療や専門的な口腔ケアが必要と診断された要介護者は約9割であった

が、そのうち実際に受診した者は3割以下であり、治療の必要性と実際の歯

科受診の状況には大きな隔たりがあったと報告されています。

・ 義歯を使用している人は全体の 77.2%であり、そのうち半数以上の人は、適

合が悪いなどの理由により、義歯の調整や修理又は新製が必要であったと報

告されています。

・ 要介護度が上がるにつれ、残存歯に占める重症むし歯(C4:残根むし歯)の

割合は増加し、要介護度5の人では 23.0%と高いことが報告されています。

・ 要介護になってから歯科を受診したいと思った人は 46.2%でしたが、そのう

ち約4割は、通院困難や我慢できるから等の理由により、実際に治療を受け

ていないことが報告されています。

○ 要介護状態になるにつれ、「定期的に歯科を受診(健診を含む)」している人の割

合は減少しています。(図 31)

○ お茶や汁物等でむせることがある人の割合は、「認定なし」と「要支援」では、約

2倍の差があります。(図 32)

要介護者・障害者

歯科治療もしくは専門的な

口腔ケアが必要な要介護者

89.8%

実際に歯科治療を受けた

要介護者

26.9%

(平成 14 年厚生労働科学研究)

要介護者及び要支援者の状況

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○ 新オレンジプラン※6)には、認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の

提供が柱のひとつとして掲げられており、早期診断・早期対応のための体制整備

として、歯科医師の認知症対応力向上が求められています。

※6) 認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく

暮らし続けることができる社会の実現を目指して、厚生労働省が関係府省庁と共同

で策定した認知症施策推進総合戦略

<参考>

○ 日本歯科医師会では、「『オーラルフレイル』を理解して、健康長寿を目指しまし

ょう」を啓発しています。

『オーラルフレイル』は、滑舌低下、食べこぼし、わずかなむせ、かめない食品が増えるなどのさ

さいな口腔機能の低下から始まります。早めに気づき対応することが大切です。これらの様々な

口の衰えは身体の衰え(フレイル)と大きく関わっています。

(日本歯科医師会ホームページより)

○ 在宅医療サービス、介護保険サービスへの対応ができる歯科診療所は 652施設

(67.3%)です。

○ 在宅歯科保健医療サービスの実施状況(平成28年7月1月~7月31日の実施状況)

・ 訪問歯科診療を実施した歯科診療所の割合は、在宅で 21.6%、施設で 20.1%

です。訪問診療に対応可能な歯科診療所のうち、実際に1か月間に実施した診

療所は半数以下です。(図 33)

・ 医療圏域別にみると、在宅及び施設ともに上越圏域で最も高い状況です。上越

圏域では、訪問口腔ケアセンターや在宅歯科医療連携室などの取組が進んでい

ます。(図 34)

歯科診療所の在宅歯科保健医療サービスの実施状況等

(平成 22 年日常生活圏域ニーズ調査:県内 10 市町村の集計結果)

図 31 図 32

(平成 28 年新潟県歯科医療機能連携実態調査)

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- 48 -

・ 歯科医師及び歯科衛生士による居宅療養管理指導を実施した歯科診療所の割

合は、歯科医師 10.0%、歯科衛生士 8.2%です。(図 35)

・ 訪問歯科診療の実施件数は、在宅・施設ともに平成 24 年から約 1.5 倍増加し

たものの、訪問歯科診療を実施した歯科診療所の割合は、減少しています。(図

36、37)

図 33

図 34 図 35

(平成 28 年新潟県歯科医療機能連携実態調査)

図 36 図 37

21.6 26.3

17.0

23.8 23.4

14.0

32.2

14.3

20.1 22.1

16.5

22.9 21.3 16.0

27.3 23.8

0

5

10

15

20

25

30

35

40

県 下越 新潟 県央 中越 魚沼 上越 佐渡

歯科訪問診療(医療圏別)

在宅 施設

(%)

10.0 10.5

9.0 7.6

11.2

6.0

14.9

9.5

8.2

10.5

6.7

3.8

10.1

0.0

16.5

0.0

0

5

10

15

20

県 下越 新潟 県央 中越 魚沼 上越 佐渡

居宅療養管理指導(医療圏別)

歯科医師 歯科衛生士

(%)

30.4

22.9 21.6 20.1

0

10

20

30

40

在宅 施設

訪問歯科診療実施歯科診療所

H24 H28

(%)

875

1,486 1,287

2,227

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

在宅 施設

訪問歯科診療実施件数

H24 H28

(平成 28 年新潟県歯科医療機能連携実態調査) (平成 28 年新潟県歯科医療機能連携実態調査)

(新潟県歯科医療機能連携実態調査) (新潟県歯科医療機能連携実態調査)

図 37

Page 33: 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策 · 20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図17) 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は17.9%であり、そのうち、若い

- 49 -

○ 治療内容別にみた対応可能な歯科診療所の割合は、「障害児(者)治療」で 71.2%※7)、「摂食・嚥下指導」で 40.4%※7)、「退院時カンファレンス※8)に係る病院か

らの参加要請の対応」で 33.1%です。(図 38)

○ 入院中の口腔ケアを在宅で継続させるための、退院時カンファレンスへの歯科診

療所の参加体制がある病院は 10.4%と少ない状況です。

○ 在宅療養支援歯科診療所※9)の登録をしている歯科診療所は 201 施設(17.2%)で

した。(平成 28年 11月1日現在)

(関東甲信越厚生局 施設基準の届け出受理状況(全体)参照)

※9)一定の要件をみたし、在宅等の療養に関して歯科医療面から支援できる体制等を

確保している歯科診療所

○ 県内の就業歯科衛生士及び歯科技工士数は、人口 10万人当たりで全国平均を上回

っています(平成 26 年衛生行政報告例)。しかし、訪問歯科診療等を担う歯科衛生士

及び歯科技工士は不足している状況にあります。

○ 歯科衛生士・歯科技工士の就業状況と復職支援に関する調査では、非就業者のう

ち、歯科衛生士で約6割、歯科技工士で約4割が「復職したい」又は「わからな

い」と答えています。

(平成 26 年歯科衛生士・歯科技工士有資格者の就業状況と復職支援に関する調査(新潟県))

※7)「対応できる」または「対応できるが重度は高次医療機関へ紹介」と回答した歯科診療所の

割合

※8)入院中の患者に対して、退院後の在宅での療養上必要な説明及び指導を、在宅療養を担当

する医師等の間で情報を共有すること

(平成 24 年新潟県歯科医療機能連携実態調査)

図 38

71.2

40.4 33.1

0

10

20

30

40

50

60

70

80

障害児(者)治療 摂食・嚥下指導 退院時カンファレンス

対応可能な診療内容

歯科診療所

病院

(%)

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- 50 -

○ 高齢者・障害者施設の協力歯科医として委嘱されている歯科診療所は 30.8%でし

た。 (平成 24 年新潟県歯科医療機能連携実態調査)

○ 高齢者施設等にてサービス等に取り組む歯科診療所の割合は、歯科健診で24.6%、

口腔ケア指導で 28.0%でした。(H23.8.1~H24.8.31)

(平成 24 年新潟県歯科医療機能連携実態調査)

※高齢者施設において、歯科専門職による週1回の口腔ケアにより、発熱発生率の低下やイン

フルエンザを予防することが明らかになっています。

○ 介護保険施設で、介護報酬における「口腔衛生管理体制加算※10)」を算定している

施設は 68.4%でした。(介護報酬請求:平成 27年 10月分)

・介護保険施設において、歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、介護職

員に対する口腔ケアに係る技術的助言及び指導を月 1回以上行っている場合

・歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士の技術的助言及び指導に基づき、入

所者又は入院患者の口腔ケア・マネジメントに係る計画が作成されていること

○ 県内の介護サービス事業所・施設等を対象としたアンケート調査から

・ 介護サービス事業所・施設等の約6割が「歯科医師による訪問歯科診療が実施

されていない」「歯科専門職との連携がとられていない」、約8割が「歯科衛生

士による訪問口腔ケアが実施されていない」と答えています。(図 39)

・ 介護サービス事業所・施設等の約 7 割は、口腔に問題のある要介護高齢者がい

るとの認識はあるが、一方で、約2割は実態を把握していないと答えています。

(図 40)

・ 介護サービス事業所・施設等における口腔ケアの負担感との関連をみたところ、

口腔ケアを負担に思っていない施設等の方が、「協力歯科医がいる」「歯科専門

職との連携がとれている」と答えています。しかし、協力歯科医がいる施設等

は5割弱、職員の中に歯科衛生士がいる施設等は1割程度と少ない状況です。

高齢者施設等の取組状況

(平成 27 年要介護者口腔保健・医療・ケアに関する関係者アンケート調査(新潟県))

図 39

図 40

非常に

多い

17.7%

ある程

度いる

ようであ

56.2%

ほとん

どいな

3.0%

実態を

把握し

ていな

21.3%

不明・無

回答

1.8%

口腔に問題のある要介護者

(平成 27 年要介護者口腔保健・医療・ケアに関する関係者アンケート調査)

※10)

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- 51 -

<効果>

○ 市町村が行う介護予防事業の効果を検証した研究では、唇や舌の動きがよくなる

など高齢者の口腔機能が向上することが報告されています。(図 41、42)

<県の取組>

○ 県健康ビジネス連峰政策により、高齢者の口腔機能向上の取組を促進しています。

[上越市介護予防事業より

(老年歯学 22(2):229-230,2007)]

[新潟市介護予防事業より

(口腔衛生会誌 59(1):26-33,2009)]

介護予防

◆介護予防の現場で口腔トレーニングの成果を客観的に

かつ簡便に評価できる機器を開発(全国初)

◆高齢者の口腔機能の目安となる、「オーラルディアドコ

キネシス」と「反復唾液嚥下テスト(RSST)」の自動

測定を可能にしたもの

健口くん

舌ブラシ「W-1」

◆手軽に口腔ケアができる高機能舌ブラシ「W-1」を開発

◆舌を傷つけず、舌苔をきれいに取ることができる、高齢者

にも使い易い舌ブラシ

図42 舌苔※12)の付着状態の変化 図41 オーラルディアドコキネシス※11)の比較

改善

※11)「パ」「タ」「カ」をそれぞれ5~10 秒間発音することにより、口の機能を評価する検査

※12)舌の“汚れ”です。

(舌苔は、口臭、味覚の低下および呼吸器感染症の原因になる場合があります)

**:p<0.01

***:p<0.001

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- 52 -

○ 障害者は自力で十分なセルフケアができないことが多く、歯科疾患のリスクが高

い現状にあります。

○ 障害者のむし歯の状況をみると、県民全体の平均に比べ、むし歯総本数は変わり

ませんが、未治療のむし歯数が多いことが報告されています。(図 43、44)

○ 障害者の歯周病の状況をみると、県民全体の平均に比べ、全ての年齢で歯周病に

罹っている人の割合が高い(2~7倍)状況にあります。

○ 県では、地域活動支援センター等の利用者を対象に、歯科健診・歯科保健指導事

業を実施していますが、健診後の歯科医院への受診率は1~2割程度に過ぎない

状況です。

○ 県及び県歯科医師会では、障害者が身近な地域において歯科保健医療サービスを

受けられるよう、「新潟県歯科医師会認定障害者診療医」を養成しており、現在の

認定歯科医師数は 83名です。(平成 28年4月1日現在)

○ 障害者歯科治療に対応可能な歯科診療所の割合は 71.2%、病院の割合は 70.1%で

す。

○ 全身麻酔等を用いた障害者歯科治療を実施する病院の割合は 32.8%です。

年齢別一人平均むし歯数の比較

0

5

10

15

20

15-19 20-29 30-39 40-49 50-59

年齢

障害者

県民全体

(本) 年齢別一人平均未処置むし歯数の比較

0

0.5

1

1.5

2

2.5

15-19 20-29 30-39 40-49 50-59

年齢

障害者

県民全体

(本)

(小規模障害者施設の調査(H19、新潟市))

障害者歯科保健医療

図 44 図 43

(平成 27 年病院歯科機能調査(新潟県))

(平成 24 年新潟県歯科医療機能連携実態調査)

Page 37: 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策 · 20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図17) 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は17.9%であり、そのうち、若い

- 53 -

<課題>

<関係機関等との連携体制の整備等>

● 歯・口腔に問題を抱える在宅要介護者が、歯科治療を受けずに潜在化しているこ

とから、要介護者を取り巻く関係者の連携体制等の整備が課題となっています。

● 入院中の口腔ケアを在宅で継続させるためには、退院時カンファレンスへの歯科

の参画が効果的ですが、対応できる歯科診療所は3割程度、病院は1割程度と少

ない状況です。退院時カンファレンスに参加する多職種が、要介護者に対する歯

科的対応の重要性を認識し、ケアプランに反映させることが必要です。

● 訪問歯科診療を実施した歯科診療所は2割程度と少ない状況です。また、訪問歯

科診療及び居宅療養管理指導の実施状況に地域差がみられます。

● 訪問歯科診療の実施件数は増加傾向にありますが、実施する歯科診療所の割合は

減少しており、一部の歯科診療所に偏在化している状況です。身近な地域で訪問

歯科診療等が円滑に提供されるよう、歯科診療所の体制整備が必要です。

● 全身麻酔等を用いた障害者歯科診療を実施する病院は3割程度となっています。

障害者(児)の口腔疾患の重症化を予防するためにも、身近な地域で歯科保健医

療サービスが受けられる体制の整備が必要です。

● 認知症の早期診断、早期対応のため、高齢者に接する機会の多い歯科医師等が認

知症の疑いのある人に気づき、医科診療所等へつなぐ体制整備が必要です。

<人材の養成等>

● 居宅療養管理指導を行っている歯科診療所は1割程度であり、介護保険制度や要

介護者等の対応について理解し、訪問歯科診療及び口腔ケアを担う歯科衛生士及

び歯科技工士が不足しています。人材確保のための復職支援研修等の取組が必要

です。

● 高齢者施設及び障害者施設利用者の口腔ケアを担う介護職員等の質を高めるため、

歯科専門職の定期的な関わりを促進することが重要です。

● 障害者の歯科疾患を予防するため、保護者への意識啓発や施設職員等の資質向上

が必要です。

1 身近な地域の歯科保健医療サービスの整備

Page 38: 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策 · 20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図17) 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は17.9%であり、そのうち、若い

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<市町村等の取組促進>

● 高齢者に対する口腔機能向上訓練等により、口唇や舌の動き、嚥下機能等が向上

することが分かっており、要介護状態になる前からの口腔機能向上に向けた口腔

ケアの方法等を、高齢者に身につけてもらうための取組が必要です。

● 障害者が身近な地域で歯科保健医療サービスを受けられるよう、認定障害者診療

医等の情報提供や歯科受診の必要性についての啓発が必要です。

● 在宅では介護者に余裕がなく、口腔ケアまで目が向かない現状にあります。在宅

の口腔ケアを進めるため、歯科専門職からのアプローチのほか、歯科専門職と要

介護者の間をつなぐ介護支援専門員等の役割が重要です。

● 支援や介護が必要になるにつれ、定期的に歯科健診を受診する割合は低くなる傾

向にあることから、要支援、要介護状態になる前からの口腔機能向上の啓発が重

要です。

● 障害児は甘味飲料や菓子類を摂取することが多いが、セルフケアが十分にできな

いため、望ましい口腔衛生や食習慣の定着に向け、子どもの頃からの支援が必要

です。また、成人期以降は親に代わって歯科受診を管理しサポートする体制が必

要です。

● 障害者の歯科受診や口腔ケアを推進するためには、障害者施設の職員や相談支援

専門員等と連携し、継続した支援が必要です。

2 県民の意識・行動の定着を支援

Page 39: 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策 · 20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図17) 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は17.9%であり、そのうち、若い

- 55 -

<重点施策>

① 要介護者等が、在宅で望む医療や摂食嚥下リハビリテーション等を受けられる

よう、在宅歯科保健医療サービスを円滑に行うための歯科診療所の体制の充実

を図ります。

② 病院から在宅への切れ目のない歯科治療や口腔ケア等が円滑に提供されるよう、

在宅歯科医療連携室等を通じて、歯科診療所と医科診療所、病院、薬局及び介

護事業所等との多職種連携を促進します。

③ 健康ビジネス連峰政策により、市町村や介護事業所等における高齢者の口腔機

能向上の取組を促進します。

④ 障害者が身近な地域で望む医療が受けやすくなるよう、歯科診療所との連携体

制の整備や障害者施設への技術支援の充実を図ります。

⑤ 誤嚥性肺炎予防等に係る歯科治療や口腔ケアの重要性を本人、家族及び介護関

係者へ普及啓発するとともに、要介護者や障害者を支援する関係者の意識向上

を図ります。

<評価指標> 要介護者・障害者

重点

施策

評価指標 基準値 現状値 目標値 長期

目標値 目標設定の考え方

(H24) (H27) (H32) (H34)

全体

評価

指標

訪問歯科診

療を実施す

る歯科診療

所の割合(在

宅)

30.4% 21.6%

(H28)

38% 40% ・訪問歯科診療の提供体制を評価

する指標

・基準値時点から 10 年間で 10 ポ

イント増を長期目標値とし、これ

までの傾向を踏まえ、目標値を設

※出展:新潟県歯科医療機能連携実態調査

全体

評価

指標

口腔衛生管

理体制加算

を算定して

いる介護保

険施設の割

59.9% 68.4% 76% 80% ・介護保険施設における口腔ケア

等の取組を評価する指標

・基準値時点から 10 年間で 80%

の施設の実施を長期目標値とし、

これまでの傾向を踏まえ、目標値

を設定

※出展:新潟県国民健康保険団体連合会保有

の統計情報

1 身近な地域の歯科保健医療サービスの整備

2 県民の意識・行動の定着を支援

Page 40: 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策 · 20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図17) 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は17.9%であり、そのうち、若い

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<施策の展開>

1 身近な地域の歯科保健医療サービスの整備

施策 対策

実施主体

歯科医師会

県地域機関

市町村

県民

その他

○ 要介護者歯科保

健医療サービス

の充実

○訪問歯科健診及び施設職員等対象の口腔ケア

実地研修

○訪問歯科診療機器の整備

○認知症の早期診断・早期対応のための体制整備

● 訪問歯科診療や

摂食嚥下リハビ

リテーション等

を行うための体

制整備

○訪問歯科診療や摂食嚥下リハビリテーション

等に関する研修

● 要介護者の歯科

保健指導等に対

応できる歯科衛

生士等の確保・養

○歯科衛生士、歯科技工士の復職支援研修

● 訪問診療を担う

関係機関との連

携体制の構築

○在宅歯科医療連携室等を通じた病院、薬局、介

護施設等と歯科診療所との連携の構築

○歯科医療連携等に関する調査の実施

○ 要介護状態にな

ることを防止す

るための市町村

等の口腔機能向

上の取組促進

○市町村の介護予防事業の支援

○県健康ビジネス連峰政策による口腔機能向上

の取組促進(「健口くん」等)

○口腔機能向上のための調査、研究等

●重点施策

Page 41: 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策 · 20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図17) 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は17.9%であり、そのうち、若い

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施策 対策

実施主体

県 歯科医師会

県地域機関

市町村

県民

その他

● 障害児(者)歯科

保健サービスの

推進

○障害者施設の歯科健診、保健指導及び健診後の

継続的な技術支援

○特別支援学校でのフッ化物洗口等の推進

○施設フロリデーションの推進に向けた検討

○県歯科医師会認定障害者診療医の養成・周知

○歯科衛生士等対象の研修

2 県民の意識・行動の定着を支援

施策 対策

実施主体

歯科医師会

県地域機関

市町村

県民

その他

● 口腔ケアの重要性

についての普及啓

○介護支援専門員等を対象とした口腔ケア研

修会

○要介護者及び介護者への普及啓発

○施設職員等対象の口腔ケア実地研修

○介護保険関係施設等へのリーフレット配布

○障害者及び施設職員への普及啓発

○障害者福祉の手引き「ふれあい」等での情報

提供

1 身近な地域の歯科保健医療サービスの整備

●重点施策

●重点施策

Page 42: 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策 · 20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図17) 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は17.9%であり、そのうち、若い

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歯・口腔の健康づくりががん治療等の合併症を予防することを県民が理解するとと

もに、がん等の疾病にかかったら、歯科治療や口腔ケアを当たり前に受けられるよう

になっている。

<現状>

○ 治療内容別にみた対応可能な歯科診療所の割合は、「障害児(者)治療」で 71.2%※13)、「摂食・嚥下指導」で 40.4%※13)、「退院時カンファレンスに係る病院からの

参加要請の対応」で 33.1%です。

○ 医療機関等から紹介を受け、各疾病患者の歯科治療に対応できると回答した歯科

診療所の割合は、「糖尿病」59.1%、「がん」53.0%、「脳卒中」50.7%です。

(図 45)

※ 疾病別連携内容

・がん:がん患者の歯科治療にあたり、がん医療及び療養支援を行う医療機関との連携

・脳卒中:脳卒中患者の歯科治療にあたり、脳卒中医療及び療養支援を行う医療機関との連携

・急性心筋梗塞:急性心筋梗塞患者の歯科治療にあたり、急性心筋梗塞医療機関との連携

・糖尿病:糖尿病健康手帳を用いた歯周病の合併症管理のための糖尿病医療機関との連携

・精神疾患:認知症等の精神疾患患者の歯科治療にあたり、精神疾患医療機関との連携

医科歯科連携(がん連携等)

※13)「対応できる」及び「対応できるが重度は高次医療機関へ紹介」と回答した歯科診療所の割合

歯科診療所の状況

(平成 24 年新潟県歯科医療機能連携実態調査)

図 34

(平成 24 年新潟県歯科医療機能連携実態調査)

図 45

53.0 50.7 44.8

59.1

42.6

0

10

20

30

40

50

60

70

がん 脳卒中 急性心筋梗塞 糖尿病 精神疾患

(認知症等)

医療連携体制の状況 (%)

Page 43: 第3章 歯科保健の現状、課題及び対策 · 20歳代前半の若い世代の使用率が低い状況です。(図17) 歯をみがいたときに血が出ると答えた人の割合は17.9%であり、そのうち、若い

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○ 病院歯科の院内連携体制で、最も多かったのは「感染予防(対策)チーム」の92.5%、

次いで「褥瘡対策チーム」の 91.0%、「NST(栄養サポート)チーム」の 67.2%の

順です。そのうち、歯科の参加が最も多かったのは、「NST(栄養サポート)チー

ム」32.8%、次いで「感染予防(対策)チーム」29.9%、「摂食・嚥下リハビリテ

ーションチーム」17.9%の順です。(図 46)

○ 定期的な会議等、地域の歯科医師会との連携をとっている病院歯科の割合は

46.3%です。

○ 地域医療連携パスに歯科が位置づけられている割合は 9.0%と低い状況です。

○ 病院歯科で実施している専門的な歯科治療内容の割合は、「腫瘍性疾患(悪性含む)

の診断・手術」47.5%、「周術期口腔機能管理」45.8%、「摂食嚥下障害の診断・

治療」39.0%、「障害(児)者の麻酔・鎮静下歯科治療」32.2%です。

(図 47)

○ 周術期口腔機能管理を実施している病院歯科のうち、かかりつけ歯科医へ紹介し

ている病院は、入院前が 15.3%、退院後が 18.6%と少ない状況です。

(平成 24 年新潟県歯科医療機能連携実態調査)

(平成 24 年新潟県歯科医療機能連携実態調査)

図 46

(平成 27 年病院歯科機能調査(新潟県))

病院歯科※14)の状況 ※14)歯科を標榜または診療科目としている病院

図 35

図 47

47.5 45.8

39.0 32.2

0

10

20

30

40

50

腫瘍性疾患

(悪性含む)

の診断・手術

周術期口腔機

能管理

摂食嚥下障害

の診断・治療

障害(児)者

の麻酔・鎮静

下歯科治療

病院歯科の専門的歯科治療の状況 (%)

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○ 1病院歯科(新潟大学医歯学総合病院及び日本歯科大学新潟病院除く)当たりの

常勤歯科医師は 1.1人、常勤歯科衛生士は 2.1人と少ない状況です。

○ がん患者が安心して歯科治療や口腔ケアを継続的に受けることができる体制を整

備するため、県歯科医師会が県立がんセンター新潟病院及び新潟大学医歯学総合

病院との間で「がん患者医科歯科連携合意書」を締結しています。

また、郡市歯科医師会と病院との同合意書の締結も少しずつ進んできており、

地域におけるがん患者の医科歯科医療の連携体制が広がってきています。

○ 県及び県歯科医師会では、地域の受け皿となるがん患者の歯科診療に対応できる

歯科医師等を養成するための講習会を開催しています。講習会を受講し、登録さ

れた歯科診療所は、平成 28年3月末現在で 293施設(25.9%)です。

○ 本県男性の口腔がん(咽頭がん含む)の罹患数は、新潟県がん登録によると年間

243件(平成 24年)であり増加傾向にあります。

○ 日本糖尿病協会歯科医師登録医※15)に登録している県内の歯科医師数は 126名

です。

※15)日本糖尿病協会が、糖尿病治療と口腔ケアの連携を強化することをめざし整備した制度

<がん等5疾病と歯・口腔の健康との関連>

◆ がん

手術前後に口腔ケアを行うことにより、がん治療に伴う口腔合併症等の予防と軽減につなが

り、先行事例から感染率や入院日数の減少等効果があったことが報告されています。

◆ 脳卒中

脳卒中の後遺症による口腔機能低下や口腔衛生状態の悪化により、摂食・嚥下障害及び口腔

内細菌に起因する誤嚥性肺炎が発生しやすくなります。

◆ 急性心筋梗塞

歯周病菌は、動脈硬化のリスクを高め、冠動脈で起これば虚血性心疾患になります。

実際に、動脈硬化を起こした血管から歯周病菌が検出されています。

◆ 糖尿病

歯周病は糖尿病の第6番目の合併症と言われています。また、慢性炎症としての歯周炎をコ

ントロールすることで、糖尿病のコントロール状態が改善する可能性が示唆されており、両者

は密接な相互関係にあるという考えが広まってきています。

◆ 認知症

歯の喪失がアルツハイマー型認知症にかかる危険因子の一つとして考えられており、歯が少

ないほど発生リスクが高いことが分かっています。

(日本糖尿病協会 H28.11 現在の登録状況)

(平成 27 年病院歯科機能調査(新潟県))

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- 61 -

<課題>

● 全身と口腔との関連に係る医療関係者の共通理解が十分でないために、病院や医

科診療所等と歯科診療所との連携が進んでいない状況にあります。

● がん患者の口腔ケア等について、県歯科医師会とがん診療連携拠点病院との連携

にとどまらず、県内全域において医療圏毎の連携体制の構築が必要です。

● 口腔がん治療や専門的歯科治療等にかかる病院歯科の整備状況や地域の歯科診療

所等との連携に関する実態を把握する必要があります。

● 周術期口腔機能管理による在院日数に対する削減効果が報告されていますが、実

施している病院は半数以下となっています。入院前と退院後の口腔管理を担う地

域の歯科診療所と病院等との連携体制の整備が必要です。

● 脳卒中患者に対し誤嚥性肺炎予防のための専門的口腔ケアが提供されることが必

要ですが、摂食嚥下障害に対するリハビリテーションを担う医療機関や介護サー

ビス事業所・施設等との連携が不足しています。

● 入院中のケアが退院後も在宅で継続されるためには、地域へつなぐことが必要で

す。しかし、病院の連携担当者との認識の違い等により、地域医療連携パスにお

ける歯科の位置づけは1割と低い状況にあります。

1 身近な地域の歯科保健医療サービスの整備

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- 62 -

<重点施策>

① 糖尿病や脳卒中患者等の医療の質を高めるため、病院や医科診療所と歯科診療所

による医科歯科連携ができる人材の養成と地域における連携体制の整備を促進し

ます。

② がん患者等の合併症予防や QOL 向上のため、がん診療連携拠点病院等と歯科診療

所による周術期口腔機能管理等の医科歯科連携の体制整備を促進します。

③ 退院後に在宅の口腔ケアが継続されるよう、病院関係者への啓発及び病院、薬局

や介護サービス事業所・施設等と歯科診療所をつなぐ連携体制の整備を促進しま

す。

④ 病院や介護サービス事業所・施設等との医療介護連携を円滑に行うためのコーデ

ィネーターを養成するとともに、多職種連携のための研修等の人材の養成を充実

します。

<評価指標> 医科歯科連携(がん連携含む)

重点

施策

評価指標 基準値 現状値 目標値 長期

目標値 目標設定の考え方

(H24) (H27) (H32) (H34)

全体

評価

指標

がん診療連携

拠点病院等と

連携し、がん

患者の歯科診

療に対応でき

る歯科診療所

の割合※16)

13.2% 25.9% 43% 50% ・がん患者を取り巻く医科歯科

連携を強化するため、受け皿と

なる歯科診療所の役割が重要と

なることから設定

・身近な地域で治療が受けられ

る体制整備として 50%を長期目

標値とし、これまでの傾向を踏

まえ、目標値を設定

※出展:新潟県立がんセンター新潟病

院と新潟県歯科医師会との

医科歯科医療連携事業講習

会名簿

※16)がん患者の周術期における歯科治療や口腔ケアに関する講習会を受講し、登録された歯科

診療所の割合

1 身近な地域の歯科保健医療サービスの整備

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<施策の展開>

1 身近な地域の歯科保健医療サービスの整備

施策 対策

実施主体

歯科医師会

県地域機関

市町村

県民

その他

● 医科歯科連携を促

進するための連携

体制の強化

● がん患者に対する

歯科医療連携のた

めの基盤整備

● 病院関係者への啓

発及び病院等と歯

科診療所との連携

体制の整備

○ 医療連携の実態把

● 医療介護連携のた

めの人材の養成

○医科歯科連携を促進するための多職種関係

者研修

○医科診療所や病院等との連携モデルの構築

○歯科医師及び病院関係者等の研修会

○がん診療連携拠点病院等との連携構築の

ための協議会や研修会

○在宅歯科医療連携室等を通じた病院、薬局、

介護施設等と歯科診療所との連携の構築

○歯科医療連携等に関する調査の実施

○歯科医師等に対する訪問歯科診療や摂食嚥

下リハビリテーション等に関する研修

●重点施策

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口腔ケアが誤嚥性肺炎を予防することを県民一人一人が理解し、たとえ災害時であ

っても、歯・口腔の健康づくりを意識して自ら取り組んでいる。

<災害時歯科保健医療の必要性>

大規模災害が発生し避難所での慣れない避難生活が長引くと、ストレスや乱れた食

生活等から免疫力が低下し、加えて極端な水不足による口腔清掃の不備や義歯の紛失

等により、誤嚥性肺炎のリスクが増加することが指摘されています。

災害時における歯科保健医療分野の対応として、「口腔外傷者の病院歯科への搬送」、

義歯の紛失や痛み等歯科医療の応急処置を行う「救護所の開設」とともに、誤嚥性肺

炎による災害関連死※17)を防ぐために「災害時の口腔ケア」の実施が重要です。

* 阪神・淡路大震災においては、死者 6,434 人のうち災害関連死は 922 人であ

った。最も多かったのが肺炎である(223人、24%)。

災害関連死の 81.3%が 65歳以上の高齢者であった。

※17)直接死以外で地震より後に発生した死亡のうち、行政などが震災との因果関係を認定した死亡

(「歯科における災害対策」より)

<活動実績>

○ 県は、被災直後から新潟県災害対策本部を設置し、被害状況等の情報収集を行う

とともに、県地域機関を通じた歯科ニーズの情報収集を行いました。

○ 新潟県歯科医師会も被災後まもなく県歯科医師会災害対策本部(以下「県歯会対

策本部」という。)を立ち上げ、歯科診療所の被災状況等の情報収集並びに歯科医

療救護班の出動体制の準備を行いました。

○ 県は、県歯科医師会との協定に基づき、歯科医療救護班の派遣を要請し、救護班

は、歯周病や義歯等の痛みを訴えた患者の対応にあたりました。

災害時歯科保健医療

平成 16年中越大震災及び平成 19年中越沖地震における支援

活動

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災害時の歯科保健医療支援体制(中越沖地震)

日本歯科医師会

歯科大学県歯科衛生士会県歯科技工士会等

郡市歯科医師会(周辺)

郡市歯科医師会(被災地)

県地域機関

<都道府県歯科医師会>

県歯科医師会災害対策本部

<都道府県庁>

県災害対策本部

<被災市町村>

本部コーディネーター

現地コーディネーター

④支援要請・支援物資の供給・他都道府県歯への対応依頼

④人的派遣

要請・連絡調

③派遣要請

②支援要請

①情報収集

①情報収集④現地コーディネーターとの連絡調整⑤口腔ケア班の編成・派遣⑥支援物資の調整・管理⑦活動内容の記録・分析

①情報収集

・避難所の情報収集・巡回スケジュール調整・支援物資の現地管理

○ 県は、県歯会対策本部に対し口腔ケア班の派遣要請を行い、口腔ケア班は、避難

所への巡回口腔ケア及び歯ブラシの配布等を行いました。

○ 県歯会対策本部は、支援活動全般に係る活動調整や需要に関する情報収集・分析

を行う本部コーディネーターを設置し、日々変化する現場の状況・ニーズに即応

した活動を行うための現地コーディネーターと連携しながら支援活動を行いまし

た。

○ 避難所には大量のお菓子等が山積みであったため、子どもたちの全身の健康管理

の観点から、幼児期、学童期の子どもたちを対象に、巡回ケア指導を重点的に行

いました。

○ 口腔ケアの必要性を啓発するため、歯や口腔の健康についてのチラシ 3,000 部を

避難所に配布しました。また、口腔機能の維持を通じて生活不活発病を予防する

ため、「お口の体操」チラシも避難所へ配布しました。

○ 要介護高齢者や障害者等の要配慮者に対して、「福祉避難所」へ定期的に巡回口腔

ケアを行いました。

図 48

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* 災害における最重要課題は命を守ることであり、震災がなければ助かったかも

しれない「避けられた死」を減らす努力が求められる。

関連死が総死亡数の 76%を占めた中越地震では、避難所において口腔ケアの介

入がなされ肺炎による死亡は1名のみであったという。

(H20 年度厚生科研事業「大規模災害時における歯科保健医療の健康危機管理体制の構築

に関する研究」より)

* 被災地である小千谷市の死因別死亡数を地震のおきた平成16年と過去の年次と

の比較を行ったところ、被災、避難生活という状況下において、肺炎による死

亡数が増加傾向を見せていなかった。口腔ケアを含めた高齢者に対する種々の

健康対策が功を奏したと評価できうると思われた。

(新潟県中越地震歯科医療支援活動報告書(日本歯科大学新潟生命歯学部)より)

啓発チラシ

啓発チラシ

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○ 中長期的な歯科保健医療支援活動

災害発生後から数年にわたり、仮設住宅等での不便な生活を強いられる高齢者

や災害時要援護者では、免疫機能の低下等により、誤嚥性肺炎等の呼吸器疾患を

起こす危険性が高くなることから、仮設住宅入居者等を対象とした口腔ケア推進

事業を実施しました。

表3 歯科保健医療支援活動の概要

中越大震災 中越沖地震

発災後2日目(10/25) 発災当日(7/16)

発災後5日目 発災後3日目

医療救護所 10/28~11/14(18日間) 7/19~7/23(5日間)

巡回口腔ケア 10/28~11/21(25日間) 7/19~8/16(実17日間)

133名 78名

1,226名 1,583名

歯科医師 延べ95名 延べ91名

歯科衛生士 延べ132名 延べ152名

歯科技工士 延べ17名 延べ3名

巡回口腔ケア人数

支援

県歯会対策本部の設置

開始日

活動期間

応急歯科診療受診者数

表4 健康サポート事業(被災地における口腔ケア推進事業)

誤嚥性肺炎予防のための口腔ケア研修会

仮設住宅における高齢者の口腔ケア指導

 被災地における要介護者の誤嚥性肺炎や介護の重症化予防を目的に、災害救助法適用の市町村において、介護に直接携わる施設職員や訪問介護員等を対象とした研修会を実施

 被災生活が長期化している仮設住宅入居の高齢者に対して、口腔の健康状態の改善及び誤嚥性肺炎の予防を目的として、歯科衛生士等による口腔ケア指導を実施 ①仮設住宅集会場等における口腔ケア指導 ②訪問口腔ケア指導

中越大震災(H17.2~H21.2)

62会場、2,051人 ① 39会場、869人

中越沖地震(H19.10~H22.9)

59会場、2112人 ① 50会場、1023人 ② 延べ188人

事業概要

実績

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<活動から見えてきた課題>

● 被災間もない頃は、歯・口腔は後回しにされがちで、加えて水不足で口腔清掃を

控えるため、口腔環境の悪化する人が増えてきます。そのため、早期から巡回口

腔ケア等に取り組むことが必要です。

● 被災地の市町村職員は対応に忙殺され、歯科に関する情報収集はほとんどできな

い状況にあります。他職種と連携し、いち早く現場に入り情報収集することが必

要です。

● 災害ボランティア等の方々が災害時に口腔ケア等を意識して避難者に声かけをし

てもらえるよう、平常時から社会福祉協議会等関係者への啓発が重要です。

● 日頃の啓発活動がそのまま災害時の対応につながります。平常時から、介護施設、

社会福祉協議会及び市町村の介護部門や保健部門に対し、災害時における要介護

者及び障害児(者)への口腔ケア等の重要性について啓発が必要です。

● 摂食・嚥下困難者に対しては、歯科的な応急処置と食支援、栄養管理が重要なた

め、歯科医師と管理栄養士等が連携し支援することが必要です。

● 要配慮者に対しては、定期的な口腔ケア等の手厚い支援が必要です。そのための

スタッフの確保と人材育成が必要です。

誤嚥性肺炎予防啓発チラシ

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<県の役割>

○ 県は、災害発生時に迅速かつ的確な医療を提供するため、「新潟県地域防災計画」

及び「災害時医療救護活動マニュアル」に基づき、被災状況に応じて県歯科医療

救護班の派遣を要請します。

○ 県は、被災状況に応じ、県歯科医師会に巡回口腔ケア班の派遣を要請します。

○ 被災地における歯科的ニーズを把握するため、県地域機関を通じて情報収集を行

うとともに、必要に応じて県地域機関等の歯科専門職へ協力要請を行い、市町村

及び歯科医師会等の関係団体との連絡調整を行います。

○ 要配慮者への支援活動を充実するため、平常時から社会福祉協議会及び介護施設

等の職員を対象とした歯科保健研修会等を活用し、災害時の口腔ケアの重要性に

ついて、啓発普及を行います。

○ 摂食・嚥下困難者等の要配慮者に対しては、必要に応じて保健師や栄養士等と協

働し、定期的な口腔ケア等の支援を行います。

生活不活発病予防「お口の体操」チラシ

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<新潟県における災害時歯科保健医療活動の根拠>

「新潟県地域防災計画(震災対策編)(H28.3月)」より引用

〔医療救護活動〕

第3章第 18節「医療救護活動計画」

1 計画の方針

県、市町村、医療機関及び医療関係団体は、緊密な情報共有と協力体制の下に、

災害の状況に応じた適切な医療(助産を含む。)救護を行うものとする。

(1) 基本方針

ア 各主体の責務

(略)

(ク)医療救護班及び歯科医療救護班編成機関は、県から救護班の派遣要請があ

った場合、また、災害拠点病院は、派遣要請がない場合においても、被災状

況等に応じ自らの判断で医療救護班を派遣する。

○新潟県と新潟県歯科医師会は、救護班の派遣等の災害救助の協力に関する協定を

締結しています。

〔保健衛生活動〕

第3章第 19節「防疫及び保健衛生計画」

1 計画の方針

(1) 基本方針

ア 震災時においては、生活環境の悪化や病原体に対する抵抗力の低下等により、

心身の健康に不調を来したり、感染症が発生しやすくなることから、関係機関

は防疫・保健衛生対策の円滑な実施を図るものとする。

(略)

(2) 要配慮者※18)に対する配慮

県及び市町村は、避難行動要支援者※19)及び人工透析患者等の健康状態を把握

し、情報を共有した上で、医療・保健情報を提供するとともに保健指導を実施す

るものとする。

(略)

※18)高齢者、障害者、傷病者、妊産婦、乳幼児、外国人等その他の特に配慮を要する者をいう。

(災害対策基本法第8条第2項関係)

※19)要配慮者のうち、災害発生時に自ら避難することが困難な者であって、その円滑かつ迅速な避難の

確保を図るため特に支援を要するもの。(災害対策基本法第 49条の 10関係)

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4 業務の内容

(1) 保健衛生対策

ア 巡回保健班による健康相談等の実施

(ア) 地域振興局健康福祉(環境)部長が保健師を中心として編成(必要に応じ

て医師、栄養士、精神保健福祉相談員等追加)被災地区の避難所、仮設住宅

等を巡回

(イ) 市町村保健師の協力を得て、巡回計画作成

(ウ) 福祉保健課:必要に応じて、他の健康福祉(環境)部からの応援態勢を確

イ 避難行動要支援者の健康状態確認及び保健指導実施

(ア) 地域振興局健康福祉(環境)部長が保健師を中心として編成(必要に応じ

て医師、栄養士、精神保健福祉相談員、歯科衛生士等追加)

被災地区の避難所、仮設住宅等を巡回

(イ) ケースへの適切な処遇のため、医療救護、防疫対策、栄養指導、精神救護

及び福祉対策関係者等と連絡調整

a 災害時要援護者及び人工透析患者等の健康状態の把握及び保健指導

b 難病患者、精神障害者等に対する保健指導

c インフルエンザ等の感染症予防の保健指導

d 有症状者への受診勧奨、悪化予防の保健指導

e 不安の除去等メンタルヘルスへの対応

f 口腔保健指導

「災害時医療救護活動マニュアル(H25.4月)」により引用

〔医療救護活動〕

第3章 被災地外の医療救護班活動マニュアル

2 歯科医療救護班

(1)歯科医療救護班の派遣

イ 県医務薬事課は、市町村、県歯科医師会、医療機関等からの派遣要請を受

けて関係機関に対し、歯科医療救護班の派遣を要請します。また、災害状況

等を勘案し、派遣要請がない場合でも必要に応じ、歯科医療救護班の派遣を

要請します。

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*東日本大震災において、歯による身元確認のための情報技術が広範に適用された。

<参考>

[身元確認手段の統計として、死者数が最大となった宮城県の例]

身元確認手段の内訳(2016年3月 10 日現在)

①身体的特徴や所持品等による確認が約 86% ②歯による確認が約 10%

③指紋・掌紋による確認が約3% ④DNA 型による確認が約1%

特に、高度損傷遺体に対して DNA 型検査とともに歯科情報の活用が有効であった。

(H27年度厚生労働省委託事業「歯科診療情報の標準化に関する実証事業報告書」(新潟県歯科医師会)より)

新潟県歯科医師会と新潟県警察本部が

「身元確認等における協力体制に関する協定書」を締結(平成 28年1月 21日)

災害、事件、事故等が発生した場合に、死体の身元確認等における歯科医師の

立会い等の協力体制の確立について定めたもの