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第2部 東北 食料・農業・農村 の動向 第1章 食料の安定供給の確保に向けた取組 第2章 強い農業の創造に向けた取組 第3章 地域資源を活かした農村の振興・活性化 第4章 東北の主な表彰事例

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第2部 東北食料・農業・農村

の動向

第1章 食料の安定供給の確保に向けた取組

第2章 強い農業の創造に向けた取組

第3章 地域資源を活かした農村の振興・活性化

第4章 東北の主な表彰事例

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第1章 食料の安定供給の確保に向けた取組

1 新たな「食料・農業・農村基本計画」の推進

(1)新たな「食料・農業・農村基本計画」

ア 新たな食料・農業・農村基本計画の決定

「食料・農業・農村基本法」(以下「基本法」という。)に基づき、農政の中長期的

ビジョンを示す新たな食料・農業・農村基本計画(以下「基本計画」という。)が平成

27(2015)年3月31日に閣議決定されました。基本法が掲げる「食料の安定供給の確保」、

「多面的機能の発揮」、「農業の持続的発展」及び「農村の振興」という4つの基本理

念の実現を図る具体的な施策展開のプログラムであり、食料・農業・農村をめぐる情

勢の変化等を踏まえ、おおむね5年ごとに見直すこととされています。

政府は、「高齢化や人口減少の進展」、「世界の食料需給をめぐる環境変化とグロー

バル化の進展」、「社会構造等の変化と消費者ニーズの多様化」、「農地集積など農業・

農村の構造変化」、「多様な可能性(国内外の新たな市場、ロボット技術等)」、「東日

本大震災からの復旧・復興」等の食料・農業・農村をめぐる情勢の変化を見通し、新

たな基本計画の下で、農業や食品産業の成長産業化を促進する「産業政策」と、多面

的機能の維持・発揮を促進する「地域政策」とを車の両輪として施策を展開していく

こととしています(図Ⅰ-1)。

また、新たな基本計画では、食料自給率の目標を実現可能性を考慮して設定するほ

か、併せて我が国の食料の潜在生産能力を評価した食料自給力指標を初めて公表しま

した。

図Ⅰ-1 新たな食料・農業・農村基本計画について

資料:農林水産省

中長期的な情勢の変化の見通し

評価と課題

○ 多面的機能支払制度、中山間地域等直接支払制度の着実な推進や鳥獣被害への対応強化

○ 高齢化や人口減少の進行を踏まえ、「集約とネットワーク化」など地方創生に向けた取組の強化

○ 都市農村交流、多様な人材の都市から農村への移住・定住等の促進

○ 力強く持続可能な農業構造の実現に向けた担い手の育成・確保、経営所得安定対策の着実な推進

○ 女性農業者が能力を最大限発揮できる環境の整備

○ 農地中間管理機構のフル稼働による担い手への農地集積・集約化と農地の確保

○ 構造改革の加速化や国土強靱化に資する農業生産基盤の整備

○ 米政策改革の着実な推進、飼料用米等の戦略作物の生産拡大、農業の生産・流通現場の技術革新等の実現

○ 気候変動への対応等の推進

○ 食品の安全確保と、食品に対する消費者の信頼の確保に向けた取組の推進

○ 食育の推進と国産農産物の消費拡大、「和食」の保護・継承の推進

○ 農業や食品産業が、消費者ニーズへの的確な対応や新たな需要の取り込み等を通じて健全に発展するため、6次産業化、農林水産物・食品の輸出、食品産業の海外展開等を促進

○ 食料の安定供給に係る様々なリスクに対応するため、総合的な食料安全保障を確立

○ 農協改革や農業委員会改革の実施

○ 農業共済団体、土地改良区の在り方について、関連制度の在り方を検討する中で、検討

○ 農地や農業用施設等の着実な復旧等の推進

○ 食品の安全を確保する取組や風評被害の払拭に向けた取組等の推進

食料の安定供給の確保農業の持続的な発展

農村の振興

・食料消費の見通し・生産努力目標・総合食料自給率(カロリーベース、生産額ベース)・飼料自給率

食料自給率の目標

・食料自給力指標

食料自給力(食料の潜在生産能力 )

食料の潜在生産能力を評価する食料自給力指標を提示し、食料安全保障に関する国民的議論を深め、食料の安定供給の確保に向けた取組を促進

○ 食料自給率目標は実現可能性を考慮して設定

講ずべき施策

食料自給率の目標

【カロリーベース】39%(H25)→ 45%(H37)

【生産額ベース】65%(H25)→ 73%(H37)

平成12年3月決定 基本計画

平成17年3月決定 基本計画

平成22年3月決定 基本計画

これまでの食料・農業・農村基本計画

高齢化や人口減少の進行

世界の食料需給をめぐる環境変化、グローバル化の進展

社会構造等の変化と消費者ニーズの多様化

食料・農業・農村をめぐる情勢

基本法の基本理念の実現に向けた施策の安定性の確保

食料の安定供給の確保に向けた国民的議論の深化

需要や消費者視点に立脚した施策の展開

農業の担い手が活躍できる環境の整備

持続可能な農業・農村の実現に向けた施策展開

新たな可能性を切り拓く技術革新

農業者の所得の向上と農村のにぎわいの創出

○ 農業や食品産業の成長産業化を促進する「産業政策」と、多面的機能の維持・発揮を促進する「地域政策」とを車の両輪として食料・農業・農村施策の改革を着実に推進

おおむね5年

ごとに見直し

食料・農業・農村基本法(平成11年7月制定)に基づき策定

今後10年程度先までの施策の方向性等を示す、農政の中長期的なビジョン

施策推進の基本的な視点

「強い農業」と「美しく活力ある農村」の創出

東日本大震災からの復旧・復興

団体の再編整備

農地の見通しと確保

農業経営等の展望

農業構造の展望魅力ある農山漁村づくり

に向けて

農林水産研究基本計画

【基本計画と併せて策定】

○ 食料自給力指標を初めて公表

農地集積など農業・農村の構造変化

多様な可能性(国内外の新たな市場、ロボット技術等)

東日本大震災からの復旧・復興

1 食料の安定供給の確保に向けた取組

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※1 農林水産業・地域の活力創造本部において、平成25(2013)年12月に決定された、今後の農政のグランドデ

ザインとなるもの。これに基づき、産業政策と地域政策を車の両輪として、農業・農村全体の所得を今後

10年間で倍増させることを目指し政策を展開。

※2 政府全体の窓口は、内閣府地方創生推進事務局が担当。平成27(2015)年2月27日構築(平成28(2016)年4

月1日現在17府省庁総勢966人)。地方からの相談に対し、前向きに具体的な提案ができるよう親切、丁寧、

誠実に対応していく。

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イ 新たな食料・農業・農村基本計画の周知

東北農政局では、平成27(2015)年5月11日に仙台市で東北ブロックを対象(兼宮城

県説明会)とした基本計画の説明会を開催しました。その後、宮城県を除く管内各県

説明会を開催し、基本計画の掲げる基本理念に沿った具体的な施策等の内容について

説明を行いました(表Ⅰ-1)。

(2)現場と農政を結ぶ活動の展開

(新たに県拠点を設置し、県内各地を回って現場と農政を結ぶ)

「農林水産業・地域の活力創造プラン※1」や新たな基本計画に基づく農政改革を着

実に推進するため、平成27(2015)年10月に新たに県域を担当する県拠点を県庁所在地

等に設置し、農政全般に関する総合窓口として、各種の制度や事業の説明や相談に対

応し、現場の課題を把握する「地方参事官」及びスタッフを配置し、農政全般に関す

る総合窓口として、地方公共団体と協力して農政課題の解決に取り組んでいます。ま

た、地方参事官ホットラインを県拠点に開設し、農業者・消費者・行政関係者の皆様

からの、農政に関する相談、事業や制度への質問等を受け付けています(表Ⅰ-2)。

さらに、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(平成26(2014)年12月27日閣議決定)

に基づき、地方公共団体が地方版総合戦略の策定を含め地方創生の取組を行うにあた

り、国が相談窓口を設け積極的に支援する体制として、国の職員等による「地方創生

コンシェルジュ※2」を設置しています。各県拠点の地方参事官及び農政局本局の職員

は、この地方創生コンシェルジュに任命されて、地方創生の取組を支援しています(表Ⅰ-3)。

表Ⅰ-1 新たな食料・農業・農村基本計画県別説明会開催一覧

資料:東北農政局

区 分 開 催 月 日 市町村 開 催 場 所

青森県 平成27(2015)年6月4日 青森市 リンクステーションホール青森

岩手県 平成27(2015)年6月5日 盛岡市 アイーナいわて県民情報交流センター

宮城県 平成27(2015)年5月11日 仙台市仙台合同庁舎(東北ブロック説明会兼宮城県説明会)

秋田県 平成27(2015)年6月2日 秋田市 ルポールみずほ

山形県 平成27(2015)年6月1日 山形市 山形国際交流プラザ(山形ビックウイング)

福島県 平成27(2015)年5月29日 郡山市 ビッグパレットふくしま

1 食料の安定供給の確保に向けた取組

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表Ⅰ-2 東北農政局 各県拠点一覧

資料:東北農政局

○東北農政局青森県拠点〒030-0861 青森市長島一丁目3番25号電話(地方参事官ホットライン):017-775-2151

・八戸駐在所〒039-1103 八戸市大字長苗代字狐田45番3号電話:0178-29-2113

○東北農政局岩手県拠点〒020-0033 盛岡市盛岡駅前北通1番10号

(橋市盛岡ビル5階)電話(地方参事官ホットライン):019-624-1125

・奥州駐在所〒023-0003 奥州市水沢区佐倉河字慶徳71電話:0197-25-3907

○東北農政局宮城県拠点〒980-0014 仙台市青葉区本町三丁目3番1号電話(地方参事官ホットライン):022-266-8778

○東北農政局秋田県拠点〒010-0951 秋田市山王七丁目1番5号電話(地方参事官ホットライン):018-862-5611

○東北農政局山形県拠点〒990-0023 山形市松波一丁目3番7号電話(地方参事官ホットライン):023-622-7231

・酒田駐在所〒998-0061 酒田市光ヶ丘2丁目13番6号電話:0234-33-7244

○東北農政局福島県拠点〒960-8107 福島市浜田町1番9号電話:024-534-4141電話(地方参事官ホットライン):024-534-4142

・いわき駐在所〒970-8026 いわき市平字堂根町4番11号電話:0246-23-8511

表Ⅰ-3 地方創生コンシェルジュ名簿

資料:東北農政局

課 室 役 職

源新 敏雄 統計部生産流通消費統計課 課長

酒井 正裕 青森県拠点 地方参事官(青森県担当)

畠山 正弘 農村振興部土地改良管理課 課長

島 尚士 岩手県拠点 地方参事官(岩手県担当)

佐藤 京子 企画調整室 調整官

垣見 勝彦 宮城県拠点 地方参事官(宮城県担当)

菅原 良順 経営・事業支援部食品企業課 課長

土屋 憲一 秋田県拠点 地方参事官(秋田県担当)

武田 久幸 消費・安全部 消費・安全管理官

小林 愼治 山形県拠点 地方参事官(山形県担当)

山内 洋志 消費・安全部消費生活課 課長

石橋 大彦 福島県拠点 地方参事官(福島県担当)

上崎 博資 いわき駐在所 地方参事官(震災復興)

福島県

山形県

秋田県

担当県 氏 名所 属(農林水産省 東北農政局)

宮城県

岩手県

青森県

1 食料の安定供給の確保に向けた取組

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※ 国民総生産(GDP)GDPは、Gross Domestic Productの略。国内において一定期間(通常1年間)に

生産された財貨・サービスの付加価値額の総計をいう。国内の経済活動の水準を表す指標となる。

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

【事例Ⅰ-1】

推進地区の設定による地域の課題解決に向けた取組(秋田県拠点)

東北農政局秋田県拠点では、平成27(2015)年10月~平成28(2016)年3月までに秋田

県内の25市町村をはじめ、農業関係団体等を延べ234

回訪問し「現場に農政を伝える」、「現場の声を汲み

上げる」活動を展開しています。その結果、市町村

等からは、米依存からの脱却、野菜・果樹・花き等

の園芸作物の振興等に対する要望が多数出されまし

た。これを受けて秋田県拠点では、県内を4地域に

区分した上で、地域ごとに推進地区(4市町:大館市、おおだて し

にかほ市、三種町、美郷町 )を設定し、この4市町み たねちよう み さとちよう

の課題を解決するために、よりニーズに合った補助事業等の活用等について随時打合

せを行い「現場と共に解決する」取組を実施しています。また、併せて周辺地域への

波及効果に期待を寄せて活動を進めています。

2 環太平洋パートナーシップ(TPP)

我が国が平成25(2013)年7月から参加した環太平洋パートナーシップ(以下「TP

P」という。)交渉は、平成27(2015)年10月5日に大筋合意に至り、平成28(2016)年2

月4日に関係国間で署名されました。TPPは、アジア・太平洋地域の12か国が参加

し、世界のGDP※の約4割、人口の1割強を占める経済圏をカバーするものです(図

Ⅰ-2)。その内容は、物品にかかる関税の削減・撤廃だけでなく、サービス及び投資の

自由化を進め、更には知的財産、電子商取引、国有企業、環境等幅広い分野で新たな

ルールを構築するものとなっています。

(1)交渉の経緯

TPP交渉は、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイ、米国、豪州、

ペルー及びベトナムの計8か国によって平成22(2010)年3月に開始されました。その

後、同年10月にマレーシア、平成24(2012)年11月にメキシコ及びカナダ、平成25(2013)

年7月に我が国が参加し、最終的には12か国で交渉が行われました(図Ⅰ-3)。

関係者と意見交換する地方参事官(秋田県担当)

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(2)合意内容

我が国は衆・参両院の農林水産委員会の決議を後ろ盾に、国内の農林水産業や農山

漁村に悪影響を与えないよう、粘り強く交渉を行いました。この結果、重要5品目を

中心に国家貿易制度・枠外関税の維持、関税割当てやセーフガードの創設、関税削減

期間の長期間化等の有効な措置を獲得しています(表Ⅰ-4)。

TPP参加国の対日関税については、我が国農林水産物・食品の輸出拡大の重点品

目(牛肉、米、水産物、茶等)の全てについて関税撤廃を獲得しており、輸出の拡大

が期待されています。

図Ⅰ-2 世界全体のGDPにTPP参加国が占める割合(平成25(2013)年)

22.2%

6.5%63.3%

米国

メキシコ

1.7%

カナダ

2.4%

マレーシア

0.4%

その他のTPP

参加6か国

1.5%

豪州

2.0%

日本

その他の

国・地域

資料:IMF「World Economic Outlook Database April 2015」

図Ⅰ-3 TPP参加国

資料:内閣官房TPP政府対策本部資料

表Ⅰ-4 重要5品目の合意内容

資料:農林水産省作成

品目 合意内容

米現行の国家貿易制度を維持するとともに、枠外税率(341円/kg)を維持。既存のWTO枠の外に、米国・豪州に対してSBS方式の国別枠を設定

麦現行の国家貿易制度を維持するとともに、枠外税率(小麦の場合55円/kg)を維持。既存のWTO枠の外に、SBS方式の国別枠及びTPP枠を新設。マークアップを9年目までに45%削減

甘味資源作物砂糖のうち粗糖・精製糖等については、現行の糖価調整制度を維持。加糖調製品については、品目ごとにTPP枠を設定。でん粉については、現行の糖価調整制度を維持

牛肉・豚肉

牛肉については、現行38.5%の関税を段階的に9%まで削減。関税撤廃は回避され、また、16年目までという長期の関税削減期間を確保。豚肉については、差額関税制度を維持。また、10年目までという長期の関税削減期間を確保。さらに、それぞれ輸入急増に対するセーフガードの措置

乳製品

脱脂粉乳・バターについては、現行の国家貿易制度を維持。TPP参加国に対する新たな輸入枠を設定。ホエイについては、脱脂粉乳と競合する可能性が高いものについて、21年目までの長期の関税撤廃期間の設定とセーフガードの措置。チーズについては、種類により関税の維持、長期の関税撤廃期間の確保、条件付き無税枠の設定

1 食料の安定供給の確保に向けた取組

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

(3)「総合的なTPP関連政策大綱」の策定

TPPによって、12か国合わせて8億人を超える巨大経済圏が誕生し、我が国の暮

らしや企業活動等に様々な利点をもたらすことが期待されますが、農林水産業では相

手国の関税削減により輸出拡大が見込まれる反面、我が国の関税の削減による海外の

農林水産物との競争が起きる可能性があるなど課題もあります。

TPP交渉の大筋合意を踏まえた政策面での対応についての検討は、平成27(2015)

年10月9日に設置された、安倍内閣総理大臣を本部長として全閣僚を構成員とする「T

PP総合対策本部」において、政府全体で責任をもって行うこととされました。

地域ブロックごとの説明会等において、農林漁業者から不安や懸念の声、農林水産

分野の体質強化対策を早急に示して欲しいといった声が寄せられたことも踏まえ、平

成27(2015)年11月25日にTPP総合対策本部で「総合的なTPP関連政策大綱」(以下

「政策大綱」という。)が策定されました(図Ⅰ-4)。

東北農政局では、内閣官房TPP政府対策本部主催の「TPP協定の大筋合意に関

する説明会(仙台市)」(平成27(2015)年11月6日開催)に協力するとともに、政策大

綱の策定や経済効果分析結果の公表を受け、政策大綱を踏まえた農林水産分野の対策

について、地方公共団体及び関係団体、関係者等に説明するための「農政新時代キャ

ラバン東北ブロック説明会」(仙台市)が、平成28(2016)年1月12日に開催したのを皮

切りに、管内全ての県で説明会を開催し、市町村段階の農業者等の会合に職員を派遣

するなど、現場への周知を積極的に行っています。

図Ⅰ-4 総合的なTPP関連政策大綱の概要

・世界のGDPの約4割(3,100兆円)という、かつてない規模の経済圏をカバーした経済連携。人口8億人という巨大市場が創出される。TPPはアベノミクスの「成長戦略の切り札」となるもの。

・本政策大綱は、TPPの効果を真に我が国の経済再生、地方創生に直結させるために必要な政策、及びTPPの影響に関する国民の不安を払拭する政策の目標を明らかにするもの。

・本大綱に掲げた主要施策については、既存施策を含め不断の点検・見直しを行う。また、農林水産業の成長産業化を一層進めるために必要な戦略、さらに、我が国産業の海外展開・事業拡大や生産性向上を一層進めるために必要となる政策については、28年秋を目途に政策の具体的内容を詰める。

・本大綱と併せ、TPPについて国民に対する正確かつ丁寧な説明・情報発信に努め、TPPの影響に関する国民の不安・懸念を払拭することに万全を期す。

新輸出大国

<TPPの活用促進>

1 丁寧な情報提供及び相談体制の整備

○TPPの普及、啓発○中堅・中小企業等のための相談窓口の整備

2 新たな市場開拓、グローバル・バリューチェーン構築支援

○中堅・中小企業等の新市場開拓のための総合的支援体制の抜本的強化(「新輸出大国」コンソーシアム)

○コンテンツ、サービス、技術等の輸出促進○農林水産物・食品輸出の戦略的推進○インフラシステムの輸出促進○海外展開先のビジネス環境整備

○輸入食品監視指導体制強化、原料原産地表示○特許、商標、著作権関係について必要な措置○著作物等の利用円滑化等

<食の安全、知的財産>

農政新時代

<農林水産業>

1 攻めの農林水産業への転換(体質強化対策)

○次世代を担う経営感覚に優れた担い手の育成○国際競争力のある産地イノベーションの促進○畜産・酪農収益力強化総合プロジェクトの推進○高品質な我が国農林水産物の輸出等需要フロンティアの開拓

○合板・製材の国際競争力の強化○持続可能な収益性の高い操業体制への転換○消費者との連携強化、規制改革・税制改正

2 経営安定・安定供給のための備え(重要5品目関連)

○米(政府備蓄米の運営見直し)○麦(経営所得安定対策の着実な実施)○牛肉・豚肉、乳製品(畜産・酪農の経営安定充実)○甘味資源作物(加糖調製品を調整金の対象)

グローバル・ハブ(貿易・投資の国際中核拠点)

<TPPを通じた「強い経済」の実現>

1 TPPによる貿易・投資の拡大を国内の経済再生に直結させる方策

○イノベーション、企業間・産業間連携による生産性向上促進

○対内投資活性化の促進

2 地域の「稼ぐ力」強化

○地域の関する情報発信○地域リソースの結集・ブランド化

資料:内閣官房TPP政府対策本部資料

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※ TPP税率の適用が可能な12か国内の原産地規則が統一されることによる事業者の制度利用負担の緩和、輸出

入業者や生産者自らが原産地証明書を作成する制度の導入による貿易手続の円滑化、一時的な入国に関す

る規定の整備や電子商取引に関する先進的かつ包括的なルールの構築等が該当。

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

(4)経済効果分析

政府は、TPPが発効した場合の我が国のマクロ経済に与える経済効果を分析し、

平成27(2015)年12月24日にその結果を公表しています。

分析は、関税に関する効果に加え、貿易円滑化等の非関税措置※によるコスト縮減、

貿易・投資促進効果、さらには貿易・投資が促進されることで生産性が向上すること

による効果等も含めた、総合的な経済効果分析となっています。

分析の結果は、TPPが発効し、その効果により我が国が新たな成長経路(均衡状

態)に移行した時点において、実質GDPは2.6%増加し、平成26(2014)年度のGDP

水準を用いて換算すると、約14兆円の拡大効果が見込まれるとされています。また、

労働供給についても約80万人の増加が見込まれるとされています。

この結果、農林水産物の生産額は、関税削減等の影響で価格低下により約1,300億円

から2,100億円減少するものの、政策大綱に基づく体質強化対策による生産コストの低

減・品質向上等の国内対策により、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量

が維持されると見込まれています。また、食料自給率は、基準とした平成26(2014)年度

の食料自給率と同水準のカロリーベース39%、生産額ベース64%となっています(表Ⅰ-5)。

なお、この食料自給率の試算は、平成26(2014)年度の数値を前提に、今回のTPP

の農林水産物の生産額への影響試算を反映した場合、食料自給率がどのように変化す

るかということを示したものです。試算では、食料自給率がTPPによる影響を大き

く受けるものではないとの結果となっており、引き続き食料・農業・農村基本計画に

定める食料自給率目標(平成37(2025)年度にカロリーベース45%、生産額ベース73%

の達成に向けた取組が必要となっています。

表Ⅰ-5 経済効果分析

資料:内閣官房TPP政府対策本部資料

GDP変化:+2.59%(+13.6兆円)*実質GDPは524.7兆円(平成26(2014)年度)

労働供給変化:+1.25%(+79.5万人)*労働力人口は6,593万人、就業者数は6,360万人(平成26(2014)年度)

分析結果

 関税削減等の影響で価格低下による生産額の減少が生じるものの、体質強化対策による生産コストの低減・品質向上や経営安定対策などの国内対策により、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されるものと見込む。

農林水産物の生産減少額:約1,300億円~2,100億円

食料自給率(平成26(2014)年度)への影響:     カロリーベース39%、生産額ベース64%         ↓ 試算を反映したもの     カロリーベース39%、生産額ベース64%

農林水産分野の評価

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

3 食料自給率の動向

(1)我が国の食料自給率の動向

ア 食料自給率

(我が国の供給熱量ベースの食料自給率は近年横ばい、前年度同率の39%)

我が国の供給熱量(カロリー)ベースの食料自給率は、近年40%前後の水準で推移

しています。

平成26(2014)年度の供給熱量ベースの総合食料自給率は、前年度と同率の39%とな

りました。これは、小麦及び大豆について、前年度より天候に恵まれ、単収が平年よ

りも高くなるとともに、作付面積が増加したことから国内生産量が増加した一方、国

内産で需要量を十分に満たすことができる米について、消費税引上げ前の駆け込み需

要の反動等により需要量が減少し、供給熱量全体に占める米の割合が減少したことが

主な要因となっています。

また、平成26(2014)年度の生産額ベースの総合食料自給率は、前年度に比べて1ポ

イント低下し64%となりました。これは、国産米の価格が低下したことに加え、円安

方向への推移等により魚介類等の輸入単価が上昇したことが、主な要因となっていま

す(図Ⅰ-5)。

イ 食料自給力と食料自給力指標

食料自給力とは、「我が国の農林水産業が有する食料の潜在生産能力」を表すもので、

農産物は農地・農業用水等の農業資源、農業技術、農業就業者から、水産物は潜在的

生産量、漁業就業者から構成されます(図Ⅰ-6)。

国内の食料消費が国内生産でどの程度賄えているかを示す指標として食料自給率が

ありますが、花等の非食用作物が栽培されている農地が有する食料の潜在生産能力が

反映されないなど、我が国農林水産業が有する食料の潜在生産能力を示す指標として

は一定の限界があります。

図Ⅰ-5 我が国の食料自給率の推移

53

4340 41 39 39 39 39

82

7469

65 67 67 65 64

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

昭和60年度

(1985)

平成7年度

(1995)

17年度

(2005)

20年度

(2008)

23年度

(2011)

24年度

(2012)

25年度

(2013)

26年度(概算)

(2014)

食料自給率

(生産額ベース)

食料自給率

(供給熱量ベース)

資料:農林水産省「食料需給表」

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

このため、従来の食料自給率に加え、平成27(2015)年3月に閣議決定された食料・

農業・農村基本計画において、その時点における我が国農林水産業が有する潜在生産

能力を最大限活用することにより得られる食料の供給熱量を示す指標として食料自給

力指標が初めて示されました。

食料自給力指標は、我が国の食料の潜在生産能力を把握するために、「花等の食用以

外の農産物が作付けられている農地も含め、米やいも類を中心に作付けしたら」とい

った仮定の下で試算したものであり、同じ農地面積でも、作付けする農作物によって、

その数値は変わります(図Ⅰ-7)。

また、食料自給力指標については、①生産転換に要する期間は考慮しない、②農林

水産業生産に必要な労働力は確保されている等の現実とは切り離された一定の仮定の

下で試算された、潜在的な生産能力を示すものです。

図Ⅰ-6 食料自給力の考え方

資料:農林水産省作成

食料の安定供給

輸 入

備 蓄

国内生産

水産物

潜在的生産量

漁業就業者

農産物

農地・農業用水等の農業資源

農業技術

農業就業者

食料自給力指標指標化食料自給力

図Ⅰ-7 食料自給力指標の考え方

資料:農林水産省作成

(試算の前提)① 生産転換に要する期間は考慮しない。② 農林水産業生産に必要な労働力は確

保されている。③ 肥料、農薬、化石燃料、種子、農業用

水及び農業機械等の生産要素(飼料を除く。)については、国内の農林水産業生産に十分な量が確保されているとともに、農業水利施設等の生産基盤が適切に保全管理・整備され、その機能が持続的に発揮されている。

食料自給力指標

いも類

米・小麦・大豆

花等の非食用作物を栽培している農地

荒廃農地(再生利用可能部分)

二毛作可能地等の全てで

農地を最大限に活用

食用作物

を作付け

再び作物

を作付け

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- 55 -

1 食料の安定供給の確保に向けた取組

ウ 食料自給力指標(平成26(2014)年度)(概算)

食料自給力指標では、食料の生産について、農地等を最大限活用することを前提に、

栄養バランスを一定程度考慮して、米、小麦、大豆を中心に熱量効率を最大化して作

付けする場合(パターンA)、栄養バランスは考慮せずに米、小麦、大豆を中心に熱量

効率を最大化して作付けする場合(パターンB)、栄養バランスを一定程度考慮して、

いも類を中心に熱量効率を最大化して作付けする場合(パターンC)、栄養バランスは

考慮せずにいも類を中心に熱量効率を最大化して作付けする場合(パターンD)の4

つのパターンに分け、それぞれの1人・1日当たり供給可能熱量を示しています(図Ⅰ-8)。

平成26(2014)年度の食料自給力指標は、現在の食生活とは大きく異なるいも類中心

型(パターンC・D)では、推定エネルギー必要量(摂取ベース)2,146kcal及び総供

給熱量(供給ベース)(実績値)2,415kcalを上回っています。一方、より現実の食生

活に近い米・小麦・大豆中心型(パターンA・B)ではこれらを大幅に下回っていま

す(図Ⅰ-9)。

図Ⅰ-8 食料自給力指標(平成26(2014)年度)(概算値)

資料:農林水産省作成注:*「比較的短期間の場合には、「そのときの体重を保つ(増加も減少もしない)ために適当なエネルギー」」の推定値

2,642

2,361

1,803

1,428

947

95

95

50

50

2,736

2,456

1,853

1,478

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000

パターンA

栄養バランスを一定程度考慮して、いも類を中心に熱量効率を最大化して作付けする場合

栄養バランスを一定程度考慮して、米、小麦、大豆を中心に熱量効率を最大化して作付けする場合

米、小麦、大豆を中心に熱量効率を最大化して作付けする場合(栄養バランスは考慮しない)

いも類を中心に熱量効率を最大化して作付けする場合(栄養バランスは考慮しない)

パターンB

パターンC

パターンD

kcal/人・日

総供給熱量(実績値)2,415kcal/人・日

推定エネルギー必要量*

2,146kcal/人・日

再生利用可能な荒廃農地においても作付けする場合

国産熱量の実績値(食料自給率の分子:供給ベース)

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(2)東北の食料自給率の動向

(東北の食料自給率は、供給熱量ベースで105%)

平成25(2013)年度の東北の供給熱量ベースの食料自給率は、前年度に比べて1ポ

イント上昇し105%となりました。品目別にみると、米の自給率が368%(全国:97%)

となっているほか、野菜・果実・魚介類で100%を上回っている一方、米を除いた

食料自給率は27%となっています(図Ⅰ-10、表Ⅰ-6)。

各県の食料自給率は、供給熱量ベース、生産額ベースとも全国に比べて高い水準に

あります(図Ⅰ-11)。

平成25(2013)年度についてみると、品目別供給熱量ベース(表Ⅰ-6)の米以外の品

目の自給率が高い県(青森・岩手)は、生産額ベースの値(ポイント)が高い傾向が

みられます。一方で、米への依存度が高い県(秋田・山形)は、供給熱量と生産額ベ

ースとの値(ポイント)に大きな差がみられません。

図Ⅰ-9 食料自給力指標のパターンA・Dにおける食事メニュー例

資料:農林水産省作成注:*各パターンにおいて、再生利用可能な荒廃農地においても作付けする場合の試算値。

パターンD2,736kcal/人・日*

いも類中心

パターンA1,478kcal/人・日*

米・小麦・大豆中心 栄養バランス考慮

白米茶碗1杯(精米76g分)

豆腐1/2丁(大豆49g分)

浅漬け・サラダ(野菜217g分)

サラダ・野菜炒め(野菜217g分)

白米茶碗1杯(精米76g分) 焼き魚1切

(魚介類63g分)

浅漬け・野菜炒め(野菜217g分)

素うどん(小麦81g分)

果物1/5(りんご42g分)

白米茶碗1杯(精米96g分)

焼きいも2本(さつまいも2本

396g分)

浅漬け・サラダ(野菜235g分)

サラダ・野菜炒め(野菜235g分)

焼き魚1切(魚介類63g分)

焼きいも2本(さつまいも2本

396g分)

粉ふきいも1皿(じゃがいも276g分)

粉ふきいも1皿(じゃがいも

276g分)

焼きいも2本(さつまいも2本

396g分)

浅漬け・野菜炒め(野菜235g分)

その他、1か月に その他、1か月に

牛乳コップ6杯 鶏卵2個 焼き肉3皿 牛乳コップ7杯 鶏卵0.5個 焼き肉2皿

(牛乳41g/日) (4g/日) (肉類11g/日) (牛乳49g/日) (1g/日) (肉類6g/日)

1 食料の安定供給の確保に向けた取組

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表Ⅰ-6 食料自給率(品目別供給熱量ベース)平成25(2013)年度(概算値)

(単位:%)

資料:全国の食料自給率は農林水産省「食料需給表」を基に東北農政局で試算注:データの制約から各都道府県の生産・消費の実態を十分把握できていない部分があることに注意が必要。

小麦大豆

(食用)野菜 果実 牛肉 豚肉 鶏肉 鶏卵

牛乳・乳製品

魚介類

青森県 118 326 56 4 48 256 562 23 25 45 42 24 263

岩手県 105 334 37 10 45 92 64 40 31 122 35 80 186

宮城県 73 246 22 3 89 34 5 19 8 7 20 25 175

秋田県 181 725 19 1 116 80 48 10 22 2 20 14 16

山形県 136 524 21 0 73 112 152 19 12 4 6 29 13

福島県 76 283 14 0 18 80 66 15 6 3 17 19 39

東 北 105 368 27 3 63 100 132 21 16 27 23 31 122

全 国 39 97 21 12 23 76 34 11 6 8 12 27 64

県 名食 料自給率

品目別食料自給率

米米を除いた

自給率

図Ⅰ-10 東北の食料自給率の推移

104 105 104 94 104 105 108 108 108 109 111 101 104 105

337 335 341

304

344 346 359 359 351 358 370352 364 368

31 34 32 31 31 32 31 32 34 33 31 26 28 27

0

50

100

150

200

250

300

350

400

12年度

(2000)

14年度

(2002)

16年度

(2004)

18年度

(2006)

20年度

(2008)

22年度

(2010)

24年度

(2012)

25年度

(2013)

米の食料自給率(供給熱量ベース)

東北の食料自給率(供給熱量ベース) 米を除いた食料自給率(供給熱量ベース)

資料:農林水産省「食料需給表」を基に東北農政局で試算

注:平成11(1999)年~24(2012)年は確定値、平成25(2013)年は概算値。

1 食料の安定供給の確保に向けた取組

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(3)食料自給率の向上に向けた取組の展開ア 食料自給等についての周知の取組

(児童・生徒に向けた『ニッポン食ベもの力見っけ隊』の配布)

農林水産省では、我が国の食料自給率、食料自給力、食料安全保障について、児童

生徒でも理解できるような、イラス

トを多用し分かりやすく解説したパ

ンフレット『ニッポン食べもの力見

っけ隊』を平成27(2015)年10月に作

成しました(図Ⅰ-12)。

東北農政局では、管内各県の農林

水産関係部局並びに関係団体等及び

県、市町村の教育部局を通じて小中

学校等への配布に取り組んできまし

た。平成28(2016)年3月末現在で約

1万部を配布し、小中学校の社会科

や食育等の授業で活用されています。

イ 国産農林水産物の消費拡大に向けた取組

(東北のフード・アクション・ニッポンのパートナー数は、1,012企業・団体)

「フード・アクション・ニッポン」は、日本の食を次

の世代に残し、創るために、民間企業・団体・行政等が

一体となって推進する、国産農林水産物の消費拡大に向

けた国民運動の取組です。フード・アクション・ニッポ

ンの目標の「“おいしいニッポンを”残す、創る」ために、国産農林水産物の消費拡大

を推進しています。この取組の趣旨に賛同する企業・団体等は、「推進パートナー」と

図Ⅰ-11 県別食料自給率(供給熱量・生産額ベース)比較平成25(2013)年度(概算値)

資料:農林水産省「平成25(2013)年度(概算値)の都道府県別食料自給率」

39

118105

73

181

136

7665

213

176

84

137

168

91

0

50

100

150

200

250

全 国 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県

供給熱量ベース生産額ベース

図Ⅰ-12 ニッポン食べもの力見っけ隊によるPR活動

資料:農林水産省作成

1 食料の安定供給の確保に向けた取組

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

して取組に参加し、国産食材の販売促進やイベントの開催等、国産農林水産物・食品

の消費拡大に向けた活動を行っています。推進パートナーは全国9,434企業・団体が登

録されており、そのうち東北の推進パートナーは1,012企業・団体です(平成28(2016)年

3月31日現在)。

「フード・アクション・ニッポン」では、その他にも国産農林水産物・食品の消費

拡大に寄与する事業者・団体等の優れた取組を表彰する「フード・アクション・ニッ

ポン アワード」を実施しています。平成27(2015)年度に実施したフード・アクション

・ニッポン アワードでは、全国で61の事業者・団体が受賞し、東北では、13の事業者

・団体が受賞しました。

(4)米の消費拡大の取組

ア 米の消費量

(米の消費量は、50年間で約半減)

米の1人当たりの年間消費量は、昭和37(1962)年度の約120kgをピークに減少し、平

成26(2014)年度には、約半分の55.2kgまで減少しています(図Ⅰ-13)。

米の消費量は、1人当たりの米消費量の減少と人口の減少により、今後とも減少し

ていくことが予想されます。

このため、農林水産省では、「米飯給食の推進」、「ごはん食の効用の普及啓発」、「米

粉食品の利用拡大」等の取組による米の消費拡大を推進しています。

イ 米飯給食の推進

(東北の米飯給食は、週に3.6回)

農林水産省では、小中学校等の未来を担う児童・生徒に、ごはんを中心とした日本

食の良さを伝えるため、学校給食で「ごはん食」を提供する取組を推進しています。

東北の米飯給食回数は、ここ数年横ばいで推移しており、平成26(2014)年度は、1週

間当たり3.6回と、全国平均(3.4回)を0.2回上回っています。

図Ⅰ-13 米の消費量の推移(1人1年当たり)

118.3111.7

95.188.0

78.974.6

70.0 67.8 64.6 61.455.2

5060708090

100110120130

昭和40年度

(1965)

45年度

(1970)

50年度

(1975)

55年度

(1980)

60年度

(1985)

平成2年度

(1990)

7年度

(1995)

12年度

(2000)

17年度

(2005)

26年度

(2014)

kg(精米)

(年平均減少量)-2.2kg/年

(昭和40年代)

-1.3kg/年

(昭和50年代)

-0.8kg/年

(昭和60~平成6年度)

-0.6kg/年

(平成7~16年度)

資料:農林水産省「食料需給表」

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

ウ 米粉食品の利用拡大

(ビジネスマッチ東北に出展)

東北農政局では、「東北米粉利用推進連絡協議会」に参加し、米粉の利用拡大のため

の活動を行っています。

協議会では、平成27(2015)年7月16日に「第13回東北米粉利用拡大セミナー(宮城

県仙台市)」を開催したほか、同年11月5日には、宮城県仙台市の夢メッセみやぎで開

催された「第10回ビジネスマッチ東北2015」に公益社団法人米穀安定供給確保支援機

構との共催により昨年に続き出展し、米粉の利用拡大のための普及活動として、米粉

食品の紹介や資料の配布等を行いました。

【事例Ⅰ-2】米の消費拡大の取組

第13回東北米粉利用拡大セミナー(平成27(2015)年7月16日)

第13回東北米粉利用拡大セミナーは、「米粉でヘルシーな食生活!」をテーマに、

家庭での日常的な米粉の利用促進を図ることを目的に開催し、調理師・栄養士養成学

校や料理教室の講師・生徒の方々、米粉に関心ある一般の方々等、東北各地から116

人の参加がありました。

1.米粉セミナー

セミナーでは、yasming's kitchen 主宰 陣田靖子さんから「日本におけるアレルじ ん だ や す こ

ギー」等の説明があり、『お米の国の私たちがいくらでも作ることができるグルテン

フリー食品。これが米粉の大きな魅力であり、また発展性がある。米を粉にすること

により新しい食文化が構築できる。』と講演していただきました。

続いて、取組事例紹介として、①(株)大潟村あきたこまち生産者協会常務取締役おおがたむら

涌井茂さんから新しい食品素材「コメネピュレ」の取組について、② 宮城県地域創わくいしげる

生ビジョン研究所 大久長範さんから「加熱処理した米粉の新規用途」の事例についおおひさながのり

て紹介していただきました。

yasming's kitchen (株)大潟村あきたこまち 宮城県地域創生ビジョン研究所 情報交換会・試食会

陣田靖子さん 生産者協会 涌井茂さん 大久長範さん

2.米粉食品の情報交換・試食会

情報交換・試食会では、陣田靖子さん、(株)大潟村あきたこまち生産者協会、(株)

セイシン企業、農業生産法人(有)ヒーロー、(有)ヘルシーハット、東北米粉利用推進

連絡協議会、東北農政局消費生活課(食育)のブースが設置され、米粉に関する情報

交換を行いました。また、試食品として、様々な米粉を使った商品が提供され、参加

者からは、「アレルギー対応の食品で小麦が全く入っていなくてもこんなにおいしい

とは驚き」などいずれも大変好評でした。

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

【事例Ⅰ-3】米の消費拡大の取組

~第10回ビジネスマッチ東北2015~

○ 大盛況の「ビジネスマッチ東北2015」、東北米粉利用推進連絡協議会出展!

平成27(2015)年11月5日、宮城県仙台市の夢メッセみやぎにおいて、「第10回ビジ

ネスマッチ東北2015」(主催:一般社団法人東北ニュービジネス協議会、他4団体)

が開催され、東北米粉利用推進連絡協議会は、昨年に続き公益社団法人米穀安定供給

確保支援機構との共催によりブース出展しました。

会場では、東北の464団体(企業、大学、団体等)435ブースの出展があり、それぞ

れの分野で新たな「商品」「サービス」「ビジネスプラン」等が展示されたほか、商談

会が行われ、当日の総来場者数は、7,441人(主催者発表)と大盛況となりました。

○ 東北の米粉をPR! 東北米粉利用推進連絡協議会ブース

東北米粉利用推進連絡協議会では3つのブースで展示を行いました。

一つ目のブースでは協議会を紹介するとともに、会員である製粉事業者の米粉の展

示、リーフレット「東北米粉食品情報」及び試食用米粉食品の配布を行いました。

他のブースでは協議会会員の(株)大潟村あきたこまち生産者協会が、米をペース

ト状に加工した新素材「コメネピュレ」を加えたパンや洋菓子を、同じく会員の(株)

かね久が、アルファ化した米粉「ライスミルクパウダー」を使用した米ミルク等を展

示・試食等で紹介し、新しい米粉製品等のPRを行い、来場者の方々が米粉製品を理解

する貴重な機会となりました。

東北米粉利用推進

連絡協議会のブース

(株)大潟村あきたこまち

生産者協会のブース

(株)かね久のブース

夢メッセみやぎ会場外観 会場入口の様子 「食と農」のエリア(宮城県)

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- 62 -

1 食料の安定供給の確保に向けた取組

4 望ましい食生活の実現に向けた食育の推進

(1)「第3次食育推進基本計画」に基づく食育の推進

ア 食育推進基本計画

(東北の市町村における食育推進計画の策定率は、91.2%)

平成28(2016)年度から平成32(2020)年度の5か年間を期間とする国の第3次

食育推進基本計画(平成28(2016)年3月)が作成されました。新たな計画では、特

に取り組むべき重点課題として、若い世代を中心とした食育の推進、健康寿命の延伸

につながる食育の推進、食文化の継承に向けた食育の推進などが定められています。

これまでの第2次基本計画に基づき、都道府県、市町村において食育推進会議の設

置、食育推進計画の策定が進められてきた結果、平成28(2016)年3月末現在の東北に

おける食育推進計画の策定状況は、県段階では全県で策定され、市町村段階では、青

森県 100%、岩手県97.0%、宮城県100%、秋田県100%、山形県77.1%、福島県81.4

%の策定率となっています。また、東北全体では、227市町村中207市町村(91.2%)

で策定されています。東北農政局では、県や市町村の食育推進会議に出席し、計画の

策定等に対する助言や情報提供を行っています。

イ 東北の食育推進の取組

(東北地域の食材を使った食育活動交流会などを開催)

東北農政局では、東日本大震災の被災地において食育活動に取り組む団体を調査し、

「震災を乗り越えた食育」として9事例をホームページに掲載しました。また、地域

の食や農業に関するイベント、商業施設等での移動消費者の部屋や消費者コーナーの

開設、消費者団体等を対象にした食育に関する出張講座により、ごはんを主食としな

がら、主菜・副菜に加え、適度に牛乳・乳製品や果物が加わったバランスのとれた「日

本型食生活」の広報活動や食育の普及と食生活の改善に向けた働きかけを行いました。

平成27(2015)年9月には、地域の農産物を使った食育の取組事例を通じ、食育の進

め方について考えることを目的とした「東北地域の食材を使った食育活動交流会」を、

平成28(2016)年3月には、東北における農林漁業体験活動の一層の推進を図ることを

目的とした「食と農の体験活動を通じた食育交流会」を、いずれも東北農政局主催に

より仙台市で開催しました。

東北地域の食材を使った食育活動交流会 食と農の体験活動を通じた食育交流会(平成27(2015)年9月15日) (平成28(2016)年3月1日)

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※1 SNSは、ソーシャルネットワーキングサービス(Social Networking Service)の略で、登録された利用者

同士が交流できるWebサイトの会員制サービス。

※2 栗原地域で刈り取った稲を自然乾燥させる棒掛けを「ほんにょ」と呼んでいます。特に、一部の地区

では、稲束を少しずつずらして棒にかける独特の方法で乾燥させており、ねじれているように見える

ことから「ねじりほんにょ」と呼ばれています。

- 63 -

1 食料の安定供給の確保に向けた取組

(2)日本食文化の維持・継承

ア 東北の米文化の発信

平成25(2013)年の「和食」のユネスコ無形文化遺産登録等を受け、国内外における

日本食への関心が高まる中、次の世代に日本全国の「和食」文化を維持・継承してい

くことが重要です。また、我が国の農林水産物・食品の輸出を拡大するためには、日

本食・食文化の魅力を併せて海外に発信していくことも必要となっています。

東北農政局では、情報発信力に優れた大学生や留学生等に、水田や米、食文化につ

いて見学・体験をしてもらい、SNS※1等による発信により東北の米文化の魅力を国内外

にPRする「『東北の米文化』見学・体験ツアー」を宮城県栗原市で開催しました。くりはら し

【事例Ⅰ-4】「東北の米文化」見学・体験ツアー

(宮城県栗原市)

平成27(2015)年度は、5月に第2回(7人参加)、10月

に第3回(10人参加)のツアーを開催しました。

ツアーでは、農事組合法人「大江北」代表理事の菅原時夫すがわらとき お

さんや、副代表理事の鈴木守さんを講師として招き、5月すず き まもる

には田植を、10月には稲刈りをしました。稲刈りの後は四苦

八苦しながら、ねじりほんにょ※2作りにも挑戦しました。

その他、農家レストラン「古民家 岩松」で栗原市地

域に伝わるもち文化を体験したり、JA栗っこのカントリー

エレベーターを見学したり、と様々なプログラムが用意

され、参加者と生産者が直接語り合う、貴重な機会とな

りました。

ツアーを終えた参加者からは、「米を作るのにたくさん

の手間がかかっていることが分かった。」「これからは、

農作物を作ってくれた人に感謝して食事をしたい。」等の

感想が聞かれ、後日、SNSへツアーの内容や感想がアップ

されました。

一株ずつ手で植えました

ねじりほんにょ作りに挑戦

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

イ 「東北・日本酒テロワール・プロジェクト」の取組

(ア)プロジェクトの取組

東北農政局は、酒米の生産振興を図るため、仙台国税局の協力を得て、酒米生産者、

酒造業者(東北各県)等の有識者による検討会を開催しました(平成27(2015)年

5月19日、6月17日、8月11日)。

プロジェクトの名称は、米どころ酒どころである「東北」という地域に価値を見い

だし、その魅力を分かりやすく伝えるため、ワイン等の世界で「土壌、気候、人など、

その土地ならではのもの」を意味する「テロワール(フランス語)」を使用しました。

検討会の設置に先立ち、「東北・日本酒テロワール・セミナー」を開催(平成27(2015)

年5月19日)し、幅広い層の理解促進を図りました(出席者180人)。

(イ)検討会レポート等の公表

検討会における議論を集約し、取組に関する知見やアドバイス等を取りまとめ、関

心を有する農業関係者、酒造関係者、行政など幅広い層に役立つ基礎情報として整理

したレポートを参考資料とともに公表しました(平成27(2015)年8月11日)。レポー

トでは、取組の成功のためには、酒米生産者と酒造業者との密接な連携が重要である

と指摘されています。

また、参考資料には東北農政局が管内の日本酒製造業者を対象に実施した「酒米の

使用に関するアンケート」の結果(図Ⅰ-14)とともに、プロジェクトの趣旨に賛同す

る蔵元から提供された日本酒の銘柄を取りまとめ、「テロワール日本酒リスト(76

社167銘柄)」として公表しました。

(ウ)取組の推進について

東北では、近年各地で「日本酒テロワール」の取組への気運が醸成されつつあり、

米生産者と酒造業者との連携が進むよう、関係者への普及を図るとともに、特に、酒米生

産や酒造りへの知見が限られている農業者側への働きかけを行っていくこととしてい

ます。

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図Ⅰ-14 酒米の使用に関するアンケート結果

問1 「地元産の酒造好適米を使用した日本酒 問2 現在、地元産の米(酒造好適米以外を含

造り」を進めることは、日本酒の需要振 む。以下同じ)の使用にこだわった日本

興に有効であると考えますか。 酒造りの取組等を行っていますか。

問3 26年産の地元産の米は、希望数量を確保 問4 今後、地元産の米を新たに使用する、ま

できていますか。 たは使用数量を増加させる意向はありま

すか。

問5 地元の酒米生産者との結びつきはあります 問6 酒米生産者の確保や結びつきを拡大した

か。(例:原料米の品質を農家と共有してい いと考えていますか。

る、酒米研究会と交流がある など)

問7 地元産の米で造った日本酒を消費者へPR

活動として取り組んでいますか。

資料:東北農政局生産振興課調べ注:アンケート送付数 229 回答総数 129 回答率 56.3%

1 食料の安定供給の確保に向けた取組

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

5 食の安全と消費者の信頼確保

(1)食の安全性の向上に向けた取組

ア 農業生産工程管理(GAP)の取組状況

(東北のGAP導入は、599産地)

食品の安全性を向上させるため、生産段階においては、農業生産工程管理(GAP)

の取組を推進することが重要です。GAPを多くの農業者や産地が取り入れることに

より、食品の安全性の向上のみならず、環境の保全、労働安全の確保、競争力の強化、

品質の向上、農業経営の改善や効率化につながります。また、農産物の輸出を目指す

生産者・産地は、欧州の流通小売の大手

企業が主導して策定した主要要件として

のGAPであるGLOBAL G.A.P.

等の取得が、取引を行う際に求められる

場合があり、農林水産省では、研修や講

習会及び認証取得に対する支援を行って

います。

農林水産省では、平成27(2015)年度ま

でに3千産地でGAPに取り組むことを

目標に、普及推進を図っており、平成27

(2015)年3月末現在で、2,737産地とな

っています。

このうち、東北のGAPの取組産地

数は599産地で、全国の22%を占めており、品目別では、野菜が361産地、果樹143

産地となっています(図Ⅰ-15)。

イ 農畜水産物の安全性の確保

(有害化学物質等のリスク管理を推進)

食品の安全性を確保するためには、生産から消費に至る各段階において、科学的な

原則に基づき必要な措置を講じなければなりません。

このため、農林水産省は、最新の科学的見地や国際的動向を考慮し、食品等に存在

する様々な化学物質等のうち、人の健康に悪影響を与え得る程度等により、優先的に

リスク管理を行うべきものを選定し、「食品の安全性に関するサーベイランス・モニタ

リング中期計画(平成23(2011)年度~平成27(2015)年度の5年間)」に基づき、食品安

全に関するリスク管理に不可欠なデータを得るために必要な実態調査を実施しました。

また、東北農政局は、ヒ素、かび毒等の実態調査において、調査対象物の試料採取

等を行いました。

図Ⅰ-15 農業生産工程管理(GAP)の作物別導入状況(東北)

資料:農林水産省調べ(平成27(2015)年3月末現在)

注1:野菜、米、麦、大豆、果樹の産地強化計画等を作成している産地を対象として調査。

注2:導入産地数は、合意形成済みのものも含む。

599

55 21 19

361

143

0

200

400

600

800

計 米 麦 大豆 野菜 果樹

産地

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

ウ 植物病害虫の防除

(ア)病害虫の発生予察

食の安全と消費者の信頼確保が強く求められている昨今、精度の高い病害虫発生予

察が求められています。

このような状況に鑑み、今後の植物防疫事業の効果的な推進に資するため、平

成27(2015)年11月、北海道・東北地区の植物防疫、農薬関係者を参集し「平成27年度

北海道・東北地区植物防疫協議会」を開催し、関係者間で情報共有や諸問題について、

意見交換や検討を行いました。

平成28(2016)年1月には、北海道・東北各県の病害虫防除所職員等を対象に病害虫

の発生予察、防除に関する知見及び技術の維持向上を目的として、「北海道・東北地区

病害虫防除所職員技術研修会」を横浜植物防疫所塩釜支所で開催しました。研修会で

は、横浜植物防疫所塩釜支所に在籍する病害虫の専門家を講師として、北海道・東北

地区での病害虫調査で発生が確認されている小蛾類の同定方法についても実習を行いしようがるい

ました。

(イ)総合的病害虫・雑草管理(IPM)の普及・推進

環境に配慮した農業生産を実現するため、これまでの化学農薬の使用を主体とする

防除のみならず、天敵生物の利用、光や熱の利用等様々な防除技術を組み合わせた「総

合的病害虫・雑草管理」(IPM:Integrated Pest Management)の普及・推進のため「消

費・安全対策交付金」により、管内各県の防除技術の確立や実証に係る取組を支援し

ました。

(ウ)産業用無人ヘリコプター防除の安全対策の推進

産業用無人ヘリコプター(以下「無人ヘリ」という。)による農薬の空中散布につい

ては、ほ場の大規模化、農業者の高齢化等に対応する、効果的かつ省力的な防除技術

として、有効な防除手段となっており、年々その利用面積は増えています(平成26(2014)

年度の散布実績は105万ha、そのうち東北で36万haを実施)。

このため、東北農政局では平成27(2015)年4月に「農林水産航空事業地区別安全対

策会議」(一般社団法人農林水産航空協会と共催)を開催して、無人ヘリの安全運航へ

の意識啓発を行い、安全対策の一層の徹底を図りました。また、無人ヘリ事故の再発

防止については、消費・安全局植物防疫課が行った無人ヘリの事故事例の原因分析結

果を管内の無人ヘリ関係者に通知し、再発防止の徹底を図りました。

さらに、平成27(2015)年12月に航空法の一部が改正され、無人ヘリで農薬散布等を

行う場合は事前に国土交通大臣の許可・承認を受けることとされたため、航空法にお

ける許可・承認の申請手続や無人ヘリによる空中散布等の適正な実施に関して、留意

すべき事項等について、無人ヘリ防除実施者等を対象とした説明会(県等主催)など

を開催して、周知を図りました。

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

エ 家畜伝染病への対応

(ア)鳥インフルエンザ及び口蹄疫の発生に備えた対応

(近隣諸国では継続的に発生)

鳥インフルエンザと口蹄疫は、近隣諸国において継続的に発生しており、我が国に

ウイルスが侵入するリスクは引き続き高い状況にあります。

東北農政局では、管内で発生した場合に関係機関と連携して必要な措置を講じるた

め、「東北農政局特定家畜伝染病対策マニュアル」を制定しており、本マニュアルに基

づき、局内で防疫演習を実施し、農政局の初動対応を確認するとともに、高病原性鳥

インフルエンザ等の発生時には、県の要請に応じて防疫作業支援者を派遣することと

していることから、職員の防疫作業の習熟を図るための研修を行うなど、体制整備に

取り組みました。

(イ)豚流行性下痢(PED)の発生への取組

(まん延防止対策により減少)

豚流行性下痢(PED)は、平成25(2013)年10月に我が国では7年ぶりに発生が確認され

た後、全国的に発生が拡大しました。このため、農林水産省では、「豚流行性下痢(PED)防

疫マニュアル」(平成26(2014)年10月策定)を公表し、まん延防止を図りました。

各地で発生予防及び感染拡大防止の取組が進められていることから、平成27(2015)年

9月~平成28(2016)年2月(28日時点)の間の発生は、14県74農場(管内では2県2農

場)にとどまっています。

(2)消費者の信頼の確保

ア 消費者とのコミュニケーションの推進

(コミュニケーションと信頼の確保)

東北農政局では、消費者とコミュニケーションを図り、食と食品安全に関する知識

と理解を深め、消費者の関心や疑問に応えることを目的とした意見交換会を開催して

います。平成27(2015)年度は、仙台市で9月3日、山形市で9月4日、盛岡市で9月17日、

青森市で平成28(2016)年3月4日に消費者団体等と食品安全に関する意見交換会を開

催しました。

また、消費者へ食品安全や食生活等の各種情報を提供し、消費者から農林水産行政

をはじめ食品安全に関すること等様々な相談を幅広く受け付けるための消費者相談窓

口を設置しています。この他、各地域のイベント開催の機会に合わせて、移動消費者

の部屋等を開設し、消費者にとってより身近な場所で情報提供や相談受付を行ってい

ます。

平成27(2015)年度の消費者相談窓口等には、40件の相談が寄せられました。相談の

うち、安全・衛生に関するものが8件(20.0%)、制度・基準に関するものが9件

(22.5%)で全体の約4割を占めています。

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

イ 「消費者展示コーナー」での情報提供

(消費者展示コーナーの活用)

東北農政局では、農林水産行政や管内の市町村に関する情報等を消費者に提供する

ため、「消費者展示コーナー」を庁舎内に開設し、パネルや地場産品の展示、広報資料

等の配布を行ってきました。平成28(2016)年1月に新しく建設された仙台合同庁舎B

棟1階の行政情報プラザに「消費者展示コーナー」を移転し、展示用ケース、展示用

パネル等も更新して、誰でもより身近に見られるようになっています(表Ⅰ-7)。

ウ 食品表示の適正化に向けた取組

(食品表示法と食品表示監視業務)

「食品衛生法」、「農林物資の規格化等に関する法律(JAS法)」及び「健

康増進法」の食品の表示に関する規定を統合し、食品の表示に関する制度を包

括的かつ一元的な制度とする「食品表示法」が平成27(2015)年4月1日に施行さ

れました。

東北農政局においては、「食品表示法」に基づく表示のうち原材料、原産地等の品質

に関する表示に加え、「農林物資の規格化等に関する法律(JAS法)」に定める指定

農林物資等の表示の適正化を図るため、食品表示監視業務担当者が、食品を販売して

いる店舗等に対して日常的に巡回調査を行いました。

表Ⅰ-7 消費者展示コーナーの展示実績(平成27(2015)年度)

資料:東北農政局消費生活課

テーマ 市町村等

東日本大震災から4年 農村計画部農村振興課

東北の米粉食品情報等をご紹介!! 生産部生産振興課

毎年6月は「食育月間」です。 消費生活課

農業・農村の多面的機能について 資源課

食文化と竿燈まつりのまち秋田 秋田県秋田市

農村地域における地域活性化の取組 農村計画部農村振興課

人と地域が支えあうまち 金ケ崎 岩手県金ケ崎町かねがさきちょう

ココロにおいしい、冷凍食品 消費生活課

福島のへそのまち 本宮 福島県本宮市もとみや し

みやぎ大崎ふつふつ共和国 宮城県大崎市おおさき し

農水畜産物の豊富な“大空のまち”三沢 青森県三沢市 み さわ し

月山のある町 西川町 山形県西川町にしかわまち

8月

区  分

平成27(2015)年4月

5月

6月

7月

3月

9月

10月

11月

12月

平成28(2016)年1月

2月

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※ 米トレーサビリティ法の対象となる米穀等(米及び米加工品)は、米穀、米粉・米粉製品、米菓生

地、もち、だんご、米飯類、米菓、米こうじ、清酒、単式蒸留焼酎、みりん。

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

また、東北農政局では、広く国民の皆様から食品の偽装表示や不審な食品表示に関

する情報等を受け付けるため、「食品表示110番」を設置しています。

平成27(2015)年度に「食品表示110番」へ寄せられた情報提供や問合せなどの件数は、

637件となっています(図Ⅰ-16)。

これらによって得られた情報に基づき、必要に応じて立入検査等を実施し、不適正

表示が行われていたことを確認した場合は、「食品表示法」に基づく指示・公表や指導

を行うなど厳正な対応を行っています。

農林水産省では、平成22(2010)年度から指導件数の公表も行っています。

エ 食品のトレーサビリティの取組の推進

食品のトレーサビリティは、食品に関わる事業者が食品の入荷先や出荷先の記録な

どを残すこと等により、食品の生産から消費までの移動を把握できるようにする仕組

みであり、食品の安全性に問題が発生した場合等に、問題のある食品とその流通範囲

を迅速に特定する手法として重要です。我が国においては、牛、米穀等(米及び加工

品)※のトレーサビリティが義務付けられています。

図Ⅰ-16 食品表示110番受付件数及び情報提供件数の内訳

食肉,10

米穀,32

水産物加工品,6

水産物,16

青果,2

農産物加工品,

18

菓子・パン類,

20

食肉加工品,5

めん類,1

その他

加工品,23

情報提供数品目

内訳133件

資料:東北農政局表示・規格課調べ(平成28(2016)年3月末日)

相 談 分 類 件  数

情報提供 133

問合せ 494

提案 8

苦情 1

その他 1

計 637

平成27(2015)年4月1日~平成28(2016)年3月31日

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

(ア)米穀の流通監視

(米トレーサビリティ制度に基づく立入検査等の実施)

「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律」(米トレーサ

ビリティ法)に基づき、米飯類を提供する外食事業者等に対して、米穀等の取引等の

記録の作成・保存及び消費者への産地情報の伝達が適切に実施されているかについて、

農政局職員が巡回立入検査を行い、監視・指導を実施しました。

また、米穀等の流通に関する相談や主食用ではない米穀の横流しなどの疑いに関す

る情報等を広く国民から提供いただく窓口として、「米穀流通監視相談窓口」を設置し

ています。

平成27(2015)年度に「米穀流通監視相談窓口」へ寄せられた件数は、情報提供16件、

問合せ29件、その他6件の、合計51件です。

(イ)牛トレーサビリティ制度の適正な運用

(牛トレーサビリティ制度の適正な運用のための監視・指導の実施)

「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」(牛トレーサビリ

ティ法)に基づき、牛の管理者などへの巡回調査等を実施し、本制度の周知徹底を図

るとともに、農政局職員が出生等の届出状況及び耳標装着状況の確認を行い、不適正

事項に対して指導を行いました。

また、国産牛肉の販売業者などに対しても巡回調査等を実施し、個体識別番号の表

示及び伝達並びに帳簿の備付けの状況を確認し、不適正事項に対して指導を行いました。

さらに、個体識別番号が適正に伝達されているかどうかを確認するため、小売店等

で販売されている国産牛肉を買上げ、そのサンプルを検査機関に送り、と畜直後の枝

肉から採取したサンプルとの照合(DNA鑑定)を実施しました。

6 食品産業等の動向

(1)食品製造業等の動向

ア 食品製造業の動向

平成26(2014)年における東北の食品製造業の従業者数は、9万8千人で全製造業の

17%を占めるとともに、製造品出荷額は、1兆8千億円と全製造業の11%を占めてお

り、地域経済を支える重要な役割を果たしています。しかしながら、全製造業が平成

21(2009)年から平成26(2014)年の間で、2兆円増加しているのに対して、食品製造業

は1千億円減少しています(表Ⅰ-8)。

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イ 飲食料品卸売業等の動向

東北の飲食料品卸売業、飲食料品小売業、持ち帰り・配達飲食サービス業及び飲食

店の従業者数は、平成21(2009)年の60万6千人から平成26(2014)年の55万9千人と減

少しており、また、各県の従業員数を業種別にみても、それぞれ減少又は横ばいとな

っています(表Ⅰ-17)。

(2)卸売市場の動向

ア 中央卸売市場の動向

広域的な生鮮食料品等の流通の中核的拠点の役割を果たし、指標となる価格形成等

重要な機能を有する中央卸売市場は、東北には平成26(2014)年度末現在で6市場あり

ます。市場数の変更は生じませんが、このうち、青森市中央卸売市場花き部及びいわ

き市中央卸売市場花き部については、平成28(2016)年4月に地方卸売市場に転換され

る予定となっています(表Ⅰ-9)。

なお、平成25(2013)年度の中央卸売市場の取扱額は、別表(表Ⅰ-10)のとおり、水産

物が1,395億円(全体の46%)と最も多く、次いで青果の1,320億円(同43%)となっています。

表Ⅰ-8 東北の食品製造業の推移

(単位:千人、十億円)

資料:経済産業省「工業統計表(産業編)」注:1)調査対象は、従業者4人以上の事務所。2)食品製造業は、食料品製造業及び飲料・たばこ・飼料製造業。

区     分平成21年(2009)

平成26年(2014)

対平成21年増減比

全製造業 606 559 -47

従業者数  うち食品製造業 110 98 -13

(構成比) (18%) (17%)

全製造業 14,713 16,760 2,047

製造品出荷額  うち食品製造業 1,952 1,845 -107

(構成比) (13%) (11%)

図Ⅰ-17 東北の飲食料品卸売業等の従業者数の推移

14 12 9 922 17 7 6 8 7 13 11

35 31 36 33

6756

30 2633 27

5542

3430 32 28

69

66

2523

2927

50

466

5 55

10

10

44

34

8

8

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

平成21年

(2009)

平成26年

(2014)

21年

(2009)

26年

(2014)

21年

(2009)

26年

(2014)

21年

(2009)

26年

(2014)

21年

(2009)

26年

(2014)

21年

(2009)

26年

(2014)

青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県

千人

持ち帰り・配達

飲食サービス業

飲食店

飲食料品小売業

飲食料品卸売業

資料:総務省「経済センサス基礎調査」

1 食料の安定供給の確保に向けた取組

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

イ 地方卸売市場の動向

地域における生鮮食料品の集配拠点の役割を果たす地方卸売市場は、東北には平成

26(2014)年度末現在で112市場あり、全国の約10%を占めます。このうち、水産物産地

市場については、全国にある同市場の約15%が東北にあります(表Ⅰ-9)。

なお、平成25(2013)年度の地方卸売市場の取扱高は、別表(表Ⅰ-10)のとおり、青

果が1,387億円(全体の60%)と最も多く、次いで水産物の852億円(同37%)となって

います。

ウ 第10次卸売市場整備基本方針及び卸売市場整備計画

(ア)第10次卸売市場整備基本方針

卸売市場の整備・運営の基本となる卸売市場整備基本方針は、卸売市場法に基づき、

農林水産大臣がおおむね5年ごとに策定するとされています。これにより、平成28(2016)

年1月、第10次卸売市場整備基本方針が策定されたところです。同基本方針では、卸

売市場の経営戦略を確立すること、地方卸売市場では都道府県が策定する卸売市場整

備計画に地域内の生鮮食料品等流通の重要な役割を担う地域拠点市場を定めること等

とされています。

(イ)中央卸売市場整備計画

平成28(2016)年4月、平成28(2016)年度から平成32(2020)年度を期間とする中央卸

売市場整備計画が策定されました。その中で施設の改善を図ることが必要と認められ

る中央卸売市場として、東北では、八戸市中央卸売市場、仙台市中央卸売市場本場及

び仙台市中央卸売市場食肉市場が挙げられています。

表Ⅰ-9 東北の卸売市場数(平成26(2014)年度)

資料:農林水産省「卸売市場データ集」

注:水産物産地市場とは、主として漁業者又は水産業協同組合から出荷される水産物の卸売のために

陸揚地において開設され、他の卸売市場に出荷する者、水産加工業を営む者等に卸売するための

卸売場の面積が330㎡以上の卸売市場。

  取扱部門がある市場数

青果 水産物 食肉 花き等

青森県 2 2 1 2 21 2 3 2 13 1 23

岩手県 1 1 1 20 1 5 1 12 1 21

宮城県 1 1 1 1 1 16 1 4 1 10 17

秋田県 1 1 17 3 3 5 6 18

山形県 23 1 9 9 3 1 23

福島県 1 1 1 1 15 6 5 3 1 16

東北計 6 5 4 1 5 112 14 29 18 47 4 118

全国計 67 53 36 10 24 1,105 153 374 132 318 128 1,172

花き等合計区 分

計総合市場

青果水産物

(消費地)水産物(産地)

中央卸売市場

市場数

地方卸売市場

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※1 農林漁業者等が必要に応じて農林漁業者等以外の者の協力を得て主体的に行う、1次産業としての農

林漁業と、2次産業としての製造業、3次産業としての小売業等の事業との総合的かつ一体的な推進

を図り、地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す取組のこと。

※2 地域の農林水産物の利用を促進することにより、国産の農林水産物を消費拡大する取組のこと。

※3 正式名称は、「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に

関する法律」。

- 74 -

7 6次産業化等の推進

農林漁業の振興や農山漁村の活性化を図るためには、農林水産物・食品の生産、加

工、流通といったバリューチェーンの各段階におけるイノベーションを通じて、新た

な価値の創出を促進することが必要です。このため、農業者が食品産業事業者や他の

農業者等とも積極的に連携しつつ、主体的に取り組む6次産業化※1等を推進するとと

もに、介護、福祉、医療、観光分野等との連携を強化していくことが重要です。

また、これとあわせて、地産地消※2の取組等を通じ、生産者と消費者との絆を一層

強めていくことも重要です。

(1)農山漁村の6次産業化の推進ア 六次産業化・地産地消法に基づく計画の認定

東北農政局では、6次産業化を推進するため、「六次産業化・地産地消法」※3に基づ

く総合化事業計画(農林水産物等の生産及びその加工又は販売を一体的に取り組む事

業計画)、及び研究開発・成果利用事業計画(総合化事業活動に資する研究開発及びそ

の成果の利用を行う事業活動に関する計画)の認定を行うとともに、当該計画の達成

に向けた各種の支援策を講じています。

表Ⅰ-10 東北の卸売市場の取扱実績額 (平成25(2013)年度)

資料:農林水産省「卸売市場データ集」注:1)水産物については、産地市場を除く。2)中央卸売市場の取扱実績には、福島市中央卸売市場(平成26(2014)年4月1日付けで地方卸売市場に転換)を含む。

(単位:億円%)

青 果 水産物 食 肉 花 き 合 計

東 北 1,320 1,395 171 165 3,051

全 国 19,178 16,014 2,475 1,268 38,935

全国比 6.9 8.7 6.9 13.0 7.8

東 北 1,387 852 0 69 2,308

全 国 12,543 6,964 1,344 2,640 23,491

全国比 11.1 12.2 0.0 2.6 9.8

中央卸売市場

地方卸売市場

区  分

1 食料の安定供給の確保に向けた取組

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平成27(2015)年度は、新たに総合化

事業計画26件が認定され、東北におけ

る認定件数(累計)は、総合化事業計

画335件、研究開発・成果利用事業計

画4件となっています(表Ⅰ-11)。

認定を受けた総合化事業の内容別の

割合は、「加工・直売」が68.4%と最

も高く、次いで「加工」15.7%、「加

工・直売・レストラン」8.1%、「直売」

3.9%の順となっており、全国に比べ

て直売を含んだ事業内容の割合が高く

なっています(表Ⅰ-12)。

また、事業の対象となる農林水産物

の割合は、野菜が31.4%と最も高く、

次いで果樹の18.5%、米の18.3%の順

となっており、これら3品目で全体の約7割を占めています(図Ⅰ-18)。

イ 東北における6次産業化の取組事例

農林漁業者等が自ら生産した農産物等を活用して新商品を開発し、新たな販路を開

拓するなど、東北においても様々な6次産業化の取組が進められています。そのうち、

代表的な2事例を以下で紹介します。

表Ⅰ-12 総合化事業計画の事業内容の割合

(単位:%)

資料:東北農政局調べ

事業内容 東北(参考)全国

加工・直売 68.4 68.7

加   工 15.7 20.0

加工・直売・レストラン 8.1 6.5

直   売 3.9 2.6

加工・直売・輸出 2.7 1.6

レストラン 0.9 0.2

輸   出 0.3 0.3

図Ⅰ-18 総合化事業計画の対象農林水産物の割合

資料:東北農政局調べ

野菜

31.4%

果樹

18.5%

18.3%

畜産物

7.6%

豆類

6.2%

林産物

4.7%

水産物

4.1%

その他

4.1%

麦類

2.1%

そば

1.6%

花き

1.4%

表Ⅰ-11 六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定件数

(平成27(2015)年度末現在)

うち農畜産物関係

うち林産物関係

うち水産物関係

青森県 63 59 0 4 1

岩手県 47 43 3 1 1

宮城県 68 55 2 11 1

秋田県 54 49 2 3 0

山形県 63 59 4 0 0

福島県 40 40 0 0 1

東北計 335 305 11 19 4

(参考)

全国2,156 1,899 95 162 24

区 分

研究開発・成果利用事業計画の認定件数

総合化事業計画の認定件数

資料:東北農政局調べ

1 食料の安定供給の確保に向けた取組

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

【事例Ⅰ-5】

こだわりの「玉光デリシャス」で量ではなく質で勝負!ぎよつこう

<平成24(2012)年度認定>

デリシャスファーム株式会社(宮城県大崎市)おおさき し

デリシャスファーム株式会社では、収量より味に重点をおい

たトマトの生産を目指し、栽培は難しいが濃厚なトマトの味が

楽しめる品種「玉光デリシャス」の栽培を行っています。形状

などの規格が整ったものは生食で市場に出荷する一方、規格外

のトマトの有効活用を図るため、トマトジュースの加工に取り

組むこととし、平成24(2012)年10月に総合化事業計画の認定を

受けました。

平成18(2006)年に製造が始まった

「玉光デリシャス」を使ったトマト

ジュースの販売量は年々増加しており、平成26(2014)年の新

商品の売上高は、9,400万円となっています。また、採れた

て、作りたてをコンセプトに、トマトの栽培ハウスの一角に

ファームカフェを開設し、トマトを使ったメニューを提供し

ています。

【事例Ⅰ-6】

味は濃厚で栄養たっぷりなマッシュルームの魅力を伝えたい!<平成23(2011)、26(2014)年度認定>

有限会社舟形マッシュルーム(山形県舟形町)ふながたまち

有限会社舟形マッシュルームは、全国有数規模

でマッシュルームを栽培しています。栽培に伴う

規格外のマッシュルームの有効活用を図るため、

自社の加工施設を整備するとともに、マッシュル

ームを使った加工品

の開発・製造を目指し、平成23(2011)年6月に総合化

事業計画の認定を受けました。

マッシュルームを原料とした水煮、佃煮やソース等

の製造・販売に取り組み、平成26(2014)年5月には2回

目の総合化事業計画の認定を受けました。これらの取

組により、マッシュルームの栽培が拡大するとともに、

加工品の品揃えも増え、売上の安定につながっています。

玉光デリシャスを使った

メニュー

マッシュルームの栽培施設

マッシュルームの加工品

玉光デリシャスを使った

トマトジュース

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

ウ 東北ブロック6次産業化推進行動会議等の開催

東北における農林漁業者等の6次産業化へのチャレンジを積極的にサポートする推

進組織として、「東北ブロック6次産業化推進行動会議(平成22(2010)年11月設置)」

(以下「行動会議」という。)が設置され、講演会やセミナーの開催、課題別検討会に

よる検討等の取組が展開されています。

平成27(2015)年度は、商品開発・販路開拓及び開発商品の認知度向上のための取組

として、関係機関等との連携に

より、分野別・テーマ別のセミ

ナー、個別相談会等を開催した

ほか、SNSを活用した6次産業化

情報の発信、農家レストラン・

グリーン・ツーリズム体験型農

家民宿等のマップの作成、地域

が一体的に取り組んでいる事例

など特徴的な6次産業化事例の

収集と発信を行い、それらの活

動実績が、平成28(2016)年3月

に開催された行動会議の場で報

告されました(表Ⅰ-13)。

表Ⅰ-13 行動会議によるセミナー等の開催状況

資料:東北農政局

区 分 名  称  等

平成27(2015)年9月

農観連携セミナー及び個別相談会(仙台市)

平成28(2016)年1月~3月

六次産業化・地産地消法認定事業者の商品改善支援会(仙台市他4会場)

平成27(2015)年8月、平成28(2016)年2月

六次産業化・地産地消法認定事業者・女性起業家向け販路別勉強会及び個別相談会(仙台市)

平成28(2016)年3月

平成27年度東北ブロック6次産業化推進行動会議(仙台市)

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

【事例Ⅰ-7】平成27年度東北ブロック6次産業化推進行動会議

平成28(2016)年3月3日の概要

仙台市内において、構成員のほか一般参加者を含め約150名の参加により行動会議

が開催され、活動実績の報告と次年度計画の承認の後、女性起業家による6次産業化

をテーマとした講演会が行われました。

【第1部】

事務局から活動報告等

【第2部】講演

◆ 株式会社気仙沼ニッティング代表取締役 御手洗 瑞子氏み た らい た ま こ

「気仙沼から、一生もののニットを届ける」

(株)気仙沼ニッティングでは、一生ものの服を作っていく

ことをコンセプトに、「もっと美しいものを作りたい」と願う

気持ちを大切に服を編んでいます。

作ったものを売るのではなく、売れるもの=喜ばれるものを

作ること、購入する人が何を喜んでくれるかを考え、喜んでいただけるものを作る、

それが6次産業化と考えています。

◆ ななくさ農園・ななくさナノブルワリー 関 奈央子氏せき な お こ

「アルコールツーリズムで地域活性化」

人と自然に優しい農業(有機農業、自然農業)で農産物の加

工・販売、農業体験交流を行っていたが、東日本大震災の原発

事故の風評被害で何も無くなったところから再スタートとなりま

した。

新たな試みとして、地場産農産物を活用した地ビール(発泡酒)「ななくさビーヤ」

や「シードル」「ワイン」づくりと地域活性化に取り組んでいます。

農業を次世代に引き継ぐためには、農家が儲かる=生活できる十分な収入を得るこ

とが大切です。

これからも、地域の魅力を発信していくため、地産地消、食育に取り組んでいきます。

(2)地産地消の取組の推進ア 地産地消促進計画の推進

(東北の市町村段階の地産地消促進計画は163市町村)

地産地消の取組は、農林漁業の持続的かつ健全な発展、農山漁村の活力の再生、消

費者の利益の増進、食料自給率の向上等に重要な役割を果たすとともに、地域資源の

有効な活用、環境への負荷の低減等の効果を有するものです。六次産業化・地産地消

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

法においては、この取組を進めるため、都道府県及び市町村は、「地域の農林水産物の利

用の促進についての計画」(以下、「地産地消促進計画」という。)を定めるよう努めなけれ

ばならないこととされています。

平成27(2015)年度末での東北における地産地消促進計画の策定状況をみると、県段

階では東北6県全てで策定しており、市町村段階では前年度の140市町から163市町

村(対前年比16%増)へと増加しました(表Ⅰ-14)。

多くの市町村が地域の特色を活かした

地産地消促進計画を策定し、地域の農林

水産業をその地域で消費する取組を促進

することにより、生産者と消費者との結

び付きの強化、消費の拡大、生産者の意

欲の増進等が図られ、地域の農林水産業

の振興、農山漁村の活力の再生につなが

ることが期待されるため、未策定市町村

の策定を一層推進することが重要となっ

ています。

また、平成28(2016)年度における6次

産業化や学校給食の地産地消に関係する

補助事業の事業採択の配点項目に地産地

消促進計画の策定が含まれています。

イ 地産地消優良活動表彰

(株式会社アグリの里おいらせが農林水産大臣賞受賞)

6次産業化を進める上で重要な地産地消の取組を一層促進するため、地域の立地条

件を活かした創意工夫のある様々な地産地消の取組・活動を表彰する「平成27年度地

産地消優良活動表彰」において、東北から応募した2団体が表彰されました。

このうち、株式会社アグリの里おいらせ(青森県)が農林水産大臣賞を受賞してい

ます。(表彰団体はP173、P179を参照のこと。)

ウ 地産地消給食等メニューコンテスト

(東北の3団体が受賞)

学校給食、社員食堂、外食・弁当において、生産者との交流促進等の取組を伴った

地場産農林水産物の食材を活用している優れたメニューについて表彰する「第8回地

産地消給食等メニューコンテスト」(主催:一般財団法人都市農山漁村交流活性化機構

及び全国地産地消推進協議会、後援:文部科学省)において、東北から応募した3団

体が表彰されました。(表彰団体はP180~181を参照のこと。)

表Ⅰ-14 東北の地産地消促進計画の策定数

平成28(2016)年3月末現在

資料:東北農政局調べ

策定数 市町村数 策定率(%)

青森県 24 40 60.0%

岩手県 22 33 66.7%

宮城県 31 35 88.6%

秋田県 24 25 96.0%

山形県 29 35 82.9%

福島県 33 59 55.9%

計 163 227 71.8%

市町村段階

策定済

策定済

策定済

策定済

策定済

策定済

6/6

区 分 県段階

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※ ワーキンググループでの議論の結果、政府は平成28(2016)年5月「農林水産業の輸出力強化戦略」を取り

まとめました。

- 80 -

1 食料の安定供給の確保に向けた取組

(3)農林水産物・食品の輸出の推進ア 農林水産物等の輸出状況

我が国の農林水産物・食品の輸出額は、平成19(2007)年の5,160億円をピークに一時

伸び悩んでいたものの、平成25(2013)年には増加に転じ、平成27(2015)年の輸出額は

7,451億円となり、3年連続で最高額を更新しました(表Ⅰ-15)。

我が国の食市場が少子高齢化の進行に伴い縮小が見込まれる中、今後、世界の食市

場は人口の増加や富裕層の増加等により倍増すると見込まれていることから、我が国

の農林水産物・食品の輸出を拡大することが不可欠です。

東北農政局では、東北の農林水産物・食品の輸出促進に向けた取組を進めており、

平成27(2015)年度においては、輸出の拡大に積極的に取り組んでいる事業者と輸出を

促進する関係者との意見交換会を平成27(2015)年7月31日に開催しました。また、品

目別輸出団体及びその参加機関から輸出の取組状況等を情報提供し、東北における農

林水産物・食品の輸出の取組を後押しすることを目的とした輸出促進セミナーを平成

28(2016)年2月19日に開催しました。

これらの取組に加え、東北農政局では、輸出の取組を支援している仙台市所在のジ

ェトロ仙台(独立行政法人日本貿易振興機構)、東北経済連合会をはじめ、東北地方整

備局など国の関係機関からなる輸出促進連絡会議を定期的に開催しています。

国では、さらなる輸出拡大を目指して、関係省庁の閣僚と有識者による「輸出力強

化ワーキンググループ」を立ち上げ、議論を行いました※。

表Ⅰ-15 農林水産物・食品の輸出額の推移

(単位:億円)

資料:財務省「貿易統計」に基づき農林水産省作成

金額伸び率(%)

金額伸び率(%)

金額伸び率(%)

金額伸び率(%)

平成17(2005)年 4,008 11.1 2,168 6.4 92 3.7 1,748 17.9

  18(2006)年 4,490 12.0 2,359 8.8 90 -1.6 2,040 16.7

  19(2007)年 5,160 14.9 2,678 13.5 104 15.6 2,378 16.5

  20(2008)年 5,078 -1.6 2,883 7.7 118 13.6 2,077 -12.7

  21(2009)年 4,454 -12.3 2,637 -8.5 93 -21.3 1,724 -17.0

  22(2010)年 4,920 10.5 2,865 8.6 106 13.6 1,950 13.1

  23(2011)年 4,511 -8.3 2,652 -7.4 123 16.3 1,736 -11.0

  24(2012)年 4,497 -0.3 2,680 1.1 118 -3.9 1,698 -2.2

  25(2013)年 5,505 22.4 3,136 17.0 152 28.7 2,216 30.5

  26(2014)年 6,117 11.1 3,569 13.8 211 38.5 2,337 5.4

  27(2015)年 7,451 21.8 4,431 24.1 263 24.7 2,757 18.0

農林水産物

農産物 林産物 水産物区  分

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

イ 東北農林水産物・食品輸出モデル検討協議会の取組

東北からの農林水産物・食品の輸出は、主として貨物航路を有する関東、関西の港

湾・空港を経由する形で行われています。輸送ルートの複線化を通じた輸出効率の向

上を図るため、これまでの輸出形態に加え、東北の港湾・空港を活用した輸出ルート

を確保するとともに、現地バイヤーとの交渉や輸出書類の作成など、輸出事業者に対

する輸出サービスを一元的に行うプラットホームを構築する必要があります。

このため、東北農政局は、平成27(2015)年10月、東北地方整備局や東北経済連合会

等との連携により、「東北農林水産物・食品輸出モデル検討協議会」を設立し、東北に

おける農林水産物・食品の輸出にかかる商流と物流の諸問題の解決に向けた検討を進

めており、今後、仙台空港等を活用した東南アジアへの輸出を図る事業を第一号のビ

ジネスモデルとして支援することとしています。

【事例Ⅰ-8】オンリーワン商品「若桃の甘露煮」で海外展開

(福島県伊達市)だ て し

福島県のあぶくま食品株式会社は、桃の栽培過程で摘果さ

れた桃を活用した「若桃の甘露煮」を開発し、米国、EU、香

港、東南アジア等に輸出しています。

平成25(2013)年9月、ジェトロ(独立行政法人日本貿易振

興機構)の輸出有望案件発掘支援事業として採択され、欧米

を中心に海外見本市への出展を重ね、輸出実績を上げています。

海外見本市では、業務用の飲料、洋菓子への提案が好評だ

ったことや、代理店とのパイプを深くしてきたことが販路拡

大につながっています。

主力商品「若桃の甘露煮」は、着色料や保存料が無添加の

独自製法(特許取得済み)により種まで丸ごと食べることが

でき、果肉や種子部を均一な食感に仕上げたのが特徴です。オンリーワン商品開発

による商品力の向上により、海外との取引が継続して

販路が拡大するとともに、社員のモチベーション向上

にもつながっています。

今後は、欧米に加えアジアでの展示会等を活用して、

現地での営業・フォローを行い拡販を目指しています。

海外見本市での展示

若桃の甘露煮

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※ 正式名称は、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」。

- 82 -

1 食料の安定供給の確保に向けた取組

(4)地理的表示(GI)保護制度

ア 地理的表示(GI)法に基づく登録

(「あおもりカシス」が登録番号第1号)

平成27(2015)年6月1日から「地理的表示(GI)法」※が施行され、産地と産品の

品質等の特性が深く結び付いており、その名称から当該産品の産地を特定できる農林

水産物・食品等の名称を知的財産として保護する地理的表示保護制度が始まりました。

受付開始より全国各地から多くの申請を受け付け、第1弾として平成27(2015)年12

月22日に7産品が登録され、東北からは青森県の「あおもりカシスの会」が生産する

「あおもりカシス」が登録番号第1号で登録されました。平成28(2016)年3月末現在、

全国で12産品が登録されています。

登録された産品は、産品の名称である地理的表示とGIマークを付けて市場に出回

ることになります。この制度により、品質が保証された地域ブランド産品として価値

の維持・向上が図られ、生産者の所得向上や農林水産業の活性化が期待されます。

消費者にとっても表示を信頼して産品を選べるというメリットにつながります。

イ 地理的表示(GI)及び地域団体商標を活用した地域ブランド化の推進

特色ある地域づくりの一環として地域ブランド振興が盛んに行われており、それら

の地域ブランドの多くが、地域の特産品等にその産地を冠した名称で流通しています。

地域ブランドを保護する効果を持つ制度としては、前述した「地理的表示保護制度」

と「地域団体商標制度」があり、地域団体商標は、地域ブランドを商標権として保護

し、地域活性化に資するために、平成18(2006)年に設立された制度で、東北における

登録状況は、43件となっています(表Ⅰ-16)。

地理的表示と地域団体商標には、名称を使用できる者、品質管理基準の設定・管理

方法、不正使用への規制手段などに違いがあり、地域の実態や産品の特性を踏まえた

ブランド戦略に応じて、いずれかの制度を選択又は両者を組み合わせて利用すること

が可能です(表Ⅰ-17)。

既に商標登録が行われている場合については、商標権者本人が申請を行う又は商標

権者の承諾を得た場合に限り、地理的表示の登録が可能です。既に商標権を有する者

が地理的表示の登録をすることにより、GIマークの使用が可能となり、産品が品質

基準を満たした真性品であることを示すことができることに加え、不正表示は国が取

り締まるため訴訟等の負担なく自分たちのブランドを守ることが可能になります。

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

表Ⅰ-16 東北における地域団体商標の登録一覧平成28(2016)年3月末現在

資料:特許庁「地域団体商標事例集2016」を基に、東北農政局で作成。

青森県 岩手県 宮城県9件 5件 6件

たっこにんにく

嶽だけ

きみ

大間お お ま

まぐろ

大鰐温泉おおわにおんせん

もやし

野辺地葉の へ じ は

つきこかぶ

風間浦かざ ま うら

鮟鱇あ ん こう

十和田湖と わ だ こ

ひめます

青森あ お もり

の黒く ろ

にんにく

横浜よ こはま

なまこ

いわて牛ぎゅう

いわて短角和牛 たん かく わぎゅう

南部鉄器 なん ぶ てっ き

江刺 え  さし

りんご

真崎 ま さき

わかめ

仙台味噌 せんだい み  そ

仙台みそせんだい

仙台牛せんだいぎゅう

仙台黒毛和牛せんだい くろ  げ わ ぎゅう

仙台いちごせんだい

雄勝硯 お がつすずり

秋田県 山形県 福島県9件 10件 4件

秋田由利牛あき た ゆ り ぎゅう

比内地鶏 ひ ない じ どり

秋田諸越あき  た もろ こし

白神山 しら かみやま

うど

川連漆器 かわ つら しっ き

三梨牛みつなしぎゅう

横手よこ て

やきそば

大館曲おお だて ま

げわっぱ

三関みつせき

せり

刈屋梨かり や なし

平田赤ねぎ ひら た あか

米沢織よねざわおり

米沢牛よねざわぎゅう

山形佛壇やま がた ぶつだん

山形おきたまやまがた

産さん

デラウエア

置賜紬おいたまつむぎ

米沢らーめんよねざわ

山形名物玉こんにゃくやまがた めいぶつ たま

蔵王かぼちゃ ざ おう

南郷なん ごう

トマト

土湯温泉つち ゆ おんせん

会津あい づ

みそ

大堀相馬焼おおぼり そう ま やき

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表Ⅰ-17 地理的表示(GI)保護制度と地域団体商標制度の比較

資料:特許庁「地域団体商標と地理的表示(GI)の活用Q&A」を基に、東北農政局で作成。

区   分 地理的表示(GI)保護制度 地域団体商標制度

制度概要

 地理的表示保護制度は、生産地と結び付いた特性を有する農林水産物等の名称を品質基準とともに登録し、地域の共有財産として保護する制度

 地域団体商標制度は、地域ブランドの名称を商標権(出所表示)として登録し、その名称を独占的に使用することができる制度

保護対象(物) 農林水産物、飲食料品等(酒類等を除く) 全ての商品・サービス

保護対象(名称) 地域を特定できれば、地名を含まなくてもよい 「地域名」+「商品名」等

登録主体生産・加工業者の団体(法人格のない団体も可)

農協等の組合、商工会、商工会議所、NPO法人

主な登録要件

・生産地と結び付いた品質等の特性を有する こと・一定期間(おおむね25年)継続して生産され た実績があること

・地域の名称と商品が関連性を有すること (商品の産地等)・商標が需要者の間に広く認識されていること

使用方法地理的表示は登録商標 (GIマーク)と共に使用(義務)

登録商標である旨を表示(努力義務)

品質管理

・生産地と結び付いた品質基準の策定・登録・ 公開・生産・加工業者が品質基準を守るよう団体 が管理し、それを国がチェック

商品の品質等は商標権者の自主管理

効力地理的表示及びこれに類似する表示の不正使用を禁止

登録商標及びこれに類似する商標の不正使用を禁止

効力範囲登録された農林水産物等が属する区分に属する農林水産物等及びこれを主な原料とする加工品

出願時に指定する商品若しくはサービス又はこれと類似する商品若しくはサービス

規制手段 国による不正使用の取締り 商標権者による差止請求、損害賠償請求

費用・保護期間・登録:9万円(登録免許税)・更新手続なし (取り消されない限り登録存続)

・出願・登録:4万6千円(10年間)・更新:4万8,500円(10年間)※それぞれ1区分計算

申請先 農林水産大臣(農林水産省) 特許庁長官(特許庁)

1 食料の安定供給の確保に向けた取組

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1 食料の安定供給の確保に向けた取組

【事例Ⅰ-9】地理的表示登録産品 あおもりカシス

(青森県東青地域)とうせい

「あおもりカシス」登録番号第1号(平成27(2015)年12月22日)

「あおもりカシス」は、ドイツに研修外遊中の弘前

大学の望月教授が、青森県の気候に適する果実として、

ドイツ政府から苗木の提供を受けて、昭和40(1965)

年に青森県に導入されました。

昭和50(1975)年から青森県東青地域(青森市、青森あおもり し

県東津軽郡平内町、今別町、蓬田村、外ヶ浜町)でひがし つ がるぐんひらないまち いまべつまち よもぎ た むら そと が はままち

本格的に栽培が開始され、これまでも品種改良せず、

当時の品種のまま守り育てられてきました。夏季に冷

涼な環境に生育するため、病害虫の発生が抑えられる

こともあり、極力農薬を使用せずに栽培することがで

き、その特徴はさわやかな酸味や独特の芳香

があり、アントシアニンも豊富です。完熟し

たものから選別し、丁寧に一粒ひとつぶ手摘

みで収穫された果実は、お土産やスイーツ、

ジュース等の加工品として利用されています。

あおもりカシスの会では、今後、あおもり

カシスをりんごに次ぐ地域のブランド商品と

して育てていきたいと考えており、まずは、

国内、特に西日本地域において、知名度を高

めていくことが第一と考えています。 あおもりカシス

生産地:青森県東青地域

青森市

平内町蓬田村

外ヶ浜町

今別町外ヶ浜町