第1部 企業の社会的責任(CSR)と欧州機関 · 2018-12-17 · ♣...

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解 説

第1部 企業の社会的責任(CSR)と欧州機関

1.背景 ………………………………………………………………………………… 4

2.欧州機関におけるCSRの体系化について …………………………………… 4

3.これまでの歩み …………………………………………………………………… 7

4.欧州の今日的な課題におけるCSRの位置付け ……………………………… 9

5.主な利害関係者 ………………………………………………………………… 10

第2部 欧州における協同組合の社会的責任

1.協同組合ヨーロッパ本部の立場 ……………………………………………… 11

2.協同組合ヨーロッパ本部の会員組織による先進事例(過去 2 年間) …… 12

3.協同組合とCSR:2011年以降の展望 ……………………………………… 15

4.欧州での CSR の普及促進:欧州委員会と加盟国への勧告 ……………… 16

目  次C O N T E N T S

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 今回のリポートは、「協同組合の社会的責任〜欧州連合の最新事情〜」というテーマで、第1部「企業の社会的責任(CSR)と欧州機関」、第2部「欧州における協同組合の社会的責任」の2部構成となっている。 欧州委員会では、CSRとは「企業が事業運営や利害関係者との関わり合いに社会的・環境的な配慮を自発的に取り組むという考え方」と定義される。市場経済やグローバル化に向けた信頼づくりのうえで責任ある企業行動が求められるなかで、CSRは欧州の競争力向上に必要不可欠という認識に立つ。 第1部では、欧州機関におけるCSRの体系化について、企業・産業・雇用・社会問題・機会均等・環境など欧州委員会のそれぞれの担当局ごとの取り組みや活動の具体例を紹介。第2部では、協同組合ヨーロッパ本部の立場について、「協同組合にとってCSRは新しい概念ではない。経済的目的と社会的目的の両方を追求していることに加え、運営手続は個人と内部民主主義の原則にのっとっているため、協同組合は本質的にCSRを受け入れ、その促進に向けて大いに努力してきたのである」との欧州経済社会評議会の見解を示す。そして、情報開示、雇用、二酸化炭素(CO2)、環境と健康、フェアトレードなどの課題について、各種協同組合の先進事例を紹介している。 協同組合は、もとより、地域の生産者や消費者が組合員であり、組合員・地域のニーズや願いを束ねて事業化、活動化し、「出資、参加、利用」の三位一体の組織運営を通じて、組合員・地域の満足の最大化を図っていこうという運動体である。その意味では、今流行のCSRのスローガンに飛びつくことより、自らの運動理念に忠実に、地域密着型の実践にこだわっていくことが、自然とCSRにつながっていくという確信こそ重要ではないか。「協同組合のアイデンティティとは何か」を真摯に問い続けることのなかに、協同組合のCSRのあり様も自ずと見えてくるのではないか。 徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」の事例にあるように、JAで立ち上げた小さな仕事起しが地域経済、地域福祉、地域活性化までつながって発展していくという、「社会的モチベーション」とも言うべき協同組合運動のダイナミズムを感じ取れるマインド形成がもっと重視されていいだろう。 2012年は、国連が定めた「国際協同組合年」であり、地域に根差した協同組合活動の社会化について議論を深め、協同組合セクターの社会的評価の実態づくりをすすめていく必要がある。協同組合の多様な事業・活動が、地域コミュニティ力、地域経済力、地域福祉力、地域雇用力などの維持・向上にどういう接点を持っているか、どう貢献しているか、社会的な評価システムをモデル化していくことが重要である。 協同組合の価値観について思考すること、広く会話・コミュニケーションして共有すること、そして教育的に意識化され、行動化されていく時に、協同組合運動の理念が本物になる。その意味で「考える協同組合運動」がCSRの前提条件といえるだろう。

JC総研 常務理事 松岡公明

解 説

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1.背景:

 企業の社会的責任(CSR、Corporate Social Responsibility)という概念は、2001年7月、欧州委員会のグリーンペーパー(政策提言書)で「企業が事業運営や利害関係者との関わり合いに社会的・環境的な配慮を自発的に取り込むという考え方」1 と定義されたことで、正式に欧州連合(EU)に導入された。

 これは、社会のニーズに対応するため、労働協約に基づく最低限の法的要件・義務を超えて活動する方針を定めた事業体について言うものであり、事業体にとっては、その事業規模の大小を問わず、利害関係者との協力の下でCSRに取り組むことにより、経済・社会・環境面の要求について折り合いをつける一助となる。このようにCSRは、EU域内はもとより、世界的にも重要な考え方になってきており、グローバル化、競争力、サステナビリティ(持続性)に関する議論でも取り上げられている。欧州でCSRが推進されている背景には、共通の価値観を守り、連帯・結束意識を高めたいとの思いがある。

 以来、議論の中心テーマとなっているのは、CSRの義務的なルールと自主的なルールの問題である。長年の論争の末、欧州委員会は非政府組織(NGO)が表明している見解に近い立場へと軌道修正しているようである。最近、EUの高官は「経済・金融危機を受けてCSRの捉え方が変わってきた」と何度か述べている。

 CSR政策見直しの公約は、EUの成長戦略「欧州2020年―知的で持続可能かつ包摂的な成長への欧州戦略」2 で取り上げられており、2011年夏の終わりごろにはCSRに関する新通達が発表される予定である。

2.欧州機関におけるCSRの体系化について:

(1)欧州委員会の各部局によるCSRの普及促進 欧州委員会はこの数年間でCSRに関する議論を活性化・体系化してきた。CSRについては、欧州委員会の雇用・社会問題・機会均等総局と企業・産業総局が主に担当しているが、域内市場総局、環境総局、開発総局など他の総局も少なからず関与している。

第1部 企業の社会的責任(CSR)と欧州機関

1 COM (2001) 366.2 2010年6月、EU首脳会議は「欧州2020―知的で持続可能かつ包摂的な成長への欧州戦略」を採択した。この戦略は、加盟国が今後取り組むべき一連の目標を策定している。欧州委員会は2020戦略の枠組みで7つの主要プロジェクトの実施を約束している。この中には「Youth on the Move(若者の移動促進)」「An Agenda for New Skills and Jobs(新たな技術・職業に向けた課題)」「European Platform against Poverty and Social Exclusion(欧州での貧困および社会的排除対策プラットフォーム)」などが含まれている。

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 ♣ 雇用・社会問題・機会均等総局: 企業内、特にサプライチェーン(製品・サービス提供のために行われるビジネス諸活動の一連の流れ、供給連鎖)内で社会全体を包括する充実した雇用慣行を促進するほか、国際的な趨勢(すうせい)としての人権の尊重を促進している。企業の対応が求められる課題として、雇用の柔軟性と保障の両立(フレクシキュリティ)、および多様な管理の必要性が新たに持ち上がっている。例えば、従業員の健康管理、職業教育、生涯学習、環境問題で新機軸を打ち出すことは、いずれもCSRの課題として同じように重要である。

 ♣ 企業・産業総局: CSRは欧州の競争力向上に必要不可欠な要素である。市場経済、貿易開放、グローバル化に向けた信頼づくりのうえで、責任ある企業行動が欠かせない。同総局は主に次のような分野を重点にしている。

─ 中小企業─ 競争力: CSRを経営戦略に組み込んだ場合の競争力向上への貢献度を分析─ 各産業分野でのCSRの推進:化学、繊維、建設の3業界に特化したアプローチを支  援するプロジェクトに共同出資─ 報告書発行・情報開示:特に目下の経済・金融危機を背景に重要性が高まっている  と見られる。─ ビジネスと人権

 ♣ 域内市場総局: 2010年10月27日に採択された単一市場法(SMA)に関する通達を発表した。ここでは、EU市場で消費者の信頼と安心感を深めることと、持続的な経済成長の下で高い競争力がある社会的市場経済を達成することに重点が置かれている。同総局は、企業の社会・環境面の情報開示と人権の尊重に関する既存の政策を改善する方針の下、新たな施策や法案修正の提言も視野に入れた審議会を設置している。

 ♣ 環境総局: 環境規制の業務にとどまらず、企業・団体による環境保護実績の評価・報告・改善のための管理手法となる「EU環境管理・環境監査スキーム」(EMAS)を策定した。

 さらに、欧州委員会の後押しで、以下のように複数のネットワークや検討委員会(ワーキンググループ)が欧州全体における先進事例(ベストプラクティス)の情報の共有化を促進し、また、CSRに関して注目されている問題の解決方策等の協議と解決に向けた取り組みに着手している。

 ♣ CSRのための欧州マルチステークホルダー(多様な利害関係者)・フォーラム: 雇用主、従業員、NGO、学識者、社会的責任を重視する投資家が2年に1回、それぞれのCSR活動の状況を報告し、EUのCSR普及促進策について話し合う。直近の会合は2010年11月に開催され、テーマは環境・社会・ガバナンス(ESG)の報告であった。

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 ♣ 加盟国代表によるハイレベルグループ: 半年ごとに会合を開催、各国のCSRへの取り組み状況を報告し、ピアラーニング(協働学習)を奨励している。ハイレベルグループは、欧州委員会の独自の取り組みについて加盟国に意見を聞くための仕組みである。また、普及促進を目的とした大規模なイベントにも力を入れている。2008年10月には、欧州委員会はEU議長国のフランスや欧州経済社会評議会と協力して、透明性とパートナーシップに関する会議を開催、2009年11月10〜11日には、EU議長国のスウェーデンが企業と人権に関する国連事務総長特別代表ジョン・ラギーの報告書をもとに会議を開催した。

 ♣ 欧州委員会のCSRに関する総局間グループ: 欧州委員会の関係総局間で一貫性のあるアプローチを取るための措置として、同グループが組成されている。CSRでは、主流の活動として本格化させる産業界の傾向を反映し、横断的な課題の色合いが深まっていることから、環境、正義・自由・安全、域内市場、健康・消費者問題、対外問題(対外関係、貿易、援助・協力、開発)の各分野の政策が関わってくるためである。

 ♣ CSRのための欧州同盟(アライアンス): 産業界主導によるCSR推進の取り組みで、2006年に欧州委員会の強力な後ろ盾で発足した。持続的な開発、経済成長、雇用創出に向けて、欧州の企業・利害関係者の情報などの資源や能力を結集する枠組みとなる。

─ 直近の成果:2008年12月、責任あるサプライチェーンマネジメント(供給連鎖管理)、非財務業績の投資家への伝達など、戦略的な課題に関する指針が手段として用意された。

(2)過去数年間に欧州委員会が推進した活動の具体例

 ♣ 地域の雇用開発に対するCSRの貢献度調査: 地域の景気・雇用の改善を目的とした調査で、従業員、市場(顧客、仕入れ先、ビジネスパートナー)、地域社会の環境への貢献をめざした企業活動が対象となった。

 ♣ 社会に配慮した公共調達に関するガイド: 公共調達について、社会的側面を各当局が考慮できるようなEU規則になっているかについて、検証するためのものである。公共調達はEUの国内総生産(GDP)の16%を占めているため、この取り組みは重要である。このため、CSRは民間の請負業者に対する影響が大きい。

 ♣ 欧州横断的な研究・情報共有の資金援助: 対象はプロジェクトのパートナーが専門分野としているテーマで、欧州委員会のCSRの課題に適合するものである。

 ♣ 企業の社会的責任の中核研究プラットフォーム(2004年9月): 「CSRプラットフォーム」と命名されたプロジェクトは、EUの第6次研究・技術開発枠組

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み計画(FP6)の下、欧州共同体の財政支援を受けて発足した。このプラットフォームは、欧州研究領域(ERA)での企業の社会的責任や社会問題におけるあり方に関する優れた研究体制の支援・整備に向け、研究者の結集を目的としている。

 ♣ CSRと中小企業に関する欧州専門家グループ 3(2005〜2007年): 優れたCSR支援策のアイデアや経験談を収集し、中小企業間で共有する場として機能した。次に示す6つの主要テーマに沿って構成され、テーマ別に情報や経験談を収集して、重要な教訓や優秀な慣行を導き出した。テーマごとの資料やプレゼンテーションはオンラインで公開されている。

─ CSR、中小企業、地方の競争力─ 中小企業のためのCSRの投資効果─ 事業支援のための能力形成─ 中小企業を対象とした意識啓発とコミュニケーション─ 各種ツールと管理システム─ サプライチェーンをめぐる課題、メンター制(企業における新入職員らへの助言者制

度)、認証

3.これまでの歩み:

 1993年、欧州委員会のジャック・ドロール委員長は、産業界に向けてCSRを訴えかけ、「社会的排除に反対する欧州宣言」の採択を企業に呼びかけた。その結果、多くの企業が賛同し、CSRに関する欧州初の企業ネットワークが誕生した(「社会的結束のための欧州ビジネスネットワーク」、その後2000年に「CSRヨーロッパ」に改称)。

 しかし、欧州の機関がCSRのコンセプトを実際に理解するようになったのは、2000年代に入ってからである。

 ♣ 2000年: 欧州各国の代表がリスボンサミットの締めくくりにCSRを呼びかけた。2010年リスボン戦略の中核にCSRを据え、「2010年までに、欧州を世界で最もダイナミックで競争力のある知識集約型経済にするとともに、雇用を拡大・改善し、社会的結束を高め、持続的な経済成長を実現する」とした。

 ♣ 2001年7月18日: 欧州委員会は「企業の社会的責任(CSR)のための欧州枠組み推進に関するグリーンペーパー(政策提言書)」を公表、欧州全体でのCSR議論の旗振り役となった。このグリー

3 CSRと中小企業に関する欧州専門家グループの最終リポートを参照。

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ンペーパーに続いて、2002年と2006年にはそれぞれ通達が出されている。

 ♣ 2002年:  CSRに関する欧州委員会初の通達。この通達の要点には、欧州としてのCSRの定義(「企業が事業運営や利害関係者との関わり合いに社会的・環境的な配慮を自発的に取り込むという考え方」)、CSRに関する欧州マルチステークホルダー・フォーラムの原則、CSRと個々の欧州政策の関連性についての欧州委員会の意向が含まれている。

 ♣ 2002年10月: 欧州マルチステークホルダー・フォーラムの発足。

 ♣ 2003年:    EUは第4号会社法指令を改正、環境と従業員についての報告を企業に義務づけた。

 ♣ 2006年3月22日: 欧州委員会は、欧州議会、理事会、欧州経済社会評議会に対してCSRに関する通達 4 を出した。「成長と雇用のためのパートナーシップの実践:欧州を企業の社会的責任の模範的拠点に」と題された同通達は、CSRの重要性を力説したうえで、この分野におけるリーダーシップの発揮を産業界に要請する内容となっている。また、欧州委員会が利害関係者間の対話を重視しながら、自発的なコンセプトとしてのCSRの普及促進を引き続き進めていく方法について概説している。

 この通達は、関連のある欧州政策へのCSRの取り込み(開発・貿易が特に焦点)、CSRに関する欧州マルチステークホルダー・フォーラム、政府代表によるCSRに関するハイレベルグループ、CSR研究の支援などが主な柱となっている。同時に、主要企業と欧州委員会が結束した「企業の社会的責任に関する同盟(アライアンス)」の発足にもふれている。

 ♣ 2006年12月: 欧州委員会は、これまでのEUのCSR政策を評価する検討会に全ての関係者の参加を求めた。ただし、多くの主要NGOは同検討会に参加していない。

 ♣ 2007年3月13日: 欧州委員会通達に関する欧州議会主導の報告書(報告担当者:リチャード・ハウイット議員)の採択。

 ♣ 2007年6月26日: 国連開発計画 (UNDP)/EUによる新しい欧州のCSR会議:課題と解決策 5

 ♣ 2008年3月1日: CSR進捗状況レビューのための欧州同盟(アライアンス)20076

 景気低迷期を抜け出してから新たな顔ぶれで発進した2010〜2014年期の欧州委員会は、CSR

4 http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=COM:2006:0136:FIN:en:PDF5 http://www.acceleratingcsr.eu/en/news/view/?id=1206 http://www.ueapme.com/docs/various/2008/European_Alliance_for_CSR_Progress_Review_2007.pdf

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に関する議論の再活性化を狙っているものと予想される。2010年3月には「従業員と消費者の長期的な信頼の獲得に向け、企業の社会的責任を重要な柱として促進するため、EU戦略を見直す」との公約を掲げている。

 ♣ 2009年9月〜2010年3月: 環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する企業の情報開示方法についての一連のワークショップを実施 7 した。ワークショップでは、企業、投資家、労働組合、市民社会組織、消費者、メディア、公的機関など、利害関係者ごとの視点でESGの情報開示を検討した。

 ♣ 2010年3月: 欧州2020戦略で「人と責任を第一に考える新たな課題」の必要性を強調。CSRは新たに委員となったタヤーニ委員(産業・起業促進担当)とバルニエ委員(域内市場担当)が優先課題として重視しているといわれる。

 ♣ 2010年10月: 単一市場法案(SMA)に関する通達は、EU市場で消費者の信頼と安心感を深めることと、持続可能な経済成長を維持しながら高い競争力のある社会的市場経済を実現することに重点を置いている。通達は、今日の経済における企業の役割見直しをめざし、とりわけ環境・人権・持続可能な開発の分野での透明性向上、企業の機能の強化策に焦点を当てている。

 ♣ 2010年11月: CSRに関する欧州マルチステークホルダー・フォーラム総会を開催した。

 ♣ 2011年1月: 企業による非財務情報の開示に関する意見を公募した。域内市場・サービス総局は、企業の社会・環境面の情報開示と人権の尊重に関する既存政策を改善する方針の下、新たな施策や法案修正の提言も視野に入れ、協議に乗り出した。

4.欧州の今日的な課題におけるCSRの位置付け:

最近の出来事

♣ 2009年9月から2010年2月にかけて、欧州委員会の対内サービス部門は非公式ワークショップを実施、さまざまな利害関係者の視点に立ち、非財務情報の開示を検証した。

♣ 欧州委員会は、「企業の社会的責任に関する欧州同盟(アライアンス)」の傘下にある非財務業績評価研究所の活動を支援している。

♣ EU2020の課題である持続可能な成長・雇用は、企業の社会的責任の見直しを促進している。

♣ 2010年10月27日に採択された単一市場法案に関する通達は、今日の経済における企業の

7 http://ec.europa.eu/enterprise/policies/sustainable-business/corporate-social-responsibility/reporting-disclosure/swedish-presidency/ index_en.htm

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役割見直しをめざし、とりわけ環境・人権・持続可能な開発の分野での透明性向上、企業の機能の強化策に重点を置いている。

♣ 域内市場・サービス総局は、企業の社会・環境面の情報開示と人権の尊重に関する既存政策を改善する方針の下、新たな施策や法案修正の提言も視野に入れ、協議に乗り出した。 そして2010年11月22日に意見公募を実施した 8。

現在の主な課題

 ♣ ESG情報開示(2011年5月末の経済協力開発機構(OECD)ガイドラインの更新を含む)─ 欧州委員会にとっては、統合報告の促進に取り組むかどうかが、今後数カ月の重要

課題である。─ 欧州委員会は、金融機関や個々の専門家が連携して、CSR活動導入企業の新しい評

価方法を提示することを要望している。

 ♣ 企業と人権─ 企業・産業総局は、EU域外での人権尊重に関するガイドライン調査を近く公表する。

 ♣ 人権のグローバルな視点

今後の予定

♣ 持続可能な開発に関するハイレベル会合が2012年に予定されている。♣ 欧州委員会は、CSRに関する欧州の新たな通達が2011年夏の終わりごろに採択されるのに

伴い、新しい政策の導入を推進する意向を発表した。

♣ EUの「持続可能な開発戦略」(SDS)は2011年に見直しが予定されている。♣ 2010年11月〜2011年1月:2011年初めのCSRに関する新通達を踏まえ、欧州委員会は企

業による非財務情報の開示に関する意見公募の実施を決定した。

5.主な利害関係者:

 代表組織や利益団体は、CSRに関する欧州全体での議論に影響力や方向性を与えるために多大なエネルギーと時間を注いでいる。

 主に次のような利害関係者が「CSRに関するマルチステークホルダー・フォーラム」に参加している。

─ 欧州労働組合連合(ETUC)─ 専門職監督職員欧州協議会(EUROCADRES)─ 欧州産業連盟(BUSINESSEUROPE)

8 http://ec.europa.eu/yourvoice/ipm/forms/dispatch?form=NonFin&lang=en

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─ 欧州職人・中小企業連盟(UEAPME)─ 欧州商工会議所連合会(EUROCHAMBRES)─ CSRヨーロッパ─ 協同組合ヨーロッパ本部─ アムネスティ・インターナショナル─ 社会プラットフォーム─ 企業の正義のための欧州連合─ 欧州消費者団体(BEUC)─ 持続可能で責任ある欧州投資フォーラム(EUROSIF)─ 欧州貯蓄銀行グループ─ 欧州アカデミー・オブ・ビジネス・イン・ソサエティ(EABIS)

1.協同組合ヨーロッパ本部の立場:

 我々、協同組合ヨーロッパ本部は、協同組合は社会的責任を活動の基本原理と位置づけ、常に人を主役にしている組織であるとの基本的な認識のもとに、欧州経済社会評議会のCSRに関する次のような見解を支持する立場をとっている。

 「企業の社会的責任は(中略)協同組合にとって新しい概念ではない。経済的目的と社会的目的の両方を追求していることに加え、運営手続は個人と内部民主主義の原則に則っているため、協同組合は本質的にCSRを受け入れ、その促進に向けて大いに努力してきたのである。」9  

 協同組合は社会的責任と持続可能性を追求した事業形態であると、我々は考える。

 国際協同組合同盟(ICA)の定義によれば、協同組合とは「共同で所有し、民主的に管理する事業体を通じ、共通の経済的・社会的・文化的なニーズと願いを満たすために自発的に手を結んだ人々の自治的な組織である」。協同組合は、組合員が所有し、民主的に管理される事業体として、次のような独自の方法で社会的責任に取り組んでいる。 すなわち、

  民主的で参加型のガバナンス: 協同組合は地域の組合員が実質的に所有・管理している。組合員は方針策定や意思決定

9 欧州における協同組合促進の通達COM (2004) 18 final, 2005に関する欧州経済社会評議会の見解

第2部 欧州における協同組合の社会的責任

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に積極的に参加している。

  利潤よりも人を大事に: 協同組合は人々のニーズと実体経済を重視している。協同組合は、人を全ての事業の中心に置いている。協同組合法では、利潤の最大化ではなく組合員の経済的利益の促進が目標であると明確に定義されている。

  身近さと地域発展: 協同組合は、地元に根差した存在として、組合員を通じて地域社会と結ばれている。

  社会的結束と雇用: 協同組合は、雇用を創出・維持しており、欧州で有力な経済主体である。協同組合の中には、社会福祉事業を営む協同組合のほか、不利な条件にある労働者や社会から取り残された労働者の社会復帰を専門に手がける協同組合もある。

2.協同組合ヨーロッパ本部の会員組織による先進事例(過去2年間):

説明責任・情報開示・報告 協同組合は社会的責任の報告・情報開示に率先して取り組んでいる。社会・環境診断、認証(ISO14001、AFAQ1000NRなど)に力を入れ、持続可能な開発の評価が大きな目標となっている。

♣ カタルーニャ協同組合連合会(スペインの社会的経済団体連合会[CEPES]に加盟)は、CSR診断の促進ツール「RSE.COOP」を開発した。このツールで協同組合は、150種類のESG指標に基づいて自らの組織を評価し、CSR報告書用のデータを作成することができる。

♣ コープ・フランスは、6つの条件(ガバナンス、人材、組合員との関係、仕入れ先・下請け業者、市民社会、環境)に基づいて農業協同組合のサステナビリティを分析・評価できるマトリクス表と、管理のための7原則(管理、イノベーション、長期ビジョンなど)を作成した。

♣ CSR報告書の発行は2011年から義務づけられるが(フランスの環境法「Grenelle2」による)、クレディ・ミュチュエル(フランス)の地域銀行など、協同組合銀行グループは、すでに2005年から全国・地域のCSR報告書を公表している。ラボバンク(オランダ)やクレディ・アグリコル(フランス)は、地域ごとのCSR担当者のネットワークを築いている。

雇用と社会関係 

♣  協同組合では、同一労働同一賃金、管理職の公平な男女バランス、多様性の推進、障害のある従業員や最年少者・高齢者の差別撤廃プログラムなどの取り組みを進めている。

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─ 理事の40〜48%を女性が占めており、ポーランドの協同組合銀行の場合、理事の60%が女性である。

─ フランス国民銀行グループ内に設置された特別タスクフォースの尽力の結果、障害のある従業員数は、2008年に39%増となり、協力組織数は853となった。

─ 創設以来、生活協同組合は労働運動と緊密な関係の下、長期・終身雇用契約の優先など、優れた労働条件を整えてきた。

─ 協同組合は従業員と組合員の研修に力を入れている。

♣ 納入業者との関係:生活協同組合は、フェアトレード商品や健全な調達の推進に力を注いでいる。特に、納入業者も対象にした行動規範の制定が進んでいる。協同組合は納入業者との安定した協力関係を志向し、能力形成の促進、地元・地域商品の販売促進、地元小売業者の特別支援にも取り組んでいる。

気候変動、エネルギー、カーボンフットプリント(注)カーボンフットプリント:製造から廃棄まで商品のライフサイクル全般にわたって排出される温室効果ガスを

CO2排出量に換算して表したもの。「炭素の足跡」と訳されている。

♣ 気候の脅威に対する行動計画「Action for Climate Threat」(ACT):2009年に開始されたプログラムで、協同組合の環境対策や欧州の枠組み内での共同実施を奨励するものである。

─ 協同組合自体のエネルギー消費とCO2排出量を削減する。─ 組合員・職員に対して自らのエネルギー消費とCO2排出量削減の周知、啓発、奨励

を行う。─ 特にコペンハーゲン気候変動会議に向けて、ロビー活動を通じて政治家にしかるべ

き行動を働きかける。

 こうした活動の基盤となるのが、ベストプラクティスやコミュニケーションの事例である。分野を超えた知識共有を後押しし、分野横断型の共同プロジェクト体制の促進をめざしている。

 同様に、欧州の生活協同組合(欧州全体で19カ国、3,200組合、消費者2,500万人を網羅するEUROCOOPが統括)は先ごろ、EU気候変動総局の新設を歓迎する新しい重要方針を発表し、気候変動対策を政治の重要課題とするよう求めた(EU2020排出削減目標の30%への引き上げ、再生可能エネルギーの促進を目的とした投資優遇策の導入など)。

♣ 再生可能エネルギー:協同組合は、CO2排出量とエネルギー消費の削減、カーボンフリーエネルギーの生産・使用の拡大に向け、再生可能エネルギーの開発に貢献している。

─ サンフランシスコ・デ・アシス−エネコープ・グループ(スペイン)は、欧州最大級

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の太陽光発電による果樹園を開設、900万kWh以上を発電し、年間8,500トンのCO2排出を回避している。

─ プラート・アッロ・ステルヴィオ(イタリア)では、地元の協同組合がバイオマス発電、水力発電、太陽光発電、風力発電を組み合わせた地域配電網を運営し、人口約3,000人の町の電力をほぼ賄っている。

─ エコパワー(ベルギー)では、フランダース地方の2万5,000世帯に100%のグリーンエネルギーを供給している。

─ バイオエネルギー村ユーンデ(ドイツ)は、法的には協同組合の形態をとり、農業からのバイオ原料を電力や暖房に変えている。

♣ カーボンフットプリントの削減:─ 生活協同組合のコープ・デンマークは、運営する全店舗のカーボンフットプリントを

算出し2012年に、エネルギー消費量を10%削減する計画を順調に進めている。─ アルファルファ農業協同組合(フランス)は、脱水プロセス(石炭の代用としてバイ

オマスを使用)に重点を置き、EU排出量取引制度の下で炭素クレジットの販売を実現している。

─ サンフォード住宅協同組合(英国)は、住宅20軒のCO2排出量を5年間で60%削減した。

♣ 鉄道輸送の利用:一部の産業協同組合が進めている。例えば、ゲサンという協同組合では、毎日トラック53台分の輸送を鉄道に転換している。

生産・消費における環境と健康 欧州の生活協同組合は、特に環境保全や責任ある生産・消費の促進に関わっている。

♣ 生活協同組合による遺伝子組み換え原料不使用ラベルの作成: 日々の買い物で消費者に適切な選択肢を提供する必要があることから、一部の生活協同組合(エロスキやコープ・イタリア)は独自ブランドから遺伝子組み換え原料を完全に排除する道を選び、納入業者に遺伝子組み換え不使用の認定を受けた飼料の使用と明確なラベル表示を指示している。

♣ 廃棄物の再処理: フランスの農業協同組合が実施している「エコレ」プログラムの主な柱である。同プログラムは生乳生産者による環境対策や収支の改善、能力強化の支援を目的としている。

♣ 違法伐採との闘い: 協同組合が使用・販売している木材関連製品に持続可能な森林の木材が使用されるよう、さまざまな対策が講じられている。従業員や組合員に向けた、独立した認証(FSC、PEFC)、研修、情報発信の実施、NGOとの連携、植林で伐採に対抗するためのカーボンオフセットの導入がある。

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♣ 持続可能な漁業の促進: 世界自然保護基金(WWF)などの国際機関と協力している。

♣ 持続可能な消費の促進: 2009年10月、欧州の生活協同組合は「欧州小売業環境行動」(REAP)に参加し、欧州の商業分野で持続可能な消費の旗振り役となっている。その一例として「環境行動のポイント」の一覧表を作成、企業各社が順守を表明している。

開発

♣ アグロエコロジー、フェアトレード、有機栽培: 国境なき協同組合インターナショナル(CSF)は、農業事業体の発展・成長・統合を促進して集合体として組織し、民主的な参加、製品品質の保持に加えて、国際フェアトレードラベル機構(FLO)、スローフード、国際有機農業運動連盟(Ifoam)、アグロエコロジーが策定したガイドラインに沿った有機栽培を取り入れている。

♣ ハイチの協同組合に対する援助: 協同組合は、2010年1月12日に壊滅的な震災に見舞われたハイチの協同組合に対して、緊急救援物資を提供し、復興支援を行った(内外で募金活動を展開)。

3.協同組合とCSR:2011年以降の展望:

 協同組合は、当然のことながら、民主主義、組合員(ならびに市民社会組織、公的機関、その他の利害関係者)との継続的な対話、地域の雇用・経済の発展、実体経済重視、経済安定化など、事業モデルにおいて固有の目的と価値観を追求する。

 CSRにおける次の方針や活動を継続的に強化・拡充する。─ 持続可能な農業の強化─ 再生可能エネルギーの発電・送電体制の整備─ 協同組合による社会的責任の方針・慣行について、専用ツール(協同組合用指標のRSE.

coop)や汎用ツール(ISO26000、GRIなど)を用いた報告書作成の奨励─ 社会・環境問題に対する意識啓発、ベストプラクティス(先進事例)の共有・奨励、協同組

合での女性の管理職昇進の促進など

 協同組合のビジネスモデルは、独特の社会的・経済的慣行や組合員に密着した活動、金融市場への低い依存度のおかげで、経済・金融危機の影響があったにせよ、他の多くの事業形態に比べて回復力の強さを発揮した。

 この協同組合モデルの安定性は、経済・金融危機時の協同組合銀行による金融安定化への貢献

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とともに、欧州の各種機関に広く認知されており 10 、とりわけ危機の際の経済・金融安定化への貢献、雇用の創出と維持は評価が高い。協同組合は今後も危機に持ちこたえることができるだろう。

 2012年は国連が定めた「国際協同組合年」であり、協同組合にとって、特に欧州全体でCSR関連のベストプラクティスや方針を共有・分析する絶好の機会となる。

4.欧州でのCSRの普及促進:欧州委員会と加盟国への勧告

 我々、協同組合ヨーロッパ本部は、欧州におけるCSRの普及促進について、欧州委員会および加盟国政府に対し、次のような勧告を行っている。

─ 事業運営形態の多様性を考慮し、事業規模、特性、CSR問題への取り組み方に関して、多国籍企業と中小企業、株式会社と協同組合を区別すべきである。

─ CSRを価値観、現状、中核事業の一部とする事業モデルを採用し、EU2020戦略目標(人と雇用の重視、経済発展、社会への参画、民主的な参加型ガバナンス)に貢献する協同組合に一層注目すべきである。協同組合は本質的にCSRに関心がある。持続可能な経済の推進のほか、差別との継続的な闘いやグリーン経済への移行など、人と責任を第一に考え欧州全体でCSRの普及促進に取り組む覚悟である。

─ すべての利害関係者で討議し、報告を義務化したデンマークやオランダ、ノルウェー、フランスのように透明性向上と非財務報告を奨励すべきである。

─ 2004年改正公共調達指令を加盟国の法令に反映させ、社会・環境条項を契約に盛り込んだ社会的責任のある事業を志向すべきである。

─ CSRのベストプラクティスの共有を継続し、さらに、CSR政策の効果の分析も奨励すべきである。

─ すべての共同体政策にCSRが反映されるよう横断的なアプローチを支援し、「分断化解消」プロセスにおける欧州委員会各総局の協力を促すことが大切である。

─ 欧州マルチステークホルダー・フォーラムでのCSRに関する対話強化を図るべきである。

10 国際労働機関(ILO)の見解:「協同組合という事業モデルが危機を乗り越えたことにとどまらず、危機に持ちこたえられる持続可能な事業形態であり、事業運営の基盤である地域の暮らしを維持していることの歴史的根拠や現在の経験的な根拠」。ILOは、協同組合が「現在の危機に対処し、将来の危機を回避する手段」であると捉えている。 欧州委員会のバローゾ委員長の見解:「協同組合の価値観と原則を忠実に守ってきた協同組合事業と、組合員の出資金に依拠し、地元の人々によって管理される協同組合銀行は、概して危機に対して非常に高い抵抗力を発揮している。」