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玉川峡(紀伊丹生川)を守る会会報

玉川峡 第70号 2006年1月20 日

代 表 石神 正浩

TEL・FAX 0736-38-2601

事務局 木ノ本 豊

TEL・FAX 0736-36-0660

http://www5a.biglobe.ne.jp/∼kiinyu/

新年あけましておめでとうございます。

昨年は、雨が降ったにもかかわらず「アユまつり」が50名の大盛況で、春

の「里山自然観察会」、5月のクリーン作戦、竹門康弘先生の指導による「水

生昆虫調査会」、さえもんでの「ホタル鑑賞会」などが多くの人を集めて行わ

れました。「古道の調査と整備」は、ねばり強い会員により少しずつ進んでい

ます。また、地滑りを起こした大滝ダムが使用不可能となった場合「どうすれ

ば、紀ノ川流域の住民の安全が保たれるか」を明らかにするため、国土研の方々

が、再度、2日間にわたり、紀ノ川の土手の調査をされました。いつまでもわ

れわれの安全を考え続けていただいていることはほんとうに有難い事です。秋

の総会では、里山を駆け巡って、住民の健康を守っておられる地元出身の開業

医、田中治先生から「旧恋野村よもやまばなし」を伺いました。昔の玉川峡の

話しを伺い、多くの貴重な資料もいただきました。11月に入ってからですが、

富貴から紀ノ川までの玉川峡水質調査を行いました。汚い物が支流の谷間に捨

てられている所では調査結果にも「汚れている」と出ました。汚染源を取り除

き、他府県からの汚物の持ち込みを規制すれば、もっときれいな玉川峡になる

可能性があると思います。

昨年同様、今年も玉川峡をきれいにし、その自然を楽しみたいと思います。

今年は水郷水都全国会議が大阪で開催される予定です。「洪水をダムだけで

防ごうという考えは見直すべきだ」という淀川水系流域委員会の答申を国土交

通省に素直に取り入れてもらい、大阪府の計画している安威川、槙尾川ダム、

兵庫県の計画している武庫川ダムについても、もう一度、白紙に戻し、これま

でのしがらみを断ち切って考え直すきっかけとなればよいと思っています。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

2006年新春

玉川峡(紀伊丹生川)を守る会 代表 石神正浩

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2005.11.26 第8回総会と記念イベント報告

皆様とともに、2006年度も玉川峡を舞台に楽しい活動をくりひろげたい

と思いますので、よろしくお願いいたします。

以下は、昨年11月26日に開催された当会にとっての「第8回総会と記念

イベント」の報告です。当日のメインの講演は、田中治氏がご自分の足で小ま

めな調査の末にまとめられた冊子「玉川峡の歴史と伝承に因んで」が配布され、

それをもとに楽しい熱弁がくりひろげられました。また、予定にはなかったこ

とでしたが、11月23日に行われた「玉川峡全域の水質調査」の報告を石川純

二氏にやっていただきました(これらはあとに掲載しました)。報告者の皆様あ

りがとうございました。今年も会場を提供していただいた「藪椿」のオーナーの

新田綾子氏に感謝いたします。

今回のテーマ 「玉川峡の歴史と伝承」

<とき>

11月26日(土)終日

<ところ>

午前中は「豆街道」周辺を散策、

午後はギャラリー「藪椿」別館にて

<午前の部>

★第1部

「秋の玉川峡散策」 -豆街道を歩く-

講師 玉川一紀氏

<午後の部>

★第2部

報告① 「玉川峡全域の水質調査」 石川純ニ氏

報告② 「紀の川の治水調査に同行して」 木ノ本たかみ氏

講演 「玉川峡の歴史と伝承に因んで」

-元恋野村のよもやま話-

講師 田中治氏 (医師、橋本市史編纂委員)

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★第3部 2006年度第8回定期総会報告

(以下はすべて審議の上、承認されました)

開会あいさつ 議長選出 議案 ① 2005年度活動報告(月別活動を掲載)

② 2005年度決算報告(別紙掲載)

③ 2006年度役員改選

新役員(留任含む)各あいうえお順

代 表 石神正浩

副 代表 木ノ本たかみ 時田 香 森下 健

事務局長 木ノ本豊

会 計 名迫その佳

会計監査 宇佐美秀昭 保脇正義

世話人 井奥恵三 請河佐良子 小川和子

太田勝之 かわさきゆたか 玉川一紀

野口知子 野中雅弘 福井健次

松村勝弘 村上庸晃 山本 實

④ 2006度活動方針

1.玉川峡を守るため、今までの運動を踏まえながら地

元漁協や地域住民又行政にも呼びかけてともに活

動をすすめる。

ⅰ 玉川漁協や地元住民との協力と信頼関係を一

層強める。

ⅱ 独自にすすめてきた里山作業、動植物調査、

水生昆虫調査、古道の調査と整備、水質調査、魚

類調査などを楽しいキャンペーン活動とかねて地

道に今後ともすすめる。

2.ダムに頼らない紀の川水系の治水対策を自然環境

保全の立場から考える。

ⅰ ダムや堰は、川の流れをせき止めとめて周囲の

自然や生態系を破壊する有害なものであり、税金

を使ってそのようなムダな構築物を造らせない

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ように、紀の川流域委員会や行政および市民に対

して働きかける。

ⅱ 大滝ダム建設が原因の地すべり問題に引き続

き関心をもち、国による大滝ダムの安易な運用を

強く戒める。

⑤ 2006年度予算(別紙掲載)

⑥ 総会宣言

閉会あいさつ

2005総会宣言

ダム計画が止って 三年目の玉川峡

水ますます清く 緑ますます深まってゆく

子供たちの にぎやかな歓声

小鳥のさえずり 魚たちの群れ

絶えることのない 豊かな流れ

日の光さんさんと輝く 玉川峡の未来を想う

道路拡張で コンクリートの溝のような

川にしないように

植林した杉や桧の放置で真っ暗な森を

「緑のダム」に変えていこう

がけ崩れの危険のないように

広葉樹の森をふやそう

地域の人と心をあわせ 守る玉川峡に

“守る会”の役割は これからも続く

2005年11月26日 総会の日に

玉川峡を守る会一同

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2005年度「玉川峡(紀伊丹生川)を守る会」月別活動記録

年・月 主な活動(ABDE) 各チームの活動(C) 事務局の活動

04.

11月

(13)05年度「第7回総会と

記念イベント」

(26~28)「水郷水都浜松大

会」にパネル参加

(28)「里山保全作業」 (5)会報「玉川峡」

第 63号発行

12月 (19)「里山保全作業」

05.

1月

(15)世話人会兼新年会

活動の点検はじめる

(30)「里山保全作業」

(20)会報「玉川峡」

第 64号発行

2月 (12)世話人会 K 調査当面

中止

(18)「玉川峡の保全を願う」

意見書を県へ HPから提出

(27)「里山保全作業」

3月

(27)世話人会

(27)「里山保全作業」

(10)会報「玉川峡」

第 65号発行

4月 (9)「脱ダムネット 3周年報

告会」

(10)「里山一斉調査」

(16)世話人会

(3)「アマゴつり講習会」

(24)「水生昆虫調査会」

(29)「里山保全作業」

5月 (13)伊都事務所と道路工事

について会見、要望書提出

(29)「玉川峡クリーン作戦」

漁協と共催

(22)「里山保全作業」 (10)会報「玉川峡」

第 66号発行

6月 (11)世話人会

(11 夜)「ホタル鑑賞会」

(11~12)「水郷水都全国会

議」

(19)「アユつり講習会」

(26)「里山保全作業」

7月 (10)世話人会

(21)「淀川流域委員会」傍

(10)「古道整備」

(24)「里山保全作業」

(10)会報「玉川峡」

第 67号発行

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8月 (13~14)有志による「由良

川めぐり」

(21)「アユまつり」

(28)「里山保全作業」

小屋作り

9月

(10)世話人会 (3)「里山保全作業」

(25)「里山保全作業」

(10)会報「玉川峡」

第 68号発行

10月

(9~10)国土研「紀の川治水

調査」

(14)RP「ダム撤去シンポ」

(16)世話人会

(23)「里山保全作業」

小屋完成

11月 (20)世話人会 総会打合せ

(26)「06年度第 8回総会と

記念イベント」

藪椿を中心に

(23)「水質調査」

(10)会報「玉川峡」

第 69号発行

<雨の中でにぎわう「アユまつり」 <総会会場の藪椿別館>

2005.8.21>

<今後の活動予定>

★1月22日(日)、2月26日(日) 「里山保全作業」

朝9時半 橋本駅集合 新年最初の里山作業です。

今年こそは、ぜひあなたも参加ください。

連絡先 野中雅弘(0736-54-3188)

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★3月26日(日)「玉川峡アマゴ釣り大会」

朝9時半 南海「学文路」駅前集合 送迎あり 10時スタート

玉川漁協主催(参加希望者は漁協事務所 0736-54-4640 ま

で)

釣り道具、エサ(主としてイクラ)、雨具、弁当などは各自持参

初心者歓迎 女性・子供1人 500円

高校生以上の男子 1人 1000円

★ 4月1日(日) 「脱ダムネット4周年記念集会」

詳細は次号でお知らせします。

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「玉川峡の歴史と伝承」より(一部転載) 田中 治氏 2 玉川やどり温泉と、その近傍(北宿、南宿)

泉質は温泉法による含重曹塩泉で鉱水1㎏中に陽イオン 575 ㎎、陰イオン

985 ㎎含む。

適応症はリウマチ性疾患、運動器障害、女性の慢性炎症、慢性湿疹、慢性消

化器疾患、慢性肝-胆道疾肝、糖尿病、通風、尿酸素質、慢性便秘、その他。

北宿集落への道は温泉を過ぎると、いよいよ急峻となり、しばらく登ると高

地の里人の智慧で果樹園のモノレールを改良して写真(注:写真なし)の通り

の乗物を利用している。北宿特製のケーブルカーである。

北宿の人家は、昭和46年頃は7軒あったが現在3軒である。

モノレール終着点の民家を右手に見つつ登って行くと「熊に注意」の札があ

る。

更に登ると七霞山への分岐点があり、此処から右へ更に登ると元民家跡の石

垣と炭焼窯跡らしき処があり更に登ると人家跡は無く熊に出会うと大変と、も

と来た道を降ってモノレール終着点の民家から右に曲がって進むと崩れかけた

民家がある。夕日が山陰に沈みかかったので急ぎ帰途についた。

南宿、北宿はもと摩尼郷に属し高野領であった。明治4年廃藩置県で中道と

共に五條県から堺県を経て和歌山県になったと云う。

宿は「矢取」から転じたと云う。昔、宿の里人が富貴の八幡宮の神前で弓初

を行ったとき矢取をなすを例としたことに因んでヤトリ→宿になったと伝えら

れている。

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3 宿のルーツを伝承する為か次の行事が最近まで行われていた(北宿、南宿)

以前、温泉の下の広場で1月5日に数え7才の男子はカワラケ(素焼の陶器)

に御神酒を注いでもらって頂き、その後、祇園の神の方に向かって弓の矢を放

つ行事を行っていたが少子化に伴って現在は行っていない。

市内では珍しい大切な行事であるから是非、何時か又復活して保全に努めて

欲しいと願ってやまない。

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平成 17年 玉川峡(紀伊丹生川)水質調査報告 報告 石川純二

1. はじめに

平成 16年度より、水質調査チームを発足し、玉川峡の水質調査を実施した。

調査の目的は「玉川峡を守る会」として、水質を把握しておく必要性を感じた

ことと、もう一つは、源流部に富貴地区があり、生活排水や養豚場があること。

もう一つは、狼頭谷川(丹生の滝上流部)の採石跡に悪臭のする廃棄物が大量

に搬入されたことである。平成 16年度は、富貴地区と丹生の滝周辺を重点に調

査を実施したが、平成 17年度は、これら2箇所は測定ポイントを絞り込み、さ

らに、全水系を網羅して、富貴から紀ノ川に合流するまでの広いスパンで、主

要な合流点毎に測定した。

今後も、同ポイントで経年的に水質の変化を把握していきたい。

2. 実施日・時間

平成 17年 11月 23日(水) 作業時間 約8時間

3. 要員

計 5名 (石神正浩、保脇正義、木ノ本豊、木ノ本たかみ、石川純二)

4. 費用 パックテスト(商品名) 11種*(各1パック)計 15561円(消

費税含む)(共立理化学研究所製の比色法による簡易な水質測定方法)

*:COD用は、高濃度・低濃度用の2種

5. 測定項目

単位①:- ②~⑩:mg/リットル

項 目 備考

① PH 水素イオン濃度(Power of Hydrogen)

② COD 科学的酸素要求量(Chemical Oxigen Demand)

③ NH4

④ NO2

アンモニア →③~⑥は、生活排水・堆肥等が流入する

亜硝酸 と大きな値を示す。富栄養化につながる。

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⑤ NO3

⑥ PO4

硝酸

燐酸

⑦ Fe

⑧ Zn

⑨ Cu

亜鉛 → 大量に含まれると人体に悪影響

⑩ 全硬度 硬水、軟水の目安 10~100は軟水、100~ 硬水

蒸留水は0

【補足】 ① PH:7.0が中性、7以下は酸性、7以上はアルカリ性 ② COD:有機物をCO2(炭酸ガス)とH2O(水)に分解する為に必要となるO2(酸素)の量。生活排水や肥料等が混入すると大きな値となる。天ぷら油、牛乳等は汚染がひどい。

6. 測定ポイント

(図 省略)

7. 測定結果要約

1)測定結果に影響する気温、水温、水量について

平成16年度より測定実施時期が遅くなった為、水温は低く、水位もかな

り減水していた。

H16年 H17年

気 温 19.5 ~ 21.8℃ 15.5 ~ 18.3℃

水 温 12.0 ~ 16.0℃ 6.1 ~ 9.0℃

水 位 1m28cm 1m

紀ノ川では水温10.9℃。水位で28cmの差は大きい。

2)平成16年度と比較できる①④⑤の測定ポイントについて

全体的にみて、顕著な変化は認められなかった。

①④でCODが減少、①でNO3(硝酸)が減少、PO4がやや増加してい

るが長期的なトレンドで確認しないとバラツキの範囲とも考えられる。

3)各測定ポイントでの比較

①PHは 7.3~7.8(概ね 7.5)で、弱アルカリ性を示し、問題はない。

②CODはポイント③(清川)で、1.0mg/㍑で「きれいな水」の領域にあ

る。

③NH4(アンモニア)は、0.2mg/㍑未満~0.2mg/㍑で「きれいな水~汚

染がある」の領域にある。

④ NO2(亜硝酸)は、②~⑧のポイントで 0.02mg/㍑で、「きれいな水」

の領域に近いが、①(富貴)、⑨(紀ノ川)で 0.02mg/㍑以上の値を示し、

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「少し汚染がある」の領域にある。

⑤ NO3(硝酸)は、1.0~4.0mg/㍑の範囲であるが、⑦不動谷川⑨紀ノ川

にて 3.0mg/㍑以上の値を示した。ただし、この程度であれば、汚染は「少

ない」範囲である。

⑥ PO4(燐酸)は、概ね 0.05未満~0.05mg/㍑で、「きれいな水」の領域

であるが、①(富貴)⑨(紀ノ川)でやや高い値を示した。これらの値

は「少し汚染がある」領域である。

⑦ 全硬度は 15~50mg/㍑の範囲で、水道法に定める 10以上 100mg/㍑以下

の範囲である。

⑧ Fe(鉄)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)の金属類は、①~⑨までのどのポイント

においても同程度の値を示し、いずれも水道の水質基準を十分満足する

少ない結果であった。

以上の結果を、下表にまとめた。

PH 酸性←――――――― 中性 ――――――→ アルカリ性

4 5 6 7 ←→ 8 9 10

COD

0 2~5 5~10 10~ きれいな水 汚染がある 汚染が多い 汚れた水

←-→ ③

NH4

0.2未満 0.2~0.5 0.5~5 5~ きれいな水 汚染がある 汚染が多い 汚れた水

←--→ ①②③

NO2

0 0.02~0.1 0.1~0.2 0.2~0.5 0.5~ きれいな水 少し汚染がある 汚染がある 汚染が多い 汚れた水

←--→ ①⑨

NO3

1以下 2~5 5~10 20~ きれいな水 少ない ふつう 多い

←---→ ⑦⑨

PO4

~0.1 0.1~0.5 0.5~ きれいな水 少し汚染がある 汚染がある

←----→ ①⑨

←-→ の印は、測定値の最小~最大の範囲を示す

①②③等の記載は値の高いポイントを示す

水道水基準

Fe:0.3mg/㍑以下、Zn:1.0mg/㍑以下、Cu:1.0mg/㍑以下

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写真(省略) ・複数のデジタル式温度計で水温の測定

・パックテストで CODの調査中

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秋季里山観察会の報告 05.11.26

玉川一紀 秋季里山観察会は、玉川峡を守る会総会が開始される前の午前中に、4年

ぶりに「豆街道」において実施しました。 晩秋の穏やかに晴れ渡る絶好の観察日和でした。「豆街道」における里山

観察会は、2001 年の集中豪雨で、何カ所かで山ぬけ地滑り崩壊が発生し、ルートが寸断されたため、観察ルートから除外していました。今回は、久し

ぶりに「豆街道」を、行けるところまで行ってみようということで実施しま

した。このルートを選択したもう一つの理由は、本会の里山管理班が手作り

で木造作業小屋を建設したその小屋を見学することも兼ねていました。丁度、

晩秋の紅葉も終わりつつあって、新鮮な落ち葉が地面を被っている、冬鳥も

そろそろ渡来する季節でありました。いつもどおり橋本駅に集合し、玉川峡

に向かう途中のため池に、参加された会員の井奥氏に、数日前に珍しいカモ

類がやってきていたと案内して頂いたが、ため池の水が抜かれかなり干上が

っていたためか、残念ながらカモ類の姿は観察されませんでした。さらに玉

川峡に向かい、ダム提体建設が予定されていた犬戻に着くと、まず玉川の澄

み渡った清流を確認してほっと一安心。さっそく対岸の斜面の植生を観察し

ました。全体にV字谷の急峻な地形ですが、微地形による植生分布の違いを

観察しました。斜面の浅い谷沿いの幾分緩やかな場所には、スギ・ヒノキが

徹底的に植林されていますが、とても森林施業が困難だと思われるさらに急

峻な浅い谷に沿ってケヤキ、イヌシデ、アカシデなどが優占する落葉広葉樹

林が、また、枝尾根状の地形の急斜面には、晩秋の日差しに光り輝く常緑広

葉樹のアラカシが優占する照葉樹林が分布していました。おそらくアラカシ

林の林内には岩が露出して植林に適しておらず、過去にも里山林としての伐

採利用が僅かしか無く、よってアラカシが多い照葉樹林が形成されたものと

思われます。常緑樹の深い緑と落葉樹の紅葉の名残のコントラストがとても

鮮やかでした。 北又橋を渡り、いよいよ「豆街道」コースの出発点に到着です。北又川を

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渡る橋のたもとに、ケケンポナシという落葉樹が生えています。果実は果柄

の一部が肥大して膨れ、その先に丸い果実が着いているという不思議な形を

しており、果実が熟して果柄ごと地面に沢山落ちていました。果実は丸いの

ですが、その果柄の一部が肥大して膨れ、この肥大した果柄の部分は柔らか

く、囓るととても甘く皆で試食してみました。「豆街道」に入ると竹林にな

っています。竹林では竹の節の輪を見て、輪の一重がモウソウチク、二重が

マダケかハチクと、見分け方を観察しました。道沿いではショウジョウバカ

マの仲間(シロバナショウジョウバカマ?)、サンショウソウ、カンスゲな

ど林内の湿った場所に生育する植物が観察できました。当地に多いナンテン

の実の赤も鮮やかでした。さらに進むと竹林からスギ・ヒノキ植林へと変化

し、ここに里山管理班の作業小屋が建っていました。当日の観察会は、この

小屋を見せて頂くのも目的でした。小屋は畳3畳弱くらいの広さの木造で、

高さも人が立っても十分頭上に余裕があり、屋根と壁は、半透明の波板が貼

ってあり小屋の中は明るく快適でした。作業小屋周辺は、里山管理班によっ

て倒木や枯損木竹などがきれいに処理されて、斜面の上下移動を容易にする

作業用の道も整備されています。里山管理、ありがとうございます。 4年ぶりに当地を訪れて気づいたことは、植林内のシラカシ、アラカシ、

ウラジロガシ、コジイといった常緑広葉樹の実生がずいぶん生長し、これら

が目立つようになったことです。確実に照葉樹林に向かって植生遷移が進み

つつあることを実感させられました。玉川峡でのコジイの分布はなぜかこの

辺りだけであるのが不思議です。これらよく似ているカシ類やシイ類の違い

を観察しました。しかし、一方では、周囲に生育し美しい花を咲かせる、過

去の長年の薪炭採取などの森林の利用によって落葉広葉樹林二次林に多い

ミツバツツジ類やユリ類は、このままでは常緑広葉樹に被われてしまい日照

不足で消滅しないかと気になります。その先には「豆街道」の難所の岩崖地

があり、同様な岩崖地が玉川峡の峡谷沿いに連続して存在していて、一部は

四十八石の一つにもなっています。この切り立った岩壁には、比較的日照に

恵まれ乾燥しやすい条件ですが、シダ類やコケ類がびっしりと着生している

特殊な植物の生育環境が形成され、V字谷峡谷の空中湿度の高さを物語って

います。玉川峡の渓流畔のサツキ、ユキヤナギなどの特殊な植物が生育する

環境と共に、このような切り立った岩崖地の植物の生育環境は着生植物が豊

富なことで、この峡谷の自然環境の特殊性や貴重度を高めていて、玉川峡ら

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しい守るべき最重要な自然環境と言えます。ほとんどの紅葉は見頃を過ぎて

いる中、会員の野口さんが会報にその特長を詳しく紹介していただいたタカ

ノツメの黄葉が、今、鮮やかに彩りを添えていました。石神先生が「タカノ

ツメは、黄葉が他の種より遅いことでよく覚えている」とおっしゃっておら

れたように、黄葉は11月下旬が見頃でした。驚いたことに、人が近づけそ

うもないこの岩崖地の真ん中あたりに、玉川と平行にトンネルが掘られてい

ることです。野中さんが急な崖地を下り、岩崖地の裏側からトンネルをくぐ

られ、岩崖地の真ん中辺りから上半身を出して手を振って頂きました。昔、

水力発電用の用水路がこのトンネルを通っていて、用水路を上流で取水した

水が流れ、下流の発電所に送られていたそうです。コンクリートの残骸など

見られないことから、朽ち果てる板などを使った木製の用水路が作られてい

たと想像されます。こんな険しい場所に、よくぞこのような施設を設けたこ

とかと、玉川峡で生活していた人たちのご苦労が忍ばれます。久しぶりの「豆

街道」の観察は、どれもこれも新鮮なものに映り、あっという間に時間が経

過し、出発点から1kmも進まない内に、午後からの総会に間に合うために

は戻らざるを得なくなって、もっと先へ行きたいという気持ちを抑え、帰途

につきました。

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2005 年度 決算報告

玉川峡(紀伊丹生川)を守る会 2005 年 11 月 26 日

収入の部

予算案 詳細

前年度繰越金 280,063 280,063

会費 180,000 168,000 2005 年度会費納入者 83 名

カンパ 300,000 227,562 自動カンパ 144,000 円

その他 83,562 円

売上 10,000 1,000 玉川峡マップ

利息 0 7

返還金 0 14,566 水郷水都パネル代返還金等

収入の部 合計 770,063 691,198

支出の部

予算案 詳細

活動費 200,000 152,361 本会の活動費 142,291 円

他会への会費 10,070 円

事務用品等消耗品 200,000 188,333 印刷機リース代 180,000 円

その他 8,333 円

通信/交通費 170,000 102,550 会報郵送料 74,700 円

その他郵送料 5,850 円

交通費 22,000 円

保険料 18,200 18,200 里山保全作業、観察会等の保険料

自動カンパ手数料 3,300 2,850

次年度繰越金 178,563 226,904

支出の部 合計 770,063 691,198

差引残高 (収入-支出) 0 以上の通り相違ありません。 会計 名迫 その佳 印

上記 2005 年度の決算報告の提出を受け、2005 年 11 月 20 日監査の結果、適正

に処理されていることを認めます。

会計監査 山本 實 印

保脇 正義 印