感染症とは ウイルスと細菌(バクテリア)...1 感染症とは...

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1 感染症とは ウイルス、細菌などの病原体が人の体に侵入し、 さまざまな症状を引きおこす病気の総称。 感染症の原因となるウイルスや細菌を病原体いう。 わが国では、感染症のうち、人から人へ感染す るものを、とくに伝染病と呼んでいる。 近年、外国から現地で流行している感染症を持 ち帰ることが増えている。これを輸入感染症とい う。 ウイルスと細菌(バクテリア) 上昇することが多い 低下あるいは正常が多い 白血球数 持続的に悪化をたどること がある 一過性のものが多いが 慢性となるものもある 効果あり 効果なし 抗生物質 毒素をつくったり、細胞を溶 かすなど外側から作用する 細胞の中に入り込んで 内側から作用する 病気の おこしかた ウイルスの何十倍、何百倍 非常に小さい 大きさ 自分の力でする 他の細胞に入り込み、 宿主の力を借りる 細胞そのもの アミノ酸とタンパク質 細菌(バクテリア) ウイルス 感染症の種類(感染症法に基づく分類) 動物、飲食物等の物件を介に人に 感染し、国民の健康に影響を与える おそれがある感染症 (人から人への伝染はない) Q熱・エキノコックス症・つつが虫病・日本脳炎・ レジオネラ症・ブルセラ症等 4類感染症 感染力、罹患した場合の重篤性等に 基づく総合的な観点からみた危険性が、 高い感染症 急性灰白髄炎・結核・ジフテリア・ 重症急性呼吸器症候群 (SARS) 2類感染症 国が感染症発生動向調査を行い、 その結果等に基づいて必要な情報を 一般国民や医療関係者に提供・ 公開していくことによって、発生・拡大を 防止すべき感染症 インフルエンザ・風しん・麻しん・ 感染性胃腸炎・水痘・性器クラミジア・梅毒・ HIV等 5類感染症 感染力、罹患した場合の重篤性等に 基づく総合的な観点からみた危険性は、 高くないが、特定の職業への就業に よって感染症の集団発生を起こし得る 感染症 コレラ・細菌性赤痢・腸管出血性大腸菌感染症 (O157・O26・O111等)・腸チフス・パラチフス 3類感染症 感染力、罹患した場合の重篤性等に 基づく総合的な観点からみた危険性が、 極めて高い感染症 エボラ出血熱・クリミア、コンゴ出血熱・痘そう・ 南米出血熱・ペスト・マールブルグ病・ラッサ熱 1類感染症 感染症の種類 感染症類型 感染症の出現・流行の原因 国際交流の進展→海外から感染して帰国 病原体の付着した輸入食品 熱帯雨林の開発→新たな病原体と出会う 抗生物質の多量・不適切投与→薬剤耐性菌の出現 感染症に対する警戒感の薄れ→新たな流行 (予防接種率の低下など) 貧困 感染症問題の変化 新たな結核患者の一時的増加 157による腸管出血性大腸菌感染症の発生 インフルエンザの発生 薬剤耐性菌の出現 など 「われわれは、いまや地球的な規模で感染症に よる危機に瀕している。もはやどの国も安全で はない。」 こんにちの特徴 ●新興感染症の発生 かつて知られていなかった新しく認識された感染症で、局地的、 あるいは国際的に公衆衛生上問題となる感染症 エボラ出血熱(1976年),エイズ(1981年), 腸管出血性大腸菌感染症(1982年),C型肝炎(1989年), 重症急性呼吸器症候群:SARS (2003年) 新型インフルエンザ(2009年)など ●再興感染症の増加 既知の感染症で、すでに公衆衛生上の問題とならない程度まで患 者数が減少していた感染症のうち、再び流行し始め患者数が増加 したもの 結核,マラリアなど ●院内感染症の発生 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)など

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感染症とは

ウイルス、細菌などの病原体が人の体に侵入し、さまざまな症状を引きおこす病気の総称。

感染症の原因となるウイルスや細菌を病原体と

いう。

わが国では、感染症のうち、人から人へ感染するものを、とくに伝染病と呼んでいる。

近年、外国から現地で流行している感染症を持ち帰ることが増えている。これを輸入感染症という。

ウイルスと細菌(バクテリア)

上昇することが多い低下あるいは正常が多い白血球数

持続的に悪化をたどることがある

一過性のものが多いが

慢性となるものもある

病 気

効果あり効果なし抗生物質

毒素をつくったり、細胞を溶かすなど外側から作用する

細胞の中に入り込んで

内側から作用する

病気の

おこしかた

ウイルスの何十倍、何百倍非常に小さい大きさ

自分の力でする他の細胞に入り込み、

宿主の力を借りる

増 殖

細胞そのものアミノ酸とタンパク質構 造

細菌(バクテリア)ウイルス

感染症の種類(感染症法に基づく分類)

動物、飲食物等の物件を介に人に

感染し、国民の健康に影響を与える

おそれがある感染症

(人から人への伝染はない)

Q熱・エキノコックス症・つつが虫病・日本脳炎・レジオネラ症・ブルセラ症等

4類感染症

感染力、罹患した場合の重篤性等に

基づく総合的な観点からみた危険性が、高い感染症

急性灰白髄炎・結核・ジフテリア・

重症急性呼吸器症候群 (SARS)

2類感染症

国が感染症発生動向調査を行い、

その結果等に基づいて必要な情報を

一般国民や医療関係者に提供・

公開していくことによって、発生・拡大を防止すべき感染症

インフルエンザ・風しん・麻しん・

感染性胃腸炎・水痘・性器クラミジア・梅毒・

HIV等

5類感染症

感染力、罹患した場合の重篤性等に

基づく総合的な観点からみた危険性は、高くないが、特定の職業への就業によって感染症の集団発生を起こし得る感染症

コレラ・細菌性赤痢・腸管出血性大腸菌感染症(O157・O26・O111等)・腸チフス・パラチフス

3類感染症

感染力、罹患した場合の重篤性等に

基づく総合的な観点からみた危険性が、極めて高い感染症

エボラ出血熱・クリミア、コンゴ出血熱・痘そう・南米出血熱・ペスト・マールブルグ病・ラッサ熱

1類感染症

性 格感染症の種類感染症類型

感染症の出現・流行の原因

• 国際交流の進展→海外から感染して帰国病原体の付着した輸入食品

• 熱帯雨林の開発→新たな病原体と出会う• 抗生物質の多量・不適切投与→薬剤耐性菌の出現• 感染症に対する警戒感の薄れ→新たな流行

(予防接種率の低下など)• 貧困

感染症問題の変化

• 新たな結核患者の一時的増加

• O157による腸管出血性大腸菌感染症の発生

• インフルエンザの発生

• 薬剤耐性菌の出現 など

「われわれは、いまや地球的な規模で感染症による危機に瀕している。もはやどの国も安全ではない。」

こんにちの特徴●新興感染症の発生かつて知られていなかった新しく認識された感染症で、局地的、

あるいは国際的に公衆衛生上問題となる感染症

エボラ出血熱(1976年),エイズ(1981年),

腸管出血性大腸菌感染症(1982年),C型肝炎(1989年),

重症急性呼吸器症候群:SARS (2003年)

新型インフルエンザ(2009年)など

●再興感染症の増加

既知の感染症で、すでに公衆衛生上の問題とならない程度まで患

者数が減少していた感染症のうち、再び流行し始め患者数が増加

したもの

結核,マラリアなど

●院内感染症の発生

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)など

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感染症予防法

●感染症をめぐる状況の変化

新興・再興感染症,院内感染など

●感染症の国際化に対応

地球規模の感染症の危機(WHO)

●感染症の類型化

一類感染症→危険性がきわめて高い感染症

二類感染症→危険性が高い感染症

三類感染症→集団発生の可能性のある感染症

四類感染症→国民の健康に影響を与えるおそれがあるものとして厚生労働省令で定める

五類感染症→四類と同様。{インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザを除く),ウィルス性肝炎(E・A型を除く)}

●人権への配慮と適切医療

ハンセン病やエイズ患者などに対する偏見,差別の反省

感染症の種類(感染症法に基づく分類)

動物、飲食物等の物件を介に人に

感染し、国民の健康に影響を与える

おそれがある感染症

(人から人への伝染はない)

Q熱・エキノコックス症・つつが虫病・日本脳炎・レジオネラ症・ブルセラ症等

4類感染症

感染力、罹患した場合の重篤性等に

基づく総合的な観点からみた危険性が、高い感染症

急性灰白髄炎・結核・ジフテリア・

重症急性呼吸器症候群 (SARS)

2類感染症

国が感染症発生動向調査を行い、

その結果等に基づいて必要な情報を

一般国民や医療関係者に提供・

公開していくことによって、発生・拡大を防止すべき感染症

インフルエンザ・風しん・麻しん・

感染性胃腸炎・水痘・性器クラミジア・梅毒・

HIV等

5類感染症

感染力、罹患した場合の重篤性等に

基づく総合的な観点からみた危険性は、高くないが、特定の職業への就業によって感染症の集団発生を起こし得る感染症

コレラ・細菌性赤痢・腸管出血性大腸菌感染症(O157・O26・O111等)・腸チフス・パラチフス

3類感染症

感染力、罹患した場合の重篤性等に

基づく総合的な観点からみた危険性が、極めて高い感染症

エボラ出血熱・クリミア、コンゴ出血熱・痘そう・南米出血熱・ペスト・マールブルグ病・ラッサ熱

1類感染症

性 格感染症の種類感染症類型

• 新型インフルエンザ等感染症・新型インフルエンザブタインフルエンザ(H1N1亜型)は「新型インフルエンザ等感染症」として取り扱う。

・再興型インフルエンザ

当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの

• 指定感染症既に知られている感染性の疾病(一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)であって、法で定める強制措置によらなければ当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。現在指定されている疾病はない。トリインフルエンザ(H5N1型に限る)は、2006年6月から2008年6月の間指定感染症として指定され、その後法改正により二類感染症となる。

• 新感染症人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもので、当該疾病にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。

発生要因と対策

感染源対策病原体の研究,消毒患者,保菌者の隔離・治療微生物付着食品の検出・処理

感染経路対策検疫媒介動物の駆除上下水道などの環境の整備

感受性者対策抵抗力の向上予防接種による免疫力の向上

日本のインフルエンザの流行は12~3月ごろ。流行のピークは年によって違いはあるが、通常1月下旬から2月初旬に集中している。

1996年のインフルエンザについて、罹患率と死亡率を年齢層別に示したもの。0~14歳までの罹患率が高い。高齢者は罹患率が低いが死亡率が高くなっている。

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