乱流の機械学習と制御...• 第3次人工知能ブーム...

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乱流の機械学習と制御 慶應義塾大学 理工学部 機械工学科 深潟 康二 研究室HP: http://kflab.jp E-mail: [email protected] 2019-12-05 第3回CAEワークショップ ~スーパーコンピュータ「京」から「富岳」へ CAEシミュレーションの最前線~

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乱流の機械学習と制御

慶應義塾大学 理工学部 機械工学科

深潟 康二

研究室HP: http://kflab.jp

E-mail: [email protected]

2019-12-05 第3回CAEワークショップ

~スーパーコンピュータ「京」から「富岳」へ CAEシミュレーションの最前線~

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2/40 乱流…何が難しい?

– マルチスケール性(最小の運動スケールから最大の運動スケールまで)のため、膨大な計算点数が必要

• 例えば、水道管の中のごく遅い乱流でも100 x 100 x 100 ぐらいの計算点が必要 ~100万元 の非線形連立方程式

• 必要な計算点数はレイノルズ数 Re (=慣性力と粘性力の比,同じ流体では流速とサイズに比例)の(9/4)乗のオーダー

実用的な計算では「乱流モデル」を使わざるを得ないが普遍的な乱流モデルは存在せず

• 当然、混相流(気液、固液、固気)、反応流(燃焼など)ではさらに難しい

乱流中の「縦渦」の直径と周波数

(Kasagi, Suzuki, and Fukagata,

Annu. Rev. Fluid Mech. 41, 2009)

• 例えば、物性値一定の単相流の場合でも・・・

– 支配方程式(連続の式とNavier-Stokes方程式)は分かっているが、方程式の非線形性のため、 ごく限られた問題を除いて解析的には解けない

数値シミュレーション

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3/40 「乱流ビッグデータ」

• 数値シミュレーションの大規模化や実験計測の高解像度化

「乱流ビッグデータ」の蓄積

– これまで線形理論に基づく乱流の特徴抽出が数多く試みられ,線形メカニズムの理解に対しては一定の成果(POD, DMD, Koopman, Resolvent, etc.)

– 渦の伸長・変形などの非線形な現象は線形理論に基づく手法では抽出できず,非線形性を捉えられる特徴抽出手法の開発が待たれている.

(Kawagoe, Nakashima, Luhar, and

Fukagata, J. Fluid Mech. 866, 2019)

(店橋ほか,第2回「京」を中核とするHPCI

システム利用研究課題成果報告会, 2015)

Resolvent解析の例→

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4/40 機械学習の応用

• 第3次人工知能ブーム

– 近年ビッグデータへの注目にともない,深層学習(ディープ・ラーニング)に代表される機械学習として再び注目.

– 工学分野でも,新材料設計など様々な分野においてこの機械学習の活用が期待されている.

• 「乱流ビッグデータ」と機械学習

– 乱流は本来,巨大自由度を持つ非線形ダイナミカルシステム

→「乱流ビッグデータ」は機械学習を用いた解析に適している

はず.

– 近年では,時系列変化を学習するためのアルゴリズム+ライブラリ(TensorFlow, Keras, …)の充実,機械学習に特化した計算機(GPUなど)の普及,情報(Qiitaなど)により,「乱流ビッグデータ」を機械学習を用いて扱うための準備ができつつある.

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機械学習とは (深潟研M1・長谷川,新B4向け研究紹介(2019-04-16)より)

学習過程

例 : 𝑦 = 𝑓 𝑥 を学習

機械学習モデルに大量の 𝑥, 𝑦 を与え学習させる

右図: Loss の学習回数に対する変化

左図: 機械学習モデルの学習毎の出力

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6/40 乱流研究への機械学習の応用例(1)

• 流れの制御の分野では比較的長い歴史

– Lee et al. (PoF 1998):壁面上の情報のみを用いてChoi et al. (JFM 1994)のV制御と同様の乱流摩擦抵抗低減を行うために,単層パーセプトロンを用いてV制御の制御入力を学習

– Milano & Koumoutsakos (JCP 2002):壁面上の情報から上空の流れ場を推定するために多層パーセプトロン(MLP)を応用,優位性を示す

Second-

order model

Linear POD

NN

DNS

(Milano & Koumoutsakos,

J. Comput. Phys., 2002)

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7/40 乱流研究への機械学習の応用例(2)

• ここ2~3年の研究

– Ling et al. (J. Fluid Mech., 2016):数学的要件を満たすように改良したMLPによる乱流モデルの構築(RANSの非等方テンソルの回帰)

– Gamahara & Hattori (Phys. Rev. Fluids, 2017):MLPを用いた,LESにおけるSGS応力の回帰

– Omata & Shirayama (AIP Adv., 2019):CNNオートエンコーダを用いた,翼周り流れの低次元化

(Omata & Shirayama,

AIP Adv., 2019)

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8/40 本グループの研究目的

科研費基盤A「機械学習による乱流ビッグデータ特徴抽出手法の構築」(2018~2020年度,代表:深潟)

• 機械学習技術を「乱流ビッグデータ」に適用して解析を行い,乱流現象に内在する非線形低次元モードを抽出し,その時間発展方程式を導出することにより,乱流に対する新たな特徴抽出手法 (Machine-Learned Reduced Order Model (ML-ROM) を構築する.

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9/40 手始めに…

• 広範なスケールを含んだ流れ(自由度の大きいデータ)の時系列変化を実際に機械学習を用いて学習できるか?

– チャネル乱流における時間発展断面流速分布の再生成 (Fukami, Nabae, Kawai, and Fukagata, Phys. Rev. Fluids 4, 064603, 2019)

– 2次元減衰乱流のSuper-resolution(超解像)解析(Fukami, Fukagata, and Taira, J. Fluid Mech. 870, 106-120, 2019)

• 機械学習を用いて抽出された低次元モードに対する 支配方程式の導出がうまくいきそうか?

– まずは2次元・低Re数の円柱周り流れで試行

• CNN + LSTMを用いた異なるRe数での予測 (長谷川・深見・村田・深潟, ながれ 38, 2019) ※本日は割愛

• CNN-AEで得られる非線形低次元モードの可視化 (Murata, Fukami, and Fukagata, J. Fluid Mech. 882, 2020)

• CNN-AEとSINDyを用いた支配方程式の導出 (村田・深見・深潟,数値流体力学シンポ, 2018)

深見 開 (M1.5)

村田 高彬 (M2)

長谷川 一登 (M1)

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チャネル乱流の断面流速分布の時間発展 (Fukami, Nabae, Kawai, and Fukagata, Phys. Rev. Fluids 4, 2019)

• チャネル乱流の一断面における流速分布の、2つの離散時刻間の関係を学習

「時間離散化Navier-Stokes方程式のsurrogate model」

ネットワーク構造.青い部分はCNN(畳み込みニューラルネットワーク)

BackProp

Input

Output

DNS

nq

1

ML

nq

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チャネル乱流の断面流速分布の時間発展 (Fukami, Nabae, Kawai, and Fukagata, Phys. Rev. Fluids 4, 2019)

DNS (answer) Case 1 (2 MLP layers, latent size 3072)

Case 2 (2 MLP layers, latent size 192) Case 3 (3 MLP layers, latent size 3072)

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チャネル乱流の断面流速分布の時間発展 (Fukami, Nabae, Kawai, and Fukagata, Phys. Rev. Fluids 4, 2019)

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チャネル乱流の断面流速分布の時間発展 (Fukami, Nabae, Kawai, and Fukagata, Phys. Rev. Fluids 4, 2019)

• 流入・流出DNSの流入条件として使用

– 入口で非物理的な「変動の平均」を差し引いてやれば、下流のチャネルでの統計量はピッタリ一致

• 右図で、多少ずれているほうは「平均流速」分布を差し引かずに使用した場合の統計量です。

– 計算時間は周期境界のドライバDNS(Lx = 2pd)の

580分の1 ※あくまでの私の研究室のマシン (NVIDIA K40)の場合ですが。

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2次元減衰乱流のSuper-resolution解析 (Fukami, Fukagata, and Taira, J. Fluid Mech. 870, 2019)

• Super-resolution(超解像)とは?

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2次元減衰乱流のSuper-resolution解析 (Fukami, Fukagata, and Taira, J. Fluid Mech. 870, 2019)

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非線形低次元モードの可視化 (Murata, Fukami, and Fukagata, under review, arXiv:1906.04029 (2019))

2つのモードのみから再構築された流れ場,および正解(DNS)との差

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非線形低次元モードの可視化 (Murata, Fukami, and Fukagata, under review, arXiv:1906.04029 (2019))

• 可視化のためのCNN Autoencoderネットワークの構造

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非線形低次元モードの可視化 (Murata, Fukami, and Fukagata, J. Fluid Mech. 882, 2020)

CNNで2つのみの

非線形モードに低次元化し、それぞれで再構成した場にPODを適用

DNSで得られた場(正解)のPOD

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CNN低次元モードの支配方程式(2モード) (村田・深見・深潟,数値流体シンポ2018)

2 2 4

2 3 2 3

CNN

0.0496 0.5372 0.6384 2.988 0.1414

0.7136sin( ) 0.8645sin( ) 0.5548cos( )

0.6484 0.1699 0.2864 0.8202 1.1079

0.8128sin( )

dXY X X Y X

dt

X X Y

dYY X X X Y XY

dt

X

X

低次元モードを支配する常微分方程式の一例

(実際にはライブラリ関数 ( )の選び方で何通りもある)

0.2626cos( )X

coefficientlibrarymatrix to bematrixobtained

( ) X X Ξ

1 2( ) ( ), ( ) ( )X t a t Y t a t ( ) , ( )dX dY

X t Y tdt dt

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CNN低次元モードの支配方程式からの再構築 (村田・深見・深潟,数値流体シンポ2018)

u v

( , )

( , )

dXf X Y

dt

dYg X Y

dt

数値積分

CNNデコーダ (基底はCNN中 の重み係数)

得られた常微分方程式

( )

( )

X t

Y t

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21/40 まとめ:乱流の機械学習

• 「機械学習による乱流ビッグデータ特徴抽出手法の構築」に向けて

– 広範なスケールを含んだ流れの時系列変化を、実際に機械学習を用いて学習できるか?

• チャネル乱流の断面流速分布の時間発展の学習 (CNN + MLP)

(Fukami, Nabae, Kawai, and Fukagata, Phys. Rev. Fluids 4 , 2019)

• 2次元減衰乱流のSuper-resolution解析 (DSC/MS-CNN)

(Fukami, Fukagata, and Taira, J. Fluid Mech. 870, 2019)

十分な精度で学習・再生成できた!3次元の場では?現在進行中

– 機械学習を用いて抽出された低次元モードに対する支配方程式の導出

• 2次元・低Re数の円柱周り流れで試行

– 異なるRe数での予測 (CNN + LSTM)

(長谷川・深見・村田・深潟, ながれ 38, 2019)

– CNNで得られる非線形低次元モードの可視化 (MD-CNN)

(Murata, Fukami, and Fukagata, J. Fluid Mech. 882, 2020)

– 非線形低次元モードの支配方程式の導出 (CNN + SINDy) (村田・深見・深潟, 数値流体力学シンポジウム, 2018)

ある程度うまくいきそう(ただし一意ではない)だが,

自由度が大きくなった場合には?現在進行中

• 様々なネットワーク構造(LSTM, GAN, RC, etc.)の可能性

http://kflab.jp 「基盤Aのページ」

サンプルPython コードもあります

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22/40 流れの制御

• 流れの制御・・・境界条件などを少し変更することで,流れの状態を大きく変えること

• 制御の目的

– 抵抗低減 • 新幹線の先頭・・・圧力抵抗

• 同,側面・上面・・・摩擦抵抗

– 騒音低減 • 車両のつなぎ目、パンタグラフ

• ファン、タービン

– 混合促進 • 化学反応器(エンジンなど)

– 伝熱促進 • 熱交換器(エアコンなど) 東海道・山陽新幹線歴代車両

左から700系、300系、0系

(Wikipedia)

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23/40 流体の壁面摩擦抵抗

• 摩擦抵抗(壁面せん断応力)

• 摩擦抵抗係数

w

w

dU

dy

2(1/ 2)

4

w

f

f

CU

f C

y

U(y) 粘度

w

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24/40 層流と乱流の摩擦抵抗

• 乱流の摩擦抵抗は同じレイノルズ数の層流の摩擦抵抗より格段に大きい!

(White, 2008)

もし再層流化できれば これだけ減らせる! (この場合75%)

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25/40 そもそも乱流で摩擦抵抗が大きくなる原因は?

無数の縦渦(白い領域)による運動量交換の活発化が原因

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• V制御 (Choi , Moin, and Kim, J. Fluid Mech. 262, 1994)

– センサ:壁面上空のいたるところに壁垂直方向速度センサを仮定

– アクチュエータ:壁面のいたるところからの吹出し・吸込み – 渦構造を打ち消すべく,センサで測られた速度と逆位相で吹出

し・吸込み

ならば、縦渦を消してしまおう!

→ Choi et al. (1994)のV制御

(Iwamoto, private commun.) z

y

suction blowing

v(x,0,z,t) v(x, y

d,z,t)

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でも実際には壁から離れた点での速度は測れないでしょ?

• いくつかのアプローチ

– 制御則を仮定し、GAやNNなどでパラメータを最適化:Yoshino, Suzuki, and Kasagi (2009)・・・風洞実験

– 最適制御/準最適制御 • スパン方向壁面せん断応力:Lee et al. (1998)

• 主流方向壁面せん断応力: Fukagata & Kasagi (2004)

– 状態推定(壁面で得られる情報から、測れない速度を推定) • Kalmanフィルタ:Lee et al. (2001), Högberg et al. (2003),

Hoepffner et al. (2005), Chevalier et al. (2006)

• ニューラルネットワーク:Milano & Koumoutsakos (2002)

• 高次Taylor展開:Bewley & Protas (2004)

• どのアプローチでも壁面圧力分布の情報があれば良好な結果が得られそうだが、壁面せん断応力のみの情報では厳しい・・・

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壁乱流のフィードバック制御システム・・・6%(±3%)抵抗低減

フィードバック制御を用いた摩擦抵抗低減の風洞実験 (Yoshino et al., J. Fluid Sci. Technol., 2009)

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GA-based Adaptive Control

Fully-developed turbulent air

channel flow (Re=300)

Upward for

positive EA

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様々なアクチュエータの時空間スケール (可能性のイメージ)

SMA:形状記憶合金

Elec.:電磁/静電

/圧電/電歪

PA:プラズマ SMA

Elec.

PA

←乱流中の微細渦を操作する

制御においてアクチュエータに求められる寸法と応答周波数

(Kasagi, Suzuki, and Fukagata,

Annu. Rev. Fluid Mech. 41, 2009)

→剥離などの大規模構造の制御であれば,右下方向にずれる

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乱流制御手法の分類(と私の研究) →プレデターミンド制御の研究へ

(Gad-el-Hak, Appl. Mech. Rev., 1996)

(笠木・鈴木・深潟,パリティ, 2003)

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超撥水面による抵抗低減効果の理論予測 (Fukagata, Kasagi, and Koumoutsakos, Phys. Fluids 18, 051703, 2006)

• DNS (本研究+Min & Kim, 2004)によって示された機構のモデル化 → 理論予測式

• 理論予測結果とDNSの比較

超撥水面の例 (Watanabe et al.,

J. Fluid Mech., 1999)

実条件(大型タンカー,Re = 106)では50 m程度のスリップ長さで25%抵抗低減

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一様吹出し/吸込みを伴う空間発達境界層 (Kametani & Fukagata, J. Fluid Mech. 681, 2011)

• 一様吹出しを加えると、縦渦(レイノルズ応力)は増えるが,抵抗は減る!

FIK恒等式を用いた

摩擦抵抗の分解

壁垂直方向平均

速度の寄与

空間発達

の寄与

レイノルズ応力

の寄与

Total

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一様吹出しによる乱流摩擦抵抗低減の風洞実験 (Eto, Kondo, Fukagata, and Tokugawa, AIAA J., 2019)

(江藤@JAXA低乱風洞)

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35/40 摩擦抵抗と乱流統計量の定量的関係は?

• FIK恒等式 (Fukagata, Iwamoto, and Kasagi, Phys. Fluids 14, L73-L76, 2002)

• 渦などがどうなっていようが,右辺第2項(乱流寄与項)を減少させるような制御が行えれば,摩擦抵抗が低減できるはず!

1

0

laminar drag turbulent contribution (=weighted integral of RSS)

1224 (1 )( )

Ref

b

C y u v dy

仮想体積力を用いた数値実験

(Fukagata et al., Proc. SMART-6, 2005)

進行波状吹出し・吸込み制御 (Min et al., J. Fluid Mech., 2006)

どちらでもレイノルズ応力の低減により、層流より低い摩擦抵抗

(sublaminar drag)が得られた!

…ただし,総エネルギー的には再層流化が一番良いことが後に数学的に証明 (Bewley, J. Fluid Mech., 2009; Fukagata et al., Physica D, 2009)

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上流方向進行波状吹出し・吸込み制御:乱流の場合 (Reb = 5600,Re0 = 180) (守, 修論,2008)

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「下流方向」進行波状吹出し・吸込み (Mamori, Iwamoto, and Murata, Phys. Fluids 26, 2014)

• 「下流方向」進行波状吹出し・吸込みでも、別のメカニズム(安定化)によって再層流化!

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進行波状壁面変形による摩擦抵抗低減のDNS (Nakanishi, Mamori, and Fukagata, Int. J. Heat Fluid Flow 35, 2012)

動画:Uchino & Fukagata (2013)

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流量を一定に保つのに必要な,平均圧力勾配の時間変化 (Nakanishi, Mamori, and Fukagata, Int. J. Heat Fluid Flow 35, 2012)

上流方向進行波 (c < 0) で抵抗増加 or 変化なし

下流方向進行波 (c > 0) で抵抗低減,あるケースでは再層流化

dP

/dx

変形なし

a = 0.2, c = 1, k = 2

a = 0.1, c = 1, k = 4

a = 0.2, c = 1, k = 4

a = 0.1, c = -1, k = 2

層流値

t

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40/40 まとめ:乱流の制御

– フィードバック制御(1990年代~2000年代)

• 理論的・数値的にはある程度成功 (Kim, Phys. Fluids 15, 2003)

• ハードウェア開発に大きな課題

(Kasagi, Suzuki, and Fukagata, Annu. Rev. Fluid Mech. 41, 2009)

– 主流方向進行波状壁面変形(プレデターミンド制御)

• 低Re数チャネル乱流のDNSでは再層流化: 正味エネルギー削減率65%

(Nakanishi, Mamori, and Fukagata, Int. J. Heat Fluid Flow 35, 2012)

• 検証実験も進行中(農工大・岩本研)

乱流統計量と壁面摩擦の定量的関係(FIK恒等式)の発見 (Fukagata, Iwamoto, and Kasagi, Phys. Fluids 14, 2002)

進行波状吹出し・吸込みによる乱流摩擦抵抗低減のDNS (Min, Kang, Speyer, and Kim, J. Fluid Mech. 558, 2006)