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10 〒761-0301 高松市林町 2217-15 香川産業頭脳化センタービル 2 階 TEL.087-868-9903 FAX.087-869-3710

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  • かがわ中小企業応援ファンド事業/かがわ農商工連携ファンド事業

    成果事例集香川の中小企業から生まれた新商品や

    取り組みを10 事例、ピックアップしてご紹介!

    チャンスを育てるすべてのひとへ

    〒761-0301 高松市林町 2217-15 香川産業頭脳化センタービル2階 TEL.087-868-9903 FAX.087-869-3710

  • はじめに

    現在、我が国の経済・産業は、少子高齢化の急速な進行と人口減少局面への転換、経済

    のグローバル化の進展など、国内外の社会経済環境の急激な変化により、大きな転換期を迎

    えています。特に中小企業は人材育成や技術の伝承、品質の安定化、後継者不足など多くの

    課題を抱えています。

    一方、こうした状況においても、県内の多くの事業者が、さまざまな地域資源や長年培ってき

    た高い技術を生かして、積極的に新たな事業展開を図っています。

    公益財団法人かがわ産業支援財団では、平成19年度に独立行政法人中小企業基盤整

    備機構や県と連携して「かがわ中小企業応援ファンド」を造成し、県内中小企業が行う研究

    開発や販路開拓、生産性の向上などの取組みを支援してまいりました。

    また、平成21年度には同じく独立行政法人中小企業基盤整備機構や地元金融機関など

    の協力を得て「かがわ農商工連携ファンド」を造成し、農林漁業者と中小企業者が互いの経

    営資源を持ち寄って行うさまざまな新商品や新サービスの開発などを支援しています。

    当財団では、こうした制度を活用して支援してきた数多くの事例の中から、実用化や商品化

    に成功するなど、特に優れた成果をあげた事例を広く紹介するために、「ファンド事業成果事

    例集」を平成24年度より発刊しており、皆様から大変に好評をいただいております。

    平成29年度も引き続き、前年度に助成した事業の中から10事例を選定してとりまとめました

    ので、現在、新たな分野への進出や新商品の開発などをご検討の皆様には、是非ご覧いただ

    き、今後の事業の参考にしていただければ幸いです。

    発刊にあたり、大変お忙しいところ取材や資料の提供などにご協力いただきました関係者の

    方々に心から厚くお礼申し上げます。

    今後とも、県内企業の総合的な支援機関として、企業の皆様の声をお聞きし、県と一体とな

    って、新産業の創出や産業技術の高度化、産学官の共同研究開発の支援など県内産業の

    活性化のための各種施策を積極的に推進してまいりますので、なお一層のご指導、ご鞭撻の

    ほど、よろしくお願い申し上げます。

     

    平成29年12月

    理事長 大 津 佳 裕公益財団法人 かがわ産業支援財団

    1K a g a w a I n d u s t r y S u p p o r t F o u n d a t i o n

  • はじめに ································································································································

    目  次 ································································································································

    かがわ中小企業応援ファンド事業の概要 ···········································································

    かがわ農商工連携ファンド事業の概要 ···········································································

    1

    2・3

    4

    5

    参考資料❶ 地域企業国内販路開拓支援事業 ······································································

    参考資料❷ 地域企業海外販路開拓支援事業 ······································································

    参考資料❸ 平成29年度かがわ中小企業応援ファンド事業 採択事業者一覧 ················

    参考資料❹ 平成29年度かがわ農商工連携ファンド事業 採択事業者一覧 ················

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    30・31

    かがわ中小企業応援ファンド事業

    Contents

    フレッシュな果実味が冴える新手法を確立

    新分野等チャレンジ支援事業

    香川県産の桃を使った新食感リキュールの開発事業テーマ

    6・7······················································································· 西野金陵株式会社

    多機能な冷凍食品用パッケージで電子レンジ調理を新しいステージへ!

    成長のエンジンとなる分野支援事業

    新規な冷凍食品用包装材料の開発事業テーマ

    8・9··········································· 日生化学株式会社

    世界最高レベルの高機能タンパク質で医薬品業界に貢献

    抗体医薬の低コスト化に貢献する高耐久型結合タンパク質の開発事業テーマ

    10・11············································································ プロテノバ株式会社

    島育ちのかわいいオリーブ盆栽をおみやげの新定番に

    新商品等開発支援事業

    特産品土産としてのミニオリーブ盆栽の商品開発と販路開拓事業テーマ

    22・23

    ············································································ pensée(パンセ)株式会社小豆島岬工房

    花澤明春園

    地域を挙げて蘇らせた讃岐ブランド「大野豆」が結ぶ縁

    大野豆(讃岐長莢そら豆)の復活と生産体制の構築、並びに豆菓子等の新商品の開発と販路開拓事業テーマ

    24・25···················································· 有限会社筒井製菓

    大野豆プロジェクト

    国産針葉樹複合床材で日本の住宅に「和」の新風

    地域企業研究開発小規模助成事業

    国産針葉樹複合台板を用いたJAS特殊加工仕上げ床材の開発事業テーマ

    12・13·························································· 東洋テックス株式会社

    ハイエンドなニット商品で世界に勝負をかける!

    特定地場産業活性化ブランド確立支援事業

    手袋の製造技術を活用した、新たなライフスタイル服飾雑貨ブランド化事業事業テーマ

    14・15·········································································· 株式会社フクシン

    かがわ農商工連携ファンド事業

    多目的に使えるエコでクリーンな次世代水圧システム

    創業ベンチャー・地域密着型ビジネス支援事業(かがわビジネスモデル・チャレンジコンペ最優秀賞認定事業)

    コンパクト型入浴装置兼用段差解消機開発事業テーマ

    20・21·································································· 株式会社ADSムラカミ

    香川の職人技の「価値を伝える」ニュービジネス

    創業ベンチャー・地域密着型ビジネス支援事業

    香川のものづくり企業と観光資源を活かした香川ブランドの確立事業テーマ

    16・17·································································· tsutaeru

    ARで魅せる香川のコアなコンテンツ

    集客力UPのための観光案内本と自社アプリ開発事業事業テーマ

    18・19························································ Traditional Apartment

    平成30年度 新かがわ中小企業応援ファンド等事業がスタートします!!

    2 3K a g a w a I n d u s t r y S u p p o r t F o u n d a t i o n

  • かがわ中小企業応援ファンド事業の概要(公財)かがわ産業支援財団では、県内中小企業者や地場産業関係組合などに対し、研究開発から販路開拓、人材育成まで総合的な支援を行うため、総額118億円の基金を造成し、その運用益を財源として、「かがわ中小企業応援ファンド事業」を平成19年度から平成29年度まで実施してきました。

    かがわ農商工連携ファンド事業の概要(公財)かがわ産業支援財団では、「かがわ農商工連携ファンド事業」を平成21年度から実

    施しています。総額28億円の基金を造成し、その運用益を財源に農林水産業者と加工・流通などの分野の中小企業者が連携して行う新商品の開発及び新サービスの開発並びに販路開拓に対し、助成金の交付やきめ細かなフォローアップ等による総合的な支援を行っています。

    94.4億円

    運用益で助成

    農商工連携による地域経済の活性化独立行政法人中小企業基盤整備機構 独立行政法人中小企業基盤整備機構無利子貸付

    94.5億円

    香川県 0.1億円 香川県 0.1億円無利子貸付

    20億円無利子貸付

    20.1億円無利子貸付

    23.5億円

    (公財)かがわ産業支援財団

    資金拠出(既存基金の活用)

    連携支援

    かがわ中小企業応援ファンド

    運用期間 10年間運用益 約2億円/年【運営管理者】

    (公財)かがわ産業支援財団

    118億円基金総額

    運用益による助成と支援

    かがわ農商工連携ファンド

    運用期間 10年間運用益 約3,800万円/年

    【運営管理者】(公財)かがわ産業支援財団

    28億円基金総額

    地元金融機関【財団との業務提携】

    ネットワークの活用による

    販路開拓支援等

    (公財)かがわ産業支援財団【既存メニューによる重点支援】●新規発掘・事業化コーディネート事業●専門家によるアドバイス●広報・情報発信による支援●取引きの斡旋など、販路開拓支援●インキュベート施設の貸与など 株式会社百十四銀行

    株式会社香川銀行高 松 信 用 金 庫

    香川県信用農業協同組合連合会香川県漁業協同組合連合 会香川県信用漁業協同組合連合会

    支援重点分野

    平成19年度から平成28年度までの実績

    先端技術産業、地場産業助成対象者 中小企業者、地場産業関係組合、商工関係団体等

    支援メニュー ※公募メニューのみ記載 支援メニュー ※公募メニューのみ記載

    中小企業者と農林漁業者の連携体が行う新商品・新サービス開発や販路開拓事業1新商品等開発支援事業 ●助成期間 交付決定日から最長1年10ヵ年 ●助 成 率 2/3以内 ●助成金額 20万円以上400万円以下2販売力強化・ブランド化支援事業 ●助成期間 交付決定日から最長1ヵ年 ●助 成 率 2/3以内 ●助成金額 20万円以上100万円以下

    ■新規発掘・事業化支援 ●新分野等チャレンジ支援事業■研究開発支援 ●地域企業研究開発小規模助成事業

    独創的・産業財産権活用型研究枠地域資源活用枠

    ■販路開拓支援 ❶地域企業国内販路開拓支援事業 ❷地域企業海外販路開拓支援事業■人材育成支援 ●ものづくり産業スキルアップ助成事業■生産性向上支援 ●ものづくり産業生産性向上支援事業■総合支援 ❶成長のエンジンとなる分野支援事業 ❷特定地場産業活性化ブランド確立支援事業 ❸経営革新支援事業 ❹創業ベンチャー・地域密着型ビジネス支援事業

    [      ]

    金融機関 農水産業団体7.9億円有利子貸付及び出資(10年)

    ●助成対象の選定方法かがわ農商工連携ファンド事業審査委員会において選定●支援体制国・県・関係機関等が連携し、 全面的な支援を実施

    採択の基準

    1新規性優位性

    2市場性

    3成長性

    4実現可能性

    5地域への波及効果

    目 的 目 的

    研究開発支援 ➡

    販路開拓支援 ➡

    人材育成支援 ➡

    助成件数 134件支援件数 520件支援件数 23,714人

    新商品等開発支援事業 ➡

    販売力強化・ブランド化支援事業 ➡

    助成件数 58件助成件数  4件

    平成21年度から平成28年度までの実績

    ※新しい制度のご案内については、P30・P31をご覧下さい。

    この事業は平成29年度をもちまして終了しました

    観音寺信用金庫香川県信用組合

    4 5K a g a w a I n d u s t r y S u p p o r t F o u n d a t i o n

  • かがわ中小企業応援ファンド事業 新分野等チャレンジ支援事業  西野金陵株式会社  さぬきのももも(リキュール)

    社  名所 在 地電  話U R L

    西野金陵株式会社仲多度郡琴平町6230877-73-4133http://www.nishino-kinryo.co.jp

    従業員数資 本 金採択年度

    210名2,700万円平成27年度

    西野金陵株式会社会社概要

    手づくり感が魅力とはいえ、着色料や保存料を一切使わない分、どうしても劣化が課題となる。これからの課題はフレッシュな味を保ちつつ、劣化を防ぐことだ。桃農家との連携も進んでいて、「朝5時に起きて産地の収穫も手伝いに行きました。原料の品質などについて学べるいい機会です」と金子さん。同社のリキュール全体の売り上げは

    阿波の藍商人をルーツに、多角化を図りながら350年以上の歴史を誇る西野金陵株式会社。酒造業は江戸時代に金刀比羅宮のお膝元でスタートし、現在では、香川県内で現存する数少ない蔵元の一つである。金比羅宮の参道に創業当時の酒蔵を復元した「金陵の郷」は、連日多くの人でにぎわう人気ショップだ。しかし、清酒業界では食の多様化な

    どにより、若者を中心に日本酒離れが課題となっており、同社でも新規顧客の獲得が必要であった。このような時、桃の産地・丸亀市飯山町出身のOBから「香川県産の桃はうまい。桃を使って何かできないか」という声が上がったのが、リキュール開発のきっかけだった。いろんなお酒を楽しく味わう習慣がもっと広がれば、ひいては日本酒の間口拡大に

    もつながるという狙いが根底にあった。当時、同社には既に「ゆずリキュー

    ル」が存在していたが、原料が県産ではなかった。香川県産の桃は品質がよく生産量でも岡山県に引けを取らない。「県産桃のリキュール」であることを重視したこれまでにない商品をつくり、消費者層を広げれば県産桃の振興にも貢献するはずであると考えた。「正直、言うのは簡単だけど…と当初は思ったものです」と笑うのは、多度津工場の金子愛茜さん。奈良県の酒造会社で学んだことを香川県で活かそうとUターンした気鋭の若手だ。「甘いリキュールはたくさんあるし、大抵は香料で桃らしい風味に近づけています。しかし、私たちの商品は甘さ控えめ、フレッシュな風味と桃らしいとろみを残した口当たりを目指しました」と振り返る。

    伸びていて、姉妹品の売れ行きも好調。「とはいえ日本酒メーカーですから、リキュールをおいしいお酒の入口として、日本酒を若い人たちにPRしていきたいですね」と金子さん。しばらくは「さぬきのももも」をはじめ、一つ一つの商品のクオリティ向上に努めるつもりだと語ってくれた。

    品質保持を課題に、日本酒全体を振興

    フレッシュな果実味が冴える新手法を確立

    香川県産の桃を使った新食感リキュールの開発事業テーマ

    事業のきっかけと背景

    今後の事業展開

    新商品にかける熱き想い!

    香川県で『メイド・イン・KAGAWA』をつくりたいと思いUターンし、第一歩を刻みました。開発中はハラハラすることも多かったのですが、たくさんの方に協力頂いて人気も安定しました。今回の取り組みではデザイン会社など新しい外部とのつながりも生まれました。この実績を糧に、日本酒でもしっかりとおいしさを打ち出していきたいです!

    金子 愛茜 氏

    日本酒離れにストップをかける期待のニューフェイスが誕生!!

    桃は水分が少なく、そのままジュースにすると酸化が早く、色も悪くなってしまう。そこで金子さんは加工業者と相談し、桃をいったん冷凍してからすりつぶしたピューレを使うことを考えた。この方法であれば、果肉の繊維質が、とろみにつながり、なめらかな舌触りを実現することができ、さらに色も変わりにくくなった。しかし、おいしさを考えると、どうしてもピューレの比率を高めたかったが、この比率が高くなるとピューレが沈殿してしまう問題があった。さらに、とろみの影響により、瓶へ充填する際に、充填ラインに繊維質が詰る問題もあった。そこで、裏ごしを行い、より繊維質を細かくし、詰まりを防ぐため、瓶へ攪拌しながら充填することで問題を解決した。さらに、使用する香料は数ある中から、みずみずしく自然なものを選定し、濃度も調整。試作品を醸造課長に利き酒してもらい、「ちょうどいい」と評価の高いバランスを追求し続けた。こうして、完成した生の桃を食べた時のほのかな渋みや酸味を残すフレッシュな味わいは、金子さんが目指したリキュールそのものだった。また、パッケージデザインを企画担当者と相談し県内のデザイン会社に依頼した。新商

    品への期待の高さの表れである。「こういう費用面でも、助成金に助けられました」と金子さん。桃の果実感を魅力的に打ち出す洗練されたデザインに、フロストのボトルがやわらかい風情を醸す。商品名は「さぬきのももも」。『うどんだけじゃない、讃岐の桃もよろしくね』そんな思いを込めている。平成28年8月の発売当初は限定商品だったが、人気を受けて増産が決定し、すぐに毎月製造するレギュラー商品となった。さらに、かがわ県産品コンクールの最優秀賞である『知事賞』および農林水産省の食料産業局長賞をそれぞれ受賞したことから知名度向上の追い風となった。「さぬきのももも」のおすすめの飲み方はロックやソーダ割。さらにレモンを絞るとさっぱりとした飲み口になって、男女問わず親しみやすい味わいだ。県内の県産品アンテナショップをはじめ、百貨店のお中元・お歳暮などにもラインナップ。桃を縁起物として好む中国人にも好評だという。「私だけの力ではなく、工場全員が『自分が携わった』と胸を張れる商品にしたかった」と金子さん。香りや味、ラベルデザインまで、商品の完成までには多くの人の意見が反映されており、社員が購入することも多い。

    新感覚のとろみで既存商品と差別化事業化のポイント

    青果

    メリット

    すりつぶす(ピューレ)

    搾汁(ジュース)

    リキュールに使用する果物は果汁(ジュース)に加工された物を使用することが一般的

    工程が増えるほど酸化劣化し、鮮度が落ちる青果を冷凍しすりつぶしただけのピューレを使用する。

    「さぬきのももも」の加工方法

    ◎鮮度がよい◎粘性という特長の付与

    デメリット

    ◎ろ過の目詰まり◎充填ラインの詰まりの懸念

    1,463円(税別)金陵の郷(直営のアンテナショップ)や同社オンラインショップ(http://www.nishino-kinryo.co.jp/store/)などで販売中

    6 7K a g a w a I n d u s t r y S u p p o r t F o u n d a t i o n

  • 「冷凍食品の加熱解凍から始まった開発ですが、その過程ではさまざまな発見がありました」と品質管理室長の河野博さん。例えば、冷凍食材と市販の合わせ調味料を開発した包装材に入れて、蒸気孔が開くまでレンジで加熱すれば、ひとつの料理が完成する。河野さんは「災害時の食事などにも応用できそうな手応えがあります。主にB to Bの商品ですが、まとめて調理もできるとなるとB to Cも視野に入ってきます。今後はユー

    ショッピングバッグ製造からスタートした日生化学株式会社は、プラスチックフィルムを発泡させ、さまざまな機能を付与するベースとなる「発泡技術」、プラスチックの特質や品質を高めた「改質技術」、そして効率的な「プラスチックの再利用技術」の3本柱を核に、付加価値の高い機能性フィルムを手掛けるトップランナーだ。回収ペットボトルのフィルム化に世界で初めて成功したほか、美しい印刷が可能な発泡ポリエチレンフィルム「セルニック」など、独自の新素材を次 と々打ち出す高い開発力が最大の武器。「社会に貢献し、何らかの役割を果たすパッケージをつくるのが私たちの使命です」と田中秀和代表取締役社長。特に、同社が開発した「ハニック」は、

    大手食品メーカーのアイスクリーム包

    装などにも導入されている高機能な繊維状断熱フィルムである。低い発泡倍率で発泡スチロール並の熱伝導率を実現し、触った時に中身の冷たさ・熱さを軽減する独自の機能を持っていた。そこで、この機能を活かし、同社はまず「冷凍食品を包装のまま加熱調理するフィルム」の開発に着手した。食品を密封したまま電子レンジで加

    熱調理すると、一般的なフィルムは加熱途中で破裂し、中身が飛散してしまう。そのため、他社メーカーは包装に「事前に空気穴を開ける」「特殊な外部加工処理で蒸気を逃がす」などの破裂を防ぐ仕組みを施している。これに対して、日生化学の包装は、発泡成形技術の強みを用いて「フィルムそのものに自然と細かい穴が開いて、程よい蒸気孔の役割を果たす」のが特徴的だ。短時

    間で均一に中身を温められる効果もあって、他社メーカーと差別化できる特許技術だったが、一方で製品化に向けては「表面に凹凸があり印刷しづらい」「強度が弱い」「製袋加工過程の熱で溶ける」という課題が残っていた。そこで、このフィルムを「第1世代」とし、今回はこれらの問題点をクリアする「第2世代」の開発を目指した。

    ザーの認知度向上が鍵になってくるでしょう」と今後の展開を見据えていた。「これまでも、できないと思われたことを打ち破ってきました。できないことをやってのけるのが開発の仕事。これからも課題を乗り越え、さまざまな機能を持つ商品を組み合わせて、用途拡大を模索していきたいです」と意気込む赤松さん。自由かつ柔軟な発想で新しい境地に挑む同社の開発力は、社員一人一人のこうした熱意が支えている。

    「注目したのは、ラミネート技術です」と、開発を担当した赤松昌幸さん。株式会社北四国グラビア印刷(観音寺市)と連携して、冷凍食品を開封せずにそのままレンジで加熱できる発泡フィルムの外側に、透明で熱に強く印刷しやすい高強度の延伸フィルムを貼り合わせる方法を考案した。延伸フィルムには裏からパッケージデザインを印刷しており、ラミネートによって食品包装に求められる「一重包装」も実現。第1世代と同じくレンジで加熱すると袋が大きく膨らむが、やがて外側のフィルムと内側のフィルムが『いい感じ』にはがれて蒸気を逃がすため、破裂することはない。「フィルムがはがれて蒸気孔ができるのは、出来上がりを知らせてくれる『美味しさセンサー』でもあることに気づきました。市販の冷凍食品はメーカーが定めた時間どおり加熱しても、中身の加熱が不十分な場合がありますが、当社が開発したラミネート包装は、蒸気が

    抜けるまでレンジで加熱すれば、ムラなく中身まで加熱可能でした。これは思いがけない発見でしたね」と赤松さん。さらにピロータイプの包装なら、観音開きにすれば受け皿も不要。従来製品の「開封しづらい」「パッケージのままでは食べにくい」といった点の解消にもつながった。この技術の確立により、製品化に向けて大きく前進し、国際特許もスムーズに取得できたことから、県内大手冷凍食品メーカーからも注目されている。しかし、ラミネート加工によるコストアップと2層のフィルムを適度に密着させるため、発泡フィルムの断熱性を犠牲にしたことが次の課題となっている。「スタンド型のパッケージがいい」「発泡層の影響で中身が見えないので、透明フィルムの方がいいのでは」といった営業担当者の意見も踏まえ、さらなる改良が続いている。

    開発力を活かして特許技術を改良 災害時なども視野に、商品化を目指す

    かがわ中小企業応援ファンド事業 成長のエンジンとなる分野支援事業 日生化学株式会社  冷凍食品用包装材

    食品パッケージの研究開発は、将来の食糧問題のテーマにも絡んできます。これからニーズはますます高まるはずですから、製品として一日も早い完成を目指したいですね。香川という一地方で、地元の企業様としっかり連携しながら、当社の技術を世界に発信していきたいです!

    代表取締役社長田中 秀和 氏

    多機能な冷凍食品用パッケージで電子レンジ調理を新しいステージへ!

    新規な冷凍食品用包装材料の開発事業テーマ

    事業のきっかけと背景 今後の事業展開新商品にかける熱き想い!

    社  名所 在 地電  話U R L

    日生化学株式会社東かがわ市馬篠10879-25-3201㈹http://www.nissei-grp.com

    従業員数資 本 金採択年度

    97名4,400万円平成27年度

    日生化学株式会社会社概要

    事業化のポイント

    商品化への意気込みを語る河野さん

    さまざまな商品デザインを可能にする新包装材 開発にかける情熱は人一倍の赤松さん

    地元企業と連携した新技術と思わぬ副次機能の発見

    バーストバースト

    従来の技術 開発技術(第2世代)

    小さな気孔が空いて蒸気を逃がせる。

    美味しさセンサーとしても機能バースト防止機構

    レンジアップ

    美味しさセンサ機能性フィルムのご紹介

    「美味しさセンサー機能フィルム」とは?

    特 徴

    1開封せずに電子レンジOK!

    特 徴

    2 効率的な加熱!

    特 徴

    4お皿代わりに使えて手間いらず。

    特 徴

    3センサー部分より蒸気が抜ける。新しい原理のパッケージング!!

    そのまま

    “OISHISA”sensor

    “OISHISA”sensor

    袋のままで

    OK

    ここが美味しさセンサー

    全く新しい原理によって袋を開封せずに、そのまま電子レンジで加熱調理できる包装材です。調理中、ピロー包装袋の背貼り中央付近のカバーフィルムがはがれ、調理終了を知らせてくれます。

    技術

    の粋を集めた二重フィルムで中

    までアツアツ!

    8 9K a g a w a I n d u s t r y S u p p o r t F o u n d a t i o n

  • は限りません。市場に出してみるまで反応はわかりませんし、何より新商品の評価が出るまでに時間がかかる業界ですから、ものづくりに対しては常に冷静ですね。実際、『rProtein A樹脂』の改良型となる『Protein A-R40』を平成23年度にファンド助成金を活用し、平成25年に売り出すと、少しずつ流れが変わって、平成28年後半から市場の反応がグッとよくなってきました」。世界中で採用されて人気も上昇、本来の目標だった研究開発分野で、やっとビジネスとして実を結んだと手応えを感じている。

     平成29年からは設備投資に力を入れ、これまで外注製造だった工程を自社製造に切り替えて、品質の安定・向上に努める方針。「医薬品は、同じものを同じクオリティで継続出荷できることを重視します。特に大手がひしめく中に切り込む我々のようなベンチャー企業は、製造能力の安定が不可欠です。製造の難しさを痛感する毎日ですが、ベンチャー企業だから無理、と諦めるのではなく、『ものをつくれるベンチャー企業』を目指したい。そのために、今後は管理力も視野に入れた組織の安定と強化、人材育成にも注力するつもりです」と真島社長。求めているのは、営業力よりマーケティング力、市場のニー

     「起業した当初は、香川県から世界へ打って出る、と主張して笑われたものです」と振り返る、代表取締役社長の真島英司さん。薬学の博士号を持ち、製薬会社での新薬開発などに携わっていたが、自らがオーナーとして研究開発に従事したいという思いから平成17年にプロテノバ株式会社を設立。希少糖をはじめ糖質研究が盛んで、支援体制も充実している香川県を拠点に選び、抗体医薬の製造に使われるタンパク質の開発に取り組んできた。 抗体医薬は、特定の物質にだけ結合する「抗体」の特性を応用した医薬品。正常な細胞には作用しないため副作用が

    少なく、抗がん剤などへの活用を見込んで開発を進めている製薬会社は世界的に多い。しかし、製造コストが高く治療費も高額になることが課題であることから、機能性の高いタンパク質の開発は、製造の効率化につながる大きなテーマである。 タンパク質は、鎖状に連なった20種のアミノ酸の並び方を換えたり、より強いアミノ酸に換えることで、機能を高めることができる。起業した頃はあまり注目されていなかった『Protein A』というタンパク質を構造改変で付加価値の高いものにする、というのが同社の長期的な目標だった。 とはいえ研究開発には長い時間と労

    力がかかる。多くのベンチャー企業がぶつかるという「死の谷」に、真島社長も直面した。当初は赤字が続いて半年売り上げゼロも経験、ようやく黒字に乗ったのは起業して5年目のこと。「ビジネスには波があって、そこにうまく乗れた強運もあるでしょう。何よりファンド助成金の支援に助けられたからこそ乗り切れた苦境でした」と真島社長。ちょうど遺伝子への注目が高まっていた時期でもあり、バイオマーカー探索や構造解析、高感度解析など同社のノウハウを活かせる受託サービス事業も請け負って、中長期型と短期型、二本柱の事業で初期の土台を固めていった。

    ズを的確に読み、研究者であると同時に「外」に仕掛けていける人材だ。 もちろん商品開発にも余念がない。平成27年度からファンド助成金を活用して、世界最高レベルにある「Protein A-R40」の機能性・安定性をさらに超える期待の新商品の開発や低分子化抗体の精製を実現した「Protein L」など、さまざまな高機能商品を打ち出す予定である。「抗体医薬品業界は10兆円規模と言われ、ネタ切れどころかまだまだ成長途上です。いろんな可能性が眠っていますから、どんどん新しいことに挑戦していきたいですね」。研究開発にかける熱い思いと、ビジネスマンとしての冷静な視点が、同社の原動力と言えそうだ。

     従来の「Protein A」の弱点は「アルカリ耐久性が低い」こと。そこで同社は、独自技術を用いて抗体結合量を高め、アルカリ耐久性や分解抵抗性を向上させた抗体結合タンパク質「Protein A-R28」を開発した。このタンパク質は、ニーズの高い分野であり、同業他社も少なくない中で、極めて結合特性に優れるという強みがあった。実用化が進めば、抗体医薬の製造コスト低減に大

    きく貢献できると考えられていた。 さらに、その機能性を最大限に引き出してくれる大手化学メーカーの樹脂に出会い、両社の技術をベースに高い結合能とアルカリ耐久性を追求した「rProtein A樹脂」が誕生した。しかし、平成20年に売り出したが、保守的な医薬業界では、なかなか市場に浸透せず苦労したという真島社長。「面白い、いけるはずだと思った商品がヒットすると

    研究開発型ベンチャー企業が10年がかりで築いた土台

    体制強化で広がる可能性

    私は常に、私たちの仕事は世の中に必要か、社会に貢献しているかを自問し続けてきました。医薬品生産効率の向上は、より安全な医薬品を世に出すお手伝い。お客さまが求めるものを形にし、香川県から世界に打って出る、というビジョンは今も揺るぎません!

    代表取締役社長真島 英司 氏

    世界最高レベルの高機能タンパク質で医薬品業界に貢献

    抗体医薬の低コスト化に貢献する高耐久型結合タンパク質の開発事業テーマ

    事業のきっかけと背景

    今後の事業展開

    高機能性タンパク質で同業他社を一歩リード事業化のポイント

    平衡化

    細胞培養

    溶出洗浄

    充填カラム

    抗体医薬の製造工程現状

    0.1M NaOH

    精製抗体

    市場のニーズ0.5M NaOH

    不純物除去凝集体除去

    洗浄に必要な高濃度のアルカリ性でも破壊されない!

    高濃度アルカリでは壊れてしまう

    安価な素材で洗浄できることによる

    必要なのは・・・・

    ①高結合化②高耐久化

    低コスト化!

    ●アルカリ耐久性●分解抵抗性プロテインA誘導体

    抗体

    担体樹脂

    かがわ中小企業応援ファンド事業 成長のエンジンとなる分野支援事業 プロテノバ株式会社  抗体医薬

    社  名所 在 地電  話U R L

    プロテノバ株式会社東かがわ市西村1488-10879-49-0702http://www.protenova.com/

    従業員数資 本 金採択年度

    6名1,450万円平成27・28年度

    プロテノバ株式会社会社概要

    新商品にかける熱き想い!

    10 11K a g a w a I n d u s t r y S u p p o r t F o u n d a t i o n

  • 毎年3月と8月に開催される建材業界最大の展示会「ジャパン建材フェア」(東京ビッグサイト)への出品をはじめ、新商品のPRにはひときわ力を入れている。商品開発部課長の山下耕平さんも「PRの効果は1年くらい経ってようやく目に見え始めるものです。全国各地の営業担当が精力的にPRしていますし、施工実績も少しずつ増えていますから、これからが楽しみです」と期待を

    東洋テックス株式会社は、木質フローリングの専業メーカーとして、香川県から日本全国及び海外に製品を販売している。また、木材ならではの機能性と品質、そして美しさにこだわり、顧客満足を得るべく開発に力を注いでいる。フローリング基材は、反りなどの癖が少なく加工しやすい南洋材合板が主流であったが、熱帯雨林の過剰伐採が続いたため、南洋材合板の供給は減少していた。同社は長年培った木質フローリングのノウハウをベースに、10年ほど前から南洋材に代わるエコで高品質な代用材の模索を続けていた。そこで注目したのが、国産材だ。戦後

    に植林された針葉樹がちょうど伐採期を迎えており、有効活用が検討されていた。開発部担当の吉田博一技術顧問は「針葉樹はそのままでは使いづらいた

    め、複合台板としての商品化を目指しました。南洋材に比べると加工の難易度が高く、コストを抑えつつ凹凸や反りをならして、美しい床材に仕上げるにはどのような方法が良いのか、ずいぶん頭を悩ませたものです」と当時を振り返る。基材の選定を開始し、マツ、スギ、ヒノ

    キの候補の中から適性と芳香性を評価した結果、ヒノキ材を選定した。そして、この合板を基材に特殊化粧シートを貼り合わせて、ローコストながら無垢材のような美しさを表現した床材に仕上げたいと考えた。そこで、吉田さんたち開発チームは、

    『表面と裏面が堅く、中心部がやわらかい』という性質を持つHDF(高密度木質繊維板-High Density Fiberboard-)を用いて、やわらかい面を基材と接

    着する側に使用して、基材の反りや凹凸を受け止める一種のクッション機能を付加した複合床材にしようと考えた。

    込める。もちろん厳しい性能試験をクリアした商品であるが改良の余地も残している。「最近の住宅は、床暖房が主流ですから、床暖房対応床材としての機能を南洋材と同等以上まで高めていく必要があります」と吉田さんはまだ満足をしていない。今後もライン改造などハード面での見直しも含め、品質の安定やコストダウンなどを追求していく方針だ。

    国産材で南洋材に代わる商品を作りたい!品質安定とさらなる性能強化へ

    通常なら予算に縛られてなかなか思うように取り組めないことも多いのですが、ファンドの支援のおかげで、自由で高品質なものづくりを追求できました!

    商品開発部 課長山下 耕平 氏

    事業のきっかけと背景

    今後の事業展開

    新商品にかける熱き想い!

    国産針葉樹複合床材で日本の住宅に「和」の新風

    国産針葉樹複合台板を用いたJAS特殊加工仕上げ床材の開発事業テーマ

    開発チームの皆さん

    国産針葉樹の銘木柄をデザインした特殊化粧シートを貼り合わせる

    かがわ中小企業応援ファンド事業 地域企業研究開発小規模助成事業 東洋テックス株式会社  国産針葉樹複合台板

    社  名所 在 地電  話U R L

    東洋テックス株式会社高松市勅使町258-1087-867-7161http://www.toyotex.co.jp

    従業員数資 本 金採択年度

    250名10,000万円平成28年度

    東洋テックス株式会社会社概要

    プレミアコート10(木肌調塗装)

    特殊強化紙特殊強化シートに高精度な木目柄をデザイン

    特殊HDF施工で位置合わせしやすい面取り加工床の耐久性が良くなり美しさが長持ちします

    国産針葉樹合板幅広のメス実ステープル打ち簡単で表面のふくらみの心配がないほんざね加工

    当初は外注も考えたが、コストを抑えつつ品質を保つために自社一貫体制で製造することを念頭において開発を進めた。「HDFの中心部のやわらかい面を活かす加工方法には、半割りと研磨がありました。この2種類の方法を試した結果、設備面や品質の安定などから、研磨が最適となりました。国産材の欠点をうまくカバーする当社独自のHDF加工がようやく完成しました」と吉田さんは手応えを感じた。さらに、せっかく国産ヒノキの香りを活かすなら、やはり見た目も「和」を重視したいと考えた。そこで、化粧シートのデザインには、日本三大美林にも数えられやわらかな色合いが特徴の「尾州檜」、岩手県の県木で優雅な柾目模様の「南部赤松」、荒々しく力強い木目のなかにもあたたかみが感じられる「日光古代杉」の3種を採用した。「お客さまが家づくりで重視するポイントはいくつかありますが、中でもデザインは4割近くの方がこだわる部分です。当社が扱っている従来商品の販売傾向から考えると

    木目のデザイン性、光沢性はきわめて重要です」と吉田さんは開発商品に対する想いを語ってくれた。そして、1年余りの年月をかけて、もの

    づくりの粋を集めた新しい商品がようやく生まれた。同業他社も国産材には注目していたが、業界でも最先端を走る同社の既存技術がスピード感のある開発を後押ししたと言えるだろう。完成した商品は「大和」シリーズと命名し、平成29年3月から本格的な販売がスタートし、同年5月には国産材マークも取得した。従来のプリントフローリング材は、オークやウォルナット柄など洋風テイストがほとんどだ。しかし、開発した商品は、本格的な「和」の雰囲気を前面に打ち出す国産材のフローリングに新しい風をもたらしており、「今までにない雰囲気」「和のイメージが美しい」「コストメリットがある」とユーザーや工務店にも好評である。落ち着いた和風建築はもちろん、モダンでハイセンスな空間にもすっきりと馴染む高いデザイン性が評価されている。

    和のテイストで既存商品と差別化事業化のポイント

    今回開発した技術は今後の商品展開の核になると確信しています。国産床材のラインナップを増やして、新しい境地を拓きたいです。

    開発部担当技術顧問 吉田 博一 氏

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  • かがわ中小企業応援ファンド事業 特定地場産業活性化ブランド確立支援事業 株式会社フクシン  デザイン靴下

    社  名所 在 地電  話U R L

    株式会社フクシン香川県東かがわ市白鳥78-10879-25-2285http://www.fukushin.co.jp

    従業員数資 本 金採択年度

    78名1,000万円平成28年度

    会社概要

     海外販路はもちろん、「%(パーセント)」をきっかけにこれまでなかった百貨店へのルートも生まれた。反応は上々、しかし課題となったのが他の商品に比べると製造に時間がかかることだ。取引のある4,000店舗分の製造を確保しつつ、海外輸出も含めた「%(パーセント)」のニーズに応えなくてはならない。 「当社のルーツは卸売業で、今もそこが主軸です。販売傾向を細かくデータ

     香川県東かがわ市は約130年の歴史を持つ日本の手袋産業発祥の地。今も高い生産技術が受け継がれ、国内生産の約9割を担う一大産地だ。昭和52年に創業した株式会社フクシンは、全国約500社4,000店の専門店や量販店に向けて手袋を販売する卸売業を営み、設立数年で「のびのび手袋」というヒット商品にめぐりあった。増えるニーズに対応するため、海外生産が主流となる中でも自社ニット工場を備えて一貫生産体制を確立するなど、伝統産業の技術継承に力を入れている。平成27年には手袋の製造技術を活か

    し、裏起毛タイプの5本指靴下を発売、約4万足を売り上げる人気を呼んだ。 とはいえ、量販店のニーズはクオリティよりも低価格を求める傾向がある。一方、消費市場は成熟が進み、「モノ消費からコト消費へ」、すなわち物語のあるものづくりへの理解とニーズが高まりつつあった。そこで、人口減少などを受けて海外市場も視野に入ってくるようになり、平成27年にニューヨークで開催される北米最大規模の国際ギフトフェア「NY NOW KagawaJapanブース」への出展を決めた。代表取締役社長の福﨑二郎さんは、「いきなりの海外

    進出に当初は戸惑いましたが、出展してみると裏起毛靴下への反応はそこそこよかったし、何よりデザイナーの梅野聡さんと出会えたことが収穫でした」と振り返る。 高い生産技術とデザイン性で自社製品の新しい付加価値を打ち出そうとしていた同社にとって、この出会いは大きな前進となった。「社内に新しい動きが生まれました。それまで私は公的機関との連携や助成制度などにまったく無関心だったんですが、「NY NOW」をきっかけに人のつながりの大切さを教えられました。ファンドの助成も背中を押してくれた支援の一つです」と福﨑社長。梅野さんとのコラボレーションで、新ブランド立ち上げが動き始めた。

    管理しているのですが、手間のかかったものがよく売れていて、消費者は鋭いなと思いますね。売れるという手応えはつかみましたから、設備の充実を図るとともに、今後は販路の築き方がポイントだと思っています」と意気込む福﨑社長は、春夏商品や子供向けへの展開を視野に入れつつ、「%(パーセント)」を呼び水として既存商品の販路を拡大するチャンスも見据えている。

    製造力が課題、既存商品も含めた販路拡大へハイエンドなニット商品で世界に勝負をかける!

    手袋の製造技術を活用した、新たなライフスタイル服飾雑貨ブランド化事業事業テーマ

    事業のきっかけと背景

    今後の事業展開新商品にかける熱き想い!

    株式会社フクシン

    「%(パーセント)」は採算度外視ともいえる挑戦でしたが、チャレンジできたことに感謝したいです。手触り、デザイン、機能で本場にも通用するものづくりができました。苦労しつつも面白く取り組めたからこそ、このステージに立てたのだと思います!

    代表取締役福﨑 二郎 氏

    「モノ」から「コト」へ、変化する流通業界

     商品ラインナップは手袋、靴下、ニット帽、マフラー。ワンサイズ・ワンカラーに絞ってさまざまな2色を組み合わせたシンプルなデザインは、福﨑社長によれば「梅野さんの好きなように考えてもらいました。アパレルデザインを手掛けるのは初めてだそうですが、敢えて業界を知らない人に頼むのが面白いのではと思って」。技術的に実現しやすい柄・形や売れやすいカラーなどを前提とするデザインが当たり前の手袋業界では異例の潔さだが、それが既成概念を打ち破る力にもなったという。 伸縮する素材だけに、梅野さんがこだわるストライプの幅や円の表現は特に技術力が問われる。細かい指示に可

    能な限りの技術で応えるだけでなく、無縫製で立体的に編み立てる最新技術を駆使し、仕上げには職人が一組一組丁寧に裏起毛を施した。「何事も『できない』ではなく、何とかしてできる方法を考える努力をしました。一種類ごとの製造プログラムを確立するまで試行錯誤の連続でしたが、デザイン上のディテールへのこだわりは結果的にとても大切な部分だったと思います」と福﨑社長。 デザインの核となる2色の配合(パーセンテージ)にちなんで、ブランドには「%(パーセント)」と命名した。ニットとは思えないほどフィット感が高くシルエットもスマート、モダンなデザイン性と使

    欧米でも注目された高いデザイン性と技術事業化のポイント

    い心地を兼ね備えたハイエンド商品だ。平成28年6月のInterior Lifestyle TOKYOでお披露目、8月には新商品を看板に再び「NY NOW」に出展した。欧米は手袋文化が長く、メイド・イン・ジャパンだけでは実のところあまり競争力にならない。そんな中で、「%(パーセント)」は遊び心のある高品質なニット商品として注目を集めた。「NYの会場では、その場で具体的な商談が始まるんです。すぐに14社との取引が決まり、そのうち7社は追加注文が来ました」。平成29年にかけて国内外のデザインコンクールや展示会に意欲的に出展し、ドイツやロシアにも販路を確保、平成29年度のグッドデザイン賞も受賞するなど、高い関心と評価を獲得している。

    自社ニット工場で一貫生産「NY NOW」での好感触が追い風に 高いニット技術が随所に光る 一組一組丁寧に裏起毛を施す

    14 15K a g a w a I n d u s t r y S u p p o r t F o u n d a t i o n

  • かがわ中小企業応援ファンド事業 創業ベンチャー・地域密着型ビジネス支援事業 tsutaeru  ベビーシューズ

    社  名所 在 地電  話U R L

    tsutaeru高松市屋島西町2323-1 405087-813-9093http://tsu-ta-e-ru.jp

    採択年度 平成28年度

    tsutaeru会社概要

     信頼関係が深まったことで、製品のクオリティは驚くほど上がった。生地・縫製・検品オール国産、つまづき防止やかかと保護などディテールが手厚く、内外兼用で、何より鑑賞にも耐える美しさ。それを大切に納めた桐箱には、尾田さんが結んだ職人たちの物語が詰まっている。 全国展開の百貨店などに常設コーナーを設けてもらい、メディアの注目も高まる中で、尾田さんは現場の職人たちに報いる努力も惜しまなかった。「取材の際には積極的に現場をご案内しましたし、ブータン王室に献上した時は製造現場のムービーを大使にお見せして…。

     祖母が呉服屋を営んでいたことから、子どもの頃から着物に親しんだというtsutaeru(ツタエル)代表の尾田美和子さん。京都・西陣織の突出した技術と美しさに魅せられ、大学院では西陣織の研究者として職人たちと触れ合うことも多かった。「西陣織の業界は、大学とも連携して詳細な織物データを残している土壌があります。私は経営戦略の視点から切り込みましたが、その時、業界の疲弊にも直面したんです」と振り返る。 問題意識は高く、和装以外の展開に意欲はあるが、依然として家内制手工業が中心で新商品開発にかけられるコストが少ない。このような業界の現状を踏まえて尾田さんが注目したのは、香川県東かがわ市の手袋産業だった。「香川大学と連携している手袋企業の

    中に、『西陣織を使ってみたい』という会社がいくつか現れました。ここには西陣織の潜在的なニーズがあると感じたので、研究者として京都に人脈を持つ私なら、コーディネーターとしてのビジネスが可能なのではないかと直感しました」と尾田さんは当時を語る。 まったく畑違いの分野から武器もなく飛び込むなら、絶対に模倣されないオリジナリティを追求するしかない。ただの物販ではなく、伝統産業の豊かな歴史と職人技の物語を込めた、まったく新しい商品をつくりたい─。起業に際して尾田さんのビジョンは明確だったが、少ロットでサンプルをつくってくれる企業がないという壁にいきなりぶつかる。悩む尾田さんが手袋の追加調査に訪れた先で、一人のおじいさんに出会った。「有名な

    老舗ミシンメーカーの縫製技術者だった方で、この出会いがなければ起業も成しえなかったでしょう」と尾田さん。その場で口説き落とし、中・四国の縫製工場のリストをつくってもらった中に、有名ブランドのみを手掛けているというベビーシューズ専門のメーカーが国内に2社存在し、このうち1社が香川県の企業だとわかった。県内のこの企業は、皇室や英国王室にもシューズを贈った実績を持ち、詳細なノウハウがあった。西陣織の民俗学的な価値と、ベビーシューズという組み合わせは、人生の第一歩を踏み出すハレの日にぴったりのアイテムになるではないかと感じた尾田さんが話を持ち掛けると、シューズメーカーの社長も快諾し、幸先のいいスタートとなった。

    職人たちの工賃アップも社長さんに掛け合いましたよ。100%のクオリティを120%に高めるなら、その分きちんと報いる必要があると思っています」。 尾田さんが目指すのは、あくまで「物の価値を伝える」ビジネス。香川の技術と他産地のいいものを結びつけ、新しいものづくりを発信したい人はたくさんいるという手応えを胸に「製品販売」「コーディネート」の二本柱でビジネスを育てていく構えだ。今回開拓した全国的な販路も、これからの尾田さんの大きな武器になるだろう。

     ベビーシューズの中でも、日本の技術が光るのは12センチ以下。出来上がったサンプルは極めて精度の高い美しさを放ち、尾田さんも感動したという。西陣織を使う付加価値の高いファーストシューズに特化したことが奏功し、香川ビジネス&パブリックコンペ2015ではグランプリを受賞。手応えを感じた尾田さんだったが、すぐに新たな壁に阻まれる。量産ベースに乗せたところ、縫製の品質が大きく下がってしまったのだ。尾田さんがメーカーに作り直しを依頼すると、社長は難色を示した。 「量産品は一般的な品質合格ラインを少し超える程度のクオリティでいい、というのが業界の常識ですが、私は100%、120%の仕事を目指してほしかったんです。途方に暮れましたが、このままではいけないと思いました」。尾

    田さんは製品を手に複数の縫製工場を訪ね、「希望のクオリティを叶えるためには、職人たちにどう伝えればいいのか」を徹底的に調査。ものづくりを手掛ける職人たちは自分の仕事に誇りを持っているが、その価値を他者に伝える言葉に乏しい。だからこそ、対話の中で「よく気づいてくれた!」と目を輝かせる瞬間があることを尾田さんは研究生活で実感している。職人たちとの共通言語を模索し、言葉を選びつくして作った『ベビーシューズ作成依頼書』を手に、再びシューズメーカーを訪ねた。「決して歓迎はされませんでしたが、それでも家に帰り着く前に、社長さんから『やってみよう』というメールをいただけたんです」。多くの物があふれ「満足」が当たり前になった今、それでも「感動」は少ない。日本の伝統美で「感動」を伝えること、それが尾田さんの願いであることを職人たちが共有した瞬間だった。

    研究者からコーディネーターへ

    香川と他産地をつなぐ、ものづくりネットワーク

    研究者時代最大の成果は、作り手の信頼関係がクオリティや売上に大きく作用することがわかったことです。今回あらためて、この事実を胸に刻みました。海外に発信していくこと

    も視野に、模倣・流出を防ぐ対策も進めています。これからも公益性・社会性の高い商品開発で社会に貢献していきたいです!

    代表尾田 美和子 氏

    香川の職人技の「価値を伝える」ニュービジネス

    香川のものづくり企業と観光資源を活かした香川ブランドの確立事業テーマ

    事業のきっかけと背景

    今後の事業展開

    新商品にかける熱き想い!

    職人たちの意識改革を!事業化のポイント

    尾田さんのこだわりを受け止めた職人たちが、一針一針に技と誇りを込めて縫い上げる

    在インドブータン王国大使にベビーシューズを贈呈(左:尾田さん 中央:在インドブータン王国ナムゲル大使 右:ブータン王国名誉総領事)

    16 17K a g a w a I n d u s t r y S u p p o r t F o u n d a t i o n

  • テイストも滞在スタイルも異なる3棟で、旅人のさまざまなニーズに対応(❶ベルリンをイメージしたTHE BANKSビル(高松市常磐町)、❷一軒家で和風ステイ(高松市茜町)、❸大人数でもゆったり過ごせるラウンジ(高松市塩上町))

    かがわ中小企業応援ファンド事業 創業ベンチャー・地域密着型ビジネス支援事業 Traditional Apartment  AR動画、冊子

    社  名所 在 地電  話U R L

    Traditional Apartment高松市塩上町1-3-7090-2893-2640http://traditional-apt.com

    従業員数採択年度

    2名平成28年度

    Traditional Apartment会社概要

     内田さんには、まだまだ発信したい香川県の魅力がある。「ハードはひとまず3棟で十分、これ以上増やすと経営や効率を考え始めて『面白さ』が薄まってくると感じています。これからはソフトの充実に力を入れたいですね」。観光パンフレットの販売、旅行会社とタイアップしての島ツアーなども検討しつつ、第3弾のパンフレット作りにも意欲的だ。 「海あり山ありの香川県の食文化も動

     瀬戸内国際芸術祭、LCCアジア便の増加などで、香川県を訪れる観光客は国内外問わず増えている。観光客を受け入れるゲストハウスとして、平成27年にオープンしたTraditional Apartment(トラディショナル・アパートメント)。オーナーの内田大輔さんは、元銀行員だ。まだインバウンドという言葉もなかったような時代、当初は「海外から物を輸入して日本で売る」というビジネスでの脱サラをイメージしていたという。転機はドイツに住む親戚を訪ねた時のこと。「ドイツ一周旅行でいろんな宿を見て、『今は民宿が流行っている』と聞きました。特にインスピレーションを受けたのはベルリン。若

    手が工夫した宿が多くて、彼らのパワーが街にも波及しているように見えたんです。その時、高松市内に祖母がアパート物件を所有していたことを思い出し、これだ!と思いました」と振り返る内田さん。 古いアパートの1部屋を貸し出すところからスタートして、少しずつニーズが増え、現在は高松市内に3棟を確保。それぞれ「和風のアパート暮らし」「ベルリンで過ごした部屋」「2世帯住宅で一軒屋暮らし」とタイプの違う打ち出し方で物件のイメージを確立し、稼働率約60%、毎月約100人を受け入れている。 当初は宿泊客の受付や部屋の清掃などをすべて一人でこなしていたという内

    田さん。観光パンフレットがよくゴミ箱に捨てられていることに気づいた。「自分が旅行に行った時は、パンフもかっこいいから持って帰るんです。思い出になるし、誰かに旅のことを話す時のツールにもなる。何よりせっかく作ったのに、捨てられたらもったいないですよね。じゃあ持ち帰ってもらえるかっこいい冊子をつくってしまおう、と考えました」。宿泊施設は旅行者が必ず利用する場であり、情報発信にはピッタリ。宿に独自のサービスがあれば付加価値となって、稼働率安定にもつながる。外国人宿泊客らの「一般的な観光パンフにはない情報がほしい」という声も、内田さんの背中を押した。

    画にすると面白そう。香川県のコアなところを発信していく企画を充実させたいですね」と語る内田さん、イメージする香川県の姿は「地区ごとにカラーがある街」だという。「面白い街は、あそこはアート、ここは食、といったエリアごとの特色がしっかりあります。高松市を、香川県を、そういう個性ある街にしていくのが目標です」と展望を語ってくれた。

     クラウドファンディングを立ち上げ、オリジナルの観光パンフレットを制作したのがオープン2カ月後。ちょうどAR※

    技術を知ったタイミングだったこともあり、「マーカーをつけた写真に携帯端末をかざすと、写真を撮影した場所で撮った動画が再生できる」という独自のアプリを開発して、冊子と連動させた。冊子そのものは写真集のような体裁で、単品でもハイセンスな美術本として楽しめるが、ARによってさらに豊かな情報体験が可能になる仕掛けだ。 第1弾は香川県全体、各地域を紹介する内容。希望する宿泊客に無料配布し、好評を受け半年で1000部を配り切った。続く第2弾の構想は、瀬戸内国際芸術祭を意識して「島」がテーマ。瀬戸芸ではスポットが当たりにくい島に対象を絞って、瀬戸大橋のお膝元、与島をメインコンテンツに据えた。 「私たちがお客さまに提供したいのは、最高の経験です。たとえ宿からアクセスが難しい場所であっても、写真や動画

    で現地の雰囲気を伝え、香川県にはこんな場所があると知ってもらうきっかけにしたい。それが『行ってみたい』につながれば、香川県の観光客・宿泊者数も増えるはずです」と内田さん。普段はパーキングエリア内しか知らない与島の新しい風景を求め、瀬戸大橋と島の歴史を追いながら、知られざる島の表情をカメラマンとともに1年がかりでカメラに収めた。 思いがけない収穫だったのは、島の人たちとの出会い。さまざまな協力を仰ぎ、写真や動画にも登場してもらう中で、住民たちの意識が変わってきたという。「撮影した動画を編集してショートムービーも作り、島で上映会を開催したんですが、住民や元住民の皆さんが200人も集まってくださり、驚いたり喜んだりしてくれました。島の活性化につながれば、と思って作ったコンテンツが島の人たち自身にも作用して、島の将来を考える熱い空気が生まれています。映像には大きなパワーがあることを痛感しました」と、内田さんも予想以上の効果に驚く。

    他にはない面白さを発信する宿泊施設

    ソフトを充実させ、面白いまちづくりに貢献 仕事で大切にしている祖母の教えは、利益よりも楽しさやワクワク感を重視して、何より自分が楽しむこと!島の人たちとの出会いは今回の事業の最大の成果だったと思います。この基盤を大切にしながら、東京五輪開催の2020年をめどにソフトの充実を図りたいです!

    ゲストハウスオーナー内田 大輔 氏

    ARで魅せる香川のコアなコンテンツ

    集客力UPのための観光案内本と自社アプリ開発事業事業テーマ

    事業のきっかけと背景

    今後の事業展開新商品にかける熱き想い!

    予想以上のパワーを発揮する動画コンテンツ事業化のポイント

    デザインにもこだわり、

    旅の思い出の象徴となるアイテムを目指した

    観光パンフレット

    与島の風景を動画で体感!

    右記のQRコードを読み取り、アプリをダウンロードして上の写真をスキャンしてください。

    ※ARとは、拡張現実。コンピューターを利用して、現実の風景に情報を重ね合わせて表示する技術。

    18 19K a g a w a I n d u s t r y S u p p o r t F o u n d a t i o n

  • が、導入後のランニングコスト等を低く抑えることができるので、他の液圧製品とも十分戦えるだけのメリットがある。村上社長は「水圧技術の魅力を多く

    の人に知ってもらうためにも、まずは今回の段差解消機の汎用化・製品化を急ぎたいところです。骨格は仕上がっていますから、量産に向けて移動性の向上や荷重性などの試験をきちんとこなしていきたいです」と力を込める。

    水圧技術の可能性は、福祉にとどまらない。防水・防災設備などにも同社の製品が実装され、燃えない、静電気が発生しないという特性は機械加工や食品の工場設備などにも清潔かつ安全に広く応用できる。「市場の可能性はまだまだこれからです。ライバルも少なく、今は競い合うよりもみんなで業界を育てていく段階だと思っています」と語る村上社長

    ADSは「新水圧技術(Aqua Drive System)」の頭文字。水道水を作動媒体とする液圧技術で、安全安心、快適でオイルフリー、産業廃棄物が発生せず、油圧や空圧・電動に比べると圧倒的に地球にやさしい。「水圧シリンダの仕組みは、簡単に言うと水鉄砲ですね。水の力だけで、大きくて重いものが自在に動かせると思うと面白いでしょう。とにかく非常にクリーンな技術であることに胸を打たれ、これからの水圧技術市場の可能性に着目しました」と、株式会社ADSムラカミ代表取締役の村上康裕さん。さらに村上社長は続けて「この水圧技術は、前節まで従事していました㈱村上

    製作所時代に、水圧シリンダの研究・開発(約15年程前より)に取り組み、約3年の年月をかけて試験を行い、水圧シリンダの開発に成功しました。しかし、当初はまだ水圧シリンダを受けいれる市場が狭く、しばらくの間は、水圧部品関連の製造が中心でした。しかし、今から約6年程前に、地元香川県において、25年以上福祉関連機器を取り扱っておりました、㈱ヤエス殿と出会い、水圧技術が介護・福祉の分野での活用ができることがわかり、ここから本格的に、水圧技術を取入れた入浴装置の開発に着手しました。㈱ヤエス殿は独自技術において、操業当時から水圧システムを取入れた、特

    殊入浴装置を開発をし、全国の施設に数多くの特殊入浴装置の販売実績を持たれておりました」と当時を語る。さらに、平成27年には、かがわ産業支援財団主催「かがわビジネスモデル・チャレンジコンペ2015」で最優秀賞を受賞。全国紙にも取り上げられて注目され、確かな手応えが得られたものの、課題も見えてきた。「社会貢献を旨として介護福祉の市場に参入しましたが、水圧技術の普及という点で、やはり介護施設だけでは需要が伸びません。在宅介護は増加傾向にありますが、市場調査の結果、一般家庭にも思ったほどの需要はないことがわかりました。そこで、次は用途を入浴に限定せず、多目的に使えるコンパクトな商品を開発しようと思ったんです」と村上社長。このビジョンを胸に、全国規模の展示会にも積極的に出展し、水圧技術のPRを続けた。

    は、現在は京都府の企業と連携して新しい水圧システム装置の開発を進めている。「当面の目標は、技術連携を強化して生産体制を向上することです。販路拡大には製品のメンテナンスやアフターサービスも欠かせませんから、製造は当社が担当し、さまざまなジャンルの販売元を少しずつ増やしていこうと思っています」と、展望を語ってくれた。

    病院や介護施設への普及拡大ももちろんだが、村上社長が視野に入れているのは大浴場などを備えた宿泊施設への販路開拓。「旅行に行きたいけれど、体が悪くて入浴や段差に不自由するから周囲に気を遣って留守番…みたいなこともなくなり、心置きなく宿でリラックスできるはず。車の昇降やちょっとした段差もすべて1台でカバーできますから、さまざまなシーンで役立つ装置だと思いました」と村上社長は手応えを掴んだ。普段浴室内で使用しない時は、浴室

    内から取出し分解を行い、屋内外問わ

    ず、段差解消機として使用できる。従来の水圧式入浴装置に比べ、用途の幅広さと高い利便性が強みとなる。「環境保全は避けて通れないテーマです。『エコだから高い』では今や勝負になりません。現在国内で流通している多くの水圧機器は、海外製(ヨーロッパなど)ですが、それでも国内の水圧機器メーカーと連携して、水圧機器の開発に努めております」という村上社長。水圧関連機器の素材は、錆びない素材を多く使用するので、イニシャルコストが幾分割高(現在腐食を防ぐ技術も導入しコスト低減化を図っている)になる

    水で動く入浴装置のパイオニア

    業界全体を盛り上げよう!

    産業革命は蒸気エネルギー、つまり水から始まったんです。いちはやく小型化に成功した油圧が飛躍してきましたが、これからは水圧の時代。工場や車、いろんなものが水で動く日が来るかもしれません。第4のエネルギー技術として、スケールの大きい市場に挑んでいきたいです!

    代表取締役村上 康裕 氏

    多目的に使えるエコでクリーンな次世代水圧システム

    コンパクト型入浴装置兼用段差解消機開発事業テーマ

    事業のきっかけと背景

    今後の事業展開

    新商品にかける熱き想い!

    介護の枠を超えた市場の可能性を模索事業化のポイント

    開発コンセプト

    水圧シリンダ内部構造図①ピストンパッキン②ピストン軸受③ロッドパッキン④ワイパリング(ダストシール)⑤クッションシール

    防水ゲート

    かがわ中小企業応援ファンド事業 創業ベンチャー・地域密着型ビジネス支援事業(かがわビジネスモデル・チャレンジコンペ最優秀賞認定事業) 株式会社ADSムラカミ  次世代水圧システム

    社  名所 在 地電  話U R L

    株式会社ADSムラカミ高松市林町379087-814-7651http://www.ads-murakami.co.jp

    従業員数資 本 金採択年度

    3名500万円平成28年度

    株式会社ADSムラカミ会社概要

    ADS技術低コスト

    (LCAによる統合評価)

    オイルフリー(技術の進歩)

    環境安全・衛生省資源省エネ

    (市場の変化)

    20 21K a g a w a I n d u s t r y S u p p o r t F o u n d a t i o n

  • かがわ農商工連携ファンド事業 pensée(パンセ)/株式会社小豆島岬工房/花澤明春園  [colive]オリーブ盆栽新商品等開発支援事業

     商品デザインや宣伝、販路開拓は西脇さんが担当。デザイナーに依頼した都会的なロゴやパッケージで洗練された雰囲気を打ち出し、新商品としてインターネットでも発信している。SNSやイベントでの反応は上々。現在量産体制を整えつつあるが、苗木の成長や盆栽としての完成には数年かかるため、まずはブランドの知名度を高め、少しずつ販売を拡大していく予定だ。

     穏やかな瀬戸内海と海風に揺れるオリーブは、地中海を思わせる小豆島の風土を象徴する風景だ。この島でオリーブを栽培したくて東京から移り住んだ西脇美津江さんは、フラワーショップ「pensée(パンセ)」のオーナーであり、商材としてのオリーブの新しい可能性に注目していた。「ポットの苗木は味気ないし、お土産にするにはかさばり、品質も今ひとつです。手軽なお土産としてすぐに飾って楽しめる、小さくても絵になる観賞用オリーブがつくれないかと考えていました」。 盆栽教室に参加したことをきっかけに、「オリーブミニ盆栽」というアイデアにたどり着いた西脇さん。香川県は全国一の黒松盆栽の産地で、高松市鬼無

    町・国分寺町には気鋭の盆栽園が軒を連ねる。西脇さんが参加した教室は高松市鬼無町の「花澤明春園」が主催していた。同園は松だけでなく山野草(さんやそう)盆栽なども広く手掛け、こだわりの器の品ぞろえは西日本でも有数、若手や女性ファンの開拓にも一役買っている存在だ。園主の花澤登人さんにすっかり惚れ込んだ西脇さんは、小豆島で高品質な観賞用オリーブの苗木販売に力を入れる㈱小豆島岬工房の土居秀浩さんと連携し、みずみずしい感性で消費者にダイレクトに訴える「フラワーショップ」、オリーブの深い栽培知識とノウハウを誇る「オリーブ生産者」、高い盆栽技術で産地を支えてきた「盆栽生産者」の三位一体で、新しい商品開発に乗り出した。

     SNSにはアフターメンテナンスのノウハウを発信したり、愛好家が集い盛り上がる場所としての機能も期待しているという西脇さん。「いずれはオリーブ盆栽の品評会なども開催してみたいですね。coliveをきっかけに、小豆島に来てくれる人を増やすのが次のステージになるでしょう」。3人が情熱を注ぐ小さな鉢から、オリーブの島の新しい可能性が開くかもしれない。

     完成イメージは約25センチのこじんまりした佇まい。コンセプトはかわいくて若者層に受けるもの、ハイセンスで手軽なインテリアとして生活に溶け込む「実付き盆栽」だ。これまでもオリーブ盆栽に挑戦した盆栽生産者は存在したというが、なかなかうまくいっていない。毎年実をつけるよう育て、しかも量産ベースを目指すとなると、課題は山積みだった。 まずは実がつきやすく量産向きの品種を土居さんが選定し、「アルベキナ種」「チプレッシーノ種」に決定。各250本の挿し木苗を育てるところからスタートした。通常、小豆島では畑で大きく育てる苗づくりが前提で、なるべく小さく、しかも鉢に上げる苗づくりは異例のこと。挿し木は作業時期も限られる。「とにかく時間がかかる大変さを噛みしめました」と土居さんは苦笑する。 一方、花澤さんは盆栽鉢づくりに着手した。陶器の小石原焼で有名な、福岡県小石原地区の業者が全面協力、滋賀県の信楽焼の業者もカスタマイズメイドで応えてくれることになり、オリーブ盆栽のためのオリジナル鉢をつ

    くる算段が整った。そんな折、ふと気づいたことがある。通常の盆栽は手作業で針金をかけて繊細な形を作り上げていくが、とても量産できない。将来的に協力農家を加えて均一な商品を生産していく体制を確立するには、苗木をはめ込んで成型する「型」が必要なのではないか。「設計と金型に非常にお金がかかりますし、たとえ思いついても実行する盆栽屋はいないでしょう。でも年間1万鉢の量産を考えるなら必要です。ファンドの助成金に背中を押してもらいました」と花澤さん。シンプルなS字のプラスチック型「オリーブ盆栽樹形制御用治具」を開発し、周囲を驚かせた。 こうした開発の間、3人が顔を合わせたのはほんの数回だという。「目標だけしっかり統一し、後はバラバラに動いて、時々修正するんです。結果的に、想定外の面白さが生まれた気がします」と土居さんは振り返る。とはいえ、商品名はみんなで知恵を出し合って「colive」に決定。ミニ盆栽のこじんまりした風情、オリーブの丸みを思わせる頭文字の「c」などがあいまって、全員納得のネーミングとなった。

    小豆島を象徴するお土産をつくりたい 「島に来てもらう」工夫を

    花実の付き方や切り戻しの技術など、まだまだ栽培も管理も試行錯誤の連続。植物相手で思うようにいかないこともありますが、やるからには思い切りよく、とことん頑張ります!(写真 左から)代表取締役 土居 秀浩 氏店主 西脇 美津江 氏園主 花澤 登人 氏、花澤 美智子 氏

    島育ちのかわいいオリーブ盆栽をおみやげの新定番に

    特産品土産としてのミニオリーブ盆栽の商品開発と販路開拓事業テーマ

    事業のきっかけと背景今後の事業展開

    新商品にかける熱き想い!

    pensée(パンセ)/株式会社小豆島岬工房/花澤明春園

    小さくてかわいいフォルムの「colive」事業化のポイント

    社  名所 在 地電  話U R L従業員数採択年度

    pensée(パンセ)小豆郡土庄町上庄1956-10879-62-2538http://www.penseess.com1名平成27・28年度

    株式会社小豆島岬工房小豆郡小豆島町室生字小南甲1670879-75-1303http://www.misaki-koubou.jp2名平成27・28年度

    花澤明春園高松市鬼無町鬼無748-3087-881-2847http://www.hanazawa-bonsai.com3名平成27・28年度

    会社概要

    型にはめて固定し、数年がかりで形作っていくデザイナー監修の洗練されたパッケージ

    花澤さんが開発した「樹形制御用治具」

    22 23K a g a w a I n d u s t r y S u p p o r t F o u n d a t i o n

  •  高松市香川町大野地区は香東川流域の扇状地にできた平野部に当たり、土壌は水はけがよくミネラル豊富で、古くから豆の産地として知られてきた土地柄だ。中でも讃岐長莢(さや)そら豆は「大野豆」の名で人気の高い香川のブランド野菜で、戦前は稲作の裏作として県内約1800ヘクタールにも及ぶ空豆作付面積の中で、大野地区では人気の高い香川のブランド野菜「大野豆」栽培が主流だったという。「高松市の市場に売りに行けば高く買ってもらえた時代でした」と、大野豆プロジェクト事務局長の生嶋暹さん。

     ところが昭和30年代に入ると生活スタイルが一変、兼業農家が増えて農業そのものの担い手が減り始めた。特に豆づくりは機械化しにくく産業栽培が激減、現在では、農地面積もかつての4割ほどまで縮小。宅地化が進み、担い手の高齢化で休耕田や耕作放棄地も増えて、大野地区の田園環境の維持保存は大きな課題となっていた。 そんな中、大野地区のコミュニティ協議会が中心となって、平成25年に地域おこしの一環として大野豆復活プロジェクトがスタートした。「もともとJA女性部が大豆加工品を地域で販売してい

    かがわ農商工連携ファンド事業

    シンプルだが豆の旨みが活きた味わいで、すぐに同社の商品ラインナップでも主力となる商品に成長した。大量生産できないからこそ付加価値も高まる。数量限定を謳いプレミア感を打ち出す販売戦略で、地元大手スーパーマーケットを端緒に関西圏、全国へと販路を拡大し、食にこだわる消費者から高い支持を得ている。

    3アールから始まった大野豆の栽培は現在約30アールまで拡大し、400~500キロの収穫量を確保している。プロジェクトメンバーも約50人に増えた。豆づくり未経験者も多いが、作業は生嶋さんらが指示を出しながら全員で行う。環境・地域学習の場として周辺の学校にもPRし、生徒たちが作業を手伝うこともある。地域のイベントなどで販売する際には、お年寄りが「大野豆か!」と懐かしむ声も寄せられた。「一定の手応えを感じていますが、気

    候変動に伴う生育不順や虫害の増加、畑の個性による成長差など、課題が多いのも実状ですね。4~5年間隔で輪作しなければ連作障害が出ますから、作付地の確保も重要です。大きい1枚畑で栽培できれば理想的なんですが…」と、生嶋さんは栽培の安定・向上に余念がない。筒井さんも「プロジェクトの活動がしっかりしているから、安心して製造できます。人の縁で生まれた商品を、地元にしっかり根付かせていきたい」と、力強く展望を語った。

     筒井さんは豆菓子製造65年の同社3代目。祖父の代から大野豆を使っていたが、菓子原料となる乾燥豆は手間がかかる割に買い手が少なく、次第に廃れていった経緯がある。「祖父が作った製造機械は、一寸そら豆より小ぶりの大野豆に合わせた規格なんです。かつての主流ぶりがうかがえますよね。今は国産そら豆が市場にほとんど出回っていない中、いったん失われて復活した国産ブランド豆、という唯一性と物語に惹かれました」。 3代続いた店の跡継ぎとしてのんびりやってきた、と笑う筒井さんだが、数年前に地域の流通事情が変わって営業活動に力を入れるようになり、キラーコンテンツの必要性を痛感したという。そこに現れた大野豆は、「国産そら豆が原料のブランド豆菓子」の可能性を筒井さんに示した。「生嶋さんに会った瞬間、これは成功すると確信しました。製造ノウハウは既にありますから、製品化

    できればいける、という手応えもありました。生嶋さんはワールドワイドな製造業界で品質管理や環境管理システムを構築・運用し、業務をなさってきた経験があり、商品クオリティへのこだわりを共有できたことも大きいですね」。 クオリティを守る上で筒井さんと生嶋さんが一番気にしていたのは、原料となる豆の防虫対策だ。大野豆衰退の要因でもあったソラマメゾウムシの害を防ぐため、畑に防虫シートやネットを張ったり、アルミ蒸着シートを敷いたりと栽培時にいろいろ工夫を凝らしているが、100%虫がいないとは