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17 第2章 エチオピアにおける貧困層の生活実態と栄養分野に関連する問題点 エチオピアは王制廃止後、17 年間続いた社会主義政権が 1991 年に崩壊、 その後 1994 年に連邦民主共和国憲法に移行し、1995 年に現在の新政権 が発足した。旧政権下において、同国はベトナム、ウガンダ等とならび非常に 中央集権的で、しかも都市部に住む限られた人びとにしか公共サービスを提 供してこなかったために、同国では人口の 8 割以上を擁すると言われる農村 部において貧困を悪化させ、国民の信頼を失ったと言われている。新政権下 では、2002 年に持続可能な開発と貧困削減計画(SDPRP)が貧困削減ペー パー(PRSP)として採択され、ミレニアム開発目標(MDGs)が貧困削減の長 期的な目標とされた。現在、第 2 次貧困削減計画として「貧困削減のための 加速的かつ持続可能な開発計画」(PASDEP: Plan for Accelerated and Sustained Development to End Poverty 2005/2006~2009/2010 MoFED)が進行中である。現行政府は、農業生産の向上による食糧自給と 農産物の輸出を目指す農業主導型工業化及び地方分権化を戦略に据え、農 業開発を基本政策とした貧困削減と経済成長を達成しようとしている。しかし 旱魃など自然条件が厳しいために農業生産が伸び悩み、慢性的あるいは周 期的に食糧援助を必要とする地域がある一方で、農業生産が増加している 地域では、市場システムの未整備から農産物の価格が急落して農家の家計 を逼迫させている。 調エチオピア 連邦民主共和国 出典:外務省ホームページ

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第2章 エチオピアにおける貧困層の生活実態と栄養分野に関連する問題点

エチオピアは王制廃止後、17 年間続いた社会主義政権が 1991 年に崩壊、

その後 1994 年に連邦民主共和国憲法に移行し、1995 年に現在の新政権

が発足した。旧政権下において、同国はベトナム、ウガンダ等とならび非常に

中央集権的で、しかも都市部に住む限られた人びとにしか公共サービスを提

供してこなかったために、同国では人口の 8 割以上を擁すると言われる農村

部において貧困を悪化させ、国民の信頼を失ったと言われている。新政権下

では、2002 年に持続可能な開発と貧困削減計画(SDPRP)が貧困削減ペー

パー(PRSP)として採択され、ミレニアム開発目標(MDGs)が貧困削減の長

期的な目標とされた。現在、第 2 次貧困削減計画として「貧困削減のための

加速的かつ持続可能な開発計画」(PASDEP: Plan for Accelerated and

Sustained Development to End Poverty 2005/2006~2009/2010 、

MoFED)が進行中である。現行政府は、農業生産の向上による食糧自給と

農産物の輸出を目指す農業主導型工業化及び地方分権化を戦略に据え、農

業開発を基本政策とした貧困削減と経済成長を達成しようとしている。しかし

旱魃など自然条件が厳しいために農業生産が伸び悩み、慢性的あるいは周

期的に食糧援助を必要とする地域がある一方で、農業生産が増加している

地域では、市場システムの未整備から農産物の価格が急落して農家の家計

を逼迫させている。

現地調査に基づくニーズ把握

エチオピア

連邦民主共和国

出典:外務省ホームページ

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出典:CIA World Factbook から作成

1. エチオピアにおける貧困状況

現在、エチオピア人口約8100万人(200810)の内、約半数が15才未満の子供11で、77.5%が2ド

ル以下、うち39%の人が1日1.25ドル以下で生活している (購買力平価換算 2009)12。貧困削

減の長期的取組として、2015年のミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)

において、エチオピア政府は国際社会の支援を得て様々な取り組みをおこなっているが、依然と

して同国は2009年の人間開発指標(HDI)182カ国中171位、人間貧困指数(HPI)130位であり13、

世界銀行が定める43の低所得国および重債務貧困国(HIPCs)に分類されている14。

(1) ミレニアム開発目標の進捗状況

1995/96、1999/2000、2004/2005年の推移を中心に、エチオピアのミレニアム開発目標の進捗

状況、特に貧困と栄養分野に係る目標「Goal 1 極度の貧困と飢餓撲滅」をターゲット別に関連指

標と達成度15をマクロレベルで以下に概観する。

1) GDP 成長率の推移

図 2.1:エチオピアの 1 人当たり国内総生産

出典:世界銀行エチオピア事務所 国別援助計画 200816

上記図 2.1 にあるように、1991 年以前のメンギスツ社会主義政権下

及び 1998 年のエリトリア国境紛争、2002/03 年の大旱魃によって経済

成長が減速したものの、2004 年から 2008 年にかけてエチオピアは輸

出と天候の好調に恵まれた上、個人の消費拡大により 5 年間継続して

平均 11.8%の高度経済成長を達成した。しかし、2008 年に入ってから

天候不調、世界的な原油と穀物価格高騰、国内財政金融政策の失敗、

更には世界経済ショックによる海外投融資や海外送金の減少などが

重なり成長の持続性に陰りが見えている。特に原油と穀物の輸入価格の高騰は外貨不足に拍車

10 World Development Indicator 2009 11 DHS 2005 12 UNDP Human Development Report 2009 13 UNDP Human Development Report 2009. 人間開発指数は、人々の生活の質と発展の度合いを測るための指数。 14 同上及び IMF PRSPmonitorring 15 MDGs 指標リスト: http://mdgs.un.org/unsd/mdg/Host.aspx?Content=Indicators/OfficialList.htm

日本語:http://www.undp.or.jp/aboutundp/mdg/mdgs.shtml 16 World Bank, Report No. 43051-ET International Development Association Country Assisstance Strategy for The Federal

Democratic Republic of Ethiopia, April 2008

835

935

1,035

1,135

1,235

1,335

Real GDP per capita (Birr, in 1999/00 prices )

End o f Derg regime

War with Eritrea

2002/03 dro ught

図 2.2: インフレ率の推移

0%5%10%15%20%25%30%35%40%45%50%

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

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をかけ、エチオピアブルの切り下げが継続的に行われた。とりわけ高インフレは都市住民を直撃

しており17、彼らの実質所得低下とそれがもたらす所得格差の拡大は政治経済問題に発展する

可能性がある。また今後、貧困削減を中心にミレニアム開発指標を 2015 年までに達成するため

には年平均 7%の経済成長率を維持することが必要と推計されている。

表 2.1 マクロ経済動向:経済成長率(%)

出典:PASDEP 2005/06-2009/2010

中期予算計画である第2次貧困削減計画(PASDEP)では2009/10年までに対GDP農業シェアを

46.0%(2004/05)から43.9%、サービス業シェアを40.0% (2004/05)から39.6%まで減少を進

める一方、GDP工業シェアを14.0%(2004/05)から16.5%まで伸ばし、産業構造転換政策を図る

計画である。然しながら農業セクターが依然GDP内半分近くを占めており、経済成長に寄与する

割合が高く、今後も経済成長を推し進める主要な供給源として位置づけられている。

2) 世帯の家計(消費支出)の推移

2004/05年の全国平均の一人当りの年平均支出額は1,256Birr(US$146、US$1=8.6Birr 2005)18で、過去5年間で約19%増加している。一世帯当りでの支出は、都市部(平均世帯規模4.3人)

で8,209Birr(US$954)/年、農村部(4.9人)で5,620Birr(US$653)/年と推測できる。

表2.2 一人当たりの年平均支出額の推移 (1995/96年対物価比)

項 目 1995/96 1999/00 2004/05

農村 都市 全国 農村 都市 全国 農村 都市 全国

一人当たりの年平均支出額(birr) 1035 1411 1088 995 1453 1057 1147 1909 1256

成人一人当たりの年平均支出額 1250 1693 1312 1261 1751 1327 1422 2260 1541

成人一日一人当りのカロリー消費

量 1938 2050 1954 1861 2723 2606 2387 2806 2746

総消費支出に占める食費の割合 0.60 0.56 0.60 0.67 0.53 0.65 0.57 0.50 0.56

世帯規模 5.1 4.7 5.0 4.9 4.6 4.9 4.9 4.3 4.8

ジニ係数(消費支出) 0.27 0.34 0.29 0.260.38

0.28 0.26 0.44 0.30

出典:PASDEP 2005/06-2009/2010

17 食料価格の高騰が激しく、地方よりも食料を購入する都市部への影響が大きい。 18 2010 年 1 月現在 US$1=約 12 Brr 1Birr=約 7 円

セクター/指標 2000/01 2001/02 2002/03 2003/04 2004/05 2005/06 2006/07 2007/08予想

1999/00時物価比GDP 7.4 1.6 (2.2) 11.7 12.6 11.6 11.4 11.3

農業 9.6 (1.9) (10.5) 16.9 13.5 10.9 9.4 8.9

工業 5.1 8.3 6.5 11.6 9.4 10.2 11.0 12.0

 製造業(工業内訳) 3.6 1.3 0.8 6.6 12.8 10.6 10.5 12.2

 建設業(工業内訳) 8.0 16.2 13.6 19.5 7.5 10.5 10.9 12.0

サービス業(全サービス) 5.2 3.3 6.0 6.3 12.8 13.4 13.5 14.0

 流通業 5.6 4.2 5.5 6.4 14.7 14.2 15.7 12.3

  卸売、小売業

  (流通業内訳)(4.0) (4.0) 18.6 14.1 20.8 31.9 38.8 14.0

 他サービス業 2.3 2.4 6.5 6.1 10.9 12.5 11.2 15.9

  銀行、保険業

  (他サービス業内訳)11.8 (25.0) 10.8 19.7 24.2 33.5 2.5 15.8

一人あたりGDP(実質) 5.2 (1.3) (4.9) 10.5 8.8 7.9 8.1 8.0

インフレーション (7.2) 15.1 8.6 6.8 12.3 17.8 19.0(March,2008)

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所得水準 貧富の格差

1人当たり所得 Richest 10% to

PPP US$ 2007年 poorest 10%(倍)

米国 45,592 15.9ドイツ 34,401 6.9日本 33,632 8ロシア 14,690 11南アフリカ 9,757 35.1ブラジル 9,567 40.6中国 5,383 13.2インド 2,753 8.6ナイジェリア 1,969 16.3ケニア 1,542 21.3バングラデシュ 1,241 6.2エチオピア 779 6.3コンゴ民主共和国 298 15.1

参考資料: UNDP人間開発報告書2009

注:(上位10%の富裕層の所得(消費))÷(下位10%の貧困層の所得)

国名

同国は 1 日 2 ドル以下で生活する人が人口の 77.5%を占めており、人間開発報告書によると、

図 2.3 に示すように、所得水準は年収 US$779(購買力平価換算 2007)と低い。

先の表 2.2 をみると、都市部は農村部よりも 3 割ほど支出額が高く、都市部におけるジニ

係数19もこの 10 年間で 10%上昇し、所得階層間で格差が拡大しているようであるが、

同国ににおいてジニ係数 0.4 は「中程度の不平等度」と報告されている。ちなみに、図

2.3 にあるように、上位 10%の富裕層と下位 10%の貧困層間での「貧富の格差」は

6.3 倍と世界レベルでも低い。また、経済成長の恩恵がエチオピア人口の上位 20%と

下位 20%に波及し、中間層にはあまり波及しない U 型成長であると言われている20。

貧困の測定基準

「貧困ライン」は一人一日 2200Cal 相当の食

糧と、それ以外の生活必需品(衣服、居住、

教育、保健・交通費等)を得るのに 低限必

要な支出水準と定義されている。「食糧貧困

ライン」は消費食糧について品目別価格、カロ

リー、物価調整により食糧貧困人口を算出し

ている。また、同国では独自に貧困ラインに

幅を持たせて、「軽度の貧困と重度の貧困」ラ

インを設けている。

一方、以下の UNDP 人間貧困指標(HPI)によると、エチオピアはタンザニアやナイジェリアよりも

一日当たり US$1.25 以下で暮らす人の数ははるかに低いが、HDI の下記の 4 つの生活指標と

総合的にみると、同国の人間貧困指数は他国より悪いと判断され、130 位と順位を下げている。

表2.4 人間貧困指標 (Human and Income Poverty Index)

19 エチオピアでは 5 部位階層の平均値を使って消費支出の擬ジニ係数を用いて測定している。 20 World Bank, International Development Association Country Assistance Strategy for The Federal Democratic Republic of

Ethiopoia, April 2008

一日あたり 一日あたり HPI-1

US$1.25以下(%) US$2未満(%) 順位

(2000-2007) (2000-2007) (2000-2006) (2006) (1999-2007) (2005-2010)

サブサハラ地域

エチオピア 39 77.5 50.9 130 38 58 64.1 27.1タンザニア 88.5 96.6 30.0 93 22 45 27.7 28.2ナイジェリア 64.4 83.9 30.0 114 29 53 26.4 37.4ケニア 19.7 39.9 30.0 92 20 43 28.0 30.3バングラデシュ 49.6 81.3 30.0 112 48 20 46.5 11.6参考資料: UNDP人間開発報告書2009

低体重の5歳未未

満児の割合 (%)

衛生的な水へ

のアクセス(%)

15歳以上の成

人識字率(%)

40歳までの

生存確率(%)国名

Human

Poverty Index

(HPI-1)

図 2.3 世界の所得水準と所得格差

食糧貧困ライン エネルギー 貧困ライン

摂取量(年間一人当り) (1日一人当り) (年間一人当り)

Cal Birr

貧困ライン 647.81 2,200 1075.03

軽度の貧困ライン 809.76 2,750 1343.78

重度の貧困ライン 485.86 1,650 806.27

表 2.3: 2004/05 エチオピアの貧困ライン(1995/96)

出典:PASDEP 2005/06-2009/2010

US$1=8.6Birr(2005 換算) 貧困ライン 1075.03Birr=US$125

Birr

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21

3) 貧困率と食糧貧困率の推移

表 2.4 に示すように、「貧困率」(貧困ライン以下の人口比率)は、

新政府樹立後の 1995/96 年から 2004/05 年の 10 年間において

確実な減少傾向を示し、その間に 14.8%の改善をみせている。特

に、人口の 85%を抱える農村部における変化率は 17.1%と大きく、

図 2.4 からもわかるように、農村と都市部の差が狭まり、農村部に

おける貧困が緩和傾向にある。

表 2.5: エチオピア: 貧困の推移 (Total Poverty)

貧困指数 (%) 変化率 (%)

指標 1995/96 1999/00 2004/051999/00

-1995/962004/05

-1995/96 2004/05

-1999/00

国 貧困率 45.5 44.2 38.7 -2.7 -14.8 -12.0貧困の深度 12.9 11.9 8.3 -7.7 -35.4 -30.0貧困の重度 5.1 4.5 2.7 -12.2 -47.1 -39.8

貧困率 47.5 45.4 39.3 -4.4 -17.1 -13.4貧困の深度 13.4 12.2 8.5 -8.9 -37.0 -30.8貧困の重度 5.3 4.6 2.7 -12.9 -48.3 -40.6

貧困率 33.2 36.9 35.1 11.1 5.9 -4.7貧困の深度 9.9 10.1 7.7 2.0 -22.1 -23.6貧困の重度 4.1 3.9 2.6 -7.1 -38.2 -33.5

出典: PASDEP 2005/06-2009/10 MoFED

また、貧困層が貧困ラインをどの程度下回っているかを示す「貧困の深度(Poverty Gap Index)」

と、貧困人口間における所得配分の状況を示す「貧困の重度(Poverty Severity Index)」は、

1995/96 年から 2004/05 年までの変化率をみると大きく改善されていることが分かる。

なお、相対的貧困率を絶対数で見た場合、貧困者の実数は 1999/00 年から 2004/05 年にかけて

の 5 年間で、28,063,909 人から 27,523,414 人と、約 54 万人(約 2%)減少したことになる21。

表2.6: エチオピアの食糧貧困の推移(Food Poverty)

貧困指数 (%) 変化率 (%)

指標 1995/96 1999/00 2004/051999/00

-1995/962004/05

-1995/96 2004/05

-1999/00

国 貧困率 49.5 41.9 38.0 -15.5 -23.3 -9.2貧困の深度 14.6 10.7 12.0 -26.8 -17.5 -12.8貧困の重度 6.0 3.9 4.9 -34.5 -18.4 -24.5

貧困率 51.6 41.1 38.5 -20.4 -25.5 -6.5貧困の深度 15.2 10.3 12.1 -31.9 -20.5 16.8貧困の重度 6.2 3.8 4.9 -39.2 -21.5 29.0

貧困率 36.5 46.7 35.3 28.0 -3.3 -24.5貧困の深度 10.7 12.7 12.1 18.4 9.0 -8.0貧困の重度 4.4 4.7 4.8 6.8 8.4 1.5

出典: PASDEP 2005/06-2009/10 MoFED

また、「食糧貧困率22の推移」をみてみると、国平均で食糧貧困率は 1995/96-2004/05 年の 10 年

間で 11.5%減少しており、その間の変化率は 23.3%と大きな貧困削減をみせている。しかし一方

で、2002/03 年の旱魃があった期間は、食糧貧困率が約 8%悪化し、農村部ではその影響を受け

21 PASDEP 22 低限のエネルギー摂取量に必要な食糧を購入できる支出額を基準とする。

0

10

20

30

40

50

60

1995/96 1999/2000 2004/05

全国 農村 都市

図 2.4: 貧困人口の推移

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1999/00-2004/05 年では 6.5%という低い改善率に留まっており、「深度と重度(gap index)」に及

んでは大きく後退し、多くの人々が 1 日必要な 2200 キロカロリー摂取量を下回る栄養状況にあっ

たことが見て取れる。こういった外部ショックに対するエチオピアの脆弱性は、貧困削減の成果を

一進一退させる大きな要因であることが分かる。

これらの改善は、主に農村部で実施された貧困削減政策(小規模農家の商品化支援、食糧安全

政策、セーフティネット政策等)の効果が大きいとされている23。しかしながら、2004年以降の高い

経済成長によって更なる貧困者率の減少が見込まれる一方、激しいインフレによる食糧価格の高

騰のため都市部での貧困率が増加傾向にあると推定されている24。

4) 貧困層の特徴

次に、貧困層の特徴を「世帯規模」「性別」「教育」「職業」を図2.5~2.8(PASDEP 200725)に示

す。

図2.5 図2.6

エチオピアの世帯規模は表2.2でも示したように、平均5人である。ここでは世帯規模が増えるにつれて貧困層

が大幅に増えていることが分かる。

農村部では父子家庭に高い貧困率が見られる一方

で、都市部では逆に母子家庭に高い貧困率が見られ

る。農村部の家庭の約20%と、都市部の家庭の約

40%は母子家庭であると推計されている。

図2.7 図2.8

上記の表から、中等教育を終了していないと貧困層が

増すことが分かる。2007年時点で、学齢期にある子供

(7-14歳)の粗就学率91.6%、純就学率78.6%に達して

いるが、中途中退・落第が多いことが問題となっている。

手工芸や単純労働者などインフォーマルセクターに も貧困層の割合が高い。

5) 飢餓人口と栄養不良

エチオピアの飢餓人口の主要原因は食料不足にある。低い農業生産性、度重なる旱魃が食料不

23 PASDEP 2005/06-2009/2010

24 World Bank, International Development Association Country Assistance Strategy for The Federal Democratic Republic of

Ethiopoia, April 2008 25 PASDEP Annual Progress Report 2006/07 Ministry of Finance and Economic Development, December 2007, Addis Abeba

2.6 5.814.1

21.9

33.3

43.651.5

58.563.5

家族サイズから見た貧困率(%)

39.9 40.6

34.133.9 32.737.2

国全体 農村 都市部

性別から見た貧困(%)

父子家庭 母子家庭

41.236.7 37.4

30.9 29.6

19

10.3 7.8

教育から見た貧困(%)

5.1

15.719.9

23.828 29.7

38.7

48.7

職業から見た貧困(%)

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足の主な要因であり、国民の約 10%に当たる 780 万人が慢性的な食料不足に陥っている。2008

年の食糧危機では更に 600 万人が食料不足となった26。森林や植物伐採による土壌侵食も激しく、

約 6 年毎周期的に旱魃が発生し、年毎の農作物の収穫量が変動する。そのため、飢饉が起こり

やすく、特に収穫期の前には食料不足に苦しむ人が多い。又、非効率的な農業市場システム、未

発達の交通・通信網、HIV/AIDS の流行による一家の稼ぎ頭の不在27等も理由にあげられる。

食料不足と貧困にかかわるもう一つの要因として、人口増加がある。エチオピアの人口は現在

アフリカでナイジェリアに次いで 2 番目に人口が多く約 8100 万人(2008 世銀)、年間人口増加

率 2.6%28である。20 年以内に人口が 1 億人まで増加すると推計されている。

また、2008 年以降の世界経済の低迷、高いインフレ率や天候不順などの外部からのショックによ

って、同じような食料不足に陥ると懸念されている29。

図 2.9 食料不足の地域 (推計)

食料不足の地域は、旱魃の年によって状況は変わるが、

ソマリ州、南部諸民族州、北部のティグレ州やアファー

ル州で食料不足が慢性的に起きている(図 2.9)。

人々は飢餓や貧困を避け、安定した雇用を求めてアディ

スアベバ等の都市部に移住している。アディスアベバの

人口はおよそ 400 万人(2008)、平均人口増加率は 8%

であり、その人口の 68.7%が地方からの移住者である30。このような急激な人口増加に対して、国連人口居住

計画は2024 年にはアディスアベバの人口が1,200万人

にまで増えるという試算を出している31。

ミレニアム開 発 目 標 「Goal1:貧 困 と飢 餓 の撲 滅 」の指 標 として、「飢 餓 人 口 」と「発 育

阻 害 の 5 歳 未 満 児 の割 合 」を過 去 10 年 の推 移 32でみてみると、図 2.10、図 2.12 に

示 すように大 きく改 善 がみられる。特 に発 育 阻 害 (Stunt ing)の子 供 の割 合 は、20%

も減 少 している。これは、ユニセフや WFP などの支 援 のもと政 府 の食 糧 支 援 や母 子

保 健 活 動 (ビタミン・たんぱく質 補 給 、ミネラル添 加 など)によるところが大 きいが、重 ・

中 度 栄 養 不 良 の子 供 の指 標 (図 2.11)の改 善 にはさらなる支 援 が必 要 である。

26 Coordination Team of the UN System High-Level Task Force on the Global Food Security Crisis, Ethiopia Full Country Visit

Report, April 2009 27 UNAIDS (2007)。エチオピアの労働人口の 2.1%が HIV 感染者である。 28World Development Indicators database (2008) 29 High Level Task Force on the Global Food Security Crisis, Ethiopia Country fiche, October 2009 www.un-foodsecurity.org 30 CGIAR/International Food Policy Research Institute (2008) 31 UN HABITAT (2008) Ethiopia: Addis Ababa Urban Profile 32 MDG ホームページ エチオピア国指標(DHS 2005) http://mdgs.un.org/unsd/mdg/Search.aspx?q=ethiopia&Provider=Data

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24

図 2.10 図 2.11

図 2.12 図 2.13

出 典 :UNDP Mi l l en ium Deve lopment Goa ls Ind ica tors E th iop ia Coun t ry Da ta から作 成

都 市 部 の飢 餓 人 口 の割 合 (図 2.10)が悪 化 傾 向 にある。これは、前 述 したように、貧

困 や安 定 した仕 事 を求 め、首都部への人口流入によるものであるとされている。都市部の急

激な人口増加は、高い失業率(31.4%)、供給を上回る需要による物価高、住宅の不足、環境劣

化等の深刻な問題を引き起こしており、村では存在する相互扶助(非公式なソーシャルセーフティ

ネット)もないため、食糧を入手できずに物乞いに頼る者もいる。また、アディスアベバに移住して

「食糧状況が改善した」と答えた人は全体の 44%、「状況が悪化、または、変化が見られない」と

答えた人は 40.6%、残りの 15.5%が「比べられない」とし、農村から首都に移住してきたものの、

必ずしも食料不足が解消された訳ではないことが分かる。

(2) エチオピアの栄養不良問題の現状

エチオピアは世界で も栄養不良児が多い国である

5 歳未満児の半数が慢性栄養不良(47%、2005)

死亡リスクが高く、すぐ治療が必要な急性栄養不良は全体の 1~2 割(130 万人)

貧血やビタミン欠乏など微量栄養素欠乏は 900 万人33

33 Demographic and Health Survey 2005

25

30

35

40

45

50

55

1995/96 1999/2000 2004/05

Goal 1C 飢餓人口の割合(%)

全国 農村部 都市部

0

10

20

30

40

50

60

70

80

1992 1998 2000 2005

Goal 1C 重度・中度栄養不良の5歳未満児

と飢餓人口の割合 (%)

中度栄養不良 重度栄養不良 飢餓人口

30

40

50

60

70

1995/96 1999/00 2004/05

Goal 1C 発育阻害の子供の割合 (%)

男児 女児 全体

0

50

100

150

200

250

1900 1995 2000 2005 2007

Goal 4A 乳児・小児死亡率(1,000生児

出生に対す割合)

小児(5歳以下) 乳児(0‐1歳)

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25

図 2.14: 5 才未満児の栄養・健康状態 (地域別)

表 2.7 と図 2.14 にみるように、子供の栄養状況

は農村と都市部においてかなり改善を見せてい

るが、カロリー・栄養不足の子供の割合は慢性

的に多く、農村・都市部にかかわらず、約 5 割の

子供が栄養不足である。前述の図 2.11 にも示し

たように、重・中度栄養不良の子供の改善変化

が小さいのは、食料不足だけはなく、その他の

要因(表 2.8)が大きく関わっているためである。

エチオピアでは、栄養不良の要因に関する調査

が全国的に 5 年おきに実施されおり、その調査

の結果の一部を以下に整理した。

表 2.7: 子供の栄養・健康状態 (農村‐都市)

居住地域 栄養・カロリー不足率 5 歳未満の低体重児率 5 歳未満児死亡率 飢餓指数

2000 2005 2000 2005 2000 2005 2000 2005

大都市 73.5 53.1 16.0 12.8 12.1 7.8 33.5 24.6

小都市 85.4 51.9 41.4 27.1 16.1 10.6 47.6 29.9

農村 63.4 45.0 48.5 39.5 19.0 13.3 43.6 32.6

国全体 65.9 46.0 47.2 38.4 18.8 13.2 43.9 32.5

出典:ESSP Disccusion Paper 2009、IFFIR EDRI

表 2.8: エチオピアにおける栄養不良の要因(DHS 2005)

直接原因 根本原因 背景要因

不十分な食物摂取 食事から摂取できる

カロリーや栄養素が

不十分 疾病 ARI34

、下痢、発熱、

マラリア等 (有病率 12-20%)

食料不足(フード・セキュリティー) エチオピア国内で約 1500 万人が食料不足に陥っており、その

半分以上は慢性的食料不足状態にある。 不適切な母親や子どものケア 出産直後の授乳がおこなわれない(69%) 出生後 6 ヶ月間の完全母乳ができていない(49%) 6‐9 ヶ月での離乳食の開始がおこなわれない(54%) 離乳食やその後の食事の質や量、頻度が不十分である 予防接種を完全に受けない(20%) 下痢時の経口補水液を与えない(37%) 標準的な妊産婦診察を受けない(12%) 保健サービスのアクセスの悪さと不衛生な環境 保健サービスの質やカバー率が低い 安全な水やトイレへのアクセスが低い

差別・偏見 女性の地位の低さ

過重な労働 貧困 経済的・人的・物的な

資本の不足 政策面の不備

34 急性呼吸器系疾患

0.0 

10.0 

20.0 

30.0 

40.0 

死亡率 カロリー・栄養不足 低体重児

出典:ESSP Disccusion Paper 2009、IFFIR EDRI

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26

1) 母乳と離乳食の関係

ほぼ全ての母親(96%)が母

乳を少なくとも一度は与えてお

り、平均授乳期間が 26 ヶ月間

であることなどから母乳による

育児が一般化しており、粉ミル

クの使用は 1 割前後である。7

割以上の母親が出産後 1 時間

以内に授乳しているのは、母

乳の出具合をよくし、出産後の

出血を減らす効果がある。しか

し、半分近くの母親が出産後 6

ヶ月になる前に飲み物や食べ物を与えており、これは も栄養価が高く、免疫効果があり、かつ

安価な母乳という子どもにとって 善の「食糧」の摂取を妨げるだけでなく、雑菌やウイルスによる

感染リスクを高めるという意味で栄養不良の極めて大きな原因になっている。このように母乳は乳

児にとってベストな栄養源であるものの、子どもの発育に伴って 6 ヶ月以降は母乳だけでは十分

な栄養素を摂取できず、いわゆる離乳食(Complementary Food)が必要になる。エチオピアでは

6-9 ヶ月期に母乳に加えて離乳食が与えられているのは半数にすぎなく、その栄養素も非常に乏

しいものになっている。6~15 ヶ月期に子どもの栄養不良の割合が激増する(図 2.15)のは、この

ように離乳食が十分に与えられないことに大きく関連すると言って良い。

2) 栄養価の低い食糧と離乳食の重要性

6~24 ヶ月時の子どもが摂取する食べ物を見ると、大部分(70%)が穀類を与えているが、その他

の食べ物は乏しいといってよい。たとえば果物や野菜などビタミン A を豊富に含む食材(14%)や、

体の発育に欠かせない蛋白源である肉、魚、卵などの食材(10%前後)が与えられるのは非常に

少ないのが現状である。慢性的食料不足にあるエチオピアにおいて、特に貧困層が栄養価の高

い食材を手に入れにくいのは言うまでもないが、それに加えて多様な食材が子どもの発育にとっ

て重要であるという知識や意識が母親に欠如していること、そして母親が過重な労働のなかで十

分な時間を育児に割けないことも、栄養価の低い離乳食を与えている背景になっている。

このように通常の食事から摂取できる栄養素が極めて限られている状況下、微量栄養素やカロリ

ーを人工的に添加したいわゆる「ベビーフード」(離乳食)を食べることのできる子どもは非常に少

ない。市販の離乳食が一般市場にあまり出回っておらず、国際機関などから限定的に配布される

栄養補助食以外にアクセスできないこと、そして母親がその存在すら知らないか、あるいはその

重要性を認識できていないことなども背景にある。

図 2.15: 5 歳未満児の栄養状態の推移(DHS2005)

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3) 栄養不良を引き起こす他の原因

このほか、予防接種を完全に受けている子ども(12~24 ヶ月)がたった 2 割前後であることは感染

症の罹患リスクが高くなり、ひいては栄養不良を引き起こす主な要因のひとつである。また、急性

呼吸器系疾患(ARI)、発熱、下痢など頻繁に起こる疾病時に適切な処置を施すことができない母

親は、疾病によって子どもの体重を急激に減らして急性栄養不良に陥らせることが多い。さらに、

病気になった子どもが治療を受けられる医療施設へのアクセスは限られている。エチオピアには

115 の病院、412 の保健センター、2452 のヘルス・ステーション、1311 のヘルス・ポストが存在す

るが、これらのサービスへのアクセスは 51.5%と推定されている35。国内総生産のわずか 5%を

占める保健セクターへの投資は多くなく、保健人材、薬品、医療機材が不足している。また、患者

から見れば、高い医療費、医療に対する不信感、伝統医療への依存等の問題もあり、家族や子

供が病気になっても医療施設に連れていかないことも多い36。また、トイレの始末(21%)などの基

本的な衛生の習慣がない、あるいは飲料水やトイレなどの施設がないことは下痢への感染を引き

起こす大きな要因でもある。

4) 女性の地位の低さ

このような、直接的・根本的要因に加えて、子供の栄養不良の背景には、女性の地位の低さとい

う問題がある。エチオピアの女性は、就学率、識字率、専門職への就職率、家庭における意思決

定権等の様々な面において、男性よりも低い立場にある。このことは子供の栄養不良にも関わり、

次のような問題が起こりうる:①母親の妊娠前後の過重労働による妊産婦ケアの不足、また、そ

れに伴う出産リスクの増加、②母親の栄養不足による低体重児の出産リスクの増加、③母親の

家庭における地位や教育レベルの低さにより、子供の栄養にお金をかけられない、子どもが病気

になった時に病院に連れていきにくい、等の問題もある。

35 Federal Ministry of health, UNICEF Addis Ababa, MOST (2004) Guideline for the Enhanced Outreach Strategy (EOS) for Child Survival Interventions 36 Central Statistical Authority (1999) Report on the 1998 Health and Nutrition Survey

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2. エチオピアにおける貧困層の生活実態

(1) エチオピアにおける BOP 層の特定

以上、エチオピアにおける貧困層の人口に占める割合及びその推移を概観したが、ここでエチオ

ピアにおける BOP 層の定義を明確にしておきたい。世界資源研究所によると、年間所得が

3,000 ドル(購買力平価換算)以下と定義される BOP 層は地球規模で 40 億人いるとされ、エチオ

ピアにおける BOP 層は 2005 年時点の全人口の 95%(約 6560 万人)、総所得に占める割合は

85.8%に及ぶ37(図 2.16)。一方、先述したように 4 割近い(38.7% 2005 年)約 2700 万人が貧

困ライン以下で生活しており、この層は BOP 層のなかでも極めて購買力が小さく、ここでは市販

商品の潜在的消費者というより援助物資の受益者と定義することとする(図 2.17)。したがって、

本調査では図 2.17 に示すように、ターゲット商品の潜在的消費者を貧困ライン以上、$3000(購

買力平価換算)未満の人口を主な対象とする。

図 2.16: 世界の BOP 層の概念 グローバル(左) と エチオピア(右)

出典:World Resource Institute (2007) The next 4 Billion: Market size and business strategy at the Base of the

Pyramid.

図 2.17:エチオピアにおける BOP 層とターゲット商品の関係

出典:GLM 作成

37 世界資源研究所の「次なる 40 億人」はエチオピアの BOP 人口層を 6560 万人、全人口の 95%と算出しているので、総人口

6905 万を元に計算されていることが分かる。一方、2008 年の人口は約 8100 万人(世銀)に増加しているので、貧困ライン以下を

含める BOP 層は約 7700 万人に増加していると推定される。

BOP ライン

95%

38.7%

貧困ライン

国際機関による援助物資

市販

商品

6,560 万人

95%

< $3,000

> $20,000 裕福層 5%

BOP 層 840 億 PPP-US$

中間層 12.5 兆 PPP-US$

裕福層

40 億人

15 億人

3 億人

< $3,000

< $3,000-20, 000

> $15,000

Bottom of the Pyramid 5兆PPP-US$

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次に、BOP 層の支出、その内の食費支出、食費の内容を見ていきたい。エチオピア政府が実施し

た家計調査(Household Income, Consumption and Expenditure (HICE) Survey 2004/05)

は、

人口を支出別に 貧困層から 裕福層まで 5 つの階層に分類している(図 2.18)。ここで各支出

階層と先に定義した BOP 概念との関係性は以下に示したとおりである。

95%

図 2.18: エチオピアにおける BOP 層の特定

1- 下層 2-下層 3-中間層 4-上層 5- 上層

更に、エチオピア政府が実施した Demographic and Health Survey 2005 のサンプル調査による

と、1- 下層~4-上層は主に地方に、 裕福層に当たる 5- 上層は都市部に集中している傾向

が表 2.9 から分かる。エチオピアの総人口の約 85%が農村部に分布することから、都市部に住む

裕福層の人口数は 2008 時点の総人口約 8100 万人を基にすると約 1200 万人となる。潜在的

BOP 層を 3~5 の階層と仮に想定すると約 4500~5000 万人規模が算出される。

表 2.9 支出階層別の地理的人口分布の割合

1- 下層 2-下層 3-中間層 4-上層 5- 上層

都市部 0.3% 0.7% 1.3% 5.1% 92.6%

地 方 22.7% 22.6% 22.5% 22.0% 10.1%

出典:Demographic and Health Survey 2005

一方、2007 年に行われた他の研究によると(オックスフォード大学のジャンルイ・ワーホルツ氏)、

エチオピア人口のほとんどである 99.4%を BOP 層であると特定し、BOP 人口を 7090 万人と算

出し、図 2.19 のように人口層を購買力平価ドル$1, $2, $5, $8 別に分けている38。本報告書はこ

の定義は使用しないが、エチオピア BOP 層の概観のために、参考として掲載する39。

図.2.19 エチオピアにおける BOP 層人口区分

出典:Jean-Louis Warnholz (2007) “Poverty Reduction for Profit? A critical examination of business opportunities at the

Bottom of the Pyramid” QUEWPS160 から作成

38ワーホルツ氏は改訂前の PPP$1 を使用しているが、本報告書では、世銀改訂後の PPP$1.25 を使用している。 39 逆算すると、全人口を 7090 万人と設定していることが分かる。

援助物資受益者 市販商品潜在的受益者

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30

尚、データは古いが世銀によると、1999-2000 年の階層別支出配分は表 2.10 のように、上層に

いくに従って、支出額が多くなっている特徴が見てとれる。先述のように、エチオピアでは 1 日 2 ド

ル(購買力平価換算)以下で生活している人口が 77.5%を占めるため、数少ない人口によって多

くの消費がされている、つまり階層別に見ると逆三角形型の支出構成であることが分かる。

表 2.10 階層別支出別配分

1- 下層(20%) 2-下層(20%) 3-中間層(20%) 4-上層(20%) 5- 上層

(20%)

9.1% 13.2% 16.8% 21.5% 39.4%

出典:2007 World Development Indicators

また、将来の推定人口(表 2.11)にも示すように、国連はエチオピアの人口が 2020 年までに 1 億

人を超えると試算している。その中で、15 才未満の子供の割合は 2010 年の 42.8%から 2030 年

には 35.2%と低下するが、人口増加を考慮すると子供の絶対数は 4500-4800 万人と平行線を辿

る予測である。今後の推計人口の増加のもと経済発展などを考慮すると、将来の市販商品の購

買層が見込める。

表 2.11 エチオピアの推計人口:

人口・年齢構成の推移(1950~2050 年) 図 2.20 エチオピアの行政単位

年平均 中位

1,000人 女(%) 増加率(%)

15歳未満

65歳以上

年齢(歳)

1950 18,434 50.5 ... 44.1 3.0 17.91960 22,942 50.4 2.2 44.5 2.6 17.71970 29,831 50.4 2.7 45.3 2.6 17.31980 37,138 50.4 2.2 45.6 2.7 17.11990 51,148 50.4 3.3 45.8 2.7 17.02000 69,388 50.3 3.1 45.5 2.8 17.12010 89,566 50.2 2.6 42.8 3.0 18.22020 112,896 50.2 2.3 39.3 3.3 19.92030 137,052 50.1 2.0 35.2 3.9 22.22040 160,781 50.1 1.6 31.0 4.8 24.92050 183,404 50.2 1.3 27.7 6.2 27.8

出典:UN, World Population Prospects 2008  http://esa.un.org/unpp/

従属人口(%)年次

総 人 口

地域(Region) 約 700万人

ゾーン(Zone) 約 100万人

郡(Woreda) 約 13万人

村(Kebele) 約 1万人

人口規模

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31

表 2.12 支出階層別に見た主な生活消費項目に対する一人当たりの支出(全国)40

項 目 支出階層 単位:ブル(Birr)/年

1- 下層 2-下層 3-中間層 4-上層 5- 上層 平均

食料品及び非アルコール飲料 665.92

(56.93%)

735.65(58.0%)

806.12(57.6%)

888.82(56.0%)

1060.56 (41.67%)

863.86(50.89%)

アルコール飲料及び煙草 20.3

(1.74%)

17.09(1.35%)

15.26(1.09%)

20.01(1.26%)

20.91 (0.82%)

18. 83(1.11%)

衣類及び履物 55.85

(4.77%)

74.33(5.86%)

94.65(6.76%)

110.8(6.98%)

234.43 (9.21%)

127.26(7.5%)

住居用の水・燃料・エネルギー 309.32

(26.44%)

280.8(22.14%)

274.22(19.59%)

272.73(17.18%)

427.94 (16.81%)

320.51(18.08%)

家具及び維持費 26.8

(2.29%)

35.67(2.81%)

43.97(3.14%)

58.19(3.67%)

151.54 (5.95%)

72.32(4.26%)

家の修繕 9.42

(0.81%)

11.18(0.88%)

13.55(0.97%)

17.07(1.08%)

60.25 (2.37%)

25.87(1.52%)

保健医療 5.73

(0.49%)

8.26(0.65%)

8.52(0.61%)

10.97(0.69%)

22.7 (0.89%)

12.48(0.73%)

教育 5.94

(0.51%)

7.99(0.63%)

10.71(0.77%)

13.22(0.83%)

25.99 (1.02%)

14.3(0.84%)

その他(交通費・通信費等を含

む) 70.42

(6.02%)

97.41(7.68%)

132.49(9.47%)

195.39(12.31%)

540.90 (21.26%)

241.92(15.07%)

一人当たりの支出合計 1169.7 1268.38 1399.49 1587.2 2545.22 1697.35

出典:HICE Survey 2004/05

参考までに、支出階層別に消費動向を見てみると、貧困層の家計に占める食費の割合は高く、5

割を超える。その割合は、一般傾向として低所得者層から高所得者層に上がっていくに従って下

がるが、同国では 1- 下層から 4-上層まではあまり大きな差はない。しかし、4-上層と 5- 上層

の差は大きく、約 14%の支出差がみてとれる。ユニセフ41によると、支出階層別に子どもの栄養

不良率を比較したところ、 も貧しいグループから 2 番目に裕福なグループまであまり差がなく、

「一番裕福なグループ」と「それ以外」との間には格差が存在するが、「それ以外」の中では経済レ

ベルに関わらず栄養不良が存在することが報告されているおり、上記の階層 2~4 までの食費に

係る支出額とも符合する。従って、図 2.18 で BOP 層を特定する上でも本分析を参考とした。

その他の支出階層別の特徴として、水・燃料・エネルギーにかかる支出が貧困層の家計に占める

割合は高く、所得が上がるにつれ、割合は低くなっていく。アルコール飲料及び煙草も同じである。

こうして見ると、食料品及び非アルコール飲料と水・燃料・エネルギーは生活必需品であることが

分かる。反対に、衣類・履物、家具及び維持、家の修繕、保健医療、教育、交通・通信等に関わる

支出の割合は、高所得者層になるほど上がり、それらはある程度生活にゆとりがないと支出でき

ない贅沢な支出であることが分かる。

次に、食費の内容(表 2.13)をみると、全支出階層において、「穀類」にかかる支出が も高く消費

されているが、「穀物類」、「豆類」、「インジュラその他の加工食品」、「スパイス」、「コーヒー豆」、

「自家製食品」は収入が増えるに従って需要が減る下級財であり、「肉類」及び「油脂」は収入が増

えるに従って需要が上がる正常財であることが分かる。このことから、低所得層ほど、食事に占め

る炭水化物(穀物類、インジュラその他の加工食品等)の割合が高く、逆に、たんぱく質(肉類)と

油脂は低く、栄養のバランスが悪いことが推測される。エチオピア人の一日当たり平均摂取カロリ

ーの内、その 6 割が炭水化物からである。この事実は同国の栄養問題との関りが深い。

40 なお、国際金融公社(IFC)は、開発途上地域において 1 人当たり年間所得が 3,000 ドル以下の世帯を BOP 層と定義している

が、一般的に支出に比べて収入に関するデータは不確実性が高く、乏しいため、収入によるデータはここでは使用しない。

41 UNICEF 協会ホームページ

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32

表 2.13 支出階層別に見た食費に対する一人当たりの支出額(全国) 単位ブル(Birr)

支出項目 1‐ 下層 2‐下層 3‐中間層 4‐上層 5‐ 上層 平均

穀類 266.26

(22.8%)

309.02(24.4%)

340.82(24.4%)

367.68(23.2%)

389.58 (15.3%)

345.45(20.4%)

豆類 53.43

(4.6%)

59.97(4.7%)

64.31(4.6%)

70.31(4.4%)

73.81 (2.9%)

66.17(3.9%)

インジュラ(パン)・他の加工食品 28.54

(2.4%)

25.05(2.0%)

23.59(1.7%)

24.39(1.5%)

31.8 (1.3%)

26.9(1.6%)

肉 19.35

(1.6%)

27.69(2.2%)

34.81(2.5%)

43.0(2.7%)

69.49 (2.7%)

42.78(2.5%)

油脂 15.02

(1.3%)

21.93(1.7%)

26.91(1.9%)

34.79(2.2%)

58.13 (2.3%)

34.7(2.0%)

フルーツ 2.63

(0.2%)

3.79(0.3%)

3.76(0.3%)

3.39(0.2%)

4.43 (0.2%)

3.72(0.2%)

香辛料 29.51

(2.5%)

28.12(2.2%)

29.0(2.1%)

30.15(1.9%)

33.2 (1.3%)

30.3(1.8%)

ジャガイモなどの塊茎. 40.51

(3.5%)

50.7(4.0%)

60.93(4.4%)

79.09 (4.5%)

79.2 (3.1%)

64.09(3.8%)

コーヒー豆 24.33

(2.1%)

25.18(2.0%)

28.81(2.1%)

29.15(1.8%)

30.63 (1.2%)

28.2(1.7%)

自家製食糧 79.88

(6.8%)

53.46(4.2%)

45.87(3.3%)

44.75(2.8%)

47.55 (1.9%)

51.66(3.0%)

出典:HICE Survey 2004/05

(2) 貧困の悪循環

現地調査を通して都市部や都市郊外の貧困層の生活実態をいくつかのケースについて掘り下げ

た。その結果、貧困生活の背景には多くの要素が複雑に絡み合っていることがわかった。この要

因には、劣悪な居住環境、病気や不健康状態、教育レベルの低さ、女性の地位の低さ、孤独、政

府補助金など保護制度の欠如、就業機会の欠如、技能や知識の不足、資金借り入れのアクセス

がないこと、などがある。 これらの要因は互いに影響しあって悪循環を作っており、現状でこの負

の連鎖を断ち切るのは容易でない。このような厳しい環境においてさえ、貧困層の母親は限られ

た選択肢の中で安く有用な生活物資を購入し、また特に子どものために優先的に支出をしている

ことがわかった(図 2.21)。

図 2.21:エチオピアにおける貧困層の負の連鎖(概念図)

教育のレベルの低さ

病気や不健康

な状態

女性の地位の低さ

技術や知識の不足

保護制度の欠如 資金への

アクセスがない 孤独

劣悪な居住環境

こうした環境においてさえも、貧困層の母親は限られた選択肢の中で安く

有用な生活物資を購入し、特に子供のために優先的に支出をしている。

貧困の背景に

複雑に絡み合

う悪循環

出典:GLM 作成

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Case 1: アディスアベバ郊外に住む Uteynesh さん一家の生活

Uteynesh さんは年齢 50 才、教育は受けたことがない。夫に先立た

れ現在は無職。2 人の子どもと孫 1 人の世話をする。娘は現在 20

才。10 代で出産したときに退学、息子は 16 才でいま就学中(8 年

生)。娘が時々家事を手伝ってくれている。以前は、日にバケツ

(jerry can)2 つ分の水を購入していた。政府の水料金は、1 缶あた

り 0.60 ブル、市販であれば 0.75 ブル(Birr)の費用がかかる。孫が

生まれて日に 3 回水浴びをさせるので、2 ヶ月前に頼母子講で水道

(460ブル)を自宅に設置した。水道代は、7ブル/1m。孫には沸かせ

た牛乳を日に 4 回飲ませている。インジェラは 4 日毎に焼いて作って

いる。無くなった夫(皇帝兵士)の年金は、月 60 ブルのみで足りない

ので、地酒(ローカルビール)を作って販売している。この家には 32

年前に引っ越してきた。貧しい人には村落(Kebele)から月 25kg の

穀物と 2 リットルの食用油の配給があるが、自分は受け取ったこと

がない。以前は、自分の敷地内にトイレがあったが、その範囲まで他の人が家を建てたので、今は近

所の人のトイレを借りたり、外で用をたしている。1 年前に 1,000 ブルで中古のテレビを購入している。

インタビューからわかったこと→政府の貧困者対策補助金などは都市部や都市郊外における貧困層

を対象外にしているため農村部の貧困層よりも苦しい生活を強いられる場合が多い。貧困は教育の低

さ、家族との死別、無職などが背景にあり、そこから抜け出す道を探すのは難しい。しかし、極貧に近

い環境下でも子どもに牛乳を与えたり、高い水道代をはらって子どもに水浴びさせたりしていることか

ら、貧しいなかでも子どもに 大限の投資をしようとしていることが伺える。

Case 2: アディスアベバ市内 Ubalam さん一家の生活

アディスアベバ生まれの 34 才。7 年間教育を受けている。HIV

エイズであった夫から自身も感染し、離婚。1975 年から現在の

Kebele House(村落政府支給の家屋)に住んでいる。家賃月額

5 ブル(Birr)。(同程度の家を一般で借りると月 500 ブルはする

という。)現在 7 人が同居(母親、2 人の兄、娘、2 人の親戚、本

人)。兄の 1 人は精神病である。週に 3 日エイズ啓発活動やエイ

ズ孤児の世話をして月60ブルの収入がある。他に、炭やお香を

販売し、近所の洗濯(日に 15 ブル)や、駐車場で働いたりもして

いる。炭は大きな一袋を 65 ブルで購入し、小分けにして一袋 2

ブルで売っている。大きな一袋が 3-4 日で無くなる。以前は良く

売れていたが、今は同じ商売をする人が増えて競争が激しくな

ってきている。炭やお香を買いにライオンバスでマルカート(アデ

ィスアベバ市内 大の市場)まで行き、ミニバスで戻ってくる。他に販売している製品は、Dengetanga

(乾燥させた薬草)、Feto、ナタネ油の粉(インジェラの焼皿を磨くため)、お香に加える薬品(1 ボトルを

1 ブルで購入し、1.3 ブルで販売)。父親は SemiShoa/Amhara の出身で、昔は銃弾製造工場で働いて

いた。今は年金で他の家族と住んでいる。母親は DebreZeit の出である。1 年前に自宅敷地内に水道

が設置された。隣のカフェ/雑貨屋が設置代を出してくれ、水道代も彼らが払っている(Kebele House

敷地内に設置する方が安いため)子供は、毎日 1 回水浴びさせている。

インタビューからわかったこと→HIV エイズは家族を切り裂き極貧といってよい生活環境にある。しか

し、自分自身がほかの HIV エイズ患者のために働きながら他の家族と助け合って炭やお香などを売っ

て生きている。このように(両親が)郊外や農村部から都市にでてくる貧困層が増えいる。

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(3) 生活実態調査

本調査では、4 ヶ所で実施したフォーカスグループディスカッション及び個別インタビューのデータ

を基に、その BOP 層の特徴および食生活・育児習慣(食事の世話)の実態についての情報を収

集・分析し、ケースを中心に紹介する。前述したとおり、年収 US$3000 ドル以下の BOP 層のうち、

エチオピアの食糧援助受給対象者を除く BOP 層を調査結果にもとづき消費支出別に 3 グループ

(BOP 低所得層、BOP 中所得層、BOP 高所得層)42に分類した。なお、為替換算には現地調査

時点の 2010 年 1 月現在のレートを使用する43。

調査対象地域:

首都アディスアベバ近郊 2 グループ(計 14 人)

首都郊外 45km に位置する小都市デブラゼット 2 グループ (12 人)

オロミア県東所ショア郡(5 名)

合計 31 人を対象に地元のヘルスポスト・村役場(Kebele) に依頼して、本調査で特定した BOP 層に該

当する地域の 5 歳以下の子供を持つ母親(家族)を選別してもらい、フォーカスグループ・ディスカッション

(Focus Group Discussion: FGD)を実施した。また、FGD 対象者とは別の個別インタビューを 5 件実施

し、総調査数は、36 人である44

都市郊外デブラゼット 首都アディスアベバ 首都部の若い母親

1) 生活状況

表 2.14 所有物とサービスへのアクセス状況

BOP 低所得層 N=15 BOP 中所得層 N=16 BOP 高所得層 N=3 富裕層 N=2

(参考)

水への

アクセス

給水所 7、川 2、購入

3、共有使用(水道) 3 給水所 10、共有使用(水

道) 4、私有(水道)2 共有使用(水道) 2 私有(水道) 1

私有(水道) 2

トイレ なし 9、共同使用 6 共同使用 16 共同使用 2 、私有 1 私有 2

電気 ランプ 5、あり 10 ランプ 3、あり 13 あり 3 あり 2

携帯電話 なし 14、 あり 1 なし 12、あり 4 あり 3 あり 2

出産 伝統的産婆+自宅 10 公共サービス 5

公共サービス 9 自宅 6 民間病院 1

民間病院 3 民間病院 2

消費財 なし 14、中古テレビ 1 なし 9、テレビ 7 テレビ 3 テレビ 2

政府統計によると、首都部の「給水状況」は 93.7%(DHS 2005)の高普及率である。今回調査を

行った対象地域は、アディス首都近辺とアディス郊外の農村部との境目にあたる小都市部デブラ

ゼットであったことから、給水所(共同水栓・ポンプ)、各戸給水(水道の共有使用・私有)などにア

42 2 名のインタビュー者は、BOP 層以上と判明したが、参考のために掲載する。 43 US$1=約 12Birr 1Birr=約 7 円 (2010.年 1 月) 44 家庭訪問は、7 件実施した。

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クセスのある家庭が 34 世帯中 29 世帯という結果となり、所得層による格差はあまり見られず、

川から水汲みと回答したのはオロミア県の農家 2 世帯のみであった。本調査で訪れたアディス首

都部の長屋形式の古びた平屋アパートなどにも水道(各戸給水)がひかれ、アパートの数世帯で

共有使用していた。然しながら、「トイレ」については共同使用で水洗でないものが殆どで、BOP

低所得層にはトイレのない家庭が多くみられた。オロミア県やデブラゼットではトイレのない家庭

が 9 世帯あった。「電気の普及率」も都市部では 85.7%と高く、全所得層にあまり差がなく、34 世

帯中 26 世帯が電気へのアクセスがある。電気がなかったのは BOP 低所得層 5 世帯と BOP 中

所得層 3 世帯で、ケロシンを使用したランプで生活している。「携帯電話」は、2009 年現在、全国

エリアネットワーク拡大が中国企業の支援によりすすめられており、BOP低-中所得層の1世帯当

たりの 1 ヶ月分の食費で、携帯電話本体と登録料を含み約 600~700 ブル(US$60)で購入できる。

同国の BOP 高所得層は殆んどが携帯電話所有しているが、都市部 BOP 中層・低層では所有し

ている人はまだ少ないが、多くが興味をしてしている。

2) 世帯の特徴

以下の表2.15~19は、生活実態調査の対象者となった世帯に関する「食費」、「家族サイズ」、「地

域別BOP階層分布」、「BOP階層別職業」、「母親の学歴(インタビュー対象者)」などをまとめた。

また、5)家庭訪問(P42)の項で各所得層別の生活環境がより具体的に判るよう写真を掲載した。

① BOP低所得層は3グループ中 も「家族サイズ」が大きいにも関わらず、一世帯当りの食費

(表2.15)は、月400~600ブル(US$33~50)と低く、15世帯中9世帯が母子家庭となっている。また、

職業は日雇労働者、行商、家内工業(地ビール製造)などインフォーマルセクターの仕事について

いる人が多く、学歴も中学卒は1名のみで、残りは教育が無いか、中学・小学校の中退者が占め

ている。なお、世帯で夫も含め家族で収入がある人も多く、世帯当りの収入を測ることは難しいが、

同階層は月600~1300ブル(US$50~約$110)の収入ぐらいの幅があると推測する。ケースにもあ

るように、無理をしてでも1000ブル(US$83)の中古TVや子供の為に水道を引くことなどができる

世帯もあることから、この階層レベルでも上位に位置する世帯は、時間が多少かかっても必要・欲

しいと思うものを買う購買意欲はある。この層では市販離乳食商品やそのブランド名を知らない人

が多く、国産の市販離乳食などにも手の届かない世帯が多い。

Case 3. 疾病予防とケア、医療施設アクセス

インタビューした都市郊外デブラゼットの近くに病院があるにも関わらず、ほぼ全ての母親は伝統的産婆

(TBA: Traditional Birth Attendant)の介助で家庭出産している。母親たちは「病院では十分に気遣っても

らえない、または心理的なサポートが得られない」と考えており、家庭で家族や TBA の助けや気遣いをもら

って出産したいと希望している。出産費用は無料ではないらしい。出産は家庭だが妊産婦検診は無料なの

で多くの母親が病院で受診している。

一方、アディスアベバでインタビューした母親は全て病院で出産していた。出産費用は、収入に応じて村

(Kebele)の紹介状があれば無料になるが、一般的には有料である。ある母親は出産前に 150 ブルを払

い、出産後に実際にかかった費用を引いた残金の払い戻しがあったといっている。普通は出産翌日の退

院だが帝王切開であったときは少し入院する。

BOP 高所得層は、よりよいサービスを求めて民間病院で出産する傾向が都市部では高い。民間病院で出

産に係る費用は 1200 ブル程度である。

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② BOP中所得層は、低所得層と同様な学歴をもつ世帯が半数を占めるが、自営業や手に職を

持ち商売で収入をあげている人々や、中学・高校卒でサービス業や小売業などの定職につける

資格を持つ。多くの世帯は雇用機会が多いアディス首都近郊が半数を占めている。その他、この

層に該当するオロミアの農家等もある。この農家世帯は近隣のマーケットに農産物を販売するほ

か、自家用の食物も栽培して7人家族を十分に養える収入を稼ぎ、妻は主婦で農作業はしていな

い。かれらは、インフレで食物高騰の中、かえって農作物が高く売れる一方、自分たちは自給自

足しているためインフレの打撃も 少限で、3倍近く跳ね上がったミルクや卵を5人の子どもに与え

ることができている。都市部のBOP中所得層では少し余裕がでてくる世帯も多く、子どもの健康・

栄養に関する意識の高く、かつ子供の将来成功ために、ミルク・輸入離乳食・補助食などに強い

関心を持つ母親が見受けられた。

③ BOP高所得層は、高卒・短大の資格を必要とする技術職と事務職につけるレベルの人である。

外国人専用の個人ドライバー(収入US$1500/年)、輸入業会社事務職(US$2200/年)、大使館

警備管理主任(US$2800/年)程度と収入幅がより大きくなる。学歴が高くなるにつれ、英語が出

来る人も多い。TV,DVD、冷蔵庫、ソファーなどを有するが、キッチンは野外や別棟にありケロシン

や炭を使って調理している人もいれば、ガスコンロを使用している人もいる。輸入品離乳食なども

日常的に購入したり、子供に紙おむつ(157ブル/月)を使用しているなど、家計に余裕がでてくる

所得層も含まれる。日本を含め外国の信頼できる商品にとても関心が強い。

表2.15 世帯の食費と家族サイズ (BOP所得層別)

BOP 低所得層 BOP 中間所得層 BOP 高所得層

月平均食費(一世帯当り) 約 400~600 ブル 約 700 ブル~1000 ブル 約 1100 ブル以上

家族サイズ(子供の数) 5.2 人 (2.6 人) 4.8 人 (2.4 人) 3.7 人 (1.3 人)

*一人当の総消費支出額に占める食費の割合0.56(HICE 2004/2005)を参考に推定

表2.16 地域別所得層の分布 (BOP所得層別)

BOP 低所得層 BOP 中所得層 BOP 高所得層

アディスアベバ都市部 5 9 3

デブラゼット小都市部 8 4 0

オロミア県農村部 2 3 0

母子家庭数 9 人(60%) 4 人(25%) 0 人(0%)

表2.17 世帯主の職業 (BOP所得層別)

BOP 低所得層 BOP 中間所得層 BOP 高所得層

手工業・家内工業 スパイス販売 外国人付個人ドライバー(*)

日雇労働 (*) 公務員 大使館警備管理主任(*)

行商(薪売・お香売り) 小売業 輸入代理店事務職

地酒・ビール製造販売 コック(*)

農業 鍛冶屋

メイド(洗濯手伝) 退役軍人年金収入(*)

仕送り 農業・作物販売(*) (*)男性:インタビュー対象者の夫

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表 2.18 BOP 所得層別の賃金レベル 職種 月額賃金

援助受益者 WFP Safety Net Program (食糧配給)【参

考】 250 ブル (10 ブル/日)

BOP 低所得層

日雇い労働者 375~625 ブル (15~25 ブル/日) 地酒を自宅で製造販売 360~400 ブル

BOP 低-中所得層 退役軍人年金収入 600 ブル メイド (外国人付き通いのお手伝いさん) 700 ブル

BOP 中-高所得者 公立小学校の教師 【参考】 1500-2000 ブル 表2.19 世帯主の学歴 (BOP所得層別)

BOP 低所得層 BOP 中間所得層 BOP 高所得層 富裕層(参考) 教育なし 8 教育無し 3 ディプロマ 1 ディプロマ 2 小学校卒 2 小学校卒 2 高卒 2 小学校中退(G3,5)2 小学校中退(G4/5) 2 中学校卒 1 中学校卒 3 中学校中退(G7)2 高校卒 2 高校中退 (G9/10) 4

3) 食生活

都市・農村を問わず通常支出の大半が食料、特に主食の穀物に費やされていることが改めて確

認された。穀類中心で高価な肉や乳製品などはきわめて少ないのは以前からの食生活パターン

ではあるが、重要な栄養源であったはずの牛乳や卵の大幅な値上がりが蛋白質やミネラルの不

足を増幅している。収支ぎりぎりの生計なので、収入が減った場合は主食の質を変える、つまりイ

ンジェラの原料である高価なテフを減らしてソルガム、メイズ、小麦や米などを増やすことが も典

型的な対応メカニズムになっている。世帯レベルでの食糧安全保障(フードセキュリティー)が脆弱

である様子を示している。都市や都市近郊では主にインフレにより、農村部では天候不順により

食料へのアクセスが阻害されている。燃料や水など生活必需品の中でも も基礎的な支出が非

常に大きな家計の負担になっている。また農村部においては水くみや農作業などに多くの時間を

割かれるため、子どもの世話や調理かけられる時間が限定される。

Case 4. 都市郊外(Debrazeit)フォーカスグループ参加者母親の食生活

一般的食生活:主食はインジェラ(エチオピア伝統的料理)とダボ

(パン)。1 日 3 食が基本だが、経済的に厳しいときは朝食を抜く場

合が多い。典型的な朝食はダボと砂糖入り紅茶、昼食はインジェ

ラとシュロ(油の入った豆ソース、特別な場合はバターを使う)、夕

食はインジェラ、シュロのほかに収入のある人はキャベツ、イモな

どを混ぜる。コーヒーは午前と午後の 2 回。インジェラには以前は

テフを使っていたが、価格が上がったため 近はソルガム、米、ト

ウモロコシなどを混ぜるようになった。油は輸入パーム油(商品名

「Chief」)が好まれる。食料品の買出しは週 1-2 回である。ある母親は 1 ヶ月に食費に 530 ブルを支出

している。内訳はテフ 25Kg(200 ブル)、小麦 15kg(60 ブル)、米 5kg(50 ブル)、油 3 リットル(60 ブ

ル)、トウモロコシ 10kg(40 ブル)、豆 3kg(36 ブル)、砂糖 2~3 袋(20 ブル)、野菜(24 ブル)、塩 1kg

(3 ブル)、バルバリ 1kg(30 ブル)、コーヒーなど。近年、牛乳の値上がりが激しく、現在は 1 リットル 8

ブルで月 120 ブル(1 日グラス 1 杯)~240 ブル(1 日グラス 2 杯)もする。肉類(キロ 50-60 ブル)は祝

日のみに、鶏肉(1 羽 40-70 ブル)は新年のお祭りだけに食べる。伝統的に、お祭りや祝日に年寄りが

近所からお金(各世帯 80-90 ブル)を集め、牛をまるごと 1 頭購入して分ける。収入源は様々で、夫の

年金を毎月受給している人もいれば、妻 1 人地酒作りやで生活を切り盛りしている母親もいる。

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4)育児習慣

インタビューから、物価の高騰が子どもの離乳食にも大きな変化をもたらしていることがわかった。

昔は牛乳や卵といった蛋白源が比較的安価で入手できたため、こうした栄養価の高い食材を子ど

もにあげることが可能であった。しかし、 近は物価高騰でほとんど手に入らなくなっている45。こ

のような中、様々な穀物をうまく混合してつくるお粥(アットミット)状の離乳食を与える母親が多か

った。これはビタミンやミネラルなど必須栄養素をある程度含むと考えられ、地域で利用できる食

材を活用した有効なレシピであるといえる。しかし、明らかにタンパク質や脂肪分が不足しており、

ビタミンやミネラルも不足しているものが多いと考えられる。また、お粥状の離乳食を薄めたものを

45 地方の方が乳牛の保有率が高いために、首都圏に比べて地方の貧困家庭の方が子供に牛乳を与える確立が高いと推測さ

れる。

Case 5. 農村部(オロミア県東ショア郡 Mojo)の食生活

母親(26 歳) は 3-11 歳の子ども 5 人、夫、家政婦、家

畜の世話人の計 9 名が同居している。夫の職業は農業

で、テフ、小麦、豆、大麦、トウモロコシを栽培している。

土地は自分のものと借地を使っており、借地の地主に

は耕作料を払っている。収穫物は自給用のほか一部を

販売する。日々の食事はテフや小麦などを使ったインジ

ェラとシュロ(豆ソース)が中心で一日に 3 食。水は近く

の給水蛇口に毎日 7-8 缶ほど汲みにゆき、調理や飲料

などに使っている。マーケットには一月に一度だけ行

き、芋、コショウ、タマネギ、キャベツ、衣服、ニンニクな

どに約 500 ブルほど支出する。このほか、村に二つだけ

ある小さな店にはもっと頻繁に行き、油、塩、砂糖、コー

ヒー、灯油などに月 100 ブル支出する。油はマーケットで輸入品(Chief)3 リットルを買い、これを 1 ヶ月か

けて使い切る。日々の生活パターンとして、毎朝 6 時起床して朝食作り(1 時間半)と水汲み(7-8 缶で 1 時

間)のあと午前 10 時から午後 6 時ころまで農作業をする。昼食は弁当を持ってゆく。この間、年長の子ど

もが小さい子の面倒を見る。昼食も年長の子が作る。午後 6 時からコーヒーを飲み、そして夕食。就寝。

隣は 9 名が同居する家庭(母親、7 人の子供、夫)。夫の職業は

農業であるが、母親は 9-22歳の子供の面倒をみる主婦である。

夫は自分の畑を耕し、23 頭の牛(メス 3 頭、雄 20 頭)、18 羽の

鶏を保有する。メス牛を飼っているが、外部に牛乳は販売してい

ない。牧草が減って、村での牛乳生産量が以前に比べると減っ

てきている。子供は Grade2-Grade10 で 7 人とも通学しており、

生活が苦しくなったとしても子供の教育は継続すると母親は答え

た。日々の食事は一日に 4 回。テフや小麦を使ったインジェラと

シュロが中心で、他に野菜(じゃがいも、人参、キャベツ等)、卵、

肉も食べる。 朝食 8:00 とうもろこしのおかゆ(バター入) 昼食 12:00 豆ソースとインジェラ おやつ 17:00 豆ソースとインジェラ 夕食 20:00-21:00 とうもろこしのおかゆ(バター入)

インタビューから分かったこと:家畜を多く保有するため、都市部の BOP 貧困層の家庭よりも食生活が豊

かで、動物性たんぱく質(牛乳、卵、肉)を多く消費していることが分かる。

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哺乳瓶で与えている母親が多かったが、哺乳瓶の使用は十分に煮沸洗浄しないで下痢などを引

き起こすことも懸念される。

BOP 層の底辺部では物価高の中で市販離乳食は手の届かないものになってきている。消費者に

受け入れられる価格帯として現在価格の 3 分の 1、つまり「10 ブル/Kg(約 70 円)」というのがひと

つの目安になりそうである。これは一日あたりに換算すると 50-100g 使うとして「0.5~1 ブル(約

3.5~7 円)」に相当する。また、郊外に比べると都市部では市販離乳食も普及していることがわか

る。特に都会部では、アットミットを作るためには時間や手間がかかる上、製粉場に 5kg 以上の穀

物を持ち込まなければならず、その穀物を購入する現金(50~70 ブル)を保持しない者は、キロ当

たりでは高くても小さな 1 袋が安価な市販の Fafa(7-15 ブル程度)を購入する場合もある。

表 2.20 離乳食の種類 N=31(複数回答) 保健センターが推奨するアットミット原料(栄養教育)

離乳食 購入の有無

10 種類穀類ミックス-アットミット 31

ファファ・セリファム(市販離乳食) 14

煮野菜(モ類・人参・アボカド) 18

インジェラ・豆ソース(シュロ) 31

粉ミルク 3

牛のミルク 13

表2.20は離乳食に関する購入状況を聞いた結果であるが、製粉するアットミット、インジェラ・豆ソ

ースと言った現地伝統的な離乳食は全員が使用している。近年食料品の高騰が激しいため、野

菜、牛のミルク、市販の離乳食などは買えなっっている。牛のミルクの高騰を例にとると、3年前ま

で1リットル2.75ブルだったものが約3倍近く値上がりして8-9ブルとなっている。母親たちは、子供

に栄養を与えたいがためにミルクを購入したいが、家計に余裕がある時しか買えなくなっていると

いう。一般的に、都市郊外では、市販の離乳食があまり知られていない。

Case 6. 離乳食の内容: 都市 Addis Ababa の母親

「アットミット」をホームメード Fafa と呼んでおり、家庭で作る離乳食としてこれをあげた母親が全員で

も普及している。大麦、オート麦、ソルガム、小麦、テフ、トウモロコシなどを混合したお粥で、一食分と

して 1 カップ、たくさん調理したときは湯沸かし器に入れて保存している。他にはイモ、にんじん、アボカ

トなどを与えている母親もいる。Cerifam(5 人)、Fafa(4 人)を使ったことのある母親も多く、市販離乳食

が郊外より普及している。輸入品や Alemgena 社製品など Fafa 以外の国産品を使ったことのある母親

はいなかった。粉ミルク(2 人)や牛乳(5 人)を与える母親もいた。ホームメード Fafa と市販 Fafa を比べ

たとき、多くの母親がホームメードのほうが新鮮で栄養価が高いと考え、これを好んでいる。

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5) 市販離乳食製品に関する購買動向調査

上記生活実態調査のフォーカスディスカッショングループとは別に、

「第 3 章 エチオピアの栄養分野における潜在商品ニーズの抽出」

において、首都アディスアベバと首都郊外デブラゼットで「市販離乳

食製品に関する購買動向調査」を主に 5 歳未満児の母親対象に実

施した。首都部では、当初スラムのアラットキロでも聞き取り調査を

実施しようとしたが市販離乳食を知っている該当者が見つからなか

ったため、BOP 高所得層をターゲットとする Shoa Supermarket に

おいて 13 人、及びデブラゼットではより広い購買層の 12 人を対象

に調査を行った。結果は、下記の表 2.21~2.23 の通りである。

Shoa Supermarket の店主及び店舗統計によると、安価な価格と良品質な国産の Weanimax の

人気が一番高かった。一方、消費者からの聞き取りによると、「国産品はアレルギーを起こすとい

う噂」や「何が混ざっているか信頼できない」という理由から、一般的に欧州・中東からの輸入商品

が好まれることが分かった。多くの消費者は口コミによって商品選択をしている。近年のインフレ

により商品価格が継続的に上がっていることに対する不満も多く寄せられ、BOP 低所得層では、

かつては購入していた国産品にも手が届かなくなっている実態が見受けられた。人気商品筋とし

ては、BOP 低~中所得層では国産の Cerimax, 輸入品に手が届く中所得層では Mother’s

Choice や Riri、余裕がある消費者には Cerelac という傾向が見られる46。尚、聞き取り調査では

述べられなかった Weanimax(国産)、Danone の Phosphatine、Indofood の Sun 製品も多く購

入されていることが、Shoa Supermarket の販売統計から読み取れる。

46 現地企業 Fafa 社は、独自店舗でのみ商品を販売しているので、上記の Shoa Supermarket で Fafa 社の製品は売られていな

い。

Case 7. 離乳食の内容: 都市郊外デブラゼット(Debrazeit)の母親

都市郊外デブラセットでインタビューした母親のほぼ全員が母乳で子どもを育ており、2-3 年で離乳す

るケースが多い。近年、保健普及ワーカーによる保健教育が浸透してきたこともあり 6 ヶ月間は完全

母乳(exclusive breastfeeding)することの重要性について多くの母親が認識している。しかし、中には

母乳が十分に出ないという理由で 3 ヶ月目ころに牛の生乳と水、砂糖をまぜたものを与える母親もい

る。5-6 ヶ月目から離乳食として「アットミット」と総称される地元でとれる様々な穀物を混合してつくった

粥が普及している。これはテフ、豆、オート麦、小麦、大麦などを部分的に焼き、製粉所に持っていって

粉にし、これでゆるめのお粥をつくって哺乳瓶で飲ませる母親もいる。芋をすりつぶしたものにシュロ、

牛乳を混ぜ合わせたものを与えたり、家族が食べるインジェラとシュロを子どもに分け与えたりなど

様々だ。昔はオート麦を水に浸し、これに牛乳を加えてお粥を作っていたらしい。哺乳瓶は 28 ブルす

るが、病院の指導で一度煮沸したお湯で洗うような指導を受けている。病院では Cerifam(Fafa 商品)

や粉ミルクも紹介しているらしい。以前は卵 1 ヶ 0.3-0.4 ブルだったが、値上がりが激しく 近は 1 ヶ

1.5 ブルもするのでめったに食べられない。Cerifam について知っている母親が多く、以前はよく買って

いたが 近値上がりしたので買わなくなったと答えた者もいた。現在の価格(キロあたり 30~45 ブル)

の 3 分の 1(5-15 ブル)程なら買うことができる。Fafa という商標名は聞いたことがない母親が全てだっ

た。

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表 2.21 アディスアベバの消費者調査

BOP 高所得層 富裕層

回答者 8 人 5 人

購入理由 医者・友人・家族の推薦 医者・友人・家族及び赤ちゃん雑誌の推薦、

好む商品 1. Mother’s choice (輸入品)

2. Riri (輸入品)

3. Cerimax/Cherry (国産品)

4. Cerelac (高価すぎる) (輸入品)

1. Mother’s choice (輸入品)

2. Cerelac (輸入品)

3. Riri (輸入品)

価格帯 殆どの回答者にとって Mother’s choice と Riri

は、購入可能価格である。 一方、2 人は国産品

を好むと答えた。Cerelac は、全員が高価すぎ

ると回答した。

も人気があるのは Mother’s choice である

が、金銭的に余裕がある者は高価ではあるが

Cerelac を好む。

購入頻度 週に 1~2 回 週に 1~2 回

表 2.22 主都部 Shoa Supermarket における 2010 年 2 月 1 日~2 月 18 日の離乳食製品の販売数

国産/輸入品 会社 製品名 販売数

エチオピア国産 Alemgana Cerimax (350g) 18

Cerimax (500g) 18

Weanimax (500g) 101

輸入品 Danone

Phosphatine (Riz Carotte 200g) 13

Phosphatine (Multicerales 250g) 22

Phosphatine (Lactee Biscuiste 250g) 21

Phosphatine (Vanilla) 14

Riri Baby Food (エジプト)

Riri (Milk cereal 200g) 39

Indofood (インドネシア)

SUN Tim Instant Tomato, Wortel & Ayam (100g) 31

SUN Susu & Madu (75g) 132

Omani Euro Food (オマーン)

Mother’s Choice 24

Nestle Cerelac 23

合計 456

表 2.23 首都郊外デブラゼットの消費者調査

BOP 低 所得層

BOP 低~中 所得層

BOP 中~高 所得層

BOP 高 所得層

富裕層

回答者数 1 4 3 3 1

購入理由 医者・友人・家族の推薦 赤ちゃん雑誌

好む商品 Cerifam

(国産) Cerifam (国産)

1.Cerifam (国産)

2.Mother’schoice 3.Riri

1.Mother’s choice 2.Riri 3.Cerifam(国産)

1 Cerelac 2.Mother’s choice

価格帯 以前は買って い た が 、今は高すぎて 、 購 入 できない。

国 産 のCerifam は購入できるが、輸 入 商 品 は手 が 届 か ない。

輸入商品は高価だが、時々購入する。

輸入商品を購入できるが、価格が上昇しすぎている。

自分は輸入商品を購入できるが、価格上昇のために他の人々が苦労しているの を 良 く 知 っ て いる。

購入頻度 無 週に 1~2 回 週に 1~2 回 週に 1~2 回 週に 2 回

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① エチオピアで販売されている主な栄養補助食品

国産 (Fafa 社)

国産(Alemgana 社)

輸入品

粉ミルク マルチビタミンシロップ

Cerifam

Fafa

Famix

Dube flour

Cerimax

Cherry

Weanimax

Mother’s Choice

Riri

Phosphatine

Bledine

SUN Bubur

SUN Biskuit

Cerelac

S26

Bebelac

Nan

Seven Seas

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6) 家庭訪問

① 都市部の BOP 低所得層の自宅 (首都アディスアベバ)

家の入口 住居内 台所(地酒づくり) 室内電気

② 都市郊外の BOP 低所得層の自宅 (デブラゼッド)

インジェラを焼く窯 トイレ 中古テレビ 共有水道

③ 農村部の BOP 中所得層の自宅 (オロミア州東ショア郡)

左が台所、右が住宅 自宅内 川からの水くみ

④ 都市部の BOP 高所得層 (首都アディスアベバ)

冷蔵庫 水道 コンパウンド内の道路 パラボラアンテナ

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Case 8. 首都アディスアベバに住む BOP 高所得者層: 月収 2100 ブル/$175

高卒で 37 歳の Samson は、現在外国人付きの個人ドライバーとして働いており、月収 1500 ブルを

稼いでいる。又、以前飼っていた牛を売り払った資金を元に家を建て、一部の部屋を月 600 ブル(電気・水道代込み)で貸している。家族は、4 名(自身、高卒の妻 25 歳、7 カ月半の娘、メイド)である。

妻の出産時には、国立病院でたらい回しにされたので、私立病院で出産した(費用1200ブル)。月の

食費は、1500 ブル近くであり、肉は週1回程度食べている。自身の洋服購入を控えてでも娘への消

費を第一に考え、毎日 1 リットルの牛乳、輸入品の離乳食、MultiVitamina(Seven Seas)というシロッ

プも飲ませている。妻の離乳食の購入基準は、①食べさせてみて、赤ちゃんが好きか(国産の

Cerifam は好まず、輸入品の Riri と Mother’s Choice は良く食べる)②ある程度高めの価格(国産の

Cerifam は安いので本当に栄養価に優れているのか疑わしい。子どもの健康と頭が良くなるように、

高くても栄養価に優れている外国製品を購入する)と答えた。

尚、彼による豊かさの概念は下の様で、自身は下から 2 番目の貧困層に該当すると答えた。

首都部に住む高所得層から見た「豊かさの概念」

階層 豊かさの概念

貧困層 月収 1000 ブル以下

貧困層 月収 1500-3000 ブル程度、貸家

中流階層 月収 7000~10000 ブル程度、車か自宅を所有

金持ち ビジネスマン・経営者で車・自宅を所有

大金持ち 大規模な投資家

父親と娘 土壁の自宅

テレビのあるリビング 台所(ガス)

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Case 9. 首都アディスアベバに住む BOP 高所得者の生活: 月収 2800 ブル/$230

41 歳で現在夜間大学に在学中の Asras は、外国大使館の警備スーパーバイザーとして働いており、月

2800 ブルの収入を得ている。家族は、3 名(自身、高卒の妻 33 歳、7 カ月半の息子)である。以前妻は、

外国人宅で月給 700 ブルのメイドとして働いていた。2005 年当時の家賃は月 250 ブルであったが、インフ

レのために現在では 650 ブルに値上がっている。トイレはコンパウンド内共同である。テレビ、DVD、冷蔵

庫、携帯電話を保有しているが、炭とケロシンで調理をしている。

食費は、燃料も含めて月 1500 ブル程度で、安いレベルの牛肉(50~65 ブル/Kg)を週 3 回位(月に 4Kg)

購入している。出産は帝王切開であったため、 初の 4 日間は病院で Nan という粉ミルクを与えられたが、

その後は完全母乳を 6 カ月続け、今は市販の離乳食も食べさせている(Fafa, Celilac, Family Choice3/Whilte Oats, RiRi, Sevan Sea Multi Viamin Syrup)。又、地元産の Ajja(カラスムギ)を水に浸し

て柔らかくしたものに牛乳を加え、砂糖、バター、塩を入れて茹でたものや、falsebanana の根の粉にバタ

ーと牛乳を混ぜてガンフォ(お粥)にしたもの、果物、牛乳も与えている。1 歳になったら、自分で穀類を混ぜ

清潔さを確認した上で製粉した Atmit(お粥型離乳食)を食べさせる予定である。国産と輸入品の離乳食の

場合、価格的にも安く、常に商品が市場にある国産品を好む(輸入品は、品切れの場合次にいつ入ってく

るか不定期であるため)。夜間と外出の際には、紙おむつを使用している(1 ヶ月一袋 32 ビース入りで 157ブル)。いつも使用したいが高すぎるので、昼間は布おむつを使っている。物価高騰で子どもに費用がこん

なにかかると想定していなかったので、子どもは 1 人で十分と答えている。月に購入する食品は、テフ

25kg(300 ブル)、バルバリ(チリパウダー)0.6kg(17 ブル)、シュロ 1.3kg(17 ブル)、食用油(ニガーシード)

2 リットル(44 ブル)、卵 80 個(104 ブル)、野菜 100 ブル、バター1kg(100 ブル)、牛乳 15 リットル(150 ブ

ル)、肉 4kg(200~260 ブル)、小麦 5kg(25 ブル)、豆(mussle)2kg(28 ブル)、砂糖 1kg(15 ブル)、塩

2.5kg(6.25 ブル)、コーヒー1kg(60 ブル)、果物(バナナ 4kg24 ブルオレンジ 4kg48 ブル)。調理には、炭 2袋(180 ブル)、ケロシン 10 リットル(90 ブル)を購入している。従って、毎月の食費 1238~1298 ブル、燃料

費 270 ブル。

コンパウンド入口 自宅入口

台所(炭を使用) 右奥が共同トイレ

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⑤ 参考資料: 富裕層の事例 (BOP 層以上)

年収 3000 ドル以上の富裕層(人口の 5%:約 455 万人47)の多くが首都アディスアベバに集中し

ている。職業は国際機関・外資系企業・国際 NGO 勤務、或いは独自のビジネスを所有している者

などである。建設ラッシュの首都では土地が高騰しているので、郊外に自宅を建てている人が増

えており、かなりの時間をかけて通勤している者もいる48。又、乗用車を所有している人もいる。肉

の消費頻度も多く、高級な生肉も好まれている。食生活は伝統的なインジェラを多く食すが、一部

では食の西洋化も見られる。月平均の食費は 1800 ~2600 ブル($150~$220)程度と推定される。

共働きが多い都会では、収入額も大きく、子どもを保育園・幼稚園・メイドに預けるケースが多い。

高価な輸入品の離乳食や粉ミルクも多く購入されている。

47 人口 81 万人を元に計算している。 48 エチオピアでは土地の所有権が認められていないため、国から借地権を購入して家を建てる。この借地権の譲渡は可能であ

る。

Case 10. 首都アディスアベバに住む富裕層の生活:共働き月収 12000 ブル/$1000

短大卒(Diploma 取得)で 33 歳の Erysalem は、国連のプログラムアシスタントとして働いている。家族は、5人(政府職員の夫、本人、5 歳半の娘、3 歳の娘、メイド)で、夫と本人の合わせた月収はネットで約 12000 ブ

ル(約 1000 ドル)である。土地付きの家を首都部から 20km郊外の Alemgena に購入(約 50,000 ドル相当

か)し、乗用車も所有している。共働きのため、幼稚園以外の時間はメイドが子供の面倒を見ている。

毎月の食費は、祝日やお客がない場合で 1800 ブルである。肉はパスタ、ライス、野菜と混ぜるものを含めて

週に 4 日食べている(50%牛肉、30%羊、20%鶏肉)。中位の羊一頭(約 500 ブル)を 3 週間で消費する。

新年の際には 900 ブルまで値が高騰した。パスタ 6kg(スパゲティ 3kg、マカロニ 3kg)や、パンも自宅では

焼かず購入している。子どもが好きなパンケーキ用に卵も月 40 個程度使用し、朝用にコーンフレーク 1kg も

購入している。以前住んでいたアディスアベバ市内では牛乳を毎日 3 リットル購入していたが、現在住む郊

外の Alemgana では手に入らないので、コーンフレーク用に粉ミルク NIDO(400g を 2 缶)を使用している。

食用油は、援助物資として配給されている USA 油が市場で 125 ブルで売られている商品(4 リットルを 2 缶)

を過去 10 年間購入している。

子どもは民間の St Gabriel Hospital で出産した。母乳の出が悪かったので、病院で Nan(Nestle)を与えられ

た。退院後は、粉ミルクの S26 を 8 カ月まで飲ませた。8 か月以降は、良く煮沸した牛乳を飲ませて育てた。

5 か月位から Fafa, Mother’s Choice, Cerirac,自宅製の離乳食を試したが、長女は全て嫌い、3 歳までほとん

ど牛乳のみで育てた。一方、次女は何でも好み、6 か月頃からポリッジを毎日 2 マグカップ分食べた。夜はポ

リッジを薄めたものを哺乳瓶に入れて飲ませた。その後、インジェラ、パスタ、ライス、牛乳、果物、ジャガイ

モ、人参、はちみつを付けたパン等を与えた。今は、おやつとして、ケチャップを大量につけたポテトチップス

が大好物である。自宅製の離乳食(Atmit)の原料は、テフ、小麦、大麦、からす麦(oat)、とうもろこし、米、ピ

ーナッツ、talba, abish、砂糖、塩、(バター)などである。

尚、本人自身は、中流層と認識しており、上流階層は、大規模なビジネスと 2~3 台の 新の車(ガレージ

付)を保有しており、年間 3~4 回海外旅行に行く人と考える。

子どもにインジェラを食べさせている インジェラ焼き機 台所