BIM BIM B BIMライブラリーコンソーシアムの設立...Kensetsu IT Guide 2016 BIM BIM B 88...

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K e n s e t s u I T G u i d e 2016 BIM BIM B 89 88   B I M BIMライブラリーコンソーシアムの設立 BIMライブラリーコン ソーシアムの設立 2015年10月30日にBIMライブラ リーコンソーシアム(以下、コンソーシ アム)が設立された。これは日本で初 めて統一的なBIMライブラリー構築を 目指すものであり、設立総会には、設 立発起人 6 名、申し込みされた正会員 32 社 41名、特別会員 12 団体、14 名、 参加予定社 26 社、30 名など、計 72 社、 88名の方にご参加いただき、設立総 会の会場とその後の交流会は、日本で 初めてのBIMライブラリー構築への期 待で熱気があふれていた(写真-1)。 設立総会は、建築保全センターの水 澤氏の司会により、(一財)建設業振興 基金・内田俊一理事長、(一社)IAI日 本・山下純一代表理事が設立発起人・ 来賓代表として挨拶を行い、寺本英治・ 保全技術研究所長が設立の経緯を説 明した。 その後、コンソーシアム会員の承認 を行い、(一財)建築保全センター・尾 島理事長が議長となり総会が開始され た。総会では、会員会則、4 部会長(写 真-2)と組織構成、平成 27 年度の活動 計画と予算が説明され、各々満場一致 で承認され、無事コンソーシアムがス タートした。 本稿では、コンソーシアム設立へ の 3 つの流れ、次世代公共建築研究会 IFC/BIM部会の活動、海外のBIMラ イブラリーに関する動向、建設業振興 基金からのStem等の承継、コンソー シアムの構成、平成27年度業務計画 および予算、今後の活動等を説明し、 関係者の皆さまのご理解を深めたいと 考えている。 コンソーシアム設立へ の3つの流れ コンソーシアム設立は、 次世代公共建築研究会IFC/BIM部 会で「誰もが容易に利用できる情報 インフラとしてのBIMライブラリー の必要性の指摘」を2013年春に行っ ていたこと 海外ではBIMライブラリーのオブ ジェクトの標準化と構築への動き が 活 発 で、2013 年 に 英 国NB S・ RIBA がNBS BIM オブジェクト 標準の作成とBIMライブラリーをス タートさせ、2014 年にはICIS(国 際建設情報協会)から「BIMと仕様 を繋ぐプロジェクト」、「BIMライブ ラリー動向調査」の実施、2015 年 に はICISが「NBS BIM Object標 準への国ごとの地域性考慮・プロ ジェクト」を、buildingSMART Internationalが「製品データテン プレート標準の研究」をスタートし ており、オーストラリア、韓国等が 統一的BIMライブラリー構築に着手 し始める等、BIMライブラリーをめ ぐる活動が活発になってきたこと (一財)建設業振興基金が実施してき Stem、BE-Bridge 等のC-CADEC の活動を2014 年度末に終了し、承 継先を模索した結果、建築保全セン ターが承継したこと の 3 つの流れが一体となり実現され たと言えるが、それを一つにしたのが、 BIMフォーラムというIAI日本の山下 代表理事の呼びかけで2014年1月に 発足した任意の組織での継続的な会 合の場であったことは注目される。 次世代公共建築研究会 IFC/BIM部会の活動 次世代公共建築研究会IFC/BIM部 会は、活発になりつつあるBIMに関す る情報交流の場づくりと、必要なツー ルを整備する場として 2010 年度にス タートした。部会長は安田幸一東京工 業大学大学院教授で参加企業は、大手 設計事務所、ゼネコン、IT関係企業 の他、オブザーバーとして、国土交通 省、I A I日本、日本建設業連合会(略称: 日建連)等が加わっている。2013 年春 に作成された第 2フェーズの成果のパ ンフレットで次の指摘をしている。 B IMを活用する上での 現状の課題 (2013 年 3 月に作成) ・発注者・受注者の間の統一的な ガイドラインがないため、作図 等の作業が効率的ではありませ ん。(その 後、2014 年 3 月に国 土交通省から「官庁営繕事業にお けるBIM モデルの作成及び利用 に関するガイドライン」が公表さ れている) ・誰でも容易に利用できる共通の 情報インフラとしての設備機器、 建築部品等のBIMライブラリー がありません。 ・材料、機器の実用的なコード体 系がないため、作図等が効率的 でなく、また、プロジェクトや 組織をまたがる情報の統合がで きません。 次世代公共建築研究会では、初め からBIMライブラリーに取り組んだの ではない。最初に着手したのは、国内 外の材料、機器のコード体系(英語で はClassification、分類)である。表 -1に概要をまとめる。コード体系(分 類)は、最近BIMライブラリーの一部 を構成するとの認識が示されており、 どのように材料、機器を分類するかに 直結する重要な課題である。われわれ の調査では、寺井教授(千葉工業大学) の提案する分類体系、CI-NET/CE- NE T、積算で使用されている体系、工 事標準仕様書の分類体系等が、これに 該当することに気付いた。 しかし残念ながら日本では実用的で 統一的な材料、機器の分類体系はない のが現状である。分類体系の欠如は、 直接には分類に影響するが、BIMで の表現の詳細度を示すL OD(L e v e l o f Detail、Level of Development、 L e v e l o f In f o r m a t i o n)の議論にも影 響してくる。ここに関する議論で、日 本では標準化が弱点であることに改め て気付かされている。 海外のBIMライブラ リーに関する動向 (1) NBS BIMオブジェクト標準と NB S・R IB AのB IMライブラリー 現在の代表的BIMライブラリーとし て、英国NBS・RIBAのBIMライブラ リーがある。 NBSはNational Building Sp e cific a tion( 建 築 仕 様 書 協 会 )、 RIBAはRoyal Institute of British Architects(英国王立建築家協会) で、BIMライブラリーの運用はRIBA E n t e r p r i s e s 社である。 登録オブジェクトは、ドア(412 品 目)、断熱材(196 品目)、床仕上げ材 在り方部会長 安田 幸一 東京工業大学大学院教授 建築部会長 志手 一哉 芝浦工業大学准教授 設備部会長 一ノ瀬 雅之 首都大学東京准教授 運用部会長 山本 康友 首都大学東京客員教授 写真-1 コンソーシアム設立総会 写真-2 OmniCLASS2 米 国 、カナダ等で主に使 用されている建 物のライフサイク ルにわたる要素の分類体系。 ISO技術レポート14177「建設 産 業における情 報 分 類 1 9 9 4 年 7月」( 後にI S O 1 2 0 0 6 - 2 (ビル建設―建設業務の情報組織―Part2 情報の階層化 のフレームワーク))に基づいて作成されている。 対象は、機能と形態での建設要素、機能と形態での空間、 製 品 、段 階 、情 報 、材 料などに関する分 類があり、多 岐にわ たっている。 コード表示例は、「23-17 13 13 11」(金属製FIX窓:23(製 品)・17(開口部等)・13(窓)・13(金属製)・11(FIX))である。 建設業振興基金・建設産業情報化推進センターが開発した コードで、元請業者と下請け業者の間の取引に使用されるこ とを目的に開発されている。 CI-NET/CE-NETともに分類(2桁)、大分類(2桁)、中 分類(3桁)、小分類(4桁)、細分類、セパレータ、スペックから 構 成されていて、C I - N E Tコードは1 4 桁 + 可 変 長 、C E - N E T コードは 2 0 桁 + 可 変 長 のも の である 。両 者 の 違 い は 、 C E - N E Tコードが土 木 、建 築 工 事を広くカバーしているのに 対し、CI-NETコードは電気設備、機械設備の機器が詳細に 分類されていることである。CI-NETコード表示例は、蛍光灯 器具密閉で[ワット数]W_[灯数]トウ1が 「40300100300009&10W_1トウ1」である。 CI-NET/ CE-NETコード 英 国 の N B S B I Mライブラリーに 使 用されている分 類 。 OmniClassと同様、 ISO12006-2に準拠している。建物要 素、活動、空間、形態での建設要素、段階等に関する分類が あり、多岐にわたっている。 コード表示例は、「Pr_35_90_93_10」(平貼り用陶磁器 質タイル製 品:P r (製品)・35(内外装材)・90(成形品)・93 (ユニット屋根材)・10(平貼り用))である。 UniCLASS 2 工事標準仕様書 公共建築工事標準仕様書には、(建築工事編)、(電気設備 工事編)、(機械設備工事編)が、公共建築改修工事標準仕 様書にも同じ3種類の工事編があり、工事内容も建築物のす べてをカバーしている。ただし分類が発行年により変化してい るため、恒久的な分類としては課題がある。 BIMライブラリーコンソーシアム 事務局長 (一財)建築保全センター 保全技術研究所長 寺本 英治 表-1 国内外の材料、機器のコード体系

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BIMライブラリーコンソーシアムの設立

BIMライブラリーコンソーシアムの設立

2015年10月30日にBIMライブラリーコンソーシアム(以下、コンソーシアム)が設立された。これは日本で初めて統一的なBIMライブラリー構築を目指すものであり、設立総会には、設立発起人6名、申し込みされた正会員32社41名、特別会員12団体、14名、参加予定社26社、30名など、計72社、88名の方にご参加いただき、設立総会の会場とその後の交流会は、日本で初めてのBIMライブラリー構築への期待で熱気があふれていた(写真-1)。

設立総会は、建築保全センターの水澤氏の司会により、(一財)建設業振興基金・内田俊一理事長、(一社)IAI日

本・山下純一代表理事が設立発起人・来賓代表として挨拶を行い、寺本英治・保全技術研究所長が設立の経緯を説明した。

その後、コンソーシアム会員の承認を行い、(一財)建築保全センター・尾島理事長が議長となり総会が開始された。総会では、会員会則、4部会長(写真-2)と組織構成、平成27年度の活動計画と予算が説明され、各々満場一致で承認され、無事コンソーシアムがスタートした。

本稿では、コンソーシアム設立への3つの流れ、次世代公共建築研究会IFC/BIM部会の活動、海外のBIMライブラリーに関する動向、建設業振興基金からのStem等の承継、コンソーシアムの構成、平成27年度業務計画

および予算、今後の活動等を説明し、関係者の皆さまのご理解を深めたいと考えている。

コンソーシアム設立への3つの流れ

コンソーシアム設立は、■次世代公共建築研究会IFC/BIM部

会で「誰もが容易に利用できる情報インフラとしてのBIMライブラリーの必要性の指摘」を2013年春に行っていたこと

■海外ではBIMライブラリーのオブジェクトの標準化と構築への動きが 活 発 で、2013 年 に 英 国NBS・RIBA がNBS BIM オブジェクト標準の作成とBIMライブラリーをスタートさせ、2014年にはICIS(国際建設情報協会)から「BIMと仕様を繋ぐプロジェクト」、「BIMライブラリー動向調査」の実施、2015年に はICISが「NBS BIM Object標準への国ごとの地域性考慮・プロジ ェ ク ト 」を、buildingSMART Internationalが「製品データテンプレート標準の研究」をスタートしており、オーストラリア、韓国等が統一的BIMライブラリー構築に着手し始める等、BIMライブラリーをめぐる活動が活発になってきたこと

■(一財)建設業振興基金が実施してきたStem、BE-Bridge等のC-CADECの活動を2014年度末に終了し、承継先を模索した結果、建築保全センターが承継したことの3つの流れが一体となり実現され

たと言えるが、それを一つにしたのが、BIMフォーラムというIAI日本の山下代表理事の呼びかけで2014年1月に発足した任意の組織での継続的な会合の場であったことは注目される。

次世代公共建築研究会IFC/BIM部会の活動

次世代公共建築研究会IFC/BIM部会は、活発になりつつあるBIMに関する情報交流の場づくりと、必要なツールを整備する場として2010年度にスタートした。部会長は安田幸一東京工業大学大学院教授で参加企業は、大手設計事務所、ゼネコン、IT関係企業の他、オブザーバーとして、国土交通省、IAI日本、日本建設業連合会(略称:日建連)等が加わっている。2013年春に作成された第2フェーズの成果のパンフレットで次の指摘をしている。

BIMを活用する上での現状の課題 (2013年3月に作成)

・発注者・受注者の間の統一的なガイドラインがないため、作図等の作業が効率的ではありません。(その後、2014年3月に国土交通省から「官庁営繕事業におけるBIM モデルの作成及び利用に関するガイドライン」が公表されている)

・誰でも容易に利用できる共通の情報インフラとしての設備機器、建築部品等のBIMライブラリーがありません。

・材料、機器の実用的なコード体系がないため、作図等が効率的でなく、また、プロジェクトや組織をまたがる情報の統合ができません。

次世代公共建築研究会では、初めからBIMライブラリーに取り組んだのではない。最初に着手したのは、国内外の材料、機器のコード体系(英語ではClassification、分類)である。表-1に概要をまとめる。コード体系(分類)は、最近BIMライブラリーの一部を構成するとの認識が示されており、どのように材料、機器を分類するかに直結する重要な課題である。われわれの調査では、寺井教授(千葉工業大学)の提案する分類体系、CI-NET/CE-

NET、積算で使用されている体系、工事標準仕様書の分類体系等が、これに該当することに気付いた。

しかし残念ながら日本では実用的で統一的な材料、機器の分類体系はないのが現状である。分類体系の欠如は、直接には分類に影響するが、BIMでの表現の詳細度を示すLOD(Level of Detail、Level of Development、Level of Information)の議論にも影響してくる。ここに関する議論で、日本では標準化が弱点であることに改めて気付かされている。

海外のBIMライブラリーに関する動向

(1) NBS BIMオブジェクト標 準とNBS・RIBAのBIMライブラリー

現在の代表的BIMライブラリーとして、英国NBS・RIBAのBIMライブラリーがある。

N B SはN a t i o n a l B u i l d i n g Specification(建築仕様書協会)、RIBAはRoyal Institute of Brit ish Architects(英国王立建築家協会)で、BIMライブラリーの運用はRIBA Enterprises社である。

登録オブジェクトは、ドア(412品目)、断熱材(196品目)、床仕上げ材

在り方部会長

安田 幸一東京工業大学大学院教授

建築部会長

志手 一哉芝浦工業大学准教授

設備部会長

一ノ瀬 雅之首都大学東京准教授

運用部会長

山本 康友首都大学東京客員教授

写真-1 コンソーシアム設立総会

写真-2

海外の分類体系、コード体系の事例

国内の分類体系、コード体系の事例

OmniCLASS2 米国、カナダ等で主に使用されている建物のライフサイクルにわたる要素の分類体系。ISO技術レポート14177「建設産業における情報分類1994年7月」(後にISO12006-2

(ビル建設―建設業務の情報組織―Part2 情報の階層化のフレームワーク))に基づいて作成されている。

対象は、機能と形態での建設要素、機能と形態での空間、製品、段階、情報、材料などに関する分類があり、多岐にわたっている。

コード表示例は、「23-17 13 13 11」(金属製FIX窓:23(製品)・17(開口部等)・13(窓)・13(金属製)・11(FIX))である。

建設業振興基金・建設産業情報化推進センターが開発したコードで、元請業者と下請け業者の間の取引に使用されることを目的に開発されている。 CI-NET/CE-NETともに分類(2桁)、大分類(2桁)、中分類(3桁)、小分類(4桁)、細分類、セパレータ、スペックから構成されていて、CI-NETコードは14桁+可変長、CE-NETコードは2 0 桁 + 可 変 長 のものである。両 者 の 違いは、CE-NETコードが土木、建築工事を広くカバーしているのに対し、CI-NETコードは電気設備、機械設備の機器が詳細に分類されていることである。CI-NETコード表示例は、蛍光灯器具密閉で[ワット数]W_[灯数]トウ1が

「40300100300009&10W_1トウ1」である。

CI-NET/

CE-NETコード

英国のNBS BIMライブラリーに使用されている分類。OmniClassと同様、ISO12006-2に準拠している。建物要素、活動、空間、形態での建設要素、段階等に関する分類があり、多岐にわたっている。

コード表示例は、「Pr_35_90_93_10」(平貼り用陶磁器質タイル製品:Pr(製品)・35(内外装材)・90(成形品)・93

(ユニット屋根材)・10(平貼り用))である。

UniCLASS 2

工事標準仕様書 公共建築工事標準仕様書には、(建築工事編)、(電気設備工事編)、(機械設備工事編)が、公共建築改修工事標準仕様書にも同じ3種類の工事編があり、工事内容も建築物のすべてをカバーしている。ただし分類が発行年により変化しているため、恒久的な分類としては課題がある。

BIMライブラリーコンソーシアム 事務局長 (一財)建築保全センター 保全技術研究所長 寺本 英治

表-1 国内外の材料、機器のコード体系

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(162品目)、屋根材(186品目)、壁(77品目)、窓(18品目)である。

BIMオブジェクトに関しては、「NBS BIMオブジェクト標準(バージョン1.2/1114)」が公表されている。この基準は、「第1章一般要件」「第2章情報要件」「第3章形状要件」「第4章機能要件」「第5章メタデータ(データに付加されるデータ)要件」「参考」「用語の定義」から構成されている。

(2)ICISプロジェクト#2「BIMと仕様をつなぐ」

調査実施組織・実施時期:NATSPEC(オーストラリア専門企業協会連合会)、2014年1月目的:BIMオブジェクトの属性を示す仕様をどのような記述が最適かを検討するもの概要:BIMオブジェクトと仕様の記述を,①階層分類、②階層分類+キーノートジェネレータ、③オブジェクトIDジェネレータ、④パラメータのみ

(軽量シェルモデル)、⑤ライブラリー、⑥モデルに記述(エクスポート可)、⑦モデルに記述(エクスポート不可)の7タイプで得失を検討し、④と⑤が最適と結論付けている。

(3)ICISによるBIMライブラリー現況調査

調 査 実 施 組 織・ 期 間:NATSPEC(ICIS会員)、2014年末目的:オーストラリアでの統一したBIMライブラリー開発の基礎調査調査対象国:オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チェコ、デンマーク、英国、フィンランド、ドイツ、日本、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、シンガポール、南

アフリカ、 スウェーデン、スイス、米国(19カ国国)概要:17の設問により、BIMライブラリーの現状と各国での取り組み、関係標準について調査している。・英国、オーストラリア(設備)、ノル

ウェー(標準のみ)、カナダがBIMライブラリー所有

・韓国をはじめ多くの国が統一的なBIMライブラリーの構築への動き

・分類体系はBIMライブラリーの一部で、現在標準を作成している国は、ノルウェー(NS8360)、中国、デンマーク、スウェーデン、ニュージーランド、オーストラリアであり、またすでに標準を所有している国は、オーストラリア(ANZRSとBIM-MEP)、 オ ラ ン ダ(DRS、CBNL、COINS)、英国(NBS BIMオブジェクト標準)、ニュージーランド(ANZRS)、シンガポール(シンガポールBIMガイド)がある。

(4)ICISによる「NBS BIM オブジェクト標準に地域性を加えることの考慮プロジェクト」

2015年6月のICIS国際会議で決定された新規プロジェクトは、既存のNBS BIM オブジェクト標準に地域オプションを加えることを考慮するプロジェクトである。これは共通の国際的なベース(NBS BIMオブジェクト標準)に、国ごとの変化をある程度許容するものである。この検討はこれまでICISと独立して実施されてきたが、NBS(英国)、NATSPEC(オーストラリア)、Masterspec NZ(ニュージーランド)によって実施されることとなった。

(5)buildingSMART Internationalによる「製品データテンプレート

(PDT)標準の研究」BIMは、プロジェクト関係者間のラ

イフサイクルにわたるデータ交換を容易にするためには、書式の製品データが構造化されていることが必要である。過去に製品データを規格化する多

くの活動があったが、それらはあまり成功していない。しかし今年のシンガポール国際会議でbuildingSMART International(bSI)とISO TC 59/SCが共同で(ISO TC 59 /SC-bSI)、製品データテンプレート標準研究プロジェクトが始められた(プロダクトルーム)。

製品データテンプレート (PDT) は、個々の建築製品タイプの属性とプロパティの規格化されたセットを表しているもので、個々のPDTは、建物のライフサイクルにわたる全ての関係者によって求められる情報を先取りすることを目指している。 

完成するとPDTは、デジタル表現の製品データテンシート(PDS)となる。PDTの 標 準 書 式 とIFC、mvdXML、bSDD、COBieなどの既存のオープン標準との整合性があることは、PDTが幅広くBIMプラットフォームとして使うことができることを示している。従って製造者は、データを複数のフォーマットで提供する必要はない。またそれによって、製品データテンプレート・ユーザーは、いつでも、必要な情報だけを取り出すデータ処理を自動化することが可能になる。

buildingSMARTは、 将 来ISO標準になる製品データテンプレート群のbSI標準を開発するために、新しいbSI標準プロセスの下にワーキンググループを設置することを決めた。この活動の基礎となる既存の先導的活動と標準は、SPie、BS 8541、ISO16757、Co-Builder/PIX、CIBSE PDTs、AFNOR PPBIM Commission(BIMのための製品プロパティ)/AFNOR XP P07-150、CEN/TC 442 WG4 Data Dictionaries、BRE system fo r c rea t ion and va l ida t ion o f product templates、NBS BIMオブジェクト標準およびNBS BIMツールキットである。

建設業振興基金からのStem等の承継

(一財)建設業振興基金は、C-CADEC(設計製造情報化評議会)において2次元CADでの情報交換標準としてのStem、BE-Bridgeを研究し最終的には3次元への対応ができるものとしてのStem、BE-Bridgeに拡張してきた。

ここでStemとは設備機器について、性能、仕様に関する属性情報、外形図、各種技術ドキュメント等をひとかたまりの機器ライブラリーデータとして交換するための標準仕様であり、ま たBE-Bridgeと は、 異 な る 設 備CAD/CAM/積算ソフトウェア間で、属性情報を伴った配管、ダクト、機器等のデータ交換を可能とする仕様で、設備BIMソフトウェア間での利用も可能である。

しかし平成26年度に調査研究を終了し、Stem、BE-Bridge等 の 承 継先として(一財)建築保全センターを選び2015年4月に承継がIAI日本・山下代表理事立会いの下で行われた。

コンソーシアムの構成

コンソーシアムの構成は、会則に規定されており、それを解説したものが図-2であり、設立総会では代表、部会長等が発表された。(表-2)

平成27年度業務計画および予算

(1)業務方針コンソーシアム設立趣旨および次に

示す業務計画に基づき、計画的に業務を実施する。

(2)業務計画1)運営委員会(2カ月に1回程度開催予定)・事業年度予算の作成、業務方針等の

企画立案を行う。・コンソーシアムの運営、調整、啓発

等の活動を的確かつ効率的に推進するため、必要な決定を行う。

2)在り方部会(2カ月に1回程度開催予定)

BIMライブラリーの在り方に関する検討を行うもので、具体には以下に示す。・既存や計画中のBIMライブラリーの

把握・広く利用されるBIMライブラリーと

しての目標水準、実現方策の検討・オブジェクトの形式等の技術的検討3)建築部会(部会は2カ月に1回程度、WGは毎月開催予定)

BIMライブラリーの建築系標準仕様(ELVを含む)の作成を行うもので、具体的にはあり方部会の検討等を踏まえ、建築系材料、製品の情報標準化を検討する。4)設備部会(2カ月に1回程度WGは毎月開催予定)

BIMライブラリーの設備系標準仕様の作成を行うもので、具体には、現行のStem、BE-Bridgeの仕様の更新、活用を含め、内容の充実を図る。

5)運用部会(2カ月に1回程度、WGは毎月開催予定)

BIMライブラリーの運用に関する各種基準、規約等の作成をもので、具体的には、著作権、データ更新、データが不正な場合の対応等を検討する。6)事務局

事務局運営細則に示された業務を的確に実施するとともに、コンソーシアムの運営が円滑に行われるよう配慮する。また外部への情報発信に努める。

(3)予算平成27年度では、収入は800万円、

支出は部会等の活動に600万円、事務局150万円、予備費50万円を予定している。

今後の活動等

概ね2年後にBIMライブラリー構築を目指すには、計画的な活動が必要であり、特に海外においてBIMオブジェクト標準に関する議論が進められているため、この領域の情報整理と日本として標準の考え方、世界に対する地域性等の課題を早急に取りまとめる必要がある。また並行してライブラリーの内容とその実施主体の選定に向けての議論を進めていく予定であり、皆さまのご協力・ご支援をお願いするとともに、情報化時代にふさわしい情報発信に努めていく予定である。

当面のBIMライブラリーコンソーシアムWEBサイトhttp://www.bmmc.or.jp/blc 

BIMライブラリーコンソーシアムの設立

図-1 NBS National BIMライブラリーのトップページ

表-2  BIMライブラリーコンソーシアムの代表、部会長等

図-2  BIMライブラリーコンソーシアムの構成

代   表 建築保全センター理事長 尾島俊雄

部 会 長 安田 幸一(在り方部会長・東京工業大学教授)

     志手 一哉(建築部会長・芝浦工業大学准教授)

     一ノ瀬 雅之(設備部会長・首都大学東京准教授)

     山本 康友(運用部会長・首都大学東京客員教授)

事務局長 寺本 英治(建築保全センター理事・保全技術研究所長)