Berberine–Baicalin 複合体の溶解を促進する サンシシ成分の研究

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博士学位論文 2020 年度 Berberine–Baicalin 複合体の溶解を促進する サンシシ成分の研究 慶應義塾大学大学院薬学研究科 大越一輝

Transcript of Berberine–Baicalin 複合体の溶解を促進する サンシシ成分の研究

博士学位論文 2020 年度

Berberine–Baicalin複合体の溶解を促進する

サンシシ成分の研究

慶應義塾大学大学院薬学研究科

大越一輝

目次

序論1

本論

第一章 サンシシからの crocin類の単離およびその活性評価

第一節Crocin類の単離と沈殿析出抑制活性評価に関する

これまでの内容と課題 4

第二節 All-trans crocin-3 (3) および 13-cis crocin-1 (5) の単離 5

第三節 市販の crocin部分精製物の沈殿溶解活性 8

第四節 化合物 1–5および 1–5の混合物の沈殿溶解活性 9

第二章Berberine–baicalin複合体溶解の機序解析

第一節溶液中における化合物間の相互作用解析 12

第二節 化学シフト値変化からみた相互作用部位の解析 13

第三節 DOSY (diffusion ordered spectroscopy) による混液中に存在する

複合体の拡散係数測定 18

第四節 Baicalin–crocin-1複合体の解析 22

第五節 Berberine–crocin-1複合体の解析 23

第六節 二者複合体の相互作用 26

第七節 予想される沈殿溶解機序 33

結論35

実験の部36

参考文献 57

謝辞61

1

序論

漢方薬は, 生薬由来の多様な成分が含まれる医薬品である. 薬理作用を示す化合物を

単独で含有している西洋薬と比較した場合, 薬理作用の有無に関わらず多種の成分を

含むという点は, 漢方薬の大きな特徴の一つである. しかし, 多種多様な成分が複雑に

混在しているため, その有効性に関与する成分については未解明な点が多いのが事実

である.

漢方薬の多くは煎剤として服用されてきたが, 煎剤を調製する際には, 複数の生薬を

同時に煎じる過程があり, この過程において, 生薬に含まれる多種多様な成分が熱水中

に抽出される. このため, 成分間で物理化学的な相互作用が起こる可能性があり, 相互

作用の結果, 成分の抽出効率が変化することもある. 例えば, 富森らはマオウ, ボウシ

ョウ, オウレンまたはオウゴンをそれぞれカンゾウと組み合わせた 2 生薬系において,

カンゾウ由来の glycyrrhizinの抽出量が, 生薬への吸着, 塩析などが原因で単味の場合と

比較して大きく減少することを報告している [1]. また高石らは, マオウおよびマオウ

配合方剤からの ephedrine の溶出条件を検討する過程で, 麻黄湯, 葛根湯の ephedrine 含

量がマオウ単味を煎じた場合より低下することを見出し, その原因を他の生薬成分の

妨げによるものと考えた [2]. 煎剤を調製する際に成分の抽出効率が変動する原因には,

煎液中での沈殿形成反応もある. 野口らは, オウレンをダイオウ, カンゾウ, オウゴン

とそれぞれ組み合わせて抽出した場合に, オウレン中の berberine 型アルカロイドに由

来する苦味が消失することを見出し, berberineが湯液中で沈殿を形成することを報告し

[3], berberineはダイオウ中の tannin類 [3] 並びにカンゾウ中の glycyrrhizin [5] と相互作

用して沈殿を形成することを報告している.

黄連解毒湯は, オウレン, オウバク, オウゴン, サンシシから構成される漢方処方で,

特徴的な成分として , オウレンおよびオウバク由来の berberine とオウゴン由来の

baicalin がある. Yi らは, 黄連解毒湯の煎液中で生じる黄色沈殿が, 主に berberine と

2

baicalinで構成されていることを明らかにしており [4], Wangらは, berberineはオウゴン

中の wogonin とも沈殿を形成することを報告している [6]. 当研究室の先行研究者であ

る大嶋は, 黄連解毒湯の抗炎症作用の解析過程で, 構成生薬を単独あるいは組み合わせ

て煎じた際の berberine抽出量を測定した. その結果, 黄連解毒湯に配合されているサン

シシが berberine–baicalinの沈殿量を減少させることを報告した [7].

サンシシは, クチナシ Gardenia jasminoides Ellis (Rubiaceae) の果実を基原とする生薬

で, 抗高血圧作用 [8], 抗酸化作用 [9], 抗不安作用 [10], 利胆作用 [11] および神経保

護作用 [12] などを持つことが報告されている. サンシシの代表的な含有成分には, イ

リドイド配糖体 (geniposide, genipingentiobioside) [13], crocin 類 [14], モノテルペン

(jasminoside類, sacranoside類), quinic acid類縁体 [16] があるが, berberine–baicalinの沈殿

量を減少させる成分は不明であった.

そこで, 著者は卒業研究にて berberine–baicalinの沈殿を溶解させるサンシシ成分を明

らかにするため, HPLCを用いた活性評価系を構築した [17]. この評価系では, berberine

溶液, baicalin 溶液, サンプル溶液 (サンシシ抽出液など) を混合して berberine–baicalin

沈殿を形成させ, 遠心後の上清に含まれる berberineと baicalinの量を HPLCクロマトグ

ラム上のピーク面積値から定量している. サンプル溶液を加えなかった場合の berberine

および baicalin ピーク面積値を 100%とし, これに対するサンプル溶液を加えた場合の

berberineおよび baicalinピーク面積値割合を求めて比溶解度 (%) を算出した. 比溶解度

の値が高いほど沈殿溶解活性が高いと判定し, この活性評価系を用いてサンシシ成分

を分離した. その結果, 大学院修士研究時代に, サンシシ中の黄色素である crocin 類に

溶解活性があることを報告し, また, 沈殿の溶解過程で, all-trans crocin-1, berberine,

baicalin間で複合体が形成される可能性を見出した [18].

しかし, 各 crocin 類単独の活性評価は一部にとどまり, 沈殿溶解機序の詳細は不明で

ある. そこで後期博士課程では, crocin類のさらなる単離と活性評価を試み, 加えて沈殿

3

溶解の相互作用機序を解析することを研究目的とした.

4

本論

第一章 サンシシからの crocin類の単離およびその沈殿析出抑制活性評価

第一節 Crocin 類の単離と沈殿析出抑制活性評価に関するこれまでの研究内容

と課題

サンシシからの crocin類の単離と沈殿析出抑制活性評価について, 大学院修士研究時

代までに明らかにしたことを述べる. まず, 既報の crocin抽出分離条件を参考にし [14],

40%エタノール水溶液を用いてサンシシ成分を抽出後, 水/酢酸エチルで分液し, 比較的

極性の高い成分を含む水層を得た. 次に, この水層を Diaion HP-20を用いてカラムクロ

マトグラフィーに付し, 水およびメタノールを展開溶媒として成分を分離して, 100%メ

タノール溶出部を crocin類含有画分 (C4) として得た. この C4画分を水/メタノール混

液を移動相として分取 HPLCで分離し, all-trans crocin-1 (1), all-trans crocin-2 (2) および

all-trans crocin-4 (4) を得た.

しかし, 分取 HPLCクロマトグラム上のピークから, 未単離の crocin類があることが

予想されたため, 本研究ではそれらを単離•同定して活性を評価することにした. また,

未単離の crocinだけではなく 1, 2および 4についても活性評価を行い, 加えてこれらの

crocin類を, 市販の crocin部分精製物 (Gardenia fruits extract) 中の存在比に従って混ぜ

直して活性評価を行うことで, crocin 単体と混合時の相互作用を比較検討することにし

た.

5

第二節 All-trans crocin-3 (3) および 13-cis crocin-1 (5) の単離

分取 HPLCを用いて前述の C4画分 (2.36 g) をメタノール/水混液で分離し, all-trans

crocin-3 (3)を 3.5 mg 単離したが, 他の微量成分は単離できなかった. Berberine または

baicalinと crocin類の相互作用を解析するためには, 10 mg以上の量のサンプルが必要で

ある. そこで, より効率良く crocin類を得るために, 市販の crocin部分精製物 (Gardenia

fruits extract) から crocin類を単離することにした. 市販の crocin部分精製物をシリカゲ

ルカラムクロマトグラフィーに付し, 酢酸エチル/メタノール/水混液および 100%メタ

ノールで溶出して F1–F5の 5つの画分を得た (Chart 1). そして分取 HPLCを用いて, F2

画分から 3および 4を, F3画分から 2および 5を, F4画分から 1および 5を得た. 化合

物 1–5の化学構造を Fig. 1に示す.

Chart 1 市販の crocin部分精製物の分離

Crocin (Gardenia Fruits Exract) 951.1 mg Silica gel c.c. (2.5 cm x 33 cm) AcOEt : MeOH : Water = 7 : 1.5 : 1.5, MeOH (100%) wash

F1 F2 F3 F4 F5 60 mg 120 mg 80 mg 120 mg 400 mg about 40 mg 19.2 mg 85.1 mg

a) b) b) b) b) b)

3 4 2 5 5 113.2 mg 1.9 mg 10.9 mg 1.5 mg 15.3 mg 50.0 mg

HPLCColumn : Inertsil PREP-ODS (20 mm × 250 mm)Solvent : a) H2O/MeOH MeOH : 80% 100%

b) H2O/MeOH MeOH : 60% 100%Flow rate : 9.0 mL/minDetection : UV 440 nm

6

Fig. 1 Crocin類の構造

all-trans crocin-1 (1), all-trans crocin-2 (2), all-trans crocin-3 (3), all-trans crocin-4 (4), 13-cis

crocin-1 (5)

化合物 1–3 [19], 4 [20], 5 [21, 22] は, それぞれスペクトルデータを文献と比較して同

定した. 化合物 5 の NMRスペクトルは, 文献 21では測定溶媒に CD3OD, 文献 22では

CD3OD/C6D6 (4 : 1) が使用されており, 本実験で用いた DMSO-d6とは異なるため, スペ

クトルデータの比較に加えて, 10位と 12位の帰属をあらためて行った.

化合物 5の 1H-NMR (DMSO-d6) スペクトルにおいて, 7.47 ppmにトリプレット様のシ

グナルが観測され, 積分値からこれらは 2H に相当するシグナルと考えられた. また,

1H-1H COSYスペクトルにおいて, 7.47 ppmのシグナルと 1.97–2.00 ppmに観測されるメ

チル基由来のシグナルとの間に相関がみられたことから, 7.47 ppmのトリプレット様の

シグナルは, 10 および 12 位のオレフィンプロトン由来のダブレットシグナルの一部が

重なって検出されていると予想した. ここで, 7.18 ppmに観測される 15位のオレフィン

プロトン由来のシグナルについて, 1D-NOESYで NOEの観測を試みたところ, 7.47 ppm

R1O 89

O10

11

12

13

14

15

15'

14'

13'

12'

11'

10'

9'

19'

8' OR2

O19 20

20'

R1O 89

O10

11

12

1314

19 20

15 15'

14'13'

20'

12' 11'

10'9'

19'

8'

OR2O

1: R1=R2=gentiobiosyl2: R1=gentiobiosyl, R2=glucosyl3: R1=gentiobiosyl, R2=H4: R1=R2=glucosyl�

5: R1=R2=gentiobiosyl

4

3

2 1O

5HO

OH

6O

HO

4’

3’

2’ 1’O

5’HO

OH

6’OH

HO 4’’

3’’

2’’ 1’’O

5’’HO

OH

6’’OH

HO

gentiobiosyl glucosyl

7

のトリプレット様のシグナルのうち中央および低磁場側の二本のシグナルのみが検出

された. 化合物 5の化学構造から, 15位と 12位のシグナル間で NOEが観測され, 12位

由来のダブレットシグナルが 7.48 ppmに検出されたと考えた. つまり, 7.48 ppmのダブ

レットシグナルを 12位の, 7.46 ppmのダブレットシグナルを 10位のオレフィンプロト

ンとそれぞれ帰属した.

8

第三節 市販の crocin部分精製物の沈殿溶解活性

化合物 1–5の単離に用いた市販の crocin部分精製物 (Gardenia fruits extract) について,

単離前の混合物の時点で活性を示すかどうか確認するため, サンプルの終濃度 62.5, 125,

250, 500, 1000 µg/mLでアッセイを行った結果を Fig. 2に示す. なお, 比溶解度 (relative

solubility %) は, 以下の式によって計算した.

比溶解度 (%) = !"#$分析用試料中の !"#!"#$%"又は !"#$"%#&のピーク面積値

!"#$%"&中の !"#!"#$%"又は !"#$"%#&のピーク面積値×100

サンプルを添加しない controlと比較して, 濃度 250 µg/mL以上で berberine, baicalin共に

有意に溶解性が上昇した . 以降のアッセイでは , この市販の crocin 部分精製物

(Gardenia fruits extract) をポジティブコントロール (pos.と表記) として用いた.

Fig. 2 市販の crocin部分精製物の berberine–baicalin混合物に対する溶解作用

mean ± SD, n=3, *p < 0.01, cont.: サンプル非添加

**

**

*

*

0

50

100

150

200

250

300

cont. 62.5 125 250 500 1000

rela

tive

solu

bilit

y (%

)

berberinebaicalin

µg/mL

9

第四節 化合物 1–5およびそれらの混合物の沈殿溶解活性

次に化合物 1–5 およびそれらの混合物のアッセイを行った. 混合物は, 市販の crocin

部分精製物を, crocin類の極大吸収波長付近である 440 nm [23] にてHPLC分析して得ら

れたクロマトグラム (Fig. 3a) 上のピーク面積値比 (1 : 2 : 3 : 4 : 5 = 21 : 4 : 9 : 1 : 6) に

従って, 単離した化合物を混合することにより調製した. アッセイの結果を Fig. 4に示

す.

Fig. 3 市販の crocin部分精製物のHPLCクロマトグラム (検出波長; a: 440 nm, b: 275 nm)

10

Fig. 4 化合物 1–5および混合物の berberine–baicalin混合物に対する溶解作用

mean ± SD, n=3, *p < 0.01, †p < 0.05, cont.: サンプル非添加, pos.: 市販の crocin部分精製

物 (500 µg/mL)

化合物 1, 3および 5は berberineに対して約 200%, baicalinに対して約 235%と高い比

溶解度を示した. 一方, 化合物 2および 4の比溶解度は 150%程度であった. 高活性であ

った 1, 3および 5の分子量はそれぞれ 976, 652, 976であり, 3に比べて 1および 5の方

が大きい. アッセイではサンプル濃度を 500 µg/mLとしているため, 等モル濃度に換算

して活性を比較すると, 3 よりも 1 および 5 の方が高い活性を示すと考えられる. また,

Fig. 3aのクロマトグラム上のピーク面積値比 (1 : 2 : 3 : 4 : 5 = 21 : 4 : 9 : 1 : 6) から, 1–5

の中で 1 は最も含有量が高い. 従って, 活性の強さと含量の高さから, 市販の crocin 部

分精製物の活性に最も寄与している成分は all-trans crocin-1 (1) であると考えられる.

Positive control の比溶解度 (berberine: 164%, baicalin: 202%) は , 1–5 の混合物

(berberine: 200%, baicalin: 246%) と比べるとやや低い値となった. より短波長 (275 nm)

で検出したクロマトグラムから (Fig. 3b), 市販の crocin部分精製物中には crocin類以外

にも多数の化合物が含まれていると考えられる. Positive control として用いた市販の

*

*

*

*

*

* **

*

*

*

**

0

50

100

150

200

250

300

cont. pos. 1 2 3 4 5 mix

rela

tive

solu

bilit

y (%

)

berberine

baicalin

† † †

11

crocin 部分精製物よりも, そこから単離した 1–5 だけを混合したサンプルの方が高い活

性を示したのは, 市販の crocin 部分精製物中の crocin 以外の化合物が, ほとんど活性を

示さないからであると考えられる.

また, 1–5の混合物は, 高い活性を示した 1, 3および 5と比べて顕著に高い活性は示さ

なかった. このことから, 単一化合物でも混合物でも溶解性増強作用の機序は同様であ

ることが推察される.

高い活性を示した 1, 3, 5および混合物では, berberineよりも baicalinに対する比溶解

度の方が高い値を示した. Wangらは, baicalinナトリウム塩と berberine塩酸塩の水溶液

から得られた berberine–baicalin沈殿について, ネガティブイオンモード FAB-MSにおい

て berberineと baicalinのモル比 1 : 1に由来するピークを得ており, また, その berberine–

baicalin沈殿の 1H-NMRスペクトルでは, berberineおよび baicalinに由来するシグナルの

積分値比は約 1 : 1 となったことから, berberine–baicalin 沈殿において, berberine と

baicalin のモル比は 1 : 1であると報告している [6]. Crocin類が berberine–baicalin複合体

を溶解しているのならば, 比溶解度も berberine : baicalin = 1 : 1となることが予想される.

しかし比溶解度に差が出ているため, berberine と baicalin に対する溶解性増強作用に差

がある可能性が考えられる.

12

第二章 Berberine–baicalin複合体溶解の機序解析

第一節 溶液中における化合物間の相互作用解析

Berberineおよびbaicalinに対するcrocin類の溶解性増強効果は, 溶液中における化合物

間の相互作用の結果生じている. 溶液中での化合物の相互作用解析には様々な方法が

使われてきた. 例えば, ある成分単独の溶液に別の成分を少しずつ添加し, UVや蛍光ス

ペクトルの変化から成分間の結合部位を予測する方法 [25], 沈殿を形成する二成分の

混合比を変化させ, HPLCで濃度を定量して沈殿の結合比を求める方法 [4], 等温滴定型

熱量測定により複合体形成の結合定数, 結合のエンタルピー変化などを求め, 成分間の

複合体形成反応を熱力学的に解析する方法 [26] などである.

本研究では, 溶解過程において, berberine, baicalinおよびcrocinが分子レベルでどのよ

うに相互作用するのか, その結果どんな複合体が溶液中に存在するのかを明らかにす

る必要があった. そこで, NMRを用いて化学シフト値の変化から相互作用の部位および

様式の解析, 拡散係数測定とMSスペクトルから複合体の存在状態の解析を行い, 分子

間NOEによる複合体の構造の推定を行った.

これらの方法を使って行われた先行研究例を以下に簡単に紹介する. Kamigauchiらは,

γ-cyclodextrinとglycyrrhizinの二成分で滴定実験を行い, 成分の濃度変化に対する

1H-NMRスペクトル上の化学シフト値の変化から, 複合体形成の相互作用を解析した

[27]. 一方, 拡散係数とMSスペクトルを複合体解析に利用した報告にはMathiron等の報

告 [28] がある. ここでは, 水への溶解性が低いmoringinの, α-cyclodextrin共存下におけ

る包摂複合体形成の解析を, 拡散係数の変動やMSスペクトル上での複合体に由来する

m/z値の観測などから行っている.

13

第二節 ケミカルシフト値変化からみた相互作用部位の解析

沈殿溶解活性の評価系における溶媒組成を参考にし, D2O/CD3OD (7 : 1) 溶液を測定

溶媒とした. この溶媒を用いて, 一定濃度の crocin-1 存在下, 溶液中の berberine および

baicalinの存在比を徐々に増やしたときの, 1H-NMRにおける crocin-1, berberine, baicalin

の各シグナルのケミカルシフト値を記録し, 溶解過程での相互作用部位および様式の

解析を試みた.

まず, 2.5 mMの crocin-1に対し, berberine : baicalin (1 : 1) 混合物のモル濃度比が 0,

0.025, 0.05, 0.075, 0.1, 0.125, 0.15, 0.16, 0.17, 0.18, 0.2となるように混合した計 11試料を

調製した. 各試料を一定時間室温で静置後遠心し, 得られた上清を 1H-NMR測定に供し,

crocin-1, berberine, baicalinそれぞれのケミカルシフト値を取得した.

サンプル調製の過程において, モル濃度比 0.1より高いサンプルでは沈殿が観察され,

沈殿を除いた上清液の NMRの測定値はモル濃度比 0.1のものとほとんど変わらなかっ

た. このためモル濃度比 0–0.1 までの各シグナルの測定結果を, 横軸にケミカルシフト

値 (ppm), 縦軸にモル濃度比をとってグラフ化し, Fig. 5, 7–9に示した.

相互作用部位の解析の前に, 水中における berberine–baicalin複合体の存在状態につい

て述べる. Berberineはその化学構造中に, 親水性の四級アンモニウムイオン部と疎水性

の環構造部をもち, baicalin は親水性のグルクロン酸部と疎水性のフラボン環部をもつ.

水中において, berberineおよび baicalinはイオン性相互作用によりモル比 1 : 1の複合体

を形成するが, このとき親水性の第四級アンモニウムイオン部およびグルクロン酸部

を互いに内側に向け, 疎水性の環構造部およびフラボン環部を外側に向けた構造をと

ることが報告されている [6].

14

Fig. 5 crocin-1のポリエン部のシグナル 横軸: 化学シフト値 (ppm),

縦軸: crocin-1に対する berberineと baicalinの混合モル濃度比

(11, 12, 15位はそれぞれ重なって検出された)

Fig. 6 Crocin-1 のポリエン部プロトンシグナルの半値幅変化 横軸: crocin-1 に対する

berberineと baicalinの混合モル濃度比, 縦軸: シグナルの半値幅

RO8

9

O

10

11

12

13

14

15

19 20

H H H

HH

0

10

20

30

40

50

60

0 0.025 0.05 0.075 0.1

10

11,12,15

14

19

20

full

(Hz)

15

Fig. 7 Crocin-1の糖部のシグナル (5, 6’位は重なって検出された)

Fig. 8 Berberineのシグナル (11, 12位は重なって検出された. 5, 8, 13位および 9, 10位の

メトキシ基はシグナルが微弱かつブロードでケミカルシフト値の判定は困難だった. 6

位は水に由来する 4.9 ppm付近の巨大なシグナルと重なり検出できなかった.)

4

3

2 1O

5HO

OH

6O

HO

4’

3’

2’ 1’O

5’HO

OH

6’OH

HO

CH3

11

O

O

12

8

N+

13

56

O1

4

O

H3C

0.000

0.050

0.100

5.8505.9005.9506.0006.0506.100

16

Fig. 9 Baicalinでケミカルシフト値に変化がみられたシグナル

Berberineおよび baicalinの存在比の増加にともない, crocin-1のポリエン部に由来する

各シグナルのケミカルシフト値に高磁場シフトが認められ (Fig. 5), 混合比 0.075 から

0.1 にかけてシグナルの半値幅が大きく広がり, crocin-1 の運動性の低下が認められた

(Fig. 6). 一方, crocin-1の糖部に由来するシグナルのケミカルシフト値については, 顕著

な変化は観測されなかった (Fig. 7). これに対し, berberineおよび baicalinの一部のケミ

カルシフト値についても顕著な高磁場シフトが認められ(Fig. 8, 9), その中でも berberine

の 11, 12位に由来するシグナルと baicalinの 3, 8位に由来するシグナルで比較的大きな

高磁場シフトが観測された . 高磁場シフトの認められたシグナルから , crocin-1 と

berberineおよび baicalinの相互作用部位を判断すると, crocin-1の 10, 11, 12, 14, 15位の

8 O

3

O

6’5’

4’3’

2’

OH

HO

OO

OH

HOHO

HOOC

17

オレフィンプロトンおよび 19, 20位のメチル基プロトン, berberineの 1, 4, 11, 12位プロ

トンおよび baicalin の 3, 8, 2’, 3’, 4’, 5’, 6’位プロトンが考えられ, crocin-1 の糖部は,

berberineおよび baicalinとの相互作用部位ではないことが示唆された.

ポリエン部のシグナルにおいて観測された高磁場シフトは, crocin-1 のポリエン部が

berberine–baicalin 複合体に近接し, 外部磁場が弱められたことが原因であると考えられ

る. Berberineと baicalinはその化学構造中に芳香環をもつ. このため, π電子系による環

電流が, 環平面に対して側面では外部磁場を強める方向に, 環平面に対して上下面では

弱める方向に微小磁場を形成する. ゆえに, 環平面の側面から近接すると低磁場シフト

が, 上下面からでは高磁場シフトがみられる. crocin-1 のポリエン部に由来するシグナ

ルに高磁場シフトが認められたということは, berberine および baicalin の環平面に対し

て crocin-1 は上または下方向から近づいて相互作用したことを意味すると推察した. ま

た berberineおよび baicalinのシグナルでみられた高磁場シフトは, crocin-1のπ電子豊富

なポリエン部が近接したことによる遮蔽効果であると考えた.

高磁場シフトが認められた部位は, いずれの化合物においても疎水性の化学構造部

で, π電子による遮蔽効果の影響が考えられた. このため, crocin-1 と berberine および

baicalin 間では, π-π相互作用に代表されるロンドン分散力により, 複合体を形成する

相互作用があることが推察された. その前段階として, D2O/CD3OD (7 : 1) 溶液という極

性の高い溶媒中で, crocin-1, berberineおよびbaicalin各分子が疎水性相互作用により集合

することが考えられた. また, crocin-1の糖部は相互作用に関与しないものの, 親水性を

示すため, 周囲の溶媒分子との溶媒和に寄与していることが予想された.

18

第三節 DOSY (diffusion ordered spectroscopy) による混液中に存在する複合体

の拡散係数測定

前節において考察した相互作用により, crocin-1と berberineおよび baicalinの間で何ら

かの複合体が形成される可能性が考えられた. 本節では, 水溶液中にどのような複合体

が存在するのかを, DOSYから求めた各化合物の拡散係数を用いて考察することとした.

以下に, DOSYについて述べる.

DOSYとは, 磁場勾配 (PFG: pulse field gradient) を用いたNMR測定により, 溶液中各

分子の拡散係数の違いを利用して, 混合物の NMR スペクトルを分離する方法である.

拡散係数は, 分子やイオンが並進運動によって中心位置を動かす度合いを表した物理

定数である. 一般に, 対流の影響のない溶液中では, 分子量が大きいほど拡散係数は小

さくなる. この拡散係数を, NMRスペクトル上のシグナル強度から求めており, 導出に

使用される式は以下の Stejskal-Tanner式である [29].

S(G) = S(0)exp(-D𝛾2𝛿2G2(𝛥- 𝛿/3))

S: エコーシグナルの強度

D: 拡散係数

𝛾: 核スピンの磁気回転比

𝛿: PFGの長さ

G: PFGの大きさ

𝛥: PFGの間隔

この式は, 𝛾, 𝛿, 𝛥の値が一定のとき, 観測されるエコーシグナルの強度 S(G)が PFGの

大きさの変化にともなって, PFGをかけていないときに得られるエコーシグナルの強度

19

S(0)から拡散係数 Dに従って減衰することを表している. つまり, 様々な PFGの大きさ

における S(G)/S(0)の値をプロットすることにより D についての関数が得られ, それを

解析することで Dを求めることができる.

Berberine, baicalin, crocin-1単品の溶液およびこれらを二成分, 三成分で混合したサン

プル溶液 (berberine: 0.5 mM, baicalin: 0.5 mM, crocin-1: 2.5 mM) を調製し, サンプル中

の拡散係数を測定した. サンプル溶媒には重水/重メタノール (7 : 1) を用いた. 測定条

件を次のように設定した. 測定により得られた二次元スペクトルに対し VnmrJ のプロ

グラムを用いて拡散係数を求めた. 結果を Table 1に示す. なお以下の記述では, 拡散係

数の単位 (×10-10m2/s) は省略する.

測定方法: dbppste (DOSY: bipolar pulse pair stimulated echo)

D分布の解析方法: mono exponential fitting

測定温度: 37˚C

繰り返し緩和時間: 10 s

PFGの長さ: 2 ms

PFGの大きさ: 1300–32500

PFG間隔: 50 ms

積算回数: 三成分混合のサンプルのみ 512回, その他は 64回

20

Table 1 単品, 二成分, 三成分混合時の各成分の拡散係数 (×10-10m2/s)

(n = 1)

単体での拡散係数は, crocin-1 (MW 976) は 3.05, berberine (MW 336) は 4.12, baicalin

(MW 446) は 3.50となり, 分子量と拡散係数に負の相関がみられた. 拡散係数測定でサ

ンプル溶媒に重水 [28] や, 重メタノール [30] を使用した文献においても, 分子量と

拡散係数に負の相関がみられたことから, この測定条件で得られた拡散係数の値は妥

当なものだと考えた.

Crocin-1 を berberine または baicalin と混合した場合, crocin-1 の拡散係数はそれぞれ

2.90および 3.01となり, 単体時の 3.05よりも小さい値となった. Berberineを crocin-1ま

たは baicalinと混合したときも同様に, 各々2.85と 3.70と単体時の 4.12より小さい値と

なり, baicalinと crocin-1または berberineとの混合でも, baicalin単体の 3.50よりも小さ

い 3.02と 3.33の値が得られた. 更に三成分混合時では, いずれの化合物も各々の単体よ

り小さい 3.01の拡散係数を示した. 混合により成分間で複合体が形成されると, 単体の

場合に比べて見かけの分子量が大きくなり, 複合体は単体よりも小さな拡散係数を示

すと予想される. したがって, 混合により単体よりも小さい値を示したということは,

crocin-1, berberine, baicalinの二成分および三成分混合液において, 各々の成分が単独で

溶解しつつ, それらの一部が成分間で berberine–crocin-1, baicalin–crocin-1, berberine–

baicalin–crocin-1複合体を形成して溶解していることを示していると考えられる.

また, 二成分および三成分混合時には, 各化合物について 1 つの拡散係数のみ検出さ

れた. もし, 単体と複合体が溶液中で区別可能であるならば, 単体の拡散係数とそれよ

り小さい値を示す複合体の拡散係数の 2 つの値が得られると予想できる [28]. 単体と

�� �� ����

�������� ��������� ��������

�������� �� � � ��� �� �

��������� ���� ���� � ���

�������� ��� �� � ���� �

����

�� �

21

混合物では拡散係数が異なるので複合体が存在すると考えられるが, NMR の時間スケ

ールでは単体と複合体の二つの状態を区別できず, 溶液全体として, 単体のものより低

い 1つの拡散係数を示したと考えた. つまり, crocin-1, berberine, baicalin間では複合体形

成および解離の平衡反応があり, 単体と複合体が共存するものの拡散係数としては 1つ

のみ検出されるということが推察された.

Crocin-1 を含む二成分および三成分混合時における各成分の拡散係数は近い値を示

した一方で, berberineと baicalinの混液においては, 互いの拡散係数は近い値を示さなか

った. 各成分混合時の単体と複合体の間での平衡関係を考えると, 単体と複合体の量に

よって, 各成分の拡散係数が近い値を示すかどうかが決まると考えられる. つまり,

crocin-1 を含む二成分および三成分混合時には各成分単体よりも複合体の方が多いため

に拡散係数が近い値になったと考えられた. 本実験条件下では, berberineおよび baicalin

の混合時に沈殿は観測されなかったが, berberine–baicalin 複合体が形成されるとそのほ

とんどは水溶液中で沈殿することが予想される. このため, berberineおよび baicalinの混

合時には各成分単体の方が多く存在し, 複合体の拡散係数よりも単体の拡散係数がそ

れぞれ大きく反映され, 互いの拡散係数が近い値を示さなかったと考えられた.

22

第四節 Baicalin–crocin-1複合体の解析

DOSY 測定の結果から存在が示唆された baicalinと crocin-1 からなる二者複合体の解

析を行った. まず, 沈殿溶解活性の評価系の方法を参考にし, baicalin–メタノール溶液

(4 mM), crocin-1水溶液 (0.8 mM)を調製し, baicalin–メタノール溶液を 100 µL, 超純水

200 µL および crocin-1 水溶液 500 µL を混合した. 混合後遠心して得られた上清を

ESI-MS測定用サンプルに供した. その結果, negative ion modeにおいて baicalinおよび

crocin-1由来のシグナルとともに m/z 1421のシグナルが検出された (Fig. 10). このシグ

ナルの m/zは, baicalin (MW 446) と crocin-1 (MW 976) の分子量の和の 1422より 1少な

い. このことから, m/z 1421のシグナルは[baicalin–crocin-1 - H]-によるもので, baicalinと

crocin-1が 1 : 1で複合体を形成する可能性が示唆された.

Fig. 10 Baicalin, crocin-1混液上清の ESI-MSスペクトル (negative ion mode)

m/z 444: baicalin [M - H]-, m/z 975: crocin-1 [M - H]-, m/z 1421: baicalin–crocin-1複合

体 [M - H]-

ᐇ験᪥: 2020/02/21 18:28:13  ᐃデータྡ: 20200221ko- 3 イオンモード: ESI- సᡂ᮲௳: ᖹᆒ(MS[1] ⤒過間:2.13..2.24)

500 1000 1500 2000m/z

0

1000

2000

3000

4000

Intensity (4541)

444.8973

268.8754

445.9042 975.0994

445.0665

268.9800 445.9702269.0178 1421.0418

269.0594 446.0221

23

第五節 Berberine-crocin-1複合体の解析

Baicalin の場合と同様に, berberine と crocin-1 からなる二者複合体の解析を行った.

Berberine水溶液 (2 mM), crocin-1水溶液 (0.8 mM)を調製し, berberine水溶液を 200 µL,

メタノール 100 µLおよび crocin-1水溶液 500 µLを混合した. 混合後 1時間静置し, 遠

心後の上清を ESI-MS 測定用サンプルに供した. その結果 (Fig. 11, 12), negative ion

mode において berberine および crocin-1 由来のシグナル (Fig. 11) とともに, m/z 1311,

1346, 1382のシグナルが検出された (Fig. 12). Berberine (MW 336) および crocin-1 (MW

976) の分子量の和は 1312なので, m/z 1311のシグナルは[berberine–crocin-1 - H]-による

ものと予想できる. また, m/z 1346および 1382のシグナルは, m/z 1311のシグナルを基準

にそれぞれおよそ 35, 71離れており, negative ion modeであることを考慮すると, 塩素が

一分子付加して脱プロトンしたものと塩素が二分子付加したものであると考えられ,

berberineと crocin-1が 1 : 1で複合体を形成する可能性が示唆された. Fig. 12において,

m/z 1311, 1346, 1382のシグナル付近に, 複数のシグナルが検出された. これは, 塩素の

安定同位体に加えて, 炭素の安定同位体によるシグナルが複数検出されたと考えられ

る. ChemDrawにて, crocin-1, berberine, HClを使った 3パターンのMSスペクトルシミュ

レーション (positive ion mode) を行なったところ, 複数のシグナルが観測され, 塩素や

炭素の安定同位体によりシグナルが複雑化した可能性が示唆された. シミュレーショ

ン結果を Fig. 12の下に記した.

24

Fig. 11 Berberine, crocin-1混液上清の ESI-MSスペクトル (negative ion mode)

m/z 377: berberineのメトキシ基からメチルが脱離し, NaとClが付加して脱プロト

ンしたもの [M - CH3 + Na + Cl - H]-, m/z 651: crocin-1からグルコース二分子またはゲン

チオビオース一分子が脱離した化合物の脱プロトン体, m/z 1011: crocin-1 [M + Cl]-

ᐇ験᪥: 2020/11/11 18:14:14  ᐃデータྡ: 20201111ko-ori1 -120v イオンモード: ESI- సᡂ᮲௳: ᖹᆒ(MS[1] ⤒過間:1.72..1.96)

200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000m/z

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

Intensity (10830)x103

1011.2124

651.1773

975.24041012.2169283.2241

652.1807

377.0326

1014.2134

25

Fig. 12 Berberine, crocin-1混液上清の ESI-MSスペクトルの拡大図 (negative ion mode)

ChemDrawによるシミュレーション結果 (m/zとシグナル強度)

・crocin-1, berberine

Chemical Formula: C64H82NO28+

Molecular Weight: 1313

m/z: 1313 (100.0%), 1314 (69.2%), 1315 (29.4%), 1316 (8.5%), 1317 (1.4%)

・crocin-1, berberine, HCl

Chemical Formula: C64H83ClNO28+

Molecular Weight: 1350

m/z: 1348 (100.0%), 1349 (70.3%), 1350 (61.4%), 1351 (31.4%), 1352 (10.7%), 1353 (2.7%)

・crocin-1, berberine, 2HCl

Chemical Formula: C64H84Cl2NO28+

Molecular Weight: 1386

m/z: 1384 (100.0%), 1385 (70.3%), 1386 (93.3%), 1387 (52.7%), 1388 (30.4%), 1389 (13.0%),

1390 (2.4%)

ᐇ験᪥: 2020/11/11 18:14:14  ᐃデータྡ: 20201111ko-ori1 -120v イオンモード: ESI- సᡂ᮲௳: ᖹᆒ(MS[1] ⤒過間:1.79..1.91)

1320.0 1340.0 1360.0 1380.0m/z

0

50

100

150

200

250

300

Intensity (331)

1346.2600

1346.3053

1348.2897

1384.2575

1382.2621

26

第六節 二者複合体の相互作用

DOSYおよび MSの結果から存在が示唆された二者複合体について, 1H-NMRスペク

トルのケミカルシフト値および分子間 NOE から, 複合体形成における相互作用を解析

した. まず berberineと crocin-1または baicalinと crocin-1を混合した時の 1H-NMRスペ

クトルを, それぞれ単独のスペクトルと比較した.

Berberineと crocin-1, baicalinと crocin-1の混合においては, berberineまたは baicalinと

crocin-1の濃度比が 1 : 1, 溶媒組成が D2O : CD3OD = 7 : 1となるようにサンプルを調製

し, 成分単独と混合時の 1H-NMR を測定した. Fig. 13–16 の上段に berberine または

baicalin単独, 中段に二成分混合, 下段に crocin-1単独のスペクトルを示す.

Fig. 13 Berberineと crocin-1の低磁場側の 1H-NMRスペクトル

8 13�12�11�

1� 4�

-OCH2O-�

10�11�

15, 12�14�

1�

berberine�

berberine, crocin-1�

crocin-1�

27

Fig. 14 Berberineと crocin-1の高磁場側の 1H-NMRスペクトル

Fig. 15 Baicalinと crocin-1の低磁場側の 1H-NMRスペクトル

9�10�

5�

1’�

19� 20�

berberine�

berberine, crocin-1�

crocin-1�

2’, 6’�4�

3’, 5’�8� 3� 1’’�

28

Fig. 16 Baicalinと crocin-1の高磁場側の 1H-NMRスペクトル

Berberineと crocin-1の組み合わせ (Fig. 13, Fig. 14) では, berberineの 6および 11位以

外の全てのシグナルで高磁場シフトが, crocin-1 ではポリエン部のシグナルで高磁場シ

フトが認められた. Berberineの 6位は 4.8 ppmの水のシグナルと重なるため検出できず,

11位はケミカルシフト値にほとんど変化はないものの, カップリング定数は crocin-1と

の共存により 8.2 Hzから 7.7 Hzへ変化していた.

Baicalinと crocin-1の組み合わせ (Fig. 15, Fig. 16) では, crocin-1のポリエン部で高磁

場シフトが認められ, baicalinの 3, 8位並びに B環の 2’–6’位プロトンについて低磁場シ

フトとシグナルの先鋭化が, グルクロン酸部の 5’’位で高磁場シフトが認められた. シ

グナルの先鋭化については, baicalin単独の状態ではD2O : CD3OD = 7 : 1という極性の高

い溶媒中で分子同士が集まっていたが, crocin-1 共存下では複合体形成にともない分子

の集合が解消され, 運動性がよくなったことが原因と考えられた. 低磁場シフトについ

ては, baicalin 分子同士の近接による高磁場シフトが解消された影響と, crocin-1 のポリ

5’’�

baicalin�

baicalin, crocin-1�

crocin-1�

29

エン部の近接による高磁場シフトの影響の差し引きの結果, 観測されたと推察した.

5’’位の高磁場シフトについては以下の可能性が考えられる. すなわち相互作用によ

ってグルクロン酸部のクロモン環平面に対する配向が変化した上で, グルクロン酸部

と crocin-1のポリエン部が相互作用し高磁場シフトしている可能性と, crocin-1のポリエ

ン部との相互作用ではなく, baicalinの A, C環の環電流の影響で高磁場シフトしている

可能性である.

さらに解析を進めるため, 各種 NOE測定を行った. Fig. 17に berberineと crocin-1の混

液の NOESYスペクトル (mixing time: 300 ms) を示した. Fig. 17において, 2 ppm付近に

みられる crocin-1 の 19 および 20 位メチル基由来シグナルと, 4 ppm 付近にみられる

berberineの 9, 10位メトキシ基由来シグナルとの間, また, 6 ppm付近の berberineメチレ

ンジオキシ部プロトン由来シグナルとの間で, 分子間 NOEが観測された. NMRスペク

トル上において, crocin-1の 19, 20位および 19’, 20’位は対称な分子構造ゆえにシグナ

ルが重なっており, 区別はできない. しかし観測された分子間 NOE が berberine 分子の

両端であることから, berberine–crocin-1複合体は, berberineの環平面に対し crocin-1が同

じ平面で近づき, crocin-1の 19, 20位 (または 19’, 20’位) メチル基と berberineのメチ

レンジオキシ部プロトンが近接し, crocin-1のもう一方のメチル基二つが berberineの 9,

10位メトキシ基と近接するような構造をとることが考えられた (Fig. 18).

30

Fig. 17 Berberine, crocin-1混液の NOESYスペクトル (mixing time: 300 ms)

Fig. 18 Berberine–crocin-1複合体の相互作用モデル図

オレンジ色: crocin-1の化学構造, 黄色: berberineの化学構造,

矢印: NOEが観測された部位

F2 [ppm] 10 8 6 4 2

F1 [p

pm]

10

8

6

4

2

TN_20200312_crober 2 1 C:\Users\bruker_NMR\Desktop\NMR_Data

berberine-O-CH2-O-�

berberine9 10�

crocin-120

19�

31

Fig. 19 Baicalin, crocin-1混液の NOESYスペクトル (mixing time: 300 ms)

Fig. 19に baicalinと crocin-1の混液の NOESYスペクトル (mixing time: 300 ms) を示

した. Fig. 19において, 2 ppm付近にみられる crocin-1の 19, 20位メチル基由来シグナル

と, 8 ppm付近にみられる baicalinの B環 2’, 6’位プロトン由来シグナルとの間, 加えて,

baicalinの 3位プロトン由来シグナルとの間で分子間 NOEが観測された. また, baicalin

の 8位プロトン由来シグナルと baicalinのグルクロン酸部アノマープロトン由来シグナ

ルとの間で分子内 NOEが観測され, baicalinのグルクロン酸部はクロモン環平面に対し

立ち上がるように配向していることが予想された. このような baicalin 分子に対し,

baicalin–crocin-1複合体では, crocin-1のポリエン部が baicalinのクロモン環平面に対し同

じ平面で近づき, crocin-1の片側二つのメチル基と baicalinの B環 2’, 6’位プロトンおよ

び 3位プロトンが近接する構造をとることが考えられた (Fig. 20).

F2 [ppm] 10 8 6 4 2

F1 [p

pm]

10

8

6

4

2

TN_20200310_crobai 2 1 C:\Users\bruker_NMR\Desktop\NMR_Data

baicalin2’, 6’ 8 3�

crocin-120

19�

baicalin1’’

32

Fig. 20 Baicalin–crocin-1複合体の相互作用モデル図

オレンジ色: crocin-1の化学構造, 黄色: baicalinの化学構造,

矢印: NOEが観測された部位

Crocin-1が baicalinのクロモン環平面に対し上または下方向から近接する

33

第七節 予想される沈殿溶解機序

ここまでの結果をふまえ, crocin-1, berberine, baicalin間での複合体形成が溶解性向上

とどうつながるのかについて平衡式を示しつつ考察を行った.

まず, 水/メタノール (7 : 1) 混液における berberine および baicalin の二成分系では,

berberine および baicalin が単独で溶解している一方, 二成分間で berberine–baicalin 複合

体を形成し, その多くは沈殿する.

berberine + baicalin ⇄ berberine–baicalin ↓…式 1

ここに crocin-1 が加わると, NMR や MS を用いた相互作用解析の結果から, berberine–

crocin-1および baicalin–crocin-1複合体が溶液中に溶解して存在すると考えられる.

berberine + crocin-1 ⇄berberine–crocin-1 …式 2

baicalin + crocin-1 ⇄baicalin–crocin-1 …式 3

また, berberine–baicalin複合体は疎水性の環構造部を外側に向けた構造であり [6], 第二

章第二節における crocin-1, berberine, baicalinの三成分混合の実験で各成分の疎水性構造

部が複合体形成の相互作用部位であると明らかになったことから, berberine–baicalin 複

合体表面に crocin-1のポリエン部が近接した, berberine–baicalin–crocin-1の三者複合体も

溶液中に溶解して存在することが考えられる.

berberine–baicalin + crocin-1 ⇄berberine–baicalin–crocin-1 …式 4

つまり crocin-1 共存下では , 三成分間で berberine–crocin-1, baicalin–crocin-1 および

34

berberine–baicalin–crocin-1 の複合体を形成する平衡反応が導入されると考えられ, 単独

で溶解していた berberineと baicalinの一部は, crocin-1との複合体として溶解することに

なる. このため, berberineおよび baicalin間での沈殿平衡が沈殿溶解側, 式 1における左

辺に傾き, crocin-1の共存によって berberineと baicalinの溶解性が増加するという現象が

観察されると推察した. また, berberineと baicalinに対する溶解性増強作用に差がある可

能性については, 上記の berberine–crocin-1 複合体や baicalin–crocin-1 複合体などの水溶

性の複合体の形成量に差があるためと予想できるが, さらなる解析にはより詳細な分

子間相互作用研究が必要である.

35

結論

本研究では, berberine–baicalin 沈殿の溶解を促進するサンシシ成分について, そこに

含まれる個々の crocin類の単離および溶解性増強作用の活性評価を行うとともに, その

作用機序解明を試みた. サンシシ由来の crocin混合物から化合物 1–5 の 5種類の crocin

類を単離し, 活性の強さおよび含量の多さから all-trans crocin-1 (1) がサンシシ由来の

crocin 類の活性に寄与していることを明らかにした. 続いて, この crocin-1 を用いて

NMR, MSによる解析を行ったところ, crocin-1, berberine, baicalinが水溶液中で共存して

いるとき, berberine–crocin-1, baicalin–crocin-1の二者複合体, berberine–baicalin–crocin-1の

三者複合体を形成する平衡反応が起こることが示唆された. また, これらの複合体は水

溶液中で溶解して存在するため, crocin により berberine と baicalin の溶解が促進され,

berberineと baicalinが複合体を形成して沈殿する平衡反応が沈殿溶解側に傾くという現

象が観察されると推察した.

沈殿溶解機序のさらなる解析には, crocin-1 を含む二者および三者複合体の詳細な構

造や溶液中での存在量などを, NMRや MS, 各種クロマトグラフィー等を用いて多角的

に研究する必要があると考えた. 本研究は, 漢方薬黄連解毒湯を煎じる過程で起こる成

分間相互作用について, 薬理活性成分である berberineおよび baicalinをエキスへより溶

解させる現象の解析という面から研究したものである. 漢方薬は多成分系の医薬品で

あるために, その薬効と, 含有成分による相互作用の関係を無視することは難しい. 本

研究のような成分レベルでの解析研究の積み重ねにより, ゆくゆくは漢方薬の薬効が

成分レベルで詳細に明らかになり, 漢方薬が現在よりも身近で有用なものとして普及

することを期待したい.

36

実験の部

使用機器

HPLC分析では, 日本分光株式会社製のシステムを用い, ポンプは PU-2089Plusを, オ

ートサンプラーは AS-2055Plus を , カラムオーブンは CO-2065Plus を , 検出器は

UV-2070Plus (275および 440 nm) を, 解析ソフトは ChromNAVをそれぞれ使用した.

分取 HPLCでは, 分取システムとして LC-9201R (日本分析工業株式会社) を, カラム

は Inertsil PREP-ODS (10 µm, 20 mm × 250 mm, ジーエルサイエンス株式会社) を, 検出

器は UV-VIS DETECTOR UV-3740 (日本分析工業株式会社) を, 解析ソフトは JDS-200

(日本分析工業株式会社) を使用した.

サンプルの秤量では, NewClassic MS-S (メトラー・トレド株式会社) の電子天秤を使

用した.

溶液の攪拌には , Vortex-Genie2 (Scientific Industries) を使用し , 遠心分離には ,

Centrifuge MiniSpin® plus (eppendorf) を使用した.

化合物 1–5および第二章第六節の 1H-NMR, 各種二次元 NMR測定は, 1H の共鳴周波

数 500 MHzのAVANCE Ⅲ HD (ブルカージャパン株式会社) で行い, 内標準物質として

TMSを使用し, ケミカルシフト値を δ (ppm) で表記した. DOSYのみ, 1H の共鳴周波数

500 MHzの Varian Unity Inova 500 (アジレント・テクノロジー株式会社) で行った.

ESI-MS測定は, The AccuTOF LC-plus JMS-T100LP (日本電子株式会社) で行った.

生薬

サンシシは, ウチダのサンシシ M 中国産 上 (500 g, Lot c310250) を使用した.

試薬

Berberine hydrochrolideは, ナカライテスク株式会社から, Baicalinは, 富士フイルム和

37

光純薬株式会社から購入した. Crocin (Gardenia fruits extract) は東京化成株式会社の Lot

SSLBJ-MBを購入した.

水は, 蒸留水製造装置 RFD280NC (アドバンテック東洋株式会社) により精製して得

られた超純水を使用した. HPLC分析では, 超純水 LC/MS用 (富士フイルム和光純薬株

式会社) , およびメタノール 高速液体クロマトグラフィー用 (関東化学株式会社) を使

用した. また, ぎ酸 (約 99%) ESL3191 を富士フイルム和光純薬株式会社から購入した.

その他の溶媒は, 富士フイルム和光純薬工業株式会社および関東化学株式会社の試薬

特級品を使用した.

沈殿溶解活性の評価法

・Berberine水溶液 (2 mM) の調製

Berberine (8.08 mg) に超純水 10 mLを加えた.

攪拌しながら 60°Cの水浴で加温し, berberineを完全に溶解させた.

・Baicalin–メタノール溶液 (4 mM) の調製

Baicalin (17.85 mg) にメタノール 10 mLを加えた.

攪拌しながら, 超音波槽で baicalinを完全に溶解させた.

・試料溶液の調製

化合物 1–5および化合物 1–5の混合物について DMSO添加後, 水で 100倍に希釈し

800 µg/mLの溶液を調製した. 市販の crocin部分精製物については, 1600 µg/mLの溶

液を調製し, 二倍希釈で 100, 200, 400, 800 µg/mLの溶液をそれぞれ調製した.

38

・溶液混合および沈殿形成

上記で調製済みの溶液を用いて, 容量 1.5 mLのエッペンチューブに, berberine水溶

液を 200 µL, baicalin–メタノール溶液を 100 µL, DMSO (1%) 試料溶液 (Control は

DMSO (1%) 水溶液) を 500 µLこの順に添加し, 全量 800 µLの混液を調製した. 混合

後 30秒攪拌し, 60分静置した.

・溶媒除去

静置した各チューブを 13,000 gで 10分遠心した. 遠心後の上清 100 µLを 20 mLの

ナス型フラスコに取り, 溶媒を除去した.

・HPLC分析

溶媒除去後, メタノール 100 µLを添加して溶解し, このうち 50 µLをサンプルカッ

プに取り HPLC分析用試料とした. 分析条件を下に記す.

移動相 A: 0.1%ギ酸–超純水, B: 0.1%ギ酸–メタノール

洗浄液 メタノール

グラジエントプログラム B: 0–10 min 15–31%, 10–20 min 31–80%, 20–25 min 80%,

25–30 min 80–15%, 30–32 min 15%

流速 1 mL/min

注入量 10 µL

カラム Inertsil ODS3 (5 µm,4.6 i.d. × 150 mm)

カラム温度 40°C

測定波長 275 nm

沈殿溶解活性の強度は, controlに対する berberine又は baicalinの比溶解度として次

39

式から求め, 比溶解度の値が大きいほど沈殿溶解活性が高いと判断した.

比溶解度(%) = !"#$分析用試料中の !"#!"#$%"又は !"#$"%#&のピーク面積値

!"#$%"&中の !"#!"#$%"又は !"#$"%#&のピーク面積値×100

抽出分離

<サンシシ由来画分からの 3の単離>

サンシシ 40%エタノール抽出物から得られた C4 画分 [18] を, 分取 HPLC を用いて

メタノール/水混液 (3 : 2) で分離し, 保持時間 52–58 分に検出された単一ピークから

all-trans crocin-3 (3)を 3.5 mg単離した.

<市販の crocin部分精製物からの 1–5の単離>

市販の crocin部分精製物 (951.1 mg) をシリカゲルカラム (2.5 cm × 33 cm) に付し,

酢酸エチル/メタノール/水混液で溶出して F1画分を 60 mg, F2画分を 120 mg, F3画分を

80 mg, F4画分を120 mgそれぞれ得た. 最後に 100%メタノールで溶出してF5画分を 400

mg 得た (Chart 1). F2 画分を分取 HPLC で分離し, 80%メタノール水溶液で溶出して 3

(13.2 mg) を, 60%メタノール水溶液で溶出して 4 (1.9 mg) を得た. F3画分 (19.2 mg) を,

分取 HPLCを用いて 60%メタノール水溶液で分離し, 2 (10.9 mg) および 5 (1.5 mg) を得

た. F4画分 (85.1 mg) を, 分取 HPLCを用いて 60%メタノール水溶液で分離し, 1 (50.0

mg) および 5 (15.3 mg) を得た.

40

化合物 1–5の 1H-NMRおよびMSデータ

all-trans crocin-1 (1): 1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ: 7.36 (2H, br d, J = 12.0 Hz, 10, 10’),

6.87 (2H, dd, J = 2.5, 8.0 Hz, 15, 15’), 6.82 (2H, d, J = 15.0 Hz, 12, 12’), 6.67 (2H, dd, J = 12.0,

15.0 Hz, 11, 11’), 6.54 (2H, br d, J = 8.0 Hz, 14, 14’), 5.42 (2H, d, J = 8.0 Hz, 1), 5.32 (2H, br d,

J = 3.0 Hz, OH), 5.19, 5.10, 4.91, 4.89 (each 2H, br s, OH), 4.85 (2H, br d, J = 4.0 Hz, OH),

4.50 (2H, t, J = 5.5 Hz, 6’-OH), 4.17 (2H, d, J = 8.0 Hz, 1’), 3.99 (2H, br d, J = 11.0 Hz, 6),

3.65 (2H, dd, J = 5.0, 11.0 Hz 6’), 3.59 (2H, dd, J = 5.0, 11.0 Hz 6), 3.40–3.50 (4H, overlapped,

5, 6’), 3.20–3.30 (6H, overlapped, 2, 3, 4), 3.12 (2H, m, 3’), 3.00–3.08 (4H, overlapped, 4’, 5’),

2.95 (2H, m, 2’), 2.00 (6H, s, 20, 20’), 1.97 (6H, s, 19, 19’). ESI-TOFMS: m/z 999.3 [M + Na]+.

all-trans crocin-2 (2): 1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ: 7.35 (2H, br d, J = 11.5 Hz, 10, 10’),

6.87 (2H, dd, J = 2.5, 8.0 Hz, 15, 15’), 6.824, 6.817 (each 1H, d, J = 14.5 Hz, 12, 12’), 6.67 (2H,

dd, J = 11.5, 14.5 Hz, 11, 11’), 6.54 (2H, br d, J = 8.0 Hz, 14, 14’), 5.421, 5.416 (each 1H, d, J

= 8.0 Hz, 1, 1’’), 5.33, 5.31, 5.22, 5.14, 5.13, 4.95, 4.92, 4.88, 4.60, 4.47 (each 1H, br s, OH),

4.17 (1H, d, J = 8.0 Hz, 1’), 3.99 (1H, br d, J = 11.0 Hz, 6), 3.65 (2H, br d, J = 11.0 Hz, 6’, 6’’),

3.59 (1H, dd, J = 5.0, 11.0 Hz, 6), 3.40–3.45 (4H, overlapped, 5, 5’’, 6’, 6’’), 3.20–3.50 (6H,

overlapped, 2, 2’’, 3, 3’’, 4, 4’’), 3.13 (1H, m, 3’), 3.03–3.08 (2H, overlapped, 4’, 5’), 2.95 (1H,

t, J = 8.0 Hz, 2’), 2.00 (6H, s, 20, 20’), 1.97 (6H, s, 19, 19’). ESI-TOFMS: m/z 837.3 [M + Na]+.

all-trans crocin-3 (3): 1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ: 7.36 (1H, br d, J = 11.5 Hz, 10), 7.21

(1H, br d, J = 11.5 Hz, 10’), 6.84–6.87 (2H, 15, 15’), 6.82 (1H, d, J = 15.0 Hz, 12), 6.73 (1H, d,

J = 15.0 Hz, 12’), 6.66 (1H, dd, J = 11.5, 15.0 Hz, 11), 6.62 (1H, dd, J = 11.5, 15.0 Hz, 11’),

6.49–6.55 (2H, 14, 14’), 5.43 (1H, d, J = 8.0 Hz, 1), 5.34, 5.13, 4.92, 4.90, 4.48 (each 1H br s,

OH), 4.17 (1H, d, J = 8.0 Hz, 1’), 3.99 (1H, br d, J = 11.0 Hz, 6), 3.65 (1H, br d, J = 11.0 Hz,

41

6’), 3.59 (1H, dd, J = 5.0, 11.0 Hz, 6), 3.40–3.50 (2H, overlapped, 5, 6’), 3.22–3.28 (3H,

overlapped, 2, 3, 4), 3.13 (1H, t, J = 8.5 Hz, 3’), 3.05–3.08 (2H, overlapped, 4’, 5’), 2.96 (1H, t,

J = 8.0 Hz, 2’), 1.989, 1.986 (each 3H, s, 20, 20’), 1.97 (3H, s, 19), 1.92 (3H, s, 19’).

ESI-TOFMS: m/z 675.3 [M + Na]+.

all-trans crocin-4 (4): 1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ: 7.35 (2H, br d, J = 11.5 Hz, 10, 10’),

6.87 (2H, dd, J = 2.5, 8.0 Hz, 15, 15’), 6.82 (2H, d, J = 15.0 Hz, 12, 12’), 6.67 (2H, dd, J = 11.5,

15.0 Hz, 11, 11’), 6.54 (2H, br d, J = 8.0 Hz, 14, 14’), 5.42 (2H, d, J = 8.0 Hz, 1’’), 5.31, 5.15,

5.04, 4.59 (each 2H, br s, OH), 3.65 (2H, br d, J = 10.5 Hz, 6’’), 3.45 (2H, m, 6’’), 3.12–3.25

(6H, overlapped, 3’’, 4’’, 5’’), 3.14 (2H, t, J = 9.5 Hz, 2’’), 2.00 (6H, s, 20, 20’), 1.97 (6H, s, 19,

19’). ESI-TOFMS: m/z 675.3 [M + Na]+.

13-cis crocin-1 (5): 1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ: 7.48 (1H, br d, J = 15.0 Hz, 12), 7.46

(1H, br d, J = 12.0 Hz, 10), 7.37 (1H, br d, J = 12.0 Hz, 10’), 7.18 (1H, br dd, J = 11.5, 14.5 Hz,

15), 6.82 (1H, d, J = 15.0 Hz, 12’), 6.77 (1H, br dd, J = 11.5, 14.5 Hz, 15’), 6.65 (2H, dd, J =

12.0, 15.0 Hz, 11, 11’), 6.49 (1H, br d, J = 11.5 Hz, 14’), 6.40 (1H, br d, J = 11.5 Hz, 14), 5.45,

5.43 (each 1H, d, J = 8.0 Hz, 1), 5.32, 5.19, 5.10, 4.92, 4.89, 4.86, 4.45 (each 2H, br s, OH),

4.174, 4.171 (each 1H, d, J = 8.0 Hz, 1’), 4.00, 3.99 (each 1H, br d, J = 10.0 Hz, 6), 3.65 (2H, br

dd, J = 3.5, 11.0 Hz, 6’), 3.59 (2H, br dd, J = 5.0, 11.0 Hz, 6), 3.41–3.45 (4H, overlapped, 5, 6’),

3.21–3.30 (6H, overlapped, 2, 3, 4), 3.12 (2H, m, 3’), 3.03–3.08 (4H, overlapped, 4’, 5’), 2.96

(2H, br t, J = 8.0, 2’), 2.00 (3H, br s, 20), 1.98 (3H, br s, 20’), 1.98 (3H, br s, 19), 1.97 (3H, br s,

19’). ESI-TOFMS: m/z 999.5 [M + Na]+.

42

市販の crocin部分精製物の HPLC分析条件

市販の crocin 部分精製物をメタノールに溶解させ, 沈殿溶解活性の評価法における

HPLC 分析の条件を基本として, 以下のグラジエントプログラムおよび測定波長で分析

した.

グラジエントプログラム B: 0–10 min 40%, 10–40 min 40–80%

測定波長 275および 440 nm

ケミカルシフト値変化からみた相互作用部位の解析

Crocin-1重水溶液 (4 mM), berberine重水溶液 (2 mM), baicalin重メタノール溶液 (4

mM) をそれぞれ調製した. これら三種類の溶液と重水および重メタノールを使用し,

crocin-1に対する berberine : baicalin (1 : 1) のモル濃度比が 0, 0.025, 0.05, 0.075, 0.1, 0.125,

0.15, 0.16, 0.17, 0.18, 0.2 となるように計 11 サンプルを調製した. 各溶液の混合量を

Table 2にまとめた. なお, 混合後の crocin-1の終濃度は 2.5 mMで, 溶媒組成は重水/重

メタノール (7 : 1) である. 各溶液の混合後, 一時間静置し, 遠心して得られた上清を

積算回数 64回で 1H-NMR測定を行った.

Table 2 Crocin-1, berberine, baicalin混合サンプル調製用の溶液量

[µL]

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43

DOSYによる混液中に存在する複合体の拡散係数測定

<サンプル調製>

Crocin-1重水溶液 (4 mM), berberine重水溶液 (2 mM), baicalin重メタノール溶液 (4

mM) をそれぞれ調製した. これら三種類の溶液と重水および重メタノールを使用し,

crocin-1溶液 (2.5 mM), berberine溶液 (0.5 mM), baicalin溶液 (0.5 mM), berberine–baicalin

混液 (共に 0.5 mM), berberine–crocin-1混液 (それぞれ順に 0.5 mM, 2.5 mM), baicalin–

crocin-1混液 (それぞれ順に 0.5 mM, 2.5 mM), berberine–baicalin–crocin-1混液 (それぞれ

順に 0.5 mM, 0.5 mM, 2.5 mM) の計 7サンプルを調製し, 沈殿が生じないうちに拡散係

数測定に供した.

<測定条件>

測定方法: dbppste (DOSY: bipolar pulse pair stimulated echo)

D分布の解析方法: mono exponential fitting

測定温度: 37˚C

繰り返し緩和時間: 10 s

PFGの長さ: 2 ms

PFGの大きさ: 1300–32500

PFG間隔: 50 ms

積算回数: 三成分混合のサンプルのみ 512回, その他は 64回

Fig. 21–34に DOSYの主要なプロットデータと実際のスペクトルおよび各成分の拡散

係数 (×10-10m2/s) を示す. プロットデータ中の横軸は PFGの大きさを, 縦軸はシグナル

強度を表し, 赤線は実測値, 青線はフィッティングした曲線, ピンクの線は青線と赤線

の残差にそれぞれ対応する.

44

Fig. 21 crocin-1の各シグナルのプロットデータ

左上から順に, 10位; 11, 12および 15位; 14位; 1’位; 19位; 20位のデータ

Fig. 22 crocin-1溶液の DOSYスペクトル (crocin-1: D = 3.05)

atcro1d2ocd3od

F2 (ppm)

123456789

F1 (

D)

1

2

3

4

5

6

45

Fig. 23 berberineの各シグナルのプロットデータ

左上から順に, 8位, 13位, 12位, 11位, 1位, 4位, -OCH2O-部, 9位, 10位, 5位のデータ

46

Fig. 24 berberine溶液の DOSYスペクトル (berberine: D = 4.12)

ber d2ocd3od

F2 (ppm)

12345678910

F1 (

D)

1

2

3

4

5

6

47

Fig. 25 baicalinの各シグナルのプロットデータ

左上から順に, 2’, 6’位; 4’位; 3’, 5’位; 8位; 3位; 1”位; 5”位のデータ

Fig. 26 baicalin溶液の DOSYスペクトル (baicalin: D = 3.50)

bai

F2 (ppm)

12345678910

F1 (

D)

1

2

3

4

5

6

48

Fig. 27 berberine–baicalin混液中の berberineと baicalinの各シグナルのプロットデータ

左上から順に, berberine: 13位, 11位, 1位, 4位, -OCH2O-部, 9位, 10位

baicalin: 2’, 6’位; 3’, 5’位; 8位; 3位; 5”位のデータ

49

Fig. 28 berberine–baicalin混液の DOSYスペクトル (berberine: D = 3.70, baicalin: D = 3.33)

berbai

F2 (ppm)

12345678910

F1 (

D)

1

2

3

4

5

6

50

Fig. 29 berberine–crocin-1混液中の berberineと crocin-1の各シグナルのプロットデータ

左上から順に, berberine: 8位, 12位, 11位, 1位, 4位, -OCH2O-部, 9位, 10位, 5位

crocin-1: 10位; 11, 12, 15位; 14位; 1’位; 19位; 20位のデータ

51

Fig. 30 berberine–crocin-1混液の DOSYスペクトル

(berberine: D = 2.85, crocin-1: D = 3.05)

crober

F2 (ppm)

12345678910

F1 (

D)

1

2

3

4

5

6

52

Fig. 31 baicalin–crocin-1混液中の baicalinと crocin-1の各シグナルのプロットデータ

左上から順に, baicalin: 2’, 6’位; 4’位; 3’, 5’位; 8位; 3位; 1”位

crocin-1: 10位; 11, 12, 15位; 14位; 1’位; 19位; 20位のデータ

53

Fig. 32 baicalin–crocin-1混液の DOSYスペクトル

(baicalin: D = 3.02, crocin-1: D = 3.01)

crobai

F2 (ppm)

12345678910

F1 (

D)

1

2

3

4

5

6

54

55

Fig. 33 berberine–baicalin–crocin-1混液中の berberine, baicalinおよび crocin-1の各シグナ

ルのプロットデータ

左上から順に, berberine: 8位, 13位, 1位, 4位, -OCH2O-部, 9位, 10位

baicalin: 2’, 6’位; 8位; 3位; 1”位

crocin-1: 10位; 11, 12, 15位; 14位; 1’位; 19位; 20位のデータ

Fig. 34 berberine–baicalin–crocin-1混液の DOSYスペクトル

(berberine: D = 3.01, baicalin: D = 3.01, crocin-1: D = 3.01)

二者複合体の ESI-MS解析

<Baicalin–crocin-1複合体>

沈殿溶解活性の評価系の方法を参考にし, baicalin–メタノール溶液 (4 mM), crocin-1

水溶液 (0.8 mM) を調製し, baicalin–メタノール溶液を 100 µL, 超純水 200 µL および

crocin-1水溶液 500 µLを混合した. 混合後 1時間静置し, 遠心後の上清を ESI-MS測定

用サンプルに供した.

atcro1betbai

F2 (ppm)

12345678910

F1 (

D)

1

2

3

4

5

6

56

<Berberine–crocin-1複合体>

Berberine水溶液 (2 mM), crocin-1水溶液 (0.8 mM)を調製し, berberine水溶液を200 µL,

メタノール 100 µLおよび crocin-1水溶液 500 µLを混合した. 混合後 1時間静置し, 遠

心後の上清を ESI-MS測定用サンプルに供した.

二者複合体の NMR解析

<サンプル調製>

D2Oを 200 µL, crocin–D2O溶液 (0.8 mM) を 500 µL, baicalin–CD3OD溶液 (4 mM) を

100 µL 混合し, baicalin と crocin-1 のモル濃度比が 1 : 1 のサンプルを調製した. また,

berberine-D2O溶液 (2 mM) を 200 µL, crocin–D2O溶液 (0.8 mM) を 500 µL, CD3ODを

100 µL混合し, berberineと crocin-1のモル濃度比が 1 : 1のサンプルを調製した. 加えて

berberine, baicalin, crocin-1各々単体の溶液を, それぞれ D2Oを 700 µL, CD3ODを 100 µL

用いて濃度 0.5 mMに調製した.

57

参考文献

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謝辞

本研究を遂行するにあたり,終始御懇篤なる指導,御鞭撻を賜りました,木内文之

教授に深甚なる感謝の意を表します.

本論文の副査をして頂きました,須貝威教授,増野匡彦教授に深く感謝致します.

本論文執筆にあたり,分子間相互作用について御指導賜りました,大澤匡範教授に

深く感謝致します.

本研究を行うにあたり,数々の御指導,御助言頂きました,成川佑次専任講師に深

く感謝致します.

本研究を進めるにあたり,有益な御助言を頂きました,植草義徳助教に深く感謝致

します.

本研究に際し,様々な面でご助言,ご協力頂き,有意義な研究生活を提供していた

だきました,慶應義塾大学天然医薬資源学講座の皆様に心から感謝致します.

本研究は自分一人の力のみでは決してなし得ないものでした.研究生活を支えてく

ださった家族ならびに様々なご支援をくださった全ての方々に心より感謝致します.