明治鉱灸医学第II号 61 -69 (1992)

誠刺激がマウス末梢血リンパ球サブセットに及ぼす影響

.明治娘灸大学 東洋医学教室 ・・明治銭灸大学 麻酔科学教室

・・・明治錨灸大学 免疫・微生物学教室

渡辺勝之・ 水沼国男・ 篠原昭二単 林田 一志刊

行待寿紀日 塚本紀之... 近藤裕..* 酒井ゅうこ...

雨貝 孝日本

要旨 我々は東洋医学で重視する自然治癒力とその要因由一つである免疫系と白関連に注目し研究を

進めている 今因。拘束したマウスに減，灸，録通電刺激を行い，拘東刺激のみ白コ ント ロ ルと比較

してマウス末梢血リンパ球サプポピュレ ν ョンにどDょっな影響を及ぼすかを，蛍光ラ ベルモノクロー

ナル抗体を用いたフローサイトメトリ ー法により検討した 拘束刺激のみの30分後ではへ JレバーT富田明包

αβ陽性T細胞の比率が有意に上昇し，日細胞は逆に有意な低下を示した 誠併において30分後単球杭

また加分及び印分後にはヘルパーT細胞， αβ隙性T細胞の比率が有志に上鼻 L ， 日細胞は加分， 60分

後で有意な低下を示した

Effect of Acupuncture on Subpopulations of Murine

Peripheral B100d Lymphocytes

WATANABE Katsuyuki¥MIZUNUMA Kunio¥ SHINOHARA Shoji¥

HA Y ASHIDA Itsushi'¥YUKIMACHI Toshinori'¥

TSUKAMATO Noriyuki"' , KONDO Yuichi"', SAKAI Yuko'" and AMAGAI Takashi'"

• DepartmenL 01 Orientαl Medicine , Meiji College 01 Oriental Medicine .ODepαrtment o[ Anesthesiology , Meiji College 0/ Medicine

... Ðepαrlmenl 01 lmmunology and A1icrobiology, Meiji College 01 Medicine

Summary: A major aim of the treartment with oriental medicine is to increase the self-defense mechani sms , for nalural restoralion of balance , depending on the lraditional diagnosis of individual spe口fici ty. The immune s)'s同m is a central mechanism for se1f-defense against

foreign substances. ¥Ve have been investigating modulation of immune r田po nses by the

treatmenl with techniques of oriental medi口 ne ， acupuncture and moxibustion. Jn this study , we investigated the effect of acupuncture , electro-acupuncture , moxibustion and restraint

stress on subpopulations of murine peripheral blood lymphocyte fraclion. using f1uorescent flowcytomelry. Thc results indi回le lhat the percentages ofαβpositive helper T cells ﾎncreｭased 30 min after restraint stress lreatment a\one , and by acupuncture treatment the per・centages of monocytes were increased 30 min aftcr Lreatmen l, while lhe percenLages o f αB

positive helpcr T cells were also increased 30 and 印 min after treatment. On lhe other hand , B cell popu¥ation was decreased 30.60 min after treatment

Key Words 鎖 acupuncture . 灸 moxibustion , 似通電 e 1 ec tro-acu punct ure リンバ球サプポピュレーション lymphocyte subpopu¥ations 蛍光フロ サイ ト メト リ ー fluorescent f1owcytometry

61

62 録刺激がマウス末梢血リ ンパ球サプセ y トに及ぼすf，~響

I 緒面

鍛灸治療の主な目的は、、自然治癒力を高めるM

司王が重要とされている 1 ， 2， 3)

その主要な因子の一つである免疫反応との関連

も注目さ れている.鎖灸治療による免疫系の地強

効果の報告 4 ， 5) や， 実験的な研究では鍛灸刺激に

より， リンパ球増殖反応"，抗体産生の応答 7) ，

NK活性 8) の地強も報告されている

しかし，東洋医学は本来，人と自然環境との関

わりや個体の特異性を重視し全人的におこなわ

れるものとされている.鍛灸の効果においても，

同様な刺激を行なったとしても.個体により反応

様式が異なる事が多く見受けられる そのため，

銭灸の免疫系調節に|耳|するヒトでの臨床的研究に

おいては，個体の特異性をどのように評価し分離

するかの方法論をまず確立しはければならない

以上のことから実験的研究を行うに際して，ま

ず最初に均一な条件設定での評価が必要不可欠で

あり基礎にもなると考え.環境条件，個体条件を

なるべく均一にするため， Sp凹】 f i c pathogen frcc

(SPF) にて飼育している純系マウスを対象とし

て実験をおこなった，

これまでに，様々なス ト レスによりリンパ球サ

ブポピュレー ションが変化することが多数報告さ

れている.またヒトでの鍛灸治療による変化も少

数ではあるが報告されているト11)そこで，拘束

ストレス及び鍛灸臨床でよく用いられる， 録，灸，

鍛通m刺激による末梢J!n リンパ球サプポピュレー

ションの変化を検討した.

を対象とした

2 )リンパ琢サブセ ッ ト

刺激前，刺激終了後30分， 60分の計 3 回目良時静

脈叢より約 300μ1 :係血を行なった採血は 9 : 00

-13: 00 時の間とした . lfn液をヘパリン ( I OOOu

/ml) 加 PBS 2 mlで希釈したのち， FicoJlを

用いた比重遠心法にて分離し， リンパ疎単球分画

を採取した.それらを10%牛胎児血ii'; (FCS) 110

Eagle ~1inimum essential medium (1'，1E'vt)で

洗浄(1500回転 5 分)後， 各々 400μ l に調整

し， 4 つに分け 100μl ずつ染色用チューブに分

注した.

3 )抗体及び染色方法

使用した抗体は.以下に示す 6種類を用いた

Anti-~10use L3T4 R-Phycoerythrin (PE) (San

Jose , CA. Becton Dickinson) , Anti-1',1ouse Lyt

2 Fluorescein isothiocyanate (FlTC)(San Jose ,

CA. Becton Dickinson) , P8 Anti・Mouse alpha

bata TCR (San Die喧0 ， CA. Phar Mingen) , Fl

TC Anti-Mouse gamma delta TCR (San Diego ,

CA. Phar Mingen) , FlTC Anti-~10useμ鎖抗

体 (West Chester , PA. Cappel)ヤギ・ 77 イン

ティー精製抗体， Anti-1'，1ac-1 抗体 Rat-Mouse

ハイプリドーマ 1'，11/70 . 15. 11.5 (ATCC TIB

128) の培養上清 (表 1 )

染色は.以下に示すごとく行なった

a) P E標識 Anti-mouse L3T4 を 4 μI / tube

と FITC標識 Anti-mouse Lyt 2 を 4μ1 /

H 対象及び方法

1 )対象動物

表 1 標識抗体、染色方法およびサプポピュレーション分類

室温24:!:: 1 'C ,

湿度55:!::10%，照

明12時間の一定環

境下でクリ ー ンラッ

ク内の SPF条件

にて飼育した， 6

-9 週令の純系

C57BL/6マウス

抗体

Anti-Y1ouse L3T4

Anti-::Vlouse Lyt 2

Anti-Mouse a ゚ TCR A nlトMouse r � TGR

Anti -Mo useμ 姐

Anti-Mac-l

標識

PE

rlTc PE

FITC

F/TC

FITC

染色方法 分 類

直接法 Helpcl'/Inducer T cells

直接法 Suppressor/cytotox� l' cells

直接法 αβ随性 T cells

直接法 γ6陽性 T cells

直接法 IgM(μ)陽性B細胞

間接法 Mo nocy tes , )ﾆacrop hages , G ran u I ocy tes

明治誠灸医学第 11号 6]-69 (J叩2) 63

tube 用いて直接法で 2 カラー染色

七) P E標識 Anti-mouse αβT田11 レセプター

を 10倍希釈し，lO μ1 / tube と F I TC標識

Anti-mouseγ 占 Tcell レセプタ ーを 10倍希釈

し 10μl/tube を直接法で 2 カラー染色

c) FITC標識 Goat Anti-mouse JgM (μ)

を20倍希釈し 10μJ / tubeを直接法で 1 カラー

染色

d) M!/70(Anti-Macl)を50μI/tube に F

ITC懐識 Anti-Rat Jd且抗体を40倍希釈し，

間接法で 1 :カラ ー染色

それらを 4 "Cで3的予間反応させた後， 1 %F CS

1Jl1M E Mで1000rpm ， 5 分， 2 回洗浄した 染色

した細胞のリンパ球の股マーカー陽性細胞率(%)

を Becton Dickinson 社製， Laser Flowcytometｭ

ry , FACScan を用いて解析した.測定では，前

方散乱及び測方散乱を用い， リンパ球分布領壕に

Live gate をかけ， Gated events を 500 に設定

した.統計処理は， Student's paired t-t田t を用

いた.

E 鍛，灸及び鍛通電刺激

マウスをストレスを少なく拘束するため，エチ

ルエーテ Jレで麻酔し，iJlj気孔を空けたポリカーボ

ネ ート 50m l遠心管(NaJge Company , New York)

に雨後肢を側方の穴から出して回定し拘束を行な っ

た.マウスを以下の 4 m~に分け，麻酔}):醒後マウ

ス両側足三里相当部位に刺激を行なった.

1 ， コントロール(拘束)群(拘束ストレス 30

分)

2 ，鍛群(拘束および鍛刺激 13 ミリ 26号銀世銀

30分)

3 ，銭通屯群(拘束および錨通Lli刺激 13 ミ リ 26

号鍛， 1 5HZ 30分)

4 ，灸群(拘束および灸刺激 拘束30分下で半米

粒大=約 0.65mg 3 壮)各群N= lOとした

W 結 果

1 )拘束ス トレスの効果

拘束ストレスのみではL3T4 - Lyt2 -紺!胞， ~vl

1/70- *Iß胞は30分後， 60分後ともにほとんど変

化を示さなかった. L灯4+Ly 12 細胞， α ß + γ

δ 細胞は30分後有意に上昇した. 60分後にはL3

T4 - Lyt2一細胞は30分後に比べ低下し拘束前と同

レベルにもどった.他方 αβ+ r ô -細胞は60分後

には30分後よりも低下する傾向を示した. μ +組l

胞は30分後有Z互に低下し， 60分後も低下傾向を示

した α ß + T ð 制胞もやや低下傾向を示した.

(図 1 )

2 )録刺激の効果

錨群では凶T4+Lyt2 細胞， α8 φ T ð -細胞は3

0分後及び60分後で有意に上昇した. 60分後でも

上昇が持続しているこ とが，拘束群とは異なった

反応である またM 1 /70 '細胞は拘束群と異なっ

て， 30分後有意に上昇した.μ 細胞は30分， 60

分後共に有意に低下した αβ T ð+は拘束群と

同様やや低下傾向を示し， L3T4-Lyt2+細胞は拘

束群と同僚変化しなかった (図 2 )

3 )鍛通電刺激の効果

銭通電群では拘束併と奥なり， L3T4+Ly t2 -細

胞の変化が30分でも60分でもみられなかった α

β T ð -納胞， Ml/70+細胞はやや上昇傾向を示

した αβ ー γ 占一細胞及び μ +細胞は，拘束群と

同様な変化を示した L3T4 - Ly臼+細胞は拘束郡

及び銭群と同様に変化を示さなかった目(図 3 )

4 )灸刺激の効果

灸1罪では30分後の μ4細胞のみが拘束間!と同様

な変化を示した.しかし， L3T4-Ly12 細胞， α

β + γδ 細胞では拘束群で認められた変化を示さ

なかった. L3T4 -Lyt2+細胞， αβ 一 γr細胞，

M I /70 -制l胞は拘束群，鍛通電訴と同様，変化

を示さなかった (図4)

V 考察

今回の実験で，末杵j血リンパ球の股表面マーカ一

陽性細胞率(%)の測定において， 鍛群60分と拘

束群とを比較して， へ JレパーT細胞 (L3T4 ← Lyt

r細胞) ， αβT細胞 (a ß- γt細胞)の陽伯

細胞率の上昇がみられた.拘束群では30分後のみ

にへJレパーT細胞， αβ陽性T細胞の上昇が認め

制 錨刺激がマウス末梢1 (11 リンハ球サブセットに及ぼす影響

拘束群

L3T4 + Lyt2 L3T4' Lyt2+ 100

100

rヘ 90P<O.OI

90

渓 .0.0 )

70 • 同60

-f 60

50 5-1 E• 50

40 ロ • 40

30

20 。 i10 10 ロ

E 。

。

+ー α ß 'y δ φ αβ7δ 100 10

90 P<O.Q5 9

(

ま .0。

8 )

70 7

時il!l 00 e 町

寝刻盛 50 • 。

.0 4 圃

30

20 2 ロ ロ

10 ' ロ。

。

M 1/70+ + μ

20 r 100

.0

ま 15.0

• P<O.OOl )

官奇‘

60

奥量刻邸 一山 50

40 ト

30

20

• • • 。

。 l 。

。 30 60 mln 。 30

図 1 拘束群でのサブポピュレーションの変化

マウス末梢血リ ンパ球単球分聞での刺激iìíJ及ひ'30分 1111の拘束刺激後 (初分後， 60分後)におけるサプポピュレーションの変化を FACS 解析した結果を示した N ~ 10とし平均o:t標準偏差で示 L. 各個体ごとの測定値をそれぞれの γ ンポルで示した 倹定は処置前と比較して Student's pai r吋 t-test で行なった

H • •

。

。

a‘ 60 min

65 第 I I号 61 -69 (1992) nJli古銭灸医学

鋪群+

L3T4 Lyt 2 Lyt2 L3T4φ 100

90 P<O.OOl

0

0

0

0

0

0

9

8

7

8

0

0

0

0

8

7

8

5

P<O.Ol

回

• 回E O

B

o

a-32

a‘

(渓)附町露間帯組盛 10

0

0

0

0

0

0

0

5

4

3

2

1

。•

αβrδ+

• 園

0

9

8

7

8

E •

100

90

'0 70

.0

50

40

(ま)川町四町黒刻盛

EE--

5

4 ロ

E--

3 0

0

0

0

3

2

t

• 2

0

M1/70 + μ

100

90

20

P<O.Ol 。

00

0

8

7

8

5

• 「一一一一寸15

(ま)同町辺黒胡盛

「一一一寸

斗寸~?0

0

0

4

3

2

10

0

10

5

m川" 30

図 2 鈍群でのサブポピュレーンョンの比較

マウス末!Il血リ ンパ球単球分画での刺激前及び30分間の銭刺激後 (3日分後， 60分後) におけるサプポピュ レーショ ンの変化を PACS解析した結果を示し た \I ~ 10 と し，平崎O±標準偏差で示し，各個体ごとの測定値をそれぞれのソンポルで示した 検定は処置前と比較して Stud en t ' s paired t - tes t で行なった

。min .0 30 。

。

66 鍛車リ激がマウ ス末梢血 リンバ球サプセ y トに及ぼす影響

鋪通電群

L3T4' Lyt2' L3T4' Lyt2φ 10. ,.. •• 9.

r、 .. •• ま刊 7' )

時gE主盛E 目 ..

。 •• •• H H •• •• 主 。 a

3. • E5 2. 20B

,. 10 s

。 。

αβ+7δ ー αβ7δ+ 10. ,. 9. P<O.05 9

r、 ..8

ま 7. 十。

) 子量 :• 7

持辺 6. U

• t 5. ‘ 4‘

5盛 刊3. ー' 2. ，。 1 回

。。

M1/70 +

μ +

日「 ,..

r、 "次)

随辺一"

累主盛品

•• •• 固

7' E •• P<O.01 • •• ロ

8 " 。 30 • 自

• • b-1 間→圃20

す10 自。

。 30 E ロ mln 。 3. 60 mrn

図 3 鍛通電群でのサブポピュレーションの変化

マウス末梢曲l リ ンパ球単球分画での車1)激iÌÍJ及び30分間白銀通Icr刺激後 (30分後， ω分後〉におけ る サプポ ピュレー ション白変化を FACS 解析した結果を示したー N~ lOと l . 平均0 :1:標準偏差で示1.-. 各個体ごとの曲l定値をそれぞれ白シンボルで示した 検定は処置前と比較して Student 's paired t-tes t で行なった

I ~J治銭灸医学第11号 6 1 -69 (1992)

灸群

ー++ L3T4 Lyt2 L3T4 Lyt2

100 100

90 90

r、 .0

~ eo

、ノ 70 7D

時週 60 • 5ト a 3

60

思胡盛 '0

50 . ロ +

40 + ‘。

30 • 20

阻 町

10 10 t- a

。。

+ー

αβ7δ 一+

αβ7δ 100 10

90 9 (

渓 80 B

、/ 7D • γ

富 60 ケ1 6 • 票記密 日。

掴 冒ロ

.0

30

20

10

。 。

M1/70φ • μ

20r 100

ま 15)

持母 10

5主需司盛 s

90

eo P<O.05

固回 銅

冨 D 60

50 ロ ロ

40 日30 十i ま

' • 20 • 10 白• 。

。 30 60 mln 。 30 60 mln

図 4 灸群でのサブポピュレーショ ンの変化

マウス末梢血リ yパ球!~球分画での刺激前及び灸(半米粒大 3壮〉刺激後 (3切子後， 60:分後) におけるサブポピュレーションの変イヒを FACS解析した結果を示した N ~IOと L ，平均o:t標準偏差で示 L，各個体ごとの測定値をそれぞれの シ y ボルで示 した 検定は処也前と比較して Student' s paircd l-tes t で行なった

67

6B 制リ激がマウス末梢血リンパ疎サプセ γ トに及ぼす影惇

られるのに比べ. 灸，鍬通íTIl\'Fにおいては.へ Jレ

バーT細胞の陽性比率は30分， 60分後とも有意な

変化は認められなかった a ßT細胞の陽性比率

は，鍛通電刺激では拘束1咋と同様に30分後のみ有

意な上昇を示したが， 灸lÞ，では有意な変化を示さ

なかった. こ れ らの結果は， 灸. 鍛通111刺激によ

り，拘束ストレスにおける末梢JI日リンバ球サブポ

ピュレー ションの変動を抑制する可能性を示唆す

る.以上のことから，鎖刺激の効果は末梢血への

へ JレバーT細胞及びαβ陽性T制l胞の動員が， 拘

束ストレスのみに比べて.よ り強く発現したこと

が示唆される.

B細胞 (μ+細胞〕の~化においては，銭群で

のみ60分後でも行訟な低下を示した.このことは.

ヘルパーT細胞の上昇と通勤した変化である可能

性が考えられる.灸1阜，賊通tt:.ì l拝においては拘束

群と問憾な変化を示した

単E事 (M 1 /70'制H胞〕は鍛1拝の30分のみで有

意に上昇した.拘E巨1洋，鍛通，[ìJ咋. 灸群とも変化

が認められなかった.

これらの結果は， リ ンパ球サプポピュレー ション

の変化という点で， 鍬. 灸，銭通~m拝を比験する

とそれぞれ奥なった反応を引き起こすことが示さ

れた このことは刺激の'l'Iの相違いにより. 末梢

血へのリンパ硲の急性移行へのシグナ Jレの差とし

て表現されたのかもしれない.

ヒトでのリンバ際サプポピュレーションの変化

に関して， 鍛通電車11激によって{也常群では刺激直

後に CD4 陽性細胞， CD 8 陽性細胞の有意な変

動は認められなかったが，疾患t干において CD4

陽性細胞は上昇し. CD8陽性細胞は有意な低下

が認められ， C D 4 I\!ài!t細胞/CD8 陽性細胞比が有意に上昇したという報告がある引 また健康

成人において鍬通氾刺激直後に句 CD4 紛性納胞

は一定の変動をみなつかたが， C D 8 陽性細胞は地加したという報告もある 10) 鍛刺激では，健康

成人において刺激直後に CD4 陽性細胞は有窓に

上昇し， CD 8 防組細胞は有意な低下が認められたという報告がある川.

ヒト末梢血l リンパ球サプポピュレーションは様々

なストレスや環境の変化により変動するという報

告が多い12-川 総リンパ時数と問機T細胞， B

細胞が夜をピークとした日内変動を示すことが報

告されている削 また初夏をピークとする総リン

バ球数.へ jレパー T細胞. サプッレサー T剖n胞の

サ ーカディアンリズムがみられるが， C D 4 陥jg

制胞/ CD8 陽性制l胞比は年間を通じて安定して

いるということも報告されている 19 )

精神的ストレスでは単疎， NK細胞， B 紺|胞は

l1'lIJ1l L，生理的ストレスでは.すべてのリンパ球サブセットは地加したが， T/ B 比， CD 4 陽性細胞/ CD8 陽性細胞比は減少した制 こと，ま

た急性的なストレスでは CD8 が上昇し制.慢性

的なストレスでは CD8 が低下する 2け という報

告がある これらのストレスや環境変化によるリ

ンパ球サプポピュレーションの変動と異なって.

今回の結果において銭群では， へ Jレパー T調1111包

αβT紺|胞陽伯率の上昇， C D 4 陽性制胞/CD

B 細胞比， T/ 日比の地大が認められた.以上の

ことから，鍛刺激がこれまでに報告されているス

トレスによるリンパ球サプポピュレ-'./ョンの変

動とは興なることが示唆される

鍛刺激による免疫系への刻印の機構としては，

opiate peptides の役割や， 鉱山l激によって知党一

自律神経系が活性化された後，副\"1髄質から放出

される epinephrin ならびに enkephalin の役割l

が報告されているい的. また銭通屯刺激がリン

バ球地殖反応.)，抗体産生応答7) ， N K活性的を

地強するという報告もされている

これらの結果は銀灸の免疫応答調節が以下の二

つのメカニズムによることを示唆する 第一に知

~L神経 ・Ij 1極神経 ・ 自律神経を介する調節として，

リンパ系組織を支配する神経線維向身から放出さ

れる分子による調節であ り，第二に税床下部一下

重体一則\"1 ( ↑!tJ抑)系の放出するJln中ホ Jレモンに

よる ~lj節である 22) 鍛灸と免疫系の民Ii!l!の研究で

は， 神経・免疫・内分泌系を一つの布bとしてとら

え.また中枢での反応と局所反応をも考慮するこ

とが重要であろう.今回の結果は， 自律神経によ

るリンパ球の Ifn中への移行の制御としても考えら

明治鎖灸医学第 1 1号 61-69 (1992) 69

れうる 今後自律神経機能及びリンパ球活性の両

面からの銭灸の効果を検討 して行きたい。

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