Astro-E2 搭載 X 線 CCD(XIS) 裏面照射型チップの性能評価
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Astro-E2搭載 X線 CCD(XIS)裏面照射型チップの性能評価
山口 弘悦、中嶋 大、松本 浩典、鶴 剛、小山 勝二(京都大学理学研究科)、他 XISチーム Email:[email protected]
Abstract: X線天文衛星 Astro-E2(2005年打ち上げ予定 )に搭載される X線 CCDカメラ (XIS)は、当初4台全てに電極側から X線を入射させる表面照射型 (FI)を採用する予定だったが、今年に入って4台中1台ないし2台はX線を電極の反対側から入射させる裏面照射型 (BI)を用いることに変更された。 Clや Znの特性 X線を用いて BIチップの量子効率を測定した結果、 96%@2.6keV、 34%@8.6keV であり、 FIチップの 88%@2.6keV, 54%@8.6keV と比較すると電極層での X線吸収がなくなる分、低エネルギーのX線に対する検出効率が大きく改善されていることがわかった。また、 55FeX線源を用いて測定した BIチップの高エネルギーバンドでのエネルギー分解能は〜 [email protected] と、 FIチップとほとんど等しい値を示した。 一方で BIチップは低エネルギー X線を電極から遠い点で吸収するため、入射によって生じた電荷の拡散が FIに比べて大きくなる。この拡散の影響や、低エネルギーX線の検出効率を考慮すると、解析法や解析パラメータを最適化する必要が生じる。今のところ、イベント閾値を超えたピクセルを中心とした3×3ピクセル内の電子雲のパターンからX線イベントを認識し、そのパターン内に含まれる電子数から入射X線のエネルギーを算出する「 Grade法」を用いて解析を進めているが、 BIは低エネルギー X線の検出効率が大きく、イベントの広がりも大きいため、イベント閾値やスプリット閾値を FIに比べて低く設定する必要がある。本講演ではこれらのパラメータの最適値についての議論を行い、その他に読み出しノイズや、 Bad column、 Hot pixelの分布などについての解析結果を報告する。
Grade法X線イベント ‥‥ grade0, 2, 3, 4, 6(左図) 黒い pixel event th.‥‥‥ を超えた pixel 灰色の pixel split th.‥‥ を超えた pixel
これらより大きく広がったイベント → grade7( X線と見なさず除外)
FI (表面照射型 ):電極側から X線が入射エネルギーの低い X線にとって電極部が遮蔽物になる
→ 低エネルギーで検出効率が低い
BI (裏面照射型 ):電極の反対側から X線が入射→ 低エネルギーでの検出効率向上
但し、電子雲が広がるため エネルギー分解能は悪化
右: SNR IC443を 20ksec観測したときに得られるスペクトルのシミュレーション( FI, BIともに1台あたり;赤 :BI 黒 :FI)
・ ASTRO-E2に搭載用 CCDカメラ (XIS)BIチップの性能評価を行った。・スプリット閾値等、各種解析パラメータを最適化。・検出効率は低エネルギー側で FIよりも優れる。・エネルギー分解能は FIとほぼ同じ値を示した。 BIとしては過去最高のレベルを達成。
X線 CCDは撮像・分光にバランスのとれた、 X線天文学における最も標準的な検出器 ‥‥ ASCA( 日 )、 Chandra( 米 )、 XMM-Newton( 欧 )に搭載された
Astro-E2衛星 (2005年打ち上げ予定 )には4台の XISが搭載 ‥‥ 精密な位置決定ができる唯一の検出器
XRS XIS XHD
台数 1 4 1
有効感度帯域 0.5-10keV 0.4-12keV 10-600keV
素子サイズ 624μm×624μm 24μm×24μm 24mm×24mm(GSO)
視野 2.92’×2.92’ 17.4’×17.4’ 0.56°×0.56 °@60keV
エネルギー分解能 6eV 130eV@6keV 3keV@10-40keV
Astro-E2 衛星 CCDカメラ XIS CCD素子
左写真中央の真空チェンバ内に XISを設置。
XISには右側のチェンバからの X線または中央のチェンバ内、右側からのビームラインとは別の場所に設置されている 55Feからの X線を照射できる。
写真左部および右下部に設置された SSDは X線強度とスペクトルの校正用。
光電吸収
軟 X線 硬 X線
FI CCD
電極
軟 X線 硬 X線
BI CCD
電極
上:両者の検出効率の比較赤: BI CCD、 黒: FI CCD
右図: X線照射中の XISのイメージ(一部) 白く見えるのが X線イベント
右側のチェンバからは、 Al(1.5keV), Cl(2.6keV), Ti(4.5keV), Fe(6.4keV), Zn(8.6keV), Se(11.2keV)の特性 X線および連続 X線が得られる。つまり、京大では 1.5keV 以上のX線データの取得を行う。これより低エネルギーの X線に関しては、グレーティングを用いた大阪大の実験システムで取得し、両者の結果を合わせて応答関数を作成することが最終目標となる。
BIチップには2台の Flight modelが用意されており、それぞれ BI0、 BI1という名前が付けられている。京都大では、 BI1のデータを 6/4から 6/9の6日間で、BI0のデータを 6/14から 6/18の5日間でそれぞれ取得した。
・読み出しノイズ ‥‥電子回路起源のノイズ(放射能起源ではない) CCDの実際のピクセル数よりも多く 読み出しを行うことにより測定
A B C D
1024 pixel
1024 pixel
露光領域
蓄積領域
読み出し口
CCDからの信号は 256columnずつの4つの segmentで別々に読み出される(右図)。左図は BI0で55Feのデ ータを取得中の各segmentの読み出しノイズの時間変動。BI0, BI1ともに、どの segmentも常に 1.5-2ADU 程度で安定していた。(データ取り始め数 frameは除く)
seg A
seg B
seg C
seg D
・ Bad column ‥‥正しく転送が行われない column 転送方向に tailを引くため Grade 法でふるい落とされる
BI0 BI1
long short long short
seg A 2 2 3 0
seg B 4 3 2 0
seg C 4 2 3 1
seg D 1 0 2 1
・ Hot pixel ‥‥常に高い波高値 (PH) を示す pixel 格子欠陥などの理由が考えられる。このような pixelは観測には使えない。 FIでは正常な場合より 2000ADU 以上高い PHを示す pixelが数個あったが、 BIではこのようなものは見られなかった。その代わりに常に数 10ADU 程度高い PHを示す pixel (warm pixelと呼ぶ ) がいくつか見られた。詳細については現在調査中。
Bad column
各チップ各 segment 毎に Bad columnの数を右表にまとめた。> 512 pixel → long< 512 pixel → short
seg B, seg C が視野の中心近くになるので、その意味で BI1が BI0に勝ると言える。しかしながら、どちらも 1024columnに対して高々 20columnに満たないので、観測に深刻な影響は及ぼさない。
longのうち大半は 1024pixel (column全体 ) に達する。
・イベント閾値 (event th.)、スプリット閾値 (split th.) の最適化
read
out n
oise
(A
DU
)
エネルギー分解能
(eV
)
検出効率
(%
)
event th.の最適値は、 BIチップがどれだけ低エネルギーのX線まで吸収できるかで決まる ‥‥京都大は高エネルギーの calibrationを担当しているので単独では決められない → 大阪大、マサチューセッツ工科大の実験結果から最適値を決定 → event th. = 20split th.については、ここでは京都大の結果だけから最適化を行う ‥‥取得したデータを各特性 X線ごとに、いろいろな split th.を用いてイベント判定し、 検出効率、エネルギー分解能の変化を見る
一般に‥‥split th.が小さすぎる → 検出効率低下 (grade7が増えるため )split th.が大きすぎる → エネルギー分解能低下 (本来広がったイベント を grade0にみなすため )
全データを総合して、最適値を決定 → split th. = 14
例: split th.と検出効率/エネルギー分解能の関係 上から、 BI0-Fe, BI0-Zn, BI1-Fe, BI1-Zn
抽出された 55Feのスペクトル (BI0)
・検出効率、エネルギー分解能の測定 上の閾値を用いてイベント抽出し、そのスペクトルから検出効率とエネルギー分解能を測定 測定は全特性 X線のデータに対して行った。下表にその 一部を示す。表は BI0のもの。 (BI1と大きな差はない )
Energy (keV) 検出効率(%) 分解能 (eV)
Cl 2.62 96 104
55Fe 5.90 82 135
Zn 8.64 34 164
分解能は FIとほとんど同じ値を示した。 (表の値は FWHM) (FI:ΔE〜 130eV)