アジアのASE・APG、日米のPC-1を中心に 環太平洋をカバー ......cable...

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68 ビジネスコミュニケーション 2012 Vol.49 No.9 特別企画 特別企画 NTT NTT コミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築 コミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築 特別企画 特別企画 NTT NTT コミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築 コミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築 特別企画 NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築 これらのアジア地域の海底ケーブ ルネットワークの新設に加え、 NTT Com が保有する日米太平洋ル ートの PC- 1 への新技術投入による 増強を視野に入れたグローバル・ネ ットワーク構築を目指す。 サービス基盤部の松本裕敦基盤設 備部門長は、「アジア地域(シンガ ポール)と北米を結ぶ大圏航路を引 くと日本はその線上に位置し、既設 の日米間 PC- 1 と新たに建設する ASE のシンガポール⇔日本の敷設 ルートの組み合わせは、この大圏航 路とほぼ一致することとなり、レイ テンシの面から見ても、日本を HUB としたアジア⇔北米の環太平 洋をカバーするグローバル・ネット どの高信頼化への対応が、アジア地 域を中心としたグローバル・ネット ワークの急務となっている。 NTT Comでは、アジア地域の国際 トラフィック対応と高信頼化の需要 に応えるため、2 ルートの大容量光 海底ケーブルの建設を進めている。 1 ルートは、2012 年8月よりサー ビス開始したシンガポール⇔日本の 最短遅延ルートとなる ASEAsia Submarine-cable Express)の建設 であり、これは、完成までのスピー ドを重視するため NTT Com がイニ シアチブを持ち、少数キャリアで始 動したものだ。 もう1ルートは、大 容量分散と日本での陸 揚げルートの分散を目 的とした APGAsia Pacific Gateway)の建 設である。APGについ ては、2014 年のサービ ス開始を予定している が、中国、韓国を含む アジアの多くのキャリ ア参加する国際コンソ ーシアムであるため、 アジア各国の多彩な対 地へのサービス提供も 期待される。 近年、クラウド・コンピューティ ング化、スマートフォン等のタブレ ット型端末の普及など、データ通信 需要が世界的に爆発的な増加となっ ている。また、株取引をはじめとす る国を跨いでの金融取引が進むな ど、求められているものは大容量化 だけにとどまらない。 特に急増するアジア地域の国際ト ラフィックへの対応を行うと共に、 ユーザーが求める信頼性や低遅延な NTT コミュニケーションズ(以下、NTT Com)では、近年急増する国際間トラフィックの対処とグルーバルネットワーク の信頼性強化に対応するため、アジア域内を結ぶ新しい大容量光海底ケーブルシステムとして、ASE(Asia Submarine- cable Express)および、APG(Asia Pacific Gateway)の建設行う。また、既に保有している日米間の太平洋横断ルート PC-1 への新技術投入を行うとともに、環太平洋を面的にカバーする戦略的なケーブルインフラの構築を進めている。 アジアの ASE ・ APG、日米の PC-1 を中心に 環太平洋をカバーする戦略的ケーブルインフラ NTT コミュニケーションズ㈱ サービス基盤部 基盤設備部門長 理事�松本 裕敦Singapore Singapore Seattle Seattle 図1 シンガポール~北米を結ぶ大圏航路

Transcript of アジアのASE・APG、日米のPC-1を中心に 環太平洋をカバー ......cable...

  • 特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築

    68 ビジネスコミュニケーション 2012 Vol.49 No.9

    特別企画特別企画NTTNTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築コミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築特別企画特別企画NTTNTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築コミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築

    これらのアジア地域の海底ケーブ

    ルネットワークの新設に加え、

    NTT Comが保有する日米太平洋ル

    ートのPC-1への新技術投入による

    増強を視野に入れたグローバル・ネ

    ットワーク構築を目指す。

    サービス基盤部の松本裕敦基盤設

    備部門長は、「アジア地域(シンガ

    ポール)と北米を結ぶ大圏航路を引

    くと日本はその線上に位置し、既設

    の日米間 PC-1と新たに建設する

    ASEのシンガポール⇔日本の敷設

    ルートの組み合わせは、この大圏航

    路とほぼ一致することとなり、レイ

    テンシの面から見ても、日本を

    HUBとしたアジア⇔北米の環太平

    洋をカバーするグローバル・ネット

    どの高信頼化への対応が、アジア地

    域を中心としたグローバル・ネット

    ワークの急務となっている。

    NTT Comでは、アジア地域の国際

    トラフィック対応と高信頼化の需要

    に応えるため、2ルートの大容量光

    海底ケーブルの建設を進めている。

    1ルートは、2012年8月よりサー

    ビス開始したシンガポール⇔日本の

    最短遅延ルートとなるASE(Asia

    Submarine-cable Express)の建設

    であり、これは、完成までのスピー

    ドを重視するためNTT Comがイニ

    シアチブを持ち、少数キャリアで始

    動したものだ。

    もう1ルートは、大

    容量分散と日本での陸

    揚げルートの分散を目

    的としたAPG(Asia

    Pacific Gateway)の建

    設である。APGについ

    ては、2014年のサービ

    ス開始を予定している

    が、中国、韓国を含む

    アジアの多くのキャリ

    ア参加する国際コンソ

    ーシアムであるため、

    アジア各国の多彩な対

    地へのサービス提供も

    期待される。

    近年、クラウド・コンピューティ

    ング化、スマートフォン等のタブレ

    ット型端末の普及など、データ通信

    需要が世界的に爆発的な増加となっ

    ている。また、株取引をはじめとす

    る国を跨いでの金融取引が進むな

    ど、求められているものは大容量化

    だけにとどまらない。

    特に急増するアジア地域の国際ト

    ラフィックへの対応を行うと共に、

    ユーザーが求める信頼性や低遅延な

    NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)では、近年急増する国際間トラフィックの対処とグルーバルネットワークの信頼性強化に対応するため、アジア域内を結ぶ新しい大容量光海底ケーブルシステムとして、ASE(Asia Submarine-cable Express)および、APG(Asia Pacific Gateway)の建設行う。また、既に保有している日米間の太平洋横断ルートPC-1への新技術投入を行うとともに、環太平洋を面的にカバーする戦略的なケーブルインフラの構築を進めている。

    アジアのASE・APG、日米のPC-1を中心に環太平洋をカバーする戦略的ケーブルインフラ

    NTTコミュニケーションズ㈱サービス基盤部基盤設備部門長

    理事�松本裕敦氏

    SingaporeSingapore

    SeattleSeattle

    図1 シンガポール~北米を結ぶ大圏航路

    http://www.bcm.co.jp/

  • ワークの構築は理想的であり、求め

    られている」と語るように、急増す

    るアジア地域の国際トラフィックに

    対応する、信頼性の高い大容量光海

    底ケーブル(ASE)のスピード感

    を持ったサービス開始により、

    NTT Comの牽引する信頼性の高い

    戦略的グローバル・ネットワークが

    構築される。

    東日本大震災発生時、日本をつな

    ぐ海底ケーブルもいくつか切断され

    るなど被害に見舞われ、茨城県阿字

    ケ浦(ひたちなか市)の陸揚げ地が

    壊滅的被害にあったにもかかわらず、

    ネットワークに混乱が発生すること

    はなかった。PC-1は2ルートあり、

    関東に陸揚げのある北ルートにおい

    ては被害にあったが、三重県志摩

    (志摩市)への南ルートには影響がな

    かったため、震災時においても日米

    間の通信を支えていた。

    アジア地域においても A S E、

    APGの 2ルートを確保することに

    より、信頼性を保つことを計画して

    いる。

    また陸路についても、複数ルート

    を確保することにより、さらに信頼

    性を高めている。

    地震や台風などの自然災害への対応

    としては、複数ルートの確保以外にも

    過去に故障が頻発している場所の回避

    ルートの選択など、非常事態において

    もネットワークが孤立しないための2

    重3重のリスク回避処置を行い、信頼

    性向上に繋げている。

    ASEの敷設については、エヌ・

    ティ・ティ・ワールドエンジニアリ

    ングマリン(NTT-WE マリン)の

    保有する敷設船すばるの参加もあ

    り、重要となる回避ルートにおける

    敷設場所の精度も信頼できる。

    サービス提供にあたり松本部門長

    が、「海外でのNTT Comの知名度

    は、まだ低いと言わざるを得ない。

    しかし、NTTグループの強みであ

    る信頼性を更に向上し、価格競争が

    激化する市場の中で、信頼性を武器

    に挑戦者として挑んで行きたいと考

    える」と語っているように、刻々と

    変化する環境や情報社会では、最重

    要インフラとなるグローバル・ネッ

    トワークにおいて、信頼性と低遅延

    への対応は必須となる。

    NTT Comでは、「大容量」「信頼

    性」「低遅延」へのエンド・エンド

    の接続全体を意識した、高信頼化を

    備えた海底ケーブルシステムを最大

    限に活かすため、陸路、データセン

    タを含めたサービス全体において品

    質向上への取組みを行なっている。

    国内伝送路についても、例えば、陸

    揚局からデータセンタへのルートの見

    直しを行い、必要に応じて新たに敷設

    するなどの対応を行なっている。

    アジア地域の現地においては、現

    地キャリアにおいて接続を行なって

    いるが、品質がまだまだ低い場合が

    多い。このため品質向上を目的とし

    て、アクセスラインプロジェクトを

    推進している。これは、タイ・ベト

    ナム・マレーシア・インド等をはじ

    めとする現地キャリアと連携し、

    NTT Comの保有するノウハウを共有

    し、向上に繋げていくものである。

    こういった地道な活動も含め、サ

    ービス全体の高信頼化に努めた提供

    を行う。

    69ビジネスコミュニケーション 2012 Vol.49 No.9

    特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築

    特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築

    NTT-WE マリン保有の敷設船「すばる」と海底ケーブル陸揚作業の様子

    http://www.bcm.co.jp/

  • 特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築

    70 ビジネスコミュニケーション 2012 Vol.49 No.9

    特別企画特別企画NTTNTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築コミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築特別企画特別企画NTTNTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築コミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築

    アジア地域の急速な発展を背景に、

    環太平洋地域にてこれらの3つのニ

    ーズに対応するため、NTT Comはア

    ジアにおける2つの新規ケーブルの

    建設、日米間のケーブルアップグレ

    ード等による「戦略的グローバル・

    ネットワークの構築」を進めている。

    アジア地域をつなぐ大容量海底ケ

    ーブルとして進められているのには、

    建設着工前のものも含めて、ASE

    (Asia Submarine-cable Express)、

    APG(Asia Pacific Gateway)、

    SJC(Southeast Asia-Japan Cable)

    ②信頼性

    同一地域に対して、複数のケーブ

    ルルートを確保して冗長構成を取る

    ことで、ケーブル障害への対策を行

    うとともに、新規ケーブル建設時に

    は、地震などの自然災害の影響を受

    けにくいケーブルルートを選択する

    などの工夫を凝らす必要がある。

    ③低遅延

    アルゴリズム取引をはじめとする

    高頻度な金融取引の台頭等を背景

    に、超低遅延化を実現するための

    ケーブルルート設計が求められて

    いる。

    スマートフォンの普及や動画共有

    サービスにSNS、アジア経済の発

    展を支えるプライベート・クラウド

    をはじめとするクラウドコンピュー

    ティングの進化など、多様化するイ

    ンターネットサービスなどにより、

    IPトラフィックは、急速な増加を

    続けている。

    NTT Comでは、増加するトラフ

    ィックへの対応だけではなく、今後

    の利用ニーズの成長・変化を捉え、

    グローバル・ネットワークを支える

    国際海底ケーブルインフラに求めら

    れる要素は、「大容量」「信頼性」

    「低遅延」の3点としている。

    ①大容量

    伝送技術の進化に合わせた、新規

    技術の導入により、既存ケーブルの

    容量の増加を図るとともに、必要な

    地域においては、新たにケーブルの

    建設を行うことで、各対地への経

    路を増やして大容量化を図る必要が

    ある。

    アジア地域の急速な発展等と共に急増する国際トラフィックを背景に、各国のキャリアや企業が国際海底ケーブルの建設に注目する中、大容量化だけにとどまらない市場ニーズにも積極的に応えるべく、NTTコミュニケーションズ(以下、NTTCom)が戦略的に進める国際海底ケーブル構築の実際について紹介する。

    大容量・信頼性・低遅延を実現する国際海底ケーブルの戦略的構築・提供

    NTTコミュニケーションズ㈱サービス基盤部基盤設備部門第二エンジニアリング担当

    担当部長 高瀬憲児氏

    NTTコミュニケーションズ㈱サービス基盤部基盤設備部門第二エンジニアリング担当

    担当課長 中村吉孝氏高

    http://www.bcm.co.jp/

  • の3つがあり、いずれも複数の通信

    会社によって構成される国際コン

    ソーシアムの形態で建設を行って

    いる。

    このうち、NTT Comが参画して

    いるのが、2012年8月に運用開始

    された『ASE』と2014年の運用開

    始を目指す『APG』の2つである。

    ●ASE

    ASEは、NTT Com主導によりフ

    ィリピンPLDT社、シンガポール

    StarHub社、マレーシアTM社の計

    4社という少数のキャリアでの建設

    を行った。これによりスピーディな

    意思決定ができ、建設合意から約1

    年半という非常に短期間での日本~

    シンガポール、フィリピン、マレー

    シア区間の運用開始を実現させてい

    る(香港分岐は、2013年第一四半

    期を予定)。伝送技術としては、

    40Gbpsデジタルコンヒレート技術

    を採用し、総設計容量は15Tbpsの

    大容量ケーブルを実現している。

    またASEのケーブルルートは、

    過去に地震や台風に起因する海底地

    滑りが頻発している台湾南沖バシー

    海峡付近の障害発生エリアを回避

    し、過去にそれらの障害に影響され

    なかった既存ケーブルの更にフィリ

    ピン寄りにルートを取ることで、信

    頼性の向上を図っている(図1)。

    この様に信頼性を向上するルート

    をとりつつも、低遅延性の要件を満

    足するため、アジア主要金融拠点で

    ある東京、シンガポール、香港間を

    最短遅延で結ぶルート設計を実現し

    ているのがASEの最大の特徴の一

    つとなっている。特に東京~シンガ

    ポール間においては、既存ケーブル

    に比べ、3ミリ秒以上速い64ミリ秒

    台で接続するなど、「超低遅延ケー

    ブル」として、各国の金融市場間を、

    これまでに無い遅延値でつなぐケー

    ブルとなっている。

    ●APG

    APGには、チャイナ・モバイル、

    チャイナ・テレコム、チャイナ・ユ

    ニコムなどの中国キャリアおよび、

    韓国、台湾をはじめとするアジア各

    国のキャリアが参加している。また、

    米Facebookもアジア地域のユーザ

    ー拡大を狙い出資を行うなど、多数

    の企業が参加している大規模国際コ

    ンソーシアムであり、NTT Comも

    計画の早い段階より参画し、主要な

    メンバーとなっている。

    APGは、日本、韓国、中国、台

    湾、香港、シンガポール、マレーシ

    ア、ベトナムなどのアジア各国の多

    彩な対地への接続を予定しており、

    アジア地域のおける動脈として、

    40Gbpsデジタルコンヒレート伝送技

    術を導入し、総設計容量54.8Tbpsを

    誇る大容量ケーブルを実現する。

    また、APGの日本の陸上げは、

    千葉県新丸山(南房総市)と三重県

    志摩(志摩市)という関東・関西の

    双方を予定しており、今後日本周辺

    での発生が懸念されている大規模地

    震対応として、リスク分散による信

    頼性向上を図っている。

    この様にNTT Comは、アジア地

    域にいてASEとAPGの2つの大容

    量海底ケーブルを有することによ

    り、最短遅延ルートの実現と2ルー

    ト確保による冗長構成で信頼性向上

    を実現させ、「大容量」「信頼性」

    「低遅延化」のすべての要素を満た

    すべく、ネットワーク整備を進めて

    いる。

    日米間においても、伝送技術の進

    化に合わせた大容量化など、既存ケ

    71ビジネスコミュニケーション 2012 Vol.49 No.9

    特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築

    特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築

    ケーブル故障頻発エリア (台湾南沖バシー海峡付近) 日本

    フィリピン

    香港

    シンガポール シンガポール

    マレーシア マレーシア

    過去の故障事例: ①2006年12月:地震による故障 ②2009年8月:台風による故障 ③2010年3月:地震による故障

    ① ②

    ASE ケーブル

    図1 ASE全ルートと台湾南沖バシー海峡付近の回避ルート

    http://www.bcm.co.jp/

  • 特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築

    している。

    NTT Comでは増大する日米間IP

    トラフィックを支えるにあたり、こ

    れらの自社保有ケーブル以外からの

    容量調達も行っており、これにより

    同時に、複数ルートの確保による高

    信頼ネットワークの構築も実現して

    いる。

    ビジネスのグローバル化が進む中

    で、NTT Comが提供するネットワー

    クサービスも日本発着の通信ばかり

    でなく、日本の地政学的優位性を活

    用し、日本をハブとした第三国間と

    いったグローバル・ネットワークの

    提供へと拡大が進められている。

    日本~アジア地域間で最短遅延ル

    ートを確保したASEは、既に日米

    間で最短遅延を誇るPC-1の北セグ

    メントと組み合わせることにより、

    アジア~北米間の最短遅延ルートを

    構成することとなる。

    ケーブルの遅延値は、ほぼ物理的

    なケーブル長に依存するため、遅延

    短縮のためには、いかに短いルート

    での敷設が行えるかが極めて重要と

    なるが、このASEのシンガポール

    ~日本間とPC-1北セグメントの日

    米間の敷設ルートは、シンガポール

    と北米の最短距離となる大圏航路に

    非常に近いルートとなり、理想的な

    超低遅延ルートを実現している。

    サービス基盤部 基盤設備部門の

    瀬憲児担当部長は、「世界の各金

    融市場間を連携してアルゴリズム取

    引を行う証券会社・ヘッジファンド

    の低遅延化への欲求は既にミリ秒以

    下の単位にまで及んでおり、通信遅

    延の主要要素である海底ケーブル部

    分をいかに短縮できるかが重要とな

    る中、NTT Comは、ASE+PC-1

    という極めて強力な武器を手に入れ

    たこととなる」と語るように、

    NTT Comは、今後のグローバル・

    ーブルの増強等の取組みが行われて

    いる。

    NTT Comグループが保有する日

    米間海底ケーブルシステムPC-1は、

    これまでも日米間の主要なケーブル

    ルートとして活用されてきたが、さ

    らなる大容量化を実現するべく、

    2013年には最新のデジタルコヒー

    レント技術を採用したアップグレー

    ドを予定している。

    新技術採用に先立って、2011年

    秋にはPC-1ケーブルを用いたフィ

    ールドトライアルを実施し、世界に

    先駆けて太平洋横断での 100Gbps

    伝送に成功している。これにより、

    PC-1は総設計容量を現在の3.2Tbps

    から、段階的に約3倍程度まで引き

    上げられると見込まれている。

    このように、太平洋級の長距離伝

    送で40Gbps/100Gbpsといった高速

    伝送が可能となったのは、デジタル

    コヒーレント技術によって光の偏波

    自由度、位相自由度をより柔軟かつ

    高速に処理できる様になり、シンボ

    ル速度を低減して雑音耐性を維持す

    ることが可能になったことと、近年

    のSoft Decision FEC(Forward

    Error Correction:誤り訂正)とい

    ったFEC技術の目覚しい進歩によ

    る感度の向上が寄与しており、次世

    代伝送方式として様々なケーブルで

    の導入が検討されている。

    PC-1の他にも、NTT Comも参画

    している「Japan-USケーブル」で

    は、2013年春に100Gbpsデジタル

    コヒーレント伝送技術を導入が予定

    されており、これに伴いNTT Com

    としても保有する容量の増強を予定

    72 ビジネスコミュニケーション 2012 Vol.49 No.9

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    PC-1

    Asia Submarine-cable Express [ASE]

    Asia Pacific Gateway [APG]

    図2 ASE・APG及びPC-1ルート

    http://www.bcm.co.jp/

  • ネットワーク構築の中で重点ポイン

    トであるアジア地域における大容

    量、低遅延の魅力的な大動脈ルート

    を確保したことによって、アジアを

    中心としたグローバルインフラ市場

    を牽引することとなる。

    NTT Comは、ASEの運用開始に

    合わせ、それに直結する形で東京、

    シンガポール、マレーシア、香港に

    新たにデータセンタを構築し、国際

    専用線サービスとデータセンタをワ

    ンストップで提供する等、エンド・

    エンドの品質を担保したトータルサ

    ービスの提供を目指している。

    既に東京はもちろん、シンガポー

    ル・セラングーンデータセンタ、マ

    レーシア・サイバージャヤデータセ

    ンタについては 2012年4月からサ

    ービス開始されており、香港TKO

    データセンタは、ASE接続とあわ

    せて 2013年春にはサービス開始を

    予定している。

    「大容量化」「信頼性」「低遅延」

    を実現した海底ケーブルと金融サー

    ビスにも対応した高品質データセン

    タをセットで構築することにより、

    トータルで品質の高いサービスを提

    供でき、NTT Comの競争力を更に

    高める狙いだ。

    また、ユーザーが求めるのはエン

    ド・エンドのサービス品質であるた

    め、海底ケーブル、データセンタの

    単体だけではなく、陸揚局からデー

    タセンタまでの国内伝送路について

    も改めて見直しを行うことで、さら

    に低遅延性を強化する取組みも行な

    っている。

    ASEでは、シンガポ

    ールのセラグーン、香

    港の TKOにおいて、

    直接データセンタまで

    ファイバーを引き込

    み、海底ケーブルと直

    結する事により低遅延

    化を実現した。さらに、

    日本国内の陸路につい

    てもルートを再検討

    し、陸揚局のある千葉

    県新丸山(南房総市)

    からNTT Comデータ

    センタまでのルート

    や、PC-1の陸揚局があ

    る茨城県阿字ヶ浦(ひ

    たちなか市)までのル

    ートを従来より低遅延

    化する整備を行うなど、さらに強化

    を図っていく。

    瀬憲児担当部長は、「国際海底

    ケーブルとグローバルデータセンタ

    は、それぞれを戦略的に構築整備す

    るとともに、直結等によりワンスト

    ップでのサービス提供を可能とする

    ことで、お客様の様々なニーズにエ

    ンド・エンドで対応できるようにな

    る。これらは、NTT Comのグロー

    バルクラウドビジョンを実現するキ

    ーインフラともなるため、今後も戦

    略的な構築と環境整備を進めていき

    たい」と語っている。

    73ビジネスコミュニケーション 2012 Vol.49 No.9

    特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築

    特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築特別企画NTTコミュニケーションズの戦略的グローバル・ネットワーク構築

    Hong Kong

    Malaysia

    Singapore

    Tokyo

    ASE

    Yushima DC

    TKO DC

    Cyberjaya DC

    Serangoon DC

    Will be Opened in 2013 Q1 Opened in

    April 2011

    Opened in April 2012

    Opened in April 2012

    図3 ASE陸上げ地と新設データセンタ

    NTTコミュニケーションズ㈱サービス基盤部

    TEL:03-6700-7399

    お問い合せ先

    http://www.bcm.co.jp/

    Button2: