Aon Benfield Evolving Criteria Report V1 (TK)(SM) · Evolving Criteria 8 S&P 2011 S&P ~ 9 ECM 9AB &...

32
Evolving Criteria Looking Back to Anticipate Change Moving Forward 進化する規準 今までを振り返り、今後の動向を予測する 2012 9

Transcript of Aon Benfield Evolving Criteria Report V1 (TK)(SM) · Evolving Criteria 8 S&P 2011 S&P ~ 9 ECM 9AB &...

Evolving Criteria Looking Back to Anticipate Change Moving Forward

進化する規準

今までを振り返り、今後の動向を予測する

2012 年 9 月

Evolving Criteria

2

目次 エグゼクティブ・サマリー-現状のレビュー 3 世界の格付け業者による規準の見直し 4 米国 13 ヨーロッパ 19 アジア太平洋地域 25 結論 30

Aon Benfield

3

エグゼクティブ・サマリー-現状のレビュー 2011年は保険業界にとって激動の年であった。世界的な巨大自然災害の年であり、253の

災害が 4,350億ドルの経済損害と 1,070億ドルの保険損害をもたらした。その損害の多くは

アジア・太平洋地区で発生した。米国では、各地域を襲った暴風雨、それまでのキャタストロ

フ PMLの見積もりを倍以上に増加する新たなキャタストロフ・モデル、過年度リザーブ残高

への懸念などが、料率引き上げを促す要因となっている。ヨーロッパでは、債務危機が、ユー

ロ圏経済や、共通通貨ユーロへの潜在的な脅威となっている。ソフトサイクルと、縮小する投

資利回りが、保険業界の収益率を圧迫している。一方、元受保険者の資本は記録的に高い

状態が続いており、2012年上半期の資本レベルは過去最高となっている。図表図表図表図表 1: S&P による資本の余剰状況の見込みによる資本の余剰状況の見込みによる資本の余剰状況の見込みによる資本の余剰状況の見込み

マクロ経済的あるいは地域的問題を抱える中で、保険会社は、資本レベルを維持することに成功している。保険業界全体の統合リスク管理(ERM)が改善していることも一定の貢献をしている。保険業界は、引き続き ERM の水準を高めることに努めており、経営レベルの最も重要な課題のひとつともなっている。さらに、ソルベンシーⅡと、S&P の最近の経済資本モデル(ECM)の見直しが相俟って、業界は内部資本モデル、先進的なリスク定量化、リスク選好度やリスク許容範囲の設定に焦点を当てている。 格付け業者と規制当局の規準の進化は、最近の、そして現在直面する業界の出来事を反映し、また将来の課題も取り込んでいる。しかし、世界の保険マーケットはそれぞれ異なるペースで現在の形に至ったものであり、地域ごとの当局や格付け業者の規準も同じ様にそれぞれ別のスピードで発展してきた。このレポートでは米国、ヨーロッパ、アジア太平洋地域における 2011 年の出来事と、現在の業界の問題をまず振り返り、その後、これらの地域における格付け業者、および規制当局の将来の方向の見通しを立てることとしたい。最近の規準の変化のいくつかは、世界的な影響を与えたが、中には地域に固有のものもある。まずは、世界的に共通の規準をレビューし、その後、地域固有の状況や規準について見てゆくこととしたい。

Evolving Criteria

4

世界の格付け業者による規準の見直し 主要な格付け業者は、既に公表した格付け手法に関する加筆や修正を引き続き行っている。これは、SEC からの規準や格付けプロセスの透明性を高めるようにとのプレッシャーが増していることが背景にある。昨年度には、25 の規準の発表や改訂があった。意見募集(RfC)という形で 9 つの規準が発表され、4 件の年次格付け調査が改訂され、多数のスペシャル・レポートが発表された。改訂や修正は様々な要因で行われているが、共通のテーマは明確であり、非公表のデータを必要とする突っ込んだ分析を行うこと、世界共通の手法を適用し、全体の透明性を高めることである。 このレポートでは、下記の重要項目について詳細を提供する:

� S&P の RfC: 保険会社の格付け手法

� S&P の暫定改訂規準: 経営陣とコーポレート・ガバナンス

� S&P のエコノミック・キャピタル(経済価値資本)モデルのレビュー

� A.M. Best の ERM

� その他の A.M. Best の改訂 以上は、世界的に共通の規準だが、格付け業者は、地域によって異なるタイムスケールで導入を図る場合があり、会社や地域によって、その影響がでる時期が他よりも早まる場合がある。

S&P RfC: 保険会社の格付け決定手法保険会社の格付け決定手法保険会社の格付け決定手法保険会社の格付け決定手法

2012 年 7月 9日、S&P は、保険会社の新たな格付け規準の提案に関する意見募集を発表した。S&P は、格付け規準改訂の意図は、保険会社の格付けを決定する手法の透明性を高めることにあると述べている。規準改訂案のテスト結果からは、導入後、格付けの大半は変更されず、また変更されても、1 ノッチ以内であり、現行格付けへの影響は限定的であるとみられている。 図表 2 は、新たな S&P のモデルの枠組みを示している。 図表図表図表図表 2: 保険会社の格付けの枠組み保険会社の格付けの枠組み保険会社の格付けの枠組み保険会社の格付けの枠組み

Aon Benfield

5

提案された保険会社の格付け決定の規準は下記の5 つのステップから成る:

1. 事業リスクプロフィールの評価

2. 財務リスクプロフィールの評価

3. 上記 1 と 2 の組み合わせから格付けアンカー値を決定する

4. 調整要素と制約要素を適用する

5. (サポートのある場合には)グループあるいは国からのサポートを評価する 図表 3 は、S&P の現行の格付けの枠組みが規準改訂案のどの部分に吸収されたのかを弊社がまとめたものである。 図表図表図表図表 3: Aon Benfield によるによるによるによる S&P 格付け格付け格付け格付け規準規準規準規準のののの比較表比較表比較表比較表

規準改訂案における格付けマトリックスの最も重要な側面は、透明性の向上である。規準改訂案には、格付け要因(内訳項目を含む)がどのように計測され、またどのように格付けを決定するマトリックスの中に組み込まれたのかに関する定量的、定性的な詳細な考察が含まれている。

現行の規準には明示的な記載のない、規準改訂案における新たな格付け要因には、保険業界のカントリーリスク評価(IICRA)、予想自己資本とリスクポジションに対する分析がある。 事業リスク事業リスク事業リスク事業リスクプロフィールプロフィールプロフィールプロフィール 事業リスクプロフィール(BRP)は、保険会社の事業と、これらの事業から発生する利益に内在するリスクを評価するものである。事業リスクは、評価対象の保険会社に適用される IICRA とその保険会社の事業競争力に基づいて決定される。 財務リスクプ財務リスクプ財務リスクプ財務リスクププロフィールプロフィールプロフィールプロフィール 財務リスクプロフィール(FRP) は、 経営が BRP とリスク許容範囲に基づいて行う決定の結果とみられる。FRP評価の出発点は、自己資本と収益性の分析である。自己資本と収益性の分析は、S&P の新たな試みではないが、これらの分析を一つの継ぎ目のない格付け要因の中に合体したことは今までにない試みである。さらに S&P は、FRP評価にあたって、保険会社のリスクポジションと財務の柔軟性を評価する。

BRP と FRP が S&P の格付けアンカー値の基礎となり、そこに調整要素と制約要素が加味され、さらにグループまたは政府による支援が考慮された後、保険財務力格付けが決定される。 調整要素と調整要素と調整要素と調整要素と制約制約制約制約要素要素要素要素 格付けアンカー値を決定した後、規準改訂案では、スタンドアローン評価を決定するため、追加的な要素(調整要素と制約要素)を加味する。調整要素は、(後程詳細に説明する)ERM と経営に関する事項であり、同業他社との比較である。調整要素は、格付けアンカー値の引き上げ、引き下げあるいは中立の要因となる。しかし、制約要素は、格付けアンカー値にとって中立か引き下げの要因となり、流動性の分析、固定金利負担ベースのカバレッジ、ソブリン格付け、外国為替規制リスク評価(T&C 評価; ソブリンが他の公的・民間部門の発行体が債務を返済するための外貨へのアクセスを制限する可能性に対する S&Pの意見)を含む。調整要素と制約要素は累積的に適用される。

Evolving Criteria

6

グループまたは政府からの支援グループまたは政府からの支援グループまたは政府からの支援グループまたは政府からの支援 最終的なステップでは、子会社に対するグループからの支援、または政府の保有する会社の場合、政府からの特別支援を考慮する。S&P は、グループ会社を「中核」、「戦略的に非常に重要」、「戦略的に重要」、「戦力的にやや重要」、「戦略外」に分類する。 この RfC に関するより詳細なサマリーは弊社の下記サイトを参照頂きたい。http://thoughtleadership.aonbenfield.com/docum

ents/20120718_standard_poors_methodology.pd

f

S&Pの格付けの格付けの格付けの格付け規準規準規準規準改訂改訂改訂改訂案案案案ににににおけるおけるおけるおけるERMの位置づの位置づの位置づの位置づけけけけ

S&P の格付け規準改訂案の中では、ERM は、経営陣・経営戦略と結び付けられ、会社の事業リスクプロフィールや財務リスクプロフィールから構成される格付けアンカー値の修正要素となる。ERM と経営陣・経営戦略スコアは、「非常に厳格(very strong)(1)」から「弱い (weak)(5)」の範囲に分類される。1

さらに、会社のリスクプロフィールを基として、ERMの重要性が高いか低いかの評価が行われ、それによって ERM が格付けに及ぼす影響のレベルが決定される。調整要素として、特に ERM の重要性が高い会社に対しては、S&P の ERM に対する見解が最終的な格付けに大きな影響を与える。例えば、図表 4 は、格付けアンカー値が、‘a+’であり、ERMが「極めて厳格(excellent)」または「厳格(strong)」であるために 1 ノッチの格上げが可能となる場合と、ERM評価が「弱い(weak)」であるために格付けアンカー値が‘a+’ でも潜在的な格付け評価が‘bb’となる場合を示している。

ERM の格付けに対する最終的な影響は、会社のリスクプロフィールによって決定される格付けに対するERM の重要度のレベル、S&P の経営陣と経営戦略に関する見解、格付けアンカー値で変わってくる。規準改訂案の下では、格付けに対する ERM の影響度は多くの会社において増加することとなる。

図表図表図表図表 4: 仮信用格付けに対する仮信用格付けに対する仮信用格付けに対する仮信用格付けに対する ERM の影響の影響の影響の影響

1 これは、excellent(極めて厳格)から weak(弱い)の範囲で示す S&Pの ERMの実施能力評価とは異なるものである。

Aon Benfield

7

S&Pのののの暫定的暫定的暫定的暫定的改訂改訂改訂改訂規準規準規準規準:::: 経営陣と経営陣と経営陣と経営陣とコーポレート・ガバナンスコーポレート・ガバナンスコーポレート・ガバナンスコーポレート・ガバナンス

S&Pは、2012年 3月 12日に意見募集(RfC)に付された経営陣とコーポレート・ガバナンスに関する改訂案をとりまとめ、最終的な導入に向け、準備中である。S&Pは、この改訂案は、透明性を高めるためのものであり、現行の評価プロセスを変えるものではないので、重大な格付けの変更は発生しないと述べている。 改訂案は、下記の図表 5にあるとおり、経営陣とコーポレート・ガバナンスに関する分析を 4つの格付け要因(それぞれに内訳項目を含む)に基づいて分析する。

格付け要因の 1、2および 3は、格付けへのポジティブ、ネガティブ、あるいは中立の影響を与えるが格付け要因の 4(ガバナンス)は、経営陣とコーポレート・ガバナンスの分析結果に中立あるいはネガティブな影響を与える。 この暫定規準は、前項で述べた S&Pの格付け改訂案の影響を受けないことは強調しておきたい。

図表図表図表図表 5: S&Pの経営陣との経営陣との経営陣との経営陣とコーポレート・ガバナンスコーポレート・ガバナンスコーポレート・ガバナンスコーポレート・ガバナンスに関する分析の改訂案のに関する分析の改訂案のに関する分析の改訂案のに関する分析の改訂案の概要概要概要概要

1. 経営戦略の策定と遂行経営戦略の策定と遂行経営戦略の策定と遂行経営戦略の策定と遂行 2. リスク管理と財務管理リスク管理と財務管理リスク管理と財務管理リスク管理と財務管理 3. 組織運営能力組織運営能力組織運営能力組織運営能力 4. ガバナンスガバナンスガバナンスガバナンス 戦略策定プロセス リスク管理規準とリスク許容範囲

経営陣の専門知識と経験

経営陣からの取締役会の独立性 情報の伝達 戦略の整合性 業績目標 経営陣の厚みと幅 支配的所有権 内部統制 戦略の遂行 財務管理規準とリスク許容範囲の包括性

経営陣の業務運営能力 経営文化 財務報告と透明性

リスク許容範囲 規制・税制・法制面での違反行為

出典: S&P

Evolving Criteria

8

S&Pのののの経済資本経済資本経済資本経済資本モデルのレビューモデルのレビューモデルのレビューモデルのレビュー

2011年、S&Pは、保険会社の経済資本モデル(ECM)の評価手法を完成し、その評価プロセスを開始した。S&Pが ECMをレビューする目的は、自己資本十分性の評価に内部モデルをどの程度使用できるか評価するためである。ERM評価が「厳格(strong)」もしくは「極めて厳格(excellent)」の会社は、追加的情報を S&Pに提供することができ、それに基づき S&Pは ECMの深度あるレビューを実施することが可能となる。S&P の ERM 規準によれば、ECMのレビューが行われ、その結果が良好である場合のみ、ERMの「極めて厳格(excellent)」の評価を得ることができる。

しかし、S&Pはまだこの対応を開始したばかりであり、ERM格付けが「極めて厳格(excellent)」の会社のすべてが、ECMのレビューの対象となったわけではない。S&Pが ECMレビューを終了したのはヨーロッパの会社に限られており、この中には、複雑なリスクを抱え、正確で一貫性のあるモデルを必要とするいくつかの欧州の巨大会社が含まれている。評価の一環として、全体のスコア(普通(basic)、良好(good)、秀逸(superior))が決定され、Mファクターと呼ばれる信頼性評価が算定される。Mファクターは、その後、S&Pが自己資本十分性を決定する際に利用される。 図表図表図表図表 6: ECM評価の特性評価の特性評価の特性評価の特性 普通普通普通普通((((Basic)))) 良好良好良好良好((((Good)))) 秀逸秀逸秀逸秀逸((((Superior)))) 同業他社と比較してリスクへのアプローチが発達していない

「普通」に比べ、アプローチにより柔軟性がありより先進的

「良好」に比べ、アプローチにより柔軟性がありより先進的 リスク管理のアプローチが差別化されていない

ベスト・プラクティスが導入されていることを示すいくつかの証拠がみられる

必要な部分にベストプラクティスの一貫した導入がみられる リスクの考察があるが充分ではない ガバナンス・プロセスの一貫した適用がみられない

ガバナンス・プロセスが充分構築され、一貫して適用されている ガバナンス・プロセスが限定的 出典: S&P

Aon Benfield

9

2012年 6月、S&Pは ECMレビュー実施結果の中間報告を発表した。レポートで注目されたのは、「秀逸(superior)」の評価を得たモデルはまだない」という記述である。個別のリスク・コンポーネントをみるとさまざまな結果が出ている。概して、財務リスク、引受リスク、リザーブ・リスクのコンポ―ネントは「良好(good)」であったが、生保、オペレーショナル・リスクは計測が困難で、「普通(basic)」の評価となった。図表 7は、S&Pの各リスク・コンポーネントのレビューをまとめたものである。

S&Pは将来 ECMのクオリティと信頼性が高まると考えている。ソルベンシーⅡの下では、内部モデルの承認を求めなければならないが、このことが保険会社のモデルの妥当性検証(バリデーション)やガバナンスの改善に貢献しており、モデル開発を進める重要な促進要因となっている。

しかし、S&Pの現在までのレビューで「秀逸(superior)」に該当するモデルがまだないのは、保険会社がさらにモデルの基準を改善し、Mファクターを上昇させなければならないことを示している。Mファクターは、さらなるレビューの結果、あるいは、モデルがさらなる発展、改良、妥当性確認を経た後に、引き上げられる可能性がある。逆に、保険者のリスクプロフィールが変更され、S&Pの観点からみて、この変更にモデルが追いついていない場合には Mファクターが下方修正される可能性もある。

S&Pは、来年、ヨーロッパ以外にも ECMのレビューを拡大し、北米の会社も含めて、ERM格付けが「極めて厳格(excellent)」 もしくは「厳格(strong)」 の会社に焦点を当ててゆくだろう。S&Pが ECMレビューの基盤を拡大するにしたがって、S&Pの ECMモデル規準と実際の実務との間のギャップは縮小するだろう。また、そうなることが Mファクターの大幅な上昇には必要と思われる。 図表図表図表図表 7: S&Pのののの ECM評価の概要評価の概要評価の概要評価の概要

ECM の評価対象の評価対象の評価対象の評価対象 S&P の評価の評価の評価の評価 複雑性と利便性 � 複雑性と利便性のバランスが極めて重要である

� 充分に考慮がなされていない包括的なモデルは、 “普通(basic)”とみなす

� 慎重に調整されているが、単純なモデルは“普通(basic)”とみなす 財務リスク � モデル・プラットフォームの設定が良好であれば、概ね“良好 (good)”とみなす

� 投資リターンのモデリングのための基礎となる分布の扱いが“good” と“basic”の差異を生んでいる 引受リスク � 小口損害、大口損害、キャット損害にモデルが分割されており、概ね “良好(good)”と評価される

� 保険サイクルや保険金、保険料のトレンドの反映がなされていない点に限界がみられる キャタストロフ・リスク � ほとんどの保険者がベンダーモデルに依存し、リスクが適切に反映されているかどうかの詳細な検証を行っている

� “良好(good)” と“普通(basic)”を差別化するのはこれらの詳細な検証の内容である リザーブ・リスク � 大多数が確率論的手法を用いており、概ね“良好(good)”と評価される

� データのクオリティが低いか、データに多大な調整を施した場合は “普通(basic)”評価となる オペレーショナル・リスク � オペレーショナル・リスクの算出は非常に困難である ほとんどの会社がファクター・ベースのアプローチに留まっており、その場合の評価は“普通(basic)”となる

� 内部の影響度調査や、オペレーショナル・リスクに関するデータベースを反映したモデルは “良好(good)”の評価を得ることが可能である 分散効果 � この点については、S&P モデルと保険会社の ECM モデルで最も差異が大きい

� したがって、リスクの依存性と資本の流用可能性について最も焦点が当てられた 出典: S&P

Evolving Criteria

10

A.M. BestののののERM対応対応対応対応 この 1年間、A.M. Best は、ERMの重要性を高め、格付けの枠組みの中での適用を明らかにしてきた。A.M. Bestは、追加格付け質問票(SRQ)の ERMセクションへの反応から判明した事項をまとめたスペシャル・レポートを発表した。さらに A.M. Bestは、格付けレポートにリスク管理のセクションを設け、会社のリスク管理能力を評価するための詳細なリスクプロフィールの特性を記載した。以下にこれらの詳細を述べる。

A.M. BestによるによるによるによるERMののののSRQへの反応への反応への反応への反応

A.M. Best は、年次の SRQに ERMセクションを追加し、2011 年 4 月には最初の業界の反応があった。その後、米国に関するスペシャル・レポートを発表し、業界の反応から判明した事項を明らかにした。他の地域に関するレポートはまだ発表していない。A.M.

Bestは、業界が全体としては、ERMの実施を進めていることを認めた上で、まだその道のりは長いと述べている。A.M Bestは、モノライン会社、剰余金が1,000万ドル以下の地域限定会社、余剰金が 100億ドル以上のマルチラインの国際的保険会社など幅広い会社の格付けを行っているため、これらの多様な母集団の中での ERMの状況を計測することは容易ではない。こうした背景があるものの、A.M. Bestはスペシャル・レポートの中でいくつかの興味深い点を指摘している: � 12%の会社が、チーフ・リスク・オフィサー(CRO)、もしくは ERM委員会を設けていないと答えている。このうち 62%の会社が、剰余金が

5,000万ドル以下の小規模会社である。A.M

Bestは、規模にかかわりなく、すべての会社がERM委員会を持つべきであるとの見解を示している。

� A.M Bestは、市場、信用、引受、オペレーショナル、戦略、流動性の各リスクに関して会社に潜在的な脅威となる最も大きなリスクを挙げるように求めているが、最近の金融市場の混乱にもかかわらず、15%の会社が流動性リスクの項目を設定していないと答えていることに大きな関心を示している。

� リスク・トレランス(許容範囲)を定義するよう求めたが、回答の“少なくとも 90%は大まかで一般論の域をでていない”ものであった。

� エコノミック・キャピタル・モデルを使用していると答えた会社のうち、93%が会社の重要なビジネスの決定に利用していると答えたものの、報酬額の決定に利用している会社は 27%に留まった。

Aon Benfield では、これとは別に 2011年 4月と2012年 4月の ERMに関する SRQ結果を比較する調査を行った。A.M. Bestの調査と比較ができるように対象会社の格付けと規模は A.M. Bestが行った調査と合わせた。各年度を比較すると、CROあるいは、ERM担当のシニア・オフィサーを置いている会社が増えているが、これは A.M. Bestの批判に対応したものであろう。また、ECMを利用している会社の割合やインフレの影響を予測している会社がわずかだが上昇していることもわかった。会社の剰余金規模(剰余金 5億ドル以上を大規模会社とみる)でみると、大規模会社では ECMを使用する会社、インフレの影響を予測する会社が大幅に増加する。会社がERMを進めるためにより大きなイニシアチブをとったためなのか、調査の回答に重きを置いた会社が増えたためなのかはわからないが、弊社の調査では、ERMの SRQには今年僅かな進展をみたのだが、A.M. Best はまだ業界が ERMの本来の実施に至るまでの道のりは長いとみているのではないかと思われる。

Aon Benfield

11

リスク管理とリスクリスク管理とリスクリスク管理とリスクリスク管理とリスクプロフィールプロフィールプロフィールプロフィールの評価の評価の評価の評価

ERMの SRQに関するレポートを発行し、改善すべき点を述べるとともに、A.M. Bestはその他さまざまな方法で ERMの重要性を高めてきた。A.M. Bestは従来から、ERM がバランスシートの強靭さ、業績、ビジネス・プロフィールに影響を与えることから、ERMを格付けプロセスの重要な部分と位置付けてきた。最近になって、A.M. Bestは、格付け決定を行う格付コミッティーのレビューの中で ERMのグレード分けを行うこととした。これらのグレードを公表する意図は現段階では持っていない。A.M. Bestは、格付けレポートを改訂し、リスク管理のセクションを設けることとした。格付けの理由と、ビジネス・プロフィールに続くセクションである。 リスク管理に関するセクションを格付けレポートの前の部分に持ってきたのは、A.M. Bestが ERMを格付けの中で重要とみなしている明らかな証拠である。また、アナリストがこのセクションの執筆を行うのは初めてで、これによりアナリストと会社経営陣の対話は当然増加すると思われる。

A.M. Best は、ERMはどの会社にも汎用的にあてはまるような課題ではないと繰り返し述べている。2012年 3月の年次会議(Review & Preview

Industrial Conference)で、A.M. Bestは、会社のリスク管理能力に関連してリスクプロフィールを評価する枠組みのアウトラインを示した。A.M. Bestが格付けする会社の範囲は広範なことから、ERMの能力と ERMに期待する内容は、会社のリスクプロフィールに関連した相対評価が行われる。リスク管理能力は、「極めて厳格(superior)」、「厳格(strong)」、「良好(good)」もしくは、「弱い(weak)」で評価され、会

社のリスクプロフィールは、「高位(high)」、「中位(moderate)」、「低位(low)」もしくは「最低位(minimal)」で評価される。ある会社のリスク管理能力は、リスクプロフィール(すなわち、リスクの高さ)を上回っている必要がある。この関係によって、リスク管理は格付けにとって、「格上げ要因(accretive)」、「中立要因(neutral)」または、「格下げ要因(dilutive)」となる。 この関係の透明性を高めるために、A.M. Best は、図表 8 に示した各分野について、リスクプロフィールの特性に関する固有のベンチマークを設定した。

A.M. Best はまた、それぞれの項目について、リスク特性が高い場合、普通の場合、低い場合の例を示した。A.M. Best は、定性的要因のいくつかは種目及び/あるいは地域によって変更する可能性があり、また時間と共に変更される可能性があると述べている。会社のリスクプロフィールは常に変化しているので、リスク管理の適切なレベルはその変化に先んじて設定されなければならず、そのプロセスは継続的でなければならない。

A.M. Bestは、それぞれのコンポーネントのスコアを合算してリスクプロフィール全体のスコアを決定するようなスコアリング・システムを採っていない。下記の項目は、ひとつのリスク特性のリスク度合いが、たとえその他の項目が「中位」あるいは「低位」の評価であっても、その会社のリスクプロフィールに関するA.M. Bestの全体的な意見に影響を与えることもあることから、必ずしも同じウエイトを持っているわけではない。これらの項目は会社のリスクプロフィールの評価、そして ERMへの期待内容を評価するためのフレームワークを提供するものと捉えるべきである。

図表図表図表図表 8: リスクリスクリスクリスクプロフィールプロフィールプロフィールプロフィールの特性に対するの特性に対するの特性に対するの特性に対するA.M. Bestの定性的ベンチマークの定性的ベンチマークの定性的ベンチマークの定性的ベンチマーク 種目 ボラティリティ 種目間の相関 流動性 保険証券の支払い限度額 商品 / 担保内容の変更 競争 規制 / 法制の環境 司法環境 投資 財務の柔軟性 経済的環境 集中 データの質 成長性 再保険の信用力 出再のレバレッジ 再保険プログラムの影響 出典: A.M. Best

Evolving Criteria

12

その他のその他のその他のその他のA.M. Bestの発表の発表の発表の発表

A.M. Bestは、現在 7つの規準改訂案を意見募集に付し、昨年中に、いくつかの格付け手法に関するペーパーを発表している。しかし、これらのペーパーは、A.M. Bestがその手法を継続的に見直し、改訂する一環としての現行規準のアップデートに過ぎない。格付けに影響を与えうる新規準あるいは改訂規準はない。より重要なのは、SRQに変更を加えたこと、そして格付けに影響を与えうる成長(増収等)の範囲に変更を加えたことである。

SRQへの変更は、キャタストロフ・エクスポージャーの分析に関するものであり、下記の項目を含む: � キャタストロフ・エクスポージャー/最大予想損害(PML)に関する“経営の考え方” � エクスポージャー分析が全世界を網羅しているという経営陣からの確認

� 再現期間 200年の損害見込み

� 様々な再現期間におけるアグリゲート・ベースの損害額(1 事故ベースに加えて) � PMLの感応度テスト

� 決定論的なロス・シナリオのテスト 上記の SRQキャタストロフ分析セクションは、2011年のキャタストロフ損害や、新たなハリケーンモデルの改訂(中でも RMSのバージョン 11は、多くの保険者の損害見込みを相当に増加させている)の発表を受けて行われたものである。エクスポージャーの分析手法や、Best の自己資本十分性レシオ(BCAR)への影響があるわけではないが、追加情報によってA.M. Bestは、保険会社のキャタストロフ管理状況を容易に把握することができるようになり、その会社がキャタストロフ・エクスポージャーの評価に変更を加えるべきかどうかの判断を下すために有用なものとなっている。

これとは別に、A.M. Bestは、市場での料率上昇を考慮して、BCARにおける増収チャージを考慮する閾値しきいちを引き上げた。2012年には、1年間の増収率の閾値を 7%から 9%に、3年間の増収率の閾値を6%から 7%に引き上げた。A.M. Bestは、証券件数の増加も評価の対象とするが、2012年にはこれらに変更は加えられず、1年間は 6%、3年間は 5%が引き続き適用される。 将来見通し将来見通し将来見通し将来見通し

2012年の残りの期間から 2013年にかけて格付け規準と ERMの進展に関する基本的な傾向は継続すると考えられる。格付け業者の規準は、業界の業績やマーケットの動向に呼応しつつ、透明性・具体性の向上に向けて進化してゆくだろう。こうした継続的な進化は、会社の ERM体制の進展にも歩調を合わせ、格付け評価全体の中での ERMの重要性が増加するだろう。エコノミック・キャピタル・モデルをより積極的に活用する会社が増え、格付け業者や規制当局はその結果を容易に精査することが可能となるだろう。業界が予期せぬ障害に出くわした場合(こうした障害が発生するのはこの業界では珍しいことではないが)、格付け規準と ERMの進展はその速度を増し、次の時代の“新たな標準”に素早く対応してゆくだろう。 地域的分析地域的分析地域的分析地域的分析 ローカル・マーケットに影響を与える地域のダイナミックスが常に存在する。2011年のキャタストロフは世界のほとんどの地域に影響を与えたが、格付け業者、規制当局の対応は地域でかなり大きく異なっている。以下のセクションでは、近い将来に重要な影響があると思われる項目に焦点を当てて、米国、ヨーロッパ、アジア太平洋地域での状況を分析してみる。

Aon Benfield

13

米国 再び試練の年を経験して、米国の損害保険会社は、弱含みの格付け環境の下にあった。格付け業者からは、引受利益を挙げるよう、プレッシャーを受けたが、現状は 4年続きの引受損失を示しており、2010/2011年だけでその額は 450億ドルに上る。2011年には米国中で多数のキャタストロフ損害が発生し、またこれがソフトマーケットの状況や、金利の低下と相まって、2年連続で、格下げが格上げを上回った。 格付けの傾向と業界の見込み格付けの傾向と業界の見込み格付けの傾向と業界の見込み格付けの傾向と業界の見込み 米国における主な業界のトレンド

� 地域的なキャタストロフ活動が活発であった地域的なキャタストロフ活動が活発であった地域的なキャタストロフ活動が活発であった地域的なキャタストロフ活動が活発であった: 過去のデータの分析によれば、2011年の激しい対流性暴風雨(SCS)の発生は、長期平均の 4倍に及んだ。さらに、15の州が過去最悪のSCSを直近の 10年で経験し、このうちの 10州では、最近 2年間で過去最悪の SCSを経験している。米国では、北東部にハリケーン「アイリーン」が上陸し、およそ 43億ドルの保険損害を出し、いくつかの地域限定保険会社のキャタストロフ管理能力が試されることとなった。こうしたキャタストロフの発生は、地域限定保険会社にその地域それぞれの状況に応じた影響を与えた。全体としてみれば 2011年の契約者剰余金(PHS)の減少幅は 2%に過ぎないが、PHSの10%以上の減少を記録した会社が保険会社全体の 17%に上っており、剰余金の減少が、一部の保険会社に偏って発生していることがわかる。

� 全体的な業績が格付け要因のカギとなる全体的な業績が格付け要因のカギとなる全体的な業績が格付け要因のカギとなる全体的な業績が格付け要因のカギとなる: 格付け変更のトリガーは、多くの要因(キャタストロフ損害、業績の悪化、資本基盤の脆弱化など)が相互に関連しているが、全体的な業績が格付け変更、特に格下げの主因である点は最近の例でも不変である。弊社の分析では、A.M. Bestの場合、最近 5年間の業績の悪化が A-からの格下げの最大の原因(23%)となっている。また、昨年度は、業績悪化が格付け変更のさらに重要な要因になったことが示されている。弊社の分析では、A-から B++に格下げとなった会社のコンバインドレシオの中間値は A-に格付けされる会社全体の中間値より 1年ベースで 17ポイント、5年ベースで 10ポイント高いことがわかっている。過去 5年間の格下げされた会社の測定規準をみると、業績が格付け変更に極めて重要な役割を果たしていることがわかる。 図表図表図表図表 9: 主な測定主な測定主な測定主な測定規準規準規準規準の中間値の中間値の中間値の中間値 —2007年から年から年から年から2012年の格下げ年の格下げ年の格下げ年の格下げ、格上げに関する調査、格上げに関する調査、格上げに関する調査、格上げに関する調査

セクターセクターセクターセクター

“A-” からからからから

“B++” へのへのへのへの 格下げ格下げ格下げ格下げ

(格下げのあった格下げのあった格下げのあった格下げのあった年年年年)

すべてのすべてのすべてのすべての“A-” 格付け会社格付け会社格付け会社格付け会社((((2012 年年年年 7 月月月月ままままでの実績)での実績)での実績)での実績)

“B++” からからからから“A-

” への会社独自への会社独自への会社独自への会社独自理由の格上げ理由の格上げ理由の格上げ理由の格上げ(格上げのあっ(格上げのあっ(格上げのあっ(格上げのあった年)た年)た年)た年) 会社数会社数会社数会社数 44 260 48 コンバインドレシオ (%)

120 103 91

5年間のコンバインドレシオ (%)

110 100 88 税引き前の

ROR (%)

-12 6 19 出典: Aon Benfield Analytics

� ERMERMERMERM 拡大拡大拡大拡大が予想されるが予想されるが予想されるが予想される: レポートのはじめに述べたとおり、A.M. Bestが ERMに再び焦点を当て、S&Pが ECM評価の第 1弾をヨーロッパで終えて米国へ移行していることで、ERMは間違いなく再度脚光を浴びることとなった。

Evolving Criteria

14

� 投資リターンの低迷投資リターンの低迷投資リターンの低迷投資リターンの低迷: 現在の投資利回りの低下が、保険会社の収益を圧迫している。10年物米国債の金利は今年に入り一度 1.5%を下回り、8月時点でも、1.7%に留まっている。おそらくさらに重要なことには、金利水準がかなり長期に低下プレッシャーを受けており、資本回転率からみても、損害保険会社の投資利回りへの影響は明らかである:米国損保の投資利回り(キャピタルゲインを除く)は、5年前と比べて 17.4%低下しており、総投資利回り(キャピタルゲインを含む)は 38.8%の下落となっている。

� リザーブの妥当性に関する継続的な関心リザーブの妥当性に関する継続的な関心リザーブの妥当性に関する継続的な関心リザーブの妥当性に関する継続的な関心: 4つの主要格付け業者のすべてが、様々な記事でリザーブの妥当性についての関心を継続的に示している。この関心は、ロングテールのコマーシャルライン(特に労災)に向けられており、最近の事故年度は長期にわたるリザーブの積み増しが必要ではないかと考えている。図表 10は、今年になって発表された各格付け業者のコメントをまとめたものである。 業界全体の数値をみると、過去 5つの連続する四半期でリザーブは好転しており、AIGが 2010年に行った 41億ドルのリザーブ強化の例外を除けば、業界は 13四半期連続してリザーブの好転を記録した。しかし、数値をよくみると、リザーブの余剰額は減少していることがわかる。Aon Benfield Analytics は、2012年のリザーブの好転は金額で 70億ドルから 100億ドルに上るが、今の情勢が続くと 1年少し先にはリザーブ好転が見込めない状況になると予測している。

図表 11 は、2012年 8月時点の主要格付け業者の業界アウトルックをまとめたものである。アウトルックは、格付け業者の短期的な格付け行動の方向性を反映している。例えば、コマーシャルラインのネガティブのアウトルックは、格付け業者が短期的にこのセクターの格下げが格上げよりも多くなると見込んでいることを示している。 図表図表図表図表 11: 11: 11: 11: 業界のアウトルック業界のアウトルック業界のアウトルック業界のアウトルック セクターセクターセクターセクター A.M. Best Fitch Moody’s S&P コマーシャルライン

ネガティブネガティブネガティブネガティブ 安定的 安定的 ネガティブネガティブネガティブネガティブ パーソナルライン 安定的 安定的 安定的 安定的 再保険 安定的 安定的 安定的 安定的

* 注: 2012年 8月 3日現在 出典: A.M. Best, Fitch, Moody’s, and S&P 業界アウトルックは、引き続き、「安定的」が「ネガティブ」を上回っている。直近 12か月の変化は、Moody’s が、コマーシャルと再保険セクターを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げたことである。再保険を「安定的」としたことですべての格付け業者のアウトルックが同じになったが、コマーシャルラインに関する Moody’sの動きはユニークである。Moody’s は、業界全体で料率や業績が安定的に推移していること、自己資本十分性が引き続き良好である点をその理由としている。 図表図表図表図表 10: リザーブの妥当性に関する格付け業者のコメントリザーブの妥当性に関する格付け業者のコメントリザーブの妥当性に関する格付け業者のコメントリザーブの妥当性に関する格付け業者のコメント 格付け業者格付け業者格付け業者格付け業者 コメントコメントコメントコメント

A.M. Best “A.M. Bestは、損害保険会社の正味支払備金(損害調査費用を含む)に関する不足額が、2011 年末で年末で年末で年末で 409億ドルに上る億ドルに上る億ドルに上る億ドルに上ると予測”

“労災労災労災労災がもっとも不足額が大きくなる”

Fitch …最も新しい年度のリザーブが悪化しており、リザーブのリザーブのリザーブのリザーブの積み立て積み立て積み立て積み立て状況が弱体化している状況が弱体化している状況が弱体化している状況が弱体化している。特に、最近、労。特に、最近、労。特に、最近、労。特に、最近、労災災災災のリザーブの悪化が増加している…

Moody’s 2012 年にはリザーブの好転は減少するだろうリザーブの好転は減少するだろうリザーブの好転は減少するだろうリザーブの好転は減少するだろう。最も新しい事故年度については、ほとんどの会社が、標準的なコマーシャルライン(労災と一般賠償労災と一般賠償労災と一般賠償労災と一般賠償)についてリザーブ不足となるだろう

S&P “ロングテールのコマーシャルラインロングテールのコマーシャルラインロングテールのコマーシャルラインロングテールのコマーシャルラインの最近のリザーブ・リリースは、特に最近の引受年度に関しては時期尚早であり、長期的にはリザーブの積み増しが必要となるかもしれない” 出典: A.M. Best, Fitch, Moody’s, and S&P

Aon Benfield

15

2012年の現在までの格付け活動は、米国損保会社が継続的に格下げ状況にあることを表している。2012年 7月 1日現在で、A.M. Bestは、45社を格下げし、格上げしたのは 18社である。S&Pに関しても状況は同様で、格下げが 6社、格上げは 1社であった。図表 12と 13に格上げと格下げの傾向を示した。 もう一つの興味深い傾向は、業績のボラティリティが高格付け会社に与える影響である。過去数年にわたって、A.M. Bestによって A+の格付けを得た会社は着実に減少してきた。過去 5年間、A++に格付けされる会社数はあまり変わっていないが、図表 14が示すとおり、A+の会社は、26%減少し、2007年の86社から 2012年には 64社になっている。A+格付けの 9%の会社が「ネガティブ」のアウトルックで、「ポジティブ」の会社の 2%を上回っていることから、将来もこの傾向は続くと思われる。

図表図表図表図表 12: A.M. Best の格の格の格の格上上上上げと格げと格げと格げと格下下下下げげげげ

出典: A.M. Best

図表図表図表図表 13: S&P の格上げと格下げの格上げと格下げの格上げと格下げの格上げと格下げ

出典: S&P 図表図表図表図表 14: A.M. Best のののの A++ とととと A+ 格付けの比較格付けの比較格付けの比較格付けの比較:

2007年と現在年と現在年と現在年と現在

出典: A.M. Best

Evolving Criteria

16

NAIC のリスクとソルベンシーの自己評価のリスクとソルベンシーの自己評価のリスクとソルベンシーの自己評価のリスクとソルベンシーの自己評価 ((((ORSA))))

2008年、NAICは、米国保険会社のソルベンシー規制に関する抜本的な見直しを開始した。このプロセスは、ソルベンシー近代化構想(SMI; Solvency

Modernization Initiative)と呼ばれる。NAICのリスクとソルベンシーの自己評価 (ORSA; Own Risk

and Solvency Assessment)の要件は、SMIがもたらした最も重要な成果であり、過去 4年間にわたって、さまざまなレベルの討議がなされ、発展してきた。米国での ORSAの要件は、保険コア・プリンシプル(ICP、訳注:保険監督者国際機構の定める保険監督の基本原則)のソルベンシー目的の ERMに合致するものである。これは保険会社にリスクの認識、定量化のために ERMの枠組みを要求するもので、保険会社が ORSAを定期的に実施することを求めている。NAICの目標は、2014年に開催される IMFの金融セクター評価プログラムで、この要件が認められるようにすることであるが、さらに早く導入することは可能である。 現在の ORSAのサマリー・レポートは、3つのセクションから構成されている: 1) 保険会社のリスク管理フレームワークの説明; 2) 保険会社のリスク・エクスポージャーの評価; 3) グループベースのリスクキャピタルとソルベンシー評価である。これらのセクションは、保険会社のリスクカルチャーとガバナンスを紹介し、重要な分野でのリスク選好度、リスクの上限、リスク許容範囲を示すものである。リスク評価は、現在どのようにビジネスが行われているかに加え、通常あるいはストレス環境下での定量的、定性的なリスク・エクスポージャーを示すものでなければならない。また、ソルベンシー評価見込みには、会社の経営トップが、今後 5年間での事業展開と資本ニーズへの対応をどのように行おうとしているかを示す必要がある。

現段階では、NAICは、5億ドル以上の元受保険料のある会社、あるいは(生保と損保の合算ベースで)10 億ドル以上の元受保険料のあるグループのみを、この ORSAの強制適用の対象として提案している。

2012年 8月までに ORSAにさらなる進展がみられた。2012年 6月 29日に発表された ORSAのモデル法によれば、以下の項目が導入された。

� 「リスク管理の枠組みの維持」が、求められる(以前は適用外であった) � ORSAのサマリー・レポートの提出:毎年 6月

20日までに年次報告の提出が必要。リスク管理の枠組みに責任を持つ責任者の署名が必要

� 保険コミッショナーに提出される情報の守秘義務:守秘義務条項が改訂され、保険コミッショナーは提出された文書や情報をコミッショナーの公的義務遂行の過程で起きた訴訟に関して使用することができるようになった 導入までに残された時間がまだあることから、ORSAはさらなる改訂が加えられると思われ、このテーマは、多くの会社の優先的な取り組み課題であり続けるだろう。

Aon Benfield

17

GAAP ((((米国企業会計基準米国企業会計基準米国企業会計基準米国企業会計基準)))) / IFRS ((((国際財国際財国際財国際財務報告基準務報告基準務報告基準務報告基準))))のコンバージェンスのコンバージェンスのコンバージェンスのコンバージェンス 保険契約の会計については、米国内でも世界的にも議論が続いている。FASB(財務会計基準審議会)は、一つの基準を出す目的で、IFRSとのコンバージェンスに向けて作業を続けてきた。しかし、2012年 6月現在で、FASBの議長は、両審議会は、明示的リスク調整や新契約費といった重要な差異についてコンバージェンスを達成することが困難であると述べている。FASBは、別の基準を発行したり、IFRSとのコンバージェンスを志向する代わりに、現行の GAAPを改善する道を選んだ。しかし FASBと IASBの両審議会は現在の懸案の課題の取り組みを続けることとしている。IFRSは、2012年の下半期に公開草案のアップデート版を発表するものと思われるが、最終的な基準は 2015年 1月 1日以前に発効することはなさそうである。 図表 15 は、IFRSの保険負債を計算するためのビルディング・ブロック(基礎的要素)である。 図表図表図表図表 15: 保険負債に関する保険負債に関する保険負債に関する保険負債に関するIFRSのアプローチのアプローチのアプローチのアプローチ 残余マージン 残余マージンは、契約責任が終了した時に保険者が得るであろう利益を定量化するもの。契約の開始時には利益の認識を行わない。 リスク調整 将来キャッシュフローの額やタイミングに関する不確実性の明示的な見込。IASBは、負債は明示的なリスク調整を含むべきと主張し、FASBは、リスクは黙示的に負債の計測の中で反映されるべきと述べている。 貨幣の時間的価値

貨幣の時間的価値に合わせてキャッシュフローを調整する際のディスカウント・レート。ディスカウント・レートは、その保険契約の負債の持つ特徴のみを反映するものとし、財務報告の期間が到来するごとに新たに見直しが行われる。 キャッシュフロー

保険会社が責任を完了する時に発生する、明示的で、偏りのない、確率加重平均された将来キャッシュフローのアウトフロー(インフローを差し引く)。会社は、契約責任の完了時までに予期されるキャッシュフローをすべての情報を考慮して予測する。 出典: IFRS

GAAPと IFRSの主要な差異は下記のとおりである:

� リスク調整リスク調整リスク調整リスク調整: IASBは、将来キャッシュフローの額やタイミングの不確実性、および契約開始時の利益認識を排除する額(残余マージン)には、明示的なリスク調整が必要だと主張している。FASBは、この考え方を否定し、代わりに複合マージンのアプローチを採ることを主張している。複合マージンは契約開始時には、将来キャッシュフローのアウトフローとインフローのそれぞれの現在価値の差額であるが、原則的に保険契約の開始時点では、会計上の利益認識を行わないこととしている。

� 金利金利金利金利: IASBは、保険契約は、残余マージンと複合マージンについて、金利の発生を考慮するとし、また契約当初にその金利がロックインされるべきと主張している。FASBは、どちらのケースでも金利は考慮しないと主張している。

� 保険料配分アプローチ保険料配分アプローチ保険料配分アプローチ保険料配分アプローチ (PAA): これは、契約期間が 1年以内の契約に対して適用される簡便法である。保険会社は、1年以内に保険金が処理されるのであれば、保険負債をディスカウントする必要はなく、負債測定に残余マージンを考慮する必要はない。また、契約が複雑なものでない限り、再測定は限定される。IASBは、この手法がビルディング・ブロック・アプローチを簡便化する合理的な手法であり、契約期間が 12ヵ月以内で、予測からかけ離れた変化が起きる可能性が低い契約に関して、この手法の適用を容認している。FASBは、同様な条件が整う場合、この PAA手法を使用することを保険会社に求める。FASBはまた、再保険に付した契約の場合、再保険に付した契約に適用したのと同じ方法で再保険資産を測定することを求めている。

� 契約費契約費契約費契約費: “契約段階での増分新契約費”、すなわち、新契約費や、自動更新手数料は、ビルディング・ブロック・アプローチのキャッシュフローに含まれる。その他の契約費は、発生時にすべて費用計上する。キャッシュフローに含めるべき新契約費について、FASBは、成立に至ったものだけに関する経費を反映するべきとし、IASB は、成立に至ったものもそうでないものも含めて反映すべきとしている。

Evolving Criteria

18

米国基準がどうなるか、あるいは米国の GAAPと IFRS の差異が将来どうなるのか、保険会社は会計基準の重大な不確実性に引き続き直面している。 今後の見通し今後の見通し今後の見通し今後の見通し ほとんどの格付け業者が米国保険業界の各セクターについて「安定的」のアウトルックを維持しているが、弊社は近い将来においては、この 1年ほどのペースではないにせよ、格下げが格上げを上回ると見込んでいる。2012年のハリケーン・シーズンは比較的平穏な場合でも、ほとんどの会社の業績は良くても小幅な利益に留まり、格上げの規準に合致することはできないだろう。行く先には、リザーブへの危惧が横たわっているが、もし格付け業者の予想が当たれば、格下げの要因となってくるだろう。同時に、保険会社が ORSA、会計上のコンバージェンス、2014年 12月の終了時期が近づく 2007年テロリスク保険延長法(TRIPRA)への準備を進めるに従い、規制、会計、法制の側面に会社がより焦点を当ててゆくことが予想される。

Aon Benfield

19

ヨーロッパ 欧州の保険者は外的要因によってもたらされた大きな課題に直面しており、社内の意思決定に際しても慎重を期している。ユーロ圏の危機は悪化し保険者の財務力を圧迫している。世界の一部の大手保険者に対しても格下げが行われた。ユーロ圏に困難な状況がある一方、ソルベンシーⅡが実施に向けて進んでおり、内部モデルに対する規制当局と格付け業者の監視が強まっている。以下は欧州の大手保険者が今日、主として何に時間を費やしているかについてその一部を取り上げたものである。

ユーロ圏は大きな格下げ圧力に直面しているユーロ圏は大きな格下げ圧力に直面しているユーロ圏は大きな格下げ圧力に直面しているユーロ圏は大きな格下げ圧力に直面している ユーロ圏を包み込むシステミックな危機は世界経済に脅威を与え続けており、格付け業者による信用力の見通しに暗い影を落としている。2011年と同様に2012年も市場は大きく混乱しており中期的に続くものと見られる。経済指標からは回復の兆候がまだ読み取れない。

2010年以降ユーロ圏経済はほとんど成長しておらず、今のところ 2012年の GDPも全体的に僅かな伸びに止まると見られている。二か国でユーロ圏GDPの 27%を占めるイタリアとスペインでは成長がマイナスになると見られている。図表 16はユーロ圏諸国の GDPの伸びを予測した表である。 図表図表図表図表16:ユーロ圏の:ユーロ圏の:ユーロ圏の:ユーロ圏のGDP成長予測成長予測成長予測成長予測 国名国名国名国名 2011 GDP 2012 GDP予測予測予測予測 成長率成長率成長率成長率 ユーロ圏ユーロ圏ユーロ圏ユーロ圏 GDPに対する割合に対する割合に対する割合に対する割合

Austria 301,308 311,424 3.4% 3.3%

Belgium 368,976 377,672 2.4% 4.0%

Cyprus 17,931 18,257 1.8% 0.2%

Estonia 15,973 16,951 6.1% 0.2%

Finland 191,571 195,981 2.3% 2.0%

France 1,995,335 2,061,845 3.3% 21.6%

Germany 2,570,800 2,644,772 2.9% 27.7%

Greece 217,812 206,116 -5.4% 2.2%

Ireland 156,438 159,358 1.9% 1.7%

Italy 1,580,220 1,571,407 -0.6% 16.4%

Luxembourg 41,980 42,525 1.3% 0.4%

Malta 6,393 6,623 3.6% 0.1%

Netherlands 604,016 609,782 1.0% 6.4%

Portugal 171,682 167,690 -2.3% 1.8%

Slovakia 69,059 71,884 4.1% 0.8%

Slovenia 35,639 35,643 0.0% 0.4%

Spain 1,073,383 1,062,674 -1.0% 11.1%

9,418,516 9,560,604 1.5% 出典: Eurostat, Europa.eu, Wikipedia

Evolving Criteria

20

政府の負債規模に対する懸念は続いており、ユーロ圏の 3分の 2の国では GDPに対する負債比率がマーストリヒト条約で取り決めた上限である 60%を超えている。もし政府が借り入れの返済を行えるのであれば高水準の負債も致命的とはならないが、経済は今も脆弱な環境に置かれ緊張状態が続いている。さらに、周辺国(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、およびスペイン)の債券市場は昨年好転の兆しをほとんど示さなかった。

スペインとイタリアの 10年物国債の信用力は落ち続け、利回りは危機的とされる 7%の水準に達し、一方、ギリシャ国債の利回りは一時急上昇した。国債利回りの上昇はこれらの政府が金融市場から締め出され、他のユーロ圏諸国にさらなる追加支援を求め、財政的な緊張がさらに広がるのではないかとの懸念を煽ることになる。図表 17は一部の国について 10年物国債利回りの 1年間の推移を示したものである。 図表図表図表図表17::::10年物国債利回りの年物国債利回りの年物国債利回りの年物国債利回りの12か月間トレンドか月間トレンドか月間トレンドか月間トレンド

出典: Financial Times ギリシャでは幸いに 6月の総選挙によって立ち直りに向けた最初のステップが採られることになり、ユーロ圏からの離脱という短期的リスクが幾分収まったが、ユーロ圏ソブリン債の格付けに対する引き下げ圧力は依然として大きい。ドイツ、オランダ、およびルクセンブルグに対する Moody’sの格付け「Aaa」のアウトルックは 7月に「ネガティブ」とされた。

Fitch、Moody’s、および S&Pは、欧州の指導者たちがユーロ圏全体で財政、金融、政治について一致団結できるような信頼性ある解決策をはっきり打ち出さない限り、図表 18に示されるように、昨年すでに大きく様変わりしたソブリン債の格付け環境は、引き続き厳しい状況に置かれるとの見方で一致している。

Aon Benfield

21

図表図表図表図表18:ユーロ圏諸国の格付け状況:ユーロ圏諸国の格付け状況:ユーロ圏諸国の格付け状況:ユーロ圏諸国の格付け状況

Fitch Moody’s S&P 国名国名国名国名 格付け格付け格付け格付け アウトルックアウトルックアウトルックアウトルック 格付け格付け格付け格付け アウトルックアウトルックアウトルックアウトルック 格付け格付け格付け格付け アウトルックアウトルックアウトルックアウトルック

Austria AAA 安定的 Aaa ネガティブ AA+ ネガティブ

Belgium AA ネガティブ Aa3 ネガティブ AA ネガティブ

Cyprus BB+ ネガティブ Ba3 格付け見直し中 BB+

格下げ方向の見直し中

Estonia A+ 安定的 A1 安定的 AA- ネガティブ

Finland AAA 安定的 Aaa 安定的 AAA ネガティブ

France AAA ネガティブ Aaa ネガティブ AA+ ネガティブ

Germany AAA 安定的 Aaa ネガティブ AAA 安定的

Greece CCC N/A C N/A CCC ネガティブ

Ireland BBB+ ネガティブ Ba1 ネガティブ BBB+ ネガティブ

Italy A- ネガティブ Baa2 ネガティブ BBB+ ネガティブ

Luxembourg AAA 安定的 Aaa ネガティブ AAA ネガティブ

Malta A+ 安定的 A3 ネガティブ A- ネガティブ

Netherlands AAA 安定的 Aaa ネガティブ AAA ネガティブ

Portugal BB+ ネガティブ Ba3 ネガティブ BB ネガティブ

Slovakia A+ 安定的 A2 ネガティブ A 安定的

Slovenia A ネガティブ Baa2 ネガティブ A ネガティブ

Spain BBB ネガティブ Baa3 格付け見直し中 BBB+ ネガティブ 注: 2012 年 8 月 15 日現在 出典: Fitch, Moody’s and S&P

S&Pがユーロ圏 15か国を弱含みのクレジット・ウォッチとすると発表し、その後これらのうち 9か国の格付けを下げた 2011年末から 2012年初めにかけ、ソブリン債の格付け環境は悪化の方向へと大きく移行した。ユーロ圏での政治、金融、通貨をめぐる問題が更に悪化し、システミックな緊張が高まったとして、S&Pはユーロ圏の 14か国のアウトルックを「ネガティブ」に据え置き、これは今後の格付け動向を示す最初の一波に過ぎないかもしれないと語った。

ドイツでは今年前半、短期国債がマイナスの利回り(投資家が資金の安全が守られるなら支払ってもいいとするコストを意味する)になるなど投資家にとっては安全な避難場所と考えられていたが、7月にMoody’sがオランダ、ルクセンブルグの格付けとともにドイツの「Aaa」格付けをネガティブ・ウォッチとし、格付け動向に変化が現れた。この動きはユーロ圏から派生したリスクは着実に積み重なり、最強の経済大国といえども今すぐにでも危機的状態の中に引きずり込まれる可能性があることを示唆している。

Evolving Criteria

22

保険業界への影響保険業界への影響保険業界への影響保険業界への影響 ユーロ圏の多くの保険者と世界経済はユーロ圏の債務危機による影響を受けている。保険会社、特に欧州に拠点を置く会社は、不動産、株式、社債、金融債とともに大量にユーロ圏の長期固定金利のソブリン債を保有している。 保険者は収益への大きな打撃と格下げの可能性を排除するため、投資ポートフォリオの再編に関して重要な決定をしなければならなくなった。保険者はさまざまな角度からユーロ圏の不安定な状況による影響を受け易いので、ソルベンシーの水準を守るためにその影響度合いを適切に管理する必要がある。Aon

Benfieldが行った分析によると、ユーロ圏周辺国の国債を直接的に保有している保険者は欧州で大規模な元受保険事業を行っている保険者に限定される。また保険者は、各国政府に対し巨額の貸し付けを行っている欧州銀行の株式を保有している場合には、ソブリン債に対しても間接的なエクスポージャーを抱えていることになる。 ユーロ圏でアセット・リスクが増大しているので、格付け業者は資本の適切性への影響度を見るために保険者のバランスシートについてストレス・テストを行った。A.M. Bestは今年の上半期に、秩序あるギリシャの再構築に向けて強力な施策が実行されるというシナリオから、ユーロ圏が全面的に崩壊し、金融市場が失墜するというシナリオまでの、深刻度を 5段階に分けたストレス・シナリオを作成し、同社が格付けしている欧州保険者の多くをテストした。その結果、このストレス・シナリオの下で、これら保険者の平均的な BCAR(A.M. Bestの自己資本十分性レシオ)は 70%下落し、それに基づいて格下げを行った。

Fitchもストレス・テストを実施し、他社の格付け動向と同様の結論に達した。 ユーロ圏負債のエクスポージャーへの監視の目が厳しさを増す一方で、保険者はソブリン債の格付けの上限にも縛られる。格付け事業者は国内保険者の財務力格付けにひとつの上限を設けており、保険者の格付けはソブリン債格付けより 1、2、あるいは3 ノッチ高くはなれるが、実際にはソブリン債格付けよりも上位の格付けが付くことはあまり一般的ではない。これは、格付け業者がソブリン債の信用リスクをすべての格付けの重要な参考事項とみているからである。即ち、歴史的に見ると良好な借り手であってもソブリン債のデフォルトによって直接、もしくは国内のマクロ経済環境が悪化したことによって間接的に破綻したことがあったからである。 規制当局の懸念規制当局の懸念規制当局の懸念規制当局の懸念 規制当局は現在のユーロ圏危機について懸念を表明している。「2011年欧州保険年金機構(EIOPA)金融安定レポート」のなかでソブリン債の信用リスクは最大のリスクとして位置づけられた。2012年上半期のレポートを見ても、ソブリン債の信用リスクは引き続き懸念材料の筆頭に挙げられている。金融市場のリスクは自然災害やプロパティといった伝統的な保険リスクより大きく、規制当局者は投資家や保険者と同様にこうしたマクロ経済環境の状態について明らかに不安を抱いている。図表 19は EIOPAがまとめた保険会社が抱えるトップリスクである。

図表図表図表図表19::::EIOPAによる保険による保険による保険による保険会社会社会社会社のトップリスク・ランキングのトップリスク・ランキングのトップリスク・ランキングのトップリスク・ランキング

2011 2012 ↑↑↑↑/↓↓↓↓

1 ソブリン債信用リスク 1 ソブリン債信用リスク -

2 信用リスク –企業及び家計 2 株式リスク ↑

3 株式リスク 3 長期化する低金利 ↑

4 長期化する低金利 4 信用リスク –銀行 新規

5 金利の急上昇 ; 債券価格の下落 5 信用リスク –企業及び家計 ↓

6 自然災害 6 プロパティ・リスク ↑

7 プロパティ・リスク 7 自然災害 ↓

8 為替リスク 8 為替リスク -

9 流動性リスク 9 流動性リスク - 出典: EIOPA

Aon Benfield

23

ソルベンシーソルベンシーソルベンシーソルベンシー ⅡⅡⅡⅡ ユーロ圏の債務危機が世界の経済ニュースの一面を飾る一方、ソルベンシーⅡの下で資本およびリスク管理要件が広範囲に変わりつつある。新たな規制はリスクに対する保険者の考え方を変え、効果的な内部資本モデルを構築できる保険者にとっては有利になると思われる。EIOPAが発表している現在のスケジュールによると、ソルベンシーⅡの最初の施行は 2014 年 1 月 1 日になると見られる。しかし、オムニバスⅡで提案されている移行措置によって短期間で資本要件を充足できない保険者のリスクが軽減される可能性があり、ソルベンシー資本要件(SCR)の完全達成やソルベンシー対策のためのハイブリッド手法の扱いなどソルベンシーⅡの重要な項目については最長 5年から 10年の移行期間が提案されている。

図表図表図表図表20::::EIOPAによるソルベンシーによるソルベンシーによるソルベンシーによるソルベンシーⅡⅡⅡⅡ導入の予定表導入の予定表導入の予定表導入の予定表

出典: EIOPA 格付け業者とソルベンシー格付け業者とソルベンシー格付け業者とソルベンシー格付け業者とソルベンシー ⅡⅡⅡⅡの関係の関係の関係の関係 規制当局や規制される保険者と同じく、格付け業者にも注目が集まっている。しかし、格付けは単純なソルベンシーの定量化の検証に止まらず、今後の財務パフォーマンス、経営と戦略の実現可能性、および将来にわたって資本の成長と持続性を促す他の経営上の諸課題についても考察する。ソルベンシーⅡは法規制による資本の重要性を大きく高めるが、高い格付けを維持し、世界の市場で競いたいと考える保険者は格付けを重視するとともに、ソルベンシーⅡの範疇で捉える以上に資本について根本的な考え方をもつ必要がある。

将来的な資本の考察将来的な資本の考察将来的な資本の考察将来的な資本の考察 マクロ経済が不安定であり、アンダーライティング・サイクルもソフト化しているので、事業戦略の実現性を高めるためリスク許容範囲、キャパシティおよび利益の関連を合理的に追求したいと考える保険者にはリスク軽減が大きな課題になりつつある。Fitchは「資産配分と資本市場の再編をもたらすソルベンシーⅡ」と題する最近の報告のなかで、保険者は資本ポジションを高めるため資産ポートフォリオを大きく変えるであろうと述べている。Fitchは長期債から短期債へのシフト、および格付けの高い社債と国債への移動が行われると見ている。保険者は高利回りの投資メリットを諦めながらも不安定な資産の弱点の方を抑えようとするかもしれない。

Evolving Criteria

24

S&Pと A.M. Bestは自ら確立した資本モデルを有する二つの格付け業者であるが、いずれの会社もソルベンシーⅡの出現によっても自社のモデルを変えるつもりがないことを表明している。しかしながら、資本とリスク管理を評価する際には、両社とも保険者が社内で行ったモデリング・プロセスを考慮すると語っている。S&Pは昨年、保険者の経済資本モデル(ECM)の評価を開始した。これは同社の ERM評価の次のステージになるもので「レベル 3のレビュー」と称している。このレビューは定量的、定性的なモデリングの考察と保険者が自社の ECMの枠組みに取り入れている特定リスクに集中して行われる。レベル 3のレビューは多くの点で、ソルベンシーⅡの内部モデルの承認を受ける際に保険者が求められるものであり、それらには次のようなものが挙げられる。

� 内部利用の実証

� モデルに関する方法論

� 文書化

� データ品質

� 前提条件とパラメーターの合理性と適用

� モデルのテストと妥当性検証(バリデーション)およびその結果

� モデリング・プロセスにおけるガバナンスと基準

将来の課題将来の課題将来の課題将来の課題 保険業界とマクロ経済要因が以前にも増してより密接に関連する状況になってきていることから、外部のステークホルダー達がリスクと資本管理に対しもっと高度な管理を期待することになり、ユーロ圏危機はその明確な実例のひとつである。欧州保険者は多くの格下げを目の当たりにしてその影響を感じている。リスク管理の実践は切れ目なく慎重に行われているが、規制当局や格付け業者など期待レベルを高めている外部のステークホルダーの影響もさらに受けることになる。 ユーロ圏立ち直りの兆候は短期的にも中期的にも明確ではないが、金融業界の中では資産の分散化がしっかりと図られている保険者が最も守られたポジションにあり、リスクそしてユーロ圏のデフォルト可能性に対しても最も対応力があると見られる。安定的な投資リスク戦略を採ればユーロ圏周辺国の資産に対するエクスポージャーを下げ、それらに伴うボラティリティを減少させることができる。再保険や代替的なリスク移転手段を使えば、資本要件となる保険の引き受けリスクを減じることができるので、結果的にアセット・リスクの増加を抑えることにつながる。 弊社はソルベンシーⅡによって規制上の資本が一層注目されてくると見ている。しかし、格付け業者の求める所要資本のレベルは今のところソルベンシーⅡで求められる水準よりも高いので、高い格付けを維持し、世界の保険市場で競い合いたいと願う保険者は、結局、格付け業者の資本要件を重視していかなくてはならない。 経済環境は大きく混乱し、規制環境にも大規模な変化が現れようとしているので、短期から中期の見通しとして欧州の保険者が大きな課題を抱えるのは確実である。リスクとリスク管理は複雑化し、拡大を続ける。従って、規制当局と格付け業者はリスクと資本の適切性について、更に高度な計量化手法が出現するよう期待を高めている。

Aon Benfield

25

アジア太平洋地域アジア太平洋保険市場の 2011年の主要テーマはキャタストロフ・ロスであった。そのマーケットの影響は未だ収まらない。この地域での過去に例を見ない規模の損害は保険業界のキャタストロフに対する認識を改めさせるとともに、様々な側面で市場にインパクトを与えた。例えば、資本力が脅かされ、料率が上昇し、保険者はリスクコントロールの改善に乗り出し、一部の再保険者がこの地域から撤退ないし引き受けを制限する一方、この市場に参入もしくは引き受けを拡大した再保険者もあった。格付け業者はネガティブな格付け方向性を打ち出し、保険者のキャタストロフ・リスク・マネジメントへの監視を強めた。一方、多くの規制当局は必要な法規制の強化に向け検討を始めた。アジア・太平洋地域の業界環境には大きな変化が訪れようとしている。 一方、成長の大きな可能性は揺らいでいない。アジア太平洋保険市場は多くの課題を抱えながらもダイナミックに成長し続けている。そうした市場の課題としては、成長を支えるため、また規制上必要とする資本を十分確保すること、多くの国に内在する大きなキャタストロフ・リスクへの対応、キャタストロフ・モデルおよびそれに必要なデータの改善、競争の激しい市場での事業展開、国際的な事業拡大のマネジメント、格付け業者の求める規準の達成、規制当局による監視強化への対応、が挙げられる。 キャタストロフ・リスクキャタストロフ・リスクキャタストロフ・リスクキャタストロフ・リスク

2011 年は、ニュージーランドの地震、東日本大震災、豪州の洪水、そしてタイの洪水による甚大なキャタストロフ・ロスを経験した。これらの災害はモデル化されていないペリルに対して保険業界が抱いていた懸念を改めて実感させ、液状化や事業中断リスクのような新たな問題も浮き彫りにした。これらの問題は保険者、再保険者と同様にキャタストロフ・モデルの販売会社に対しても課題を与えることとなった。モデルの販売会社はアジア太平洋地域で大きなコストを投入して、モデルの対象範囲を広げ、内容を充実させ、地域内ではまだ大きなギャップはあるものの、多くの国で活用できるモデルが出来上がっている。保険者は追加データを集め、自社のビジネスプランにキャタストロフ・モデルによるロス可能性の情報を盛り込まなければならない。再保険者はデータの質とキャタストロフ・モデルの活用方法について絶えず改善していく必要がある。またそれ以上に保険者はキャタストロフ・リスクに対する全体的な管理能力を高める必要があり、この中には集積リスクの管理、引受プロセスにおけるエクスポージャー把握システムの導入、再保険手配の最適化も含まれる。

経済ファクター経済ファクター経済ファクター経済ファクター アジア太平洋地域の経済成長は、ユーロ圏経済の不確実な状況と米国の景気回復力が弱いため鈍化しており、輸出への期待と投資意欲も鈍っている。S&Pはベースライン成長率を、中国 8%、インド6.5%、インドネシア 6.1%、ベトナム 5.3%、その他の国は 5%以下、と予測している。これらはほとんどが 1年前の予測より低くなった。一方、豪州、日本、ニュージーランド、およびタイでは自然災害の後に立ち直りを見せてきた。 経済が減速してはいるものの、アジア太平洋地域では他の主要経済圏よりは依然好調に推移している。この地域の開発途上国はインフラ・プロジェクトへの投資を持続しており、今の保険普及率が低い状況が、将来的には保険料拡大をもたらすことになる。 格付け業者の問題格付け業者の問題格付け業者の問題格付け業者の問題

2011年のキャタストロフによって A.M. Bestと S&Pは少数の保険者についてアウトルックをネガティブとし、格付けが引き下げられた会社も数社あった。格付けの引き下げ圧力に直面し、保険者は資本力の補強ないしリスク管理の強化(あるいはその双方)の方策を模索し始めた。 格付けを取得することの重要性はこの地域でもより広範囲に受け入れられ、認識されている。初めて格付けを取りたいと願う会社がアジア太平洋の発展途上の市場でも確認されており、既に格付けを持ちながら複数の格付けの取得を希望している会社もある。格付け業者も市場での教育と普及のために更に努力を重ねている。過去 1年間、A.M. Bestは複数のアジア太平洋地域の国々でセミナーを開催し、S&Pは自社の格付け規準の変更提案について議論するため、円卓会議や電話会議を開催し、市場訪問を企図している。Fitchと Moody’sも注目すべき活動を行っており、市場での関心度の高い話題について自社の見解を披露している。 アジア太平洋の保険業界については、前例のないキャタストロフ・ロスを被り、GDPの成長が小さくなったにもかかわらず、格付け業者は一般的に安定的な見方を採っている。S&Pはインドとタイ以外の国の損保業界に対するアウトルックを「安定的」としている。インドについては引受成績が依然悪いとして「ネガティブ」、タイについてはキャタストロフ・エクスポージャーが収益の足かせになるとして「ネガティブ」としている。A.M. Bestは、インドを高い損害率と引受成績の悪さから「ネガティブ」としたが、それ以外の国の損保業界のアウトルックは「安定的」とした。

Evolving Criteria

26

規制の動向規制の動向規制の動向規制の動向 キャタストロフ・ロスがあったがこの地域の法規制強化の動きを妨げるものではなかった。ソルベンシー要件を強化するという傾向は維持されており、香港が 2011年 5月にリスク・ベース・キャピタル(RBC)の採用を検討すると発表し、中国は 2012年 3月に第 2世代となるソルベンシー制度の実施に向けた工程表を発表した。タイでは RBC規制が 2011年 9月に始まり、施行は洪水によっても延期されなかった。日本のソルベンシー規制は、再保険に関するソルベンシーⅡとの同等性が EIOPA から認められた。さらに、豪州、香港、シンガポールなどアジア太平洋圏の数か国は欧州委員会に対し、自国の規制をEUのソルベンシー規定の移行措置と同等のスキームであると見做すよう要請している。 規制を巡る最新状況は市場によって異なるが、ほとんどすべてのケースで規制強化の方向に向かっている。これらにはより高度になる RBCの尺度、最低資本金の引き上げ、国際財務報告基準の採用、キャタストロフ・ロス対策の強化、ERM、および支払備金のアクチュアリー的検証と監査が含まれる。

2011年のキャタストロフが起きたことを受けて、法規制面での一定の動きがあった。第 1に、東日本大震災の結果、日本は地震保険制度を改訂し、保険会社の支払い限度と政府の負担額を引き上げて全体のキャパシティを拡大した。第 2に、大洪水のあと、タイの規制当局は RBCの規制を緩和し、国内の保険者が洪水損害によって受けた財務的な難局を克服するのを支援するために適用免除の措置を採った。しかしタイは一方では RBC 要件を推進している。第 3に、ニュージーランドでは、キャタストロフ・リスクに備える資本基準を導入しようとしている時に地震が起きたが、地震後この基準が制定された。キャタストロフ・リスクの資本要件は最終的には 1,000年に一回の地震による保険損害予測に基づいたものになるであろう。 以下は 2012年 7月末までの過去 1年間にアジア太平洋諸国で見られた重要な規制改革の概要である。

オーストラリアオーストラリアオーストラリアオーストラリア

� 2009年初めから豪州健全性規制庁(APRA)が取り組んできた「生命・損害保険の資本レビュー」は順調に進んでおり、様々な健全性基準、意見書、討議資料が公表されている。APRAは残りの最終的な健全性基準を報告書フォームと指示文書とともに 2012年 10月までに発表する予定である。改訂される資本のフレームワークは 2013年 1月 1日から発効し、2013年第 1四半期から最初の報告が始まる。

� APRAは保険者とレベル 2の保険グループに対する「保険引受集積リスクチャージ」の導入日を、実施上の問題点があったために 2014年 1月 1日まで延期した。しかしながら、APRAは各保険者に対し 2013年 1月 1日から複数回のイベントによる損害額見込みを計算し、保険者が 2014年 1月 1日までに同金額を完全に充足しうることを確実にするよう、これを自己資本充実度評価プロセスに含めるよう求めることになる。複数回のイベントをカバーできる金額は再現期間を 10年とするロスの 3回、もしくは再現期間を 6年とするロスの 4回分に対するそれぞれの正味ロス保有額(いずれも責任準備金における異常災害引き当て分を控除)のいずれか大きい方となる。 中国中国中国中国

� 中国保険監督管理委員会(CIRC)は再保険に関して新たな規制を発表した。主な内容は次のとおりである: – 年間の正味保険料は資本金の 4倍を超えないこと

– すべての再保険取引はアームズ・レングス・ルールに則って行い、税金対策のために行ってはならない

� CIRCは 2012年 3月 29日に中国で新たなソルベンシー規制制度を設ける計画について通達を出した。新制度は以下の目標を目指している: – 中国固有の保険業界発展のニーズに鑑みて国際基準に匹敵する新制度を創設する

– ERMを推進し、保険者の資本管理能力を高める

– 中国保険業界の堅固な基礎づくりを行う

Aon Benfield

27

新制度の草案は 2014年末までに提出される見込みで、その後、保険者との議論や意見集約を経て2015年ないし 2016年に施行されるであろう。

� 2012年 4月に CIRCは「損害保険のロスリザーブに対する遡及分析の手法」を発表した。CIRCは保険者に対し直近の情報を使って過年度の財務報告書のリザーブ額を検証するよう求めている。この分析はリザーブを設定する際の推計やプロセスに誤りがなかったかどうかを明らかにすることを意図しており、今後のリザーブの算定に役立てようとするものである。

� 2012年 5月 1日に新法が可決され、CIRCの認可を前提として外国保険者が強制保険である自賠責保険の引き受けを行えるようなった。これは市場開放を目的として行われた。

� 2012年 5月 4日に農業保険規制に関する草案が提出された。農業保険の安定的な発展を促進することを目的としている。

� 2012年 6月に CIRCは新規制を制定し、保険仲介業者の市場参入への壁をかなり高くした。今後地域限定の保険仲介業者の設立は認めない方針で、設立のための申請受理も休止する。

� CIRCは保険者に対して投資ルールに関する多くの新たな措置を発表した。これは中国が広範囲な金融改革を推進するなかで、保険セクターを強化する動きと見られている。

� CIRCは国有化の色彩が強い保険業界に対する民間の投資を促しサポートするガイドランを発表した。金融セクターにおける民間資本の規制緩和の最新の動きとなる。

� CIRCは 2012年 7月に新しい規制となる「ソルベンシー・マネジメント強化の通達」を出し、保険者に対し、以下の四つの事項を中心として、ソルベンシー・マネジメントを強化するよう求めた。

– ソルベンシー・マネジメント機能の構築

– 資本構築プランの準備

– 短期的なソルベンシー予測と必要があれば改善計画の準備

– 説明責任体制の確立

インドインドインドインド

� 2012年 1月 3日、保険規制開発機構(IRDA)はすべての損害保険者と再保険者に対し、「資産負債管理のフレームワーク」に関する新たなガイドランを発表した。また保険者向けのストレス・テストの最低要件についても IRDAによって発表された。

� 2012年 1月 27日に IRDAは保険者に対し、テロリストへの資金提供やマネーロンダリングのリスクが大きいと見られる国については、「マネーロンダリング防止とテロ金融支援禁止」のガイドラインに沿って詳細なデューデリジェンスを行う努力をするよう通達を出した。

� 2012年 5月に、発展途上のインド国内の保険業界にとって必要となる国内の保有キャパシティの引き上げを目指して、IRDAはリスクの最低保有限度額の設定を行い、10年以上事業を続けている保険者は 30%以上の保険料を出再できないと規定した。営業期間が 10年未満の保険者は 50%の保有を義務付けた。これまでは再保険に関する限度額の設定はなかった。

� インド政府は長年の懸案である外国資本による保険会社への直接投資の限度を 26%から49%へ引き上げる提案を延期した。恐らく 2014年の総選挙のあとまで遅らせるものと見られる。これによって、自国のみならずインド国内でもすでに他の規制変更の影響を受けている外国保険者はさらにインドから撤退していくと見られる。

� 2012年 7月に IRDAは国内でマイクロインシュアランスを成長させるため、この分野のガイドラインを設ける計画であると発表した。

Evolving Criteria

28

日本日本日本日本

� 金融庁(FSA)は保険規制について多くの改訂を行った: – 土地の評価が入る場合のソルベンシー・マージン計算の変更

– 金融庁検査における検査評定制度の導入。この評定制度は、保険者と検査官の間での論議を促し、今後の検査頻度、範囲および深度に反映され、金融機関に対する監督行政の透明性を高める目的で導入された。

– 保険者に課されていた資産運用比率規制の撤廃

– 航空保険、原子力保険、自賠責保険、家計地震保険の認可申請書の簡素化

� 東日本大震災の経験に基づき、地震保険に関する政府の再保険スキームの見直しを行うためプロジェクト・チームが発足した。

� EIOPAは日本のソルベンシー基準について、再保険だけに限定してソルベンシーⅡとの同等性を認めた。その結果、ソルベンシーⅡが最終的に導入されても、欧州経済領域(EEA)の出再者が日本の再保険者に出再している場合には追加資本を要さない。この同等性が認められたことによって、EEA内の保険子会社で日系ビジネスの引き受けを行い日本の本社に出再している日本の保険者にとっては特に好都合である。 ニュージーランドニュージーランドニュージーランドニュージーランド

� 2011年 11月にニュージーランド準備銀行(RB)は損害保険事業に対する最終的なソルベンシー基準を公表した。ソルベンシー基準はリスク・ベースとし、各保険者のソルベンシー資本が事業規模とポートフォリオに対して適切な水準にあることを意図している。地震発生時にはまさにキャタストロフ・リスクに対する資本基準を導入するところであった。この基準は現在導入されている。RBはプロパティ保険者のキャタストロフ・リスク資本要件を、1000年に 1度の地震または地震以外のペリルについて 250年に 1度のイベントによる損害額のいずれか大きい額に対する正味保有損害額(1回の復元再保険料のコストを加える)とするよう改訂した。

� 大地震による予測損害を計算する場合、キャタストロフ・リスク資本の計算対象となる予測保険損害額は 2015年 9月 7日以前に開始する財務報告年度については、保険免許を付与される前に保険者が設定していたキャタストロフ再保険カバーの最大額もしくは再現期間 500年の災害ロスのいずれか大きい額に基づく。その後、対象とするロスの再現期間は、2015年 9月 8日から 2016年 9月 7日の間に始まる事業年度については 750年、2016年 9月 8日以降に開始する事業年度については 1000 年となる。

� プロパティ保険を引き受けない保険者のキャタストロフ・リスク資本は、1 リスクの最大保有金額の 2倍に 1回の復元再保険料の金額を加えた額となる。 フィリピンフィリピンフィリピンフィリピン

� 金融庁と主要な保険者との間で、資本規模の引き上げに際し 4年間の猶予期間が与えられることが合意された。新たな指令が承認され、現在の生損保の最低払込資本金は 2014年以降 1年おきに引き上げられ、2012年の最低払込資本金 2億 5,000万ペソ(600万米ドル)は2020年に 10億ペソとなる。さらに、再保険者に対しては 2020年までに 20億ペソとすることが求められ、マイクロインシュアランスだけを営む保険者の最低払込資本金は 5億ペソとなった。しかし、合併や統合最中の保険者あるいはリスクベースキャピタル(RBC)の 150%の基準を満たす会社にはこの資本要件の適用が先送りされるかもしれない。

� フィリピンの予算管理省は保険業界に対する管理と監視機能の改善に向け保険委員会の組織改編案を了承した。

Aon Benfield

29

シンガポールシンガポールシンガポールシンガポール

� 2012年 2月 17日にシンガポール金融監督局(MAS)は保険者をグループ単位で監督するコンサルテーション・ペーパーを出した。MASはグループ単位での監督の枠組みをさらに強めることによって監督業務を強化したい考えであり、グループ単位の監督に関する保険監督者国際機構(IAIS)の国際基準に合致させようとしている。

� 2012年 2月 22日、MASはコーポレート・ガバナンスの枠組みを国内のすべての保険者と再保険者に広げるためにコンサルテーション・ペーパーを出した。この文書では保険会社の取締役、執行役員、および従業員の資格剥奪ルールの導入も提案している。

� 2012年 3月 27日、「2004年保険(評価と資本)規則」における以下の規定が改訂され、翌 3月28日より施行された。

– 取引信用保険、ポリティカル・リスク保険、および住宅ローン保証保険に関する規制要件の改訂

– リスクベースキャピタルのフレームワークにおける修正金融資産に関する改訂

– 土地と建物の評価の明確化

– 未確定補償金額の引当控除の明確化

� MASは 2012年 5月 2日にコーポレート・ガバナンス規定の改訂を発表した。主な変更は、取締役の独立性、取締役会の構成、取締役の研修、取締役の兼務、代理取締役、報酬の実態と公開、リスク管理、および株主の権利と役割に関するものである。改訂された規定は 2012年11月 1日以降に開始する事業年度のアニュアル・レポートから適用される。

� 2012年 6月 22日に MASは保険事業のRBCフレームワークの見直しに関し、コンサルテーション・ペーパーを出した。これは RBCフレームワークがカバーするリスクの対象範囲と感応度を全体的に改善するとともに、MASが介入するソルベンシー・レベルをより明確に規定することを目指したものである。また、保険者のERMの実効性を高めることも目指している。しかし、この見直しは現在のフレームワークを大きく変えることにはならないと見られている。 将来の見通し将来の見通し将来の見通し将来の見通し アジア太平洋地域は保険者、再保険者双方にとっては大きなチャレンジと機会を伴った広大で多様性に富む市場である。この地域の強い経済成長と広がりつつある保険の普及は保険者と再保険者に多くの新たなチャンスを作り出している。 オーストラリア、ニュージーランド、および日本のような先進市場では、最近の大規模な自然災害がキャタストロフに伴ういろいろな問題、例えばモデル化されていないペリルに始まり、ロスに対する再保険市場の反応に至る諸問題に目を向けさせた。発展途上の市場でもキャタストロフの問題は重要であるが、さらに、急速に展開する規制要件やダイナミックな経済環境にも注目が集まっている。規制当局は規制要件強化に向けた取り組みを続け、また格付け業者の影響も大きくなりつつある。それゆえに、キャタストロフ・エクスポージャーの推計を含み資本要件の定量化への関心度が高まることは驚くことではない。

Insurance Risk Study

30

結論 保険業界はダイナミックな業界であり、今日我々は世界でも、また地域的にも数多くの様々な問題が渦巻いているのを目にすることができる。世界的にみると保険業界はキャタストロフ・ロスそして格付け業者の強まる要求から受けるストレスに対応している。地域的には各地の規制当局から資本の強化、資本モデルそして ERMを求められ、また国内の経済環境にも対応していかなくてはならない。それにもかかわらず、保険業界はソフトな市場サイクル、甚大なキャタストロフ・ロスをこれまで乗り越えてきており、新たな規準に順応していくことも経験している。格付け業者と規制当局は保険者の規模や複雑性のいかんにかかわらず、リスク管理の重要性を強調し、すべての保険会社にリスク管理のさらなる取り組みを求め続けるだろう。再保険は保険者がキャタストロフ・エクスポージャー、資本要件、収益の不安定性、そしてリスク許容範囲の設定に取り組む上で、価値あるリスク管理ツールである。 将来についてみると、保険者は絶えず変化し続ける環境の中で複雑な業界を導いていくであろう。保険者はリスク管理と資本管理のバランスをいかに取るかついて考える。業界のリスク管理はすでにしっかり出来上がっており、しかもまだ改善を続けている。しかし、資本管理についてはいまだ課題があり、保険者は求められる以上の速さで資本を増やし続け、ROEへのプレッシャーになっている。保険者は再保険を、成長機会をサポートするための、あるいはコアとなる種目以外のビジネスのボラティリティを減じ、期待されるリターンの実現に資するための資本形態とみている。低金利環境へ対応し、ユーロ圏危機のような他のマクロ経済的な危機を乗り切ることを学ぶことは依然として将来への課題である。ハードマーケットは近い将来には訪れそうにないが、ニッチの領域、新興市場、革新的な商品には成長の機会が秘められている。再保険は会社の成長や新種目への拡大、新たな地域への進出の一助となり、またそうした機会に付随するリスクの軽減に役立てる。しっかりとした ERMを持つことは成長分野を評価する上で重要な役割を果たしていく。

About Aon Benfield Aon Benfield, a division of Aon plc (NYSE: AON), is the world’s leading reinsurance intermediary and full-service capital advisor. We empower our clients to better understand, manage and transfer risk through innovative solutions and personalized access to all forms of global reinsurance capital across treaty, facultative and capital markets. As a trusted advocate, we deliver local reach to the world’s markets, an unparalleled investment in innovative analytics, including catastrophe management, actuarial and rating agency advisory. Through our professionals’ expertise and experience, we advise clients in making optimal capital choices that will empower results and improve operational effectiveness for their business. With more than 80 offices in 50 countries, our worldwide client base has access to the broadest portfolio of integrated capital solutions and services. To learn how Aon Benfield helps empower results, please visit aonbenfield.com.

© Aon Benfield Inc. 2012.

All rights reserved. This document is intended for general information purposes only and should not be construed as advice or opinions on any specific facts or

circumstances. This analysis is based upon information from sources we consider to be reliable, however Aon Benfield Inc. does not warrant the accuracy of the data or

calculations herein. The content of this document is made available on an “as is” basis, without warranty of any kind. Aon Benfield Inc. disclaims any legal liability to

any person or organization for loss or damage caused by or resulting from any reliance placed on that content. Members of Aon Benfield Analytics will be pleased to

consult on any specific situations and to provide further information regarding the matters.

お問い合わせ先 For additional information on this analysis or our analytical capabilities, please contact your local

Aon Benfield Broker or a member of the Aon Benfield Analytics team, including:

Global

Kelly Superczynski

Head of Global Rating Agency Advisory

+1 312 381 5351

[email protected]

U.S.

Patrick Matthews

Head of U.S. Rating Agency Advisory

+1 215 751 1591 [email protected]

EMEA

Marc Beckers

Head of Aon Benfield Analytics, EMEA

+44 (0)20 7086 0394

[email protected]

APAC

Rade Musulin

COO, Aon Benfield Analytics, APAC

+61 2 9650 0428

[email protected]