Ⅰ.総 説 - AIST: 産業技術総合研究所 · Ⅰ.総 説 1.概 要 ......

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Ⅰ.総

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Ⅰ.総 説

産 業 技 術 総 合 研 究 所

(1)

Ⅰ.総 説

1.概 要

任 務:

独立行政法人産業技術総合研究所(以下、「産総研」という。)は、平成13年4月の発足以来、旧工業技術院時代の

研究所単位の研究活動を統合して、今後の産業技術シーズとなる大学等の基礎的研究の成果を民間企業が行う製品化

につなぐために出口を見据え基礎から製品化に至る連続的な研究(「本格研究」)を一貫して推進し、我が国のイノベ

ーション創出に大きく貢献をしてきた。また、同時に、研究所内の資源配分を旧工業技術院の枠組みにとらわれずに

適化し、社会的、政策的な研究ニーズに応じて機動的かつ柔軟に研究組織の廃止又は新設を行う等の適時、かつ、

適確な見直しを行い、イノベーション創出と業務の効率化を両立させるよう努めてきた。

このような取組により、これまでに管理費を削減するなどの効率化を図る一方で、第1期、第2期中期目標期間にお

ける特許や計量標準等の目標を達成するとともに、国際的な研究開発能力の指標である論文被引用件数についても高

い成果を挙げてきた。

第3期は、近年の技術の高度化、複雑化により基礎的研究と製品化研究の間に存在する技術課題が増大し、基礎的

研究の成果を製品化につなぐという産総研の機能がこれまで以上に重要とされる中、政府として実現を目指している

「課題解決型国家」に貢献するため、「21世紀型課題の解決」「オープンイノベーションハブ機能の強化」を大きな柱

に位置づけて、重点的に研究開発等に取り組む。

「21世紀型課題の解決」への取組として、経済と環境を両立する「グリーン・イノベーション」の推進のため、太

陽光発電等の低炭素社会実現に貢献する技術等を開発するとともに、国民生活向上のための「ライフ・イノベーショ

ン」の推進のために、創薬、医療、介護を支援する技術等の開発を行う。また、産総研の優位性を活かし情報通信技

術、材料、部材技術等の革新的な技術開発を行う他、地域においても、地域ニーズを踏まえた国内 高水準の研究開

発を行う。さらに、計量標準の充実及び高度化、地質情報の整備等とともに、新規技術の性能及び安全性評価、国際

標準化等により、産業や社会の「安全・安心」を支える新時代の産業基盤の整備を行う。

「オープンイノベーションハブ機能の強化」として、産学官が一体となって研究開発や実用化、標準化等を推進す

るための「場」を産総研が提供する。産総研施設の外部利用、地域の中小企業等やアジア等との連携を含め、オープ

ンイノベーションのハブとなるための新たなイノベーションシステムを構築する。また、我が国の産業技術の向上に

資することができる人材を社会に輩出するため、ポスドク等の若手研究者の育成や中小企業等の企業研究者の受入れ

等によりイノベーティブな人材養成を推進する。

産総研は、上記の取組を実施するにあたり、例えば「グリーン・イノベーション」分野での太陽光発電技術等や

「ライフ・イノベーション」分野での生活支援ロボット等、産総研が第1期、第2期中期目標期間を通じて蓄積してき

た実績を更に発展させる形で、取り組む。また、産総研が果たすべき社会における役割を強く認識し、我が国社会の

一員として、また各研究拠点が設置されている地域社会の一員として、社会に開かれ、社会で活用され、社会ととも

に歩むことを通じて、世界をリードする研究成果等を創出することにより、人類の持続的成長に大きく貢献する。

組 織:

産業技術総合研究所は、平成17年度に非公務員型の独立行政法人へ移行したことに伴い、柔軟な人材交流制度を構

築するなど、そのメリットを 大限活用することにより組織のパフォーマンス向上を図っているところである。平成

22年10月には組織及び業務体制の見直しを行い、研究開発の中核をなす研究推進組織と、研究開発の運営業務に携わ

る事業組織・本部組織で構成する新しい体制へと移行した。

研究推進組織としては、「研究ユニット」、「研究企画室」、「特許生物寄託センター」、「地質調査管理センター」、

「地質標本館」、「計量標準管理センター」を設置した。このうち、「研究ユニット」には、時限的・集中的に重要テ

ーマに取り組む「研究センター」、中長期戦略に基づき継続的テーマに取り組む「研究部門」、研究センター化を目指

して分野融合性の高いテーマ等に機動的・時限的に取り組む「研究ラボ」の3つの形態がある。また、事業組織とし

て、「東京本部」、「北海道センター」、「東北センター」、「つくばセンター」、「臨海副都心センター」、「中部センター」、

「関西センター」、「中国センター」、「四国センター」、「九州センター」を、本部組織として、「企画本部」、「コンプ

ライアンス推進本部」、「イノベーション推進本部」、「研究環境安全本部」、「総務本部」、「評価部」、「広報部」を設置

した。

総 説

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平成23年3月31日現在、常勤役員13名、研究職員2,369名、事務職員688名の合計3,070名である。

沿 革:

① 平成13年1月

中央省庁等改革に伴い、「通商産業省」が「経済産業省」に改組。これにより工業技術院の本院各課は産業技術

環境局の一部として、また工業技術院の各研究所は産業技術総合研究所内の各研究所として再編された。

② 平成13年4月

一部の政府組織の独立行政法人化に伴い、旧工業技術院15研究所と計量教習所が統合され、独立行政法人産業技

術総合研究所となった。

③ 平成17年4月

効率的・効果的な業務運営を目的とし、特定独立行政法人から非公務員型の非特定独立行政法人へと移行した。

産業技術総合研究所の業務の根拠法:

① 独立行政法人通則法 (平成11年7月16日法律第103号)

( 終改正:平成21年5月29日(平成21年法律第41号))

② 独立行政法人産業技術総合研究所法 (平成11年12月22日法律第203号)

( 終改正:平成19年5月11日(平成19年法律第36号))

③ 独立行政法人通則法等の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令

(平成12年6月7日政令第326号)

④ 独立行政法人産業技術総合研究所の業務運営並びに財務及び会計に関する省令

(平成13年3月29日経済産業省令第108号)

主務大臣:

経済産業大臣

主管課:

経済産業省産業技術環境局技術振興課

産業技術総合研究所の事業所の所在地(平成23年3月31日現在):

① 東京本部 〒100-8921 東京都千代田区霞ヶ関1-3-1

② 北海道センター 〒062-8517 北海道札幌市豊平区月寒東2条17-2-1

③ 東北センター 〒983-8551 宮城県仙台市宮城野区苦竹4-2-1

④ つくばセンター 〒305-8561 茨城県つくば市東1-1-1(代表)

⑤ 臨海副都心センター 〒135-0064 東京都江東区青海2-41-6

⑥ 中部センター 〒463-8560 愛知県名古屋市守山区下志段味字穴ケ洞2266-98

⑦ 関西センター 〒563-8577 大阪府池田市緑丘1-8-31

⑧ 中国センター 〒739-0046 広島県東広島市鏡山3-11-32

⑨ 四国センター 〒761-0395 香川県高松市林町2217-14

⑩ 九州センター 〒841-0052 佐賀県鳥栖市宿町807-1

産 業 技 術 総 合 研 究 所

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2.動 向

産総研の分野別年間研究動向の要約

Ⅰ.環境・エネルギー分野 1.分野の目標 産総研で重点的に取り組んでいる「グリーン・イノベーションの推進」において、環境・エネルギー分野は大き

な役割を担っている。本研究分野では「グリーン・イノベーションの推進」に向けて、(1) 再生可能エネルギーの

導入を拡大する技術の開発、(2) 省エネルギーのための技術開発、(3) 資源の確保と有効利用技術の開発、(4) 産

業の環境負荷低減技術の開発、(5) グリーン・イノベーションの評価・管理技術の開発、の5項目の重点戦略を策

定し、これに沿った研究開発を実施している。 (1) 再生可能エネルギーの導入を拡大する技術の開発

低炭素社会の構築に向けて、枯渇の心配がない再生可能エネルギーの導入拡大が必須とされている。本研究

分野では、再生可能エネルギーを 大限に有効利用するために、太陽光発電や風力発電の高性能化・高信頼性

化やバイオマスからの液体燃料製造などに関する技術開発を進めている。 (2) 省エネルギーのための技術開発

省エネルギーは、温室効果ガス削減に直接的かつ早期の効果が期待されている。本研究分野では、エネルギ

ーを高効率で利用するための高性能蓄電デバイスや燃料電池などの技術開発、省エネルギーのためのエネルギ

ーマネジメントシステムなどの技術開発に取り組んでいる。 (3) 資源の確保と有効利用技術の開発

物質循環型社会を実現するためには、バイオマス資源や鉱物資源など、多様な資源の確保とその有効利用が

不可欠。本研究分野では、バイオマスなどの再生可能資源を原料とする化学品や燃料を製造するプロセスの構

築と高度化を進めている。また、枯渇性資源である石炭やメタンハイドレートなどの化石資源やレアメタルな

どの鉱物資源を有効に利用する技術やリサイクル技術などの開発を進めている。 (4) 産業の環境負荷低減技術の開発

産業分野での省エネルギー、低環境負荷を実現するためには、各産業の製造プロセスの革新が必要である。

本研究分野では、化学品等の製造プロセスにおける環境負荷物質排出の極小化や、分離プロセスの省エネルギ

ー化を目指す、グリーン・サステナブルケミストリー技術の開発を進めている。また、様々な産業活動に伴い

発生した環境負荷物質の低減と修復に関する技術の開発を進めている。 (5) グリーン・イノベーションの評価・管理技術の開発

持続可能社会を構築するためには、新しいエネルギー技術や先端材料の開発とともに、それらを正しく評価、

管理する必要がある。本研究分野では、新しいエネルギー技術の導入シナリオを分析・評価するとともに、二

酸化炭素削減に関する各種取り組みに対する評価を行う。また、産業活動における化学物質によるリスクや環

境負荷物質による環境影響を正しく評価するための技術開発を進めている。 2.分野の組織構成 環境・エネルギー分野では、7つの研究センター(太陽光発電研究センター、バイオマス研究センター、水素材

料先端科学研究センター、新燃料自動車技術研究センター、メタンハイドレート研究センター、コンパクト化学シ

ステム研究センター、先進パワーエレクトロニクス研究センター)、5つの研究部門(ユビキタスエネルギー研究

部門、環境管理技術研究部門、環境化学技術研究部門、エネルギー技術研究部門、安全科学研究部門)を中心に研

究開発を行っている。本年度はこのうち、コンパクト化学システム研究センター及び先進パワーエレクトロニクス

研究センターが設立された。なお、本研究分野以外の5研究分野とも強く連携を取りつつ、上記重点戦略達成に向

け、研究開発を進めている。 3.主な研究動向

平成22年度の主な研究動向は以下の通りである。 (1) 再生可能エネルギーの導入を拡大する技術の開発 ・10cm 角フレキシブル基板上に、変換効率15.9%という世界 高効率の集積型フレキシブル CIGS 太陽電池モジ

ュールの作製に成功した。これは、デザイン性の高さからグッドデザイン・フロンティアデザイン賞を受賞し

た。 ・600V、1200V 級の炭化ケイ素(SiC)素子(ショットキーバリアダイオード)の量産技術開発に目途をつけ、応

用企業への試供を開始した。なおこの素子は、高温での低オン抵抗/高破壊耐量で世界 高値を達成した。

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(2) 省エネルギーのための技術開発 ・リチウム-空気電池の低コスト化を目指し、これまでの金属や金属酸化物を使用しない安価な空気極触媒候補と

して金属フリーのグラフェンを空気極触媒として用いたところ、良好且つ安定な充・放電サイクル特性と低い

過電圧特性を示すことを確認した。 ・固体酸化物形燃料電池(SOFC)の酸素イオン化及び拡散の活性サイトを、同位体ラベル法を適用して可視化す

ることに成功した。これらにより、SOFC の劣化機構解明への新規な解析法として適用できる可能性を示した。 (3) 資源の確保と有効利用技術の開発 ・高品質バイオディーゼル製造技術の開発を行う為に、高品質化用触媒技術を組み込んだバイオディーゼル燃料

(BDF)製造パイロットプラントを製造した。本パイロットプラントにおいて、非食性バイオマスであるジャ

トロファから、東アジアサミット推奨品質の BDF を製造する実証研究を開始した。 ・ハードディスク等の小型製品から希土類磁石を選択的に回収するため、まずハードディスク破砕選別機を開発し

た。次にこの破砕機より回収された磁石を高温酸化-浸出処理することにより、鉄の溶解を10%以下に抑制しつ

つ希土類磁石(ネオジウム、ジスプロシウム)のみを90%以上浸出する手法を開発した。 (4) 産業の環境負荷低減技術の開発 ・次世代バイオ液体燃料であるブタノールの分離濃縮を行なう為に、選択透過性に優れた無機分離膜を開発した。

この膜により1重量%のブタノールを80重量%以上に濃縮でき、従来の分離膜と比較してブタノール回収に要す

るエネルギーを50~70%削減可能となった。 ・多点結合型リンカーを利用したナノ空孔固定化分子触媒を開発し、鈴木カップリング反応における触媒の使用原

単位を、従来の3分の1に低減することに成功した。 (5) グリーン・イノベーションの評価・管理技術の開発 ・カーボンナノチューブ、フラーレン、二酸化チタンのリスク評価書 終を完成させ、産業界や行政からの強い注

目を集めた。また、ナノ材料の安全性評価に関する二つの新規プロジェクトを立ち上げた。 ・化学物質の爆発危険性を評価するための国際標準である国連勧告試験について、その試験法を検討し、国連専門

家委員会に改定案を提出した。その結果、国連専門家委員会において提案が認められ、今後2年間かけて検討さ

れることが決まった。

Ⅱ.ライフサイエンス分野

1.分野の目標

ライフサイエンス分野では、健康で安心して暮らすことができる健康長寿社会の実現および環境負荷を抑えた持

続可能な社会の実現を目指し、新たな健康評価技術や創薬支援技術の開発あるいは個人の状態に合わせて健康維

持・増進・回復を支援する技術の開発により、ライフ・イノベーションに貢献する。また、バイオプロセスを用い

た環境負荷低減技術の開発によりグリーン・イノベーションに貢献する。

2.分野の組織構成

当分野は4つの研究センター(糖鎖医工学研究センター、生命情報工学研究センター、バイオメディシナル情報

研究センター、幹細胞工学研究センター)、4つの研究部門(健康工学研究部門、バイオメディカル研究部門、生

物プロセス研究部門、ヒューマンライフテクノロジー研究部門)、特許生物寄託センターから構成され、バイオテ

クノロジーから医工学・人間工学までの幅広い研究分野の研究開発等を実施している。また、分野を跨る融合研究

を推進することにより、新領域の技術開発にも積極的に取り組んでいる。

3.主な研究動向

以下に平成22年度の主な研究動向を示す。

(1) 健康を守るための先進的、総合的な創薬技術、医療技術の開発

疾病の予防や早期診断、早期治療、個の医療の充実などの課題を解決するため、細胞操作及び生体材料技術

を応用した再生医療技術や先端医療支援技術の開発、医療機器の開発基盤の整備を行う。また、有用な新規バ

イオマーカーを利用して疾病の予防や早期診断を行うため、生体分子の機能分析及び解析技術の開発を行う。

さらに情報処理と生物解析の連携、融合により、安全性を保ちつつ開発コストを低減する高効率創薬技術の開

発を行う。以下に研究成果を示す。

・肝細胞がん由来細胞株の培養上清、肝細胞がん患者、肝炎患者、肝硬変患者血清、あるいは肺がん患者、卵巣が

ん患者血清をグライコプロテオミクスの手法によって解析し、糖鎖バイオマーカー候補分子を同定した。特に、

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肝細胞がんの背景肝疾患の進行度(線維化)を示すマーカーを確立した。さらに線維化マーカーについて迅速測

定系を確立した。

・糖脂質におけるポリラクトサミンの合成酵素である B3gnt5の遺伝子欠損マウスを作製し解析した結果、B3gnt5が B 細胞の免疫機能において重要な機能を果たしていることを明らかにした。糖脂質ポリラクトサミン糖鎖が

細胞表面のシグナル伝達場である細胞構造(糖脂質ラフト)を制御し、過剰な免疫反応に抑制的に働いているこ

とが示唆された。

・胆管がんマーカーを検出するアッセイシステムを構築し、血清サンプルによる検証を行った。国内約300症例に

ついて解析を行った結果、胆管がん患者群はいずれの検体群との比較においても有意にそのシグナルの上昇が認

められた。また、タイの肝内胆管がん症例78検体、コントロール群78検体を用いて解析を行った結果、タイの症

例でもがん患者で有意なシグナルの上昇が認められ、さらにその検出力は既存胆管がんマーカーのものを大きく

上回った。

・iPS 化に伴い細胞表層糖鎖もリプログラムされることを発見した。また、幹細胞の未分化度や異種抗原のコンタ

ミを定量的に測定する技術の開発に成功した。

・異なるデータ構造の導入により、従来の計算法で対応できなかった、繰り返し配列や A+T 含量の偏りに頑健な

ゲノム・アラインメント技術を開発した。マラリア病原菌ゲノムなどでは業界標準ソフトウェアより100倍以上

の高速化に成功した。

・生命情報工学研究センター内外のデータベース、ソフトウェアを 新の情報技術を用いてシームレスに統合した

情報基盤の構築に取り組んだ。ライフサイエンス研究分野における複雑化・細分化に合わせて解析ツールやデー

タベースの多様化に迅速に対応するためプラットフォームを用いた可変型ワークフローに関する技術を開発した。

・免疫モニタリングとして自己のタンパク質に結合する抗体(自己抗体)を網羅的に解析するオートイムノーム解

析システムを開発し、疾患との関連を明らかにし、疾患マーカーや臨床診断指針の開発を行なった。

・自主開発してきた創薬支援ソフトウェア myPresto の改良・機能追加を行い、標的タンパク質と相互作用する化

合物を200万化合物の中から探索し、従来の10倍以上の効率で医薬品候補を選び出すことのできる技術を開発し

た。

・幹細胞の標準化指標策定に必要な iPS 細胞特異的制御ネットワークの検出に成功した。

・マイクロ組織アレイチップおよび医薬品アッセイ装置を開発した。

・ES 細胞や iPS 細胞などの幹細胞を制御する新しい因子を発見し、その因子が、良質の iPS 細胞の樹立を制御す

る新規因子であることを見出した。また、この因子が、幹細胞特異的に発現する転写因子と結合して転写制御領

域を活性化するメカニズムを明らかにした。

・情報工学の手法から機能異常が予測された神経栄養因子の一塩基多型ノックインマウスを作製したところ、顕著

な抑うつ行動と第3世代抗うつ薬に対する治療抵抗性を特徴とする難治性うつ病モデルマウスが樹立できた。

・従来、発光の消光に寄与することが知られている酸化チタンを水溶液中の量子ドットに混ぜたところ、量子ドッ

トの発光点滅を抑制することを見出した。

・先天性骨代謝疾患治療の実現化に向けて、 皮膚細胞の100倍以上の高効率で歯胚から iPS 細胞を樹立するとと

もに、移植用の間葉系幹細胞に正常遺伝子を導入する技術・人工骨上の培養法を確立した。また、セルプロセッ

シングセンターで培養した他家間葉系幹細胞を同疾患患者に移植して、将来の iPS 細胞治療に繋がるような治

療効果を得た。

・液体中の細胞を直接観察できる大気圧電子顕微鏡(ASEM)のプロトタイプ装置の開発を進め、マイクロメー

タ以下のマイコプラズマの迅速観察に成功した。また、がんの転移に重要な CD44と抗がん剤のターゲットタン

パク質である tubulin を対象として免疫電顕法の開発に成功した。

・ナノニードルアレイを用い機械的に細胞分離を行う新しいセルソ-ターの開発を行った。機械的に細胞を釣り上

げ、細胞を分離するには、接着力の異なる異種細胞の接着力を等しく減弱し、同程度に平準化しなければならな

い。異なる細胞の接着力を2nN 程度に調製する手法の開発に成功した。

(2) 健康な生き方を実現する技術の開発

心身ともに健康な社会生活を実現するために、高齢者のケア、健康の維持増進、社会不安による心の問題の

解決が社会の重要課題になっている。そこで、健康な生き方を実現する技術の開発を目指して、ストレス等を

含む心身の健康状態を定量的に計測する技術や、個人に適した治療やリハビリテーションによる健康の回復、

維持増進を支援する技術の開発を行う。以下に研究成果を示す。

・マルチ発光システムを駆使し、約300のマーカー遺伝子発現を20分以内に高精度で計測する化学物質リスク評価

系、および組織レベルで2種の生体リズムのマーカー遺伝子の発現変動を同時検出する発光計測システムの開発

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(6)

に初めて成功した。

・空港用の金属探知機に検知されない非金属製車椅子の開発において製品化モデルである4号機を試作し JIS 走行

耐久性試験をクリアした。

・アクセシブルデザイン技術(高齢者・障害者を含むより多くの者に適合した製品・環境設計技術)に係る JIS(日本工業規格)3編の国際標準化を提案し、ISO(国際標準化機構)規格として発行するに至った。

・視覚障害者の聴覚空間認知の訓練システムの開発を推進し、実用レベルに到達した。平成22年9月より、視覚障

害関係者へ同システムの試用版の無償提供を開始した。

(3) 産業の環境負荷低減に役立つバイオプロセス活用による高品質物質の高効率な生産技術の開発

化学プロセスに比べて反応の選択性が極めて高く、高付加価値化合物の効率的な生産が可能なバイオプロセ

ス(微生物や酵素を利用した物質生産)の活用範囲の拡大を目指して、微生物資源や有用遺伝子の探索と機能

解明、生体高分子の高機能化とバイオプロセスの高度化技術・設計技術、遺伝子組換え植物の作出技術及び密

閉型遺伝子組換え植物生産システムの実用化のための技術開発を進め、高効率なバイオものづくり技術を開発

する。

・ギガシークエンサーの出力配列を、高速にクラスタリングするアルゴリズムを開発した。これにより、解析に必

要な情報量を落とすことなく、効果的に解析対象を絞り込むことが可能となった。

・アブラムシ体内に生息する特定の共生細菌を異種間移植することで、ある種のアブラムシが、これまで餌として

利用できなかった植物上で生存や繁殖が可能になることを発見した。

・従来の植物ウイルスベクターを用いる遺伝子組換え植物の作出法は、ウイルスの蓄積量が周期的に増減するサイ

クリックな増殖を示すことが知られており、一様な目的物質の高発現ができなかったが、サイレンシングサプレ

ッサーを用いることにより、目的物質の発現量を約3倍以上増加させることに成功した。

Ⅲ.情報通信・エレクトロニクス分野

1.分野の目標

情報通信・エレクトロニクス分野においては、持続的発展可能な社会の実現に向けて分野の担うべきミッショ

ンを「新しいデバイスの開発と IT(情報技術)の有効活用によって省エネを進め、安全やサービスへの応用によ

って、健全な社会の発展に寄与すること」と定めて研究開発を行っている。このミッションを実現するために以下

の3つを分野の戦略目標として定めている。

(1) 高速光スイッチ、不揮発メモリ、フレキシブルディスプレイなどの新しい機能を低エネルギーで発揮するデバ

イスを開発する。

(2) IT(情報技術)活用による安全・安心な社会生活を実現するために、ディペンダブル IT システムの研究開発

を推進する。

(3) サービスを科学し、機械化することにより、GDP の7割を占めるサービス産業の効率化と新サービス産業を創

出する。

2.分野の組織構成

当分野の研究組織は、異分野融合領域も含めると、6つの研究センター(ナノ電子デバイス研究センター、ネッ

トワークフォトニクス研究センター、ナノスピントロニクス研究センター、情報セキュリティ研究センター、サー

ビス工学研究センター、デジタルヒューマン工学研究センター)、4つの研究部門(知能システム研究部門、エレ

クトロニクス研究部門、光技術研究部門、情報技術研究部門)、1つの研究ラボ(社会知能技術研究ラボ)で構成

されている。

3.主な研究動向

平成22年度の主な研究動向は以下の通りである。

(1) 高速光スイッチ、不揮発メモリ、フレキシブルディスプレイなどの新しい機能を低エネルギーで発揮するデバ

イスの開発

・ネットワークフォトニクス研究センターでは、高精細映像等の巨大コンテンツを伝送させる光ネットワークを実

現するために、既存のネットワークルータに比べてスループットあたり3桁低い消費電力でルーティングを行う

光パスネットワーク技術を開発している。本年度は、4×4シリコンフォトニクス光スイッチ、パラメトリック

分散補償装置を開発し、光パスネットワークの公開デモ実験を NICT、NHK とも連携して行った。この実験で、

光パスネットワークの低消費電力性を実証することができた。

産 業 技 術 総 合 研 究 所

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・ナノスピントロニクス研究センターでは、コンピュータの待機電力を1/5に削減可能にするために、スピントロ

ニクスとナノテクノロジーを融合したナノスピントロニクス技術を用い、DRAM や SRAM の置き換えを可能と

する不揮発性メモリ技術を開発している。本年度は、Gbit 級スピン RAM の記憶素子用の新しい垂直磁化材料

として、高い垂直磁気異方性、低い異方性分散、高いアニール耐性を有する人工格子薄膜材料を新規に開発し

た。これを用いて、超低抵抗の垂直磁化 MTJ 素子で100%を越える高 MR 比を実現した。

・光技術研究部門では、ディスプレイ及び入出力素子作製技術の高度化のための省資源、低消費電力製造プロセス

として、ナノプリント、ナノモールド法等のデバイスの低温形成、印刷形成技術を開発している。本年度は、

酸化物半導体にて、溶液プロセスで移動度4cm2/Vs を発現する薄膜トランジスタの作製技術の開発に成功した。

・エレクトロニクス研究部門では、デバイス製造に要する資源及びエネルギー消費量を30%削減するために、必要

な時に必要な量だけの生産が可能で、かつ多品種変量生産に対応できるミニマルに関する研究開発を行ってい

る。本年度は、ミニマル装置群の開発とミニマルファブの各種仕様策定を進め、幅30cm のミニマル規格を満た

すミニマル洗浄装置、ミニマルプラズマ装置等のプロトタイプを開発すると共に、ミニマル露光装置を開発に

着手した。ミニマルファブ構想については、5月19日の日本経済新聞のトップ記事で紹介され、産業界全般にイ

ンパクトを与えた。

・ナノ電子デバイス研究センターでは、不揮発性ロジック及びメモリの集積可能性検証を目的として、機能性酸化

物を用いた不揮発性抵抗変化メモリの信頼性評価を、200ミリウェーハレベルで行う技術を開発している。本年

度は、超低電流動作と高速動作を両立可能な、抵抗変化型不揮発性メモリ(Resistance Random Access Memory: RRAM)構造を、300ミリウェーハレベルで均一かつ高い信頼性を持って製造するための成膜、加工プ

ロセス技術を共同研究先と共同開発した。この技術を用いて、1トランジスタ1メモリ構造を含む128Kbit のメモ

リーアレイチップを集積化し、チップおよびウェハレベルでメモリの動作特性と信頼性評価を実施するための

200ミリウェーハプラットホームを構築することに成功した。 (2) IT(情報技術)活用による安全・安心な社会生活を実現するために、ディペンダブル IT システムの研究開発

の推進

・デジタルヒューマン工学研究センターでは、乳幼児と高齢者の傷害予防を目的に、傷害情報サーベイランス技術

と実時間見守りセンシング技術を開発している。本年度は、2030件の傷害データを新たに追加し、傷害サーベ

イランス技術を虐待向けに拡張し、22件の虐待による傷害データを蓄積し、外部公開した。また、子どもの傷

害予防に配慮した製品(キッズデザイン製品)を企業が開発する上で不可欠となるデータ・技術・人的ネット

ワークを一体として開発・育成するための社会実験(キッズデザイン共創プロジェクト)を企画し、15社19課

題を実施した。

・知能システム研究部門では、低炭素社会実現に貢献する都市計画の1つであるコンパクトシティ構想に貢献する

ための技術として、中心市街地での搭乗移動や物流搬送等を自律的に行うための研究開発を行っている。本年

度は、レーザレンジセンサによる3次元マップマッチング技術、障害物検知・回避技術等を構築し、つくば市中

心市街地において、自律走行車いすの約1.6km の自律走行を実現することで、「つくばチャレンジ2010(産総

研共催)」にて完走し、市長賞ならびにバンダイナムコ賞を受賞した。

・知能システム研究部門では、ロボットの安全性を検証するためのリスクアセスメント等、安全設計を行うための

技術開発を行うとともに、それらの国際標準化活動を行っている。本年度は、NEDO の生活支援ロボット実用

化プロジェクトにおいて、国際標準化 WG 主査、および機能安全検討 WG 主査として、リスクアセスメントな

どのプロジェクトでの研究を行うとともに、調整企画を行い、さらには国際標準化として ISO 会議 TC184SC2

に2名参加した。

・情報セキュリティ研究センターでは、ネットワーク社会において消費者の情報や権利を保護するため、バイオメ

トリクスやパスワード等の認証用情報が漏えいした際にも、認証情報更新を容易にすることにより、被害を

小限に抑えることができる個人認証技術や、ユーザがサーバと相互に認証することで、ユーザがフィッシング

詐欺を認知可能とする技術等のプライバシ情報保護及びユーザ権限管理技術を開発している。本年度は、認証

技術について、RFC 原案の改良を続け、IETF における標準化活動を進展させたほか、米国等で関係企業とも

情報交換を行い、標準ブラウザへの統合の方向性などについても交渉を行った。またソフトウェアを改良し

CEATEC 等で展示を行い成果普及を進めた。 (3) サービスを科学し機械化することによる GDP の7割を占めるサービス産業の効率化と新サービス産業の創出

・サービス工学研究センターでは、サービス生産性向上を目的とし、必要な情報を現場でセンシングし、得られた

大規模実データをモデリングして利用者行動をシミュレーションすることで、サービス設計を支援するサービ

ス工学基盤技術と導入方法論を開発している。本年度は、プライバシに配慮した実環境行動計測を実現し、結

総 説

(8)

果を仮想環境で提示して CCE 応用技術により提供者スキルを理解する技術を開発し、旅館3軒で実証を行った。

・社会知能技術研究ラボでは、公共性の高いサービス等が安全かつ標準的に利用できる環境の実現を目的として、

利用者が自分自身で個人情報を管理でき、サービスの内容や価値に応じて複数のサービスが連携できるような

標準的な技術を開発している。本年度は、情報システム開発を利用者が主導するための方法の適用範囲を拡大

し、その有効性の検証を進めた。

・情報技術研究部門では、地理空間情報の新サービスを創出するため、多種多様な地理空間データへの統一的アク

セスサービス等の基本サービス群の開発および整備を行っている。本年度は、地殻変動モニタリングシステム

のプロトタイプ開発、地震動マップ即時推定システム(QuiQuake)におけるデータのリアルタイム取得機能の

強化、衛星画像、現地観測統合システム(SFI)における地表面温度についてのシステム開発を行い基本部を完

成させた。

・知能システム研究部門では、ヒューマノイド技術を活用した新サービスの創出を目的として、メディア技術との

融合によりコンテンツ産業を支援するロボットサービス、人動作解析技術等との融合による人動作模擬サービ

ス等を創出するヒューマノイド基盤技術を開発している。本年度は、ステップ、表情変化を含む振舞を製作で

きるインタフェースを開発し、HRP-4C の歌唱を伴うダンスを実現し、デジタルコンテンツ EXPO2010でダン

スパフォーマンスを行った。

・情報技術研究部門では、サービス生産性を向上させるために、利用者の利便性及び生産性とサービス提供者の資

源利用効率を共に高めるクラウド型プラットフォームの開発を行っている。本年度は、ユーザの要求する資源

のプランニングと資源確保、再配置、障害発生時のサービス再構成、復旧を実現するスケジューリングシステ

ムを開発した。また、高機能な認可機能を持ち例外処理に対応した分散モニタリングシステムを開発した。実

環境で複数のクラウドを連携させて仮想インフラストラクチャを構成し、アプリケーションを実行する相互運

用試験を行った。

Ⅳ.ナノテクノロジー・材料・製造分野

1.分野の目標

ナノテクノロジー・材料・製造分野では、ナノテクノロジーをキー技術としてグリーンイノベーションの核とな

る材料やデバイスの創成、ならびに製造プロセスの革新を進めることにより、わが国の国際競争力を強化し、持続

的発展可能な社会の実現を目指したグリーンイノベーションへの貢献に取り組んできた。

2.分野の組織構成

当該分野は平成22年度末において2つの研究センター(ナノチューブ応用研究センター、集積マイクロシステム

研究センター)、3つの研究部門(先進製造プロセス研究部門、サステナブルマテリアル研究部門、ナノシステム

研究部門)、1つの研究ラボ(ダイヤモンド研究ラボ)の計6研究ユニットで構成されている。

3.主な研究動向

当該研究分野の先端研究の代表例を以下に示す。

当該分野では積極的に産業界と連携して研究開発を実施している。その代表的なものとして NEDO プロジェク

トがあり、そのうち「ナノテク・部材イノベーションプログラム」ではカーボンナノチューブキャパシタ開発プロ

ジェクト、マグネシウム鍛造部材技術開発プロジェクト、革新的省エネセラミック製造技術開発等、「ロボット・

新機械イノベーションプログラム」では異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト等、「希少金属代

替材料開発プロジェクト」では超硬工具向けタングステン使用量低減技術開発および代替材料開発、グラフェンの

高品質大量合成と応用技術を活用した透明電極向けインジウム代替技術の開発等を実施している。

平成21年度の主な研究動向は以下の通りである。

(1) 高効率なエネルギーマネジメントシステム

・縦型構造を持つダイヤモンドショットキーダイオードのプロセスを完成させ、250℃動作で500A/cm2の高電流密

度ダイオードを試作した。また、小型ダイヤモンドダイオードのスイッチング特性の評価を世界で初めて実施し、

0.01マイクロ秒の高速スイッチングと40 A/cm2の小さな逆回復電流(低損失)を確認した。X 線トポグラフィ

やカソードルミネッセンスにより欠陥の二次元マッピング評価を可能にした。

(2) 運輸システムの省エネルギー技術

・汎用マグネシウム合金である AZ31合金の集合組織を簡便に制御できる手法として高温圧延法に着目して研究開

発を実施し、AZ31合金にアルミ並みの冷間成形性(エリクセン値>8)と高い強度(引張り強度240MPa)を付

与することに成功した。

(3) 住宅、ビル、工場の省エネルギー技術

産 業 技 術 総 合 研 究 所

(9)

・これまで開発してきたマグネシウム・ニッケル合金を用いた調光ミラーは、透明時における可視光透過率は高い

が黄色味を帯びているという欠点があったが、マグネシウムとカルシウムを用いることで、無色でありながら高

い可視光透過率を持つ調光ミラーが実現できることを見いだした。

(4) ナノレベルで機能発現する材料、多機能部材

・球形ナノ粒子(ナノフィラー)を含有する高分子混合系の相分離構造をシミュレーションするソフトウエアを作

成した。このソフトウエアの特長は、従来の高分子混合系の自由エネルギーを用いた相分離構造シミュレーショ

ン法に対して、さらに相構造と分散させるナノ粒子との間の相互作用を仮定して、相分離構造の成長とともに、

球形ナノ粒子が分散・凝集していく様子をシミュレーションできる点である。

・これまで誰も見ることができなかった、有機 EL 材料と金属電極との界面における化学構造と電子構造の変化を、

和周波発生(SFG)分光法に改良を加えることによって、同時に計測することに成功した。具体的には、SFGに対して赤外光のみならず可視光も波長可変とする改良を加え、PFO という有機 EL に使われる材料が電極界

面上でバルクとは異なる化学構造と電子構造を有する事を初めて明確に示した。

(5) ナノチューブ、炭素系材料の量産化技術と応用

・-140℃から600℃までの広い温度範囲でほぼ一定の柔らかさと硬さ(シリコンゴム程度)を保ち、広い温度領域

で利用できる CNT 粘弾性材料を開発した。

・低温(400℃)大面積(A4)短時間(~分)でのグラフェン合成に成功し、このグラフェンを利用して静電容量

型タッチパネルの試作に成功した。また、Cu(111)がグラフェンの合成に優位な面方位であることを見出し、

Cu(111)単結晶薄膜表面を用いた熱 CVD で高品質グラフェンの形成に成功した。

・既存技術では困難とされていた単一構造カーボンナノチューブの分離を、安価な装置で実現した。具体的には、

ゲルカラムによる分離法を改良し、13種類の単一構造半導体型ナノチューブと金属型ナノチューブとの分離に成

功した。本研究で開発した分離法は、装置が単純で消費する界面活性剤やゲルも安価であり、しかも収率が高い。

そのため、スケールアップ(大量分離)・自動化・高速化が容易で、産業化に必須な低コスト化が見込める。

(6) 製造技術の低コスト化、高効率化、低環境負荷の推進

・エアロゾル・デポジション法を用いて、常温プロセスで酸化物系固体電解質の薄膜化に成功し、世界で初めてリ

チウムイオン電池としての動作を確認した。電池構造の薄膜化により、高エネルギー密度化が期待される。また、

酸化物系材料を使用しているため高い安定性や電池構造の簡略化が期待される。

・従来のスピニング加工では困難だった,楕円形・多角形・偏心・湾曲などの異形断面形状の成形をロボット技術

の導入により実現した。

(7) 省エネルギー性に優れたマイクロ電子機械システム製造技術

・プロトタイプ小型無線電力センサ端末を用いて小規模店舗用電力モニタリングシステムを構築し、実証実験を実

施した。その結果、モニタリングシステムの活用により、同規模のシステム未設置店舗に比べ10%程度の消費電

力の削減が可能であることを示すことができた。

(8) 先端計測技術及び分析機器の開発

・世界 高感度を持つ新しい電子顕微鏡を応用して、炭素原子からできているグラフェンを詳細に調べ、同じ炭素

原子でも、グラフェンの端に存在する炭素原子が通常の炭素原子とは電子状態が大きく違うことを世界で初めて

確かめた。この結果から、グラフェンが電子デバイスとして応用される際に、グラフェンの端に存在する炭素原

子の性質が大きく影響を及ぼすことが分かった。

Ⅴ.標準・計測分野

計量標準と計測技術及びその標準化は、あらゆる科学技術活動、財・サービスの生産等の経済活動、さらには社会

生活全般において も基本となる基盤技術である。私たちが客観的・科学的な根拠に基づいて適正な試験データを取

得できるように、標準・計測分野では、国が一元的に提供することを要請されている計量標準と標準物質の整備、お

よび我が国の産業技術競争力の向上に必要な計測技術とその標準化の研究を行っている。特に、計量標準の整備に関

しては、以下のわが国の三つの指針の実現を支えることを目的に開発を進めている。①各種エネルギー貯蔵技術・利

用技術の推進や省エネルギー・エネルギー利用効率化技術の開発を支援し、グリーン・イノベーションの実現を支え

る計量標準の整備。②先進医療機器の開発・臨床検査の信頼性や食品の安全性などの生活環境の健全性の確保に資す

る、ライフ・イノベーションの実現を支える計量標準の整備。③わが国の産業の国際通商を円滑に実施するために必

要な国際規格や法規制に対応する計量標準およびナノデバイスやロボットなどのわが国の先端産業の国際競争力を支

援し、産業の国際展開を支える計量標準の整備。

当分野の研究組織は、2つの研究部門(計測標準研究部門、計測フロンティア研究部門)、1つの研究センター(生

総 説

(10)

産計測技術研究センター)の計3つの研究ユニットと計量標準管理センターで構成されている。平成22年度の主な研

究動向は以下の通りである。

1.計量標準

計量標準整備については、計測標準研究部門がわが国の中核としてそれを担い開発・供給を行っている。第2期

当初は、整備計画に対する産業界からの強い要請に基づいて、その数値目標を140種類と広範に設定したうえで、5

年間の第2期終了の時点(平成21年度末)において延べ183種類の新規供給を実現し、成果を着実に挙げることがで

きた。平成22年度の実績としては、物理系校正サービス9種類、化学系標準物質17種類、計26種類の標準供給を開

始した。また特定二次標準器の校正408件、特定副標準器の校正は16件、依頼試験は536件であった。認証標準物質

の頒布数は916件であった。特定計量器の型式承認は242件、基準器検査は2,944件、比較検査18件、検定0件、各種

計量教習はのべ700人を行った。同時に国家計量標準の相互承認を目的とし、計量標準の国際比較、国際基準に準

拠した標準供給のための品質システムの整備と ISO/IEC 17025および ISO ガイド34認定(ASNITE-NMI)取得、

他国の専門家による技術審査(Peer review)受入等を進めた。国際関係ではメートル条約と国際法定計量条約に

おける調整活動への参加を通して我が国の計量技術を代表した責務を果たすと同時に、アジア太平洋地域では計量

組織における調整活動や各国の計量技術者に対する教習等を通して計量先進国としてのプレゼンスを発揮した。

(1) グリーン・イノベーションの実現を支える計量標準の整備

・誘導分圧器と電流比較器を利用した、大容量キャパシタンスを高精度に測定するシステムを開発した。この装置

は、任意の容量値をもつキャパシタ測定に展開が可能であり、蓄電池・電力貯蔵キャパシタの内部インピーダ

ンス評価に必要となる新たな基準キャパシタの開発に不可欠な装置である。

・LED 照明に適した新たな測光放射標準の開発を進めた。高強度 LED 全光束標準用の参照標準器に関して、温

度特性等の諸特性評価を完了させ、校正に適した性能を持つ事を検証すると共に、LED 照明全体の性能評価に

適した分光全放射束標準用の参照標準器に関して配光および経時変化等の評価を行った。

(2) ライフ・イノベーションの実現を支える計量標準の整備

・医療用放射線標準の開発を下記3項目で体系的に進めた。①放射線治療のための医療用リニアックを導入・設置

し、放射線の線質を表す指標を測定した。②医療用リニアックからの放射線を測定するためのポータブルなグ

ラファイトカロリメータ制御装置を開発した。③前立腺がん治療用密封小線源の線量標準を確立するために、

大容積自由空気電離箱を整備し校正技術を開発した。

・医療診断や臨床検査の信頼性確保のために必要な標準物質として、プロゲステロンや C-ペプチド、アミノ酸な

ど4種類にわたる7物質を開発し、多岐にわたる項目から成る臨床検査の計量トレーサビリティの基盤を確立し

た。 (3) 産業の国際展開を支える計量標準の整備

・空気清浄度管理に用いられる粒子計測器を測定現場で日常的に校正することが可能な粒子発生器型気中粒子数濃

度標準を開発した。国家計量機関の校正室内で用いられる粒子数濃度国家標準はこれまで3カ国で開発されてい

るが、測定現場で利用可能な粒子発生器型標準は未開発であった。 ・次世代時間・周波数標準として有力視されている光格子時計の開発を進め、Yb 光格子時計では信号対雑音比を

大幅に改善したデータが得られた。セシウム原子時計の不確かさを超える比較のために、Sr 光格子時計の開発

を進め、第1段階冷却の磁気光学トラップに成功した。

2.計測技術

計測技術に関しては、計測フロンティア研究部門と生産計測技術研究センターを中心に研究開発を行っている。

前者は、空間・時間的に変移、遷移する現象を主対象とし、産業技術の信頼性の向上や社会の安全・安心の確立に

向けた計測分析機器技術開発と、それを高度に駆使した知識の開拓・知恵の創出を目的としている。後者は、品

質・生産性の向上、製品不具合対処、安全確保、環境保全などに資する新たな計測技術を生産現場へオンタイムで

提供することや企業の生産現場に精通した技術者であるマイスターとの連携によって産業界の計測ニーズに沿った

研究開発を推進することを目的としている。

平成22年度の2ユニットにおける計測・評価技術の主な研究成果は以下のとおりである。

(1) 産業や社会に発展をもたらす先端計測技術、解析技術及び評価基盤技術の開発

・イオンや中性分子のもっている運動エネルギーの違いを測定できる超伝導分子検出器搭載質量分析装置を開発し、

イオンのみならず中性分子の分析ができることを初めて示した。今回開発した先端分析装置は、科学から産業

まで、幅広い分野の計測基盤として貢献することが期待される。

・ガンの早期治療において、低侵襲かつ高精細な画像診断方法が求められている。レーザーコンプトン散乱 X 線

産 業 技 術 総 合 研 究 所

(11)

(LCS-X 線)の造影剤や重金属に対する吸収効率を高め、リアルタイム血管造影に成功した。また、高輝度テラ

ヘルツ電磁波を用いて、非侵襲で人体表層部のガン等を可視化できる生体試料の透過イメージングに成功した。

(2) 生産性向上をもたらす計測ソリューションの開発と提供

・エッチング装置のウエハとチャックの間で発生したプラズマ異常放電による AE 波を、チャックの下に設置した

AE センサによって、世界で初めて検出することに成功した。

Ⅵ.地質分野

1.分野の目標

地質分野では、知的基盤整備の一環として陸域及び海域における「地質の調査」を行い、様々な地質情報を計画

的・継続的に整備を進める。そしてそれらを基盤に、安全・安心で持続的発展可能な社会の実現に向けた地震・火

山災害等の国土の安全に係る研究、高レベル放射性廃棄物地層処分、地圏・水圏等における環境保全に係る研究、

エネルギー・資源の安定供給に係る研究等を実施する。また、地質の調査に関連した、海外地質調査所や地球科学

研究機関等との国際研究連携を推進する。

2.分野の組織構成

地質分野では、「地質の調査」を確実に実施するため、地質調査総合センター(Geological Survey of Japan, AIST)として、1つの研究センター(活断層・地震研究センター)、2つの研究部門(地圏資源環境研究部門、地

質情報研究部門)、1つの研究コア(深部地質環境研究コア)、関連部署(地質調査情報センター、地質標本館)

等から構成される連携体制を構築している。また、国際的にもこの体制の下で、東・東南アジア地球科学計画調整

委員会(CCOP)等の国際機関や世界地質調査所会議(ICOGS)、世界地質図委員会(CGMW)等に対して、我

が国の地質調査機関の代表として対応している。

3.主な研究動向

平成22年度の主な研究動向は以下の通りである。

(1) 地質情報の統合化と共有化・国土及び周辺域の高度利活用

・ 新の地球科学的知識に基づき、5万分の1地質図幅(陸域)、20万分の1地質図(陸域・海域)、地球物理図、

地球化学図、火山関連図、地震関連図など各種地球科学基本図、地球科学主題図等の網羅的・系統的な整備を

行い、知的基盤として整備・公表している。本年度は、20万分の1地質図幅1件、5万分の1地質図幅3件、海洋地

質図3件、重力図1件、数値地質図4件の地球科学図を編集・発行した。

・政策予算「沿岸域の地質・活断層調査」では、地質図や地下構造図が未整備である沿岸域において、陸域-沿岸

域-海域を繋ぐシームレスな地質情報整備の取り組みを地質調査総合センターのユニットが連携協力して行って

いる。本年度は、新潟沿岸域等における地質・活断層の調査研究成果を取りまとめた報告書を出版するとともに、

海陸シームレス地質情報集「新潟沿岸域」として DVD 出版し、福岡沿岸域においては、マルチチャンネル音波

探査、海底堆積物採取、海域から陸域まで連続した物理探査、沖積平野のボーリングデータ収集・解析とボーリ

ング掘削等の総合的な地質調査を実施した。

・海洋地質図作成のための資試料を取得するため、沖縄本島西方沖の海洋地質調査を実施した。

・国連に提出した大陸棚画定の日本の申請に関し、「大陸棚の限界に関する委員会」の下に日本の申請を審査する

小委員会が設置された事を受け、平成22年4月、8月、11月に日本代表団へ参加し、説明資料の科学的根拠に関す

る質問などに対して説明を実施した。

(2) 地圏循環システムの解明と解析技術の開発による地球と人間との共生社会の実現

・地質分野では、地質学、地球化学、地球物理学等の地球科学的手法を駆使し、地圏・水圏循環システムの理解に

基づく国土有効利用実現のため、1)水資源等の環境保全及び地熱や鉱物資源探査、2)土壌汚染リスク評価、

3)地層処分環境評価、4)メタンハイドレート等天然ガス資源の調査、5)CO2地中貯留に関する技術、6)

地圏・水圏環境にかかわる知的基盤情報の整備・提供等の研究を実施している。

・これまでに全国規模で集積した地下水賦存量を解析することで、我が国の地下水資源全体量が13兆トンであると

見積もられた。

・地中熱の利用促進のため、石狩、関東、筑紫を対象に、地下温度構造及び地下水流動モデリングを開始し、各

種水文地質データの収集とコンパイルを行った。また、福井平野を対象に、地中熱ポテンシャル評価手法の開

発に着手し、日本で初めて地中熱ポテンシャルマップを作成した。

・鉱物資源探査では、モンゴル南部、ベトナム、カナダ、グリーンランド等の希土類鉱床現地調査を行い、将来の

総 説

(12)

開発可能性に関する基礎データを収集した。米国ネバダ州等にて地表踏査による衛星画像の検証作業を実施し

た。東南アジアにて希土類鉱徴地試料を解析し、希土類の存在形態等を検討した。また、選鉱残渣の研究とし

て浮遊選鉱試験器の導入し立ち上げを行うと共に、南アフリカ、カナダ、ベトナム産試料について予察的に鉱

物学的評価を実施した。

・土壌汚染リスク評価では、複合成分に起因する健康及び経済リスクの統合化評価の統一指標を提案し、生活環境

リスク評価の方法論を確立して、「地圏環境リスク評価システム GERAS-3(廃棄物版)」を開発した。特定地域

において土壌地質環境基本調査を行い、表層土壌データデータベースを作成した。

・地層処分環境評価では、幌延町浜里地区において、深度1,000m までの掘削を実施し、地下水と地質の試料を採

取した。試料の分析の結果、地質境界(地質試料の力学的試験結果)と地下水の水理境界(水質及び同位体分

析結果)とは微妙に異なることが判明し、これまでより高精度な水理構造モデルを作成でき、地下水流動解析

を実施することができた。

・CO2地中貯留に関する技術では、安全性評価ならびにリスク評価のためのフレームワークを検討し、産総研型

CO2地中貯留リスク評価システムのプロトタイプの構築を進めた。地中 CO2の広がりや移動を検出するため、

150m の坑井を掘削して約2t の二酸化炭素を圧入して、反射法地震探査と比抵抗探査によるモニタリングを実施

し解析技術を検討した。

(3) 地質現象の将来予測と評価技術の開発による災害リスクの 小化と安全・安心な社会の構築

・国土の安全を目指した自然災害に関する研究では、地震及び火山に関する研究を重点的に実施している。日本の

地震・火山に関する研究については、災害軽減のための国の各施策(地震に関する観測・測量・調査及び研究

の推進についての総合的かつ基本的な施策、地震及び火山噴火予知のための観測研究計画)に基づいて、関連

機関が相互に連携を取りつつ分担・実施する体制が取られている。地質分野では主要活断層調査、地震短期予

測のための地下水等の観測、活断層データベース、平野地下構造データベースの整備、短期的・長期的火山噴

火推移予測の研究のほか、地震発生及び火山噴火メカニズム等にかかわる基礎的研究を実施している。

・国の東海地震予知事業の一環として、前兆的地下水位変化検出システムを引き続き東海地方で運用した。2010年

4月~12月に紀伊半島~東海のプレート境界において規模の大きい深部低周波微動活動が4回あり、それらすべ

てに対して観測網で歪変化を検出し短期的スロースリップ(短期的 SSE)の断層モデルを提出した。

・西暦869年の貞観津波堆積物の分布に基づいて震源断層モデルの検討を行い、日本海溝沿い南部の長さ200km の

断層からマグニチュード8.4の地震を推定するなど、国の評価の見直しを迫る社会的に重要な成果を示した。

・高レベル放射性廃棄物地層処分の安全規制の技術的支援となる調査研究を深部地質環境研究コアにおいて実施し

ている。これらの成果は、総合資源エネルギー調査会廃棄物安全小委員会ならびに規制支援研究ワーキンググ

ループを通じて国の地層処分の安全規制ならびにその支援研究計画の策定作業において提供するとともに、処

分事業の規制庁安全レビューの判断指標の設定について、原子力安全・保安院への技術支援を、原子力安全基

盤機構、日本原子力研究開発機構と共同で進めた。またこれらの規制支援研究機関と「幌延深地層研究計画に

おける安全評価手法の適応性に関する研究」、「深部地質環境における水-岩石-微生物相互作用に関する調査

技術開発」「低活動性断層の調査・評価技術の開発」の共同研究を実施した。

(4) 緊急地質調査・研究の実施

・平成23年1月26日より発生している霧島山新燃岳2011年噴火に対応するために、地質調査総合センターとして緊

急対策本部を設置し、現地調査への研究者の派遣、関係機関への連絡、マスコミへの対応、ホームページを通

じた噴火に関する情報発信を行った。

・平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴う津波に対応して、地質調査総合センターとして

緊急対策本部を設置し、現地調査への研究者の派遣、関係機関への連絡、マスコミへの対応、ホームページお

よび地質標本館の特別展を通じた緊急調査に関する情報発信を行った。

(5) グローバルな地質情報ネットワークにおけるイニシアティブの発揮

・東アジア地域における地質情報の標準化と数値化の作業を各国の関係機関と協力して進め、東・東南アジア地球

科学計画調整委員会(CCOP)の第47回総会(インドネシア)、及び第56、57回管理理事会に参加するなどして、

アジア地域での日本のリーダーシップを発揮した。

・第4回ユネスコ国際ジオパーク会議(マレーシア)等に参加するとともに,産総研が事務局を担当する日本ジオ

パーク委員会を核としてアジア地域を中心にジオパーク活動を普及させた。

・統合国際深海掘削計画(IODP)において、乗船研究を3名が行い、国際パネル委員を7名がつとめた。また日本

地球掘削科学コンソーシアム IODP 部会において、部会長、執行部員及び専門部会委員として活動した。これ

らにより IODP の推進に貢献した。

産 業 技 術 総 合 研 究 所

(13)

3.幹部名簿

役職(本務) 役 職(兼務) 氏 名 就任期間 就任年月日 備 考

理事長 野間口 有 2年 平成21年4月1日

副理事長 つくばセンター所長

コンプライアンス推進本部長

イノベーションスクール長

小野 晃 3年 平成20年4月1日 ※H18.4.1~H20.3.31

までは理事

理事 地質分野研究統括 山﨑 正和 5年 平成18年4月1日

理事 ナノテク・材料・製造分野研究

統括

標準・計測分野研究統括

一村 信吾 4年1ヶ月 平成19年2月16日

理事 企画本部長 脇本 眞也 3年8ヶ月 平成19年7月31日

理事(非常勤) 田中 信義 3年 平成20年4月1日

理事 環境・エネルギー分野研究統括

研究環境安全本部長

情報化統括責任者

つくば西事業所管理監

矢部 彰 3年 平成20年4月1日

理事 ライフサイエンス分野研究統括

特許生物寄託センター長

湯元 昇 3年 平成20年4月1日

理事 評価部長 上田 完次 2年 平成21年4月1日

理事 イノベーション推進本部長

広報部長

イノベーションスクール副スク

ール長

瀬戸 政宏 2年 平成21年4月1日

理事 情報通信・エレクトロニクス分

野研究統括

ナノ電子デバイス研究センター

金山 敏彦 1年 平成22年4月1日

理事 総務本部長

コンプライアンス推進本部副本

部長

河津 司 0年8ヶ月 平成22年7月31日

監事 石野 秀世 3年8ヶ月 平成19年7月31日

監事 内田 修 2年 平成21年4月1日

(平成23年3月31日現在)

総 説

(14)

4.組織図

産 業 技 術 総 合 研 究 所

(15)

5.組織編成 年月日 組 織 規 程 組 織 規 則

平成22年4月1日 理事長直属部門の次期情報システム研究

開発推進室を廃止し、国際標準推進部、

つくばイノベーションアリーナ推進室を

設置

国際標準推進部の設置に伴い、国際標準

推進部長の職制を設置

つくばイノベーションアリーナ推進室の

設置に伴い、つくばイノベーションアリ

ーナ推進室長の職制を設置

関西センターの千里サイトを廃止

中国センターを広島県呉市から同県東広

島市に移転

企画本部の戦略経営室を廃止し、産業技術調査室を設置

国際標準推進部に標準企画室、標準化推進室、試験シス

テム開発支援室を設置

年齢軸生命工学研究センターを廃止

デジタルヒューマン研究センターを廃止

近接場光応用工学研究センターを廃止 ダイヤモンド研究センターを廃止 システム検証研究センターを廃止 健康工学研究センターを廃止 固体高分子形燃料電池先端基盤研究センターを廃止 コンパクト化学プロセス研究センターを廃止 デジタルものづくり研究センターを廃止 生産計測技術研究センターのアダプトロニクスチーム、

環境計測チームを廃止し、同センターにプラズマ計測チ

ーム、マイクロ空間化学ソリューションチーム、環境機

能計測チームを設置

ナノ電子デバイス研究センターに相変化新機能デバイス

研究チームを設置

ナノチューブ応用研究センターに高度化ナノチューブチ

ームを設置

幹細胞工学研究センターを設置し、同センターに幹細胞

制御研究チーム、器官発生研究チーム、バイオセラピュ

ーティック研究チーム、医薬品アッセイデバイスチーム

を設置 デジタルヒューマン工学研究センターを設置し、同セン

ターに身体機能中心デザイン研究チーム、生活・社会機

能デザイン研究チーム、健康増進技術研究チーム、スマ

ートアシスト技術研究チームを設置 ナノスピントロニクス研究センターを設置し、同センタ

ーに金属スピントロニクスチーム、半導体スピントロニ

クスチームを設置 集積マイクロシステム研究センターを設置し、同センタ

ーにネットワーク MEMS 研究チーム、グリーンナノデ

バイス研究チーム、大規模インテグレーション研究チー

ム、ヘテロ融合研究チームを設置 コンパクト化学システム研究センターを設置し、同セン

ターにコンパクトシステムエンジニアリングチーム、触

媒反応チーム、ナノポーラス材料チーム、先進機能材料

チーム、無機生体機能集積チームを設置 先進パワーエレクトロニクス研究センターを設置し、同

センターにウェハプロセスチーム、SiC パワーデバイス

チーム、SiC デバイスプロセスチーム、SiC デバイス設

計チーム、GaN パワーデバイスチーム、パワー回路集

積チームを設置

エレクトロニクス研究部門のスピントロニクスグループ

を廃止

光技術研究部門の光波制御デバイスグループ、デバイス

機能化技術グループ、光電子プロセスグループを廃止

人間福祉医工学研究部門を廃止 脳神経情報研究部門を廃止 ナノテクノロジー研究部門を廃止 計算科学研究部門を廃止 生物機能工学研究部門を廃止 ユビキタスエネルギー研究部門にデバイス機能化技術グ

ループ、光波制御デバイスグループ、ナノ機能合成グル

ープ、高機能ガラスグループ、バイオベースポリマー研

究グループを設置

総 説

(16)

セルエンジニアリング研究部門を廃止 ゲノムファクトリー研究部門を廃止 先進製造プロセス研究部門の機能モジュール化研究グル

ープ、結晶機能制御研究グループ、エコ設計生産研究グ

ループ、超音波プロセス研究グループ、ネットワーク

MEMS 研究グループ、インプリント製造技術研究グル

ープ、高性能部材化プロセス研究グループ、高温部材化

プロセス研究グループ、ファインファクトリ研究グルー

プ、製造プロセス数理解析研究グループ、センサインテ

グレーション研究グループ、機能・構造診断研究グルー

プ、マイクロ熱流体研究グループを廃止し、同部門に電

子セラミックプロセス研究グループ、マイクロ加工シス

テム研究グループ、フレキシブル化学コーティング研究

グループ、セラミック機構部材プロセス研究グループ、

セラミック組織制御プロセス研究グループ、機能集積モ

ジュール化研究グループ、結晶制御プロセス研究グルー

プ、特異反応場プロセス研究グループ、機能・構造予測

検証研究グループ、システム機能設計研究グループ、製

造情報研究グループ、基盤的加工研究グループ、可視化

装置研究グループを設置

サステナブルマテリアル研究部門の環境適応型合金開発

研究グループを廃止

地質情報研究部門の地球物理情報研究グループ、地殻構

造研究グループ、沿岸堆積研究グループを廃止し、同部

門に地球物理研究グループを設置

環境管理技術研究部門の粒子計測研究グループ、環境流

体工学研究グループを廃止し、同部門に水環境工学研究

グループを設置

環境化学技術研究部門の高機能ガラスグループを廃止

エネルギー技術研究部門のナノエネルギー材料グループ

を廃止し、同部門に BTL 触媒グループを設置

健康工学研究部門を設置し、同部門に生体ナノ計測グル

ープ、バイオデバイスグループ、健康リスク削減技術グ

ループ、バイオマーカー解析グループ、ストレス応答研

究グループ、ストレス計測評価研究グループ、セルダイ

ナミクス研究グループ、人工細胞研究グループ、先端融

合テーマ探索グループ、細胞分子機能研究グループ、バ

イオインターフェース研究グループ、くらし情報工学グ

ループ、組織・再生工学研究グループ、ゲノムインテリ

ジェンス研究グループを設置 生物プロセス研究部門を設置し、同部門に植物分子工学

研究グループ、分子生物工学研究グループ、遺伝子資源

解析研究グループ、遺伝子発現工学研究グループ、機能

性蛋白質研究グループ、生体分子工学研究グループ、生

物材料工学研究グループ、遺伝子転写制御研究グルー

プ、生物共生進化機構研究グループ、生物資源情報基盤

研究グループ、酵素開発研究グループ、生体物質工学研

究グループ、生物システム工学研究グループを設置 バイオメディカル研究部門を設置し、同部門に蛋白質デ

ザイン研究グループ、健康維持機能物質開発研究グルー

プ、生物時計研究グループ、分子細胞育種研究グルー

プ、RNA プロセシング研究グループ、ナノバイオデバイ

ス研究グループ、バイオ界面研究グループ、バイオメジ

ャー研究グループ、脳遺伝子研究グループ、脳機能調節

因子研究グループ、シグナル分子研究グループ、構造生

理研究グループ、セルメカニクス研究グループ、細胞増

殖制御研究グループ、分子複合医薬研究グループを設置

ヒューマンライフテクノロジー研究部門を設置し、同部

門にアクセシブルデザイン研究グループ、マルチモダリ

産 業 技 術 総 合 研 究 所

(17)

ティ研究グループ、認知行動システム研究グループ、シ

ステム脳科学研究グループ、ユビキタスインタラクショ

ングループ、情報数理研究グループ、環境適応研究グル

ープ、身体適応支援工学グループ、ニューロテクノロジ

ー研究グループ、脳機能計測研究グループ、医用計測技

術グループ、治療支援技術グループ、高機能生体材料グ

ループ、人工臓器グループを設置 ナノシステム研究部門を設置し、同部門にエネルギー材

料シミュレーション研究グループ、エレクトロニクス材

料シミュレーション研究グループ、ケミカル・バイオシ

ミュレーション研究グループ、シミュレーション基礎理

論・開発研究グループ、ナノシミュレーショングルー

プ、ナノ構造物性理論グループ、ソフトナノシステムグ

ループ、ナノ構造制御マテリアルグループ、高密度界面

ナノ構造グループ、自己組織エレクトロニクスグルー

プ、分子ナノ物性グループ、分子スマートシステムグル

ープ、ナノバイオ・メディカルテクノロジーグループ、

ナノ科学計測グループ、近接場ナノ工学グループ、ナノ

流体プロセスグループを設置 器官発生工学研究ラボを廃止

エネルギー半導体エレクトロニクス研究ラボを廃止

ダイヤモンド研究ラボを設置

産学官連携推進部門の工業標準部を廃止

知的財産部門に技術移転室を設置

植物成長剤開発応用連携研究体を廃止

知的機能連携研究体を廃止

高速電力線通信連携研究体を廃止

バイオ高圧加工基盤連携研究体を廃止

バイオベースポリマー連携研究体を廃止

スマートグリッド通信制御連携研究体を設置

細胞情報工学連携研究体を設置

連携研究体グリーン・ナノエレクトロニクスセンターを

設置

つくばイノベーションアリーナ推進室に総括企画主幹、

企画主幹、審議役の職制を設置

技術移転室の設置に伴い、技術移転マネージャーの職制

を設置

平成22年5月1日 バイオメディカル研究部門にバイオマテリアル研究グル

ープを設置

平成22年6月1日 デジタルヒューマン工学研究センターに傷害予防工学研

究チームを設置

財務会計部門に契約審査役の職制を設置

平成22年6月15日 ナノ電子デバイス研究センターの戦略企画チームを廃止

平成22年10月1日 理事長直属部門、研究実施部門、研究関

連部門、管理部門等を廃止

研究推進組織として、研究センター、研

究部門、研究ラボ、研究企画室、特許生

物寄託センター、地質調査情報センタ

ー、地質標本館、計量標準管理センター

を設置

事業組織として、東京本部、北海道セン

ター、東北センター、つくば中央第一事

業所、つくば中央第二事業所、つくば中

央第三事業所、つくば中央第四事業所、

つくば中央第五事業所、つくば中央第六

事業所、つくば中央第七事業所、つくば

西事業所、つくば東事業所、臨海副都心

センター、中部センター、関西センタ

ー、中国センター、四国センター、九州

研究推進組織として、連携研究体を設置

ライフサイエンス分野研究企画室に生物資源管理グルー

プを設置

地質調査情報センターの地質調査企画室、地質情報管理

室、地質情報統合化推進室を廃止し、地質情報整備室、

地質・衛星情報統合室を設置

地質標本館に企画運営グループ、アウトリーチ推進グル

ープ、地質試料管理調製グループを設置

東京本部を除く事業組織に研究業務推進部または研究業

務推進室を設置

北海道センター、東北センター、臨海副都心センター、

中部センター、関西センター、中国センター、四国セン

ター、九州センターに、産学官連携センターを設置

イノベーション推進本部にイノベーション推進企画部、

知的財産部、産学官連携推進部、国際部、ベンチャー開

発部、国際標準推進部、つくばイノベーションアリーナ

総 説

(18)

センターを設置

本部組織として、企画本部、コンプライ

アンス推進本部、イノベーション推進本

部、研究環境安全本部、総務本部、評価

部、広報部を設置

研究企画室の設置に伴い、研究企画室長

の職制を設置

イノベーション推進本部の設置に伴い、

イノベーション推進本部長の職制を設置

研究環境安全本部の設置に伴い、研究環

境安全本部長の職制を設置

総務本部の設置に伴い、総務本部長の職

制を設置

特別な職として、研究統括、副研究統括

の職制を設置

研究コーディネータの職制を廃止

秋葉原事業所、八王子事業所、小金井事

業所、尼崎事業所、福岡西事業所の名称

を、それぞれ秋葉原支所、八王子支所、

小金井支所、尼崎支所、福岡西支所に変

推進部、イノベーションスクールを設置

知的財産部に知的財産企画室、技術移転室、知的財産管

理室を設置

産学官連携推進部に連携企画室、産学・地域連携室、関

東産学官連携推進室、プロジェクト支援室、共同研究支

援室、検査管理室を設置

国際部に国際協力室、安全保障貿易管理室を設置

ベンチャー開発部に開発企画室、ベンチャー支援室を設

国際標準推進部に標準企画室、標準化推進室、試験シス

テム開発支援室を設置

つくばイノベーションアリーナ推進部に TIA 企画室、

IBEC センターを設置

研究環境安全本部に研究環境安全企画部、環境安全管理

部、研究環境整備部、情報環境基盤部を設置

環境安全管理部に安全衛生管理室、施設環境管理室、ラ

イフサイエンス実験管理室、放射線管理室を設置

研究環境整備部に施設計画推進室、施設基盤情報室、建

設室を設置

総務本部に人事部、財務部、男女共同参画室、業務推進

企画室を設置

人事部に人事室、勤労室、人材開発企画室、バリアフリ

ー推進室、厚生室、健康管理室を設置

人事室に人事総括グループ、人事管理グループ、人事計

画グループ、給与管理グループを設置

厚生室に福利厚生グループ、共済組合グループを設置

財務部に財務室、制度・審査室、経理室、調達室を設置

財務室に総括グループ、支出予算グループ、収入予算グ

ループを設置

経理室に経理決算グループ、出納グループ、旅費グルー

プ、資産経理グループを設置

調達室に総括グループ、調達グループを設置

評価部に評価企画室、研究評価推進室を設置

広報部に広報企画室、報道室、広報制作室、科学・技術

コミュニケーション室を設置

事業所長、管理監補佐、研究コーディネータ補佐、戦略

研究ディレクター、組織運営ディレクター、ベンチャー

プランナー、チーフセクレタリ、技術開発チーム長、研

究業務推進統括監、総括事務マネージャー、産学官連携

コーディネータ、知的財産コーディネータ、国際コーデ

ィネータ、連携調整主幹、国際連携主幹、国際システム

主幹、国際協力主幹、国際交流主幹、事務マネージャー

の職制を廃止

研究企画室に企画主幹の職制を設置

地質標本館に上席研究員、主幹研究員、主任研究員の職

制を設置

事業所に副管理監の職制を設置

研究業務推進部室等にチーム長、チーム長代理の職制を

設置

イノベーション推進本部にイノベーション推進副本部

長、上席イノベーションコーディネータの職制を設置

イノベーションスクールに事務局長の職制を設置

研究環境安全本部に研究環境安全副本部長の職制を設置

研究環境安全企画部に総括企画主幹、企画主幹の職制を

設置

総務本部に総務副本部長の職制を設置

研究センター、研究部門、研究企画室、産学官連携セン

ター、イノベーション推進本部にイノベーションコーデ

ィネータ、連携主幹の職制を設置

産 業 技 術 総 合 研 究 所

(19)

グループにグループ長の職制を設置

サービス工学研究センターに大規模データモデリング研

究チーム、サービスプロセス 適化研究チームを設置

ユビキタスエネルギー研究部門の燃料電池機能解析研究

グループを廃止し、同部門にエネルギー材料標準化グル

ープを設置

地質情報研究部門の地質標本研究グループを廃止

ナノシステム研究部門のエネルギー材料シミュレーショ

ン研究グループ、エレクトロニクス材料シミュレーショ

ン研究グループ、ケミカル・バイオシミュレーション研

究グループ、シミュレーション基礎理論・開発研究グル

ープ、ナノシミュレーショングループ、ナノ構造物性理

論グループ、ソフトナノシステムグループ、ナノ構造制

御マテリアルグループ、高密度界面ナノ構造グループ、

自己組織エレクトロニクスグループ、分子ナノ物性グル

ープ、分子スマートシステムグループ、ナノバイオ・メ

ディカルテクノロジーグループ、ナノ科学計測グルー

プ、近接場ナノ工学グループ、ナノ流体プロセスグルー

プを廃止し、同部門にエネルギー材料シミュレーション

グループ、エレクトロニクス材料シミュレーショングル

ープ、分子シミュレーショングループ、ダイナミックプ

ロセスシミュレーショングループ、ソフトマターモデリ

ンググループ、ナノ理論グループ、ソフトデバイスグル

ープ、ソフトメカニクスグループ、フィジカルナノプロ

セスグループ、ナノ炭素材料研究グループ、グリーンテ

クノロジー研究グループ、スマートマテリアルグルー

プ、ナノシステム計測グループ、ナノ構造アクティブデ

バイスグループ、ナノケミカルプロセスグループ、スー

パーインクジェット技術グループを設置

マイクロ燃料電池連携研究体、スーパーインクジェット

連携研究体を廃止し、太陽電池モジュール信頼性評価連

携研究体を設置

平成22年12月1日 ブラディオン医用機器開発連携研究体を廃止

平成23年3月1日 東京本部の秋葉原支所を廃止