Agilent QuickProbe GC/MS システムによる...MassHunter Workstation Acquisition およ び...

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アプリケーションノート 食品試験・農業 著者 Melissa Churley, Philip Wylie, and David Peterson Agilent Technologies, Inc. 概要 GC/MS 直接挿入サンプリング機器である Agilent QuickProbe 、未抽出食品サンプルのスク リーニングにして評価しました。高速スクリーニングは、疑わしく 詳細調査必要試料即座測定できるため、食品分析最適ですAgilent QuickProbe GC/MS システムによる 食品60 スクリーニング

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アプリケーションノート

食品試験・農業

著者

Melissa Churley, Philip Wylie, and David PetersonAgilent Technologies, Inc.

概要

GC/MS 用の直接挿入サンプリング機器である Agilent QuickProbe を、未抽出食品サンプルのスクリーニングに関して評価しました。高速スクリーニングは、疑わしく詳細な調査が必要な試料を即座に測定できるため、食品分析に最適です。

Agilent QuickProbe GC/MS システムによる食品の 60 秒スクリーニング

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はじめに

食品や植物の一般的な GC/MS スクリーニングでは、QuEChERS や他の溶媒抽出メソッドのようなサンプル前処理が必要になります。QuickProbe システムを使用することにより、サンプル前処理が不要でシンプルかつ高速なスクリーニング分析が行えます。QuickProbe ユニットには短い GC カラムが付属しており、Agilent 5975 または 5977 GC/MSD システムのオーブンの上部に取り付けられています。サンプリングを行うには、ガラス製プローブをサンプルに触れてから、そのプローブを大気開放された加熱注入口に挿入します。ヘリウムキャリアガスのカラムを超高速加熱することにより、サンプル成分を分離します。データ取り込みと解析には Agilent MassHunter Workstation Acquisition および Unknowns Analysis ソフトウェアを使用し、ユーザーライブラリまたは市販のライブラリで検索してスペクトルを同定します。さまざまな油脂、香辛料混合物、飲料、植物、香料など、多数の種類の食品サンプルについて測定を行いました。サンプルは、本書で説明しているように、前処理を行っていない抽出前のサンプル、または既存のラボワークフローによって得られた抽出物のいずれかで構成されています。

実験方法

Agilent 5977B シングル四重極質量分析計を、独立した QuickProbe コントロールユニットを備えた Agilent 7890B GC システムに接続しました(図 1)。QuickProbe システム(G3971A)には、フリット付き特殊ライナ(5190-5104、図 2 参照)を含む開放注入口、1.5 m × 0.25 mm、0.1 µm DB-1HT カラム、および 0.7 m × 0.18 mm、0.18 µm DB1-MS カラム(質量分析計へのリストリクタとして使用)を搭載しました。

ヘリウムをキャリアガスとして使用しました。GC/MS システムはオートチューンでチューニングを行いました。ラウンドチップのガラス製サンプルプローブ(5190-5118)をタッチレスパッケージ(図 3)から取り出し、図 4 に示す QuickProbe ホルダ(G3971-60200)を使用して保持しました(サンプル挿入機器として使用)。ポケットチッププローブ(5190-5113)には、チップに圧痕、つまり「ポケット」が設けられているため、粉末サンプルの場合に便利です。表 1 に、機器の条件を示します。カラム温度保持時間と昇温レートは多少変更をしました。

図 1. Agilent 5977 GC/MS システムに取り付けられた Agilent QuickProbe (G3971A)システム

図 2. フ リット付き特殊ライナ(5190-5104)

図 3. タッチレスパッケージのサンプルプローブ(ラウンドチップ 5190-5118、ポケットチップ 5190-5113)

図 4. 左側にプローブが挿入されている、ロード位置のプローブホルダ(G3971-60200)

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最初にガラス製プローブをプローブホルダに挿入し、ロード位置に固定してから(図 4)、固体食品または植物の表面をプローブでこすり取ることにより、サンプリングを行いました。液体サンプルの場合は、プローブのチップを液体に浸しました。粉末または粒状サンプルの場合は、サンプルにガラス製プローブをこすりつけるか、またはサンプルをポケットチッププローブで軽くたたいてサンプリングしました。最初にガラス製プローブをホルダに格納して、サンプルを QuickProbe ユニットに導入しました。QuickProbe ユニット上の開始ボタンとプローブホルダ上のプランジャを同時に押し下げて分析を開始し、プローブを注入口の加熱部分に配置して加熱しました。挿入時間は通常 5 秒ですが、必要に応じて変化させました。データの取り込みと解析には、MassHunter Workstation Acquisition および Unknown Analysis ソフトウェアを使用しました。NIST ライブラリ検索で用いたマッチファクターの最小値は 60 でした。

表 1. 分析条件

QuickProbe および GC 条件

注入口温度 250 ℃(定温のみ)

注入モード スプリット(スプリットはおよそ 1:10 に固定)

カラム温度6 秒間 35 ℃を保持、 4 ℃ /sec で 325 ℃に昇温、0 秒間保持(または、延長して保持)

分析時間 通常、40~ 60 秒

トランスファーライン温度 280 ℃

MS 条件

イオン源温度 280 ℃

四重極温度 150 ℃

イオン化 EI モード

EMV モード ゲイン係数

ゲイン係数 10(対象のピークを検出するのに必要な値に設定する必要あり、最小値は 0.05)

溶媒待ち時間 0 分

スキャンタイプ スキャン(38~ 550 μ、6,250 μ/sec)

スキャン/秒 9.7

結果と考察

QuickProbe GC/MS システムを用いて、さまざまな食品成分を容易に識別することができました。クロマトグラムは、未抽出食品サンプルを分析して取得しました。これらのクロマトグラムは、非常に複雑なサンプルをスクリーニングしてターゲットを同定する際に、クロマトグラフィーによる分離と質量スペクトルデータ

のデコンボリューションを組み合わせることにより高い性能が実現されることを示しています(図 5~ 9)。括弧内の数値は、各成分の NIST ライブラリ一致スコアです。示されているとおり、GC/MS QuickProbe システムにより、魚、ごま種子、野菜など数種類の油が識別されました。

図 5. ごま油。96.6 という高いライブラリ一致スコアにより、特徴的な成分であるセサミンを同定

×107

取り込み時間(分)

カウント

00.20.40.60.81.01.21.41.61.82.02.22.42.62.8

0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 0.40 0.45 0.50 0.55 0.60 0.65 0.70 0.75 0.80 0.85 0.90 0.95 1.00 1.05 1.10

ヘキサデカン酸(97.6) (パルミチン酸)

(+)-セサミン(96.6)

γ-シトステロール(93.5) (植物ステロール)

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これは、ごま油中のセサミン(図 5)、魚油中のコレステロール(図 6)などの特徴的な成分が存在していたためです。図 7 の植物油のプロファイルは 2,4-デカジエナールのピークを示しています。これは酸化によるもので、揚げ物食品の特徴的な香りの一因です。

植物の場合は、ガラス製プローブに対して葉を手で押しつぶすことにより、成分をスクリーニングできました。カリフォルニア湾の月桂樹の葉からは特徴的な成分の umbellunone が検出されており(図 8)、この成分により本来のベイリーフであるゲッケイジュとこの種が区別されています1。カリフォルニア湾の月桂樹の葉には治療薬としての特性があるため、米国

の先住民族はさまざまな薬用目的でこの葉を使用していました。この種は「頭痛の木」と呼ばれることもあります。これは umbellunone に敏感な人が頭痛を発症する場合があるためです。サンプルの主成分として、メチルオイゲノールも検出されました。

×105

取り込み時間(分)

カウント

0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 0.40 0.45 0.50 0.55 0.60 0.65 0.70 0.75 0.80 0.85

ヘキサデカン酸(97.6)) (パルミチン酸)

オクタデカン酸(94)

4-ピリジン-カルボキサミド(78)

ノナナール(83)

コレステロール(87)

0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

図 6. コレステロールのピークを示す市販の魚油

×107

取り込み時間(分)

カウント

0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 0.40 0.45 0.50 0.55 0.60 0.65 0.70 0.75 0.80 0.85 0.90 0.95 1.00 1.05 1.10 1.15

ヘキサデカン酸 (91) (パルミチン酸)

9,12-オクタデカン酸(Z,Z)- (96.3)(リノール酸)

d,g-トコフェロール(93, 94)

スクアレン(79.4)

2,4-デカジエナール(E,E)-(95.5)(酸化生成物、香り成分)

ノナナール(91)(香料)

スチグマステロール(91.1)

γ-シトステロール(96.1) (植物ステロール)

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

図 7. 植物油のプロファイル(綿実)

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×106

取り込み時間(分)

カウント

0.100.050 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 0.40 0.45 0.50 0.55 0.60 0.65 0.70 0.75 0.80

Umbellunone (86.1)(その他の可能性のある一致)

Umbellunone (96)(カリフォルニア湾月桂樹

(headache tree)のモノテルペンケトン)

メチルオイゲノール(95.4)(天然物、スパイシーな香り)

ユーカリプトル(69.1)

テルピネオール、α (75.5)

ネロリドール(79.9)

ケイ皮酸(89.9)

シキミ酸(74.1)

炭酸、エイコシルビニルエステル(92)

ヘントリアコンタン(96.7) (C31 アルカン、植物)

16-ヘントリアコンタノン(94.3)

0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

5.0

5.5

6.0

6.5

図 8. カリフォルニア湾の月桂樹の葉(頭痛の木)

×106

取り込み時間(分)

カウント

0.10 0.14 0.18 0.22 0.26 0.30 0.34 0.38 0.42 0.46 0.50 0.54 0.58

チモール(84)(抗真菌薬)

4H-ピラン-4-オン ,2,3-ジヒドロ-3,5-ジヒドロキシ-6-メチル-(90)(酸化防止剤、セルロースの脱水)

n-イソブチル-2,4-デカジエンアミド(78)(ハーブ、香辛料 - ノコギリソウ)

9,12-オクタデカジエン酸(Z,Z)-(94)(リノール酸:食用油脂)

ピペリン(98)(黒コショウ)

ビタミン E(81)

ピペロナール(

76)

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

1.1

1.2

1.3

図 9. 黒コショウを含む香辛料をこすり取った混合物

図 9 に、コショウをこすり取った混合物のクロマトグラムを示します。このサンプルでは、黒コショウに含まれる成分のピペリンと、ハーブや香辛料に含まれる成分の n-イソブチル-2,4-デカジエンアミドが検出されました。ビタミン E も検出されており、ライブラリ一致スコアは 81 でした。

QuickProbe GC/MS システムにより、サンプルを前処理せずに 1 分未満で、数種類の食品サンプルを適切に特性解析できました。液体(油)、粒状または自然食品、植物などさまざまな種類のサンプルを、ラウンドチップまたはポケットチップガラス製プローブを用いてサンプリングしました。固体の植物(大麻など)

をサンプリングするその他の手段として熱脱着手法を用いた場合もサンプリングは適切に行われましたが、これについては別の文献で説明しています(資料番号 5994-1357EN)。

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結論

Agilent QuickProbe GC/MS システムは、複雑な食品や植物を事前に抽出しなくても、質量分析計に接続された短い GC カラムを用いて、即座にクロマトグラフ分析を行える優れた機能を有しています。Agilent Unknowns Analysis ソフトウェアと NIST ライブラリに対するスペクトル検索を用いて、特徴的なサンプル成分を同定しました。このようにして、QuickProbe GC/MS システムによる 60 秒の食品スクリーニングが実現しました。

参考文献

1. Wang, M. et al. Application of GC/Q-TOFQ Combined with Advanced Data Mining and Chemometric Tools in the Characterization and Quality Control of Bay Leaves. Planta Med 2018 Sep, 84(14), 1045–1054. doi: 10.1055/a-0585-5987. Epub 2018 Mar 14.

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