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ADS RF 回路デザイン・クック・
ブック
Vol.1
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ADS RF 回路デザイン・クック・ブック
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ADS RF 回路デザイン・クック・ブック
目次:
第 1 章: Agilent EEsof EDA の紹介と概要
第 2 章: ADS のシミュレーションとユーティリティ
第 3 章: ADS 回路シミュレーションの基礎とチューニング
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第 1 章:Agilent EEsof EDA の紹介と概要
はじめに:
本書は、高周波および高速デザインに携わる方々に、Agilent EEsof の EDA ソリューションを最大限に
活用していただくためのクイック・リファレンスです。さらに詳細な情報については、計測お客様窓口
までお問い合わせください。EEsof 製品の最新情報とアップデートは、Agilent EEsof ホームページに
記載されています。www.agilent.co.jp/find/eesof
図 1. EEsof EDA による高周波デザイン・チェーン
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Agilent EEsof による高周波デザイン・チェーン
今日の RF/マイクロ波/無線機器のマーケットで最も困難な作業の 1 つは、コンセプトから最終製品まで
のプロセスを主導する研究開発マネージャの仕事です。このためには、複数のテクノロジー、複数のデ
ザイン・チーム、複数のデザイン・フローを適用して成功させる必要があります。ほとんどの場合、こ
のためにはデザイン・チェーンの中で複数の会社との協力が必要になります。チェーン全体をうまく調
整しないと、チェーンが切れ、期限やコストを超過したり、ビジネスの機会を失ったりする可能性があ
ります。 高周波デザイン・チェーンでは、すべてはシステム・デザインから始まります。この時点で、システム
仕様、回路デザイン分割、実装する具体的なテクノロジーなどの決定が行われます。例えば、ガリウム
砒素 MMIC やシリコン RFIC に何を実装するのか、RF ボードまたは RF モジュールのデザインで何を実
現するかといったことが決定されます。 高周波デザイン・チェーンの連携が重要な例として、IC ファウンドリと IC デザイナ間のやりとりがあ
ります。ファウンドリからの最も基本的な要求の 1 つは、タイムリーなプロセス・デザイン・キット
(PDK)と正確なモデル・ライブラリが利用できることです。モデルの正確さは、デバイス・モデリン
グ・ソフトウェアと、モデルの導出に用いられた測定の確度に左右されます。 IC デザインは、モデルと PDK を IC デザイン・フローへの入力として使用します。ここでの成功の鍵は、
EDA ベンダと CAD エンジニアリングを活用して、エンジニアリング・ツールの相互運用性を利用して、
デザイン・フローをできるだけシームレスにすることです。 IC デザイン・プロセスの終わり近くでは、異なる 2 種類のデザイン検証手段が用いられます。1 つは、
IC のシミュレーションによる仮想検証です。プロトタイプが作成された後、実際に作成されたデバイス
の検証が行われます。このためには、IC デザイン・ツールと測定機器との緊密な連携が必要です。 Agilent EEsof の目標は、このような高周波デザイン・チェーンをお客様が実現できるようにすること
です。システム・デザインのために、Agilent Ptolemy およびワイヤレス・ライブラリ製品などの最先
端のシステム・デザイン・ソリューションを提供しています。 ファウンドリでのデバイス・モデリング用として、IC- CAP モデル抽出ソフトウェア/測定システムを
提供しています。これにより、NIST 標準にトレーサブルな Agilent の測定機器を、シミュレーションに
使用するモデルの精度のベースとして利用できます。正確な測定から正確なモデルが得られます。測定
が不正確ならモデルも不正確になります。また、ファウンドリが IC デザインの顧客をサポートする際
の効率を改善するために、Agilent は PDK 開発ツールも提供しています。 IC レベルでは、Agilent は IC デザイン・フローの改良手段を常に探し続けています。MMIC デザインに
関するその成果として、Advanced Design System(ADS)プラットフォームがあります。ADS は一般
的に、回路スケマティックからシミュレーション、レイアウトまでの各段階で使用されます。RFIC に
関しては、Cadence 社との緊密な協力関係により、Agilent のデザイン・テクノロジーを Cadence フロ
ーに組み込んでいます。この協力関係の結果として、Agilent の高周波デザイン・テクノロジーは、世
界中の主要な RFIC デザイン企業のほとんどで使用されています。
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RF ボードの分野は、20 年以上前に Agilent EEsof が発足して以来の事業です。現在まで引き続き、
Agilent のデザイン・ツールはこの分野での主要ツールとしての役割を果たしています。 LTCC テクノロジーの進歩とともに、RF モジュールの市場は急速に拡大しています。これは、パーツ数
を減らし、デザインを小型化するという要求に基づいたものです。Agilent のデザイン・テクノロジー
は、回路と平面電磁界の両方のテクノロジーをフローに組み込むことで、RF モジュール・デザインへ
の採用が急速に広がりつつあります。 デザイン検証は、シミュレーション機能と測定機能の両方を使って実行されます。Agilent は、シミュレーション・
アルゴリズムと測定を直接連携させる Agilent Connected Solution というコンセプトを作り上げました。これにより、
デザインを一貫した方法で測定できます。例えば、EVM に対して、デザインでも測定でも同じアルゴリズムを使
用できます。 以上でおわかりのように、Agilent EEsof が提供するものは、単に 1 つの作業のためのツールではあり
ません。お客様が高周波デザイン・チェーン全体を実現できるようにすることが目標です。このために、
デザイン・フローと、チェーンの各段階の連携に重点を置いています。測定、モデリング、シミュレー
ションに関する Agilent の専門技術により、デザイン・チェーン全体にわたって高い精度を維持するこ
とができます。
1. Advanced Design System(ADS):
回路デザインというと、抵抗、キャパシタ、インダクタ、トランジスタなどの素子レベルのデザインを
お考えになる方が多いかもしれません。しかし、実際には多くのお客様が、システム・レベルからデザ
インを開始します。次に示すのは、RF レシーバのシステム・レベルのブロック図です。ここには、RFフロントエンドやダウンコンバータなどの上位レベルの機能ブロックに必要な動作が記述されています。
ADS では、このレベルのデザインには Ptolemy または System シミュレータを使用します。システム・
デザイナは、ADS でデザインを行って、実際の信号をデザインへの入力に使用したり、シミュレーショ
ン・データから実際の信号をシンセシスして、デザインの出力を実際のハードウェアでテストすること
ができます。
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システム・デザインが完成して、各ブロックの仕様が決定されたら、下位レベルのサブシステムのデザ
インを開始できます。ADS は階層構造を採用しているため、下位レベルの回路をシステム・レベルのシ
ミュレーションで使用できます。このレベルでは、ミキサや増幅器などのコンポーネントの仕様が決定
されます。 最後に、トランジスタ・レベルの回路デザインを行います。回路のデザインができたら、機能ブロック
と置き換えることにより、システム全体の中でのその性能と影響を決定できます。 これと同じ階層デザインを、デザインの DSP 部分でも使用できます。例えば HDL コードや Matlab で
デザインしたコードがある場合には、それを ADS でシステム・シミュレーションに組み込んで利用で
きます。 最終的に、ADS の柔軟なデータ・ディスプレイを使って、お客様がさまざまなアプリケーションで使い
慣れているフォーマットで最終的な結果を表示できます。 上の図ではデザインをスケマティックで行っていますが、デザインは ADS のレイアウト・ツールでも
実行できます。レイアウトで行ったデザインを自動的にスケマティックに変換したり、スケマティック
を使用して回路のレイアウトを生成できます。 ADS で実行できる代表的な高周波回路デザインとして、増幅器、スイッチ、フィルタ、カップラ、パワ
ー・ディバイダ、周波数シンセサイザ、パッチ/アレイ・アンテナ、発振器などがあります。ADS ソフ
トウェアは、RF ボード、MMIC、RFIC、LTCC、RF-SiP、RF-MEMS、高速シグナル・インテグリティなど
の、さまざまなデザイン・フローをサポートしています。ADS ソフトウェアはまた、RF シミュレーシ
ョンや高度なミックスド・シグナル・システム・シミュレーションといった、さまざまなシステム・シ
ミュレーションを実行できます。さらに、主要無線規格のほとんどをサポートし、GSM、CDMA から
Mobile/Fixed WiMax、UWB、3GPP- LTE などの最新規格まで、仕様に準拠したワイヤレス・ライブラ
リを用意しています。
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2. Agilent Connected Solution:
EDA ソフトウェアを測定機器にリンクすることにより、研究開発における大きなシナジー効果を実現し、
個々のプラットフォームの利点活用できます。Agilent Connected Solution は、単なるファイル転送ツ
ールではなく、強力なデザイン/テスト/検証プラットフォームであり、より信頼性の高い製品をより
短期間で開発できます。
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3 . GoldenGate RFIC シミュレータ:
無線通信は、今日のエレクトロニクス産業で最も急速に成長しつつある分野の 1 つです。急速な成長に
より、RF エンジニアには、新しいプロセス・テクノロジーの採用、仕様の高度化、厳しいタイムトゥ
マーケットに合わせた開発期間の短縮といったプレッシャーがかかっています。 このような問題を解決するために開発されたのが、高度な RFIC デザインのための Xpedion 社の統合
RFIC シミュレーション/解析ソリューションです。Xpedion 社の GoldenGate シミュレータを使えば、
シミュレーション時間を大幅に短縮しながら、アクティブ・デバイスの能力を拡張できます。 テープアウト前にデザインの詳細な特性評価が可能なので、デザインの反復を減らしてコストを大幅に
削減できます。さらに、GoldenGate を使えば、ACPR、ブロッカ解析、寄生成分抽出後のシミュレーシ
ョンといった、従来回路レベルでは利用できなかった解析を、何千ものアクティブ・デバイスを含む無
線機に対して実行できます。GoldenGate は、業界最高速/最高能力の周波数ドメイン・ソリューショ
ンにより、このような問題を解決します。 Xpedion Design Systems 社は、2006 年 8 月に Agilent Technologies に買収されました。ここで説明している
GoldenGate シミュレータは、現在 Agilent EEsof EDA から販売されています。
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独自の RFIC 検証
GoldenGate の独自のアルゴリズムは、今日の複雑な無線機デザインの高度な要求に応えるために最適
化されています。このような要求に応えるには、これまでにない能力を持ったシミュレータが必要です。
GoldenGate は、このような要求に応えるために、トランシーバ全体を高速にシミュレートすることで、
テープアウト前に詳細な特性評価が可能になっています。
デザイン反復の削減
あらゆる RFIC プロジェクトに共通の問題は、テープアウト前に無線機の詳細な特性評価を行う方法が
ないことです。このため、コストのかかる再設計が発生し、タイムトゥマーケットの要求を満たせずに
市場からの撤退を迫られる場合もあります。これまで特性評価が不可能だった最大の原因は、既存のシ
ミュレーション・ツールの能力と速度の不足にありました。GoldenGate は、寄生成分を含めたトラン
シーバ・チェーン全体をシミュレートする能力と、きわめて高いシミュレーション速度、独自の周波数
ドメイン機能により、仕様を満たすために必要な解析が可能になり、デザイン反復の削減に寄与します。
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製造の容易化
デザイナの仕事には、動作する無線機をデザインすることだけではなく、大量生産を容易にすることも
含まれます。GoldenGate では、大規模なモンテ・カルロ解析を行って、プロセス・コーナーの探索や
歩留まり解析を実行できます。従来、このようなシミュレーションは時間がかかりすぎて、厳しいデザ
イン・スケジュールの中では実現不可能でした。GoldenGate は、独自の周波数ドメイン機能により、
従来のトランジェント・ベースの手法に比べて何桁もの高速化を達成し、必要な解析能力を実現してい
ます。
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第 2 章:ADS のシミュレーションとユーティリティ
使用する ADS ライセンス:
• リニア • DC • ハーモニック・バランス • トランジェント(HF-SPICE) • コンボリューション • 大信号 S パラメータ(LSSP) • AC シミュレーション • Circuit Envelope
目的:ADS のさまざまなシミュレーションを理解すること
CAD ソフトウェアを使用してデザインやシミュレーションを実行する場合、使用するソフトウェアの基
本を理解しておくことが非常に重要です。実行する手順はツールごとに異なるからです。ADS を使用す
る場合は、シミュレーションを正しくエラーなしに実行するために、以下のことを理解しておく必要が
あります。次に示すのは、ADS でどの種類の回路/システム・シミュレーションを実行する場合にも必
要な代表的な手順です。 1. 回路デザインのセットアップ(スケマティック・ダイアグラムの作成) 2. 適切なシミュレーション・コントローラを使用した周波数/時間/変調信号源または終端
(S パラメータの場合のみ)のセットアップ 3. デザインのシミュレーション(Simulate- >Simulate または F7 を押す) 4. データ・ディスプレイ・ウィンドウへの結果の表示
次のセクションでは、ADS 環境に慣れ、ソフトウェアを使いこなせるようになるために、ADS の基本
について簡単に説明します。
2.1 ADS プロジェクト・ウィンドウ
ADS を開始すると、次のウィンドウが表示されます。これは ADS メイン・ウィンドウまたはプロジェ
クト・ウィンドウと呼ばれます。ADS ではすべての情報がプロジェクト・ファイルに収められていて、
デザインの作成はすべて特定のプロジェクト内で行う必要があります。プロジェクトはいつでも開いて
アクセスできます。
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図 1. ADS メイン/プロジェクト・ウィンドウ
2.2 ADS のさまざまなシミュレータ
2.2.1 S パラメータ・シミュレーション:
RF デザイン・プロセスでの基本的なツールの 1 つとして、S パラメータ測定の使用があります。この測
定は、回路シミュレーション・プロセスの一部として使用できます。S パラメータは、コンポーネント
をブラック・ボックスとして記述するもので、電子部品の動作を特定の周波数範囲でエミュレートする
ために使用されます。 S パラメータは、アクティブ・コンポーネントやパッシブ・コンポーネントを使用した回路のデザイン
と解析で、さまざまな用途に用いられます。S パラメータは、導入されるのとほぼ時を同じくして、回
路シミュレーションで使用されるようになりました。RF/マイクロ波アプリケーションを対象とするシ
ンセシス/解析ツールのほとんどに、S パラメータによるシミュレーションの機能が備わっています。 Simulation- S_Param パレットにある S パラメータ・シミュレーション・コントローラ(S- Parameters)を使用すれば、次のことが可能です。
• コンポーネント、回路、サブ回路の S パラメータを求め、Y または Z パラメータに変換できます。 • 掃引周波数 S パラメータなどの値を、別の変数を変化させながらプロットできます。 • 群遅延または線形雑音をシミュレートできます。 • ミキサを使用した回路での小信号 S パラメータへの周波数変換の影響をシミュレートできます
(これは周波数変換回路の解析とも呼ばれます)。
Simulation- S_Param パレットには、一般的なシミュレーション・オプションと掃引のためのコンポー
ネントの他に、関連する測定の計算のためのさまざまな測定コンポーネントも含まれています。 このセクションでは、ADS で S パラメータ・シミュレータを使用するための代表的な手順を示します。
S パラメータの理論の詳細については、Agilent Web サイトから入手できるアプリケーション・ノート
AN154 を参照してください。
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ADS での S パラメータ・シミュレーションの使用モデル:
最初に、ADS ライブラリ・パレットにある S パラメータ・シミュレーション用の代表的な項目について
説明します。 S パラメータ・コンポーネント・パレットは、下の図のように、スケマティックの Simulation-S_Param の下にあります。これには、S パラメータ・シミュレーション・コントローラ、終端コンポー
ネント、および基本的な S パラメータ・シミュレーション結果から導出されるさまざまな測定(最大利
得、パワー利得、VSWR、安定度指数、信号源安定円、負荷安定円、利得円、雑音円など)が含まれて
います。これらのコンポーネントは、回路のセットアップとシミュレーションの際にスケマティックに
配置でき、S パラメータ・シミュレーションが終了したら結果をデータ・ディスプレイにプロットでき
ます。 S パラメータ・シミュレーションを実行するには、少なくとも 1 個の終端コンポーネントを配置するこ
とが必須であり、回路スケマティック上の終端の数に応じて、適切な出力 S マトリクスが作成されます。
例:ADS での S パラメータ・シミュレーション:
図 2. 代表的な S パラメータ・セットアップ(Insert->Templates->S-Param の下に 定義済みの S パラメータ・セットアップがあります)
2.2.2 DC シミュレーション
DC シミュレーションは、被試験デザイン(DUT)の DC 動作点特性を計算します。DC 解析はすべてのア
ナログ/RF シミュレーションのベースであり、あらゆるアナログ/RF デザインで使用されます。シミュ
レータは、トポロジー・チェックの後、回路の消費電力を含む DC 動作点解析を実行します。 DC シミュレーションで 1 つまたは複数のパラメータを掃引することもできます。これにより、モデル
のシミュレートされた DC 伝達特性(I- V 曲線)を実際の測定と比較して、モデル・パラメータを検証
できます。
Simulation Controller
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ADS では、DC シミュレーション・コンポーネントは Simulation- DC パレットから使用できます。
DC シミュレーションを使用する場合:
シングル・ポイント DC シミュレーションは、すべての AC、S パラメータ、トランジェント、ハーモニ
ック・バランス、Circuit Envelope シミュレーションの前に自動的に行われます。これは、上記のシミ
ュレーションの出発点となります。AC および S パラメータ・シミュレーションでは、これはノンリニ
ア・コンポーネントの線形化モデルを求めるために使用されます。トランジェント、ハーモニック・バ
ランス、Circuit Envelope シミュレーションでは、ノンリニア・シミュレーションに使用される初期予
測値を求めるために使用されます。 ADS の DC シミュレーションはまた、DC シミュレーション・コントローラを使用して手動で実行する
こともできます。最初にデザインを作成し、適切な電流プローブを追加し、データを収集するノードを
決めて名前を付けます。DC シミュレーション・セットアップでは、シングル・ポイントと掃引の両方
のシミュレーションを実行できます。掃引変数は、電圧源または電流源の値に関連付けることも、別の
コンポーネント・パラメータの値に関連付けることもできます。DC 掃引バイアスまたは掃引変数シミ
ュレーションを実行することにより、バイアス供給電圧や温度などの掃引パラメータに対応する回路の
動作点を調べることができます。 DC シミュレーションでは、次のことが実行できます。
• 被試験デザインの適切な DC 動作特性を検証できます。 • 回路の消費電力を求めることができます。 • モデルの DC 伝達特性(I- V 曲線)を実際の測定と比較することにより、モデル・パラメータを
検証できます。 • シミュレーション後の電圧と電流を表示できます。 • DC バック・アノテーションのためのデータを供給できます。
DC シミュレーションの使用法:
ADS で DC シミュレーションをセットアップするための指針を次に示します。
• スケマティックに DC シミュレーション・コンポーネントを追加します。デフォルト設定を編集
しない場合は、スケマティック上の他のコンポーネントの設定に基づいて、回路に追加された電
流プローブとノードに関連する値が計算されます。 • 入力電圧や抵抗値などのパラメータを一定の範囲で掃引するには、シミュレーション・コンポー
ネントをダブルクリックし、Sweep タブを選択します。掃引するパラメータの名前を入力しま
す。掃引タイプを選択し、範囲を入力します。 • 追加の掃引が必要な場合は、外部にパラメータ掃引コンポーネントを追加できます。 • 各パラメータの詳細については、開いたダイアログ・ボックスで Help をクリックしてください。
例:ADS での DC シミュレーション:
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図 3. BJT の IV 特性のための DC シミュレーション・セットアップ
(BJT と FET 用のカーブ・トレーサは、Schematic ページの Insert->Templates の下にあります)
図 4. サンプル BJT の I-V 特性
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2.2.3 ハーモニック・バランス(HB)シミュレーション
HB の基本:
ハーモニック・バランスは、周波数ドメインの解析手法であり、非線形回路やシステムの歪みをシミュ
レートするために使用されます。周波数ドメインで扱うのが自然なアナログ RF/マイクロ波回路の問題
をシミュレートするのに最適です。パワーアンプ、周波数逓倍器、ミキサ、変調器などを、大信号正弦
波入力に基づいて解析できます。 ハーモニック・バランス・シミュレーションでは、相互変調周波数変換を伴う回路のマルチトーン・シ
ミュレーションが可能です。これには、高調波間の周波数変換が含まれます。回路自体から発生する高
調波以外に、各信号源(スティミュラス)も、高調波や小信号側波帯を発生する可能性があります。ス
ティミュラスとしては、互いに高調波周波数の関係にない最大 12 個の信号源が使用できます。システ
ム内の周波数の総数は、メモリ、スワップ容量、シミュレーション速度などの実用的な考慮事項のみで
制限されます。 ハーモニック・バランス法は反復法です。この方法は、与えられた正弦波励振に対して定常状態解が存
在し、その解が有限フーリエ級数によって十分な精度で近似できるという仮定に基づいています。この
ため、回路のノード電圧は、すべての周波数成分の振幅/位相値で表されます。ノードからリニア・エ
レメント(すべての分布定数エレメントを含む)に流れ込む電流は、簡単な周波数ドメインのリニア解
析を使用して計算されます。ノードからノンリニア・エレメントに流れ込む電流は、タイム・ドメイン
で計算されます。タイム・ドメインから周波数ドメインへの変換には、一般化フーリエ解析が用いられ
ます。 ハーモニック・バランス解は切り捨てフーリエ級数によって近似されます。この方法では、本質的に過
渡動作を表現することはできません。時間導関数は、境界条件 v(0)=v(t)で正確に計算可能です。この条
件はすべての反復で自動的に満たされます。 切り捨てフーリエ近似+N 個の回路方程式から生じる残留誤差関数が最小化されます。 フーリエ係数に関する N×M の非線形代数方程式がニュートン法で解かれ、内部線形問題が次の方法で
解かれます。
• 小規模回路の場合は Direct 法(ガウスの消去法) • 大規模回路の場合は Krylov の部分空間法(GMRES など)
ハーモニック・バランスでは、ノンリニア・デバイス(トランジスタ、ダイオードなど)はタイム・ド
メインで評価(サンプリング)され、FFT によって周波数ドメインに変換されます。
ハーモニック・バランス・シミュレーションの使用法:
解析を成功させるには、次の方法を使用します。
• スケマティックに HarmonicBalance シミュレーション・コンポーネントを追加し、ダブルクリ
ックして編集します。Freq タブの下のフィールドを設定します。
o 少なくとも 1 つの基本波周波数と、シミュレーションで考慮する高調波の数(次数)を
入力します。
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デザインで考慮するすべての基本波に対して周波数定義を入力する必要があります。例えば、ミ
キサの場合は、RF と LO の周波数を定義します。
o 複数の基本波を入力した場合は、最大ミキシング次数を設定します。これにより、シミ
ュレーションで考慮するミキシング成分の数が制限されます。このパラメータの詳細に
ついては、『ADS HB Simulation』ドキュメントの「Harmonics and Maximum Mixing Order」のセクションを参照してください。
• 前のシミュレーションの解を利用して、シミュレーション・プロセスを高速化できます。詳細に
ついては、ADS のハーモニック・バランスのドキュメントの「Reusing Simulation Solutions」を参照してください。
• シミュレーションの過程で、バジェット計算を実行できます。バジェット解析の詳細については、
『Using Circuit Simulators 』ドキュメントの「Using Circuit Simulators for RF System Analysis」の章を参照してください。
• 小信号解析を実行できます。Small- signal オプションをオンにし、Small- Sig タブの下のフィー
ルドを設定します。詳細については、「Harmonic Balance for Mixers」を参照してください。 • 非線形雑音解析を実行できます。Noise タブを選択し、Nonlinear noise オプションをオンにし、
Noise(1)および Noise(2)ダイアログ・ボックスのフィールドを設定します。詳細については、
「Harmonic Balance for Nonlinear Noise Simulation」を参照してください。 • デザインに NoiseCon コンポーネントが含まれる場合は、Noise タブを選択し、NoiseCons オプ
ションをオンにし、フィールドを設定します。詳細については、「Harmonic Balance for Nonlinear Noise Simulation」を参照してください。
• デザインに OscPort コンポーネントが含まれる場合、Oscillator をオンにし、Osc タブの下のフ
ィールドを設定します。発振器デザインのシミュレーションについては、「Harmonic Balance for Oscillator Simulation」を参照してください。
ハーモニック・バランス・シミュレーションの動作:
ハーモニック・バランス・シミュレーションの実行に必要なのは、1 つまたは複数の基本波周波数と、
各基本波周波数に対する次数の指定だけです。他のパラメータはすべてデフォルト値のままにしておく
ことをお薦めします。他のパラメータをいっさい調整しなくても、シミュレータはほぼ最適な性能が得
られるようにシミュレーションを適切にセットアップします。例えば、マトリクス・ソルバの選択をデ
フォルトの Auto Select にしておくと、シミュレータは、特定の回路に対して、Direct ソルバと Krylovソルバのどちらが有効かを判定します。マルチトーン HB シミュレーションの場合は、シミュレータは、
ハーモニック・バランス・アシステッド・ハーモニック・バランス(HBAHB)を使用するかどうか、およ
び最適なシミュレーション速度を達成するためにそれをどのようにセットアップするかを自動的に判定
します。
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例:ADS でのハーモニック・バランス・シミュレーション:
図 5. 増幅器の HB シミュレーションのセットアップ例
(HB 1 トーンおよび 2 トーン・セットアップは、Insert->Templates の下にあります)
図 6. 増幅器 HB シミュレーションの結果
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2.2.4 トランジェントおよびコンボリューション・シミュレーション:
基本:
トランジェント/コンボリューション・シミュレーションでは、回路の電流と電圧の時間依存性を表現
する微積分方程式が解かれます。このような解析の結果は、時間および掃引変数(該当する場合)に関
して非線形です。ADS では、このコントローラは Simulation- Transient パレットから使用できます。 トランジェント/コンボリューション・シミュレーションでは、次のことが可能です。 a. SPICE タイプのトランジェント・タイム・ドメイン解析を回路に対して実行できます。 b. リニア・モデルの周波数依存損失および電力消費効果が存在する回路に対して、ノンリニア・トラン
ジェント解析を実行できます。このような解析は、コンボリューション解析と呼ばれます。
トランジェントまたはコンボリューション・シミュレーションの実行:
最初にデザインを作成し、電流プローブ(Probe Components パレット)を追加し、電圧およびパワー
のデータを収集するノードを決め、Wire Label パレットを使用して名前を付けます。
解析を成功させるには、次の方法を使用します。
• 信号源を選択する際に、周波数ドメインまたはタイム・ドメインの信号源を使用できます。ト
ランジェント信号源は、Sources- Time Domain パレットにあります。これらは、名前に小文字
の t が入っていることでわかります(例、VtStep:電圧源:ステップ)。 • スケマティックに Tran コンポーネントを追加します。ダブルクリックして編集します。Time
Setup タブの下のフィールドを設定します。
o 開始時刻と終了時刻を入力します。 o 最大タイム・ステップを入力します。これは、シミュレーションで使用される最大のタ
イム・ステップです。これは、回路で予想される最高周波数をサンプリングするのに十
分小さい値である必要があります。
• 周波数信号源で周波数が定義されていない場合は、Freq タブを選択し、基本波と次数を設定し
ます。 • Integration タブのパラメータは、切り捨て、積分方法、電荷精度を設定します。積分方法の詳
細については、「Integration Methods Used in Transient/Convolution Simulation」を参照し
てください。 • Convergence タブのパラメータは、収束を改善するために使用されます。詳細については、
「Solving Convergence Problems」を参照してください。 • 定常状態ディテクタを使用して、回路の定常状態を検出できます。「Using the Steady State
Detector and Transient Assisted Harmonic Balance」を参照してください。 • ここで説明していないパラメータは、デフォルト値のままにしておくことをお薦めします。各パ
ラメータの詳細については、Tran ダイアログ・ボックスで Help をクリックしてください。
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例:ADS でのトランジェント・シミュレーション:
図 7. LC コンポーネントを使用した代表的なトランジェント・シミュレーションのセットアップ
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図 8. 入力および出力ノードでの出力波形
例:ADS でのコンボリューションを使用したトランジェント・シミュレーション
図 9. マイクロストリップ LPF のトランジェント・シミュレーション (コンボリューション・エンジンは ADS によって自動的に起動されるので、
デザイナは全く意識する必要はありません。 マイクロストリップは周波数に依存する分布定数線路であることに注意してください)
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図 10. 出力のタイム・ドメイン波形
2.2.5 大信号 S パラメータ(LSSP)シミュレーション:
基本:
小信号 S パラメータが線形化された回路の小信号シミュレーションに基づいているのに対して、大信号
S パラメータは、ノンリニア回路のハーモニック・バランス・シミュレーションに基づいています。ハ
ーモニック・バランスは大信号のシミュレーション手法なので、その解には圧縮などの非線形効果が含
まれています。すなわち、大信号 S パラメータは、パワー・レベルの変動に応じて変化します。このた
め、大信号 S パラメータは、パワー依存 S パラメータと呼ばれる場合があります。 小信号 S パラメータと同様に、大信号 S パラメータは、反射波と入射波の比で定義されます。
入射波と反射波は次のように定義されます。
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ここで、 Viと Vjは、ポート i および j の電圧の基本波周波数でのフーリエ係数です。 Iiと Ijは、ポート i および j の電流の基本波周波数でのフーリエ係数です。 Z0iと Z0jは、ポート i および j での基準インピーダンスです。 R0iと R0jは、Z0iと Z0jの実数部です。
この定義は、V と I がフェーザではなくフーリエ係数であるという点で、小信号 S パラメータ定義の一
般化になっています。線形回路の場合は、この定義は小信号定義に帰着します。
LSSP シミュレーション・プロセス:
シミュレータは、次の動作を実行して、2 ポートの大信号 S パラメータを計算します。
• ポート 2 を基準インピーダンスの複素共役で終端します。ポート 1 の基準インピーダンスの複素
共役に等しいインピーダンスの信号源を使用して、ユーザ指定のパワー・レベル P1 の信号をポ
ート 1 に印加します。ハーモニック・バランスを使用して、ポート 1 と 2 の電流と電圧を計算
します。この情報を使用して、S11と S21を計算します。 • ポート 1 を基準インピーダンスの複素共役で終端します。ポート 2 の基準インピーダンスの複素
共役に等しいインピーダンスの信号源を使用して、パワーP2= S212P1 の信号をポート 2 に印加
します。ハーモニック・バランスを使用して、ポート 1 と 2 の電流と電圧を計算します。この情
報を使用して、S12と S22を計算します。
LSSP と S パラメータ・シミュレーションの比較:
S パラメータ・シミュレーションは、線形回路に対して実行されます。LSSP シミュレーションは非線形
回路に対して実行でき、利得圧縮やパワー・レベル変動などの非線形効果が含まれています。 LSSP でも S パラメータ・シミュレーションでも、対応するデータセットに PortZ[]および S[]のフィー
ルドが作成されます。LSSP では、この他に PortPower[]というフィールドも作成されます。これには、
各 LSSP ポート周波数に対する、各ポートで観察されるパワー(dBm 単位)が記録されます。 LSSP と S パラメータ・シミュレーションの比較については、LSSP1.dsn および SP1.dsn を参照してく
ださい。これらは、ADS の examples ディレクトリの Tutorial/SimModel_prj の下にあります。デー
タ・ディスプレイは LSSP1.dds と SP1.dds です。
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例:ADS での LSSP シミュレーション:
図 11. 非線形増幅器の LSSP シミュレーションのセットアップ
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図 12. LSSP シミュレーションでの利得圧縮対入力パワー・レベルの結果
2.2.6 AC シミュレーション:
AC シミュレーション・コンポーネントは、Simulation- AC パレットにあり、小信号リニア AC 解析を
実行します。解析の過程で、DC 動作点が計算され、非線形デバイスは動作点の周りで線形化されます。
この解析では、高調波や圧縮は考慮されません。AC シミュレーションでは、電圧利得、電流利得、相
互インピーダンス、相互アドミタンス、線形雑音などの小信号伝達パラメータを求めることができます。 AC 小信号シミュレーションを実行すると、最初に回路の DC 動作点が計算されます。リニア AC シミュ
レーションなどのリニア・シミュレーションで、シングル・ポイント DC バイアス・シミュレーション
を最初に実行する必要がある場合は、これをバイアス依存リニア・シミュレーションと呼びます。最も
一般的な例は、バイアスをかけたトランジスタを能動素子として使用する線形増幅器の場合です。DCバイアス・シミュレーションは、自動的に実行され、デザイナが意識する必要はありません(エラーに
より DC シミュレーションが収束しない場合を除く)。 DC バイアス・シミュレーションの後で、シミュレータはすべての非線形デバイスをバイアス・ポイン
トの周りで線形化します。線形化モデルは、電圧の小さいステップ変化による電流の小さいステップ変
化を表現します。これは、DC バイアス・ポイントで評価されたトランジスタ・モデル式の導関数です。
非線形抵抗および電流源は、小信号コンダクタンス dI/dV で値が決まる線形抵抗に置き換えられます。
信号源の電圧の範囲外の電圧に依存する電流源は、線形従属電流源 dI1/dV2 に置き換えられます。非線
形キャパシタは、値が dQ/dV の線形キャパシタに置き換えられます。 結果の線形回路が、指定した周波数範囲でシミュレートされます。小信号 AC シミュレーションは、ハ
ーモニック・バランス(スペクトラム)シミュレーションの前にも、最終解の初期予測値を計算するた
めに実行されます。 AC コントローラでは、次のことが可能です。
• 周波数掃引または変数掃引小信号リニア AC シミュレーションを実行できます。 • 電圧利得、電流利得、相互インピーダンス、相互アドミタンス、線形雑音などの小信号伝達パラ
メータを求めることができます。
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シミュレーションは、パラメータを掃引しながら繰り返し実行できます。パラメータの変化によって
DC 動作点が変化する場合は、DC 動作点と線形化回路がステップごとに再計算されます。
例:ADS での AC シミュレーション
図 13. BJT 増幅器の AC シミュレーションのセットアップ
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図 14. AC シミュレーション結果
2.2.7 Circuit Envelope シミュレーション:
概要:
Circuit Envelope シミュレーションは、時間変動する信号や変調 RF 信号を含む、高周波増幅器、ミキ
サ、発振器、およびサブシステムをシミュレートします。次のようなシミュレーションが可能です。
• デジタル変調された RF 信号を入力したときの増幅器のスペクトラム・リグロースと隣接チャネ
ル漏洩電力 • 発振器の立ち上がり時の過渡現象と、過渡制御電圧に対する周波数出力の時間変化 • PLL の過渡応答 • AGC や ALC の過渡応答 • 過渡振幅/位相/周波数変調を伴う信号への回路の影響 • 増幅器のタイム・ドメインでの高調波 • マルチレベル FSK、CDMA、TDMA などの変調信号を使用したサブシステム解析 • 増幅器やミキサの効率的な 3 次インターセプト(TOI)および高次インターセプト解析 • 過渡応答のタイム・ドメイン最適化 • 相互変調歪み(ただしほとんどの場合、ハーモニック・バランス・シミュレータで新しい
Krylov オプションを選択した方が高速に解が得られます)
Circuit Envelope シミュレーションの代表的なアプリケーションを次に示します。
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タイム・ドメイン・データの抽出:
必要な高調波のスペクトル線を選択することにより、次の解析が可能です。
o 振幅対時間 発振器の立ち上がり パルスド RF 応答 AGC の過渡応答
o 位相対時間 VCO の瞬時周波数、PLL のロック時間
o 振幅および位相対時間 コンスタレーション・プロット EVM、BER
周波数ドメイン・データの抽出
選択した時間変動するスペクトル線に FFT を適用することにより、次の解析が可能です。
o 隣接チャネル漏洩電力(ACPR) o ノイズ・パワー比(NPR) o 電力付加効率(PAE) o PLL の基準周波数フィードスルー o 高次相互変調(3 次、5 次、7 次、9 次)
ADS では、Envelope シミュレーション・コントローラは Simulation-Envelope パレットから使用できます。
動作理論:
Envelope シミュレータは、タイム・ドメイン表現と周波数ドメイン表現の特長を兼ね備え、デジタル変調 RF 信号な
どの I/Q 信号の詳細な解析を高速に実行できます。 簡単に言えば、このシミュレータでは入力波形が RF 搬送波として周波数ドメインで表現され、変調
「エンベロープ」が図 11 のようにタイム・ドメインで表現されます。
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図 15. タイム・ドメインの変調信号
Circuit Envelope シミュレーション・プロセスの基本的な概要を理解するための考え方を以下に示しま
す。 入力信号の変換 各変調信号は、搬送波をエンベロープ A(t)*ejf(t)で変調したものとして表されます。サンプリングされ
たエンベロープの振幅と位相の値が、ハーモニック・バランス解析の入力信号として使用されます。
図 16. 時間変動するエンベロープによるハーモニック・バランス解析
各タイム・ステップでハーモニック・バランス解析が実行されます。ここでは、通常の HB 方程式と、
時間変動するエンベロープによる影響の両方が考慮されます。このプロセスでは、異なるタイム・ステ
ップでの回路の応答を記述する一連のスペクトラムが作成されます。Circuit Envelope では、係数が時
間変動するフーリエ級数により回路の完全な非定常状態解が得られます。
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図 17. タイム・ドメインからのデータ抽出
必要な高調波のスペクトル線(この例では fc)を選択することにより、次の解析が可能です。
• 振幅対時間(発振器の立ち上がり、パルスド RF 応答、AGC の過渡応答) • 位相(f)対時間(t)(VCO の瞬時周波数(df/dt)、PLL のロック時間) • 振幅および位相対時間(コンスタレーション・プロット、EVM、BER)
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図 18. 周波数ドメインからのデータ抽出
選択した時間変動するスペクトル線に FFT を適用することにより、次の解析が可能です。 • 隣接チャネル漏洩電力(ACPR) • ノイズ・パワー比(NPR) • 電力付加効率(PAE) • PLL の基準周波数フィードスルー • 高次相互変調(3 次、5 次、7 次、9 次)
図 15 は、シミュレーションから得られる変調信号と時間変動するスペクトラムを示します。シミュレ
ーションで得られたスペクトラム成分は、振幅、位相、I(同相変調成分)、Q(直交位相変調成分)で
表示できます。スペクトラム成分のフーリエ級数を計算することにより、成分の周りのスペクトラムを
スペクトラム・アナライザの画面のように表示できます。
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図 19. 変調信号とそのシミュレートされた時間変動スペクトラム
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例:ADS での Circuit Envelope シミュレーション
図 20. 増幅器回路の Circuit Envelope シミュレーション
図 21. 入力ポートと出力ポートでの Circuit Envelope シミュレーションの結果
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ADS のさまざまなユーティリティとリソース:
• デザインガイド:
ADS に付属するさまざまなデザインガイドを利用すれば、増幅器、発振器、PLL、ミキサなどの複雑な
回路のデザイン・プロセスを効率的に開始できます。デザインガイドは、下の図のように、Schematicウィンドウの DesignGuide メニューにあります。
• テンプレート:
テンプレートは、デザイン・プロセスで頻繁に使用する共通の手順を、すぐに利用できるように保存し
ておくためのもので、Schematic または Data Display ウィンドウから利用できます。例えば、S パラメ
ータ、ハーモニック・バランス・シミュレーションのセットアップ、最適化、統計シミュレーションな
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どがあります。テンプレートを使用すると、毎回設定を行う必要がないので、約 30~40 %(デザイ
ン・サイクル全体に対して)の時間を節約できます。 テンプレートは、下の図のメニューから利用できます。File- >Save as Template を使用して、任意のス
ケマティック・デザインまたはデータ・ディスプレイをテンプレートとして保存できます。
• サンプル検索
ADS には、パワーアンプ、フィルタ、アンテナ、ミキサ、発振器、RF システム、ミックスド・シグナ
ル・システム・デザイン、無線システム・デザインなどのさまざまなアプリケーションに関する多くの
サンプルが付属しています。ADS メイン・ウィンドウのサンプル検索機能を使用すると、必要なサンプ
ルを検索できます。
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• スマート・シミュレーション・ウィザード:
ADS には、さまざまな種類のシミュレーションに対する自動セットアップと、定義済みのデータ・ディ
スプレイが付属しています。これには、式のポスト・プロセッシングなど、アプリケーションによって
はきわめて複雑になることがある作業が含まれます。スマート・シミュレーションは、図に示すように、
Schematic ウィンドウのツールバーのアイコンから利用できます。
![Page 37: ADS RF 回路デザイン・クック・...ADS RF 回路デザイン・クック・ブック 1 ADS RF 回路デザイン・クック・ブック 目次: 第1 章: Agilent EEsof](https://reader030.fdocument.pub/reader030/viewer/2022040723/5e324128a1deff0f2e47639e/html5/thumbnails/37.jpg)
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36
-
- {}-
-
回路またはデバイスを ここに挿入
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データは定義済みのデータ・ディスプレイ・テンプレートに自動的にプロットされます。
• Electronic Notebook:
ADS の Electronic Notebook は、プロジェクトのデザインと結果を使用して、HTML ドキュメントを作
成する機能です。ノートブックに備わっている操作と機能を使用すれば、次のことが可能です。
• ADS のスケマティック、レイアウト、データ・ディスプレイからのイメージの自動キャプチャ
と更新 • ADS がないところにも簡単に配布できる HTML フォーマットの結果出力 • 外部ソースからのグラフィック・イメージのインポート機能。これにより、他の製品からのドキ
ュメントを追加できます。
Electronic Notebook を使えば、デザイン・プロジェクトの洗練されたドキュメントを簡単に作成できます。
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ADS2008 による生産性の向上:
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39
ADS 2008 リリースでは、生産性に関する大幅な改善が行われています。その一部を次に示します。
• ダイナミック・パンとスクロール・ホイール・ズーム:
• 対話型プロジェクト管理:
既存のデザインを現在のデザインにドラッグ・アンド・ドロップ
-ライブラリを開き、参照し、選択する作業を 1 クリックで実行
階層内のすべてのデザインを 1 ステップでコピーして名前変更
カーソル位置での スクロール・ホイール・ ズーム
ダイナミック・パン: 押したまま動かす
メニュー選択が 不要
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40
-複数のコピー/名前変更操作を 1 つのコマンドで実行できるので、デザイン・バージョン
をすばやく作成可能
• 新しい 2 次元シースルー透明レイヤにより、マルチレイヤ RF ボード、SIP、MMIC
デザインを高速化
• 新しい 3 次元プレビュワー:
シースルー・マルチレイヤ・レイアウトにより、トレース、ビア、グランド、埋め込みパッ
シブ/アクティブ・コンポーネントの整列と位置をチェックできます。
前 ADS 2008
ドラッグ・アンド・ドロップ
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ADS RF 回路デザイン・クック・ブック
41
• 垂直方向に拡大された 3 次元プレビュワーにより、ビアの正しい配置と整列が可能
• 複雑な 3 次元レイアウトを分解して可視化することにより、電磁界シミュレーションやハード
ウェア製造の前に、ビア、トレース、パッドが正しく整列しているかどうかをチェック可能 • ダイナミック回転、ズーム、パンにより任意の方向からの表示が可能
• スライディング切断面を持つ 3 次元プレビュワーにより、複雑な 3 次元レイアウト
内のインターコネクトを可視化
拡大
Check and correct placement of 3D interconnects of traces, bondwires, and vias
ADS 2D ビュー ADS 3D ビュー
JEDEC ボンドワイヤ
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ADS RF 回路デザイン・クック・ブック
42
-3 次元レイアウト内に埋め込まれたインターコネクト、ビア、トレース、コンポーネントの断面図を
可視化することで、接続やアイソレーションが正しいかどうかをチェック可能
-マルチレイヤ・レイアウト内で切断面を対話的にスライドして、重要な信号インターコネクトの配
置が正しいかどうかを確認可能
- {}-
切断面なし YZ 切断面あり
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• 自動ビア挿入機能を持つトレース
前(トレースなし)
2D レイアウト
完成
マルチレイヤ・ トレース
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電磁界解析における、JEDEC 規格に準拠した高速で正確なボンドワイヤ描画
• パラメータ化された JEDEC 規格プロファイルに基づくボンドワイヤの作図
• ADS 2008 に統合されたフル 3 次元電磁界デザイン・システムによるシミュレーショ
ン
EEsof 製品の詳細については、下記を参照してください。http://eesof.tm.agilent.com ADS2008 の詳細については、下記を参照してください。
http://eesof.tm.agilent.com/products/ads2008.html
JEDEC ボンドワイヤ・パラメータ
新しいボンドワイ
ヤ・メニュー
3D ビュー
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第 3 章:ADS シミュレーションの基礎とチューニング
使用する ADS ライセンス:
• リニア・シミュレーション
はじめに:この章では、ADS のさまざまなウィンドウについて説明します。さらに、基本的な S パラメータ・シミュレ
ーションを実行し、ローパス・フィルタ回路サンプルのリアルタイム・チューニングを行って、回路応答を調整する
ための ADS の使用モデルについて解説します。 ADS 入門: ADS を開始すると、次のウィンドウが表示されます。これは ADS メイン・ウィンドウまたはプロジェ
クト・ウィンドウと呼ばれます。ADS ではすべての情報がプロジェクト・ファイルに収められていて、
デザインの作成はすべて特定のプロジェクト内で行う必要があります。プロジェクトはいつでも開いて
アクセスできます。
プロジェクトの作成
a. スケマティックまたはレイアウトの作成
b. 適切なシミュレーションのセットアップ
c. シミュレーションの実行(シミュレーション結果は、デフォルトでスケマティックと同じ名前を持つデータセット・ファイルに記録されます)
d. データ・ディスプレイ・ウィンドウでのグラフのプロット
ADS を開始すると、ADS メイン・ウィンドウに図 1 に示す開始ダイアログが表示されます。
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図 1. ADS メイン・ウィンドウと開始ダイアログ
プロジェクトは、上図のように“Create a new project”オプションをクリックすることにより作成でき
ます。クリックすると、次のウィンドウが表示され、プロジェクトの固有の名前と、レイアウトの作図
単位を指定できます。すべてのセットアップが正しく行われるように、レイアウト単位は必ずプロジェ
クトの開始時に選択することをお勧めします。ただし、単位はレイアウトの作成後にも変更できます。
図 2. ADS での新規プロジェクトの作成
プロジェクトが正常に作成されると、スケマティック、レイアウト、データ・ディスプレイのアイコン
が、下の図 3 のようにメイン・ウィンドウで強調表示されます。
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図 3. 新規プロジェクト・ビューを表示したウィンドウ
ADS ファイル・ビュー:
デフォルトでは、すべてのプロジェクトの下に 5 つのフォルダが存在します。各フォルダの役割を次に
示します。
a. data:このフォルダは、すべてのデータセット・ファイル(シミュレーションの実行後に作成されるファイル)を保存するために使用されます。
b. mom_dsn:このフォルダは、Momentum シミュレーション(ADS の電磁界シミュレーション)で使用されます。
サンプル検索 スケマティック レイアウト データ・ディスプレイ
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c. networks:このフォルダは、特定のプロジェクトの下で作成されるすべてのスケマティックおよびレイアウト・デザインを保存するために使用されます。
d. synthesis:このフォルダは、デジタル・フィルタ・シンセシスで用いられます。
e. verification:このフォルダは、DRC(デザイン・ルール・チェッカ)を実行した場合に、検証結果を保持するために使用されます。
デザインを開始するには、図 3 に示すように、スケマティック・アイコンまたはレイアウト・アイコン
をクリックします。スケマティックをクリックした場合は図 4、レイアウトをクリックした場合は図 5のウィンドウが表示されます。
図 4. デフォルトの Schematic ウィンドウ
ライブラリ・ パレット・ コンポーネント
ファイル・ オプション
移動/コピー/
削除/アンドゥ ズーム・ オプション
回転/ 鏡映反転
ライブラリ ワイヤ シミュレート
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図 5. デフォルトの Layout ウィンドウ
注記:ADS の独自の機能として、スケマティックでデザインを開始し、デザイン同期を使用してレイア
ウトを作成できます。また逆に、レイアウトから開始してスケマティックを作成することもできます。
例:ローパス・フィルタ回路のデザイン:
ADS で回路デザインを開始するには、図 6 のようにコンポーネント・ライブラリ・パレットからコンポ
ーネントを配置します。
図 6. ライブラリ・パレットからのコンポーネントの選択
コンポーネントを配置するには、目的のコンポーネントを選択してクリックします(配置するためにコ
ンポーネントをクリックしてドラッグする必要はありません)。カーソルをコンポーネント配置領域に
持っていくと、十字線とコンポーネントのゴースト・イメージが下の図のように表示されます。
作図ユーティリティ
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図 7. 配置モードでのコンポーネント
ADS ではコンポーネントの複数配置が可能なので、1 回の選択で必要な場所を複数回クリックすること
により、1 種類のコンポーネントを複数の場所に配置できます。終わったら、”Esc”を押して配置コマン
ドを終了します。この練習では、3 個のインダクタを水平方向に配置し、1 個のキャパシタを選択して、
Ctrl+R を押すことにより 90°回転します。
図 8. インダクタとキャパシタの配置
下の図のようにローパス・フィルタ回路を完成します。
図 9. インダクタとキャパシタを使用した LPF 回路デザイン すべてのコンポーネントを配置したら、下の図 10 に示すように、ワイヤを使用してコンポーネント同
士を接続し、適当な名前(filter1 など)を付けてデザインを保存します。
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図 10. コンポーネントを接続するためのワイヤ・アイコン
回路が完成し、コンポーネント同士が接続されたら、目的の回路応答をプロットするために、ADS で適
切なシミュレーションを実行するためのセットアップを行う必要があります。周波数ドメインで回路応
答を評価する最善の方法は、S パラメータを使用することです。ADS でこれを実現するには、S パラメ
ータ・シミュレーションを実行します。 ADS で S パラメータ・シミュレーションを実行するには、次の 2 つの操作が最低限必要です。
a. スケマティック上に S パラメータ・コントローラを配置し、開始/終了周波数と掃引ポイント数を指定します。
b. 必要な数の終端コンポーネントを接続します。
上記 2 つのステップは、下の図 11 に示すように、ADS ライブラリの Simulation- S_Param パレットを
使用して実行できます。
図 11. ADS のパレット・ライブラリ・リスト
Simulation- S_Param を選択すると、次のコンポーネントが表示されます。
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図 12. S パラメータ・シミュレーション・コントローラ
図 12 に示す S パラメータ・コントローラをスケマティック上に配置し、それをダブルクリックしてパ
ラメータ入力ダイアログ・ボックスを開き、下に示すようにパラメータを入力します。
図 13. 掃引周波数範囲のセットアップ
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図 14. S パラメータ・シミュレーション用の終端コンポーネント
上の図 14 に示すように、Term コンポーネントを使用して終端コンポーネントを入力と出力に配置しま
す。完成した LPF 回路は次の図のようになります。
図 15. シミュレーション・コントローラと終端を配置して完成した LPF 回路
ここで、下の図 16 に示すシミュレーション・ギア・アイコンをクリックするか、キーボードの“F7”を押すことにより、回路シミュレーションを開始できます。
図 16. シミュレーション開始アイコン
回路シミュレーションが終了すると、次のウィンドウが表示され、警告/エラー・メッセージとシミュ
レーション終了情報を示します。エラーや警告は、ウィンドウの上半分に表示されます。
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図 17. シミュレーション・ステータス・ウィンドウ
シミュレーションが正常に終了すると、下の図 18 に示すように、データ・ディスプレイ・ウィンドウ
が自動的に開きます。
図 18. デフォルトのデータ・ディスプレイ・ウィンドウ
データ・ディスプレイ・ウィンドウには、さまざまな種類のグラフ、表などを使用して、必要な形式で
結果をプロットできます。この練習では、次に示すように、直交座標グラフを使用してフィルタの伝達
特性をプロットします。
図 19. 直交座標プロットの選択
グラフを選択するには、グラフをクリックして、カーソルをデータ・ディスプレイ・ウィンドウ内に移
動します。下の図 20 のように、グラフのデフォルトのサイズがカーソル位置に表示されます。クリッ
クするとデフォルトのサイズが使用され、クリックしてドラッグするとグラフを必要なサイズに変更で
きます。
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図 20. グラフ・ウィンドウのデフォルト・サイズの表示
マウスをクリックすると、下の図 21 のように、プロット可能な測定のリストが表示されます。
図 21. プロットする結果の選択
この例では、下の図 22 および図 23 のように、S(2,1)を選択し、>>Add>>をクリックして、この LPF の
伝送応答をプロットします。さらに、単位として dB を選択します。
図 22. S(2,1)を選択 図 23. 単位として dB を選択
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下のグラフは、このフィルタに関して得られた dB(S(2,1))応答です。
図 24. LPF の dB(S(2,1))応答
ここでは、ライブラリ・パレットからコンポーネントを選択してスケマティック上に配置することでス
ケマティックを作成し、単純な S パラメータ・シミュレーションを ADS で実行する方法を説明しまし
た。これで、ADS の基本的なインタフェースと使用モデルがおわかりいただけたと思います。 上図からわかるように、結果はこのフィルタで期待される代表的な LPF 応答と一致しないので、目的の
応答が得られるように回路をチューニングします。ADS にはリアルタイムのチューニング機能があり、
コンポーネントの値を変更して、応答をほぼリアルタイムで確認できます。このための手順を次に示し
ます。
リアルタイム・チューニング:
下の図のように、ADS スケマティックでチューナ・アイコンをクリックします。
図 25. ADS のチューニング・コンポーネント
チューナをクリックすると、次のウィンドウが表示されます。
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図 26. Tune Parameter ウィンドウ
下の図 27 のように、マウス・カーソルをコンポーネント値の上に移動して選択すると、値がチューニ
ング可能になります。
図 27. チューニングするコンポーネント値の選択
1 個目の直列インダクタと 1 個目のシャント・キャパシタを選択して、チューニングが行えるようにし
ます。
図 28. インダクタとキャパシタをチューニング対象として選択
選択したコンポーネントは、図 30 に示すように Tune Parameter ウィンドウに表示されます。
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図 29. チューニング・ウィンドウ上で選択された L と C
インダクタとキャパシタの最大値を 100 に変更し、下の図 31 に示すように、グラフとチューニング・
ウィンドウが同時に見えるようにウィンドウを整列します。図 31 に示すスライダを動かして L と C の
値を変更すると、結果の変化をリアルタイムで観察できます。
図 30. L と C をチューニングして結果の変化をリアルタイムで観察
下の図のように、スライダを動かして、L の値を 81 nH、C の値を 36 pF に変更します。
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図 31. L と C の最終的なチューニング値と結果のグラフ
Update Schematic をクリックして、チューニングした値をスケマティック上のコンポーネントに反映
させ、Close をクリックしてチューニング・ウィンドウを閉じます。チューニングされた最終的なスケ
マティックを次に示します。
図 32. チューニングされた最終的な LPF 回路
注記:
ADSの基本と入門用のヒントについては、ADS Quick Start Video(Agilent EEsof Webサイトから入手
可能)またはGetting Started Manual(ADSドキュメントまたはADSハードコピー・マニュアルの一部とし
て入手可能)を参照してください。
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Published in Japan, November 26, 2009 5990-4790JAJP
0000-08DEP