Ⅱ 記録に残すための効果的・効率的な評価方法について · 内容...

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理科 理科 理科 理科における における における における評価 評価 評価 評価・評定 評定 評定 評定の在り方 学習評価 学習評価 学習評価 学習評価の進め方について について について について 1 単元における観点別学習状況の評価の進め方について 学習指導要領の再確認(評価の観点及び趣旨について)。 (2) 各観点における評価内容の見直し(普段の授業中,定期テスト)。定期テストは,評価全体の約50 %を占めるようにする。 (3) 各観点での評価情報の確認 観点 関心・意欲・態度 科学的思考・表現 観察・実験の技能 知識・理解 内容 中間・期末テスト 中間・期末テスト 中間・期末テスト 中間・期末テスト 発表 ノート 実験・観察 中理の基礎 ノート ワークシート ノート 自己評価 小テスト 自由研究(1・2年) 自己評価 小テスト 自己評価 小テスト 自己評価 小テスト (4) 評価情報の収集 ①自己評価を毎時間行い数値化する。(2点,1点,0点) ただし,自己評価においては,生徒の主観が入るため,できるだけ具体的な基準を生徒に伝え毎時 間行う。 (例)自然事象についての知識・理解 「花のつくりで,外から順番に答えよ。また,アブラナではそれぞれ何本(枚)か。」 2つとも答えられれば2点,1方だけなら1点,両方答えられなければ0点 科学的思考・表現 「光合成の実験で3本のBTB溶液の色の変化の理由が答えられるか。」 3本とも答えられれば2点,2本だけなら1点,1本以下は0点 というように点数化を行う。ただし,総括するときには自己評価に対して個人差(判断基準の あまい生徒と,厳しい生徒の差)を考えておくことは不可欠である。 つまり,自分に厳しい生徒が判断すると,できるにもかかわらず満点でなくなり信頼性が低下 する。そのため,最終の段階で,調整が不可欠である。 自己評価カード 単元名 月日 授業の内容 評価の観点1 評価1 評価の観点2 評価2 忘 挙手回数 授業の感想 関思技知 JKL 関思技知 JKL 関思技知 JKL 関思技知 JKL ②自然事象への関心・意欲・態度 毎時間の積み重ねが主な材料となる。テストでも評価材料を集めるが,基本的にはテストではこ の観点の問題は,あまりないため全体に占めるテストの割合は他の観点に比べ下げている。 ③科学的思考・表現 テストだけでなく「ワークシートにまとめを考えさせる。」,「実験結果からの考察を考えさせる。」 という授業における評価を活用する。また,ノートを活用しレポートを作成して評価を行う。

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理科理科理科理科におけるにおけるにおけるにおける評価評価評価評価・・・・評定評定評定評定のののの在在在在りりりり方方方方

ⅠⅠⅠⅠ 学習評価学習評価学習評価学習評価のののの進進進進めめめめ方方方方についてについてについてについて

1 単元における観点別学習状況の評価の進め方について

学習指導要領の再確認(評価の観点及び趣旨について)。

(2) 各観点における評価内容の見直し(普段の授業中,定期テスト)。定期テストは,評価全体の約50

%を占めるようにする。

(3) 各観点での評価情報の確認

観点 関心・意欲・態度 科学的思考・表現 観察・実験の技能 知識・理解

内容 中間・期末テスト 中間・期末テスト 中間・期末テスト 中間・期末テスト

発表 ノート 実験・観察 中理の基礎

ノート ワークシート ノート 自己評価 小テスト

自由研究(1・2年) 自己評価 小テスト 自己評価 小テスト

自己評価 小テスト

(4) 評価情報の収集

①自己評価を毎時間行い数値化する。(2点,1点,0点)

ただし,自己評価においては,生徒の主観が入るため,できるだけ具体的な基準を生徒に伝え毎時

間行う。

(例)自然事象についての知識・理解

「花のつくりで,外から順番に答えよ。また,アブラナではそれぞれ何本(枚)か。」

2つとも答えられれば2点,1方だけなら1点,両方答えられなければ0点

科学的思考・表現

「光合成の実験で3本のBTB溶液の色の変化の理由が答えられるか。」

3本とも答えられれば2点,2本だけなら1点,1本以下は0点

というように点数化を行う。ただし,総括するときには自己評価に対して個人差(判断基準の

あまい生徒と,厳しい生徒の差)を考えておくことは不可欠である。

つまり,自分に厳しい生徒が判断すると,できるにもかかわらず満点でなくなり信頼性が低下

する。そのため,最終の段階で,調整が不可欠である。

自 己 評 価 カ ー ド

単元名

月 日 授業の内容 評価の観点1 評価1 評価の観点2 評価2 忘 挙手回数

授業の感想 物

関思技知 J K L 関思技知 J K L

関思技知 J K L 関思技知 J K L

②自然事象への関心・意欲・態度

毎時間の積み重ねが主な材料となる。テストでも評価材料を集めるが,基本的にはテストではこ

の観点の問題は,あまりないため全体に占めるテストの割合は他の観点に比べ下げている。

③科学的思考・表現

テストだけでなく「ワークシートにまとめを考えさせる。」,「実験結果からの考察を考えさせる。」

という授業における評価を活用する。また,ノートを活用しレポートを作成して評価を行う。

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④観察・実験の技能

観察・実験の実験中の態度やレポートを得点化する。観察・実験すべてで行うことができればよ

いが,特に重点的に行う時間を設定する。

⑤自然事象への知識・理解

基本的にはテスト方の活用。ただし,小テストなどの継続的なテストも活用する。(場合によっ

ては,県版プリントなど)

(5) 評価情報の集約

2 学期末・学年末における観点別評価の総括の方法について

各観点100点満点で,情報の割り振りを行う。

本校では全教科,「B」は全体で40%以上80%未満と設定している。

観点 興味・関心・意欲 科学的思考 技能・表現 知識・理解

得点 100 100 100 100

内容 中間テスト 15 中間テスト 30 中間テスト 30 中間テスト 30

期末テスト 15 期末テスト 30 期末テスト 30 期末テスト 30

発表 20 ノート 10 実験・観察 10 中理の基礎 10

ノート 20 ワークシート 10 ノート 10 自己評価 10

自由研究 10 自己評価 10 自己評価 10 小テスト 20

自己評価 10 小テスト 20 小テスト 20

小テスト 10

A 80~100 80~100 80~100 80~100

B 40~ 79 40~ 79 40~ 79 40~ 79

C 0~ 39 0~ 39 0~ 39 0~ 39

3 評定への総括の進め方について 評 定 合 計 得 点

観点で,重みづけをせず,一律100点満点を加え,400

点満点で,右の表のように設定している。 5 360 ~ 400

各教科共通で全体の「5」は90%以上,「4」は80%以上,

「3」は40%以上,「2」は10%以上,「1」は10%未 4 320 ~ 359

満と設定する。

課題としては,各項目の得点の割合が,どれだけ正当性があ 3 160 ~ 319

るかどうかがあげられる。また,「A」,「A」,「A」,「B」で

どうしても「5」がつく場合が出てくるため, 保護者へ,「観 2 40 ~ 159

点別」と「評定」のつけ方の説明をする必要がある。

1 0 ~ 39

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Ⅱ 記録に残すための効果的・効率的な評価方法について

【事例1】

1111 単元名単元名単元名単元名およびおよびおよびおよび目標目標目標目標

単元名 「化学変化と原子・分子」

目 標 化学変化についての観察・実験を通して,化合,分解などにおける物質の変化やその量的な関

係について理解するとともに,これらの事象を原子・分子のモデルと関連づける見方や考え方を

養い物質の成り立ちや化学変化のしくみに対する興味・関心を高める。

2222 単元単元単元単元のののの評価規準評価規準評価規準評価規準

【自然事象への関心・意欲・態度】

化学変化と原子・分子に関する事物・現象に関心をもち,意欲的に観察・実験を行い,それらの事象を

日常生活と関連づけて考察しようとする。

【科学的な思考】

化学変化と原子・分子に関する事物・現象について,観察・実験などを行ったり事象の生じる要因やし

くみを科学的に考察したりして,問題を解決することができる。

【観察・実験の技能・表現】

化学変化と原子・分子に関する事物・現象について観察・実験などを行い,基礎操作を習得するととも

に,規則性を見いだしたり自らの考えを導きだしたりして,創意ある観察・実験の報告書を作成し,発表

することができる。

【自然事象についての知識・理解】

化学変化と原子・分子についての基本的な概念や原理・法則を理解し,知識を身に付ける。

3333 評価評価評価評価のののの実際実際実際実際

(1) 単元の目標 物質を分解する実験を行い,分解して生成した物質からもとの物質の成分が推定できるこ

とを見いだすとともに,物質は原子や分子からできていることを理解し,原子は記号で表さ

れることを知り,これらの事象を日常生活と関連づけて考察しようとする意欲と態度を養う。

(2) 単元の指導のポイント

◇ 学習シートを活用しての授業実践

自己評価を行うにあたって,生徒が授業の見通しを持ちながら学習活動に取り組めるようにするために,

学習シート(図1)を活用して学習支援を行った。この学習シートについては,机間指導の際に点検して

アドバイスを与え,提出時に記入状況の最終確認を行った。

図1 学習シート(一部抜粋)

◇ 授業実践後の小テスト

毎授業の始めに,前時の学習内容の復習・確認のための小テストを実施。

◇ 自己評価シートの集計と

教師のコメントの記入(右図)

番号 学習内容および活動 自己評価のポイント

・カルメ焼きを意欲的につくることができる。  【関心・意欲・態度】

・カルメ焼きをつくる過程を通して,なぜカルメ焼きがふくらむのか,

根拠を持って予想することができる。      【科学的な思考・表現】

《交流のポイント》

・カルメ焼きはなぜふくらむのか。

・前時の予想をもとに,発生する気体を調べる方法を考え,

 実験することができる。           【実験・観察の技能】

・実験結果をもとに,炭酸水素ナトリウムを加熱すると,どのような

 変化が起こるか説明することができる。      【知識・理解】

《交流のポイント》

・発生する気体が何か調べるためにはどのような方法があるか。

○炭酸水素ナトリウムを加熱して,できる物質を調べる。

●炭酸水素ナトリウムを加熱すると,

(          )と(             )と

(    )ができる。

「「「「物質物質物質物質のののの変化変化変化変化」」」」学習学習学習学習シートシートシートシート

○ カルメ焼きをつくろう

授業番号授業番号授業番号授業番号 あなたにひとことあなたにひとことあなたにひとことあなたにひとこと

【関心・意欲・態度】 A A A A ・ ・ ・ ・ B B B B ・ ・ ・ ・ CCCC

【科学的な思考】 A A A A ・ ・ ・ ・ B B B B ・ ・ ・ ・ CCCC

《交流のポイント》 A A A A ・ ・ ・ ・ B B B B ・ ・ ・ ・ CCCC

反省・感想・疑問

自己評価自己評価自己評価自己評価

 

 

 

 

 

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授業後に生徒自らが記入した自己評価シート(ファイルまたは台紙に貼付)を毎回回収し,記載内容等

について点検・記録の後返却した。点検の際には,各観点の評価状況のデータを集計するとともに,「反

省・感想・疑問」の欄への記入状況に変容が見られるかどうかの確認を行い,コメントを書き加えた。

⑶ 評価の視点

◇ 学習シートへの記入と小テストの結果(図2)

【関心・意欲・態度】・・学習シートの( )内への記入状況や解答時の○付け,訂正がきちんと行わ

れているかを3段階で評価。

【知識・理解】・・小テストにより各回5点満点で評価。

◇ 自己評価シートへの記入結果と交流状況(図3)

【関心・意欲・態度】・・「反省・感想・疑問」欄への記入および「交流」の状況を3段階で評価。

【4観点】・・A,B,C3段階で自己評価した結果の集計から,指導の重点を確認。

◇ ペーパーテストの結果

【4観点】・・定期テスト(100点満点)における設問を4観点に分類して評価。(各観点ごとの達

成度を確認させるために,テストの解説時に観点別個票を生徒自身で作成。)

⑷ 単元の授業の流れと評価

① 前時の学習内容の評価 ―― 小テスト実施(得点は授業後に名簿へ記入)

② 学習シートを用いて,小テストの解答及び学習内容の再確認

③ 本時の学習課題・評価ポイントの確認(学習シートを活用し見通しを立てる)

④ 机間指導による「交流」の評価 ―― (話し合いの状況を名簿へ記入)

⑤ 授業後,自己評価票作成(評価結果を名簿へ記入)

⑥ 学習シートの記入状況の評価 ―― (授業後に名簿へ記入)

4444 評価評価評価評価のののの記録記録記録記録

図2

①語句記入

( )内への記入状況

②○付け

( )内へ記入した語

句の解答状況

③訂正記入

誤答に対する訂正状況

○:すべてOK

△:不十分

×:未記入等

図3

自己評価集計表

A B C

No. % % %

① A B A A 21 10 3 62626262 29292929 9999

② B C C B 9 19 6 26262626 56565656 18181818

⑤ A B A B 16 16 2 47474747 47474747 6666

※ 2 1 1 1

★ 2 1 1 2

③ A B A B 13 18 3 38383838 53535353 9999

④ A C B A 19 11 4 56565656 32323232 12121212

⑤ B B A C 17 15 2 50505050 44444444 6666

※ 1 2 1 0

★ 2 0 1 0

6/12点満点

1

2

カルメ焼きをつくろう

炭酸水素ナトリウムの分解

11/16点満点

7/16点満点

B C

9/12点満点

4

自己評価

集計(人) 集計(%)

○○○○

3

※机間巡視による交流の評価 2:活発に意見交換 1:自分の意見は発表 0:できていない

★自己評価シートの「反省・感想・疑問」欄への記入状況

   2:自分の言葉でしっかり記入  1:何らかの記入あり  0:未記入

①関・意・態  ②思考  ③技・表  ④知・理  ⑤交流

【  】組

1 2

〔〔〔〔物質物質物質物質のののの変化変化変化変化〕〕〕〕

○○○○ ○○○○ ○○○○ A

1 2 3 4 合計

① ○ ○ ○ 14

② ○ ○ ○ 14

③ ○ △ ○ 12

小 5 5 4 5 38

① △ ○ ○ 9

② △ ○ △ 9

③ × × △ 5

小 2 0 2 3 14

学習シート記入状況 及び 小テスト結果

    ①語句記入  ②○付け  ③訂正記入  小:小テスト

〔〔〔〔物質物質物質物質のののの変化変化変化変化〕〕〕〕 カルメ焼き炭酸水素ナトリウム

酸化銀の分解 水の電気分解

  ①②③において ○:2点 △:1点 ×:0点  小テスト:5点満点

【  】組

シートNo.

1 ○○○○

2 ○○○○

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【事例2】

改訂指導要録において導入された観点「思考・判断・表現」の評価方法については,非

常に難しいものと考えられてきた。この観点における最初のつまずきは,『思考を評価す

ることができるのか』という教師内の疑問である。本研究では,この疑問にメスを入れる

ために「思考した証拠を残す」ことに取り組んだ。

1 研究内容

本研究では,「教師が何を学ばせたいか」と「生徒が何を学んだか」という評価の視

点を明らかにすることにより,「目標に準拠した評価」を目指した。「思考・判断・表

現」の観点から,毎時の授業で思考をさせるために十分吟味した学習課題を設定しなが

ら,授業やテストで次の2点について研究を進めた。

(1) 授業の中での自己評価票の工夫

授業の中で,自分を振り返ることができ,記録に残る自己評価票の工夫をした。

(2) 思考力や表現力の向上を調べる問題の作成

思考力や表現力の向上を調べることができる問題を工夫して,自己評価票の確認問

題や定期テスト設問として実施した。

2 研究実践

(1) 思考力や表現力を高める自己評価票

研究当初は,生徒に「思考」させるとはどういうことかを考え,生徒の予想と本時

のまとめを「比較」させた。しかし,「比較」という思考過程しか考えられていなか

ったので,文献を参考に「分析・総合・比較・抽象・概括」の思考過程を導入した。

毎時間の授業で,生徒にどのような思考過程をたどらせたいかという教師の意図が明

確になりはじめた。また,生徒も自分がどのような思考過程をたどったのかというこ

とを捉えることができるようになった。

思考過程 具 体 的 な 考 え

分 析 細かく分けて考える

総 合 関連づけたり結びつけたりして考える

比 較 類似点と相違点を見つけて考える

抽 象 本質的なことを見つけ出して考える

概 括 類似点や本質的な性質をまとめて考える

自己評価票(単元:天気を見る目)

(2) 思考力や表現力の向上を調べる問題の作成

思考力や表現力を調べる問題と (図)定期テスト問題

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して右図を作成した。問題1は分

析して考えることができたか,問

題2は比較して考えることができ

たかを問うことができた。

【右図の得点基準】

(1) ツバキの問題(計6点)

被子植物・・・・2点

《理由》ツバキには果実があるので・・・・2点

ツバキは胚珠が子房に包ま

れていると考えられる。 ・・・・2点

(2) スケッチの問題(計8点)

太郎君>一郎君>花子さんの得点順・・・・2点

《一郎君の得点が太郎君より悪い理由》

線を重ねているから ・・・・2点

《花子さんの得点が一郎君より悪い理由》

視野をかいているから

観察するもの以外をかいているから

線を重ねているから

ミジンコが小さいから ・・・・個々に2点

3 評価の記録

(1) 思考力や表現力を高める自己評価票

自己評価票は,一枚ポートフォリオの形で作成した。これによって,生徒自身が毎

授業での記録を振り返ることができ,自分自身の思考の変化や新しい認識の獲得に気

づくことができた。また,自己評価票を用いて,毎授業での生徒の考えを記録を残さ

せることで,生徒の思考過程や表現の仕方を得点で記録した。

【得点の出し方】

自己評価票の1時間の得点を0~3点とし,単元の授業数分をその単元での思考得点とした。

0点・・・・記入していない,完全に間違っている。

1点・・・・記入しているが,考えや理由などが不十分である。

2点・・・・内容的にほぼ書けている。

3点・・・・十分に書けている。

この自己評価票により,教師は自分の設定した学習課題が本時で狙った思考過程に

対して適切であったか考えることができた。また,生徒の予想や意見に対して,「教

師が狙った思考過程をたどらせる発問ができたか」という発問の内容も考えることが

できた。

(2) 思考力や表現力の向上を調べる問題の作成

定期テストでの問題は,得点の基準を明確にし,そのままの得点を記録した。

4 総括

『思考を評価することができるのか』という教師内の疑問に対しては,「思考」とい

うことを分析する必要がある。本研究での「分析・総合・比較・抽象・概括」の分類は,

その点で非常に有用であった。「思考ができたか」を記録するのではなく,「分析がで

きたか」や「総合ができたか」を記録することが,「思考・判断・表現」の評価につな

がった。

参考文献 http://www.teu.ac.jp/kmdit/pukiwiki/ 岩垂洋志著「思考と言語」

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Ⅲ 学習意欲の適切な評価方法について

1 理科における「関心・意欲・態度」の評価について

理科の観点「関心・意欲・態度」については,2001年の教育課程審議会において既に,「情意面に

かかわる観点であることなどから,目標に準拠した評価であることが十分理解されておらず,授業中の

挙手や発言の回数といった表面的な状況のみで評価されるなど,必ずしも適切とはいえない面が見られ

る」と述べられている。また,現在でも「関心・意欲・態度」の観点の趣旨は十分に理解されていない

状況が見られる。一方,「観点別学習状況の報告」では,観点「関心・意欲・態度」について,「各教科

が対象としている学習内容に関心をもち,自ら課題に取り組もうとする意欲や態度を児童生徒が見に付

けているかどうかを評価するものである」とある。そこで,今回はこの課題と方向性をふまえ,事例1

では 1 枚ポートフォリオ(学びの足跡)を活用した実践例を、事例2では、レポートやワークシートを

活用した実践事例の「関心・意欲・態度」の評価方法を考案していくことにした。 2 「関心・意欲・態度」の評価の実際

【事例1】単元「電流のはたらき(磁界)」 (1) 単元の目標

磁石や電流による磁界の発生,磁界から電流が受ける力,電磁誘導などの観察・実験など,電流に

よる磁界についての事象に関心をもち,観察・実験を進んで行い,それらの事象を日常生活と関連付

けて考察しようとする。 (2) 単元の指導のポイント ・ 電流による磁界についての関心をもたせるために,磁界の様子を鉄粉や方位磁針を用いて視覚的に

捉えさせる実験を十分に行う ・ 磁石や電流による磁界の発生,磁界から電流が受ける力,電磁誘導などの事象を日常生活と関連付

けて考察しようとする態度を育成するために,モーターやスピーカー製作などのものづくりを導入し,

電流や磁石のつくる磁界の様子を磁力線で考えていくと,その原理が解明できることをおさえていく。 (3) 評価の視点

本単元では,「関心・意欲・態度」の評価については,以下の 3 視点に焦点をしぼり見取っていく。 視点① 「磁石」ということばを使って学習の前後に短文をつくらせ,どのように変容するか

A:短文が増えたり,短文の内容が詳しくなったりする(2 つ以上) B:短文が増えたり,短文の内容が詳しくなったりする(1つ) C:変容なし

視点② 毎授業後に新たな気づきや疑問が見いだせるか ○:新たな気づきか疑問が記入できた ×:新たな気づきや疑問が記入できない

視点③単元全体を通して,学習の意味付けや価値付けができるか A:学習の前後で自分の学びの状況がどう変わったか具体的に記述ができる B:学習の前後のどちらか一方で,自分の学びの状況を記述できる C:記述ができない

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(4) 単元の授業の流れと評価

学びの足跡(磁石という言葉を使って短文作成:学習前)視点① ↓

授業①~⑥(毎授業後に 2~3 分とり新たな気づきや疑問を記入)視点② ↓

学びの足跡(磁石という言葉を使って短文作成:学習後)視点① ↓

学びの足跡(学習前後の振り返りを記入)視点③ <学びの足跡:生徒の記入例>

【視点①:学習前の短文】 【視点①:学習後の短文】

【視点③:学習前後の振り返り】

【事例2】 単元「植物の世界」

(1) 単元の目標 生物の観察や植物のからだのつくりとはたらき,植物のなかまに関する事物・事象に関心をもち,意

欲的にそれらを探求するとともに,事象を人間生活とのかかわりでみることができる。 (2) 単元の指導のポイント 〇 身のまわりの生物や植物に関する事物・現象に関心をもたせ,集中して学習に取り組ませるために,

校内に生えている植物を各自で採集させたり,家庭や地域から持ってこさせたりするなど,観察,実

験する対象を準備させる。 〇 生徒が興味を持った内容について意欲的に探求できる時間をもてるような課題を与え,探求した内

容についてレポートとしてまとめさせる。その際,課題に取り組む期間にはゆとりをもたせるように

配慮する。

文も語句も増加し,身のまわりの

ものに関連付けて書けているので

学習の前後について,自分の学び

の状況が具体例をあげて記入でき

ているので「A」

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〇 生徒の身近に生息しているが,名前や特徴を知らない生物や植物を取り上げ,学習と日常生活との

つながりを意識させ,生命を尊重し自然を保全しようとする態度を育成する。 (3) 評価の視点 「関心・意欲・態度」について,生徒が自然の事物・現象に進んで関わり,それらを科学的に探究しよ

うとするとともに,事象を日常生活とのかかわりでみようとしているかについて,授業中,授業後に評

価を行う。具体的には 〇 学習課題にそって観察,実験に集中して取り組み,意欲的に探求するとともに,自分の考えをまと

め発表しようとしているか。 〇 進んで自然に関わり,そこで生まれた疑問を踏まえ,探究しようとしているか。 〇 学習した内容や,疑問に感じた内容をそのままにせず,それらの事象を人間生活と関連付けて捉え,

生命尊重や自然保護に関することについて,具体的に考えたり行動したりできているか。 の 3 つの視点について,行動観察やノートやワークシート,レポートなどの記述から状況を把握するよ

うにする。 (4) 単元の授業の流れと評価

本単元では,レポートによる「関心・意欲・態度」の評価の具体例を示す。「関心・意欲・態度」につ

いては,学習内容に対する生徒の取組状況を通じて評価することを基本としている。そこで,その状況

を総合的に判断するために,「関心・意欲・態度」が身に付いていなければできないようなパフォーマン

ス課題を与え,その課題の出来映えで評価することが有効であると考える。 本実践では,単元で学んだ知識・技能を総合して活用することが求められる内容のものと,単元のま

とめとして探求的に取り組ませる内容のものの 2 点について,生徒に課題を与え評価を行った。具体的

には,単元「植物の世界」における学習の中で,①カラスのエンドウの観察,②身のまわりの植物につ

いての調べ学習,の 2 つ課題を与え,レポートを提出させ評価した。 ① カラスのエンドウの観察レポート(知識・技能を総合的に活用することが求められる内容)

授業でエンドウ,アブラナ,タンポポの観察を行い,基礎的・基本的な花のつくりの知識や,観察記

録の技能を習得させた後,応用的な課題としてムラサキツユクサの観察の課題を出した。身のまわりの

自然とのかかわりを意識させるために,期間を 1 週間設定し,生徒が住んでいる地域で採取させ,観察

を行わせた。ムラサキツユクサを採集できず観察できない生徒が各学級 3 名程度いたので,その生徒は

校内で生えているムラサキツユクサをもって帰らせて,家庭で観察を行わせた。生徒が作成したレポー

トの分析(n=120)については以下のようになった。 ○ 採集場所の住所を書く欄に,住所ではなく地名を書いたり,不明,未記入が 17名であった。 ○ 採集した環境について書く欄に,「日当たりが良い」というような環境状況を書かずに,地名などを

書いた生徒が 7名であった。 ○ カラスノエンドウの全体図をスケッチするように指示した欄に,根,茎,葉,花,果実,巻きひげ

の 6 点についてスケッチできていた生徒は 19名であった。 ○ 花を分解して,各部の特徴と各部のはたらきを記述させた。各部の特徴については,全員が記述で

きていたが,各部のはたらきと関連させて考察できていた生徒は 19名であった。 ○ エンドウの花との比較を書く欄には,全員が花の大きさや形,色,つくり,数,各部のつき方など

の観点について,「同じである,異なる」など記入できていた。しかし,具体的な記入(大きさを数値

Page 10: Ⅱ 記録に残すための効果的・効率的な評価方法について · 内容 中間・期末テスト 中間・期末テスト 中間・期末テスト 中間・期末テスト

で表現,具体的な色名について)を書けていた生徒はいなかった。 ○ 今回のレポート作成のために,図鑑やインターネットなどを活用した生徒は 7名であった。 ○ 期限までに提出できなかった生徒は 20名であった レポートは,「実際にカラスのエンドウを観察したか」,「目的にそった観察,記録,考察が書けている

か」,「スケッチ図,文字が丁寧か」,「よくわかりやすいレポートになっているか」の4つの観点で評価

し,点数化した。このレポート課題を通して,特に配慮が必要であると思われる生徒や現時点での生徒

の単元の学習内容に対する「関心・意欲・態度」を分析することができたと考えている。また,教師が

求めている記述内容をほとんどの生徒が書けていないような項目については,授業での知識や技能の定

着が不十分であると考え,その後の授業改善に生かすことができた。 ② 身のまわりの植物についてのレポート(単元のまとめとして探求的に取り組ませる内容のもの)

単元の学習後,まとめとして自分の興味のある植物について調べ学習を行った。期間を 2週間設定し,

下のルーブリックを示し,取り組ませた。 A B C

調べた内容と人間生活とのかかわりがわ

かるような工夫がされ,自分の調べた内容に

ついて,考えがまとめられており,同学年の

生徒が読んだときにわかりやすいような表

現技能を使って,レポートを作成している。

自分の調べた内容について,考えが

まとめられており,同学年の生徒が読

んだときにわかりやすいような表現

技能を使って,レポートを作成してい

る。

自分の調べたい内容について

調べてはいるが,考えがまとま

っていなかったり,表現技能が

難しかったりして,読みにくい

レポートである。

3 「関心・意欲・態度」の評価の総括

事例1において,本校では理科の 4 観点をそれぞれ100点とし,合計400満点で評価している。「関

心・意欲・態度」の100点のうち,30点ぶんを 1 枚ポートフォリオ(学びの足跡)による視点①~

③の評価で得点化している。残りの70点ぶんは,現在のところ「発表点10点」,「準備物 10 点」,「提

出物(ノート・プリント・実験データ)30点」,「自由研究10点」,「ミニテスト10点」としてつけ

ている。評価基準に課題が残るが,今回の実践は本年度で 2 年に入る。時間は多少かかるがこの評価方

法により,従来までの視点より,生徒の「関心・意欲・態度」面は見とれるようになった。現在のとこ

ろ視点①,②においては90%の生徒が「A」判定を示している。視点③においては50%の生徒しか

「A」を示せていないが,くり返していくうちに少しずつ学びの意味や価値が記入できるようになって

きている。また,この方法は,生徒が毎時間は自分の学びの状況を把握したり振り返ったりしながら学

習を進めることができるのでこれからも有効活用していきたい。 事例2においては、行動分析などの授業中の見取りとノートやワークシート,レポートの記述など授

業後に確認しながら行える評価資料などの評価を数値化し,その合計点の満点に対する割合から観点の

総括を行った。総括の際,点数の合計が同じ場合でも,単元の学習後半で評価が向上しているときと,

逆に低下しているときがある。このことから,評価資料ごとに時期を考慮して重みづけを行う方法も考

えられるが,具体的な例が示せなかった。今後,総括した評価が適切であるかを検討する必要がる。ま

た,学習内容が進むにつれて,単元に対する「関心・意欲・態度」が高まっていくことをめざすならば,

本実践のように単元や章ごとにまとめのレポートを書かせ,レポートの内容分析を通して,生徒が「関

心・意欲・態度」をもてない内容について把握し,指導に生かすことができると考えている。