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(9) 平成24年2月21日(火曜日) 第1127号 (第三種郵便物認可) (9) 平成24年2月21日(火曜日) 第1127号 (第三種郵便物認可) 使 使 使 使 使 メモレベル1地震動 は橋の供用期間中 に発生する確率の 高い中規模程度の 地震動で、比較的 頻繁に起きている 地震。 レベル2地震動 は発生する確率の 低い大規模な地震 動で、関東大震災 や阪神淡路大震災 など。 タイプA支承レベル1地震動で 受ける水平力には 支承部単独で抵抗 し、レベル2地震 動で受ける水平力 は変位制限構造と 補完し合って抵抗 する。 タイプB支承支承部単独でレベ ル1、レベル2地 震動とも抵抗す る。 初湯川大橋概要上部形式:逆ロー ゼ橋 橋長:236㍍ 等級・活荷重:1 等橋・TL| 下部構造形式:逆 T式橋台(A1、 A2 アーチ橋台 (AA1、AA2) 適用道路橋示方 書:昭和 年通達 床版形式:RC床 寿 下横構。上はシェイプアップブレースBr 使用前、下は使用後。景観をほとんど変え ずに補強している。

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(9) 平成24年2月21日(火曜日) 橋 梁 新 聞 第1127号(第三種郵便物認可)(9) 平成24年2月21日(火曜日) 橋 梁 新 聞 第1127号(第三種郵便物認可)

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娃田機工

耐震シリーズ

補強方法の選択肢広げる

シェイプアップブレー

スBrを開発、初湯川大

橋の耐震補強にあたった

娃田機工は、橋梁の耐震

化促進に応えていくと共

に、同様の補強でシェア

を拡大していきたい考え

だ。シェイプアップブレ

ースBrを使った工法は

アーチ橋の他にトラス橋

などの形式にも適用可能

で、道路橋だけでなく鉄

道橋でも優位性があると

いう。

その他、同社の主要デ

バイスである支承可動化

工法「すべリッチ」や、

制震ストッパーなどを組

み合わせ、耐震化対策の

選択肢を広げた提案は、

関心を集めている。

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制震デバイスを多用

景観を考慮

橋景そのままに

今回の補強工事の特徴

には、制震デバイスが効

果的に多用されているこ

とが挙げられ、そのデバ

イスの一つとして軸力降

伏型ダンパー「シェイプ

アップブレースBr」が

採用されている。

シェイプアップブレー

スBrは曲げやせん断よ

りも軸力が卓越する部

材、例えばトラス橋、ア

ーチ橋、ラーメン橋など

の斜材、横構などに取り

付けることで、常時は弾

性部材として機能し、レ

ベル2地震時には軸部材

が降伏して地震エネルギ

ーを吸収し、橋梁の各部

に作用する応答値を低減

する。

シェイプアップブレー

スBrの構造は、軸力を

負担する軸部材と、軸部

材の座屈を防止するため

の座屈補剛材から構成さ

れる。剛性や耐力を確保

しながら軽量な構造にす

るため、軸部材にはエネ

ルギー吸収性能の高い低

降伏点鋼を十字型断面で

使い、座屈補剛材には田

字型に束ねた角形鋼管を

使っている。防錆仕様に

も特徴があり、長期耐久

性を持たせるため、軸部

材には亜鉛アルミ溶射を

採用し、維持管理性を向

上させることで差別化を

図っている。

シェイプアップブレー

スBrのその他の特徴と

しては、軽量型であるた

め施工性が高いこと、主

要部材が一般鋼材で構成

されているため安価であ

ること、軸部材を自由に

設計できるためあらゆる

降伏軸力にも対応可能な

ことが挙げられる。また

従来工法より耐震補強規

模を大幅に縮小すること

ができるため、工事全体

のコスト縮減も期待でき

る。シ

ェイプアップブレー

スBrを使ったこのよう

な耐震補強工法は、特に

景観に留意が必要なラン

ドマーク的な役割を兼ね

るアーチ橋やトラス橋な

どで有効という。

橋長236㍍

初湯川大橋

緊急輸送路

レベル2対応へ

アーチ橋など大型橋梁

の耐震補強は、大規模で

広範囲にわたる補強が必

要となるため、コストや

工期の問題が懸念され

る。現実的に不可能とい

われるアーチ基部の支承

取り替えが必要となる場

合も多いという。

そこで今回はレベル2

地震時‖メモ‖の支承反

力を抑制すると共に、各

部材の発生応力を低減す

るため、エネルギー吸収

性能の高い制震デバイス

を多く採用している。

橋軸方向の制震対策と

しては現橋で斜材がな

く、地震時の変形が大き

い部位に斜材として40

00

クラスの軸力降伏

型ダンパーを合計8基追

加設置し、桁端部にシリ

コン系粘性材を使った機

械式ダンパーをA1側に

8基、A2側に8基の合

基設置している。

橋軸直角方向の制震対

策としては端柱(P1橋

脚、P2橋脚)に斜材と

して2000

クラスの

軸力降伏型ダンパーを合

基追加設置し、アー

チリブの下横構両端部で

は計

カ所の既存部材を

1200

クラスの軸力

降伏型ダンパーに取り替

えている(写真)。

現橋の無補強状態で

は、アーチリブ、斜材、

支柱、端柱で許容ひずみ

を超過する部材が発生

し、座屈に対してはアー

チリブ、補剛桁共に約

%、2次部材(斜材、支

柱、中間支材、端柱)の

多くで許容値を超過。支

承反力もアーチ支点支承

部で約2倍、端柱基部支

承で約3倍の大きな反力

が発生していた。

前述の各種制震デバイ

スを設置すると、許容ひ

ずみを超過した部材は斜

材に限定され、またその

超過レベルも約

%低減

するという結果になっ

た。座屈に対しても、ア

ーチリブ、補剛桁の無補

強化が実現し、2次部材

の許容値超過範囲も大幅

に減ったという。

制震デバイス設置後も

許容値を超過する部材に

は、リブプレートによる

部材補強を実施。また斜

材密閉部へのリブプレー

ト取り付けは、片面から

の施工が可能なワンサイ

ドボルトを約4700本

採用している。

アーチ基部の支承は制

震効果により反力が低減

し、取り替えが要らなく

なった。その他の支承で

は端柱上部支承をタイプ

A支承からタイプB支承

‖メモ‖に取り替え、端

柱下部支承はピンおよび

上沓の取り替え、アンカ

ー増設、タイプB支承化

をした。端支点のタイプ

A支承は、変位制限構造

を新設し、レベル2地震

動における慣性力に抵抗

する落橋防止システムと

した。その他、桁端に各

4基のエネルギー吸収性

能付チェーン式連結装置

を採用し、現行の道路橋

示方書を満たす落橋防止

システムを構築してい

る。塗

替え塗装にはふっ素

樹脂系を採用し、支承部

には直接的な風雨の影響

を受けないよう支承カバ

ーを設置、維持管理性の

向上も図った。

補強部材の製作および

施工は娃田機工があたっ

た。

‖メモ‖・レベル1地震動は橋の供用期間中に発生する確率の高い中規模程度の地震動で、比較的頻繁に起きている地震。・レベル2地震動は発生する確率の低い大規模な地震動で、関東大震災や阪神淡路大震災など。・タイプA支承はレベル1地震動で受ける水平力には支承部単独で抵抗し、レベル2地震動で受ける水平力は変位制限構造と補完し合って抵抗する。・タイプB支承は支承部単独でレベル1、レベル2地震動とも抵抗する。初湯川大橋概要‖上部形式:逆ローゼ橋橋長:236㍍等級・活荷重:1等橋・TL|下部構造形式:逆T式橋台(A1、A2 アーチ橋台(AA1、AA2)適用道路橋示方書:昭和 年通達床版形式:RC床版

第一次緊急輸送路に指定される国道424号の初湯川大橋で耐震補強工

事が進んでいる。工事を担当するのは和歌山県日高振興局建設部。初湯川

大橋は橋長236㍍の逆ローゼ桁橋。昭和

年に供用されたため、現行の

耐震基準を満たさない。第一次緊急輸送路として現在の耐震性能を確保す

る補修補強は急務だった。こうした補修補強が待たれる大型橋梁は全国的

にも多く残されているとされ、関心を集めている。

(根津寿子)

下横構。上はシェイプアップブレースBr

使用前、下は使用後。景観をほとんど変え

ずに補強している。

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