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78) 共存イオン存在下における排水中の水溶性セレンの除去
背 景
セレン(Se)の毒性から、排水中のセレン濃度(6 価のセレン酸(SeO42-)と 4 価の亜セレン酸(SeO3
2-)の総濃度)は、
水質汚濁防止法により規制されている。現在、セレンは化学的な処理により除去されているが、多量の薬品を必要と
するなどの課題があるため、経済的かつ効率的なセレン除去法の開発が望まれている。当所では、これまでにセレン
酸還元菌と硫酸還元菌の併用による安価なエタノールを利用した排水からの水溶性セレンの除去法を提案したが、
水溶性窒素等の共存イオン存在下で水溶性セレンの不溶化が阻害されるなどの課題があった。
目 的 共存する水溶性窒素を除去するために、セレン酸還元菌と硫酸還元菌の組み合わせに脱窒菌を加え、共存イオン
による阻害を受けずに水溶性セレンを不溶化すると共に、その除去機構を明らかにする。また、不溶性セレンの除去
プロセスを簡易化する。 主な成果 1. 硝酸の共存下における水溶性セレンの除去
実排水を模擬したセレン酸、硝酸、硫酸を含む排水から高い速度で水溶性セレンの生物的除去を可能にする微
生物の併用法を提案した。セレン酸還元菌と硫酸還元菌を併用した場合には、硝酸の共存により極端にセレン除
去が阻害されたが、脱窒菌を加えた3種の微生物を併用することで硝酸の共存に関わりなく高い速度で水溶性セレ
ンを除去することに成功した。その結果、亜セレン酸の蓄積は見られず、硝酸を含まない場合と同等の速度で水溶
性セレンを不溶化できた(図 1)。 2. 微生物の併用による水溶性セレンの除去機構
模擬排水中に共存するセレン酸、亜セレン酸、硝酸、亜硝酸、硫酸の微生物反応への影響を検討した結果、3種の微生物の併用により、高い速度で水溶性セレンを除去できる機構が明らかとなった(図 2)。セレン酸還元菌と
硫酸還元菌の併用では、硝酸由来の亜硝酸の蓄積によって、硫酸還元菌の働きが阻害され、亜セレン酸の除去速
度が低下した。一方、脱窒菌を加えた 3 種併用の場合、脱窒菌による還元反応により亜硝酸の蓄積が回避された
ため、硫酸還元菌による水溶性セレンの不溶化が速やかに進行したと考えられた。 3. 固定化微生物の利用による不溶性セレンの除去プロセスの簡易化
前述の 3 種類の微生物を高分子ゲル内に固定化した不織布を用いて、模擬排水中の水溶性セレンの除去を検
討した。その結果、固定化状態においても水溶性セレンを不溶性セレンとして除去でき、セレン除去に対する阻害
を防ぐことが可能であった。不溶性セレンは不織布上に集積したため、不溶性セレンの除去プロセスを簡易化でき
る可能性が示された(図 3)。 今後の展開
適用範囲の拡大や効率化を目指し、人工的に固定化微生物群を構築して微生物の空間配置を制御する。
主担当者 環境科学研究所 バイオテクノロジー領域 主任研究員 森田 仁彦
関連報告書 「環境対策技術への適用を目指した複合微生物系の利用(その3) -共存イオン存在下における排水
中の水溶性セレンの除去-」 電力中央研究所報告:V08051 (2009 年 6 月)
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