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6.火葬場施設整備の基本的な考え方
6-1 既存施設の現状
火葬という人生における最終的で宿命的な儀礼が執り行われる火葬場は、住民と
の深い関りを持つとともに、地域社会における必要不可欠な都市施設となっていま
す。
このため、火葬場の建設計画にあたりましては、住民に違和感を抱かせない明る
い施設づくりを心掛ける必要があり、さらに地域の特性を取り入れ、かつ周辺環境
との調和及び環境保全上の対策を十分に考慮した計画とする必要があります。
本市の2施設(小野田斎場、山陽斎場)の現状は、3.既存施設の概要に整理した
ように、火葬場施設の一般的な更新時期の目安である約 34 年が経過しており、長期
稼働に伴う老朽化や劣化が見られています。
また、施設利用にあたっては身障者等の利用に際してのバリアフリー化等もされ
ておらず、待合空間も狭くプライバシーの面も考慮されていない施設となっていま
す。さらに、火葬炉設備については更新時期の目安である約 20 年は経過しており、
旧式の炉形式であることから、平成 12 年 3月に厚生省(現厚生労働省)が発表した
「火葬場から排出されるダイオキシン類削減対策指針」に示されている炉構造に対
応ができていない状況と考えられます。
6-2 火葬場施設整備の基本的な考え方
一般的に、火葬場の機能として必要なものは、遺体を火葬するための火葬棟の設
置及びその地域の風俗習慣等にもよりますが、会葬者が収骨までの間に待つ場所と
しての待合棟の設置、さらに最近では核家族化が進むにつれて住居空間のスペース
が狭くなり、住宅の構造上自宅での葬儀ができにくくなっているため、火葬場に併
設して公共施設としての葬祭棟(式場)の設置の必要性が出てきています。以上の
ように最近の火葬場施設は、火葬棟、待合棟、葬祭棟の三棟が設置されて初めて火
葬場としての機能を有するようになってきています。
このほか、火葬場としては、会葬者用駐車場の設置、敷地内及び周辺地域との調
和を保つとともに遺族あるいは関係者の心の安らぎを与えるための緑地、庭園など
の設置を考える必要があります。
以下にそれぞれの機能と考え方(又は方向性)について整理します。
(1)火葬棟の機能と施設整備の考え方について
火葬棟は、遺体を火葬するための火葬炉を設置している建物です。
火葬棟の持つべき機能としては、遺体とのお別れを行う場所である告別室の設置
のほか、炉前ホール、火葬炉室、収骨室、中央監視・制御室及び公害防止設備等設置
のための機械室の設置、作業員休憩室、霊安室等を設置する必要があります。なお、
最近の火葬炉設備は、火葬時間の短縮等機能の向上と会葬者に与える印象を配慮し
て、火葬炉の前に炉前冷却室の設置を行っている施設が多くなっています。
このような現状から新火葬場における火葬炉設備についても最新の火葬炉設備の
導入を含め炉前冷却室の設置が望ましいものと考えます。
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(2)待合棟の機能と施設整備の考え方について
待合棟は、火葬開始から収骨までの間に会葬者が待つための施設です。待合棟の
持つべき機能としては、会葬者の誰もが利用できる待合ロビー、会葬者一組ごとに
区分されたプライバシーの守れる個室待合室の設置、さらには湯沸室、洗面所、喫
煙室やキッズルーム、その他サービス施設(売店、自動販売機)等の設置を考慮する
ことが必要です。
(3)葬儀式場の機能と整備の方向性について
葬儀式場は、遺体との最後のお別れを行う儀式の場です。
最近は公共の施設としての式場の設置するところは見られますが、本市域におい
ては民間の葬儀業者が複数存在しており、それぞれが営業活動を行っていることか
ら、民間葬儀業者との役割分担を考慮し、今回建設する新火葬場には葬儀式場は設
置しないこととします。
6-3 建築物の設備内容と基本的な考え方
火葬場を建設するにあたり、施設内での葬送の行為が支障なく合理的に行われ、
会葬者の状況、火葬時間、待合の方法(風俗、習慣など)等を考慮して計画されなけ
ればなりません。
新火葬場の建設にあたりましては、既存火葬場の利用実態を考慮し、火葬棟、待
合棟、事務室等管理部門を設置する計画とします。
以下に各棟の空間スペースについて整理を行います。
なお、各建物につきましては、プライバシーの保護やユニバーサルデザイン(バ
リアフリー化)など昨今の公共施設に求められている人にやさしい施設としての配
慮をした施設計画を行うこととします。
(1)火葬棟の空間スペース
火葬棟は、火葬場の主となる施設であり告別~火葬~収骨までの一連の火葬行為
を行う場所です。告別室、炉前冷却室、火葬炉室、収骨室のほか電気室、機械室等
各種施設設備をすべて設置する必要があります。
なお、施設内容としては次のようなことを考慮して計画を行うことが必要と考え
ます。
① 車寄せ及びエントランス(玄関)ホール
車寄せ及びエントランス(玄関)ホールは、会葬者が火葬場施設で最初に接する
場所であり、火葬場のイメージを大きく左右するものと考えられるので明るく、
かつ荘厳な施設となるようイメージ付ける必要があります。
なお、車寄せは本来、降雨、降雪時の際に会葬者及び柩が濡れることがないよう
にするためのものであることから、できるだけ広いスペースを確保することが必
要と考えられます。また、建物全体との調和も考慮して計画を行うことが必要と
考えます。エントランス(玄関)ホールは、火葬場を代表する場所であり、第一印象
を大きく左右するものなので荘厳さが求められます。
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また、火葬が重複した場合にはかなりの混雑が予想されるので、エントランス
(玄関)ホールは可能なかぎり広いスペースを確保するとともにホールに入った際、
圧迫感を感じさせないように高く広い空間を確保した天井と、できるだけ自然採
光がとれるように配慮することが望ましいと考えます。
② 告別収骨室
火葬場において、柩を安置し最後の別れを行う場所としての告別室と火葬後の遺骨
(焼骨)の収骨を行う場所としての収骨室の設置をする必要があります。この2つの
空間は遺族や会葬者が一同に集まり、葬送の行為を行う空間であり、同じ機能を必要
とすることから同一空間として計画を行うこととします。また、炉前ホールは、霊柩
車が到着後柩を告別室に移送する空間であり、さらに、火葬終了後に遺骨を収骨する
ために収骨室まで炉内台車運搬車が移動する空間です。この炉前ホールの空間も葬送
行為における同じ機能を必要とする空間であり、柩や遺骨及び遺族・会葬者の動線が
単純になると考えられることから、この3空間を同一空間(以下「告別収骨室」とい
う。)として計画します。
この告別収骨室の必要数としては、前記4-3の(4)において整理したように火
葬件数が最大時に必要な3室設置する計画とします。
空間構成としては、火葬炉の効率的な系列を考慮して 2 炉で 1 つの空間を設置す
ることとし、それぞれの空間には仕切り壁を設置することとします。
なお、この空間については、華美になったり特定の宗教、宗派の様式に偏らないよ
うに配慮します。
さらに、葬送行為については、焼香を行うことがあるため、床はそれに耐える材質
と室内換気についても十分に留意する必要があります。
また、運搬車等でかなりの荷重がかかるため、床はそれに耐えられる材質のもの
とする必要があります。
③ 火葬作業室・職員休憩室
火葬作業室は、作業環境を良好に保つように配慮し、職員の作業動線が必要以上
に複雑にならないようにしなければなりません。
火葬作業は、一般的には比較的高い温度と騒音の中で長時間行われる作業である
ことから、職員の健康管理の面から余裕のあるスペースをとるとともに作業室と隣
接した場所にシャワールーム、便所等を備えた休憩室兼更衣室等を設置することが
望まれます。さらに、空調換気には十分に配慮し、燃焼及び冷却に必要な空気量を
確保することが必要です。なお、火葬炉は前記4.で算出したように 6 基(予備炉
空間1炉分含む)設置する計画とします。
④ 中央監視制御室
火葬炉の技術進歩と公害防止設備の設置などに伴う機械設備の複雑化により計器
確認、安全性の確認など、火葬炉の監視及び操作が1ヶ所で行える集中制御システ
ムは作業能率の点から望ましいものと考えます。中央監視制御室は、職員の動線を
考え作業室内の一部に設置し、火葬炉設備が一望できる位置に設置することが必要
と考えます。
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⑤ 倉庫
葬送行為に必要な各種道具を保管するため、火葬棟を中心にできるかぎり余裕の
有る空間スペースをもった倉庫を設置することが望まれます。
(2) 待合棟の空間スペース
待合棟は、告別の後遺族や会葬者が収骨までの間に一時的に休息を行う場所であ
るので、遺族の悲しみを和らげるような質の高い空間構成と雰囲気が望まれます。
待合棟の大きさを計画する上で必要となるのは、利用者数の予測です。
本市の場合1火葬当り平均的には約 20~25 名程度です。
① 待合ホール
待合ホールは、一人当りの占有面積は個室待合室と比較して広くなりますが、他
の会葬者と同席するような場合においても、特に違和感はないものとし、さらに、
会葬者数の変動にも適応可能な待合ホールを検討します。
② 個室待合室
遺族の心情に配慮し、またプライバシーの面からも個室の待合室を設置すること
が望まれます。
新斎場で必要とする室数は、前期 4-3(4)項において算出しました火葬件数の最
大日の集中時間帯において対応できる室数 5 室を確保する計画とします。
なお、個室には洋室と和室、和洋室(畳スペースとテーブル椅子席おりまぜた部
屋)の 3 種類があり、その地域の習慣により利用の方法が違いますが、他自治体に
おける状況を調査しますと、最近は洋室の方の利用度が高くなっています。
本計画では洋室を主とした待合室としますが、高齢者、乳幼児、車いす利用者等
の様々なニーズに配慮し一部は和洋室とし、さらに会葬者の多い場合も想定し、2
室を大部屋化できる可動式間仕切りの導入を検討します。
③ 事務室(管理室)
事務室は、火葬棟、待合棟のいずれにあっても特に支障のないものと思われます
が、動線計画上から最も会葬者の状況が判断できる位置に設置することが必要と考
えます。
④ 便所・手洗い
便所及び手洗いは、会葬者の在館時間を考慮した場合必ず設置する必要がありま
す。なお、身障者用についても用意する必要があります。
⑤ その他(喫煙コーナー、キッズコーナー等)
最近の傾向として建物内では禁煙の施設が増加してきていることから、新火葬場
においても、喫煙者に対する場所として、喫煙室を設置することが望ましいと考え
ます。また、告別から収骨まで、比較的長い時間を火葬場施設内に滞在することが
想定されるので、子ども連れの遺族の休憩場所としてキッズコーナー等の設置につ
いても考慮することが望ましいと考えます。さらに、自動販売機や売店等の設置に
ついても考慮することが望ましいと考えます。
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(3)その他の設備について
火葬場を建設する場合の建築物の一般的な設備としての空調、給排水、電気設備
以外に、火葬場として特に配慮しなければならない照明、換気、装飾等の考え方を
以下に整理します。
① 照 明
従来の火葬場は、その業務内容からどうしても暗くなりがちでした。
しかし、今回計画する新火葬場においては華やいだ雰囲気ではなく、荘厳な中に
も遺族にやすらぎとゆとりを与える明るい施設とすることが望まれます。したがい
まして、自然採光を多く取り入れ、人工照明との併用により、より質の高い雰囲気
をかもしだすように配慮することが望まれます。
告別収骨室等にも自然光による採光も考える必要があります。特に、待合棟はで
きるかぎり周囲をガラス張りとし、遺族が外部景色を展望できるとともに自然採光
が十分にとれるように計画することが望まれます。
② 冷暖房
スペースごとにコントロールできるような冷暖房設備を設置する必要があります。
③ 換 気
火葬場においては、換気が非常に重要であり、焼香の行われる告別室及び炉前ホ
ール、収骨室、火葬作業室などには、特に効率のよい換気が必要です。
④ 放送設備
遺族、会葬者に対しての案内、収骨の呼び出しなどに利用するため、全館及びス
ペースごとに切換え可能な放送設備を設置することが必要と考えます。
⑤ 身障者及び高齢者の利用に配慮した施設整備(バリアフリー化)
火葬場では、遺族として身障者及び高齢者の利用が考えられるため、車椅子で建
物内を安全で不自由なく移動できる施設設備を配慮する必要があります。
⑥ 装 飾
火葬場は、死者と遺族が最後の別れの場として利用する施設であるため、それに
ふさわしい雰囲気をかもしだす装飾が必要であると思われます。
⑦ 自動扉
主要出入口に自動扉を設置することが望まれます。特に、遺体を柩台車に乗せて
移動する出入口には、自動扉の設置は必要と考えます。
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6-4 建築物等の必要規模と面積試算
建築物の構成及び建物内容をふまえ、新火葬場建設計画における必要面積等につ
いて試算します。
「火葬場の建設・維持管理マニュアル」及び建築設計資料 109「葬斎場・納骨堂」
で示されている建築物の必要面積と、最近に建設された火葬場における面積空間等
を参考にして、新しい火葬場で必要とする建築物の各室の必要面積と、駐車場、庭
園緑地、緩衝緑地などについて試算を行うこととします。
(1)必要面積試算
1)建築物の面積
新火葬場の建築物の必要面積については、次のような考え方により表 6-1~表
6-2に試算を行いました。
① 火葬棟面積について
必要火葬炉数の算出において算出した必要火葬炉数 5 炉と予備炉スペース 1
炉分の空間を確保し、火葬場における葬送の行為が適正に行うことができ、さ
らに火葬炉設備の設置と環境保全対策等の設備機器を設置する空間についても
考慮して必要な面積について試算することとしました。
② 待合棟面積について
遺族や会葬者が告別の後、収骨までの間に一時的に休息を行う場所であるの
で、遺族の悲しみを和らげるような空間構成と雰囲気を考慮した計画とし、必
要火葬炉数の算出において算出された 1 日最大の火葬可能件数 10件のうち、同
時間帯において一部重複する件数 5 件に対応ができる個室待合室 5 室を設置す
る他、誰もが利用できる待合ホールの設置を行うこととして必要面積を試算す
ることとしました。
③ 建築物の必要面積試算
上記のような考え方により試算した面積を合計したところ、次のように、全体
で延べ床面積は約 1,940 ㎡が必要と試算されました。
なお、建物は敷地面積の状況から一部2階建て(火葬棟の機械室部分)として
計画します。
火葬棟面積(表 6-1 参照) 約 1,428 ㎡(うち 2階部分約 415 ㎡を含む)
待合棟面積 (表 6-2 参照) 約 512㎡
合計延べ床面積 約 1,940 ㎡(うち 2 階部分約 415 ㎡を含む)
このほか、降雨、降雪等の時に会葬者が濡れないように建物内に出入りするた
めの車寄せと庇き等が必要です。
なお、敷地の形状や建築物のデザインにより違いができるので、一概に決める
ことは困難ですが、この空間はできる限り広く確保することが望まれます。
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仮に、建築物の庇部分の面積を延べ床面積の約 25%程度と想定すると建築面積
は次のように約 1,866 ㎡となります。
庇部分=(1,940 ㎡―(2階機械室 415 ㎡+車寄せ 160 ㎡))×25%≒341㎡
建築面積=約 1,940 ㎡-2 階面積約 415 ㎡+庇等の面積約 341 ㎡=1,866 ㎡
以上の建築物の必要面積試算から、本計画における火葬炉 1 炉あたりに占める建
築物の延床面積は平均約 323 ㎡/炉となります。
1炉あたりの必要面積(㎡)=1,940 ㎡÷6炉(予備空間 1 炉含む)≒323 ㎡
この結果、参考資料とした建築資料研究社編「建築設計資料」109 葬斎場・納骨堂
2」の平均面積(約 330 ㎡)とほぼ同じ面積となりました。
また、表6-3に最近建設された火葬場の施設例を示しましたが、(3 基~6 基程
度の施設)これによる平均面積(約 371 ㎡)よりも若干少ない面積での計画となり
ました。
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表6-1① 火葬棟の必要面積試算
区 分 室数 面積
(㎡) 面積試算の設定条件等
告別収骨室 3 210
必要火葬炉数は 6 炉(予備炉空間 1 炉分含む)と算出
しました。図 4-4 で検討したように本市の葬儀習慣から
同時間帯の受け入れを 3 件と設定し、必要室数を 3 室設
置する計画とします。
なお、既存火葬場への会葬者数は平均では 20~25人で
す。したがいまして、本計画では安全を見て 25 名と仮定
して祭壇の設置空間と柩及び炉内台車運搬車の移動に困
難が生じないように考慮して、余裕を持った空間とし、次
のように必要面積を試算します。
(1人あたり平均面積約 2.8㎡/人×25人)×告別室 3室
≒210 ㎡
火葬作業室
(炉本体+作
業空間)
1 277
火葬炉 6 炉分(予備炉空間 1 炉分含む)の空間と炉前
冷却室 6 室分(予備炉空間 1 炉分含む)を設置できるス
ペースを確保し、さらに炉の運転管理とメンテナンスを
容易に行うことのできる広さを確保し、次のように算定
します。
(6 炉×1 炉当たり 4.0m)×奥行き約 10.6m(冷却前室
+炉本体+作業空間)+電気室約 22.7 ㎡≒277 ㎡
中央監視
制御室 1 24
中央監視装置及び火葬場職員の業務用机等の設置に必
要な面積を、次のように算定します。4m×6m=24 ㎡
機械室等
(残灰処理室、
電気室、燃料ポ
ンプ室、ファン
等設備機械室、
非常用発電室
等)
1 439
機械室等の必要な面積を、次のように算定します。
①残灰処理室 4m×3m =12 ㎡
②ポンプ室 4m×3m =12 ㎡
③二階機械室(バグフィルター及び排気設備、非常用発電
室等の設置空間)
(1階炉室の約 1.5 倍程度の面積とします。)
277㎡×約 1.5 倍≒415 ㎡
計 439 ㎡
職員休憩室 1 24
洋室とし、休憩スペース、トイレ等の設置に必要な面積
を、次のように算定します。
6m×4.0m=24 ㎡
霊 安 室 1 32
遺体の仮安置所として、1台の保冷庫を設置すると仮
定し、次のように算定します。
L(奥行き)4m×W(巾)8m=32 ㎡
運搬車置場
倉庫等 2 76
柩・炉内台車運搬車の置き場空間、保守点検用具等の保
管のための倉庫として、次のように算定します。
(運搬車置場 2 室)56 ㎡+倉庫約 20㎡≒76 ㎡
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表6-1② 火葬棟の必要面積試算
表6-2 待合棟の必要面積試算
区 分 室数 面積(㎡) 面積試算の設定条件等
車寄せ 1 160
会葬者が降雨、降雪等を防ぐことのできる空間とし、
大型のバスが入れる高さと必要面積を算出します。20
m×8m=160 ㎡
そ の 他 186
エントランス(玄関)ホール、通路、風除室等のスペ
ースを考慮し、出来るだけ余裕のある空間を確保しま
す。
延べ床面積
合計
1,428
区 分 室
数
面積
(㎡) 面積試算の設定条件等
待合ホール
(ロビー) 1 150
1 組の会葬者全員が火葬開始から収骨まで施設内に残
留しても支障がないスペースを考慮します。また、1人
あたりの面積は告別室に比較して長い時間使用すること
を配慮し、余裕を持った計画とします。
(6.0 ㎡/人×平均約 25人)=150 ㎡
個室待合室 5 213
遺族の心情に配慮し、また特に悲しみが深く、プライ
バシーの面からも個室を設置する計画とします。火葬件
数最大日の集中時間帯において、必要な 5 室を計画しま
す。
(約 1.7 ㎡/人×25 人)×5 室=213 ㎡(約 25 畳×5室)
事 務 室 1 23
受付事務及び会葬者等の応対、見学者の応対等
庁舎事務室標準面積 4.5 ㎡/人、火葬場職員(5 名と想
定)4.5 ㎡/人×5 人≒23㎡
便所・手洗い 1 42
多目的トイレを男女 1 室及び男女それぞれのトイレと
手洗いの場に必要な面積を、次のように算定します。
(7m×6m)×1 箇所=42 ㎡
その他 84
以上のほか、通路、キッズコーナー、喫煙室、自動販売
機コーナー、売店等の面積も考慮し出来るだけ余裕のあ
る空間を確保します。
延べ床面積合計 512
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参考資料 必要建築面積・敷地面積試算例
出典:建築資料研究社編「建築設計資料」109 葬斎場・納骨堂 2」
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2)駐車場面積
① 会葬者数・車両台数等の予測
新火葬場の建設計画にあたって、必要な施設規模及び敷地面積等を算出する
ために火葬場に訪れる会葬者数及び車両台数等を把握する必要があります。
葬儀習慣はその地域に根付いたものでありますが、最近は葬儀業者のシステ
ムで行われることが多いことから、将来的にもあまり変わることがないものと
想定します。
なお、現況調査の項で整理したように火葬に訪れる会葬者の平均は約 25 人程
度であり、車両台数については、マイクロバス 1 台と普通乗用車が平均約 5 台
程度です。なお、比較的多人数の葬儀の場合も見られ、車両台数も多い場合も考
えられるため、駐車スペースにつきましては極力余裕を見た計画とします。
したがいまして、必要駐車スペースについては次のように試算します。
(火葬会葬者数・車両台数等の算出)
・火葬会葬者数:平均約 25 人×同時間帯の件数を最大 5 件と設定します。
約 25 人×5 件=125 人
・車両台数 :マイクロバス利用と普通乗用車利用とします。
火葬執行時間帯から同時間帯の火葬件数を 5 件と設定します。
・普通乗用車 1 火葬当り約 5 台と想定×5件=25 台
・マイクロバス 1 火葬あたり 1 台×5 件=5 台
車両台数 合 計約 30 台
② その他必要台数:20 台
駐車台数については、身障者用を 5 台、火葬場職員用 5 台、葬儀業者用 5 台、
メンテナンス業者用 2台、施設訪問者等を 3 台と想定し、合計で 20 台程度を想
定します。
③ 必要駐車台数合計
友引明け等において、火葬件数が多い場合や会葬者数が多い火葬がある場合を
考慮して、普通乗用車については、合計必要車両台数に対して余裕を見て必要車
両台数の 1.2 倍程度確保する計画とします。
・普通乗用車(火葬会葬者用) 25 台×1.2 倍=30 台
・火葬場職員、身障者用、その他 20台
・マイクロバス 5台
合 計 55 台
④ 必要駐車面積の試算
必用駐車面積について次のとおり試算を行います。
普通乗用車 50 台(施設職員及び葬儀業者、身障者用等含む)、マイクロバス 5
台、合計 55 台分の駐車スペースを確保する計画とします。
仮に図 6-1 に示す直角駐車方式とすると、マイクロバス1台あたり約 30 ㎡、
普通乗用車 1台あたり約 20 ㎡の駐車スペースが必要となります。
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したがいまして、新火葬場の建設にあたっては次の面積を確保することが必
要となります。
・普通乗用車 45 台×20 ㎡=900 ㎡
・身障者用スペース 5 台×25 ㎡=125 ㎡
・マイクロバス 5台×30㎡=150 ㎡
合計駐車場面積 55台 =1,175 ㎡
図6-1 直角駐車方法と駐車面積
(例)小型 20 台駐車の面積は 400 ㎡
5m
6m
5m
25m
出典:道路構造令の解説と運用(社)日本自動車協会
(自動車駐車場の標準値)
3)その他必要面積について
火葬場を整備するにあたって、建築物施設、駐車場以外に考慮する必要のある
面積については次のようなものが考えられます。
① 構内通路・進入道路等面積
車両などの通行のために必要なスペースであり、特に定まった基準はありませ
んが、一般的に駐車場スペースと同程度以上の面積が必要とされています。
なお、本計画においては、将来の建替えを行う場合を考慮して、必要な面積は
車両通行用道路及びロータリー部分等を考慮して駐車場スペースの約 1.5 倍の
面積である約 1,763 ㎡程度を確保する計画とします。
駐車場面積 1,175 ㎡×約 1.5 倍=1,763 ㎡
また、進入道路は、県道 225 号線から約 50m設置することとし、幅員は 7mと
します。歩道については片側歩道を整備します。
進入道路面積 50m×7m=350 ㎡
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② 緑地等の面積
外部から直接施設が見通すことができないようにする遮蔽のための緑地、さら
に会葬者の憩いの場としての庭園の設置は必要な施設であり、新火葬場において
も設置することとします。
これらの面積としては、特に定まった基準はありませんが、都市計画マニュア
ルにおける計画標準(案)の例によると必要敷地面積の約 30%程度は確保するこ
とが望ましいものとされています。
本計画における緑地・庭園面積については次のように試算できます。
必要な敷地面積=(建築面積+駐車場面積+構内通路+進入道路)=7,363 ㎡
0.7
・緑地・庭園面積≒約 7,363 ㎡×30%=2,209 ㎡
なお「山陽小野田市墓地、埋葬法等に関する施行細則」では「敷地周囲は塀又
は生垣が設けられていること。」としていることから、周辺環境の保全や外部か
ら施設が直接見通しができないように遮蔽等を考慮して緑地等の面積はできる
だけ余裕のある面積を確保することが望ましいと考えます。
建設予定地は、既存「山陽斎場」とその周辺用地を拡張する計画であり、場所
としては県道 225 号に接する場所となっており、山林ではありますが、進入道路
付近にはドライブインや民家が数件あることから、樹木等により周辺地域から直
接新火葬場を見通すことはできないような計画とすることが必要となります。
したがいまして、本計画においては、緩衝緑地等については、現存植生を利用し
て計画することを考慮することが適切と考えます。
4)合計必要面積
新火葬場の整備に必要とする面積は、前記の1)~3)までに示したとおりであ
り、これらの面積を合計すると約 7,363 ㎡となります。
・建築物面積(建築面積) 約 1,866 ㎡
・駐車場面積 約 1,175 ㎡
・構内通路等面積 約 1,763 ㎡
・進入道路 約 350 ㎡
・緑地・庭園等の面積 約 2,209 ㎡
合 計 面 積 約 7,363 ㎡
新火葬場建設に必要な敷地としては、余裕分を約 1,000 ㎡みて合計約 8,363 ㎡とし
ます。既存山陽斎場の敷地が約 3,867 ㎡であることから、約 4,500 ㎡不足することに
なりますが、新火葬場の建設を予定している敷地は、既存山陽斎場の敷地を含め約
14,397 ㎡が予定されており、計画にあたっては特に支障がない敷地面積となっていま
す。
*:0.3 は都市計画マニュアルによる火葬場の敷地面積の緑化・植栽につい
ての例として 30%が示されています。
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図6-2 新火葬場建設予定
+ =14,397 ㎡
山陽斎場敷地
3,867 ㎡
拡張予定地
10,530 ㎡
山陽斎場敷地
3,867 ㎡
拡張予定地
10,530 ㎡
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表6-3 最近建設された火葬場施設例(平成 15年度以降の施設)
施設名
項 目 筑紫の丘斎場 ふじかわ聖苑
瞑想の森
市営斎場
三条市
槻の杜斎苑 名張市斎場
所在地 兵庫県太子町 山梨県南アルプ
ス市 岐阜県各務原市 新潟県三条市 三重県名張市
対 象 人 口 58,000 人 78,000 人 140,000 104,135 82,000
竣 工 年 H15 H16 H17 H21 H16
敷地面積(m2) 12,658 14,787.36 6,695.97 16,900 15,319
炉 数 6 基+動物炉 1
基
6 基+汚物 1
+動物 1
5 基+動物 1
(予備空間 1
基)
5 基 4 基+予備空間
1+動物 1
建築面積(㎡) 2,771 2,709.02 2,269.66 ―
延床面積(㎡) 2,315 2,870.69 2,264.57 2,219 1,724.59
告 別 室 2室 3室 2室 2室 2室
収 骨 室 2室 2室 2室 2室 2室
待 合 室
ロビー2
個室 4室
待合ロビー1
個室 和3室
洋2室
待合ロビー1
個室 和1室
洋2室
待合ロビー1
個室4 洋
待合ロビー1
個室3 洋 2、和
1
式 場 無 無 無 無 無
駐 車 場 50 台分 79 台分 100 台分 19 台分 96 台
構 造 鉄筋コンクリート 鉄筋コンクリート 鉄筋コンクリート 鉄筋コンクリート 鉄筋コンクリート
建築物等工事費
合 計 13.2億円 14.3億円 8.9億円 7.9億円 約8.0億円
炉 設 備 2.4億円 2.52億円 1.72億円 2.0億円 1.5億円
その他
外構工事・土木
造成工事等
1.9億円 4.0億円 ― ― 2.0億円
(平 均)
1 ㎡あたり平均
単価(円) 約476,000 約498,000 約392,000 約356,000 約464,000
1炉あたり平
均単価
(万円)
約3,430
バグフィルタ-
有、触媒付
約3,200
バグフィルタ-
無
約3,440
バグフィルタ-
有
約4,000
バグフィルタ-
有、触媒付
約3,000
バグフイルター
無、触媒付
1炉あたりの床
面積 (m2) 331 359 377 444 345
①1 炉当りの平均面積:371㎡ ②1 ㎡当りの建築物等工事費単価:437,400 円
③1 炉当りの平均単価(バグフイルター付):平均約 3,623 万円
20 年度以降はデータが少ないことから平均金額に H17 以降の補正率を(110)と仮定
してこれを乗じるとこととした。補正率の算出は次のように行った。
・補正率=H21 三条単価 4,000 万円/炉÷平均単価 3,623 万円≒110%
④火葬炉設備工事費=平均 3,623 万円×1.10≒3,985万円 と想定する。