【5】環境価値の評価方法 · どの非利用価値も評価 可能 問題点...

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<参考HP> 国土交通省中国地方整備局「公共事業の評価について」 http://www.cgr.mlit.go.jp/cginfo/koukyouhyouka/index.html<参考文献> 栗山浩一:公共事業と環境の価値-CVMガイドブック-、 築地書館、1997年 竹内憲司:環境評価の政策利用-CVMとトラベルコスト法の有効性-、 勁草書房、1999年 【5】環境価値の評価方法 環境デザイン工学科 「環境計画学」(担当:阿部宏史)

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<参考HP>

国土交通省中国地方整備局「公共事業の評価について」(http://www.cgr.mlit.go.jp/cginfo/koukyouhyouka/index.html)

<参考文献>栗山浩一:公共事業と環境の価値-CVMガイドブック-、

築地書館、1997年

竹内憲司:環境評価の政策利用-CVMとトラベルコスト法の有効性-、勁草書房、1999年

【5】環境価値の評価方法

環境デザイン工学科「環境計画学」(担当:阿部宏史)

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消費者余剰

供給費用

生産者余剰

均衡点では,消費者の利益(消費者余剰)と生産者の利益(生産者余剰)が大になる。

均衡点では,市場全体(消費者+生産者)の利益が 大となる。

=社会全体での適な資源配分

需要量供給量

価格

均衡価格P*

均衡点E

X*

市場需要曲線

市場供給曲線

均衡需要量(or供給量)

4-17(再).市場均衡と資源配分の効率性

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4-19(再).環境分析への拡張:外部不経済と環境税の必要性

環境税

<外部不経済効果と環境税>

外部効果ある経済主体の活動が,市場以外のルートで他の経済主体に影響を及ぼし,資源配分を歪める現象。

外部不経済効果相手に悪い影響を及ぼす外部効果。公害は典型的な外部不経済である。

外部効果の内部化外部効果が存在する場合は,需給調整による 適な資源配分が保証されない(「市場の失敗」)ので,外部不経済に対して税金等による調整が必要となる。

ピグー税公害などの外部不経済がある場合に,税金(「環境税」)を課すことによって,外部不経済を発生させる経済活動を抑制する手法。1920年にイギリスの経済学者ピグー(A.C.Pigou)が提案した。

税がない場合の社会的損失(FJEの面積)

E:企業の均衡点

需給量

価格

需要曲線

供給曲線

<環境税(ピグー税)の説明>

社会の均衡点:F

正しい供給曲線(生産費+環境汚染)

生産量

生産量の増加に伴い環境汚染が

増大する

限界外部費用

環境汚染による

<汚染のタレ流し>需給量の減少

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1-3(再).環境の機能と経済学的特徴

<環境の基本的機能>

①自然資源基盤 → 自然(環境資源)の破壊

②アメニティ(生活,文化)の供給 → アメニティ破壊

③廃棄物の同化・吸収 → 環境汚染

④生命サポートシステム → 生物種の絶滅

(植田和弘「環境経済学」,岩波書店,1996年)

<環境の経済学的特徴>

①公共財 : 共同消費,非排除性

②地域固有財: 代替不可能な地域固有の特徴を有する。

(自然景観,歴史・文化など)

③不可逆性 : かけがえのない存在

(植田和弘「環境経済学」,岩波書店,1996年)

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<補足1> 旭川源流の森林:新庄村

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<補足2> 旭川支流の里山:御津大野地区

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5-1.環境価値評価の意義と必要性

①「持続可能な発展」の概念(1980年代~)

・経済発展と環境の調和→環境経済評価の必要性

②経済的手段による環境対策(ex.環境税)

・環境財の経済評価の必要性

③生態系破壊に対する社会的関心の高まり

・社会に対する環境の価値

④直接民主主義(ex.住民投票)の補完手段

⑤公共事業評価の見直し

・環境影響の適切な評価

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5-2.自然環境の持つ多様な価値:森林生態系の例

1.環境資源 - ①国土保全:水源かん養、洪水・渇水緩和、水質浄化、浸食・崩壊防止、防風・防雪、等

- ②環境形成:気象緩和、温度維持、大気浄化、CO2吸収、アメニティの創造、等

2.文化資源 - ①保健休養:観光、レクリエーション、森林浴、キャンプ、心身ケア、等

- ②教育・文化:環境教育、エコツーリズム、芸術、教育、研究、等

3.生産資源 - ①産業:農林水産業、エネルギー、医薬品、等

出所:「栗山浩一:公共事業と環境の価値、築地書館、1997年」に基づいて作成。

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<補足4>旭川流域の概要

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<補足1(再)> 旭川源流の森林:新庄村

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5-3.環境財の特徴

<公共財(Public Goods)の性質>

①非排除性 : 受益者を特定の人々に限定できない。

②非競合性 : 消費者が増加しても、消費量を減らさずに消費できる。

<非競合性>

<非排除性>

純公共財

私的財

災害防止

水源かん養

景観保全

木材生産

レクリエーションの場の提供

原生自然の保全

野生動物の保全

遺伝子資源の保全

<生態系の価値>

森林の機能と公共財的性質

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5-4.利用形態から見た森林の環境機能

森林の価値 利用価値

非利用価値

①直接的利用価値・木材生産・食料生産

②間接的利用価値・水源かん養・国土保全・レクリエーション

③オプション価値・将来のレクリエーション・将来の資源利用

④遺産価値・将来世代に原生自然、野生動物等を残す

⑤存在価値・野生生物・原生自然

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5-5.環境評価の手法

(1)顕示選好法(Revealed Preference:RP)人々の経済行動から得られるデータをもとに、間接的に環境の価値を評価する方法。

①代替法(Replacement Cost Method:RCM)

環境に相当する別の商品で置き換えた場合の費用をもとに、環境価値を推定する。(例)水源を守るためには、ダム何個分の建設費が必要か。

②旅行費用法(Travel Cost method:TCM)

レクリエーションの価値を、旅行に要する費用を用いて評価する方法。(例)レクリエーションのために、旅行費用を払って森を訪れる。

③ヘドニック法(Hedonic Price Method:HPM)

緑地などの環境アメニティが地価や地代に与える影響を計測して、環境の価値を評価する方法。(例)美しい公園に隣接した住宅地の地価や地代は高い。

(2)表明選好法(Stated Preference:SP)人々に環境の価値を直接質問する方法。

仮想評価法(Contingent Valuation Method:CVM)

環境改善や環境破壊に対して 大支払ってもかまわない金額や、補償が必要な金額を直接質問し、その金額から環境の価値を評価する。

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5-6.環境評価手法の特徴と問題点

出所:「栗山浩一:公共事業と環境の価値、築地書館、1997年」

区分 顕示選好法(RP) 表明選好法(SP)

手法名代替法

RCM

トラベルコスト法

TCM

ヘドニック法

HPM

仮想評価法

CVM

内容

評価対象に相当する私的財に置き換えるための費用をもとに評価

対象地までの旅行費用をもとに環境価値を評価

環境資源の存在が地代や賃金に与える影響をもとに環境価値を評価

環境資源の変化に対する支払意志額や受入補償額を質問することで環境価値を評価

適用範囲

準公共財

水質改善、土砂流出防止などに限定

地域公共財

レクリエーション

景観などに限定

地域公共財

地域アメニティ、

水質汚染、騒音

などに限定

地域公共財・純公共財

レクリエーション、

景観、野生生物、生態系など幅広い

計測対象 置換費用 通常の需要曲線ヘドニック価格

関数、付値関数

支払意志額、または

受入補償額

利点

直感的に分かり易い 必要とする情報が少ない(旅行費用と訪問率など)

情報入手コストが少ない。(地代、賃金などの市場データを利用可能)

適用範囲が広く、

存在価値や遺産価値などの非利用価値も評価可能

問題点

評価対象に相当する私的財が存在しないと評価できない

適用範囲がレクリエーションに関係するものに限定される

適用範囲が地域的なものに限定され、一般に都市部の環境財が高く評価される

アンケート調査を実施するため情報入手コストが大きく、様々なバイアスが存在する

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5-7.TCMとCVMによる公共事業評価(中国地方整備局)

出所:国土交通省中国地方整備局(http://www.cgr.mlit.go.jp/cginfo/koukyouhyouka/2011/pdf/H23-6_data4-1.pdf)

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5-8.旭川の河川環境と利用状況

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5-9.評価対象事業の内容

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5-10.整備内容(②内山下箇所 ③後楽園箇所)

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5-11.整備内容(④古京箇所)

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5-12.費用便益分析の方法:CVMとTCMによる便益計測

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5-13.アンケート調査地域:②内山下箇所 ③後楽園箇所

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5-14.アンケート調査票(②内山下箇所 ③後楽園箇所)

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5-15.アンケート調査票(②内山下箇所 ③後楽園箇所)

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5-16.アンケート調査票:CVM(②内山下箇所 ③後楽園箇所)

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5-17.CVMによる年間便益の推計(②内山下箇所 ③後楽園箇所)

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5-18.アンケート調査地域:④古京箇所

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5-19.アンケート調査票(④古京箇所)

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5-20.アンケート調査票:TCM(④古京箇所)

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5-21.TCMによる年便益の推計(④古京箇所)

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5-22.費用便益分析の結果