オープンサイエンスが切り拓く社会課題解決型研究の未来β

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Page 1: オープンサイエンスが切り拓く社会課題解決型研究の未来β

オープンサイエンスが切り拓く

社会課題解決型研究の未来 β近 藤 康 久

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昨日、文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP) で講演しました。

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こっち

が α

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近藤康久:自己紹介

• 出身分野は考古学• 総合地球環境学研究所 ( 地球研 )

研究基盤国際センター情報基盤部門に所属

• GIS ・リモートセンシング担当• オープンサイエンス推進担当• コアプロジェクト予備研究 (FS)

「社会協働型研究のアクター間における知識情報ギャップの可視化と克服」責任者

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• 2001 年に文部科学省附置研究所として創設。京都市北区上賀茂に所在。

• 地球環境問題を「人と自然の相互作用環」の視点から研究。

• 文理融合型の共同研究プロジェクトを時限付きで推進。

• 社会の多様な課題当事者との協働研究が持ち味。

• 持続可能性国際研究プログラム「 Future Earth 」のアジアセンター。 4

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8 プロジェクトが進行中+終了 27 プロジェクト

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社会との協働による課題解決型研究Transdisciplinary Research (超学際研究、超域研究とも)

地球環境問題などの社会課題を解決するための政府・自治体・企業・ NPO ・地域住民など社会の多様な当事者 ( ステークホルダー ) との協働による• 研究の設計 (co-design) • 知識の生産 (co-production)• 成果の展開 (co-dissemination)

(Mauser et al. 2013. doi:10.1016/j.cosust.2013.07.001)

• 意思決定を支援する選択肢の提示 (co-leadership) が特に重要

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社会課題解決型研究と親和性の高い分野の例

• 健康科学

• 子ども学

• 加齢医学

• 地球環境学

• 地域計画学 など

→ 「臨床系」=「人と接する」学問7

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研究者

課題当事者

社会協働研究の類型 (1)Participatory Research

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研究成果

例:質問紙調査、アイディアソンクラウドソーシングなど

主導

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社会協働研究の類型 (2)Action Research

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研究者

課題当事者

課題解決

例:自治体からの受託研究など

研究成果

主導

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社会協働研究の類型 (3)(狭義の) Transdisciplinary Research

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研究者

生活者

課題解決のための意思決定意思決定者

“Co-x”Co-plan

Co-product

Co-disseminationCo-leadership

対話を通じた相互理解

課題解決

研究成果

└課

題当

事者

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私の経験:オマーンの世界遺産バート遺跡群の調査

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5千年前のオアシス町と墓域

オマーン湾

ホルムズ海峡

ハジャル山脈

バティナ平野

ルブアルハリ砂漠

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課題当事者それぞれの利害(思惑)

課題当事者 利 害(思 惑)

外国隊(研究者)

発掘調査をしたい。

遺産文化省(意思決定者)

ユネスコのガイドラインにしたがって、遺跡の保存修復と史跡整備を進めたい。

地域住民 遺産文化省や外国隊が何をしているのか、きちんとした説明を受けたい。

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まずはアクションリサーチから

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日本隊(研究者)

遺産文化省(意思決定者)

課題解決

研究成果

デジタル文化遺産目録の構築

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文化遺産目録の設計コンセプト

Simple シンプルであること• IT初級者でも使える。

Sustainable持続可能であること• 開発者がいなくなっても使い続けられる。

Secure セキュリティーが堅牢であること• 機密情報を漏洩させない。

14Kondo et al. (2016) http://doi.org/10.1108/JCHMSD-01-2016-0005

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アクセス・メンバーシップ

0. 開発者

1. 研究チームと遺産文化省職員(情報の編集)

2. 他省庁・他の研究チーム(情報の閲覧)

3. 一般公開(制限された情報の閲覧)

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ユースケース(利用想定)

Lv アクター 用 途

1 遺産文化省(意思決定者)

• 文化遺産マネジメント• 埋蔵文化財行政• 史跡整備計画• 教育普及(アウトリーチ)

2 研究者 • 学術研究

2 関係省庁開発業者 • 埋蔵文化財を考慮した開発計画立案

3 地域住民観光客 • 遺跡のことをより深く知る

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Page 17: オープンサイエンスが切り拓く社会課題解決型研究の未来β

システムとデータフロー入力 データプロセシング 出力

確認調査

以前の調査記録

データ化by MS Excel

データベース化by FileMaker

マップ作成by QGIS

マップ公開by Google My Maps

マップ公開by Arches

静的マップ

クラウドストレージ by Dropbox

データベース

.jpg

.kmz

.pdf.jpg

.pdf

.csv

ワークシート

.xlsx

.pdf

.pdf

帳票

.mdb

.xlsx

.jpg

.kmz

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動的マップ

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確認調査18

Page 19: オープンサイエンスが切り拓く社会課題解決型研究の未来β

GPS座標計測 遺構の記録

情報の照合

& ドイツ隊の調査記録

米国隊の調査記録

デンマーク隊の調査記録

外部参照

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データベースの構築 (FileMaker)

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地域住民とのタウンミーティング

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課題当事者=アクター

アクター 社会的実体 知識

研究者 職業研究者 科学知

意思決定者政府、自治体、企業職員

政策知ガバナンスの知

生活者 NPO職員、地域住民

生活知

プロボノ new!

(専門技能ボランティア )

弁護士、プログラマ、社会起業家など

技術知

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プロボノ:社会課題解決の新しいアクター

• 法律、金融、 IT、ソーシャルデザインなどの専門知識・技能をもつ個人

• 地縁はないが、社会貢献意欲が高い。

• オープンデータを用いたソーシャルイノベーションを主導

Happy Life Ideathon 2015.10.3 地球研 グラフィックレコーディング

MIX!! 琵琶湖

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オープンサイエンスは多義的

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オープンリサーチデータ

オープンアクセス

シチズンサイエンス

データ論文データ引用

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オープンサイエンスとプロボノ

政府による定義

•オープンアクセス•オープンデータ(特に、研究データのオープン化)•市民参加型科学(シチズンサイエンス)の拡大→ オープンイノベーションの重要な基盤

第 5期科学技術基本計画 (2016.4-2021.3)

実態

•「オープン」という言葉に夢 / 野望を託し、現状の研究システムを変革すること(北本 2016 )•「同床異夢」(北本 2015 )•総論賛成・各論反対

短期的効果

•オープンデータを用いたソーシャルイノベーションに長じたプロボノが、社会課題解決を指向する研究に参画しやすくなる 25

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スピンオフ

研究者

生活者

課題解決のための意思決定

意思決定者

“Co-x”Co-design

Co-productionCo-leadership

相互理解

プロボノ(専門技能ボランティア)

科学知分野 B

在来知立場 E

政策知機関 C

技術知技能 G

研究成果

課題解決

科学知分野 A

政策知機関 D

在来知立場 F

オープンサイエンスにより、プロボノが社会課題解決指向研究に加わる

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Scholz 2012, 2014 を改変

オープンデータ

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メタデータを付与・開示して、データ

の相互運用性を高めれば済むのか?

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Page 28: オープンサイエンスが切り拓く社会課題解決型研究の未来β

暗黙知と形式知の相互変換

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暗黙知 形式知

論文出版

教育・アウトリーチ

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暗黙知と形式知

29(野中郁次郎・紺野 登 2003『知識創造の方法論』東洋経済新報社)

Page 30: オープンサイエンスが切り拓く社会課題解決型研究の未来β

知識創造の一般原理: SECI モデル

30(野中郁次郎・紺野 登 2003『知識創造の方法論』東洋経済新報社)

Page 31: オープンサイエンスが切り拓く社会課題解決型研究の未来β

スピンオフ

研究者

生活者

課題解決のための意思決定

意思決定者

“Co-x”Co-design

Co-productionCo-leadership

相互理解

プロボノ(専門技能ボランティア)

科学知分野 B

在来知立場 E

政策知機関 C

技術知技能 G

研究成果

課題解決

科学知分野 A

政策知機関 D

在来知立場 F

オープンデータに付帯する暗黙知を共有するには?

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Scholz 2012, 2014 を改変

オープンデータ

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対 話

Dialogue

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共同事実確認

Confirmed common facts

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相互信用

Mutual trust

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Page 35: オープンサイエンスが切り拓く社会課題解決型研究の未来β

アンカンファレンスによる論点の整理第 1回  2016 年 2月 5 日 地球研

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アンカンファレンスとは

“アンカンファレンスとは講演者の話を聞くセッションの形態とは異なり、参加者自身がテーマを出し合いそのテーマについて自分たちで話し合い、参加者全員で作り上げるカンファレンスです。”

(WordCamp Tokyo 2012 ホームページより )

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第 1回アンカンファレンスの論題オープンサイエンスで地球環境研究をどう変える?

• オープンデータを制度化するには?

• オープンサイエンスと TD ( 超学際研究 ) はどう結びつくか?

• データライブラリアンの役割は?

• オープンサイエンスの負の側面は?

• 研究者がデータを公開したくなる仕組みをどう作るか?

• 地球研アーカイブズをどう活用するか?

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地球環境研究の特性(問題設定)• 環境問題は、人間社会と自然環境の

要因が時間的にも空間的にも多様なスケールで絡みあって起きる。

→ 多種多様な研究データを取り扱う。• 定型的なデータ

• 地球規模の観測データなど• 非定型的なデータ

• フィールドでの聞き取りデータなど• データ生産者本人以外が品質管理や

分析を適切に行うのが困難な場合もある。

• オープンサイエンスで、地球環境のフィールドサイエンスにイノベーションを起こすには? 38

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第 2回アンカンファレンス( NII- 地球研合同セミナー)「オープンサイエンスでフィールドサイエンスの新時代を拓

く」2016 年 9月 3 ・ 4 日 於・ NII軽井沢国際高等セミナーハウ

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当日の進行(アンカンファレンスの方法)

参加者 地球研から 6 人、 NII から 2 人、他機関から 3 人

1 日目

13:30 インプットセミナー(北本朝展、大澤剛士、近藤康久)

15:40 コーヒーブレイク〜ワークシートで論点提案〜セッション編成

16:40 対話セッション( 5 人程度 ×2 グループ、 40 分 ×2回)

18:00 バーベキュー(対話つづき)

21:00 なぜか自発的に対話つづき

2 日目

9:00 ラップアップ(セッションの報告と質疑 ×4 グループ)

11:00 閉会

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まとめ:オープンサイエンスが切り拓く社会課題解決型研究の未来

• アームチェアサイエンスでも、ヘリコプターサイエンスでもなく、社会に寄り添い、ともに歩む科学 = 臨床の学

• オープンサイエンスアプローチ = 科学知の開放• 形式知と共に、暗黙知も開放• プロボノの参入促進

– オープンデータの利用は使用者責任。でも使用者に寄り添い、サイエンスを共に発展させることも必要

• 科学と社会を双方向的につなぎ、変えていくエヴァンジェリストの育成

• 対話、共同事実確認、相互信用に根ざしたサイエンスによる新しい価値の共創 → 未来へ

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京都でのオープンサイエンスと社会協働型研究に関する研究集会予定

開催日 場所 研究集会名

9/27-28 京大 オープンサイエンスデータ推進ワークショップ

10/4 地球研 地域資源ハテナソン(仮)

10/9-10 地球研 環境問題の現場における超学際研究の新展開

11/7 地球研コア FS 研究会:中島健一郎(広大)「集団間のギャップは

なぜ生じるか:社会心理学からのアプローチ」(仮)

1/27 地球研 コア FS 研究会:池内有為(筑波大)「オープンサイエンスの実現に向けた研究データ共有の実態調査」(仮)

42ご静聴ありがとうございました。 [email protected]