インターフェイスの世界の言語

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Page 1: インターフェイスの世界の言語

サービスの構造分析第1章 インターフェイスの世界の言語

2016.08.01 Tomohiro Suzuki

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イントロダクション

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自己紹介

Tomohiro SuzukiUXデザイナー

- 受託でワークショップしながら進めたり、戦略考えたりする人- デザイナー 6年目- DTP→新聞社→スタートアップ→Standard

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本資料の目的

仮定デザイン行為に意味が存在し、コミュニケーション(言語化して伝達)ができると仮定するならば、言語レベルでの構造化が可能なのではないかという仮説の元、研究を進めており、それの報告書となります。また、本資料では入り口として物質的かつデジタル的なインターフェイスでの例を扱っています。

エキスパートからのレビュー本資料の内容、および今後の研究についてより専門的知識を持つ人からの意見を頂くために、資料化しています。是非批評を頂ければと思います。

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留意事項

アプリケーションでの限定本資料では理解のために、シンプルなタスクとして説明のしやすいモバイルアプリケーションを対象として、各事例で扱っていきます。

UIとインターフェイスの使い分けユーザーによるコンテキストの変化の影響を考慮しない部分を主に扱うことになるため、人間中心のインターフェイス設計と区別するために、以後UIという語は用いず、インターフェイスという用語を使用します。

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名詞としての分類

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我々が用いるインターフェイスという用語は何を示しているのか

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インターフェイスの認識

我々が普段の会話で示すインターフェイスという記号は、何に対して用いられているのでしょうか。接触面をいったい何だと認識して使い分けているのでしょうか。

インターフェイス

インターフェイスの領域 インターフェイスではない何か

認識の壁

意味①

インターフェイス

意味②

???

意味③

???

意味④

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アプリケーション

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画面郡

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画面

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コンポーネント ※複数のグラフィックの集合体としての意味なので、「パーツ」「エレメント」「モジュール」などの単語の場合もありますが、本資料ではコンポーネントとして統一します。

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画像

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図形

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Safari search now includes Spotlight Sugges-tions from the Internet, iTunes, App Store, movie showtimes, locations nearby, and more.You can change this in Settings.

テキスト

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日常会話例

アプリケーション

「最近見つけていいと思ったUIのアプリない?」

画面群

「メルカリで購入する時のUIみたいにしてよ」

画面

「SmartNewsの記事の一覧のUIって、ニュース系のアプリの中でも特殊だよね」

コンポーネント

「そこのタブはもっと大きくて押しやすいUIにしてもいいんじゃない」

UIデザイナーが集まると、毎回こんな感じの会話を耳にしませんか?

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画面群

アプリケーション

画面

コンポーネント

画像

図形

テキスト

認識しやすい領域

認識の壁

認識しにくい領域

(意識せずとも自然と言語化して通じる)

(日常ではデザイナー同士の会話でもインターフェイスではなく、別の∨を用いて認識・表現されている)

認識の境界線

コンポーネントとその構成要素との間に認識の境界線が存在。

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Page 18: インターフェイスの世界の言語

名詞としての分類

インターフェイスの表記は、下記のように4種類の意味で用いられており、その意味を我々は会話のコンテキストに応じて理解し、判別して使用。

インターフェイス

アプリケーション

インターフェイス

画面群

インターフェイス

画面

インターフェイス

コンポーネント

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Page 19: インターフェイスの世界の言語

動詞の作用と関係構造

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Page 20: インターフェイスの世界の言語

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インターフェイスは何を成すために存在するのか

Page 21: インターフェイスの世界の言語

抽象

(設計としての)行為

具体

概念整理

アプリケーション

画面群

画面

コンポーネント

存在目的

構成物

設計対象

まずは先ほどの4種類のインターフェイスという語が示す対象を元にして、それぞれがどのような関係性をもって存在しているかを整理。

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Page 22: インターフェイスの世界の言語

アプリケーション

存在目的アプリケーションを通して得られる結果のため

経験に必要なタスク

構成物画面群の集合体

設計対象

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Page 23: インターフェイスの世界の言語

画面群

存在目的経験に必要なタスクを成すため

タスクに必要なアクション

構成物

画面の集合体

設計対象

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Page 24: インターフェイスの世界の言語

画面

存在目的タスクに必要なアクションを成すため

アクションに必要なジェスチャ

構成物

コンポーネントの集合体

設計対象

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Page 25: インターフェイスの世界の言語

コンポーネント

存在目的アクションに必要なジェスチャ

ジェスチャに必要な視覚情報の結合

構成物- 画像- 図形- テキスト

設計対象

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Page 26: インターフェイスの世界の言語

アプリケーションを通して得られる結果のため

経験に必要なタスク 画面群の集合体

存在目的 構成物設計

タスクに必要なアクションを成すため

アクションに必要なジェスチャ

コンポーネントの集合体

アクションに必要なジェスチャを成すため

ジェスチャに必要な視覚情報の結合

- 画像- 図形- テキスト

概念整理

アプリケーション

画面群

画面

コンポーネント

経験に必要なタスクを成すため

タスクに必要なアクション 画面の集合体

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Page 27: インターフェイスの世界の言語

目的構造

一時的な経験とは、それを構成するタスク以下がインターフェイスを通して得られた実体験をユーザーを通して変換された結果。

経験(一時的)

タスク

アクション

ジェスチャ ジェスチャ

アクション

ジェスチャ ジェスチャ

タスク

アクション

ジェスチャ ジェスチャ

アクション

ジェスチャ ジェスチャ

ユーザー

インターフェイスを目的に発生する行為

インターフェイスを目的に発生しない行為

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Page 28: インターフェイスの世界の言語

物的情報の生成

目的達成のために必要となる作用の設計過程の結果、物的情報としての画面、またはそれを構成する視覚的にも確認できる存在が生成される。

画面群が生成

画面が生成

コンポーネントが生成

経験(一時的)

タスク

アクション

ジェスチャ ジェスチャ

アクション

ジェスチャ ジェスチャ

タスク

アクション

ジェスチャ ジェスチャ

アクション

ジェスチャ ジェスチャ

ユーザー

インターフェイスを目的に発生する行為

インターフェイスを目的に発生しない行為

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Page 29: インターフェイスの世界の言語

had been V(Verb)

経験について

アプリケーションでの経験 = 一時的UX(Momentary User Experience)

経験 = 「過去」に「した」こととして分解

完了形を削除した場合に残るのは「動詞」であり、その動詞の一部はインターフェイスを通して経験することとなる。

have been

語幹

V(Verb)

た(活用語尾)※必ずしも過去・完了のみを表すものではないが本資料では省略

ラテン語文法

日本語文法

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Page 30: インターフェイスの世界の言語

記号変換

インターフェイス

アプリケーション

インターフェイス

画面群

インターフェイス

画面

インターフェイス

コンポーネント

経験(一時的) タスク アクション ジェスチャ

先にまとめた4種類の分類に基づき内容を行為(動詞)へと変換。

表現

内容

行為

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Page 31: インターフェイスの世界の言語

料理する移動する

宿泊する食べる

釣る転職する

撮影する描く

録画する観る

計算する確認する

連絡する購入する

作成する検索する

加工する投稿する

タップする スワイプする ドラッグする

動詞変換とサンプル

経験レイヤー

タスクレイヤー

アクションレイヤー

ジェスチャレイヤー

各レイヤーに使用される動詞で分類すると下記のような構成になります。

インターフェイスが直接的に関わる世界

インターフェイスが間接的に関わる世界

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Page 32: インターフェイスの世界の言語

動詞変換とサンプル

家計簿作成初心者が、収支を管理する。

タクヤは残金を管理するために、まずは今月の給料を登録する。支出が発生した時には、レシートを撮影するだけで、

アプリに記録することができる。

タクヤはアプリ内のカメラアイコンをタップし、レシートをカメラの範囲に収め、撮影ボタンをタップする。撮影が完了したレシートは、自動でスキャンが完了し、

使用した金額をアプリに記録することができる。32

Page 33: インターフェイスの世界の言語

シナリオへの活用と分類

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Page 34: インターフェイスの世界の言語

価値 活動 操作

バリューシナリオ アクティビティシナリオ インタラクションシナリオ

抽象的 具体的

構造化シナリオについて

ユーザーの要求事項の抽出に基づき、価値、活動、操作の各レイヤーでユーザーにとっての理想的となるシナリオを書き出す手法。

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Page 35: インターフェイスの世界の言語

シナリオ構造

バリュー

アクティビティ

インタラクション インタラクション

アクティビティ

インタラクション インタラクション

シナリオの構造について考えると、単一のバリューシナリオから複数のアクティビティシナリオ、その下にインタラクションシナリオが存在する構造が伺える。

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Page 36: インターフェイスの世界の言語

バリュー活用

アクティビティ活用

インタラクション活用

構造化シナリオによる動詞分類

料理する連絡する

宿泊する食べる

撮影する描く

録画する観る

連絡する購入する

作成する検索する

タップする スワイプする

経験レイヤー

タスクレイヤー

アクションレイヤー

ジェスチャレイヤー

経験動詞

インターフェイス動詞

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Page 37: インターフェイスの世界の言語

動詞の分類

バリュー活用 アクティビティ活用

インタラクション活用

経験動詞 インターフェイス動詞

インターフェイスを目的としない活用形 インターフェイス上での行為を目的とする活用形

インターフェイス上でのジェスチャを表す活用形

1, vVのためにaVする2, aVのためにiVする

バリュー活用=vV,アクティビティ活用=aV,インタラクション活用=iV と仮定した場合の文章構造

※ バリュー活用以外の経験動詞の分類については次章にて記述

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Page 38: インターフェイスの世界の言語

動詞の分類指標βの作成

i) 目的語=X,動詞=V と仮定した場合の基本構文

ii) 上記XとVに文脈で使われる目的語と動詞を代入

[X] を/に/と [V] する

バリュー活用

Xは現実世界に存在する物/概念 Xはデータ世界に存在する物/約束事/概念

動詞によってはバリュー活用、アクティビティ活用の両方として存在することもあるため、目的語を当てはめた場合の文脈により判断。

アクティビティ活用

※ インタラクション動詞は数が少なく、動詞単体で判断できるため除外

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Page 39: インターフェイスの世界の言語

代入例サンプル

解除する [パスワード] を [解除する] アクティビティ活用

行く [オフィス] に [行く] バリュー活用

加工する [写真] を [加工する] アクティビティ活用

消す [火] を [消す] バリュー活用

[メール] を [消す] アクティビティ活用

[送付先] を [選ぶ] アクティビティ活用

選ぶ [家具] を [選ぶ] バリュー活用

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Page 40: インターフェイスの世界の言語

既存動詞の分類

https://docs.google.com/a/standardinc.jp/spreadsheets/d/1YKXsOCwWZgvGzWpTF4XllbjuAuD0ebqw83Agd5ToKmA/edit?usp=sharing

バリュー活用とアクティビティ活用の両方に適用できる動詞は黄色で記述

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Page 41: インターフェイスの世界の言語

UI Flowsへの活用と概念整理

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Page 42: インターフェイスの世界の言語

ワイヤーフレームの情報分解

12:24 AM

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位置情報- 存在位置による意味の付与

形状情報- 記号抽象化

色彩情報- 2色以上の意味の付与

知覚補助コンポーネント- 操作はできずトリガーとフィードバックのインタラクションを補助するための要素

操作コンポーネント- 画面に存在しなくては成り立たない要素 効果

効率

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Page 43: インターフェイスの世界の言語

UI Flowsについて

37signalsによって作られた、シナリオを元にユーザーが見るもの/することに分解することで、行為から視覚情報を生成するフレームワーク

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Page 44: インターフェイスの世界の言語

ユーザーが見るもの

ユーザーがすること

ユーザーが見るものユーザーが見るもの

ユーザーがすること①

ユーザーがすること②ユーザーが見るもの

UI Flowsの記法

アクティビティ型UI Flows

コンポーネント

アクティビティ活用動詞

インタラクション型UI Flows

コンポーネント

インタラクション活用

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Page 45: インターフェイスの世界の言語

メール一覧

メールを選択

メール詳細

返信をタップ

転送をタップ

テキストフィールド

転送先選択

UI Flowsの記法

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Page 46: インターフェイスの世界の言語

アプリケーションを通して得られる結果のため

経験に必要なタスク 画面群の集合体

存在目的 物的存在設計

タスクに必要なアクションを成すため

アクションに必要なジェスチャ

コンポーネントの集合体

アクションに必要なジェスチャを成すため

ジェスチャに必要な視覚情報の結合

- 画像- 図形- テキスト

アプリケーション

画面群

画面

コンポーネント

経験に必要なタスクを成すため

タスクに必要なアクション 画面の集合体

概念整理

構造化シナリオUI Flows

UI Flows

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Page 47: インターフェイスの世界の言語

形容詞による品質向上

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Page 48: インターフェイスの世界の言語

品詞とユーザビリティ

先までの動詞による構造化は効果を成立させるための条件であるが、効率を向上させるためには形容詞、形容動詞による言語化が必要。

効果

効率

満足度

概念 品詞 コンポーネントへの影響

0→1

1→100

動詞- 操作コンポーネント- 知覚コンポーネント

- 位置情報- 形状情報- 色彩情報

形容詞

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Page 49: インターフェイスの世界の言語

影響を与える情報

形容詞の相対性

動詞に比べ形容詞は認識の違いに差異が発生するという特徴があるため、ユーザー調査による定性的、定量的な定義が必要。

動詞

形容詞

AA

CB - 言語- 文化- 宗教- 社会- 経済

- 経験- 身体的特徴- 感情- 感覚- 性別

- 年齢- 職業- 空間- 時間- 調査方法

※ 本資料では形容詞、形容動詞をあわせて形容詞として明記しています。

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Page 50: インターフェイスの世界の言語

形容詞の対称性

形容詞よっては相対的に反対の意味をもたらす対義語が存在する(動詞に比べ対義語の単語数が多く存在することも特徴)。

大きい 小さい

古い 新しい

浅い 深い

高い 低い

高い 安い

固い 柔らかい

長い 短い

明るい 暗い

早い 遅い

薄い 濃い

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Page 51: インターフェイスの世界の言語

形容詞の対象性

形容する対象の存在と、形容する状態の軸により、下記のように分類することができ、本資料では主にインターフェイスに関係する部分を扱う。

性質・状態

概念

物質

感情対象

状態

経験形容詞

インターフェイス形容詞

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Page 52: インターフェイスの世界の言語

形容詞の与える影響

ゴールが同じ動詞であっても、形容詞の性質によって価値が変化する。

目的地に確実に辿り着く。 目的地に適当に辿り着く

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Page 53: インターフェイスの世界の言語

インターフェイス内での分類 

インターフェイスに影響を与える形容詞では、下記のような分類ができ、それぞれインターフェースの性質や存在に影響を与える。

色彩形容詞色彩印象形容詞

色彩直接形容詞

形状形容詞

程度形容詞

色情報

形状情報

画面群、画面、コンポーネントの存在

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Page 54: インターフェイスの世界の言語

インターフェイス形容詞の分類

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1YKXsOCwWZgvGzWpTF4XllbjuAuD0ebqw83Agd5ToKmA/edit#gid=374031657

程度と色彩印象の両方に適用できる形容詞は黄色程度と形状の両方に適用できる形容詞は緑で記述

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Page 55: インターフェイスの世界の言語

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構造化シナリオへの対応

バリューシナリオ

アクティビティシナリオ

インタラクションシナリオ

効果 効率 満足度

効果型バリューシナリオ

効果型アクティビティシナリオ

効果型インタラクションシナリオ

効率型バリューシナリオ

効率型アクティビティシナリオ

効率型インタラクションシナリオ

インターフェイスへの影響小

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ネクストステップ

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ネクストステップ

- インターフェイス領域 - ナビゲーション構造と言語 - 他品詞の影響 - デバイス依存型言語の構造化 - インターフェイスパターンと判断言語の構造化

- ユーザー体験領域 - 課題品詞と解決品詞の分類による定性的課題の特定方法の確立 - 経験に関する形容詞の分類

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参考文献

池上 嘉彦(1984) - 記号論への招待 http://amzn.to/1UUoY2F

クラウス クリッペンドルフ(2009) - 意味論的転回―デザインの新しい基礎理論 http://amzn.to/1gpUiDD

内田 樹(2012) - 街場の文体論 http://amzn.to/1OdIcw3

S.I.ハヤカワ(1985) - 思考と行動における言語 http://amzn.to/1NCbrZe

田中 克彦(1993)- 言語学とは何か http://amzn.to/1UUqe5X

小林 重順(1995) - 配色イメージワーク http://amzn.to/1FM53qs

レトリックの記号論(1993) https://goo.gl/suhqJ2

細川 英雄 (1989) - 現代日本語の形容詞分類について http://goo.gl/I25DNR

原沢 伊都夫 (2010) - 心の状態を表す動詞の再分類 http://goo.gl/1hfMti

野口 良平 - イコン・インデックス・シンボル ― 概念再定義への試み http://goo.gl/AKMc2F

UX INSPIRATION!(2014) - サービスデザイン方法論2014 第5回:構造化シナリオ法 レポート http://goo.gl/PGBrsY

REFLECTION (2014) - 画面遷移に疑問を感じたあなたにオススメするUI Flowsというツール http://goo.gl/tBwUIp

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