医師による糖尿病食事指導のポイント
description
Transcript of 医師による糖尿病食事指導のポイント
医師による糖尿病食事指導のポイント
川崎市立井田病院内科半田みち子
5つのポイント
1. 糖尿病の食事療法を知る2. ある程度時間をかける3. 患者を選んで指導する4. カロリー計算をしない食事指導5. 効果を確認する
1.糖尿病の食事療法を知る
糖尿病の食事療法
• (1) 総カロリーの制限、 (2) 栄養をバランス良く摂取すること、が食事療法の原則
• 摂取カロリーの計算法: 標準体重 x ( 25 ~ 35 ) kcal
標準体重 (kg )=身長( m )x身長( m ) x 22
• 栄養指導のひとつの方法として食品交換表がある
食品交換表とは
表1 穀物、いも、豆、かぼちゃ、とうもろこしなど
表2 くだもの
表3 魚介、肉、卵、チーズ、大豆とその製品
表4 牛乳および乳製品(チーズを除く)
表5 油脂、多脂性食品(ベーコン、ピーナツ、アボガドなど)
表6 野菜、海藻、きのこ、蒟蒻など
調味料 味噌、砂糖、みりんなど
1 単位= 80kcal
食品交換表の読み方1.食品の分類:栄養素により 6 つのグループに分類 ( 表 1-6)2. 1 単位= 80kcal
① ご飯茶碗 1 杯、パン 6 枚切 1 枚は 2 単位② りんごやバナナ小 1 個は 1 単位③ 魚 1 切れ(約 80g )、鯵 1 尾、イカ 1 杯、肉 1 人分(約 60g )、
卵 1 個、スライスチーズ 2 枚は大体 1 単位 納豆 1 パック、豆腐 1/3 丁は 1 単位④ 牛乳または 、ヨーグルト コップ 1 杯 (200ml) は 1.4 単位⑤ 油大さじ 1 杯は 1 単位⑥ 野菜は量をあまり気にしなくて良い⑦ 調味料:味噌汁 1 杯分の味噌は 0.3 単位
3.同じグループ(表)の食品は交換可能
例えば 1800kcal = 23 単位の食事の場合( 1 日量の目安)
表 1 (主食)
12 単位 ご飯 6 杯またはパン 6 枚
表 2 (果物)
1 単位 りんごまたはバナナ 1 個
表 3 (主菜)
5 単位 肉、魚、豆腐、納豆、卵、チーズなど
表 4 (乳製品)
1.4 単位 牛乳 1 パック (200ml)
表 5 (油) 2 単位 油大さじ 2 杯分表 6 (野菜)
1 単位 両手にいっぱい
調味料 0.6 単位 味噌、砂糖など調理分
1800kcal の朝食
• パン ロール 100g• 低エネルギージャム• スクランブルエッグ• コールスローサラダ• 牛乳 1 本• 果物:オレンジ 40g
1800kcal の昼食
• 五色ごはん:ごはん200g 、卵、鶏ひき肉、椎茸、蓮根、絹さや
• 澄まし汁• 蕪のとろみ煮• 冷奴(半丁)• 果物:スイカ 80g
1800kcal の夕食
• ごはん 200g• 天麩羅:海老、隠元、
人参• 白菜おひたし• 酢味噌合え:わけぎ、
若芽• 果物:キウイフルーツ 50g
例えば 1200kcal = 15 単位の食事の場合( 1 日量の目安)
表 1 (主食)
6 単位 ご飯 3 杯またはパン 3 枚
表 2 (果物)
1 単位 りんごまたはバナナ 1 個
表 3 (主菜)
4 単位 肉、魚、豆腐、納豆、卵、チーズなど
表 4 (乳製品)
1.4 単位 牛乳 1 パック
表 5 (油) 1 単位 油大さじ 1 杯分表 6 (野菜)
1 単位 両手にいっぱい
調味料 0.6 単位 味噌、砂糖など調理分
1200kcal の朝食
• パン ロール 60g• 低エネルギージャム• スクランブルエッグ• コールスローサラダ• 牛乳 1 本• 果物:オレンジ 30g
1200kcal の昼食
• ご飯 100g• 鶏肉の味噌煮• 澄まし汁• 蕪のとろみ煮• 果物:スイカ 80g
1200kcal の夕食
• ごはん 100g• 煮魚:目鯛• 白菜おひたし• 酢味噌合え:わけぎ、
若芽• 果物:キウイフルーツ 50g
糖尿病食の基本
• 主食: 1 食につき、ご飯 1-2 杯、またはパン 1-2枚、またはうどん 2/3-1.5 玉
• 主菜(肉、魚、豆腐など): 1 食につき、 1 皿(-2 皿 )
• 副菜(野菜): 1 食につき、 1-2 皿• 味噌汁: 1 日 1 杯• 果物: 1 日 1 個• 牛乳(または ):ヨーグルト 1 日 1 本 (200ml)• お菓子、アルコールは原則として無し
参考:し好飲料
食品名 1単位(ml) 備考ビールワイン日本酒焼酎 25度ウィスキー
200100755530
中ビン 500ml、缶(普)350mlワイングラス1杯 60ml1合 180ml1合 180mlウィスキーグラス1杯 30ml
ジュース乳飲料豆乳
200140130
コップ1杯 200ml1パック 180ml1パック 180ml
参考:菓子類
食品 1単位(g) 備考
アイスクリーム 40
カステラ 25 中1きれ 50g
シュークリーム 30 中1個 50g
せんべい 20 中1枚 10g
だいふく 35 中1個 70g
ねりようかん 25 小1きれ 35g
チョコレート 15
2.ある程度時間をかける
資料を利用し具体的に話す
食事指導の進め方
• 栄養士は 1回 30 分の指導を 3回以上行っている。医師の場合は一人の患者に 10 分くらいを目安とし、なるべく具体的に話す。
• 糖尿病を放置してはいけないことを十分理解させる。その上で、食事療法が何より大切であることを強調する。
• 何回かに分けて話し、繰り返す。• 使い易い資料を用意し、説明した後患者に渡
す。
資料の利用
資料を使った指導例
食事バランスガイド(厚生労働省・農林水産省決定)
男性 女性高齢男性
高齢女性
主食 5-6 4-5 3-4
副菜 4-6
主菜 4-6 3-5 3-4
乳製品 2
果物 2
3.患者を選んで指導する
食事指導が必要な患者とは
• 初めて糖尿病を指摘された患者• 糖尿病になってまもない人でこれまで
食事指導を受けたことがない患者• 40歳以下の患者• 本人あるいは家族にやる気があり、理解力もある患者
4.カロリー計算をしない指導
一般的な注意
• ゆっくり良く噛んで食べ、腹八分目とする• 食品の種類は出来るだけ多くする• 食物繊維を多く含む食品(キノコ、海藻な
ど)を充分摂る• 薄味に慣れる• 甘いもの、脂っこいものはなるべく食べない
ようにし、飲み物にも気をつける• 3 食を規則正しく摂り、間食、夜食は避けるよ
うにする。
アルコールと甘いもの
• アルコール、甘いものは出来るだけ控える。• どうしても欲しいときは1日 2 単位まで• 2 単位のアルコール:日本酒 1 合、ビール中瓶 1 本、ワイン 200ml (グラス 3 杯くらい)
• 2 単位の甘味:大福 1 個、饅頭 1 個、カステラ 1 切れ、ケーキ 1/2 ~ 2/3 切
• 2 単位のジュース:コップ 2 杯 (400ml)
外食の注意
• 外食はカロリー、塩分、油が多く、栄養のバランスも悪い。
• なるべくカロリー表示のある店に行く。• 単品ではなく、定食のように主食、主菜、
副菜のついているものを選ぶ。• 全部食べるとカロリーオーバーになる
ので、残すか最初から小盛にしてもらう。
生活習慣を変える
• 食習慣を変えるには生活習慣を変えなくてはならない。
• 早寝・早起き、規則正しい生活をする。• 日常生活で身体を動かすようにする。• 食べること以外の楽しみをみつける。
5.効果を確認する
効果確認のために
• 1-2ケ月ごとに、検査(血糖、 HbA1c 、脂質など)および血圧、体重を測定し、結果をシッカリ説明する。
• 合併症のチェック(眼底検査、尿蛋白など)を半年毎くらいに行い、結果をシッカリ説明する。
• 継続することが重要なので、押し付けない程度に食事指導を繰り返す。
それでも不十分なとき
宅配食を利用する
ヘルシーネットワーク 武蔵野フーズ 渡辺商事
食事指導の依頼
• 糖尿病教育入院: 川崎市立井田病院他
• 川崎糖尿病スクエア
2泊3日糖尿病教育入院
金曜日
検査(血液・尿検査、腹部・頚部エコー、 XP 、心電図、 ABI )運動講義・運動実践自己血糖測定の説明これまでの生活の振り返り
土曜日
1日血糖測定運動実践糖尿病教室(糖尿病食事療法・日常生活の注意点)
日曜日
運動実践フットケアゲーム形式食事の実践まとめ
保険が適応されますので、患者負担は2万円~3万円程度です。<ご相談、ご予約は>医事課2泊3日教育入院担当まで電話連絡してください。TEL:044-788-0761 受付時間 8:30~ 17:00