デンソー様事例

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Dell GPU仮想化ソリューションで 解析環境の増強と運用管理負荷を抑制 Dell PowerEdge R720 と「NVIDIA GRID K1 」による GPU 仮想 化で、 CAE による解析環境の増強と運用管理負荷の抑制を実現。Dell PowerEdge ® VRTXも合わせて導入し、 HPCによる大規模計算環境も強化 課題 CAEのさらなる活用を目指す中で、より高 度な解析が行える一方、運用管理負荷も抑 制可能な環境の実現が急務となっていた 計算処理の大規模を見据えた、 HPC環境の 強化が求められていた ソリューション NVIDIA GRID K1 を搭載した Dell PowerEdge R720によるGPU仮想化 NVIDIA GRID K2を搭載したPowerEdge VRTXによるHPC環境の強化 導入効果 GPU仮想化により、 CAEのさらなる活用が 可能な環境を実現するとともに、運用負荷も 大幅に抑制 サ ー バ 、スト レ ー ジ 環 境 を 統 合 し た PowerEdge VRTXによりHPC環境を増 ソリューションエリア GPU仮想化 HPC 統合プラットフォーム カスタマー・プロファイル GPU仮想化により、ユーザが CAEを柔軟に活用でき る環境を実現できました。今後は、このシステムの活 用範囲を広げていくためのさまざまな取り組みを進め ていきたいと考えています」 株式会社デンソー ディーゼル噴射事業部 課長 依田稔之氏 企業名 株式会社デンソー 業 種 自動車部品製造 所在地 愛知県刈谷市 従業員数 連結 139,842名(20143 31日現在) Webサイト www.denso.co.jp

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DellのGPU仮想化ソリューションで解析環境の増強と運用管理負荷を抑制 DellのPowerEdge R720と「NVIDIA GRID K1」によるGPU仮想化で、CAEによる解析環境の増強と運用管理負荷の抑制を実現。Dell PowerEdge® VRTXも合わせて導入し、HPCによる大規模計算環境も強化

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DellのGPU仮想化ソリューションで解析環境の増強と運用管理負荷を抑制DellのPowerEdge R720と「NVIDIA GRID K1」によるGPU仮想化で、CAEによる解析環境の増強と運用管理負荷の抑制を実現。Dell PowerEdge® VRTXも合わせて導入し、HPCによる大規模計算環境も強化

課題• CAEのさらなる活用を目指す中で、より高度な解析が行える一方、運用管理負荷も抑制可能な環境の実現が急務となっていた

• 計算処理の大規模を見据えた、HPC環境の強化が求められていた

ソリューション• NVIDIA GRID K1を搭載したDel l

PowerEdge R720によるGPU仮想化• NVIDIA GRID K2を搭載したPowerEdge

VRTXによるHPC環境の強化

導入効果• GPU仮想化により、CAEのさらなる活用が可能な環境を実現するとともに、運用負荷も大幅に抑制

• サ ーバ、ストレージ環境を統合したPowerEdge VRTXによりHPC環境を増強

ソリューションエリア• GPU仮想化• HPC

• 統合プラットフォーム

カスタマー・プロファイル

「GPU仮想化により、ユーザがCAEを柔軟に活用できる環境を実現できました。今後は、このシステムの活用範囲を広げていくためのさまざまな取り組みを進めていきたいと考えています」株式会社デンソーディーゼル噴射事業部課長依田稔之氏

企業名 株式会社デンソー業 種 自動車部品製造所在地 愛知県刈谷市従業員数 連結 13万9,842名(2014年3

月31日現在)Webサイト www.denso.co.jp

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導入システム

ハードウェア

Dell PowerEdge R720 × 2(NVIDIA GRID K1 ×2)

Dell PowerEdge VRTX × 1

Dell PowerEdge M620 ×4(NVIDIA GRID K2×1)

「近年では製品性能、品質の評価技術として、CAEの重要性がますます高まっており、その環境を強化することで、製品設計に役立てられるよう努めてきました」株式会社デンソーディーゼル噴射事業部ディーゼル技術企画室課長依田稔之氏

先進的な自動車技術、システム、製品を世界の主要な自動車メーカーすべてに提供している、トップレベルの自動車部品サプライヤーである株式会社デンソー(以下、デンソー)。そうした同社の製品設計に必要不可欠となっているのが、「CAE(Computer Aided Engineering)」の活用である。製品性能、品質の評価技術としてCAEの重要性がますます高まるなか、デンソーのディーゼル噴射事業部ではCAEのさらなる活用推進を目指し、GPU仮想化の導入とHPC環境の増強に着手。そのための基盤構築を支援するベンダーとして選択されたのが、兼松エレクトロニクス、NVIDIA、そしてDellによるパートナーシップだった。

設計・生産品質の向上と開発期間短縮の実現に向けCAEの活用を推進 1949年に創立されたデンソーは、「世界と未来をみつめ、新しい価値の創造を通じて、人々の幸福に貢献する」ことを企業理念に掲げ、先進的な自動車技術、システム、製品を世界の主要な自動車製造会社すべてに提供している、トップレベルの自動車部品サプライヤーだ。世界の35以上の国と地域で事業を展開し、およそ14万人の社員が、営業・設計・生産などあらゆる部門で現地のカーメーカーやサプライヤーと一体となり、その地域に適した製品づくりを推進。連結売上高の9.0%という業界トップレベルの研究開発費を投じて、「環境」「安心・安全」の重点分野や、従来から取組んできた「快適・利便」の分野において、時流に先んじた新技術・新製品の研究や開発を行ってきた。 製品ラインナップごとに数多くの事業部門を抱えるデンソーにおいて、電子制御式ディーゼル燃料噴射システムの開発/設計/製造を担っている部門が、「ディーゼル噴射事業部」である。 そのディーゼル技術企画室が製品設計に際して、以前から注力してきたのが、設計した製品のモデルを使って強度や耐熱性などの特性を解析したり、製品の機能や性能を確認するためのシミュレーションを行う「CAE(Computer Aided Engineering)」の活用だ。  ディーゼル技術企画室で課長を務める依田稔之氏は、「近年では製品性能、品質の評価技術としてのCAEの重要性がますます高まっており、その環境を強化、製品設計に役立てることが求められています。そうしたことから当事業部の技術企画部門では、ディーゼル技術関係の3部署に関連したCAE技術の開発や利用環境の構築、そして活用推進に取り組んできました」と説明する。

CAE環境の整備にあたりアプリケーション仮想化を導入 デンソー ディーゼル噴射事業部がCAEの活用推進を目指し5年前に導入したのが、「アプリケーション仮想化」である。犬塚幸夫氏は、「これまでは共用の端末でCAEを利用していましたが、5年前からCAE

専任者には専用のワークステーションを、一方で設計者には自席からリモートでCAEを使えるように、Citrix XenAPPを用いたアプリケーション仮想化を

実施しました」と話す。現在では、構造をはじめ、熱流体、電磁、1Dといったほぼすべてのシミュレーションを仮想環境上で運用しているという。 しかし、そうした運用を続けていくなかで、浮上していたのが運用管理にまつわる負荷の増加だった。 「サーバベースによるアプリケーション仮想化であったため、一人のユーザが何らかの理由でハングアップ、さらにログアウトできなくなった場合にはサーバを再起動しなければなりませんでした。しかし、他のユーザが長時間の計算を行っている時には、その終了を待たなければならなかったのです。また、多くのCAEアプリケーションはワークステーションをベースに開発されており、サーバOSが動作サポートの保証外であったことも、不安要素として挙げられていました」(犬塚氏) 加えて、仮想環境ではGPUが利用できないことから、GPUが必須のCADや一部のCAEアプリケーションが使えず、それらについては物理ワークステーション上で稼働させていたという。犬塚氏は、「物理マシンはアプリケーションのインストールひとつとっても大変で、台数が増えた場合、限られた管理者の人数では対応が困難でした。また、当然、マシンの数が増えればコストも上昇します。先に述べたアプリケーション仮想化における運用管理負荷の軽減と、GPUが活用可能な環境の実現を目指し、ブレード型ワークステーションの導入も検討しましたが、コスト面で見合わず断念しました」と振り返る。 このほかにも、ディーゼル噴射事業部では、増加し続けるCAEの計算量に対応していくため、HPC環境の増強も課題として挙げられていたという。仲井雄大氏は、「導入時に十分な数のサーバやストレージを設置する余裕がなく、HPC環境については全社シ

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「私たちが実際の業務で利用しているCAEアプリケーションを用いて、GPU仮想化の稼働検証を行いました。安定した稼働と十分なパフォーマンスが実証されたほか、問題が発生した場合でも専門スタッフの方々とその場で対処することができ、『これであれば、いけそうだ』と考えました」株式会社デンソーディーゼル噴射事業部ディーゼル技術企画室犬塚幸夫氏

際を体験していただくため、Dellに協力を要請、Dell GPUソリューションラボで実検証を実施することとなったのです」(天池氏) Dell GPUソリューションラボは、GPUソリューションの開発・検証のための施設である。Dell東日本支社内のDell Solution Center内に構築された同ソリューションラボは、GPUを搭載した常設検証機器を設置しており、HPCやグラフィックス仮想化での検証を可能とするほか、検証機器の貸出しにも対応する。 デンソー ディーゼル噴射事業部は、Dell GPUソリューションラボにて2013年12月に検証を実施。検証に立ち会った犬塚氏は、「私たちが実際の業務で利用しているCAEアプリケーションを用いて、GPU仮想化の稼働検証を行いました。安定した稼働と十分なパフォーマンスが実証されたほか、問題が発生した場合でも専門スタッフの方々とその場で対処することができ、『これであれば、いけそうだ』と考えました」と振り返る。

NVIDIA GRID K1/K2と

Dell PowerEdge R720/VRTXで

GPU仮想化を実現 検証結果を経てGPU仮想化の有効性を確認したデンソー ディーゼル噴射事業部は兼松エレクトロニクス、NVIDIA、そしてDellの3社によるGPUソリューションの採用を決定。2014年2月からシステム導入を開始、テスト運用を通じた問題点の解消を経て、8月からの新CAE環境の本番運用に漕ぎ着けることができた。 それでは今回導入したシステムを見ていこう。GPU仮想化による仮想ワークステーション環境を支える主な基盤として採用されたのが、クラウド/仮想環境向けGPUである「NVIDIA GRID K1」と、最新の C P Uを搭載した D e l lの 2 Uラックサーバ「PowerEdge R720」だ。NVIDIA GRID K1は、GPUのハードウェア仮想化を可能にするNVIDIA

KeplerベースのGPUを4基搭載したソリューションだ。1台のGPUを複数のユーザで共有、仮想ワークステーションの性能をさらに高めるとともに、ユーザ

ステムのリソースを借りる形で運用していました。計算量の増加に伴うHPC環境の増強を実施していくにあたり、部門内で大容量データのやり取りが完結するような仕組みも必要と考えていました」と、説明する。

解決策にGPU仮想化を選択

Dell GPUソリューションラボで実検証を実施 CAE利用における運用管理工数の低減と、物理マシンと遜色のないリモート環境の実現を目指すデンソーが着目したのが、「デスクトップ仮想化」、そして「GPU仮想化」である。GPU仮想化とは、従来、仮想デスクトップ化が困難であったグラフィクスワークステーションを仮想化するための技術だ。リソース集約や集中メンテナンスをはじめ、セキュリティの強化、さらにはロケーションフリーといったデスクトップ仮想化によるメリットが享受できることに加え、3D CAD

やCAEプリポスト、CGコンテンツ制作、医療画像等のハイグラフィクスなアプリケーションの利用を可能とする。 犬塚氏は、「とにかく運用管理の負担を減らしたいと考えていました。対して、仮想デスクトップであれば、トラブルが発生しても対象ユーザだけに留まるので、システム全体に影響が生じなくなります。さらにGPU仮想化を採用することで、CAEアプリケーションのスムーズな稼働を可能とする仮想ワークステーション環境を実現できると考えたのです」と話す。 転機が訪れたのは、2013年8月、NVIDIAによる仮想化対応のGPUソリューションのリリースである。犬塚氏は、この情報を入手するや、すぐにデンソーの仮想化環境構築をサポートした兼松エレクトロニクスに相談を持ちかける。案件を担当した兼松エレクトロニクス 名古屋支店 ソリューション営業部第一課の

天池貴洋氏は、次のように説明する。 「GPU仮想化という新しい技術の導入に際して、デンソー様から求められたのが稼働に関する担保でした。そこで、NVIDIAから紹介を受けたのが、Dell

だったのです。DellはGPU仮想化にいち早く取り組んでおり、他社より一歩進んだソリューションを展開していました。そしてデンソー様にGPU仮想化の実

システム構成図

オフィス

NVIDIA GRID K1

NVIDIA GRID K2

VDI VDI VDI VDI

VMware ESXi

VDI File

Solver Solver

プリ/ポスト用グラフィクスVDIPowerEdge R720+GRID K1×2+VMware vDGA※2セット

計算サーバ兼グラフィクスVDIPowerEdge VRTX+GRID K2+VMware vDGA

マシンルーム

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ユーザ導入事例ウェブサイトにて、他にも多くの事例をご覧いただけます。www.dell.co.jp/casestudy

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September 2014. ©Dell inc.●PowerEdge、Dell ロゴは、米国Dell Inc. の商標または登録商標です。●その他の社名及び製品名は各社の商標または登録商標です。●取材 2013年10月 10012983デル株式会社 〒212-8589 川崎市幸区堀川町580番地 ソリッドスクエア東館20FTel. 044-542-4047 www.dell.co.jp

密度を向上する。 なお、今回のワークステーション仮想化にあたり、以前から仮想化基盤として「VMware vSphere」を利用していたことから、「VMware Hor izon

View」が仮想デスクトップ接続/管理システムとして選択された。現在では仮想マシン1台ごとに1物理GPUを占有するパススルー方式が採用されているが、将来的には1つの物理GPUを複数の仮想マシンで共有可能なvGPU方式への移行を検討しているという。 一方、HPC環境を強化するための基盤として採用されたのが、「 P o w e r E d g e V R T X」だ。PowerEdge VRTXは最大4基のブレードサーバ・ノードと十分なストレージ容量、そしてGbEスイッチを1つのシャーシにまとめながら5Uというサイズを実現した、コンパクトなタワー型共有インフラストラクチャプラットフォームである。今回、計算処理の主軸となるブレードサーバ・ノードには、4基の「PowerEdge M620」が採用されたが、そのうち2

基が計算用として使われているほか、GPU仮想化とVDI用にそれぞれ1基ずつ割り当てられており、デスクトップ仮想化/G P U仮想化基盤としてもPowerEdge VRTXは利用されている。なお、PowerEdge VRTXによるGPU仮想化では、NVIDIA KeplerベースのGPUを2基搭載した「NVIDIA GRID K2」が選択されている。 犬塚氏は、「当初は各仮想デスクトップにすべてのアプリケーションを導入、1つのテンプレートからすべての仮想マシンを展開することを検討していました。しかし、実際に導入してみると競合するものもあり、最終的にはアプリケーションごとに仮想デスクトップを作成しています。現在では25余の仮想マシンが稼働していますが、物理ワークステーションと比較して、マシンの調達やアプリケーションのインストールがずっと簡単になっています」と話す。

CAEの利用者も増加運用管理負荷も削減 8月からの本番運用開始後、全設計者がVMware

Horizon Viewを介してアクセス、自席から仮想ワークステーションとしてCAEをフル活用できる環境が実現されており、現時点で、この環境での利用者はディーゼル事業部技術者の3割強に達しているという。仲井氏は、「新環境への移行後、現場のユーザから不満の声は上がっていません。すなわち、これまでの物理マシンと相違なく利用できていることの

表れであり、プラスの評価だと考ています」と話す。 また、運用管理負荷の抑制についても犬塚氏は、「当初の目標数値としては、管理保守工数の50%削減、システム不具合時の30分以内の復旧を掲げましたが、まだ運用開始から1か月程度であるため、具体的な実績が出るのはこれからだと考えています。とはいえ、マシンの異常時への対処、アプリケーションのバージョンアップ、セキュリティパッチの導入など、運用管理は大幅に効率化できていると考えています」と評価する。 一方、PowerEdge VRTXによるHPC環境の増強についても仲井氏は、「PowerEdge VRTXは1

つの筐体にサーバ、ストレージが統合されているので、計算処理にあたって全社サーバに接続してデータのやり取りを行わずに済むようになり、処理の高速化が図れるようになっています」と評価する。 今回のプロジェクトを振り返り、兼松エレクトロニクス、そしてDellに対して仲井氏は、「プロジェクトを進めるに当たって、両者から密な連絡やサポートを受けることができ、担当者として、とてもやりやすかったことを評価しています。導入されたシステムにはユーザも満足していますし、これからも素晴らしい製品の提供や提案をお願いしたいと考えています」と語る。また、今後のシステム拡張計画について犬塚氏は、「予定よりも多くの仮想マシンを作る必要がでてきたため、ストレージが全体的に不足してしまったことから、今後はストレージの増強を計画しています。加えて、技術計算では計算速度が重要な要素となるため、今後のシステム増強では、最高速のCPUを搭載したサーバの導入も検討しています。そうした中でDellには、技術計算用計算システムの選択に際して、どのような仕組みやスペックが最適なのか、どれだけのリソースが必要となるのか、私たちが求めるニーズを把握し、率先して提案してくれることを期待しています」と話す。 最先端の ITによって支えられた先進的な新製品の開発、いち早い市場投入により、世界に活動の場を広げ続けているデンソー。依田氏は今後の展望について、こう強調した。 「今回、ユーザが柔軟にCAEを活用可能な環境を実現することができました。今後は、このシステムの活用範囲を広げていくためのさまざまな取り組みを進めていきたいと考えています。そして、これからも兼松エレクトロニクス、Dellには高性能で高品質な製品の提供、そして優れたソリューションの提案をお願いしたいと考えています」

「PowerEdge VRTXは1つの筐体にサーバ、ストレージが統合されているので、計算処理にあたって全社サーバに接続してデータのやり取りを行わずに済むようになり、処理の高速化が図れるようになっています」株式会社デンソーディーゼル噴射事業部ディーゼル技術企画室仲井雄大氏