プライベートクラウドへの準備はできていますか?[ホワイトペーパー]

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Copyright© 2012 by KVH Co. LTD All Rights Reserved. Not to be copied or reproduced without express permission of KVH Co LTD Page 1 of 12 ホワイトペーパー: KVH クラウドサービス プライベートクラウドへの 準備はできていますか? 自社ビジネスに最適なプライベートクラウドの 評価と主要な考察点 目次 2 はじめに 3 なぜプライベートクラウドか? 4 意思決定までのステップ 7 サービスプロバイダーにどのような要件が必要か? 8 まとめ 10 ケーススタディ:金融業界におけるプライベートクラウド導入例 12 KVH について

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自社ビジネスに最適なプライベートクラウドの評価と主要な考察点

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ホワイトペーパー:KVHクラウドサービス

プライベートクラウドへの

準備はできていますか? 自社ビジネスに最適なプライベートクラウドの 評価と主要な考察点

目次 2 はじめに 3 なぜプライベートクラウドか? 4 意思決定までのステップ 7 サービスプロバイダーにどのような要件が必要か? 8 まとめ 10 ケーススタディ:金融業界におけるプライベートクラウド導入例 12 KVH について

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はじめに

世界中で生成されているデータ量は2年ごとに倍増しており、企業には、データ処理やデータ保護を確実に行うことのできる信頼性の高いシステムを早急に確保することが強く求められています。同時に、各企業のCIOは非常に限られたIT予算でこうした新たな技術ニーズへの対応を迫られ、極めて大きな重圧にさらされています。先ごろ発表されたガートナーの調査報告書「Amplifying the Enterprise: The 2012 CIO Agenda」によれば、2012年の企業のIT予算はわずか0.5%の伸びに留まる見通しで、46%のCIOが、実際のIT支出は間違いなく予算を上回ると考えています。

クラウドコンピューティング1の出現は、企業がこうしたニーズに対応する新たな手段をもたらしました。データをオフサイトのマシンに保管して、インターネットやプライベート接続でアクセスできるようになることで、インフラや維持管理コストを大幅に削減することができます。クラウドコンピューティングの出現により、企業のIT環境管理のコスト効率は、大幅に向上しました。そのため、各社のCIOが2012年の優先技術課題のトップ3の1つに「クラウドコンピューティング(SaaS, IaaS, PaaS等)」を挙げていることは当然とも言えます。

ITのコンシューマ化に伴って、ビジネスの生産性を高めるために、ユーザーはクラウドサービスを利用していつでもどこでもデータにアクセスできるようになりました。また、ITやビジネスニーズが常に変化する中、クラウドサービスは、ビジネスの成長や製品ニーズの変動に対応できる柔軟性や拡張性を提供します。

1 クラウドコンピューティングとは、コンピューティングリソース

(ネットワーク、サーバー、ストレージなど)に、いつでもどこでも、

便利にオンデマンドでアクセスできる利用形態で、迅速な設定、構築

および管理負荷の軽減を実現します。

一方、インターネットの隆盛にこのようなITのコンシューマ化が加わることによって、企業は数多くのセキュリティの脅威に直面することにもなりました。さらに、ソーシャルメディアの台頭が、こうした脅威に一層多くの流通経路を与え、社員のネットワークを通じて脅威が拡散し拡大していく可能性が高まりました。その結果、金融サービス業界など、ミッションクリティカルなデータを保有する業種を中心に、多くの企業でデータの安全性やプライバシーの問題が最優先課題となり、最大の関心事となっています。こうした背景が、自社インフラを独立したクラウド環境で利用でき、サービスプロバイダーによって提供される高性能なホスティングやセキュリティ、ネットワーク、マネージドサービスを活用できるプライベートクラウドの発達をもたらしました。残念なことに、プライベートクラウドスペースに多数の企業が参入し、テクノロジーの進化や高度化が進むに従って、クラウドコンピューティングにまつわるさまざまな用語が混乱をきたし、具体的にクラウドに何が実現できるのか、新しいこの技術を自社に導入すべきか否かについて、多くの企業では未だに明確に把握できていないのが実情です。

一方、データやテクノロジーに関する市場動向では、最終的にほぼすべての企業が、何らかの形でクラウドコンピューティングを導入する必要があることを示していることも事実です。

このホワイトペーパーは、プライベートクラウドの導入を検討する企業に対して、クラウドコンピューティングの潜在的なメリット、クラウドへの移行やサービスプロバイダーの選定に際しての、適切な意思決定方法を説明することを目的としています。

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なぜプライベートクラウドか?

このセクションでは、現在、企業が直面している重要なIT 課題とそうした課題にプライベートクラウドがどのように対応できるのか。さらに、導入後にプライベートクラウドの利点を十分活用するために、企業はどのような体制を整え計画を立てるべきか、について取り上げます。プライベートクラウドの利点をどこまで実感できるかは、それぞれの企業がすでに保有している IT システムや社内人材リソース、スタッフのスキルセット、データサービスの必要性の度合いによって変わります。このため、その成否は、企業がスムーズにプライベートクラウドに移行できるかどうかということと、これをサポートするサービスプロバイダーがその企業特有の課題やニーズを把握し、これに対処する能力を備えているかどうかに大きく依存します。

セキュリティとプライバシー

世界の IP トラフィックは年々爆発的に増加し、2013年には現在の 5倍の量になると予測されています。こうしたトラフィックの増加に加え、ソーシャルメディアやデスクトップ仮想化、IT のコンシューマ化などによって、社員のネットワークを通じて悪質なソフトウェア(マルウェア)が拡散する新たな経路が大量に発生しています。

新たに確認されたマルウェアの 85%が、インターネットを主要な攻撃対象としており、企業や組織からは信頼性が高く、企業活動の全てをカバーできる完全なセキュリティ・ソリューションが切実に求められています。特に、金融サービスなど機密性の非常に高いデータを扱う企業にとっては、データ漏えいやセキュリティ侵害の問題は、会社の評判を傷つけ、企業活動の将来に大きな損害を与えることにもなりかねません。

インターネットベースでパブリッククラウド環境にアクセスすることは、未知の外部ソースによるデータ感染リスクを上昇させます。一方、プライベートクラウド環境は、安全な環境で、企業のインフラを他社のネットワークやサーバーと確実に分離して稼働させます。このように、プライベートクラウド環境によって、社外ユーザーによるデータの汚染や感染リスクを最小限に抑えることができ、インフラは保証されたパフォーマンスを確実に実現できます。

コスト効率の最大化

IT 予算は一層削減傾向にあり、企業は「more with less(少ない資源でより多くを実現)」を実践して、コスト効率の高い方法で IT ニーズに対処する方法を、懸命に模索しています。つまり大半の企業が、ビジネス生産性の向上をめざす一方で、ハードウェア、ソフトウェア、

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情報セキュリティサービスへの支出を削減する方策を求めています。

ほとんどのクラウドコンピューティング環境はサーバー・オーケストレーション機能を持ち、消費に対する課金、計量、チャージバックなどサーバーを一元管理するリソースプールを提供しています。サーバー・オーケストレーションは、自動化されたワークフローやプロビジョニング、変更管理などを通じてポリシーやサービスレベルの定義付けも行い、アプリケーションに合わせたインフラを生成して、アプリケーションのニーズに基づいて規模の拡大・縮小を行うことができます。従来環境ではサーバーの利用率が極めて低く、稼働率が 15~20%程度に留まるのに対し、サーバー・オーケストレーションを行うことによって遊休サーバー数を削減し、サーバー全体の稼働率を 80%以上に押し上げることができます。例えば、夜間に、ある組み合わせのアプリケーションを稼働させるようにサーバーを設定し、朝には全く別のアプリケーションを稼働するように再設定することも可能です。このように、利用率の低いリソースを再利用することによって設備投資を削減できるだけでなく、電力消費量も 70~80%低減し、電力料金やサーバーメンテナンス費用を削減できます。

社内にプライベートクラウドを導入する場合、コスト削減が可能な分野を特定できる経験や専門知識が社内に十分に無いと、自社ビジネス特有の要件を満たすソリューションを開発することで、総所有コスト(TCO)が極めて高くなってしまう恐れがあります。プライベートクラウドを専門とするシステムインテグレーター(SIer)は、適切なスキルセットを持った専門家、最もコスト効率の良い機器を提供するビジネスパートナー、プライベートクラウド環境を効率化できる高性能で高度なセキュリティを有しています。また、同時に、導入企業の CAPEX を OPEX に移行させて、長期的なコスト効率を最大化させるインフラも有しています。

管理性の向上

プライベートクラウドは、高い水準で IT 環境をコントロールすることを求める企業にとって、理想的な環境を提供します。セキュリティに対して強い関心を持つ企業や、機密性の高い情報やミッションクリティカルなデータを扱う企業が、これに当たります。プライベートクラウドは高度にカスタマイズが可能なため、企業は自社に最適な仕様に基づいて、サーバーやネットワーク機器を配置して、独自の要件を満たすことができます。特定の規定に基づく要件、コンプライアンス要件、海外本社に指定された要件など、プライベートクラウド環境は、さまざまなニーズに合わせてカスタマイズが可能です。また、レポーティング、モニタリング、対応サーバーイメージなど、サーバー自体の機能以外でも多くの場合カスタマイズできます。

さらに、他の企業と環境を共有することがないため、プライベートクラウドの導入企業は、稼働させたままクラウド環境にアクセスおよび変更ができ、設定を希望通りに調整することができます。また、24 時間 365 日体制で、モニタリングやテクニカルサポートの恩恵が受けられ、データセンターサービスのプロバイダーからオンデマンドで専門的なコンサルティングを受けることもできます。

拡張性と柔軟性

プライベートクラウドサービスを活用することによって、企業はビジネスニーズに合わせて自社の IT インフラを拡張できます。たとえば市場の需要予測が極めて困難な新製品を立ち上げる際、発売後の実際の需要動向に応じて、使用する IT リソースを拡大縮小できます。需要の拡大が見られない場合には、大幅にコストを節約できる一方、高い需要が見られる場合には、事業の拡大に合わせて効率的に業務をサポートすることができます。さらに、顧客の要求や市場トレンドの進化に伴い急激に

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変化するビジネスニーズに対して、柔軟なプロビジョニングサービスの活用により、ワークフローに支障をきたすことなく、企業の IT 環境をシームレスに変更できます。

意思決定までのステップ

プライベートクラウドのあらゆる能力について知り、サービスプロバイダーにこれまで述べてきたようなメリットを約束されると、すぐに契約の段階に到達してしまうケースがあります。しかし、業種や業界ごとに、より適したサービスプロバイダーがあり、プライベートクラウドの利点をどれだけ実現できるかは、サービスプロバイダーのビジネスニーズへの対応能力に掛かっていることを、認識しておくべきです。プライベートクラウドに移行すべきかどうかの判断や、移行すべき時期に自社に最適なサービスプロバイダーを選定するために、考慮するべきいくつかの基本的な検討項目を以下に挙げます。

組織として、変化に対応できる態勢になっているか?

クラウドへの移行の過程で、社内の IT システムやネットワークアーキテクチャを大幅に変更することが考えられます。InformationWeek 誌の「2012 State of Cloud Computing Survey(クラウドコンピューティング動向調査)」によれば、調査対象の組織の 71%で社内ネットワークの再構築にかかわる何らかのプロジェクトが進行中である。あるいは、今後 2年間のうちに計画しているにもかかわらず、クラウドサービスの導入が自社アーキテクチャに与える影響について、IT 部門による評価が行われた企業は、全体のわずか 28%に過ぎないという結果が示されています。このような重要なアセスメントなしでは、クラウドサービス導入後のモニタリングや効果測定が困難なことは言うまでもなく、プライ

ベートクラウドの構築からカスタマイズ、導入を進める中で、ほぼ間違いなく予期せぬ問題に直面することになります。

さらにクラウドへの移行にあたっては、社内の役割や基本的社内手続きの大幅な変更が必要になります。こうした変化に対して各部門・部署が適切に対応できる体制を整えていなければ、プロジェクトが失敗に終わるだけでなく、チーム間でさまざまなしこりや問題を引き起こす可能性があり、クラウドコンピューティングによるコストや効率のメリットの実現はさらに遅れることになります。特に、社内に他部門や他のチームに対して非協力的で、効果的な連携が図れないサイロ化した部署やチームが存在する場合は、プライベートクラウドへの移行プロセスにおいて大きな障害となりかねません。社内の組織構造や既存の社内プロセスの評価を行い、全社的にプライベートクラウドの導入を受け入れられる態勢になっているかどうかを見極めることが非常に重要です。

社内に対応できるスタッフはいるか?

社内で誰がプライベートクラウドを稼働させるのでしょうか?このプロジェクトを常に効率的に管理することのできる十分なスキルと専門知識を持った人材が社内にいるでしょうか?技術的なバックグラウンドだけでなく、ビジネスを十分に理解し、サービスプロバイダーと効果的に連携を図って、導入にあたり、発生するあらゆる問題に対応できることが重要です。このように、ビジネスの変化に伴って、クラウド環境にどのような変更を行わなければならないかを把握できる専門の担当者、あるいは会社の規模によっては担当チームが社内にいることは、非常に大きな利点になります。さらに、サービスプロバイダーは、顧客企業の中核ビジネスや直面する課題に対する知識を持っているだけでなく、プライベートクラウド環境を稼働させる上での専門知識を実際に示すことができなければなりません。そうした際に、

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社内担当者が十分な訓練を積んでおらず、また社内スタッフに不足しているスキルをサービスプロバイダーが補うこともできなければ、必要以上に長い時間とコストをプライベートクラウドへの移行に費やすことになります。

パブリッククラウドやハイブリッドクラウドの方がビジネスモデルに適しているのではないか?

多数のサーバーを活用したり、ホスティングソリューションを利用したりしている企業にとっては、大量のデータを処理できる低コストのサービスを利用できるパブリッククラウドの方が適している場合があります。一方、これまで述べてきたように、セキュリティに強い懸念を持つ企業や、厳密なコンプライアンスや各種の規制要素への対応を考慮しなければならない企業には、プライベートクラウドの方が適していると言えます。

しかし、今後のデータ量の増加やインターネットトラフィックの拡大については、予測がつかない要素が多く、必然的に企業の多くがパブリックとプライベートの両方を取り入れた「ハイブリッドクラウド」ソリューションを導入せざるを得なくなることが、次第に明らかになってきました。例えば、あるアプリケーションについてはプライベートクラウドを使用しておき、需要が急激に高まった際にはパブリッククラウドに依存して超過分のデータフローを処理することもできます。プライベートクラウドを導入する前に、まず自社のニーズに対してパブリックやハイブリッドのソリューションの方が適している可能性について検討することが重要です。

どこにホスティングするのか?

プライベートクラウドを自社で運用管理し維持すれば、クラウド環境全体を自社で確実にコントロールできます。他のクラウド環境やネットワークから分離されているので、理論的にはセキュリティのリスクを最小限に抑

えることができます。一部の企業にとって、これはプライベートクラウドを独自にホスティングする強力な理由になるかもしれません。しかし、このことが社内の別の分野に影響を与えることも、念頭に置いておかなければなりません。

例えば、プライベートクラウドを自社の施設内でホスティングする場合、社内に十分なスキルセットを持ち、システムの停止やハードウェア交換の必要性に備えて、1年を通じて 24 時間対応でクラウド環境に対応できる人材がいるでしょうか?セキュリティの観点から、プライベートクラウドの選択を検討している企業は、最高水準のセキュリティサービスや、必要に応じて素早く効率的な行動を取ることのできる専門の担当者とともに、自社インフラを常に監視しておく必要があります。さらに、自社施設や社内担当者には、停電の発生に備えて必要な無停電電源システム(UPSあるいは自社発電装置など)のサポートや管理を行う能力が求められ、建物全体での電力テストを行う必要もあります。

また、インフラ管理を中核事業とする企業でない限り、プライベートクラウド環境を構築し維持するために時間やコスト、リソースを費やすことは無益な努力となる可能性があります。セキュリティやプライバシーの点でメリットを得ても、ビジネスの生産性やコスト効率の面で相殺されてしまうことにもなりかねません。

プライベートクラウドを専門とするサービスプロバイダーは、顧客のセキュリティやデータボリューム、予算要件に合わせてカスタマイズされた低コストのソリューションを提供できるだけでなく、プロフェッショナルサービスやコンサルティングサービスを通じてあらゆる能力を効果的に活用し、可能な限りシームレスにプロジェクトを実行させることができます。企業はアウトソーシングによって時間と費用を節約し、社内リソースを中核ビジネスのコンピテンシー強化に集中させることができます。

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コンプライアンスの問題は?

自社でプライベートクラウド環境を構築し管理しようとする企業にとって、コンプライアンス遵守を徹底させることは、非常に困難な問題となります。このような場合、特に金融業界の企業では、サービスプロバイダーの評価を行う際に、TIPA や ISO 認証を取得しているかどうかだけでなく、 ITIL2のコンピテンシーを持っているかどうかにも着目する必要があります。組織全体で ITILのトレーニングや手順を実施しているプロバイダーであれば、ITIL に沿って、より効果的にサポート手順を統合することができます。ITIL のコンピテンシーの有無は、TIPA アセスメントによって測ることができます。セキュリティのコンプライアンスニーズに対しては、プロバイダーのインフラが国内外のセキュリティ標準を満たしているかどうかを ISO 認証の有無で判断します。

サービスプロバイダーにどのような要件が必要か?

サービスプロバイダーを選定する前に、どのような課題を克服したいと考えているのか、プライベートクラウドを採用することによって、どのようなゴールに到達することを期待しているのかを、明確にした企画書がなければなりません。これが、自社のビジネスに最適なサービスを選択し、自社のニーズにはどのタイプのサービスプロバイダーが最も適しているのかを、判断する際に役立ちます。

2 ITIL(Information Technology Infrastructure Library)は、世界各国のさまざまな官民組織から集められた ITサービス管理・運用規則に関するベストプラクティスをまとめたもので、 包括的な資格体系や認定教育組織、導入やアセスメントツールなどによってサポートされて

います。詳細については、ITIL のホームページhttp://www.itil-officialsite.com/ をご参照ください。

まず、プロセスニーズや応答時間を含め、パフォーマンス目標を確認します。これは、地理的近接性やクラウド環境の内外でのネットワークのパフォーマンスニーズに関わります。また、CPU やディスク、ストレージデバイスなどのコンピューティングリソースも、この目標によって変わってきます。

2 番目に、自社が必要とするソリューションが SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)型なのか、PaaS 型(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)型なのか、IaaS(インフラストラクチャ・アズ・ア・サービス)型なのかを検証します。ほとんどのプロバイダーは、これらのうちのいずれかの分野に特化しているか、一定の範囲でいくつかを組み合わせてソリューションを提供しており、必要とする分野で最適なサービスを提供することのできるプロバイダーを選択する必要があります。ソリューションのタイプによって、社内向けやエンドカスタマー向けの ITサポート要員の役割は、違ってきます。

3 番目に、SLA(サービスレベルアグリーメント)を必要とするかどうか、必要だとすればどのクラウドプロバイダーがそれを保証してくれるかを、検討しなければなりません。SLA によって、クラウドプロバイダーに対する要件や、ソリューションに必要なアーキテクチャが決定します。社内スタッフあるいはクラウドプロバイダーのプロフェッショナルサービスは、クラウドプロバイダーから利用可能なビルディングブロックに基づいて、システムアーキテクチャを設計する能力がなければなりません。

ネットワークの所有だけでなく管理もできるクラウドプロバイダーか?

プライベートクラウドのハードウェアやインフラのコストには、ネットワークやスイッチ、電源、サーバーなどが含まれています。これらの製品を開発しているプロバイダーは、クラウドサービスを提供すると同時に、そ

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の中にあらゆる自社製品を含めて販売しようとするかもしれません。これは、プロバイダーにとっては大きなメリットになる一方、顧客側からすれば、コスト削減やサービス品質の面で制約が加えられることがよくあります。同様に、プロバイダーの中には、特定の製品を専門に扱い、その製品を大幅に割安な価格で提供できるプロバイダーもありますが、顧客のプライベートクラウドに別の要素が必要な場合は、それを提供できる別のベンダーを探さなければならなくなります。

これに対してシステムインテグレーション能力を持つサービスプロバイダーの場合、高性能でベストインクラスのさまざまなベンダーのデバイスを組み合わせることができ、エンドツーエンドのコストを抑えながらサービス品質を大幅に高めることができます。さらに、高いレベルで洗練されたネットワークを持ち、クラウドソリューションとそれ以外のネットワークソリューションとを統合して、環境全体を通じての包括的な SLA を提供することのできるプロバイダーが、最も良いプロバイダーと言えます。こうしたプロバイダーであれば、より優れた形でレガシーシステムとの統合を行い、問題が発生した場合に、複数のベンダー管理のために社内で必要になる関係性やサポートプロセスあるいはスキルをなるべくシンプルにして、「絞めるべきノドは 1つ(責任の所在を一元化すること)」の状態を作り上げることができます。

サービスプロバイダーはニーズを十分理解しているか?

企業によって、生み出され、処理されるデータの種類や量は、金融、メディア、通信キャリア、製造業など業界ごとに異なり、会社の規模や所在地、成長パターンあるいは取扱製品によっても変わってきます。このため、サービスプロバイダーが、データの管理、保存、処理、保護などを行う場合、企業の種類や業界ごとに、その分

野での能力や経験を実証できなければなりません。サービスプロバイダーは、業界や中核事業分野における十分な知識を持ち、データに関連して企業が直面している課題を理解するとともに、提供するサービスの契約内容や契約条件は、顧客との共通理解に基づいた技術用語で交わされなければなりません。

また、海外に複数のオペレーション拠点を持つ企業に対して、サービスプロバイダーは複数言語でのサービスが提供できなければなりません。プロバイダーと顧客企業とのコミュニケーションを効率的に行うだけでなく、何らかの危機が発生した場合に、サービスの中断時間を最小限に留め、コンフィギュレーションの変更が必要になった場合にも、適切なタイミングでこれを実行できる必要があります。

どのような付加価値が得られるか?

プライベートクラウドのサービスプロバイダーは、いずれも業界最高のサービスをうたっていますが、各社の違いを決定づけるカギは基本的なサービス以外にどのような付加価値を提供できるか、という点にあります。

複数言語によるサポートや、ベストインクラスのインフラ、定評ある専門家によるコンサルティング、数ある認証の中でも特に ITIL を確実に実施できることなどの他に、どのような価値を提供してくれるのでしょうか?ネットワークやセキュリティ、マネージドサービス、プロキシミティサービス、バックアップ能力についてはどうでしょうか?サービスプロバイダーの選定にあたっては、プライベートクラウド環境のサポート方法だけでなく、それ以外の IT ニーズに対応する能力を、検証することも必要です。

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まとめ

世界のデータ量が 2年ごとに倍増している状況にあって、企業の CIO は非常に限られた予算で新たな技術ニーズに対応するという極めて大きな重圧にさらされています。ほとんどの企業にとって、クラウドコンピューティング環境導入が、主要課題になり始めています。クラウドコンピューティング環境への移行は、従来の IT消費モデルから離れて、サービスとしての IT 提供モデルに移行することを意味しています。柔軟性や導入スピード、設備投資や運用コストの削減など、クラウドコンピューティングの利点はすでに実証されていると同時に、クラウドはパブリック型、プライベート型、ハイブリッド型などさまざまな導入形態を選択できます。企業は、セキュリティやコンプライアンスのポリシー、希望するカスタマイズのレベル、社内のスキルレベル、環境を管理し、ホスティングするためのインフラなど、それぞれの状況に応じて適切な形態のクラウドを選択することになります。

プライベートクラウドは、自社の IT 環境を高いレベルでコントロールすることを望む企業にとって、理想的な形態です。高度なセキュリティを必要とする企業や、機密性の高いデータやミッションクリティカルなデータを扱う企業には、最適と言えます。プライベートクラウドは、高度なカスタマイズが可能で、企業は自社が希望する仕様に基づいてサーバーやネットワーク機器を配置し、独自の要件を満たすことができます。プライベートクラウド環境は、さまざまなニーズに合わせてカスタマイズができる上、ほとんどの場合、サーバーのスペック以外にも、レポーティングやモニタリング、対応サーバーイメージやアプリケーションなど、特別な機能追加ができます。

外部の IT サービスプロバイダーを選定する際には、さ

まざまな要素を考慮しなければなりません。どのレベルの SLA が必要なのか、クラウドサービス・プロバイダーがネットワーク管理も行い、ワンストップソリューションを提供できるのか?サービスプロバイダーに十分な業界知識があり、導入に際して考慮すべき業界特有のコンプライアンスを理解しているか?プロジェクトをスムーズに実行できる能力があるのか?顧客があらゆる恩恵を受けられる最適な体制を整えるために、どのようなプロフェッショナルサービスを提供できるのか?

ほとんどの企業にとって、プライベートクラウド環境への移行は、IT マイグレーションの規模の大小を問わず、決して簡単なことではありません。適切なインフラや技術的な専門知識、サービスポートフォリオを持った適切なサービスプロバイダーを選定することで、技術的な課題やリソースの問題を克服し、それぞれの企業特有のニーズに最も適したソリューションを、導入することができます。

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ケーススタディ- - 金融業界におけるプライベートクラウド導入例

金融サービス業界における課題

金融サービス企業は、厳密な業界基準(銀行業界におけるBasel III など)を満たしながら、高度な信頼性を維持したシステムにより、取引市場データの取得や高頻度取引を実現するため、最低遅延レベルの処理速度を達成しなければなりません。さらには、機密情報やミッションクリティカルなデータの効果的な保護が重要となります。このような環境下、企業が直面する重要な課題としては、会社全体のセキュリティニーズに対応すると同時に、今後発生が見込まれる新たな脅威に対応できるセキュリティを、最新レベルに維持することが挙げられます。また、IT 予算を低減しながら堅牢なインフラを管理すること、IT システムの維持に時間やリソースを掛けずに、本来のビジネスに集中できる施策の検討などが挙げられます。

金融サービスのグローバル優良企業の 1社は、これまでこうした課題を抱えながら、社内に十分なリソースやスキルセットを持った人材がいないため、IT システム効率化の選択肢として、プライベートクラウドへの移行が非常に困難でした。クラウドへ移行した場合、セキュアでプライベートなクラウド環境で、数千種にも及ぶアプリケーションを何百台ものサーバーでホスティングしなければなりません。また、次々に提供されるトレーディングソリューションのさまざまな要求に応えると同時に、信頼性の高いデータ・バックアップや大幅なコスト削減も必要でした。これらのニーズを満たすために、専門的なコンサルティングや高性能インフラ、ネットワークを提供できるプライベートクラウド・サービスプロバイダーを活用することを決めました。

ソリューション - プライベートクラウド

この企業は、専用WANでアプリケーションサーバーとデータセンターを接続する、セキュアな「プライベート IaaS(インフラストラクチャ・アズ・ア・サービス)」を採用するとともに、IaaS 環境を効率的に管理でき、リモートアクセスが可能な「コントロールセンター」を、導入しました。また、サービスプロバイダーのプロフェッショナルサービスやプロジェクトマネジメントサービス、プライベートクラウド向けコンサルティングを活用して、自社のプライベートクラウド環境のパフォーマンス分析を行いました。さらに、アプリケーション・グリッドのサーバーファームをアウトソーシングする場合の社内ビジネスケースの作成のために、プロバイダーによって徹底的な要件分析が行われました。

このサービスプロバイダーは、データセンターサービス向けの ISMS-ISO 27001 認証を取得しており、SAS70 および FISC コンプライアンス、データセンター環境のケージ設備、データセンター拠点直通のセキュアな専用WAN回線、デューデリジェンス監査、プロバイダーが顧客企業のオペレーション専用に社内で開発したコントロールセンター・ソフトウェアなどを、この企業向けに提供し、最高レベルのセキュリティを確立しました。

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導入のメリット - コントロールとコスト効率を最大化

ソリューションの導入によって、この金融サービス企業は、TCOを大幅に削減しました。また、拡張性の向上、支払いや配信に関して柔軟な選択が可能なインフラの構築や広範なセキュリティニーズを満たすことができました。さらに、コントロールセンターや最新のウェブ技術を使ったサーバー管理ソフトウェアサービスを通じて、自社のプライベートクラウド環境の高レベルでのコントロールを実現しました。コントロールセンターによって、サーバーのステータスをパーソナライズして表示させることができ、サーバーの電源管理やマシンのプロビジョニングを行い、サーバーの更新情報をプロバイダーの他の顧客企業と共有することもできます。

さらに、災害復旧(DR)対策や、社員に一層の選択肢を提供できるバックオフィス DaaS(デスクトップ・アズ・ア・サービス)ソリューションの導入やグローバルな低遅延ネットワークを利用したモニタリングや分析により、取引市場データの入力状況を最適化することができました。ソリューション全体を通じ、当初のニーズが満たされただけでなく、金融サービスという本業分野を強化するための高い付加価値を得ることができました。これにより、時間やコスト、リソースを節減しながら IT システムの管理やメンテナンス方法を改善することができ、本業の収益を拡大させるための業務分野に、人的リソースを集中できるようになりました。

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KVHについて

KVH は、日本にフォーカスした通信/IT サービスプロバイダーとして、1999 年に米国フィデリティ・グループにより東京を本社に設立されました。企業の重要な情報を、保存から、処理、保護、配信まで、エンドツーエンドでサポートする情報デリバリー・プラットフォーム戦略に基づき、クラウドサービス、マネージドサービス、データセンターサービス、プロフェッショナルサービス、データ通信、インターネット接続、音声通信などの包括的な通信/IT マネジメント・ソリューションを提供しています。現在日本における最高水準の低遅延ネットワークは、450社以上の金融サービス分野の顧客に利用され、高頻度取引に特化した超低遅延ネットワーク接続、プロキシミティ・ホスティング・ソリューション分野では市場をリードしています。KVHの超低遅延ネットワークは、東京、大阪、シカゴ、オーロラ、ニューヨーク、シンガポール、香港、ソウル、上海、シドニーなど、アジア、北米の主要な金融都市を接続しています。詳しくは KVHのウェブサイト http://www.kvh.co.jp をご覧ください。