オープンインターネット命令に係る控訴審判決の影響

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オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ An Analysis of a Judicial Judgment on the Open Internet Order オオオオ オオオオオ () [email protected]

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An Analysis of a Judicial Judgment on the Open Internet Order FCCのオープンインターネット命令をめぐる2014年1月の控訴審判決について分析してみました。

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オープンインターネット命令に係る控訴審判決の影響An Analysis of a Judicial Judgment on the Open Internet Order

実積寿也(九州大学)[email protected]

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オープンインターネット=中立的なネットワーク• ”Net neutrality (also network neutrality or Internet neutrality)

is the principle that Internet service providers and governments should treat all data on the Internet equally, not discriminating or charging differentially by user, content, site, platform, application, type of attached equipment, and modes of communication.”   (Wikipedia)

• 言い出したのは、コロンビア大学の Tim Wu 教授

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昔の名前は End-To-End Principle

Lawrence LessigDirector of the Edmond J. Safra Center for Ethics at Harvard UniversityProfessor of Law at Harvard Law School.

Jerome H. SaltzerMIT

David P. ReedMIT

David D. ClarkMIT

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インターネット政策声明( Internet Policy Statement )2005 年 8 月、「ブロードバンド普及を促進し,公共インターネットの開放性と相互接続性を維持・促進するため」の次に掲げる 4 原則 を採択

1. 消費者は自らが選択する合法的コンテンツにアクセスする権利を有する.

2. 消費者は法の執行の要請に服しつつ,自らが選択するアプリケーションやサービスを利用する権利を有する.

3. 消費者はネットワークに損傷を与えないのであれば,自らが選択する合法的端末装置を接続する権利を有する.

4. 消費者はネットワーク事業者,アプリケーションサービス事象者,コンテンツ事業者の間の競争を享受する権利を有する.

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プロバイダの反応

Nov. 6, 2005, BusinessWeek

Q: How concerned are you about Internet upstarts like Google, MSN, Vonage, and others?

A: How do you think they're going to get to customers? Through a broadband pipe. Cable companies have them. We have them. Now what they would like to do is use my pipes free, but I ain't going to let them do that because we have spent this capital and we have to have a return on it. So there's going to have to be some mechanism for these people who use these pipes to pay for the portion they're using. Why should they be allowed to use my pipes?

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Comcast 事件

http://www.nbcnews.com/id/21376597/#.UupRsPl_t8E

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FCC 命令( 2008 年 8 月 1 日)2008 年末までに現行の差別的ネットワーク管理をとりやめて「プロトコル差別を行わないネットワーク管理( protocol-agnostic network management )」を採用すること,さらに 30 日以内に以下の 3 項目を達成することを命じた .

1. 現行のネットワーク管理方法を FCC に開示すること

2. 新管理方法に移行するプロセスを示した遵守計画を提出すること

3. 新たなネットワーク管理方法を顧客と FCC に開示すること

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Comcast 社の対応• Comcast 社は,この命令に服し, 2008 年 9 月 19 日,要求資料を

FCC 提出• 同資料の中で表明された新たなネットワーク管理方法は, P2P を利用した通信

トラフィックを選択して通信阻害を行っていたこれまでのプロトコル選択的な管理手法とは異なり,データ通信を大量に利用している利用者の通信トラフィックを混雑が生じている時間帯のみ非優先取扱いの処理を行うことで,混雑回避を目指すというもの• これにより, P2P の差別的取扱いに関する Comcast 事件は一応の終結

• 一方で,インターネット政策声明自体には法的強制力がないことを指摘し, 2008 年 9 月 4 日,本命令の効力についてコロンビア特別区巡回控訴裁判所に提訴

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連邦ワシントン巡回区控訴裁判所• 合衆国連邦巡回区控訴裁判所( CAFC )は、アメリカ

合衆国における控訴裁判所のひとつで、アメリカ合衆国全域における特許や関税などの特定分野の事件を管轄する裁判所。

• 1982 年 10 月 1 日に設立され、ワシントン D.C. に本部を置く。合衆国を 12 の巡回区(第1 巡回区~第11巡回区及びD.C. 巡回区)に分けて管轄する他の控訴裁判所とは異なり、 CAFC の管轄は、地理的範囲ではなく、事件の種類によって定められている。すなわち、CAFC は、アメリカ合衆国全域における特許権侵害および特許の有効性に関する控訴事件を扱う。また、特許以外にも、関税などの分野の控訴事件も管轄する。ただし、知的財産権のうちでも、商標や著作権はCAFC の管轄ではないことに留意する必要がある。

Wikipedia より引用

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Comcast 判決( 2010 年 4 月 6 日)• FCC は先のインターネット政策声明お

よび通信法の諸条文を根拠として、通信法第 4条 i 項の付随的管轄権の行使として当該命令の有効性を主張したが、裁判所は、付随的管轄権を発動できるための法的権限を FCC に与えた具体的条項が十分に論証されていないことを理由に、 2010 年 4 月 6 日、命令の有効性を否定。

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敗訴直後の FCC の対応• 2010 年 5 月 6 日,ブロードバンドサービスを FCC の規制権限がよ

り明確な「電気通信サービス」(通信法第Ⅱ編)に再分類し,規制の運用においてはその大部分の適用を差し控えるという「第三の道」構想を新たに提案。

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FCC 内の意見対立

Carrier-likeregulationRegulation-

lite

Possible breakthrough, maybe?

3rd

T-1 T-2

Mignon Clyburn

Robert M. McDowell

Michael J. Copps

Meredith Attwell Baker

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Open Internet Order (2010/12/21)

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オープンネットワーク命令( 2010 年 12 月 21日)

固定ブロードバンド接続サービスfixed broadband Internet

access service

移動ブロードバンド接続サービスmobile broadband Internet

access service

サービスの定義

主に固定位置に存在する利用者に対して移動しない機器を用いたサービス提供.固定無線ブロードバンドや固定衛星ブロードバンドサービスを含む.

主としてモバイル機器を用いたサービス提供.スマートフォンを用いたサービスを含む.

透明性の確保Transparency

サービス提供事業者は,消費者が十分な情報の下でサービスの選択ができ,さらに端末事業者がインターネット機器を開発・販売・保守できるよう,ネットワーク管理方法や実効品質,取引条件に係る情報を開示しなくてはならない.

利用拒否の禁止Anti blocking

サービス提供事業者は,合理的ネットワーク管理の名の下に,適法なコンテンツ,アプリケーション,サービスの利用,あるいはネットワークに障害を及ぼさない端末の接続を拒否してはならない.

サービス提供事業者は,合理的ネットワーク管理の名の下に,適法なウェヴサイトへのアクセスを拒否してはならない.また,同様に,自身の音声・ビデオサービスと競合するアプリケーションの利用を拒否してはならない.

不当な差別の禁止Anti

discrimination

サービス提供事業者は,適法なネットワークトラフィックの伝送について不当な差別を行ってはならない.合理的ネットワークの管理は不当な差別には該当しない.

  規定なし.(ただし,このことが一般的なオープンインターネット原則に反して行為を認容するものではないことは別途明記.)

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根拠は 1996 年電気通信法 706条• 706条• FCC は、全ての米国人に対して高度電気通信の機能( advanced

telecommunications capability )を合理的かつタイムリーに提供する責務を持つ。

• “Triple cushion shot”

• The Internet’s openness is critical to these outcomes, because it enables a virtuous circle of innovation in which new uses of the network—including new content, applications, services, and devices—lead to increased end-user demand for broadband, which drives network improvements, which in turn lead to further innovative network uses.

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今回の訴え• Verizon と MetroPCS は規則が公になるや否や,その有効性を否認

する訴えをコロンビア特別区巡回控訴裁判所に提起• 2011 年 1 月 20 日に提起された最初の訴えに関しては,新規則が官報に掲載

される前であったために却下.その後,同年 9 月 23 日の官報掲載を待ち,再度訴えが提起• MetroPCSからの同種の訴えも提起された結果,併合審理の決定がなされた.

• Verizon は,プロバイダによるネットワーク管理は合衆国憲法修正第1条に根拠を持つ表現の自由によって保護されているとも主張。

• 2013 年 3 月に MetroPCS が訴訟を取り下げたため、 Verizon の単独訴訟に

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Open Internet Order 判決( 2014 年 1 月 14日)

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判決概要• Open Internet Orderそのものが政策として適切か否かではなく、当該命令が FCC の権限内のものであるか否かのみを検討対象として下されたもの

• 1996 年電気通信法 706条に基づきブロードバンド事業者(プロバイダ)に一定の命令を発する FCC の権限は認めた。• FCC はブロードバンド普及の目的であれば、 706条を根拠としてプロバイダ

に規制を及ぼすことができる

• オープンインターネット命令のうち、 anti-discrimination義務(以下、公平義務)と anti-blocking義務(同、接続義務)についてはその有効性を否定。

• disclosure義務(同、開示義務)の有効性を否定しなかった。

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公平義務と接続義務を否定した理由• ブロードバンドを通信法第二編で規制される「電気通信サービス」と

いう枠組みから、通信法第一編で規制される「情報サービス」という枠組みに範疇替えを行った以上は、電気通信サービスと同様の規制を課すことは認められない• コモンキャリアの本質を「誰に対しても差別することなく同一の公平かつ合理

的な条件でサービスを提供することが要請されていること」と定義し、コンテンツ事業者もプロバイダの利用者であるから、後者との契約関係 で公平義務と接続義務を課すことはコモンキャリアとして同事業者を取り扱うことに他ならない。• 接続義務自体は、最低限を超えるサービスであれば個別交渉による提供を許容

する性質をもつため、必ずしもコモンキャリア性を付与するものではない。しかしながら、 FCC がその点を主張しなかったため同じく無効であると決定した。

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FCC にとっての意味• 本判決をうけて米国のメ

ディアでは「 FCC がネットワーク中立性問題において再び敗れた」という基調での報道が数多く観察された。

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FCC は行動の自由を得た。• Comcast 判決により、 FCC は、プロバイダに対して規制を行う根拠

を法的に確立できないという状況に一旦は陥った。その状況を基準として判断すると、 1996 年電気通信法 706条を権限行使の根拠とする FCC のロジックを否定しなかった今回の判決は、 FCC にとって待望の結果。• ブロードバンドの全米への普及は今日の FCC の政策の一丁目一番地

• 「全ての米国人に対して高度電気通信の機能を合理的かつタイムリーに提供すること」を目的に据える限り、プロバイダ規制は合法的であるとした今回の判決は、 FCC が遂行しようとしているブロードバンド政策との整合性がきわめて高い。

• 行政庁の有権解釈の優越性を容認する Chevron 法理の存在を併せて考慮した場合、きわめて大きな権限行使の余地を FCC に付与したとも解釈できる。

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議会からの自由• 若干俯瞰的視点で見ると、本判決は FCC が議会の立法的措置を待つ

までもなく、既存の通信法の規制のみに基づいてブロードバンド事業に規制権限を及ぼせることを明らかにした。• すなわち、 FCC は、民主党と共和党間の対立で機能不全に陥る状況が散見され

る今日の米国の政治状況の下で、ネットワーク中立性政策をはじめとするブロードバンド政策全般を安定的かつ継続的に執行できるだけの基礎を得たことになる。

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公平義務の再復活への道• 全てのコンテンツ事業者に対して同一の提供条件を交渉する公平義務

さえ除外し、最低限のアクセスだけは保障する接続義務に絞れば 命令の有効性が認められる可能性は高い。

• そもそもオープンインターネット命令上の公平義務では、大手コンテンツ事業者が利用する CDN を規制できないため、大手コンテンツ事業者の中小事業者に対する優位性の存在は揺らがない。• FCC が公平義務をオープンネットワーク命令から消去し、追加料金でベストエ

フォート品質を超える通信品質を提供する pay-for-priority などのアレンジを可能にしたところでコンテンツ市場の競争条件を現状よりも本質的に悪化させるものではない。

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今回の判決の評価• 本判決が明確にしたもの

1. FCC がブロードバンド事業に管轄権を有する根拠を容認したこと

2. その根拠がこれまでのブロードバンド政策と軌を一にしていること

3. 開示義務についてはその有効性を否定しなかったこと4. 接続義務だけであれば有効と判示される可能性が高いこと

• さらに、公平義務をあきらめても命令の効力にほとんど差は生じない。

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つまり、 Comcast 判決後を基準とすれば… .

http://sbzmtks.blog.fc2.com/img/20130621151212a6b.jpg/

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本判決が確定すれば…• オープンインターネット命令のうち公平義務の有効性が否定されたこ

とは大手コンテンツ事業者に対するプロバイダの行動を変える可能性を生む。• 具体的には、 AT&T が最近導入を発表した sponsored data プラン のような

プランが続々と登場する可能性がある。

• 公平義務の否定は、プロバイダに CDN 事業者との競争を可能にするため、エコシステム全体の効率性が改善する可能性をもたらすし、価格差別は一般的に資源配分効率性を改善する可能性がある。今後の FCC がとるべき方策を議論する際には、本義務が否定されたことによる投資減退や公平性の侵害の程度との比較衡量が要請される。これまで重大な害を引き起こした中立性侵害事例はみあたらない点を考えると、拙速にこれら義務の再投入を試みることには慎重であるべきである。

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上訴は勿論可能。でも…• 最高裁が控訴審と同様に 706条を規制根拠として同意するか否かは不透明であり、折角、実質的勝訴とも看做せる判決を勝ち取ったFCC にはあまりにもリスクが高い。

• 訴訟継続によりさらに時間が空費され、その間、法的安定性が損なわれることのコストは何にも替えがたい。

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プロバイダへの影響• 今回の判決はあくまで控訴審判決であり、公平義務および接続義務が最終的に無効に決するか否かは、 FCC の次のアクション次第である。仮に、 FCC が「第三の道」を選択し、それが成功を収めた場合には、これまで積み上げた規制緩和の成果を一気に喪失する可能性も否定できない。

• プロバイダ側としては、オープンインターネット命令対象とはならない Specialized Service の枠内で特別サービスを提供することに徹し、命令自体の有効性を争わないという選択肢は確実に存在したはず。

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プロバイダ側の勝ち名乗り?

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AT&T の対応

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コンテンツ事業者への影響• 本命令に定められた義務が無効とされたことで、 CDN市場にプロバ

イダの参入が可能になり高品質サービスの利用料金が低廉化すれば中小事業者にも利用可能になる余地が生じ、競争環境が改善される。• 様々な品質に特化した多用なブロードバンドサービスが提供されることになれ

ば、これまで価格競争しか行い得なかった市場に非価格競争の可能性が生まれ、多様なユーザーの嗜好に適したサービスが実現されることを通じて資源配分の効率性が増すことも考えられる。

• 今回の判決がコンテンツ事業者や一般利用者にプラスとなったのかマイナスとなったのかについては、競争強化による効率性改善効果を、差別的取り扱いが許されたことによる公平性侵害と比較した後はじめて論じることができる。

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ユニバーサルサービスへの長期的影響• 今回、ブロードバンド事業者にコモンキャリア的な規制をかけること

ができない旨が明確にされたことにより、 IP Transition後の音声電話サービスはブロードバンドアプリとして提供されるため、ユニバーサルサービスをはじめとする各種規制の枠外に出る可能性がある。• ユニバーサルサービスを確保する責務を持つ FCC は、本論点がクリアになるま

で IP Transition に積極的になれず、結果として米国の IP化が遅延するというものである。 IP化をはじめとする技術変化の下で、ユニバーサルサービスをどういった視点から定義し、保護していくのかについては重要な課題である。

この話題については 2 月 13 日の Glocom の研究会で話そうと思ってます。上手くまとまるかは不明ですけれど…

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FCC の次の一歩• オープンネットワーク命令は、プロバイダ市場の競争が不十分な点に起因する問題を、競争自体には直接手を触れることなく、搦め手ともいえる手段で解決しようとしたもの。

• プロバイダの市場支配力を温存し、ネットワーク利用コストが高止まりしコンテンツビジネスの収益性が悪化すれば、ひいてはネットワークインフラへの投資は抑制されてしまい、 706条の目的達成が妨げられてしまう。

• 706条を規制根拠とする以上、 FCC が究極的に目指すべきは、プロバイダ市場への競争導入でなければならない。

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シリコンバレーの影• オープンインターネット命令は、インフラ投資の負担を一般利用者とそれに対してサービスを提供するプロバイダに負わせ、コンテンツ事業者側には zero-price rule のもとでの利用環境を保障することで「実質的な補助金」を与えるという、これまでのメカニズム の維持を図るもの

• 今回の命令の経済的意味および本判決の意味は、「ネットワーク中立性」といった競争政策的視点からではなく「インターネット産業、特にコンテンツ産業の育成」という産業政策的視点から判断すべき。

• FCC が本命令を発出した背後にオバマ政権とシリコンバレーの強固な紐帯を見てしまうのはあながち穿ちすぎとは言えまい。

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オープンインターネット命令に係る控訴審判決の影響An Analysis of a Judicial Judgment on the Open Internet Order

実積寿也(九州大学)[email protected]