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75 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 4.1.1 規格への適合宣言

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4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要

4.1 一般情報

4.1.1 規格への適合宣言

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4.2 機器の設計の妥当性確認の概要

4.2.1 機器の安全性を裏付ける試験

4.2.1.1 物理的、化学的特性

総括

本申請品の物理的、化学的特性の確認のため、表 4.2.1.1-1に示す試験を行った。本申請品は設

定した判定基準に従って全ての試験に合格した。

表 4.2.1.1-1. 物理的、化学的特性試験

試験名称 方法 判定基準 品目仕様

への対応

資料

番号 結果 試験施設

1. 電気化学

的腐食試験

ASTM F2129 の規格に

従って、検体を 0.9%生

理食塩水に浸漬し、電

気化学的腐食試験を行

った。金属の孔食、お

よび隙間腐食への耐性

の指標となる破壊電位

(EB)が記録された。

破壊電位の**

*は @** mVSCE

を超え、***

は @** mVSCE を

超えなければな

らない。

「ステントの

腐食耐性」

ホ-1-1 合格 @@@

***::::::*

***:

2. 3 ヶ月間

および 10

年間の模擬

使用後の電

気化学的腐

食試験

ASTM F2129 の規格に

従い、0.9%生理食塩水

で周期的な動電位分極

試験を行うことによっ

て、ステントの腐食特

性を評価した。金属の

孔食、および隙間腐食

への耐性の指標となる

破壊電位(EB)が記録

された。

破壊電位の**

*は @** mVSCE

を超え、***

は @** mVSCE を

超えなければな

らない。

ホ-1-2

ホ-1-3

合格 @@@

***::::::*

***:

3. MRI評価 ASTM 方法に従って、

磁 気 誘 導 性 偏 位 力

(ASTM F2052)、磁気誘

導 性 ト ル ク (ASTM

F2213)、磁気誘導性画

像 ア ー チ フ ァ ク ト

(ASTM F2119)、磁気誘

導性発熱(ASTM F2182)

を評価した。

磁場によって誘

導される偏向は

45º より小さく、

機器は 3.0 テスラ

および 1.5 テスラ

の MRI 装置で

「特定の MR 条

件下で安全」と

して確立される

必要がある。

「MR条件」 ホ-1-4

ホ-1-5

ホ-1-6

ホ-1-7

ホ-1-8

ホ-1-9

合格 ***::***

@:@

4. ステント

コーティン

グの均一性

評価の検証

(長軸方

向)

各ステントおよびカニ

ューレの部品をエタノ

ールで溶出し、検証さ

れた紫外可視分光光度

計法を使ってパクリタ

キセル量を測定した。

*******

*******

*******

*******

****、ステ

ントのコーティ

ング均一性を正

確に予測しなけ

ればならない。

品質検査項目

「コーティン

グ工程におけ

る、ステント

長に沿ったパ

クリタキセル

の均一性」と

試験方法が同

ホ-1-10 合格

Cook Inc.

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77

試験名称 方法 判定基準 品目仕様

への対応

資料

番号 結果 試験施設

5. ステント

コーティン

グの均一性

評価の検証

(円周方

向)

各ステントおよびカニ

ューレの部品をエタノ

ールで溶出し、検証さ

れた紫外可視分光光度

計法を使ってパクリタ

キセル量を測定した。

*******

*******

*******

*******

****、ステ

ントのコーティ

ング均一性を正

確に予測しなけ

ればならない。

該当なし ホ-1-11

ホ-1-12

ホ-1-13

合格 Cook Inc.

6. 非 拘 束

(過拡張)

条件下にお

けるステン

トの粒子試

ステントを展開する前

に、大動脈腸骨動脈の

動脈弓の生理学的モデ

ルに各デリバリーシス

テムを@回トラッキン

グした。次に各ステン

トをガラス試験管中で

37ºC ± 1ºC の濾過した

脱イオン水に浸漬した

まま展開し、試験管内

の粒径≥10 µm および

≥25 µmの粒子数を数え

た。

粒子の特性判断

のみ

品質検査項目

「最終製品に

おける粒子状

物質」と試験

方法が同等

ホ-1-14

ホ-1-15

ホ-1-16

ホ-1-17

該当

せず

@@@

***::::**

7. 臨床試験

ロットから

のステント

の 非 拘 束

(過拡張)

条件下の粒

子試験

ステントを展開する前

に、大動脈腸骨動脈の

動脈弓の生理学的モデ

ルに各デリバリーシス

テムを@回トラッキン

グした。次に各ステン

トをガラス試験管中で

37ºC ± 1ºC の濾過した

脱イオン水に浸漬した

まま展開し、試験管内

の粒径≥10 µm および

≥25 µmの粒子数を数え

た。

ロットのリリー

スのための特性

判断のみ

品質検査項目

「最終製品に

おける粒子状

物質」と試験

方法が同等

ホ-1-18

ホ-1-19

該当

せず

@@@

***::::**

8. 重複ステ

ントおよび

非重複ステ

ントの模擬

使用下の粒

子試験

大動脈腸骨動脈の動脈

弓の生理学的モデルに

各デリバリーシステム

を@回トラッキングし

た。ステントを展開

し、粒径≥10 µmの粒子

数および粒径≥25 µmの

粒子数を数えた。

粒子の特性判断

のみ

該当なし ホ-1-20

ホ-1-21

ホ-1-22

ホ-1-23

ホ-1-24

ホ-1-25

ホ-1-26

ホ-1-27

該当

せず

@@@

***::::**

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78

試験名称 方法 判定基準 品目仕様

への対応

資料

番号 結果 試験施設

9. 重複ステ

ントおよび

非重複ステ

ントの脈動

的疲労下の

粒子試験

大動脈腸骨動脈の動脈

弓の生理学的モデルに

各検体を@回トラッキ

ングした。 連続流の条

件下で大動脈モデル内

にステントを展開し、

臨床的意義のある期間

の間、生理学的な軸方

向の運動にさらし、粒

子状物質を測定した。

粒子の特性判断

のみ

該当なし ホ-1-28

ホ-1-29

ホ-1-30

ホ-1-31

該当

せず

@@@

***::::**

10. 重複ス

テントおよ

び非重複ス

テントの軸

方向疲労下

の粒子試験

大動脈腸骨動脈の動脈

弓の生理学的モデルに

各検体を@回トラッキ

ングした。連続流の条

件下で大動脈モデル内

にステントを展開し、

臨床的に意味のある期

間の間、生理学的な軸

方向の運動にさらした

まま、粒子状物質を測

定した。

粒子の特性判断

のみ

該当なし ホ-1-32

ホ-1-33

ホ-1-34

ホ-1-35

該当

せず

@@@

***::::**

11. 粒子状

物質の同定

粒径≥** µm の粒子状物

質を回収し、全質量を

測定した。パクリタキ

セルをエタノール抽出

し、UV アッセイで定

量化することによって

粒子状物質のうち、パ

クリタキセルが占める

割合を決定した。

粒子の特性判断

のみ

該当なし ホ-1-36

ホ-1-37

該当

せず

@@@

***::::**

12. 残留溶

媒試験

クロマトグラフィーを

使って、DMSO で抽出

された検体中の残留エ

タノールを定量した。

機器には**:* mg

を超えるエタノ

ールがあっては

ならない。

該当なし ホ-1-38 合格 @@@

***::::**

結論:

薬剤コーティングされた当該ステントの使用目的を考慮し、適切な物理学的および化学的試験

を選択した。試験には、腐食評価(0時間、および 3ケ月間または 10年間の模擬使用後)、薬

剤コーティングの均一性評価、種々の条件下の粒子状物質評価、さらに MRI適合性評価を含め

た。本申請品は設定した判定基準を以って、すべての試験に合格したため、薬剤溶出ステント

としての物理的、化学的特性の必要条件を満たしたと考えられる。それぞれの物理的、化学的

特性試験の概要を、以下に記述する。

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1. 電気化学的腐食試験 (TS020072)

添付資料ホ-1-1

試験の目的

本試験の目的は、本品ステントの腐食耐性を特性付けることである。

評価

検体

表 4.2.1.1-2. 検体

品目 サイズ(mm) 検体数

7Frの本品ステント 8 x 30 5

検体選択の妥当性

評価結果は、原材料および製造工程に依存し、試験にかけるステントサイズには依存しない。

さらに、6 Frおよび 7 Frのステントは同一の原材料で構成され、同じ電解研磨および同じコーテ

ィング工程を使って製造される。

また、試験を行った検体数は、過去の血管内ステント試験の実績に基づいて、ステントの腐食

耐性を評価するのに十分な数であると判断した。

試験方法

ASTM F21291 に従って、検体を 0.9%生理食塩水に浸漬し、電気化学的腐食試験を行った。金属

の孔食および隙間腐食への耐性の指標となる破壊電位(EB)を、ポテンショスタット(電位制

御装置)を使用して記録した。EB値が高いほど、孔食に対する耐性が強いことを示す。 破壊が

起こらず、検体が直ちに再不動態化された場合には、頂点電位(EV)が記録された。これは EB

の下限を表す。

判定基準

破壊電位の***は*** mVSCEを超える必要があり、***は*** mVSCEを超える必要がある。

判定基準の妥当性

これらの基準は、臨床使用中に腐食に十分に耐えるのに必要な予測値に基づいて設定された。

37°Cに保たれたリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を使用する場合、破壊電位が*** mVSCEより低い

合金は最適以下の腐食耐性であると考えられ、***~*** mVSCEである合金は最低限の腐食耐性

であると考えられ、*** mVSCE より高い合金は最適な腐食耐性であると考えられている2。

結果

表 4.2.1.1-3. 非重複ステント用の腐食試験結果

試験検体 検体数

破壊電位の

平均 ± 標準偏差

(mVSCE)

最小破壊

電位

(mVSCE)

最大破壊電

(mVSCE)

判定

7 Frの本品ステント 5 *** ± *** *** *** 合格

結論

本腐食試験は、本品ステントが十分な腐食耐性を有することを実証した。

1 ASTM F2129, Standard Test Method for Conducting Cyclic Potentiodynamic Polarization Measurements to

Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

する、循環分極測定試験の基準試験方法。)

2 Corbett, Richard A., “Laboratory Corrosion Testing of Medical Implants,”

Corrosion Testing Laboratories, http://www.corrosionlab.com/papers/medical-implant/medical-implant-

testing.htm.

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2. 3ヶ月間および 10年間の模擬使用後の電気化学的腐食試験 (TS060066, TS060143)

添付資料ホ-1-2、ホ-1-3

試験の目的

本試験の目的は、3ヶ月間および 10年間の模擬使用後に、重複させた本品ステントの腐食耐性

を特性付けることであった。

評価

検体

表 4.2.1.1-4. 検体

検体 In vivoで重複させた状

態に相当する期間 数量

重複させた Zilverステント* (9 x 20 mm) -

*******##**#回******

少なくとも 3ヶ月

4

重複させた Zilverステント* (6 x 60 mm) -

*******##**#回******* 3

重複させた Zilverステント* (10 x 40 mm) -

*******##**#回******* 3

重複させた Zilverステント* (7 x 30 mm) -

************#*#回****** 8

重複させた本品ステント**(9 x 20 mm) -

*********#回******

10年間

6

重複させた本品ステント**(6 x 60 mm) -

*********#回******* 6

重複させた本品ステント**(10 x 40 mm) -

*********#回******* 6

重複させた本品ステント*(7 x 30 mm) -

**********#回****** 6

* 検体として「Zilverステント」を用いた。このステントは金属ベアメタルステントであるが、

パクリタキセルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセル

コーティングはパクリタキセルのみで構成され、非常に薄い(**************

μm ****、********** μm **)。したがって、コーティングがなくても腐食

特性評価に影響を与えないと判断した。

**ステントは医薬品有効成分なしで、本品コーティングの工程を施された。

検体選択の妥当性

Zilverステントそのものは本品ステントと同一である。パクリタキセルコーティングは非常に薄

く(** μm **、************** μm *)、パクリタキセルのみで構成される。

したがって、コーティングがなくても非コーティングステントの腐食特性評価に影響を及ぼさ

ないと判断した。また試験を行った検体数は、過去の血管内ステント試験の実績に基づいて、

ステントの腐食耐性を評価するのに十分な数であると判断した。結果は、原材料および製造工

程に依存し、試験したステントサイズには依存しない。さらに、6 Frおよび 7 Frのステントは同

一の原材料で構成され、同じ電解研磨および同じコーティング工程を使って製造される。

試験方法

腐食試験の前に、重複されたステント(ステントは約 5 mm重複してチューブ内に展開された)

は、少なくとも 3ヶ月間または 10年間埋植されたステントに相当する疲労試験(曲げ疲労、軸

疲労、ねじり疲労、拍動疲労)を実施した。ASTM F2129規格にしたがって、0.9%生理食塩水で

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動電位分極試験を周期的に行うことによって、ステントの腐食耐性を特性付けた。金属の孔食

および隙間腐食への耐性の指標となる破壊電位(EB)を記録した。EB値が高いほど、孔食に対

する耐性が強いことを示す。 破壊が起こらず、検体が直ちに再不動態化された場合には、頂点

電位(EV)が記録された。これは EBの下限を表す。

判定基準

破壊電位の***は*** mVSCEを超える必要があり、***は*** mVSCEを超える必要がある。

判定基準の妥当性

この基準は、臨床使用中に腐食に十分に耐えるのに必要な予測値に基づいて設定された。37°C

に保たれたリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を使用する場合、破壊電位が、*** mVSCE より低い合

金は最適な腐食耐性がないと考えられ、***~*** mVSCEの間である合金は最低限の腐食耐性があ

ると考えられ、*** mVSCE より高い合金は最適な腐食耐性があると考えられる。 したがって、

ナイチノールの電気化学的腐食耐性を特性付けるために、破壊電位の***が *** mVSCE を超え、

破壊電位の***が*** mVSCEを超えていることが、当該ステントの破壊電位に対する判定基準

として設定された。

結果および考察

重複した状態で、3ヶ月間および 10年間に相当する周期的な疲労を適用した後の電気化学的腐

食試験の結果を、表 4.2.1.1-5に示す。3ヶ月間に相当する試験では、18個の疲労させた検体中 6

個で破壊電位が記録され、破壊を示さなかった 12個の検体で頂点電位(EBの下限)が記録され

た。破壊電位の平均値は*** ± *** mVSCEであり、破壊電位の最小値は *** mVSCEであった。し

たがって判定基準を満足した。

10年間に相当するこの試験に関しては、24個の疲労させた検体中の 14個において破壊電位が記

録され、破壊を示さなかった 10個の検体で頂点電位(EBの下限値)が記録された。破壊電位の

平均値は *:*** ± *** mVSCEであり、破壊電位の最小値は *** mVSCEであった。したがって判定

基準を満足した。

表 4.2.1.1-5. 事前に疲労負荷をかけた重複ステントの腐食試験結果

In vivoで重複させた状

態に相当する期間

検体

平均値 ± 標準偏差

(mVSCE)

最小値

(mVSCE)

最大値

(mVSCE) 判定

少なくとも 3ヶ月 18 *** ± *** *** *** 合格

10年間 24 ***** ± *** *** ***** 合格

注:頂点電位(EV)は EBの下限を表すものであり、3ケ月間の模擬疲労後で 18検体中 12検体

において、また 10年間の模擬疲労後で 24検体中 10検体において記録した。これは破壊が

起こらず、直ぐに検体が再不働態化したためである。

結論

3ヶ月間および 10年間に相当する疲労負荷後での重複させたステントの腐食試験によって、本

品ステントが十分な腐食耐性を有することが実証された。

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3. MRI評価 :***********************************************************:

****:::******:::***:::***::::::****::::**::**::::::::**::::::::::

添付資料ホ-1-4、ホ-1-5、ホ-1-6、ホ-1-7、ホ-1-8、ホ-1-9

試験の目的

本試験の目的は、1.5テスラ(T)および3.0テスラ(T)で、単一の本品ステントおよび重複させ

た本品ステントの磁場の相互作用、MRIに関連した発熱、画像アーチファクトを評価することで

あった。

評価

検体

表4.2.1.1-6. 検体

試験報告書 Zilverステント*のサイズ(mm) 検体数 テスラ

***::***

@**:::**** 7 Frの10 x 80*(非重複) 1 1.5

***::***

@**::****

**** 7 Frの10 x 80*(重複)

1対(2個の

ステント) 3

***::***

**:****:****

7 Frの10 x 80*(非重複) 1 3

7 Frの10 x 80*(重複) 1対(2個の

ステント) 1.5

***::***

**:****

**** 6 Frの10 x 140*(非重複) 1 3

***::***

**:*::****

6 Frの10 x 140*(非重複) 1 1.5, 3

6 Frの10 x 140*(重複) 1対(2個の

ステント) 1.5, 3

@@@:*:** 6 Frの10 x 140*(重複)

(有限要素モデル)

1対(2個の

ステント) 1.5

* 検体として「Zilverステント」を用いた。このステントは金属ベアメタルステントであるが、

パクリタキセルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセル

コーティングはパクリタキセルのみで構成され、非常に薄い(**************

m ****、**********μm **)。したがって、コーティングがなくても MRI

適合性評価に影響を与えないと判断した。本試験に含まれた 6 Frの 140 mmステント長は、6

Frの 120 mm 本品ステントの性能を十分に代表する。

検体選択の妥当性

最大直径で最長(最大質量)の 6 Fr(140 mm)および 7 Fr(80 mm)の Zilverステントが、最悪

条件の機器として試験された。本申請に含まれるステントの最大長は 120 mmであるが、本試験

に含まれる 6 Frの 140 mmステント長は、6 Frの 120 mm ステントの性能を適切に代表するもの

である。

試験方法

1.5テスラおよび 3テスラの MRIシステムを使用して、6 Frおよび 7 Fr の非重複 Zilverステント、

及び約 5 mm重複した 6 Frおよび 7 Fr Zilverステントについて、磁場の相互作用、発熱、画像ア

ーチファクトに関する試験が実施された。磁場の相互作用は、ASTM F20523に説明された方法を

3ASTM F2052、Standard Test Method for Measurement of Magnetically Induced Displacement Force on

Medical Devices in the Magnetic Resonance Environment. (磁気共鳴環境で医療機器に対して磁気的に誘

導される変位力の測定に関する標準試験方法。)

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使用して偏向角(変位力)を測定することにより評価した。さらに、以下に記載された 0~4の

スケールに基づいて定性的なトルク評価(ASTM F22134 準拠)が実施された。

0=トルクなし。

+1=軽度または低いトルクで、インプラントの方向がわずかに変化するが磁場と平行に

ならない。

+2=中程度のトルクで、インプラントの方向が次第に磁場と平行になる。

+3=強度のトルクで、インプラントの方向が急速に強制的に磁場と平行になる。

+4=非常に強度のトルクで、インプラントの方向が非常に急速および非常に強制的に磁

場と平行になる。

ASTM F21825 に準拠して、検体の両端と中心の温度を測定し、基準温度と比較した(in vitroに

おけるゲル状の生理食塩水モデル内で、Luxtronの光学温度計を使用)。ヒト組織を模擬するた

めに、半固形のゲルで充填されたプラスチック製のモデルを使用した。このモデルには模擬血

流は含まれなかった。また、このモデルはヒトの頭と胴体のサイズと形状に近似した輪郭と寸

法を有する。重複させた6 Frの Zilverステントにおいては、血流を伴うMRI発熱の最良の推測値

を得るために、有限要素解析(FEA)を使用して、熱伝達分析を追加実施した。最初のFEA分析

は血流なしで実施され、1.5テスラのMRI磁場にさらされた重複ステントから発生する熱を判定

し、それによってFEAモデルとin vitroモデルとの間の一致を確立した。これに続いて、ステント

が留置された場合の血管のFEA分析を実施し、これは初期モデルにおける熱発生の測定値を含み、

血流による熱損失を考慮している。これによってMRI磁場にさらされた際のステント温度の上昇

をより正確に推測できる。

画像アーチファクトは、(ASTM F21196に準拠して)ターボスピンエコー法とグラジエントエコ

ー法の画像を分析することによって評価した。

判定基準

磁場によって誘導される検体の偏向は、45ºより小さくなくてはならない。機器は 3.0テスラおよ

び1.5テスラのMRI装置について、「特定のMR条件下で安全」として確立される必要がある。

判定基準の妥当性

ASTM F2052は、偏向角度が45ºより小であるべきと指定している。MRIに関連する発熱および

画像アーチファクトの評価は、特性評価のみのために実施された。

結果および考察

ZilverステントのMRI評価は、最小限の偏向(表4.2.1.1.7)、およびトルクなしを示した。

4ASTM F2213、Standard Test Method for Measurement of Magnetically Induced Torque on Medical Devices

in the Magnetic Resonance Environment. (磁気共鳴環境で医療機器に対して磁気的に誘導されるトルク

の測定に関する標準試験方法。) 5ASTM F2182、Standard Test Method for Measurement of Radio Frequency Induced Heating Near Passive

Implants During Magnetic Resonance Imaging. (磁気共鳴映像中に受動インプラントの近辺で高周波に

よって誘導される発熱の測定に関する標準試験方法。) 6ASTM F2119、Standard Test Method for Evaluation of MR Image Artifacts from Passive Implants.

(受動インプラントからの MRI画像アーチファクト評価の標準試験方法。)

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84

表4.2.1.1-7. 観測された偏向角(トルク)

検体(試験) テスラ 偏向角 トルク 結果

重複のない10x80 mmの7Frの

Zilverステント*********:***** 1.5 * * 合格

重複させた2個の10 x 80 mmの7 Frの

Zilverステント*********:***** 3 * * 合格

重複のない10 x 140 mmの6 FrのZilverス

テント*********:***** 3 * * 合格

表4.2.1.1-8に示されるように、本MRI試験はまた、Zilverステントの熱発生が比較的軽度であるこ

とを示した。この発熱が生理学的に及ぼす影響はわずかであると考えられ、当該評価に用いた

条件下では、ステントを留置した患者がMR検査を受ける際の追加リスクはないと予想される。

表4.2.1.1-8. MRIに関連する発熱の測定

Zilverステントの

サイズと構成 テスラ

全身の平均比吸

収率 (SAR)

(W/kg)

高周波照

射時間

(分)

最高温度上

昇測定値

(°C)

基準温度上

昇測定値

(°C)

結果

重複のない

10 x 80 mmの7 Fr

***********:***

1.5 *:* ** *:** *:* 合格

重複させた2個の

10 x 80 mmの7 Fr

***********:***

1.5 * ** *:** *:* 合格

重複のない

10 x 140 mmの6 Fr

***********:***

1.5 *:* ** *:** *:* 合格

重複させた2個の

10 x 140 mmの6 Fr

***********:***

1.5 *:* ** *:*** *:* 合格

重複のない 10 x 80 mmの7 Fr

***********:***

3 * ** *:** *:* 合格

重複させた2個の

10 x 80 mmの7 Fr

***********:***

3 * ** *:** *:* 合格

重複のない

10 x 140 mmの6 Fr

***********:***

3 * ** *:** *:* 合格

重複させた2個の

10 x 140 mmの6 Fr

***********:***

3 * ** *:** *:* 合格

* 血流のない条件で測定された、最悪条件の結果。

** 下の「表4.2.1.1-9」、および報告書*:@@******に記載された血流による分析結果を、生理

学的関連性のある結果として、記載した。

表4.2.1.1-8 における発熱評価は、血流の欠如、高周波(RF)磁場条件、磁場条件など、いくつ

かの最悪条件下で実施された。灌流はステントとそれに隣接する動脈壁を冷却する有効なメカ

ニズムであるが、in vitroにおけるゲル状の生理食塩水モデルには、灌流は含まれなかった。RF

磁場の強度を最大にするために、ステントの位置はRFコイルにできるだけ近付けられた。ステ

ントの両端に電場を集中させて発熱を最大にするため、ステントの長軸の向きをRF磁場の方向

にあわせた。RFエネルギーの量も、最悪条件の画像診断になるように選択した。

Page 11: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

85

重複させた6 FrのZilverステントにおいて、血流の存在下でのMRI発熱の最良推測値を得るために、

熱伝達分析を追加実施した。重複させたステントの最初のFEA分析は血流なしに実施されたが、

1.5テスラのMRI磁場にさらされた際にステントから同程度の温度変化が見られたことから、当

該FEAモデルとin vitroゲル状生理食塩水モデルは近似することが確認された(表4.2.1.1-9)。こ

れに続いて、血流による熱損失を考慮したうえで、MRI磁場にさらされた際のステントの温度上

昇をより正確に推測するために、ステントが留置された血管のFEA分析を実施した。その結果、

重複させた10 x 140 mmのステントにおいて、血流による対流冷却効果を考慮した場合の、MRI

による最大発熱(生理学的関連性のある値)は、約*:*Cであることが示された。

表4.2.1.1-9. MRIに関連する温度上昇を修正するためのFEAシミュレーション

最大温度上昇 In vitro FEA 補足

静的なゲル状の生理食塩水モ

デル(血流なし)

::*@ :*:*@ 近似することが実証された。

血管(血流あり) **** *:*@ 生理学的関連性のある値。

臨界温度(43C)での熱の等効果線量を決定するため43Cでの累積等価時間(CEM 43)を求め

ることは、発熱による組織破損を評価する際に、許容できる基準として示唆されている7 。MRI

に関連する温度上昇が4.5C(最悪条件のMRI発熱の評価)であると考えると、60分間のMRI照

射時間におけるCEM 43値は10分より短くなる。文献によると、このCEM 43の値は許容内であり、

有意に動脈組織に局所的損傷を起こすとは考えられない8 。

さらに、パクリタキセルコーティングのあるステントを、**ºCで***時間の熱応力サイクルにか

けて実施した評価に基づくと(4.2.1.6の熱安定性試験データ)、最悪条件で見られた、MRIに関

連する最大発熱は、薬剤の安定性に影響すると予想されない。

Zilverステントにおける画像アーチファクトは比較的軽度であり、MRI画像で局所的な無信号

(即ち、信号損失)として表示された。 一般的に、ステントに関してはT1強調したスピンエコ

ーのパルスシーケンスよりも、グラジエントエコーのパルスシーケンスの方が大きなアーチフ

ァクトを生じた。

結論

重複のない本品ステント、および重複された本品ステントは、3.0テスラおよび1.5テスラのMRI

装置で、「特定のMR条件下で安全」であることが確立された。偏向は最小限であり、トルクは

なかった。MRIに関連する発熱の評価で、生理学的関連性のある温度上昇の影響はわずかである

予想が示された。したがって、これらの評価に使用された条件下では、このステントを留置し

た患者がMRIを受ける際の追加リスクはないと予想される。MRI画像の対象領域がステントの位

置とまったく同じでない限り、本品ステントのMRIに関連する画像アーチファクトも、MRIの診

断使用を大幅に損ねる可能性は少ない。

7 Kainz, W., MR Heating Tests of MR Critical Implants, Editorial. Journal of Magnetic Resonance Imaging,

26:000-000 (2007) 8 Haveman J, Smina P, Wondergem J, et al. Effects of hyperthermia on the central nervous system: What was

learnt from animal studies? Int J. Hyperthermia. August 2005; 21(5):473-487.

Goldstein LS, Dewhirst MW, Repacholi M., et al. Summary, conclusions and recommendations: adverse

temperature levels in the human body. Int J. Hyperthermia. 2003:19:373-384.

Havemen J, Van Der Zee J, Wondergem J, et al. Effects of hyperthermia on the peripheral nervous system: a

review. Int J. Hyperthermia. 20(4):371-391.

Page 12: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

86

4. ステントのコーティングの均一性確認(長軸方向) :***::***************::***:::***:::::****

*:::*:::::***::::******:::::***************

添付資料ホ-1-10

試験の目的

本試験の目的は、**********************************

****************************

評価

検体

ステント長に沿った薬剤コーティングの均一性を、*******************

******************************************

******************************************

*****************************(図4.2.1.1-1)。

図 4.2.1.1-1. ************************

表 4.2.1.1-10. 検体

代表的な長さ ロット数 ***********

*の個数

**:**********

*******の個数

20 mm 3 2 2

80 mm 4 8 8

40 mm 4 4 4

検体選択の妥当性

本妥当性確認試験では、****************************@**********

***********************************************

*********************:*:**********************

************************************************

**********************************************:*

************************************:**********本検

証は7 Frのステントに対し実施しているが、本品の6 Frステントと7 Frステントは同じコーティン

グ工程を経て製造されるため、当該試験によって両方が担保される。

試験方法

******************************************

******************************************

******************************************

********************************

***************************************

*********

*****************************

Page 13: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

87

****************************

*********************************

***@***********************@*:****

*************************@*****************

************************@*:@::@::@:**:*************

************@:*@:*@:**************************

**************************

****

判定基準

******************************************

*******************

判定基準の妥当性

本試験の判定基準は、ステントのコーティング均一性の予測として************

*********************、設定された。

結果および考察

詳細な試験結果を表 4.2.1.1-11に示す。この結果を示した図 4.2.1.1-2からわかるように、***

******************************************

**図 4.2.1.1-2の各点は、***********************@******

*@*それぞれの測定結果を示す。

表 4.2.1.1-11. コーティング均一性確認(長軸方向)試験結果

ロット コーティング均一性(%)

********* ********

1

*:* *:*

*:* *:*

*:* *:*

2

* *:*

*:* *

*:* *:*

3

* *:*

*:* *:*

* *:*

4 ** **:*

**:* *:*

7 *:* *:*

*:* *

8 **:* **:*

**:* **:*

9 **:* **:*

**:* **:*

10

** **:*

**:* **

**:* **:*

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88

**:* **:*

11

*:* **:*

**:* **:*

* *:*

**:* *:*

12

*:* **:*

*:* **:*

*:* **:*

**:* *:*

13

* **:*

*:* *:*

*:* *:*

** *:*

図 4.2.1.1-2. ステントコーティングの均一性に対して設定した規格(**%)における、

代用品とステントの結果の一致

結論

******************************************

********************************************

*****************************::*************

これは、ロットのリリースの判定基準に指定される、判定の結果の 100%一致を示している。ま

た、複数のステント長(20 mm、40 mm、および 80 mm)に対して実施し合格したことから、当

該評価はステント長に影響を受けないことが示された。

Page 15: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

89

補足

******************************************

******************************************

*********@***@******************************

******************************************

*******************************************

******************************************

******************************************

********************************

********************************

************************

*********************

*********************************

**********************************

********************************@**********

**************@*****@***@*@**@:*****************

**@**@**@:*********@***@*********************

***

******************@*************************

*************

Page 16: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

90

5. ステントのコーティングの均一性確認(円周方向):******@@:******@@:***:****

****:*:***:****:

添付資料ホ-1-11、ホ-1-12、ホ-1-13

試験の目的

************************************* *****

*****************評価することである。

評価

検体

*******************************************

*************(図4.2.1.1-3)*************************

*****

図 4.2.1.1-3. *************************************

**************************************

***************************

表 4.2.1.1-12. 検体*********

サイズ(mm) ロット数 ロット毎の検体数

6 x 20 6 6

6 x 80 3 6

10 x 80 3 6

5 x 120 1 6

10 x 120 3 6

検体選択の妥当性

上記の「4. ステントのコーティングの均一性確認(長軸方向)」から、*******によって実際のステントのコーティング均一性が正確に予測できることが確認された。すなわち、****************************@**************************************************************************************************************************************************************@******@*******@***************

度 度

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91

************************Fr サイズによる違いは当該評価に影響を与えないが、本試験の検体は 7 Fr ステントと 6 Fr ステントの両方を含む。また、全ステントのコーティング工程が同じであることを考慮すると、本試験における検体のサイズによって本品ステントの全てのサイズが担保されると考える。

試験方法

******************************************

******************************************

*************************************@*****

***************************@:*@*@:@:@:**::********

****@:**:**:***********************************

**

****

判定基準

全ての検体のコーティング均一性が **%以内でなければならない。

判定基準の妥当性

均一性≤ **%の基準は長軸方向のコーティング均一性の検証と同じであり、コーティング工程の

能力、および、思わしい結果が得られたパクリタキセル塗布冠動脈ステントの臨床試験におけ

る薬剤効果の感度に基づく。

結果および考察

コーティング均一性の結果を、以下の表に示す。

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92

表 4.2.1.1-13. コーティング均一性試験の結果

サイズ(mm) ロット 均一性(%) サイズ(mm) ロット 均一性(%)

6 x 20

1

*:*

10 x 80

1

**:* **:* **:* **:* **:* **:* **:* **:* **:* **:* **:*

2

*:*

2

**:* **:* **:* **:* *:*

**:* **:*

**:* *:* **:* *:*

3

*:*

3

*:* *:* **:*

**:* **:* **:* **:* **:* *:* **:* *:*

4

**:*

5 x 120 1

*:* **:* *:* **:* **:* **:* **:* **:* **:* **:* **:*

5

**:*

10 x 120

1

*:* **:* *:* **:* *:* **:* **:* **:* **:* **:* **:*

6

**:*

2

**:* **:* **:* **:* **:* **:* **:* **:* **:* **:* **:*

6 x 80

1

**:*

3

*:*

**:* **:* **:* **:* **:* **:* **:* **:*

*:* *:*

2

**:*

**:* **:* **:* **:* **:*

3

**:* **:* **:* **:* **:* **:*

Page 19: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

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結論

全ての検体が判定基準を満たした。従って、本品ステントの表面は、製造工程において円周方向

に均一なコーティングが施されることが確認された。

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94

6. 非拘束 (過拡張) 条件下のステントの粒子試験 (TS070168, TS070169, TS080076, TS080077)

添付資料ホ-1-14、ホ-1-15、ホ-1-16、ホ-1-17

試験の目的

本試験の目的は、水中で本品ステントをトラッキングし、過剰に拡張(非拘束状態)して展開し

た後に、粒径≥10 μmおよび≥25 μmの粒子数を判定することであった。 非コーティングステント

の試験は、コーティングした本品ステントの試験のベースラインとなる。

評価

検体

表 4.2.1.1-14. 検体

品目 サイズ

(mm)

ステント

(n)

ロット

(n)

7 Frの本品ステント

(TS070169)

6 x 20 10 2

6 x 80 10 2

7 x 80 10 2

10 x 20 10 2

10 x 80 10 2

6 Frの本品ステント

(TS080076)

5 x 20 10 2

5 x 120 10 2

7 x 120 10 2

10 x 20 10 2

10 x 120 10 2

7 Frの Zilverステント*

(TS070168)

6 x 20 5

非コーティン

グステント

は、1つまた

は複数のロッ

トから得られ

た。

6 x 80 5

7 x 80 5

10 x 20 5

10 x 80 5

6 Frの Zilverステント*

(TS080077)

5 x 20 5

5 x 120 5

7 x 120 5

10 x 20 5

10 x 120 5

* 検体として「Zilverステント」を用いた。このステントは金属ベアメタルステントであるが、パ

クリタキセルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコーテ

ィングはパクリタキセルのみで構成され、非常に薄い(***********@**μm***

*、********** μm **)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を与

えないと判断した。

検体選択の妥当性

表に示された検体は、自己拡張型ナイチノール製の本品ステントおよび「Zilver ステント」である。

本品ステントの設計空間を十分に代表させるため、6 Frおよび 7 Frの本品ステントのうち「四

隅」のサイズ(即ち、最小径及び最大径ステントの最小長及び最大長)に加え、最大長をもつス

テントのうち、中間的な半径のもの一つについて、試験を行った。本品ステントは、それぞれ 2

つのコーティングロットから選択された。

試験方法

ステントを展開する前に、大動脈腸骨動脈の動脈弓の生理学的モデルに各デリバリーシステムを

@回トラッキングした(即ち、モデル化された動脈弓にデリバリーシステムを合計*回通過させ

た)。次に、各ステントをガラス試験管中で 37ºC ± 1ºCの濾過した脱イオン水に浸漬したまま展

開した。ステントを試験管内の水中で 4分間静置後、注意して取り出した。 検体をゆっくりと撹

拌した後、Hiac/Royco液中微粒子計測器を使って、粒径≥10 µmおよび≥25 µmの粒子に関して分析

した。

Page 21: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

95

判定基準

本試験は特性を明らかにする目的でのみ、実施された。

結果および考察

表 4.2.1.1-15. 非拘束(過拡張)条件下の粒子試験の結果

品目 サイズ

(mm) ロット

検体

数 ≥10 µmの粒子の個数 ≥25 µmの粒子の個数

7 Frの本品ス

テント

(TS070169)

6 x 20 1783020 5 ***:~:**** **:~***:

1842817 5 :****~:**** ***:~***:

6 x 80 1913068 5 :****~:**** ***:~***:

1913069 5 :****~:***** ***:~:****

7 x 80 1926307 5 :****~:***** ***:~ ****

1926308 5 :****~:***** ***:~***:

10 x 20 P2137391 5 ***:~:**** **:~ ***

P2137392 5 :****~:**** **:~***:

10 x 80 P2118534 5 :****~:**** ***:~***:

P2118535 5 :****~:***** ***:~:****

6 Frの本品ス

テント

(TS080076)

5 x 20 P2208405 5 **** ~:**** ***:~***:

P2207401 5 :****~:**** ***:~***:

5 x 120 P2220761 5 :****~:**** **:~***:

P2223187 5 :****~:**** **:~***:

7 x 120 P2224308 5 :****~:**:*** ***:~***:

P2224309 5 :****~:**** ***:~***:

10 x 20 P2209790 5 :****~:**** ***:~***:

P2210360 5 :****~:**** **:~***:

10 x 120 P2211331 5 ***:~:**:*** **:~***:

P2218480 5 **** ~:**:*** ***:~***:

7 Frの Zilver

ステント

(TS070168)

6 x 20 P2140923 5 **:~***: *:~**:

6 x 80 P2140924 5 ***:~***: **:~**:

7 x 80 P2140925 5 ***:~***: *:~**:

10 x 20 P2140921 5 ***:~***: **:~*:*

10 x 80 P2140922 5 ***:~***: *:~**:

6 Frの Zilver

ステント

(TS080077)

5 x 20 E1993121 5 ***:~***: **:~ **

5 x 120 E2200686 5 ***:~ *** **:~**:

7 x 120 E2224521 5 ***:~***: **:~**:

10 x 20 E1993119 5 *** ~***: **:~**:

10 x 120 E2200685 5 ***:~***: **:~***:

結論

本品ステントにおいて、水を試験媒体として、非拘束の条件下で発生した、粒子状物質の量の特

性を明らかにした。

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96

7. 臨床試験ロットからの非拘束(過拡張)ステントの粒子試験 (TS090016, TS090022)

添付資料ホ-1-18、ホ-1-19

試験の目的

本試験の目的は、過剰に拡張された条件下で、本品ステントから発生する粒子状物質の量を特性

付けることである。ステントは臨床試験で使用された本品ロットから得られた。

評価

検体

表 4.2.1.1-16. 臨床試験ロットからの検体

品目 サイズ

(mm)

ステント

(n)

ロット

(n)

7 Frの本品ステント

(TS090016)

6 x 60 4 2

7 x 60 2 1

7 x 80 2 2

8 x 80 3 1

7 Frの本品ステント

(TS090022)

6 x 60 9 3

6 x 80 6 2

7 x 40 3 1

7 x 60 15 5

7 x 80 6 2

8 x 60 6 2

検体選択の妥当性

検体は、自己拡張型ナイチノール製である本品ステントである。ステントは、臨床試験で使用さ

れた 21の異なる本品のロットから得られた。

試験方法

ステントを展開する前に、大動脈腸骨動脈の動脈弓の生理学的モデルに各デリバリーシステムを

@回トラッキングした(即ち、モデル化された動脈弓にデリバリーシステムを合計@回通過させ

た)。次に、各ステントをガラス試験管中で 37ºC ± 1ºCの濾過した脱イオン水に浸漬したまま展

開した。ステントを試験管内の水中で 4分間静置後、注意して取り出した。検体をゆっくりと撹

拌した後、Hiac/Royco液中微粒子計測器を使って、粒径≥10 µmおよび≥25 µmの粒子に関して分析

した。

判定基準

本試験は、粒子状物質に関するロットのリリース判定基準を確立することを裏付けるため、特性

付けの目的で実施された。

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97

結果および考察

表 4.2.1.1-17に本粒子試験の結果を示す。

表 4.2.1.1-17. 臨床試験ロットからのステントの粒子試験の結果

品目 サイズ

(mm) ロット

検体

数 ≥10 µmの粒子の個数 ≥25 µmの粒子の個数

7 Frの本品ス

テント

(TS090016)

6 x 60 2054485 2 **** * ***** *** * ****

2054486 2 **** * ***** *** * ***

7 x 60 2045410 2 ***** * ***** ******

7 x 80 2121633 1 ***** ***

2152163 1 ***** ****

8 x 80 2053451 3 **** * ***** *** * ****

7 Frの本品ス

テント

(TS090022)

6 x 60

2031138 3 ***** * ***** **** * ****

2031139 3 ***** * ***** **** * ****

2071726 3 **** * ***** *** * ****

6 x 80 1965833 3 **** * ***** *** * ****

2031142 3 ***** * ***** **** * ****

7 x 40 2031145 3 ***** ***** ** * ****

7 x 60

2031147 3 ***** * ***** **** * ****

2031148 3 ***** ***** *** * ****

2038157 3 ***** * ***** **** * ****

2038158 3 **** * **** *** * ***

2054495 3 **** * ***** *** * ****

7 x 80 1926306 3 ***** * ***** **** * ****

1965834 3 ***** * ***** **** * ****

8 x 60 2038163 3 ***** * ***** **** * ****

2038164 3 **** * ***** *** * ****

結論

本品ステントにおいて、水を試験媒体として、過度に拘束されない展開(過拡張)の条件下で発

生した粒子状物質の量の特性付けを実施した。これらの結果は品目仕様を確立するために使用で

きる。

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98

8. 非重複ステントおよび重複ステントの模擬使用下の粒子試験 (TS070170, TS070171, TS070172,

TS070173, TS090047, TS090048, TS090049, TS090050)

添付資料ホ-1-20、ホ-1-21、ホ-1-22、ホ-1-23、ホ-1-24、ホ-1-25、ホ-1-26、ホ-1-27

試験の目的

本試験の目的は、連続流において水を試験媒体として、重複のない本品ステント、重複させた本

品ステント、およびコーティングのない Zilverステントを模擬使用でトラッキング及び展開した

後、粒径≥10 μmおよび≥25 μmの粒子の個数を判定することである。非コーティングステントの試

験は、コーティングした本品ステントの試験のベースラインとなる。

評価

表 4.2.1.1-18に用いた検体の一覧を示す。

Page 25: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

99

表 4.2.1.1-18. 模擬使用下の粒子試験の検体

構成状態 品目 サイズ

(mm)

ステント

(n)

ロット

(n)

非重複

7 Frの本品ステント

(TS070170)

6 x 20 10 2

6 x 80 10 2

7 x 80 10 2

10 x 20 10 2

10 x 80 10 2

6 Frの本品ステント

(TS090049)

5 x 20 10 2

5 x 120 10 2

7 x 120 10 2

10 x 20 10 2

10 x 120 10 2

7 Frの Zilverステント*

(TS070172)

6 x 20 5

非コーティン

グステント

は、1つまた

は複数のロッ

トから得られ

た。

6 x 80 5

7 x 80 5

10 x 20 5

10 x 80 5

6 Frの Zilverステント*

(TS090047)

5 x 20 5

5 x 120 5

7 x 120 5

10 x 20 5

10 x 120 5

重複

7 Frの本品ステント

(TS070171)

6 x 20 20個(10対) 2

6 x 80 20個(10対) 2

7 x 80 20個(10対) 2

10 x 20 20個(10対) 2

10 x 80 20個(10対) 2

6 Frの本品ステント

(TS090050)

5 x 20 20個(10対) 2

5 x 120 20個(10対) 2

7 x 120 20個(10対) 2

10 x 20 20個(10対) 2

10 x 120 20個(10対) 2

7 Frの Zilverステント*

(TS070173)

6 x 20 10個(5対)

非コーティン

グステント

は、1つまた

は複数のロッ

トから得られ

た。

6 x 80 10個(5対)

7 x 80 10個(5対)

10 x 20 10個(5対)

10 x 80 10個(5対)

6 Frの Zilverステント*

(TS090048)

5 x 20 10個(5対)

5 x 120 10個(5対)

7 x 120 10個(5対)

10 x 20 10個(5対)

10 x 120 10個(5対)

* 検体として「Zilverステント」を用いた。このステントは金属ベアメタルステントであるが、パ

クリタキセルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコーテ

ィングはパクリタキセルのみで構成され、非常に薄い(**************:μm***

*、**********:μm**)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を与

えないと判断した。

検体選択の妥当性

検体は自己拡張型ナイチノール製の本品ステントおよび「Zilverステント」である。 本品の設計

空間を十分代表させるため、6 Frおよび 7 Frの本品ステントのうち「四隅」のサイズ(即ち、最

Page 26: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

100

小径及び最大径ステントの最小長及び最大長)に加え、最大長をもつステントのうち、中間的な

半径のもの一つについて、試験を行った。 本品ステントは、それぞれ 2つのコーティングロット

から選択された。

試験方法

ステントを展開する前に、大動脈腸骨動脈の動脈弓の生理学的モデルに、各デリバリーシステム

を @回トラッキングした(モデル化された動脈弓に沿ってデリバリーシステムを合計 @通過さ

せた)。模擬使用の条件は、トラッキング中も含む試験中に絶えず連続流が流れていることと、

臨床で推奨されるサイジング(内径がステントの公称直径より@ mm小さい)にほぼ近い直径を

もつガラス製の大腿動脈モデル内でステントを展開することである。Dynatek コーティング耐久性

試験器を使って、粒径≥10 µmおよび≥25 µmの粒子の個数が測定された。具体的には、@回のトラ

ッキング中およびトラッキング後において 1分間隔で粒子数を測定し、これを無視できる量(1分

間の計測数が、≥10 µmの粒子で@*個以下、≥25 µmの粒子で@個以下と定義した)になるまで続

けた。次に、動脈モデル内でステントを展開して、デリバリーシステムを抜去した。展開中およ

び展開後、1 分間隔で粒子数を測定して記録し、同様に計測濃度が無視できる量になるまで続けた。

重複ステント(重複は約 5 mm)の試験では、上記と同じ処理を 2個目のステントに対しても実施

した。

判定基準

本試験は特性を明らかにする目的でのみ実施された。

結果および考察

表 4.2.1.1-19. 模擬使用下の粒子試験の結果

構成状態 品目 サイズ

(mm)

ロット番

>10 µmの粒子

の個数

>25 µmの粒

子の個数

非重複

7 Frの本品ス

テント

(TS070170)

6 x 20 1783020 5 ****:~:**** **:~***:

1842817 5 ****:~:**** **:~***:

6 x 80 1913068 5 **** ~:**** ***:~***:

1913069 5 ****:~:**** ***:~***:

7 x 80 1926307 5 ***** ~:***** ***:~***:

1926308 5 *****:~:***** ***:~***:

10 x 20 P2137391 5 **** ~:***: ***:~***:

P2137392 5 ****:~:**** **:~***:

10 x 80 P2118534 5 ****:~:***** ***:~***:

P2118535 5 ****:~:***** ***:~***:

6 Frの本品ス

テント

(TS090049)

5 x 20 P2330668 5 ****:~:**** **:~***:

P2330669 5 ****:~:**** **:~**:

5 x 120 P2308905 5 ****:~:**** **:~***:

P2308905 5 ****:~:**** **:~***:

7 x 120 P2307504 5 ****:~ ***** ***:~ ***

P2307505 5 ****:~:***** **:~:****

10 x 20 P2307543 5 ****:~*:*** **:~ ***

P2316301 5 ****:~:**** ***:~***:

10 x 120 P2319965 5 *****:~:***** ***:~ ***

P2331145 5 *****:~:***** ***:~:****

7 Frの Zilver

ステント

(TS070172)

6 x 20

1843340

1354164

1359679

P2140923

5 ***:~:*** **:~**:

6 x 80 P2140924 5 ***:~:**** **:~:***

7 x 80 P2140925 5 ***:~:**** **:~:***

10 x 20 1354162 5 **:~:*** *:~:**

Page 27: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

101

10 x 80 P2140922 5 ***:~***: *:~:**

6 Frの Zilver

ステント

(TS090047)

5 x 20 E2278765 5 ***:~***: :**~:**

5 x 120 E2260442 5 ***:~***: :**~***:

7 x 120 E2260444 5 ***:~***: :**~:**

10 x 20 E2260441 5 ***:~:**** :**~:**

10 x 120 E2260440 5 ***:~:**** :**~***:

重複

7 Frの本品ス

テント

(TS070171)

6 x 20

1783020,

1842817 5 :****~:**** ***:~***:

1842817 5 :****~:**** ***:~***:

6 x 80 1913068 5 *****:~*****: ***:~:****

1913069 5 *****:~*****: ***:~:****

7 x 80 1926307 5 *****:~*****: :****~:****

1926308 5 *****:~*****: :****~:****

10 x 20 P2137391 5 :****~*****: ***:~***:

P2137392 5 :****~*****: ***:~***:

10 x 80 P2118534 5 *****:~*****: ***:~:****

P2118535 5 *****:~ ***** ***:~:****

6 Frの本品ス

テント

(TS090050)

5 x 20 P2330668 5 :****~:**** :**~***:

P2330669 5 :****~:**** :**~***:

5 x 120 P2308905 5 *****:~*****: ***:~***:

P2308905 5 :****~ ***** *** ~***:

7 x 120 P2307504 5 *****:~*****: ***:~:****

P2307505 5 *****:~*****: ***:~:****

10 x 20 P2307543 5 :****~ ***** ***:~:****

P2316301 5 :****~*****: ***:~:****

10 x 120 P2319965 5 *****:~*****: ***:~:****

P2331145 5 *****:~*****: ***:~:****

7 Frの Zilver

ステント

(TS070173)

6 x 20

1843340

1354164

1359679

P2140923

5 ***:~:**** :**~:**

6 x 80

P2140924,

1359682,

1342315,

1333386

5 ***:~:**** :**~:***

7 x 80 P2140925 5 ***:~:**** :**~:***

10 x 20

1354162,

P2140921,

1254313

5 ***:~:**** :**~:***

10 x 80 P2140922 5 ***:~:**** *:~:**

6 Frの Zilver

ステント

(TS090048)

5 x 20 E2278765 5 ***:~:**** :**~***:

5 x 120 E2260442 5 ***:~:**** :**~***:

7 x 120 E2260444 5 **** ~:**** ***:~***:

10 x 20 E2260441 5 ***:~ **** :**~***:

10 x 120 E2260440 5 :****~:**** *** ~***

結論

重複のない本品ステント、重複のある本品ステント、および非コーティング Zilverステントにお

いて、水を試験液とした模擬使用の条件下で発生した、粒子状物質の量の特性が明らかにされた。

Page 28: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

102

9. 重複ステントおよび非重複ステントの拍動疲労下の粒子試験 (TS080053, TS080054, TS090052,

TS090053)

添付資料ホ-1-28、ホ-1-29、ホ-1-30、ホ-1-31

試験の目的

本試験の目的は、連続流において水を試験媒体として、重複のない本品ステント、重複のある本

品ステント、およびコーティングのない Zilverステントに伴う、拍動疲労中の粒径>10 µmおよび

>25 µmの粒子の個数を判定することであった。

評価

表 4.2.1.1-20. 検体の一覧

構成状態 品目 サイズ

(mm)

ステント

(n)

ロット

(n)

非重複

7 Frの本品ステント

(TS080053) 7 x 80 10 2

6 Frの本品ステント

(TS090052) 10 x 120 10 2

7 Frの Zilverステント*

(TS080053) 7 x 80 3

非コーティングス

テントは、1つま

たは複数のロット

から得られた。

6 Frの Zilverステント*

(TS090052) 10 x 120 3

重複

7 Frの本品ステント

(TS080054) 7 x 80

20個

(10対) 2

6 Frの本品ステント

(TS090053) 10 x 120

20個

(10対) 2

7 Frの Zilverステント*

(TS080054) 7 x 80

6個

(3対)

非コーティングス

テントは、1つま

たは複数のロット

から得られた。

6 Frの Zilverステント*

(TS090053) 10 x 120

6個

(3対)

* 検体として「Zilver ステント」を用いた。このステントは金属ベアメタルステントであるが、

パクリタキセルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコ

ーティングはパクリタキセルのみで構成され、非常に薄い(***********::: μm***

*、**********:μm**)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を与

えないと判断した。

検体選択の妥当性

検体は自己拡張型ナイチノール製の本品ステントおよび Zilver ステントである。本品ステントは、

それぞれ 2つのコーティングロットから選択された。以下の理由のため、7 x 80 mm 7 Frステント

および 10 x 120 mm 6 Fr ステントが本試験の最悪条件のサイズとして選択された。

7 Frおよび 6 Frのステントに対する有限要素解析によって、それぞれ 7 mmと 10 mmの直径

が、拍動的負荷における疲労安全率が最低であることが示された。

これらの直径においては、最大長のステント(80 mm、120 mm)に最大のパクリタキセル用

量が含まれる。

7 x 80 mmのサイズは、7 Fr 本品ステントの非拘束状態試験、および模擬使用試験両方の粒子

状物質評価において、全サイズの中で最も高い粒子物質レベルを示した。また、同じく 10 x

120 mmのサイズも、6 Fr 本品ステントの非拘束状態試験、および模擬使用試験両方の粒子状

物質評価において、全サイズの中で最も高い粒子物質レベルを示した。

試験方法

本試験は、ASTM F2477 の生理学的圧力試験手順に従って実施された。***********

*******************************@***********

Page 29: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

103

*****************************@*************

************@****@*************@********@******

******************@************************

*********************************************

***************************@*************@**@****

*******************************************

**********************************@*@*******

********@*****************

**************************************:*************

*********************:***************************:

********************************************:*******

***********:**:*********************************

********************************************

**********************************:**************

**********************************************:

**********************:

判定基準

本試験は、特性を明らかにする目的でのみ実施された。

結果および考察

表 4.2.1.1-21. 拍動疲労下の粒子試験の結果

構成状態 検体 ロット

番号

検体

≥ 10 µm

の粒子数

≥ 25 µm

の粒子数

非重複

7 Frの本品ステント 1926307 5 **:***:~**:***: :***~*:***:

1926308 5 *:***:~**:***: :***~*:***:

6 Frの本品ステント P2319965 5 **:***:~**:***: :***~*:***:

P2331145 5 **:***:~**:***: *:***:~*:***:

7 Frの Zilverステント

(コーティングなし) P2140925 3 :***~*:***: :**~:***

6 Frの Zilverステント

(コーティングなし) E2260440 3 *:***:~*:***: :***~:***

重複

7 Frの本品ステント 1926307 10 **:*** ~**:***: *:***:~*:***:

1926308 10 **:***:~**:***: *:***:~*:***:

6 Frの本品ステント P2319965 10 **:***~ **:*** *:***:~*:***:

P2331145 10 **:***:~**:***: *:***:~*:***:

7 Frの Zilverステント

(コーティングなし) P2140925 6 *:***:~*:***: :**~:***

6 Frの Zilverステント

(コーティングなし) E2260440 6 *:***:~:**:*** :***~ *:***

結論

重複のない本品ステント、重複のある本品ステント、および非コーティング Zilverステントにお

いて、水を試験液とした拍動疲労の条件下で発生した、粒子状物質の量の特性が明らかにされた。

Page 30: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

104

10. 重複のないステントおよび重複をもつステントの軸方向疲労下の粒子試験 (TS090035,

TS090036, TS090045, TS090046)

添付資料ホ-1-32、ホ-1-33、ホ-1-34、ホ-1-35

試験の目的

本試験の目的は、連続流において水を試験媒体として、重複のない本品ステント、重複のある本

品ステント、およびコーティングのない Zilverステントに伴う、軸方向疲労中における粒径> 10

µmおよび> 25 µmの粒子の個数を判定することである。

評価

検体

表 4.2.1.1-22. 軸方向疲労下の粒子試験用の検体

構成状態 品目 サイズ

(mm)

ステント

(n) ロット(n)

非重複

7 Frの本品ステント

(TS090035) 6 x 80 10 2

6 Frの本品ステント

(TS090045) 5 x 120 10 2

7 Frの Zilverステント*

(TS090035) 6 x 80 3

非コーティングス

テントは、1つま

たは複数のロット

から得られた。

6 Frの Zilverステント*

(TS090045) 5 x 120 3

重複

7 Frの本品ステント

(TS090036) 6 x 80

20個(10

対) 2

6 Frの本品ステント

(TS090046) 5 x 120

20個(10

対) 2

7 Frの Zilverステント*

(TS090036) 6 x 80

6個(3

対)

非コーティングス

テントは、1つま

たは複数のロット

から得られた。

6 Frの Zilverステント*

(TS090046) 5 x 120

6個(3

対)

* 検体として「Zilverステント」を用いた。このステントは金属ベアメタルステントであるが、パ

クリタキセルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコーテ

ィングはパクリタキセルのみで構成され、非常に薄い(**************:μm***

*、**********:μm**)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を与

えないと判断した。

検体選択の妥当性

検体は自己拡張型ナイチノール製の本品ステントおよび Zilverステントである。 本品ステントは、

それぞれ 2つのコーティングロットから選択された。以下の理由のため、6 x 80 mmおよび 5 x 120

mmのサイズのステントが本試験の最悪条件のサイズとして選択された。

7 Frおよび 6 Frの本品ステントに対する有限要素解析によって、それぞれ 6 mmと 5 mmの直

径が、軸方向の負荷における疲労安全率が最低であることが示された。

これらの直径では最大長のステント(80 mm、120 mm)に最大のパクリタキセル用量が含ま

れる。

試験方法

各デバイスは取扱説明書にしたがって準備され、********************@

***************************************@***

*********************@***@*@*************@****

****@***************************************

*****************************************@***

************************@****@***************

Page 31: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

105

*********@*@*@******************************

*******************************************

********************@****************

******@**********************:********:*************

*********************************************

@**********************************************

******************@***************************

********:*@*************************************

*********************************************

*@*****@********************:*******************

***********************@*@********************::

*************

判定基準

本試験は特性を明らかにする目的でのみ実施された。

結果および考察

表 4.2.1.1-23. 軸方向疲労下の粒子試験の結果

構成状

態 検体

ロット

番号

≥10 µm

の粒子の個数

≥25 µm

の粒子の個数

非重複

7 Frの本品ステント P2276441 5 *:***:~*:***: :***~:***

P2276442 5 *:***:~*:***: :***~:***

6 Frの本品ステント P2308905 5 *:***:~*:***: :**~:***

P2305981 5 *:***:~*:***: :**~:***

7 Frの非コーティング

Zilverステント P2276466 3 :**~:*** *:~:**

6 Frの非コーティング

Zilverステント E2260442 3 :***~:*** :**~:**

重複

7 Frの本品ステント P2276441 10 *:***:~ *:*** :***~ ***

P2276442 10 *:***:~*:***: :***~:***

6 Frの本品ステント P2308905 10 :**:***~:**:*** ***~:***

P2305981 10 :**:***~ **:*** :***~*:***:

7 Frの非コーティング

Zilverステント P2276466 6 :***~:*** :**~:**

6 Frの非コーティング

Zilverステント E2260442 6 :***~:*** :**~:**

結論

重複のない本品ステント、重複のある本品ステント、および非コーティング Zilverステントにお

いて、水を試験液とした軸方向疲労の条件下で発生した、粒子状物質の量の特性が明らかにされ

た。

Page 32: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

106

11. 粒子状物質の同定 :*********@*@****:*:****:****:*:*::****:

添付資料ホ-1-36、ホ-1-37

試験の目的

本試験の目的は、非拘束状態(過拡張)で、水中で展開した時に、本品ステントから放出される

粒径≥10 μmの粒子状物質の主成分を同定することである。具体的には、粒子状物質におけるパク

リタキセルの質量パーセントを計測した。

評価

検体

表 4.2.1.1-24. 粒子状物質同定用の検体

品目 サイズ(mm) ステント(n) ロット(n)

7 Frの本品ステント 6 x 80 20 2

10 x 80 20 2

検体選択の妥当性

検体は、自己拡張型ナイチノール製の本品ステントである。検体は 2つのコーティングロットか

ら選択された。6 x 80 mmおよび 10 x 80 mmのステントサイズは、本品製品群を代表する。結果

はパーセントとして示されるため、試験にはどのステントサイズも用いることが可能である。

試験方法

***************:*************************:*****

*******************************************

*******************************************

判定基準

本試験は、特性を明らかにする目的でのみ実施された。

結果および考察

表 4.2.1.1-25. 粒子状物質同定の試験結果

ロット

番号

ステント

サイズ

n

(被験ス

テント

個数)

最初のフィル

タの質量 (g)

(平均値 ± 標準

偏差)

乾燥後のフィ

ルタの質量

(g)

(平均値 ± 標

準偏差)

粒子状

物質の

全質量

(µg)

フィルタか

ら溶出した

パクリタキ

セルの質量

(µg)

パクリタキセ

ルとして同定

された粒子状

物質の質量パ

ーセント

ブランク1

該当なし 該当な

*:******

±:*:******

*:******

±:*:****** * @**** ****

ブランク2

該当なし 該当な

*:******

±:*:******

*:******

± *:****** * @**** ****

1913068

(4365) 6 x 80 10

*:******

±:*:******

*:******

±:*:****** ** ** *:*

1913069

(4366) 6 x 80 10

*:******

± *:******

*:******

±:*:****** *** *** *:*

P2118534

(4367) 10 x 80 10

*:******

±:*:******

*:******

±:*:****** ** ** *:*

P2118535

(4368) 10 x 80 10

*:******

± *:******

*:******

±:*:****** ** ** *:*

平均値 ± 標準偏差 **% ± *%

本品ステントから放出された粒子状物質の大部分(約**%)はパクリタキセルであると同定され

た。 パクリタキセル以外の粒子状物質を評価するため、米国食品医薬局(FDA)の監査と登録を

Page 33: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

107

受けた受託試験所(*******:*****::***:*************)で更なる分析が実施された。

広範囲のステントサイズを含めるように、4つのコーティングロットから 10個の本品ステントを

選択し、製造者の取扱説明書にしたがって準備し、エタノール内で展開した。そのエタノールを

0.4 μmフィルタを通して濾過し、パクリタキセル以外の粒子状物質を収集した。顕微鏡下でフィ

ルタを検査し、赤外線分析、エネルギー分散型 X線分光分析、偏光顕微鏡を使ってパクリタキセ

ル以外の粒子状物質を同定した。この分析により、パクリタキセル以外の粒子の大部分が***

*と******であることが示された。これは、デリバリーシステムの原材料およびステント

装填手順で使用される原材料と一致する。パクリタキセル以外の粒子の残りの少数部分(***

***************)は、環境に起因した物質と一致している。

結論

本試験の結果によって、水中でトラッキングおよび展開した後に本品ステントから放出された粒

子状物質の主成分は、パクリタキセルであることが示された。

Page 34: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

108

12. 残留溶媒試験 (050510BM)

添付資料ホ-1-38

試験の目的

本試験の目的は、本品ステントから検出される残留エタノール量が現在の ICHの工業製品ガイド

ライン限度を満たしているか、または超えているかを判定することである。

評価

検体

表 4.2.1.1-26. 残留溶媒用の検体

品目 群 サイズ

(mm) 時点 ステントの個数

7 Frの本品ステント 1 10 x 80 コーティング直後 3

2 10 x 80 滅菌後の最終製品 5

検体選択の妥当性

検体は、自己拡張型ナイチノール製の本品ステントである。7 Frのステントのパクリタキセル全

用量は 6 Frのステントの同サイズよりわずかに多いため、7 Frの本品ステントの最大サイズであ

る 10 x 80mmのステントサイズが選択された。本品ステントのパクリタキセルコーティングを施

すために使用される唯一の原材料は、パクリタキセルおよび米国薬局方(USP)の 200-proofエタ

ノール(100%)である。

試験方法

*******************************************

***@*******************@*********@*********

******@********************************@@@@*

***************************************

判定基準

最終製品の検体では、エタノールが**:* mgを超えてはならない。

判定基準の妥当性

残留エタノール(クラス III溶媒)の患者への最大曝露量は 1日当たり 50 mgであると ICH Q3Cガ

イドラインが指定している。一人の患者が*:個の本品ステントを植込まれた場合の、残留エタノ

ールが 1日に放出される場合に基づいて、最終製品における判定基準は**:* mg (*:個のステント

計で 50 mg)以下であると設定された。

結果および考察

すべての本品検体(第 1グループおよび第 2グループ)での残留エタノールは、判定基準で指定

された残留エタノールの最大許容値**:* mgよりはるかに低かった(表 4.2.1.1-27および表 4.2.1.1-

28)。すべてのステントにおける残留エタノールの最大量は、コーティング直後の第 1グループ

で測定した*:** mgであった。

Page 35: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

109

表 4.2.1.1-27. コーティング直後の本品ステント上の残留エタノール

第 1グループ(コーティング直後)

検体番号

存在するエタノ

ール量*

(ng/mL)

DMSO希釈溶

液量(mL)

存在するエタノ

ール量(mg) 判定

1 (DMSOブランク) @*: ** **** 該当なし

3 *** ** *:*** 合格

7 *** ** *:*** 合格

10 *** ** *:*** 合格

*50 ng/mLより低い場合は定量不可

表 4.2.1.1-28. 滅菌後の最終製品の本品ステントの残留エタノール

第 2グループ(滅菌後の最終製品)

検体番号

存在するエタノ

ール量*

(ng/mL)

DMSO希釈溶

液量(mL)

存在するエタノ

ール量(mg) 判定

2 (DMSOブランク) @*: ** **** 該当なし

4 @*: ** @:*:**** 合格

5 *** ** *:**** 合格

6 @*: ** @:*:**** 合格

8 @*: ** @:*:**** 合格

9 @*: ** @:*:**** 合格

*50 ng/mLより低い場合は定量不可

結論

すべての検体の残留エタノールは、残留エタノールの許容限度である**:* mgよりはるかに低く

(最終製品においてはこの限度より*@*@*以上低かった)、したがって ICH Q3Cガイドライン

に基づく判定基準を満たした。

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110

4.2.1.2. 電気的安全性および電磁両立性

本申請品は電気部品を内蔵する機器ではない。従って、電気的安全性及び電磁両立性にかかわる

検証試験を必要しないと判断する。

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111

4.2.1.3 生物学的安全性

総括

本申請品に対して実施した生物学的安全性試験の結果を表 4.2.1.3-1に要約する。「血液」に

「長期的接触(30日を超えるもの)」する、ステントなどの体内埋め込み機器の構成部品は、

「医療用具の製造承認申請に必要な生物学的安全性試験の基本的考え方について(平成 15年 2

月 13日付医薬審発第 0213001号)」、および ISO10993-1によって分類、規制されており、「細

胞毒性」、「感作性」、「刺激性/皮内反応性」、「急性全身毒性」、「亜急性毒性」、「遺

伝毒性」、「発熱性」、「埋植試験」、「血液適合性(溶血性、血栓形成性、凝固、補体系活

性化試験を含む)」の評価が必要であり、さらに、「慢性毒性」および「発がん性」を補足的

な評価としている。デリバリーシステムは「循環血液」に「一時的接触(24時間以内)」する

「体内と体外を連結する機器」に分類され、「細胞毒性」、「感作性」、「刺激性/皮内反応

性」、「急性全身毒性」、「発熱性」、「血液適合性」の評価が必要である。

生物学的安全性試験に用いた検体は、7 Frのデリバリーシステムとステント、5 Frのデリバリー

システムのみ(6 Frデリバリーシステムにおける原材料と同一)、および 7 Frのステントのみ

の 3種類である。ステントのみを検体とした試験において急性全身毒性試験および発熱性試験

を実施しなかったが、これらの試験はステントを含んだデリバリーシステムを用いて実施して

いる。また、ステントのみに対して実施した亜急性および亜慢性毒性試験において、毒性およ

び発熱が観察されず、動物試験においても被験動物を剖検した組織から全身毒性が観察されな

かった。よって、ステントのみを検体として用いた急性全身毒性試験および発熱性試験を省略

しても、生物学的安全性を担保できると判断した。

パクリタキセルの in vivoにおける生殖毒性については、ウサギとラットにおいてすでに評価さ

れている。ウサギでは催奇形性は認められなかったが、ラットではパクリタキセル 1 mg/kg/日で

生殖障害が認められた1。この 1日投与量は、本品ステント 1個からの総用量 1,140 µg(70 kgの

成人で約 0.016 mg/kg)の最大値の約 60倍である。 したがって、本品ステントを留置した患者

に催奇形性作用は生じないものと考えられる。また、パクリタキセルの胚/胎児毒性および周

産期毒性の in vivo評価をウサギを対象に実施したところ、器官形成期にパクリタキセル

3 mg/kg/日を投与すると、母体毒性および胚/胎児毒性を引き起こすことがわかった。この用量

はステント 1個からの総用量 1,140 g(70 kgの成人で約 0.016 mg/kg)の最大値の 180倍を超え

る。したがって、本品ステントを留置した患者に胚/胎児毒性および周産期毒性は生じないも

のと考えられる。

化学療法薬であるタキソールの in vivo発がん性については、マウスで評価されている。医薬品

タキソールの有効成分はパクリタキセルであり、エチルアルコールおよび有機溶媒クレモ

フォーEL(ポリオキシエチル化ヒマシ油、BASF Aktiengesellschaft社)に溶解した静注製剤とし

て供給される。発がん作用は 1 mg/kgでは認められなかったが、50 mg/kgでは認められている2。この 50 mg/kgという用量は、本品ステント 1個からの最大の総用量 1,140 µg(70 kgの体重の

成人で約 0.016 mg/kg)の約 3,000倍である。したがって、本品ステントを留置した患者に発が

ん作用は生じないものと考えられる。

以上の理由により、生殖毒性及び発がん性については、本申請品においては確認する必要がな

いと判断した。生物学的安全性試験は ISO 10993または USPに基づいて実施され、本申請品は

記載された判定基準に従い、すべての試験に合格した。

さらに本項目の最後に、対面助言において指摘された本品による組織への局所的毒性、全身毒

性、および動脈瘤形成の可能性についての考察を行った。

1 Physician’s Desk Reference, 52

nd edition, Medical Economics Company Inc., 1998, pp 762-766.

2 Tinwell H and Ashby J. Genetic toxicity and potential carcinogenicity of taxol. Carcinogenesis

1994;15(8):1499-1501.

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112

表 4.2.1.3-1 生物学的安全性試験の要約

試験名称 方法 判定基準 資料番号 結果 試験施設

1. 細胞毒性 ISO 溶出法(1X 最小

必須培地抽出液)に

よる試験

ISO 10993-5(1999)

48 時間後に検体を調べた

時に、ISO 10 93-5 に規

定されるように、50%を

超える細胞に丸みおよび

細胞質内顆粒の消失がな

く、かつ 50%を超える溶

解がないこと。

ホ-1-39

ホ-1-40

ホ-1-41

合格 :*@@@

2. 感作性 モルモットにおける

感作性試験(マキシ

マイゼーション法)

ISO 10993-10(2002)

ISO 10993-10 に規定され

るように、検体抽出液が

モルモットにおいて遅延

型皮膚接触感作性を引き

起こす証拠が認められて

はならない。

ホ-1-42

ホ-1-43

ホ-1-44

合格 :*@@@

3. 皮内反応 ウサギにおける試験

(抽出液)

ISO 10993-10(2002)

ISO 10993-10 に規定され

るように、検体抽出液か

ら有意な刺激性または毒

が認められてはならな

い。

ホ-1-45

ホ-1-46

ホ-1-47

合格 :*@@@

4. 全身毒性 マウスにおける試験

(抽出液)

ISO 10993-11(1993)

ISO 10993-11 に規定され

るように、検体抽出液を

注入したマウスは、対照

マウスより著しく大きい

反応があってはならな

い。

ホ-1-48

ホ-1-49

合格 :*@@@

5. 亜急性およ

び亜慢性毒性

ラット亜慢性静脈内

毒性試験

ISO 10993-11(1993)

ISO 10993-11 に規定され

るように、1 日 1 回の臨

床観察における体重、剖

検所見、臓器の重量、臓

器の重量と体重の比率が

許容範囲内でなければな

らず、また、検体抽出液

投与群と対照群の間に大

きい差があってはならな

い。

ホ-1-50 合格 :*@@@

6. 遺伝毒性 細菌復帰変異試験

(DMSOおよび生理

食塩水抽出液)

ISO 10993-3(2003)

ISO 10993-3 の規定に従

い、検体抽出液は、復帰

変異コロニー数の平均値

が陰性対照値の 2 倍、あ

るいは 3 倍以上増加して

はならない。

ホ-1-51

ホ-1-52

ホ-1-53

合格 :*@@@

7. 遺伝毒性 哺乳類細胞における

in vitro 染色体異常試

験(抽出液)

ISO 10993-3(2003)*

ISO 10993-3 の規定に従

い、検体抽出液に曝露さ

せた後の異常細胞の出現

頻度は、陰性対照と差が

あってはならない。

ホ-1-54 合格 :*@@@

Page 39: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

113

試験名称 方法 判定基準 資料番号 結果 試験施設

8. 遺伝毒性 in vivo マウス末梢血

小核試験

試験検体群の MN-RETs

の比率 (%) は、対照群の

MN-RETs の比率より有

意に高くてはならない。

ホ-1-55

合格 :*@@@

9. 埋植 2 週間および 12 週間

の ISO埋植試験

ISO 10993-6(1994)

ISO 10993-6 に規定され

るように、検体は、肉眼

で著しい反応が観察され

ず、顕微鏡検査におい

て、陰性対照と同様に非

刺激性と分類されなけれ

ばならない。

ホ-1-56

ホ-1-57

合格 :*@@@

10. In Vitro溶

血性

試験(改訂版 ASTM

-抽出法)

ISO 10993-4(2002)

ISO 10993-4 に規定され

るように、2 個の検体の

平均溶血指数が 2%以下

でなければならない。

ホ-1-58

ホ-1-59

ホ-1-60

合格 :*@@@

11. 血栓形成

ブタ180匹の末梢動脈

にステントを留置

し、in vivo動物試験を

実施した。埋め込み

後6ヶ月までの種々の

時点で、血栓形 性の

有無について血管を

評価した。

血管造影による評価およ

び組織学的評価で、血栓

形成が認められてはなら

ない。

ホ-2-1

ホ-2-2

ホ-2-3

ホ-2-4

ホ-2-5

ホ-2-6

ホ-2-7

ホ-2-8

ホ-2-9

ホ-2-10

ホ-2-11

合格 @@*

:**::*:*:

@:**:::

@:**:

*:**:*:*:***

*:::

12. 凝固 血漿カルシウム再加

凝固時間試験 ISO

10993-4(2002)

ISO 10993-4 に規定され

るように、検体のカルシ

ウム再加凝固時間の平均

値は、陰性対照および試

薬対照と異なるもので

あってはならない。

ホ-1-61 合格 :*@@@

13. 補体系活

性化

検体を正常ヒト血清

(NHS)で培養した

後に、酵素免疫測定

キットで C3a 濃度を

測定した。検体の C3a

濃度を、t 検定を用い

て、試薬対照および

陰性対照と統計的に

比較した。

検体抽出液の C3a 濃度

は、試薬対照および陰性

対照と有意に異なるもの

であってはならない。

ホ-1-62 合格 :*@@@

14. 発熱性 USP による材料由来

の発熱性試験

ISO 10993-11(1993)

米国薬局方(USP)に規定

されるように、どの個体

もベースライン温度から

0.4 ºC を超える体温上昇

を示してはならない。

ホ-1-63

ホ-1-64

合格 :*@@@

Page 40: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

114

結論:

機器の分類(ステントは長期間血液に接触する体内植込み機器、デリバリーシステムは一時的

に血液に接触する(24時間以内)体内と体外を連結する機器)を考慮の上、適切な生物学的安

全性試験を選択した。本申請品は設定した判定基準に従ってすべての試験に合格した。した

がって、生物学的安全性の要求事項を満たしていると判断する。

対面助言により指摘された本品ステントによる組織への局所的毒性、全身毒性、および動脈瘤

形成の可能性については、動物試験結果(添付資料概要 4.2.2)や他の資料の解析により、その

可能性はないことが示された。

Page 41: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

115

1. 細胞毒性 (03T 03679 00 V0014-130, 03T 11349-00 V0014-130)

添付資料ホ-1-39、ホ-1-40

試験の目的

本試験の目的は、試験検体の細胞毒性の可能性を判定することである。

評価

検体

表 4.2.1.3-2. 細胞毒性試験の検体

試験検体 抽出溶媒 USP比率(検体と

抽出溶媒の比率) 対照

本品ステントお

よび 7Frデリバ

リーシステム

血清 5%およ

び抗生物質

2%を添加し

た 1X最小必

須培地

(MEM)

60cm2 : 20mL

陰性対照 - 高密度ポリエ

チレン

陽性対照 - スズ安定剤入

りポリ塩化ビニル

試薬対照 - 1X MEM 5Frデリバリー

システム* 4g : 20mL

* 検体には 5Frを用いたが、5Frと 6Frのデリバリーシステムの原材料は同一である。

検体選択の妥当性

検体は本申請品の最終製品を代表しており、また、ISO 10993-5 に規定の方法に基づくものである。

試験方法

検体抽出液を、5% CO2で培養した 3つの別個の融合性単層細胞(マウスの L-929線維芽細胞)に

加えた。試薬対照、陰性対照、陽性対照用それぞれについて、3つの別個の単層を準備した。単層

はすべて、5% CO2 の状態で、37˚Cで 48時間培養した。 48時間後、顕微鏡で検体、試薬、陽性、

陰性対照のウェルの単層の細胞形態の変化を観察した。

判定基準

ISO 10993-5に規定されるように、50%を超える細胞に丸みおよび細胞質内顆粒の消失がなく、か

つ 50%を超える溶解がない(グレード 2あるいは軽度の反応性)場合、検体は試験の要求事項を

満たす。

結果および考察

本試験の条件下で、1X最小必須培地(MEM)の検体抽出液からは、細胞溶解または毒性の徴候

は認められなかった。 さらに、マウスの L-929 線維芽細胞の融合層に変化はなく、検体抽出液の

存在下で反応性を示さなかった。

表 4.2.1.3-3. 細胞毒性結果

項目

(n=3)

融合性単層

の有無 丸み率

細胞質内顆粒のな

い割合 溶解の割合

反応グ

レード

検体抽出液 有 0 0 0 なし

陰性対照 有 0 0 0 なし

試薬対照 有 0 0 0 なし

陽性対照 無 > 70 > 70 > 70 重度

結論

1X最小必須培地の検体抽出液はグレード 2未満(軽度の反応性)のグレードであったので、試験の

要求事項を満たした。予測した通り、試薬対照および陰性対照は非反応性であり、陽性対照は重

度の反応を示した。

Page 42: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

116

補足

本品の細胞毒性は、「ISO10993-5: Tests for in vitro cytotoxicity」に基づいて評価されている。試験

検体、陰性対照及び陽性対照は、37˚Cの培地(血清 5%を添加した最小必須培地)で 24時間抽出

される。検体と抽出溶媒の比率は、「ISO 10993-12: Sample preparation and reference materials」に

指定された比率に基づく。検体抽出液を融合性単層細胞(マウスの L-929線維芽細胞)に加え、

5% CO2 の状態で、37˚C で 48 時間培養した。48時間後、細胞形態の変化及び溶解の有無を観察し、

細胞毒性を定性的に評価した(表 1)。生理学的グレードが 2(軽度)を超えた場合、試験検体は

細胞毒性を有すると見なされる。

表 4.2.1.3-4. 抽出液による細胞毒性の定性的評価

グレード 反応 培地の状態

0 反応なし 細胞質内顆粒が離散しており、細胞の溶解がなく、細胞の増殖阻害がな

い。

1 わずか

丸みを帯び、接着性が低下して細胞質内顆粒がないか、形態に変化を示

した細胞が20%以下。溶解した細胞が散在し、細胞の増殖阻害が若干観

察される。

2 軽度 丸みを帯び、細胞質内顆粒が消失した細胞が50%以下。溶解は進み、50%

以内の細胞で増殖阻害が観察される。

3 中程度 丸みを帯びたか、あるいは溶解した細胞が70%以下。細胞質は完全に破

壊されていないが、増殖阻害は50%以上観察される。

4 著しい 細胞質がほぼ完全に破壊されている。

当該試験(試験番号:03T 03679 00)で使われた検体は、本品ステントおよびデリバリーシステム

の遠位端 41cmである。検体は溶解および毒性を示さず(反応グレード 0)、判定基準を満たした

が、これはステントとデリバリーシステムを一つの検体として組み合わせたことにより、試験系

に対するパクリタキセルの寄与が低下した可能性がある。@@*******、細胞毒性試験を再

度行い、本品ステントのみを検体として抽出した(試験番号:10T 26791 03)。その結果、検体は

若干の溶解性又は毒性を示したが(反応グレード 1)、判定基準を満たした。本品ステント(臨

床用量として 3 µg/mm2のパクリタキセルを含む)のこの反応は、文献から報告された、in vitro 細

胞培地における用量依存的な毒性と合致する(Axel D, Kunert W, Goggelmann C, et al. Paclitaxel

inhibits arterial smooth muscle cell proliferation and migration in citro and in vivo using local drug delivery.

Circulation. 1997;96:636-645.)。

さらに、臨床用量の 4倍までの用量(12 µg/mm²)で 6ヶ月まで実施した、包括的な動物試験

(143匹の動物に合計 332本の本品ステントを留置)では、どの時点及びどの用量においても、局

所的な損傷は観察されなかった。1ヶ月の時点で炎症および壊死が極微ながら認められたが、3ヶ

月及び 6ヶ月の時点では認められなかった。さらに、3ヶ月及び 6ヶ月の時点で治癒および内皮化

が完了しており、これは臨床用量の 4倍の場合においても同様であった。

in vitroによる細胞毒性の当該評価は、本品の材料が in vivoにおいて毒性を示す可能性を評価する

のが主たる目的である。当該試験においては、本品ステントから若干の細胞毒性が観察されたが、

動物試験および臨床試験における本品ステントの優良な結果から、これは臨床的な懸念を提起す

るものではないと考えられる。

Page 43: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

117

細胞毒性 (10T_26791_03)

添付資料 ホ-1-41

試験の目的

本試験の目的は、試験検体の細胞毒性の可能性を判定することである。

評価

検体

表 4.2.1.3-5. 細胞毒性試験の検体

試験検体 抽出溶媒 USP比率(検体と抽出溶媒の比率)

対照

本品ステント

血清 5%および抗生物質 2%を添加した 1X 最少必須培地(MEM)

120cm2 : 20mL

陰性対照 - 高密度ポリエチレン

陽性対照– 10,10’-オキシビスフェノキサルシンを含有した可塑化ビニル

試薬対照– 1X MEM

検体選択の妥当性

検体には 7 Fr の本品ステントを用いたが、このサイズは 6 Fr と原材料(ナイチノールおよび金)、

コーティング工程、及びパクリタキセルの用量密度(3µg/mm2)が同じである。さらに、表面積に

対して一定した抽出溶媒量を設定しているため、6 Fr 及び 7 Fr の本品ステントからは同等の溶出

量が得られると予測される。したがって 本試験検体は、7 Fr 及び 6 Fr 両方の最終製品を代表する

と判断した。

試験方法

検体抽出液を、5% CO2で培養した 3つの別個の融合性単層細胞(マウスの L-929線維芽細胞)に

加えた。試薬対照、陰性対照、陽性対照用それぞれについて、3つの別個の単層を準備した。単層

はすべて、5% CO2 の状態で、37˚Cで 48時間培養した。 48時間後、顕微鏡で検体、試薬、陽性、

陰性対照のウェルの単層の細胞形態の変化を観察し、定性的な評価で細胞毒性のグレード付けを

した(表 4.2.1.3-6)。

表 4.2.1.3-6. 抽出液の細胞毒性の定性的評価

グレード 反応 培地の状態

0 反応なし 細胞質内顆粒が離散しており、細胞の溶解がなく、細胞の増殖阻害がな

い。

1 わずか

丸みを帯び、接着性が低下して細胞質内顆粒がないか、形態に変化を示

した細胞が20%以下。溶解した細胞が散在し、細胞の増殖阻害が若干観

察される。

2 軽度 丸みを帯び、細胞質内顆粒が消失した細胞が50%以下。細胞溶解は広域

に進んでおらず、増殖阻害が観察される細胞は50%以内。

3 中程度 丸みを帯びたか、あるいは溶解した細胞が70%以下。細胞層は完全には

破壊されていないが、増殖阻害は50%以上観察される。

4 重度 細胞層が完全にあるいはほぼ完全に破壊されている。

判定基準

ISO 10993-5に規定されるように、丸みを帯び、細胞質内顆粒が消失した細胞が 50%以下であり、

かつ 50%を超える溶解がない(グレード 2:軽度の反応)場合、検体は試験の要求事項を満たす。

結果及び考察

本試験の条件下で、1X最小必須培地(MEM)の検体抽出液からは、わずかな細胞溶解性または

毒性の徴候(反応グレード 1:わずかな反応)が認められたが、試験の判定基準を満たした。以

Page 44: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

118

上の Zilver PTXステントに観察されたわずかな細胞毒性反応(臨床用量 3 µg/mm2のパクリタキセ

ルを含むため)は、文献から報告された in vitro 細胞培地における用量依存的な毒性と一致する3。

表 4.2.1.3-7. 細胞毒性結果

項目

(n=3)

融合性単層

の有無 丸み率

細胞質内顆粒の

ない割合 溶解の割合 反応グレード

検体抽出液 有 10 10 10 わずか

陰性対照 有 0 0 0 無し

試薬対照 有 0 0 0 無し

陽性対照 無 > 70 > 70 > 70 重度

結論

1X 最小必須培地の検体抽出液はグレード 2(軽度の反応)未満であり、試験の要求事項を満たした。

予測した通り、試薬対照および陰性対照は非反応性であり、陽性対照は重度の反応を示した。こ

のような in vitro細胞毒性試験においては、原材料が in vivoにおいて毒性を示す可能性を評価する

のが主たる目的である。したがって、本試験において Zilver PTXステントに若干の細胞毒性が観

察されたが、動物試験および臨床試験において本品ステントを留置した際の結果から、これは臨

床的な懸念を提起するものではないと考えた。

3 Axel D, Kunert W, Goggelmann C, et al. Paclitaxel inhibits arterial smooth muscle cell proliferation and

migration in vitro and in vivo using local drug delivery. Circulation. 1997;96:636-645)

Page 45: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

119

2. 感作性 (03T 03679 00 TI261-300, 03T 11349 00 TI261-300)

添付資料ホ-1-42、ホ-1-43

試験の目的

本試験の目的は、検体が遅延型皮膚接触感作性を起こす可能性を評価することである。

評価

検体

表 4.2.1.3-8. 感作性試験検体

試験検体 抽出溶媒

USP比率

(検体と抽出溶

媒の比率)

対照

本品ステントお

よび 7Frデリバ

リーシステム

USPの 0.9%食塩水

(SC)および NF

の綿実油(CSO)

60cm2 : 20mL

試薬対照 - USPの 0.9%食

塩水(SC)および NFの

綿実油(CSO)

5Frデリバリーシ

ステム*

USPの 0.9%食塩水

(SC)および NF

のゴマ油(SO)

4g : 20mL

試薬対照 - USPの 0.9%食

塩水(SC)および NFの

ゴマ油(SO)

* 検体には 5Frを用いたが、5Frと 6Frのデリバリーシステムの原材料は同一である。

検体選択の妥当性

検体は本申請品の最終製品を代表しており、また、ISO 10993-10に規定の方法に基づくものであ

る。

試験方法

検体を、USPの 0.9%食塩水(SC)と、NFの綿実油(CSO)または NFのゴマ油(SO)の 2つの

別個の溶液で抽出した。 感作を誘導するために、各抽出液を 10匹の試験用モルモットに皮内投

与しパッチで閉塞した。 試薬対照も同様に、それぞれ 5匹の対照モルモットに投与しパッチで閉

塞した。 回復期の後、試験用モルモットに該当する検体抽出物の惹起用パッチを、対照モルモッ

トに試薬対照の惹起用パッチを付けた。 パッチを取り外して約 24時間、48時間、72時間毎に投

与箇所を点数化して評価した。

判定基準

ISO 10993-10に規定されるように、試験部位において、試薬対照を投与した場合より強い皮膚炎

症反応が出てはならない。

結果および考察

本試験の条件下では、食塩水、綿実油、ゴマ油の検体抽出液は、モルモットにおいて遅延型皮膚

接触感作性を起こす証拠は認められなかった。検体抽出液および試薬対照で処理したモルモット

のどちらも、体重および臨床的観察において、正常に見えた。

表 4.2.1.3-9. 感作性試験結果

項目 体重および臨床観察 紅斑 浮腫

検体-食塩水(SC)抽出液(n=20) 正常 なし* なし

検体-綿実油(CSO)抽出液(n=10) 正常 なし なし

検体-ゴマ油(SO)抽出液(n=10) 正常 なし なし

試薬対照(n=20) 正常 なし なし

* モルモット 1匹が 24時間後と 48時間後に軽度の紅斑を示したが、72時間後には消失し、感作

には関連しないと考えられる非融合性の紅斑となった。

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120

結論

食塩水、綿実油、ゴマ油の検体抽出液は、ISO 10993-10の規定に基づく試験の要求事項を満たし

た。

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121

感作性 (10T_26791_06, 10T_26791_07)

添付資料 ホ-1-44

試験の目的

本試験の目的は、検体が遅延型皮膚接触感作性を起こす可能性を評価することである。

評価

検体

表 4.2.1.3-10. 感作性試験検体

試験検体 抽出溶媒 USP比率

(検体と抽出溶媒の比率) 対照

本品ステント

USPの 0.9%食塩水(SC)および NFのゴマ油 (SO)

120cm2 : 20mL

試薬対照 - USPの0.9%食塩水(SC) および NFのゴマ油(SO)

検体選択の妥当性

検体には 7 Fr の本品ステントを用いたが、このサイズは 6 Fr と原材料(ナイチノールおよび金)、

コーティング工程、及びパクリタキセルの用量密度(3µg/mm2)が同じである。さらに、表面積に

対して一定した抽出溶媒量を設定しているため、6 Fr 及び 7 Fr の本品ステントからは同等の溶出

量が得られると予測される。したがって 本試験検体は、7 Fr 及び 6 Fr 両方の最終製品を代表する

と判断した。

試験方法

検体を、USPの 0.9%食塩水(SC)と、NFのゴマ油(SO)の 2つの別個の溶液で抽出した。 感

作を誘導するために、各抽出液を 10匹(1抽出液につき 10匹)の試験用モルモットに皮内投与し

パッチで閉塞した。 試薬対照も同様に、5匹(1溶媒ごと)の対照モルモットに投与しパッチで閉

塞した。 回復期の後、試験用モルモットに該当する検体抽出物の惹起用パッチを、対照モルモッ

トに試薬対照の惹起用パッチを付けた。 パッチを取り外し約 24時間、及び 48時間後に投与箇所

を点数化して評価した。

判定基準

ISO 10993-10に規定されるように、試験部位において、試薬対照を投与した場合より強い皮膚炎

症反応が出てはならない。

結果及び考察

本試験の条件下では、食塩水及びゴマ油の検体抽出液は、モルモットにおいて遅延型皮膚接触感

作性を起こす証拠は認められなかった。検体抽出液および試薬対照で処置したモルモットのどち

らも、体重および臨床的観察において、正常に見えた。

表 4.2.1.3-11. 感作性試験結果

項目 体重および臨床観察 皮膚反応

ステント –食塩水( SC) 抽出液 (n = 9) 正常 なし

ステント –ゴマ油 (SO) 抽出液 (n= 10) 正常 なし

試薬対照 (n = 10) 正常 なし

結論

食塩水及びゴマ油の検体抽出液は、ISO 10993-10の規定に基づく試験の要求事項を満たした。

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122

3. 皮内反応 (03T 03679 00 TI251-800, 03T 11349 00 TI251-800)

添付資料ホ-1-45、ホ-1-46

試験の目的

本試験の目的は、検体から抽出した溶出物をウサギの皮膚に投与することにより、皮膚に局所的

な刺激的作用を起こすかどうかを判定することである。

評価

検体

表 4.2.1.3-12. 皮内反応試験検体

試験検体 抽出溶媒 USP比率(検体と

抽出溶媒の比率) 対照

本品ステントおよび

7 Frのデリバリーシス

テム

USPの 0.9%食塩水

(SC)および NFの綿実

油(CSO)

60cm2 : 20mL 試薬対照-USPの 0.9%食塩

水(SC)および、NFの綿

実油(CSO)または NFの

ゴマ油(SO) 5Frデリバリーシステ

ム*

USPの 0.9%食塩水

(SC)および NFのゴマ

油(SO)

4g : 20mL

* 検体には 5Frを用いたが、5Frと 6Frのデリバリーシステムの原材料は同一である。

検体選択の妥当性

検体は本申請品の最終製品を代表しており、また、ISO 10993-10に規定の方法に基づくものであ

る。

試験方法

該当する検体抽出液 0.2 mLを各ウサギの背中右側に 5箇所に分けて皮内投与した。 同様に、対応

する試薬対照液も背中左側に投与した。 投与直後、投与箇所を観察した。 紅斑と浮腫について、

注入後 24時間、48時間、72時間に各ウサギを観察し、抽出液の一次刺激指数を試験群および対

照群について算出した。

判定基準

ISO 10993-10に規定されるように、検体抽出液から有意な刺激性または毒性が認められてはなら

ない。

結果および考察

ウサギはすべて、試験全体を通して正常であった。 投与直後、投与箇所はすべて正常であった。

本試験の条件下で、ウサギに皮内投与した食塩水、綿実油、ゴマ油の検体抽出液のいずれからも

有意な刺激性は認められなかった。検体抽出液の一次刺激指数の特性は無視できる程度であった。

表 4.2.1.3-13. 皮内反応試験結果

項目 紅斑 浮腫 一次刺激の特性

検体-食塩水(SC)抽出液(n=4) なし なし 無視できる程度

検体-綿実油(CSO)抽出液(n=2) 微小 微小 無視できる程度

検体-ゴマ油(SO)抽出液(n=2) 微小 なし 無視できる程度

食塩水(SC)対照(n=4) なし なし 無視できる程度

綿実油(CSO)対照(n=2) 微小 微小 無視できる程度

ゴマ油(SO)対照(n=2) 微小 なし 無視できる程度

結論

食塩水および綿実油の検体抽出液のどちらからも有意な刺激は認められなかった。したがって、

検体は ISO 10993-10の規定に基づく試験の要求事項を満たした。

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123

皮内反応 (10T_26791_04, 10T_26791_05)

添付資料 ホ-1-47

試験の目的

本試験の目的は、検体から抽出した溶出物をウサギの皮膚に投与することにより、皮膚に局所的

な刺激的作用を起こすかどうかを判定することである。

評価

検体

表 4.2.1.3-14. 皮内反応試験検体

試験検体 抽出溶媒 USP比率(検体と抽出溶媒の比率)

対照

本品ステント USP の 0.9%食塩水(SC)

および NFのゴマ油(SO) 120cm

2 : 20mL

試薬対照 - USPの 0.9%食塩水

(SC) および NFのゴマ油(SO)

検体選択の妥当性

検体には 7 Fr の本品ステントを用いたが、このサイズは 6 Fr と原材料(ナイチノールおよび金)、

コーティング工程、及びパクリタキセルの用量密度(3µg/mm2)が同じである。さらに、表面積に

対して一定した抽出溶媒量を設定しているため、6 Fr 及び 7 Fr の本品ステントからは同等の溶出

量が得られると予測される。したがって 本試験検体は、7 Fr 及び 6 Fr 両方の最終製品を代表する

と判断した。

試験方法

該当する検体抽出液 0.2 mLを各ウサギの背中右側に 5箇所に分けて皮内投与した。 同様に、対応

する試薬対照液も背中左側に投与した。 投与直後、投与箇所を観察した。 紅斑と浮腫について、

投与後 24時間、48時間、72時間に各ウサギを観察し、スコア付けした。

判定基準

ISO 10993-10に規定されるように、それぞれに対応する対照と比較して、検体抽出液から刺激性

または毒性が認められてはならない(すなわち検体抽出液全体の平均スコアとそれに対応する対

照液全体の平均スコアの差は 1.0以下でなくてはならない)。

結果及び考察

ウサギはすべて、試験全体を通して正常であった。 投与直後、投与箇所はすべて正常であった。

本試験の条件下で、ウサギに皮内投与した検体抽出液全体の平均スコアとそれに対応する対照全

体の平均スコアの差は、食塩水による検体抽出液において 0であり、ゴマ油による検体抽出液に

おいて 0.2 であった。本試験の条件下ではウサギに皮内投与した食塩水、ゴマ油いずれの検体抽

出液からも刺激性は認められなかった。

表 4.2.1.3-15. 皮内反応試験結果

項目 紅斑 浮腫 刺激の特性

ステント–食塩水(SC)抽出液 (n = 2) なし なし

無刺激性 ステント – ゴマ油(SO)抽出液 (n = 2) 微小 微小

食塩水(SC)対照液 (n = 2) なし なし

ゴマ油(SO) 対照液 (n = 2) 微小 微小

結論

食塩水およびゴマ油による検体抽出液のどちらからも刺激性は認められなかった。したがって、

検体は ISO 10993-10の規定に基づく試験の要求事項を満たした。

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124

4. 全身毒性 (03T 03679 00 TU012-500, 03T 11349 00 TU012-500)

添付資料ホ-1-48、ホ-1-49

試験の目的

本試験の目的は、検体から抽出した溶出物をマウスに投与することにより、急性全身毒性を引き

起こすかどうかを判定することである。

評価

検体

表 4.2.1.3-16. 全身毒性試験検体

試験検体 抽出溶媒 USP比率(検体と抽

出溶媒の比率) 対照

本品ステントおよび

7Frデリバリーシステ

USPの 0.9%食塩水およ

び NFの綿実油 60cm

2 : 20mL

試薬対照-USPの

0.9%食塩水およ

び、NFの綿実油ま

たは NFのゴマ油 5Frデリバリーシステ

ム*

USPの 0.9%食塩水およ

び NFのゴマ油 4g : 20mL

* 検体には 5Frを用いたが、5Frと 6Frのデリバリーシステムの原材料は同一である。

検体選択の妥当性

検体は本申請品の最終製品を代表しており、また、ISO 10993-11に規定の方法に基づくものであ

る。

試験方法

各検体について、USPの 0.9%食塩水(SC)および、NFの綿実油(CSO)または NFのゴマ油

(SO)の 2つの別個の溶液で抽出した。 試薬対照として、検体を含まない USPの 0.9%食塩水

(SC)および NFの綿実油(CSO)または NFのゴマ油(SO)を用いた。抽出液 1種類当たり 5

匹のマウスに、静脈または腹膜経由で該当する検体抽出液を単回注入した。同様に、5匹のマウス

にそれぞれ対応する試薬対照を注入した。 全身注入直後、注入後 4時間、24時間、48時間、72

時間毎にマウスの観察を行った。

判定基準

ISO 10993-11に規定されるように、検体抽出液を注入したマウスは、対応する対照マウスより著

しく大きい反応があってはいけない。

結果および考察

表 4.2.1.3-17. 全身毒性試験結果

項目 体重および臨床観察 死亡

検体-食塩水(SC)抽出液(n=10) 正常 なし

検体-綿実油(CSO)抽出液(n=5) 正常 なし

検体-ゴマ油(SO)抽出液(n=5) 正常 なし

試薬対照(n=20) 正常 なし

結論

本試験の条件下で、食塩水、綿実油、ゴマ油の検体抽出液のいずれからも死亡または全身毒性を

引き起こす証拠は認められなかった。各検体抽出液は ISO 10993-11の規定に基づく試験要求事項

を満たした。

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125

5. 亜急性および亜慢性毒性 (03T 00118 00 TS200-900 TH200-900)

添付資料ホ-1-50

試験の目的

本試験の目的は、検体抽出液がラットにおいて静脈内反復投与後に全身毒性を引き起こすか否か

を評価することである。

評価

検体

表 4.2.1.3-18. 亜急性および亜慢性毒性検体

試験検体 抽出溶媒 検体と抽出溶媒の比率 対照

本品ステント 米国薬局方(USP)の

0.9%食塩水 ステント 1個:10 mL 試薬-USPの 0.9%食塩水

検体選択の妥当性

検体は本申請品の最終製品を代表しており、また、ISO 10993-11に規定の方法に基づくものであ

る。

試験方法

検体を、USPの 0.9%食塩水(SC)で抽出した。 ラットに 1日 1回 14日間、検体抽出液あるいは試

薬対照(10.0mL/kg)を静脈内投与した。静脈内投与後直ちに、ラットに行動変化または毒性の徴

候が認められるか観察を行った。1日 1回一般診査と週 1回精査をラットに行った。 ラットの体

重を、初回投与前、第 8日目(絶食前体重)、第 14日目、第 15日目に測定した。 血液試料を採

取して血液検査および臨床化学分析を行った。 剖検を行い選択した器官を摘出し、秤量して、組

織学的に処理した。

判定基準

1日 1回の臨床観察における体重、剖検所見、臓器の重量、臓器の重量と体重の比率が、許容範囲

内でなければならない。 また、検体抽出液投与群と対照群の間に大きい差があってはならない。

結果および考察

1日 1回の臨床観察における体重、剖検所見、臓器の重量、臓器の重量と体重の比率は許容範囲内

であり、検体抽出液投与群と対照群の間に差はなかった。 検体抽出液投与群のラット 1匹が静脈

内投与後 4日目に死亡した。 このラットの死亡状況に関して試験施設に問い合わせたところ、機

器からの毒性は認められず死因はおそらく空気塞栓等の投与の医原性の問題であろうとのことで

あった。

表 4.2.1.3-19. 亜急性および亜慢性毒性試験の結果

項目 体重および臨床

観察 臓器体重比 剖検 臨床病理変化 病理組織変化

検体-食塩水

(SC)抽出液

(n=9)

正常 正常 肉眼的変化

なし 正常 なし

試薬対照

(n=10) 正常 正常

肉眼的変化

なし 正常 なし

結論

本試験の条件下で、ラットに静脈内投与した検体抽出液から全身毒性を起こす証拠は認められな

かった。

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126

6. 遺伝毒性-細菌を用いた復帰変異試験 (03T 03679 00 V0023-212, 03T 03679 00 V0023-211)

添付資料ホ-1-51、ホ-1-52

試験の目的

本試験の目的は、検体抽出液が S9代謝活性の存在下、および S9代謝活性の非存在下において、

Salmonella typhimurium菌株および E. coli菌株の復帰変異コロニー数の平均値に変異原性の変化が

ないか評価することである。

評価

検体

表 4.2.1.3-20. 遺伝毒性(変異原性)- 細菌を用いた復帰変異試験検体

試験検体 抽出溶媒 USP比率(検体と抽

出溶媒の比率) 対照

本品ステントおよび

7Frデリバリーシス

テム

2種類の別個の

抽出溶媒-

DMSOおよび

生理食塩水

60 cm2 : 20 mL

陰性対照-DMSO、生理食

塩水

陽性対照-Dexon(パラジ

メチルアミノベンゼンジア

ゾスルホン酸ナトリウ

ム)、アジ化ナトリウム、

2-アミノフルオレン、2-ア

ミノアントラセン、メチル

メタンスルホン酸

検体選択の妥当性

検体は本申請品の最終製品を代表しており、また、ISO 10993-3 に規定の方法に基づくものである。

試験方法

S. typhimurium菌株用にはヒスチジンビオチン溶液を、E. coli菌株用にはトリプトファン溶液を添

加した、溶解した上層寒天を含む別個の試験管に、0.1mLの培養液と生理食塩水またはジメチル

スルホキシド (DMSO)抽出液 0.1mLを接種した。必要に応じて 0.5mL分の注射用滅菌水または

S9mixを加えた。混合液を、3つの Vogel-Bonner最少培地に分注した。同じ手順を陽性対照および

陰性対照について行った。検体抽出液のプレートと陰性対照プレートの復帰変異コロニー数の平

均値を比較した。陽性対照で得た平均値は基準値として用いた。 プレート上の生育阻害作用につ

いても検体をスクリーニングした。

判定基準

ISO 10993-3に規定されるように、検体抽出液は陰性対照の 2倍以上となる復帰変異コロニー数の

増加が認められてはならない。

結果および考察

本試験の条件下で、検体抽出液は、S9代謝活性の有無にかかわらず、S. typhimurium菌株および E.

coli菌株の復帰変異コロニー数の平均値が 2倍以上になることはなかった。

Page 53: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

127

表 4.2.1.3-21. 遺伝毒性(変異原性)- 細菌を用いた復帰変異試験結果

項目 プレート上の生育阻害作用の

観察-生育阻害域(mm) 復帰変異コロニー数の平均値

検体-DMSO抽出液 0 正常範囲

検体-生理食塩水抽

出液 0 正常範囲

陰性対照 0 正常範囲

陽性対照 > 40 S. typhimurium菌株は 3倍増加、

E. coli菌株は 2倍増加

結論

本試験の条件下で、DMSOおよび生理食塩水による検体抽出液は、S. typhimurium菌株および E.

coli菌株に対する変異原性を有しないと判断した。陽性対照の平均値に関しては予想した通り、S.

typhimurium試験菌株は陰性対照プレートの平均値の少なくとも 3倍の増加、E. coli試験菌株は少

なくとも 2倍の増加を示した。検体はプレート上の生育阻害試験中に、顕著な生育阻害の徴候を

示さなかった。

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128

遺伝毒性 -細菌を用いた復帰変異試験 (10T_27187_01, 10T_27187_02)

添付資料 ホ-1-53

試験の目的

本試験の目的は、検体抽出液が S9代謝活性の存在下、および S9代謝活性の非存在下において、

Salmonella typhimurium菌株および E. coli菌株の復帰変異体数の平均値に変異原性の変化がないか

評価することである。

評価

検体

表 4.2.1.3-22. 遺伝毒性(変異原性)- 細菌を用いた復帰変異試験検体

試験検体 抽出溶媒 USP比率(検体と

抽出溶媒の比率) 対照

本品ステント

2種類の別個の

抽出溶媒-

DMSOおよび

生理食塩水

120cm2 : 20mL

試薬対照 –DMSOおよび生理食塩水

陽性対照 – アジ化ナトリウム、 2-アミノアン

トラセン、ベンゾ[a]ピレン、2- ニトロフルオ

レン、 ICR-191、メタンスルホン酸メチル

検体選択の妥当性

検体には 7 Fr の本品ステントを用いたが、このサイズは 6 Fr と原材料(ナイチノールおよび金)、

コーティング工程、及びパクリタキセルの用量密度(3µg/mm2)が同じである。さらに、表面積に

対して一定した抽出溶媒量を設定しているため、6 Fr 及び 7 Fr の本品ステントからは同等の溶出

量が得られると予測される。したがって 本試験検体は、7 Fr 及び 6 Fr 両方の最終製品を代表する

と判断した。

試験方法

S. typhimurium菌株用にはヒスチジンビオチン溶液を、E. coli菌株用にはトリプトファン溶液を添

加した、溶解した上層寒天が入った別個の試験管に、0.1mLの菌株培養液と 0.1mLのジメチルス

ルホキシド (DMSO)抽出液または生理食塩水抽出液を接種した。必要に応じて 0.5mL分の注射

用滅菌水または S9mixを加えた。混合液を、3連の最小培地に分注した。同じ手順を陽性対照お

よび陰性対照について行った。検体抽出液のプレートと陰性対照プレートの復帰変異体数の平均

値を比較した。

判定基準

ISO 10993-3に規定されるように、試験株 TA98, TA100 及び WP2uvrAの復帰変異体数の平均値に

ついては、それぞれ陰性対照の平均値の 2倍以上となる増加が認められてはならない。試験株

TA1535 及び TA1537の復帰変異体数の平均値については、それぞれ陰性対照の平均値の 3倍以上

となる増加が認められてはならない。

結果及び考察

本試験の条件下で、復帰変異体数の平均値が試験株 TA98, TA100 及び WP2uvrAについてはそれぞ

れ陰性対照の平均値の 2倍以上の増加は認められず、また試験株 TA1535 及び TA1537については

それぞれ陰性対照の平均値の 3倍以上の増加は認められなかった。陽性対照の平均増加数につい

ては、いずれもそれぞれ対応する陰性対照値の最低 3倍以上であった。

Page 55: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

129

表 4.2.1.3-23. 遺伝毒性(変異原性)- 細菌を用いた復帰変異試験結果

項目 S9代謝活性の

存在の有無

復帰変異体数の平均値

結果 試験株

S. typhimurium菌株 E. coli菌株

TA98 TA100 TA1535 TA1537 WP2uvrA

検体 – DMSO 抽出液 無 20 120 12 6 21

判定基準

を満たす

有 25 116 12 9 22

陰性対照

(DMSO 抽出液)

無 23 126 13 7 21

有 28 132 12 9 20

検体-生理食塩水抽

出液

無 23 154 14 5 21

判定基準

を満たす

有 27 152 19 7 20

陰性対照

(生理食塩水抽出液)

無 23 125 13 6 20

有 28 161 14 7 21

結論

本試験の条件下で、DMSOおよび生理食塩水による検体抽出液は代謝活性化の存在の有無にかか

わらず、S. typhimurium菌株および E. coli菌株に対する変異原性を有しないと判断した。

Page 56: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

130

7. 遺伝毒性-染色体異常試験 (03T 00118 00 V0002-130)

添付資料ホ-1-54

試験の目的

本試験の目的は、検体抽出液が S9代謝活性の存在下、および S9代謝活性の非存在下において、

チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に染色体異常誘発性の変化を引き起こすかどうかを評

価することである。

評価

検体

表 4.2.1.3-24. 遺伝毒性-染色体異常試験

試験検体 抽出溶媒

USP比率(検

体と抽出溶媒

の比率)

対照

本品ステントおよび

7Frデリバリーシス

テム

マッコイ

5A培地 60 cm

2 : 20 mL

陰性対照- マッコイ 5A培地

陽性対照-マイトマイシン C、

シクロホスファミド

検体選択の妥当性

検体は本申請品の最終製品を代表しており、また、ISO 10993-3 に規定の方法に基づくものである。

試験方法

検体をマッコイ 5A培地に抽出した。S9代謝活性化の存在下および S9代謝活性化の非存在下にお

いて、3つの培養でチャイニーズハムスター卵巣細胞の単層を検体抽出液に曝露させた。同じ手順

を陽性対照および陰性対照について行った。

判定基準

ISO 10993-3に基づき、検体抽出液に曝露させた後の異常細胞の出現頻度は、陰性対照と差があっ

てはならない。

結果および考察

検体抽出液に曝露させた後の異常細胞の出現頻度について、陰性対照との有意差はなかった。

表 4.2.1.3-25. 遺伝毒性-染色体異常の結果

項目 S9代謝活性の存在下での異

常細胞の出現率

S9代謝活性非存在下での異

常細胞の出現率

検体抽出液 1.0 0.3

陰性対照 0.7 1.7

陽性対照 68.0* 70.0*

* 陰性対照と有意差がある。

結論

本試験の条件下で、検体抽出液は、S9 代謝活性の存在下および S9 代謝活性の非存在下において、

チャイニーズハムスター卵巣細胞に対して遺伝毒性はないと判断した。 予測した通り、陰性対照

は非反応性で、陽性対照は有意な反応を誘発した。

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131

8. 遺伝毒性 –マウス末梢血小核試験 (10T_26791_08, 10T_26791_10)

添付資料 ホ-1-55

試験の目的

本試験の目的は検体抽出液が in vivoで遺伝毒性を引き起こすかどうかを評価することである。

評価

検体

表 4.2.1.3-26. 遺伝毒性-マウス末梢血小核試験検体

試験検体 抽出溶媒

USP比率

(検体と抽出溶

媒の比率)

対照

本品ステント

USPの 0.9%食塩

水(SC)および NF

のゴマ油(SO)

120cm2 : 20mL

試薬対照 - USPの 0.9%食塩水

(SC) および NFのゴマ油(SO)

陽性対照 –メタンスルホン酸メチル

検体選択の妥当性

検体には 7 Fr の本品ステントを用いたが、このサイズは 6 Fr と原材料(ナイチノールおよび金)、

コーティング工程、及びパクリタキセルの用量密度(3µg/mm2)が同じである。さらに、表面積に

対して一定した抽出溶媒量を設定しているため、6 Fr 及び 7 Fr の本品ステントからは同等の溶出

量が得られると予測される。したがって 本試験検体は、7 Fr 及び 6 Fr 両方の最終製品を代表する

と判断した。

試験方法

検体を食塩水あるいはゴマ油で抽出し、各検体抽出液及び溶媒対照液を、3日間連続してマウスの

腹腔内に注射した。投与直後、マウスを観察して健康状態全般を評価した。投与4日後にマウスか

ら採血した血液中の小核数を計測した。正染性赤血球(NCEs)、小核を有する正染性赤血球(MN-

NCEs) 、網赤血球(RETs)、及び小核を有する網赤血球(MN-RETs)の各数を検体ごとに記録した。

MN-RETsの比率(%)は遺伝毒性の指数として判定した。骨髄毒性の可能性の指数を提示するため、

全赤血球に対する網赤血球の割合を測定した。

判定基準

試験検体群の MN-RETsの比率 (%) は、対照群の MN-RETsの比率より有意に高くてはならない。

結果及び考察

食塩水による検体抽出液群においては、骨髄毒性を示すような RETs の変化は見られなかった。

また、食塩水による検体抽出液群において、MN-RETsの比率に統計学的有意性のある上昇は見ら

れなかった。ゴマ油による検体抽出液投与については、雄マウスおよび雌マウスにおける RETs比

率の低下は、それぞれ 51% および 40%であった。よってこれらの検体群から骨髄毒性が生じる可

能性が示唆される。ゴマ油による検体抽出液群については MN-RETsの比率が優位に上昇した。ゴ

マ油による検体抽出液投与の雄マウスおよび雌マウスにおいては、対応する対照群と比較した

MN-RETsの比率はそれぞれ 5.5倍および 4.1倍であった。

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132

表 4.2.1.3-27. 遺伝毒性 - マウス末梢血小核試験の結果

処置グループ 性別 RET平均値(%) RET 低下(%)* MN-RET(%)

SC 陰性対照 雄 2.97 0.28

SC 検体抽出液 雄 3.34 -12% 0.32

SC陰性対照 雌 2.90 0.23

SC検体抽出液 雌 3.18 -10% 0.26

SO陰性対照 雄 2.39 0.24

SO検体抽出液 雄 1.18 51% 1.33

SO陰性対照 雌 2.54 0.26

SO検体抽出液 雌 1.52 40% 1.06

* 各処置グループと、それに対応する陰性対照グループとの比較(マイナス値は RET (%)の上昇を

意味する)

遺伝毒性の可能性についてのリスクを評価するには、入手したデータ全てを考慮することが重要

である。Zilver PTXステントに対する遺伝毒性については、3種類の試験(細菌を用いた復帰変異

試験、哺乳類の in vitro染色体異常試験、および in vivo 小核試験)を行った。細菌を用いた復帰変

異試験、および in vitro染色体異常試験においては、Zilver PTXステントの抽出液は遺伝毒性なし

と考えられることが示された。in vivo小核試験(当該試験)に関しては、ゴマ油による検体抽出

液において小核形成が観察されたが、この結果に臨床的な懸念がないことを以下に説明する。

Zilver PTXステントは自己拡張型ナイチノール製ステントであり、用量 3 µg/mm2のパクリタキセ

ルで外表面をコーティングされている(ポリマー、結合分子および不活性成分は一切含まない)。

ナイチノール製である本品ステントの基盤は、既承認品である「COOKバスキュラーステント

(承認番号:22300BZX00098000)」と設計及び製造法が同一である。このように、本品ステント

にはパクリタキセル以外に新規の原材料がない。

パクリタキセルは医薬品タキソールの有効成分であり、エチルアルコールおよび有機溶媒(ポリ

オキシエチルレンヒマシ油、商品名:クレモフォーEL、BASF Aktiengesellschaft社)に溶解した静

注製剤として供給される。1994年以降発表されたタキソールの遺伝毒性の可能性に関する文献の

結果は、上記のマウス末梢血小核試験の試験結果と一致するものである。具体的に示すと、in vivo

動物試験からタキソールの用量依存的な遺伝毒性の可能性が明らかにされ、一方 in vitroアッセイ

(細菌を用いた復帰変異試験及び in vitro染色体異常試験)からは遺伝毒性のエビデンスは一切示

されないというものである。さらに、文献においては in vivoでは 1 mg/kgの用量において遺伝毒

性は見られないが、50 mg/kgの用量では遺伝毒性の影響が見られた4。この用量 50 mg/kgとは、

Zilver PTXステントの一人の患者への推奨最大留置本数から計算された、総用量の最大値

(3500 µg:体重 70 kgの成人で約 0.05 mg/kg)の約 1,000倍である。さらに、Zilver PTXステント

の一人の患者への推奨最大留置本数からの総パクリタキセル量(すなわち総送達量約 0.05 mg/kg)

は、動物試験において遺伝毒性の影響がないことが報告された用量(1 mg/kg)の 20分の 1であり、

これは人間と動物において種が異なることを考慮しても、なお妥当であると結論できるほど高い

安全域である。また、文献から、化学療法としてタキソールを使用する場合の投与量(1治療サイ

クルで約 1200 mg/kg)は、マウスにおいて対照グループより末梢血小核数を約 3倍上昇させるの

に充分な量であることが明らかにされている。しかしこのエビデンスに関わらず、患者への治療

におけるリスクベネフィットの観点で許容できるとの評価を得ていることから、タキソールはな

お臨床的に使用されている。重要な点は、この 1200 mg/kgという量 は、Zilver PTXステントの一

人の患者への推奨最大留置本数からの総パクリタキセル量の限度の約 24000 倍であるということ

である。

4 Tinwell H and Ashby J. Genetic toxicity and potential carcinogenicity of taxol. Carcinogenesis

1994;15(8):1499-1501.

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133

最後にマウスの末梢血小核試験についてであるが、この試験において Zilver PTXステントは、検

体として過度に暴露されている。ISO 10993-12に基づき、64.5 cm2の試験検体が 11 mLのゴマ油で

抽出にかけられた。すなわち、それぞれパクリタキセル総量 864 µgでコートされた 5本の 8 x 80

mmのステントが、70 ⁰C で 24 時間抽出された。抽出時間中に薬剤の全てがステントから溶出さ

れたと仮定すると(パクリタキセルの高い脂溶性を考慮すると妥当な推測であると言える)、検

体抽出液のパクリタキセル濃度は 4,320 µg/11 mL 、即ち約 400 µg/mLとなる。この抽出液がマウ

スの腹腔内に 20 mL/kg あるいは 0.6 mL(平均体重を 0.030 kgと仮定した場合)の用量で 3日間連

続して投与された。従って、試験期間中に各マウスは約 24 mg/kg のパクリタキセルが投与された

ことになり、これは Zilver PTXステントの一人の患者への推奨最大留置本数からのパクリタキセ

ル総量 (3,500 µg;体重 70 kgの成人で約 0.05 mg/kg) の 480倍にあたる。

結論として、参照可能な文献、タキソールの臨床使用、遺伝毒性試験における過度な暴露、およ

び、パクリタキセルを使用した薬剤溶出ステントが既に使用されていることなどをすべて考慮す

ると、Zilver PTXステントを留置する患者の遺伝毒性の臨床的リスクは低いと考えられる。従っ

て、Zilver PTXステントは安全に臨床使用できると考える。

結論

本試験の条件下で、食塩水による検体抽出液はマウスに小核の形成を引き起こさなかった。一方、

ゴマ油による検体抽出液は小核形成を誘発した。このゴマ油による検体抽出液の結果に関連する

リスクを本申請品の使用目的に照らして評価すると、参照可能な文献及び過去の臨床データから、

これは許容できると判断された。

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134

9. 埋植試験-2週間および 12週間 (03T 00118 01 TI250-802, TH250-803; 03T 00118 01 TI250-812)

添付資料ホ-1-56、ホ-1-57

試験の目的

本試験の目的は、筋組織に埋め込んだ検体に対する局所刺激または毒性反応の可能性を評価する

ことである。

評価

検体

表 4.2.1.3-28. 埋植試験(2週間および 12週間)検体

試験検体 対照

本品ステント 陰性対照-USPポリエチレン製対照埋植片

検体選択の妥当性

検体は本申請品の最終製品を代表しており、また、ISO 10993-6 に規定の方法に基づくものである。

試験方法

滅菌済みの試験検体および陰性対照をウサギに埋め込み、2 週間または 12 週間後に安楽死させた。

筋組織を摘出し、埋め込み部位を肉眼で観察した。 さらに組織反応を明確化するために代表的な

埋め込み部位を顕微鏡にて検査した。

判定基準

ISO 10993-6 に規定されるように、検体は、肉眼で著しい反応が観察されず、顕微鏡検査において、

陰性対照と同様に非刺激性と分類されなければならない。

結果および考察

2 週間および 12 週間の埋植試験の結果、肉眼で検体の埋め込み部位には顕著な反応は観察されず、

顕微鏡検査で陰性対照と同様に非刺激性と分類されることを確認した。

表 4.2.1.3-29. 埋植試験(2週間および 12週間)の結果

項目 体重 肉眼観察 顕微鏡所見

検体(n=6) 正常 顕著でない 非刺激性

陰性対照(n=6) 正常 顕著でない 非刺激性

結論

本試験の条件下で、肉眼で著しい組織反応は観察されなかった。 検体は陰性対照と同様、顕微鏡

検査で非刺激性と分類された。したがって、ISO 10993-6に規定の判定基準を満たしている。

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135

10. In Vitro溶血性 (03T 03679 00 V0019-100, 03T 11349 00 V0019-100)

添付資料ホ-1-58、ホ-1-59

試験の目的

本試験の目的は、検体からの溶出物が溶血を引き起こすかどうかを in vitro試験で判定することで

ある。

評価

検体

表 4.2.1.3-30. In vitro溶血性試験検体

試験検体 抽出溶媒 USP比率(検体と

抽出溶媒の比率) 対照

本品ステントおよび

7Frデリバリーシス

テム

米国薬局方

(USP)の

0.9%食塩

60 cm2 : 20 mL 陽性対照-注射用滅菌水

陰性対照-高密度ポリエチ

レン 5Frデリバリーシス

テム* 4g : 20mL

* 検体には 5Frを用いたが、5Frと 6Frのデリバリーシステムの原材料は同一である。

検体選択の妥当性

検体は本申請品の最終製品を代表しており、また、ISO 10993-4 に規定の方法に基づくものである。

試験方法

ウサギ 3匹から採血した血液を希釈し、検体抽出液の入った 2本の試験管に加えた。陰性対照と

陽性対照を同様に調製した。溶液と血液が均一に混ざるように、各試験管を穏やかに反転した。

次に試験管を 37ºCで 4時間静置した。培養後、懸濁液を遠心分離し、上清を Drabkin試薬に加え

た。 抽出液の透過率を、540 nm の波長で分光光度測定し、各抽出液のヘモグロビン濃度の計算に

用いた。溶血指数を、各検体、陰性対照および陽性対照のヘモグロビン濃度から算出した。

判定基準

ISO 10993-4に規定されるように、非溶血とみなされるためには、2個の検体の平均溶血指数が 2%

以下でなければならない。

結果および考察

検体抽出液の溶血指数の平均値は 0%で、陰性対照の値と同等だった。

表 4.2.1.3-31. In vitro溶血性試験結果

項目 吸光度 ヘモグロビン濃度

(mg/ml) 溶血指数

検体抽出液 A 0 0 0

検体抽出液 B 0 0 0

陰性対照 0 - -

陽性対照 ≥0.72 ≥1.11 ≥99.1

結論

検体抽出液は非溶血性であった。予測した通り、陰性対照は溶血を起こしておらず、陽性対照は

重度に溶血を起こしていた。

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136

In Vitro 溶血性 (10T_26791_02)

添付資料 ホ-1-60

試験の目的

本試験の目的は、検体との直接あるいは間接的な接触が溶血を誘発するかどうかを、in vitroで判

定することである。

評価

検体

表 4.2.1.3-32. In Vitro 溶血性試験検体

試験検体 接触方法 抽出溶媒 USP比率(検体と

抽出溶媒の比率) 対照

本品ステン

直接 該当なし 該当なし ・陽性対照-注射用滅

菌水

・陰性対照-高密度ポ

リエチレン

間接

(抽出)

カルシウム、マグネシウ

ム無添加のリン酸緩衝生

理食塩水 (CMF-PBS)

120cm2 : 20mL

検体選択の妥当性

検体には 7 Fr の本品ステントを用いたが、このサイズは 6 Fr と原材料(ナイチノールおよび金)、

コーティング工程、及びパクリタキセルの用量密度(3µg/mm2)が同じである。さらに、表面積に

対して一定した抽出溶媒量を設定しているため、6 Fr 及び 7 Fr の本品ステントからは同等の溶出

量が得られると予測される。したがって 本試験検体は、7 Fr 及び 6 Fr 両方の最終製品を代表する

と判断した。

試験方法

ウサギ 3匹から採血した血液を合わせて希釈し、2本の試験管、すなわち検体抽出液の入った試験

管と直接接触のための試験検体の入った試験管それぞれに加えた。陰性対照と陽性対照を同様に

調製した。溶液と血液が均一に混ざるように、各試験管を穏やかに反転した。次に試験管を 37ºC

で 4時間、途中約 30分間隔で反転を繰り返しながら静置した。培養後、懸濁液を遠心分離し、上

清をヘモグロビン試薬に加えた。 抽出液の透過率を分光光度法で測定し、各抽出液のヘモグロビ

ン濃度の計算に用いた。溶血指数を各検体のヘモグロビン濃度から算出し、陰性対照のヘモグロ

ビン濃度と比較した。溶血性グレードは次のスコア法に基づく。

表 4.2.1.3-33. 溶血指数の評価

溶血指数 溶血性グレード

2%未満 非溶血性

2~5% わずかな溶血性

5%超 溶血性

判定基準

ISO 10993-4に規定されるように、非溶血とみなされるためには、2個の検体の平均溶血指数が 2%

以下でなければならない。

結果及び考察

Zilver PTX ステントの検体を使用して行った直接接触の溶血性試験においてはわずかな溶血性が

確認された (溶血指数 = 6.2%)。一方、Zilver PTX ステントの検体抽出液を使用して行った間接接

触試験においては、非溶血性(溶血指数= 0.0%)が確認された。

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137

表 4.2.1.3-34. In Vitro 溶血性試験結果

接触方法 項目 吸光度 ヘモグロビン濃度

(mg/ml) 溶血指数

直接

検体 0.029 0.09 6.2%

陰性対照 0.005 0.02

陽性対照 0.397 1.22

間接

検体 0.003 0.01 0%

陰性対照 0.003 0.01

陽性対照 0.369 1.13

直接接触試験で見られた若干高めの溶血指数は、以下に挙げる理由から、臨床的な懸念を提起す

るものではないと考えられる。

- 直接接触溶血性試験においては、本試験検体がウサギ血液へ過度に暴露している。具体的に

示すと、それぞれパクリタキセル総量 864 µgでコーティングされている 2本の 8 x 80 mmの

Zilver PTXステントを、希釈した 4.9 mLのウサギの血液と直接接触するように配置した。そ

の結果、パクリタキセル濃度は約 350 µg/mLとなり、これは本品における臨床試験で観察さ

れた最大血漿パクリタキセル濃度(6.6 ng/mL)、及び動物試験の薬物動態試験での濃度

(7.1 ng/mL)の約 50,000倍となる高い数値である。

- 基盤はベアメタルステントである Zilver PTXステント自体は、これまで安全な臨床使用実績

があり、世界中で 10年以上使用されている。

- 観察されたわずかな溶血性の要因は、おそらく直接接触の溶血性試験の試料調整法にあると

考えられる。具体的に示すと、試料調整中にステントは破砕された後、物理的に変形した構

造物となった状態で、反転を繰り返した上で検体と血液とを直接接触したことで、機械的溶

血が起きたと考えられる。

- 143匹の動物に合計 332本の Zilver PTX ステントを留置した、包括的な in vivo埋め込み試験

(すなわち重複および非重複状態、過剰用量、2 ヵ月及び 24 時間の薬物動態試験などを含む)

においては、最大でパクリタキセルの臨床用量濃度の 4倍(12 µg/mm2)のステントを留置し

た動物、および、最大許容パクリタキセル総量の 3倍 量 (10500 µg)を埋め込んだ動物におい

ては血栓のエビデンスはなく、血液検査と血液生化学検査は正常である。

- 公表された文献から、溶血は血栓の発生と関係がある点で臨床的に重要であることが示され

ている。動物試験においては、ステント留置部位の動脈組織内でのパクリタキセルレベルは、

56日後にはピーク時の 0.2%まで急激に減少することが明らかになった。従って、ポリマー不

使用のパクリタキセルコーティングに関連する血栓を評価するうえで、2ヵ月は十分な期間で

あると考えられる。無作為化対照試験及びレジストリ試験において Zilver PTXステントを留

置した患者の、2ヵ月間の血栓の発生率は非常に低く、0.7% (8/1092)であった。

以上のように、リスクを特定するための in vitro スクリーニングテストとして、Zilver PTXステン

トの直接接触溶血性試験を行ったところ、わずかな溶血性が認められたが、これには特筆すべき

臨床的重要性がなく、上記の事項から Zilver PTXステントは血液適合性があることが示されてい

る。

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138

結論

試験検体との間接接触試験においては溶血性が認められなかった。また、予測した通り、陰性対

照は溶血を起こしておらず、陽性対照は溶血を起こしていた。直接接触試験においては溶血性が

認められたが、上記の理由に基づき許容できる結果であると考え、試験検体の抽出液は非溶血性

であると判断した。

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139

11. 血栓形成性(RPZ1 3 and 6-Part A TS030040, RPZ1 3 and 6-Part B TS030040, PZ01-TS040055,

PZ03-TS040061, PZ06-TS040062, RS01 TS060072, ZLPK TS020076, PK24 TS030117/ JPX00001,

TS080131)

添付資料ホ-2-1、ホ-2-2、ホ-2-3、ホ-2-4、ホ-2-5、ホ-2-6、ホ-2-7、ホ-2-8、ホ-2-9、ホ-2-10、

ホ-2-11

試験の目的

本試験の目的は、in-vivoにおける検体の埋植に伴い血栓の形成が惹起されるかどうか確認し、ISO

10993-4の血栓症のカテゴリーに関する安全性を評価することである。

評価

検体

表 4.2.1.3-35. 血栓形成性試験検体

項目 ステントの

サイズ(mm)

埋め込んだ

ステントの数

試験検体

本品ステントおよ

びデリバリーシス

テム

6 x 20

332

6 x 20

6 x 30

7 x 30

10 x 20

10 x 20

10 x 40

10 x 60

10 x 60

10 x 80

10 x 80

10 x 80

14 x 40

対照

Zilverステント*お

よびデリバリーシ

ステム(コーティン

グ無し)

6 x 30

81 7 x 30

8 x 140

10 x 80

* 対照として「Zilverステント」を用いた。このステントは金属ベアメタルステントであるが、パ

クリタキセルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。

検体選択の妥当性

検体は滅菌済みの最終製品を代表する。本品ステントはサイズに関わらず全て同一の原材料(ナ

イチノールと金)、および製造過程(レーザーカット、電解研磨、デリバリーシステムへの装填、

滅菌および包装)を経て製造されているため、使用した検体ステントは全てのサイズを適切に包

含している。過去の血管内ステントの製品試験に基づき、試験を行った検体数は、血栓反応を評

価するのに適していると判断する。

試験方法

「4.2.2 動物試験」に記載するように、ステントの血栓形成をブタによる試験で評価した。ブタ

180匹の末梢動脈に413個のステントを留置した。埋め込み後6ヶ月までの種々の時点で、血栓形成

性の有無について血管を評価した。 血栓形成性評価には血管造影による評価と組織学的評価が含

まれ、これらは独立し、認定された獣医病理学者が実施した。

判定基準

血管造影による評価と組織学的評価で血栓形成性の証拠が認められてはならない。

結果

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140

計332個の試験検体をブタ143匹で、81個の対照検体をブタ37匹で試験した。試験検体は、臨床用

量密度の4倍までのパクリタキセルをコーティングした本品ステントを含む。いずれの検体も、埋

め込んだ血管に血栓形成性の証拠は認められなかった。

表4.2.1.3-36. 血栓形成性試験の結果

項目

ステントの

サイズ

(mm)

パクリタキ

セルの用量

密度

(µg/mm2)

埋め込んだ

ステントの

血管造影による評価お

よび組織学的評価

本品ステントおよび

デリバリーシステム

(n=332)

6 x 20 3 72

血栓形成性の証拠なし

6 x 20 12 24

6 x 30 3 20

7 x 30 3 40

10 x 20 9 19

10 x 20 12 21

10 x 40 9 21

10 x 60 9 21

10 x 60 12 21

10 x 80 2 21

10 x 80 3 20

10 x 80 4 21

14 x 40 9 11

非コーティング

Zilverステントおよ

びデリバリーシステ

ム(n=81)

6 x 30

16

血栓形成性の証拠なし 7 x 30 40

8 x 140 4

10 x 80 21

結論

これらの動物試験の条件下で、試験検体は血液を凝固させることのないことが示された。

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141

12. 凝固 (03T 03679 00 V0020-000)

添付資料ホ-1-61

試験の目的

本試験の目的は、血漿カルシウム再加凝固時間に対する検体抽出液の影響を判定し、ISO 10993-4

の凝固基準を満たすことである。

評価

検体

表 4.2.1.3-37. 凝固試験検体

試験検体 抽出溶媒 USP比率(検体と

抽出溶媒の比率) 対照

本品ステント クエン酸添

加ヒト血漿 4g : 20mL

陰性対照 - 低密度ポリエチレン

試薬対照 - ヒト血漿

検体選択の妥当性

検体は滅菌済みの最終製品を代表する。ISO 10993-4 の規定によると、本申請品においては本試験

は要求されないが、さらなる安全性のため、ステントに対し実施した。

試験方法

検体をクエン酸添加ヒト血漿で、37ºCで 1時間培養した。 陰性対照および試薬対照も同様に、

37ºCで 1時間培養した。培養後、各 5つの検体、陰性対照および試薬対照の複製に対し、塩化カ

ルシウムを添加し、カルシウム再加凝固時間を測定した。

判定基準

ISO 10993-4に規定されるように、検体のカルシウム再加凝固時間の平均値は、陰性対照および試

薬対照と異なるものであってはならない。

結果および考察

検体に曝露させた後の血漿のカルシウム再加凝固時間の平均値は、陰性対照および試薬対照のカ

ルシウム再加凝固時間に等しかった。 陰性対照および試薬対照の結果は予測した通りであった。

表 4.2.1.3-38. 凝固試験結果

項目 カルシウム再加凝固時間(秒)

平均値±標準偏差

検体抽出液(n=5) 253.0 ± 4.1

陰性対照(n=5) 256.8 ± 1.0

試薬対照(n=5) 252.3 ± 2.5

結論

本試験の条件下で、検体抽出液は血漿カルシウム再加凝固時間に影響を及ぼさなかった。

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142

13. 補体系活性化 (03T 03679 00 V0022-000)

添付資料ホ-1-62

試験の目的

本試験の目的は、検体抽出液が補体系を活性化するか否かを確認することである。ISO 10993-4 に

よると、本申請品において本試験は要求されないが、さらなる安全性のため、ステントに対し実

施した。

評価

検体

表 4.2.1.3-39. 補体系活性化試験検体

試験検体 抽出溶媒 USP比率(検体と

抽出溶媒の比率) 対照

本品ステント 正常ヒト血清

(NHS) 4g : 20mL

陽性対照 - コブラ毒素因子、ラ

テックス手袋(生体材料対照)

陰性対照 - 低密度ポリエチレン

試薬対照 - 活性化した正常ヒト血

清(NHS)

検体選択の妥当性

検体は滅菌済みの最終製品を代表する。ISO 10993-4 の規定によると、本申請品においては本試験

は要求されないが、さらなる安全性のため、ステントに対し実施した。

試験方法

検体を正常ヒト血清(NHS)で培養した後に、酵素免疫測定キットで C3a濃度を測定した。検体

の C3a濃度を、t検定を用いて、試薬対照および陰性対照と統計的に比較した。

判定基準

検体抽出液の C3a濃度は、試薬対照および陰性対照と有意に異なるものであってはならない。

結果および考察

検体抽出液の C3a濃度は、試薬対照および陰性対照の結果と比較して、有意に異なるものではな

かった。 陰性対照および陽性対照の結果は予測した通りであった。

表 4.2.1.3-40. 補体系活性化試験結果

項目 C3a濃度(ng/ml)平均値±標準偏差

検体抽出液(n=3) 30,200 ± 3,600

陰性対照(n=3) 34,000 ± 7,500

試薬対照(n=3) 28,400 ± 5,200

陽性生体材料対照(n=3) 42,500 ± 2,200

陽性対照(n=3)* 211,000 ± 8,400

* 陽性対照の C3a濃度は、陰性対照および試薬対照と比較して、有意に高かった。

結論

本試験の条件下で、検体抽出液は補体系の活性化因子とは認められなかった。

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143

14. 発熱性(03C 05032 00 TU010-807, 06C 29620 02 TU010-807)

添付資料ホ-1-63、ホ-1-64

試験の目的

本試験の目的は、ISO 10993-11の要件に基づいて、検体抽出液が発熱反応を引き起こす可能性を

判定することである。

評価

検体

表 4.2.1.3-41. 発熱性試験検体

試験検体 抽出溶媒 USP比率(検体と抽

出溶媒の比率) 対照

本品ステントおよび

7Frデリバリーシス

テム

USPの非発

熱性 0.9%食

塩水

60 cm2 : 20 mL

試薬対照-USPの非発熱

性 0.9%食塩水 6Frデリバリーシス

テム 4g : 20mL

検体選択の妥当性

検体は滅菌済みの最終製品を代表する。 試験を行った検体は ISO 10993-11に規定の方法に基づく

ものである。

試験方法

検体抽出液または対照液 10mL/kg を、3 匹の家兎の辺縁耳静脈から単回静脈内投与した。投与前、

および投与後の 1時間から 3時間の間に 30分間隔で、直腸温を測定し記録した。各個体の最高体

温上昇(ベースライン温度に対して)を判定した。

判定基準

USPに規定されるように、どの個体もベースライン温度から 0.4°Cを超える体温上昇を示さな

かった場合、検体抽出液は非発熱性と判断される。

結果および考察

どの個体もベースライン温度から 0.4ºCを超える体温上昇を示さなかった。

表 4.2.1.3-42. 発熱性試験結果

項目 ベースライン温度に対する最大体温上昇(ºC)

本品ステントおよび 7Frデリ

バリーシステム(n=3) 0.3

6Frデリバリーシステム

(n=3) 0.2

結論

本試験の条件下で、検体抽出液は非発熱性であると判断する。3時間にわたる観察中での個体の体

温上昇の合計は、USPの許容限界内であった。

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144

15.対面助言において出された、1)パクリタキセルの組織への局所的影響、2)全身性の影響、3)

動脈瘤形成の可能性に関する考察

20**年*月*@日に行われた本品に係わる対面助言(*****)において、本品ステントによる

組織への局所的毒性、全身毒性、および動脈瘤形成の可能性について指摘があった。これらの事

項に対する評価・見解を以下に記述し、さらに動物を用いた本品ステントの薬物動態試験から、

周辺組織へのパクリタキセル濃度について、文献および「販売名:TAXUS エクスプレス 2ステン

ト(承認番号:21900BZX00340000)」の開示された申請資料等における試験結果と比較した。こ

れらの解析と、最大で臨床用量の 4倍で試験した動物試験の結果から、本品ステントによる組織

への局所的毒性、全身毒性、および動脈瘤形成の可能性はないことが示された。以下にその概略

を記載する。

本品ステントは自己拡張型ナイチノール製ステントであり、用量 3 µg/mm2のパクリタキセルで

コーティングされている(ポリマー、結合分子および不活性成分は一切含まない)。臨床用量

(3 µg/mm2)を用いた in vivo薬物動態試験では、ブタにおける急性期反応(24時間)および長期

的反応(2ヶ月)を調べた。急性期反応の評価は、家畜ブタに 4本の 6 x 20mm本品ステントを留

置した(1匹あたりの総パクリタキセル量 876 µg)。薬物動態評価の結果から、全身に送達され

たパクリタキセルはごく微量であり、留置から 10時間では血漿からのパクリタキセルは検出され

なかった。留置から 20分後の血漿における最大検出量は約 6 ng/mLであり、この数字からワース

トケースで約 1.7%の薬剤が本品を留置する際に失われると予想される(2500 mLの血液中

6 ng/mL = パクリタキセル量 15 µg、すなわち総パクリタキセル量 876 µgの 1.7%)。留置から 20

分後以降は血漿内のパクリタキセル量が徐々に減少し、6時間で検出限界(0.5 ng/mL以下)と

なった。

長期的反応の評価においては、家畜ブタの左右の腸骨大腿動脈にそれぞれ 2個の 6 x 20 mm本品ス

テントを重複なく留置した(ステント毎の総パクリタキセル量 219 µg、総数 64本のステントを留

置)。ブタはそれぞれ 4本のステントを留置され、それによる 1匹あたりの総パクリタキセル量

は 876 µgである。ステントを留置した動脈組織内のパクリタキセル量は、ピーク値で約 71 ng/mg

(すなわち 82 µM)であり、これはステントを留置した直後に除去するのに要する時間である、

留置後 30分(すなわち留置後 0.02日)で検出された。その後パクリタキセル量は 6時間でピーク

値の約 44%(31 ng/mg 又は 36 µM)にまで急激に減少し、1~14日後には約 20%(14 ng/mg 又は

16 µM)に落ち着き、56日後までには約 0.2%(0.16 ng/mg 又は 0.02 µM)に減少した(表 4.2.1.3-

43.)。

表 4.2.1.3-43. 各時点における、ステントを留置した動脈内の平均パクリタキセル量

時間

(日数)

ステントを留置した動脈組織内のパクリタキ

セル量 (ng/mg) 標準偏差(ng/mg)

0.02 71 (ピーク値) 21

0.25 31 (ピーク値の 44%) 11

1 21 (ピーク値の 29%) 9.2

3 10 (ピーク値の 15%) 7.5

7 14

(ピーク値の 20%)

16

14 15 (ピーク値の 21%) 11

28 2.2 (ピーク値の 3%) 3.4

56 0.16 (ピーク値の 0.2%) 0.1

一方、TAXUS エクスプレス 2ステント(用量 1 µg/mm2)の in vivo 薬物動態試験は、ウサギ 1匹

に 2本ずつの重複のないステントを留置しており、1匹あたりの総パクリタキセル量は 100 µgと

なる。試験報告によれば、ステント留置領域におけるパクリタキセル量は 30~60日の間に最大値

(ピーク値)の 5 ng/mg (すなわち 6 µM)が検出され、その後 270日での 1 ng/mg (すなわち 1

µM)まで徐々に減少した。毒性は暴露時間と濃度の相関関係で決定することが知られている。

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145

TAXUS エクスプレス 2ステントにおける組織内パクリタキセル濃度のピーク値は、本品ステント

よりも 15倍低い値ではあるが、ポリマーを使った TAXUS エクスプレス 2ステントの薬剤放出メ

カニズムにより、暴露時間(270日)については、ポリマーを使用しない本品ステントよりも 5倍

以上長い。重要なのは TAXUS エクスプレス 2ステントのポリマーが永久ポリマーであり、なお

かつ非吸収性であることである。このためポリマー関連の毒性 1, 2が懸念され、薬剤が放出された

後はベアメタルステントのみが患者の体内に残る本品ステントとは違い、そのリスクは永久的で

ある。

文献より、パクリタキセルを単回投与および連続的投与した場合、細胞の増殖・移行・毒性に用

量依存的な効果をもたらすことが示されている 3, 4。この効果は haECs(ヒト大動脈皮内細胞)よ

り、haSMCs(ヒト動脈平滑筋細胞)において顕著である。他の文献・研究から、臨床的根拠を基

に、治療された大動脈のステント内再狭窄の主要因として、血管平滑筋細胞の増殖に起因するこ

とが指摘されており 5, 6, 7, 8、平滑筋細胞の選択的抑制作用、およびステント留置血管の内皮化を可

能とするパクリタキセルの必要性を示唆している。in vitro 細胞培養試験においては、10 µM以下

のパクリタキセル量では haSMCsにおけるアポトーシス(細胞死)が 5%のみであり、50 µM以上

のパクリタキセル量ではアポトーシスが 80%以上であった。in vitro による試験条件では in vivo の

状態を十分に模倣することは難しい事実と、in vivo 動物試験における組織内薬剤濃度測定の不確

実性から、本品ステントが留置された動脈の in vivo最大検出パクリタキセル量(82 µM)は、in

vitro において観察されたような局所的組織内毒性をもたらすことは考えにくい。細胞培養という

静的な環境においてはステント留置血管における血流のような動的、又は自然な生体環境を作り

出すのは困難であり、また、in vivo で起こる薬剤による治癒反応を再現することも不可能である

からである。また、本品ステントを留置してから 30分以降の時点における、組織内の局所的パク

リタキセル量は、いずれも細胞培養内でアポトーシスを引き起こすと考えられる量以下であった。

組織内の局所的反応に関しては、本品ステントを用いた包括的な動物試験(1ヵ月、3ヶ月、およ

び 6ヶ月のフォローアップ期間)によって損傷、炎症、低細胞性、および内皮化を含む毒性関連

反応について詳細に評価した。これらの試験には、特に局所的反応に対する薬剤の安全域(セー

フティ・マージン)を設定するために、最大 9 µg/mm2 (臨床用量の 3倍、総パクリタキセル量

2637 µg)および 12 µg/mm2 (臨床用量の 4倍、総パクリタキセル量 3516 µg)の用量でコーティ

ングした本品ステントを用いた試験も含まれ、薬剤の局所的、部位的、および全身的作用を 1ヵ

月、3ヶ月、および 6ヶ月で評価した。その結果、安全性に関する問題はなく、全身作用、部位的

作用、それに有害事象はいずれの時点でも発生しなかった。局所的な炎症反応および壊死が 1ヶ

月においてわずかに見受けられたが、3ヶ月および 6ヶ月においては発生しなかった。重要な点と

して、ステント留置血管における内弾性板・中膜・外弾性板の組織病理学的評価から、これらの

動物試験はいずれの時点・濃度においても局所的な損傷は観察されなかった。

9 µg/mm2および 12 µg/mm

2 の用量においては、1ヵ月および 3ヶ月における血管の治癒の進行が

遅れていたものの、6ヶ月の時点では用量 12 µg/mm2 の場合でも完全な内皮化が観察された。また、

血管造影および組織形態計測の定量的な測定から、薬剤に関連する動脈瘤、仮性動脈瘤および中

膜薄肉化は観察されなかった。さらに、無作為化対照の臨床試験における血管内超音波(IVUS)

サブスタディにより、ステントの不完全圧着および動脈瘤形成が評価されている。2名の患者がス

テント留置前に動脈瘤を有しており、留置直後に再び動脈瘤が観察されている。フォローアップ

時点において(それぞれ 4年、および 18ヶ月のフォローアップ期間)、この両患者の治療病変は

開存しており、ステントを留置されて以来機器関連の有害事象は報告されていない。ステント留

置後に動脈瘤が形成された患者は、6ヶ月および 12ヶ月において報告されていない。

最大薬物量(ワーストケース)の毒性については、家畜ブタ 6匹それぞれに 9 µg/mm2又は 12

µg/mm2 のステント 9本を留置した動物試験を行った。この総パクリタキセル量は 10,500 µgであ

り、患者が許容される最大のステント本数を留置された場合の 3倍に相当する。1ヶ月のフォロー

アップで安全性に関する問題、部位的または全身的作用はなく、ステント留置血管は大きく開存

しており動脈瘤および仮性動脈瘤は観察されなかった。さらに、薬物が血中に入った場合を考慮

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146

すると、静脈内投与される抗がん剤であるタキソールの単一用量が 135 mg/m2のパクリタキセル

量であり(身体面積 1.7 m2 の場合)、これに比べ本品ステントは、最大のステント本数を患者に

留置した場合でも 2 mg/m2 のパクリタキセル量である(約 3500 µg)。本品ステントのパクリタキ

セル量は最大でもタキソール単一用量の 60分の 1であり、さらに、臨床試験において薬剤関連の

有害事象が報告されなかったことから、毒性の全身作用および局所的作用はないと考えられる。

以上から、包括的な動物試験および臨床試験から機器に関連した毒性に対する安全性、すなわち

本申請品の安全性が担保されると結論づけられた。

1Virmani R, Guagliumi G, Farb A, Musumeci G, Motta T, Mihalcsik L, Tespili M, Valsecchi O, Kolodgie F.

Localized hypersensitivity and late coronary thrombosis secondary to a sirolimus-eluting stent: should we be

cautious? Circulation. 2004;109:701-705. 2 Joner M, Finn AV, Farb A, Mont EK, Kolodgie FD, Ladich E, Kutys R, Skorija K, Gold HK, Virmani R.

Pathology of drug-eluting stents in humans: delayed healing and late thrombotic risk. J Am Coll Cardiol.

2006;48:193-202. 3 Sollott SJ, Cheng L, Pauly RR et al. Taxol inhibits neointimal smooth muscle cell accumulation after angioplasty

in the rat. J Clin Invest. 1995 Apr;95(4):1869-76. 4 Axel DI, Kunert W, Göggelmann C et al. Paclitaxel inhibits arterial smooth muscle cell proliferation and

migration in vitro and in vivo using local drug delivery. Circulation. 1997 Jul 15;96(2):636-45. 5 Carter AJ, Laird JR, Farb A. Morphologic characteristics of lesion formation and time course of smooth muscle

cell proliferation in a porcine proliferative restenosis model. J Am Coll Cardiol 1994;24:1398-1405. 6 Virmani R, Farb A. Pathology of in-stent restenosis. Curr Opin Lipidol 1999 Dec;10(6):499-506.

7 Pickering JG, Weir L, Jekanowski J, et al. Proliferative activity in peripheral and coronary atherosclerotic plaque

among patients undergoing percutaneous revascularization. J Clin Invest 1993;91:1469-1480. 8 Kearney M, Pieczek A, Haley L, et al. Histopathology of in-stent restenosis in patients with peripheral artery

disease. Circulation 1997 Apr 15;95(8):1998-2002.

Page 73: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

147

4.2.1.4 放射線に関する安全性

本申請品は放射線構成部品を内蔵、または使用していない。従って放射線安全性試験による検証

は必要ないと判断する。

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148

4.2.1.5 機械的安全性

総括

本申請品の機械的安全性の特性を判定するために、Zilverステントおよびデリバリーシステム*)

に実施した機械的安全性試験の結果を、表 4.2.1.5-1 に要約する。本申請品は設定した各判定基

準に従い、すべての試験に合格した。

表 4.2.1.5-1 機械的安全性試験

試験名称 方法 判定基準 資料番号 結果 試験施設

1. 引張強度 -

Zilver デリバ

リーシステム

各サブアセンブリは引

張試験機に取り付けら

れ、所定の伸長速度で

不具合が生ずるか、試

験機グリップの保持能

を超えるまで引っ張ら

れた。不具合発生時の

最大負荷と各サブアセ

ンブリの故障モードを

記録した。

引張を受けない接合部の

引張強度は≥** N であ

り、引張を受ける接合部

の引張強度は留置に要す

る力(**:* N)以上でな

ければならない。

ホ-1-65

ホ-1-66

ホ-1-67

合格 @**

***:::::*:

*:*:

2. 後処理した

Zilver ステン

ト*ストラッ

トの機械的特

5 個の Zilver ステント

からストラットを 3本

ずつ、合計 15本のス

トラットに対し引張強

度試験を行った。結果

を記録した。

特性判断のみ ホ-1-68

ホ-1-69

該当なし @**

***:::::*:

*:*:

3. ラディアル

フォース

ステントが拡張する際

にステントが及ぼすラ

ディアルフォースを、

直径の関数として測定

した。これは、検体を

公称径に等しい初期直

径から圧縮(装填)

し、拡張(抜出)させ

てその公称径にもどす

ことによって得られ

る。

ステントは、操作時の直

径(ステントの公称径よ

りも* mm小さい)でラ

ディアルフォースが、

**** N/mmから

**** N/mmの間でなけれ

ばならない。

ホ-1-70

ホ-1-71

合格 @**

***:::::*:

*:*:

*:Zilver ステントは、薬剤をコーティングしていない本申請品と同一のステントであり、Zilver ス

テントデリバリーシステムは、本申請品と同一の製品である。

結論:

本申請品の使用目的を考慮した上、適切な機械的安全性試験を選択した。本申請品は設定した

判定基準に従い、すべての試験に合格した。したがって、許容可能な機械的安全特性を有する

と判断する。以下にそれぞれの機械的安全性試験の結果を要約する。

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149

1. 引張強度 - Zilver デリバリーシステム (TS000070, TS040145, TS070106)

添付資料ホ-1-65、ホ-1-66、ホ-1-67

試験の目的

本試験の目的は、本申請品の引張特性を判定することである。

評価

検体

表 4.2.1.5-2. デリバリーシステム引張試験検体

品目 検体数

7 FrのZilverデリバリーシステム* 15

7 FrのZilverデリバリーシステムイ

ンナーカテーテルチップ 10

6 FrのZilverデリバリーシステム* 29

* 本試験検体の「Zilver デリバリーシステム」は、本申請品と同一である。

検体選択の妥当性

7 Frの Zilverデリバリーシステムの検体数は、過去の血管内ステントおよびデリバリーシステムの

製品試験に基づき、選定された。

また、6 Frの Zilverデリバリーシステムの検体数 29 個は、95%の信頼度をもって、90%の接合部

が引張荷重に耐えることを示すために設定された(引張荷重:チップとインナーカテーテルの接

合部の引張強度が** N 以上、キャップ内のストレインリリーフおよびハブアセンブリとカニュー

レの接合部の引張強度が**** N 以上)。

試験方法

検体として、「Zilverデリバリーシステム」のサブアセンブリの引張強度を測定した。 各サブア

センブリは引張試験機に取り付けられ、所定の伸長速度で不具合が生ずるまで引っ張られた。 不

具合発生時の最大負荷と各サブアセンブリの故障モードが記録された。

判定基準

引張を受けない接合部の引張強度は≥** N であり、引張を受ける接合部の引張強度は留置に要する

力(**** N)以上でなければならない。

判定基準の妥当性

判定基準は、機器を留置する際にデリバリーシステムのどの部位が引張を受けるかによる。引張

を受けない接合部の引張強度基準(≥** N)に関しては、歴史的に良好な臨床成績を有する Zilver

のデリバリーシステムにおける、過去の試験経験に基づく。引張を受ける接合部の引張強度基準

(≥**** N)に関しては、140 mm長ステントの留置に要する最大力の 95%の信頼度と 99%の信頼

区間に基づく。

結果および考察

図 4.2.1.5-1 に、本試験で評価した Zilverデリバリーシステムの各構成部品、およびサブアセンブ

リを示す。

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150

1. ルアーロックアダプタ(ルアーロックハブ)

2. ハブ(成形ホールディングブッシング)

3. カニューレ(金属カニューレ内のインナーカテーテル)

4. 成形ハンドル

5. チェックフローボディ

6. コネクターキャップ(ストレインリリーフを含む)

7. イントロデューサーシース(フレクサーシース)

8. マーカーバンド(プッシャーバンド、7 Fr デリバリーシステム上のプラチナリング)

9. カテーテルチップ(先端部)

図4.2.1.5-1. Zilverデリバリーシステムの構成部品およびサブアセンブリ

表 4.2.1.5-3. 7 Frのデリバリーシステムにおける試験用サブアセンブリ

サブセンブリ 構成部品 張力の有無 接合部の詳細

A

ルアーロックハ

ブ、成形ホルディ

ングブッシング、

金属カニューレ、

インナーカテーテ

張力はかからない

が、張力がかかる場

合の判定基準を保守

的に適用した。

***********

***********

***********

***********

***********

***

B

ルアーロックハ

ブ、成形ホルディ

ングブッシング、

金属カニューレ

張力はかからない

が、張力がかかる場

合の判定基準を保守

的に適用した。

***********

***********

**********

C

金属カニューレ、

成形ハンドル、チ

ェックフローボデ

ィ、コネクターキ

ャップ、フレクサ

ーシース

張力がかかる

***********

***********

***

D

インナーカテーテ

ル、インナーカテ

ーテルチップ

張力がかからない

***********

***********

***

E

インナーカテーテ

ルおよびプラチナ

リング(7 Frデバ

イスのみ)

張力がかからない ***********

*********

Page 77: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

151

表 4.2.1.5-4. 6 Fr のデリバリーシステムにおける試験用サブアセンブリ

サブセンブリ 構成部品 張力の有無 接合部の詳細

F

コネクターキャップ

内のストレインリリ

ーフ

張力がかかる

************

************

********

G

ルアーロックハブ、

成形ホルディングブ

ッシング、金属カニ

ューレ

張力はかからないが、

張力がかかる場合の判

定基準を保守的に適用

した。

************

************

********

H

インナーカテーテ

ル、インナーカテー

テルチップ

張力がかからない

************

************

表 4.2.1.5-5. デリバリーシステム引張試験の結果

Zilverデリバ

リーシステム

サブアセ

ンブリ n

極限引張強度

平均値±標準偏差(N)(範囲) 判定基準(N)

7 Fr

A 14* **:*:±:*:*(**:*~**:*) **:*

B 15 ***:*:±:**:*(***:*~***:*) **:*

C 15 **:*:±:*:*(**:*~**:*) **:*

D 10 **:*:±:*:*(**:*~**:*) **:*

E 15 **:*:±:*:*(**:*~**:*) **:*

6 Fr

F 29 **:*:±:*:*(**:*~**:*) **:*

G 29 ***:*:±:**:*(***:*~***:*) **:*

H 29 **:*:±:*:*(**:*~**:*) **:*

* 1 つの検体がグリップから外れ、統計学的分析から除外された。

結論

検体はすべて、適用する判定基準に従い、最小破断強度の要求事項を満たした。

Page 78: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

152

2. 後処理した Zilver ステントストラットの機械的特性 (TS000071, TS090088)

添付資料ホ-1-68、ホ-1-69

試験の目的

本試験の目的は、本申請品におけるナイチノール製ステントのストラットについて、不具合発生

時の極限強度と引張ひずみを特性づけることである。

評価

検体

表 4.2.1.5-4. ステントストラットの引張試験検体

品目 ステントのサイズ

(mm)

ストラットの

検体数

7 Fr

Zilverステント* #1

8 x 20

3

Zilverステント* #2 3

Zilverステント* #3 3

Zilverステント* #4 3

Zilverステント* #5 3

6 Fr

Zilverステント* #1

10 x 140

3

Zilverステント* #2 3

Zilverステント* #3 3

Zilverステント* #4 3

Zilverステント* #5 3

* 検体に用いたステント「Zilverステント」は薬剤コーティングしていない本品ステントと同一の

ステントである。パクリタキセルコーティングは非常に薄く(**:μm**、*********

*****:μm*)、パクリタキセルのみで構成される。したがって、コーティングの有無はステン

トストラットの引張特性に影響を及ぼさないと判断した。

検体選択の妥当性

本極限引張強度は材料の特性試験であることから、結果は、試験を行ったステントのサイズに左

右されない。 そのため、試験に選ばれた検体はステント長の全範囲を代表する。試験を行った検

体数は、過去の血管内ステントの製品試験に基づき、ストラットの引張強度を評価するのに適し

ていると判断した。

試験方法

*****:*******************************:*************

*********************************************

*******************************************

*************

判定基準

本試験は、特性を明らかにすることのみを目的としている。

結果および考察

ステントストラットの引張試験の結果を、表4.2.1.5-5に要約する。 検体の破壊は、すべてストラ

ットの断面積が最も小さくなる中間ゲージエリアで不具合が生じた。

Page 79: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

153

表 4.2.1.5-5. ステントストラットの機械的特性

品目 n

極限強度平均値

±標準偏差

(MPa)

不具合発生時の引張

ひずみの平均値±標

準偏差

(%)

極限強度の算出

最低値(MPa)

7 FrのZilverステントストラ

ット 15 *:*** ± ** ** ± * *:***

6 FrのZilverステントストラ

ット 15 *:*** ± *** ** ± * *:***

結論

本試験は特性試験であったが、ステントストラットの引張試験の結果は、本申請品に用いられる

ナイチノール製チューブ原材料の引張特性に関する基準を満たした。

Page 80: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

154

3. ラディアルフォース (TS100057, TS070108)

添付資料ホ-1-70、ホ-1-71

試験の目的

本試験の目的は、6 Fr および 7 Frの本申請品が半径方向に拡張する間の外向きのラディアルフォ

ースを、生理学的な直径として測定することである。

評価

検体

表 4.2.1.5-6. ラディアルフォース試験の検体

品目 Zilverステントのサイズ(mm) 検体数

7 Frの Zilverステント*

6 x 20 5

7 x 20 5

8 x 20 5

9 x 20 5

10 x 20 4**

6 Frの Zilverステント*

5 x 20 5

6 x 20 5

7 x 20 5

8 x 20 5

9 x 20 5

10 x 20 5

* 検体に用いたステント「Zilverステント」は薬剤コーティングしていない本品ステントと同一の

ステントである。パクリタキセルコーティングは非常に薄く(**:μm**、*********

*****:μm*)、パクリタキセルのみで構成される。したがって、コーティングの有無はステン

トのラディアルフォース特性評価に影響を及ぼさないと判断した。

** 検体の一つが保管中に破損したため除外され、4 本となった。

検体選択の妥当性

検体は、自己拡張型ナイチノ―ル製 Zilverステントである。 Zilverステントはパターンが繰り返

されており、ラディアルフォースはステント長に左右されない。よって、各々のステント直径に

ついて、最小長の検体を用いて試験を行った。

試験方法

ステントが拡張する際にステントが及ぼすラディアルフォースを、直径の関数として測定した。

これは、検体を初期直径(公称径)から圧縮(装填)し、拡張(抜出)させてその公称径にもど

すことによって得られる。ステントの抜出(拡張)の曲線近似を行った。ラディアルフォースを

長さで正規化した。

判定基準

検体は、公称径より* mm 小さい操作時の直径において、ラディアルフォースが*:** N/mmから

*:** N/mmの間でなければならない。

判定基準の妥当性

判定基準は、既承認の脈管ステントのラディアルフォース試験に基づいて設定した。

結果および考察

機械的に装填および抜出した後の、操作時の生理学的直径(ステントの公称径より* mm小さい)

で正規化したラディアルフォースを、表 4.2.1.5-7 に示す。

Page 81: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

155

表 4.2.1.5-7. Zilverステント操作時の生理学的直径で正規化されたラディアルフォース

品目 メカニズム

ラディアルフォース/長さ(N/mm)

ステントの公称径

5 mm 6 mm 7 mm 8 mm 9 mm 10 mm

7 FrのZilver

ステント 拡張 * *:** *:** *:** *:** *:**

6 FrのZilver

ステント 拡張 *:** *:** *:** *:** *:** *:**

結論

本試験の結果より、すべての検体がラディアルフォースの判定基準を満たした。

Page 82: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

156

4.2.1.6. 安定性及び耐久性

総括

安定性及び耐久性を判定するために、本申請品に対して実施した試験の概要を表 4.2.1.6-1 に示

す。 本申請品は設定した判定基準を以って、すべての試験に合格した。SFA(浅大腿動脈)ス

テントとしての機械的な耐久性を、コンピュータを使った有限要素モデリング、および実際の

拍動疲労、軸方向疲労、曲げ疲労及びねじり疲労の試験により確認した。2 年間の薬物安定性

は、パクリタキセル溶液及び薬剤コーティング試験によって確認した。3年間保存後の安定性

は、加速劣化試験および実時間の劣化試験により評価した。さらに、包装安定性を包装の完全

性試験によって確認した。

表 4.2.1.6-1. 安定性及び耐久性試験

試験名称 方法 判定基準 資料番号 結果 試験施設

1. 有限要素解析

(FEA)による

Zilver PTX ステ

ントの疲労特性

有限要素メッシュ(網目

状構造)モデルを作成し

た。次にそのモデル

を、拍動的疲労負荷、

軸方向疲労負荷、曲げ

疲労負荷、およびねじ

り疲労負荷に適用し

た。

疲労安全率 > *:* ハ-1-1

ハ-1-2

ハ-1-3

ハ-1-4

ハ-1-5

ハ-1-6

ハ-1-7

ハ-1-8

合格 @**@*:

***:::*:

@*:

:**::*::::

*:*:

2. 有限要素解析

(FEA)による

Zilver PTX ステ

ントの複合疲労

特性

有限要素モデルを作成

した。次にそのモデル

を複合負荷(拍動的疲

労負荷、軸方向疲労負

荷、曲げ疲労負荷、お

よびねじり疲労負荷)

に適用した。

疲労安全率 > *:* ハ-1-9

ハ-1-10

合格 @@:

:**::*::::

*:*:

3. 有限要素解析

(FEA)を用いた

重複した Zilver

PTX ステント

の複合疲労特性

有限要素モデルを作成

した。次にそのモデル

を重複したステントに

対する複合負荷(拍動

的疲労負荷、軸方向疲

労負荷、曲げ疲労負

荷、およびねじり疲労

負荷)に適用した。

疲労安全率 > *:* ハ-1-11 合格 @@:

:**::*::::

*:*:

4. 有限要素解析

( FEA ) によ

る、ステントの

長 さ が Zilver

PTX ステント

の疲労特性に及

ぼす影響

有限要素モデルを作成

し、各ステントに拍動

的負荷、軸方向負荷、

曲げ負荷及びねじり負

荷を適用した。 みを

記録し、疲労線図の作

成に使用した。

特性判断のみ ハ-1-12

ハ-1-13

特性判

@@:

:**::*::::

*:*:

5. In Vitro の拍

動的疲労試験

ステントをチューブ内

に展開後、時間的に加

速され、生理的にモデ

ル化され、変位制御さ

れた拍動的負荷条件下

で、拍動疲労試験を 4

億サイクル、または不

具合が確認されるまで

施行した。

**サイクル後にステン

トの破断がなく、4 億サ

イクル後に 1 つの連結構

造のままでなければなら

ない。

ハ-1-14

ハ-1-15

ハ-1-16

ハ-1-17

合格 @@:

:**::*::::

*:*:

Page 83: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

157

試験名称 方法 判定基準 資料番号 結果 試験施設

6. In Vitro の軸

方向疲労試験

ステントをチューブ内

に展開後、*:****サイ

クル(歩行に伴う軸方

向の動きの **年に相

当)、または不具合が

認められるまで、変位

制御された状態で長軸

方向に伸長/圧縮疲労

負荷をかけて、耐久限

度を測定した。

軸方向の耐久限度は、

+*/-*%以上でなければな

らない。

ハ-1-18

ハ-1-19

ハ-1-20

ハ-1-21

ハ-1-22

合格

@@:

:**::*::::

*:*:

7. In Vitro の曲

げ疲労試験

ステントをチューブ内

に展開後、変位制御さ

れた状態での適切な周

波数において、正弦曲

げ疲労試験を***サイ

クル、または不具合が

確認されるまで施行し

た。

ステントの耐久限度は、

予想される臨床的にかか

る負荷(** mm の曲率半

径) を満たすか、ある

いは超えるものでなけれ

ばならない。

ハ-1-23

ハ-1-24

ハ-1-25

ハ-1-26

合格 @@:

:**::*::::

*:*:

8. In Vitro のね

じり疲労試験

各ステントをチューブ

内に展開後、回転制御

したチューブに対して

正弦ねじり負荷を*:***

*サイクル、または不

具合が確認されるまで

施行した。耐久限度を

測定するために、検体

に対して異なる回転角

で回転させた。

ステントの耐久限度は、

臨床的にかかると予想さ

れる負荷(*:*°/mm の回

転)を満たすか、あるい

は超えるものでなければ

ならない。

ハ-1-27

ハ-1-28

ハ-1-29

ハ-1-30

ハ-1-31

ハ-1-32

合格 @@:

:**::*::::

*:*:

9. パクリタキセ

ル溶液の安定性

パクリタキセル/エタノ

ール溶液が使用に許容

可能な安定性を有する

かを判定するために、

高速 体クロマトグラ

フィーにより評価し

た。

パクリタキセル /エタノ

ール溶液は、混合後、少

なくとも*@日間使用可

能でなければならない。

ハ-1-33 合格 COOK

Inc.

Page 84: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

158

試験名称 方法 判定基準 資料番号 結果 試験施設

10. 薬剤コーテ

ィングの安定性

試験-1 年間実

時間

11. 薬剤コーテ

ィングの安定性

試験-2 年間実

時間および 6 ヶ

月加速

1 年間と 2 年間の長期

保存試験後に、薬剤の

平均含有量、純度、粒

子状物質及び放出を評

価した。2 年間の長期

保存試験には、6 ヶ月

の加速劣化評価も含ま

れる。

平均含有量 は表示の

±**%以内でなければな

らず、個々の不純物が

1%を超えてはならず、

また総不純物が 2%を超

えてはならない。粒子状

物質測定の結果、粒径が

25 μm 以上の粒子は 600

以下、10 μm 以上の粒子

は 6,000 以下でなければ

ならない。In vitro の薬剤

の放出はプロトコルに記

載されている規格範囲内

でなければならない。

1 年間実

時間:

ハ-1-34

2 年間実

時間:

ハ-1-35

6 ヶ月

加速:

ハ-1-36

合格

COOK

Inc., @*@

***:::::::

*:*:****:

*:**:**:*:

@**

@*:::*:*

****

12. 薬剤の平均

含有量および不

純物の温度サイ

クル試験

温度サイクル(冷凍/融

解、加熱/冷却)にかけ

た検体について、平均

含有量及び純度を評価

した。

平均含有量の平均値は表

示の 85~115%以内でな

ければならず、個々の不

純物が 1%を超えてはな

らず、また総不純物が

2% を超えてはならな

い。

ハ-1-37 合格 COOK

Inc.

13. 安定性試験

1) 3 年の実時間劣化及

び加速劣化後に、レー

ザーマイクロメータを

使用してフレクサーシ

ースの直径の寸法を測

定した。

7 Fr 本品デリバリーシス

テムの外径(フレクサー

シースの最大外径)は

*:** mm(*:***インチ)

以下、6 Fr 本品デリバリ

ーシステムの外径(フレ

クサーシースの最大外

径)は **** mm ( *:***

インチ)以下でなければ

ならない。

ハ-1-38

ハ-1-39

ハ-1-40

ハ-1-41

ハ-1-42

合格 @:@

*::**:::::

*:*:

2) 3 年加速劣化後に、

展開に要する力を、7

Fr の機器はスケール

で、6 Fr の機器は較正

済みのフォースゲージ

により定性的に評価し

7 Fr については、すべて

の検体が円滑かつ容易に

展開すること。6 Fr につ

いては、ステントの展開

に要する力は@* N 未満

でなければならない。

合格

@:@

*::**:::::

*:*:

Page 85: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

159

試験名称 方法 判定基準 資料番号 結果 試験施設

13. 安定性試験

(続き)

3) 3 年の実時間及び加

速劣化後に、ステント

を取扱説明書に従って

展開した。展開の容易

さを定性的に記録し

た。また、ステント展

開の正確さについて較

正されたコンピュータ

ーシステムを使用して

測定した。

本品ステント及びデリバ

リーシステムは、容易に

前進し、X線画像で視覚

的に確認可能で、問題な

くステントを展開した

後、デリバリーシステム

は抜去できなければなら

ない。展開後、ステント

は、遠位側のX線不透過

性ターゲットマーカーに

対し、±* mm以内でなけ

ればならない。

ハ-1-38

ハ-1-39

ハ-1-40

ハ-1-41

ハ-1-42

合格 @:@

*::**:::::

*:*:

4) 3 年の実時間及び加

速劣化後に、ステント

を取扱説明書に従って

展開した。コンピュー

タを使った較正済みの

X 線撮影システムによ

る測定を使って、展開

前のステントと展開後

のステントの長さか

ら、長さの変化率を計

算した。

ステントはいずれも展開

前と展開後の長さの変化

が±**%でなければなら

ず、展開後のステントの

長さは表示の公称長の

+ */-* mm以内でなけれ

ばならない。

合格 @:@

*::**:::::

*:*:

5) 3 年の実時間及び加

速劣化後に、ステント

を取扱説明書に従って

展開した。ステントの

直径及び均一性を光学

顕微鏡及び較正 みの

コンピュータ 定装置

を使用して評価した。

直径5~9 mmのステント

では公称径の±*:* mm以

内でなければならず、直

径** mmのステントでは

公称径の±*:* mm以内で

なければならない。直交

方向におけるステントの

均一性の範囲、および特

定のステントサイズにお

ける均一性の最大変動は

すべて、*%以内でなけ

ればならない。

合格 @:@

*::**:::::

*:*:

6) 3 年の実時間及び加

速劣化後に、デバイス

を取扱説明書に従って

展開した。ステント表

面を光学顕微鏡を使用

して検査した。

ステントの展開およびデ

リバリーシステムの抜去

後、ステントに破損があ

ってはならない。サイズ

が** μm を超える亀裂が

あってはならない。

合格 @:@

*::**:::::

*:*:

Page 86: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

160

試験名称 方法 判定基準 資料番号 結果 試験施設

14. 3 年間経年

後の引張強度試

デリバリーシステムの

引張強度を、7 Fr デバ

イスでは 3 年の加速劣

化及び実時間経年後、

6 Fr デバイスでは 3 年

加速劣化後に評価し

た。各サブアセンブリ

を引張試験機に取り付

け、所定の伸長速度で

不具合が生ずるか、試

験機グリップの保持能

を超え まで引っ張っ

た。

引張を受けない接合部の

引張強度は≥** N であ

り、引張を受ける接合部

の引張強度は留置に要す

る力(**:* N)以上でな

ければならない。

ハ-1-43

ハ-1-44

ハ-1-45

ハ-1-46

合格 @:@

*::**:::::

*:*:

15. 包装の完全

性試験

包装を発送用の箱に入

れ、3 年間保管した後

に出荷シミュレーショ

ン、目視検査及び染料

浸透テストを施行し

た。

包装に、目視検査で、無

菌性を損なうような損傷

があってはならない。

包装内の構成部品に、製

品の性能に影響を及ぼす

いかなる損傷もあっては

ならない。構成部品は収

納されたウェルから移動

してはならない。シール

には染料による浸透があ

ってはならない

ハ-1-47

ハ-1-48

ハ-1-49

ハ-1-50

ハ-1-51

ハ-1-52

ハ-1-53

ハ-1-54

ハ-1-55

ハ-1-56

ハ-1-57

合格 Cook Inc.,

@**:

*:**:**::

*:**

結論:

薬剤溶出型ステントの用途と保存期間を考慮して、適切な安定性及び耐久性試験を選択した。

コンピューター支援有限要素モデリング、および実際の拍動的疲労負荷、軸方向疲労負荷、曲

げ疲労負荷、およびねじり疲労負荷を使用し、本申請品の浅大腿動脈ステントとしての機械的

耐性を評価した(複合負荷状態の有限要素モデリングに関しては、現在進行中である)。本申

請品は設定した判定基準を以って、全ての試験に合格した。したがって薬剤溶出型ステントと

しての安定性及び耐久性の必要条件を満たしたと考える。安定性及び耐久性試験の概要を以下

に記載する。

Page 87: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

161

1. 有限要素解析(FEA)を用いた Zilver PTXステントの疲労特性 :*:@:**:@**:***:*@*:*:*:***:

*@*@*@*::***:@*@:********@:@:***:***:@*@:*:*@@:*:****:@@@:*::***:@*@:**:***:

添付資料ハ-1-1、ハ-1-2、ハ-1-3、ハ-1-4、ハ-1-5、ハ-1-6、ハ-1-7、ハ-1-8

試験の目的

本試験の目的は、有限要素解析(FEA)を用いて本品ステントの 疲労特性を明らかにし、これに

基づき、後続のin vitroでの疲労試験で使用するワーストケースのステント直径を判定することで

ある。

評価

検体

表 4.2.1.6-2. 非重複の本品ステントと重複させた本品ステントの有限要素解析(FEA)用モデル

品目 構成 試験番号 負荷モード ステント直径

(mm)

7 Frの Zilver

ステントの

有限要素モデル*

非重複

@:@:@*:*:*:*** 拍動的 6、7、8、9、10

@*@:***:*** 軸方向 6、7、8、9、10

@*@@:*:***** 曲げ 6、7、8、9、10

@:@@***:**: ねじり 6、7、8、9、10

重複 @*@:***:***:

@@::@

拍動的

6、7、8、9、10 軸方向

曲げ

ねじり

6 Frの Zilver

ステントの

有限要素モデル*

非重複 @*@:*:*:***

拍動的

5、6、7、8、

9、10

軸方向

曲げ

ねじり

重複

@@:****:*** 拍動的 10**

@*@:***:***

軸方向 5**

曲げ 8**

ねじり 10**

* 検体として「Zilverステント」を用いた。このステントは金属ベアメタルステントであるが、パ

クリタキセルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコーテ

ィングはパクリタキセルのみで構成され、非常に薄い(************** μm***

*、***********: μm **)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を与

えないと判断した。

** 試験番号@@*******(非重複の6 Frのステントの疲労評価)に基づき、重複させた6 Frのステ

ントに対して、ワーストケースの直径のみを評価した。

検体選択の妥当性

すべての有限要素モデルは Pro/Engineerを用いた電解研磨形状に基づいて構築した。モデルはそれ

ぞれナイチノール素材の特性を利用し、それはステントの構成品であるナイチノールチューブの

試験データに基づくものである。

試験方法

各モデルに対し有限要素メッシュ(網目状構造)モデルを作成した。次に、このモデルを拍動的

疲労負荷、軸方向疲労負荷、曲げ疲労負荷、またはねじり疲労負荷に適用した。必要に応じて

Page 88: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

162

ASTM F25141に記述されたガイドラインに従った。有限要素解析(FEA)で使用される負荷を表

4.2.1.6-3 に示す。軸方向負荷は圧縮(短縮、マイナス記号で示す)及び引張(伸張、プラス記号

で示す)のどちらかの条件下で、長さの変化率として示した。曲げは曲率半径として表した。曲

率半径が小さいほどステントの負荷が大きいことを示す。 ねじりは、単位ステント長あたりのね

じり度(比較を容易にするため)として表す。 有限要素解析(FEA)に用いる負荷条件は、臨床

的にかかる負荷を上回る。

表 4.2.1.6-3. 臨床的にかかる負荷と比較した、有限要素解析(FEA)及び in vitroでの 疲労試験で

の負荷

負荷

モード

臨床的に

かかる負荷

FEA負荷

非重複 重複

7 Fr 6 Fr 7 Fr 6 Fr

拍動的 *:*%-*:*% ±*% ±*% ±*% ±*%

軸方向1 +*/-*% ±*% ±*% ±*% +*/-*%

曲げ1,2 ** mm **:* mm **:* mm **:* mm ** mm

ねじり3 *:*°/mm *:*°/mm *:*°/mm *:*°/mm *:*°/mm

1 データの出典元:1) Smouse, et al., Endovascular Today, June 2005, 2) Smouse, Midwest Institute for

Interventional Therapy, 2004, 3) Smouse, personal communication, 2005 およびSmouse, personal

communication, 2006 2 ステントの中心軸までの曲率半径であり、値が小さいほど曲げが大きい。

3 試験「@@*:******:: Physiological Torsional Loading in the Femoropopliteal Artery(大腿膝窩動脈内

における生理的ねじり負荷)」より

それぞれの負荷モードの有限要素解析(FEA)から、平均歪みと繰返負荷歪みを計算して、それ

ぞれのステント直径について、歪みに基づく疲労線図の作成に使用した。代表的な歪み疲労線図

を図 4.2.1.6-1に示す。 それぞれの歪み疲労寿命線図において、平均歪みと交互歪みの最大値の対

が疲労境界線の下側にある場合、その負荷条件下で破断は予想されない。

1 ASTMF 2514 - Standard Guide for Finite Element Analysis(FEA)of Metallic Vascular Stents Subjected to

Uniform Radial Loading.(一様な半径方向負荷にさらされた金属製脈管ステントにおける、有限要素解

析(FEA) の標準的手法。)

Page 89: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

163

図 4.2.1.6-1. それぞれの負荷モードの代表的な歪み寿命疲労線図(歪みの最大値の対から疲労境界

線まで破線が引かれている)

さらに、それぞれの歪み寿命疲労線図から、安全率を距離の比 a/(a-b)として算出した。ここで、a

は疲労境界線から交互歪みの最大値点を通り x軸まで投影した距離、bは疲労境界線から交互歪み

の最大値点まで投影した距離である。距離 b は、図 4.2.1.6-1 の各パネルでは、破線で示されてい

る。軸方向負荷の場合のように、平均歪みがゼロの場合、投影線は y軸に沿う。平均歪みがゼロ

ではない場合は(拍動的負荷、曲げ負荷、ねじり負荷の場合)、投影線は疲労境界線に対して直

交する(x 軸と y軸は尺度が異なるため、図では直角には見えない)。

判定基準

疲労安全率は*:*を超えなければならない。この有限要素解析(FEA)は後続の in vitroの 疲労試

験におけるステント直径に関する情報を提供するために施行した。

曲げ疲労 ねじり疲労

交互ひずみ

Page 90: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

164

結果及び考察

重複のある Zilverステント、および重複のない Zilverステントのすべての直径の歪み点は疲労境

界の下側にあるため、疲労負荷条件下で破断は予想されないことを示している。各ステントサイ

ズに対して安全率を計算した結果を、表 4.2.1.6-4 に示す。

重複のない 7 Frのステントのすべての直径を評価したことで、拍動的負荷に関しては* mm、軸方

向負荷に関しては* mm、曲げ負荷に関しては* mm、ねじり負荷に関しては** mmがワーストケ

ースのステント直径であることが示された。重複のない 6 Frのステントについては、拍動的負荷

に関しては** mm、軸方向負荷に関しては* mm、曲げ負荷に関しては* mm、ねじり負荷に関し

ては 10 mmがワーストケースのステント直径であることが示された。重複のある 7 Frのステント

のすべての直径を有限要素解析(FEA)で評価した結果、予想通り、それぞれの負荷モードにお

けるワーストケースの直径は、非重複ステントと重複ステントの間で同じであることが確認され

た。したがって、重複のある 6 Frのステントに関しては、それぞれの負荷モードに対するワース

トケースの直径のみを評価した。

表 4.2.1.6-4. 結果

品目 構成 負荷

モード

ステント直径(mm)

5 6 7 8 9 10

7 Frステントの

有限要素モデル

非重複

拍動的 * *:* *:* *:* *:* *:*

軸方向 - *:* *:* *:* *:* *:*

曲げ - *:* *:* *:* *:* *:*

ねじり - *:* *:* *:* *:* *:*

重複

拍動的 - *:* *:* *:* *:* *:*

軸方向 - *:* *:* *:* *:* *:*

曲げ - *:* *:* *:* *:* *:*

ねじり - *:* *:* *:* *:* *:*

6 Frステントの

有限要素モデル

非重複

拍動的 *:* *:* *:* *:* *:* *:*

軸方向 *:* *:* *:* *:* *:* *:*

曲げ *:* *:* *:* *:* *:* *:*

ねじり *:* *:* *:* *:* *:* *:*

重複

拍動的 - - - - - *:*

軸方向 *:* - - - - -

曲げ - - - *:* - -

ねじり - - - - - *:*

結論

本品ステントについて有限要素解析(FEA)を行うにあたって、ステントを展開した SFA (浅大

腿動脈) に臨床的にかかる負荷条件と同等か、それ以上の負荷で評価した。本品ステントの歪み

点は疲労境界線の下側にあり、重複のない構成と重複のある構成の両方において疲労寿命が無限

であることを示している。さらに、すべての場合において、有限要素解析(FEA)から見た安全

率は*:*を上回った。このことから、臨床的に起こりうる最悪の負荷条件下でも、非重複の本品ス

テントと重複した本品ステントについて破断は生じないと予測できる。それぞれの負荷モードの

最小安全率をもって、後続の in vitro疲労試験用のステント直径が決定された。

Page 91: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

165

2. 有限要素解析(FEA)を用いた Zilver PTXステントの複合疲労特性*@@********@@:******

添付資料ハ-1-9、ハ-1-10

試験の目的

本試験の目的は、有限要素解析(FEA)を用いて浅大腿動脈(SFA)における本品ステントの複合

疲労特性(拍動的疲労負荷、軸方向疲労負荷、曲げ疲労負荷、ねじり疲労負荷)を明らかにする

ことである。

評価

検体

表 4.2.1.6-5. 試験における有限要素解析(FEA)モデル

品目 状態 負荷条件 ステントの

サイズ(mm)

6 Frの Zilverステント

の有限要素モデル* 非重複 拍動的疲労負荷、軸方向疲労負

荷、曲げ疲労負荷、ねじり疲労負

荷の複合

5, 6, 7, 8, 9, 10

7 Frの Zilverステント

の有限要素モデル* 非重複 6, 7, 8, 9, 10

* 検体として「Zilverステント」を用いた。このステントは金属ベアメタルステントであるが、パ

クリタキセルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコーテ

ィングはパクリタキセルのみで構成され、非常に薄い(**************:μm****、

********** μm**)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を与えない

と判断した。

なお、ステント設計が繰り返しのパターンであること、および、過去の試験から、ステント長は

疲労特性に影響を及ぼさないことが判明している(以下の試験「3. ステント長がZilver PTXステン

トの疲労特性に及ぼす影響」より)。

検体選択の妥当性

すべての有限要素モデルはステントの幾何学的形状に基づいて構築した。モデルはそれぞれナイ

チノール素材の特性を利用し、それはステントの構成品であるナイチノールチューブの試験デー

タに基づくものである。

試験方法

複合負荷における負荷量は、近年の文献に基づいており、表 4.2.1.6-6 に示す。軸方向負荷は圧縮

(短縮、マイナス記号で示す)の条件下で、長さの変化率として示した。曲げは曲率半径として

表し、 ねじりは単位ステント長あたりのねじり度として表す。有限要素解析(FEA)に用いる負

荷条件は、臨床的にかかる負荷と同等である。

表 4.2.1.6-6 複合負荷 FEA 試験における設定

負荷モード 臨床的意義のある負荷

(FEA 試験における設定)

軸方向 +*/-*% 1

曲げ *** mm 1,2

捻り *:**/mm 3,4

拍動 ±*% 5

1長さの変化率。文献:Nikanorov A, Smouse HB, et. al. Fracture of self-expanding nitinol stents stressed

in vitro under simulated intravascular conditions. Journal of Vascular Surgery, 2008. 2 ステントの中心軸までの曲率半径。文献:Smouse HB, et. al., Fracture of Self-expanding Nitinol

Stents Stressed In Vitro under Simulated Intravascular Conditions, The International Symposium on

Endovascular Therapy, 2008. 3 Choi G, et. Al. Methods for quantifying artery deformations from pulsatile and nonpulsatile forces:

Implications for the Design of Stents and Stent Grafts. Annals of Biomedical Engineering, 2009.

Page 92: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

166

4 Choi G, et. al. In Vivo Deformation of the Human Abdominal Aorta and Common Iliac Arteries With Hip

and Knee Flexion. Journal of Endovascular Therapy, 2009. 5 ステントが留置されていない血管(80~160 mmHg)における直径の変化率。文献:Rosset, E, et

al., Viscoelastic properties of Human Arteries Methodology and Preliminary Results. Surgical Radiologic

Anatomy, Vol. 18, pp. 89-96, 1996.

有限要素モデルをまず捻り負荷にかけ、その後に曲げ、軸方向、そして拍動負荷を加えた。一度

全ての負荷を止めた後、再び全ての負荷をかけた。当該疲労特性評価の結果を、歪みに基づく故

障条件を使用して事後処理した。歪みに基づく疲労評価から安全率を得ることで、Zilverステント

の疲労特性が判明した。

判定基準

ステントはそれぞれ、疲労安全率が*:*を超えなければならない。これはステントの疲労寿命が無

限であることを示す。

結果及び考察

各デリバリーシステムの、それぞれのステントサイズについて、歪みに基づく故障条件から疲労

線図を作成した(図 4.2.1.6-2 および図 4.2.1.6.3)。また、それぞれのステントにおける疲労安全

率を表 4.2.1.6-7 に示す。全ての疲労線図において歪み点は疲労境界線の下にあるため、複合負荷

の条件下において、ステントの破断は生じないと予測される。

表 4.2.1.6-7. 複合負荷における疲労安全率

デリバリーシステム ステント直径(mm) 疲労安全率

6 Fr

5 *:*

6 *:*

7 *:*

8 *:*

9 *:*

10 *:*

7 Fr

6 *:*

7 *:*

8 *:*

9 *:*

10 *:*

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図4.2.1.6-2 6 Fr Zilverステントにおける複合負荷疲労線図

Page 94: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

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図4.2.1.6-3 7 Fr Zilverステントにおける複合負荷疲労線図

結論

本品ステントについて有限要素解析(FEA)を行うにあたって、ステントを展開した SFA (浅大

腿動脈) に臨床的にかかる負荷条件と同等の負荷で評価した。その結果、6 Fr および 7Frの両方

のステントにおいて複合負荷条件下における疲労安全率は*:*を上回り、判定基準を満たした。よ

って、本品ステントは SFAにおける複合負荷条件下で破断を生じないと予測できる。

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3. 有限要素解析(FEA)を用いた重複した Zilver PTX ステントの複合疲労特性*@@***:****

添付資料ハ-1-11

試験の目的

本試験の目的は、有限要素解析(FEA)を用いて浅大腿動脈(SFA)における重複した本品ステン

トの複合疲労特性(拍動的疲労負荷、軸方向疲労負荷、曲げ疲労負荷、ねじり疲労負荷)を明ら

かにすることである。

評価

検体

表 4.2.1.6-8. 試験における有限要素解析(FEA)モデル

品目 状態 負荷条件

ステントの

サイズ

(mm)

7 Frの Zilverステント

の有限要素モデル* 重複

拍動的疲労負荷、軸方向疲労負荷、曲

げ疲労負荷、ねじり疲労負荷の複合 *

* 検体として「Zilverステント」を用いた。このステントは金属ベアメタルステントであるが、パ

クリタキセルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコーテ

ィングはパクリタキセルのみで構成され、非常に薄い(**************:μm***

*、********** μm **)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を与

えないと判断した。

なお、ステント設計が繰り返しのパターンであること、および過去の試験から、ステント長は疲

労特性に影響を及ぼさないことが判明している(「4. 有限要素解析(FEA)による、ステントの

長さが Zilver PTXステントの疲労特性に及ぼす影響」より)。

検体選択の妥当性

すべての有限要素モデルはステントの幾何学的形状に基づいて構築した。モデルはそれぞれナイ

チノール素材の特性を利用し、それはステントの構成品であるナイチノールチューブの試験デー

タに基づくものである。非重複状態の 7 Fr、および 6 Frの Zilverステントに対し実施した「2. 有

限要素解析(FEA)による Zilver Flex ステントの複合疲労特性」試験から、最も低い複合疲労安

全率を示したのは 7 Fr の直径@ mmステントであった。したがって、本試験検体をワーストケー

スと判断した。

試験方法

複合負荷における負荷量は、近年の文献に基づいており、表 4.2.1.6-9 に示す。軸方向負荷は圧縮

(短縮、マイナス記号で示す)の条件下で、長さの変化率として示した。曲げは曲率半径として

表し、 ねじりは単位ステント長あたりのねじり度として表す。有限要素解析(FEA)に用いる負

荷条件は、臨床的にかかる負荷と同等である。

表 4.2.1.6-.9 複合負荷 FEA 試験における設定

負荷モード 臨床的意義のある負荷

(FEA 試験における設定)

軸方向 +*/-*% 1

曲げ *** mm 1,2

捻り *:**/mm 3,4

拍動 ±*% 5

1長さの変化率。文献:Nikanorov A, Smouse HB, et. al. Fracture of self-expanding nitinol stents stressed

in vitro under simulated intravascular conditions. Journal of Vascular Surgery, 2008. 2 ステントの中心軸までの曲率半径。文献:Smouse HB, et. al., Fracture of Self-expanding Nitinol

Stents Stressed In Vitro under Simulated Intravascular Conditions, The International Symposium on

Endovascular Therapy, 2008.

Page 96: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

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3 Choi G, et. Al. Methods for quantifying artery deformations from pulsatile and nonpulsatile forces:

Implications for the Design of Stents and Stent Grafts. Annals of Biomedical Engineering, 2009. 4 Choi G, et. al. In Vivo Deformation of the Human Abdominal Aorta and Common Iliac Arteries With Hip

and Knee Flexion. Journal of Endovascular Therapy, 2009. 5 ステントが留置されていない血管(80~160 mmHg)における直径の変化率。文献:Rosset, E, et

al., Viscoelastic properties of Human Arteries Methodology and Preliminary Results. Surgical Radiologic

Anatomy, Vol. 18, pp. 89-96, 1996.

有限要素モデルをまず捻り負荷にかけ、その後に曲げ、軸方向、そして拍動負荷を加えた。一度

全ての負荷を止めた後、再び全ての負荷をかけた。当該疲労特性評価の結果を、歪みに基づく故

障条件を使用して事後処理した。歪みに基づく疲労評価から安全率を得ることで、重複した Zilver

ステントの疲労特性が判明した。

判定基準

重複したステントは、疲労安全率が*:*を超えなければならない。

結果及び考察

歪みに基づく故障条件から作成した疲労線図を図 4.2.1.6-4 に示す。また、疲労安全率を表 4.2.1.6-

10 に示す。疲労線図において歪み点は疲労境界線の下にあるため、複合負荷の条件下において、

ステントの破断は生じないと予測される。

表 4.2.1.6-10. 複合負荷における疲労安全率(重複状態)

デリバリーシステム ステント直径(mm) 疲労安全率

7 Fr * *:***

* 非重複状態における、7 Frの直径* mmステントの疲労安全率は、試験報告書@@@******より

*:**である(添付資料概要 4.2.1.6「2. 有限要素解析(FEA)による Zilver PTX ステントの複合疲

労特性」においては端数を切り捨て*:*と記載している)

図4.2.1.6-4 重複した7 Fr Zilverステント(直径6 mm)における複合負荷疲労線図

結論

重複した本品ステントについて有限要素解析(FEA)を行うにあたって、ステントを展開した

SFA (浅大腿動脈) に臨床的にかかる負荷条件と同等の負荷で評価した。7 Fr の直径 6 mmステ

ントによって、7 Frおよび 6 Frの本品ステントにおける全サイズが代表される。その結果、7 Fr

の直径 6 mm ステントにおける複合負荷条件下の疲労安全率は*:*を上回り、判定基準を満たした。

よって、重複した本品ステントは SFAにおける複合負荷条件下で破断を生じないと予測される。

Page 97: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

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4. 有限要素解析(FEA)による、ステント長が Zilver PTXステントの疲労特性に及ぼす影響

:@@:*****@:@*@**:***:

添付資料ハ-1-12、ハ-1-13

試験の目的

本試験の目的は、異なる長さの本品ステントについて、軸方向疲労負荷、曲げ疲労負荷、ねじり

疲労負荷の各試験を施行して、疲労特性の特性を明らかにすることであった。

評価

検体

表 4.2.1.6-11. 本品ステントの有限要素解析(FEA)モデル

品目 負荷モード 負荷条件 Zilverステントの

サイズ(mm)

7 Frの Zilver

ステントの

有限要素モデル*

軸方向 ±*%(ゲージ長の変化) *:* x 20

*:* x 80

曲げ ステント軸(ルーメンの中心)ま

で測定した曲率半径が**:* mm**

*:* x 20

*:* x 80

ねじり *:**°/mm **:* x 20

**:* x 80

6 Frの Zilver

ステントの

有限要素モデル*

軸方向 ±*%(ゲージ長の変化) *:* x 20

*:* x 140

曲げ ステント軸(ルーメンの中心)ま

で測定した曲率半径が**:* mm**

*:*x 20

*:* x 140

ねじり *:**°/mm **:* x 20

**:* x 140

* 検体として「Zilverステント」を用いた。このステントは金属ベアメタルステントであるが、パ

クリタキセルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコーテ

ィングはパクリタキセルのみで構成され、非常に薄い(**************:μm***

*、**********:μm**)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を与

えないと判断した。

** より小さな値はより強い曲げであることを示す。

検体選択の妥当性

それぞれの負荷モードに対するワーストケースの直径をもつステントを、重複のない Zilverステ

ントの事前の有限要素解析に基づいて選択した。それぞれの負荷モードに対して、ワーストケー

スである直径をもつ最小及び最大の長さをもつ検体を評価した(この試験に含まれる 140 mm長

のステントは、120 mmの本品ステントの性能を適切に代表する)。試験@***:**:*******、

@*****:***、@*@*:****で用いた幾何形状及び有限要素メッシュ(網目状構造)を本試験で使用

した。それぞれのモデルに使われたナイチノール原材料の性能は、ステント製造に用いるナイチ

ノールチューブの試験データと一致する。

試験方法

最終段階で電解研磨されるステントを想定し、直径の中央平面を基に、有限要素モデルを作成し

た。有限要素解析モデルの条件として、所定のモードにかける前に Zilver ステントを 37°Cで公称

径まで拡張した。上記の表のとおり、ステントに拍動的負荷、軸方向負荷、曲げ負荷、ねじり負

荷をかけた。歪みを記録し、それぞれの負荷モードにおいて、ワーストケースのステントでの疲

労線図を作成した。疲労線図から計算した安全率を、それぞれの負荷モードにおいて、最大およ

び最小のステント長の検体で比較した。

判定基準

これらの分析は、特性評価のみを目的として施行した。

Page 98: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

172

結果及び考察

疲労負荷条件下において、全ステントサイズのすべてのひずみ点は、疲労境界線の下側にあり、

疲労寿命は無限であることを示している。さらに、最大歪み及び安全率は軸方向疲労負荷と曲げ

疲労負荷をかけられた 20 mmと 80 mmのステントで同一であった。ねじり疲労負荷における 20

mm及び 80 mmの 7 Fr ステントの安全率差はおよそ@%であり、曲げ疲労負荷における 20 mm及

び 140 mmの 6 Frステントの安全率差はおよそ*%であったので、実質的な差はないと判定した。

表 4.2.1.6-12. ステントの長さが疲労特性に及ぼす影響の結果

品目 負荷

モード

ワーストケース

の直径(mm)

Zilverステントの

サイズ(mm) 安全率

7 Frの Zilver

ステントの

有限要素モデル

軸方向 * * x 20 *:*

* x 80 *:*

曲げ * * x 20 *:* * x 80 *:*

ねじり ** ** x 20 *:* ** x 80 *:*

6 Frの Zilver

ステントの

有限要素モデル

軸方向 * * x 20 *:*

* x 140 *:*

曲げ * * x 20 *:*

* x 140 *:*

ねじり ** ** x 20 *:* ** x 140 *:*

結論

異なる長さの ステントをそれぞれ、いくつかの異なる負荷モードで評価した結果、同一または同

程度の安全率を示したことから、疲労特性はほぼ同等であることが判明した。したがって、本品

ステントの耐疲労性能はステントの長さに依存しないことが確認された。

Page 99: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

173

5. In Vitroの拍動的疲労試験 (TS020027, TS020070, TS070062, TS080001)

添付資料ハ-1-14、ハ-1-15、ハ-1-16、ハ-1-17

試験の目的

この試験の目的は、時間的に加速され、生理的にモデル化され、変位制御された拍動的負荷条件

下で、重複のない本品ステントおよび重複のある本品ステントの疲労特性を評価することである。

評価

検体

表 4.2.1.6-13. 拍動疲労試験検体

品目 負荷

モード

サイズ

(mm)

非重複ステント

の個数

重複ステントの

個数

7 Frの Zilverステント*

拍動的

* x 30 23 24 個(12 対)

6 Frの Zilverステント* ** x 30 29 -

6 Frの本品ステント** ** x 30 - 24 個(12 対)

* 検体として「Zilverステント」を用いた。このステントは金属ベアメタルステントであるが、パ

クリタキセルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコーテ

ィングはパクリタキセルのみで構成され、非常に薄い(**************:μm***

*、**********:μm **)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を与

えないと判断した。

** ステントは医薬品有効成分なしで、本品ステントのコーティング工程が施された。

検体選択の妥当性

検体は、自己拡張型ナイチノール製「Zilverステント」である。7 Fr及び 6 Frステントの拍動的疲

労に関しては、それぞれ* mmと*@ mmの直径が最小安全率を持つことが有限要素解析で判明し

たため、これらを検体として用いた。ステントの拍動疲労特性はステント長には依存しないため、

試験の簡便性のため、30mm長を選択した。

試験方法

ステントをチューブ内に展開した後、時間的に加速され、生理的にモデル化され、変位制御され

た環境において 4億サイクル(心臓の鼓動により**年にわたって予想される拍動周期数)の拍動

的負荷にかけた。重複ステントの試験においては、ステントを約 5 mm ほど重ねた。適切な場合、

試験を ASTM F24772で示される直径制御試験法にしたがって行った。ステントが入ったチューブ

を約@*サイクル毎に試験装置から取り外し、高解像度の X線写真に撮り、ステントに破断がな

いか検査した。4億サイクル後、ステントをチューブから抜去し、光学顕微鏡下で破断の有無を検

査した。

判定基準

**サイクル後にステントの破断が認められず、4億サイクル後で、ステントは一続きの構造を維

持しなければならない(すなわち、タイプIIIまたはIVの破断が無いこと。以下の表を参照)

表4.2.1.6-14. ストラットの破断の分類

タイプ 定義

I ストラットの単一破断

II 単一ストラットの複数破断

III 複数のストラットの破断によって生ずるステントの完全な離断

IV 2つの部分に分かれる、または螺旋状の破断によるステントの完全な離断

2 ASTM F2477, Standard Test Methods for in vitro Pulsatile Durability Testing of Vascular Stents.(脈管ステン

トにおける in vitro 拍動耐久性試験の標準的試験方法。)

Page 100: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

174

判定基準の妥当性

拍動の 4億サイクルは、実時間*@年の使用に相当する。

結果及び考察

@********************(表 4.2.1.6-15)、4 億************

********@*****************************@********

***(表 4.2.1.6-16)。したがって、判定基準を満たした。

表 4.2.1.6-15. **サイクルでの拍動的疲労の結果

品目

**サイクル後に破断がある

ステントの個数 判定

非重複 重複

7 x 30 mm 7 Frの Zilver ステント */23 */24 合格

10 x 30 mm 6 Fr の Zilver ステント */29 */24 合格

表 4.2.1.6-16. **サイクル~4億サイクルの間の拍動疲労の結果

品目

**サイクル~4億サイクルの間で

破断があるステントの個数 判定

非重複 重複

7 x 30 mm 7 Frの

Zilverステント

タイプⅠ */23 タイプⅠ */24

合格 タイプ II */23 タイプ II */24

タイプⅢ */23 タイプⅢ */24

タイプ IV */23 タイプ IV */24

10 x 30 mm 6 Fr の

Zilverステント

タイプⅠ */29 タイプⅠ */24

合格 タイプ II */29 タイプ II */24

タイプⅢ */29 タイプⅢ */24

タイプ IV */29 タイプ IV */24

*******:**:**:**************@*********************

************************@************@******

***************

***********@@**********************************

*****************************************@**

***************@******@******@******@*******

*****@*************************

*******:*:@***************************@**********

**************

******@****:***************************************

********************************************

*********************************************

*******************************@************

***************************************@***

******@***********@@***

*********************************************

********************************なお、破断は臨床使用に

Page 101: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

175

おいてステントが完全に内皮化するのに要する時間を十分に超えた時点で生じたことに、留意す

べきである。

結論

In vitroの拍動的疲労試験によって、重複のない本品ステント、および重複のある本品ステントは

**年間に相当する、生理的に妥当な負荷に耐えうることが示された。

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176

6. In Vitroの軸方向疲労試験 (TS040166, TS060003, TS060041, TS070114, TS080034)

添付資料ハ-1-18、ハ-1-19、ハ-1-20、ハ-1-21、ハ-1-22

試験の目的

本試験の目的は、非重複 ステントと重複ステントの両方について、時間的に加速された長軸方向

負荷下での、本品ステント の疲労特性を評価することである。

評価

検体

表 4.2.1.6-17. 軸方向疲労用検体

品目 負荷

モード

サイズ

(mm)

非重複ステン

トの個数

重複ステン

トの個数

7 Frの本品ステント*

軸方向

* x 60 3 40

7 Frの Zilverステント** 8 -

6 Frの本品ステント* * x 60

- 28

6 Frの Zilverステント** 20 -

*ステントは医薬品有効成分なしで、本品ステントのコーティング工程が施された。

**検体として「Zilver ステント」を用いた。このステントは金属ベアメタルステントであるが、

パクリタキセルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコー

ティングはパクリタキセルのみで構成され、非常に薄い(**************:μm**

**、**********:μm**)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を与

えないと判断した。

検体選択の妥当性

検体は、自己拡張型ナイチノール製 Zilverステントである。有限要素解析によって、7 Fr及び 6 Fr

ステントにおいてはそれぞれ* mmと* mmの直径が軸方向疲労における最小安全率を持つことが

判明したため、これらを検体として用いた。ステントの軸方向疲労特性はステント長に依存しな

いことが確認されたため、試験の簡便性のために、60 mm長を選定した(@@*******を参照)。

米国食品医薬品局(FDA)との相談(20**年@*月@*日)において、軸方向に繰り返し負荷をか

けたステントの耐久限度については、6 個の検体(6個の非重複ステント、または 6 個の重複ステ

ント)で検証可能であることが確認された。

試験方法

ステントをチューブ内に展開し、不具合が認められるか、あるいは*:****サイクル(歩行に関連

した軸方向の動き**年に相当)に達するまで、変位制御された環境下において長軸方向の伸長/

圧縮疲労負荷にかけ、耐久限度を測定した。重複ステントの試験においては、ステントを約 5 mm

ほど重ねた。耐久限度はゲージ長の変化率で表し、全ての検体が破断なしに*:****サイクルを達

成した変化率で、かつそれよりもわずかに高い変化率において、*:****サイクルに達する前に少

なくとも 1 つの検体に破断が認められた場合の変化率と定義した。耐久限度を測定するために、

検体をかけるゲージ長の変化率を次第に減少させていった。ステントはゲージ部分に破断がない

か、1 日に 1 回目視で観察された。

判定基準

Zilverステントの耐久限度は、臨床的にかかると予想される負荷(+*/-*%のゲージ長の変化率)を

満たす、または超えるものでなければならない。

判定基準の妥当性

軸方向の負荷を繰り返し受けると予想されるワーストケースは、******サイクルに相当する*@

年間の歩行によって@%短縮することである。したがって、****%短縮以上の軸方向の耐久限度

は、許容できるものであるとみなされる。

Page 103: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

177

結果及び考察

軸方向負荷に対する耐久限度を表 4.2.1.6-18に示す。**********************

*********************@*******@******************

************@*@*@**************(耐久限度を表 4.2.1.6-15に太

字で表示)ため、判定基準を満たした。耐久限度を超過する負荷で試験したステントは破断を示

した。

表 4.2.1.6-18. ステントの軸方向負荷に対する耐久限度の測定

品目

臨床的に

かかる負荷

(長さの変化率)

構成 軸方向負荷

(長さの変化率)

破断がない

ステントの

個数

判定

7 FrのZilver

ステント

+ */-*%

非重複

± **% */*

合格 ± *% */*

± *% */*

± *% */*

重複

+*/- **% *対中*対

合格

+*/- **% *対中*対

+*/- **% *対中*対

+*/- *% *対中*対

+*/- *% *対中*対

6 FrのZilver

ステント

非重複

+*/- **% */*

合格 +*/- **% */*

+*/- **% */*

+*/- *% */*

重複

+*/- *% *対中*対

合格 +*/- *% *対中*対

+*/- *% *対中*対

結論

当該軸方向疲労試験によって、重複のない本品ステントおよび重複のある本品ステントが in vitro

における臨床的にかかる負荷を上回る条件下で、**年相当の耐久限度を有することが示された。

Page 104: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

178

7. In Vitroの曲げ疲労試験 (TS050104, TS050105, TS070091, TS080002)

添付資料ハ-1-23、ハ-1-24、ハ-1-25、ハ-1-26

試験の目的

本試験の目的は、時間的に加速された正弦屈曲を施し、重複本品ステントと非重複本品ステント

について、曲げ疲労特性を評価することである。

評価

検体

表 4.2.1.6-19. 検体

品目 負荷

モード

サイズ

(mm)

非重複ステント

の個数

重複ステントの

個数

7 Frの本品ステント*

曲げ

* x 20 9 20

6 Frの Zilverステント** * x 20

24 -

6 Frの本品ステント* - 20

* ステントは医薬品有効成分なしで、本品ステントにおけるコーティングの工程が施された。

** 検体として「Zilver ステント」を用いた。このステントは金属ベアメタルステントであるが、

パクリタキセルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコー

ティングはパクリタキセルのみで構成され、非常に薄い(**************:μm**

**、**********:μm **)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を与

えないと判断した。

検体選択の妥当性

検体は、自己拡張型ナイチノール製 Zilverステントであった。有限要素解析において、7 Fr及び 6

Frステントについては、それぞれ* mmおよび* mmの公称径が曲げ疲労における最小の安全率を

持つことが判明したため、これらを選択した。ステントの曲げ疲労特性はステント長には依存し

ないことが確認されたので、試験の簡便性のため、20 mmの長さを選択した(@@*******を参

照)。米国食品医薬品局(FDA)との相談(20**年**月**日)で、曲げ負荷を繰り返しかけられ

たステントの耐久限度については、6個の検体(6個の非重複ステント、または 6 個の重複ステン

ト)で検証可能であることが確認された。

試験方法

ステントをチューブ内に展開し、不具合が認められるか、あるいは*:****サイクル(歩行に関連

した軸方向の動き**年に相当)に達するまで、変位制御された環境下において正弦屈曲負荷をか

け(適切な周波数は試験機の反応によって決定される)、耐久限度を測定した。重複ステントの

試験においては、ステントを約 5 mmほど重ねた。耐久限度は曲率半径で表し、全ての検体が破

断なしに*:***万サイクルを達成した曲率半径で、かつそれよりもわずかに高い曲率半径において、

*:***万サイクルに達する前に少なくとも 1つの検体に破断が認められた場合の曲率半径と定義し

た。耐久限度を測定するために、検体を次第に大きい曲率半径にかけた。ステントのゲージ部分

に破断がないか、1 日に 1回目視で観察した。

判定基準

ステントの耐久限度における曲率半径は、臨床的にかかると予想される負荷(** mmの曲率半

径)以下でなければならない。

判定基準の妥当性

繰り返し曲げ負荷において予想されるワーストケースは、**年間の歩行に相当する**:****サイ

クルにおいて、** mmの曲率半径である。

Page 105: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

179

結果及び考察

表 4.2.1.6-20 に、曲げ負荷の耐久限度を示す。********@**@***********

*************************************************

********@*****************ため、判定基準を満たした。より小さな曲

率半径で試験したステントは破断を示した。

表 4.2.1.6-20. ステントの曲げ負荷に対する耐久限度の測定

品目

臨床的にかかる

負荷

(曲率半径*)

構成

曲げ負荷 破断がな

いステン

トの個数

判定 ステントの中

心軸まで測定

した曲率半径

ステントの内

径まで測定し

た曲率半径

7 FrのZilver

ステント

** mm(ステント

の中心軸まで測

定した曲率半

径)

非重複 **:* mm **:* mm */*

合格 **:* mm **:* mm */*

重複

**:* mm **:* mm *対中*対

合格 **:* mm **:* mm *対中*対

**:* mm **:* mm *対中*対

**:* mm **:* mm *対中*対

6 FrのZilver

ステント

非重複

**:* mm *:* mm */*

合格

**:* mm **:* mm */*

**:* mm **:* mm */*

**:* mm **:* mm */*

**:* mm **:* mm */*

**:* mm **:* mm */*

重複 **:* mm **:* mm *対中*対

合格 **:* mm **:* mm *対中*対

結論

In vitroにおいて 曲げ疲労試験を行い、非重複の本品ステントと重複させた本品ステントが** mm

未満の曲率半径において、**年相当の耐久限度を有することが示された。これは判定基準を満た

している。

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180

8. In Vitroのねじり疲労試験 (TS040059, TS060016, TS050076, TS060017, TS070090, TS080003)

添付資料ハ-1-27、ハ-1-28、ハ-1-29、ハ-1-30、ハ-1-31、ハ-1-32

試験の目的

本試験の目的は、非重複ステント及び重複ステントの両方で、ねじり負荷がかかった状態で本品

ステントの疲労寿命を in vitroで評価することである。

評価

検体

表 4.2.1.6-21. 検体

品目 負荷

モード

サイズ

(mm)

非重複ステント

の個数

重複ステントの

個数

7 Frの本品ステント*

ねじり ** x 40

3 6

7 Frの Zilverステント** 7 14

6 Frの Zilverステント** 24 -

6 Frの本品ステント* - 28

* ステントは、医薬品有効成分なしで本品ステントにおけるコーティングの工程が施された。

** 検体として「Zilver ステント」を用いた。このステントは金属ベアメタルステントであるが、

パクリタキセルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコー

ティングはパクリタキセルのみで構成され、非常に薄い(**************:μm**

**、***********: μm **)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を

与えないと判断した。

検体選択の妥当性

試験を行ったステントの個数は、過去のステント試験の実績に基づいて、疲労寿命を評価するの

に十分な数であると判断した。Zilverステントは本申請品を代表している。ねじり疲労に関して、

** mmの公称径のステントが最小安全率を持つことが有限要素解析で判明したので、** mmの直

径のステントを試験にかけた。ステントの曲げ疲労挙動は長さとは関係しないため、試験の簡便

性のために、40 mmの長さを選択した。

試験方法

各ステントをチューブ内に展開した。重複の試験においては、ステントを約5 mm重複した。検体

の両端をマンドレルに固定保持させた。一方のマンドレルを試験装置の固定部品に取り付け、他

方のマンドレルを試験装置の回転部品に固定した。ゲージ長を、非重複ステントに対しては32

mmに、重複ステントに対しては64 mmに設定し、ステントが展開されたチューブをそれぞれ、回

転制御した正弦ねじり負荷にかけた。不具合が認められるか、あるいは*****サイクルに達する

まで試験を行い、耐久限度が測定された。耐久限度の定義は、すべての検体が破断なしに*****

サイクルを達成し、かつそれよりもわずかに大きい回転角において、*****サイクルに達する前

に少なくとも1つの検体に破断が認められた場合の最大回転角とした。耐久限度を測定するために、

検体は次第に小さい回転角にかけられた。各検体は破断がないか、1日に1回目視で観察された。

判定基準

ステントの耐久限度は、臨床的にかかると予想される負荷(*:*°/mmの回転)を満たすか、あるい

は超えるものでなければならない。

判定基準の妥当性

繰り返しねじり負荷において予想されるワーストケースは、*@年間の歩行に相当する******サ

イクルにおいて、*:*°/mmの回転 (32 mmゲージ長で**°の回転)である。

Page 107: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

181

結果及び考察

表 4.2.1.6-22 に、ねじり負荷の耐久限度を示す。 ***********************@***

**********************************************

*********ため、判定基準を満たした。耐久限度を上回る回転角にかけたステントに、

破断が認められた。

表 4.2.1.6-22. Zilverステントのねじり負荷に対する耐久限度の測定

品目 臨床的に

かかる負荷

構成

ねじり負荷

(回転)

破断がない

ステントの個数 判定

7 FrのZilver

ステント

*:*°/mm

非重複

*:*°/mm */*

合格 *:*°/mm */* *:*°/mm */* *:*°/mm */*

重複

*:*°/mm *対中*対

合格 *:*°/mm *対中*対

*:*°/mm *対中*対

6 FrのZilver

ステント

非重複

*:*°/mm */*

合格

*:*°/mm */* *:*°/mm */* *:*°/mm */* *:*°/mm */*

重複

*:*°/mm *対中*対

合格 *:*°/mm *対中*対

*:*°/mm *対中*対

結論

in vitroの ねじり疲労試験によって、重複のない本品ステントと重複のある本品ステントが、ゲー

ジ長*:*°/mmを上回る条件下で*@年相当の耐久限度を有することが示され、これは判定基準を満

たす。

Page 108: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

182

9. パクリタキセル溶液の安定性 (609021TA 改正版)

添付資料ハ-1-33

試験の目的

本試験の目的は、ステントのコーティングに用いられるパクリタキセル/エタノール溶液の安定

性を評価することである。

評価

検体

各時点で 2 組のパクリタキセル/エタノール溶液(パクリタキセル*mg/ml エタノール)を、検証

された安定性指示高速液体クロマトグラフィー法(HPLC)に供した。試料は***、*日目、

**日目、**日目、**日目に測定した。

検体選択の妥当性

試料は、ステントのコーティングに使用される標準のパクリタキセル/エタノール溶液(* mL

のエタノールあたり* mg のパクリタキセル)から得たものである。試料の選択は、検証され

た@@@@*****::*********に基づき、標準溶液の安定性を評価するのに適

切であったと判断した。

試験方法

********************************************

*************************************************

***********************************************

******************************************

***************************@@**********************

****************************************

判定基準

パクリタキセル/エタノール溶液は、混合後少なくとも**日間使用可能でなければならない。

判定基準の妥当性

パクリタキセル*mg/ml エタノールの溶液は、混合後**日間まで使用可能とされているため。

結果および考察

製造品質管理システムの指示に基づいて、試験を実施した。表 4.2.1.6-23に示されるように、標

準溶液の組成は経時的に変化しなかった。(注記: **日目に採取予定の試料は、**日目に採取さ

れた)。パクリタキセル濃度の経時変化を表 4.2.1.6-24 に示す。

表 4.2.1.6-23. @**:*****標準溶液試料の被分析物の比率

成分 *日目 *日目 **日目 **日目

パクリタキセル **:*:% **:*:% **:*:% **:*:%

7-エピパクリタキセル *:**% *:**% *:**% *:**%

10-デアセチルパクリタキセル *:**% *:**% *:**% *:**%

保持時間 5.5分の未知物質 *:**% *:**% *:**% *:**%

保持時間 13.6分の未知物質 *:**% *:**% *:**% *:**%

保持時間 21.0分の未知物質 *:**% *:**% *:**% *:**%

保持時間 29.3分の未知物質 *:**% *:**% *:**% *:**%

保持時間 31.4分の未知物質 *:**% *:**% *:**% *:**%

保持時間 34.6分の未知物質 *:**% *:**% *:**% *:**%

Page 109: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

183

表 4.2.1.6-24. パクリタキセル濃度の経時変化

成分 日

* * ** **

PTX濃度(μg PTX/mLエタ

ノール) **** **** **** ****

結論

**日間、本溶液の化学組成に有意な変化は認められなかった。従って、少なくとも**日間の安

定性を条件とする判定基準を本溶液は満たすものと判断する。

Page 110: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

184

10. 薬剤コーティングの安定性試験-1 年実時間 :**********:**:***:@******:

添付資料ハ-1-34

試験の目的

本試験の目的は、本品ステントの保存期間を確立することであった。コーティングしたステント

を、長期間保存の後に評価した。

評価

検体

それぞれの試験に対して、少なくとも 9 個の 10×30 mmの 7 Fr 本品ステント(3つのロットからそ

れぞれ最低 3個)を表 4.2.1.6-25 に示す時点において使用した。ステントは、少なくとも 2 つの別

のロットからの医薬品用有効成分パクリタキセルでコーティングが施された。

表 4.2.1.6-25. 試験を行ったステントの、時点ごとの個数

ロット 長期保存月数(25℃、60%相対湿度)

0 3 6 9 12

1 n=3 n=3 n=3 n=3 n=3 2 n=3 n=3 n=3 n=3 n=3 3 n=3 n=3 n=3 n=3 n=3 4 n=3 n=3 n=3 n=3 n=3

検体選択の妥当性

パクリタキセル用量濃度はステントサイズにかかわらず同じ(3 μg/mm2)であり、試験検体の大

きさは本試験の評価に影響しない。また、薬剤コーティングに接触するデリバリーシステム部分

の原材料は同じであり、さらに、6 Frおよび 7 Frの本品ステントの最終製品は出荷判定試験によ

り、同じ品質検査項目が設定されていることから、10 x 30 mmの薬剤溶出ステントは、本申請品

のすべてのステントサイズを代表する。検体数は、過去の安定性試験の実績に基づいて適切な数

であると判断した。

試験方法

長期間保存のため、試料は25ºC±2℃/60%±5%相対湿度の状態で保存された。平均含有量及び純度

(分解生成物および不純物の分布)を、検証された安定性指示高速液体クロマトグラフィー法

(HPLC)を用いて評価した[M1225: UV検出を備えた傾斜溶離法HPLC(米国薬局方フォーラム

法より修正)による、パクリタキセル塗布医療機器の分析と不純物(妥当性確認報告書、プロジェ

クト番号:1946-002;PPD Development)]。In vitroにおけるパクリタキセルの放出は、米国薬局方

(USP)<724> (薬剤放出)、およびUSP <711>( 溶解)に基づく装置4、及び手順を用いて評価を

行った。 溶出溶媒(血清)中のパクリタキセル量は、実証された高速液体クロマトグラフィー法

で定量した (LC212.2: ブタ血漿又はブタ血清中のタキソールの高速液体クロマトグラフィー解

析)。 粒子状物質は、USP<788>に厳密に基づいた試験方法を用いて評価し、留置中のパクリタキ

セル溶出ステントから生ずる粒状物質の測定を検証した(@:@試験書類セット: PART-02.04、自

己拡張型ステントを用いた粒子発生)。

Page 111: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

185

判定基準

表 4.2.1.6-26. 1年安定性試験の判定基準

試験 判定基準 判定基準の妥当性

平均含有量 ラベル表示量の±**%

試験時のロットリリ

ースの際に使用した

基準と同じであるた

め。

純度

(分解生成物/

不純物の分布)

長期保存条件において測定された個々の分解

生成/不純物は、*%を超えてはならない。な

お、分解生成物/不純物の合計量は、*%を超

えてはならない。

日米 EU 医薬品規制

調和国際会議

(ICH)ガイドライ

ンより

In vitroにおけ

るパクリタキセ

ル薬剤放出

長期保存条件においては、所定のロットから

得た最初の 3本のステントについて、20 分、

45 分、360分間溶解したパクリタキセルは、

20 分で*@%~**%、45 分で**%~**%、360分

で**%~***%の範囲とする。これらの基準を

満たさないロットについては、別のサンプル

(n=3)でさらに試験を行った。そのロット

が合格するには、計 6本のステントの合計平

均溶解率が 20 分で**%~**%、45 分で

**~**%、360 分で**%以下でなければならな

い。

USP 推奨の、多重レ

ベル試験及び許容ア

プローチから適用

粒子状物質

長期保存試料において、個々のステントの粒

子状物質は、粒径≧25μmの粒子数が≦600で

あり、かつ、ステントの展開中に発生する

個々のステントの粒子状物質は、粒径≧10μm

の粒子数が≦6,000 でなければならない。

USP <788>より

結果及び考察

<平均含有量及び不純物に関する長期試験>

25°C、60% 相対湿度で 0、3、6、9、12 ヶ月保存したステントはすべて、薬剤量を保っており、判

定基準の下限である、ラベル表示の**%未満にはならなかった。6ヶ月保存したステントの 1 つの

ロットの平均含有量が、判定基準の上限(表示の***%)を僅かに超えた(当該ロットの平均含有

量は、表示の***%を示した)。このロットはその後のすべての保存時点(すなわち、9ヶ月、12

ヶ月の保存)で規格範囲内であったので、6 ヶ月の結果は、規格から散発的に外れた結果であり、

有意ではないと判断した。構造既知及び未知の分解生成物/不純物のすべてが判定基準を満たし、

長期保存後、表示の*%未満であった。1 つの分解生成物/不純物だけが定量限界(7-エピパクリタ

キセル、表示の*:**%)に達し、他の値はすべて、定量限界以下(表示の*:*%未満)であった。

Page 112: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

186

表 4.2.1.6-27. 長期保存:平均含有量及び不純物の評価

条件-長

期間

(月)

平均含有量の

測定値とラベ

ル表示量の比

率(判定基準:

表示の**~***%)*

平均含有

量評価結

7-エピパク

リタキセル

(判定基

準:表示の

*%以下)

分解生成物/不

純物の合計

(%)(判定基

準:表示の*%

以下)

分解生

成物/不

純物評

価結果

25°C、

60% 相対

湿度

0

1

2

3

4

***%

***%

***%

***%

合格

合格

合格

合格

*:**@

@****

@****

@****

*:**@

@****

@*****:**@

合格

合格

合格

合格

3

1

2

3

4

***%

***%

***%

***%

合格

合格

合格

合格

*:**@

*:**@

@****

@****

*:**@

*:**@

*:**@

*:**@

合格

合格

合格

合格

6

1

2

3

4

**:*%

***%

**:*%

***%

合格

合格

合格

不合格†

*:**@

@*****:**@

@****

*:**@

*:**@

*:**@

*:**@

合格

合格

合格

合格

9

1

2

3

4

***%

***%

***%

***%

合格

合格

合格

合格

*:**@

*:**@

@****

@****

*:**@

*:**@

*:**@

*:**@

合格

合格

合格

合格

12

1

2

3

4

***%

***%

***%

***%

合格

合格

合格

合格

*:**@

*:**@

@*****:**

*:**@

*:**@

*:**@

*:**@

合格

合格

合格

合格

注:「<定量限界」とは定量限界未満(表示の*:**%以下)を意味する。

* 各ロットの平均値は時点ごとに報告される。

† この時点でのみ、表示の**~***%を逸脱する。

<In Vitroにおける薬剤放出試験>

12 ヶ月の保存後、溶解値はすべてパクリタキセル放出率の規格範囲内であった。3 ヶ月において、

2 つの溶解値(**%及び**%)が、360 分におけるパクリタキセル放出率の規格値**%を僅かに下

回った。このロットはその後のすべての保存時点(すなわち、6、9、12ヶ月保存の後)で、規格

範囲内であったので、3ヶ月の結果は、規格から散発的に外れた結果であり、有意ではないと判断

した。

Page 113: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

187

表 4.2.1.6-28. In vitro の薬剤放出に関する長期保存の結果

試料の時間 20 分 45 分 360分

結果

規格、n = 3

(規格、n = 6)

**-**%

(**-**%)

**-**%

(**-**%)

**-***%

(***%)

ロット

25°C、60%相対

湿度での時間

(月)

1

0 **:% **% ***% 合格

3 **% (**%) **% (**%) **% (**%) 不合格*

6 **% **% **% 合格

9 **% **% **% 合格

12 **% **% **% 合格

2

0 **% **% **% 合格

3 **% **% **% 合格

6 **% **% **% 合格

9 **% **% **% 合格

12 **% **% **% 合格

3

0 **% **% **% 合格

3 **% **% **% 合格

6 **% **% **% 合格

9 **% **% **% 合格

12 **% **% **% 合格

4

0 **% **% **% 合格

3 **% (**%) **% (**%) **% (**%) 不合格*

6 **% **% **% 合格

9 **% **% **% 合格

12 **% **% **% 合格

* これらのロットは、360分で規格を満たさなかったが、他の時点すべてで規格範囲内であった。

規格値から散発的に外れただけであるため、有意ではないと判断した。

<粒子状物質試験>

25°C、60% 相対湿度で保存した後、0、3、6、9、12 ヶ月の時点で、粒子状物質について分析した

ステントはすべて、粒径 10 μm以上の粒子が 6,000個以下、粒径 25 μm以上の粒子が 600個以下の、

USP<788>の保守的な許容限界を十分に満たした。

Page 114: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

188

表 4.2.1.6-29. 粒子状物質試験結果

ロット

25°C、60%相対

湿度での時間

(月)

粒径 10 μm以上の粒子個

数(判定基準:6,000個

以下)

粒径 25 μm以上の粒子個

数(判定基準:600 個以

下)

結果

1

0

****

***

***

**

*

**

合格

合格

合格

3

***

***

***

**

**

**

合格

合格

合格

6

***

***

***

**

**

*

合格

合格

合格

9

*

***

***

*

**

*

合格

合格

合格

12

***

*

**

**

*

*

合格

合格

合格

2

0

*

***

*

*

*

**

合格

合格

合格

3

***

***

***

**

**

**

合格

合格

合格

6

**

***

*

*

**

*

合格

合格

合格

9

***

***

***

*

*

*

合格

合格

合格

12

***

***

***

***

**

**

合格

合格

合格

3

0

***

***

***

*

*

*

合格

合格

合格

3

***

***

***

**

**

**

合格

合格

合格

6

***

*

*

*

*

*

合格

合格

合格

9

***

**

**

**

*

*

合格

合格

合格

12

**

***

****

**

*

***

合格

合格

合格

Page 115: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

189

ロット

25°C、60%相対

湿度での時間

(月)

粒径 10 μm以上の粒子個

数(判定基準:6,000個

以下)

粒径 25 μm以上の粒子個

数(判定基準:600 個以

下)

結果

4

0

***

****

**

*

*

**

合格

合格

合格

3

***

***

****

*

**

**

合格

合格

合格

6

***

***

***

**

**

*

合格

合格

合格

9

***

***

***

*

*

**

合格

合格

合格

12

***

**

***

**

***

***

合格

合格

合格

結論

本品ステントのコーティングについて、25°C・60%相対湿度における長期保存後、平均含有量及

び不純物、in vitroの薬剤放出、粒子状物質について試験を行った。これらの試験条件下で、本品

薬剤溶出ステントは最低 12 ヶ月の安定性を維持することがわかった。

Page 116: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

190

11. 薬剤コーティングの安定性試験-2 年実時間および 6 ヶ月加速 (***@*******:*:**、100610BM)

添付資料ハ-1-35、ハ-1-36

要約

以下に示す試験の目的は、本申請品の薬剤コーティングにおける長期保存後の安定性を評価する

ことである。試験は ICH ガイドライン Q1A (R2) “Stability Testing of New Drug Substances and

Products”(新原薬及び新製剤の安定性試験)に基づいて実施した。2 年実時間試験を実施し、さら

に評価の一環として 6ヶ月加速試験を実施した。ICH ガイドライン Q1A (R2) によると、加速試験

の条件は、過酷な保存条件により原薬成分あるいは製剤の化学分解を促進することを意図してい

る。加速試験は正式な安定性試験の一部として 2年実時間試験に加えて実施したが、この試験結

果は、輸送中に起こりうるような、ラベル表示の保存条件を一時的に逸脱した場合の影響を評価

するのに利用できる。

Page 117: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

191

11. - 1) 薬剤コーティングの安定性試験-2 年実時間 :***@*******:*:**:

添付資料ハ-1-35

試験の目的

本試験の目的は、本申請品の薬剤コーティングにおける長期保存後の安定性を評価することであ

る。評価は ICHガイドライン Q1A (R2) “Stability Testing of New Drug Substances and Products”(新原

薬及び新製剤の安定性試験)に基づいて実施した。

評価

検体

1つの原材料供給業者より提供された原薬(パクリタキセル)の異なる2つのロットを使ってコー

ティングされた、5つの製品ロットについてデータを採取した。各時点の試験のため使用したステ

ントの個数を、表4.2.1.6-30に示す。

表 4.2.1.6-30. 各時点で使用したステント数

ステントの

サイズ

(mm)

試験

長期保存月数(25℃、60%相対湿度)

0 6 9 12 18 24

6 x 20

(7 Fr) 1

平均含有量及び不純物 6 3 3 3 3 3

微粒子 3 3 3 3 3 3

In Vitro薬剤放出 6 3 3 3 3 3

8 x 40

(7 Fr)

1

平均含有量及び不純物 6 3 3 3 3 3

微粒子 3 3 3 3 3 3

In Vitro薬剤放出 6 3 3 3 3 3

2

平均含有量及び不純物 6 3 3 3 3 3

微粒子 3 3 3 3 3 3

In Vitro薬剤放出 6 3 3 3 3 3

3

平均含有量及び不純物 6 3 3 3 3 3

微粒子 3 3 3 3 3 3

In Vitro薬剤放出 6 3 3 3 3 3

10 x 80

(7 Fr) 1

平均含有量及び不純物 6 3 3 3 3 3

微粒子 3 3 3 3 3 3

In Vitro薬剤放出 6 3 3 3 3 3

時点ごとに試験を行ったステントの

合計個数 75 45 45 45 45 45

検体選択の妥当性

ステントのサイズに関係なく、すべてのステントのパクリタキセル塗布濃度は 3μg/mm2である。

また、薬剤コーティングに接触するデリバリーシステム部分の原材料は同じであり、さらに、6 Fr

および 7 Frの本品ステントの最終製品は出荷判定試験により、同じ品質検査項目が設定されてい

ることから、検体のサイズは試験結果に影響を及ぼさないと考えられる。それでも、本申請品の

製品群を代表する 3 つのステントサイズ(6 x 20mm, 8 x 40mm、10 x 80mm)を検体とした。これ

ら 3つのステントサイズについて、パクリタキセル含有量は、6 x 20mmのステントで 219μg、

8 x 40mmのステントで 453μg、10 x 80mmのステントで 879μg である。検体数は、過去の末梢(血

管用)ステントの安定性試験に基づき適切であると判断する。

試験方法

長期間保存のため、試料は25ºC±2℃/60%±5%相対湿度の状態で保存された。

平均含有量及び純度(分解生成物および不純物の分布)を、検証された安定性指示高速液体クロ

マトグラフィー法(HPLC)を用いて評価した[M1225: UV検出を備えた傾斜溶離法HPLC(米国

Page 118: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

192

薬局方フォーラム法より修正)による、パクリタキセル塗布医療機器の分析と不純物(妥当性確認

報告書、プロジェクト番号:1946-002;PPD Development)]。In vitroにおけるパクリタキセルの放

出は、米国薬局方(USP)<724> (薬剤放出)、およびUSP <711>( 溶解)に基づく装置4、及び溶

解試験方法を用いて評価を行った。溶解粒子状物質は、USP <788>(注入による粒子状物質)に基

づき、留置中にパクリタキセル溶出ステントから発生する粒状物質の測定について検証された試

験法で評価した(GLP試験: PART-02、TS070060、自己拡張型ステントを用いた粒子の発生)。

判定基準

表 4.2.1.6-31. 平均含有量、純度、および粒子状物質の判定基準

試験 判定基準 判定基準の妥当性

平均含有量 ラベル表示量の±**%

試験時の

ロットリリースの際に使用し

た基準と同じであるため。

純度(分解生

成物/不純物

の分布)

長期保存条件において測定された個々

の分解生成/不純物は、*%を超えてはな

らない。なお、分解生成物/不純物の合

計量は、*%を超えてはならない。

日米 EU 医薬品規制

調和国際会議(ICH)

ガイドラインより

粒子状物質

長期保存試料において、個々のステン

トの粒子状物質は、粒径≧25μmの粒子

数が≦600 であり、かつ、ステントの

展開中に発生する個々のステントの粒

子状物質は、粒径≧10μmの粒子数が≦

6000でなければならない。

USP <788>より

表 4.2.1.6-32. In vitro でのパクリタキセル放出の判定基準

時間

(分)

溶出限界率(n=3) 溶出限界率(n=6)*

下限 中央 上限 下限 中央 上限

4 ** ** ** **:* ** **:* 8 ** ** ** **:* ** **:* 14 **:* **:* **:* ** **:* **

20 ** ** ** **:* ** **:* 32 ** ** ** **:* ** **:* 46 ** ** ** **:* ** **:* 60 ** ** ** **:* ** **:*

* 最初のサンプリング(n=3)で許容基準を満たさないロットは、USPが推奨する多重レベル試験

およびその許容基準の手引きを適用し、2回目のサンプリング(n=3)によってさらに試験した。

ロットが合格するには、計6本のステントの合計平均溶出率がより厳格化した基準を満たさな

ければならない。

In vitroパクリタキセル放出判定基準の妥当性

In vitroパクリタキセル放出の判定基準は、提案されたロットリリースの判定基準に基づく。

Page 119: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

193

結果及び考察

<平均含有量及び不純物に関する長期試験>

経過 0 時間の全てのステントは、ロットリリース判定基準を満たした。25℃/60%相対湿度で 6、9、

12、24 ヶ月間保存したステントはすべて薬剤量を維持し、許容基準の下限である、ラベル表示の

**%未満にはならなかった。全ての既知及び未知の分解生成物/不純物は許容基準を満たし、長期保

存後においてラベル表示の@%未満であった。定量限界に達した分解生成物/不純物は 3 つ(セファ

ロマンニン、10-デアセチルパクリタキセル及び 7-エピ-パクリタキセル)であり、その他全ての既

知の分解生成物/不純物はラベル表示定量限界である*:*%未満であった。結果は、表 4.2.1.6-33、

4.2.1.6-34、4.2.1.6-35 にステントサイズ別に示す。

表 4.2.1.6-33. 6x20mmのステントにおける、長期間の平均含有量および不純物試験の結果

ステン

トサイ

(mm)

ロッ

経過

時間

(月)

平均含有量の

測定値とラベ

ル表示量の比

率(判定基

準:表示の**~***%)*

平均含

有量評

価結果*

10-デアセチ

ルエピパクリ

タキセル(許

容基準:ラベ

ル表示の*%

以下)

7-エピ-パク

リタキセル

(許容基準:

ラベル表示

の@%以

下)

分解生成物/

不純物の合

計(%)(許容

基準:ラベ

ル表示の*%

以下)

分解生成

物/不純物

の評価結

6 x 20 1

0 **% 合格 各試料

*:*%**

各試料

*:*%**

各試料

*%** 合格

6 **% 合格

*:**%

*:**%

**:*%

*:**%

*:**%

*:**%

各試料

*%** 合格

9 **% 合格

**:*%

*:**%

**:*%

**:*%

*:**%

**:*%

各試料

*%** 合格

12 **% 合格

**:*%

**:*%

*:**%

*:**%

*:**%

*:**%

各試料

*%** 合格

18 **% 合格 各試料

*:*%**

*:**%

*:**%

*:**%

各試料

*%** 合格

24 **% 合格

**:*%

*:**%

*:**%

*:**%

*:**%

*:**%

各試料

*%** 合格

*平均含有量は、各時点で採取した 3 つの試料の平均値で示す。

Page 120: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

194

表 4.2.1.6-34. 8×40 mmのステントの長期的平均含有量及び不純物試験の要約

ステン

トサイ

(mm)

ロット

経過

時間

(月)

平均含有量の

測定値とラベ

ル表示量の比

率(判定基

準:表示の**~***%)*

平均含

有量評

価結果*

10-デアセチ

ルエピパク

リタキセル

(許容基準:

ラベル表示

の*%以下)

7-エピ-パク

リタキセル

(許容基準:

ラベル表示の

*%以下)

分解生成物/

不純物の合

計(%)(許

容基準:ラ

ベル表示の

*%以下)

分解生成

物/不純物

の評価結

8 x 40

1

0

**% 合格 各試料

*:*%**

各試料

*:*%**

各試料

*%** 合格

2 **% 合格 各試料

*:*%**

各試料

*:*%**

各試料

*%** 合格

3 **% 合格 各試料

*:*%**

各試料

*:*%**

各試料

*%** 合格

1

6

**% 合格

*:**%

*:**%

*%

**:*%

*:**%

**:*%

各試料

*%** 合格

2 **% 合格

**:*%

*:**%

*:**%

各試料

*:*%**

各試料

*%** 合格

3 **% 合格

*:**%

**:*%

**:*%

各試料

*:*%**

各試料

*%** 合格

1

9

**% 合格 各試料

*:*%**

各試料

*:*%**

各試料

*%** 合格

2 **% 合格 各試料

*:*%**

各試料

*:*%**

各試料

*%** 合格

3 **% 合格 各試料

*:*%**

各試料

*:*%**

各試料

*%** 合格

1

12

**% 合格 各試料

*:*%**

**:*%

*:**%

*:**%

各試料

*%** 合格

2 **% 合格 各試料

*:*%**

**:*%

**:*%

*:**%

各試料

*%** 合格

3 **% 合格 各試料

*:*%**

各試料

*:*%**

各試料

*%** 合格

1

18

**% 合格 各試料

*:*%**

*:**%

**:*%

*:**%

各試料

*%** 合格

2 ***% 合格 各試料

*:*%**

*:**%

**:*%

**:*%

各試料

*%** 合格

3 ***% 合格 各試料

*:*%**

各試料

*:*%**

各試料

*%** 合格

1

24

**% 合格

**:*%

*:**%

**:*%

*:**%

*:**%

*:**%

各試料

*%** 合格

2 **% 合格 各試料

*:*%**

*:**%

**:*%

**:*%

各試料

*%** 合格

3 **% 合格 各試料

*:*%**

**:*% *:**%

*:**%

各試料

*%** 合格

Page 121: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

195

*平均含有量は、各時点で 3つの試料の平均値で示す。

表 4.2.1.6-35. 10x80mmのステントにおける、長期間の平均含有量および不純物試験の結果

ステン

トサイ

(mm)

ロッ

経過

時間

(月)

平均含有量

の測定値と

ラベル表示

量の比率

(判定基

準:表示の**~***%)*

平均含

有量評

価結果*

セファロマ

ンニン

10-デアセチ

ルエピパク

リタキセル

(許容基準:

ラベル表示

の*%以下)

7-エピ-パク

リタキセル

(許容基準:

ラベル表示

の@%以

下)

分解生成物/

不純物の合

計(%)(許

容基準:ラ

ベル表示の

*%以下)

分解

生成

物/不

純物

の評

価結

10 x 80 1

0 **% 合格 各試料

*:*%**

各試料

*:*%**

各試料

*:*%**

各試料

*%** 合格

6 **% 合格 各試料

*:*%**

*:**%

*:**%

*:**%

*:**%

*:**%

*:**%

各試料

*%** 合格

9 **% 合格 各試料

*:*%**

各試料

*:*%**

*:**%

*:**%

**:*%

各試料

*%** 合格

12 **% 合格 各試料

*:*%**

各試料

*:*%**

*:**%

*:**%

*:**%

各試料

*%** 合格

18 ***% 合格 各試料

*:*%**

各試料

*:*%**

*:**%

*:**%

*:**%

各試料

*%** 合格

24 **% 合格

**:*%

**:*%

*:**%

各試料

*:*%**

*:**%

*:**%

*:**%

各試料

*%** 合格

*平均含有量は、各時点で採取した 3 つの試料の平均値で示す。

<粒子状物質試験>

25°C/60% 相対湿度条件で保存後、経過時間 0、6、9、12、18、24 ヶ月の時点で、粒子状物質の分析に

かけたすべてのステントは、粒径≧10μmの粒子が 6,000個以下、粒径≧25μmの粒子が 600個以下と

いう、保守的に設定された USP <788>の許容限界基準を、満たした。結果は、表 4.2.1.6-36、4.2.1.6-37

及び 4.2.1.6-38にステントサイズ別に記載した。

Page 122: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

196

表 4.2.1.6-36. 6×20 mmのステントの粒子状物質試験結果

ステントの

サイズ

(mm)

ロッ

25℃、60%

相対湿度で

の時間

(月)

基準

結果 10 μm以上の粒子の個数

(判定基準:6000 個以下)

25 μm以上の粒子の

個数 (判定基準:600

個以下)

6 x 20 1

0

***

***

***

**

**

** 合格

6

****

****

***

***

***

** 合格

9

***

***

***

**

**

** 合格

12

***

***

***

**

**

** 合格

18

****

****

***

***

***

** 合格

24

***

***

***

***

**

** 合格

Page 123: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

197

表 4.2.1.6-37. 8×40 mmステントの粒子状物質試験結果

ステント

のサイズ

(mm)

ロット

25℃、60%

相対湿度で

の時間

(月)

基準

結果 10 μm以上の粒子の個数

(判定基準:6,000 個以

下)

25 μm以上の粒子の

個数 (判定基準:600

個以下)

8 x 40

1

0

****

****

***

***

***

*** 合格

2

***

***

***

**

**

** 合格

3

****

***

***

***

***

**

**

合格

1

6

****

****

****

***

***

*** 合格

2

****

****

****

***

***

*** 合格

3

****

****

****

***

***

*** 合格

1

9

****

****

****

***

***

*** 合格

2

****

****

****

***

***

*** 合格

3

****

****

****

***

***

*** 合格

1

12

****

****

****

***

***

*** 合格

2

****

****

****

***

***

*** 合格

3

****

****

****

***

***

*** 合格

1

18

****

****

****

***

***

*** 合格

2

****

****

****

***

***

*** 合格

3

****

****

****

***

***

*** 合格

1 24

****

****

****

***

***

*** 合格

2 **** ****

*** *** 合格

Page 124: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

198

ステント

のサイズ

(mm)

ロット

25℃、60%

相対湿度で

の時間

(月)

基準

結果 10 μm以上の粒子の個数

(判定基準:6,000 個以

下)

25 μm以上の粒子の

個数 (判定基準:600

個以下) **** ***

3

****

****

****

***

***

*** 合格

Page 125: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

199

表 4.2.1.6-38. 10×80 mmステントの粒子状物質試験結果

ステント

のサイズ

(mm)

ロット

25℃、60%

相対湿度で

の時間

(月)

基準

結果 10 μm以上の粒子の個数

(判定基準:6,000 個以

下)

25 μm以上の粒子の

個数 (判定基準:600

個以下)

10 x 80 1

0

****

***

***

***

**

** 合格

6

****

****

***

***

***

*** 合格

9

****

****

****

***

***

*** 合格

12

****

****

****

***

**

*** 合格

18

****

****

***

***

***

** 合格

24

****

****

****

***

***

*** 合格

Page 126: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

200

<In vitroの薬剤放出試験>

0 ヶ月における全てのステントは、本試験の判定基準を満たした。それぞれ 6、9、12、18、24ヶ

月の間 25℃/60% 相対湿度で保存された、すべてのステントの溶解値は、パクリタキセルの放出%

として提案された基準の範囲内であった。結果は、表 4.2.1.6-39、 4.2.1.6-40、および 4.2.1.6-41 に、

ステントサイズ別に記載した。

表 4.2.1.6-39. 6x20mmステントにおける in vitro薬剤放出に関する長期保存試験の結果

試料の時間 4 分 8 分 14 分 20 分 32 分 46 分 60 分

結果 規格、n = 3

**%-

**%

**%-

**%

*:**%-

**:*%

**%-

**%

**%-

**%

**%-

**%

**%-

**%

サイ

25°C、60%相

対湿度での時

間(月)

6 x 20 1

0 **% **% **% **% **% **% **% 合格

6 **% **% **% **% **% **% **% 合格

9 **% **% **% **% **% **% **% 合格

12 **% **% **% **% **% **% **% 合格

18 **% **% **% **% **% **% **% 合格

24 **% **% **% **% **% **% **% 合格

表 4.2.1.6-40. In vitro での長期保存時における、8×40 mm ステントからの薬剤放出に関する試験

試料の時間 4 分 8 分 14 分 20 分 32 分 46 分 60 分

結果

規格、n = 3 **%-

**%

**%-

**%

**:*%-

**:*%

**%-

**%

**%-

**%

**%-

**%

**%-

**%

サイズ ロット

25°C、60%相対

湿度での時間

(月)

8 x 40

1

0

**% **% **% **% **% **% **% 合格

2 **% **% **% **% **% **% **% 合格

3 **% **% **% **% **% **% **% 合格

1

6

**% **% **% **% **% **% **% 合格

2 **% **% **% **% **% **% **% 合格

3 **% **% **% **% **% **% **% 合格

1

9

**% **% **% **% **% **% **% 合格

2 **% **% **% **% **% **% **% 合格

3 **% **% **% **% **% **% **% 合格

1

12

**% **% **% **% **% **% **% 合格

2 **% **% **% **% **% **% **% 合格

3 **% **% **% **% **% **% **% 合格

1

18

**% **% **% **% **% **% **% 合格

2 **% **% **% **% **% **% **% 合格

3 **% **% **% **% **% **% **% 合格

1

24

**% **% **% **% **% **% **% 合格

2 **% **% **% **% **% **% **% 合格

3 **% **% **% **% **% **% **% 合格

Page 127: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

201

表 4.2.1.6-41. 10x80mmステントにおける in vitro 薬剤放出に関する長期保存試験の結果

試料の時間 4 分 8 分 14 分 20 分 32 分 46 分 60 分

結果

規格、n = 3 **%-

**%

**%-

**%

**:*%-

**:*%

**%-

**%

**%-

**%

**%-

**%

**%-

**%

サイズ ロッ

25°C、60%相

対湿度での時

間(月)

10 x 80 1

0 **% **% **% **% **% **% **% 合格

6 **% **% **% **% **% **% **% 合格

9 **% **% **% **% **% **% **% 合格

12 **% **% **% **% **% **% **% 合格

18 **% **% **% **% **% **% **% 合格

24 **% **% **% **% **% **% **% 合格

結論

本品ステントのコーティングについて、25℃/60% RHで24ヶ月の長期保存を施した後、平均含有

量、不純物、粒子状物質、およびin vitroパクリタキセル放出試験を行った。これらの試験で、本

申請品は24ヶ月間にわたり安定であることが判明した。

Page 128: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

202

11. - 2) 薬剤コーティングの安定性試験-6 ヶ月加速 (100610BM)

添付資料ハ-1-36

試験の目的

本試験の目的は、本申請品の薬剤コーティングについて、加速保存条件で保存後の安定性を評価

することである。評価は ICH ガイドライン Q1A (R2) “Stability Testing of New Drug Substances and

Products”(新原薬及び新製剤の安定性試験)に基づいて実施した。

評価

検体

本元の原材料供給業者より提供された原薬(パクリタキセル)の、異なる2つのロットの原薬でコ

ーティングされた、5つの製品ロットについてデータを採取した。各時点の試験で使用したステン

トの個数を、表4.2.1.6-42に示す。

表 4.2.1.6-42. 各時点で使用したステント数

ステント

のサイズ

(mm)

ロット

# 試験

長期保存月数(40℃、75%相対湿度)

0 1 3 6

6 x 20

(7 Fr) 1

平均含有量及び不純物 3 3 3 3

In Vitro 薬剤放出 3 3 3 3

8 x 40

(7 Fr)

1 平均含有量及び不純物 3 3 3 3

In Vitro薬剤放出 3 3 3 3

2 平均含有量及び不純物 3 3 3 3

In Vitro薬剤放出 3 3 3 3

3 平均含有量及び不純物 3 3 3 3

In Vitro薬剤放出 3 3 3 3

10 x 80

(7 Fr) 1

平均含有量及び不純物 3 3 3 3

In Vitro薬剤放出 3 3 3 3

時点ごとに試験を行ったステントの

合計個数 30 30 30 30

検体選択の妥当性

ステントのサイズに関係なく、すべてのステントのパクリタキセル塗布濃度は 3μg/mm2である。

また、薬剤コーティングに接触するデリバリーシステム部分の原材料は同じであり、さらに、6 Fr

および 7 Frの本品ステントの最終製品は出荷判定試験により、同じ品質検査項目が設定されてい

ることから、検体のサイズは試験結果に影響を及ぼさないと考えられる。それでも本申請品の製

品群を代表する 3つのステントサイズ (6 x 20 mm、8 x 40mm、10 x 80 mm) を検体とした。これら

3 つのステントサイズについて、パクリタキセル含有量は、6 x 20mmのステントで 219μg、

8 x 40mmのステントで 453μg、10 x 80mmのステントで 879μg である。検体数は、過去の末梢(血

管用)ステントの安定性試験に基づき適切であると判断する。

試験方法

加速保存のため、試料は40 °C /75% 相対湿度の状態で保存された。

平均含有量及び純度(分解生成物および不純物の分布)を、検証された安定性指示高速液体クロ

マトグラフィー法(HPLC)を用いて評価した[M1225: UV検出を備えた傾斜溶離法HPLC(米国

薬局方フォーラム法より修正)による、パクリタキセル塗布医療機器の分析と不純物(妥当性確認

報告書、プロジェクト番号:1946-002;PPD Development)]。In vitroにおけるパクリタキセルの放

出は、米国薬局方(USP)<724> (薬剤放出)、およびUSP <711>( 溶解)に基づく装置4、及び溶

解試験方法を用いて評価を行った。

Page 129: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

203

判定基準

表 4.2.1.6-43. 平均含有量および純度の判定基準

試験 判定基準 判定基準の妥当性

平均含有量 ラベル表示の± **% 試験時のロットリリースの際に使

用した基準と同じであるため。

純度(分解生成物/

不純物の分布)

長期保存条件において測定された個々

の分解生成物/不純物は、*%を超えて

はならない。また長期保存条件下で、

分解生成物/不純物の合計量は、*%を

超えてはならない。

日米 EU 医薬品規制調和国際会議

(ICH)ガイドラインより

表 4.2.1.6-44. In vitroでのパクリタキセル放出の判定基準

時間

(分)

溶出限界率(n=3) 溶出限界率(n=6)*

下限 中央 上限 下限 中央 上限

4 ** ** ** **:* ** **:* 8 ** ** ** **:* ** **:* 14 **:* **:* **:* ** **:* **

20 ** ** ** **:* ** **:* 32 ** ** ** **:* ** **:* 46 ** ** ** **:* ** **:* 60 ** ** ** **:* ** **:*

90** 60 分後の値から +/- *% 以内の値

* 最初のサンプリング(n=3)で許容基準を満たさないロットは、USPが推奨する多重レベル試験

およびその許容基準の手引きを適用し、2回目のサンプリング(n=3)によってさらに試験した。

ロットが合格するには、計6本のステントの合計平均溶出率がより厳格化した基準を満たさな

ければならない。

** パクリタキセル放出の判定基準については、FDA(米国食品医薬品局)と複数回にわたって話

し合った。議論の結果、90分の時点が20**年*月**日に加えられた。よって、この90分の時点

における判定基準は、20**年*月**日以降に試験した検体のみに適用する。

In vitroパクリタキセル放出判定基準の妥当性

In vitroパクリタキセル放出の判定基準は、提案されたロットリリースの判定基準に基づく。

結果及び考察

<平均含有量及び不純物に関する加速試験>

経過 0 時間の全てのステントは、ロットリリース判定基準を満たした。 40°C / 75%相対湿度で 1、

3、6ヶ月間保存したステントはすべて薬剤量を維持し、許容基準の下限である、ラベル表示の

**%未満にはならなかった。全ての既知及び未知の分解生成物/不純物は許容基準を満たし、加速

保存後においてラベル表示の 1%未満であった。 結果はステントサイズ別に表 4.2.1.6-45、 4.2.1.6-

46、4.2.1.6-47にそれぞれ示す。

Page 130: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

204

表 4.2.1.6-45. 6 x 20 mm のステントにおける、加速保存後の平均含有量および不純物試験の結果

ステント

サイズ

(mm)

ロット

経過

時間

(月)

平均含有量の測

定値とラベル表

示量の比率(判

定基準:表示の**~***%)*

平均含有

量評価結

果*

全ての単独不純

物あたり(許容

基準: ラベル表

示の*%以下)

分解生成物/不

純物の合計

(%)(許容基

準:ラベル表

示の*%以

下)

分解生成物/

不純物の評

価結果

6 x 20 1

0 **% 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

1 **% 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

3 ***% 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

6 ***% 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

* 平均含有量は、各時点で 3つの試料の平均値で示す。

表 4.2.1.6-46. 8 x 40 mm のステントにおける、加速保存後の平均含有量及び不純物試験の結果

ステント

サイズ

(mm)

ロット #

経過

時間

(月)

平均含有量の測

定値とラベル表

示量の比率(判

定基準:表示

の: **~***% )*

平均含

有量評

価結果*

全ての単独不純

物あたり(許容

基準: ラベル表

示の*%以下)

分解生成物/不

純物の合計

(%) (許容基

準:ラベル表

示の@%以

下)

分解生成物/

不純物の評

価結果

8 x 40

1 0 **% 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

2 0 **% 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

3 0 **% 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

1 1 **% 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

2 1 ***% 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

3 1 ***% 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

1 3 ***% 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

2 3 **% 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

3 3 ***% 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

1 6 ***% 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

2 6 ***% 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

3 6 ***% 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

* 平均含有量は、各時点で 3つの試料の平均値で示す。

Page 131: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

205

表 4.2.1.6-47. 10 x 80 mm のステントにおける、加速保存後の平均含有量及び不純物試験の結果

ステント

サイズ

(mm)

ロット

#

経過

時間

(月)

平均含有量の測

定値とラベル表

示量の比率(判

定基準:表示

の: **~***% )*

平均含

有量評

価結果*

全ての単独不純

物あたり(許容

基準: ラベル表

示の*%以下)

分解生成物/不

純物の合計

(%) (許容基

準:ラベル表

示の@%以

下)

分解生成物/

不純物の評

価結果

10 x 80 1

0 *** 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

1 *** 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

3 *** 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

6 *** 合格 各試料

*%**

各試料

*%** 合格

* 平均含有量は、各時点で採取した 3つの試料の平均値で示す。

<In Vitro の薬剤放出試験>

0 ヶ月における全てのステントは、本試験の判定基準を満たした。40°C/75% 相対湿度条件下で保

存されたすべてのステントの溶解値は、経過時間 1、3、6ヶ月の時点で、パクリタキセルの放

出%として提案された基準の範囲内であった。結果は、表 4.2.1.6-48、 4.2.1.6-49、及び 4.2.1.6-50

にステントサイズ別に記載した。

表 4.2.1.6-48. 6x20mmのステントにおける in vitro 薬剤放出に関する加速試験の結果

試料の時間 4 分 8 分 14 分 20 分 32 分 46 分 60 分 90 分*

結果

規格、n = 3 **%-

**%

**%-

**%

**:*%-

**:*%

**%-

**%

**%-

**%

**%-

**%

**%-

**%

60分後の

時点の値

から +/-

*% 以内

の値 サイズ

ロッ

40°C/75% 相

対湿度での

時間(月)

6 x 20 1

0 **% **% **:*% **% **% **% **% **

** 合格

1 **% **% **:*% **% **% **% **% **

** 合格

3 **% **% **:*% **% **% **% **% **

** 合格

6 **% **% **:*% **% **% **% **% **@ 合格

* 90分の時点における判定基準は、20**年*月@:日以降に試験した検体のみに適用する。

Page 132: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

206

表 4.2.1.6-49. 8 x 40 mm のステントにおける in vitro 薬剤放出に関する加速試験の結果

試料の時間 4 分 8 分 14 分 20 分 32 分 46 分 60 分 90 分*

結果

規格、n = 3 **%-

**%

**%-

**%

**:*%-

**:*%

**%-

**%

**%-

**%

**%-

**%

**%-

**%

60分後

の時点

の値か

ら +/-

*% 以

内の値

サイ

ロッ

ト#

40°C/75% 相

対湿度での

時間(月)

8 x

40

1

0

**% **% **:*% **% **% **% **% ** ** 合格

2 **% **% **:*% **% **% **% **% **@ 合格

3 **% **% **:*% **% **% **% **% ** ** 合格

1

1

**% **% **:*% **% **% **% **% ** ** 合格

2 **% **% **:*% **% **% **% **% **@ 合格

3 **% **% **:*% **% **% **% **% ** ** 合格

1

3

**% **% **:*% **% **% **% **% ** ** 合格

2 **% **% **:*% **% **% **% **% **@ 合格

3 **% **% **:*% **% **% **% **% **@ 合格

1

6

**% **% **:*% **% **% **% **% **@ 合格

2 **% **% **:*% **% **% **% **% **@ 合格

3 **% **% **:*% **% **% **% **% **@ 合格

* 90 分の時点における判定基準は、20@*年*月@:日以降に試験した検体のみに適用する。

表 4.2.1.6-50. 10x80mmのステントにおける in vitro薬剤放出に関する加速試験の結果

試料の時間 4 分 8 分 14 分 20 分 32 分 46 分 60 分 90 分*

結果

規格、 n = 3 **%-

**%

**%-

**%

**:*%-

**:*%

**%-

**%

**%-

**%

**%-

**%

**%-

**%

60分後

の時点

の値か

ら +/-

*% 以

内の値

サイズ

40°C/75% 相

対湿度での

時間(月)

10 x 80 1

0 **% **% **:*% **% **% **% **% ** ** 合格

1 **% **% **:*% **% **% **% **% ** ** 合格

3 **% **% **:*% **% **% **% **% **@ 合格

6 **% **% **:*% **% **% **% **% **@ 合格

* 90 分の時点における判定基準は、20@*年*月@:日以降に試験した検体のみに適用する。

結論

本品ステントのコーティングについて、40°C/75% 相対湿度で6ヶ月の加速保存後、平均含有量、

不純物、およびin vitroパクリタキセル放出を評価した。この加速劣化試験条件下で、本申請品は6

ヶ月間にわたり安定性を維持したことが判明した。

Page 133: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

207

12. 薬剤の平均含有量および不純物の温度サイクル試験(100208BM)

添付資料ハ-1-37

試験の目的

本試験の目的は、本品ステントを温度サイクルにかけた後、薬剤の平均含有量および純度(分解

生成物および不純物)について評価することである。

評価

検体

表 4.2.1.6-51. 温度サイクル試験検体

品目 サイズ (mm) ロット番号 n

7 Frの本品ステント

6 x 20 P24350533 6*

8 x 40

P24350534 6*

P24350535 6*

P24350536 6*

10 x 80 P24350537 6*

* それぞれのロットにつき、3 つの検体が温度サイクル A にかけられ、3つの検体が温度サイクル

Bにかけられた。

検体選択の妥当性

本試験の検体は、本申請品ステントである。検体の数は、本品を設計および開発する上で形成さ

れ決定された、ロットの出荷判定試験の現在の条件に基づいている。

試験方法

**********************************************

***********************************************

************************************************

*******************************************

*******************************:********************************

***

判定基準

平均含有量の判定基準は、ラベル表示量の**~@:*%以内であることである。分解生成/不純物に

関しては、どの不純物もラベル表示量の 1%を超えてはならない。なお、分解生成物/不純物の合

計量は、2%を超えてはならない。

結果及び考察

以下に各温度サイクルにかけた後の平均含有量および不純物の評価結果を示す(表 4.2.1.6-52)。

いずれも平均含有量および不純物に関して判定基準を満たした。

Page 134: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

208

表 4.2.1.6-52. 温度サイクル試験結果:平均含有量および不純物の評価

温度サ

イクル 条件

ロット

番号

平均含有量

とラベルの

比較(判定基

準: ラベルの**-***%)

平均含有

量の評価

結果*

不純物(ラベルと比

較した%)** 不純物評価

結果 単体 合計

温度サ

イクルA

***℃で@日

間に続き@℃

で*日間を@

サイクル

P24350533 ***%

合格

全ての単

体が@%

以下

合計@%

以下

単体および

合計につい

て共に合格

P24350534 ***%

P24350535 ***%

P24350536 ***%

P24350537 ***%

温度サ

イクルB

**ºC、相対湿

度**%を@日

間、その後

*℃で@日間

を@サイクル

P24350533 ***%

合格

全ての単

体が@%

以下

合計@%

以下

単体および

合計につい

て共に合格

P24350534 ***%

P24350535 ***%

P24350536 ***%

P24350537 ***%

* 3 つの検体の平均値。

** 不純物はバッカチン III、10-デアセチルパクリタキセル、キシロシルパクリタキセル、セファ

ロマンニン、7-エピ-10-デアセチルパクリタキセル、7-エピパクリタキセル、および複数の不明

の物質であった。

結論

平均含有量の評価に関しては、全てがラベル表示量の**~***%以内であったため、判定基準を満

たした。不純物の評価に関しても、全ての単体の不純物は*%以下であり、なおかつ、不純物の合

計は 2%以下であったため、判定基準を満たした。

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209

13. 保存安定性試験 (TS080056, TS040148, TS070109, TS020028, TS070110)

添付資料ハ-1-38、ハ-1-39、ハ-1-40、ハ-1-41、ハ-1-42

要約

以下に示す保存安定性試験の目的は、3 年の実時間(7 Fr)、及び 3年の加速劣化(6 Fr、7 Fr)後

の、本品ステントとデリバリーシステムの展開の特性を明らかにすることにある。 経年後の展開

の特性を明らかにするために実施した評価項目には以下が含まれる。

1) デリバリーシステムの寸法確認

2) 展開に要する力

3) アクセスの容易さ及びステント展開の正確性

4) 展開前後におけるステントの長さの変化

5) 展開後のステント直径及び均一性

6) 展開後のステントの完全性

経年劣化させたデバイスの展開試験に関する判定基準は、非経年試験で使用されるものと同一で

あった。非経年試験における初期評価では、デバイスのサイズ別に 10個の検体を用いた。非経年

試験の結果と過去の血管内ステント試験の実績に基づいて、サイズ別に少なくとも 5 個の検体数

があれば適切であると判断した。

加速劣化試験は ASTM(米国材料試験協会)F1980(Standard Guide For Accelerated Aging of Sterile

Barrier Systems for Medical Devices:医療機器の滅菌バリアシステムの加速劣化試験のための標準

ガイド)に則り、厳格な加速劣化条件のもとに実施された。加速条件は以下の公式で設定した。

AAF = Q10 [(T

AA – T

RT)/10]

ここで、

TAA = 加速劣化温度 (°C)

TRT = 環境温度 (°C)

Q10 = 反応速度係数

検体は** °C または** °C で適切な保管期間をもって劣化させ、環境温度は保管倉庫の状況に相当

する温度に設定した。また Q10は 2.0となるように設定した。これは高分子ポリマー材料に対して

厳格と考えられる数値である(参照:AAMI(米国医療器具開発協会)の技術情報報告書 TIR

17:1977、第 7.4.2.1項、「放射線滅菌―原材料の適格性」(Radiation Sterilization-Material

qualification)、1977年 8月 4日版)。

Page 136: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

210

13.- 1) Zilver PTXデリバリーシステムの寸法確認 (TS080056, TS040148, TS070109)

添付資料ハ-1-38、ハ-1-39、ハ-1-40

試験の目的

本試験の目的は、3 年実時間(7 Fr)及び 3年加速劣化(6 Fr、7 Fr)後の、本品ステントとデリバ

リーシステムの寸法を評価することにあった。加速劣化試験においてはデリバリーシステムの検

体は、試験を行う前に**°Cの温度に保たれた加速劣化チェンバーに**@日間入れられた。これは

3 年間の保存期間に相当する。

評価

検体

表 4.2.1.6-53. 実時間劣化試験用の検体

品目 検体数

7 Frの Zilverデリバリーシステム* 10

表 4.2.1.6-54. 加速劣化試験用の検体

品目 検体数

7 Frの Zilverデリバリーシステム* 20

6 Frの Zilverデリバリーシステム* 30

* Zilverデリバリーシステムは本品デリバリーシステムと同一であり、ステントは「Zilverステン

ト」である。このステントは金属ベアメタルステントであるが、パクリタキセルコーティングが

無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコーティングはパクリタキセルのみ

で構成され、非常に薄い(***************μm****、*********@ μm

**)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を与えないと判断した。

検体選択の妥当性

検体は自己拡張型のナイチノール製の Zilverステント及びデリバリーシステムである。本試験に

おける評価はステントサイズには左右されない。

試験方法

包装から取り出した後、較正済みレーザーマイクロメーターを用いて、Zilverデリバリーシステム

のフレクサーシースの全体的な最大外径を測定した。

判定基準

7 Fr 本品ステントデリバリーシステムの外径(フレクサーシースの最大外径)は*:** mm(*:***

インチ)以下、6 Fr 本品デリバリーシステムの外径(フレクサーシースの最大外径)は*:** mm

(*:***インチ)以下でなければならない。

判定基準の妥当性

7 Frデリバリーシステムの外径の判定基準は9 Frのガイドカテーテルの最小内径、および6 Frデリ

バリーシステムの外径の判定基準は8 Frのガイドカテーテルの最小内径に基づく。

結果及び考察

7 Frデリバリーシステムのフレクサーシースの最大外径は、表 4.2.1.6-55、表 4.2.1.6-56 に示すよう

に*:** mm以下(*:***インチ以下)であり、 6 Fr Zilver デリバリーシステムのフレクサーシース

の最大外径は、表 4.2.1.6-56 に示すように*:** mm以下( *:***インチ以下)であった。

Page 137: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

211

表 4.2.1.6-55. 3 年実時間経年後のデリバリーシステムの外径の測定

品目

Zilverステン

トのサイズ

(mm)

N

フレクサーシース最大外径

判定 平均値±標準

偏差(mm)

最小値

(mm)

最大値

(mm)

7 Frの Zilverデリバ

リーシステム

6 x 20 5 *:** ± *:** *:** *:** 合格

9 x 80 4* *:** ± *:** *:** *:** 合格

*1 つの検体がフレクサーシース最大径の測定の分析から除去された。この検体はシースの直径の

測定値は大きめであったが、7Frのアクセスシースを問題なく通過した。したがって、測定値は実

験者のエラーによるものと判断し、分析から除外された。

表 4.2.1.6-56. 3年加速劣化後のデリバリーシステムの寸法測定

品目

Zilverステン

トのサイズ

(mm)

N

フレクサーシース最大外径

判定 平均値±標準

偏差(mm)

最小値

(mm)

最大値

(mm)

7 Frの Zilverデリバ

リーシステム

6 x 20 20 *:** ± *:** *:** *:** 合格

9 x 80

6 Frの Zilverデリバ

リーシステム

5 x 20 7 *:** ± *:** *:** *:** 合格

5 x 140 8 *:** ± *:** *:** *:** 合格

10 x 20 7 *:** ± *:** *:** *:** 合格

10 x 140 8 *:** ± *:** *:** *:** 合格

結論

経年後の 6 Fr及び 7 Fr の Zilver デリバリーシステムのフレクサーシースのすべての最大外径は、

その判定基準を満たした。

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212

13.- 2) 展開に要する力 (TS020028, TS070110)

添付資料ハ-1-41、ハ-1-42

試験の目的

本試験の目的は、3 年相当の加速劣化後に、展開に要する力の特性を評価することである。加速劣

化試験を行う前に、7 Fr の Zilverステント及びデリバリーシステムの検体を **°C、相対湿度 **%

で * ヶ月間保存した。これは 3 年間の保存期間に相当する。6 Frの Zilver ステント及び デリバリ

ーシステムは、検体を**°Cの温度で**@日間保持することで加速劣化が得られた。これは 3年間

の保存期間に相当する。

評価

検体

表 4.2.1.6-67. 加速劣化試験用の検体

品目 ステントのサイズ

(mm)

デリバリーシス

テムの本数

7 Frの Zilverステントおよ

びデリバリーシステム*

6 x 20 10

10 x 80 10

6 Frの Zilverステントおよ

びデリバリーシステム*

5 x 20 7

5 x 140 8

10 x 20 7

10 x 140 8

* Zilverデリバリーシステムは本品デリバリーシステムと同一であり、ステントは「Zilverステン

ト」である。このステントは金属ベアメタルステントであるが、パクリタキセルコーティングが

無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコーティングはパクリタキセルのみ

で構成され、非常に薄い(***************μm****、*********@ μm

**)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を与えないと判断した。

検体選択の妥当性

検体は自己拡張型のナイチノール製の Zilverステント及びデリバリーシステムである。試験検体

は各 Frサイズについて、設計空間における「四隅」(即ち、最小径及び最大径ステントの最小長

及び最大長)を包含する。本申請に含まれるステントの最大長は 120mmであるが、本試験に含ま

れる 140mmのステント長は、120mm長ステントの性能を適切に代表するものである。

試験方法

取扱説明書に示された手法を用いて、デリバリーシステムを 0.035インチ (0.89mm) のガイドワイ

ヤーを沿って前進させ、Zilverステントを 37°C±2°Cで生理的モデルであるシリコーンチューブ

(内径がステントの公称径より*mm小さい)内に、X線透視下で展開した。7 Frのステントの展

開に対するシースの引き戻しの抵抗を定性的に評価した。6Frでは、デリバリーシステムの近位端

を較正済みのフォースゲージに固定させ、デリバリーシステムのハンドルを展開中に引き戻すの

に必要な最大力を記録した。

判定基準

7 Frの評価については、すべての検体が円滑かつ容易に展開すること。6Frでは、ステントの展開

に要する力は** N 未満でなければならない。

判定基準の妥当性

判定基準は、臨床使用で通常経験する強度に基づいた。先に開発された 7Frステントにおける留

置に要する力試験では、シースの引き戻しに対する抵抗力の定性的な評価が含まれた。その後発

行された ISO25539-2 に伴い、6Frステントの試験においてはデリバリーシステムのハンドルを展

開中に引き戻すのに必要な最大力が測定され、改善された定量的な評価がなされた。

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213

結果及び考察

下表に示す様に、95%の信頼水準及び 99%の信頼度で計算された、展開に要する力の最大値は、6

Frの 20 mm長のステントで*:* N であり、140 mm長のステントで**:* N であった。7 Frのステン

トはすべて円滑かつ容易に展開された。

表 4.2.1.6-58. 3年加速劣化後の Zilverステントの展開に要する力

品目

ステント

のサイズ

(mm)

n

展開に要する力(N)

平均値 標準偏差 最小値 最大値 Smax

7 Frの Zilver 6 x 20 10

ステントはすべて円滑かつ容易に展開された。 10 x 80 10

6 Frの Zilver

20 mm 長

5 x 20 7 *:* *:* *:* *:* ****

10 x 20 7 *:* *:* *:* *:* ****

平均 14 *:* *:* *:* *:* *:**

6 Frの Zilver

140 mm 長

5 x 140 8 **:* *:* *:* **:* ****

10 x 140 8 *** *:* *:* **:* ****

平均 16 **:* *:* *:* **:* **:***

*Smax=(平均値+標準偏差*K)、K=3.5543(n=14、95%信頼水準及び 99%信頼度)

**Smax=(平均値+標準偏差*K)、K=3.4376(n=16、95%信頼水準及び 99%信頼度)

結論

展開に要する力の測定値は判定基準を満たし、本申請品が 3 年相当の加速劣化による影響を受け

なかったことが試験の結果から示された。

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214

13.- 3)アクセスの容易さ及び展開の正確性 (TS080056, TS070109, TS020028)

添付資料ハ-1-38、ハ-1-40、ハ-1-41

試験の目的

本試験の目的は、3 年実時間(7 Fr)及び 3年加速劣化(6 Fr、7 Fr)後の、本品ステントとデリバ

リーシステムのアクセスの容易さ、及び展開の正確さを評価することである。加速劣化試験を行

う前に、7 Frの Zilverステント及びデリバリーシステムの検体は **℃、相対湿度 **%で @ヶ月間

保存された。これは 3年間の保存期間に相当する。6 Frの Zilverステント及び デリバリーシステ

ムは、**°C の温度で**@日間保持することで加速劣化が得られた。これは 3 年間の保存期間に相

当する。

評価

検体

表 4.2.1.6-59. 実時間試験用の検体

品目 Zilverステントのサイズ

(mm) 検体数

7 Frの Zilverステント及び

デリバリーシステム*

6 x 20 5

9 x 80 5

表 4.2.1.6-60. 加速劣化試験用の検体

品目 Zilverステントのサイズ

(mm) 検体数

7 Frの Zilverステント及び

デリバリーシステム*

6 x 20 10

10 x 80 10

6 Frの Zilverステント及び

デリバリーシステム*

5 x 20 7

5 x 140 8

10 x 20 7

10 x 140 8

* 検体である「Zilverデリバリーシステム」は、本品デリバリーシステムと同一であり、ステント

は「Zilverステント」である。このステントは金属ベアメタルステントであるが、パクリタキセル

コーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコーティングはパク

リタキセルのみで構成され、非常に薄い(***************μm****、***

******@ μm x **)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を与えないと判

断した。

検体選択の妥当性

検体は自己拡張型のナイチノール製の Zilverステント及びデリバリーシステムである。試験検体

は各 Frサイズについて、設計空間における「四隅」(即ち、最小径及び最大径ステントの最小長

及び最大長)を包含する。本申請に含まれるステントの最大長は 120mmであるが、本試験に含ま

れる 140mmのステント長は、120mm長ステントの性能を適切に代表するものである。

試験方法

取扱説明書に示された手法を用いて、ステント及びデリバリーシステムを、0.035インチ(0.89

mm)のガイドワイヤーに沿って前進させ、生理的モデルである 37 ºC ±2ºCのシリコーンチューブ

(内径がステントの公称径より*mm小さい)内に、X 線透視下で展開した。前進の容易さを定性

的に記録した。ステントの展開の正確さは、ステントをシリコーンチューブ内の遠位側の X 線不

透過性ターゲットマーカーに対して正確に適切な位置に置くことを試みることで測定した。各ス

テントについて、シリコーンチューブ上のターゲットマーカーからステント上の遠位側の X 線不

透過ゴールドマーカーまでの距離を、較正済みコンピュータ測定システムで測定した。

Page 141: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

215

判定基準

Zilverステント及びデリバリーシステムは、容易に前進し、X線透視下で目視可能であり、ステン

トを展開した後、問題なく抜去されなければならない。展開後のステントは、遠位側 X 線不透過

ターゲットマーカーから±* mm以内でなければならない。

判定基準の妥当性

アクセスの容易さ及びステントの展開の正確性の判定基準は、過去の血管内ステント試験の実績

に基づいて確立された。当初、先に開発された7Frステントと後に開発された6Frステントとでは、

展開の正確性の判定基準が異なっていた。7Frの判定基準は平均値のみに関してであり、値の変動

に関しては感知しなかった。6Frステントの判定基準においては、ステントのX線不透過マーカー

と遠位側X線不透過ターゲットマーカーとの距離が±* mm以内でなければならず、より厳密となっ

た。よって7Frステントも同様に、より厳密な判定基準を用いて試験された。

結果及び考察

全てのデリバリーシステムは、ガイドワイヤーに沿って前進し、シース内を通過し、全てのステ

ントが容易に展開された。ステント及びデリバリーシステムは、X線透視下で常時目視可能であ

った。下表(表 4.2.1.6-61)に示される様に、ステント上の X線不透過性マーカーの距離は、シリ

コーンチューブ上の遠位側ターゲットから±* mm以内(表 4.2.1.6-61、表 4.2.1.6-62)であった。展

開後、デリバリーシステムは問題なく抜去されたことが報告された。

表 4.2.1.6-61. 3年実時間経年後の Zilverステントの展開の正確性

品目

Zilver ステン

トのサイズ

(mm)

n

遠位側ターゲットからの距離

判定 平均値±標準偏差

(mm)

最小値

(mm)

最大値

(mm)

7 Frの Zilver

ステント及

びデリバリ

ーシステム

6 x 20 5 **:**± *:** **:** *:** 合格

9 x 80 5 *:** ± *:** **:** *:** 合格

表 4.2.1.6-62. 3年加速劣化後の Zilverステントの展開の正確性

品目

Zilverステン

トのサイズ

(mm)

n

遠位側ターゲットからの距離

判定 平均値±標準偏差

(mm)

最小値

(mm)

最大値

(mm)

7 FrのZilver

ステント及

びデリバリ

ーシステム

6 x 20 10 **:**± *:** **:** *:** 合格

10 x 80 10 *:** ± *:** **:** *:** 合格

6 FrのZilver

ステント及

びデリバリ

ーシステム

5 x 20 7 *:** ± *:** *:** *:** 合格

5 x 140 8 *:** ± *:** *:** *:** 合格

10 x 20 7 *:** ± *:** *:** *:** 合格

10 x 140 8 *:** ± *:** *:** *:** 合格

結論

3 年経年(実時間及び加速経年)後、Zilverデリバリーシステムの前進性、可視性、ステント展開

正確性、抜去性は判定基準を満たした。

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216

13.- 4) 展開前後におけるステントの長さの変化(TS080056, TS070109, TS020028)

添付資料ハ-1-38、ハ-1-40、ハ-1-41

試験の目的

本試験の目的は、3 年実時間経年(7 Fr)、及び 3年加速劣化(6 Fr、7 Fr)後の本品ステントの展

開前後の長さ、およびその長さの変化を明らかにすることである。加速劣化試験を行う前に、7 Fr

の Zilverステント及びデリバリーシステムの検体は **°C、相対湿度 @*%で *ヶ月間保存された。

これは 3年間の保存期間に相当する。6 Frの Zilver ステント及び デリバリーシステムは、検体を

**°C の温度で***:日間保持することで加速劣化が得られた。これは 3 年間の保存期間に相当する。

評価

検体

表 4.2.1.6-63. 実時間試験用の検体

品目 Zilverステントのサイズ

(mm) 検体数

7 Frの Zilverステント*及び

デリバリーシステム

6 x 20 5

9 x 80 5

表 4.2.1.6-64. 加速劣化試験用の検体

品目 Zilverステントのサイズ

(mm) 検体数

7 Frの Zilverステント*及び

デリバリーシステム

6 x 20 10

10 x 80 10

6 Frの Zilverステント*及び

デリバリーシステム

5 x 20 7

5 x 140 8

10 x 20 7

10 x 140 8

* 検体である「Zilver デリバリーシステム」は、本品デリバリーシステムと同一であり、ステント

は「Zilverステント」である。このステントは金属ベアメタルステントであるが、パクリタキセ

ルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコーティングはパ

クリタキセルのみで構成され、非常に薄い(***************μm****、****

******@ μm x **)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を与えないと判

断した。

検体選択の妥当性

検体は自己拡張型のナイチノール製の Zilverステント及びデリバリーシステムである。Zilverデリ

バリーシステムは、本品デリバリーシステムと同一であり、ステントそのものは本品ステントと

同一である。パクリタキセルコーティングは非常に薄く(*@μm**、***********

****μm x)、パクリタキセルのみで構成される。したがって、コーティングがなくても 展開によ

るステントの長さ、及び長さの変化の評価に影響を及ぼさないと判断した。試験検体は各 Frサイ

ズについて、設計空間における「四隅」(即ち、最小径及び最大径ステントの最小長及び最大

長)を包含する。本申請に含まれるステントの最大長は 120mmであるが、本試験に含まれる

140mmのステント長は、120mm長ステントの性能を適切に代表するものである。

試験方法

37℃でまだデリバリーシステム内に収納されている、展開前の各ステントの長さを、較正済みコ

ンピュータ支援 X 線透視システムを用いて測定した。展開後、ステントはシリコーンチューブか

ら抜去され、37±2℃の水槽中でステントの長さを非拘束状態で、較正済みカリパスを用いて測定

した。展開による長さの変化率を計算した。正の値は展開に伴い長くなったことを示し、負の値

は短くなったことを示す。

Page 143: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

217

判定基準

ステントはいずれも展開前と展開後の長さの変化が± **%でなければならず、展開後のステントの

長さは表示の公称長の+*/-* mm以内でなければならない。

判定基準の妥当性

展開後のステント長の変化の判定基準は、過去の血管内ステント試験の実績に基づいて設定され

た。当初、先に開発された 7Frステントと後に開発された 6Frステントとでは、判定基準が異なっ

ていた。7Frの判定基準は平均値のみに関してであり、値の範囲に関しては感知しなかった。6Fr

ステントの判定基準は、臨床使用における経験に基づいてより厳密となったため、7Frステントも

同様に、より厳密な判定基準を用いて試験された。

結果及び考察

展開前のステント長、展開後の非拘束状態のステント長、及び展開による長さの変化を、表

4.2.1.6-65および表 4.2.1.6-66 に示す。

表 4.2.1.6-65. 3年実時間経年後の 7 Frの Zilverステントの、展開前後のステントの長さ及び長さの

変化

Zilverステ

ントのサイ

ズ(mm)

展開前の長さ

(平均値 ± 標準

偏差)(mm)

展開後、非拘束

状態の長さ(平

均値±標準偏差)

(mm)

長さの変化 (%)

判定 平均値±標

準偏差 最小値 最大値

6 x 20 5 **:*:±:*:* **:*:±:*:* *:*:±:*:* *:** *:** 合格

9 x 80 5 **:*:±:*:* **:*:±:*:* *:*:±:*:* *:** *:** 合格

表 4.2.1.6-66. 3年加速劣化後の 6 Fr及び 7 Frの Zilver ステントの、展開前後(非拘束)のステント

長及び長さの変化

品目

ステント

のサイズ

(mm)

展開前の長

さ (平均値 ±

標準偏差)

(mm)

展開後、非

拘束状態の

長さ(平均値

±標準偏差)

(mm)

長さの変化 (%)

判定 平均値±

標準偏差 最小値 最大値

7 Frの

Zilverステ

ント

6 x 20 10 **:*±:*:* **:*:±:*:* *:*:±:*:* *:* *:* 合格

10 x 80 10 **:*:±:*:* **:*±:*:* **:*:±*:* *:** *:** 合格

6 Frの

Zilverステ

ント

5 x 20 7 **:*:±:*:* **:*:±:*:* *:*:±:*:* **:* *:* 合格

5 x 140 8 ***:*±:*:* ***:*:±:*:* *:*:±:*:* *:* *:* 合格

10 x 20 7 **:*:±:*:* **:*:±:*:* *:*:±:*:* **:* *:* 合格

10 x 140 8 ***:*±:*:* ***:*:±:*:* *:*:±:*:* *:* *:* 合格

表 4.2.1.6-67 および表 4.2.1.6-68 に、シリコーンチューブから抜去した後に測定したステント長の、

最小値および最大値の結果(実時間および加速)を示す。

表 4.2.1.6-67. 3年実時間経年後の 7 Frの Zilverステントの、展開後における非拘束状態のステント

の長さ

Zilverステン

トのサイズ

(mm)

展開後ステントの長さの平均値(mm)

判定

平均値±標準偏差 最小値 最大値

6 x 20 5 **:*:±:*:* **:* **:* 合格

9 x 80 5 **:*:±:*:* **:* **:* 合格

Page 144: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

218

表 4.2.1.6-68. 3年加速劣化後の 6 Fr及び 7 Frの Zilver ステントの、展開後における非拘束状態のス

テントの長さ

品目

Zilverステン

トのサイズ

(mm)

展開後ステントの長さの平均値(mm)

判定

平均値±標準偏差 最小値 最大値

7 Frの

Zilverステ

ント

6 x 20 10 **:*:±:*:* **:* **:* 合格

10 x 80 10 **:*±:*:* **:* **:* 合格

6 Frの

Zilverステ

ント

5 x 20 7 **:*:±:*:* **:* **:* 合格

5 x 140 8 ***:*:±*:* ***:* ***:* 合格

10 x 20 7 **:*:±:*:* **:* **:* 合格

10 x 140 8 ***:*:±:*:* ***:* ***:* 合格

結論

7 Frおよび 6 Frの両方の機器について、展開前と展開後のステント長の変化、及び展開後のステ

ントの長さは、判定基準を満たした。

Page 145: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

219

13.- 5) ステントの直径及び均一性 (TS080056, TS070109, TS020028)

添付資料ハ-1-38、ハ-1-40、ハ-1-41

試験の目的

本試験の目的は、3 年実時間経年後(7 Fr)、及び 3年加速劣化後(6 Fr、7 Fr)の、本品ステント

の直径及び均一性の特性を明らかにすることである。加速劣化試験を行う前に、7 Frの Zilverステ

ント及びデリバリーシステムの検体は**℃、相対湿度*@%で@ヶ月間保存された。これは 3年間

の保存期間に相当する。6 Frの Zilverステント及び デリバリーシステムは、検体を**°C の温度で

***:日間保持することで加速劣化が得られた。これは 3 年間の保存期間に相当する。

評価

検体

表 4.2.1.6-69. 実時間試験用の検体

品目 Zilverステントのサイズ

(mm) 検体数

7 Frの Zilverステント*及び

デリバリーシステム

6 x 20 5

9 x 80 5

表 4.2.1.6-70. 加速劣化試験用の検体

品目 Zilverステントのサイズ

(mm) 検体数

7 Frの Zilverステント*及び

デリバリーシステム

6 x 20 10

10 x 80 10

6 Frの Zilverステント*及び

デリバリーシステム

5 x 20 7

5 x 140 8

10 x 20 7

10 x 140 8

* 検体である「Zilverデリバリーシステム」は、本品デリバリーシステムと同一であり、ステント

は「Zilverステント」である。このステントは金属ベアメタルステントであるが、パクリタキセ

ルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコーティングはパ

クリタキセルのみで構成され、非常に薄い(***************μm****、****

*****@** μm **)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を与えないと判

断した。

検体選択の妥当性

検体は自己拡張型のナイチノール製の Zilverステント及びデリバリーシステムである。Zilverデリ

バリーシステムは、本品デリバリーシステムと同一であり、ステントそのものは本品ステントと

同一である。パクリタキセルコーティングは非常に薄く(*@μm**、***********

***:μm*)、パクリタキセルのみで構成される。したがって、コーティングがなくても 展開によ

るステントの長さ、及び長さの変化の評価に影響を及ぼさないと判断した。試験検体は各 Frサイ

ズについて、設計空間における「四隅」(即ち、最小径及び最大径ステントの最小長及び最大

長)を包含する。本申請に含まれるステントの最大長は 120mmであるが、本試験に含まれる

140mmのステント長は、120mm長ステントの性能を適切に代表するものである。

試験方法

取扱説明書に示された手法を用いて、Zilverステントを、生理的モデルである37 ºC ±2ºCのシリコ

ーンチューブ(内径がステントの公称径より*mm小さい)内に、X線透視監視下で展開した。ス

テントは、チューブから注意深く抜去された後、光学顕微鏡及び較正済みコンピュータ測定シス

テムを使用して、長軸方向に沿って非拘束状態でステント外径を測定した。また、ステントを

37℃の水槽に浸漬したまま、ステントの長軸方向に対して直交方向の外径を、較正済みビデオ測

定システムで測定した(近位、中央、遠位の各3ヶ所で測定した)。ステントの「真円度」の指数

Page 146: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

220

を得るため、各位置における大小の外径測定値の比率を計算した。さらに、ステントの長軸方向

の直径の均一性を評価するため、任意の3ヶ所における最大径と任意の3ヶ所における最小径の比

率を計算した。

判定基準

5~9 mmの直径のステントではステントの直径は公称径の±*:* mm以内、10 mmの直径のステント

では公称径の±*:* mm以内でなければならない。直交方向におけるステントの均一性の範囲、およ

び特定のステントサイズにおける均一性の最大変動はすべて、*%以内でなければならない。

判定基準の妥当性

展開後のステントの直径及び均一性に関する判定基準は、過去の血管内ステント試験の実績に基

づいて設定された。当初、先に開発された 7Fr ステントと後に開発された 6Frステントとでは、判

定基準が異なっていた。7Frにおける展開後のステント直径の判定基準は、特定のステントサイズ

の平均値のみに関してであり、ステントの均一性の判定基準は、全ステントサイズの平均値に関

してであった。6Frステントの判定基準は、直径 5~9 mmのステントでは展開後の直径が公称径の

±*:* mm以内、直径 10 mmのステントでは公称径の±*:* mm以内でなければならず、より厳密と

なった。さらに、直交方向におけるステントの均一性の範囲、および特定のステントサイズにお

ける均一性の最大変動はすべて、*%以内でなければならない。このため、7Fr ステントも同様に、

より厳密な判定基準を用いて試験された。

結果及び考察

3 年実時間経年及び 3年加速劣化後、Zilverステントの近位・中央および遠位部で測定した非拘束

状態の外径を、表 4.2.1.6-71、表 4.2.1.6-72 に示す。

表 4.2.1.6-71. 3年実時間経年後の 7 Frの非拘束本品ステントの外径の測定値

Zilverス

テントの

サイズ

(mm)

検体数

近位側外径 中央外径 遠位側外径

判定 平均値±標準偏差

(範囲)

平均値±標準偏差

(範囲)

平均値±標準偏差

(範囲)

6 x 20 5 *:** ± *:**

(*:** ~ *:**)

*:** ± *:**

(*:** ~ *:**)

*:** ± *:**

(*:** ~ *:**) 合格

9 x 80 5 *:** ± *:**

(*:** ~ *:**)

*:** ± *:**

(*:** ~ *:**)

*:** ± *:**

(*:** ~ *:**) 合格

表 4.2.1.6-72. 3年加速劣化後の 6Fr及び 7 Frの非拘束本品ステントの外径の測定値

品目

ステント

のサイズ

(mm)

検体数

近位側外径 中央外径 遠位側外径

判定 平均値±標準偏

差(範囲)

平均値±標準偏

差(範囲)

平均値±標準偏

差(範囲)

7 Frの

Zilverス

テント

6 x 20 10 *:** ± *:**

(*:** ~ *:**)

*:** ± *:**

(*:** ~ *:**)

*:** ± *:**

(*:** ~ *:**) 合格

10 x 80 10 *:** ± *:**

(*:** ~ *:**)

*:** ± *:**

(*:** ~ *:**)

*:** ± *:**

(*:** ~ *:**) 合格

6 Frの

Zilverス

テント

5 x 20 7 *:** ± *:**

(*:** ~ *:**)

*:** ± *:**

(*:** ~ *:**)

*:** ± *:**

(*:** ~ *:**) 合格

5 x 140 8 *:** ± *:**

(*:** ~ *:**)

*:** ± *:**

(*:** ~ *:**)

*:** ± *:**

(*:** ~ *:**) 合格

10 x 20 7 **:** ± *:**

(**:** ~ **:**

**:** ± *:**

(**:** ~ **:**)

**:** ± *:**

(**:** ~**:**) 合格

10 x 140 8 **:** ± *:**

(**:** ~ **:**)

**:** ± *:**

(**:** ~**:**)

**:** ± *:**

(*:** ~**:**) 合格

Page 147: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

221

3 年実時間経年後及び 3 年加速劣化のステントの 3つの位置(近位側、中央、及び遠位側)それぞ

れにおける直径の均一性、及びステントの長軸方向の最大均一性を、表 4.2.1.6-73 および表

4.2.1.6-74に示す。

表 4.2.1.6-73. 3年実時間経年後の 7 Frの Zilver ステントの均一性

Zilverス

テントの

サイズ

(mm)

検体

近位側外径の

比率(範囲)

中央部外径の

比率(範囲)

遠位側外径の

比率(範囲)

外径の最大比

率(範囲)

6 x 20 5 *:**±*:**

(*:**~*:**)

*:**±*:**

(*:**~*:**)

*:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

9 x 80 5 *:**±*:**

(*:**~*:**)

*:**±*:**

(*:**~*:**)

*:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

表 4.2.1.6-74. 3年加速劣化した 6 Fr及び 7 Frの Zilver ステントの均一性

品目

ステント

のサイズ

(mm)

検体

近位側外径の

比率(範囲)

中央部外径の

比率(範囲)

遠位側外径の

比率(範囲)

外径の最大比

率(範囲)

7 Fr Zilver ス

テント及びデ

リバリーシス

テム

6 x 20 10 *:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

10 x 80 10 *:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

6 Fr Zilver ス

テント及びデ

リバリーシス

テム

5 x 20 7 *:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±:*:**

(*:**:~*:**:)

5 x 140 8 *:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±*:**:

(*:**:~:*:**)

*:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±*:**:

(*:**:~:*:**)

10 x 20 7 *:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±:*:**

(*:**:~*:**:)

10 x 140 8 *:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±*:**:

(*:**:~:*:**)

*:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

*:**:±*:**:

(*:**:~*:**:)

結論

ステントの直径及び均一性は、所定の判定基準を満たしたことから、3年実時間または3年相当の

加速劣化による影響を受けないことが実証された。

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222

13.- 6) 展開後のステントの完全性 (TS080056, TS070109, TS020028)

添付資料ハ-1-38、ハ-1-40、ハ-1-41

試験の目的

本試験の目的は、3 年実時間経年後(7 Fr)及び 3年加速劣化後(6 Fr、7 Fr)の本品ステントの基

本構造の完全性を評価することである(注記: コーティングの完全性は他の試験で評価済みで、こ

の試験においては評価しない)。加速劣化試験を行う前に、7 Frの Zilver ステント及びデリバリー

システムの検体は**°C、相対湿度**%で@ヶ月間保存された。これは 3年間の保存期間に相当す

る。6 Frの Zilverステント及び デリバリーシステムは、検体を**℃の温度で***日間保持すること

で加速劣化が得られた。これは 3年間の保存期間に相当する。

評価

検体

表 4.2.1.6-75. 実時間試験用の検体

品目 Zilverステントのサイズ

(mm) 検体数

7 Frの Zilverステント*及び

デリバリーシステム

6 x 20 5

9 x 80 5

表 4.2.1.6-76. 加速劣化試験用の検体

品目 Zilverステントのサイズ

(mm) 検体数

7 Frの Zilverステント*及び

デリバリーシステム

6 x 20 10

10 x 80 10

6 Frの Zilverステント*及び

デリバリーシステム

5 x 20 7

5 x 140 8

10 x 20 7

10 x 140 8

* 検体である「Zilverデリバリーシステム」は、本品デリバリーシステムと同一であり、ステント

は「Zilverステント」である。このステントは金属ベアメタルステントであるが、パクリタキセ

ルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコーティングはパ

クリタキセルのみで構成され、非常に薄い(*************** μm****、***

********@ μm**)。したがって、コーティングがなくても本評価に影響を与えないと判

断した。

検体選択の妥当性

検体は、自己拡張型のナイチノール製 Zilverステントとデリバリーシステムである。Zilverデリバ

リーシステムは、本品デリバリーシステムと同一であり、ステントそのものは本品ステントと同

一である。パクリタキセルコーティングは非常に薄く(*@ μm **、***********

****μm*)、パクリタキセルのみで構成される。したがって、コーティングがなくても展開後の

ステントの完全性の評価に影響を及ぼさないと判断した。これらの検体は、すべてのステントサ

イズを包含するよう、広範かつ代表的なサイズを選定して実施した。現在、本品ステント製品群

で利用可能な最大長は 120 mmである。本試験に含まれる 140 mmのステント長は、120 mmの本

品ステントの性能を適切に代表する。試験を行った検体数は、過去の血管内ステントの実績に基

づいて、経年した Zilver ステント及びデリバリーシステムの特性を明らかにするのに十分な数で

あると判断した。

試験方法

取扱説明書に示された手法を用いて、ステントを生理的モデルである 37 ºC ±2ºCのシリコーンチ

ューブ(少なくとも**:**cmの長さで、内径がステントの公称径より*mm小さい)内に、X線透

視監視下で展開した。展開後、各ステントの管腔面及び反管腔面を光学顕微鏡下 50~63Xの倍率

で検査した。この倍率では約 5 µm~10μm長の欠陥の検出が可能である。

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223

判定基準

展開後及びデリバリーシステムの抜去後にステントに損傷があってはならない。特に、大きさが

**μmを超える亀裂があってはならない。

判定基準の妥当性

この判定基準は、破壊傾向評価に基づき臨床的に関連性があり、**μmの亀裂はステントの破壊に

至らないと結論した。

結果および考察

亀裂の発生および欠陥は認められなかった。

結論

全てのステントは、展開後のナイチノールに亀裂又は欠陥は認められず、ステントの完全性判定

基準を満たした。よって、ステントの展開後の完全性は、3 年の実時間および加速経年による影響

を受けないことが示された。

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224

14. デリバリーシステムの引張強度 (TS080057, TS020036, TS040120, TS070111)

添付資料ハ-1-43、ハ-1-44、ハ-1-45、ハ-1-46

試験の目的

本試験の目的は、3 年実時間劣化後(7 Fr)及び 3年相当の加速劣化後(6 Fr、7 Fr)の、本品ステ

ントデリバリーシステムの引張特性を明らかにすることである。加速劣化試験を行う前に、7 Fr

の Zilverデリバリーシステムの検体は**°C、相対湿度*@%で@ヶ月間保存された。これは 3年間

の保存期間に相当する。7 Frの Zilver デリバリーシステムのチップ及び 6 Fr Zilver デリバリーシス

テムは、検体を**°C の温度で**@日間保持することで加速劣化が得られた。これは 3 年間の保存

期間に相当する。

評価

検体

表 4.2.1.6-77. 実時間試験用の検体

品目 検体数

7 Frの Zilverデリバリーシステム 10

表 4.2.1.6-78. 加速劣化試験用の検体

品目 検体数

7 Frの Zilverデリバリーシステム* 10

6 Frの Zilverデリバリーシステム 29

* TS040120で試験された Zilverデリバリーシステム改変チップが分析に含まれた。

検体選択の妥当性

検体である「Zilver デリバリーシステム」は、本品デリバリーシステムと同一である。異なるステ

ントサイズを使用する Zilverデリバリーシステムであるが、その接合部はすべて同一に設計され

ている。したがって、ひとつのサイズの試験によって異なるステントサイズの Zilverデリバリー

システムを代表する。3年加速劣化後の 7Frの Zilverデリバリーシステム試験用の検体数は、過去

の血管内ステント及びデリバリーシステム試験の実績に基づいて、十分な数であると判断した。

また、6 Frの Zilverデリバリーシステムの検体数 29 個は、95%の信頼度をもって、90%の接合部

が引張荷重に耐える(チップとインナーカテーテルの接合部の引張強度が少なくとも** N、キャ

ップ内のストレインリリーフ及びハブアセンブリとカニューレの接合部の引張強度が少なくとも

**:* N)ことを示すために設定された。

試験方法

Zilverデリバリーシステムのサブアセンブリの引張強度を測定した。各サブアセンブリは、引張試

験機で、所定の伸長速度で破断が生ずるか、又は引張荷重が試験機のグリップ保持力を超えるま

で、引っ張られた。破断発生時の最大応力と破断モードを記録した。

判定基準

引張を受けない接合部の引張強度は≥** N であり、引張を受ける接合部の引張強度は留置に要する

力(**:* N)以上でなければならない。

判定基準の妥当性

判定基準は、機器を留置する際にデリバリーシステムのどの部位が引張を受けるかによる。引張

を受けない接合部の引張強度基準(≥** N)に関しては、歴史的に良好な臨床成績を有する Zilver

のデリバリーシステムにおける、過去の試験経験に基づく。引張を受ける接合部の引張強度基準

(≥**:* N)に関しては、140 mm長ステントの展開に要する最大力の 95%の信頼度と 99%の信頼

性に基づく。

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225

結果及び考察

図 4.2.1.6-4 に、引張強度試験で評価した Zilver デリバリーシステムの各構成部品、及び Zilverデ

リバリーシステム構成部品のサブアセンブリを示す。

10. ルアーロックアダプタ(ルアーロックハブ)

11. ハブ(成形ホールディングブッシング)

12. カニューレ(金属カニューレ内のインナーカテーテル)

13. 成形ハンドル

14. チェックフローボディ

15. コネクターキャップ(ストレインリリーフを含む)

16. イントロデューサーシース(フレクサーシース)

17. マーカーバンド(プッシャーバンド、7 Fr ディバリーシステム上のプラチナリング)

18. カテーテルチップ(先端部)

図 4.2.1.6-4. 引張強度評価用の Zilver デリバリーシステム及びサブアセンブリの構成部品

表 4.2.1.6-79. 7 Frのデリバリーシステムにおける試験用サブアセンブリ

サブセンブリ 構成部品 張力の有無 接合部の詳細

A

ルアーロックハ

ブ、成形ホルディ

ングブッシング、

金属カニューレ、

インナーカテーテ

張力はかからない

が、張力がかかる場

合の判定基準を保守

的に適用した。

***********

***********

***********

***********

***********

***

B

ルアーロックハ

ブ、成形ホルディ

ングブッシング、

金属カニューレ

張力はかからない

が、張力がかかる場

合の判定基準を保守

的に適用した。

***********

***********

**********

C

金属カニューレ、

成形ハンドル、チ

ェックフローボデ

ィ、コネクターキ

ャップ、フレクサ

ーシース

張力がかかる

***********

***********

***

D

インナーカテーテ

ル、インナーカテ

ーテルチップ

張力がかからない

***********

***********

***

E

インナーカテーテ

ルおよびプラチナ

リング(7 Frデバ

イスのみ)

張力がかからない ***********

*********

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226

表 4.2.1.6-80. 6 Fr のデリバリーシステムにおける試験用サブアセンブリ

サブセンブリ 構成部品 張力の有無 接合部の詳細

F

コネクターキャップ

内のストレインリリ

ーフ

張力がかかる

************

************

********

G

ルアーロックハブ、

成形ホルディングブ

ッシング、金属カニ

ューレ

張力はかからないが、

張力がかかる場合の判

定基準を保守的に適用

した。

************

************

********

H

インナーカテーテ

ル、インナーカテー

テルチップ

張力がかからない

************

************

3 年実時間劣化及び 3 年相当加速劣化後の Zilver デリバリーシステムの接合部の引張試験の結果を、

表 4.2.1.6-81 および表 4.2.1.6-82 に示す。

表 4.2.1.6-81. 3年実時間劣化後の 7 Frの Zilverデリバリーシステムの引張強度

サブアセンブリ n

ニュートン(N) 判定基準

(N) 判定 平均値±標準偏

差 最小値 最大値 *Smin

A 10 **:**:±:*:** **:** **:** **:** **:* 合格

B 10 ***:**:±:**:** ***:** ***:** **:** **:* 合格

C 10 **:**:±:*:** **:** **:** **:** **:* 合格

D 10 **:**:±:*:** **:** **:** **:** **:* 合格

E 10 **:**:±:*:** **:** **:** **:** **:* 合格

* Smin = 平均-標準偏差×k(k=2.3209)

表 4.2.1.6-82. 3年相当加速後の 6 Fr及び 7 Frの Zilver デリバリーシステムの引張強度

品目 サブアセン

ブリ n

ニュートン(N) 判定

基準

(N)

判定 平均値

±標準偏差 最小値 最大値 Smin†

7 Frの

Zilverス

テント

A 9* **:*:±:*:* **:* **:* **:* **:* 合格

B 10 ***:*:±:**:* ***:* ***:* **:* **:* 合格

C 10 **:*:±:*:* **:* **:* **:* **:* 合格

D 10 **:*:±:*:* **:* **:* **:* **:* 合格

E 9** **:*:±:*:* **:* **:* **:* **:* 合格

6 Frの

Zilverス

テント

F 29 **:*:±:*:* **:* **:* **:* **:* 合格

G 27*** ***:*:±:**:* ***:* ***:* ***:* **:* 合格

H 29 **:*:±:*:* **:* **:* **:* **:* 合格

† 平均-標準偏差×kで算出されます。片側許容限界係数 kは 95%の信頼度と 90%の包含区間に基

づき、n = 10 の場合 k = 2.3209、n = 9の場合 k = 2.4165、n = 25~30の場合 k = 1.838である。

* 1 本の検体が準備中に破損したため、除外された。

** 1 本の検体が試験機のグリップにより壊れたため、除外された。

*** 2 本の検体がデータ収集時のエラーにより除外された。

結論

試験の結果は判定基準を満たした。これは、本品デリバリーシステムの引張強度が、3年実時間劣

化または 3 年相当加速劣化によって有害な影響を受けないことを示している。

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227

15. 包装の完全性試験(102004RRA, 011105RRA, 051706BC, Testing Justification J032,

Transportation Testing Justification J033, 110906BC DV17-R, 022307BC DV32-R, Packaging

Integrity Testing Justification J034, 052527CC DV31-R, 052527CC DV31-R2, 052305CRK)

添付資料ハ-1-47、ハ-1-48、ハ-1-49、ハ-1-50、ハ-1-51、ハ-1-52、ハ-1-53、ハ-1-54、ハ-1-55

ハ-1-56、ハ-1-57

試験の目的

この試験の目的は、0時間及び 3年加速劣化後の、本品の包装設計が適切であることを確認するこ

とである。

評価

検体

表 4.2.1.6-83. 検体

項目 最小検体数

7 Frの Zilver製品* 9

6 Frの Zilver製品* 10

*ホイルパウチ(n=10)の相対湿度、シール強度の測定及び目視検査、および、乾燥剤の目視検査

を試験報告書番号 051706BC に記述された加速劣化条件下で、別途実施した。

検体選択の妥当性

本品の包装は、外側ホイルパウチが追加されたこと以外は、コーティングされていない Zilverの

包装と同一である。本品は、最内側のトレイ、内側タイベックパウチ、外側ホイルパウチ、及び

最外装のカートンに包装される。検体数は、過去の血管内ステントの包装試験の実績に基づいて

いる。

試験方法

Zilverステント及びデリバリーシステムは包装され、標準的な密封パラメーターを用いて密封され

た。包装の完全性試験においては、包装を発送用の紙箱に入れ、標準的流通試験を施行した。 流

通試験には、一連の落下試験、圧縮試験、及び振動試験が含まれ、「ワーストケース」の出荷環

境で遭遇する力を模擬するように設計された。劣化試験については、包装を 3実時間相当の加速

条件下で保管し(ASTM F1980-023に基づき、加速条件は内側タイベックパウチが 50°C/相対湿度

70~80%を 114日間、ホイルパウチが 58°C/相対湿度 75%を 90 日間)、次に、ワーストケースで

出荷条件を模擬するために流通試験を施行した。

7 Frの機器については、模擬流通後に、包装の滅菌バリアが原型を保っているかどうかを調べる

ために、各密閉パウチの検査を含む目視検査が行われた。さらに、7 Fr の経年劣化したパッケー

ジに対して染料浸透テストを施行した。その後、包装を開けて製品を検査した。

6 Frの機器については、模擬流通後の包装の完全性を、目視検査、及び発泡漏れ試験により評価

した。さらに、6 Frの劣化後包装を用いてシールの強度を評価した。

判定基準

包装には、目視検査で、無菌性を損なうような損傷が認められてはならない。

包装内の内容物には、製品の性能に影響を及ぼすいかなる損傷もあってはならない。

内容物は包装用トレイ内で移動してはならない。

7 Frの機器に特有の基準:

シールが染料で漂白されてはならない(経年試験番号 052305CRK)。

3 ASTM F1980-02, Standard Guide for Accelerated Aging of Sterile Medical Device Packages. (滅菌医療機器

の包装に対する加速劣化試験の標準試験法)。

Page 154: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

228

6 Frの機器に特有の基準:

包装は ASTM F20964に従って発泡漏れ試験に合格しなければならない。

劣化試験におけるシールの強度は*:* lbf(*:** N)以上でなければならない。

判定基準の妥当性

判定基準は、過去の包装試験及び滅菌の実績に基づいて設定された。

結果及び考察

ワーストケースの模擬出荷下で行われた、6 Fr 及び 7 Frの包装の評価において、機器に不具合を

直接もたらす可能性のある実質的な損傷は、目視検査では認められなかった。 さらに、ワースト

ケースの模擬出荷を実施した経年本品ステントの包装において、7 Frの経年デバイスは染料浸透

試験に合格し、6 Frの経年デバイスはシール強度評価試験に合格した。

結論

すべての本品の包装は判定基準を満たした。これは、包装が少なくとも3年間耐えられること、及

び典型的な出荷及び流通環境に耐えられることを示している。

4 ASTM F2096, Standard Test Method for Detecting Gross Leaks in Medical Packaging by Internal Pressurization

(Bubble Test).(内部加圧による医療用包装の総リーク量の検出に関する標準試験法(気泡試験))。

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229

4.2.2 機器の性能を裏付ける試験

総括

以下の表に、本申請品の性能を裏付けるために実施した試験の総括を示す。本申請品は設定し

た判定基準を以って、すべての試験に合格した。

表 4.2.2-1. 機器の性能を裏付ける試験

試験名称 方法 判定基準 資料番号 結果 試験施設

1. 展開および寸

法に関する試

験:デリバリー

システムの寸法

確認

較正済みのレーザー

マイクロメーターを

用いて、フレキサー

シース径の寸法測定

を行った。

デリバリーシステムの形

状(フレキサーシースの

最大外径)は 7 Frで****

mm(*:*** inch)以下であ

り、6 Frで**** mm

(***** inch)以下である

こと。

ホ-1-72

ホ-1-74

合格 @@*

*::::::**:

*:*:

2. 展開および寸

法に関する試

験:展開に要す

る力

取扱説明書に従って

ステントを展開した

後、7 Frの場合は定性

的に、6 Frの場合は較

正済みのフォースゲ

ージで、展開に要す

る力を定性的に評価

した。

7 Frの場合、フレキサーシ

ースはガイドワイヤーに

沿って容易に進めること

ができ、展開時に抜去す

る時の引き戻し抵抗は中

程度以下であること。6 Fr

の場合、ステントの展開

に要する力は** N 未満で

あること。

ホ-1-72

ホ-1-75

合格 @@*

*::::::**:

*:*:

3. 展開および寸

法に関する試

験:アクセスの

容易さおよび展

開の正確性

取扱説明書に従って

ステントを展開した

後、展開の容易さを

定性的に記録し、較

正済みのコンピュー

タシステムを用いて

ステント展開の正確

さを測定した。

ステントおよびデリバリ

ーシステムは容易に進め

ることができ、X 線透視

下で視認でき、かつステ

ント展開が成功でき、そ

の後、容易にデリバリー

システムを抜去できるこ

と。展開後にステント

は、遠位側の X 線不透過

性ターゲットマーカーの

± * mm以内にあること。

ホ-1-72

ホ-1-74

合格 @@*

*::::::**:

*:*:

4. 展開および寸

法に関する試

験:展開前後に

おけるステント

の長さの変化

取扱説明書に従って

ステントを展開した

後、較正済みのコン

ピュータ制御 X 線撮

影システムを用い、

展開前、および展開

後のステント長を測

定し、長さの変化を

計算した。

ステントはいずれも展開

前後におけるステント長

の変化が ± **%以内で、

かつ展開後ステント長が

ラベル表示の公称長の

+ * mm~‐ * mm 以内であ

ること。

ホ-1-72

ホ-1-74

合格 @@*

*::::::**:

*:*:

Page 156: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

230

試験名称 方法 判定基準 資料番号 結果 試験施設

5. 展開および寸

法に関する試

験:ステントの

直径と均一性

取扱説明書に従って

ステントを展開した

後、光学顕微鏡と較

正済みのコンピュー

タ測定装置を用いて

ステントの直径およ

び均一性を評価し

た。

ステントの直径は5 mm~9

mm径のステントで公称径

の ± *** mm以内、10 mm

径のステントでは公称径

の ± *** mm以内であるこ

と。直交方向におけるス

テントの均一性の範囲、

および特定のステントサ

イズにおける均一性の最

大変動はすべて、*%以内

でなければならない。

ホ-1-72

ホ-1-74

合格 @@*

*::::::**:

*:*:

6. 展開および寸

法に関する試

験:ステントの

完全性

取扱説明書に従って

ステントを展開した

後、光学顕微鏡を用

いてステント表面を

検査した。

ステント展開およびデリ

バリーシステム抜去後、

ステントに損傷がないこ

と。特に、** µmを超える

亀裂がないこと。

ホ-1-73

ホ-1-74

合格 @@*

*::::::**:

*:*:

7. 曲げ/キンクの

評価

キンクが生じるま

で、較正済みの半径

型テンプレート上で

検体を曲げる。検体

にキンクが生じなか

った最小半径、およ

び/またはキンクが生

じた半径を記録し

た。

デリバリーシステムは、

19 mm の最小キンク半径

を示すこと。ステント

は、8.5 mm の最小キンク

半径を示すこと。

ホ-1-76

ホ-1-77

合格 @@*

*::::::**:

*:*:

8. ラディアルフ

ォース

ステントが拡張する

際に発生するラディ

アルフォースを、直

径の関数として測定

した。これは、検体

を公称径に等しい初

期直径から圧縮(装

填)し、拡張(抜

出)させて公称径に

もどすことによって

得られた。

ステントは、操作時の直

径(ステントの公称径よ

りも* mm 小さい)でラデ

ィアルフォースが、****

N/mm から@*** N/mm の

間でなければならない。

ホ-1-70

ホ-1-71

合格 @@*

*::::::**:

*:*:

Page 157: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

231

試験名称 方法 判定基準 資料番号 結果 試験施設

動物試験

9. 家畜ブタにお

ける、非コーテ

ィング、パクリ

タ キ セ ル 3

µg/mm2 (臨床用

量)およびパク

リ タ キ セ ル

9 µg/mm2 (臨床

用量の 3 倍)の

1、3、6 ヶ月の

主要動物試験

ブタ 64 匹に 85 個の

ステントを留置し

た。ステント留置後

1、3 または 6 ヶ月間

ブタをフォローアッ

プ し 、 0 µg/mm2 、

3 µg/mm2 、 9 µg/mm

2

のパクリタキセルで

コーティングしたス

テントの安全性を評

価した。この安全性

は、定量的血管造

影、定量的組織形態

計測、準定量的およ

び定性的な組織病理

学検査、剖検、血清

化学検査/血液学検査

によって評価した。

また、デリバリーシ

ステムの性能も評価

した。

安全性の問題がないこ

と。

血管壁の修復が進行中

であること。

ホ-2-1

ホ-2-2

ホ-2-3

合格 @@*

*::::::**:

*:*:

10. 家畜ブタに

おける、追加コ

ーティング用量

での 1、3、6 ヶ

月の動物試験

ブタ 63 匹に 84 個の

ステントを留置し

た。ステント留置後

1、3 または 6 ヶ月間

ブタをフォローアッ

プ し 、 2 µg/mm2 、

4 µg/mm2、 12 µg/mm

2

のパクリタキセルで

コーティングしたス

テントの安全性を評

価した。血管造影、

組織形態計測、組織

病理の各パラメータ

ーについて、定性的

かつ定量的に評価す

ることで、安全性を

評価した。デリバリ

ーシステムの性能も

評価した。

追加用量(非主要)濃度

で安全性の問題がないこ

と。

ホ-2-4 合格 @@*

*::::::**:

*:*:

Page 158: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

232

試験名称 方法 判定基準 資料番号 結果 試験施設

11. 家畜ブタに

おける、重複ス

テントの 1、3、

6ヶ月動物試験

ブタ 29 匹に 116 個の

ステントを留置し

た。ステント留置後

1、3 または 6 ヶ月間

ブタをフォローアッ

プし、0 µg/mm2 およ

び 3 µg/mm2 のパクリ

タキセルでコーティ

ングした重複ステン

トの安全性を評価し

た。血管造影、組織

形態計測、組織病理

の各パラメーターに

ついて、定性的かつ

定量的に評価するこ

とで、安全性を評価

した。デリバリーシ

ステムの性能も評価

した。

安全性の問題がないこ

と。

血管壁の修復が進行中

であること。

ホ-2-5

ホ-2-6

ホ-2-7

合格 @@*

*::::::**:

*:*:

12. 家畜ブタに

おける、本品ス

テントの下流方

向への作用およ

び全身作用を評

価した 1 ヶ月過

剰投与試験

ブタ 7 匹に 63 個のス

テントを留置した。

ステント留置後 1 ヶ

月間ブタをフォロー

アップし、臨床用量

の 3 倍のパクリタキ

セルでコーティング

した 4 個の 10 x 80

mm 本品ステント同等

物の安全性を評価し

た。この安全性は、

血管造影、血清化学

検査/血液学検査、お

よび詳細な剖検によ

り評価した。

臨床用量の 3 倍のパクリ

タキセルでコーティング

した 4 個の 10 x 80 mm

Zilver PTX ステントに相当

するもの(各肢当たり 2

個のステント)が、下流

方向および全身に及ぼす

作用に伴う安全性の問題

がないこと。

ホ-2-8 合格 @@*

*::::::**:

*:*:

13. 家畜ブタに

おける本品ステ

ントの 2 ヶ月薬

物動態試験

ブ タ 16 匹 に 、

3 µg/mm2 のパクリタ

キセルでコーティン

グした 64 個のステン

トを留置した。ステ

ント留置血管、留置

部位から下流、およ

び全身の薬物動態を

特性付けた。

安全性の問題がないこ

と。

薬物動態の特性を明ら

かにする。

ホ-2-9 合格 @@*

*::::::**:

*:*:

Page 159: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

233

試験名称 方法 判定基準 資料番号 結果 試験施設

14. 家畜ブタに

おける本品ステ

ントの 24 時間

薬物動態試験

ブタ 2 匹に、パクリ

タキセル 3 µg/mm2 で

コーティングした 8

個のステントを留置

した。ステントの早

期全身薬物動態を特

性付けた。

安全性の問題がないこ

と。

薬物動態の特性を明ら

かにする。

ホ-2-10 合格 *******

*****

*:*******:::

*:*:

15. 家畜ブタに

おける長型ステ

ントおよびデリ

バリーシステム

の急性期性能

ブタ 2 匹に 4 個のス

テントを留置し、臨

床使用を模擬した条

件下の in vivo モデル

において、ステント

およびデリバリーシ

ステムの急性期性能

特性(送達能力およ

び展開)を評価し

た。

各検体の臨床的に許容で

きる有用性は、インター

ベンション専門医によっ

て 5 点評価スケールに基

づいて決定された。

ホ-2-11 合格 @@*

*::::::**:

*:*:

結論:

薬剤コーティングステントの使用目的を考慮した上で、適切な性能試験を選択した。これらに

は、ステントの展開および寸法に関する試験、曲げ/キンク、ラディアルフォースの試験に加

え、薬物動態、過剰投与、急性期性能などを含む 7つの動物試験が含まれる。本申請品は設定

した判定基準に従ってすべての試験に合格した。したがって、本申請品は薬剤溶出型ステント

としての性能に関する要求事項を満たしたと判断する。それぞれの試験の要約を以下に記載す

る。ただしラディアルフォース試験の要約については、4.2.1.5「機械的安全性」に記載した。

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234

展開および寸法に関する試験 (TS040024, TS010038, TS080107, TS080108)

添付資料ホ-1-72、ホ-1-73、ホ-1-74、ホ-1-75

要約

以下に示す試験の目的は、本品ステントおよびデリバリーシステムの寸法および展開を特性付け

ることである。以下の項目における、それぞれの試験結果を記載する。

1. デリバリーシステムの寸法確認

2. 展開に要する力

3. アクセスの容易さ及びステント展開の正確性

4. 展開前後におけるステントの長さの変化

5. 展開後のステントの直径及び均一性

6. 展開後のステントの完全性

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235

1. 本品デリバリーシステムの寸法確認 (TS040024, TS080107)

添付資料ホ-1-72、ホ-1-74

試験の目的

本試験の目的は、本品デリバリーシステムの寸法を確認することである。

評価

表 4.2.2-2. 試験検体

項目 ステントのサイズ(mm) 検体数

7 Frの本品ステントおよび

デリバリーシステム

6 x 20 10

6 x 80 10

10 x 20 10

10 x 80 10

6 Frの本品ステントおよび

デリバリーシステム

5 x 20 10

5 x 120 10

6 x 120 5

7 x 120 10

8 x 120 5

9 x 120 5

10 x 20 10

10 x 120 10

検体選択の妥当性

検体は、自己拡張型ナイチノール製である本品ステントおよびデリバリーシステムである。検体

のサイズは、最小および最大の直径、ならびに最短および最長の長さのステントを含む。さらな

る確認のために、追加のステントサイズも試験した。

試験方法

本品デリバリーシステムのフレキサーシースの全体的な最大外径を、較正済みのレーザーマイク

ロメーターを使用して測定した。

判定基準

本品ステントデリバリーシステムの形状(フレキサーシースの最大外径)は7 Frで*.** mm(*****

inch)以下であり、6 Frで**** mm(***** inch)以下であること。

判定基準の妥当性

7 Frのデリバリーシステムの判定基準は9 Frガイドカテーテルの最小内径に基づき、6 Frでは8 Frガ

イドカテーテルの最小内径に基づく。

結果および考察

表 4.2.2-3に示すように、7 Frの Zilverデリバリーシステムのフレキサーシースの最大外径は

**** mm(***** inch)以下であり、6 Frでは**** mm(***** inch)以下であった。

Page 162: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

236

表 4.2.2-3. 試験結果

品目

ステント

のサイズ

(mm)

フレキサーシースの最大外径

判定 平均値 ± 標準偏差

(mm)

最小値(mm)

最大値(mm)

7 Frの本品

6 x 20 10 ****±:**** *:** *:** 合格

6 x 80 10 ****±:**** *:** *:** 合格

10 x 20 10 ****±:**** *:** *:** 合格

10 x 80 10 ****±:**** *:** *:** 合格

6 Frの本品

5 x 20 10 ****±:**** *:** *:** 合格

5 x 120 10 ****±:**** *:** *:** 合格

6 x 120 5 ****±:**** *:** *:** 合格

7 x 120 10 ****±****: *:** *:** 合格

8 x 120 5 ****±:**** *:** *:** 合格

9 x 120 5 ****±:**** *:** *:** 合格

10 x 20 10 ****±:**** *:** *:** 合格

10 x 120 10 ****±:**** *:** *:** 合格

結論

6 Frおよび 7 Frの本品デリバリーシステムのフレキサーシースの全体的な最大外径は、すべて判

定基準を満たした。

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237

2. 展開に要する力 (TS040024, TS080108)

添付資料ホ-1-72、ホ-1-75

試験の目的

本試験の目的は、本品ステント製品群の展開に要する力の特性を評価することである。

評価

検体

表 4.2.2-4. 展開に要する力の試験検体

項目 ステントのサイズ(mm) 検体数

7 Frの本品ステントおよび

デリバリーシステム

6 x 20 10

6 x 80 10

10 x 20 10

10 x 80 10

6 Frの本品ステントおよび

デリバリーシステム

5 x 20 10

5 x 120 10

6 x 120 5

7 x 120 10

8 x 120 5

9 x 120 5

10 x 20 10

10 x 120 10

検体選択の妥当性

検体は、自己拡張型ナイチノール製である本品ステントおよびデリバリーシステムである。検体

が、各 Frサイズにおける設計空間の「四隅」をカバーするように選択した(すなわち、最小およ

び最大の直径、ならびに最短および最長の長さのステントを含めた)。さらなる確認のために、

追加のステントサイズ(四隅の間のサイズ)も試験した。

試験方法

取扱説明書に示された手技を使い、37ºC ± *ºCの温度下で、0.035 inch (0.89 mm)のガイドワイヤー

に沿って、生理学的モデルであるシリコーンチューブ(本ステントの公称径より@ mm小さい内

径をもつ)内に X線透視下で本品ステントおよびデリバリーシステムを進めて展開した。ガイド

ワイヤーを進めた後、7 Frの本品ステントを展開するためのシースの引き戻し抵抗度を、非常に

小さい、小さい、中程度、困難、非常に困難のスケールで定性的に評価した。6 Frの本品におい

ては、デリバリーシステムの近位端が較正済みのフォースゲージに固定され、展開中にデリバリ

ーシステムのハンドルを引くのに必要な最大の力が記録された。

判定基準

7 Frの本品ステントおよびデリバリーシステムにおいて、シースの引き戻し抵抗度は中程度以下

でなくてはならない。 6 Frの本品ステントの展開に要する力は** Nより低くなければならない。

判定基準の妥当性

判定基準は臨床使用で通常直面する強度に基づいている。先に開発された 7Frステントにおける

留置に要する力試験では、シースの引き戻しに対する抵抗力の定性的な評価が含まれた。その後

発行された ISO25539-2に伴い、6Frステントの試験においてはデリバリーシステムのハンドルを

展開中に引き戻すのに必要な最大力が測定され、改善された定量的な評価がなされた。

結果および考察

表 4.2.2-5に示されるように、展開中の 7 Frの本品デリバリーシステムのフレキサーシースの定性

的な引き戻し抵抗度のスコアは、ステントのサイズにかかわらず、非常に小さい~中程度の範囲で

あった。

Page 164: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

238

表4.2.2-5. 7 Frの本品ステントの定性的な展開評価

ステントの

サイズ(mm)

引き戻し抵抗

非常に小さい 小さい 中程度 困難 非常に困難

6 x 20 *:*****@* *:*****@* * * * 6 x 80 * *:*****@* *:*****@* * * 10 x 20 **:*****@* * * * * 10 x 80 **:*****@* * * * *

表 4.2.2-6に示されるように、6 Frの本品ステントの展開に要する力の計算最大値(95%の信頼度

と 99%の信頼性)は、20 mm長と 120 mm長において、それぞれ*** Nと**** Nであった。

表 4.2.2-6. 6 Frの本品ステントの展開に要する力

品目 本品ステント

の直径(mm) 検体数

展開に要する力(N)

平均値 標準

偏差 最小値 最大値 Smax

20 mm長の

本品ステント

5 25 *:* *:* *:* *:* ****

10 10 *:* *:* *:* *:* ****

合計 35 *:* *:* *:* *:* *:**

120 mm長の

本品ステント

5 5 **:* *:* **:* **:* ****

6 9*** **:* *:* **:* **:* ****

7 4*** **:* *:* *:* **:* ****

8 5 **:* *:* **:* **:* ****

9 10 **:* *:* *:* **:* ****

10 25 **:* *:* *:* **:* ****

合計 58 **:* *:* *:* **:* **:***

* Smax = (平均値+[偏差値×K])。K = 2.9831であり、これは n = 35の場合における 95%の信頼度

と、99%の信頼性に基づく。

** Smax = (平均値+[偏差値×K])。K = 2.8101であり、これは n = 58の場合における 95%の信頼度

と、99%の信頼性に基づく。

*** これらは、実験者のエラーによってデータが 1つ失われた。

結論

本品ステントは、定性的なシース引き戻し抵抗が中等度以下であり、定量的な展開に要する力が

** N未満であることが示され、これは判定基準を満たした。

Page 165: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

239

3. アクセスの容易さ及び展開の正確性 (TS040024, TS080107)

添付資料ホ-1-72、ホ-1-74

試験の目的

本試験の目的は、6 Frおよび 7 Frの本品デリバリーシステムのアクセスの容易さ、および展開の

正確さを評価することである。

評価

検体

表 4.2.2-7. 試験検体

品目 ステントのサイズ

(mm)

デリバリーシステム

の本数

7 Frの本品ステン

トおよびデリバリ

ーシステム

6 x 20 10

6 x 80 10

10 x 20 10

10 x 80 10

6 Frの本品ステン

トおよびデリバリ

ーシステム

5 x 20 10

5 x 120 10

6 x 120 5

7 x 120 10

8 x 120 5

9 x 120 5

10 x 20 10

10 x 120 10

検体選択の妥当性

検体は、自己拡張型ナイチノール製である本品ステントおよびデリバリーシステムである。検体

は、最小および最大の直径、そして最短および最長の長さを含む。さらなる確認のために、追加

のステントサイズも試験された。

試験方法

取扱説明書に示された手技を使い、37ºC ± *ºCの温度下で、0.035 inch (0.89 mm)のガイドワイヤー

に沿って、生理学的なモデルであるシリコーンチューブ(本ステントの公称径より@ mm小さい

内径をもつ)内に X線透視下で本品ステントおよびデリバリーシステムを進めて展開した。デリ

バリーシステムは、ガイドワイヤーに沿って容易に進めることができ、留置部位まで容易に到達

できるか否かが観察され、記録された。ステントが正確な位置に展開されているか否か(展開の

正確さ)にあたっては、シリコーンチューブ内の遠位側にある X線不透過性ターゲットマーカー

を使い、ステントが適切な位置に配置するよう試み、 後に各ステントに対して、ターゲットマー

カーからステント上の遠位側にある X線不透過性ゴールドマーカーまでの距離を、較正済みのコ

ンピュータ測定装置を使用して測定した。

判定基準

ステントおよびデリバリーシステムは容易に進めることができ、X線透視下で視認でき、かつステ

ント展開が成功でき、その後、容易にデリバリーシステムを抜去できること。展開後にすべての

ステントは、遠位側のX線不透過性ターゲットマーカーの ± * mm以内になければならない。

判定基準の妥当性

アクセスの容易さおよびステント展開の正確さに対する判定基準は、過去の血管内ステント試験

の実績に基づいて設定した。当初、先に開発された7Frステントと後に開発された6Frステントと

では、展開の正確性の判定基準が異なっていた。7Frの判定基準は平均値のみが解析され、値の変

動に関しては解析されていなかった。6Frステントの判定基準においては、ステントのX線不透過

マーカーと遠位側X線不透過ターゲットマーカーとの距離が±* mm以内でなければならず、より厳

密となった。よって7Frステントも同様に、より厳密な判定基準を用いて試験された。

Page 166: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

240

結果および考察

すべてのデリバリーシステムは、適切なサイズのガイドワイヤーに沿って、シースを通して容易

に進めることができ、すべてのステントを困難なく展開できた。ステントおよびデリバリーシス

テムは、X線透視下で常時、視認可能であった。また、表 4.2.2-8に示すように、ステントは正確

に展開された。ステントの X線不透過性マーカーからシリコーンチューブのターゲットマーカー

までの平均距離は± * mm以内であった(7Frの 6 x 80mmサイズのステントにおける、10検体中 1

検体を除き)。展開後、デリバリーシステムを容易に抜去できたことが報告された。

表 4.2.2-8. 本品ステントの展開の正確さ

品目

ステント

のサイズ

(mm)

検体数

ターゲットマ

ーカーまでの

距離(平均値

± 標準偏差)(mm)

最小

値(mm)

最大

値(mm)

判定

7 Frの本品

ステント

6 x 20 10 :****:±:**** :*:** *:** 合格

6 x 80 10 :****:±:**** :*:** *:** 合格

10 x 20 10 :****:±:**** :*:** *:** 合格

10 x 80 10 :****:±:**** :*:** *:** 合格

6 Frの本品

ステント

5 x 20 10 ****:±:**** *:** *:** 合格

5 x 120 10 ****:±:**** *:** *:** 合格

6 x 120 5 ****:±:**** *:** *:** 合格

7 x 120 10 ****:±:**** *:** *:** 合格

8 x 120 5 ****:±:**** *:** *:** 合格

9 x 120 5 ****:±:**** *:** *:** 合格

10 x 20 10 ****:±:**** *:** *:** 合格

10 x 120 10 ****:±:**** *:** *:** 合格

± * mm以内を満たさなかった唯一の検体に関しては、7Frステントの試験報告書 TS040024の表 2

(138ページ、下図)から、例外的な数値であることがわかる。当該結果は試験者に対するトレー

ニング等に起因すると見られ、本品の性能に影響はないと考えられる。

結論

ステントの可視性、ステントの展開および展開の正確性、ならびにデリバリーシステムの進行お

よび抜去はすべてにおいて、問題が認められなかった。

Page 167: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

241

4. 展開前後におけるステントの長さの変化 (TS040024, TS080107)

添付資料ホ-1-72、ホ-1-74

試験の目的

本試験の目的は、展開前と展開後の本品ステントの長さ、およびその長さの変化を特性付けるこ

とである。

評価

検体

表 4.2.2-9. 試験検体

品目 ステントのサイズ

(mm)

デリバリーシステム

の本数

7 Frの本品ステン

トおよびデリバリ

ーシステム

6 x 20 10

6 x 80 10

10 x 20 10

10 x 80 10

6 Frの本品ステン

トおよびデリバリ

ーシステム

5 x 20 10

5 x 120 10

6 x 120 5

7 x 120 10

8 x 120 5

9 x 120 5

10 x 20 10

10 x 120 10

検体選択の妥当性

検体は、自己拡張型ナイチノール製である本品ステントおよびデリバリーシステムである。検体

は、最小および最大の直径、そして最短および最長の長さを含む。さらなる確認のために、追加

のステントサイズも試験した。

試験方法

37°C ± *°Cでデリバリーシステム内に装填された状態で、展開前の各本品ステントの長さを、較

正済みのコンピュータ制御 X線撮影システムを使って測定した。展開後、ステントはシリコーン

チューブから取り出され、37 ± *ºCの水浴に浸漬したまま、較正済みカリパスを使って非拘束状態

の長さを測定した。展開前後の長さの変化率が計算された。長さの変化が正の値の場合は展開時

に長くなったことを表し、負の値は短くなったことを表す。

判定基準

各ステントについて、展開前ステント長および展開後ステント長の変化が ± **%以内で、かつ展

開後ステント長がラベル表示された公称長の+ * mm~- * mm以内でなければならない。

判定基準の妥当性

展開前後のステント長の変化の判定基準は、過去の血管内ステント試験の実績に基づいて設定し

た。当初、先に開発された 7Frステントと後に開発された 6Frステントとでは、判定基準が異なっ

ていた。7Frの判定基準は平均値のみが解析され、値の範囲は解析されなかった。6Frステントの

判定基準は、臨床使用における経験に基づいてより厳密となったため、7Frステントも同様に、よ

り厳密な判定基準を用いて試験された。

結果および考察

表 4.2.2-10に展開前のステントの長さ、展開後の非拘束状態のステントの長さ、およびその長さ

の変化を示す。

Page 168: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

242

表 4.2.2-10. 展開前および展開後(非拘束状態)のステントの長さ、および長さの変化

品目

ステント

のサイズ

(mm)

検体

展開前の長さ

(平均値 ± 標準

偏差) (mm)

展開後の非拘束

状態の長さ* (平

均値 ± 標準偏差)

(mm)

長さの変化 (%)

判定 平均値 ±

標準偏差 最小値 最大値

7 Frの本品

ステント

6 x 20 10 *****:±:**** *****:±:**** ****:±:::** :*:** *:** 合格

6 x 80 10 *****:±:**** *****:±:**** ****:±:*::* *:** *:** 合格

10 x 20 10 *****:±:**** *****:±:**** ****:±:**:: :*:** *:** 合格

10 x 80 10 *****:±:**** *****:±:**** ****:±:*::* *:** *:** 合格

6 Frの本品

ステント

5 x 20 10 *****:±:**** *****:±:**** ****:±:**:: :*:** *:** 合格

5 x 120 10 ******:±:**** ******:±:**** ****:±:::** *:** *:** 合格

6 x 120 5 ******:±:**** ******:±:**** ****:±:*::* *:** *:** 合格

7 x 120 10 ******:±:**** ******:±:**** ****:±:**:: *:** *:** 合格

8 x 120 5 ******:±:**** ******:±:**** ****:±:**:: *:** *:** 合格

9 x 120 5 ******:±:**** ******:±:**** ****:±:*::* *:** *:** 合格

10 x 20 10 *****:±:**** *****:±:**** ****:±:**:: :*:** **:** 合格

10 x 120 10 ******:±:**** ******:±:**** ****:±:**:: *:** *:** 合格

* シリコーンチューブからステントを取り外した後、測定した。

シリコーンチューブから本品ステントを取り出した後、非拘束状態のステント長は、表 4.2.2-11

に示されるようにすべて (100%)判定基準を満たした。

表 4.2.2-11. カリパスで測定した、展開後の非拘束状態のステント長

品目 ステントのサイズ

(mm) 検体数

展開後ステントの長さ(mm)

判定 平均値 ± 標準偏差 最小 最大

7 Frの本品

ステント

6 x 20 10 *****:±:**** **:** **:** 合格

6 x 80 10 *****:±:**** **:** **:** 合格

10 x 20 10 *****:±:**** **:** **:** 合格

10 x 80 10 *****:±:**** **:** **:** 合格

6 Frの本品

ステント

5 x 20 10 *****:±:**** **:** **:** 合格

5 x 120 10 ******:±:**** ***:** ***:** 合格

6 x 120 5 ******:±:**** ***:** ***:** 合格

7 x 120 10 ******:±:**** ***:** ***:** 合格

8 x 120 5 ******:±:**** ***:** ***:** 合格

9 x 120 5 ******:±:**** ***:** ***:** 合格

10 x 20 10 *****:±:**** **:** **:** 合格

10 x 120 10 ******:±:**** ***:** ***:** 合格

結論

展開によるステントの長さの変化、および展開されたステント長は、ラベル表示された公称の長

さとの比較において、すべて問題がなかった。

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243

5. 展開後のステントの直径及び均一性 (TS040024, TS080107)

添付資料ホ-1-72、ホ-1-74

試験の目的

本試験の目的は、展開後の本品ステントの直径と均一性を特性付けることである。

評価

表 4.2.2-12. ステントの直径と均一性の評価用検体

品目 ステントのサイズ

(mm)

デリバリー

システムの本数

7 Frの本品ステン

トおよびデリバリ

ーシステム

6 x 20 10

6 x 80 10

10 x 20 10

10 x 80 10

6 Frの本品ステン

トおよびデリバリ

ーシステム

5 x 20 10

5 x 120 10

6 x 120 5

7 x 120 10

8 x 120 5

9 x 120 5

10 x 20 10

10 x 120 10

検体選択の妥当性

検体は、自己拡張型ナイチノール製である本品ステントおよびデリバリーシステムである。検体

は、最小および最大の直径、そして最短および最長の長さを含む。さらなる確認のために、追加

のステントサイズも試験した。

試験方法

取扱説明書に示された手技を使い、37ºC ± *ºCの温度下で、生理学的なモデルであるシリコーンチ

ューブ(本ステントの公称径より* mm小さい内径をもつ)内にX線透視下で本品ステントを展開

した。チューブから展開したステントを注意深く取り外した後、非拘束状態のステントの外径を

縦方向の視界で、光学顕微鏡および較正済みのコンピュータ測定システムを使用して測定した。

ステントを37°C ± *°Cの水浴に浸漬したまま、較正済みのビデオ測定システムを使って、ステント

の長軸方向に沿って直交する外径(近位側、中央、遠位側の3箇所)の測定を実施した。ステント

の円形率を推定するために、各位置での直交面での外径の最大径と最小径の比を計算した。さら

に、任意の3箇所における、全体の最大径と全体の最小径の比率を、ステント長に沿う直径の均一

性を評価するため計算した。

判定基準

5~9 mmの直径のステントではステントの直径は公称径の±*** mm以内、10 mmの直径のステント

では公称径の±*:* mm以内でなければならない。直交方向におけるステントの均一性の範囲、およ

び特定のステントサイズにおける均一性の最大変動はすべて、*%以内でなければならない。

判定基準の妥当性

展開後のステントの直径と均一性に関する判定基準は、過去の血管内ステント試験の実績に基づ

いて設定した。当初、先に開発された 7Frステントと後に開発された 6Fr ステントとでは、判定基

準が異なっていた。7Frにおける展開後のステント直径の判定基準は、特定のステントサイズの平

均値のみが解析され、ステントの均一性の判定基準は、全ステントサイズの平均値に対して行わ

れた。6Frステントの判定基準は、直径 5~9 mmのステントでは展開後の直径が公称径の±*** mm

以内、直径 10 mmのステントでは公称径の±*** mm以内でなければならず、より厳密となった。

さらに、直交方向におけるステントの均一性の範囲、および特定のステントサイズにおける均一

Page 170: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

244

性の最大変動はすべて、*%以内でなければならない。このため、7Frステントも同様に、より厳

密な判定基準を用いて試験された。

結果および考察

ステントの近位側、中央、遠位側の部位で測定した、非拘束状態の外径を以下の表 4.2.2-13に示

す。

表 4.2.2-13. ステント径の測定

品目

ステン

トのサ

イズ

(mm)

検体

近位側の外径 中央の外径 遠位側の外径

判定 平均値 ±

標準偏差

(範囲)

平均値 ±

標準偏差

(範囲)

平均値 ±

標準偏差

(範囲)

7 Frの本品

ステント

6 x 20 10 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****) 合格

6 x 80 10 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****) 合格

10 x 20 10 *****:±:****

(****:~:*****)

*****:±:****

(*****:~:*****)

*****:±:****

(****:~:*****) 合格

10 x 80 10 ****:±:****

(****:~:*****)

****:±:****

(****:~:*****)

****:±:****

(****:~:*****) 合格

6 Frの本品

ステント

5 x 20 10 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****) 合格

5 x 120 10 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****) 合格

6 x 120 5 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****) 合格

7 x 120 10 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****) 合格

8 x 120 5 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****) 合格

9 x 120 5 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****) 合格

10 x 20 10 *****:±:****

(****:~:*****)

*****:±:****

(****:~:*****)

*****:±:****

(****:~:*****) 合格

10 x 120 10 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****) 合格

ステントの 3箇所(近位側、中央、遠位側)それぞれにおける直径の比、および全体の最大直径

比(最大径と最小径の比)を表 4.2.2-14に示す。直交平面で測定した直径は、7 Frでは平均***%

の差があり、6 Fr では平均***%の差があった。さらにステントの全体的な最大径と最小径の差は、

7 Frでは平均で***%、6 Frでは平均で***%であった。

Page 171: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

245

表 4.2.2-14. 3箇所(近位側、中央、遠位側)にわたるステントの均一性およびステントの最大均一

品目

ステントの

サイズ

(mm)

検体

近位側の直径

比 (範囲)

中央の直径比

(範囲)

遠位側の直径

比 (範囲)

最大直径比

(範囲)

7 Frの本

品ステン

6 x 20 10 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

6 x 80 10 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

10 x 20 10 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

10 x 80 10 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

6 Frの本

品ステン

5 x 20 10 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

5 x 120 10 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

6 x 120 5 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

7 x 120 10 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

8 x 120 5 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

9 x 120 5 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

10 x 20 10 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

10 x 120 10 ****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

****:±:****

(****:~:****)

結論

展開された本品ステントの直径および均一性は、判定基準を満たした。

Page 172: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

246

6. 展開後のステントの完全性(TS010038, TS080107)

添付資料ホ-1-73、ホ-1-74

試験の目的

本試験の目的は、本品ナイチノール製ステントの基本構造の展開後の完全性を評価することであ

る(注:コーティングの完全性は他の試験において評価済みであり、本試験の一環としては評価

していない)。

評価

検体

表 4.2.2-15. ステントの完全性試験用検体

品目 ステントのサイズ

(mm) 検体数 合計検体数

7 Frの Zilver

ステント*

6 x 20 2

20

6 x 80 2

7 x 20 2

7 x 80 2

8 x 20 2

8 x 80 2

9 x 20 2

9 x 80 2

10 x 20 2

10 x 80 2

6 Frの本品

ステント

5 x 20 10

65

5 x 120 10

6 x 120 5

7 x 120 10

8 x 120 5

9 x 120 5

10 x 20 10

10 x 120 10

検体選択の妥当性

* 7 Frでは検体として「Zilverステント」を用いた。このステントは金属ベアメタルステントであ

るが、パクリタキセルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセ

ルコーティングはパクリタキセルのみで構成され、非常に薄い(***************μm

****、*********@ μm**)。したがって、コーティングがなくても、このナイチ

ノール製ステントプラットフォームの完全性評価に影響を及ぼさないと判断した。

展開後のステントの完全性はステントのサイズには依存しないが、本評価における検体はステン

トの全サイズを網羅する。過去の血管内ステントの実績に基づき、検体数はステントの完全性を

特性付けるのに適切であると考える。

試験方法

取扱説明書に示された手技を使って、37ºC ± *ºCの温度下で、生理学的なモデルであるシリコーン

チューブ(本ステントの公称径より* mm小さい内径をもつ)内にX線透視下で本ステントを展開

した。50X~63Xの倍率で、光学顕微鏡下で展開後のステントの内腔面と反管腔面が検査された。

この倍率では、ナイチノールにおける約5~10 µmの長さの傷を検出することが可能である。

判定基準

展開し、デリバリーシステムを抜去した後、ステントに損傷があってはならない。具体的には、

ステントに> ** µmのサイズの亀裂があってはならない。

Page 173: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

247

判定基準の妥当性

** μmの亀裂はステントの破断に至らないと亀裂傾向評価によって結論されたため、この判定基

準は臨床的意義に基づいている。

結果および考察

亀裂の発生またはひびは認められなかった。

結論

すべての本品ステントは、展開後にナイチノールに亀裂やひびが認められず、ステントの完全性

に関する判定基準に合格した。

Page 174: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

248

7.曲げ/キンクの評価 (TS100085, TS070107)

添付資料ホ-1-76、ホ-1-77

試験の目的

本試験の目的は、本品ステントおよびデリバリーシステムの曲げ/キンク性能を評価することであ

る。

評価

検体

表 4.2.2-16. 検体

品目 サイズ(mm) ステントの個数

7 Frの Zilverステント* およびデ

リバリーシステム

6 x 20 10

6 x 80 10

10 x 20 10

10 x 80 10

6 Frの Zilverステント* およびデ

リバリーシステム

5 x 20 5

5 x 140 10

6 x 20 5

6 x 140 5

7 x 20 5

7 x 140 5

8 x 20 5

8 x 140 5

9 x 20 5

9 x 140 5

10 x 20 5

10 x 140 10

検体選択の妥当性

* 検体として「Zilverステント」を用いた。このステントは金属ベアメタルステントであるが、パ

クリタキセルコーティングが無い点を除き、本品ステントと同一である。パクリタキセルコーテ

ィングはパクリタキセルのみで構成され、非常に薄い(***************μm****、

*********@ μm**)。したがって、コーティングがなくても、このステントの曲げ/

キンク特性は変化しないものと考えられる。

試験方法

曲げ/キンク評価を、6 Frおよび 7 Frの「Zilverステント」、Zilverステントデリバリーシステム

(ステント装填時および未装填時)、ならびに Zilverステントデリバリーシステムチップに対し

て行った。評価は、キンクが生じるまで較正済み半径型テンプレート上で検体を曲げて実施した。

キンクは、検体が半径型テンプレートの円形パターンから離れてしまうような顕著な狭窄として

定義される。検体にキンクが生じなかった最小半径、またはキンクが生じた半径を記録した。

判定基準

デリバリーシステムは 19 mmの最小キンク半径を示すこと。ステントは、8.5 mmの最小キンク半

径を示すこと。

判定基準の妥当性

ステントおよびデリバリーシステムが通過しなくてはならない最悪条件の屈曲は、大動脈・腸骨

動脈分岐部で、これは通常 19 mmである。ステントにおいては、予想される分岐部半径の半分よ

り小さい、過酷な合格判定値が選択された。

Page 175: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

249

結果および考察

表 4.2.2-17に、6 Frおよび 7 Frの Zilverステントおよびデリバリーシステムで実施された曲げ/キ

ンク評価の結果を示す。デリバリーシステムの最小キンク半径は≤ 19 mmであり、ステントの最

小キンク半径は≤ 8.5 mmであった。

表 4.2.2-17. 曲げ/キンク評価結果

品目 検体数 最小キンク半径

(mm) 判定

7 Frの Zilverステント 40 ***:±:*** 合格

7 Frの Zilverデリバリーシステム(ステ

ント未装填時) 40 ***:±:*** 合格

7 Frの Zilverデリバリーシステムチップ 40 ***:±:*** 合格

7 Frの Zilverデリバリーシステム(ステ

ント装填時) 40 ***:±:*** 合格

6 Frの Zilverステント 60 ***:±:*** 合格

6 Frの Zilverデリバリーシステム(ステ

ント未装填時) 60 *** ±:*** 合格

6 Frの Zilverデリバリーシステムチップ 60 ****:±:*** 合格

6 Frの Zilverデリバリーシステム(ステ

ント装填時) 10 ***:±:*** 合格

結論

曲げ/キンクの評価によって、本申請品は大動脈・腸骨動脈分岐部によって代表される最悪条件の

屈曲部を、キンクなしに通過することが示された。デリバリーシステムのキンク半径は 19 mmの

判定基準を満たした。ステントのキンク半径は、予想される分岐部の半径の半分より小さい判定

基準である 8.5 mmを満たした。

Page 176: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

250

動物試験の要約

本申請品(本品ステントおよびデリバリーシステム)の安全性を裏付ける動物試験を以下に記す。

0 µg/mm2、3 µg/mm

2(臨床用量密度)または 9 µg/mm2(臨床用量密度の 3倍)のそれぞれ異なる

用量密度のパクリタキセルでコーティングしたステントを、重複なしで被験動物に留置し、1、3、

6ヶ月目の主要フォローアップ時に、ステント留置血管、ステント留置部位から下流、および全身

への作用を検査した結果がこれに含まれる。また、2、4、12 µg/mm2(臨床用量密度の最大 4倍)

の用量でコーティングしたステントにおける留置血管、留置部位から下流方向、および全身への

作用についても、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月時に評価した。本品ステントの安全性は、臨床用量(3

µg/mm2)でコーティングした重複ステントに対する留置血管の反応を検討した 1ヶ月、3ヶ月、6

ヶ月の動物試験によって、さらに裏付けた。公称臨床用量密度の 3倍および 4倍までのパクリタ

キセル用量を用いた試験により、特にステント留置血管への作用に関して、薬剤の安全域を確立

するのに役立てた。ステント留置部位から下流、および全身への作用の安全域をさらに確立する

ため、1ヶ月の試験を実施した。ここでは、IDE臨床試験で許容される最大数のステントを重複さ

せて留置した場合に、患者(および肢)が受ける総パクリタキセル用量の、約 3倍の用量が及ぼ

す留置部位から下流方向および全身への作用について評価した(具体的には、個体 1匹当たり

10,500 µg、肢 1本当たり 5,250 µgのパクリタキセルについて評価される)。また長期(2ヶ月)

および急性(24時間)試験において、臨床用量での本品ステントの In vivo薬物動態を評価した。

さらに、長型 Zilverステント(140 mm)およびデリバリーシステムの急性期性能を評価する確認

試験も実施した。この試験は、トラッキングおよび留置後に起こり得るステント破損または血管

損傷、あるいはその両方の詳細な評価を含む。「15. 家畜ブタにおける長型ステントおよびデリバ

リーシステムの急性期性能」試験以外は、全て 7 Frのステントおよびデリバリーシステムを検体

として使用した。

留置した非重複ステントの 1ヶ月および 3ヶ月時のフォローアップでは、ステントの破断は認め

られなかった。一方、6ヶ月時フォローアップでは、高解像度 X線検査により、タイプ Iのステン

ト破断が 2個、タイプ IIのステント破断が 4個判明したが、タイプ IIIまたは IVの破断はなかっ

た。確認されたこれらのステント破断は、6ヶ月間で家畜ブタおよびその血管が過度に成長したこ

とと関連していることが明らかであり、ブタの 6ヶ月試験で生じたアーチファクト(人工産物)

の一つとみなされ、臨床的安全性への懸念を提起するものではないと考えられた。また、ミニブ

タに留置した重複ステントの 6ヶ月時フォローアップでは、ステント破断は認められなかった

(重複ステント 36個中 0個)。このため、6ヶ月家畜ブタモデルでいくつか生じたステント破断

は、このモデルにおける動物成長によるアーチファクトであり、臨床的安全性への懸念を提起す

るものではないことが裏付けられた。

以上要約すると、動物 180匹を用いて臨床用量密度の最大 4倍までの用量および総用量で 413個

のステントを検証したこれらの試験からは、安全性に関する問題は見られず、血管壁は好ましく

ない続発症を伴うことなく完全に修復され、本品ステントと関連した留置部位から下流方向への

作用、および全身への作用は見られなかった。なお、薬物動態試験では、パクリタキセルはステ

ントから血管壁へ迅速に送達される(24時間で約 95%)こと、約 2ヶ月間血管壁内で持続するこ

と、全身に送達されるのはごく微量であること、さらには、ステント留置の 10時間後には血漿中

からパクリタキセルが消失することなどが明らかになった。最長の Zilverステント(140 mm)お

よびデリバリーシステムの確認試験では、困難や不具合を伴うことなく、またステント破損や血

管損傷を起こさずに、トラッキングならびに、ステントの留置が成功し、困難や不具合に遭遇す

ることなく、デリバリーシステムを抜去できることが証明された。結論として、添付した動物試

験は、本申請品の安全性を保証するものと考えられた。

Page 177: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

251

9.家畜ブタにおける、非コーティング、パクリタキセル 3 µg/mm2(臨床用量)およびパクリタ

キセル 9 µg/mm2(臨床用量の 3倍)の 1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月主要動物試験

(RPZ1, RPZ3, RPZ6 – Part A; TS030040)

添付資料ホ-2-1、ホ-2-2、ホ-2-3

試験の目的

本試験の目的は、健康な家畜ブタの腹部大動脈を用い、0 µg/mm2、3 µg/mm

2、9 µg/mm2(各々対

照、臨床用量密度、臨床用量密度の3倍をあらわす)のパクリタキセルでコーティングした、本品

ステント(7 Frのステントおよびデリバリーシステム)の安全性を評価することである。定量的血

管造影、定量的組織形態計測、準定量的および定性的な組織病理学検査、剖検、血清化学検査/血

液学検査によって安全性を評価した。デリバリーシステムの性能も評価された(挿入、位置決め、

抜去、アクセサリーデバイスとの相互作用、X線不透過性)。

評価

検体

表4.2.2-18. 1ヶ月の主要試験の検体

コーティング ステントのサイズ(mm) 検体数 被験動物数

0 µg/mm2 (対照) 10 x 80 7 7

3 µg/mm2パクリタキセル

(臨床用量密度) 10 x 80 7 7

9 µg/mm2パクリタキセル

(臨床用量密度の3倍)

10 x 60 7 7

10 x 20 7

評価した合計数 28 21

注:10 x 60 mmおよび10 x 20 mmのステントは、合計80 mmの長さになるよう同じ動脈内に直列に

留置された。

表4.2.2-19. 3ヶ月の主要試験の検体

コーティング ステントのサイズ(mm) 検体数 被験動物数

0 µg/mm2 (対照) 10 x 80 7 7

3 µg/mm2パクリタキセル

(臨床用量密度) 10 x 80 7* 7*

9 µg/mm2パクリタキセル

(臨床用量密度の3倍)

10 x 60 7 7

10 x 20 7

評価した合計数 27 20

注:10 x 60 mmおよび 10 x 20 mmのステントは、合計 80 mmの長さになるよう同じ動脈内に直列

に留置された。

* 3 µg/mm2群の 1匹の被験動物(ID#221)において、ステントやステントにコーティングした薬

剤とは関係のない、ブドウ球菌性敗血症に関連した事象のため早期に安楽死させた。

表4.2.2-20. 6ヶ月の主要試験の検体

コーティング ステントのサイズ(mm) 検体数 被験動物数

0 µg/mm2 (対照) 10 x 80 7 7

3 µg/mm2パクリタキセル

(臨床用量密度) 10 x 80 8** 8**

9 µg/mm2パクリタキセル

(臨床用量密度の 3倍)

10 x 60 7 7

10 x 20 7

評価した合計数 28 21

注:10 x 60 mmおよび 10 x 20 mmのステントは、合計 80 mmの長さになるよう同じ動脈内に直列

に留置された。

** 3 µg/mm2群の 1匹の被験動物(ID#3P357)において、ステントやステントにコーティングした

薬剤とは関連のない、頸動脈の不適切な結紮に関連する出血のために、ステント留置後に安楽死

させた。

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252

検体選択の妥当性

設計および製造は標準化(同一のステント設計、原材料、および薬剤コーティング手順)されて

いるため、本試験は単一のサイズで行ったが、結果はすべてのサイズを代表する。10 x 80 mmの

ステントサイズは7 Frにおいて最大サイズであり、7 Frのステントのパクリタキセル総用量は同サ

イズの6 Frのステントよりわずかに多いため、これを選択した。脈管ステントに対する過去の試験

実績に基づき、試験検体数は妥当であると判断した。

試験方法

ブタの腹部大動脈にステントを留置し、ステント留置後1ヶ月、3ヶ月または6ヶ月の時点において、

フォローアップ評価を行った。ステントを留置した動脈の近位側、中央、遠位側の直径を測定す

るために、留置前、留置後、およびフォローアップ時の血管造影において、定量的血管造影分析

が行われた。フォローアップでは、辺縁効果による狭窄、動脈瘤、および仮性動脈瘤を検出でき

るように、直交する平面で血管造影を行った。

それぞれのフォローアップの終了時に、ステントを留置した血管を被験動物から採取し、生理的

浸透圧で灌流固定し、プラスチック内に包埋した後、ヘマトキシリンとエオシン(H&E)で染色

した。血管の横断面の低倍率および高倍率の顕微鏡写真の全セットを本試験報告書に添付した。

各大動脈のステントを留置した域内で、ほぼ等距離を離した8枚の組織学的な横断面、ならびに、

ステントが留置されてない近位側および遠位側の基準血管の部分に対し、定量的な組織形態計測

分析を実施した。ステントの中央部分において外弾性板で囲まれている面積と、近位側基準部分

において外弾性板で囲まれている面積の比を計算して、ステントを留置した血管でのリモデリン

グを評価した。

独立した認定獣医病理学者によって、血管の横断面の定性的な組織病理学的評価が実施された。

確立された方法を使って、損傷(Schwartz, Huber et al., JACC, 1992)および炎症(Kornowski, Hong

et al., JACC,1998)の両方に関して、ステント内の組織学的な横断面が評価された。

内弾性板にストラットが圧着され、新生内膜がストラットを被覆しているか否かを病理学者が準

定量的に評価した。各用量群に対し、内弾性板に圧着しているストラットの比率、新生内膜によ

って被覆されたストラットの比率が示された。詳細な説明が加えられた代表的な顕微鏡写真、お

よび最悪条件の顕微鏡写真を含む組織病理学の概略報告書が病理学者によって作成され、本試験

報告書に添付されている。

独立した認定獣医病理学者によって、肉眼による各被験動物の詳細な剖検も実施された。パクリ

タキセルをコーティングしたステント留置部位から下流方向への作用の可能性を探るため、各後

肢の5つの主要筋群(大腿直筋、半腱様筋、半膜様筋、第三腓骨筋/頭側脛骨筋、指屈筋/指伸筋)

を評価した。同時にパクリタキセルの全身作用の可能性を探るため、各被験動物の肝臓、腎臓、

骨髄に組織病理学的検査も実施した。

さらに、ステントを留置する前と、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月のフォローアップ期間後に、血液を採取

し分析した。

特記のない限り、パラメトリックなデータはすべて、分散分析(ANOVA)または2標本のt検定を

用いて分析した。ノンパラメトリックなデータについては、必要に応じてKruskal-Wallis検定また

はMann-WhitneyのU検定を使って分析した。バイナリーデータについては、Pearsonのカイ二乗分

析を使用した。P値<0.05を統計的に有意とした。特記しない限り、値は平均値±標準偏差として表

示する。

判定基準

安全性の問題がないこと。

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253

血管壁の修復が進行中であること。

動物試験の期間は、主要な投与量群、すなわち0(対照群)、3(臨床的用量密度群)、9(臨床的

用量密度の3倍)[単位は µg/mm2 ]の各パクリタキセル密度群について、血管において完全な修復

が見られるまで延長される。

判定基準の妥当性

判定基準は、デバイスの臨床使用の安全性保証のために重要と考えられる特性に基づいて設定し

た。パクリタキセルなどの抗増殖性化合物は局所的に血管壁の修復を遅らせる場合がある。した

がって、有害事象を伴うことなく修復が完了することが重要である。

結果および考察

<留置結果>

被験動物64匹すべてにおけるステント留置が成功した。植込まれたステントは計85個であった。1

ヶ月のフォローアップ群の、すべての被験動物(21匹中21匹)は健康であった。3ヶ月のフォロー

アップ群では、21匹中20匹の被験動物は健康であった。3 µg/mm2群の1匹の被験動物(ID#221)は、

ステントやステントにコーティングした薬剤とは関係のない、ブドウ球菌性敗血症に関連した健

康問題で早期に安楽死させられ、3ヶ月のフォローアップ群では21匹中20匹を評価した。6ヶ月の

フォローアップ群では、22匹中21匹の被験動物は健康であった。1匹の被験動物(ID#3P357)は、

ステントやステントにコーティングした薬剤とは関連のない、頸動脈の不適切な結紮に関連する

出血のために、ステント留置後に安楽死させた。この結果、パクリタキセルの主要コーティング

用量に関して、62匹の動物の合計83個のステントが評価された。

3 µg/mm2および9 µg/mm

2のパクリタキセルでコーティングされたステントは、留置または取り扱

いに問題はなく、準備、挿入、推進性、追従性、柔軟性、およびX線不透過性において、非コーテ

ィングステントと比較して差がなかった。すべての場合において、ステントはガイドワイヤーを

使用して留置部位まで容易に操作でき、容易に留置できた。留置後の血管造影および血管内超音

波検査(IVUS)により、留置直後に安楽死させた1個体の1個のステントを除く84個が調べられ、

83個が血管壁に十分に圧着していたことが示された(安楽死させたもう1個体については、血管造

影および血管内超音波検査は行わなかった)。1匹の被験動物(ID#219、3ヶ月フォローアップ群)

においては、10 x 80 mmの非コーティングステントが問題なく留置されたものの、その近位側部

分が十分に血管壁に圧着していない可能性があった。これについては、近位側の標的血管の直径

が10 mmであるためであり、アンダーサイジングとなっていた可能性がある。

<血管造影の結果>

血管造影の結果を、表4.2.2-21、表4.2.2-22、表4.2.2-23に示す。定量的血管造影は、1ヶ月、3ヶ月、

6ヶ月の試験期間を通して、ステントを留置した血管がすべて広く開存していることを示した。フ

ォローアップ時における、直交する平面での血管造影においては、いずれの群にも動脈瘤、辺縁

効果による狭窄、およびステントの不完全密着の形跡はなかった。

表4.2.2-21. 動物試験の1ヶ月時定量的血管造影データ(RPZ1)

コーティング 0 μg/mm2 3 µg/mm

2 9 µg/mm

2

留置前の血管径 (mm) 8.49 ± 0.85 8.32 ± 0.42 8.87 ± 0.95

留置後の血管径 (mm) 8.67 ± 0.76 8.75 ± 0.48 9.13 ± 0.50

急性の内径増大率(%)* 2.29 ± 2.99 5.24 ± 4.80 3.57 ± 7.05

フォローアップ時の血管径

(mm) 7.90 ± 0.47 8.17 ± 0.29 8.52 ± 0.40 †

後期の内径減少率 (%) 8.25 ± 9.74 6.34 ± 5.44 6.31 ± 7.83

直径の狭窄率 (%) 6.06 ± 11.3 1.55 ± 5.34 8.03 ± 13.0

注:P<0.05を有意とした。

† 対照と有意差がある。

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254

*急性の内径増大率(acute gain)とは、以下の計算式によって出された値である。

((留置後の血管径-留置前の血管径)×100)/(留置前の血管径)

表4.2.2-22. 動物試験の3ヶ月時定量的血管造影データ(RPZ3)

コーティング 0 µg/mm2 3 µg/mm

2 9 µg/mm

2

留置前の血管径 (mm) 8.94 ± 0.55 8.38 ± 0.39 8.28 ± 0.69

留置後の血管径 (mm) 8.95 ± 0.49 8.74 ± 0.32 8.49 ± 0.41†

急性の内径増大率(%) 0.23 ± 4.54 4.32 ± 2.83 3.03 ± 7.80

フォローアップ時の血管径

(mm)

9.71 ± 0.75 9.25 ± 0.55 8.73 ± 0.50†

後期の内径減少率 (%) -8.75 ± 8.95 -5.99 ± 6.66 -3.02 ± 5.26

直径の狭窄率 (%) -9.02 ± 10.32 -10.57 ± 7.67 -5.91 ± 6.42

注:P<0.05を有意とした。

† 対照と有意差がある。

*急性の内径増大率(acute gain)とは、以下の計算式によって出された値である。

((留置後の血管径-留置前の血管径)×100)/(留置前の血管径)

表4.2.2-23. 動物試験の6ヶ月時定量的血管造影データ(RPZ6)

コーティング 0 μg/mm2 3 μg/mm

2 9 μg/mm

2

留置前の血管径 (mm) 8.63 ± 0.40 8.60 ± 0.41 8.63 ± 0.52

留置後の血管径 (mm) 8.92 ± 0.42 8.94 ± 0.49 8.65 ± 0.22

急性の内径増大率 (%) 3.4 ± 3.1 4.0 ± 5.2 0.66 ± 7.2

フォローアップ時の血管径

(mm) 9.94 ± 0.46 9.98 ± 0.32 9.96 ± 0.79

後期の内径減少率 (%) -12.4 ± 6.9 -11.4 ± 7.1 -15.0 ± 7.7

直径の狭窄率 (%) -16.1 ± 5.0 -15.5 ± 4.8 -15.8± 12.2

注:P<0.05を有意とした。

*急性の内径増大率(acute gain)とは、以下の計算式によって出された値である。

((留置後の血管径-留置前の血管径)×100)/(留置前の血管径)

6ヶ月時点での、ステントを留置した血管の高解像度 X線検査が行われたが、28個のステント中

5個で破断が見られた(2個のステントはタイプ Iの破断を示し、3個のステントはタイプ IIの破

断を示した)1 。破断はパクリタキセルのコーティング、または用量レベルに依存しないことがわ

かった。血管造影、形態計測、組織病理学の分析では、これらの破断のいずれかに関連する、憂

慮すべき続発症または有害反応は見られなかった。6ヶ月のフォローアップにおけるこれらの破断

は、被験動物そのものに関連しており、留置時とフォローアップ時の間(6ヶ月)に起こった家畜

ブタの血管の成長に関連していることが、形跡から示唆された。具体的には、被験動物の平均体

重が、ステントの留置時の約 31 kgから 6ヶ月のフォローアップ時の 79 kgに増加し、近位基準血

管径は、ステントの留置時の平均 8.8 mmから 6ヶ月のフォローアップ時の 12.0 mmに増加してい

た。さらに、ストラットに破断を示したステントでは、ストラットに破断のないステントに比べ

て、近位基準血管径に著しい成長が見られた(t検定、p=0.007)。また、ストラットの破断のす

1ステントストラットの破断タイプ を以下に示す。

タイプ 0 - ストラット破断なし。

タイプⅠ - 単一のストラットの破断のみ。

タイプⅡ - 単一ストラットが複数破断(異なる部位で起こりうる)。

タイプⅢ - ステント部分の位置ずれは伴わないが、ステントが完全な横断を起こした、複数

のストラットの破断。

タイプⅣ - ステント部分の位置ずれを伴う、複数のストラットの破断(完全な横断を伴わな

いがステントの位置ずれを起こし得るらせん状の破断を含む)。

Page 181: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

255

べてがステントの近位側の 3分の 1内で起こっていることと、6ヶ月での近位基準血管の成長が遠

位基準血管に比べて大きかったこと(直径の平均増加は、近位基準血管 3.2 mmに対して遠位基準

血管 0.9 mmであった)を考慮すると、血管の成長の影響が示唆された。このような過度な成長状

態であったため、観察された破断は動物モデルのアーチファクトであって、安全性への懸念を提

起するものではないと結論付けられた。

<定量的組織形態計測の結果>

表4.2.2-24、表4.2.2-25、および表4.2.2-26に、組織形態計測データを示す。

表4.2.2-24. 動物試験の1ヶ月時組織形態計測データ(RPZ1)

コーティング 0 μg/mm2 3 μg/mm

2 9 μg/mm

2

内腔の直径 (mm) 6.85 ± 0.49 7.15 ± 0.33 7.70 ± 0.36†‡

内腔の面積 (mm2) 37.0 ± 5.37 40.2 ± 3.71 46.7 ± 4.32†

中膜の厚さ (mm) 0.30 ± 0.07 0.32 ± 0.09 0.31 ± 0.05

新生内膜の厚さ (mm) 0.16 ± 0.05 0.15 ± 0.05 0.12 ± 0.03†

面積狭窄率 (%) 8.95 ± 2.82 7.79 ± 2.37 5.78 ± 1.58†‡

外径 (mm) 7.79 ± 0.56 8.09 ± 0.43 8.56 ± 0.35†‡

血管壁の面積 (mm2) 10.8 ± 2.88 11.4 ± 3.11 10.9 ± 1.71

血管壁の厚さ (mm) 0.47 ± 0.11 0.47 ± 0.11 0.43 ± 0.07

新生内膜の面積 (mm2) 3.62 ± 1.21 3.40 ± 1.13 2.83 ± 0.68

半径方向の隙間 (μm)* 11 ± 3 14 ± 9 22 ± 31†‡

注:P<0.05を有意とした。

† 対照と有意差がある。

‡ 3 µg/mm2群と有意差がある。

* 隙間がゼロではない場合のみが対象。

表4.2.2-25. 動物試験の3ヶ月時組織形態計測データ(RPZ3)

コーティング 0 µg/mm2 3 µg/mm

2 9 μg/mm

2

内腔の直径 (mm) 7.54 ± 0.51 7.59 ± 0.61 7.84 ± 0.47

内腔の面積 (mm2) 44.89 ± 6.12 45.59 ± 7.37 48.5 ± 5.69

中膜の厚さ(mm) 0.36 ± 0.06 0.34 ± 0.07 0.30 ± 0.07†

新生内膜の厚さ (mm) 0.13 ± 0.03 0.19 ± 0.08 0.19 ± 0.08†

面積狭窄率 (%) 6.58 ± 1.71 9.11 ± 3.77 9.21 ± 3.86

外径 (mm) 8.53 ± 0.54 8.64 ± 0.60 8.82 ± 0.46

血管壁の面積 (mm2) 12.46 ± 1.83 13.26 ± 3.24 12.83 ± 2.54

血管壁の厚さ (mm) 0.49 ± 0.06 0.52 ± 0.12 0.49 ± 0.09

新生内膜の面積 (mm2) 3.10 ± 0.69 4.49 ± 1.89† 4.84 ± 1.87†

半径方向の隙間 (μm)* 28 ± 11 24 ± 13 18 ± 6

注:P<0.05を有意とした。

† 対照と有意差がある。

* 隙間がゼロではない場合のみが対象。

Page 182: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

256

表4.2.2-26. 動物試験の6ヶ月時組織形態計測データ(RPZ6)

コーティング 0 μg/mm2 3 μg/mm

2 9 μg/mm

2

内腔の直径 (mm) 7.73 ± 0.28 7.69 ± 0.36 7.56 ± 0.22

内腔の面積 (mm2) 47.1 ± 3.2 46.6 ± 4.3 45.0 ± 2.5

中膜の厚さ (mm) 0.30 ± 0.04 0.28 ± 0.03 0.29 ± 0.03

新生内膜の厚さ (mm) 0.13 ± 0.01 0.12 ± 0.01 0.14 ± 0.03

面積狭窄率 (%) 6.49 ± 0.48 5.84 ± 0.53

† 7.16 ± 1.56

外径 (mm) 8.59 ± 0.32 8.49 ± 0.34 8.42 ± 0.24

血管壁の面積 (mm2) 11.1 ± 1.5 10.1 ± 0.95 10.8 ± 1.4

血管壁の厚さ (mm) 0.43 ± 0.05 0.40 ± 0.04 0.43 ± 0.05

新生内膜の面積 (mm2) 3.27 ± 0.32 2.88 ± 0.35 3.45 ± 0.73

半径方向の隙間 (μm)* 35 ± 17 37 ± 20 35 ± 15

注:P<0.05を有意とした。

† 対照群および 9 µg/mm2群と有意に差がある。

* 隙間がゼロではない場合のみが対象。

すべてのフォローアップ時に、すべての用量群(対照群および両方の試験群を含む)において、

ステントと血管壁の間に小さな半径方向の隙間(内弾性板に十分に圧着していない現象と同じ)

が観察されたが、これはステントが留置された80 mmの長さに沿った血管の先細りと、動物の成

長が原因であり、パクリタキセルのコーティングによるものではないと考えられた。組織形態計

測のいずれの項目に関しても、ステントを留置した血管の近位側部分と遠位側部分の間に、一貫

した差異あるいは用量に依存する違いはなかった。これは留置された血管領域全体に対してコー

ティングによる影響がないことを示している。さらに、近位側または遠位側の基準部分において

測定可能な新生内膜はなく、血管造影が示したとおり、辺縁効果による狭窄はないことが裏付け

られた。

<準定量的および定性的な組織病理学的評価結果>

組織病理学的結果を表4.2.2-27、表4.2.2-28、表4.2.2-29に示す。

表4.2.2-27. 動物試験の1ヶ月時組織病理学的データ

コーティング 0 µg/mm2 3 µg/mm

2 9 μg/mm

2

損傷スコア(0~3のスコア) 0.000 ± 0.000 0.001 ± 0.005 0.000 ± 0.000

炎症スコア(0~3のスコア) 0.046 ± 0.107 0.539 ± 0.373† 0.478 ± 0.314†

完全に内膜で被覆されてい

るステントストラットの比

1355ストラット中

の99%

1421ストラット

中の90%

1384ストラット

中の78%

低細胞性の形跡をもつ断面

の比率 53横断面中の0%

55横断面中の32.7%†

55横断面中の38.2%†

管腔にフィブリンが接着し

ている断面の比率 53横断面中の1.9%

55横断面中の3.6%

55横断面中の12.7%†

内弾性板に圧着しているス

トラットの比率

1355ストラット中

の99%

1421ストラット

中の95%

1384ストラット

中の89%

注:P<0.05を有意とした。

† 対照と有意差がある。

Page 183: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

257

表4.2.2-28. 動物試験の3ヶ月時組織病理学的データ

コーティング 0 µg/mm2 3 µg/mm

2 9 µg/mm

2

損傷スコア(0~3のスコア) 0.001 ± 0.007 0.001 ± 0.006 0.002 ± 0.14

炎症スコア(0~3のスコア) 0.033 ± 0.066 0.108 ± 0.126 0.142 ± 0.107†

完全に内膜で被覆されている

ステントストラットの比率

1312ストラット

中の 99%

1186ストラット

中の 90%

1388ストラット

中の 95%

低細胞性の形跡をもつ断面の

比率

56横断面中の0%

46横断面中の0%

54横断面中の0%

管腔にフィブリンが接着して

いる断面の比率

56横断面中の0%

46横断面中の0%

54横断面中の0%

内弾性板に圧着しているスト

ラットの比率

1312ストラット

中の 87%

1186ストラット

中の 80%

1388ストラット

中の 90%

注:P<0.05を有意とした。

† 対照と有意差がある。

表4.2.2-29. 動物試験の6ヶ月時組織病理学的データ

コーティング 0 μg/mm2 3 μg/mm

2 9 μg/mm

2

損傷スコア(0~3のスケール) 0.002 ± 0.004 0.000 ± 0.000 0.019 ± 0.043

炎症スコア(0~3のスケール) 0.129 ± 0.082 0.069 ± 0.052 0.198 ± 0.165

完全に内膜で被覆されているス

トラットの比率

1278ストラット

中で 95%を超える

1361ストラット

中で 95%を超える

1344ストラット

中で 95%を超える

低細胞性の形跡をもつ断面の比

率 52断面中の 0% 53断面中の 0% 53断面中の 1.89%

管腔にフィブリンが接着してい

る断面の比率 52断面中の 1.92% 51断面中の 0% 53断面中の 0%

内弾性板に圧着しているストラ

ットの比率

1278ストラット

中の 58%

1361ストラット

中の 70%

1344ストラット

中の 66%

注:P<0.05を有意とした。

非コーティング群の血管壁は1ヶ月目で十分に修復されているように見えた。3 µg/mm2群および

9 µg/mm2群では、1ヶ月時点では修復過程は完了していなかったが進行中であった。3ヶ月目およ

び6ヶ月目の結果は、0 μg/mm2群、3 μg/mm

2群、9 μg/mm2群間で血管壁の修復状態は類似しており、

完了しているように見えた。ただし、各用量群において近位側のストラットを含む横断面の中に

は、内弾性板に十分に圧着していないものもあった。この現象はステントと血管壁の間に小さな

半径方向の隙間と同じであり、動物の成長が原因で、パクリタキセルのコーティングによるもの

ではないと考えられた。

ステントを留置した血管のいずれにもほとんど損傷がなく、0~3のスケールで損傷スコア平均は

0.02未満で、炎症スコア平均は0.6未満であった。3 µg/mm2群および9 µg/mm

2群で1ヶ月目にわずか

に上昇した炎症スコアは、3ヶ月目および6ヶ月目に消失していた。同様に、3 µg/mm2群および

9 µg/mm2群で1ヶ月目にわずかに高かった低細胞性(壊死による細胞数の減少)も、3ヶ月目およ

び6ヶ月目に消失していた。病理学者の評価によれば、ストラットの圧着の評価は、組織形態計測

で観測した半径方向における隙間の評価に類似しており、群間で有意な差はなく、パクリタキセ

ルのコーティングの影響がないことを示している。

剖検および臨床的病理学の結果

剖検、血液学検査、血清化学検査からは、非コーティング群、3 µg/mm2 群、および9 µg/mm

2群に

おける全身作用は見られなかった。具体的には、肉眼的検査において、各被験動物の外皮系、筋

骨格系、呼吸器系、心血管系、消化器系、泌尿生殖器系、リンパ系、内分泌系、神経系にステン

Page 184: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

258

トに関連する変化は見られず、 同様に、肝臓、腎臓、骨髄の組織病理学的検査もステントに関連

した変化はなかった。

剖検についても、非コーティング群、3 µg/mm2 群、および9 µg/mm

2群についてステント留置部位

から下流方向への作用は示されなかった。具体的には、ステントを留置した動脈が血液を供給し

ている、各後肢内の5つの筋群について、連続切片(約1 cmの厚さ)を作成して肉眼検査および組

織学的検査を施行したが、血栓、梗塞、その他のステントに伴う変化の形跡は見られなかった。

さらに、ベースライン時およびフォローアップ時の血液検体の評価(分画を伴う総血球数算定、

および血液化学的検査)では、非コーティング群、3 µg/mm2群、および9 µg/mm

2群における全身

作用は見られなかった。よって、本試験で試験したパクリタキセルコーティングのステントに伴

う骨髄抑制、肝機能や腎機能の変化の徴候はなかった。

結論

この1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月試験では、0 µg/mm2、3 µg/mm

2、および9 µg/mm2のパクリタキセルコー

ティングした本品ステントに伴う安全性の問題や健康問題の形跡、あるいは憂慮すべき続発症は

示されなかった。被験動物の健康問題、パクリタキセルの全身作用またはステント留置部位から

下流方向への作用、血栓、血管破裂、動脈瘤、仮性動脈瘤、薬剤による中膜薄肉化、辺縁効果に

よる狭窄、および留置したステント留置部位にわたるパクリタキセルの変動的な作用の兆候は認

められなかった。3 µg/mm2群において、被験動物1匹(ID #221)がブドウ球菌性敗血症に関連し

た健康問題で早期に安楽死させられたが、これはステントや薬剤とは関係がなかった。

血管造影および組織形態の項目においても、一貫した差異、またはパクリタキセル用量に依存し

た差異はなかった。組織病理学所見において臨床用量(3 µg/mm2)群と非コーティング群には差

がなかった。また、臨床用量の3倍(9 µg/mm2)群と非コーティング群にも差がなかった。例外と

して、1ヶ月時に3 µg/mm2群と9 µg/mm

2群においてわずかに炎症と低細胞性(壊死による細胞数の

減少)が見られ、さらに、9 µg/mm2群において管腔にフィブリンが接着している断面の比率が高

めであったが、6ヶ月時までには消失していた。非コーティング群において、ステントを留置した

血管壁の修復は1ヶ月目で完了しているようであった。3 µg/mm2群および9 µg/mm

2群における血管

壁の修復は1ヶ月の時点ではまだ完全ではなく、進行中であった。3ヶ月目および6ヶ月目では血管

壁の修復は、0 μg/mm2群、3 μg/mm

2群、9 μg/mm2群間で類似しており、完了しているように見ら

れた。ただし、各用量群において近位側のストラットを含む横断面の中には、内弾性板に十分に

圧着していないものもあった。これらの結果は指定された判定基準を満たした。

Page 185: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

259

10.家畜ブタを用いた、追加コーティング用量での 1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月動物試験

(RPZ1、RPZ3、RPZ6 – Part B; TS030040)

添付資料ホ-2-4

試験の目的

本試験の目的は、家畜ブタの動脈で 2 µg/mm2(臨床用量密度の 0.7倍)、4 µg/mm

2(臨床用量密

度の 1.3倍)、12 µg/mm2(臨床用量密度の 4倍)のパクリタキセルでコーティングした、本品ス

テント(7 Fr のステントおよびデリバリーシステム)の安全性を評価することである。安全性は、

ステントによる血管への作用を特性付ける血管造影パラメータ、組織形態計測パラメータ、組織

病理学パラメータの定性的評価および定量的評価によって評価された。デリバリーシステムの性

能(挿入、位置決め、抜去、アクセサリーデバイスとの作用、X線不透過性)も評価された。

評価

検体

表4.2.2-30. 1ヶ月の追加用量試験のステント検体

コーティング ステントの

サイズ(mm) 検体数 被験動物数

2 µg/mm2パクリタキセル 10 x 80 7 7

4 µg/mm2 パクリタキセル 10 x 80 7 7

12 µg/mm2 パクリタキセル

(臨床用量密度の 4倍)

10 x 60 7 7

10 x 20 7

評価した合計数 28 21

備考:10 x 60 mmおよび 10 x 20 mmのステントは、合計 80 mmの長さになるよう同じ動脈内に直

列に留置された。

表4.2.2-31. 3ヶ月の追加用量試験のステント検体

コーティング ステントの

サイズ(mm) 検体数 被験動物数

2 µg/mm2パクリタキセル 10 x 80 7 7

4 µg/mm2 パクリタキセル 10 x 80 7 7

12 µg/mm2 パクリタキセル

(臨床用量密度の 4倍)

10 x 60 7 7

10 x 20 7

評価した合計数 28 21

備考:10 x 60 mmおよび 10 x 20 mmのステントは、合計 80 mmの長さになるよう同じ動脈内に直

列に留置された。

Page 186: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

260

表4.2.2-32. 6ヶ月の追加用量試験のステント検体

コーティング ステントの

サイズ(mm) 検体数 被験動物数

2 µg/mm2パクリタキセル 10 x 80 7 7

4 µg/mm2 パクリタキセル 10 x 80 7 7

12 µg/mm2 パクリタキセル

(臨床用量密度の 4倍)

10 x 60 7 7

10 x 20 7

評価した合計数 28 21

備考:10 x 60 mmおよび 10 x 20 mmのステントは、合計 80 mmの長さになるよう同じ動脈内に直

列に留置された。

検体選択の妥当性

設計および製造は標準化(同一のステント設計、原材料、および薬剤コーティング手順)されて

いるため、試験は単一のサイズで行ったが、結果はすべてのサイズを代表する。10 x 80 mmの ス

テントサイズは7 Frにおいて最大サイズであり、7 Frのステントのパクリタキセル総用量は同サイ

ズの6 Frのステントよりわずかに多いため、これを選択した。脈管ステントに対する過去の試験実

績に基づき、試験検体数は妥当であると判断した。

試験方法

試験方法は、主要動物試験での 1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月試験で用いた方法と同様であった。

判定基準

追加用量(非主要試験)の濃度において、安全性の問題がないこと。

判定基準の妥当性

判定基準は、デバイスの臨床使用の安全性保証のために重要と考えられる特性に基づいて設定し

た。 非主要用量密度において関連した有害事象が見られなければ、臨床的な用量密度における安

全性に、余裕があることが示される。

結果および考察

<留置結果>

すべての本品ステント(84個中 84個)が問題なく留置された。1ヶ月、3ケ月、6ヶ月のフォロ

ーアップ全期間を通して、すべての被験動物(63匹中 63匹)は健康であった。留置または取り扱

いに問題はなく、2 µg/mm2、4 µg/mm

2、12 µg/mm2のパクリタキセルでコーティングされた本品ス

テントは、準備、挿入、推進性、追従性、柔軟性、および X線不透過性について差がなかった。

すべての場合において、ステントはガイドワイヤーを使用して留置部位まで容易に操作でき、容

易に留置できた。留置の直後の血管造影検査では、ステントのすべてが開存しており、血管壁に

十分に圧着していた。血管内超音波検査(IVUS)の評価によって、留置直後のステントの完全な

圧着が確認された。

<血管造影の結果>

血管造影結果を表 4.2.2-33に示す。血管造影は、1ヶ月、3ヶ月、および 6ヶ月のフォローアップ

全期間を通して、ステントを留置した血管がすべて広く開存していることを示した。フォローア

ップでの直交する平面での血管造影は、辺縁効果による狭窄、動脈瘤、または仮性動脈瘤の形跡

を示さなかった。

Page 187: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

261

表4.2.2-33. 追加用量での定量的血管造影データ

コーティング 2 µg/mm2

4 µg/mm2

12 µg/mm2

1ヶ月のフォローアップ

留置前の血管径 (mm) 8.75 ± 0.630 8.51 ± 0.580 8.94 ± 0.750

留置後の血管径 (mm) 8.87 ± 0.540 9.03 ± 0.530 8.99 ± 0.710

急性の内径増大率 (%) 1.58 ± 6.61 6.16 ± 4.10 0.740 ± 3.92

フォローアップ時の血管径 (mm) 8.17 ± 0.570 8.31 ± 0.370 8.62 ± 0.300

後期の内径減少率 (%) 7.48 ± 9.74 7.65 ± 5.01 3.70 ± 7.10

直径の狭窄率 (%) 6.10 ± 11.2 2.14 ± 4.26 3.06 ± 7.35

3ヶ月のフォローアップ

留置前の血管径 (mm) 8.30 ± 0.570*,# 8.43 ± 0.620 8.68 ± 0.510

留置後の血管径 (mm) 8.13 ± 0.420 8.71 ± 0.610 8.95 ± 0.390

急性の内径増大率 (%) -1.76 ± 5.70 3.46 ± 2.26 3.35 ± 4.36

フォローアップ時の血管径 (mm) 8.93 ± 0.610 9.19 ± 0.550 8.88 ± 0.600

後期の内径減少率 (%) -10.1 ± 6.55 -6.26 ± 12.3 0.810 ± 5.27

直径の狭窄率 (%) -8.11 ± 9.34 -10.0 ± 13.9 -2.30 ± 3.24

6ヶ月のフォローアップ

留置前の血管径 (mm) 8.40 ± 0.460 9.00 ± 0.590 8.63 ± 0.200

留置後の血管径 (mm) 8.57 ± 0.490 8.90 ± 0.600 8.59 ± 0.230

急性の内径増大率 (%) 2.10 ± 4.70 -1.08 ± 2.14 -0.35 ± 3.77

フォローアップ時の血管径 (mm) 9.70 ± 0.630 9.73 ± 0.370 9.53 ± 1.01

後期の内径減少率 (%) -13.2 ± 2.49 -9.74 ± 7.11 -10.8 ± 9.66

直径の狭窄率 (%) -15.6 ± 6.92 -8.47 ± 5.93 -10.4 ± 11.6

注:P<0.05を有意とした。

* 4 µg/mm2群と有意差がある。

# 12 µg/mm2群と有意差がある。

1ヶ月および 3ヶ月のフォローアップ時に行われた、ステントを留置した血管に対する高解像度 X

線検査の結果、ステントに破断は見られなかった。6ヶ月のフォローアップ時の高解像度 X線検

査では、28個のステント中 1個にタイプ IIの破断2 がみられた。血管造影、形態計測、組織病理

学の分析では、これらの破断のいずれかに関連する憂慮すべき続発症または有害反応は見られな

かった。これらの結果は、コーティングなし、3 µg/mm2(臨床用量)および 9 µg/mm

2(臨床用量

の 3倍)のパクリタキセルコーティング用量での主要動物試験(RPZ6 – Part A) における、6ヶ月目

において示された結果と一致している。この RPZ6-Part Aで記載されたように、6ヶ月の家畜ブタ

2 ステントストラットの破断タイプ を以下に示す。

タイプ 0 - ストラット破断なし。

タイプⅠ - 単一のストラットの破断のみ。

タイプⅡ - 単一ストラットが複数破断(異なる部位で起こりうる)。

タイプⅢ - ステント部分の位置ずれは伴わないが、ステントが完全な横断を起こした、複数

のストラットの破断。

タイプⅣ - ステント部分の位置ずれを伴う、複数のストラットの破断(完全な横断を伴わな

いがステントの位置ずれを起こし得るらせん状の破断を含む)。

Page 188: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

262

試験における破断は、家畜ブタモデルでの過度の成長によるアーチファクトであり、安全性の問

題はないと考えられた。

<定量組織形態計測の結果>

形態計測データを表 4.2.2-34に示す。各観察につき、ステント留置血管の断面は 56箇所ある(1

群当たりステント留置血管 7本×血管 1本当たり断面 8箇所)。

表4.2.2-34. 形態計測データ

コーティング 2 µg/mm2

4 µg/mm2 12 µg/mm

2

1ヶ月のフォローアップ

内腔の直径 (mm) 7.11 ± 0.309* 7.28 ± 0.567 7.80 ± 0.206

外径 (mm) 8.04 ± 0.274* 8.25 ± 0.444 8.64 ± 0.189

内腔の面積 (mm2) 39.8 ± 3.36* 41.9 ± 6.50 47.9 ± 2.40

血管壁の面積 (mm2) 11.1 ± 1.84 11.8 ± 1.76 10.9 ± 1.65

血管壁の厚さ (mm) 0.465 ± 0.079 0.487 ± 0.090 0.422 ± 0.066

新生内膜の面積 (mm2) 3.45 ± 0.773 3.70 ± 0.839 3.16 ± 0.657

新生内膜の厚さ (mm) 0.152 ± 0.035 0.160 ± 0.045 0.128 ± 0.029

中膜の厚さ (mm) 0.313 ± 0.049 0.326 ± 0.067 0.293 ± 0.048

面積狭窄率 (%) 8.05 ± 1.90 8.39 ± 2.70 6.30 ± 1.53

半径方向の隙間** (μm) 32.0 ± 18.0 37.0 ± 3 8.0 28.0 ± 11.0

3ヶ月のフォローアップ

内腔の直径 (mm) 7.44 ± 0.293 7.46 ± 0.442 7.63 ± 0.217

外径 (mm) 8.28 ± 0.274 8.40 ± 0.420 8.61 ± 0.177

内腔の面積 (mm2) 43.6 ± 3.43 43.8 ± 5.13 45.8 ± 2.50

血管壁の面積 (mm2) 10.3 ± 0.475 *

,# 11.7 ± 1.19 12.5 ± 0.870

血管壁の厚さ (mm) 0.417 ± 0.021*,# 0.471 ± 0.050 0.492 ± 0.040

新生内膜の面積 (mm2) 3.02 ± 0.394* 3.98 ± 0.738* 5.17 ± 0.911

新生内膜の厚さ (mm) 0.127 ± 0.018* 0.167 ± 0.040 0.211 ± 0.040

中膜の厚さ (mm) 0.290 ± 0.016 0.303 ± 0.020 0.281 ± 0.040

面積狭窄率 (%) 6.51 ± 1.04* 8.46 ± 2.06 10.2 ± 1.80

半径方向の隙間** (μm) 27.0 ± 9.20 36.0 ± 46.0 38.0 ± 14.0

6ヶ月のフォローアップ

内腔の直径 (mm) 7.11 ± 0.552 7.31 ± 0.356 7.37 ± 0.681

外径 (mm) 7.99 ± 0.546 8.13 ± 0.310 8.36 ± 0.509

内腔の面積 (mm2) 40.1 ± 5.94 42.2 ± 4.19 43.1 ± 7.96

血管壁の面積 (mm2) 10.4 ± 1.49 9.95 ± 1.24 12.1 ± 2.73

血管壁の厚さ (mm) 0.440 ± 0.050 0.410 ± 0.049 0.490 ± 0.135

新生内膜の面積 (mm2) 3.37 ± 0.369 3.14 ± 0.665 5.06 ± 3.21

新生内膜の厚さ (mm) 0.149 ± 0.020 0.134 ± 0.030 0.218 ± 0.149

中膜の厚さ (mm) 0.290 ± 0.049 0.274 ± 0.030 0.276 ± 0.030

面積狭窄率 (%) 7.97 ± 1.65 6.98 ± 1.75 10.9 ± 7.25

半径方向の隙間** (μm) 42.0 ± 19.0 31.0 ± 15.0 42.0 ± 27.0

注:P<0.05を有意とした。

* 12 µg/ mm2群と有意差がある。

# 4 µg/ mm2群と有意差がある。

**隙間がゼロでない場合のみが対象。

Page 189: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

263

すべてのフォローアップ時に、すべての用量群(対照群および両方の試験群を含む)において、

ステントと血管壁の間に小さな半径方向の隙間(内弾性板に十分に圧着していない現象と同じ)

が観察されたが、これはパクリタキセルのコーティング効果によるものではない。ステントを留

置した血管の近位側領域および遠位側の領域の間で軽微な形態学的差があった。1ヶ月のフォロー

アップで有意な差はなく、 3ヶ月および6ヶ月の時点では12 µg/mm2群においてのみ稀に差が見ら

れ、これはステントの長さに沿った薬剤効果の変化を示唆するものではないと思われた。すべて

の時点および用量群において、ステントを留置した血管の近位側領域は、半径方向に隙間が発生

する確率が遠位側領域に比べ高かった。これはステントが留置された80 mmの長さに沿った血管

の先細りと、留置時とフォローアップ時の間に起きた家畜ブタの成長によるものと考えられる。

さらに、すべてのフォローアップ時点において、近位側血管領域と遠位側血管領域の間で、半径

方向における隙間の平均値(隙間がゼロでない場合のみが対象)に差はなかった。さらに、近位側ま

たは遠位側の基準部分には極微の新生内膜(< 0.04 mmの厚さ)しかなく、血管造影が示したよう

に、辺縁効果による狭窄はないことが確認された。

<定性的な組織病理学的結果>

定性的な組織病理学的結果を表 4.2.2-35に示す。

表 4.2.2-35. 動物試験の定性的な組織病理学的データ

コーティング 2 µg/mm2 4 µg/mm

2 12 µg/mm

2

1ヶ月のフォローアップ

損傷スコア(0~3のスコア)† 0.000 ± 0.010 0.000 ± 0.000 0.000 ± 0.000

炎症スコア(0~3のスコア)† 0.130 ± 0.100* 0.280 ± 0.200* 0.830 ± 0.360

完全に内膜で被覆されているステ

ントストラットの比率 95% 90% 80%

低細胞性の形跡のある断面の比率†

55横断面中の0.00%*

,#

55横断面中の9.09*%

54横断面中の46.3%

管腔にフィブリンが接着している

断面の比率†

55横断面中の3.64*%

55横断面中の12.7*%

54横断面中の38.9%

内弾性板に圧着しているステント

ストラットの比率

1470ストラット中

の 97%

1485ストラット中

の 97%

1471ストラット

中の 90%

3ヶ月のフォローアップ

損傷スコア(0~3のスコア)† 0.000 ± 0.000 0.000 ± 0.000 0.030 ± 0.090

炎症スコア(0~3のスコア)† 0.090 ± 0.040 0.100 ± 0.070 0.410 ± 0.460

完全に内膜で被覆されているステ

ントストラットの比率 99% 98% 90%

低細胞性の形跡のある断面の比率†

51横断面中の0.00%

52横断面中の0.00%

51横断面中の0.00%

管腔にフィブリンが接着している

断面の比率†

51横断面中の0.00%*

52横断面中の0.00%*

51横断面中の13.7%

内弾性板に圧着しているステント

ストラットの比率

1304ストラット中

の 91%

1329ストラット中

の 88%

1359ストラット

中の 77%

6ヶ月のフォローアップ

損傷スコア(0~3のスコア)† 0.010 ± 0.010 0.000 ± 0.000 0.140 ± 0.310

炎症スコア(0~3のスコア)† 0.120 ± 0.070 0.100 ± 0.060 0.310 ± 0.450

完全に内膜で被覆されているステ

ントストラットの比率 96% 97% 94%

低細胞性の形跡のある断面の比率†

47横断面中の0.00%

50横断面中の0.00%

47横断面中の0.00%

Page 190: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

264

管腔にフィブリンが接着している

断面の比率†

47横断面中の0.00%

50横断面中の0.00%

47横断面中の2.13%

内弾性板に圧着しているステント

ストラットの比率

1053ストラット中

の 86%

1268ストラット中

の 83%

1267ストラット

中の 75%

† これらのパラメータについて統計分析を行った。P<0.05を統計的有意とした。 # 4 µg/mm

2群と有意差がある。 * 12 µg/mm2群と有意差がある。

定性的な組織病理学結果により、1ヶ月と 3ヶ月のフォローアップ時の血管壁の修復が、2 µg/mm2

および 4 µg/mm2の用量群において同等であることが示された。12 µg/mm

2の用量群では、高用量

のパクリタキセル(臨床用量の 4倍)であることから予測されるように、血管壁の修復は緩慢な

速度で進行しており、修復は合併症なしに継続されると予想された。6ヶ月のフォローアップまで

に、各用量群からの近位側の横断面でストラットの圧着が不完全なものがいくつか見られたのを

除き、すべての用量群で血管は十分に修復されていた。ストラットの圧着不全(小さな半径方向

の隙間と同じ現象)は動物の成長が原因であり、パクリタキセルのコーティングによるものでは

ないと考えられた。すべての用量群のすべてのフォローアップ時点で、平均損傷スコア(0~3スケ

ールで 0.2未満)、および平均炎症スコア(0~3スケールで 0.9未満)は低位であった。さらに、1

ヶ月、3ヶ月、または 6ヶ月でいずれの用量群においても、血管内腔の血栓は極微であった。4

µg/mm2および 12 µg/mm

2用量群において、1ヶ月で低細胞性(壊死による細胞数の減少)の形跡

が認められたが、これらは 3ヶ月及び 6ヶ月までには消失していた。2 µg/mm2および 4 µg/mm

2用

量群では、12 µg/mm2用量群のそれに比べ、より内膜が形成されていた。しかし、6ヶ月では、各

群で 94%以上のストラットが内膜で被覆されていた。予想通り、病理学者の評価によるストラッ

ト圧着データは、半径方向における隙間に関する組織形態計測データと同等であった。病理学者

はまた、各用量群で内弾性板に十分に圧着していないストラットは、主にステントを留置した血

管の近位側部分にあることを指摘している。

<剖検および臨床的病理学の結果>

ベースラインおよびフォローアップ時点での血液検体の評価からは、パクリタキセルコーティン

グによる全身作用の形跡は見られなかった。いずれの用量群でも、骨髄抑制、肝機能や腎機能の

変化の徴候は観察されなかった。さらに、詳細な剖検からは、試験されたステントのいずれかに

関連する全身作用(心臓、腎臓、肝臓、骨髄、またはその他の器官での肉眼上または組織学上の

変化など)は見られなかった。ステントを留置した動脈が血液を供給している後肢の筋肉の連続

切片(約 1 cmの厚さ)を作成し、詳細な肉眼検査および組織学的検査を施行したが、パクリタキ

セルコーティングによる下流方向への作用は見られなかった。

結論

これらの 1ヶ月、3ケ月、6ヶ月の試験では、2 µg/mm2、 4 µg/mm

2、または 12 µg/mm2(臨床用量

密度の最大 4倍)のパクリタキセルでコーティングした本品ステントに伴う安全性の問題、また

は好ましくない続発症は示されなかった。早期死亡、パクリタキセルの全身作用またはステント

留置部位から下流方向への作用、血栓、血管破裂・動脈瘤・仮性動脈瘤、薬剤に関連した中膜の

薄肉化、辺縁効果による狭窄はなかった。組織病理学検査は、2 µg/mm2、4 µg/mm

2、および 12

µg/mm2の本品ステント群で、6ヶ月までに血管壁が修復、あるいはほぼ修復していたことを示し

た。これらの結果は指定された判定基準を満たした。

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265

11.家畜ブタを用いた、重複ステントの 1ヶ月、3ケ月、6ヶ月動物試験

(PZO1 TS040055, PZO3 TS040061, PZO6 TS040062)

添付資料ホ-2-5、ホ-2-6、ホ-2-7

試験の目的

本試験の目的は、ブタの末梢動脈で 0 µg/mm2および 3 µg/mm

2のパクリタキセル(対照および臨

床用量密度)でコーティングした、重複させた本品ステント(7 Frのステントおよびデリバリー

システム)の安全性を評価することである。 安全性は、ステントによる血管への作用を特性付け

る血管造影パラメータ、組織形態計測パラメータ、組織病理学パラメータの定性的評価および定

量的評価によって評価された。デリバリーシステムの性能(挿入、位置決め、抜去、アクセサリ

ーデバイスとの作用、X線不透過性)も評価された。

評価

検体

表4.2.2-36. 重複ステントの1ヶ月試験の検体

コーティング ステントのサイズ(mm) 検体数 被験動物数

なし(対照) 7 x 30 20 5

3 µg/mm2のパクリタキセル

(臨床用量密度) 7 x 30 20 5

評価した合計数 40 10

表4.2.2-37. 重複ステントの3ヶ月試験の検体

コーティング ステントのサイズ(mm) 検体数 被験動物数

なし(対照) 7 x 30 20 5

3 µg/mm2のパクリタキセル

(臨床用量密度) 7 x 30 20 5

評価した合計数 40 10

表4.2.2-38. 重複ステントの6ヶ月†試験の検体

コーティング ステントのサイズ(mm) 検体数 被験動物数

なし(対照) 6 x 30 16* 4

3 µg/mm2のパクリタキセル

(臨床用量密度) 6 x 30 20 5

評価した合計数 36 9

† 6ヶ月試験ではミニブタを使用した。

* 対照群に割り当てられた 1匹の被験動物の血管は、直径 6 mmのステントを留置するには小さか

った。したがって、対照群の検体数は、5匹の個体への 20本のステントから 4匹の個体への 16

本のステントに減少した。

検体選択の妥当性

設計および製造が標準化(同一のステント設計、原材料、および薬剤コーティング手順)されて

いるため、試験は単一のサイズで実施したが、結果はすべてのサイズを代表する。2個のステント

を約4~8 mm重複させるとした場合に、家畜ブタの腸骨大腿動脈に留置できる最大のサイズとして、

7 x 30 mmのステントサイズが選択された。同様に、2個のステントを約4~8 mm重複させるとした

場合に、ミニブタの腸骨大腿動脈に留置できる最大のサイズとして、6 x 30 mmのステントサイズ

が選択された。脈管ステントに対する過去の試験実績に基づき、試験検体数は妥当であると判断

した。

試験方法

被験動物の左右の腸骨大腿動脈にそれぞれ、2個の重複させたステントを留置した(約4~8 mm重

複)。各被験動物は、合計4個の非コーティングステント、またはコーティングしたステント(3

µg/mm2)が留置された。ステント留置後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、被験動物を観察した。

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266

定量的血管造影、定量的組織形態計測、定性的組織病理学的検査、剖検、および臨床病理学的検

査の方法は、主要用量および追加コーティング用量で 1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月試験で用いた方法と

同様であった。

判定基準

安全性の問題がないこと。

血管壁が修復が進行中であること。

パクリタキセル0 µg/mm2(対照)および3 µg/mm

2(臨床用量密度)の両用量群に関して、血管壁

が完全に修復するまで動物試験の期間を延長するものとする。

判定基準の妥当性

判定基準は、機器の臨床使用の安全性保証のため、重要と考えられる特性に基づいて設定した。

パクリタキセルなどの抗増殖性化合物は、局所的に血管壁の修復を遅らせる場合がある。重複ス

テントは、非重複ステントに比べて、パクリタキセルの局所濃度が増加する可能性がある。した

がって、重複ステントを留置した際、有害事象を伴うことなく修復が完了することが重要である。

結果および考察

<留置結果>

被験動物29匹に、すべてのステント(116個中116個)が問題なく留置された。1ヶ月、3ケ月、6ヶ

月のフォローアップ全期間を通して、すべての被験動物(29匹中29匹)は健康であった。3

µg/mm2のパクリタキセルでコーティングした本品ステントは、非コーティングステントと比較し

て、デバイスの留置または取り扱いの特性に問題はなく、また準備、挿入、推進性、追従性、柔

軟性、およびX線不透過性について差はなかった。すべての場合において、ステントはガイドワイ

ヤーを使用して留置部位まで容易に操作でき、容易に留置できた。留置後の血管造影および血管

内超音波検査(IVUS)は、すべてのステントが血管壁に十分に圧着していることを示した。

3ヶ月試験において、被験動物(ID#441)においては、左側の腸骨大腿動脈パクリタキセルコー

ティングの 2個のステントが留置されたが、重複なしで留置された。さらに、被験動物(ID#438)に

おいて、左側の腸骨大腿動脈に非コーティングの 2個のステントが留置されたが、完全に重複し

た状態で留置された。これらの血管は両方とも、定量的血管造影および定量的形態計測分析から

除外した。その理由は、前者は重複しておらず、後者ではほぼ完全に重複したため、分析可能な

血管の長さがその他の血管(望ましい 4~8 mmの重複が達成できた血管)と大きく異なるからで

ある。しかしながら、血管壁の修復の評価を含む組織病理学的分析には、これら 2つの血管を含

めた。

<血管造影の結果>

血管造影の結果を表 4.2.2-39、表 4.2.2-40、表 4.2.2-41 に示す。定量的血管造影は、1 ヶ月、3 ヶ月、

6ヶ月の試験期間を通して、ステントを留置した血管がすべて広く開存していることを示した。フ

ォローアップ時における、直交する平面での血管造影においては、いずれの群にも動脈瘤、辺縁

効果による狭窄、およびステントの不完全密着の形跡はなかった。

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267

表4.2.2-39. 動物試験の1ヶ月時定量的血管造影データ

コーティング 0 μg/mm2 3 μg/mm

2

留置前の血管径 (mm) 5.31 ± 0.23 5.22 ± 0.37

留置後の血管径 (mm) 5.79 ± 0.16 5.76 ± 0.31

急性の内径増大率 (%) 9.30 ± 5.13 11.79 ± 12.26

フォローアップ時の血管径(mm) 5.57 ± 0.41 5.99 ± 0.26†

後期の内径減少率(%) 3.59 ± 7.49 -4.24 ± 4.98†

直径の狭窄率(%) -6.19 ± 8.38 -16.30 ± 12.01

注:P<0.05を有意とした。

† 対照と有意差がある。

表4.2.2-40. 動物試験の3ヶ月時定量的血管造影データ

コーティング 0 μg/mm2 3 μg/mm

2

留置前の血管径 (mm) 5.37 ± 0.31 5.53 ± 0.53

留置後の血管径 (mm) 5.79 ± 0.18 5.95 ± 0.23

急性の内径増大率 (%) 8.04 ± 3.65 8.76 ± 11.34

フォローアップ時の血管径(mm) 6.05 ± 0.46 5.71 ± 0.50

後期の内径減少率 (%) -4.66 ± 6.98 4.08 ± 7.65†

直径の狭窄率 (%) -12.79 ± 7.28 -3.93 ± 12.45

注:P<0.05を有意とした。

† 対照と有意差がある。

表4.2.2-41. 動物試験の6ヶ月時定量的血管造影データ

コーティング 0 μg/mm

2

(血管の数:8)

3 μg/mm2

(血管の数:10)

留置前の血管径 (mm) 5.32 ± 0.55 5.60 ± 0.29

留置後の血管径 (mm) 5.45 ± 0.18 5.45 ± 0.16

急性の内径増大率 (%) 3.33 ± 9.19 -2.41 ± 6.22

フォローアップ時の血管径(mm) 5.03 ± 0.37 4.70 ± 0.34†

後期の内径減少率 (%) 7.61 ± 6.66 13.7 ± 7.19†

直径の狭窄率 (%) 4.49 ± 11.6 15.9 ± 7.04†

注:P<0.05を有意とした。

† 対照と有意差がある。

ステントを留置したミニブタの血管を 6ヶ月目に採取した後、血管の高解像度 X線画像の肉眼お

よび顕微鏡による検査が行われたが、ステントの破断の形跡は見られなかった(36個中 0個の重

複ステント)。

<定量組織形態計測の結果>

1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月フォローアップ時の各用量群の形態計測データを表 4.2.2-42、表 4.2.2-43、

表 4.2.2-44に示す。

Page 194: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

268

表4.2.2-42. 動物試験の1ヶ月時形態計測データ

コーティング 0 μg/mm2 3 μg/mm

2

内腔の直径 (mm) 5.61 ± 0.13 5.96 ± 0.19

内腔の面積 (mm2) 24.78 ± 1.14 27.97

± 1.74

中膜の厚さ (mm) 0.13 ± 0.01 0.13 ± 0.03

新生内膜の厚さ (mm) 0.29 ± 0.05 0.23 ± 0.05

面積狭窄率 (%) 17.48 ± 2.96 13.55 ± 3.02

外径 (mm) 6.45 ± 0.09 6.69 ± 0.17

血管壁の面積 (mm2) 7.90 ± 0.87 7.19 ± 1.53

血管壁の厚さ (mm) 0.42 ± 0.05 0.36 ± 0.08

新生内膜の面積 (mm2) 5.29 ± 0.92 4.43 ± 1.01

注:P<0.05を有意とした。

† 対照と有意差がある。

表4.2.2-43. 動物試験の3ヶ月時形態計測データ

コーティング 0 μg/mm2 3 μg/mm

2

内腔の直径 (mm) 5.81 ± 0.25 5.52 ± 0.22

内腔の面積 (mm2) 26.61 ± 2.24 24.03

± 1.90

中膜の厚さ (mm) 0.14 ± 0.02 0.11 ± 0.02‡

新生内膜の厚さ (mm) 0.26 ± 0.11 0.38 ± 0.11

面積狭窄率 (%) 15.68 ± 5.90 22.48 ± 5.82

外径 (mm) 6.60 ± 0.12 6.50 ± 0.06

血管壁の面積 (mm2) 7.69 ± 2.09 9.21 ± 1.95

血管壁の厚さ (mm) 0.40 ± 0.12 0.49 ± 0.11

新生内膜の面積 (mm2) 4.89 ± 1.87 6.99

± 1.81

注:P<0.05を有意とした。

† 対照と有意差がある。

‡ t検定では対照と有意差があるが、共分散分析では有意差はない。

表4.2.2-44. 動物試験の6ヶ月時形態計測データ

コーティング 0 μg/mm

2

(血管の数:8)

3 μg/mm2

(血管の数:10)

内腔の直径 (mm) 4.81 ± 0.191 4.51 ± 0.143†

内腔の面積 (mm2) 18.2 ± 1.42 16.0 ± 0.914

中膜の厚さ (mm) 0.117 ± 0.013 0.091 ± 0.017†

新生内膜の厚さ (mm) 0.266 ± 0.041 0.434 ± 0.059†

面積狭窄率 (%) 18.9 ± 3.05 29.4 ± 3.39†

外径 (mm) 5.58 ± 0.116 5.56 ± 0.099

血管壁の面積 (mm2) 6.24 ± 0.589 8.26 ± 0.906

血管壁の厚さ (mm) 0.383 ± 0.047 0.526 ± 0.065†

新生内膜の面積 (mm2) 4.23 ± 0.512 6.70 ± 0.794

注:P<0.05を有意とした。

† 対照と有意差がある。

さらに、1ヶ月、3ケ月、6ヶ月のフォローアップで、重複領域および非重複領域での形態計測パ

ラメータを各用量群内で比較した。それぞれ表 4.2.2-45、表 4.2.2-46、表 4.2.2-47に示す。

Page 195: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

269

表4.2.2-45. 動物試験の1ヶ月時形態計測データ(重複領域と非重複領域の比較)

コーティング 0 μg/mm2 3 μg/mm

2

内腔の直径 (mm)

重複 非重複 重複 非重複

5.56 ± 0.15 5.63 ± 0.23 5.95 ± 0.27 5.96 ± 0.24

内腔の面積 (mm2) 24.3 ± 1.27 24.9 ± 1.99 27.8 ± 2.47 28.0 ± 2.16

中膜の厚さ (mm) 0.13 ± 0.01 0.13 ± 0.02 0.15 ± 0.04 0.13 ± 0.04

新生内膜の厚さ (mm) 0.41 ± 0.06† 0.26 ± 0.07 0.34 ± 0.11

† 0.20 ± 0.09

面積狭窄率 (%) 23.8 ± 2.98† 15.9 ± 4.30 19.4 ± 5.48

† 12.1 ± 4.86

外径 (mm) 6.62 ± 0.10† 6.41 ± 0.16 6.92 ± 0.25

† 6.62 ± 0.20

血管壁の面積 (mm2) 10.1

± 1.00

† 7.35 ± 1.21 9.85

± 2.79

† 6.54 ± 2.00

血管壁の厚さ (mm) 0.53 ± 0.06

† 0.39 ± 0.07 0.49

± 0.14

† 0.33 ± 0.11

新生内膜の面積 (mm2) 7.57

± 0.98

† 4.73 ± 1.25 6.75

± 2.21

† 3.86 ± 1.52

注:P<0.05を有意とした。

† 同じ用量群内の非重複領域から有意に異なる。

表4.2.2-46. 動物試験の3ヶ月時形態計測データ(重複領域と非重複領域の比較)

コーティング 0 μg/mm2 3 μg/mm

2

重複 非重複 重複 非重複

内腔の直径 (mm) 5.82 ± 0.23 5.80 ± 0.32 5.41 ± 0.26 5.55 ± 0.32

内腔の面積 (mm2) 26.61 ± 2.07 26.51 ± 2.82 23.05 ± 2.25 24.27 ± 2.75

中膜の厚さ (mm) 0.12 ± 0.02† 0.14 ± 0.04 0.09

± 0.03

† 0.12 ± 0.03

新生内膜の厚さ (mm) 0.33 ± 0.09

† 0.24 ± 0.12 0.53

± 0.12

† 0.34 ± 0.13

面積狭窄率(%) 19.49 ± 5.01

† 14.73 ± 6.99 29.74

± 6.21

† 20.66 ± 7.56

外径 (mm) 6.72± 0.10† 6.58 ± 0.25 6.64

± 0.10

† 6.47 ± 0.17

血管壁の面積 (mm2) 8.84

± 1.69

† 7.50 ± 2.28 11.59

± 2.11

† 8.62 ± 2.30

血管壁の厚さ (mm) 0.45± 0.10† 0.39 ± 0.12 0.61

± 0.12

† 0.46 ± 0.13

新生内膜の面積 (mm2) 6.42

± 1.52

† 4.61 ± 2.15 9.74

± 1.99

† 6.30 ± 2.30

注:P<0.05を有意とした。

† 同じ用量群内の非重複領域から有意に異なる。

表4.2.2-47. 動物試験の6ヶ月時形態計測データ(重複領域と非重複領域の比較)

コーティング 0 μg/mm2 3 μg/mm

2

重複

(n=8)

非重複

(n=32)

重複

(n=10)

非重複

(n=40)

内腔の直径 (mm) 4.90 ± 0.160 4.79 ± 0.212 4.42 ± 0.192 4.53 ± 0.322

内腔の面積 (mm2) 18.8 ± 1.23 18.1 ± 1.56 15.4 ± 1.31 16.2 ± 2.04

中膜の厚さ (mm) 0.101 ± 0.011 0.121 ± 0.024 0.071 ± 0.017 0.096 ± 0.021†

新生内膜の厚さ (mm) 0.306 ± 0.018 0.256 ± 0.065† 0.567 ± 0.077 0.401 ± 0.144

面積狭窄率 (%) 21.0 ± 1.34 18.4 ± 4.52 36.6 ± 4.14 27.6 ± 8.37†

外径 (mm) 5.71 ± 0.151 5.55 ± 0.129† 5.70 ± 0.185 5.52 ± 0.124

血管壁の面積 (mm2) 6.79 ± 0.32 6.10 ± 1.06 10.2 ± 1.26 7.79 ± 1.77

血管壁の厚さ (mm) 0.408 ± 0.018 0.377 ± 0.075 0.639 ± 0.077 0.497 ± 0.143†

新生内膜の面積 (mm2) 5.00 ± 0.28 4.04 ± 0.90

† 8.90 ± 1.28 6.15 ± 1.79

注:P<0.05を有意とした 。

† 非重複領域と重複領域間に有意な差がある。

非重複領域と重複領域の差は、重複させた領域においてステントストラット層が重なることによ

る、余分の厚さによって容易に説明できる。本試験の基準部分(近位側または遠位側)のいずれ

Page 196: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

270

でも、有意な新生内膜はなかった。すなわち組織形態計測は、血管造影で評価されたとおり、辺

縁効果による狭窄がないことを裏付けた。

<定性的な組織病理学的結果>

1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月フォローアップ時の各用量群について、組織病理学的検査の結果を表 4.2.2-

48、表 4.2.2-49、表 4.2.2-50に示す。

表4.2.2-48. 動物試験の1ヶ月時組織病理学的データ要約

コーティング 0 μg/mm2 3 μg/mm

2

損傷スコア(0~3のスコア) 0.00 ± 0.00 0.00 ±

0.00

炎症スコア(0~3のスコア) 0.07 ± 0.04 0.60 ± 0.26†

内膜での被覆が不完全である横断面の比率 0 32.7†

完全に内膜で被覆されているステントスト

ラットの比率*

1436ストラット

中の 100%

1443ストラット

中の 95%

管腔にフィブリンがある横断面の比率 0 8.16

低細胞性がある横断面の比率 0 22.5†

注:P<0.05を有意とした。

† 対照と有意差がある。

* これらのデータには統計分析を実施しなかった。

表4.2.2-49. 動物試験の3ヶ月時組織病理学的データ要約

コーティング 0 μg/mm2 3 μg/mm

2

損傷スコア(0~3のスコア) 0.05 ± 0.09 0.09 ± 0.15

炎症スコア(0~3のスコア) 0.25 ± 0.24 0.30 ± 0.19

内膜での被覆が不完全である横断面の比率 4.17 0

完全に内膜で被覆されているステントスト

ラットの比率*

1484ストラット

中の 99%

1443ストラット

中の 99%

管腔にフィブリンがある横断面の比率 2.08 0

低細胞性がある横断面の比率 0 0

注:P<0.05を有意とした。

* これらのデータには統計分析を実施しなかった。

表4.2.2-50. 動物試験の6ヶ月時組織病理学的データ要約

コーティング

0 μg/mm2

(血管の数:8)

3 μg/mm2

(血管の数:

10)

損傷スコア(0~3のスコア) 0.016 ± 0.020 0.076 ± 0.148

炎症スコア(0~3のスコア) 0.035 ± 0.024 0.060 ± 0.093

内膜での被覆が不完全である横断面の比率 0 0

管腔にフィブリンがある横断面の比率 0 0

低細胞性がある横断面の比率 0 0

注:P<0.05を有意とした。

「完全に内膜で被覆されているステントストラットの比率」については、6ヶ月時では評価をおこ

なっていない。

Page 197: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

271

非コーティング群では、1ヶ月で血管壁の修復が十分であるように見え、内膜被覆はほぼ完全であ

り、炎症は極微であった。パクリタキセルコーティングしたステントを留置した血管では、血管

壁の修復は完全ではなかったが、重要な病変は新生内膜、および中膜の内側部分(新生内膜に隣

接する部分)に限定されていた。このため、この群では修復はさらに継続することが示唆された。

3ヶ月、6ヶ月のフォローアップ時では、非コーティング群とパクリタキセルコーティング群の両

方で、ステント内の血管壁の修復が十分であるように見えた。パクリタキセルでコーティングし

た群の血管は、検査した病理学者によって完全に内膜により被覆していると判定された。すべて

のフォローアップ時における炎症と損傷は、両方の用量群で極微であった。すなわち、0~3のスケ

ールで評価すると、パクリタキセルでコーティングしたステント群と非コーティングステント群

における炎症スコアの平均は 0.7未満で、損傷スコアの平均は 0.1未満であった。

さらに、1ヶ月、3ヶ月、6ケ月のフォローアップ時に、重複領域および非重複領域での組織学的

パラメータを各用量群内で比較した。その比較をそれぞれ表 4.2.2-51、表 4.2.2-52、表 4.2.2-53に

示す。

表 4.2.2-51. 動物試験の 1ヶ月時組織病理学的データ(重複領域と非重複領域の比較)

コーティング 0 μg/mm2 3 μg/mm

2

損傷スコア(0~3のスコア) 重複 非重複 重複 非重複

0.00 ± 0.00 0.00 ±

0.00 0.00 ±

0.00 0.00 ±

0.00

炎症スコア(0~3のスコア) 0.10 ± 0.07 0.06 ± 0.07 0.70 ± 0.34 0.57 ± 0.38

内膜での被覆が不完全である横断面の

比率 0 0 40 30.8

管腔にフィブリンがある横断面の比率 0 0 10 7.7

低細胞性がある横断面の比率 0 0 70 10.3

注:P<0.05を有意とした。

表4.2.2-52. 動物試験の3ヶ月時組織病理学的データ(重複領域と非重複領域の比較)

コーティング 0 μg/mm2 3 μg/mm

2

損傷スコア(0~3のスコア) 重複 非重複 重複 非重複

0.11 ± 0.14 0.04 ±

0.21 0.13 ±

0.14 0.07 ±

0.28

炎症スコア(0~3のスケール) 0.31 ± 0.25 0.18 ± 0.23 0.42 ± 0.27 0.28 ± 0.28

内膜での被覆が不完全である横断面の

比率 0 5.6 0 0

管腔にフィブリンがある横断面の比率 0 2.8 0 0

低細胞性がある横断面の比率 0 0 0 0

注:P<0.05を有意とした。

表4.2.2-53. 動物試験の6ヶ月時組織病理学的データ(重複領域と非重複領域の比較)

コーティング 0 μg/mm2 3 μg/mm

2

損傷スコア(0~3のスコア)

重複

(n=8)

非重複

(n=32)

重複

(n=10)

非重複

(n=40)

0.002 ± 0.007 0.013 ± 0.031 0.078 ± 0.162 0.081 ± 0.176

炎症スコア(0~3のスコア) 0.005 ± 0.014 0.027 ± 0.048 0.137 ± 0.179 0.053 ± 0.096

内膜での被覆が不完全である横断面の

比率 0 0 0 0

管腔にフィブリンがある横断面の比率 0 0 0 0

低細胞性がある横断面の比率 0 0 0 0

注:P<0.05を有意とした。

Page 198: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

272

各用量群内において、1ヶ月、3ヶ月、6ケ月のフォローアップ時の損傷スコアおよび炎症スコア

は、重複領域と非重複領域間で有意な差はなかった。さらに、各用量群内において、内膜形成不

全および内腔内血栓を示す横断面の比率も、重複領域と非重複領域間で有意な差はなかった。ス

テントが留置されていない近位側および遠位側の基準血管も検査されたが、重要な病変は見られ

なかった。

<剖検および臨床的病理学の結果>

ベースラインおよびフォローアップ時の血液検体の評価(分画を伴う総血球数算定、および血清

化学の分析)では、非コーティングステント、または 3 µg/mm2 のパクリタキセルでコーティング

したステントに伴う全身作用は見られなかった。本試験の個体については、ベースラインにおい

て血液学または血清化学検査の正常範囲(Merck Veterinary Manual, 8th Ed.から取得した値)から外

れた値を示す個体は全くなかった。さらに、フォローアップ時の血液学的および血清化学の結果

はベースラインから大きく異ならなかった。具体的には、パクリタキセルコーティングのステン

トに伴う骨髄抑制、肝機能や腎機能の変化の徴候はなかった。

綿密な剖検からも、非コーティングステント、または 3 µg/mm2のパクリタキセルでコーティング

したステントに伴う全身作用は見られなかった。これには各被験動物の外皮系、筋骨格系、呼吸

器系、心血管系、消化器系、泌尿生殖器系、リンパ系、内分泌系、神経系の肉眼による検査が含

まれるが、ステントに関連する変化は見られなかった。さらに肝臓、腎臓、骨髄の組織病理学も、

ステントに伴う変化を示さなかった。剖検においても、非コーティング群、または 3 µg/mm2のパ

クリタキセルでコーティングした本品ステント群において、留置部位から下流方向への作用は示

されなかった。具体的には、ステントを留置した動脈が血液を供給している、各後肢内の 5つの

筋群について、連続切片(約 1cmの厚さ)を作成して詳細な肉眼検査および組織学的検査を施行

したが、血栓、梗塞、その他のステントに伴う変化の形跡は見られなかった。

結論

この 1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の試験では、重複させた非コーティングステント、または重複させた

3 µg/mm2のパクリタキセルでコーティングした本品ステントに伴う安全性の問題、または好まし

くない続発症は示されなかった。早期死亡、被験動物の健康問題、パクリタキセルの全身作用ま

たは留置部位から下流方向への作用、血栓、血管破裂、動脈瘤、仮性動脈瘤、辺縁効果による狭

窄はなかった。非コーティング群では、1ヶ月で血管壁が十分に修復されているように見え、スト

ラットは内膜ではほぼ完全に被覆されており、炎症は極微であった。パクリタキセルコーティン

グしたステントを留置した血管では、内膜によるストラットの被覆は完全ではなかったが、重要

な病変は新生内膜、および中膜の内側部分(新生内膜に隣接する部分)に限定されていた。この

ため、この群では血管壁の修復はさらに継続することが示唆された。3ヶ月、6ヶ月のフォローア

ップ時は、非コーティング群とパクリタキセルコーティング群の両方で、ステント内の血管壁の

修復は十分にすすんでいるように見えた。1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月では、重複領域と非重複領域の

組織形態計測パラメータ、および組織病理学パラメータの評価も行った。重複領域と非重複領域

の結果の差は、重複領域においてステントストラットの層が過剰に厚くなっていることに起因す

ると考えられる。本試験の基準部分(近位側または遠位側)では、顕著な新生内膜は観察されな

かった。損傷スコア、炎症スコア、内膜形成不全、および内腔内血栓を示す横断面の比率も、重

複領域と非重複領域間で有意な差はなかった。ステントが留置されていない近位側および遠位側

の基準血管も検査されたが、重要な病変は見られなかった。これらの結果は指定された判定基準

を満たした。

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273

12.家畜ブタにおける本品ステントの下流方向への作用および全身作用を評価した、1ヶ月の過

剰用量試験(RSO1 TS060072)

添付資料ホ-2-8

試験の目的

本試験の目的は、ブタの末梢血管における本申請品の安全性を評価することである。パクリタキ

セルの臨床用量の 3倍がコーティングされた 10 x 80 mm ステント 4本を用いた場合に相当する薬

剤量(この 3倍のパクリタキセル用量とは、患者当たり約 10,400 µg、各肢当たり 5,200 µg相当)

に関して、ステント留置部位から下流方向、および全身への作用の可能性を評価した。使用した

検体は 7 Frのステントおよびデリバリーシステムである。

評価

検体

表 4.2.2-54. サイズ別および用量別ステント検体

コーティング ステントのサイズ(mm) 検体数

9 µg/mm2パクリタキセル(臨床用量密度の 3倍) 14 x 40 16

9 µg/mm2パクリタキセル(臨床用量密度の 3倍) 10 x 40 14

12 µg/mm2パクリタキセル(臨床用量密度の 4倍) 6 x 20 24

評価した合計数 54

* 評価した動物の合計数は 6匹であり、それぞれの動物に 9本のステント(6 x 20 mmのステント

を 4本、10 x 40 mmのステントを 3本、14 x 40 mmのステントを 2本)が留置される予定であ

った。しかし、実際には被験動物の血管径に対し順応させ人為的な合併症を避ける必要性があ

ったため、4匹の動物において、最も頭側に近い 10 x 40 mmのステントが、当初の計画と異な

り 14 x 40 mmのステントに変更された。

** 1匹の被験動物が留置から 9日後に予期せずに死亡(ステントの留置には関連がない)したた

め、入れ替えた。

検体選択の妥当性

設計および製造が標準化(同一のステント設計、原材料、および薬剤コーティング手順)されて

いるため、単一のサイズで行った試験の結果はすべてのサイズを代表する。上表に示すように、

ステントを 9 µg/mm2のパクリタキセル(10 x 40 mm、14 x 40 mm)または 12 µg/mm

2のパクリタ

キセル(6 x 20mm)でコーティングした。 これらのステントサイズおよびパクリタキセルコーテ

ィング用量は、ブタの動脈への適切なステントのサイジングを得るため、また、必要とするパク

リタキセルの用量(ステント留置部位から下流方向の用量および全身の用量)を提供するために

選択された。上記の検体数は、パクリタキセルコーティングに対する反応を評価するのに妥当で

あると判断する。

試験方法

「9.家畜ブタにおける、非コーティング、パクリタキセル 3 µg/mm2(臨床用量)およびパクリ

タキセル 9 µg/mm2(臨床用量の 3倍)の 1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月主要動物試験」においては、臨床

用量と比べ 3倍の用量(ステント留置部位から下流方向の用量および全身の用量)のパクリタキ

セルが送達されるように、10 x 60 mmおよび 10 x 20 mmのステントを同じ動脈内に直列に留置し

た。臨床用量でコーティングした 2対の 10 x 80 mmの本品ステントに含まれるパクリタキセルの

総量は約 3,500 µg(各肢当たり 1,750 µg)である。この 3倍は約 10,500 µg(各肢当たり 5,250 µg)

である。本試験では、各被験動物に 9本のステント(胸大動脈下部および腹部大動脈に 5本、左

右の腸骨動脈に 2本ずつ)が留置されることによって、合計約 10,400 µg(各肢当たり 5,200 µg)

のパクリタキセルが用いられた。当試験モデルのため、各後肢へのパクリタキセルへの曝露は、

その後肢に留置されたステントの用量と、大動脈に留置されたステントの 50%とが加算されたも

のになると考えられる。

ステント留置後 1ヶ月でフォローアップ処置を行った。非イオン性 X線撮影造影剤を使って、ス

テントを留置した動脈の血管造影を直交する平面で行った。

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274

さらに、ステントを留置する前(留置前)、留置後 7日目、および 1ヶ月のフォローアップ期間

に血液検体を採血し、分析した。

独立した認定獣医病理学者の監督下で、肉眼による各被験動物の綿密な剖検が実施された。肉眼

による剖検検査に加えて、種々の組織サンプルの組織病理学的評価も実施された。パクリタキセ

ルのステント留置部位から下流方向への作用の可能性を探るために、下流方向の薬剤コーティン

グ作用の徴候(梗塞など)に関して、各後肢の 5 つの主要筋群(大腿直筋、半腱様筋、半膜様筋、

第三腓骨筋/頭側脛骨筋、指屈筋/指伸筋)が評価された。肉眼的検査および組織病理学的検査から

の観察と所見を記録し、剖検報告書に要約した。組織学的処理と顕微鏡での評価のため、異常な

病変部はすべてサンプルを取得した。

判定基準

臨床用量の 3倍のパクリタキセルでコーティングした、4個の 10 x 80 mm ステント(各肢につき 2

個のステント、患者 1人当たり約 10,400 µg、各肢につき 5,200 µg)が、下流方向および全身に及

ぼす作用に伴う安全性の問題がないこと。

判定基準の妥当性

判定基準は、機器の臨床使用の安全性保証のために重要と考えられる特性に基づいて設定した。

過剰用量のパクリタキセルを有する複数のステントに伴う下流方向および全身における有害事象

がないということは、臨床的な用量密度と比較した場合、安全性において余裕があることを示す。

結果および考察

<留置および被験動物の健康の結果>

この 1ヶ月試験では、6匹の被験動物にステントを留置した。1匹の被験動物が留置後 9日後に予

想外に死亡したため、入れ替えた。当該死亡はステントの留置には関連がなく、剖検によって、

頸部に大量の凝固した血液があり、気管を含む頸部内臓を覆っていたことが示された。この被験

動物が死亡した前日である、術後 7日目に採血が行われていた。頸静脈の静脈穿刺が比較的ゆっ

くりだが進行性の内出血(おそらく実施計画書での必要事項である、抗血小板薬剤の投与によっ

て悪化したと思われる)を起こし、それによって気管虚脱または気管の閉塞を起こし、最終的に

窒息を起こしたように考えられる。死亡は機器との関連性がなかったため、実施計画書に従って

この被験動物は取り替えられ、試験デザイン通り、6匹の個体を試験を通じて観察した。死亡した

被験動物からのデータは、以後の分析からは除去された。

実施計画書に記載されているように、すべての動物に対し、9個のステントが留置された。実施計

画書内で規定したように、サイズが小さすぎるために起こる人為的な合併症を避けるため、4匹の

個体について、最も頭側の 10 x 40 mmステントを 14 x 40 mmステントに交換した。この交換によ

って、これら 4匹の被験動物でのパクリタキセルの全用量は約 200 µg増加した。この変更は重大

なものとは考えられず、試験結果にも影響がなかった。ステント留置処置に関連する合併症(血

栓症、解離、せん孔、急性閉塞、重度の発作など)はなかった。

<血管造影の結果>

ステント留置直後および 1ヶ月のフォローアップ時の定性的血管造影は、すべてのステントが広

く開存しており、血管壁に十分に圧着していることを示した。さらに、フォローアップ時に、ほ

ぼ直交方向から撮った血管造影画像では、動脈瘤、仮性動脈瘤、辺縁効果は見られなかった。

<臨床病理学の結果>

留置前(ベースライン)、術後 7日目、フォローアップ時の血液検体の血液学的(分画を伴う総

血球数算定)および血清化学的な分析が実施された。

本試験で観察したすべて(6匹中 6匹)の個体の血液学的結果は、試験期間を通じて正常範囲

(Merck Veterinary Manual, 8th Ed.から取得した値)から大幅に異ならなかった。

6匹中 4匹の個体の血清化学的結果が、試験期間を通じて正常範囲から大幅に異ならなかった。6

匹中 2匹の個体で、固有の酵素が少数、重ならない時点においてわずかに上昇していた。このよ

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275

うな値になったのは、血液検体に溶血したものが含まれていた可能性が見受けられたことが理由

と考えられる。また、これらの被験動物での肝機能の他の指標は、すべての時点において正常範

囲内であった。さらに、肝臓の肉眼検査または組織学的検査からは、病変や損傷は観察されなか

った。したがって、2匹に観察されたこれらの上昇は、留置したステントによる下流方向または全

身への作用によるものではないと見受けられる。観察された上昇について、以下に詳細を記す。1

匹目(ID#524)は 7日目の血清検体において、クレアチン・ホスホキナーゼ(CK)、アスパラギ

ン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、および総ビリルビンが上昇していた。しかし、この試

験サンプルには採血後、中程度~著しい程度の溶血が起こったことが記録されていた。この溶血

が CK、AST、総ビリルビンの測定を混乱させ、これらのレベルを上昇させた可能性がある。さら

に、この被験動物の 1 ヶ月のフォローアップでは CK、AST、総ビリルビンのレベルは正常であり、

ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)などの肝機能の他の指標はすべての時点で正常範

囲内であった。さらに、肝臓または下流側(後肢)の骨格筋の肉眼検査または組織学的検査から

は、病変や損傷は観察されなかった。したがって、この被験動物におけるこれらの値の増加は、

留置したステントによる下流方向または全身への作用のためではないと思われる。2匹目

(ID#525)については、留置時および 1ヶ月のフォローアップ時に GGTの値が正常範囲から少し

上昇していたが、術後 7日目の値は正常であった。ASTの値も 1ヶ月のフォローアップ時に少し

上昇していたが、留置時および術後 7日目の AST値は正常であった。この被験動物の肝機能の他

の指標(総ビリルビンなど)はすべての時点で正常範囲内であり、さらに、肝臓の肉眼検査また

は組織学的検査からは、病変や損傷は観察されなかった。したがって、この被験動物におけるこ

れらの値の増加は、留置したステントによる下流方向または全身への作用のためではないと思わ

れる。

総括すると、血液学および血清化学的結果は、ステント留置部位から下流方向および全身に対す

る安全性の問題を示唆するものではない。おそらくサンプリングの際生じたアーチファクトであ

ると考えられる、少数の散在した観察事項以外は、パクリタキセルでコーティングしたステント

に伴う下流方向または全身への作用はなかった。

剖検結果

剖検結果からは、本試験の所見と矛盾するような、家畜の健康状態の問題点は見られなかった。

各被験動物からの後肢の 5つの主要筋群(大腿直筋、半腱様筋、半膜様筋、第三腓骨筋/頭側脛骨

筋、指屈筋/指伸筋)の連続切片の綿密な肉眼検査、ならびに各筋群の組織学的検査では、ステン

トまたはコーティングに関連する下流方向への作用はなく、粒子性または梗塞性作用の形跡も見

られなかった。

各被験動物の外皮系、筋骨格系、呼吸系、心臓血管系、消化器系、泌尿生殖器系、リンパ系、内

分泌系、神経系の肉眼検査を含めた綿密な剖検、並びに肝臓、脾臓、胸腺、腎臓、心臓、肺、脳、

所属リンパ節、骨髄の組織学検査からも、ステントまたは薬剤コーティングに関連する作用は見

られなかった。各被験動物からの 8個の神経組織サンプル(頸髄、頸髄神経、胸髄、胸髄神経、

腰髄、腰髄神経、左坐骨神経、右坐骨神経)の組織病理学検査を行い、評価された 45のサンプル

中、5つにおいてごく僅かにに肥大した軸索が見られた(1匹の被験動物において頸髄神経、腰髄

神経、左坐骨神経が採取されなかったため、サンプルの合計は 48ではなく 45であった)。観察

された神経軸索の肥大はすべて同じ被験動物 1 匹からであり、頸髄神経に 1 つ、胸髄神経に 3 つ、

坐骨神経に 1つである。パクリタキセルとの関連性がある可能性は完全には除外できないが、こ

れらの限定された所見には、サンプル採取の際のアーチファクトや組織学的変性を起こしている

可能性など、多くの原因が考えられる。さらに、ステントの位置(尾側胸部大動脈、腹部大動脈、

腸骨動脈に留置)を考慮すると、パクリタキセルが血流に乗って流れ出すか、洗い流されて、上

流方向の頸髄神経および胸髄神経方向へ行くことはありそうにない。すべての腰髄神経(ステン

トから下流)は正常であり、限定された神経軸索の肥大が 1匹の被験動物の坐骨神経(ステント

の下流)において一度観察されたのみであった(ID#525の右坐骨神経)。他のすべての坐骨神経

(ID#525の左坐骨神経を含む)は正常であった。被験動物の健康に問題はなく、神経組織から神

経障害の臨床徴候または症状、および他の組織病理学的所見は報告されなかった(神経細胞体ま

たはグリア細胞の所見など)。さらに、これらの剖検の所見において塞栓症または虚血性の事象

は発見されなかったことが組織病理学報告書で示されている。

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276

要約すると、本試験における本品ステントの剖検結果は、下流方向または全身への安全性の問題、

およびパクリタキセル作用を示さなかった。

結論

これらの結果は指定された判定基準を満たした。本試験においてステント留置部位から下流およ

び全身は、臨床用量の 3倍(肢当たり 2個のステント、患者当たり約 10,400 µg、各肢当たり 5,200

µg)のパクリタキセルでコーティングした、4個の 10 x 80 mm ステントに相当するものに関連す

る安全性の問題を示さなかった。ステントが留置されたすべての血管は十分に開存しており、動

脈瘤、仮性動脈瘤、および辺縁効果の形跡は見られなかった。粒子性または塞栓性作用の形跡は、

下流方向および全身共になかった。血液学検査、血清化学検査、剖検の結果は、何ら安全上問題

になるような事項がなかった。神経軸索の肥大がまれに見られたが、これがパクリタキセルに由

来するものであるという証拠はなく、ステントに関連するような下流方向、および全身への影響

は見られなかった。

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277

13.家畜ブタを用いた本品ステントの 2ヶ月薬物動態試験 (ZLPK; TS020076)

添付資料ホ-2-9

試験の目的

本試験の目的は、本品ステント(7 Fr のステントおよびデリバリーシステム)における留置血管、

ステント留置部位から下流、それに全身における薬物動態を特性付けることである。

評価

検体

表4.2.2-55. サイズ別および用量別ステント検体

コーティング 留置状態 ステントの

サイズ(mm) 検体数 被験動物数

3 µg/mm2パクリタキセル

(臨床用量密度)

動物に留置 6 x 20 64 16*

留置せず 6 x 20 6 該当せず

評価した合計数 70 16

* 1匹につき 4本のステントを留置した。

検体選択の妥当性

設計および製造が標準化(同一のステント設計、原材料、および薬剤コーティング手順)されて

いるため、単一のサイズの試験はすべてのサイズを代表する。7 Frのステントのパクリタキセル

総用量は同サイズの 6 Frのステントよりわずかに多いため、7 Frの ステントが選択された。家畜

ブタの腸骨大腿動脈に 4個の非重複ステントの留置を可能にするために、6 x 20 mmのステントサ

イズを選択した。これにより被験動物当たり 4 個のステントを用いて局所的な評価が可能となり、

また、7 Frの本品ステントの最大の総用量にほぼ等しい全身パクリタキセル総用量が得られる。

脈管ステントに対する過去の試験実績に基づき、試験検体数は妥当であると判断した。

試験方法

16匹のリポタンパク値が正常な家畜ブタに、64個の本品ステントを留置した。各ブタの左右の腸

骨大腿動脈にそれぞれ 2個の重複のないステントを留置した(すなわち、各ブタにパクリタキセ

ルでコーティングしたステントが 4個留置された)。また、比較とするベースラインを確立する

ために、留置しない本品ステント 6個も評価した。全体で 70個の本品ステントが使用された。フ

ォローアップ時点を 30分、6時間、1日、3日、7日、14日、28日、56日としたが、これらの時

点はブタの動脈において、パクリタキセルの薬物動態および再狭窄を生じるプロセスを知る上で

重要なキーポイントとなる可能性があるためである。2匹のブタからのステント、および組織につ

いて各時点で評価した。

ステントの留置前、ステント留置直後、フォローアップ時(ステントを回収する前)に血管造影

を実施し、ステントを留置した血管の開存性を判定した。フォローアップの血管造影後、被験動

物を安楽死させ、ステントを留置した血管に対し、ステント留置部位と、その遠位側と近位側の

約 1 cmの長さのステントが留置されていない基準血管部分を切除した。またステントを留置した

各動脈に直接隣接する部位から骨格筋組織の一部を切除した。ステントを留置した動脈から下流

方向にあり、そこから血液が送られる骨格筋組織の一部も各後肢から切除した。ステントを留置

した動脈部分から近位側および遠位側の基準動脈部分を分離し、ステントを留置した動脈部分を

長軸方向に注意して開き、動脈とステントを分離した。フォローアップの時点で、検証された抽

出および高速液体クロマトグラフィー(HPLC; BASi方法 SAP # 820-0492)を使ったアッセイによっ

て、各ステントに残っているパクリタキセル量を測定した。この方法の定量限界(LOQ)は

@* ng/mLである。アッセイ値は最初のステントコーティング質量(公称 219 µg)に対する比率と

して表された。

また、フォローアップの時点で、動脈壁や隣接部、さらに下流方向の骨格筋組織内に存在するパ

クリタキセル量については、抽出法や検証された高速液体クロマトグラフ質量分析で測定した

(LC/MS; BASi方法 SAP # 820-0536および SAP # 820-0602、定量限界は動脈組織で* ng/g、骨格筋

組織で 5 ng/g)。

Page 204: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

278

ステントの留置前、ステント留置直後、すべてのフォローアップ時点で血漿中のパクリタキセル

濃度を評価した。血漿検体中に存在するパクリタキセル量は、検証された LC/MS方法(BASi方法

SAP # 820-0610、定量限界***ng/mL)によって測定した。

独立した認定獣医病理学者によって、肉眼による各被験動物の綿密な剖検も実施された。パクリ

タキセルがステント留置部位から下流方向へ及ぼす作用の可能性を探るため、各後肢の 5つの主

要筋群(大腿直筋、半腱様筋、半膜様筋、第三腓骨筋/頭側脛骨筋、指屈筋/指伸筋)を評価した。

同時にパクリタキセルの全身作用の可能性を探るため、各被験動物の肝臓、腎臓、骨髄に組織病

理学的検査も実施した。

判定基準

安全性の問題がないこと。

薬物動態を特性付ける。

判定基準の妥当性

判定基準は、機器の臨床使用における安全性保証のために重要と考えられる特性に基づいて設定

した。パクリタキセルなどの抗増殖性化合物は、局所的に血管壁の修復を遅らせる場合がある。

したがって、パクリタキセルでコーティングしたステントに関連する有害事象が起こらないこと

が重要である。パクリタキセルの薬物動態評価は、留置血管、留置部位から下流、および全身に

おけるパクリタキセル送達に関する重要な情報となる。

結果および考察

<手技上の結果>

全てのステントは問題なく留置された(64個中 64個)。全ての被験動物(16匹中 16匹)が、予

定されたフォローアップの終了まで健康であった。準備、挿入、推進性、追従性、柔軟性、X線

不透過性の面で、デリバリーシステムに関する問題はなかった。すべての場合において、ステン

トは、ガイドワイヤーに沿って留置部位まで容易に操作でき、容易に展開できた。血管造影によ

って、ステントを留置したすべての血管において留置時およびフォローアップ時の両方で広く開

存していることが示された。

<パクリタキセルのアッセイ結果>

ステント、ステントを留置した動脈壁、近位側および遠位側の基準動脈壁、ステントを留置した

動脈に隣接する骨格筋、ステントを留置した動脈の遠位側の(動脈によって灌流される)骨格筋、

血漿に含まれるパクリタキセル量を、以下に要約する。

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279

【ステント】

各留置期間における、ステントに残留したパクリタキセル量(最初のコーティング質量の比率と

して表示)を、表 4.2.2-56および図 4.2.2-1に示す。56日までのすべての時点で、ステントに残留

する平均パクリタキセル量は、アッセイの定量限界を超えていた。留置後 30分(0.02日)では、

最初のパクリタキセル量の約 34%がステントに残留していた。この時間は、被験動物 1匹に 4個

のステントを適切に留置してから回収するまでに必要な最低限の時間である。ステントに残留す

るパクリタキセルは最初の 6時間で約 7%まで急速に低下した後、56日までに約 0.1%まで次第に

減少した。

表4.2.2-56. 各時点における、留置後回収したステント(n=8)に残留するパクリタキセル量**

時間(日数) 平均の残留パクリタキセル量* 標準偏差

0**

100% 14%

0.02 34.3% 4.8%

0.25 6.6% 4.3%

1 5.2% 4.6%

3 1.8% 2.3%

7 1.4% 1.6%

14 0.6% 0.8%

28 0.4% 0.8%

56 0.1% 0.1% * 残留パクリタキセル量は、使用されたコーティングしたステントの各バッチに対して、最初に存

在した量の比率として計算された。 ** 時間 0は留置されていないステントを表し、n=6である。

Page 206: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

280

0

20

40

60

80

100

120

0 0.25 0.5 0.75 1

Time (days)

Mean

% P

TX

rem

ain

ing

on

ste

nt

図4.2.2.1 留置されてから、時間ごとに回収されたステントに残留するパクリタキセル量。

上図は0日から1日までの時間、下図は1日から56日までの時間を示す。残留パクリタキセ

ル量は、使用されたコーティングステントの各バッチに対して、最初に存在した量の比

率として計算された。時間0は留置されていないステントを表す。

時間(日数)

0

2

4

6

8

10

0 10 20 30 40 50 60

Time (days)

Mean

% P

TX

rem

ain

ing

on

ste

nt

時間(日数)

ステントに残留する平均パクリタキセル

(%)

ステントに残留する平均パクリタキセル

(%)

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281

【ステントを留置した動脈】

ステントを留置した動脈内のパクリタキセル量(ng/組織重量 g)を、表 4.2.2-57および図 4.2.2-2

に示す。56日までのすべての時点で、ステントを留置した動脈での平均パクリタキセル量は、ア

ッセイの定量限界を超えていた。パクリタキセル量のピーク値は約 70,700 ng/gであり、これはス

テントを留置し、直後に回収した時間である約 30分(0.02日)後に認められた。パクリタキセル

量は 6時間目にピーク値の約 44%に急速に落ち、1日から 14日まででピーク値の約 20%で安定化

した後、56日までにピーク値の約 0.2%まで次第に減少した(表 4.2.2-57および図 4.2.2-2を参照)。

表4.2.2-57. 各時点における、ステントを留置した動脈内の平均パクリタキセル量 (ng/g)(n=8)

時間(日数) ステントを留置した動脈組織内の

パクリタキセル量 (ng/g) 標準偏差(ng/g)

0.02 70700 (ピーク値) 21200

0.25 31100 (ピーク値の 44%) 11400

1 20600 (ピーク値の 29%) 9200

3 10400 (ピーク値の 15%) 7520

7 14100 (ピーク値の 20%) 15800

14* 15100 (ピーク値の 21%) 11400

28 2170 (ピーク値の 3%) 3360

56 160 (ピーク値の 0.2%) 81 *

7個の値の平均。

図 4.2.2-2 各時点における、ステントを留置した動脈内のパクリタキセル量

【基準動脈】

ステントが留置されていない、近位側および遠位側基準動脈内のパクリタキセル量(ng/g)を、

表 4.2.2-58 および図 4.2.2-3に示す。56日までのすべての時点で、近位側および遠位側の基準動脈

での平均パクリタキセル量は、アッセイの定量限界を超えていた。基準動脈のパクリタキセル量

のピーク値は、ステントを留置してすぐに回収された直後(約 30分すなわち 0.02日)に見られた。

基準動脈のパクリタキセル量は、最初の 6時間でピーク値の約 22%に急速に落ち、その後、56日

間にわたってピーク値の約 0.2%未満まで次第に減少した。28日までは近位側基準動脈と遠位側基

準動脈の間でパクリタキセル量に有意な差はなかった。56日目では、近位側基準動脈と遠位側基

準動脈のパクリタキセル量は両方とも非常に低くなったが、遠位側基準動脈での量は近位側基準

動脈の量より有意に多かった。

ステント留置後の動脈細胞組織内

のパクリタキセル量(

ng/g)

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282

表4.2.2-58. 近位側基準動脈と遠位側基準動脈における、各時点の平均パクリタキセル量

(ng/g)(n=8)

時間

(日数)

近位側基準動脈の

パクリタキセル量 (ng/g)

標準偏差

(ng/g)

遠位側基準動脈の

パクリタキセル量 (ng/g)

標準偏差

(ng/g)

統計的

有意差*

0.02 10,200 3,350 8,320 4,840 無

0.25 2,470 4,160 1,600 1,560 無

1 371 375 410 203 無

3 405 440 315 358 無

7 246 315 535 795 無

14 289 432 486 592 無

28 90.9 115 93.4 73.4 無

56 4.3 8.5 27.0 23.5 有 * 対応のある t検定を使用して、近位側基準動脈と遠位側基準動脈でのパクリタキセル量を比較し

た。P値<0.05を有意とした。

図4.2.2.3 各時点における、近位側基準動脈、および遠位側基準動脈の組織でのパクリタキセル量

【隣接する骨格筋】

ステントを留置した動脈に接する骨格筋細胞組織内のパクリタキセル量(ng/g)を、表 4.2.2-59お

よび図 4.2.2-4 に示す。28 日までの平均パクリタキセル量は、アッセイの定量限界より大きかった。

しかし、56日では定量限界より低くなった。パクリタキセル量のピーク値はステント留置後 6時

間であり、約 227 ng/gであった。その後パクリタキセル量は次第に低下し、56日目に定量限界よ

り低くなった。

表4.2.2-59. 各時点における、ステントを留置した動脈に隣接する骨格筋内の平均パクリタキセル

量(ng/g)(n=8)

時間

(日数)

隣接筋肉内の

平均パクリタキセル量(ng/g) 標準偏差(ng/g)

0.02 59.3 49.7

0.25 227 312

1 109 82.1

3 9.4 11.4

7 53.8 45.0

14 33.9 70.2

28 58.1 44.9

56 0.0 0.0

*片対数グ

ラフ a b c

10 mm

10 mm

10 mm 5 mm

5 mm

10 mm

ステント

遠位側

基準

近位側基

1

2

3

4

5

6

7

10 mm

10 mm

重複領域

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

10 mm

10 mm

10 mm

10 mm

遠位側

近位側

Page 209: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

283

図4.2.2.4 ステントを留置した動脈に隣接する骨格筋内のパクリタキセル量。上図は0日から7

日までの時間、下図は7日から56日までの時間を示す。

Page 210: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

284

【遠位側の骨格筋】

ステントが留置された動脈の遠位にある(血液が灌流される)骨格筋細胞組織内のパクリタキセ

ル量(ng/g)を、表 4.2.2-60および図 4.2.2-5に示す。3日までの平均パクリタキセル量は、アッセ

イの定量限界を超えていた。しかし 7日から 56日では、定量限界より低くなった。パクリタキセ

ル量のピーク値は、ステント留置後 6時間の約 81 ng/gであった。パクリタキセル量は次第に低下

し、7日目に定量限界より低くなった。

表4.2.2-60.ステントを留置した動脈の遠位側にある(動脈によって灌流される)肢の骨格筋内の各

時点における平均パクリタキセル量 (ng/g)(n=4)

時間

(日数)

肢の骨格筋内の

パクリタキセル量 (ng/g)

標準偏差(ng/g)

0.02 16.7 12.2

0.25

81.11

19.7

1 27.8 4.6

3 8.2 4.6

7 0.0 0.0

14 0.02

0.0

28 0.0 0.0

56 0.0 0.0 1 値は、2つの値の平均を表す。

2 値は、3つの値の平均を表す。 1つの値は Dixonの Q検定に基づいて外れ値と考えられ、平均に

は含まれなかったため。

図4.2.2-5. 14日までの時点における、ステントを留置した動脈によって灌流される、遠位側の骨格

筋内のパクリタキセル量(7日から56日まではゼロであった)。

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285

【血漿】

血漿中のパクリタキセル量(ng/血漿の容量(mL)として表される)を表 4.2.2-61および図 4.2.2-6

に示す。パクリタキセル量がアッセイの定量限界を超えた時点は、ステントを留置した後 30分

(0.02日)および 6時間のみであった。血漿中パクリタキセル量のピーク値の時点をさらに明確

するために、急性期の評価を追加実施した(後記の「家畜ブタにおける本品ステントの 24時間薬

物動態試験」)。

表4.2.2-61. 各時点における平均血漿中パクリタキセル量 (ng/mL)(n=2)

時間

(日数)

血漿中のパクリタキセル量(ng/mL)

標準偏差(ng/mL)

0*

0.0 0.0

0.02**

5.0 0.5

0.25 0.3 0.4

1 0.0 0.0

3 0.0 0.0

7 0.0 0.0

14 0.0 0.0

28 0.0 0.0

56 0.0 0.0 * 時間 0はステントを留置する前の血漿中のパクリタキセル量を指し、n=16であった。 ** 時間 0.02はステントを留置した直後の血漿中のパクリタキセル量を指し、n=16であった。

図4.2.2.6. 3日の時点までの血漿中パクリタキセル量。1日目から56日目までのパクリタキセル量は

0であった。

【全体的な比較】

表 4.2.2-62に、局所(すなわち、ステントを留置した動脈)に見られるパクリタキセル量に対す

る、全身および下流(すなわち、ステントを留置した位置から下流方向)におけるパクリタキセ

ル量の比較を示す。すべての時点において、ステントが留置されていない基準動脈でのパクリタ

キセル量は、ステントを留置した動脈でのパクリタキセル量の 17%未満であった。隣接骨格筋内、

遠位側の骨格筋内のパクリタキセル量は、ステントを設置した動脈の値と比較して、それぞれ

2.7%未満、0.26%未満になり、それぞれ 56日目、7日目にアッセイの定量限界より低くなった。

血漿中のパクリタキセル量は、ステントを留置した動脈のパクリタキセル量の 0.007%より低く、

6時間後にアッセイの定量限界より低くなった。

Page 212: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

286

表4.2.2-62. 各時点における、局所、下流、全身の平均パクリタキセル量(ステントを留置した動

脈の局所的なパクリタキセル量の比率として表示)の比較

時間

(日数)

局所 下流 全身

ステントを

留置した動

脈(ng/g)

ステントを留

置した動脈

(%)

近位側基準

動脈 (%)

遠位側基準

動脈 (%)

隣接骨格筋

(%)

遠位側骨格

筋(%)

血漿

(%)

0.02 70,700 100 14.4 11.8 0.08 0.02 0.007

0.25 31,100 100 7.9 5.1 0.73 0.26 0.001

1 20,600 100 1.8 2.0 0.53 0.13 0.000

3 10,400 100 3.9 3.0 0.09 0.08 0.000

7 14,100 100 1.7 3.8 0.38 0.00 0.000

14 15,100 100 1.9 3.2 0.22 0.00 0.000

28 2,170 100 4.2 4.3 2.68 0.00 0.000

56 160 100 2.7 16.9 0.00 0.00 0.000

最大値 70,700 14.4 16.9 2.68 0.26 0.007

<剖検および臨床的病理学の結果>

血液検体を用いて、総血球数算出および通常の血清化学的分析を実施した。本試験のブタについ

ては、ベースラインにおいて血液学または血清化学的検査の正常範囲(Merck Veterinary Manual,

8th Ed.から取得した値)から外れた値を示す個体はなかった。さらに、フォローアップ時の血液学

および血清化学の結果はベースライン、または正常範囲の値から大きく異ならなかった。すなわ

ち、血液学検査および血清化学的検査からは、パクリタキセルでコーティングしたステントに伴

う骨髄抑制、肝機能や腎機能の変化の徴候は見られなかった。

各被験動物の綿密な剖検からは、いずれのフォローアップ時点でもステントに関連する重大な肉

眼的所見、または顕微鏡での所見は見られなかった。これには、各被験動物の外皮系、筋骨格系、

呼吸器系、心血管系、消化器系、泌尿生殖器系、リンパ系、内分泌系、神経系の肉眼による検査、

肉眼で見える病変の組織病理学的検査、各被験動物の肝臓、腎臓、骨髄の組織病理学的検査が含

まれる。さらに、ステントを留置した動脈によって血液が送られる後肢の筋肉の連続切片(約 1

cm厚)で、重大な肉眼的所見が見られる部位については肉眼検査が行われたが、組織病理学的に

は下流方向におけるコーティングによる影響は見られなかった。

結論

これらの結果は、指定された判定基準を満たす。この 56日間の試験において検査された、3

µg/mm2パクリタキセルでコーティングした本品ステントに伴う安全性の問題(早期死亡、被験動

物の健康問題、血栓、閉塞、辺縁効果による狭窄、または動脈瘤)はなかった。さらに、薬物動

態データから、ステントを留置した動脈壁でパクリタキセル量が維持されており、ほとんど下流

方向または全身に送達されていないことが分かった。この薬物動態データと一致するように、包

括的な剖検、血液学検査および血清化学検査結果はパクリタキセルコーティングの下流方向およ

び全身への作用を示さなかった。

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287

14.家畜ブタにおける本品ステントの 24時間薬物動態試験 (PK24 TS030117/JPX00001)

添付資料ホ-2-10

試験の目的

本試験の目的は、本品ステント(7 Frのステントおよびデリバリーシステム)における初期の全

身薬物動態をさらに特性付けることである。

評価

検体

表4.2.2-63. サイズ別および用量別ステント検体

コーティング ステントの

サイズ(mm) 検体数 被験動物数

3 µg/mm2パクリタキセル

(臨床用量密度) 6 x 20 8 2*

* 1匹につき 4本のステントを留置した。

検体選択の妥当性

設計および製造は標準化(同一のステント設計、原材料、および薬剤コーティング手順)されて

いるため、単一のサイズの検体で試験が実施されたが、結果はすべてのサイズを代表する。7 Fr

のステントのパクリタキセル総用量は同サイズの 6 Frのステントよりわずかに多いため、7 Frの

本品ステントが選択された。家畜ブタの腸骨大腿動脈に 4個の非重複ステントの留置を可能にす

るために、6 x 20 mmのステントサイズを選択した。これにより被験動物当たり 4個のステントを

用いて局所的な評価が可能となり、また、7 Frの本品ステントの最大の総用量にほぼ等しい全身

パクリタキセル総用量が得られる。 脈管ステントに対する過去の試験実績に基づき、試験検体数

は妥当であると判断した。

試験方法

2匹のリポタンパク値が正常な家畜ブタに、8個の本品ステントを留置した。各個体に対し左右の

腸骨大腿動脈にそれぞれ 2個のステントを留置した(各個体にパクリタキセルでコーティングし

たステントが 4 個留置された)。血漿中のパクリタキセル量(ng/mL)を評価するアッセイのために、

ステントの留置前、ステント留置後 10 分、20 分、30 分、40 分、50 分、1 時間、1.5 時間、2 時間、

3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、15時間、18時間、21時間、24時間に

血液検体が採取された。これらの時点は、全身(血漿中)パクリタキセル量のピーク値の決定を

容易にするために選択された。血漿検体中に存在するパクリタキセル量は、検証された BASi法

SAP # 820-0610(定量限界 0.5 ng/mL)にしたがって、LC/MS(高速液体クロマトグラフ質量分析)

によって測定した。

独立した認定獣医病理学者によって、肉眼による各被験動物の詳細な剖検も実施された。ステン

ト留置部位から下流方向へのパクリタキセル作用の可能性を見るために、後肢の筋肉を評価した。

同時にパクリタキセルの全身作用の可能性を探るため、各被験動物の肝臓、腎臓、骨髄に組織病

理学的検査も実施した。

判定基準

安全性の問題がないこと。

薬物動態を特性付ける。

判定基準の妥当性

判定基準は、機器の臨床使用における安全性保証のために重要と考えられる特性に基づいて設定

した。パクリタキセルなどの抗増殖性化合物は、局所的に血管壁の修復を遅らせる場合がある。

したがって、パクリタキセルでコーティングしたステントに関連する有害事象が起こらないこと

が重要である。パクリタキセルの薬物動態評価は、留置血管、留置部位から下流、および全身に

おけるパクリタキセル送達に関する重要な情報となる。

Page 214: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

288

結果および考察

<手技上の結果>

すべてのステント(8個中 8個)は問題なく留置できた。両方の個体(2匹中 2匹)は 24時間の

フォローアップを通して健康であった。準備、挿入、推進性、追従性、柔軟性、X線不透過性の

面で、デリバリーシステムに関する問題はなかった。すべての場合において、ステントは、ガイ

ドワイヤーに沿って留置部位まで容易に操作でき、容易に留置できた。血管造影によって、ステ

ントを留置したすべての血管において留置時およびフォローアップ時の両方で広く開存している

ことが示された。

<パクリタキセルのアッセイ結果>

血漿中のパクリタキセル量(ng/mL(血漿容量))を表 4.2.2-64および図 4.2.2-7に示す。血漿中パ

クリタキセル量の最大値は、ステント留置後 20分の 6.03 ng/mLであった。それ以降は次第に低下

し、ステント留置後 6時間には定量限界より低くなった(0.5 ng/mL以下)。

表4.2.2-64. 各時点での血漿中のパクリタキセル量 (ng/mL)(n=2)

時間 血漿中の平均パクリタキセル量(ng/mL) 標準偏差(ng/mL)

0*

0.000 0.000

10分 5.800 1.188

20分 6.030 1.867

30分 5.225 1.138

40分 4.105 0.559

50分 3.980 0.778

1時間 3.745 1.153

1.5時間 2.525 0.714

2時間 2.255 0.601

3時間 1.685 0.601

4時間 0.964 0.178

5時間 0.593 0.034

6時間 0.323 0.457

8時間 0.252 0.356

10時間 0.000 0.000

12時間 0.000 0.000

15時間 0.000 0.000

18時間 0.000 0.000

21時間 0.000 0.000

24時間 0.000 0.000 * 時間 0は、ステントを留置する前の血漿中パクリタキセル量を指す。

Page 215: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

289

図4.2.2.7 12時間までの各時点における血漿中のパクリタキセル量。10時間から24時間までのパク

リタキセル量は0 ng/mLであった。

<剖検および臨床的病理学の結果>

血液検体を用いて、分画を伴う総血球数算出、および通常の血清化学的分析を実施した。本試験

の個体については、ベースラインにおいて血液学または血清化学的検査の正常範囲(Merck

Veterinary Manual, 8th

Ed.から取得した値)から外れた値を示す個体はなかった。さらに、各時点に

おける血液学および血清化学的結果はベースライン、または正常範囲の値から大きく異ならなか

った。すなわち、血液学検査および血清化学的検査からは、パクリタキセルでコーティングした

ステントに伴う骨髄抑制、肝機能や腎機能の変化の徴候は見られなかった。

各被験動物の完全な剖検では、ステントに関連する重大な肉眼的所見または顕微鏡的所見は見ら

れなかった。これには、各被験動物の外皮系、筋骨格系、呼吸器系、心血管系、消化器系、泌尿

生殖器系、リンパ系、内分泌系、神経系の肉眼による検査、重大な肉眼的病変の組織病理学検査、

各被験動物の肝臓、腎臓、骨髄の組織病理学検査が含まれる。

結論

これらの結果は、指定された判定基準を満たす。この 24時間の試験において検査された、3

µg/mm2パクリタキセルでコーティングした本品ステントに伴う安全性の問題(早期死亡、被験動

物の健康問題、血栓、閉塞、辺縁効果による狭窄、または動脈瘤)はなかった。さらに、薬物動

態データは全身に送達されたパクリタキセル量が極微であり、ステントの留置後 10時間には血漿

中にパクリタキセルが残留していないことを示した。この薬物動態データと一致するように、包

括的な剖検、血液学検査および血清化学的検査はパクリタキセルコーティングの留置部位から下

流方向への作用または全身作用を示さなかった。

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290

15.家畜ブタにおける長型ステントおよびデリバリーシステムの急性期性能 (TS080131)

添付資料ホ-2-11

試験の目的

本試験の目的は、in vivo体内モデルでZilverステント(6 Frのステントおよびデリバリーシステム)

およびデリバリーシステムの急性期性能(デリバリー性能および留置)特性を評価することであ

る。機器の性能の評価項目は、準備、挿入、推進性、柔軟性、追従性、留置のしやすさ、X線不透

過性、補助デバイスとの関係、術後の点検であった。その他、これらの性能パラメータ、あるい

はステント留置後のデリバリーシステム抜去に関連する問題点があれば、観察事項に記録された。

さらに、留置前および留置後のステントの長さを測定し、また、ステントのトラッキングおよび

留置が血管の損傷(解離、仮性動脈瘤など)またはステントの破損(ストラットの破断など)を

もたらしたかどうかを評価するために、血管およびステントを体内および体外(取り出した後)

の両方で詳細に検査した。機器は、目的の臨床使用を模する条件下で評価された。

評価

検体

表4.2.2-65. ステントの検体

コーティング ステントのサイズ(mm) 検体数 被験動物数

なし 8 x 140 4 2*

* 1匹につき 2本のステントを留置した。

検体選択の妥当性

本試験は、最長のZilverステントおよびデリバリーシステムの性能を評価するために実施した。本

試験で選択されたステントサイズは、利用可能な最長のZilverステントを代表する。選択された検

体数は、ステントおよびデリバリーシステムの性能特性を評価するには充分である。

試験方法

2匹の家畜ブタ(約100 kg)に合計4個の8 x 140 mmのステントを留置した。各個体の左右の大腿深

動脈にそれぞれ1個のステントを留置した。各個体のトラッキング処置および留置処置は以下の通

りである。左浅大腿動脈遠位部からアクセスして、最初のステントデリバリーカテーテルを、左

腸骨大腿動脈を上がり、大動脈腸骨動脈の動脈弓を介して右腸骨大腿動脈を通し、右大腿深動脈

の留置に適した大きさの領域までトラッキングした。次に、左腸骨大腿動脈(アクセス部位の近

辺)までカテーテルを引き戻した。このトラッキング手順を繰り返した後、目的の留置部位まで

最終的に進めた。この間、ステントおよびデリバリーシステムは合計5回、大動脈腸骨動脈の動脈

弓を通過した(前進3回、後進2回)。トラッキング後、右大腿深動脈の標的部位でステントを展

開し、デリバリーシステムを被験動物から抜去した。

トラッキングおよび留置手順は、同様に2個目の検体を用いて、右浅大腿動脈遠位部からアクセス

し、前述したように大動脈腸骨動脈の弓部を介してトラッキングし、左大腿深動脈に留置した。

デリバリーカテーテルは、各被験動物の大動脈腸骨動脈の動脈弓を合計で10回通過した。

ステントの位置を記録し、留置前のステントの長さを評価するために、ステントをトラッキング

する前、およびステントを留置する直前にシネ血管造影を行った。

トラッキングおよび留置中、各デバイスについて準備、挿入、推進性、追従性、柔軟性、X線不

透過性、留置のしやすさ、補助デバイスとの相互作用、術後の点検(定義は本試験報告書に記載)

に関して定性的に評価した。その他、これらの性能パラメータ、あるいはステント留置後のデリ

バリーシステム抜去に関連する問題点があれば、観察事項に記録された。性能の各観察を 1~5ま

でのスケールで評価した(1:許容外、5:非常に優れている)。

トラッキングおよび留置後、留置されたステントの長さ、血管の開存性、血管の損傷(解離、仮

性動脈瘤など)、またはステントの破損(ストラット破断など)に関して、血管およびステント

をシネ血管造影法で検査した。

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291

急性期試験であるため、すべての被験動物は最終的な撮影直後に安楽死させた。安楽死後、腹部

大動脈と、トラッキングされステントを留置した腸骨大腿動脈を灌流固定した。次に、トラッキ

ングされステントが留置された動脈領域全体を摘出し、10%中性緩衝ホルマリン(NBF)内で浸

漬固定した。

ステントの破損(ストラット破断など)をさらに評価するために、血管からステントを取り除か

ないままで、各ステントの高解像度X線写真を直交する平面で撮影した。

X線撮影後、ステントのトラッキングおよび留置によって起こった可能性のある血管の損傷(解離、

仮性動脈瘤、血管内膜の損傷など)に関して、独立した認定獣医病理学者が各被験動物の腸骨大

腿動脈を検査した。血管の写真、観察、所見を含めた病理学者の報告書が、本試験報告書に含ま

れている。

判定基準

各検体の、臨床的に許容できる有用性を、試験方法で定義されたような5点評価スケールに基づい

て、インターベンション専門医が決定した。

判定基準の妥当性

判定基準は、機器の臨床使用の安全性保証のために重要と考えられる特性に基づいて設定した。

結果および考察

<機器の留置>

すべての検体(4個中4個)は困難または問題なくトラッキングでき、ステントを展開でき、デリ

バリーシステムを抜去できた。トラッキングされステントを留置した血管はすべて広く開存し、

活発な血流を維持していること、また、血管の損傷の形跡(血栓の沈着、解離、動脈瘤、造影剤

血管外漏出、痙攣、または陰影欠損)のないことが、シネ血管造影法によって示された。同様に、

シネ血管造影法からステントのいずれにも破損がないことが示された。ステントを留置した血管

を直交する平面から取った高解像度X線写真を、解剖顕微鏡で検査し、各ステントストラットの各

部において破損または破断の形跡がないかを個々に調べた。この検査では破断したストラットま

たはその他のステント損傷(変形など)は見られなかった。

<機器の性能>

前述したように、すべての検体は、困難または問題なく、トラッキングでき、ステントを展開で

き、デリバリーシステムを抜去できた。性能評価のスコアを表 4.2.2-66に示す。

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292

表4.2.2-66. 機器の性能の評価スコア

被験動物番号 837 838

オペレータ 「K」 「B」

標的動脈 右大腿深

動脈

左大腿深

動脈

右大腿深

動脈

左大腿深

動脈

準備 5 5 4 4

挿入 5 5 4 4

推進性 5 5 4 4

追従性 5 5 4 4

柔軟性 5 5 4 4

X線不透過性 5 5 4 4

留置のしやすさ 5 5 4 4

補助デバイスとの

相互作用 5 3 4 4

検査 5 5 4 4

注:1 = 「許容外」 2 = 「劣っている」 3 = 「普通」 4 = 「優れている」 5 = 「非常に優れてい

る」

両オペレータはすべての性能パラメータに関して、すべての検体を「普通」または「優れている」

として評価した。判定基準で決められているように、これらの結果は臨床使用に問題のないこと

を示す。

<留置されたステントの長さ>

ステントの展開前および展開後に撮像した X線写真から、4個のステントの長さを測定した。 測

定値を比較して、留置時のステントの長さの変化を算出した。これらのデータを表 4.2.2-67に示

す。負の値は、留置されたステントの長さが装填時の長さより短いことを示す。全体的には、4個

のすべてのステントで、留置されたステントの長さが装填された(留置前の)ステントの長さの

5%以内にあった。

表4.2.2-67. 装填されたステントと留置されたステントの長さの比率差

留置された側 個体 837 個体 838

左 +0.7% −4.9%

右 +3.9% −1.2%

<採取された血管の検査>

独立した認定獣医病理学者による検査では、留置位置またはトラッキング経路全体のいずれにお

いても、血管内に病変または損傷が発見されなかった。すなわち、トラッキング経路または留置

部位内の動脈のいずれにも、出血、フィブリンまたは血栓の沈着、解離、内腔の損傷、その他の

損傷の徴候が認められなかった。評価した血管に詳細な説明を付属した写真一式が、本試験報告

書に含まれた病理学者の報告書に記載されている。

結論

両オペレータが評価するところによれば、すべて(4個中4個)の8 x 140 mmのZilverステントおよ

びデリバリーシステムは、困難または問題なしにトラッキングでき、ステントが展開でき、デリ

バリーシステムを抜去できた。すべて、性能に関しては「普通」または「優れている」の評価を

達成し、判定基準を満たした。留置されたステントの長さは、4個のステントすべてにおいて、装

填された(留置前の)ステントの長さの5%以内にあった。動脈の弓部を超えて反対側に達するア

プローチによって、各被験動物で両側に複数回のトラッキング(大動脈腸骨動脈の動脈弓を介し

て合計10回のトラッキングを含む)を行ったにもかかわらず、シネ血管造影からは、トラッキン

グされステントを留置した血管は広く開存しており、活発な血流があり、血管の損傷の形跡(血

栓の沈着、解離、動脈瘤、造影剤の血管外漏出、痙攣、陰影欠損)がないことが示された。また

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293

シネ血管造影法および高解像度X線写真からは、トラッキング後、留置されたステントにストラッ

トの破断またはその他の破損は示されなかった。さらに、トラッキング後ステントを留置した血

管全体について獣医病理学者が検査を行ったが、留置部位、トラッキング経路のいずれでも損傷

の形跡は見られなかった。すなわち、出血、フィブリンまたは血栓の沈着、解離、内腔の損傷、

その他の損傷の徴候が認められなかった。結論として、本試験は、生体内モデル内における140

mm長のZilverステントおよびデリバリーシステムのトラッキングおよび留置に問題がないことを

示した。

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294

4.2.3 効能を裏付ける試験

総括

表 4.2.3-1に、機器の効能の裏付ける試験として実施した、ラディアルフォース試験の概要を示

す。本申請品は設定した判定基準に従って試験に合格した。

表 4.2.3-1. 効能を裏付ける試験

試験名称 方法 判定基準 資料番号 結果 試験施設

ラディアル

フォース

ステントが拡張する際

に発生するラディアル

フォースを、直径の関

数として測定した。 こ

れは、検体を公称径に

等しい初期直径から圧

縮(装填)し、拡張

(抜出)させてその公

称径にもどすことによ

って得られる。

ステントは、操作時

の直径(ステントの

公称径よりも@ mm

小さい)でラディア

ルフォースが、****

N/mmから

**** N/mmの間でな

ければならない。

ホ-1-74

ホ-1-75

合格 @@**

::::::**:***:*:

結論:

ラディアルフォース試験、ならびに 4.3「臨床試験」に記載する主要臨床試験および単一施設試

験のデータは、薬剤溶出型ステントとしての機器の効能を裏付ける。ラディアルフォース試験

の要約は、4.2.1.5「機械的安全性」に記載する。

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295

4.2.4使用方法を裏付ける試験

総括

表 4.2.4-1に、本申請品の使用方法を裏付ける試験の概要を示す。本申請品は設定した判定基準

に従ってすべての試験に合格した。

表 4.2.4-1. 使用方法を裏付ける試験

試験名称 方法 判定基準 資料番号 結果 試験施設

1. 展開および寸

法に関する試

験:デリバリー

システムの寸法

確認

較正済みのレーザー

マイクロメーターを

用いて、フレキサー

シース径の寸法測定

を行った。

デリバリーシステムの形

状(フレキサーシースの

最大外径)は 7 Frで****

mm(*:*** inch)以下であ

り、6 Frで**** mm

(***** inch)以下である

こと。

ホ-1-76

ホ-1-78

合格 @`@

*:*:*:::::

*:*:

2. 展開および寸

法に関する試

験:展開に要す

る力

取扱説明書に従って

ステントを展開した

後、7 Frの場合は定性

的に、6 Frの場合は較

正済みのフォースゲ

ージで、展開に要す

る力を定性的に評価

した。

7 Frの場合、フレキサーシ

ースはガイドワイヤーに

沿って容易に進めること

ができ、展開時に抜去す

る時の引き戻し抵抗は中

程度以下であること。6 Fr

の場合、ステントの展開

に要する力は** N 未満で

あること。

ホ-1-76

ホ-1-79

合格 @`@

*:*:*:::::

*:*:

3. 展開および寸

法に関する試

験:アクセスの

容易さおよび展

開の正確性

取扱説明書に従って

ステントを展開した

後、展開の容易さを

定性的に記録し、較

正済みのコンピュー

タシステムを用いて

ステント展開の正確

さを測定した。

ステントおよびデリバリ

ーシステムは容易に進め

ることができ、X 線透視

下で視認でき、かつステ

ント展開が成功でき、そ

の後、容易にデリバリー

システムを抜去できるこ

と。展開後にステント

は、遠位側の X 線不透過

性ターゲットマーカーの

± * mm以内にあること。

ホ-1-76

ホ-1-78

合格 @`@

*:*:*:::::

*:*:

4. 展開および寸

法に関する試

験:展開前後に

おけるステント

の長さの変化

取扱説明書に従って

ステントを展開した

後、較正済みのコン

ピュータ制御 X 線撮

影システムを用い、

展開前、および展開

後のステント長を測

定し、長さの変化を

計算した。

ステントはいずれも展開

前後におけるステント長

の変化が ± **%以内で、

かつ展開後ステント長が

ラベル表示の公称長の

+ * mm~‐ * mm 以内であ

ること。

ホ-1-76

ホ-1-78

合格 @`@

*:*:*:::::

*:*:

Page 222: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

296

試験名称 方法 判定基準 資料番号 結果 試験施設

5. 展開および寸

法に関する試

験:ステントの

直径と均一性

取扱説明書に従って

ステントを展開した

後、光学顕微鏡と較

正済みのコンピュー

タ測定装置を用いて

ステントの直径およ

び均一性を評価し

た。

ステントの直径は5 mm~9

mm径のステントで公称径

の ± *** mm以内、10 mm

径のステントでは公称径

の ± *** mm以内であるこ

と。直交方向におけるス

テントの均一性の範囲、

および特定のステントサ

イズにおける均一性の最

大変動はすべて、*%以内

でなければならない。

ホ-1-76

ホ-1-78

合格 @`@

*:*:*:::::

*:*:

6. 展開および寸

法に関する試

験:ステントの

完全性

取扱説明書に従って

ステントを展開した

後、光学顕微鏡を用

いてステント表面を

検査した。

ステント展開およびデリ

バリーシステム抜去後、

ステントに損傷がないこ

と。特に、** µmを超える

亀裂がないこと。

ホ-1-77

ホ-1-78

合格 @`@

*:*:*:::::

*:*:

結論:

展開および寸法に関する試験、ならびに 4.3「臨床試験」に記載する主要臨床試験および単一施

設試験のデータは、薬剤溶出型ステントとしての使用方法を裏付ける。展開および寸法に関す

る試験の要約は、4.2.2「機器の性能を裏付ける試験」に記載する。

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297

4.3 臨床試験の試験成績

臨床試験の試験検体について

「販売名:Zilver PTX 薬剤溶出型末梢血管用ステント」(以下、「Zilver PTX ステント」)は、パ

クリタキセルで外側表面がコーティングされている、自己拡張型のナイチノール製ステントであ

る。本品は、4mm~9mm の基準血管径を有する膝上大腿膝窩動脈の症候性血管疾患の治療に用い

ることを意図したものである。本品は、6Fr の製品を 2009 年 7 月に、続いて 7Fr の製品を 2010 年

3 月に CE マークを取得した。本品の安全性及び有効性を示すために、施設共同の前向き無作為化

対照試験(米国 IDE:#G030251。本申請書に添付資料として添付)、及び前向き非無作為化非盲

検の多施設共同単群試験(レジストリ試験)が実施された。これらの臨床試験にて使用されたの

は 7Fr の製品であるが、6Fr と 7Fr の製品の同等性から、7Fr における臨床試験データをもって、

6Fr の製品における安全性及び有効性も担保できると考えた。6Fr と 7Fr の製品は、ステントの設

計、薬剤(パクリタキセル)、および薬剤のコーティング過程が同一であり、さらに出荷判定の

基準も同一である。ステントの寸法に関しては、6Fr の製品が 7Fr の製品に比べ、より小さい直径

(5mm径の製品が含まれる)、及びより長いステント長(120cmまで)を有し、また、ストラッ

トが若干狭まっている。この違いが安全性及び有効性に及ぼす影響を評価するため、添付資料概

要 4.2 に示した各非臨床試験(MRI評価、ラディアルフォース、引張強度試験、有限要素解析、

疲労特性試験、留置試験など)において検証し、これらの結果から、6Fr と 7Fr の製品は安全性及

び有効性に関して同等であると示された。

なお、腸骨動脈への使用に Zilver のベアメタルステントが 2006 年に米国で承認された際は、同様

の論理により 6Fr 製品の安全性及び有効性が 7Fr 製品に対する臨床試験によって担保され、6Fr と

7Fr の製品両方について承認を受けた。また、本品を使用した治験の結果は、約 10 年にわたるベ

アメタルステントの臨床経験とも一致している。

6Fr と 7Fr のステントにおける寸法の違いが薬剤のコーティングに及ぼす影響についても、検証さ

れた。前述の 6Fr におけるより小さい直径(5mm)、及びより長いステント長(最長で 120mm)

の製品においても、用量密度は 7Fr のステントと同じ 3µg/mm2である。ストラットが狭まったこ

とによる表面積減少の影響から、6Fr のステントは 7Fr のステントに比べ、同サイズ(直径×長

さ)におけるパクリタキセル総量が少ない。6Fr の製品における薬剤の安全性は、同じ用量密度を

もつ 7Fr の製品と同じく、安全である。6Fr 製品において、80mmまでのステント長の安全性及び

有効性は、7Fr のステントにおける臨床試験によって担保される。さらに、臨床試験においては重

複した 7Fr ステントについて最長 140mmまで検証し、これにより 6Fr 製品における最長のステン

ト長(120mm)の安全性及び有効性を担保した。6Fr において 100mmおよび 120mmのステント長

を提供することで、ステントの重複を減らすことができる。これは、ステントの重複、すなわち

金属の重複がもたらす生理的反応を減らすことで、患者の転帰の向上に役立つと考えられる。さ

らに、文献により、ステントの重複を減らすことは浅大腿動脈におけるステントの耐久性に貢献

することが示されている。

臨床評価を構成する臨床試験について

本申請に添付資料として添付する多施設共同の無作為化対照試験(IDE)は本邦の GCP に準拠す

るとともに、米国 21 CFR 812 における、治験医療機器の適用免除(Investigational Device

Exemption)に沿って実施され、米国 GCP に遵守して行われた試験である。本臨床試験は、また

21CFR 56 における治験審査委員会の指示、および 21 CFR 50 のインフォームド・コンセント(治

験同意)に沿って実施された。本臨床試験は無作為化試験であり、膝上大腿膝窩動脈の狭窄部又

は再狭窄部の治療において、本品の安全性が経皮的血管形成術(PTA)に対して同等又は優越で

あること、またそれに加えて本品の有効性が PTA に対して優越であることを示すために行われた。

本臨床試験の患者の登録時及び 1年フォローアップ時までのデータは、本品の安全性及び有効性

を評価するための臨床的証拠となる主要な資料であり、添付資料概要 4.3.1 および 4.3.2 に記載さ

れる。

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298

その他の臨床的評価(本臨床試験の 1 年フォローアップ以降の結果、レジストリ試験、および無

作為化対照試験及びレジストリ試験で収集したデータを用いた補足的かつ総合的な安全性解析)

は、安全性及び有効性を確認するための補足的な証拠であり、添付資料概要 4.3.3 その他の臨床試

験に示す。

なお、この前向き非無作為化非盲検試験(レジストリ試験)は、ISO14155 に基づいて実施されて

いる。

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299

4.3.1 臨床試験成績

総括

Cook Incorporated、および Cook Ireland, Ltd.が製造する本申請品の臨床上の安全性及び有効性を

評価するために実施した臨床試験を以下に示す。

臨床試験の

種類

本邦および米国の GCP に遵守した、多施設共同の前向き無作為化対照試験

(日本、米国およびドイツにおいて患者を登録)

対象 4~9 mmの基準血管径を有し、以前にステント治療を受けたことがなく、膝

上大腿膝窩動脈に狭窄部又は再狭窄部(長さ 14cm以下)を有する患者 479 名

(被験者の組み入れ基準については 4.3.1.1 を参照)

症例数 本臨床試験では、基準血管径 4mm~9mmの膝上大腿膝窩動脈に狭窄又は閉塞

(アテローム性動脈硬化症:長さ 14cm以下)を有する患者を対象とした。55

施設で PTA 群 238 名、Zilver PTX ステント群 241 名、合計 479 名の患者を登

録した。Zilver PTX ステント群の患者 5 名はライブ症例として登録され(無作

為割付は実施していない)、Intent-to-treat (ITT)解析集団又はプロトコール

に基づく集団としてではなく As-treated 集団として解析した。浅大腿動脈にお

ける治療の転帰は、狭窄部位の長さに関係することが以前から知られている

ため、まず長さ 7cm以下の狭窄を有する 60 人の患者について、本品のステン

ト 1 本で治療した。この第 1 相試験の 6 ヶ月におけるフォローアップデータ

から、本品に関する安全性の問題はなかったため、長さ 14cm以下の狭窄を有

する 419 人の患者を登録、治療した。早期 PTA 不成功は術後によく見られる

が、本治験においても対照群のうち 120 人について発生した。これらの患者

は Zilver PTX ステント群又はベアメタルステント群のいずれかに無作為に再

割付された(図 4.3.1-1)。

使用方法 Zilver PTX ステントによる末梢インターベンション(治療群)、ベアメタルス

テントにおける末梢インターベンション(BMS 群。対照群)又は経皮的血管

形成術(PTA 治療。対照群)。

検査・観察

項目

病歴および身体検査を含む臨床診断、歩行障害質問票(WIQ)、Rutherford 分

類、ABI、EQ-5D、全血球算定と血液生化学、血管造影検査、X 線検査、カラ

ードップラー検査、血管内超音波 (IVUS)検査、薬物動態サブスタディのた

めの血液解析。

使用期間 本品は生涯にわたって埋め込まれる埋め込み機器である。

治験期間 2005 年 3 月 21 日~2009 年 10 月 21 日(1 年間の安全性及び有効性に関するデ

ータ)

代表施設名 Stanford University Medical Center 他、全 55 の医療施設(各医療施設の名称につ

いては表 4.3.1-1 に示す)

資料番号 添付資料チ

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300

* 米国における医学生涯教育カンファレンスの一環として Zilver PTX 群に登録された、5 名のライ

ブ症例患者を含む。なお、予め規定された通りこの 5 名は PP 解析および ITT 解析から除外し

ている。

図 4.3.1-1 臨床試験のフローチャート(一次無作為割付時の登録患者数(ITT)、1年フォローア

ップ時における原因を問わない死亡数、脱落数及び追跡不能患者数を含む。第 1 相登録

は[]内に示す。)

登録

1次無作為割付

n = 479 人* [n = 60]

PTA 群

n = 238 人 [n = 32]

Zilver PTX ステント群

n = 241 人 [n = 28]

(1 年時フォローアップまでに 9

人死亡、5人脱落、5人追跡不能)

PTA 成功

n = 118 人 [n = 17]

(1年時フォローアップまでに 3

人死亡、5人脱落、1人追跡不能)

PTA 不成功

(早期 PTA 不成功)

2 次無作為割付

n = 120 人 [n = 15]

追加ステント留置:

ベアメタルステント

n = 59 人 [n = 7] (1 年時フォローアップまでに 1

人死亡、4人脱落、1人追跡不能)

追加ステント留置:

Zilver PTX

スクリーニング n = 2713 人

無作為化対照試験 (IDE G030251)

n = 61 人 [n = 8] (1 年時フォローアップ

までに 2人脱落)

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301

表 4.3.1-1 施設名称、所在地、治験責任医師、患者数

試験実施施設(施設番号)

所在地 治験責任医師

患者数

対照群 治療群 合計

Stanford University Medical Center (***)

カリフォルニア州スタンフォード Daniel Sze, MD 1 1 2

Tri-City Medical Center (***)

カリフォルニア州オーションサイド Richard Saxon, MD 9 8 17

MidWest Cardiology Research

Foundation (***)

オハイオ州コロンバス

Gary Ansel, MD 2 8 10

St. Vincent Hospital (***)

インディアナ州インディアナポリス Kannan Natarajan, MD 3 2 5

Sacred Heart Medical Center (***)

ワシントン州スポーケイン Rodney Raabe, MD 1 1 2

Baptist Cardiac and Vascular Institute

(***)

フロリダ州マイアミ

Barry Katzen, MD (initial

60 patients)

James Benenati, MD 1 3 4

EMH Regional Medical Center (***)

オハイオ州エリリア Naim Farhat, MD 3 2 5

Western Pennsylvania Hospital (***)

ペンシルバニア州ピッツバーグ Gordon K. McLean, MD 1 2 3

William Beaumont Hospital (***)

ミシガン州ロイヤルオーク Paul Bove, MD, PhD 0 3 3

OSF Saint Francis Medical Center (***)

イリノイ州ピオリア H. Bob Smouse, MD 8 7 15

University of Virginia Medical Center

(***)

バージニア州シャーロッツビル

John Angle, MD 4 6 10

Lenox Hill Hospital (***)

ニューヨーク州ニューヨーク Gary Roubin, MD, PhD 13 13 26

University of Toledo Medical Center

(***)

オハイオ州トリド

Mark Burket, MD 13 12 25

Cleveland Clinic (***)

オハイオ州クリーブランド Gregory Pierce, MD 4 0 4

The Care Group (***)

インディアナ州インディアナポリス Gregory Elsner, MD 7 8 15

New York University Medical Center

(***)

ニューヨーク州ニューヨーク

Thomas Maldonado, MD 2 3 5

Massachusetts General Hospital (***)

マサチューセッツ州ボストン Christopher Kwolek, MD 1 0 1

Washington Hospital Center (***)

ワシントンDC

Lowell Satler, M.D. (initial

60 patients)

Nelson Bernardo, MD 1 1 2

St. Luke’s Medical Center (***)

ウィスコンシン州ミルウォーキー Mark Mewissen, MD 2 4 6

Ochsner Clinic Foundation (***)

ルイジアナ州ニューオリンズ John P. Reilly, MD 1 3 4

Prairie Heart Medical Center (***)

イリノイ州スプリングフィールド John Gill, MD 1 2 3

Pinnacle Health (***)

ペンシルバニア州ハリスバーグ Rajesh M. Dave, MD 6 5 11

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302

試験実施施設(施設番号)

所在地 治験責任医師

患者数

対照群 治療群 合計

Michigan Vascular Center (***)

ミシガン州フリント Robert Molnar, MD 6 4 10

Methodist Hospital (***)

テキサス州ヒューストン Brian Walton, MD 2 0 2

New York Presbyterian Hospital –

Cornell (***)

ニューヨーク州ニューヨーク

Nicholas Morrissey, MD 0 2 2

New York Presbyterian Hospital –

Columbia (***)

ニューヨーク州ニューヨーク

Nicholas Morrissey, MD 3 2 5

Mayo Clinic (***)

ミネソタ州ローチェスター Sanjay Misra, MD 2 0 2

Greenville Memorial Hospital (***)

サウスカロライナ州グリーンビル Bruce Gray, DO 2 4 6

Montefiore Medical Center (***)

ニューヨーク州ニューヨーク Evan Lipsitz, MD 4 0 4

University of Pennsylvania (***)

ペンシルバニア州フィラデルフィア Edward Woo, M.D 2 2 4

El Camino Hospital (***)

カリフォルニア州マウンテンビュー James Joye, DO 2 2 4

Carolinas Medical Center (***)

ノースカロライナ州シャーロット Michael Rinaldi, MD 4 5 9

LDS Hospital (***)

ユタ州ソルトレイクシティ Colleen Harker, MD 2 1 3

JFK Medical Center (***)

フロリダ州アトランティス Gustavo Cardenas, MD 5 5 10

South Carolina Heart Center (***)

サウスカロライナ州コロンビア Patrick Hall, MD 5 4 9

Arizona Heart Institute (***)

アリゾナ州フェニックス Venkatesh Ramaiah, MD 4 4 8

Beth Israel Deaconess (***)

マサチューセッツ州ボストン Marc Schermerhorn, MD 1 2 3

Orlando Regional Medical Center (***)

フロリダ州オーランド Charles Thompson, MD 2 1 3

Good Samaritan Hospital (***)

オハイオ州シンシナティ Patrick Muck, MD 4 4 8

Christus of Saint Patrick (***)

ルイジアナ州レイクチャールズ J. King White, MD 19 21 40

University of Florida College of Medicine

(***)

フロリダ州ゲインズビル

Robert Feezor, MD 4 6 10

St. Luke’s Roosevelt Hospital Center

(***)

ニューヨーク州ニューヨーク

John Lantis, MD 4 4 8

Saint Luke’s Hospital (***)

ミズーリ州カンザスシティ Steven Laster, MD 2 5 7

Bayview Medical Center (***)

メリーランド州ボルチモア Mahmoud Malas, MD 4 4

1 8

Memorial Health Jacksonville (***)

フロリダ州ジャクソンビル Yazan Khatib, MD 12 13 25

Peripheral Vascular Associates (***)

テキサス州サンアントニオ Seth Fritcher, MD 5 4 9

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303

試験実施施設(施設番号)

所在地 治験責任医師

患者数

対照群 治療群 合計

Piedmont Hospital (***)

ジョージア州アトランタ Bhagat Reddy, MD 7 6 13

Heart Center Leipzig (***)

ドイツ、ライプツゥヒ Dierk Scheinert, MD 1 1 2

Herz Zentrum (***)

ドイツ、バート・クロツィンゲン Thomas Zeller, MD 17 15 32

Gemeinschaftspraxis (***)

ドイツ、ライプツゥヒ Christof Ruhlmann, MD 1 0 1

Universitatsklinikum Magdeburg (***)

ドイツ、マグデブルク Jens Ricke, MD 1 0 1

東京慈恵会医科大学付属病院 (***)

東京都港区 大木隆生, MD * ** **

京都大学医学部付属病院 (***)

京都府京都市 木村剛, MD * * *

奈良県立医科大学付属病院 (***)

奈良県橿原市 吉川公彦, MD * * **

小倉記念病院 (***)

福岡県北九州市 横井宏佳, MD * * **

合計 *** *** *** 1 一人の患者が当初施設番号 441 において、左肢の治療のため、対照群に無作為割付された。後にこの

同患者は施設番号 481 にて右肢の治療のため再度登録され、治療群に無作為割付された。最終的にこ

の患者は施設番号 481 の登録から除外され、治療された両肢は ITT 解析集団に含めるため、対照群に

割付された。このため、最終的な合計登録患者数は 480 名ではなく、479 名である。

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304

4.3.1.1 臨床試験の概要

試験目的 本臨床試験の目的は、膝上大腿膝窩動脈の狭窄部又は再狭窄部の選択的療法

において、本申請品における安全性及び有効性を、経皮的血管形成術

(PTA)と比較することである。

試験の種類 本邦の GCP および米国の GCP に遵守した、多施設共同の前向き無作為化対

照試験

対象選択基準 被験者は、以下に示す項目の全てに当てはまらなければならない。

インフォームドコンセントに署名と日付を記入している患者。

膝上大腿膝窩動脈にある狭窄または閉塞(アテローム性動脈硬化症:長

さ 14cm以下1)が、該当する対象選択基準の全てに当てはまり、なおか

つ該当する除外基準のいずれにも当てはまらない患者(1 肢に 1 病変、患

者 1 人 2 病変まで)。

基準血管径が 4-9 mm2の患者。

血管造影により 50%を超える新/再狭窄があることが確認されていて、

過去に治験対象病変部にステント治療を受けたことがない患者。

Rutherford 分類で 2 以上の末梢動脈疾患の症状がある患者。

安静時の ABI値が 0.9 未満、または安静時 ABI値が正常で運動負荷時

ABI 値が異常。非圧縮性血管(ABI > 1.2)の TBI値が 0.8 未満の患者。

治療直後、治療後 6 ヵ月、1年、2 年、3 年、4 年、5 年に臨床状態検査お

よび超音波検査を受けることに同意している患者。

治療直後、治療後1年、3 年および 5 年に X 線検査を受けることに同意し

ている患者 3。

血管造影および/または IVUS サブスタディの一環として、必要に応じ

て、治療直後、治療後1年に血管造影および IVUS を受けることに同意し

ている患者 3。

治療後 1 ヵ月、3 ヵ月、9 ヵ月、18 ヵ月に電話による追跡調査を受けるこ

とに同意している患者 3。 1 第 1 相試験での 60 人の患者については、7cm以下である。

2 基準血管径(病変部の近位または遠位にある、正常な血管部分の直径)を計

測し、その最大血管径を基に適切なステントサイズを選択する。 3 第 1 相試験での 60 人の患者については、6 ヶ月時点での X 線検査、IVUS、

血管造影は必須事項である。

除外基準 被験者は、以下に示す項目のいずれにも該当してはならない。

18 歳未満の患者(本邦の場合、20 歳未満の患者)

妊娠中または授乳中の患者

同時に他の治験薬または治験機器の臨床試験に参加している患者。以前

に臨床試験に参加している場合は、本治験に参加する 30 日前までに、主

要評価項目のフォローアップを終えていなければならない。

流入血管(近位同側の動脈、腸骨大腿動脈または大動脈の病変部)に高度

の狭窄 (> 50%)または閉塞があり、以前に治療の成功をみていない(残

存狭窄率が 30%未満のとき成功とみなす)患者

本治験前 30 日以内に、下肢の動脈にインターベンションを受けたが成功

していない(治療後の、治療部分の残存狭窄率が 30%以上)患者

本治験前 30 日以内に、下肢の動脈のアクセス部位に合併症を有する患者

治療後 30 日以内に手術やインターベンション処置を受ける予定である患

1 年後のフォローアップまでの間に、治療肢の動脈にインターベンション

処置を受ける予定がある患者

本治験対象部位に以前ステント治療を受けたことがある患者

余命 1 年未満と診断された医学的症状または疾患がある患者。それによ

り治験実施計画書に適合しない、またはデータ解析に悪影響を及ぼす

Page 231: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

305

左心室駆出分画率(Ejection Fraction)が 30%未満の患者

NYHA 分類で 3 または 4 の患者

過去 90 日以内に心筋梗塞を発症した患者

血清中クレアチニン濃度が>2.0 mg/dL 、慢性腎不全、透析または腹膜透

析を受けている患者

抗血小板治療や抗凝固療法が禁忌となっている患者

出血性疾患または凝血障害の病歴がある、または輸血を拒否している患

アスピリン、抗血小板剤、造影剤、パクリタキセル、ニチノールに過敏

性または禁忌で、治験責任・分担医師が前投与できる適薬がないと判断

した患者

4 cmを超える大動脈瘤(治療済または未治療)の病歴がある患者

2 cmを超える腸骨動脈瘤(治療済または未治療)の病歴がある患者

狭窄率が 50%以下の流出開存血管が 1 つもない患者

病変部に未治療の血栓があることが血管造影で確認された患者

治験対象血管に吻合部のあるバイパスグラフトがある患者

アテローム切除術(または焼灼機器)、カッティングバルーン、冷却バ

ルーン、その他最新機器を使用してステントを挿入する必要がある病変

部がある患者

未治療の全身または局所感染がある、または、治療前 10 日以内に感染の

治療を受けた患者

症例数 合計患者数 479 人。Zilver PTX ステント群(治療群)241 人、PTA 群(対照

群)238 人。

症例数設定根拠:

本臨床試験における症例数は、本申請品の安全性及び有効性を示すために

必要とされる症例数を基に設定された。PTA(現在、症候性末梢血管疾患治

療の標準的な方法と考えられている)を研究した複数の研究成績から、この

治療法の成功率は高い(90%を上回る)が、長期開存率についてはばらつき

があることがわかっている。 現時点での1年の1次開存率の平均値はおよそ

60%から 70%であるが、開存率は病変部の長さによって大きく異なる[1-6]。

PTA 治療後1年の1次開存率を**%と仮定し、パクリタキセル溶出ステント

の埋め込み後1年の1次開存率を**%(15 ポイントのエフェクトサイズ:有

効度)と仮定するとα= 0.05、検出力**%、両側χ2検定で有意差を示すため

の治療群あたりの必要サンプル規模は*** 人となる。しかし、潜在的な共分

散(糖尿病がみられる/みられない、新/再狭窄、閉塞/狭窄)の重要性を検

証するためには、このサンプル規模では十分でない可能性がある。

これらの共分散の影響を考慮すると、文献によれば、病変部と閉塞部の間

を30/70に分割するのが上記共分散内のあらゆる患者の比率の中で最大差であ

ると思われる[2]。しかしながら、二値共変量の水準間での開存率は異なる可

能性があるものの、あらゆる潜在的な共分散と治療選択肢の間での相互作用

は発生しないと予想される。従って、下記検出力解析において、治療効果

は、1年の1次開存率がPTA群で**%、ZSFA 群で**%と推測され、この差は

二値化共分散の水準によらないと推測された。

O’Brien と Castelloe が提唱した典型データの方法を用い、ロジスティック

回帰モデルの検出力解析を行った [7]。このロジスティック回帰モデルには、

治療効果と3つの別の二値共変量が含められた。この想定下で、自由度4のモ

デルχ2検定統計量により、**%の検出力を得るのに必要なサンプル規模は

**@人であった。Cook社は、フォローアップできない患者が出ることを想定

し、各治療群240人、合計480人を目標症例数とした。

1. Mewissen MW. Nitinol stents in the femoropopliteal arterial segment.

Page 232: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

306

Endovascular Today 2003;2:29-34.

2. Cejna M, Thurnher S, Illiasch H, et al. PTA versus Palmaz stent placement

in femoropopliteal artery obstructions: a multicenter prospective randomized

study. JVIR 2001;12(1):23-31.

3. Deutschmann HA, Schedlbauer P, Bérczi V, et al. Placement of Hemobahn

stent-grafts in femoropopliteal arteries: early experience and midterm results

in 18 patients. JVIR 2001;12:943-950.

4. Lugmayr HF, Holzer H, Kastner M, et al. Treatment of complex

arteriosclerotic lesions with nitinol stents in the superficial femoral and

popliteal arteries: a midterm follow-up. Radiology 2002;222:37-43.

5. Dormandy JA, Rutherford RB. Management of peripheral arterial disease.

J Vasc Surg 2000;31(1 Part 2):S1-S288.

6. Silver MJ, Ansel GM. Femoropopliteal occlusive disease: diagnosis,

indications for treatment and results of interventional therapy. Cathet

Cardiovasc Intervent 2002;56:555-561.

7. O’Brien, R, Castelloe J. Sample-size analysis in study planning. ASA

Continuing Education Program, Joint Statistical Meetings, San Francisco,

August, 2003.

使用方法 治療群は、使用説明書(IFU)に記載されている使用方法に従い、本申請品を

用いて治療された。対照群は経皮的血管形成術(PTA)を受けた。早期 PTA

不成功とみなされた患者は、再度無作為割付して薬剤コーティングしていな

い ZSFA (ベアメタルステント、BMS)、または本申請品での治療を受け

る。PTA を受けてから 1 年以内に晩期 PTA 不成功とみなされた患者は、本申

請品での治療を受けることができる。

使用期間 本品は生涯に渡って埋め込まれる埋め込み機器である。

観察期間 本臨床試験においては、主要フォローアップ期間(治療直後、治療後 1 ヵ

月、3 ヵ月、6 ヵ月、9 ヵ月、1年)および長期フォローアップ期間(2 年、3

年、4 年、5 年)を設けた。本申請品の安全性及び有効性を裏付ける、1 年間

までのフォローアップは、完了している。長期フォローアップ期間に関して

は継続中であり、この初期結果を 4.3.3 にて示す。

併用療法 抗血小板療法を行うため、治療前最低 24 時間に患者にクロピドグレル

(Plavix®等)の投与を開始するか、または治験中にクロピドグレルの負荷用

量法を行う。また、アスピリンを無期限に投与するほかに、治療後最低 60 日

間クロピドグレルを投与する。 本邦では、クロピドグレルの代替としてチク

ロピジンを投与することが認められている。

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307

検査・観察

項目及び時

以下に、治験実施計画のフローチャートを示す。

症候性狭窄または閉塞(アテローム性動脈硬化症)が認められるなど、

選択・除外基準に適合する患者

インフォームドコンセント取得

基準評価(WIQ, EQ-5D, ABI, Rutherford, 全血球算定 , 血液生化学) 1

血管造影および病変部の長さに基づいた 2カテゴリー化

無作為割付

PTA群 Zilver PTXステント群

成功 早期 PTA不成功 または

晩期 PTA不成功

血管造影および IVUS

(ステント埋め込み後);

血管造影/IVUSサブスタディ (n = 40) 2

治療後:カラードップラー、ABI、

血清中クレアチニン

治療後:カラードップラー、X線、ABI、全血球算

定、血液生化学;PKサブスタディ(n = 44) 4

1ヵ月:電話による追跡調査

(投薬・入院・病状の評価)

1ヵ月:電話による追跡調査

(投薬・入院・病状の評価)

3ヵ月:電話による追跡調査

(投薬・入院・病状の評価)

3ヵ月:電話による追跡調査

(投薬・入院・病状の評価)

6ヵ月:カラードップラー、臨床 F/U (WIQ、EQ-

5D、ABI、Rutherford)

6ヵ月:カラードップラー、臨床 F/U (WIQ、EQ-

5D1、ABI、Rutherford)、全血球算定、血液生化学 3

9ヵ月:電話による追跡調査

(投薬・入院・病状の評価)

9ヵ月:電話による追跡調査

(投薬・入院・病状の評価)

1年:カラードップラー、臨床 F/U (WIQ、EQ-

5D1、ABI、Rutherford);

血管造影/IVUSサブスタディ (n = 40)

1年:カラードップラー、X線、臨床 F/U (WIQ、

EQ-5D、AB、Rutherford)、全血球算定、血液生化学;

血管造影/IVUSサブスタディ(n = 40)

1 始めに登録された60人の患者に関しては、EQ-5Dは要求事項ではない。 2 始めに登録された60人の患者に関しては、IVUSは要求事項である。

3 始めに登録された60人の患者に関しては、血管造影、IVUS、およびX線検査は

要求事項である。 4 本邦では、チクロピジンを投与された患者は、2週間おきに全血球数を測定し

た。

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308

以下に、早期 PTA 不成功とみなされた患者のフローチャートを示す。

早期 PTA 不成功 1

バルーン再治療ガイドライン:最低 1回、バルーン拡張を 2~8 atm で 2~3分間行う

無作為割付

ベアメタルステント Zilver PTX ステント

血管造影(ステント留置後) 血管造影(ステント留置後) 2

処置後:カラードップラー、X線、ABI、

血清クレアチニン

処置後:カラードップラー、X線、ABI、

全血球算定、血液生化学 5

1ヵ月:電話による追跡調査

(投薬・入院・病状の評価)

1ヵ月:電話による追跡調査

(投薬・入院・病状の評価)

3ヵ月:電話による追跡調査

(投薬・入院・病状の評価)

3ヵ月:電話による追跡調査

(投薬・入院・病状の評価)

6ヵ月:カラードップラー、臨床 F/U (WIQ、EQ-

5D、ABI、Rutherford) 4

6ヵ月:カラードップラー、臨床 F/U (WIQ、EQ-

5D3、ABI、Rutherford) 全血球算定、血液生化学

9ヵ月:電話による追跡調査

(投薬・入院・病状の評価)

9ヵ月:電話による追跡調査

(投薬・入院・病状の評価)

1年:カラードップラー、X線

臨床 F/U (WIQ、EQ-5D3、ABI、Rutherford)

1年:カラードップラー、X線、

臨床 F/U (WIQ、EQ-5D3、ABI、Rutherford)、

全血球算定、血液生化学

1 PTA不成功の結果、再手術にステントが3本以上必要になる患者(始めに登録さ

れた60人の患者に関しては、2本以上)については、処置不成功とみなされ、実

施医療機関の標準的治療法で治療するものとする。 2 始めに登録された60人の患者に関しては、IVUSは要求事項である。

3 始めに登録された60人の患者に関しては、EQ-5Dは要求事項ではない。 4 始めに登録された60人の患者に関しては、血管造影、IVUS、およびX線検査は

要求事項である。 5 本邦では、チクロピジンを投与された患者は、2週間おきに全血球数が上昇して

いた。

以下に、治療後1年以内に晩期PTA不成功とみなされた患者のフローチャートを

示す。

晩期 PTA不成功 1

Zilver PTX ステント

血管造影(ステント留置後) 2

処置後: カラードップラー、X線、ABI、全血球算定、血液生化学

1ヵ月:電話による追跡調査(投薬・入院・病状の評価)

3ヵ月:電話による追跡調査(投薬・入院・病状の評価)

6ヵ月:カラードップラー、臨床 F/U (WIQ、EQ-5D3、ABI、Rutherford) 、全血球算定、血液生化学 4

9ヵ月:電話による追跡調査(投薬・入院・病状の評価)

1年:カラードップラー、X線、臨床 F/U (WIQ、EQ-5D3、ABI、Rutherford)、全血球算定、血液生化学

Page 235: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

309

1 PTA不成功の結果、再手術にステントが3本以上必要になる患者(始めに登録さ

れた60人の患者に関しては、2本以上)については、処置不成功とみなされ、実

施医療機関の標準的治療法で治療するものとする。 2 始めに登録された60人の患者に関しては、IVUSは要求事項である。

3 始めに登録された60人の患者に関しては、EQ-5Dは要求事項ではない。 4 始めに登録された60人の患者に関しては、血管造影、IVUS、およびX線検査は

要求事項である。

評価方法・

評価基準

本臨床試験は、PTA を施した対照群と比較して、本申請品を用いた治療群の安

全性及び有効性が示されるよう設計された。

安全性主要評価項目の仮説は、Zilver PTX ステント群が PTA 群と比較し、1 年

間の無事象生存(Event-free Survival:EFS)において非劣性(同等又は優位)であ

ることである。EFS とは、臨床事象委員会(CEC)が定めた主要有害事象(MAE)

が発生しない状態であり、主要有害事象には死亡(CEC が機器による死亡、ある

いは手技による死亡と判定を下した症例のみ)、治療病変部の再血行再建術

(TLR)、外科的インターベンション又は治療血管の外科手術を必要とする治療

肢の虚血、Rutherford 分類で 2 クラス以上悪化、またはクラス 5~6 への悪化が含

まれる。

安全性の主要評価項目は、10%の非劣性マージンで Z 統計量を使用して評価さ

れる。Z統計量は以下の公式でもとめる。

ここで、

EFSPTA = PTA 群における、術後 1 年のカプラン・マイヤー法による無事

象生存率推定値

EFSPTX = Zilver PTX ステント群における、術後 1 年のカプラン・マイヤー

法による無事象生存率推定値

δ = 実用的な値としての最少差(この場合 0.10)

SE = 標準誤差

V(EFSPTX) および V(EFSPTA) は、Greenwood による公式を用いており、カプラ

ン・マイヤー推定値の分散を推定した値である。

α = 0.05 において以下の公式が成り立てば、安全性に関する帰無仮説は棄却さ

れ、対立仮説が採用される。

SEzEFSEFS PTAPTX 有効性主要評価項目の仮説は、本申請品を用いた Zilver PTX ステント群の一次

開存率が、1 年で PTA 群に比べ優越性を示すことである。一次開存率とは、添付

資料チ-1-1 の項目 4.1.1.5に定義されるように、最初の治療から 2 次的な処置が必

要でない( インターベンションがない)状態で開存を保っている(狭窄率が 50%

未満)治療部の割合である。次の 1)~5)のいずれかの発生と同時に一次開存は適用

しなくなる。

1) 早期 PTA 不成功

2) 開存の喪失( 近位・遠位端± 5 mmを含む部位の狭窄率が 50%を超えることがカ

ラードップラー(PSV 比>2)および/または血管造影により評価される( 注:

両方の画像診断が解析可能である場合は血管造影の結果が優先する)

3) 血管造影により治療病変部の狭窄率が 50%を超えるため再インターベンション

を実施

4) 完全閉塞

5) 再狭窄の発生による外科的バイパス手術

SE

EFSEFSZ PTAPTX

PTA PTXV EFS V EFS

Page 236: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

310

6) 再狭窄の発生による脚の切断

この評価は、一般化推定方程式(GEE)モデル 1の Z統計量を使用して、病変部ベ

ースで解析する。治療効果は、Zilver PTX ステント群と PTA 群とを区別する回帰

係数の最尤推定値である。一般化推定方程式モデルは二項分布を採用し、連結関

数としてロジットを使用し、さらに、患者 1 人において両肢が治療される場合が

あるため(患者 1 人 2 病変まで)、当該モデルでは患者それぞれで同じと見なさ

れる、非構造的な共分散行列を採用した。当該分析には SAS 統計学ソフトウェア

の Proc Genmod プログラムを用い、repeated 機能の subject 欄に、患者を指定する

ことによって解析する。一般化推定方程式モデルの Z 統計量は Z = β⁄SE(β)で表

され、βは治療効果の最尤推定値、SE(β)はその推定値の標準誤差である。

両側検定の P 値が<0.05 の場合、両群の一次開存率に違いはないという帰無仮説

は棄却され、違いは存在するという対立仮説が採用される。この差異が Zilver

PTX ステント群を支持する場合、PTA 群に比べ、一次開存率において優越性があ

るとみなされる。通常の一次開存率に加え、一般化推定方程式モデルによって推

定された平均値を、95%信頼区間と共に示す。

治験の成功のためには安全性仮説と有効性仮説が両方達成されることが条件で

あった。

副次評価項目には、治療の成功、1 年における患者中心の無虚血症状に関する測

定(臨床的有益性)、臨床状態(臨床的改善は Rutherford 分類の 1 クラス改善、

臨床的成功は Rutherford 分類の 2 クラス改善と定義される)及び機能状態(ABI及

び歩行障害質問票により判定)が含まれる。さらに、ベアメタルステントと比べ

た本申請品の有効性評価も、補足的な解析として含まれた。

なお、カプラン・マイヤー法においては、患者において長期のデータがない場

合、および、ある事象が発生したため、それ以降の期間において特定の評価項目

に関するフォローアップが妨げられる場合に、その患者を打ち切りとしました。

1. Diggle P, Liang KY, Zeger S. Analysis of Longitudinal Data. Oxford, England:

Clarehndon Press; 1996.

治験総括医

Michael Dake, MD

Gary Ansel, M.D

代表施設名

及び施設数 表 4.3.1-1 に記載した 55 施設

試験期間 2005 年 3 月 21 日~2009 年 10 月 21 日

試験成績 以下に記載する通り、当該無作為化対照試験の結果から、本申請品の安全性及び

有効性が示された。安全性主要評価項目に関しては、Zilver PTX ステント群の無

事象生存率は PTA 対照群に対し非劣性(同等又は優越性)であった。Zilver PTX

ステント群の無事象生存率は PTA 対照群より著しく高く、Zilver PTX ステントに

よる一次ステント術は、現在の標準治療である PTA と追加的ステント留置の併用

よりも、主要有害事象の発生率が低いことが示された。有効性主要評価項目に関

しては、Zilver PTX ステント群の一次開存率は PTA 対照群より著しく高く、Zilver

PTX ステントによる一次ステント術は、PTA よりも著しく効果的であることが示

された。早期 PTA 不成功が発生した病変部における無作為化比較においては、

Zilver PTX ステントはベアメタルステントより優れた有効性を示した。

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311

4.3.1.2 対象選択基準設定の妥当性

対象選択基準は、本機器の設計(4~9mmの基準血管径)、閉塞性動脈硬化症(PAD)治療にお

いて影響力を持つ医師による運営委員会の意見(狭窄率>50%、Rutherford 分類で 2 以上の末梢動

脈疾患の症状がある場合、治療が必要と判断)、および独立行政法人医薬品医療機器総合機構と

FDA の要求により設定された。運営委員会は、以下の医師により構成される。

Michael Dake, M.D. (国際治験責任医師), Stanford University Medical Center, Stanford, CA

Gary Ansel, M.D. (国際治験責任医師), MidWest Cardiology Research Foundation, Columbus, OH

Michael Jaff, D.O., Massachusetts General Hospital, Vascular Core Laboratory, Boston, MA

Lindsay Machan, M.D., Vancouver General Hospital, British Columbia

Richard Saxon, M.D., Tri-City Medical Center, Oceanside, CA

H. Bob Smouse, M.D., OSF St. Francis Medical Center, Peoria, IL

大木隆生, MD., 東京慈恵会医科大学病院(東京都港区)

4.3.1.3 除外基準設定の妥当性

除外基準は上述の医師運営委員会の意見に基づいており、掲載された浅大腿動脈における治験と

同等である。

4.3.1.4 使用方法設定の妥当性

本申請品は、2001 年より各国で臨床的に使用されている、Zilver バスキュラーステントに基づい

ている。Zilver バスキュラーステントは現在製造販売承認申請中である(「販売名:Cook バスキ

ュラーステント」、申請日:2008 年 4 月 7 日)である。Zilver バスキュラーステントを用いた臨

床経験に基づき、本申請品の使用方法を設定および改善した。

4.3.1.5 症例構成の内訳

本治験においては PTA 群 238 名、Zilver PTX ステント群 241 名を登録した。最初の患者 60 名(第

I相試験)及び残りの患者(第 II相試験)を含めた患者はいずれかの群にブロック無作為割付によ

り割り当てられた。ただし、ライブ症例患者として治療された患者 5 名は無作為割付けには含ま

れず、Zilver PTX ステント群に割付けられた。バルーン血管形成術の早期不成功を予測し、治験

デザインにより早期 PTA不成功の場合は、直後に臨時ステント術へ移行された。PTA 不成功の患

者は、Zilver PTX ステント又はベアメタルステントいずれかの追加的ステント留置に再度無作為

割付された(図 4.3.1-1)。この再度無作為割付により、Zilver PTX ステントとベアメタルステン

トの比較評価が可能となると同時に、ベアメタルステントの性能を評価するためのデータを得る

ことができる。なお、Zilver PTX ステント群の結果として示すデータは、無作為的に割付けされ

た結果当初から Zilver PTX ステントによる治療を予定された患者のみが含まれ、PTA 不成功後に

Zilver PTX ステント、およびベアメタルステントを留置された患者は含まない。

最初に登録された患者 60 名(第 I 相試験)については、7 cm 以下(≤ 7 cm)の病変のみが含まれ、

ブロックサイズを 4 名にして、Zilver PTX ステント群と PTA 対照群とでバランスが取れるよう厳

密に調整した。この無作為割付から、32 名が PTA 対照群に、そして 28 名が Zilver PTX ステント

群に割付けられた。それに続く患者 419 名(第 II相試験)の登録については、14 cmまでの病変

が含まれ、病変の長さによって階層化する方式(層別化割付)が無作為割付において導入された。

第 1 段階として、病変の長さが 7 cm以下(≤ 7 cm)か、あるいは 7~14 cmかによって患者を階層

化し、第 2 段階において、PTA 対照群あるいは Zilver PTX ステント群に無作為割付した。4 名な

いし 6 名のブロックサイズが無作為的に選択され、その後、PTA 対照群と Zilver PTX ステント群

の順列組み合わせがそれぞれのブロックに無作為的に割付けられた。

4.3.1.6 中止・脱落・プロトコール逸脱等の理由と内訳

1 年のフォローアップ前に中止、除外、又は追跡不能となった 23 人の患者(治療群 10 人、対照群

13 人)を表 4.3.1.6-1 に示す。23 人のうち除外された患者が 13 人、追跡不能とみなされた患者が 7

人、晩期 PTA 不成功後、別のステントで治療されたため中止となった患者が 2 人、移住したが、

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312

治験から正式には除外されていない患者が 1 人。患者の権利、福利、安全性を脅かすようなプロ

トコールからの逸脱は、いずれの施設からも報告されなかった。

表4.3.1.6-1 本治験における1年フォローアップ前の中止例

群 患者 経過日数 中止の理由

PTA

3911708 161 その他の理由。晩期 PTA不成功後、治験参加に関する評価

項目を満たしたが、別のステントで治療されたため除外。

5213415 167 脱落。治験参加を継続する意志がないことを示した。

3313703 168 脱落。登録施設の医師からの治療を拒み、治験参加を継続

する意志がないことを示した。

8111420 169 脱落。電話により治験参加を継続する意思のないことを確

認した。

2413608 224 脱落。フォローアップ及び来訪を拒否。

2913701 281 脱落。州外へ移住したため。

8211401 293 追跡不能。電話で連絡が取れなくなった。

1310404 315 追跡不能。電話、および手紙でも連絡が取れなくなった。

4111701 317 脱落。治験参加を継続する意思のないことを確認した。

4213707 319 その他の理由。患者は移住したが、治験からは完全には除

外されていない。

3313604 326 脱落。治験参加後、肢の状態が回復していないと考え、病

院を変更したため。

2411409 392 その他の理由。晩期 PTA不成功後、治験参加に関する評価

項目を満たしたが、別のステントで治療されたため除外。

1110401 456 脱落。血管造影の継続を拒否。

Zilver

PTX

ステント

4711007 96 追跡不能。電話、および手紙でも連絡が取れなくなり、最

後に登録された住所にも不在。

5013012 130 脱落。州外へ移住したため。

2013006 210 追跡不能。電話、および手紙でも連絡が取れなくなった。 3911302 255 追跡不能。電話、および手紙でも連絡が取れなくなった。 2611011 280 脱落。既に登録施設の治療を受けていないことが判明。

0611002 303 追跡不能。電話、および手紙でも連絡が取れなくなり、最

後に登録された住所にも不在。

5211014 326 脱落。患者が自ら同意書を撤回した。

2013101 338 追跡不能。電話、および手紙でも連絡が取れなくなった。

0311007 340 脱落。登録施設付近の外に移住し、老人保健施設で治療さ

れているため。

5213004 371 脱落。患者自ら治験からの除外を選択した。

4.3.1.7 患者背景

PTA 対照群及び Zilver PTX ステント群の患者のベースライン特性には差がなかった。Zilver PTX

ステント群では高血圧歴のある患者が多く、有意差(p = 0.02)があった点を除き、両群の患者背

景(表 4.3.1.7-1)及び病歴(表 4.3.1.7-2)に差はなかった。同様に、両群のベースラインの血管造

影データ、病変部の位置及び病変の特性はよく一致していたが、コアラボの解析では、Zilver PTX

ステント群の病変部に、より重度の石灰化及び流入血管の狭窄が認められた(表 4.3.1.7-3~表

4.3.1.7-5)。なお、ほとんどの治験参加患者は Rutherford 分類でクラス 2~3(90.5%、427/472)で

あり、クラス 4 の患者(対照群患者 11 人、治療群患者 14 人)、および、クラス 5~6 の患者(対

照群患者 9 人、治療群患者 7 人)はわずかであった。

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313

表4.3.1.7-1 患者背景

患者背景 対照群 治療群 差

(95%信頼区間)1

P値2

年齢 67.7 ± 10.6 (238) 67.9 ± 9.6 (236) -0.1 (-2.0, 1.7) 0.88

性別

0.70 男性 63.9% (152/238) 65.7% (155/236) -1.8 (-10.4, 6.8)

女性 36.1% (86/238) 34.3% (81/236) 1.8 (-6.8, 10.4)

民族性

0.81

アジア人 14.1% (29/206) 11.9% (25/210) 2.2 (-4.3, 8.6)

黒人/

アフリカ系アメリカ人

11.2% (23/206) 11.9% (25/210) -0.7 (-6.9, 5.4)

ヒスパニック系/

ラテン系

5.3% (11/206) 7.1% (15/210) -1.8 (-6.5, 2.8)

白人 69.4% (143/206) 69.0% (145/210) 0.4 (-8.5, 9.2)

身長(センチメートル) 168.8 ± 11.3 (238) 169.3 ± 9.2 (236) -0.6 (-2.4, 1.3) 0.55

体重(キログラム) 81.1 ± 20.2 (238) 82.0 ± 18.2 (236) -0.9 (-4.3, 2.6) 0.62

BMI 28.2 ± 5.6 (238) 28.4 ± 5.3 (236) -0.2 (-1.2, 0.8) 0.71 1 信頼区間は、連続変数については平均の差で、カテゴリー変数についてはパーセンテージの差で表さ

れる。 2

P 値は、連続変数については t 検定、カテゴリー変数については Fisher の正確検定法に基づいている。

表4.3.1.7-2 病歴

病名 対照群 治療群 差

(95%信頼区間)1

P値2

糖尿病 42.0% (100/238) 49.6% (117/236) -7.6 (-16.5, 1.4) 0.11

糖尿病のタイプ

0.56 Ⅰ型 13.0% (13/100) 16.2% (19/117) -3.2 (-12.6, 6.2)

Ⅱ型 87.0% (87/100) 83.8% (98/117) 3.2 (-6.2, 12.6)

高コレステロール血症 69.7% (166/238) 76.3% (180/236) -6.5 (-14.5, 1.5) 0.12

高血圧症 81.5% (194/238) 89.0% (210/236) -7.5 (-13.8, -1.1) 0.02*

頸動脈疾患 20.2% (48/238) 18.2% (43/236) 2.0 (-5.1, 9.0) 0.64

腎臓疾患 10.5% (25/238) 10.2% (24/236) 0.3 (-5.2, 5.8) > 0.99

肺疾患 16.0% (38/238) 19.1% (45/236) -3.1 (-9.9, 3.7) 0.39

鬱血性心不全 10.5% (25/238) 11.9% (28/236) -1.4 (-7.0, 4.3) 0.66

不整脈の既往歴 13.0% (31/238) 10.6% (25/236) 2.4 (-3.4, 8.2) 0.47

心筋梗塞の既往歴 17.2% (41/238) 21.2% (50/236) -4.0 (-11.0, 3.1) 0.29

喫煙歴

0.70

一度もない 15.5% (37/238) 13.6% (32/236) 2.0 (-4.4, 8.3)

禁煙した 51.7% (123/238) 55.5% (131/236) -3.8 (-12.8, 5.1)

現在も喫煙している 32.4% (77/238) 30.9% (73/236) 1.4 (-7.0, 9.8)

不明 0.4% (1/238) 0% (0/236) 0.4 (N/A)

現在組織欠損がある3 8.4% (20/238) 9.4% (22/235) -1.0 (-6.1, 4.2) 0.74

現在服用中である 99.2% (236/238) 99.6% (235/236) -0.4 (-1.8, 1.0) > 0.99 1 信頼区間は、連続変数については平均の差で、カテゴリー変数についてはパーセンテージの差で表さ

れる。 2

P 値は、連続変数については t 検定、カテゴリー変数については Fisher の正確検定法に基づいている。 3 組織欠損には、下肢切断、壊疽及び虚血性潰瘍が含まれる。

* 統計的に有意

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314

表 4.3.1.7-3 ベースライン血管造影データ(コアラボの報告)

ベースライン

血管造影データ 対照群 治療群

(95%信頼区間)1

P値2

病変部の長さ(mm) 53.2 ± 40.3 (248) 54.6 ± 40.7 (242) -1.3 (-8.5, 5.9) 0.71

近位基準血管径(mm) 5.0 ± 1.0 (249) 5.1 ± 0.9 (242) -0.05 (-0.2, 0.1) 0.58

遠位基準血管径(mm) 5.0 ± 1.0 (249) 5.0 ± 1.0 (242) -0.01 (-0.2, 0.2) 0.95

病変部の最小内腔径(mm) 1.1 ± 0.9 (249) 1.0 ± 0.9 (242) 0.1 (-0.1, 0.2) 0.38

狭窄率(%) 78.4 ± 17.1 (249) 79.8 ± 17.0 (242) -1.3 (-4.4, 1.7) 0.38 1 信頼区間は、連続変数については平均の差で、カテゴリー変数についてはパーセンテージの差で表さ

れる。 2 P 値は、連続変数については t 検定、カテゴリー変数については Fisher の正確検定法に基づいている。

表4.3.1.7-4 病変部の位置

血管* 対照群 治療群 差

(95%信頼区間)1

P値2

左浅大腿動脈近位 10.8% (27/251) 8.9% (22/247) 2.9 (-4.3, 10.1)

0.63

右浅大腿動脈近位 12.0% (30/251) 10.9% (27/247)

左浅大腿動脈近位/遠位 3.6% (9/251) 5.7% (14/247) -2.1 (-6.7, 2.5)

右浅大腿動脈近位/遠位 2.8% (7/251) 2.8% (7/247)

左浅大腿動脈遠位 34.7% (87/251) 30.4% (75/247) -1.0 (-9.5, 7.4)

右浅大腿動脈遠位 28.7% (72/251) 34.0% (84/247)

左浅大腿動脈遠位/膝窩動脈 0.4% (1/251) 0.8% (2/247) -1.3 (-4.3, 1.8)

右浅大腿動脈遠位/膝窩動脈 2.0% (5/251) 2.8% (7/247)

左膝窩動脈 2.0% (5/251) 0.8% (2/247) 1.5 (-2.1, 5.1)

右膝窩動脈 3.2% (8/251) 2.8% (7/247)

* 浅大腿動脈近位とは、総大腿動脈の分岐点から浅大腿動脈の中間点までと定義する(ステントの近位

端は少なくとも分岐点の 1cm下に留置される)。浅大腿動脈遠位とは、浅大腿動脈の中間から内転筋

管までと定義する。 1 信頼区間は、連続変数については平均の差で、カテゴリー変数についてはパーセンテージの差で表さ

れる。 2 P 値は、連続変数については t 検定、カテゴリー変数については Fisher の正確検定法に基づいている。

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315

表4.3.1.7-5 病変部の特性

特性 対照群 治療群 差

(95%信頼区間)2

P値3

病変部の分類

(TASC)1

A 36.0% (86/239) 29.4% (69/235) 6.6 (-1.8, 15.0)

0.07 B 25.9% (62/239) 22.6% (53/235) 3.4 (-4.3, 11.1)

C 31.0% (74/239) 42.6% (100/235) -11.6 (-20.2, -3.0)

D 7.1% (17/239) 5.5% (13/235) 1.6 (-2.8, 6.0)

アクセスの

容易さ

アクセス可能 100% (215/215) 100% (215/215) 0 (0, 0)

N/A 中等度の蛇行 0% (0/215) 0.0% (0/215) N/A

重度の蛇行 0% (0/215) 0.0% (0/215) N/A

病変部の屈曲 屈曲なし 95.2% (237/249) 95.4% (228/241) -0.3 (-4.0, 3.5)

> 0.99 中等度の屈曲 4.8% (12/249) 4.6% (11/241) 0.3 (-3.5, 4.0)

石灰化

なし 4.8% (12/249) 1.7% (4/241) 3.2 (0.05, 6.3)

< 0.01* 軽度 38.2% (95/249 25.7% (62/241) 12.4 (4.3, 20.6)

中等度 22.1% (55/249) 35.3% (85/241) -13.2 (-21.1, -5.3)

重度 34.9% (87/249) 37.3% (90/241) -2.4 (-10.9, 6.1)

動脈内のその他

の狭窄

なし 51.4% (111/216) 51.7% (107/207) -0.3 (-9.8, 9.2)

0.71 ≤ 50% 34.3% (74/216) 31.4% (65/207) 2.9 (-6.1, 11.8)

> 50% 14.4% (31/216) 16.9% (35/207) -2.6 (-9.5, 4.4)

流入血管の狭窄

なし 41.6% (96/231) 37.1% (76/205) 4.5 (-4.7, 13.7)

0.03* ≤ 50% 45.5% (105/231) 40.5% (83/205) 5.0 (-4.3, 14.3)

> 50% 13.0% (30/231) 22.4% (46/205) -9.5 (-16.6, -2.3)

開存流出血管数

0 17.3% (26/150) 14.8% (22/149) 2.6 (-5.8, 10.9)

0.47 1 52.7% (79/150) 47.7% (71/149) 5.0 (-6.3, 16.3)

2 21.3% (32/150) 22.8% (34/149) -1.5 (-10.9, 7.9)

3 8.0% (12/150) 14.1% (21/149) -6.1 (-13.2, 1.0)

潰瘍 19.0% (47/248) 16.7% (40/238) 2.3 (-4.5, 9.1) 0.55 1 病変部の TASC(transatlantic inter-society consensus)分類は、実施施設で決定したもので、コアラボでは

評価しなかった。

病変部形態の分類(TASC 分類):

タイプ A 大腿膝窩動脈病変- SFA の始点も遠位膝窩動脈も含まない場所に存在する長さ 3cm以下の

単一狭窄。

タイプ B 大腿膝窩動脈病変- 遠位膝窩動脈を含まない長さ 3-5cmの単一狭窄または閉塞/重度に石

灰化した長さ 3cm以内の狭窄/病変部(狭窄または閉塞)が複数あり、各病変部の長さが 3cmを超えな

い/単一または複数の病変部があり、病変遠位側に既にある外科的バイパスの流入を改善するための

治療を要する狭窄または閉塞(脛骨動脈のランオフが不在)。

タイプ C大腿膝窩動脈病変-長さが 5cmを超える単一狭窄または閉塞/複数の狭窄または閉塞で長

さがそれぞれ 3-5cm、重度の石灰化の有無を問わない。

タイプ D 大腿膝窩動脈病変-総大腿動脈または SFA の完全閉塞/または、膝窩動脈および近位三分

枝(脛骨動脈)の完全閉塞。 2 信頼区間は、連続変数については平均の差で、カテゴリー変数についてはパーセンテージの差で表さ

れる。 3 P 値は、連続変数の t 検定及びカテゴリカル変数の Fisher の正確検定法に基づいている。

* 統計的に有意

Zilver PTX ステント群において使用されたステントの数、及び留置時のステントのサイズを表

4.3.1.7-6~表 4.3.1.7-8 に示す。40%以上の患者が 2 本以上のステントを留置された(表 4.3.1.7-6)。

最も多い直径は 6mmおよび 7mm(368 本中 336 本、91.3%を占める)で、最も多い長さは 80mm

(368 本中 204 本、55.4%)であった(表 4.3.1.7-7 および表 4.3.1.7-8)。

Page 242: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

316

表 4.3.1.7-6 Zilver PTX ステント群の 1 名あたり留置ステント数

本数 割合(患者数)

1 56.6% (137/242)

2 40.1% (97/242)

3 1.7% (4/242)

4 1.7% (4/242)

表 4.3.1.7-7 使用された Zilver PTX ステントのサイズ

直径(mm) ステント長(mm)

20 30 40 60 80 合計

6.0 1 5 31 39 101 177

7.0 0 6 38 27 80 151

8.0 0 0 3 8 19 30

9.0 0 0 0 1 0 1

合計 1 11 72 75 200 359

表 4.3.1.7-8 使用されたベアメタルステントのサイズ

直径(mm) ステント長 (mm)

20 30 40 60 80 合計

6.0 0 0 3 0 2 5

7.0 0 0 0 2 1 3

8.0 0 0 0 0 1 1

合計 0 0 3 2 4 9

PTA 群において、早期 PTA 不成功後に使用されたステントの本数、およびサイズを表 4.3.1.7-9~

4.3.1.7-12 に示す。125 病変におよぶ早期 PTA 不成功に対し、Zilver PTX ステントが 94 本、ベアメ

タルステントが 93 本留置された(表 4.3.1.7-11 および表 4.3.1.7-12)。治療群と同じように、最も

多い直径は 6mmおよび 7mm(187 本中 173 本、92.5%を占める)で、最も多い長さは 80mm(187

本中 106本、56.7%)であった。

表 4.3.1.7-9 早期 PTA 不成功後 Zilver PTX ステント留置患者の 1 名あたり留置ステント数

本数 割合(患者数)

1 55.6%(35/63)

2 41.3%(26/63)

3 1.6%(1/63)

4 1.6%(1/63)

表 4.3.1.7-10. 早期 PTA 不成功後ベアメタルステント留置患者の 1 名あたり留置ステント数

本数 割合(患者数)

1 55.6%(35/63)

2 41.3%(26/63)

3 3.2%(2/63)

4 0%(0/63)

注:当該表に含まれる患者数が、図 4.3.1-1 内の追加的ステント留置のベアメタルステン

ト患者数より多いのは、既に上限本数の Zilver PTX ステント(病変当たり 2 本)を

留置されていた患者の一部で、ベアメタルステントの留置が必要となったためであ

る。

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317

表 4.3.1.7-11 早期 PTA 不成功後に留置された Zilver PTX ステントのサイズ

直径(mm) ステント長(mm)

20 30 40 60 80 合計

6.0 0 3 7 11 21 42

7.0 0 2 2 17 25 46

8.0 0 0 2 1 3 6

合計 0 5 11 29 49 94

表 4.3.1.7-12 早期 PTA 不成功後に留置されたベアメタルステントのサイズ

直径(mm) ステント長(mm)

20 30 40 60 80 合計

5.0 0 0 0 1 0 1

6.0 1 0 6 7 32 46

7.0 1 0 5 10 23 39

8.0 0 1 2 2 2 7

合計 2 1 13 20 57 93

総括すると、病変部のほぼすべてのパラメータにおいて PTA 対照群と Zilver PTX ステント群では

差がなかった。コアラボのデータから、病変部の石灰化及び流入血管の狭窄では有意差が認めら

れ、Zilver PTX ステント群ではより重度の石灰化があり、流入血管の狭窄率も高いことが示され

た。また、実施施設のデータでは、Zilver PTX ステント群の病変部のベースライン狭窄率が著し

く高いことが示されたが、コアラボデータでは差が認められなかった。これらの差は統計的に有

意な差であるが、Zilver PTX ステント群と PTA 対照群の病変部との間に臨床的に意味のある差が

存在することを示している可能性は低い。病変部の特性に差があると仮定すると、潜在的により

重度の病変部及び総合的により重度の末梢動脈疾患を有する患者が Zilver PTX ステント群には含

まれており、Zilver PTX ステント群の安全性及び有効性に関する結果に何らかの有害な影響を及

ぼすと予想されることがこれらのデータにより示されている。Zilver PTX ステント群の 4 割以上が

複数のステントを留置されたことが示すように、病変の治療のため患者に複数のステントを要し

た例は、本治験においては少なくない。最も使用されたステントサイズは直径が最小の 6mmおよ

び 7mm、ステント長が最長の 80mmであることから、直径がより小さく、ステント長がより長い

ステントの臨床的需要が明らかとなった。直径が最大でステント長が最短のステントの使用頻度

は低かったが、これらのサイズを必要とする患者に対する、治療の可能性を医師に提供すること

に価値があると判断された。

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318

4.3.1.8 臨床試験成績

評価方法・評価基準

本臨床試験は、PTA を施した対照群と比較して、本申請品を用いた治療群の安全性及び有効性

が示されるよう設計された。安全性主要評価項目は、1 年間における無事象生存(Event-free

Survival:EFS)の非劣性(同等又は優位)である。EFS とは、死亡、治療病変部の再血行再建術

(TLR)、外科的インターベンション又は治療血管の外科手術を必要とする治療肢の虚血、

Rutherford 分類で 2 クラス以上悪化、またはクラス 5~6 へ悪化する、という臨床事象委員会

(CEC)が定めた主要有害事象(MAE)が発生しない状態をいう。

安全性の主要評価項目は、10%の非劣性マージンで Z 統計量を使用して評価される。Z統計量は

以下の公式でもとめる。

ここで、

EFSPTA = PTA 群における、術後 1 年のカプラン・マイヤー法による無事象生存率推定値

EFSPTX = Zilver PTX ステント群における、術後 1 年のカプラン・マイヤー法による無事象

生存率推定値

δ = 実用的な値としての最少差(この場合 0.10)

SE = 標準誤差

V(EFSPTX) および V(EFSPTA) は、Greenwood による公式を用いており、カプラン・マイヤー推定

値の分散を推定した値である。

α = 0.05 において以下の公式が成り立てば、安全性に関する帰無仮説は棄却され、対立仮説が採

用される。

SEzEFSEFS PTAPTX 有効性の主要評価項目は、本申請品を用いた治療群の一次開存率が、1 年で PTA 群に比べ優越

性を示すことである。また、有効性の主要評価項目は、一般化推定方程式(GEE)モデル 1の Z統計

量を使用して、病変部ベースで解析する。治療効果は、Zilver PTX ステント群と PTA 群とを区別

する回帰係数の最尤推定値である。一般化推定方程式モデルは二項分布を採用し、連結関数とし

てロジットを使用し、さらに、患者 1 人において両肢が治療される場合があるため(患者 1 人 2

病変まで)、当該モデルでは患者それぞれで同じと見なされる、非構造的な共分散行列を採用し

た。当該分析には SAS 統計学ソフトウェアの Proc Genmod プログラムを用い、repeated 機能の

subject 欄に、患者を指定することによって解析する。一般化推定方程式モデルの Z 統計量は Z =

β⁄SE(β)で表され、βは治療効果の最尤推定値、SE(β)はその推定値の標準誤差である。

両側検定の P 値が<0.05 の場合、両群の一次開存率に違いはないという帰無仮説は棄却され、違

いは存在するという対立仮説が採用される。この差異が Zilver PTX ステント群を支持する場合、

PTA 群に比べ、一次開存率において優越性があるとみなされる。

通常の一次開存率に加え、一般化推定方程式モデルによって推定された平均値を、95%信頼区

間と共に示す。

副次評価項目には、治療の成功、1 年における患者中心の無虚血症状に関する測定(臨床的有益

性)、臨床状態(臨床的改善は Rutherford分類の 1 クラス改善、臨床的成功は Rutherford 分類の 2

クラス改善と定義される)及び機能状態(ABI及び歩行障害質問票により判定)が含まれる。さ

らに、ベアメタルステントと比べた本申請品の有効性評価も、補足的な解析として含まれた。

1 Diggle P, Liang KY, Zeger S. Analysis of Longitudinal Data. Oxford, England: Clarehndon Press; 1996.

1 年フォローアップまでの患者のフォローアップ状況を表 4.3.1.8-1 にまとめた。

SE

EFSEFSZ PTAPTX

PTA PTXV EFS V EFS

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319

表4.3.1.8-1 臨床評価及び画像によるフォローアップデータ

フォロー

アップ

フォロー

アップ

対象者 1

データ回収率 次回来院までに発生した事象

臨床評価 2 コアラボ

X 線検査

コアラボ

カラー

ドップラー3

死亡 脱落 追跡不能

その他の

エンドポ

イント 4

PTA 対照群

施術時 238 100%

(238/238)

97.5%

(117/120)5

86.6%

(206/238) 2 3 0 1

6ヶ月 232 94.0%

(218/232)

76.5%

(13/17)5,6

80.6%

(187/232) 2 4 2 2

1年 222 97.3%

(216/222)

76.0%

(114/150)5

83.3%

(185/222) 4 5 0 3

Zilver PTX ステント群

施術時 2367

100%

(236/236)

96.2%

(227/236)

89.4%

(211/236) 0 1 1 0

6ヶ月 234 94.0%

(220/234)

86.2%

(25/29)6

80.3%

(188/234) 9 4 4 0

1年 217 97.7%

(212/217)

84.3%

(183/217)

87.1%

(189/217) 9 4 3 3

1 フォローアップ対象者=前回のフォローアップ対象者-(前回の死亡例+脱落例+追跡不能例)

2 臨床評価フォーム、死亡フォーム、脱落フォーム又は追跡不能フォームのうち1枚以上提出されてい

る症例が含まれる。 3 コアラボが診断に必要と判断したカラードップラーのみ含まれる。

4 「その他のエンドポイント」に到達した患者には、再インターベンション中に治験機器以外のステン

トを留置された患者2名及び転院したが、正式には本臨床試験から脱落していない患者1名が含まれる。 5 ステントを留置した患者(すなわち、早期PTA不成功の患者)のみX線検査が必須。 6 最初に登録した60名の患者のみ6ヶ月フォローアップでX線検査が必須。

7 ライブ症例として治療を受けた5名の患者は含まれていない。

総括すると、フォローアップ対象者のほぼ全員が 1 年フォローアップ時に来院し、2 年フォローア

ップ時は対象者の 80%以上が来院した。

なお、本臨床試験においては、追跡不能や脱落などによる転帰データの欠落を考慮し、仮説を評

価するのに充分な検出力を得るため、事前に登録患者数を統計的に必要とされる数から 10%増や

した。フォローアップに対する遵守状況を確認した結果、プロトコールに基づいた(PP)集団に

おける主要安全性仮説では、31 名(PTA 対照群 15 名、Zilver PTX ステント群 16 名)の患者が 1

年のカプラン・マイヤー推定(治験実施計画書によって示された、主要安全性仮説の統計的解

析)に到達する前に打ち切りとなったことが判明した。よって、主要安全性評価項目のデータが

欠落した患者は 6.6%(PP 集団の 471 患者中 31 名)となる。さらに、Intent-to-treat(ITT)解析集

団における主要有効性仮説(1 年が経過する前に開存性を失った患者、および、1 年又はそれ以降

のフォローアップに訪れた患者を一般化推定方程式モデルによって評価する)に関しては、31 病

変(PTA 対照群において 12 病変、Zilver PTX ステント群において 19 病変)のみが開存性につい

て評価できなかった。これは主要有効性評価項目において 6.2%(ITT 解析集団における 498 病変

中 31 病変)のデータが欠落したことになる。

安全性仮説および有効性仮説において、いずれも欠落した評価項目データは少なく、上記の 10%

(登録患者数の増分)を下回ることから、欠落データに関する追加的な処理は必要ないと判断さ

れた。

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320

安全性

図 4.3.1.8-1 及び表 4.3.1.8-2 に示すとおり、1 年フォローアップ時の無事象生存率(定義:主要有

害事象が発生しない)は Zilver PTX ステント群 90.4%、PTA 対照群 83.9%であり(p < 0.011)、

Zilver PTX ステント群の安全性が PTA 対照群と同等又は優越性を示すという主要安全性評価項目

が達成された。最も多かった主要有害事象は再血行再建術であり(表 4.3.1.8-3)、PTA 対照群で

は Zilver PTX ステント群の約 2 倍の頻度で発生した(PTA 対照群:16.1%、Zilver PTX ステント群

9.5%、p =0.04)。死亡例に関しては、CEC により治験機器又は手技に関連すると判定された場合

のみ主要有害事象に数えられるが、そのような死亡例はなかった。

at risk

対照群 236 217 184 168 164 100

治療群 235 225 197 184 172 99

%

対照群 100.0 94.4 83.9 79.3 77.9 77.4

治療群 100.0 97.0 90.4 88.1 86.6 85.6

図 4.3.1.8-1 無事象生存のカプラン・マイヤー曲線

1 多重性を調整した。

無事象生存率

対照群(PTA)

治療群(Zilver PTX)

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321

表4.3.1.8-2 0ヶ月、1ヶ月、6ヶ月及び1年フォローアップ時の無事象生存率のカプラン・マイヤー

推定値

治療後

の期間

(月)

推定無事象生存率 標準誤差 不成功累積数 打ち切り累積数 残数

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

0 100.0% 100.0% 0.0% 0.0% 0 0 0 0 236 235

1 100.0% 99.1% 0.0% 0.6% 0 2 0 0 236 233

6 94.4% 97.0% 1.5% 1.1% 13 7 6 3 217 225

12 83.9% 90.4% 2.4% 1.9% 37 22 15 16 184 197

表4.3.1.8-3 1年フォローアップ時の各主要有害事象の発生率

主要有害事象 対照群

(PTA)

治療群

(Zilver PTX) P 値

(95%信頼区間)2

臨床上の理由による

再血行再建術 16.1% (36/223)

1 9.5% (21/220) 0.04 (0.4, 12.8)

Rutherford 分類の 2 クラス

以上の悪化もしくは

クラス 5 又は 6 への悪化

0.9% (2/223)1 0% (0/220) 0.49 -

下肢切断 0% (0/223) 0.5% (1/220) 0.49 - 1 Rutherford 分類の悪化及び再血行再建術の両方に該当する患者が 1 名いたため、本表では両方に含ま

れている。 2 信頼区間は、比率の差である。

表4.3.1.8-4 1年フォローアップ時の各主要有害事象の発生率(対照群をサブグループに分別)

主要有害事象 PTA 成功 1

ベアメタルステント

追加留置 1

Zilver PTX

追加留置 1

臨床上の理由による

再血行再建術 20.9% (23/110) 18.2% (10/55)

2 5.2% (3/58)

Rutherford 分類の 2 クラ

ス以上の悪化もしくは

クラス 5 又は 6 への悪化

0.9% (1/110) 1.8% (1/55) 0.0% (0/58)

下肢切断 0.0% (0/110) 0.0% (0/55) 0.0% (0/58) 1本項目の分母は 1 年時に主要有害事象からの無事象生存を維持していた患者及び 1 年未満に主要

有害事象を発生していた患者の合計数を示す。

2 Rutherford 分類の悪化及び再血行再建術の両方に該当する患者が 1 名いたため、本表では両方に含

まれる。

1 年フォローアップ時までに患者に起きた主要有害事象を、表 4.3.1.8-5 にリストアップする。

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322

表 4.3.1.8-5 患者に起きた主要有害事象

群 患者 ID 術後経過日数 主要有害事象

PTA

3511702 84 再血行再建術

1311712 95 再血行再建術 4613703 117 再血行再建術 5111409 121 再血行再建術 4313628 122 再血行再建術 0210602 130, 211 Rutherford 分類の悪化(130 日)、再血行再建術(211 日)

8111414 136 再血行再建術

1313421 146 再血行再建術

8111410 151 再血行再建術

2610402 154 再血行再建術

4013403 161 再血行再建術

5111401 168 再血行再建術

4613405 175 再血行再建術

0610401 183 再血行再建術

1213710 183 再血行再建術

8111408 192 再血行再建術

2411409 193 再血行再建術

0413405 200 再血行再建術

3611402 206 再血行再建術

2610603 211 Rutherford 分類の悪化

4613404 217 再血行再建術

8111432 230 再血行再建術

1011708 231 再血行再建術

0510401 232 再血行再建術

8111422 238 再血行再建術

4311623 241 再血行再建術

9113707 242 再血行再建術

9413703 244 再血行再建術

5011424 250 再血行再建術

4811403 257 再血行再建術

5211403 269 再血行再建術

8111415 278 再血行再建術

1213720 280 再血行再建術

9213701 327 再血行再建術

4711409 330 再血行再建術

3911703 337 再血行再建術

9411712 345 再血行再建術

Zilver PTX

ステント

9111310 15 再血行再建術

1211311 16 足指(2 番目の指)の切除

3513009 44 再血行再建術

4411008 77 再血行再建術

4813005 78 再血行再建術

1510202 176 再血行再建術

4613008 182 再血行再建術

4411007 183 再血行再建術

0310203 190 再血行再建術

1313016 197 再血行再建術

8113019 202 再血行再建術

2611011 218 再血行再建術

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323

群 患者 ID 術後経過日数 主要有害事象

2821301 253 再血行再建術

2811002 255 再血行再建術

2213002 257 再血行再建術

1311025 266 再血行再建術

4311306 297 再血行再建術

4613001 329 再血行再建術

2013101 337 再血行再建術

4313213 350 再血行再建術

4313037 359 再血行再建術

1111306 360 再血行再建術

1 年までに対照群及び治療群で発生した、主要有害事象以外の有害事象を表 4.3.1.8-6 に示す。当該

表に示す死亡は因果関係に関わらない全死亡例であるが、本臨床試験において CEC により治験機

器又は手技に関連すると判定された死亡例はなかった。なお、早期 PTA 不成功は有害事象ではな

いため、当該表に含まれていない。

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324

表4.3.1.8-6 主要有害事象以外の有害事象(治療後1年まで)

有害事象 対照群 治療群

% (n/N) 総発生数 % (n/N) 総発生数

死亡 1.7% (4/236) 4 3.4% (8/235) 8

心血管関連有害事象

インターベンションを要する心虚血 3.0% (7/236) 7 3.8% (9/235) 13

非 Q 波心筋梗塞 0.4% (1/236) 1 0.9% (2/235) 2

鬱血性心不全 0.8% (2/236) 2 3.0% (7/235) 7

難治性高血圧 0.4% (1/236) 1 0% (0.235) 0

インターベンション又は新たな治療を要する

不整脈 1.7% (4/236) 5 3.4% (8/235) 9

その他の心血管関連有害事象 12.3% (29/236) 41 7.7% (18/235) 20

肺関連有害事象

治療を要する肺水腫 0.0% (0/236) 0 0.4% (1/235) 1

24 時間を超えるベンチレーション 0.4% (1/236) 1 1.3% (3/235) 3

抗生物質を要する肺炎 2.1% (5/236) 6 5.1% (12/235) 14

退院時に酸素投与を要する(高緯度の地域を除

く) 0% (0/236) 0 0.4% (1/235) 1

再挿管 0% (0/236) 0 0.4% (1/235) 1

慢性閉塞性肺疾患(COPD) 1.7% (4/236) 5 0.9% (2/235) 4

その他の肺関連有害事象 3.0% (7/236) 11 8.5% (20/235) 28

腎臓関連有害事象

抗生物質治療を要する尿路感染症(UTI) 0.8% (2/236) 3 2.6% (6/235) 7

血清クレアチニンがベースラインより 30%を

超える割合で上昇し、2 mg/dL 以下に下がら

ない

0.8% (2/236) 2 0% (0.235) 0

その他の腎臓関連有害事象 2.5% (6/236) 8 4.3% (10/235) 12

消化管関連有害事象

その他の消化管関連有害事象 3.8% (9/236) 12 10.2% (24/235) 30

創傷関連有害事象

創感染/膿瘍形成 1.3% (3/236) 3 1.7% (4/235) 5

デブリードマンを要する組織壊死 1.3% (3/236) 3 0.4% (1/235) 1

再手術を要する創傷の合併症 1.7% (4/236) 5 0.9% (2/235) 3

その他の創傷関連有害事象 2.5% (6/236) 6 0.9% (2/235) 2

血管関連有害事象

治験対象血管の術後経皮的インターベンショ

ン(PTA 及びステント術等) 8.1% (19/236) 22 5.5% (13/235) 14

治験対象血管以外の血管の術後経皮的インタ

ーベンション(PTA 及びステント術等) 16.9% (40/236) 52 21.3% (50/235) 62

治験対象血管以外の血管の外科的インターベ

ンション(バイパス術又は下肢切断)を要す

る虚血

2.5% (6/236) 6 1.7% (4/235) 4

治験対象血管遠位側の塞栓 0.4% (1/236) 1 0.9% (2/235) 2

治験対象血管以外の血管の塞栓 0% (0/236) 0 1.3% (3/235) 3

治験対象病変部の血栓症 0.8% (2/236) 2 2.6% (6/235) 6

治験対象病変部以外の血栓症 0% (0/236) 0 0.9% (2/235) 2

ブルートウ症候群 0% (0/236) 0 0.4% (1/235) 1

動脈瘤(その他) 0% (0/236) 0 0.9% (2/235) 2

深部静脈血栓症 0.4% (1/236) 1 0.9% (2/235) 2

インターベンションを要するアクセス部位の

血腫 0.4% (1/236) 1 0.4% (1/235) 1

肺塞栓症 0.4% (1/236) 1 0% (0.235) 0

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325

有害事象 対照群 治療群

治験対象血管の偽性動脈瘤又は動静脈瘻 0.8% (2/236) 2 0.4% (1/235) 1

治験対象血管以外の血管の偽性動脈瘤

又は動静脈瘻 0.4% (1/236) 1 0.4% (1/235) 2

治験対象血管の痙攣 0% (0/236) 0 0.4% (1/235) 1

跛行/安静時の痛みの悪化 6.8% (16/236) 21 4.3% (10/235) 12

脳卒中 0.8% (2/236) 2 0.4% (1/235) 1

治験対象血管以外の血管の損傷の血管修復術/

外科手術(下肢切断、バイパス術以外) 0.4% (1/236) 1 0.9% (2/235) 3

治療後の輸血 4.2% (10/236) 15 5.5% (13/235) 13

その他の血管関連有害事象 16.5% (39/236) 47 9.8% (23/235) 29

その他の有害事象

薬物反応(造影剤への反応等) 2.1% (5/236) 5 3.8% (9/235) 10

過敏症/アレルギー反応 2.1% (5/236) 5 2.1% (5/235) 6

その他の有害事象 26.7% (63/236) 120 28.1% (66/235) 115

表 4.3.1.8-6 のように、治療後 1 年までにおける原因を問わない死亡は合計 12 人であり、対照群が

4 人、治療群が 8 人であった。また表 4.3.1.8-7 に、1 年フォローアップ終了時の患者における死亡

例に関する詳細を示すが、本臨床試験において CEC により治験機器又は手技に関連すると判定さ

れた死亡例はなかった。(注:表 4.3.1.8-7 は「1 年フォローアップ」のデータであり、1 年経過時

点後(383 日目)に死亡した患者(ID:1313018)が含まれ、Zilver PTX ステント群における死亡

患者数は 9 名である)。

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326

表4.3.1.8-7 1年フォローアップ時における死亡例

治験群 患者ID 日数 年齢 死因 CECの判断

(治験機器又は手技との関連性の有無)

対照群

(PTA)

PTA 9113619 105 57 一酸化炭素中毒に

よる自殺 なし。SFA治療と関連性がないため。

PTA 4613703 156 60 心臓病又は脳動脈

瘤 なし。SFA治療と関連性がないため。

早期PTA不

成功後、ベ

アメタルス

テント留置

0210602 242 77 末梢血管疾患の病

状悪化 判断不可能。

PTA 1311706 291 88 白血病 なし。SFA治療と関連性がないため。

治療群

(Zilver PTX)

5013005 254 62 転移性がん SFA治療と関連性はなく、患者歴に記

された既往症と関連がある。

4711004 255 69 不整脈を伴う心筋

梗塞

SFA治療と関連性はなく、患者歴に記

された既往症と関連がある。

3711006 271 84 末期の心筋症 なし。SFA治療と関連性がないため。

4813009 277 72 呼吸不全 SFA治療と関連性はなく、患者歴に記

された既往症と関連がある。

3913001 305 65

複数の病気:

慢性閉塞性肺疾患

の悪化、急性呼吸

不全、心肺停止

SFA治療と関連性はなく、患者歴に記

された既往症と関連がある。

0413002 350 72 アテローム性動脈

硬化症

SFA治療と関連性はなく、患者歴に記

された既往症と関連がある。

1011014 358 67 呼吸不全

判断不可能。患者は肺がんと診断さ

れたが、死因は不明とされ、検死は

行われなかった。

1010002 361 71 心筋梗塞 なし。SFA治療と関連性がないため。

1313018 383 82 うっ血性心不全の

悪化

SFA治療と関連性はなく、患者歴に記

された既往症と関連がある。

ベアメタルステント追加留置群及び Zilver PTX ステント追加留置群における、主要有害事象から

の無事象生存率のカプラン・マイヤー曲線を、ITT 集団、PP 集団及び AT 集団に分け、図 4.3.1.8-2

~4.3.1.8-4 にそれぞれ示した。Z検定による解析では Zilver PTX 群の無事象生存率(EFS)はベア

メタルステント群の EFS に対して非劣性であることを示している(p < 0.01)。 表 4.3.1.8-8 は 0 ヶ月、

1 ヶ月、6 ヶ月、1 年及び 2 年の無事象生存率の KM 推定値を示すものである。1 年フォローアッ

プ時の無事象生存率の KM 推定値は Zilver PTX 追加留置群が 94.7%、94.7% 及び 93.3% 、またベ

アメタルステント追加留置群が 82.5%、83.1% 及び 83.1% である(それぞれ ITT 集団、PP 集団及

び AT 集団)。

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327

at risk ベアメタルステント 59 55 45 41 41 25

Zilver PTXステント 60 59 53 50 48 27

% ベアメタルステント 100.0 96.6 82.5 77.0 77.0 77.0 Zilver PTXステント 100.0 100.0 94.7 91.1 89.2 87.4

図 4.3.1.8-2 ベアメタルステント追加留置と Zilver PTX ステント追加留置の主要有害事象からの

無事象生存率のカプラン・マイヤー曲線 (ITT)

主要有害事象からの無事象生存率

べアメタルステント

Zilver PTX ステント

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328

at risk ベアメタルステント 55 51 42 39 39 23 Zilver PTXステント 60 59 53 50 48 27

% ベアメタルステント 100.0 96.4 83.1 77.2 77.2 77.2 Zilver PTXステント 100.0 100.0 94.7 91.1 89.2 87.4

図 4.3.1.8-3 ベアメタルステント追加留置と Zilver PTX ステント追加留置の主要有害事象

からの無事象生存率のカプラン・マイヤー曲線 (PP)

主要有害事象からの無事象生存率

べアメタルステント

Zilver PTX ステント

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329

at risk ベアメタルステント 55 51 42 39 39 23 Zilver PTXステント 63 62 55 52 50 29

% ベアメタルステント 100.0 96.4 83.1 77.2 77.2 77.2 Zilver PTXステント 100.0 100.0 93.3 89.8 88.1 86.3

図 4.3.1.8-4 ベアメタルステント追加留置と Zilver PTX ステント追加留置の主要有害事象からの

無事象生存率のカプラン・マイヤー曲線 (AT)

主要有害事象からの無事象生存率

べアメタルステント

Zilver PTX ステント

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330

表4.3.1.8-8 ベアメタルステント追加留置群及びZilver PTXステント追加留置群の無事象生存率のカ

プラン・マイヤー推定値

治療後の

期間

(月)

推定無事象

生存率 標準誤差 不成功累積数 打ち切り累積数 残数

ベアメタル

ステント

Zilver

PTX

ベアメタル

ステント

Zilver

PTX

ベアメタル

ステント

Zilver

PTX

ベアメタル

ステント

Zilver

PTX

ベアメタル

ステント

Zilver

PTX

ITT

0 100.0% 100.0% 0.0% 0.0% 0 0 0 0 59 60

1 100.0% 100.0% 0.0% 0.0% 0 0 0 0 59 60

6 96.6% 100.0% 2.4% 0.0% 2 0 2 1 55 59

12 82.5% 94.7% 5.0% 3.0% 10 3 4 4 45 53

24 77.0% 89.2% 5.6% 4.2% 13 6 5 6 41 48

PP

0 100.0% 100.0% 0.0% 0.0% 0 0 0 0 55 60

1 100.0% 100.0% 0.0% 0.0% 0 0 0 0 55 60

6 96.4% 100.0% 2.5% 0.0% 2 0 2 1 51 59

12 83.1% 94.7% 5.1% 3.0% 9 3 4 4 42 53

24 77.2% 89.2% 5.8% 4.2% 12 6 4 6 39 48

AT

0 100.0% 100.0% 0.0% 0.0% 0 0 0 0 55 63

1 100.0% 100.0% 0.0% 0.0% 0 0 0 0 55 63

6 96.4% 100.0% 2.5% 0.0% 2 0 2 1 51 62

12 83.1% 93.3% 5.1% 3.2% 9 4 4 4 42 55

24 77.2% 88.1% 5.8% 4.2% 12 7 4 6 39 50

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331

有効性

図 4.3.1.8-5 及び表 4.3.1.8-9 に示すとおり、1 年フォローアップ時の一次開存率(PSV 比 < 2.0 と伝

統的に定義されている。)のカプラン・マイヤー推定値は Zilver PTX ステント群 82.7%、PTA 対

照群 32.7%であり、Zilver PTX ステント群の一次開存率が PTA 対照群より優越性を示すこととい

う主要有効性評価項目が達成された。GEE モデル解析による、治療後 21 ヶ月までに実施された 1

年フォローアップ来院が反映された一次開存率は、PTA 群 28.2%(95%信頼区間は 22.7%および

34.3%)に対して Zilver PTX ステント群は 75.9%(95%信頼区間は 69.9%および 81.1%)であった

(p < 0.012)。糖尿病、病変部の長さ及び閉塞/狭窄病変部等の共変量が治療効果及び総合的な有

害事象発生率に寄与する可能性について評価した。Zilver PTX ステント群及び PTA 対照群の一次

開存率に対する上記共変量の影響に著しい差はなかった。

at risk

対照群 126 100 73 39 33 28

治療群 245 230 182 164 149 89

%

対照群 50.2 41.6 32.7 30.5 26.5 24.8

治療群 99.6 95.1 82.7 76.2 74.8 72.2

図4.3.1.8-5 一次開存率のカプラン・マイヤー曲線

2 多重性を調整した。

一次開存率

(ログランク)

対照群(PTA)

治療群(Zilver PTX)

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332

表 4.3.1.8-9. 0 ヶ月、1 ヶ月、6 ヶ月及び 1 年フォローアップ時の一次開存率のカプラン・マイヤー

推定値

治療後

の期間

(月)

推定一次開存率 標準誤差 不成功累積数 打ち切り累積数 残数

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

0 50.2% 99.6% 3.2% 0.4% 125 1 0 0 126 245

1 50.2% 99.6% 3.2% 0.4% 125 1 0 1 126 244

6 41.6% 95.1% 3.1% 1.4% 146 12 5 4 100 230

12 32.7% 82.7% 3.0% 2.5% 167 41 11 23 73 182

Zilver PTX ステント及びベアメタルステントを同等の患者集団(早期 PTA不成功の患者)に留置

しその結果を比較し、パクリタキセルの効果を評価した。両患者集団は同様の方法で選択し(無

作為割付しており)、また、両ステントとも同一のプラットフォームから構成されている。従っ

て、当該比較を行うことで Zilver PTX ステントの Cook PTX®薬剤コーティングの有効性を直接測

定することになる。図 4.3.1.8-6 及び表 4.3.1.8-10 に示すとおり、1 年フォローアップ時の一次開存

率は早期 PTA 不成功後のベアメタルステント留置患者が 72.9%に対し、早期 PTA 不成功後の

Zilver PTX ステント留置患者は 90.2%と高く、両群間の一次開存率には有意差があった(p =

0.013)。従って、パクリタキセルでコーティングされた Zilver PTX ステントの留置は、(コーテ

ィングされていない)ベアメタルステントの留置よりも治療後 1 年間の一次開存率により有効的

である。このことは、PTX®コーティングが著しい効果を有することを示すとともに、Zilver PTX

ステントの有効性を裏付けている。

3 多重性を調整した。

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333

at risk

ベアメタルステント 62 53 41 37 35 22 Zilver PTXステント 63 60 54 49 46 25

% ベアメタルステント 100.0 88.4 72.9 65.8 64.1 60.2 Zilver PTXステント 100.0 96.8 90.2 85.1 83.4 81.6

図4.3.1.8-6 追加留置したベアメタルステント及び追加留置したZilver PTXステントの

一次開存率のカプラン・マイヤー曲線(ITT)

表4.3.1.8-10 ベアメタルステント及びZilver PTXステントのカプラン・マイヤー推定値

治療後の

期間

(月)

推定一次開存率 標準誤差 不成功累積数 打ち切り累積数 残数

ベアメタル

ステント

Zilver

PTX

ベアメタル

ステント

Zilver

PTX

ベアメタル

ステント

Zilver

PTX

ベアメタル

ステント

Zilver

PTX

ベアメタル

ステント

Zilver

PTX

0 100.0% 100.0% 0.0% 0.0% 0 0 0 0 62 63

1 100.0% 100.0% 0.0% 0.0% 0 0 0 0 62 63

6 88.4% 96.8% 4.1% 2.2% 7 2 2 1 53 60

12 72.9% 90.2% 5.8% 3.8% 16 6 5 3 41 54

PTA 成功群と、ベアメタルステント追加留置群を比較する際、ベアメタルステント追加留置群に

対して以下に示す二重のバイアスが加わっていると思われる。

1. ベアメタルステント群の全ての患者において早期 PTA 不成功が発生しており、これは平均

よりも重症な病変、およびより成功度の低い転帰に関連すると一般的に認識されること

2. PTA 成功群においては定義よりいずれの患者にも早期 PTA 不成功がなく、これは平均より

も軽度な病変、およびより成功度の高い転帰に関連すると一般的に認識されること

それにも関わらず、ベアメタルステントを追加留置した群(すなわち、すべての病変部が早期

PTA 不成功)の 1 年フォローアップ時の一次開存率は 72.9%で、PTA 成功(早期 PTA 不成功がな

かった)群の 64.6%よりも高かった。このことから、ベアメタルステント群に対し二重にバイア

ベアメタルステント

Zilver PTX ステント

一次開存率

(ログランク)

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334

スが加わった状態での比較においても、ベアメタルステントの有効性(12 ヶ月の一次開存性)が

裏付けられた。

副次評価項目

副次評価項目には、治療の成功、患者中心の無虚血症状に関する測定(臨床的有益性)、臨床状

態(臨床的改善は Rutherford 分類の 1 クラス改善、臨床的成功は Rutherford 分類の 2 クラス改善と

定義される)及び機能状態(ABI及び歩行障害質問票により判定)が含まれる。

治療の成功(残存狭窄率が 30%未満)は、PTA 対照群(57.3%、142/248)に対して Zilver PTX ス

テント群(95.0%、229/241)と有意に高く(p < 0.01)、Zilver PTX ステントが開存の確立におい

て有効であることが示された。

重要な点として、本臨床試験は、適切かつ倫理的な患者治療を提供し、フォローアップ期間を通

じて各患者の健康状態及び QOLを可能な限り高いレベルで維持することを意図した。従って、治

験における最初の治療の後も末梢動脈疾患の症状が継続、又は再発していることが臨床評価又は

画像評価によって示された場合には、患者の QOL を維持するために必要に応じて治療を行なった。

このような、患者の福祉に対する奉仕を考慮すると、PTA 対照群及び Zilver PTX ステント群の両

群で Rutherford 分類、ABI、歩行障害質問票スコア及び QOLスコアが、同様に改善することが望

ましいものと思われた。この種の試験デザインは各患者に倫理的に適切なレベルの治療を提供す

る一方、フォローアップで臨床評価を行う前に追加的な治験関連の治療、又は治験に関連しない

治療が実施されるため、PTA 対照群と Zilver PTX ステント群の臨床的有益性の比較に困難が生じ

る。つまり、患者のフォローアップの臨床評価前に治験対象病変部の再インターベンション(臨

床上の理由による再血行再建術等)、又は治験対象外の病変部の治療が行われた場合、その再イ

ンターベンションによる臨床的有益性がフォローアップ時の臨床評価(Rutherford 分類、ABI、歩

行障害質問票、QOL質問票等)に反映されたこととなる。また、PAD(末梢動脈疾患)の進行の

ため、治験対象外の下肢、又は治験対象病変部以外の治験対象肢において疾患が進行し、臨床的

有益性が失われる場合もあった。したがって、フォローアップ時に臨床転帰を評価する際には、

当初の治験治療だけではなく、患者の治療の全体的な経過から判断することが重要であると思わ

れる。

最善の臨床結果を維持するために、治験期間を通じて患者の治療を行ったため、フォローアップ

時の臨床転帰(Rutherford 分類、ABI、歩行障害質問票スコア、QOLスコア)に関しては、概して

両群の間に差は見られなかった。しかし、これらの項目では最初の治験治療による臨床的有益性

の差を問うことはできない。患者の観点からすると、臨床的有益性とは虚血症状のないことであ

るため、無虚血症状(臨床的有益性)を「間欠跛行の悪化、Rutherford 分類の悪化、組織欠損及び

再インターベンションを要するその他の症状(安静時の痛み、潰瘍、持続性の跛行)が無いこ

と」と定義し、評価した。これで、両群について臨床的有益性に関する評価が可能となる。また、

代替エンドポイントを用いなくても、臨床的有益性を評価することにより、本臨床試験における

患者の利益を臨床的に評価することができると判断した。

1 年フォローアップ時に虚血症状のない(臨床的有益性を有する)患者は、PTA 対照群 75.4%に対

し、Zilver PTX ステント群 86.9%と有意に高かった(p < 0.01、図 4.3.1.8-7)。PTA 対照群のサブ

グループにおいても同様に、1 年フォローアップ時に虚血症状のない患者は、PTA 成功群 69.4%及

び早期 PTA 不成功後ベアメタルステントを追加留置した患者群 72.3%に対して、早期 PTA 不成功

後 Zilver PTX ステントを追加留置した患者群では 87.3%と有意に高かった(いずれもログランク

検定により p < 0.01、図 4.3.1.8-8)。

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335

at risk

PTA対照群 240 225 195 182 167 103 Zilver PTXステント群 237 210 167 152 150 97

% PTA対照群 100.0 94.6 86.9 83.2 81.8 81.3

Zilver PTXステント群 100.0 90.7 75.4 71.3 71.3 70.8

図 4.3.1.8-7. PTA 対照群及び Zilver PTX ステント群における、無虚血症状

(臨床的有益性)のカプラン・マイヤー曲線

PTA対照群

Zilver PTX ステント群

無虚血症状

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336

at risk

一次割付 Zilver PTX 240 225 195 182 167 103 再度割付 Zilver PTX 64 62 54 50 49 30 再度割付 BMS 56 49 37 35 35 23 PTA成功群 117 98 75 67 66 44

% 一次割付 Zilver PTX 100.0 94.6 86.9 83.2 81.8 81.3 再度割付 Zilver PTX 100.0 96.9 87.3 83.9 83.9 83.9 再度割付 BMS 100.0 90.9 72.3 68.4 68.4 68.4 PTA成功群 100.0 86.2 69.4 64.7 64.7 63.7

図 4.3.1.8-8. PTA 対照群サブグループ及び Zilver PTX ステント群における、

無虚血症状(臨床的有益性)のカプラン・マイヤー曲線

本臨床試験に登録された患者は全員、QOLの向上のために PTA 又はステント術を必要とした。重

要なことは、PTA 又はベアメタルステントと比較して、Zilver PTX ステントが、患者にとって最

も重要な臨床転帰である無虚血症状(臨床的有益性)の著しい改善に貢献したことである。最初

の治療として PTA が実施された患者は、Zilver PTX ステントを留置した患者と比較して虚血症状

の発生率がより高く、改善された QOLを維持するためにより多くのインターベンションが必要だ

った。

これらの結果から、Zilver PTX ステントは患者にとって非常に優れた有効性及び臨床的有益性を

もたらすことが示され、Zilver PTX ステントが安全性及び有効性を有することが裏付けられた。

また、本臨床試験において PTA に対する Zilver PTX ステントの臨床的有益性が認められ、その臨

床的有益性に基づき、Zilver PTX ステントによる一次ステント術は末梢動脈疾患を患う患者にと

って適切で必要であると考えられる。

臨床状態(すなわち臨床的成功、臨床的改善)、ならびに機能状態(ABI及び歩行障害質問票に

より判定)を含むその他の副次評価項目の詳細を、以下の表 4.3.1.8-11~4.3.1.8-22 に示す。

一次割付による Zilver PTX ステント群

再度割付による Zilver PTX ステント留置

再度割付によるベアメタルステント留置

PTA成功群

無虚血症状

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337

まず、表 4.3.1.8-11 に 1 年フォローアップ時の臨床的成功(Rutherford 分類で 2 クラス以上の改

善)、及び臨床的改善(Rutherford 分類で 1 クラス改善)を示す。

表4.3.1.8-11. 臨床的改善及び臨床的成功

評価法

PTA 対照群 Zilver PTX

治療群 PTA成功 ベアメタル

ステント留置

Zilver PTX

ステント留置

臨床的改善

(Rutherford分類で

最低1クラス改善)

74.0%

(74/100)

78.8%

(41/52)

83.3%

(45/54)

76.2%

(157/206)

臨床的成功

(Rutherford分類で

最低2クラス改善)

49.0%

(49/100)

69.2%

(36/52)

63.0%

(34/54)

54.9%

(113/206)

治療前、および 1 年フォローアップにおける Rutherford 分類によるクラスの割合を、グループ別

(PTA 成功、ベアメタルステント留置、Zilver PTX 留置、および Zilver PTX 治療群)にまとめ、

表 4.3.1.8-12 および 4.3.1.8-13 に表す。

表 4.3.1.8-12. 治療前の Rutherford 分類

グループ 治療前の Rutherford 分類のクラス

0 1 2 3 4 5 6

PTA

対照群

PTA 成功 0%

(0/116)

0%

(0/116)

47.4%

(55/116)

42.2%

(49/116)

7.8%

(9/116)

2.6%

(3/116)

0%

(0/116)

ベアメタル

ステント留置

0%

(0/59)

0%

(0/59)

44.1%

(26/59)

45.8%

(27/59)

3.4%

(2/59)

6.8%

(4/59)

0%

(0/59)

Zilver PTX 留置 0%

(0/61)

3.3%

(2/61)

45.9%

(28/61)

47.5%

(29/61)

0%

(0/61)

1.6%

(1/61)

1.6%

(1/61)

Zilver PTX

治療群

0%

(0/236) 0.8%

(2/236)

52.5%

(124/236)

37.7%

(89/236)

5.9%

(14/236)

3.0%

(7/236)

0%

(0/236)

表 4.3.1.8-13. 1 年フォローアップ時の Rutherford 分類

グループ 1 年フォローアップ時の Rutherford 分類のクラス

0 1 2 3 4 5 6

PTA

対照群

PTA 成功 35.6%

(36/101)

25.7%

(26/101)

20.8%

(21/101)

15.8%

(16/101)

1%

(1/101)

1%

(1/101)

0%

(0/101)

ベアメタル

ステント留置

53.8%

(28/52)

19.2%

(10/52)

19.2%

(10/52)

3.8%

(2/52)

0%

(0/52)

3.8%

(2/52)

0%

(0/52)

Zilver PTX 留置 53.7%

(29/54)

16.7%

(9/54)

20.4%

(11/54)

7.4%

(4/54)

1.9%

(1/54)

0%

(0/54)

0%

(0/54)

Zilver PTX

治療群

44.7%

(92/206)

20.9%

(43/206)

23.3%

(48/206)

9.2%

(19/206)

1.9%

(4/206)

0%

(0/206)

0%

(0/206)

ABIおよび歩行障害質問票から判断した 1 年フォローアップ時における身体機能状態の改善につ

いては、表 4.3.1.8-14~4.3.1.8-17 に示す。

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338

表 4.3.1.8-14. 治療前、1 年フォローアップ時の ABI

フォローアップ

時期

PTA 対照群 Zilver PTX

治療群 PTA 成功 ベアメタル

ステント留置

Zilver PTX

留置

治療前 0.71 ± 0.22

(n = 120)

0.62 ± 0.20

(n = 60)

0.66 ± 0.16

(n = 62)

0.67 ± 0.19

(n = 237)

1 年 0.89 ± 0.20

(n = 108)

0.93 ± 0.20

(n = 54)

0.87 ± 0.22

(n =55)

0.91 ± 0.23

(n = 210)

表 4.3.1.8-15. 治療前、1 年フォローアップ時の歩行距離(%増)

フォローアップ

時期

PTA 対照群 Zilver PTX

治療群 PTA 成功 ベアメタル

ステント留置

Zilver PTX

留置

治療前 25.6 ± 26.4

(n = 115)

24.1 ± 25.9

(n = 55)

29.9 ± 34.9

(n = 58)

25.0 ± 27.6

(n = 230)

1 年 54.4 ± 35.8

(n = 99)

61.3 ± 35.6

(n = 50)

60.3 ± 39.9

(n = 57)

57.8 ± 37.9

(n = 205)

表 4.3.1.8-16. 治療前、1 年フォローアップの歩行速度(%増)

フォローアップ

時期

PTA 対照群

Zilver PTX

治療群 PTA 成功 ベアメタル

ステント留置

Zilver PTX

留置

治療前 29.6 ± 29.7

(n = 112)

28.5 ± 27.4

(n = 55)

31.1 ± 34.4

(n = 55)

27.5 ± 27.1

(n = 224)

1 年 55.8 ± 34.6

(n = 95)

63.5 ± 34.4

(n = 48)

57.8 ± 38.8

(n = 51)

55.7 ± 37.1

(n = 199)

表 4.3.1.8-17. 治療前、1 年フォローアップ時の階段昇りスコア(%増)

フォローアップ

時期

PTA 対照群 Zilver PTX

治療群 PTA 成功 ベアメタル

ステント留置

Zilver PTX

留置

治療前 39.7 ± 33.1

(n = 102)

38.4 ± 30.1

(n = 49)

37.1 ± 34.0

(n = 50)

35.9 ± 32.2

(n = 210)

1 年 59.7 ± 33.9

(n = 78)

66.0 ± 33.1

(n = 44)

60.2 ± 35.1

(n = 48)

55.6 ± 37.3

(n = 181)

EQ-5D 生活の質の質問表の結果については、表 4.3.1.8-18~4.3.1.8-22 に示す。

表4.3.1.8-18. 痛み及び不快感のスコア

グループ 検査時期 痛み及び不快感の判定

無し 中度 重度

PTA

対照群

PTA成功 治療前 17.5% (17/97) 66.0% (64/97) 16.5% (16/97)

1年 42.2% (35/83) 48.2% (40/83) 9.6% (8/83)

ベアメタル

ステント留置

治療前 11.8% (6/51) 70.6% (36/51) 17.6% (9/51)

1年 39.1% (18/46) 52.2% (24/46) 8.7% (4/46)

Zilver PTX

留置

治療前 18.9% (10/53) 67.9% (36/53) 13.2% (7/53)

1年 40.0% (20/50) 52.0% (26/50) 8.0% (4/50)

Zilver PTX

治療群

治療前 18.4% (38/207) 64.7% (134/207) 16.9% (35/207)

1年 41.5% (76/183) 52.5% (96/183) 6.0% (11/183)

Page 265: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

339

表4.3.1.8-19. 可動度のスコア

グループ 検査時期 可動の障害程度

無し 中度 重度

PTA

対照群

PTA成功 治療前 21.4% (21/98) 77.6% (76/98) 1.0% (1/98)

1年 51.8% (43/83) 47.0% (39/83) 1.2% (1/83)

ベアメタル

ステント留置

治療前 13.7% (7/51) 86.3% (44/51) 0% (0/51)

1年 50.0% (23/46) 50.0% (23/46) 0% (0/46)

Zilver PTX

留置

治療前 17.0% (9/53) 81.1% (43/53) 1.9% (1/53)

1年 56.0% (28/50) 42.0% (21/50) 2.0% (1/50)

Zilver PTX

治療群

治療前 19.3% (40/207) 79.2% (164/207) 1.4% (3/207)

1年 45.4% (83/183) 53.6% (98/183) 1.1% (2/183)

表4.3.1.8-20. 日常活動能力のスコア

グループ 検査時期 日常活動への支障度

無し 中度 重度

PTA

対照群

PTA成功 治療前 51.0% (50/98) 43.9% (43/98) 5.1% (5/98)

1年 66.3% (55/83) 30.1% (25/83) 3.6% (3/83)

ベアメタル

ステント留置

治療前 39.2% (20/51) 58.8% (30/51) 2.0% (1/51)

1年 71.7% (33/46) 28.3% (13/46) 0% (0/46)

Zilver PTX

留置

治療前 43.4% (23/53) 50.9% (27/53) 5.7% (3/53)

1年 66.0% (33/50) 30.0% (15/50) 4.0% (2/50)

Zilver PTX

治療群

治療前 46.4% (96/207) 49.8% (103/207) 3.9% (8/207)

1年 63.9% (117/183) 30.1% (55/183) 6.0% (11/183)

表4.3.1.8-21. 不安感及び憂鬱感のスコア

グループ 検査時期 不安感及び憂鬱感の程度

無し 中度 重度

PTA

対照群

PTA成功 治療前 68.4% (67/98) 28.6% (28/98) 3.1% (3/98)

1年 71.1% (59/83) 25.3% (21/83) 3.6% (3/83)

ベアメタル

ステント留置

治療前 60.8% (31/51) 37.3% (19/51) 2.0% (1/51)

1年 76.1% (35/46) 21.7% (10/46) 2.2% (1/46)

Zilver PTX

留置

治療前 52.8% (28/53) 43.4% (23/53) 3.8% (2/53)

1年 65.3% (32/49) 34.7% (17/49) 0% (0/49)

Zilver PTX

治療群

治療前 61.7% (127/206) 33.0% (68/206) 5.3% (11/206)

1年 68.1% (124/182) 29.1% (53/182) 2.7% (5/182)

表4.3.1.8-22. セルフケアのスコア

グループ 検査時期 セルフケアの支障度

無し 中度 重度

PTA

対照群

PTA成功 治療前 94.9% (93/98) 4.1% (4/98) 1.0% (1/98)

1年 92.8% (77/83) 7.2% (6/83) 0% (0/83)

ベアメタル

ステント留置

治療前 100% (51/51) 0% (0/51) 0% (0/51)

1年 97.8% (45/46) 2.2% (1/46) 0% (0/46)

Zilver PTX

留置

治療前 81.1% (43/53) 18.9% (10/53) 0% (0/53)

1年 88.0% (44/50) 12.0% (6/50) 0% (0/50)

Zilver PTX

治療群

治療前 90.3% (187/207) 8.2% (17/207) 1.4% (3/207)

1年 92.9% (170/183) 6.6% (12/183) 0.5% (1/183)

Page 266: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

340

サブスタディ

薬物動態サブスタディ

Zilver PTX ステント群の患者 60 名に薬物動態(PK)サブスタディを実施した。各患者には、治療

直後(0 時間)、治療後 20 分、40 分、1 時間、1.5 時間、2 時間、3 時間、4 時間、6 時間、8 時間

及び 12 時間の合計 11 ポイントうちの 3 ポイントで薬物動態サブスタディを実施した。留置した

ステントの本数に応じて患者を 2 群に分けた。各群の患者数及び総パクリタキセル量を表 4.3.1.8-

23 に示す。

表4.3.1.8-23 薬物動態サブスタディ群

留置

ステント数 患者数1

サンプル数 パクリタキセル用量範囲(μg)

1 42 125 *** - *** (平均±SD = *** ± ***)

2 16 48 ****- **** (平均±SD = **** ± ***) 1 安定性が認められている期間を過ぎてからサンプルの解析を実施した患者 1 名、及び Zilver PTX ステ

ントを 3 本留置した患者 1 名の合計 2 名は本解析に含まれていない。

パラメトリック曲線をデータに当てはめ、95%信頼区間で血中パクリタキセル最高濃度(Cmax)、

最高濃度までの時間(Tmax)、血中濃度曲線下面積(AUC)、半減期(t1/2)及びパクリタキセル

総クリアランス(CLplasma)を推定した(表 4.3.1.8-24)。また、Zilver PTX ステントを留置した動

物を用いた試験から得られた薬物動態結果が得られており(各動物あたりのパクリタキセルコー

ティングの総量は 876μg)、当該結果にパラメトリック曲線をあてはめ、Cmax 、Tmax 、AUC 、t1/2

及び CLplasmaを推定した。

表 4.3.1.8-24 薬物動態パラメータ(95%信頼区間)

パラメータ

留置

ステント1本

(n = 42)

留置

ステント2本

(n = 16)

動物の薬物

動態試験

(n = 2)1

Tmax (分) ** ** **

Cmax

(ng/mL)

*:*

(*:* - *:*)

*:*

(*:* - *:*) *:*

AUC0-last2

(ng∙h/mL)

*:*

(*:* - *:*)

**:*

(**:* - **:*) **:*

AUC0-inf3

(ng∙h/mL)

*:*

(*:* - *:*)

**:*

(**:* - **:*) **:*

t1/2(時間) *:*

(*:* - *:*)

*:*

(*:* - **:*) *:*

CLplasma

(L/時間)

***

(**:* - ***:*)

**:*

(**:* - ***:*) **:*

1サンプルサイズが 2 だったため、本群の信頼区間は算出しなかった。 2 0 時点から最後に濃度測定を行った時点までの AUC

3 0 時点から無限大までの AUC

患者におけるパクリタキセルの薬物動態の結果は、以前報告されている、動物における薬物動態

の結果と類似していた。全身に送達されたパクリタキセルは最少量(Cmax < 10 ng/mL)であり、

治療後 8 時間及び 12 時間の血漿中のパクリタキセル量は 1 ng/mL未満であった。血液中のパクリ

タキセル濃度は非常に低く、残留時間も短いことから、Zilver PTX ステントは安全であると考え

られる。

血管造影/IVUS サブスタディ

各治験群から 40 名、合計 80 名の患者に血管造影/IVUS サブスタディを実施した。病変部の

IVUS は、ステント留置直後及び 1 年フォローアップ時に Zilver PTX ステント群に実施し、血管造

影は 1 年フォローアップ時に Zilver PTX ステント群及び PTA 対照群の両方に実施した(早期又は

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341

晩期 PTA 不成功が発生し、その後ステントを留置した場合には、当該患者はサブスタディから除

外した)。

血管造影による解析には、1年フォローアップ時に血管造影及びカラードップラー両方を実施し、

コアラボが解析を行ったすべての患者が含まれている。病変部の開存の評価において、血管造影

とカラードップラーが一致するか評価を行った。その結果、1年フォローアップ時に評価を行った

病変部の開存性について、血管造影及びカラードップラーの評価の一致は約89%であった(表

4.3.1.8-25)。

表4.3.1.8-25 開存性評価における血管造影とカラードップラーの相関

カラードップラーによる評価

開存 非開存

血管造影

による評価

開存 ****%

(**/**)

***%

(*/**)

非開存 ***%

(*/**)

****%

(*/**)

総括すると、予想通り、血管造影とカラードップラーには高い相関があり、血管造影を実施しな

い場合にはカラードップラーによって開存性を評価することが妥当であることが確認されている。

IVUS の画像が取得できた患者(IVUS サブスタディに割り付けられた患者及び最初に登録された

60 名の患者)はすべて IVUS の結果に含まれている。6 ヶ月及び 1 年フォローアップ時に動脈瘤又

はステントの不完全圧着は認められなかった。ステント留置直後に動脈瘤及びステントの不完全

圧着が低い率で発生したが(2.4%、表 4.3.1.8-26 参照)、不具合とは関連がなく、ステント留置直

後に認められた動脈瘤及びステントの不完全圧着は両方とも、ステント留置前に実施した血管造

影で視認できる既存の動脈瘤に関連するものであった。

表4.3.1.8-26 IVUSコアラボによる所見

期間 認められた動脈瘤 認められたステントの

不完全圧着

ステント留置直後 2.4% (2/85)1 2.4% (2/84)

1

6 ヶ月 2 0% (0/28) 0% (0/28)

1年 0% (0/36) 0% (0/36) 1 両例ともにステント留置直前に動脈瘤が確認されており、当該動脈瘤の位置にステントの不完全圧着

が認められた。 2 本臨床試験では、Zilver PTX ステントを留置した最初の 60 名の患者に 6 ヶ月フォローアップでの

IVUS が求められたが、IVUS サブスタディの一部としては求められていない。

総括すると、全身に送達されたパクリタキセルは最少量(Cmax < 10 ng/mL)であり、治療後 8 時

間及び 12 時間の血漿中のパクリタキセル量は 1 ng/mL未満であったことが薬物動態サブスタディ

によって示された。本臨床結果と得られている動物試験の結果との間に強い相関が認められた。

また、血管造影サブスタディでは、病変部の開存性の評価において血管造影とカラードップラー

との間に高い相関があることが示され、血管造影を実施しない場合にはカラードップラーによっ

て開存性を評価することが有用であることが確認された。6 ヶ月及び 1 年フォローアップ時の

IVUS サブスタディでは、動脈瘤又はステントの不完全圧着は認められなかった。ステント留置直

後に動脈瘤及びステントの不完全圧着が低い率で発生したが(2.4%)、ステント留置前から存在

する動脈瘤に関連するものであって、不具合とは関連がなかった。これらのサブスタディの結果

から、Zilver PTX ステントの安全性及び有効性が裏付けられたと結論付けられた。

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342

ステントの完全性

退院前及び 1 年フォローアップ時に、ステントの各ストラットを可視化するために高解像度のス

テントの X 線撮影を行い、Zilver PTX ステントの完全性を評価した。表 4.3.1.8-27 に示すとおり、

治療完了時にステントの破断は認められなかった(0/528)。1 年フォローアップ時のステント破

断はわずか 4 例(4/457)で、1 年フォローアップ時のステント破断率は 0.9%だった。ステント破

断が発生した 4 名の患者はすべて、1 年フォローアップまで一次開存が維持され、再血行再建術が

実施されることもなかった。このことから、ステント破断は患者の安全性又は Zilver PTX ステン

トの有効性に有害な影響を与えないことが示された。

表4.3.1.8-27 退院前及び1年フォローアップ時のステントの完全性

タイムポイント X線で確認したステント数 ステント破断数 ステントの破断率

退院前 528 0 0%

1年フォローアップ 457 4 0.9%

総括すると、ステントの破断率は低く(0.9%)、ステント破断が発生した患者の安全性及び有効

性に関する結果から、ステント破断は患者の安全性又は Zilver PTX ステントの有効性に有害な影

響を与えないことが示された。これらの結果から Zilver PTX ステントの安全性がさらに裏付けら

れた。

Page 269: 4. 設計検証及び妥当性確認文書の概要 4.1 一般情報 …...Determine the Corrosion Susceptibility of Small Implant Devices. (小型埋植医療機器の腐食敏感性を評価

343

4.3.2 臨床試験成績のまとめ

4.3.2.1 安全性のまとめ

本治験における安全性主要評価項目は 1 年フォローアップ時の無事象生存率である。1 年フォロー

アップ時の無事象生存率は Zilver PTX ステント群 90.4%、PTA 対照群 83.9%であり(p < 0.01)、

最も多かった主要有害事象である再血行再建術に関して、PTA 対照群では Zilver PTX ステント群

より有意に高い頻度で発生した(PTA 対照群:16.1%、Zilver PTX ステント群 9.5%)。総括する

と、主要安全性評価項目は達成され、Zilver PTX ステント群の安全性は PTA 対照群と同等又は優

越性を示した。

4.3.2.2 有効性のまとめ

本治験における有効性主要評価項目は 1 年フォローアップ時の一次開存率である。1 年フォローア

ップ時の一次開存率は Zilver PTX ステント群 82.7%、PTA 対照群 32.7%であった。糖尿病、病変

部の長さ及び閉塞/狭窄病変部等の共変量が一次開存率に及ぼす影響については、Zilver PTX ステ

ント群と PTA 対照群の間で著しい差はなかった。プロトコールに指定されたとおり、一次開存率

の評価項目には早期 PTA不成功が含まれる。この早期 PTA 不成功の後に無作為割付された患者に

ついて、パクリタキセルによる効果を評価するために、Zilver PTX ステント留置患者とベアメタ

ルステント留置患者を比較した。1 年フォローアップ時の一次開存率は早期 PTA 不成功後のベア

メタルステント留置患者が 72.9%に対し、早期 PTA 不成功後の Zilver PTX ステント留置患者は

90.2%と高く、パクリタキセルが著しい効果を有することを示すとともに、再狭窄に対する Zilver

PTX ステントの有効性を裏付けている。

総括すると、主要有効性評価項目は達成され、Zilver PTX ステントによる治療は PTA 治療に比べ、

有効性において優越性を示した。さらに、PTA 不成功の患者に対する再度の無作為割付の結果か

ら、1 年間の一次開存性の維持にはベアメタルステントに比べ Zilver PTXステントの有効性が著し

く高いことが示され、PTX®コーティングおよび Zilver PTX ステントの有効性がさらに裏付けられ

た。

4.3.2.3 結果の概要及び結論

1 年フォローアップ時の無事象生存は、PTA 対照群 83.9%に対し Zilver PTX ステント群 90.4%であ

った。最も多かった主要有害事象は再血行再建術で、Zilver PTX ステント群(9.5%)より PTA 対

照群(16.1%)で発生率が著しく高かった。また、1 年フォローアップ時の一次開存率は、Zilver

PTX ステント群 82.7%、PTA 対照群 32.7%だった。Zilver PTX ステントによる治療の安全性は

PTA による治療の安全性と同等又はより安全であること(p < 0.01)、及び、Zilver PTX ステント

の一次開存率は PTA より有意に高いことが示され(p < 0.01)、本臨床試験の主要安全性評価項目

及び主要有効性評価項目の両方が達成された。これらの結果から、膝上大腿膝窩動脈の症候性血

管疾患の治療における Zilver PTX ステントの安全性及び有効性が裏付けられた。

また、パクリタキセルでコーティングされた Zilver PTX ステントの留置は、ベア(コーティング

されていない)メタルステントの留置と比較して治療後 1 年間の一次開存の維持に対する効果が

有意に高かった(p = 0.01)。このことから、PTX®コーティングは著しい効果を有することが示さ

れ、Zilver PTX ステントの有効性が裏付けられた。

治療の成功(残存狭窄が 30%未満)は、PTA 対照群(57.3%、142/248)に対して Zilver PTX ステ

ント群(95.0%、229/241)で著しく高く、Zilver PTX ステントは開存性の確立において有効性を有

することが示された。

虚血症状のない(臨床的有益性を有する)患者の割合は、PTA 対照群より Zilver PTX ステント群

で著しく高かった。同様に、虚血症状のない(臨床的有益性を有する)患者の割合は、PTA 成功

群及びベアメタルステントを追加留置した群よりも Zilver PTX ステント群で著しく高かった。こ

れらの結果は、Zilver PTX ステントは患者に優れた有効性及び臨床的有益性を提供することを示

しており、Zilver PTX ステントが安全性及び有効性を有することを裏付けている。また、本臨床

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344

試験において PTA に対する Zilver PTX ステントの臨床的有益性が認められたが、その臨床的有益

性に基づき、Zilver PTX ステントによる一次ステント術は末梢動脈疾患を患う患者にとって適切

で必要であると考えられる。

薬物動態サブスタディでは、全身に送達されたパクリタキセルは最少量(Cmax < 10 ng/mL)であ

り、治療後 8 時間及び 12 時間の血漿中のパクリタキセル量は 1 ng/mL未満であったことが示され

た。本臨床結果と以前報告されている動物試験の結果との間に強い相関が認められた。また、血

管造影サブスタディでは、病変部の開存性の評価において血管造影とカラードップラーとの間に

高い相関があることが示され、血管造影を実施しない場合にはカラードップラーによって開存性

を評価することが有用であることが確認された。6 ヶ月及び 1 年フォローアップ時の IVUS サブス

タディでは、動脈瘤又はステントの不完全圧着は認められなかった。ステント留置直後に動脈瘤

及びステントの不完全圧着が低い率で発生したが(2.4%)、ステント留置前から存在する動脈瘤

に関連するものであって、手技に関連するものではなかった。これらのサブスタディの結果から

Zilver PTX ステントの安全性及び有効性が裏付けられた。

ステントの破断率は低く(0.9%)、ステント破断が発生した患者の安全性及び有効性に関する結

果から、ステント破断は患者の安全性又は Zilver PTX ステントの有効性に有害な影響を与えない

ことが示された。これらの結果は、Zilver PTX ステントの安全をより一層裏付けられるものであ

る。

膝上大腿膝窩動脈の症候性血管疾患の治療における本品の安全性及び有効性は、本臨床試験結果

により適切に担保されている。また、本臨床試験において PTA に対する Zilver PTX ステントの臨

床的有益性が認められたが、その臨床的有益性に基づき、Zilver PTX ステントによる一次ステン

ト術は、末梢動脈疾患を患う患者にとって適切であり、また必要であると考えられる。

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345

4.3.3 その他

4.3.3.1 長期フォローアップ(1 年以降)

患者のフォローアップは、電話による 18 ヶ月フォローアップ及び 5 年フォローアップまで来院に

よるフォローアップが毎年予定されている。2 年の来院フォローアップに関しては、対照群におい

てフォローアップ対象者 210 名のうち 175 名に、Zilver PTX ステント群においてフォローアップ対

象者 198名のうち 166 名に実施された。なお、3 年の来院フォローアップは両群合計 78 名の患者

に実施され、4 年の来院フォローアップは両群合計 40 名の患者に実施された。

2 年フォローアップ時の無事象生存率に関しては、Zilver PTX ステント群において 86.6%、PTA 対

照群において 77.9%であった(表 4.3.3.1-1)。また、2 年フォローアップ時の一次開存率に関して

は、Zilver PTX ステント群において 74.8%、PTA 対照群において 26.5%であった(表 4.3.3.1-2)。

なお、無事象生存率のカプラン・マイヤー曲線については図 4.3.1.8-1 において、一次開存率のカ

プラン・マイヤー曲線については図 4.3.1.8-2 において、それぞれ 30 ヶ月まで示されている。

表4.3.3.1-1. 2年フォローアップ時の無事象生存率のカプラン・マイヤー推定値

治療後の

期間

(月)

推定無事象生存率 標準誤差 不成功累積数 打ち切り累積数 残数

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

24 77.9% 86.6% 2.8% 2.3% 50 30 22 33 164 172

表4.3.3.1-2. 2年フォローアップ時の一次開存率のカプラン・マイヤー推定値

治療後の

期間

(月)

推定一次開存率 標準誤差 不成功累積数 打ち切り累積数 残数

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

対照群

(PTA)

治療群

(Zilver

PTX)

24 26.5% 74.8% 3.1% 2.9% 177 58 41 39 33 149

以下に、2 年フォローアップ時の Zilver PTX ステントとベアメタルステントの一次開存率の比較を

示す。PTA 不成功後 Zilver PTX ステントを留置された患者の一次開存率は 83.4%であり、PTA 不

成功後ベアメタルステントを留置された患者の一次開存率は 64.1%であった(表 4.3.3.1-3、およ

び図 4.3.1.8-3)。

表4.3.3.1-3. 2年フォローアップ時のZilver PTXステントとベアメタルステントの一次開存率カプラ

ン・マイヤー推定値

治療後の

期間

(月)

推定一次開存率 標準誤差 不成功累積数 打ち切り累積数 残数

ベアメタル

ステント

Zilver

PTX

ベアメタル

ステント

Zilver

PTX

ベアメタル

ステント

Zilver

PTX

ベアメタル

ステント

Zilver

PTX

ベアメタル

ステント

Zilver

PTX

24 64.1% 83.4% 6.3% 4.8% 21 10 6 7 35 46

治療後 1 年以上経過後の死亡数は PTA 対照群 7 名、Zilver PTX ステント群 12 名の合計 19 名であ

った(表 4.3.3.1-4)。このうち、死亡が治験機器又は手技に関連すると CEC により判断されたも

のはなかった。治療後 1 年以上経過後に主要有害事象が発生した患者は、PTA 対照群では再血行

再建術が 12 名、Rutherford 分類の悪化が 3 名の合計 15 名、一方、Zilver PTX ステント群では再血

行再建術が 11 名、Rutherford 分類の悪化が 2 名の合計 13 名だった(表 4.3.3.1-5)。これまでに入

手できた長期データは 1 年フォローアップまでの結果と一致しており、Zilver PTX ステントの安全

性および有効性を適切に担保している。患者のフォローアップ及びデータの収集は現在も継続し

ている。

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346

表4.3.3.1-4. 1年以降の死亡例

治験群 患者ID 日数 年

齢 死因

CECの判断

(治験機器又は手技との関連性の有

無)

対照群

PTA 4813407 445 90 心塞栓性脳卒

SFA治療と関連性はなく、患者歴に

記された既往症と関連がある。

PTA 4311617 486 89 多発性外傷 なし。SFA治療と関連性がないた

め。

早期PTA不成功

後、Zilver PTX留置 5013701 487 70 心停止

なし。SFA治療と関連性がないた

め。

早期PTA不成功

後、ベアメタルス

テント留置

4613404 614 60 心事故 SFA治療と関連性はなく、患者歴に

記された既往症と関連がある。

早期PTA不成功

後、Zilver PTX留置 3811703 863 70 胆管癌

SFA治療と関連性はなく、患者歴に

記された既往症と関連がある。

PTA 1010407 1017 82 心室頻拍 SFA治療と関連性はなく、患者歴に

記された既往症と関連がある。

PTA 1310401 1469 80 心臓性急死 SFA治療と関連性はなく、患者歴に

記された既往症と関連がある。

治療群

9411309 547 83 肝内胆管癌 なし。SFA治療と関連性がないた

め。

4613001 558 86 呼吸不全 なし。SFA治療と関連性がないた

め。

2610001 561 64

前頭洞の腺

癌、肺癌、気

管癌

SFA治療と関連性はなく、患者歴に

記された既往症と関連がある。

5013015 618 65 呼吸不全 SFA治療と関連性はなく、患者歴に

記された既往症と関連がある。

8111005 641 82 死因の報告な

し。 判断不可能。

9313007 648 87 転移性脳腫瘍

の悪化

SFA治療と関連性はなく、患者歴に

記された既往症と関連がある。

5011011 670 74 肺癌 なし。SFA治療と関連性がないた

め。

4211302 728 81

特定されず。

末期うっ血性

心不全、拡張

機能障害、腎

不全、衰弱と

の関連性。

SFA治療と関連性はなく、患者歴に

記された既往症と関連がある。

8111026 730 60 食道静脈瘤の

出血

なし。SFA治療と関連性がないた

め。

0210008 808 78 既往症の急激

な悪化

SFA治療と関連性はなく、患者歴に

記された既往症と関連がある。

0310203 1000 69

急性心筋梗

塞、冠動脈疾

SFA治療と関連性はなく、患者歴に

記された既往症と関連がある。

4313213 1081 63

心臓バイパス

手術後の合併

SFA治療と関連性はなく、患者歴に

記された既往症と関連がある。

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347

表4.3.3.1-5. 1年以降の主要有害事象

主要有害事象 患者群 件数

臨床的に必要な

再血行再建術

PTA 対照群

PTA 成功 5

12 ベアメタルステント留置 3

Zilver PTX ステント留置 4

Zilver PTX ステント群 11

Rutherford 分類で

2 クラス以上の悪化

PTA 対照群

PTA 成功 2

3 ベアメタルステント留置 0

Zilver PTX ステント留置 1

Zilver PTX ステント群 2

4.3.3.2 TASC 分類による比較

本臨床試験において採用された TASC 分類は 2007 年に改訂された TASC II ではなく、 2000 年の

TASC Iである。よって治験実施計画書においては、タイプ C の病変は「長さが 5cmを超える単一

狭窄または閉塞/複数の狭窄または閉塞で長さがそれぞれ 3-5cm、重度の石灰化の有無を問わな

い」と定義され、タイプ D の病変は「総大腿動脈または SFA の完全閉塞/または、膝窩動脈およ

び近位三分枝(脛骨動脈)の完全閉塞」と定義された。TASC I におけるこの定義の設定以降、血管

内治療は技術的に進歩し、TASC 分類もそれに対応し改訂された。上記の TASC I におけるタイプ

C および D の病変は、現在の TASC II分類においてはタイプ A および B に分類され、治療法とし

ては血管内治療が推奨される。

TASC Iが制定された当初、タイプ C および D の病変はバイパス術によって治療された。バイパス

術は一般的に長期的効果はあるものの、血管内ステント治療よりも罹患率が高くなる。Cook 社は

重症な病変においても、本申請品がバイパス術に対する妥当な代替療法になりえると考える。

TASC Iのタイプ A および B をタイプ C および D と比較し、その安全性に関する評価を図 4.3.3.2-

1 および表 4.3.3.2-1 に示し、有効性に関する評価を図 4.3.3.2-2 および表 4.3.3.2-2 に示す。

予想されたとおり、PTA対照群においてはタイプ C および D の病変はタイプ A および B に比べ結

果が思わしくなく、特に一次開存性においてそれは顕著であった。逆に、Zilver PTX ステント群

においては、タイプ C および D の病変は、タイプ A および B に安全性および有効性の両方で類似

傾向を示していた。さらに、Zilver PTX ステント群におけるタイプ C および D の病変は、PTA 対

照群におけるタイプ A および B の病変と比較し、無事象生存率(EFS)の点において同等であっ

た。PTA は重症度の低い病変において適切な治療と一般的に認められていることから、この EFS

における同等の結果は、タイプ C および D の病変における Zilver PTX ステントによる治療が適切

であり、安全であることを示している。

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348

at risk

TASC A/B: PTA 140 131 115 113 105 62 TASC A/B: PTX 116 113 100 98 90 53 TASC C/D: PTA 86 78 64 60 55 34 TASC C/D: PTX 108 102 89 84 75 42

% TASC A/B: PTA 100.0 95.7 86.2 85.4 82.3 82.3 TASC A/B: PTX 100.0 98.3 92.0 90.2 89.2 89.2 TASC C/D: PTA 100.0 92.9 80.8 75.7 73.1 71.5 TASC C/D: PTX 100.0 95.4 88.7 86.6 82.4 81.3

図 4.3.3.2-1. TASC 分類のタイプ A および B、またタイプ C および D における無事象生存率

表4.3.3.2-1. TASC分類のタイプAおよびB、またタイプCおよびDにおける無事象生存率のK-M

(カプラン・マイヤー)推定値

治療後の

期間

(月)

推定無事象生存率 標準誤差 不成功累積数 打ち切り累積数 残数

TASC

A/B

TASC

C/D

TASC

A/B

TASC

C/D

TASC

A/B

TASC

C/D

TASC

A/B

TASC

C/D

TASC

A/B

TASC

C/D

Zilver PTX ステント群

0 100% 100% 0% 0% 0 0 0 0 116 108

1 99.1% 99.1% 0.9% 0.9% 1 1 0 0 115 107

6 98.3% 95.4% 1.2% 2.0% 2 5 1 1 113 102

12 92.0% 88.7% 2.5% 3.1% 9 12 7 7 100 89

24 89.2% 82.4% 2.9% 3.8% 12 18 14 15 90 75

PTA 対照群

0 100% 100% 0% 0% 0 0 0 0 140 86

1 100% 100% 0% 0% 0 0 0 0 140 86

6 95.7% 92.9% 1.7% 2.8% 6 6 3 2 131 78

12 86.2% 80.8% 2.9% 4.3% 19 16 6 6 115 64

24 82.3% 73.1% 3.3% 4.9% 24 22 11 9 105 55

主要有害事象からの無事象生存率

PTA対照群 Zilver PTX ステント群 PTA対照群 Zilver PTX ステント群

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349

at risk

TASC A/B: PTA 89 76 57 32 28 24

TASC A/B: PTX 122 116 91 83 76 44

TASC C/D: PTA 33 20 13 7 5 4

TASC C/D: PTX 111 102 84 74 68 41

%

TASC A/B: PTA 60.1 52.6 41.4 38.5 34.8 32.3

TASC A/B: PTX 100.0 96.7 84.4 77.0 77.0 74.9

TASC C/D: PTA 36.3 24.4 17.8 16.5 11.8 11.8

TASC C/D: PTX 99.1 92.8 82.6 76.6 74.5 71.1

図 4.3.3.2-2. TASC 分類のタイプ A および B、またタイプ C および D における一次開存率

PTA対照群 Zilver PTX ステント群 PTA対照群 Zilver PTX ステント群

一次開存率

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350

表 4.3.3.2-2. TASC 分類のタイプ A および B、またタイプ C および D における一次開存率の K-M

(カプラン・マイヤー)推定値

治療後の

期間

(月)

推定無事象生存率 標準誤差 不成功累積数 打ち切り累積数 残数

TASC

A/B

TASC

C/D

TASC

A/B

TASC

C/D

TASC

A/B

TASC

C/D

TASC

A/B

TASC

C/D

TASC

A/B

TASC

C/D

Zilver PTX ステント群

0 100% 99.1% 0.0% 0.9% 0 1 0 0 122 111

1 100% 99.1% 0.0% 0.9% 0 1 1 0 121 111

6 96.7% 92.8% 1.6% 2.5% 4 8 2 2 116 102

12 84.4% 82.6% 3.4% 3.6% 18 19 13 9 91 84

24 77.0% 74.5% 4.0% 4.3% 26 27 20 17 76 68

PTA 対照群

0 60.1% 36.3% 4.0% 5.0% 59 58 0 0 89 33

1 60.1% 36.3% 4.0% 5.0% 59 58 0 0 89 33

6 52.6% 24.4% 4.1% 4.6% 70 68 2 3 76 20

12 41.4% 17.8% 4.1% 4.2% 86 73 5 5 57 13

24 34.8% 11.8% 4.2% 4.1% 93 76 27 10 28 5

以上のことから、本申請品による治療は TASC I 分類における全てのタイプにおいて安全および有

効であることが示された。

4.3.3.3 留置ステント数別の解析

留置ステント数別の解析を行い、以下にその結果を示す。留置ステント数は病変長に深くかかわ

り、病変長は安全性及び有効性を影響する重要な要素である。長い病変には複数のステントが必

要である事実から予測されるとおり、複数のステント留置による成績は、単一ステントの留置に

よる成績と比較すると若干劣った(図 4.3.3.3-1)。ステント 2 つで治療した病変部の長さの平均は

103 ± 25 mmであり、ステント 1 つで治療した病変部の長さの平均は 40 ± 22 mmであった(1 病変

における最大ステント数は 2 本)。単一ステントの留置に比較して複数ステントの留置の成績が

若干劣ったのは、病変の長さの違いが原因であり、留置したステントの数が関与したわけではな

いと考える。

図 4.3.3.3-1. 留置ステント数による安全性および有効性の比較

病変長の平均 病変長の平均

ステント 1 本

ステント 2 本

1 年の一次開存率 1 年の無事象生存率

ステント 2 本

ステント 2 本

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351

4.3.3.4 本邦における患者、およびプール解析可能性

本邦においては患者 53 名が本臨床試験に登録され、無作為割付された。本邦における患者登録を、

図 4.3.3.4-1 にフローチャート形式で表す。ライブ症例として治療を受けた Zilver PTX ステント群

の患者 1 名については、ITT 集団の解析から除外している。当該患者は 1 年フォローアップ時まで

にいずれの主要有害事象も発生せず、治験対象病変は開存性を保った。

* ベアメタルステント群に割付けされた患者 1 名が、誤って Zilver PTX によって治療された。

図 4.3.3.4-1. 本邦における登録患者数(病変数)(一次無作為割付時の登録患者(ITT)、1 年フォ

ローアップ時までの原因を問わない死亡数、脱落数、追跡不能患者数を含む)

以下の図 4.3.3.4-2 および表 4.3.3.4-1 において、本邦と海外における患者の無事象生存率を比較し、

図 4.3.3.4-3 および表 4.3.3.4-2 において、本邦と海外における患者の一次開存率を比較する。これ

らの結果から、本邦の患者における本申請品の安全性及び有効性は、海外の患者における安全性

及び有効性と同等であることが示された。

主要有害事象からの無事象生存率

PTA

n = 27 (29)

Suboptimal PTA

n = 20 (21)

Optimal PTA

n = 7 (8)(1 death)

Provisional Bare Zilver

n = 10 (10)

Provisional Zilver PTX

n = 10 (11)

Zilver PTX

n = 26 (27)

Enrollment

n = 53 (56)

全登録患者

n = 53

(56)

PTA 成功

n = 7(8)

(死亡 1)

PTA 不成功

n = 20(21)

ベアメタル

ステント追加留置

n = 10(10)*

Zilver PTX 追加留置

n = 10(11)

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352

at risk

本邦 PTA 対照群 27 26 22 21 20 13

本邦 Zilver PTX 25 24 24 23 22 13

海外 PTA 対照群 211 195 166 161 149 90

海外 Zilver PTX 211 203 175 169 151 89

%

本邦 PTA 対照群 100.0 100.0 84.6 80.8 76.9 76.9

本邦 Zilver PTX 100.0 96.0 96.0 92.0 92.0 92.0

海外 PTA 対照群 100.0 94.3 84.1 82.0 79.4 78.7

海外 Zilver PTX 100.0 97.1 89.8 88.2 85.0 84.4

図 4.3.3.4-2. 本邦と海外の患者を比較した、無事象生存のカプラン・マイヤー曲線

表 4.3.3.4-1. 本邦と海外の患者を比較した、無事象生存率のカプラン・マイヤー推定値

治療後の

期間

(月)

無事象生存率

推定値 標準誤差 不成功累積数

打ち切り

累積数 残数

日本 海外 日本 海外 日本 海外 日本 海外 日本 海外

Zilver PTX ステント群

0 100% 100% 0% 0% 0 0 0 0 25 211

1 96.0% 99.5% 3.9% 0.5% 1 1 1 1 24 210

6 96.0% 97.1% 3.9% 1.1% 1 6 1 8 24 203

12 96.0% 89.8% 3.9% 2.1% 1 21 1 36 24 175

24 92.0% 85.0% 5.4% 2.5% 2 30 3 60 22 151

PTA 対照群

0 100% 100% 0% 0% 0 0 0 0 27 211

1 100% 100% 0% 0% 0 0 0 0 27 211

6 100% 94.3% 0% 1.6% 0 12 1 16 26 195

12 84.6% 84.1% 7.1% 2.5% 4 32 5 44 22 166

24 76.9% 79.4% 8.3% 2.8% 6 41 7 61 20 149

本邦における PTA対照群 本邦における Zilver PTX ステント群 海外における PTA対照群 海外における Zilver PTX ステント群

主要有害事象からの無事象生存率

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353

at risk

本邦 PTA 対照群 8 6 5 5 5 4

本邦 Zilver PTX 26 25 24 20 20 13

海外 PTA 対照群 118 94 68 34 28 24

海外 Zilver PTX 219 205 158 144 129 76

%

本邦 PTA 対照群 27.6 27.6 23.0 23.0 23.0 18.4

本邦 Zilver PTX 100.0 100.0 96.0 80.0 80.0 80.0

海外 PTA 対照群 53.2 43.6 34.1 31.6 26.8 25.8

海外 Zilver PTX 99.5 94.5 81.1 75.9 74.3 71.3

図 4.3.3.4-3. 本邦と海外の患者を比較した、一次開存率のカプラン・マイヤー推定値

表4.3.3.4-2. 本邦と海外の患者を比較した、一次開存率のカプラン・マイヤー推定値

治療後の

期間

(月)

一次開存率

推定値 標準誤差 不成功累積数

打ち切り

累積数 残数

日本 海外 日本 海外 日本 海外 日本 海外 日本 海外

Zilver PTX ステント群

0 100% 99.5% 0% 0.5% 0 1 0 0 26 219

1 100% 99.5% 0% 0.5% 0 1 1 0 25 219

6 100% 94.5% 0% 1.5% 0 12 1 3 25 205

12 96.0% 81.1% 3.9% 2.7% 1 40 1 22 24 158

24 80.0% 74.3% 8.0% 3.1% 5 53 1 38 20 129

PTA 対照群

0 27.6% 53.2% 8.3% 3.3% 21 104 0 0 8 118

1 27.6% 53.2% 8.3% 3.3% 21 104 0 0 8 118

6 27.6% 43.6% 8.3% 3.3% 21 125 2 3 6 94

12 23.0% 34.1% 8.1% 3.2% 22 145 2 9 5 68

24 23.0% 26.8% 8.1% 3.3% 22 155 2 39 5 28

本邦における PTA対照群 本邦における Zilver PTX ステント群 海外における PTA対照群 海外における Zilver PTX ステント群

一次開存率

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354

多施設から集積されたデータのプール解析可能性について、回帰分析モデル(SAS PROC

GENMOD)を主要安全性評価項目および有効性評価項目に適用することで検証した。表 4.3.3.4-3

に、1 年の主要有害事象の回帰分析モデルのタイプⅢ尤度比検定における p 値を示す。表の注記に

おいて提示した条件に加え、当該解析モデルには患者背景及び併発症も含めた。重要な点は、そ

れぞれの項目における、患者群との相互関係に関連する p 値である。5 つの p 値すべてが 0.05 を

超えており、国(p = 0.32)、病院の年間退院数(p = 0.26)、病床数(p = 0.49)、ティーチン

グ・ホスピタルの該当/非該当(p = 0.84)、および試験段階(第 I相および第 II相試験、p =

0.75)によって治療効果が変わらないことが示されている。本解析により、複数の治験実施医療

機関から集積されたデータの一括した解析が可能であることが実証された。

表4.3.3.4-3. 主要有害事象における回帰分析モデルから求めたp値

共変量 1 年後の主要有害事象 1

試験段階 0.49

国 0.52

推定年間退院数 0.67

病床数 0.93

ティーチング・ホスピタル 0.30

<患者群との相互関係>

国 0.32

推定年間退院数 0.26

病床数 0.49

ティーチング・ホスピタル 0.84

試験段階 0.75 1 p 値は、主効果の共変量(年齢、性別、BMI、喫煙歴、糖尿病、高コレステロール血症、高血圧、

頸動脈疾患、腎臓疾患、肺疾患、鬱血性心不全、心筋梗塞の既往歴、不整脈の既往歴)を含むモ

デルのタイプⅢ尤度比検定から求めた。

1 年後の開存率の回帰分析モデルにおけるタイプⅢ尤度比検定に関連する p 値を、表 4.3.3.4-4 に示

す。表 4.3.3.4-3 と同じく、重要な点は、それぞれの項目における患者群との相互関係に関連する

p 値である。5 つの p 値すべてが 0.05 を超えており、国(p = 0.24)、病院の年間退院数(p =

0.29)、病床数(p = 0.25)、ティーチング・ホスピタルの該当/非該当(p = 0.35)、および試験段

階(第 I相および第 II相試験、p = 0.08)によって治療効果が変わらないことが示されている。同

様に、本解析により、複数の治験実施医療機関から集積されたデータの一括した解析が可能であ

ることが実証された。

表4.3.3.4-4. 開存率における回帰分析モデルから求めたp値

共変量 1 年後の開存率 1

試験段階 0.35

国 0.78

推定年間退院数 0.19

病床数 0.07

ティーチング・ホスピタル 0.09

<患者群との相互関係>

国 0.24

推定年間退院数 0.29

病床数 0.25

ティーチング・ホスピタル 0.35

試験段階 0.08

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355

1 p 値は、主効果の共変量(年齢、性別、BMI、喫煙歴、糖尿病、高コレステロール血症、高血圧、

頸動脈疾患、腎臓疾患、肺疾患、鬱血性心不全、心筋梗塞の既往歴、不整脈の既往歴、病変部の

長さ、近位基準血管径)を含むモデルのタイプⅢ尤度比検定から求めた。

このようにプール解析の妥当性について検証した結果、本臨床試験におけるすべての患者を同一

母集団として扱うことは妥当であることが示された。第 I相および第 II相試験は一括した解析の

一部を構成するものと考えられ、安全性及び有効性の結果に対して重大な影響を及ぼすものでは

なく、よって治療効果も変らない。さらに、本邦と海外の臨床結果に大差がないことも示され、

従って本臨床試験における総合的な結果は、本邦における患者にも適用すると考えられる。

4.3.3.5 PP, ITT, AT の各集団の解析

治験実施計画書において記載したように、主要安全性仮説については、プロトコールに基づいた

(PP)集団による解析を行い、主要有効性仮説については intent-to-treat(ITT)集団による解析を

行い評価した。副次的な解析としては、安全性について ITT 集団及び as-treated(AT)集団による

解析で、また有効性については PP 集団及び AT 集団による解析で評価した。

以下の表 4.3.3.5-1 おいて示すように、最初の無作為割付において ITT 解析と AT 解析との間に差

がある患者は 3 名のみであり、また、早期 PTA 不成功後の再度無作為割付において差がある患者

は 4 名であった。

表4.3.3.5-1. ITT解析とas-treated解析との間に差がある患者

患者 ID 病変

最初の無作為割付 早期 PTA 不成功後の再度無作為割付

ITT As-treated ITT As-treated

0710004 1 Zilver PTX ベアメタルステント 該当せず 該当せず

4413706 2 PTA Zilver PTX 該当せず 該当せず

5213402 2 PTA Zilver PTX 該当せず 該当せず

1110401 1 PTA PTA ベアメタルステント 市販ステント

1310405 1 PTA PTA ベアメタルステント Zilver PTX

4711409 1 PTA PTA ベアメタルステント Zilver PTX

9111706 1 PTA PTA ベアメタルステント Zilver PTX

PP、 ITT 及び AT 集団の安全性及び有効性の解析は非常に類似しており、本臨床試験の安全性仮

説及び有効性仮説は、評価した集団に関わらず、いずれも達成されたことが示された(表 4.3.3.5-

2 及び表 4.3.3.5-3)。

表4.3.3.5-2. PP, ITT, AT の各集団の無事象生存解析

集団 測定項目 PTA

対照群

Zilver PTX

ステント群

統計量Z

P 値 結論

PP 1 年フォローアップ時

の無事象生存率のカプ

ラン・マイヤー推定値

82.6% 90.4% 5.60 < 0.01 帰無仮説は棄

却され、両群

は同等である

ITT 82.8% 90.4% 5.80 < 0.01

AT 82.6% 90.7% 5.75 < 0.01

表4.3.3.5-3. PP, ITT, AT の各集団の一次開存性解析

集団 測定項目 PTA

対照群

Zilver PTX

ステント群

P 値

(ログランク) 結論

ITT

1 年フォローアップ時

の一次開存率のカプラ

ン・マイヤー推定値

32.8% 83.1% < 0.01 帰無仮説は棄却

され、Zilver

PTX 群は PTA

群より優越性を

示す

PP 32.2% 83.5% < 0.01

AT 32.2% 83.6% < 0.01

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356

4.3.3.6 前向き非無作為化非盲検の多施設共同試験(レジストリ試験)

Zilver PTX ステントの前向き非無作為化非盲検の多施設共同単群試験を実施し、膝上大腿膝窩動

脈に狭窄又は再狭窄(ステント内再狭窄を含む)を有する患者を欧州、カナダ及び韓国で登録し

た。登録した患者全員に Zilver PTX ステントを留置した。

本臨床試験の目的は、Zilver PTX ステントの安全性及び性能を定量化することであった。主要評

価項目は、Zilver PTX ステントを留置した患者の 6 ヶ月の無事象生存率が、類似の患者集団を対象

として最近実施された臨床試験における 6 ヶ月の無事象生存率と同等であることであった。また、

本臨床試験は、潜在的に稀な(機器又は薬剤との因果関係が認められる)有害事象の発生率をあ

る程度正確に算出するために、複数の臨床試験から集積された 1,000 名を超える Zilver PTX ステン

ト留置患者のデータの一部として提供することも目的としていた。

全ての死亡例を含む患者の有害事象は、独立した臨床事象委員会によって判断された。独立した

医師及び生物統計学者から構成されるデータ安全性モニタリング委員会が、本臨床試験の安全性

を監視した。

2006 年 4 月 7 日から 2008 年 6 月 18 日の間に、30 施設で 787 名の患者が登録された。フォローア

ップは、退院前、1 ヶ月、6 ヶ月、1 年及び 2 年に臨床評価が、退院前、6 ヶ月及び 1 年に超音波検

査及びステントの X 線検査が予定されていた。また、3 ヶ月、9 ヶ月及び 18 ヶ月には電話による

フォローアップが予定されていた。臨床評価は、1 年フォローアップ時に 740 名、2 年フォローア

ップ時に 500 名の患者に実施した。

患者の病歴には、糖尿病(36%、285/787)、高コレステロール血症(58%、458/787)、高血圧

(80%、627/787)、喫煙歴がある又は現在喫煙している(80%、627/787)患者の割合が高かった。

本試験では 900 病変部に合計 1722 本の Zilver PTX ステントを留置した。60%を超える患者が、2

本以上 Zilver PTX ステントを留置した。本臨床試験の対象病変部の長さの平均は 100±82 mm で、

38%(345/900)が完全に閉塞していた。24%(219/900)は以前に治療したことがあり、そのうち

以前ステントを留置したことがある病変部は 130 であった。

Zilver PTX ステントを留置した患者の 6 ヶ月フォローアップ時の無事象生存(EFS)率は 97.4%

(図 4.3.3.6-1 及び表 4.3.3.6-1)で、あらかじめ設定した客観的評価基準 75% EFS に対して優越性

を示した(p < 0.01)。

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357

at risk

Zilver PTX 780 725 563 380 239

%

Zilver PTX 100.0 97.4 89.0 82.2 79.3

図4.3.3.6-1 無事象生存率のカプラン・マイヤー曲線

表4.3.3.6-1 無事象生存率のカプラン・マイヤー推定値

治療後の期間

(月)

推定無事象

生存率 標準誤差 不成功累積数 打ち切り累積数 残数

0 100.0% 0% 0 0 780

1 99.2% 0.3% 6 14 767

6 97.4% 0.6% 20 42 725

12 89.0% 1.2% 80 144 563

18 82.2% 1.5% 115 292 380

24 79.3% 1.7% 128 420 239

総括すると、6 ヶ月フォローアップ時の無事象生存率は 97.4%、1 年フォローアップ時の無事象生

存率は 89.0%であった。この結果は、多施設共同の前向き無作為化対照試験における Zilver PTX

ステント群の 6 ヶ月フォローアップ時の無事象生存率 97.0%、1 年フォローアップ時の無事象生存

率 90.4%と一致するものだった。これらの結果から、Zilver PTX ステントの安全性及び有効性が適

切に裏付けられている。

また、副次評価項目についても良好な結果が得られた。具体的には、1 年フォローアップ時の一次

開存率は 83.0%であった。(図 4.3.3.6-2 及び表 4.3.3.6-2)

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358

at risk

Zilver PTX 840 825 815 793 718 698 653 595

%

Zilver PTX 99.9 98.8 98.0 96.4 88.9 87.2 83.0 77.1

図4.3.3.6-2 一次開存率のカプラン・マイヤー曲線

表4.3.3.6-2 一次開存率のカプラン・マイヤー推定値

治療後の期間

(月)

推定一次

開存率 標準誤差 不成功数 打ち切り数 残数

0 99.9% 0.1% 1 0 840

1 99.0% 0.3% 8 2 831

6 96.4% 0.6% 30 18 793

12 83.0% 1.3% 138 50 653

1 年フォローアップ時の一次開存率は 83.0%で、多施設共同の前向き無作為化対照試験における

Zilver PTX ステント群の 1 年フォローアップ時の一次開存率 83.1%と一致していた。この結果は、

Zilver PTX ステントの有効性を適切に担保するものである。

1 年フォローアップ時にステント破断が認められたのはわずか 1.5%(22/1432)で、1 年フォロー

アップ時の臨床状態及び機能状態の測定値(Rutherford 分類、ABI、歩行障害質問票、QOLスコ

ア)は治療前と比較し著しく改善した。また、これらのデータは、病変部が長く、ステント内再

狭窄が既に発生している患者の割合が高い患者集団における Zilver PTX ステントの耐久性及び臨

床的有益性を示している。

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359

前向き非無作為化非盲検の多施設共同試験の結果は、膝上大腿膝窩動脈の症候性血管疾患の治療

における「販売名:Zilver PTX 薬剤溶出型末梢血管用ステント」の安全性及び有効性を裏付ける

根拠となるものである。

4.3.3.7 無作為化対照試験およびレジストリ試験におけるステントの破断

無作為化対照試験における Zilver PTX ステントの 1 年の破断率は 0.9% (4/457)であり、長い病変

(> 14 cm)およびステント内再狭窄が既往する病変を含んだレジストリ試験における破断率は

1.5% (22/1432)であった。病変位置、病変長、登録時の閉塞・狭窄の有無、石灰化、安全性の転帰

(1 年時無事象生存(EFS))、有効性の転帰(1 年時開存率)を含む各ステントの破断の詳細を

表 4.3.3.7-1 に示す。

表 4.3.3.7-1. 1 年フォローアップ時のステントの破断の詳細

破断の

タイプ 患者 ID 治験 病変位置

病変長(mm)

閉塞 石灰化 1 年時EFS

1 年時

開存率

III 1210901 無作為化 内転筋管/内転筋腱裂孔

を跨ぐ遠位 SFA 103 無し 軽度 合格 合格

I 9111312 無作為化 内転筋管/内転筋腱裂孔

から遠位の遠位 SFA 66 無し 中等度 合格 合格

I 9411311 無作為化 内転筋管/内転筋腱裂孔

を跨ぐ遠位 SFA 48 有り 無し 合格 合格

III 9413313 無作為化 内転筋管/内転筋腱裂孔

を跨ぐ遠位 SFA 85 無し 無し 合格 合格

IV 1112090 レジストリ 近位 SFA 75 無し 重度 合格 合格

IV 1312050 レジストリ 近位 SFA 280 有り 無し 合格 合格

II 1312077 レジストリ 近位 SFA 270 有り 軽度 合格 合格

II 1312086 レジストリ 内転筋管/内転筋腱裂孔

を跨ぐ遠位 SFA 300 有り 中等度 合格 合格

IV 1312095 レジストリ 近位 SFA 290 無し 軽度 不合格(TLR)

1

不合格

IV 1312120 レジストリ 内転筋管/内転筋腱裂孔

を跨ぐ遠位 SFA 70 無し 中等度 合格 合格

IV 1312127 レジストリ 近位 SFA 270 有り 無し 合格 合格

III 1312142 レジストリ 内転筋管/内転筋腱裂孔

から近位の遠位 SFA 220 有り 重度 合格 合格

IV 1412006 レジストリ 内転筋管/内転筋腱裂孔

を跨ぐ遠位 SFA 200 無し 無し

不合格(TLR)

2

不合格

IV 1412013 レジストリ 近位 SFA 120 無し 中等度 合格 合格

IV 1412021 レジストリ 近位 SFA 200 有り 無し 合格 合格

II 1412033 レジストリ 内転筋管/内転筋腱裂孔

を跨ぐ遠位 SFA 100 無し 中等度 合格 不合格

IV 1412040 レジストリ 近位 SFA 220 有り 中等度 合格 不合格

III 1612002 レジストリ 近位 SFA 160 有り 重度 合格 非該当

IV 1812041 レジストリ 内転筋管/内転筋腱裂孔

を跨ぐ遠位 SFA 60 有り 中等度

不合格(TLR)

不合格

IV 2112007 レジストリ 内転筋管/内転筋腱裂孔

から近位の遠位 SFA 210 有り 中等度

不合格(TLR)

不合格

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360

破断の

タイプ 患者 ID 治験 病変位置

病変長(mm)

閉塞 石灰化 1 年時EFS

1 年時

開存率

IV 2112009 レジストリ 内転筋管/内転筋腱裂孔

を跨ぐ遠位 SFA 300 有り 中等度

不合格(TLR)

不合格

II 3312002 レジストリ 内転筋管/内転筋腱裂孔

を跨ぐ遠位 SFA 40 有り 中等度

不合格(TLR)

3

不合格

II 3512005 レジストリ 近位 SFA 45 有り 無し 不合格(TLR)

不合格

I 4012026 レジストリ 内転筋管/内転筋腱裂孔

から近位の遠位 SFA 240 有り 軽度 合格 不合格

IV 4612002 レジストリ 内転筋管/内転筋腱裂孔

を跨ぐ遠位 SFA 220 有り 重度 合格 合格

IV 4612009 レジストリ 近位 SFA 180 無し 軽度 合格 合格

1 4 番目のステントに破断が見られた。追加施術を行った際 4 番目のステントは開存しており、責

任病変は 5 番目のステント(ベアメタルステント)に位置していた。 2 左 SFA の起始部(他社ステントの近位)から遠位 SFA(側副血行路が存在する位置)にかけて、

完全な閉塞があった。 3 4 月 1 日の時点では破断が観察されなかったが、5 月 19 日に追加施術が行われ、10 月 13 日に破

断が観察された。

4.3.3.8 潜在的に稀な有害事象の複合的安全性解析

多施設共同の前向き無作為化対照試験、及び前向き非無作為化非盲検の多施設共同試験(レジス

トリ試験)において Zilver PTX ステントを留置した患者を合計すると 1,092 名となり、機器又は薬

剤と関連性を有する可能性のある稀な有害事象の発生率を、十分な精度で算出することができる。

これらの症例について、ステントの完全性並びに粒状物質、好中球減少症、過敏症及びステント

の血栓症に潜在的に関連する有害事象の評価を行った。この 1,092 名には、登録時に既にステント

内再狭窄が発生していた患者、及び、病変部が長いため複数のステントをオーバーラップさせて

留置した患者が多数含まれていた。高解像度の X 線写真では、1 年フォローアップ時に 98.6%のス

テントにはステント破断がないことが確認され(1,863/1,889)、ステント破断率は 1.4%であった。

稀な症例である好中球減少症においても、Zilver PTX ステントのパクリタキセルコーティング又

は本臨床試験への参加に起因すると判断されたものはなかった。同様に、パクリタキセルコーテ

ィング又はナイチノール製ステントが原因の薬物反応又は過敏症反応は報告されなかった。ベア

メタルステント又は Zilver PTX ステントを留置した患者において、粒状物質と関連性を有する可

能性がある有害事象(塞栓症、ブルートウ症候群など)の発生率は低く、Zilver PTX ステントを

留置した患者において発生率が増加することはなかった。ステント血栓症の発生率は低く、ベア

メタルステント留置患者と比較して Zilver PTX ステント留置患者において発生率が増加すること

はなく、また、以前文献で報告されている大腿膝窩動脈におけるステント留置結果と一致してい

た。1,000 名を超える患者に留置した 2,000 本を超える Zilver PTX ステントから得られたこれらの

結果から、ポリマーを使用しない PTX®コーティング及び Zilver PTX ステントの安全性がさらに裏

付けられた。

4.3.3.9 総括及び結論

ポリマーを使用しないパクリタキセルで外側表面がコーティングされている、自己拡張型ナイチ

ノール製ステントである本品の多施設共同前向き無作為化対照試験、及び前向き非無作為化非盲

検の多施設共同試験を実施した。安全性及び有効性データは、主に多施設共同前向き無作為化対

照試験のデータであり、本臨床試験の結果は、Zilver PTX ステントの安全性及び有効性を裏付け

るものである。具体的には、Zilver PTX ステント群の無事象生存率は PTA対照群に対して非劣性

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であることが統計的に示された。さらに、Zilver PTX ステント群の無事象生存率は PTA 対照群よ

り著しく高く、Zilver PTX ステントによる一次ステント術は、現在の標準治療である PTA と追加

的ステント留置の併用よりも主要有害事象発生率が低いことが示された。Zilver PTX ステントに

よる一次開存率は PTA による一次開存率より著しく高く、Zilver PTX ステントによる一次ステン

ト術は、PTA より著しく効果的であることが示された。早期 PTA 不成功が発生した病変部の無作

為化比較において、ベアメタルステントに対して Zilver PTX ステントは優れた有効性を示した。

また、前向き非無作為化非盲検の多施設共同試験の結果は、Zilver PTX ステントの安全性及び有

効性の追加的なエビデンスとなっている。

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