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125 3.3. 対象国③: シンガポール 3.3.1. 国・地域別マーケティング調査結果 品目名 HS コード 選定理由 果実 - りんご 080810 もも 080930 なし 080820 ぶどう 080610 必須品目により みかん 080520 追加必須品目 いちご 081010 追加必須品目 ながいも 071490 必須品目により 加工食品 - 必須品目により 調味料 ※多品目の ため後述 菓子類 ※多品目の ため後述 シンガポールへの輸出量上位品目 食肉 - 必須品目により 牛肉 020230 食肉の内も輸出量が多いため 日茶 090210 必須品目により

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125

3.3. 対象国③: シンガポール

3.3.1. 国・地域別マーケティング調査結果

品目名 HS コード 選定理由

果実 -

りんご

080810

もも

080930

なし

080820

ぶどう

080610

必須品目により

みかん 080520 追加必須品目

いちご 081010 追加必須品目

ながいも 071490 必須品目により

加工食品 - 必須品目により

調味料

※多品目の

ため後述

菓子類

※多品目の

ため後述

シンガポールへの輸出量上位品目

食肉 - 必須品目により

牛肉 020230 食肉の内最も輸出量が多いため

日本茶 090210 必須品目により

126

シンガポールでは近年、経済成長が持続している。2000年から 2010年までの GDP成長率は年平均

6.0%であり、日本の 0.9%を大きく上回っている24(図表 3-138)。

また、2020年の GDPは、2011年比で約 1.5倍になると予測されている25。

人口は 2000年の約 3.92百万人から 2010年には 5.09百万人と約 29.9%増加しており、人口

増加は 2040年頃まで続くと予測されている26(図表 3-139)。

シンガポールの富裕層の割合は、微増が予想されており、2020年には 2010年に比べ約 1.1倍

の 79.3%になると思われる。一方、中間層と低所得層は減少すると予測されている2728。

年代別平均年間所得については、2010年時点では 45~49歳($34,324)、40~44歳($34,323)、

50~54歳($34,070)、35~39歳($33,224)、55~59歳($33,122)の順になっており、40

代の所得が最も高い。各年代の人口は、2010年時点で 40~44歳が約 56万人、35~39歳が約

55万人、30~34歳が約 55万人、25~29歳が約 54万人、20~24歳が約 53万人の順に多く、

平均年間所得が高い層(40代)と人口が最も多い層(40~44歳以下)は重なっているが、他の

層ではギャップが見られる(図表 3-140)。

また、国土が狭く人口密度が高いシンガポールでは、農地が限られている事もあり、ほぼ輸入に

頼っており、輸入相手国を分散することで、安定した食料の調達を図っている2930。食料自給率が低

いこと、大半の品目で輸入税がかからないことが特徴として挙げられる。

輸入税の課税対象品目は、以下の 6品目のみとなっており、日本から輸出される農産物には関

税がかからない31。

①スタウト(黒ビール: HS 番号: 2203.00.10 ) ②ビール( HS 番号: 2203.00.90 )

③アルコール度数 40 %以下の薬用サムスー( HS 番号: 2208.90.10 )

④アルコール度数 40 %超の薬用サムスー( HS 番号: 2208.90.20 )

⑤アルコール度数 40 %以下のその他サムスー( HS 番号: 2208.90.30 )

⑥アルコール度数 40 %超のその他サムスー( HS 番号: 2208.90.40 )

※サムスーとは、ハーブなどを配合した穀物蒸留酒のことをいう。

24 IMF World Economic Outlook Database 25 Euromonitor 26 国連経済社会局 27 Euromonitor 28 富裕層・中間層・低所得層の定義に関しては、JETRO「アジアの消費・流通市場の現状」(2011 年 1 月 13 日)で使用

されていた定義をここでは使用する。定義とは、世帯当たり可処分所得が$35,000 以上の世帯を富裕層、$5,000 から

$34,999 の世帯を中間層、$4,999 以下を低所得層とするものである。 29 農林水産省『シンガポールの農林水産業概況』 30 面積:710.3 平方キロメートル 人口:518 万 3,700 人(出典元:JETRO 2012 年 3 月) 31 JETRO

127

図表 3-138 シンガポールの GDP 成長率(%)

2.9%

0.2% 0.3%1.4%

2.7%1.9% 2.0% 2.4%

-1.2%

-6.3%

4.0%

9.1%

-1.2%

4.2% 4.6%

9.2%7.4%

8.7% 8.8%

1.5%

-0.8%

14.5%

-10%

-5%

0%

5%

10%

15%

20%

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

日本

シンガポール

出所:IMF World Economic Outlook Database

図表 3-139 シンガポールの人口予測(百万人)

3.92

4.27

5.09

5.38

5.60 5.80

5.98 6.10 6.15 6.14 6.11

3.0

3.5

4.0

4.5

5.0

5.5

6.0

6.5

7.0

2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050

出所:国連経済社会局

128

図表 3-140 シンガポールの年代別人口・所得(千人、ドル)

100

150

200

250

300

350

400

450

500

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65+

(ドル)

(歳)

人口

平均所得

出所:Euromonitor

図表 3-141 シンガポールの所得層別割合(世帯当たり可処分所得)(%)

2.0 0.9 1.9 1.8 1.6

22.9 21.4

24.4 22.0 19.1

75.1 77.773.7 76.2 79.3

0%

20%

40%

60%

80%

100%

2000 2005 2010 2015 2020

低所得層

$4,999以下

中間層

$5,000~$34,999

富裕層

$35,000以上

出所:Euromonitor

129

A.品目: りんご

(1)対象国・地域の市場実体

(a)生産量・輸出入量・販売量の動向

シンガポールはりんごの生産は行われていない。りんごの純輸入国であり、毎年 45,000~

50,000 トンほどのりんごを輸入している。毎年 5,000~12,000 トンほど再輸出もされており、マ

レーシア、インドネシア、ブルネイが主な相手国となっている32。

図表 3-142 シンガポールのりんご輸入・輸出量(トン)

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

輸入 輸出

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010輸入 49,314 50,627 47,817 45,797 44,285 45,800 47,177 45,828 47,749輸出 6,086 12,041 9,716 8,111 7,948 7,228 6,206 5,651 6,983

出所: ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

(2)日本産の主要農林水産物等への需要及び潜在需要の明確化

(i) 需要状況

日本からのりんごの輸出量では、シンガポールは 6 位となっているが、1位の台湾のシェアが

約 9 割程度と突出しており、シンガポールへの輸出の全体に占める割合は 0.2%にすぎない(図

表 3-143)。震災後、8月以降は緩やかながらも日本からシンガポールへの輸出が回復しつつあ

る(図表 3-145)。

なお、震災前後の状況を関係者へヒアリングしたところ、タイ向けの輸出同様、国内のりんご

の不作の為、前年の 2倍程度の見積もりの提示を行わなければならず、また、一部風評被害の影

響で全体的な引き合いが弱く、確保したりんごは全量、台湾・香港に振り分けた企業もあったよ

うである。

日本産のりんごの品質の高さに関しては、シンガポールでも認知されている。近年はギフト用

よりも、自宅で購入するシンガポール人の割合が増えている。

震災直後は、消費者が日本産のりんごの購入を控える傾向も出ていたが、2012 年 2 月段階で影

響はほとんど残っていない。シンガポールではふじと王林を一緒に試食すると、甘い王林を好む

32 ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

130

傾向が強い。また、りんごをイメージする色として赤色が好まれるが、味の良いりんごであれば

色に関わらず購入されている。

図表 3-143 りんごの日本から各国への輸出量(トン)

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

台湾 香港 中国 タイ インドネシア シンガポール

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011全体 10,210 16,791 10,089 17,099 18,761 25,728 25,163 20,929 21,075 18,205台湾 9,424 16,114 9,458 16,378 17,869 24,360 23,355 19,139 18,692 16,446香港 331 258 191 250 313 505 719 1,009 1,312 1,115中国 0 0 41 132 157 326 390 188 392 259タイ 223 215 181 180 202 245 306 307 344 247インドネシア 52 79 45 34 63 56 81 73 99 42シンガポール 81 18 46 31 54 67 86 66 96 38

出所: ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

131

図表 3-144 りんごの日本から各国への輸出額(千 USD)

1

10

100

1,000

10,000

100,000

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

台湾 香港 中国 タイ インドネシア  シンガポール 全体

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

台湾 19,149 34,694 24,663 45,484 45,382 62,019 62,647 50,257 61,072 70582

香港 786 801 790 1,050 1,178 2,141 3,257 4,126 5,992 6587

中国 0 0 152 534 752 1,628 2,117 991 2,495 1993

タイ 693 755 745 764 845 1,031 1,419 1,477 2,017 1666

インドネシア  163 283 176 150 258 237 398 341 538 276

シンガポール 166 59 160 116 163 228 312 242 396 184

全体 20,957 36,592 26,686 48,098 48,578 67,284 70,150 57,434 72,510 81288

出所: ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

132

図表 3-145 りんごの日本からシンガポールへの輸出量(トン)

0

5

10

15

20

25

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

2009 2010 2011

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月2009 3 4 8 5 11 2 2 1 1 6 15 72010 16 11 4 20 11 1 5 3 1 4 7 122011 2 2 9 2 4 2 1 1 2 3 4 5

出所: 財務省貿易統計

図表 3-146 りんごの日本からシンガポールへの輸出額(千 USD)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

2011年 2010年 2009年

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

2011年 13 11 29 10 19 10 6 4 10 17 22 34

2010年 53 36 12 72 47 7 23 18 7 26 35 56

2009年 9 14 29 20 38 4 8 4 4 27 57 27

出所: ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

133

(ii) 輸出競合国との競争及び住み分け状況

○りんご

シンガポールにおけるりんごの輸入元としては中国が最も多く、全体の 46%を占める。次いで

南アフリカ共和国が徐々に輸出量を増やして 2 位になっている。南アフリカ共和国からの輸入は

2003 年には 5,000 トン未満だったが、2008 年には 10,000 トンを超えている(図表 3-148)。

元々、南アフリカではりんごの大規模農園が存在しており、安価で大量のりんごを輸出するこ

とが可能であった。近年は、品質の高まりや南半球であることを活かし、北半球の産地が出荷で

きない冬や真夏にかけて出荷を伸ばしていると考えられる。また、2008 年 10 月にシンガポール

で中国産の乳製品からメラミンが検出されるなど、中国産食品への不安感の高まりから、りんご

も中国産の輸入が減少している可能性もある。ただし、現地小売店等によれば、最近では、中国

産のふじと日本産のふじを見比べた時に、大きさや見た目は遜色がなく、価格に関しては中国産

のふじが日本産の 4 分の 1 程度なので、日本産のりんごを食した事のない消費者は迷わず中国産

を選ぶという声も聞かれた。味は圧倒的に日本産の方が美味しいので、いかに違いを理解させる

かが重要であるとの事である。また、輸入量は少ないが、日本産のりんごと競合すると言われて

いるものは、日本産りんごの品質に最も近い韓国産りんごであるとの事であった。価格帯に関し

て、ヒアリングによると、一般的には日本産りんごの 50%~70%との事であったが、訪問時には、

韓国産ふじが、プロモーション価格として、1 パック 6 個入りが 3 シンガポールドルで販売され

ており、お得感や価格帯を前面に出したプロモーションに力を入れているように見受けられた。

また、米国産のオーガニックりんごも、価格帯に違いはあるが、日本産と競合しているとの意見

もあった。ちなみに、オーガニックの基準はシンガポールで明確な基準が制定されておらず、各

国で認定された基準が適用されているケースが多いようである。

なお、主なりんごの小売価格は以下の通りとなっている。

図表 3-147 りんごの小売価格

調査時期・価格(シンガポールドル)2012年3月

日本 15.9 ふじ 4個 伊勢丹日本 8.3 ふじ 2個 伊勢丹日本 19.9 ジョナゴールド(大) 4個 伊勢丹日本 10.9 ジョナゴールド(大) 3個 コールドストレージ日本 13.9 睦 2個 伊勢丹日本 12.3 金星(大) 2個 伊勢丹日本 10.9 金星(大) 3個 コールドストレージ日本 6.9 金星(小) 1個 コールドストレージ日本 10.9 王林 3個 コールドストレージ日本 10.9 サンふじ(大) 3個 コールドストレージ日本 6.9 サンふじ(小) 1個 コールドストレージ

アメリカ 0.5 apple green 1個 コールドストレージアメリカ 0.65 apple red 1個 コールドストレージアメリカ 7.9 ふじ 7個 伊勢丹アメリカ 3.6 Gala 6個 伊勢丹中国 3.3 ふじ 6個 伊勢丹中国 0.95 ふじ 1個 コールドストレージ

品目、原産国(産地) 種類(品名) 単位 販売店

(資料)ぐるなび調べ

1 シンガポールドル=63.65 円(2012 年 3 月時点)

134

図表 3-148 シンガポールりんご国別輸入量(トン)

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

全体 中国 南アフリカ 米国 ニュージーランド フランス

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010全体 49,314 50,627 47,817 45,797 44,285 45,800 47,177 45,828 47,749中国 24,391 28,525 30,025 26,001 21,581 22,924 22,166 19,748 21,992南アフリカ 4,272 4,611 5,902 5,781 7,416 7,188 10,105 10,085 10,021米国 4,566 4,428 2,990 5,606 7,307 6,111 4,951 6,862 5,574ニュージーランド 9,014 8,024 5,136 3,772 4,722 5,454 5,701 5,289 4,673フランス 3,978 1,964 1,695 2,870 1,778 2,527 2,894 2,737 3,987

出所: ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

(iii) 今後の需要の伸びの検討

人口増加と所得の向上により、シンガポールの果物市場は拡大していると思われる。

Euromonitor 社の調査では、シンガポールの果物の市場規模は、2010 年では 350 千トンである

が、2015 年の約 371 千トンにまで伸びると予測されている(図表 3-149)。

りんごは寒い場所での生産量が多く、品質も高い傾向にあるため、東南アジア等、南の地域で

は暑いところほど外国産のりんごが人気になる傾向がある。シンガポールも同様にりんごは人気

があり、日本産りんごは品質の高さと味の良さから価格は高いが、優位性はある。日本産りんご

を高頻度で購入する層の 55%が「美味しさ」を重視するという回答を示しており、消費者の最も

強いニーズである「美味しさ」に答え続ける事が日本産りんごの輸出量を伸ばす鍵である。興味

の喚起という意味で新品種の積極的な販売も有効であると思われる。

135

なお、供給面について関係者にヒアリングしたところ、りんごの国内需要はゆるやかな減少傾

向にあり、価格も低迷していることから、担い手が高齢化・減少し、生産量も減る傾向にあると

の事であった。よって輸出需要が拡大し、価格がよければ、国内用を輸出用に振り分ける事も検

討するし、必然的に担い手も育ち、生産力も増強されるであろうとの声が聞かれた。

最後に、風評被害に関する意見について、震災後、1 年経つ 2012 年の 3 月に現地の現場関係者

からヒアリングできたので下記に記述する。

「日本産果実全般について言える事だと思うが、輸出量は回復傾向であるし、ローカル個人個

人のマインドもほぼ戻っている。ただし、日本産の優位性を保ってきた安全・安心という聖域は

崩れてしまったのは事実である。今まで日本産は、価格は高いが安全性の心配は何もないという

領域にあったが、今では中国産は農薬が心配、日本産は放射能が心配と言ったような同じレベル

で比較する人もいる。さらに、この一年で日本産の商材が販売されていたスペースが、韓国産・

中国産に取って代わられているケースも多く、長期的に見た時に、需要が伸び続ける為には様々

な課題があると考える」

日本産の特徴は「美味しい」「安全・安心」もさることながら、様々な品種等も日本産の特徴で

あり、競争優位だと考える。現地の売り場を確認したところ、「日本産」として販売している所が

大半ではあるが、一部、県名・産地名までいれて販売している所も確認された。ハイグレード層ほ

ど安全性を気にする傾向から、日本国内への産地の関心も高まっているのは事実である。これらを

踏まえ、生産体制の整備等課題はあるものの、具体的な品種単位でプロモーションを積極的に行う

等、需要を拡大させる為の各種施策についても検討する事で、まだ需要の伸びは期待できるものと

考える(なお、現地でのヒアリングによると、シナノゴールドの人気が高く、今後も伸びるだろう

との事であった)。

136

図表 3-149 シンガポールの果物市場規模(千トン)

339 338

350

371

320

330

340

350

360

370

380

2000 2005 2010 2015

出所: Euromonitor

(3)日本産の主要農林水産物等の購買層の明確化(街頭聞き取り調査結果)

(i)調査品目の購買目的、頻度

シンガポールの市民 521 人に対する街頭調査によると、自宅用での購入が 96%を占め、贈答用

は 4%であった。

ほぼ毎日購入する人が 4%、週に 1 回程度が 13%、月に 1回程度が 14%、3 か月に 1回程度が

5%、6 か月に 1 回程度が 8%、買っていない人が 56%であった。

図表 3-150 日本産品購入頻度: りんご(n=521)

4%

13%

14%

5%

8%

56%

ほぼ毎日週に1回程度月に1回程度3か月に1回程度6か月に1回程度買っていない

137

(ii)購買層(所得別、年齢別、地域別等)

日本産りんごを 1 か月に 1 回以上購入している人を「高頻度購入者(31%、n=162)」、3~6

か月に 1 回購入している人を「低頻度購入者(13%、n=66」とすると、それぞれの層の属性は

以下の通りになった。

各世帯月収層における高頻度購入者の割合は、世帯月収は 2,000 シンガポールドル以下では

60%であるが、2,001~4,000 シンガポールドルでは 72%、4,001~6,000 シンガポールドルでは

74%、6,001~8,000 シンガポールドルでは 72%、8,001~10,000 シンガポールドルでは 69%、

10,001 シンガポールドル以上では 73%と、2,001 シンガポールドル以上の世帯では高頻度購入者

の割合がほぼ変わらないという結果であった。

また、高頻度購入者の男女比は、男性 49%、女性 51%であった。低頻度購入者の男女比は男

性 53%、女性 47%であり、日本産りんごの購入頻度は高頻度購入者と低頻度購入者ともに男女

比にあまり差がないことが判明した。

図表 3-151 所得別購入頻度内訳

低頻度

購入者

40 28 26 28 31 27

高頻度

購入者

60 72 74 72 69 73

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

2,000

シンガポールドル以下

(n=30)

2,001-4,000

シンガポールドル

(n=79)

4,001-6,000

シンガポールドル

(n=47)

6,001-8,000

シンガポールドル

(n=29)

8,001-10,000

シンガポールドル

(n=13)

10,001

シンガポールドル以上

(n=22)

(iii)消費者の購買基準(価格、産地、品質等)

日本産りんごの購買基準で最も重視する項目として、「美味しさ」を選んだ人が 56%で最も多

く、次いで「ヘルシーさ」31%、「見た目の良さ」7%であり、「ブランド」5%、「安全性」1%、

「美味しさ」が最も重要な購買基準となっていると思われる(図表 3-148)。

購入頻度別では、高頻度購入者の 55%が「美味しさ」を選んでおり、続いて「ヘルシーさ」が

35%、「ブランド」が 5%、「見た目の良さ」が 4%、「安全性」が 1%となっている。低頻度購

138

入者では、「美味しさ」が 59%、「ヘルシーさ」が 21%、「見た目の良さ」が 15%、「ブラン

ド」が 5%、「安全性」が 0%、であった。

高頻度購入者では「ヘルシーさ」を選ぶ人の割合が低頻度購入者より 14%多いが、「見た目の

良さ」を選ぶ人は 11%少なく、「美味しさ」を選ぶ人は 4%少なかった。

日本産りんご購入者の内、日本国内での産地を購入時に意識する人は 17%、意識しない人は

78%であった。

図表 3-152 購入頻度別購買基準: りんご

56 55 59

31 35 21

1 1 0

5 5

5

7 4 15

購入者全体

(n=228)

高頻度購入者

(n=162)

低頻度購入者

(n=66)

0%

20%

40%

60%

80%

100%

美味しさ ヘルシーさ 安全性 ブランド 見た目の良さ

図表 3-153 日本産品購入者の産地への意識: りんご (n=228)

意識する

17%

意識しない

78%

わからない

5%

139

(4)日本産の主要農林水産物等の商流

(I)各流通段階における取扱量及びシェア

シンガポールにおいて日本産のりんごは、消費者に広く認知されている。現地では主要な青果

物卸業者が 4~5 社あり、主にそれらの卸業者を通じて販売されている。以前、日本産のりんご

は、日系の百貨店・スーパーを中心に販売されていたが、現在はローカル系のスーパーでも広く

販売されている。シンガポールにおいての取扱量は年間を通じては青森県産の流通量が圧倒的に

多いが、青森県に加えて、長野県、岩手県等各生産県が積極的にプロモーションを行っており、

販売される品種も年々増えてきている。昨年秋から今年の春にかけてシンガポールの小売店で販

売された品種としては「サンふじ」、「シナノゴールド」、「世界一」などの定番商品に加えて、

岩手県産「こうこう」、青森県産「きおう」、「秋映え」なども販売されている。

*輸入と卸を兼ねているケースが多く中間業者はあまり存在しない。

*果物全般に言える事だが、主要な輸入卸と小売にて排他的なパートナー形態がより明確になっ

てきている(例 ANZI=伊勢丹、KYOHOYA=コールドストレージ、BANCHOON=NTUC)

(ii)各流通段階におけるバリューチェーン

図表 3-154 果物の商流: りんご

140

現地でのヒアリングによれば、CIF 価格に輸送費、手数量等経費が 5%~8%かかり、現地の卸

業者に対するマージンが 20%~25%上乗せされる。その後、ローカルの小売店であれば約 20~

30%のマージンが上乗せされ、日系の小売店であれば約 40%程度マージンが上乗せされ、店頭で

販売されることになる。したがって、小売販売される際にのりんごは、CIF 価格の 1.45~1.73 倍

程度となる。

一例として、現地における小売での販売価格は 2012 年 3 月時点で、ふじ(2 個)が 8.3 シンガ

ポールドル、金星(大)(2 個)が 12.3 シンガポールドル、陸奥(2 個)が 13.9 シンガポールド

ルで販売されていた。その他の種類や他国産の価格については前述の「輸出競合国との競争及び

住み分け状況」図表 3-147 に記述している。なお、ふじについては日本の市場での価格の約 2倍

程度となっている33。

B.品目: もも

(1)対象国・地域の市場実体

(a)生産量・輸出入量・販売量の動向

シンガポールはももの輸入国であり、毎年 1,500~2,000 トンほどのももを輸入している一方、

輸出は 50~150 トンほどに留まっている。主な輸出相手国は、マレーシア、カンボジア、ブルネ

イとなっている34。

図表 3-155 シンガポールのもも貿易量(トン)

0

500

1,000

1,500

2,000

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

輸入 輸出

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010輸入 1,543 1,515 1,500 1,472 1,825 1,900 1,991 1,813 1,877輸出 83 158 163 135 122 64 42 42 107

バランス -1,460 -1,357 -1,337 -1,337 -1,703 -1,836 -1,949 -1,771 -1,770

出所: ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

(2)日本産の主要農林水産物等への需要及び潜在需要の明確化

33 太田市場にて 24 年 1 月~3月のふじの平均価格が 359 円/kg。

ふじの重量を約 350g/個として、1個の平均単価を算出。 34 ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

141

(i) 需要状況

日本からのももの輸出は香港向けと台湾向けで 99%を占め、残りの 1%がシンガポール向けで

ある(図表 3-156)。

現地における街頭調査においては、世帯月収が 10,001 シンガポールドル以上の所得層の約 7

割が高頻度で購入するとの回答を得ており、富裕層の需要が高い。

現在、品質劣化の問題等で航空便の輸送に限られており、日系の百貨店などに主要販売先は限

られている。傷み易く輸送が難しい品目ではあるが、流通段階における輸送方法の改善、販売回

転の向上などにより、常に新鮮な状態で消費者の口に入るようになれば、今後のももの需要は伸

びる可能性は十分にあると考えられる。

図表 3-156 ももの日本から各国への輸出量(トン)

0

100

200

300

400

500

600

700

800

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

全体 香港 台湾 シンガポール

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011全体 515 331 374 714 425 488 562 514 494 280香港 12 13 17 46 56 90 135 204 229 156台湾 503 317 356 665 367 394 421 306 261 122シンガポール 0 0 1 2 2 2 1 3 3 3

出所: ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

142

図表 3-157 ももの日本から各国への輸出額(千 USD)

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

香港 台湾 シンガポール 全体

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

香港 71 100 142 349 426 672 1,057 1,594 2,079 1528

台湾 2,345 1,641 1,968 3,499 2,677 3,195 3,633 3,269 2,984 1672

シンガポール 0 0 7 15 14 26 20 28 55 50

全体 2,416 1,741 2,117 3,863 3,117 3,893 4,710 4,891 5,118 3250

出所: ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

図表 3-158 ももの日本からシンガポールへの輸出量(トン)

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

2009 2010 2011

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月2009 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 0.0 0.0 1.8 0.7 0.0 0.0 0.02010 0.0 0.0 0.0 0.0 0.6 0.2 0.0 1.1 0.9 0.0 0.0 0.02011 0.0 0.0 0.0 0.0 0.2 0.3 0.4 0.6 1.4 0.0 0.0 0.0

出所: 財務省貿易統計

143

図表 3-159 ももの日本からシンガポールへの輸出額(千 USD)

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

2011年 13 11 29 10 19 10 6 4 10 17 22 34

2010年 53 36 12 72 47 7 23 18 7 26 35 56

2009年 9 14 29 20 38 4 8 4 4 27 57 27

出所: ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

(ii)輸出競合国との競争及び住み分け状況

○もも

シンガポールにおけるももの輸入元としては、米国、オーストラリア、中国の順となっている。

これらの国に次いで、日本、カナダ、南アフリカ共和国などとなるが、輸入数量は上位3カ国の

10 分の 1未満となる。最近の 4~5年の傾向として、中国からの輸入が減少し、米国からの輸入

が増加している(図表 3-161)。

2008 年 10 月にシンガポールで中国産の乳製品からメラミンが検出されるなど、中国産食品へ

の不安感の高まりから、価格帯が近い米国産へ需要がシフトしている可能性がある。

米国産などは輸出向けに開発された硬めの品種であり、直接的には競合関係にあたらないと考

える。ただ、米国、オーストラリア、中国産が若取りされるのに対し、日本産は熟してから出荷

されるため、甘味がある一方で日持ちがしない。シンガポールの消費者が口にする頃にはベスト

な時期を過ぎている可能性もあり、日本産ももの美味しさを伝え切れていないという意見もある。

現地大手青果物卸業者によると、日本産のももの販売時期は 5~9 月で、販売価格帯は 14 シンガ

ポールドル程度である。なお他国産のももの小売価格は以下の通りとなっている。

144

調査時期・価格(シンガポールドル)2012年3月

オーストラリア 11.9 peach white 4個 伊勢丹オーストラリア 6.95 peach white 1個 コールドストレージ

品目、原産国(産地) 種類(品名) 単位 販売店

(資料)ぐるなび調べ

1シンガポールドル=63.65円(2012年 3月時点)

図表 3-161 シンガポールのもも国別輸入量(トン)

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010全体 1,543 1,515 1,500 1,472 1,825 1,900 1,991 1,813 1,877米国 383 402 428 400 377 454 609 621 806オーストラリア 532 554 518 611 706 651 715 705 644中国 561 545 526 349 695 727 581 457 366

出所: ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

図表 3-160 ももの小売価格

145

(iii)今後の需要の伸びの検討

人口増と所得の向上により、シンガポールの果物市場は拡大していると思われる。

Euromonitor 社の調査では、シンガポールの果物の市場規模は、2010 年では 350.0 千トンであ

るが、2015 年の約 371 千トンにまで伸びると予測されている(図表 3-149)。

また、シンガポールの国連経済社会局の予測では、同国の人口は 2040 年頃まで増加傾向が続

くとされており今後も果実市場は拡大すると考えられる。これに伴い、ももの市場も拡大してい

くと思われる。

しかしながら関係者へのヒアリングによると、昨年度は猛暑の影響や震災の影響で一部の産地

からしか供給されなかったとの事であった。今後も供給面で考えると、国内の主要産地の一つで

ある福島県産のももの出荷が当面見込めないことから、需要が増加した際に十分な供給が出来な

い可能性もある。

(3)日本産の主要農林水産物等の購買層の明確化(街頭聞き取り調査結果)

(i) 調査品目の購買目的、頻度

シンガポールの市民 521 人に対する街頭調査によれば、自宅用での購入が 95%を占め、贈答用

は 5%であった。

ほぼ毎日購入する人が 1%、週に 1回程度が 5%、月に 1回程度が6%、3か月に 1回程度が3%、

6 か月に 1回程度が 6%、買っていない人が 79%であった。

図表 3-162 日本産品購入頻度: もも(n=521)

1%

5%6% 3%

6%

79%

ほぼ毎日週に1回程度月に1回程度3か月に1回程度6か月に1回程度買っていない

146

(ii) 購買層(所得別、年齢別、地域別等)

シンガポールの市民 521 人に対する街頭調査結果にて、各品目を 1 か月に 1 回以上購入してい

る人を「高頻度購入者(12%、n=61)」、3~6 か月に 1 回購入している人を「低頻度購入者(9%、

n=48)」とすると、それぞれの層の属性は以下の通りになった。

日本産のももの高頻度購入者の割合は、世帯月収が2,000シンガポールドル以下の層では50%、

2,001~4,000 シンガポールドルの層では 62%、4,001~6,000 シンガポールドルでは 54%、6,001

~8,000 シンガポールドルでは 38%、8,001~10,000 シンガポールドルでは 50%、10,001 シンガ

ポールドル以上では 69%であった。

また、高頻度購入者の男女比は、男性 47%、女性 53%であった。低頻度購入者の男女比は男

性 54%、女性 46%であり、日本産ももの購入頻度は低頻度購入者では男性の方が高いことがわ

かった。

図表 3-163 所得別購入頻度内訳

低頻度

購入者

50 3846

6250

31

高頻度

購入者

50 6254

3850

69

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

2,000

シンガポールドル以下

(n=16)

2,001-4,000

シンガポールドル

(n=34)

4,001-6,000

シンガポールドル

(n=24)

6,001-8,000

シンガポールドル

(n=13)

8,001-10,000

シンガポールドル

(n=6)

10,001

シンガポールドル以上

(n=13)

(iii) 消費者の購買基準(価格、産地、品質等)

日本産ももの購買基準として最も重視する項目として、「美味しさ」を選んだ人が 60%で最も

多く、次いで「ヘルシーさ」28%、「見た目の良さ」7%であり、「ブランド」3%、「安全性」

2%、「美味しさ」が最も重要な購買基準となっていると思われる(図表 3-164)。

購入頻度別では、高頻度購入者の 56%が「美味しさ」を選んでおり、続いて「ヘルシーさ」が

38%、「見た目の良さ」が 3%、「ブランド」が 2%、「安全性」が 2%となっている。低頻度購

147

入者では、「美味しさ」が 65%、「ヘルシーさ」が 17%、「見た目の良さ」が 13%、「ブラン

ド」が 4%、「安全性」が 2%、であった。

高頻度購入者では「ヘルシーさ」を選ぶ人の割合が低頻度購入者より 21%多いが、「見た目の

良さ」を選ぶ人は 10%少なく、「美味しさ」を選ぶ人は 9%少なかった。

日本産ももの購入者の内、日本国内での産地を購入時に意識する人は 14%、意識しない人は

75%であった。

図表 3-164 購入頻度別購買基準: もも

60 56 65

28 38 17

2 2

2 3

2

4

7 3 13

購入者全体(n=109) 高頻度購入者(n=61) 低頻度購入者(n=48)0%

20%

40%

60%

80%

100%

美味しさ ヘルシーさ 安全性 ブランド 見た目の良さ

図表 3-165 日本産品購入者の産地への意識: もも (n=109)

意識する

14%

意識しない

75%

わからない

11%

148

(4)日本産の主要農林水産物等の商流

(i) 各流通段階における取扱量及びシェア

日本産のももの取り扱いに関しては、日系小売店や専門店へ卸している青果物卸業者 4~5 社

の取り扱いが、シンガポール内のももの流通の大半を占めている。現地の主要青果物卸業者から

は 10都県の出荷制限解除をできるだけ早く進めてほしいとの要望も出ている。震災前は大田市

場を起点に航空便を仕立てることも出来ていたが、現状は出来ないとの意見もでている。

*輸入と卸を兼ねているケースが多く中間業者はあまり存在しない。

図表 3-166 果物の商流: もも

149

(ii) 各流通段階におけるバリューチェーン

現地ヒアリングによると、CIF 価格に輸送費や手数量等の経費が 10~16%かかり、現地の卸業

者のマージンが 20~25%程度かかる。その後、ローカルの小売店では約 20%、日系の小売店で

は約 40%程度のマージンが上乗せされ店頭販売されることになる。したがって、小売で販売され

る際には CIF 価格の 1.5~1.81 倍程度となる

なお販売時期が 5~9 月の為、店頭にて価格の確認はできなかったが、現地でのヒアリングによる

と日本産のももは、14シンガポールドル程度で販売されているとの事であった。他国産の金額につ

いては前述の「輸出競合国との競争及び住み分け状況」図表 3-160 に記述している。

C.品目: なし

(1)対象国・地域の市場実体

(a)生産量・輸出入量・販売量の動向

シンガポールは、なしの輸入国であり、年間 25,000 トン程度の輸入量である。近年輸入量は

減少傾向にある。また、年間 3,000 トン程度は再輸出されており、マレーシア、インドネシア、

ブルネイが主な相手国となっている35。

図表 3-167 シンガポールのなし輸入・輸出量(トン)

0

10,000

20,000

30,000

40,000

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

輸入 輸出

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010輸入 31,199 30,209 26,962 25,198 23,881 25,461 23,526 21,917 23,573輸出 3,044 7,030 5,480 4,067 4,016 3,281 2,443 1,954 2,475

出所: ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

35 ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

150

(2)日本産の主要農林水産物等への需要及び潜在需要の明確化

(i) 需要状況

○なし

日本からのなしの輸出は香港向けと台湾向けで 9割以上を占める。シンガポールへの輸出も継

続的に行われているが、なしの輸出全体に占めるシンガポール行きの割合は 1~2%程度にすぎな

い(図表 3-168)。

日本国内でなしの生産量上位は千葉県、茨城県、栃木県などであるが、シンガポールでは福岡

県、岡山県、鳥取県産などで生産されたなしが多く流通されているようである。

図表 3-168 なしの日本から各国への輸出量(トン)

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

全体 香港 台湾 米国 シンガポール

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011全体 2,664 1,886 1,951 2,137 1,356 2,092 1,521 1,683 702 574香港 1,650 681 385 769 627 929 682 950 354 310台湾 556 725 1,072 908 401 824 564 566 255 223米国 367 403 371 368 286 276 202 125 69 15シンガポール 27 8 12 12 7 20 14 8 6 7

出所: ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

151

図表 3-169 なしの日本から各国への輸出額(千 USD)

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

香港 台湾 米国 シンガポール 全体

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

香港 3,631 1,837 1,159 2,410 1,927 3,245 2,703 3,587 1,894 1923

台湾 1,296 2,212 3,585 3,361 1,470 3,390 2,691 2,995 1,683 1600

米国 949 1,099 1,131 1,133 1,007 1,026 804 511 377 72

シンガポール 55 18 28 30 20 64 45 26 31 40

全体 5,931 5,166 5,903 6,934 4,424 7,725 6,243 7,119 3,985 3635

出所: ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

図表 3-170 なしの日本からシンガポールへの輸出量(トン)

0

2

4

6

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

2009 2010 2011

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月2009 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2.3 5.3 0.6 0.0 0.02010 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3.3 1.7 0.4 0.92011 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.6 3.6 1.3 1.4 0.0

出所: 財務省貿易統計

152

図表 3-171 なしの日本からシンガポールへの輸出額(千 USD)

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

2011年 2010年 2009年

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

2011年 0 0 0 0 0 0 0 4 18 9 10 0

2010年 0 0 0 0 0 0 0 0 15 10 3 4

2009年 0 0 0 0 0 0 0 7 16 3 0 0

出所: ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

(ii) 輸出競合国との競争及び住み分け状況

なしの輸入元としては中国が突出しており、1国で輸入量の7割以上を占めている(図表3-173)。

現地での店頭では 2012 年 3 月時点、日本産の新雪梨(1 個)が 14.9 シンガポールドル、中国産

の南水(2個)が 2.9 シンガポールドルで販売されており、日本産と中国産は価格帯で住み分け

されているが、一方、なしは見た目での差別化が難い商材であるとの意見もあり、街頭調査でも、

他の果実に比べ見た目の良さを重視して購入するとの回答が低い結果がでている。また現地ヒア

リングでも、日本産の果実の特徴である見た目の美しさといった優位性が活かされ難い商材であ

るとの意見も出ていた。積極的な試食等を通じ日本産なしの味の良さを理解させる施策も重要で

あると考える。

参考までになしの小売価格は以下の通りとなっている。

153

図表 3-172 なしの小売価格

調査時期・価格(シンガポールドル)2012年3月

日本 14.9 新雪梨 1個 コールドストレージ中国 2.9 なんすい 2個 伊勢丹

品目、原産国(産地) 種類(品名) 単位 販売店

(資料)ぐるなび調べ

1シンガポールドル=63.65円(2012年 3月時点)

図表 3-173 シンガポールのなし国別輸入量(トン)

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

全体 中国 南アフリカ アルゼンチン 韓国 米国

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010全体 31,199 30,209 26,962 25,198 23,881 25,461 23,526 21,917 23,573中国 22,419 23,089 20,950 19,875 18,872 19,721 18,320 16,170 16,948南アフリカ 2,417 2,284 2,594 3,069 2,922 3,688 3,461 3,024 4,246アルゼンチン 0 0 0 26 183 828 537 876 1,073韓国 521 146 34 4 171 202 315 591 478米国 959 1,172 1,212 817 788 584 373 596 473

出所: ITC(International Trade Centre(UNCTAD/WTO))

154

(iii) 今後の需要の伸びの検討

人口増加と所得の向上により、シンガポールの果物市場は拡大していると思われる。

Euromonitor 社の調査では、シンガポールの果物の市場規模は、2010 年では 350.0 千トンであ

るが、2015 年の約 371 千トンにまで伸びると予測されている(図表 3-149)。

また、シンガポールの国連経済社会局の予測では、同国の人口増加は 2040 年頃まで続くとさ

れているため、今後も果実市場は拡大すると考えられる。これに伴い、なし市場も拡大していく

と思われる。ただ、現地でのヒアリングによるとシンガポール人は、なしについては糖度より価

格を重視する傾向があるため、日本産なしの競争力は低く、需要の伸びが期待できない可能性も

ある。他方、街頭調査によると、なしを購入している高頻度購入者の内、ヘルシーさを重視して

購入する者の割合が 42%と高く、低頻度購入者の同割合 15%の 3 倍近く開きがある。そこで、

ヘルシー志向と連動したプロモーションの展開等が需要拡大に必要な要素であると考えられる。

安定した供給体制の整備という課題は他の品目、地域とも共通であり、需要の拡大施策ならび

に供給体制の見直しは両方とも必要ではあるものの、現時点の輸出量や消費者の嗜好を考慮する

と、まずは日本の梨の良さを理解してもらう施策を行う事が重要だと考える。

(3)日本産の主要農林水産物等の購買層の明確化(街頭聞き取り調査結果)

(i) 調査品目の購買目的、頻度

シンガポールの市民 521 人に対する街頭調査によると、自宅用での購入が 98%を占め、贈答用

は 2%であった。

購買頻度は、ほぼ毎日購入する人が 1%、週に 1回程度が 6%、月に 1回程度が 7%、3か月に

1 回程度が 3%、6か月に 1 回程度が 6%、買っていない人が 77%であった。

図表 3-174 日本産品購入頻度: なし(n=521)

1%

6%7% 3%

6%

77%

ほぼ毎日週に1回程度月に1回程度3か月に1回程度6か月に1回程度買っていない

155

(ii) 購買層(所得別、年齢別、地域別等)

日本産なしを 1か月に 1回以上購入している人を「高頻度購入者(15%、n=77)」、3~6 か

月に 1回購入している人を「低頻度購入者(9%、n=46)」とすると、それぞれの層の属性は以

下の通りになった。

日本産なし購入者の内、高頻度購入者の割合は、世帯月収が 2,000 シンガポールドル以下の層

の 60%、2,001~4,000 シンガポールドルの層では 69%、4,001~6,000 シンガポールドルの層で

は 61%、6,001~8,000 シンガポールドルの層では 50%、8,001~10,000 シンガポールドルの層

では 57%、10,001 シンガポールドル以上の層では 67%であった。

また、高頻度購入者の男女比は、男性 43%、女性 57%であった。低頻度購入者の男女比は男

性 61%、女性 39%であり、日本産なしの購入頻度は女性の方が高いことがわかった。

図表 3-175 所得別購入頻度内訳

低頻度

購入者

40 31 39

50 43 33

高頻度

購入者

60 69 61

50 57 67

0%

20%

40%

60%

80%

100%

2,000

シンガポールドル以下

(n=20)

2,001-4,000

シンガポールドル

(n=42)

4,001-6,000

シンガポールドル

(n=23)

6,001-8,000

シンガポールドル

(n=16)

8,001-10,000

シンガポールドル

(n=7)

10,001

シンガポールドル以上

(n=12)

(iii) 消費者の購買基準(価格、産地、品質等)

同街頭調査によれば、日本産なしの購買基準として最も重視する項目として、「美味しさ」を

選んだ人が 52%で最も多く、次いで「ヘルシーさ」32%、「見た目の良さ」9%、「ブランド」4%、

「安全性」3%であり、「美味しさ」が最も重要な購買基準となっていると思われる(図表 3-176)。

購入頻度別では、高頻度購入者の 47%が「美味しさ」を選んでおり、続いて「ヘルシーさ」が

42%、「ブランド」「安全性」「見た目の良さ」がそれぞれ 4%となっている。低頻度購入者で

は、「美味しさ」が 61%、「見た目の良さ」が 17%、「ヘルシーさ」が 15%、「ブランド」が

4%、「安全性」が 2%であった。

高頻度購入者では「ヘルシーさ」を選ぶ人の割合が低頻度購入者より 27%多かったが、「美味

しさ」を選ぶ人は 14%少なく、「見た目の良さ」を選ぶ人は 13%少なかった。

日本産なし購入者の内、日本国内での産地を購入時に意識する人は 16%、意識しない人は 74%

であった。

156

図表 3-176 購入頻度別購買基準: なし

52 47 61

32 42 15

3 4

2

4 4

4

9 4 17

購入者全体(n=123) 高頻度購入者(n=77) 低頻度購入者(n=46)0%

20%

40%

60%

80%

100%

美味しさ ヘルシーさ 安全性 ブランド 見た目の良さ

図表 3-177 日本産品購入者の産地への意識: なし (n=123)

意識する

16%

意識しない

74%

わからない

10%

(4)日本産の主要農林水産物等の商流

(i) 各流通段階における取扱量及びシェア

日本産のなしに関しては、青果物卸業者 4~5 社の取り扱いが大半を占める。船便での輸送が

多いが、航空便での輸送も行われている。現状は、輸出量が少なく、輸出業者は、市場からなし

を調達し、船便混載で輸出されることが多い。

157

*輸入と卸を兼ねているケースが多く中間業者はあまり存在しない。

(ii)各流通段階におけるバリューチェーン

現地ヒアリングによれば、CIF 価格に輸送費や手数量等経費が 10~16%かかり、そこに現地の

卸業者のマージンが 20~25%上乗せされる。その後、ローカルの小売店では約 20%、日系の小売

店では約 40%程度のマージンが上乗せされ店頭で販売されることになる。したがって、小売で販

売される際の価格は CIF 価格の 1.5~1.81 倍程度となる

一例として、店頭小売価格は 2012 年 3月時点で新雪梨(1 個)が 14.90 シンガポール

ドルとなっている。

図表 3-178 果物の商流: なし