平成30年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調...

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平成30年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業 APECビジョン研究会の運営を通じたアジア太平洋地域の ビジョン形成にかかる国際経済調査事業 報告書 20193100-0004 東京都千代田区大手町1-9-2 大手町フィナンシャルシティ グランキューブ 株式会社野村総合研究所 ICTメディア・サービス産業コンサルティング部

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平成30年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業

APECビジョン研究会の運営を通じたアジア太平洋地域の

ビジョン形成にかかる国際経済調査事業報告書

2019年3月

〒100-0004 東京都千代田区大手町1-9-2大手町フィナンシャルシティ グランキューブ

株式会社野村総合研究所

ICTメディア・サービス産業コンサルティング部

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第1章 はじめに

第2章 APECにおけるビジョン形成に向けたデータ及び論点整理

第3章 APECビジョン研究会の運営

目次

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第1章 はじめに

第2章 APECにおけるビジョン形成に向けたデータ及び論点整理

第3章 APECビジョン研究会の運営

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事業目的

事業目的

太平洋を取り囲む21の国と地域(エコノミー)の経済協力枠組みであるアジア太平洋経済協力(APEC)は、アジア太平洋地域の持続的な経済発展及び地域協力のための枠組みとして1989年に発足した。1994年にインドネシア・ジャカルタで開催された第6回APEC閣僚会議では、貿易・投資の自由化・円滑化を活動の中核として進めていくとの認識が改めて強調され、貿易・投資の促進に向けた作業の一層の進展を図ることで合意された。さらに同年インドネシア・ボゴールにおいて開催された第6回APEC首脳会議において「APEC経済首脳の共通の宣言」が採択され、同宣言において「先進エコノミーは遅くとも2010年までに、また、途上エコノミーは遅くとも2020年までに自由で開かれた貿易及び投資という目標を達成する」と定められた。同項はAPECにおいて「ボゴール目標」と呼ばれ、APECが取り組む各種活動の基礎として認識されてきた。

近年APECでは、ボゴール目標の達成期限となっている2020年以降のあり方について議論が行われるようになってきており、2017年11月の首脳・閣僚会議において、2020年以降のAPECのビジョンを展望する有識者会合である「APECビジョン・グループ(AVG)」の設置が合意された。AVGは、各エコノミーの推薦による産官学の多様なバックグラウンドを有する代表者からなり、APECのビジョン形成を補助する助言機関とされている。我が国からは、浦田秀次郎早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授がAVG委員として参加した。

アジア太平洋地域においては質の高い経済連携協定交渉等の動きも活発化する中、地域の経済成長・貿易関係の進捗状況やそれらが各エコノミーに与える影響を踏まえつつ、中長期的な視点で我が国にとってのAPECの戦略的意義やAPECの方向性について検討する必要がある。その際、2020年以降も引き続き自由で公正な貿易投資ルールを高い水準で設定・遵守し、レベル・プレイング・フィールドを確保するという野心的なビジョン設定を目指すべきであり、メンバーエコノミー間でこの考え方を共有することが重要である。

これらの課題に応えるため、次ページの事業を実施した。

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事業内容・調査結果

事業内容

Ⅰ.APECにおけるビジョン形成に向けたデータ及び論点整理

下記の項目について、経済産業省と事前に相談の上、調査を実施した。

① ビジョン検討の前提となる、アジア太平洋地域における経済・貿易状況のこれまでの推移や地域において特に影響のあった自由化取組に関する基礎的情報の整理

② APECにおけるビジョン策定に関連する既存主要イニシアティブや議論の整理

③ ビジョンを検討するにあたり前提となる、2020年以降のアジア太平洋地域における経済・貿易情勢や地政学的な大きな変化の方向性等の調査

④ 今後APECが取り組むべき分野・要素候補の提示

Ⅱ.APECビジョン研究会の運営

調査結果

上記調査を踏まえると、APECは自発的・非拘束的でエコノミー間のコンセンサスを重視するフォーラムとして

の性質を活かしながら、「自由で開かれた貿易と投資の推進、地域経済統合の推進と加速、ビジネスにとって好ましく持続可能なビジネス環境の整備」などの取り組みを、デジタル経済化などの時代背景の変化を考慮しつつ推進していくようなビジョンを形成するべきであるといえる。

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第1章 はじめに

第2章 APECにおけるビジョン形成に向けたデータ及び論点整理

賢人会議における議論内容

アジア太平洋経済・貿易の構造変動と今後の展望

他フォーラとの比較から見るAPECの特徴

各フォーラのビジョン分析

包摂性に関する調査報告

Inclusivenessに関するSDGsとの比較

パスファインダーに関する調査

第3章 APECビジョン研究会の運営

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賢人会議(EPG)の概要

開催時期

1993-1995年に、年3~4回実施。

1回目はおよその方向性と報告書のたたき台作成、2~3回目は文書の採択、4回目は首脳会議にあわせて開催し、文書を提出、という流れで実施。

参加者

各エコノミーから1名ずつ任命された民間セクターの方々で構成。

エコノミストや大学教授等の方々が参加。

議長はいずれの会合でもアメリカのフレッド・バーグステン。

出所)山澤逸平・鈴木敏郎・安延申編著(1995)『APEC入門』付属資料「3.APECの組織」よりNRI作成

閣僚会議

高級事務レベル会合(SOM)

事務局

太平洋ビジネス・フォーラム(PBF)

賢人会議(EPG)

行財政委員会(BAC)

貿易投資委員会(CTI)

経済委員会(EC)

10のワーキ

ンググループ

(ご参考)賢人会議のAPECにおける位置づけ

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賢人会議開催時(1993~1995年)の貿易・通商に関する時代背景と、賢人会議の目的

時代背景

GATTウルグアイラウンド、WTOの創設、欧州単一市場の導入、SRTAs(域内地域貿易協定)の発効等、世界的に多角

的な貿易体制に関する議論がされていた。

賢人会議創設

上記のような時代背景から、APECとしてもグローバルな貿易の自由化プロセスを進展させる必要があった。

1992年9月のバンコクでの第4回閣僚会議において、アジア太平洋地域の貿易のビジョンを明らかにするために、中期的な位置づけで賢人会議が創設された。

会議の目的

当時のアジア太平洋地域の貿易・投資環境を踏まえて、APEC内の会合で議論するべき事項を提案する。

賢人会議開催中の主要な出来事

1994年11月に開かれたAPEC首脳会議で、ボゴール目標が掲げられた。

1994年末から1995年初頭にかけて、メキシコ通貨危機が発生。

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第1回賢人会議で議論された内容(賢人会議第1報告要旨より)

「自由で開かれた貿易と投資を通じてアジア太平洋経済の共同体を漸進的に発展させる」というAPECのビ

ジョンを提言。

APEC地域の経済可能性を完全に実現するため、以下の四本柱戦略を提示。

1. APECはアジア太平洋での貿易自由化を目標とするべき

2. 野心的だが実際的かつ漸進的な貿易円滑化計画を速やかに開始するべき

3. 加盟国・地域間の技術協力によって、地域内の後発部分で必要なインフラストラクチャーの建設と発展を促進するべき

4. 1.~3.の過程を実施・継続するためのある程度のAPECの制度化が必要

その他提案

地域内の投資と関連した貿易の不確実性と取引コストの減少のために、貿易・投資の円滑化計画の1つとしてアジア太平洋投資コードを採択。

マクロ経済政策および通貨政策を担当するAPECの大臣と閣僚の定期的な会合の開催を提言。

ダンピング対抗措置に関する競争政策、生産物基準の相互認証、電気通信や航空等の重要産業における共に受け入れ可能な国内検査やモニター手続き、環境保護や原産地規則等における協力を提案。

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第2回賢人会議で議論された内容(賢人会議第2報告要旨より)

APECが推進するべき貿易円滑化と技術協力のプログラム

1. 外国直接投資環境の改善と、投資政策原則に関するAPEC協約の早期採択。

2. 製品規格と検査過程の標準化。もし厳しければ、国際取引コストとビジネスの不確実性を軽減するための、各自の規格の相互認証。

3. 金融問題やマクロ経済問題での協力。

4. 環境問題に関する協力。

5. ダンピング防止手続きの濫用の増加という緊急の問題に対処するための作業班の創設。この作業班は、国内の独禁法が国際貿易へ及ぼす影響についても取扱い、競争政策の分野にも広げることができる。

6. APEC紛争仲介サービスの創設。新世界貿易機関の紛争処理メカニズムを補完する。

7. 公共的インフラストラクチャー建設、競争力のある中小企業育成、教育ならびに人的資源開発での開発協力。

賢人会議内で意見の割れた項目

世界規模の自由化とAPEC内自由化のどちらに重きをおくか。

APEC内自由化を域外諸国に無差別に最恵国(MFN)適用するか、同様の自由化を行った国にのみ条件付MFN適用するか。

→APEC加盟国・地域は非加盟国に対する貿易政策を共通にする必要はないとの考えから、判断は各加盟国・地域に委

ねる。

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第3回賢人会議で議論された内容(賢人会議第3報告要旨より)

APEC加盟国・地域の首脳に、4つの問いを投げかけている。

1. アジア太平洋地域での自由で開かれた貿易投資目標の達成のために何ができるか。

▪ 先進国と後発国とで実行すべき行動をそれぞれ定めた。▪

先進国:関税の低減、農業分野の補助金の低減、繊維・アパレル分野における輸入量の増大

後発国:知的財産権と貿易に関係する措置についての責務の実行、補助金の低減、関税率の低減

▪ ウルグアイラウンドでの成果を広げるためのいくつかの手段を提言した。▪ アンチダンピング政策の濫用の防止のために、競争政策当局者にアンチダンピングに対抗する権限を与える。

▪ 競争政策に関するメンバー間の非生産的な格差を制限するために、現状の競争政策の実行と今後の予測研究を始める。

▪ 相互認証協定(MRAs)のような、製品規格や検査に関する広範囲のプログラムを早急に実行する。

2. 域内の多くの対立を軽減するために何ができるか。

▪ 1つ目の解決策は、貿易投資に対する障壁を取り除くことで、対立の原因を低減すること。

▪ 2つ目の解決策は、WTOや国際的な協定でカバーできない経済紛争に対する多国的な手段として、APEC紛争仲介サービスを設置すること。

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第3回賢人会議で議論された内容(賢人会議第3報告要旨より)

APEC加盟国・地域の首脳に、4つの問いを投げかけている。(続き)3. 域内の自由で開かれた貿易を模索するうえで、NAFTAやAFTAなどの域内地域貿易協定(SRTAs)との整合性をどう

見ればよいのか。

▪ ボゴール宣言では、「APECとSRTAs間の関係性について、お互いにとって障害とならないように一貫性を促進

できているかどうかをレビューする」としている。

▪ 他のSRTAsが「開かれたサブリージョナリズム」を推進する限りでは、APECの貿易自由化プロセスにも役立つ。

4. グループ全体として合意した目標を達成するために、どうすればお互いが助け合うことができるのか。

▪ 金融・マクロ経済分野における協力を深める必要がある。▪ メキシコ通貨危機を受けて、加盟国・地域はIMFの緊急金融メカニズム(Emergency Financing Mechanism)を使用する意

思決定プロセスに完全に参加するべきである。

▪ APEC加盟国・地域間の技術、マネジメント、計画と管理におけるギャップを埋めるために、開発と技術協力を進める必要がある。以下の4つの行動計画にとりかかるべきである。▪

開発協力における原則の採用

新しい技術協力を通した原則の適用

開発と技術協力におけるAPECの意思決定の自由化

能力構築を支援し、それによって自由な貿易投資を実現するための「APECインフラストラクチャー2020プログラム」の迅速

な実行

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第1章 はじめに

第2章 APECにおけるビジョン形成に向けたデータ及び論点整理

賢人会議における議論内容

アジア太平洋経済・貿易の構造変動と今後の展望

他フォーラとの比較から見るAPECの特徴

各フォーラのビジョン分析

包摂性に関する調査報告

Inclusivenessに関するSDGsとの比較

パスファインダーに関する調査

第3章 APECビジョン研究会の運営

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1.APECを取り巻く近年の構造変化

1-1.マクロ経済(GDP・格差など)

1-2.貿易投資(収支・投資・関税・GVCなど)

1-3.環境・エネルギー

2.短期及び中長期の展望

目次

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1.APECを取り巻く近年の構造変化

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1-1.マクロ経済(GDP・格差など)

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GDPの推移

世界全体のGDPの中で、APECが占める割合は高く、50%後半~60%を維持している

出所)IMF統計よりNRI作成

0

50

10

120

60

20

40

30

110

80

90

100

7074

2023

APEC以外の全ての国々

(1兆USD)

1995 2000 2005 2010 2015

APEC(日米中除く)

48 日本

米国3431

中国

20

66

114

1989

APEC、及びAPEC以外の全ての国々の合計のGDPの推移 (1989~2023)

68(60%)

44(59%)36(55%)

26(56%)

20(60%)17(56%)11(56%)

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APECのGDP国別内訳

APEC全GDP内では、中国の割合が増大しており、今後もその傾向は続くと想定される

4.1% 4.2%

6.0% 8.7%16.6%

25.3%31.5%

50.5%44.0%

50.4% 49.4%41.0%

40.9%35.8%

27.3%31.3%

24.0% 18.0% 15.6%9.9% 8.7%

18.1% 20.4% 19.6% 23.9% 26.8% 23.8% 23.9%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

20101989 20151995 2000 2005

中国

2023

日米中以外の全てのエコノミー

米国

日本

APEC内でのGDPの割合の推移(1989~2023)

出所)IMF統計よりNRI作成

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一人当たりGDPの推移

APEC全体の一人当たりGDPは増加し続けているが、日米など先進国に比べるとまだ低い

4,273 5,403 5,4837,274

9,51310,1645,301

7,154 7,958 9,91413,183

15,50323,954

56,469

610 959 1,7534,561

8,069

43,44038,532

05,000

10,00015,00020,00025,00030,00035,00040,00045,00050,00055,00060,000

201020051995 20151990 2000

34,568

GDP (per capita)(USD)

36,450

48,374

日本

318

44,308

37,218

28,782

44,508

25,417

世界全体

APEC

米国

中国

出所) StatsAPECよりNRI作成

世界全体、APEC、日米中のGDP(per capita)の推移(1989~2016)

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格差と包摂性

ジニ係数や所得格差を元に見ると、世界全体での格差は縮小傾向にある

世界全体での格差の傾向(所得の上位10%と下位90%の所得比率)(1990~2010)

世界全体での格差の傾向(ジニ係数)(税・再分配後)(1990~2010)

出所)経済産業省 通商白書2017

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1-2.貿易投資(収支・投資・関税・GVCなど)

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貿易額の推移

貿易額(=輸出入額の合計)については、中国が2004年ごろから日本を追い越し、米国に迫る勢いであるが、日本は微増、ないし横ばいである

3,000

1990 2000 2010

5,500

1,000

0

4,000

2,000

4,500

5,000

500

3,500

1,500

2,500

324

2,529

10億USD

日本1,758

649

1,147

125

965

1,689

1,041

5401,351

3,272

1,579

4,163

3,327

1,608

中国

5,020

4,604

米国

1995 2005 2015

出所) StatsAPECよりNRI作成

日米中の貿易額(=輸出入額の合計)の推移(1989~2017)

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-75 -78-219

-433

-159-123 -186

-477

-813

9 17 24

182

594

107 100

-1,000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

52

10億USD

APEC-23(日本)

日本

79(日本) 76(日本)

7(APEC)

米国

中国

-832 -691

102(中国)

貿易収支の推移

米国は一貫して大幅な貿易赤字に陥っているが、中国は一貫して貿易黒字を維持しており、黒字幅は拡大傾向にある

APEC、日米中の貿易収支の推移(1989~2017)

出所) StatsAPECよりNRI作成

1995 2005 20151990 2000 2010

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APEC主要エコノミーの対外直接投資(FDI)投資額の推移(投資元の変化)

特に2008年の金融危機以降、中国は主要な投資主体の1つとなり、投資額は既に日本と並ぶ水準である

出所)UNCTAD統計よりNRI作成

211,035

294,754262,569

280,682

342,269

56,532

160,449

18,800

123,120145,667

196,149

124,630

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

20172005~7平均

100万USD

134,233

2014 2016

145,243

2015

130,843

米国 日本 中国

米国、日本、中国のFDI流出額の推移 (2005~2007平均、2014~2017)

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ASEANと中国のFDI流入の推移(投資先の変化)

1990年から2015年にかけ、FDI流入額はともに増加傾向にあり、10倍以上に拡大した。FDI/GDPの割合では、近年ASEANの数値が増加し、中国を引き離している

3,487

37,521 40,715

72,406

114,734135,610

12,821

28,632 22,515

43,084

110,531

126,596

010,00020,00030,00040,00050,00060,00070,00080,00090,000

100,000110,000120,000130,000140,000

1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

FDI流入額(100万USD)

中国

ASEAN

出所)UNCTAD統計、IMF統計よりNRI作成

中国とASEANのFDI流入額の推移(1989~2017)

2,02,5

3,54,0

3,0

1,0

5,0

1,5

5,56,0

1990

4,5

2000 2010 2020

6,5

0,00,5

0,9中国

ASEAN

5,1

4,0

4,4

3,4

3,4

3,5

3,1

1,9

5,6

1,2

5,2

中国とASEANのFDI/GDP割合の推移(1989~2017)

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0

10

20

30

40

50

60

70

1990 1995 2000 2005 2010 2015

最終財(東アジア域内)

中間財(東アジア域内)

中間財(世界)

素材(東アジア域内)

最終財(世界)

素材(世界)

GVC(グローバルバリューチェーン)の動向

APECのGVC参加度は、1995~2008年ごろに高まった。しかし、近年東アジア域内を中心として、中間財貿易の成長が鈍化している

エコノミー名 1995 2000 2005 2008 2009シンガポール 60.5 69.4 74.8 74.3 70.7 フィリピン 47.5 63.2 74.3 72.8 66.6 マレーシア 55.4 62.6 68.7 67.7 65.6 韓国 37.9 52.1 63.9 68.4 65.0 香港 51.9 50.5 56.2 58.1 55.8 タイ 41.9 49.1 55.9 56.4 52.8 チリ 37.9 43.2 51.3 57.2 52.2 ロシア 44.0 51.3 57.5 58.4 51.8 ベトナム 37.0 47.6 52.9 56.3 51.3 日本 29.3 36.0 43.4 50.1 47.7 中国 25.7 32.6 48.6 47.6 46.1 オーストラリア 33.6 39.6 44.3 49.0 43.8 インドネシア 33.5 43.0 49.2 49.2 43.7 ブルネイ 37.7 40.2 45.4 51.8 43.7 メキシコ 36.9 41.2 40.7 44.7 41.8 アメリカ 32.9 40.2 43.4 44.3 39.8 カナダ 33.2 40.9 38.4 38.2 34.8 ニュージーランド 30.6 35.6 34.4 40.9 34.1

※OECDは、他国の輸出財・サービスの生産に中間投入として使用されている自国の輸出財・サービスの金額が、自国の輸出総額に占める割合を「前方参加度」、また後方への参加度は、自国の輸出財・サービスの生産に中間投入として使用されている他国からの輸入材・サービスの金額が、自国の輸出総額に占める割合を「後方参加度」とし、それらの合計をGVC参加度としている。

出所)経済産業省『通商白書 2017 年度版』、 OECD統計よりNRI作成

APEC加盟エコノミーのGVC参加度の推移(1995~2009)

注)パプアニューギニア、ペルー、台湾はデータなし

域内貿易の財別輸出比率の推移(1990~2015)

66.0(最高値)(2008)

64.6(足元)(2015)

%

中国やASEANでは、日本を含む先進国との加工貿易が盛んであったが、

技術進歩などによりこれまで輸入していた中間財を国内で生産することが可能となったため、それらの地域で中間財輸入が減少したといわれている。

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関税の引き下げ及び自由貿易協定(FTA/RTA)の進展

APECの平均関税率は世界と比べても低く、発足時からの削減幅も大きい。また、FTA/RTAの数は大幅に増えており、貿易自由化は進展しているといえる

APECエコノミーにより調印、施行されたFTA/RTAの数(1989以前~2015)世界、及びAPECの関税率の平均(1990~2015)

出所) APEC PSU “APEC Regional Trends Analysis”

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ボゴール目標の2016年中間評価の分析によれば、関税率は先進国・発展途上国双方の努力により、低下していっている。しかし、2007年から生じた世界金融危機以降は、低下する速度が下がってきている。

非関税措置については、SPS・TBTが増加傾向にあり、特にTBTは2015年は2010年に比べて50%以上措置が増加している。

関税率および非関税措置の推移

しかし、APECでの関税率低下の速度は下がっている。他方、SPS・TBTなどの非関税障壁は増加しており、関税から非関税措置に貿易自由化の焦点が変化しつつある

APECにおける非関税措置の推移(2010~2015)APECにおけるMFN関税率の推移(1996~2014)

出所)APEC PSU” Second-Term Review of APEC’s Progresstowards the Bogor Goals: APEC Region”よりNRI作成

注)加重平均は、輸入商品のシェアをもとに算出されている

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中国・国有企業の躍進

Fortune Global 500にランクインする中国企業は近年増加しており、特に国有企業の割合が大きい

出所)RIETI 関志雄氏作成レポート

Fortune Global 500における中国の国有企業と民営企業の数の推移(2007~2017)

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1-3.環境・エネルギー

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エネルギー消費量の推移

エネルギー消費量は各国ほぼ横ばい又は微減であるが、中国のみ一貫して増加している

出所)Enerdata統計よりNRI作成

APEC主要エコノミーのエネルギー消費量の推移(石油100万トン換算)(1990~2017)

94 146 190 214256 283

438494 518 519 499

430639

619 651 688709

2,0632,269 2,319

2,216

2,194

1,045 1,130

2,976

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

20001990 2010

アメリカ

100万トン

882(ロシア)871(中国)

1,782

2,537

韓国

日本

ロシア

中国

94 146 190 214256 283

438494 518 519 499

430639

619 651 688709

1,9102,063

2,269 2,319

2,216

2,194

1,045 1,130

2,976

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

1990 2000 2010

100万トン

882(ロシア)871(中国)

1,782

中国

2,537

韓国

日本

ロシア

アメリカ

1995 2005 2015

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2,076 2,887 3,087 5,358 7,707 9,0414,802 5,230 5,6435,702

5,3474,998

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

27,045

1995

100万トン

20152005

日本

2000

その他APEC

2010

米国

APEC以外の全ての国々

30,434

韓国

ロシア

中国

20,50921,365

23,144

32,294

CO2排出量の推移

CO2排出量の増加は世界的にもAPECの影響が大きい。APEC内で見ると、中国の割合が増加している

出所)国際エネルギー機関(IEA)統計よりNRI作成

18%23% 22%32%

40%45%

41%40% 40%

34%28%25%

18%12% 11% 9% 8% 7%

9% 9% 8% 7% 6% 6%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

2%

2005

3%

19951990 2000

3% 3% 3%

2010

3%

その他APEC

2015

日本

韓国

ロシア

米国

中国

APEC、及びAPEC以外の国々の合計のCO2排出量の推移(1989~2015) APEC内でのCO2消費量の割合の推移(1989~2015)

12,826(60%)

1990

9,578(47%)

14,027(61%)

16,782(62%)

20,295(63%)19,085

(63%)

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2.短期及び中長期の展望

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中長期のトレンド分析(APEC主要エコノミーのGDP推移)

PwCによれば、2050年までに中国は米国の1.5倍程度の規模を持つ。また、インドネシアやメキシコも日本を越える経済規模を持つようになる

国名 2014 2030 2050 CAGR

中国 17,632 36,112 61,079 3.5%

米国 17,416 25,451 41,384 2.4%

インド(参考) 7,277 17,318 42,205 5.0%

日本 4,788 6,006 7,914 1.4%

インドネシア 2,554 5,486 12,210 4.4%

メキシコ 2,143 3,985 8,014 3.7%

韓国 1,790 2,818 4,142 2.4%

オーストラリア

1,100 1,707 2,903 2.7%

タイ 990 1,847 3,510 3.6%

マレーシア 747 1,554 3,327 4.2%

フィリピン 695 1,508 3,516 4.6%

ベトナム 509 1,313 3,430 5.4%

17,632

36,112

61,079

17,416

25,451

41,384

7,277

17,318

42,205

2,554 5,486

12,210

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

2014 2030 2050

中国 米国 インド(参考) 日本

インドネシア メキシコ 韓国 オーストラリア

タイ マレーシア フィリピン ベトナム

出所)PwC ”The World in 2050” (2015年2月)よりNRI作成

APEC主要エコノミーのGDP推移(2014~2050)(表)

※GDPはPPPレートを元に計算

APEC主要エコノミーのGDP推移(2014~2050)(グラフ)

(10億USD)(単位:10億USD)

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中長期のトレンド分析(主要国のGDP推移)

(参考)金融危機直後の長期予測はより悲観的である

21世紀経済研究センター「グローバルJAPAN-2050年 シミュレーションと総合戦略-」(2012年)より

HSBC”World in 2050”(2010年)より

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貿易に関する将来展望

PwCの予測によれば、2030年において、中国はアフリカやインド、豪州、東南アジアなど、より多様な地域との貿易においても中心的な地位を占めるようになる

下記は、PwCによるGDP予測と既存の二国間貿易の統計を元に、デルファイ法に基づく専門家調査(専門

家グループなどが持つ直観的意見や経験的判断を反復型アンケートを使って、組織的に集約・洗練する意見収束技法)を用いてインフラの建設などを加味しながら予測したものである。

2009年の海上・航空貨物経路予測(Top25) 2030年の海上・航空貨物経路予測(Top25)

出所)PwC “Future of world trade; Top 25 sea and air freight routes in 2030”

<凡例>

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中国に関する将来展望(楽観シナリオ)

みずほ総合研究所の予測によれば、中国のGDP成長は継続するが、成長要因が投資から国内消費に変化していく見込み

GDPの実質成長率に対しては従来投資の寄与が大きかったが、過剰生産能力の調整進展などが投資の抑制につながり、2014年には消費の寄与が投資を逆転。消費主導の成長へのシフトが進展しつつある。

出所)みずほ総合研究所「内外経済見通し」(2018年6月28日)

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中国に関する将来展望(楽観シナリオ)

中期的には、対外的には一帯一路の推進による貿易・投資の拡大、対内的には国有企業等の構造改革とICT関連産業の育成を軸とする見込み

2018年3月の全人代で国家主席の任期が廃止されたため、2022年以降の長期政権の可能性あり。

出所)みずほ総合研究所「内外経済見通し」(2018年6月28日)

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中国に関する将来展望(楽観シナリオ/悲観シナリオ)

中国社会科学院経済研究所は、投資効率の向上により2030年代でも6%台の成長ができると予測しているが、日本経済研究センターは2020年代に2%台に低下すると予測する

出所)野村総合研究所「2020年の中国」

実質GDP成長率の中長期予測の比較

(注)各予測は2015年初頭に公表されていたもの

予測機関の楽観度比較

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中国に関する将来展望(悲観シナリオ)

関志雄RIETIコンサルティング・フェローは、工業への需要の縮小、住宅市場の調整などの影響で、中国の経済成長率が低下すると予測している

中国では、かねてより鉄鋼など一部の産業で生産能力過剰問題が指摘されている。生産能力過剰問題には対処がなされ、成果も出始めているが、対処自体にも経済成長率を低下させる効果がある上に、これらの産業への需要は歴史的ピークを過ぎ、縮小段階にあるため、投資の力強い回復は見込まれない。

中国の産業の中心は工業からサービス業に移りつつある。

住宅市場の調整も経済成長率の低下要因になりうる。

北京や上海などの一級都市の住宅価格は高騰し、年収倍率はすでにバブル期の東京を上回っている。

政府は住宅ローンと購入資格への制限強化などの抑制策を打ち出しており、住宅販売面積、住宅販売価格、住宅開発投資の伸びが相次いで鈍化に転じている。住宅市場の調整色は、2018年に入ってから一層強まるだろう。

急激な住宅価格の低下は、住宅投資の減少を通じて景気を悪化させるだけでなく、銀行の不良債権の増加を通じて、金融システムの不安定化を招きかねない。

出所)RIETI 関志雄氏レポート “2018年の中国経済の展望”よりNRI作成

中国住宅市場の主要指標の推移(2012~2017)

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貿易面でのリスク 保護主義2.0の台頭

ユーラシアグループは、ポピュリズムからの圧力、国家資本主義の広がり、及び地政学的不況の影響により、先進国を中心として保護主義が復活しつつあるリスクを指摘する

先進国における反体制運動の台頭により、政策決定者たちはグローバルな経済競争においてより重商主義的アプローチに移行しており、それに伴い各国で保護主義的な傾向が見られる。

各国政府は、知的財産及び関連テクノロジーを国家的競争力の核心的要素として保護することを主たる目的として、デジタル経済やイノベーション集約産業に介入している。

国内保護に用いられる手法は、輸入関税・輸入枠に加えて、企業救済、補助金、ローカルコンテント要求といった国内措置が含まれる。

これらの措置は必ずしもWTOにおけるコミットメントに違反するとは限らない。また、既存のグローバルな通商ルールの、各国協調による強化が行えないことを前提として生み出されている。

各国政府が実施している貿易障壁の数

出所)Eurasia Group 『Top Risk 2018』よりNRI作成

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地政学的リスク(中国の台頭)

ユーラシアグループは、「リーダー国家不在の間隙を衝く中国」を大きなリスクとして捉えているほか、中国の影響によるグローバルなビジネスコストの高騰などを懸念している

ユーラシアグループは、“Top Risk 2018”の中で、2018年のトップリスクの1番目として、「リーダー国家不在の間隙を衝く中国」を挙げ、下記のような主張をしている。

米国がマルチラテラリズムへのコミットメントを放棄したと言われる状況において、アジアにおける米国の役割は将来的に大いに不確実である。

そのような“力の真空状態”ともいえるアジアにおいて、中国が国際的な主導権を握ろうとしている。

2008年以来、欧米の自由民主主義国の魅力について、世界の印象が徐々に悪化してきている。中国が提示する国家資本主義モデルは、欧米諸国にとっては魅力的ではないが、それ以外の国には採用しうる選択肢である。

中国が国家資本主義モデルを他国にも波及させ、影響力を拡大する用意・意思があることは2018年最大のリスクである。

ユーラシアグループは、中国に関して下記のようなリスクも指摘している。

中国が推進する新たなルールや慣行、及びそれ故に発生する規制環境の分裂により、グローバルなビジネス環境においてビジネスコストが高騰する。

▪ この影響は、益々重要度を高めていく中国の国内市場のみならず、中国の経済的・政治的影響力が優勢になりつつある世界中の多くの国に広がっていく。

米国及びその域内同盟諸国と対峙することで、アジアを二極対立に向かわせるような中国の勢力拡大の動きに対して、日本・インド・オーストラリア・韓国などが反発する。

出所)Eurasia Group “Top Risk 2018”よりNRI作成

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中長期のトレンド分析(定性)

米・国家情報会議(NIC)は、2035年までの長期トレンドとして、次の7点を指摘する

NICは米大統領に対し、長期予測を行う諮問機関であり、最新版のレポートは2017年に発行されている。トレンド トレンドの説明

富める者は老いるが、貧困層はそうではない

ロシアや中国などの豊かな国では労働力人口は減っていくが、貧しい国、特にアフリカや東南アジアでは労働力人口が増加し、経済、雇用、福祉、移民を増大させる。先進国、途上国ともに訓練と継続教育が重要になる。

グローバル経済はシフトする

近未来では低い経済成長が続く。主要な経済は、経済危機からの回復過程で負った負債、需要の減少、そしてグローバル化への疑念に対処しつつ労働力と生産性上昇の減少に対峙する。中国は輸出及び投資から国内での消費拡大による経済へとシフトする。低い成長は途上国の貧困削減に脅威となる。

技術は進歩を促進するが不連続性を生じさせる

急速な技術革新は変化のペースを速め、新たな機会をもたらすとともに、勝ち組と負け組みの分離を促す。自動化とAIは産業が適用できないほどの速さで変革を迫り、潜在的な労働者を代替して、貧しい国が発展する一般的なルートを狭める。遺伝子操作などのバイオテクノロジーが医療や他の分野に変革をもたらし、倫理的な問題を提示する。

思想とアイデンティティが排除を促進する

グローバルな連結の拡大と低成長が社会間の緊張を高める。左右双方でポピュリズムが台頭し、リベラリズムを脅かす。いくつかの指導者はナショナリズムを統治のために利用し、宗教の影響力が多くの政府を超えることとなる。ほぼ全ての国が経済的要因で女性の地位向上を経験するが、揺り戻しもありえる。

統治がより困難になる 公衆は政治に対して安全と繁栄を求めるが、歳入額の固定化、信頼の喪失、対立などから政府のパフォーマンスを低下させる。技術の発展によって政治的な行動を妨害・変容させられるプレイヤーを拡大させる。また、グローバルな問題を管理することも、NGOや企業などのアクターの多様化によって困難になる。

紛争の性質が変化する 大国(major powers)の関心の多様化、テロリズムの脅威の拡大、脆弱な国家の不安定性、大量破壊技術の拡散に

よって対立のリスクが増加する。長距離精密兵器、沿革からのサイバー並びにロボットによるインフラへの攻撃などにより、社会の破壊がより一般的になる。

気候変動、環境及び公衆衛生の問題に注意する必要がある

一連のグローバルな災害は、迅速かつ長期的な脅威をもたらし、これに対し集団的な行動が求められる。異常気象、水害、旱魃そして食料危機などが社会を破壊する。海面上昇、海洋の酸性化、氷河の融解、汚染が生活様式を変更する。気候変動による対立が激化し、国際的な交流の増加と脆弱な公衆衛生インフラによって感染症の拡大が管理困難になる。

出所)National Intelligence Council, “PARADOX OF PROGRESS” (2017), p. 6

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中長期のトレンド分析(定性)

(参考)2035年までの各国の労働人口の変化割合の予測

出所)National Intelligence Council, “PARADOX OF PROGRESS” (2017), p.9

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中長期のトレンド分析(定性)

前述のトレンドを踏まえ、NICは2035年までの長期シナリオとして、次の3点を提示する

シナリオ1:島(Islands)長期的な低成長と、福祉国家やグローバル化の拡大が共存したときのグローバル経済のあり様を描出。先進国に保護主義が広まり、世界経済は停滞する。

シナリオ2:衛星(Orbits)大国が影響力を確保しつつ国内の安定を指向する場合を描出。中露等が米国の凋落の間隙を突くことで、国際紛争の大幅な増加が見込まれる。

シナリオ3:共同体(Communities)中央政府が地方自治体、企業などの多様な主体と分権的に統治を行っていく場合を描出。このような統治と自由民主的な政治体制には親和性がある。

• 貧富の格差の拡大• AIによる失業が経済学者の予想を超

え、いくつかの政府がグローバルな通商機構やFTAなどから脱退

• 地域的な貿易ブロックと二国間協議を好み、3Dプリンタなどの技術革新が比較優位を削減

• 中国とインドが中所得国の罠によって停滞(通商の停滞により国内需要を喚起できなくなる)

• 米国とEUが保護主義的になり内向きになる。

本シナリオは先進国が過去の経済政策の副産物とポピュリズムと包摂の緊張を管理する必要を示している。成功はR&Dへの投資、STEM教育、高度技術

者を魅了する税制、移民政策などにかかっている。

• 2020年代初頭には政治の多極化と

財政問題から米国の影響力が減退し、ロシアや中国、イランが近隣国への影響を強める。

• 2020年半ばには中国の影響がさら

に拡大して、自国市場へのアクセスに対して営業権を要求するようになる。他方、日本やインドは独自の外交を取りつつ中国に対抗する。

• 米国は2020年代後半に介入を始め

るが、中・ロなどは国内の目を外にそらすために対外的に強固な政策を取るようになり、紛争が増加する。

同盟国との信頼関係の再確認や、戦争につながるグレーゾーンの衝突の防止の重要性を確認させる。このような危機一髪の状態が諸国間の協力を促すかもしれないが、リスクをコントロールする重要性に目を向けるべきである。

シナリオからの示唆

シナリオ内の出来事

• 外交や防衛等は中央政府が担うが、地方自治体への分権が進み、従業員の社会保障や教育などは企業も負担をするようになった。

• 情報通信の発達で、アイデンティティを国籍ではなく考え方や職業などに求める風潮が拡大し、中東では中央集権的な政府への反発が広がる。

• 中国共産党は当初ICTを活用した抑圧を指向したが完遂できなかった。

• こうした新しい統治スタイルは西欧の自由民主的な政府により親和性があり、成功を収めている。

本シナリオは統治の未来を扱ったものであり、新たな政策上の挑戦に対して官民協力の重要性を説くものである。多国籍企業が教育や社会保障を担うことで政府を保管し、このような官民協力はICTの活用でより容易になる。

出所)National Intelligence Council, “PARADOX OF PROGRESS” (2017), pp. 50-61

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第1章 はじめに

第2章 APECにおけるビジョン形成に向けたデータ及び論点整理

賢人会議における議論内容

アジア太平洋経済・貿易の構造変動と今後の展望

他フォーラとの比較から見るAPECの特徴

各フォーラのビジョン分析

包摂性に関する調査報告

Inclusivenessに関するSDGsとの比較

パスファインダーに関する調査

第3章 APECビジョン研究会の運営

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他フォーラとの比較から見るAPECの特徴

APECの強みとしては、構成エコノミー、先進的ビジョン・長期的ビジョンを策定できる風土があること、ビジョンを実現してきた実績を持つことが挙げられる

APECの強みの活かし方

【構成エコノミー】APECには米・中の二大大国が入っており、オーストラリア・カナダ・シンガポール・韓国・チリなど、貿易投資自由化に積極的なエコノミーが多い。

【先進的ビジョンの策定】APECはメンバーを法的に拘束しない、緩やかな政府間の協力の枠組みであり、各メンバーの自発的な行動により取組を推進する。このため、他のフォーラに比べてAPECではより先進的な取組を行うことが可能である。

【長期的ビジョンの策定】APECには非常に長期的なビジョンを受け入れる風土がある。この風土を活かし、他フォーラよりも長期的なビジョンを設定し、腰を据えて取り組むべき重大なテーマに対処していくことが望ましい。

▪ ボゴール目標は1994年に採択された宣言文でありながら、達成目標年を2020年(先進国は2010年)に定めた、スパンが非常に長いビジョンである。そのような長期的なビジョンでありながら、2005年に中間評価が行われ、2020年以降のビジョン形成の軸となるなど、プレゼンスは現在まで維持されている。

▪ 他方、G20やPIFでは具体的な期限を定めた長期的なビジョンが設定されていない。ASEANでは2007年に2015年を目標とするAECブループリントが策定され、その後継として、2015年に2025年を期限とするAECブループリント2025を策定した。

【ビジョンの実現】APECは各テーマについて具体的に検討してビジョンを策定しており、行動計画に落とし込み実現してきた実績を持つ。G20等(ASEAN除く)ではあまりそのような動きが見られない。APECでは今後も実現可能性を意識しつつビジョンを策定し、着実に実現していくべきである。

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統計データに見るAPECの特徴

APECは、構成エコノミーの57%が途上国、貿易依存度が低い、投資環境が整いつつある、イノベーションが活発である、などの特徴をもつ

【各フォーラの構成国/エコノミー、及びその発展の状況】APECの構成エコノミーは地理的な近接性を持っており、そのうち57%は途上国である

【設立趣旨・運営方針・事務局の規模など】APECは決定がノンバインディングであるため、先進的なテーマに取り組みやすい。一方で、事務局の人員・予算が少なく、取り組みの推進力に欠けるといえる

【GDP・財の輸出入額・財の貿易依存度】財の貿易依存度は、世界全体>APEC>G20。APECが世界に占める割合については、GDP>財の貿易額。APEC域内において貿易の自由化・円滑化を行う余地がある

【GDP・サービスの輸出入額・サービスの貿易依存度】APECのサービス貿易の世界シェアは、GDPや財ほど大きくなく、伸びしろがある。サービス貿易額の世界シェアが77.0%と大きいG20は、APECに比べサービスアジェンダの意義が重くなると考えられる。

【投資・ビジネス環境】FDI流入・流出額において、APECはOECDと同等の水準である。また、APECではG20やASEANよりもビジネスが行いやすい傾向にあるが、FDIの世界に占める割合はG20に比べて低いため、依然として投資環境の整備が重視されるべきである

【イノベーション・デジタル経済】APECは、国際特許出願数の世界シェアがGDPの世界シェアより大きく、イノベーションが活発であるといえるが、G20の圧倒的シェアには依然及ばず、また、人口当たり特許・論文数はOECDに比べ少ないので、イノベーションは推進の必要性がある。インターネット普及率もOECDに比べると低く、改善の余地がある。

【Inclusiveness】APECはOECDに比べ、ジニ係数が高い。

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各フォーラの特徴

APECは「協調的自主的な行動」「開かれた地域協力」を主眼に幅広いテーマに取り組んでおり、バインディングなWTO、共同体としての性質が強いASEANなどとは異なる

APEC G20 ASEAN OECD WTO

フォーラの特徴

「協調的自主的な行動」:

APECはメンバーを法的

に拘束しない、緩やかな政府間の協力の枠組みであり、各メンバーの自発的な行動により取組を推進する。このため、他のフォーラに比べてAPECで

はより先進的な取組を行うことが可能となっている。

「開かれた地域協力」:

APECは、活動を通じて

得られたより自由で開かれた貿易・投資といった成果を、域内に止まらず、域外の国・地域とも共有する姿勢である。

• 世界金融危機以降は、毎年首脳会合(サミット)が開催されるように

なり、特に金融分野に注力した議論を行っている。

• 2009年に開催されたG20では、「G20を国

際経済協力の第一の協議体」とすることで合意されており、経済分野において大きな影響力を持つ。

• 一方で、参加エコノミーの選択が排他的かつ恣意的であるとの批判がある。

• G20は直近の問題に

ついての討議を中心に行っており、あまりビジョンを打ち出すことはない。

• 「政治・安全保障共同体」「経済共同体」「社会・文化共同体」からなる「ASEAN共同体」を2015年に設立し、関係性を強化している。

• ASEANは、EUとは異

なり、国家主権の一部委譲、通貨統合、共通の外交・安全保障・防衛政策実施などを目指すものではない。

• 加盟国から独立し、政策決定に実質的に関与する機関や組織は存在しない。

• 先進国間の自由な意見交換・情報交換を通じて、経済成長、貿易自由化、途上国支援に貢献することを目的とする。

• 事務局の人員が他フォーラと比較しても圧倒的に多く、「世界最大のシンクタンク」として機能している。

• 相互審査(ピア・レビュー)等を通して「世界標準」を醸成し、G7・G20での議論につながることもある。

• 既存の貿易ルールの強化、新しい分野のルール策定、紛争解決手続の強化、諸協定の統一的な運用の確保を担う。

• 多角的貿易体制発展に向けた交渉の場を提供するにとどまらず、各協定の実行に当たっての監視機能も有する。

• 近年は、全会一致方式や時代遅れのルールを見直す機運が高まっている。

出所)各フォーラ公開資料よりNRI作成

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各フォーラの構成国/エコノミー、及びその発展の状況

APECの構成エコノミーは地理的な近接性を持っており、そのうち57%は途上国である。また、米中の二大大国が入っており、オーストラリア、カナダなど、貿易投資自由化に積極的なエコノミーが多い

注)先進国:IMF定義 途上:先進でもLDCでもないエコノミー LDC:CDP(国連開発計画委員会)定義出所) IMF公開資料、各フォーラ公開資料よりNRI作成

APEC G20 ASEAN OECD WTO

人口 29億人 47億人 6億4千万人 13億人75億人

【参考値:世界全体】

現構成国/エコノミー数

21 20 10 36 164

先進/途上/LDCの割合

43%/57%/0% 50%/50%/0% 10%/60%/30% 86%/14%/0% 23%/55%/22%

現構成国/エコノミー

※APEC加盟

エコノミーを太字で上部に掲載

オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、中国、中国香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、チャイニーズ・タイペイ、タイ、アメリカ、ベトナム

※全て環太平洋諸国

オーストラリア、カナダ、中国、インドネシア、日本、韓国、メキシコ、ロシア、アメリカ

アルゼンチン、ブラジル、フランス、ドイツ、インド、イタリア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、イギリス、EU(臨時参加する国・機関も存在する)

ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム

カンボジア、ラオス、ミャンマー

※全て東南アジア諸国

オーストラリア、カナダ、チリ、日本、韓国、メキシコ、ニュージーランド、アメリカ

オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、イギリスなど

APEC加盟国全てが加盟

オブザーバー23カ国(東ティモール、バチカンなど)、非加盟国14カ国(北朝鮮など)を除くほぼ全ての国が加盟

経済協力のスキーム

質の高い包括的なFTA/RTAを取り決めるため

に、途上エコノミーのキャパシティビルディングを目的としたCapacity Building Needs Initiative(CBNI)を2012年から実施している。

また、PSUが独自の予算を

用いてキャパシティビルディングに注力している。

キャパシティビルディングを目的とした特定の枠組みはなく、各国単位で経済協力を推進している。

2010年からNarrowingDeveloping Gaps(NDG)がASEANの主要目的として掲

げられている。具体的な取り組みとして、後発加盟国であるカンボジア,ラオス,ミャンマー,ベトナム(CLMV)に対し

開発格差の是正等の支援を行うべく2000年に立ち上げられたInitiative for ASEAN Integration(IAI)が挙げられる。

発展途上国の経済成長や生活水準の向上のためのフォーラムとして、Development Assistance Committee(DAC)が存在している。

WTOは、WTO協定や貿易

ルールの理解促進を目的として、発展途上国の貿易分野のキャパシティビルディングを支援している。

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先進、途上、LDCの定義は下記の通り

先進国:OECDに加盟する36か国(オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チリ、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イスラエル、イタリア、日本、韓国、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロヴァキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、イギリス、アメリカ)からチリ、ハンガリー、メキシコ、ポーランド、トルコの5か国を除いた30か国及びキプロス、香港、マルタ、マカオ、プエルトリコ、サンマリノ、シンガポール、台湾を加えたもの。IMFの分類による。

途上:先進でもLDCでもないエコノミー

LDC:アフガニスタン、アンゴラ、バングラディシュ、ベニン、ブータン、ブルキナファソ、ブルンジ、カンボジア、中央アフリカ共和国、チャド、コモロ、コンゴ民主共和国、ジブチ、エリトリア、エチオピア、ガンビア、ギニア、ギニアビサウ、ハイチ、キリバス、ラオス、レソト、リベリア、マダガスカル、マラウィ、マリ、モーリタニア、モザンビーク、ミャンマー、ネパール、ニジェール、ルワンダ、サントメプリンシペ、セネガル、シエラレオネ、ソロモン諸島、ソマリア、南スーダン、スーダン、東ティモール、トーゴ、ツバル、ウガンダ、タンザニア、バヌアツ、イエメン、ザンビア。国連開発計画委員会(CDP)が認定した基準に基づき,国連経済社会理事会の審議を経て,国連総会の決議により認定された特に開発の遅れた国々。3年に一度LDCリストの見直しが行われる。以下3つの基準を満たした国がLDCと認定される。ただし,当該国の同意が前提となる。

(1)一人あたりGNI(2011~2013年平均):1,035米ドル以下

(2)HAI(Human Assets Index):人的資源開発の程度を表すためにCDPが設定した指標で,栄養不足人口の割合,5歳以下乳幼児死亡率,中等教育就学率,成人識字率を指標化したもの。

(3)EVI(Economic Vulnerability Index):外的ショックからの経済的脆弱性を表すためにCDPが設定した指標。

出所) IMF、CDP、外務省公開資料

定義

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設立趣旨・運営方針・事務局の規模など

APECは決定がノンバインディングであるため、先進的なテーマに取り組みやすい。一方で、事務局の人員・予算が少ない。

APEC G20 ASEAN OECD WTO

設立年 1989 1999 1967 1961 1995

設立趣旨

協議内容

アジア・太平洋地域における政府間経済協力の場として、「地域の成長と発展を持続し、世界経済の成長と発展に貢献する。」などの目標を果たすために設立。

経済分野の諸問題、国際協調について、G7及び新

興国で協議するために設立。

元々は東南アジア諸国の共産主義化を防ぐ目的で設立されたが、経済・社会・政治・安全保障・文化に関する地域協力機構として発展。

WW2後、ヨーロッパ経済

活性化のために設立。経済成長・開発・貿易を意図した政策を推進するという目的の下に、アジア圏の国々も加えつつ発展。

自由貿易の促進を主な目的として設立。WTO協定

など、貿易に関連する国際ルールを定め、その実施・運用を行い、多角的貿易体制の中核として発展。

意思決定方式

全会一致方式 全会一致方式 全会一致方式 全会一致方式全会一致方式

(異議を唱える国がなくなった時点で採択)

決定の拘束性

ノンバインディング ノンバインディング まれにバインディング決定:まれに

バインディング勧告:ノンバインディング

バインディング

事務局の人員

約50名(各年度の議長国が事務

局を務める) 約340名 約2,500名 約650名

予算 約500万USD (事務局を務める各年度の議長国により異なる) 約1,900万USD 約4.3億USD

(約3.7億ユーロ)約2億USD

(約2億スイスフラン)

:ポジティブな項目凡例) :ネガティブな項目

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各フォーラの中長期ビジョン

APECは、多様なテーマについて詳細な検討を行っており、G20とは異なり具体的なアクションプランも明確に提示する

出所)各フォーラ公開資料よりNRI作成

APEC G20 ASEAN

中長期ビジョンのタイトル

APEC経済首脳の共通の決意の宣言(ボゴール宣言)(1994)

首脳宣言「アジア太平洋コミュニティのためのビジョン」(2015)

G20 5th Anniversary VisionStatement)(2013)

ASEAN Community Vision2025(2015)

中長期ビジョンの概要

貿易及び投資に対する障壁を削減し、アジア太平洋地域における財、サービス及び資本の自由な流れを促進することによって、アジア太平洋地域における自由で開かれた貿易及び投資という長期的な目標を達成することを掲げた。

達成目標年は、先進工業経済は遅くとも2010年まで、開発途上経済は遅くとも2020年までとした。

上記目標の達成のために、主に以下の取り組みを具体例として挙げた。

• 貿易投資の円滑化

• 地域社会の開発協力の強化にあたって、ビジネス部門の組み入れ

• 紛争調停サービスの検討

• 既存のサブリージョナルな取極との相互関係の点検

世界経済の状況、テロの脅威などの背景に触れた上で、下記の10の目標について詳細に述べている。

1.包摂的な経済の構築

2.金融市場の深化・リスクの最小化

3.零細・中小企業(MSMEs)の地域及び世界市場への参画促進

4.持続可能で強靱な地域社会の構築

5.成長のための都市化の取組実施

6.人材開発への投資

7.地域経済統合アジェンダの強化

8.経済成長と包摂性を実現するものとしてのサービス分野の発展

9.協力の強化

10.閣僚,APEC プロセス,及び全ての委員会及びフォーラの取組への強い支持

G20の役割を改めて宣言したもの。また、過去のG20の活動内容・達成事項について紹介している。回顧的側面が強く、将来的記述が少ない。

ASEANというコミュニティとしてのあるべき姿をまとめているほか、「政治・安全保障共同体」「経済共同体」「社会・文化共同体」それぞれについてビジョンを設定している。

中長期ビジョンにおけるAPECとの類似点

• 持続可能な成長と繁栄の基盤となるのは、市場原理・効果的な規制・包摂性・強力な国際機関などに基づく世界的に開かれた経済だと主張している。

• 経済成長の恩恵は、男女、貧富の差、世代を問わず共有されるべきだと宣言している。

• 活気がある、持続可能かつ高度に統合された経済の実現を目指している。

• 経済共同体では、貿易投資、雇用の活性化、非関税障壁の削減、イノベーティブであること、高い連結性、包摂性、グローバル経済への統合などを重視している。

中長期ビジョンにおけるAPECとの相違点

• 財政上の持続可能性、各国内外の貿易不均衡の削減、など、コミットを宣言しているテーマが実体的・即物的なものが多く、理念的なものは少ない。

• 提示したテーマにどのように取り組んでいくか、という具体的なアクションプランはあまり表現されていない。

• ASEANとして、共通のアイデンティティや一体感を強化するという主張がなされている。

• 国連2030アジェンダとの調和を意識している。

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GDP・財の輸出入額・財の貿易依存度

財の貿易依存度は、世界全体>APEC>G20。APECが世界に占める割合については、GDP>財の貿易額。APEC域内において貿易の自由化・円滑化を行う余地がある

APEC G20 ASEAN OECD WTO

GDP 45.4兆USD 65.2兆USD 2.5兆USD 47.7兆USD 75.6兆USD【参考値:世界全体】

GDP percapita 15,665 USD 13,728 USD 3,990 USD 37,001 USD 10,132 USD

世界GDPに占める割合

60.0% 86.2% 3.3% 63.1% -

財の輸出額

8.0兆USD 9.7兆USD 1.2兆USD 9.5兆USD 16兆USD【参考値:世界全体】

財の輸入額

8.0兆USD 9.8兆USD 1.1兆USD 10兆USD 16.2兆USD【参考値:世界全体】

財の貿易額

16.0兆USD 19.5兆USD 2.2兆USD 19.5兆USD 32.2兆USD【参考値:世界全体】

財の貿易依存度

35.3% 29.9% 87.7% 40.9% 42.6%【参考値:世界全体】

財の貿易額世界に占める割合

49.7% 60.6% 7.0% 60.7% -

出所)UNCTADなどの公開資料よりNRI作成

注)数値は全て2016年のもの。貿易依存度=貿易額/GDP:ポジティブな項目凡例) :ネガティブな項目

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GDP・サービスの輸出入額・サービスの貿易依存度

APECのサービス貿易の世界シェアは、GDPや財ほど大きくなく、伸びしろがある。G20は、APECに比べサービスアジェンダの意義が重くなると考えられる。

APEC G20 ASEAN OECD WTO

GDP 45.4兆USD 65.2兆USD 2.5兆USD 47.7兆USD 75.6兆USD【参考値:世界全体】

GDP percapita 15,665 USD 13,728 USD 3,990 USD 37,001 USD 10,132 USD

世界GDPに占める割合

60.0% 86.2% 3.3% 63.1% -

サービスの輸出額

1.9兆USD 3.8兆USD 3400億USD 3.5兆USD 5.0兆USD【参考値:世界全体】

サービスの輸入額

2.0兆USD 3.7兆USD 3200億USD 3.0兆USD 4.9兆USD【参考値:世界全体】

サービスの貿易額

3.9兆USD 7.5兆USD 6600億USD 6.5兆USD 9.8兆USD【参考値:世界全体】

サービスの貿易依存度

8.7% 11.6% 25.9% 13.6% 13.0%【参考値:世界全体】

サービスの貿易額

世界に占める割合

40.1% 77.0% 6.7% 66.2% -

出所)UNCTADなどの公開資料よりNRI作成

注)数値は全て2016年のもの。貿易依存度=貿易額/GDP:ポジティブな項目凡例) :ネガティブな項目

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ビジネス環境・投資環境

APECではG20やASEANよりもビジネスが行いやすい傾向にあるが、FDIの世界に占める割合はG20に比べて低いため、依然として投資環境の整備が重視されるべきである

出所)UNCTAD、世銀などの公開資料よりNRI作成

APEC G20 ASEAN OECD WTO

Ease OfDoingBusiness(ランキング順位の平均値)(2018)

40.0 52.1 80.8 28.5 -

GDP(2016) 45.4兆USD 65.2兆USD 2.5兆USD 47.7兆USD 75.6兆USD【参考値:世界全体】

世界GDPに占める割合(2016)

60.0% 86.2% 3.3% 63.1% -

FDIの流入(2016) 1.0兆USD 1.4兆USD 1200億USD 1.2兆USD 1.9兆USD

【参考値:世界全体】

FDIの流出(2016) 8700億USD 1.2兆USD 390億USD 1.1兆USD 1.5兆USD

【参考値:世界全体】

FDI流出入額(2016) 1.9兆USD 2.6兆USD 1590億USD 2.3兆USD 3.3兆USD

【参考値:世界全体】

FDI 世界に

占める割合(2016)

57.1% 78.9% 4.8% 68.1% -

:ポジティブな項目凡例) :ネガティブな項目

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イノベーション・デジタル経済

APECは、国際特許出願の世界シェアがGDPの世界シェアより大きく、イノベーションが活発であるといえるが、G20の圧倒的シェアには依然及ばないので、推進の必要性がある

出所)WIPO、NSB、ITOなどの公開資料よりNRI作成注)平均はデータ取得可能国のもの

APEC G20 ASEAN OECD WTO

国際特許出願件数の合計および平均(2017)(注)

17万7千件

(9800件)23万3千件(12000件)

1200件(150件)

18万7500件(5200件)

24万3500件【参考値:世界全体】

国際特許出願件数の世界に占める割合(2017)

72.6% 95.7% 0.5% 77.0% -

科学/工学論文数および平均(2016) (注)

114万本

(8万8千本)194万本

(10万2千本)4万8千本

(1万2千本)131万本

(4万5千本)230万本

【参考値:世界全体】

科学/工学論文数

の世界に占める割合(2016) (注)

52.6% 87.5% 2.1% 56.9% -

人口100万人あた

りの国際特許出願件数(2017)

61 49 1.9 14432

【参考値:世界全体】

人口100万人あたりの論文数(2016) 393 413 75 1,008

307【参考値:世界全体】

加盟国インターネット普及率(平均)(2016)

69.0% 69.8% 50.8% 82.9% 51.8%

:ポジティブな項目凡例) :ネガティブな項目

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Inclusiveness

APECはOECDに比べ、ジニ係数が高い。

出所)UNESCO、世銀などの公開資料よりNRI作成

APEC G20 ASEAN OECD WTO

ジニ係数(平均)(注)※ 0.393 0.390 0.390 0.329 0.391

成人男性就業率(平均)(2016)

75.0% 71.4% 79.5% 67.9% 73.3%

成人女性就業率(平均)(2016)

57.6% 48.7% 61.3% 54.0% 53.5%

成人男性識字率(平均) (2016) (注)

96.8% 95.3% 90.5% 98.3% 84.9%

成人女性識字率(平均)(2016)(注)

93.9% 91.4% 84.2% 96.8% 77.2%

注)平均はデータ取得可能国のもの

※ジニ係数のデータについては、各国の最新版を利用

:ポジティブな項目凡例) :ネガティブな項目

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第1章 はじめに

第2章 APECにおけるビジョン形成に向けたデータ及び論点整理

賢人会議における議論内容

アジア太平洋経済・貿易の構造変動と今後の展望

他フォーラとの比較から見るAPECの特徴

各フォーラのビジョン分析

包摂性に関する調査報告

Inclusivenessに関するSDGsとの比較

パスファインダーに関する調査

第3章 APECビジョン研究会の運営

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ビジョン分析 ゴールの性質、バインドの度合い、その他性質

定量的な目標を独自に定めるよりも、定性的な目標の達成年限を定める、もしくは別機関の定める定量的な目標を引用する、という目標の設定の仕方が目立つ

APEC G20 ASEAN OECD(全体) WTO

中長期ビジョンのタイトル

APEC経済首脳の共通の決意の宣言(ボゴール宣言)(1994)

首脳宣言「アジア太平洋コミュニティのためのビジョン」(2015)

G20 5th Anniversary VisionStatement)(2013)

ASEAN CommunityVision 2025(2015) N/A N/A

バインドの度合い

ノンバインディング ノンバインディング ノンバインディング

憲章:バインディング

ビジョン:ノンバインディング

行動規範に拘束力を持たせるべく活動中

決定:多くが紳士協定であるが、まれにバインディング

国際合意:バインディング

宣言・勧告・アレンジメント:ノンバインディング

決定:バインディング

ゴールの性質

(定量的か、定性的か)

定性的(アジア太平洋におけ

る自由で開かれた貿易及び投資という目標の達成、など)

概して定性的、一部定量的(実効関税率、エネル

ギー集約度の改善、回復する森林面積、大学レベルの年間留学生)

定性的(経済成長、雇用の創出、信頼向上など)

定性的(政治・安全保障面、

経済面、社会面などについて目標を設定)

N/A N/A

その他調査の過程で気づいた性質

ボゴール宣言を受けて策定された大阪行動指針では、「国際民間航空機関(ICAO)」などの基準が引用されている。

- - - N/A N/A

出所)各種公開情報よりNRI作成

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ビジョン分析 ゴールの性質、バインドの度合い、その他性質

DACや国際連合(SDGs)では、定量的な目標や規制の設定はあまり行っていないが、フィードバック・レビューを通して取り組みの実行性を高めている

OECD(DAC) 国際連合

中長期ビジョンのタイトル

DAC Global Relations Strategy(2016)(SDGs)我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ(2015)

世界人権宣言

バインドの度合いノンバインディング

(加盟国は定期的に会合を行い自国の取り組みに対してフィードバックを受ける)

ノンバインディング

(取り組みについて、各国政府のフォローアップとレビューの責任を明記するとともに、世界レベルのフォローアップ・レビューを実施)

ノンバインディング

※世界人権宣言の理想を実現するため、下記のようなバインディングな人権条約が多数締結された

難民条約・人種差別撤廃条約・国際人権規約(社会権規約・自由権規約)・女性差別

撤廃条約・拷問等禁止条約・子どもの権利条約・死刑廃止条約・移住労働者の権利条約

ゴールの性質

(定量的か、定性的か)

定性的概して定性的、一部定量的

(開発目標:妊産婦死亡率、後発開発途上国における経済成長率、ODAのGNI比)

定性的

その他調査の過程で気づいた性質

(※本ビジョンは、DACにおける会合等の

質や妥当性、影響力を上げるために定められたビジョン)

人権、気候変動、紛争等、関連のある戦略の実行を支持するとして、他の行動計画等との関係を意識している。

例)イスタンブール宣言及び行動計画、サモア・パスウェー、ウィーン行動計画、アフリカ関連、等

明確な数値は設定されていないが、初等・基礎的教育は無償とするなど、一定の明確な基準を設けた規定を有する。

出所)各種公開情報よりNRI作成

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第1章 はじめに

第2章 APECにおけるビジョン形成に向けたデータ及び論点整理

賢人会議における議論内容

アジア太平洋経済・貿易の構造変動と今後の展望

他フォーラとの比較から見るAPECの特徴

各フォーラのビジョン分析

包摂性に関する調査報告

Inclusivenessに関するSDGsとの比較

パスファインダーに関する調査

第3章 APECビジョン研究会の運営

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包摂性に関するAPECの議論の流れ:2000年首脳宣言(ブルネイ)

中小企業や教育、若者など包摂性関連のテーマが多かったが、これはインターネットの可能性が認識されたため、ICTを活用した社会課題解決に力点が置かれていると思われる。

21.我々は、若者を将来の課題に備えさせることに特に重点を置いており、情報技術が学習及び授業において中心的な能力となるべきことで意見が一致している。我々は、教育分野における域内の協力プロセスを通じて、教員の質を向上させ、かつ健全な教育管理を構築するためのAPECの

プログラムを支援する。我々は、また、環太平洋大学連合及びその他の機関による域内の遠隔学習能力を開発するためのイニシアティブを賞賛する。新たな情報通信技術は、また、衛生及び医療サービスをより広範なコミュニティーへと拡大し、基本的な衛生問題に対処するための重要なネットワークの発展を可能とする。(後略)33.我々は、ビジネス・コミュニティーに対し、新たなBizAPEC ウェブサイトをこの地域内の新しい機会を求めるための手段として活用し、貿易及び通商を促進するよう促す。我々は、実務者に対し、このBizAPEC をダイナミックな情報の中心とし、ビジネス界の現在の関心を反映したものとするよう要請する。このイニシアティブは、APECが実施している他のイニシアティブとともに、中小企業による戦略的提携を構築し、国際的な貿易と投資の利益を活用するための努力を促進することが出来るものである。

別添1.APEC首脳の指令・我々は、APECにおける女性の統合のための枠組を通じたジェンダー統合に対し現在も強固にコミットしている。我々は、この枠組の実施を一層

加速させるためのジェンダー統合に関する特別の諮問グループからの提言を歓迎し、承認する。我々は、これが、メンバー内の全ての人々が改善された経済的・社会的福祉のために潜在能力を十分に実現するという、我々の過去からの努力の継続であると考える。・我々は、APEC食料システムの提言の実施に関する閣僚からの進捗状況の報告を歓迎する。我々は、域内の食料部門の重要性に鑑みれば、APEC食料システムがAPECの目的達成に重要な貢献が可能であることを想起する。我々は、農村のインフラ開発、食品貿易の推進、並びに、食品の生産及び加工における技術進歩の普及という、3つの協力分野に同時に対処して行くという我々のコミットメントを再確認する。我々は、APECのフォーラム及びメンバーに対し、ABACからの提言にあるように、この点に関する勢いを高めるよう求める。

・我々は、観光産業が、域内の中小企業や遠隔地の人々も含む、コミュニティーの広範な部門に雇用とビジネスの機会を提供する域内の最も重要でかつ力強い産業の一つであることで意見が一致する。付属書1.ニュー・エコノミーのための行動指針・中小企業が貿易及びビジネスの全ての面においてICTを最大限活用することが確保されるように、作業を継続する。・教育分野でのICTの活用に特化している研究機関及び教育者訓練機関をつなぐ、「APECサイバー教育ネットワーク」の創設に向けて作業する。

・デジタル機会及び政策的立場の検討に役立てるための知識ネットワークを創設するために、「電子商取引に関するグローバル・ビジネス・ダイアログ」(GBDe)やその他の民間セクターの組織との協力を促す。

出所)外務省仮訳(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/apec/2000/shuno.html)

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包摂性に関するAPECの議論の流れ:2009年首脳宣言(シンガポール)

APECで包摂性が初めて言及されたのは2009年の首脳声明である。当時は、社会の全ての層が成長の恩恵を享受する機会の拡大、および最も脆弱な層の支援を意味していた。

「あまねく広がる成長(inclusive growth)」の助長

我々は、将来の経済成長がよりあまねく広がるものとなることを確保し、成長によって生み出される機会へのアクセスを拡大し、成長がもたらす利益がより幅広く行き渡るようにすることを決意する。このことにより、我々のエコノミーが、グローバル化によって生まれた機会をよりよくとらえ、その課題に対処することを可能にする。「あまねく広がる成長」は、自由で開かれた貿易及び投資に向けたコンセンサスを強化する。

APECの「あまねく広がる成長」アジェンダは、進行中のLAISR 2010の下での構造改革に関する取組に基づいて、主に二つの観点から推進される。第一に、社会の全ての層が成長の恩恵を享受する機会を高めるような構造調整に、着手する。以下の具体的分野に重点を置く。• 我々は、中小企業(SMEs)を支援し、発展させる。中小企業は、APEC地域における全ビジネスの90パーセント以上を占め、労働者の50から80

パーセントを雇用している。我々は、中小企業が世界の市場、技術、及び資金に対してよりよいアクセスを得ると共に危機管理能力を向上させることを支援する。

• 我々は、雇用の創出を我々の経済戦略の中心に据え、グローバリゼーションがもたらす社会的影響に対処するための協力を促進する。我々は、「労働者」の再訓練、技術向上及び移動を促進し、特に新興産業及び成長産業において雇用を確保することができるようにする。

• 我々は、女性の経済的な機会を最大化するために、教育、訓練、金融、技術及びインフラへの女性のアクセスを向上させることに焦点を置く。我々は、女性の経済的関与が生産性及び持続可能な成長に及ぼし得る正の乗数効果を増大するための女性企業家に対する継続的なアウトリーチを歓迎する。

第二に、我々は、我々エコノミーにおける最も脆弱な層に焦点を当て、個人が短期的な苦境を乗り越えるのを助ける一方で、長期的な努力に対するインセンティブを提供する「たくましい社会」を強化する。• 我々は、長期的な経済的保障を高めるために、教育及び技術訓練における成果を改善する。• 我々は、仕事と企業の振興につながる所得補助又は勤労所得控除を検討する。• 我々は、短期的な経済的保障を提供しつつも長期的な依存を防ぐソーシャル・セーフティ・ネットを設計する。

我々は、閣僚及び実務者に対して、2010年におけるAPECのあまねく広がる成長アジェンダを更に進め、構造改革と中小企業の発展、雇用創出、及びソーシャル・セーフティ・ネットの構築のための能力を構築するための複数年プログラムを発展させるよう指示する。

出所)外務省仮訳(https://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_hatoyama/apec_09/apec_seicho_ka.html)

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包摂性に関するAPECの議論の流れ:2014年首脳宣言(北京)

2014年時点では、女性、テロや気候変動、食糧安保、腐敗対策、災害対策等が包括的支援として挙げられている。

包摂的支援42 我々は,経済成長のための強固な基盤を提供し,脆弱層の必要性に対処するという目的で,包摂的支援は成長を維持し,改革のリスクや起こりうる副次的影響に対処するために,不可欠であると認識する。我々は,第6回人材開発大臣会合の成果及び人材開発を通じた質の高い雇用の促進及び人と人との連結性の強化に関する行動計画(2015-2018)を歓迎する。我々は,APECエコノミーが,雇用の安定及び拡大,雇用創出に資するマクロ経済政策の実施,並びに人材開発,職業能力開発及び青少年を対象とした技術訓練のための能力構築の強化を優先することを奨励する。我々は,APEC域内におけるデジタル・ディバイドの縮小,人材開発の強化,デジタル機会の創出を通じたAPECデジタル機会センター・イニシアティブの10年にわたる業績を賞賛する。43 我々は,アジア太平洋の発展及び繁栄における女性の重要な役割を認識し,女性の経済的エンパワーメント並びに経済市場及びICT技術へのアクセスを更に強化し,女性

の経済参画を妨げる全ての障壁をなくし,革新的な発展,経済改革及び成長において,女性の平等な機会,参加及び利益を確保するための具体的政策及び革新的措置をとることにコミットする。我々は,女性と経済フォーラムによる勧告を歓迎し,女性の起業家精神を促進することにコミットする。我々は,女性の経済参画への障壁の削減における進捗を測るためのデータの重要性を認識し,政策に関する議論を周知する手法としてのAPEC女性と経済のダッシュボードの設立を歓迎する。我々は,女性のリーダーシップを支

持し,女性の起業家精神の支援サービス及びネットワークの重要性を認識する。我々は,女性起業家が起業し,ビジネスを成長させ,国内及び国際市場へのアクセスを向上させることを可能にするためのAPECにおける女性の起業家精神のネットワークの正式な発展を奨励する。44 我々は,第4回保健と経済に関するハイレベル会合による勧告を歓迎し,APEC地域全体での協力の下,政府全体及び社会全体でのアプローチにより,人の一生を通じた身体的及び精神的福祉を含む人の健康を保証する持続可能な実効性の高い保健システムの構築を目的としたヘルシーアジア太平洋2020を承認する。45 我々は,流行病,テロ,自然災害,気候変動及び他の世界的課題に共同で対処することにコミットする。現在のエボラ・ウイルス病の蔓延に立ち向かうため,大発生に効果

的に対処し,予防し,管理するよう支援するため,アフリカ諸国と協力を強化し,協働し,この蔓延を終わらせ,将来的な大発生を予防し,検出し,管理し,これに対処することを決意する。我々は,被害を受けた地域の人々がこの危機を乗り越え,経済を回復させるための支援を継続し,この疾病との闘いに勝つことができる。46 我々は,第3回食料安全保障に関するAPEC大臣会合で発出されたAPEC食料安全保障に関する北京宣言を承認する。我々は,APEC食品ロス・廃棄削減行動計画,APEC食料安全保障運用ビジネスプラン(2014-2020),2020年に向けたAPEC食料安全保障ロードマップ(2014年版)及びAPEC食料基準と安全性の確保に関する連結性強化のための行動計画を承認する。我々は,2014年に行われた食料安全保障に関するG20の作業に留意する。我々は,APECエコノミーに対し,アジア太平洋地域の長期的な食

料安全保障のため,開かれた,包摂的で,相互に利益のある,全てのものにとり恩恵のある食料安全パートナーシップを構築するための共通の基盤を追求することを要請する。我々は,持続可能な農業開発を進め,持続可能な漁業を支援するためのAPEC農業科学技術イノベーション及び協力を強化する。47 我々は,食品安全規制システムを改善し,国際的な科学に基づく基準の調和を促し,貿易を円滑化する分野における能力を構築し,新たに発生している食品安全の課題に対処するために産業界と規制者の連絡及び連携を強化することによって,APEC地域において生産され,取引される食品の安全性の確保を促すAPEC食品安全協力フォーラム(FSCF)及びそのパートナーシップ訓練機関ネットワーク(PTIN)の継続的な努力を賞賛する。我々は,2014年食品安全に関するAPECハイレベル規制当局産業対話のAPEC食品安全北京宣言を歓迎する。48 我々は,効果的な腐敗対策を含む,汚職との闘いに示された強い決意を賞賛する。我々は,腐敗防止に関する北京宣言を支持し,収賄予防及び反収賄法の執行及び効果的な企業の自発的遵守プログラムに関するAPEC一般原則を歓迎する。我々は,腐敗公務員の本国送還又は引き渡し,並びに汚職による収益の没収及び回収に関する協力及び協調を強化することにコミットする。49 我々は,災害管理部門間のネットワーキングをより強化し,適切な寄付に関するAPECガイドラインに従い,サプライチェーンの強靱性を向上し,貿易回復プログラムを運用

し,国境を越えた緊急要員および人道支援の移動の障壁を削減し,データの共有を増加し,科学技術を活用することを含む,災害への備え,リスク削減,対応及び災害復興,並びに捜索及び救助におけるメンバーエコノミーの更なる協力を奨励する。50 我々は,APEC地域における経済活動及び連結性のために安全で強靱な環境を創造し,APECテロ対策及び貿易の安全のための総合戦略を履行するための協同努力を継続するとの決意を再確認する。

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包摂性に関するAPECの議論の流れ:2015年零細・中小企業(MSMEs)のグローバル化のためのボラカイ行動アジェンダ(フィリピン)

2015年時点では、MSMEsのグローバル化という特定のテーマにフォーカスした行動アジェンダが発出されるほど議論が進展していた

1.MSMEs のFTAs/RTAs の利用促進(略)2. 税関関連規則の合理化と零細・中小企業のコンプライアンス支援(略)3. 輸出入手続きに係る適時かつ正確な情報提供 (略)4. 中小企業がサプライチェーンに貢献できるようにするための認定事業者(AEO) 制度等への参加希望者ベースの拡大

a.AEO 制度等のベストプラクティスに関するガイドラインの策定や APEC 域内における事業者間ネットワークの構築。b.AEO 制度等に関する中小企業の意識、理解およびコンプライアンス向上といった能力構築の実施。

5. 零細・中小企業向け金融支援・基盤整備(一部略)b.信用情報の共有や動産担保制度など、金融インフラ整備について協力を進め、グローバル・バリュー・チェーンの強化のため、零細・中小企業

に対するシームレスな金融環境を実現。d. 金融機関の協力及び零細・中小企業の APEC 域内での相互投資の促進e. オープンで透明な事業環境の支持

6. ICT や電子商取引を通じた零細・中小企業の国際化への機会の拡大(一部略)a.売買(B2C)、ビジネスマッチング(B2B)、オンライン・ツー・オフライン商取引(O2O)を支援するための電子商取引プラットフォーム及び革新的な

ビジネスモデルを、産業界(ABAC)とともに促進。b.零細・中小企業のための国際ネットワーキング、国境を越えたビジネス機会拡大に向けた、能力構築支援。c.零細・中小企業による次世代高速ブロードバンド/インターネットの活用促進や効果的な活用を促進。

7. 零細・中小企業への制度的支援(一部略)c.零細・中小企業のイノベーションを促進するため、女性及び若者等の革新的・ 先進的なネットワークを構築。あわせて APEC SME データベー

スの構築を促進。d.地域及びグローバル・バリュー・チェーンへの零細・中小企業のさらなる参画のため、小規模企業と大企業の間の幅広い連携を促進。e.零細・中小企業の事業継続計画(BCP)の策定・実施を促進。

8. 女性が経営する零細・中小企業へのフォーカスの強化a.性別毎の零細・中小企業に対する経済的,社会的影響に関するデータの活用を促進。b.経営者の性別による、零細・中小企業が直面する制約の違いへの理解促進。c.女性に配慮した税関・国境当局の手続きに関するベストプラクティスの交換を奨励。

(※)貿易大臣会合において本行動アジェンダを採択し、秋に向けて具体化を進め、 首脳会合において歓迎されることを目指す。2018年までに中間レビューを行い、2020年までに最終的な進捗報告を行う。

出所)外務省仮訳(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000082545.pdf)

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包摂性に関するAPECの議論の流れ:2017年包摂の促進に関する行動アジェンダ(ベトナム)

2017年時点では、包摂性を更に促進するため、経済・金融・社会の観点からそれまでの作業を統合する段階に至っており、2030年までの目標が定められた

1. 我々,APEC 首脳は,アジア太平洋地域において一層必要となっている効果的な経済的・金融的・社会的包摂を改めて強調する。貿易・投資の拡大及びデ

ジタル分野における変革により経済成長及び雇用が大きく促進されたが,そうした利益は,我々の社会の各層に均一に広がってこなかった。我々の地域は,根強い不平等,失業,健康,教育及び生活水準に影響する多方面にわたる持続的な貧困,技術進歩の影響といった,経済的・社会的包摂に対する課題に直面している。さらに,APEC の中には高齢化,中間層の拡大といった重要な人口統計上の変化が起きているエコノミーも存在し,そうした変化は包摂的成長の新たな課題となっている。3.経済的・金融的・社会的包摂の促進に関する本行動アジェンダは,現在 APEC において進んでいる包摂に関する作業を統合し,努力が適切で,かつ急速に変化する世界及び地域情勢に対応するものとなるよう新たな要素を加えるものである。我々の最も重要な目標は,2030 年までにより包摂的な APEC コミュニティを実現することである。4.行動アジェンダの 3 つの重要な柱は以下のとおり。

a. 経済的包摂とは,社会の全ての人が,経済に有意義に参加するため,経済機会についての情報の取得及びアクセスにおいて平等であることを指す。b. 金融的包摂とは,個人及び企業が,責任ある持続可能な方法で提供される取引,支払い,貯蓄,信用及び保険といった,自らのニーズを満たす,有益で手

頃な価格の金融商品とサービスに適切にアクセスすることを意味する。c. 社会的包摂は,貧困と社会的排除の危険にさらされている人々のために社会への参加条件を改善し,公平性を高めるプロセスと定義される。

5.行動アジェンダは,以下の APEC の野心的な目的を達成することを目指す。a. 経済的包摂:完全かつ生産的な雇用,若者,高齢者,障害者を含む全ての人への良い仕事の提供,同一労働同一賃金の達成に向けた進捗を促進する。持

続可能な開発のための 2030 アジェンダで描かれているとおり,所得下位 40%の層について,各エコノミーの平均を超える所得成長を漸進的に達成し,持続させる。

b. 金融的包摂:銀行,保険,金融サービスへのアクセスを奨励・拡大し,全ての人の金融リテラシーと金融にアクセスする能力を高めるため,金融機関の能力を強化する。

c. 社会的包摂:社会の全ての人が経済機会を利用できる能力を備えるよう支援する。6.我々は以下の優先分野を特定する。(略)7.行動アジェンダを実施するため,我々は以下の行動にコミットする。・APEC 委員会,フォーラム及びサブフォーラに対し,作業計画や戦略計画に経済的・金融的・社会的包摂を組み込むよう奨励する。・APEC フォーラムに対し,2018 年に少なくとも合計 6 つの新たな取組,すなわち,経済的・金融的・社会的包摂の各分野で 2 つの取組を共同で提案することを求める。(中略)・実務者に対し,2018 年から本件行動アジェンダの実施を開始し,2024 年に進捗に関する中間報告,2030 年に最終的なレビューを行うよう指示する。この取組は,経済及び技術協力に関する SOM 調整委員会を通じて調整されるべきである。

出所)外務省仮訳(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000306944.pdf)

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包摂性に関するAPECの議論の流れ:2017年(APEC地域における経済的・金融的・社会的包摂の促進に関する行動アジェンダ)

2017年の首脳声明では、附属書において経済、金融、社会の3つの視点から包摂性を捉え、行動目標を設定した。

詳細については別紙参考資料を参照。

経済的包摂社会の全ての人が、経済に有意義に参加するため経済機会についての情報の取得及びアクセスにおいて平等であること

金融的包摂個人及び企業が自らのニーズを満たす有益で手頃な価格の金融商品(責任ある持続可能な方法で提供される取引、支払い、貯蓄、信用及び保険等)とサービスに適切にアクセスすること

社会的包摂貧困と社会的排除の危険にさらされている人々のために社会への参加条件を改善し、公平性を高めるプロセス

• 完全かつ生産的な雇用• 若者・高齢者・障害者を含む全ての人への良い仕事の提

供,同一労働同一賃金の達成に向けた発展• 所得下位40%の層について,各エコノミーの平均を超える

所得成長を漸進的に達成し持続させる

• 銀行、保険、金融サービスへのアクセスを奨励・拡大し、全ての人の金融リテラシーと金融にアクセスする能力を高めるため,金融機関の能力を強化する

• 社会の全ての人が経済機会を利用できる能力を備えるよう支援する

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Inclusivenessに関する分析:APECにおける包摂性概念の変遷(2009-2017)

当初は経済成長への参加と成長果実の分配が並存していたが、近年はより成長への参加機会の拡大に重点が置かれるとともに、その指す範囲が拡大・具体化している。

最も脆弱な層の支援

全階層が成長の恩恵を

享受

金融的包摂

経済的包摂

社会的包摂

デジタル経済の進展

貧困削減と中間層の発展

2009年 2017年

保護主義の拡大

• 零細・中小企業の信用へのアクセス拡大

• 地方や農業部門の消費者に適した金融商品・サービス

• 金融リテラシーの成長• デジタル金融の開発

• 構造改革を進め,新たな機会と雇用へのアクセスを拡大

• 若者・女性・高齢者・障害者・農村の経済機会・就労強化

• MSMEの貿易への参加• デジタル経済の機会活用

• 技術革新の影響を理解するエコシステム開発(教育・訓練機会へのアクセス改善等)

• 女性,若者,高齢者,障害者,農村等脆弱な人々の社会的エンパワーメント強化

• セーフティネットの維持・強化

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Inclusivenessに関する分析:APECにおける包摂性概念の変遷(1994-2017)

貿易・投資の自由化による貧困削減、新たな社会課題の発生、デジタル化などを受け、ボゴール目標に比べると、近年は成長の果実の配分要素が強まっているといえる。

ボゴール目標では、開発協力の強化も重要な柱の1つではあったものの、多角的貿易体制や貿易及び投資の自由化に比べると、その優先順位は劣後していた。

前提としてASEAN地域における「成長の分かち合い」があったと考えられるが、これが1997年の通貨危機で崩れた。

その後、貿易・投資自由化による貧困削減が進むと同時に、特に2009年の金融危機を境に、そこから取り残された女性や遠隔地域等の新たな社会課題の発生、デジタル化の進展などに対応することを迫られた。

このような流れの一環として、近年のトランプ政権の誕生やBrexitが位置づけられよう。

結果、ボゴール目標と現在を比較すると、成長の果実に関する議論が強まっていると言える。APECにおける包摂性概念の変遷(1994-2017)

• 金融危機後よりは再分配の要素が後退し、経済成長に軸足を移した記載となっている。

• 他方、ボゴール目標に比べると、明らかに女性や中小企業等、特定のセグメントの経済成長への取り込みを図った文言が見られる。

• 包摂的成長(Inclusive Growth)として、経済

成長と並び、再分配(セーフティネットや雇用の確保など)の要素も並行して規定されている。

• 従来「成長の分かち合い」(世界銀行「東アジアの奇跡」(1993年))

が出来ていたアジア経済において、金融危機を契機として格差が拡大した。

下記をAPECが主導することを目的

• 開放的な多角的貿易体制の強化

• アジア太平洋における貿易及び投資の自由化の促進

• アジア太平洋における開発協力の強化

ボゴール目標(1994年)

金融危機後(2009年)

アジア通貨危機(1997年)

トランプ政権誕生後(2017年)

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Inclusivenessに関する他のフォーラムの取り組み

APECでも包摂性として取り上げられる範囲が拡大しつつある。

注)○は言及がなされた項目。文章は特徴的な内容

発出年度 2017 2017 2017 2016 2015 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009

声明のタイトルAPEC閣僚共同

声明

APEC 地域における経済的・金融的・社会的包摂の促進に関する行動アジェンダ

女性と経済フォーラム

APEC首脳宣言

零細・中小企業(MSMEs)のグ

ローバル化のためのボラカイ行動

アジェンダ

APEC首脳宣言 APEC首脳宣言 APEC首脳宣言 APEC首脳宣言 APEC首脳宣言 APEC首脳宣言 APEC首脳宣言 総言及数

会合開催国 ベトナム ベトナム ベトナム ペルー フィリピン フィリピン 北京 インドネシア ロシア 米国 日本 シンガポール

女性

○女性と経済に関するサブファンドの設立への努力

を歓迎

○ ○ ○ ○ ○ ○○

女性の経済への包摂

○ ○

○各種資源へのア

クセス向上女性企業家への

アウトリーチ

11

MSMEs(国際化/GVCへの参加等)

○ ○ ○ ○ ○ ○○

金融適格性の向上

○ 8

教育○

識字率の向上○ ○ ○ ○ 5

デジタル経済の推進

○教育・訓練・保育の機会へのアク

セス/電子決済取引の促進

○ ○ ○

○デジタル格差の縮小と機会の創

5

弱者(Vulnerables People)○

若者・高齢者

○障がい者、若者・

高齢者

○包摂的支援による脆弱層への対

○貧困層の金融適

格性の向上

○脆弱な層

ソーシャル・セーフティネット

5

食糧安全保障○

農業・水産養殖・漁業の拡大

○社会経済的な要因の重要性を認

○各種条項の承認

3

災害対策 ○ ○ ○ 3

農村など周縁部○

金融サービスへのアクセス確保

○ ○ 3

スタートアップ企業への援助 ○ 1

総言及数 5 7 4 4 3 5 6 4 1 1 0 4 -

Inclusivenessに関連して言及されているテーマのリストAPEC

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Inclusivenessに関する他のフォーラムの取り組み

APEC以外の多様な国際フォーラにおいても包摂性が議論されているため、WhyAPEC?が問われることとなる。

注)○は言及がなされた項目。文章は特徴的な内容

発出年度 2017 2017 2017 2016 2015 2015 2018 2018 2018 2017

声明のタイトルAPEC閣僚共同

声明

APEC 地域における経済的・金融的・社会的包摂の促進に関する行動アジェンダ

女性と経済フォーラム

APEC首脳宣言

零細・中小企業(MSMEs)のグ

ローバル化のためのボラカイ行動

アジェンダ

APEC首脳宣言G20・アルゼンチンプレジデンシー

ASEANシンガポール首脳会談

議長声明(Inclusiveness関連の記載なし)

OECD閣僚理事会議長声明

WTO閣僚会議共同声明

総言及数

会合開催国 ベトナム ベトナム ベトナム ペルー フィリピン フィリピン アルゼンチン シンガポール フランス アルゼンチン

女性

○女性と経済に関するサブファンドの設立への努力

を歓迎

○ ○ ○ ○ ○

○デジタル面、金融面での包摂性向

○ 8

MSMEs(国際化/GVCへの参加等)

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 7

教育○

識字率の向上○ ○ ○

○技術革新の包摂性向上のための

教育

○DX社会への対応

6

デジタル経済の推進

○教育・訓練・保育の機会へのアク

セス/電子決済取引の促進

○ ○ ○○

越境EC5

弱者(Vulnerables People)○

若者・高齢者

○障がい者、若者・

高齢者○ 3

食糧安全保障○

農業・水産養殖・漁業の拡大

○社会経済的な要因の重要性を認

2

災害対策 ○ ○ 2

農村など周縁部○

金融サービスへのアクセス確保

1

スタートアップ企業への援助 ○ 1

総言及数 5 7 4 4 3 5 2 0 4 1 -

Inclusivenessに関連して言及されているテーマのリスト Inclusivenessに関連して言及されているテーマのリストAPEC その他フォーラ

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Inclusivenessに関する他のフォーラムとの比較:WhyAPEC?の分析

抽象的なテーマである包摂性に対し、バインディングな他フォーラは明確な打ち手を示せていないが、ノンバインディングなAPECはより具体的な解決策を提示できている(1/2)

APEC G20 OECD WTO

声明文のタイトル

APEC地域における経済的・金融的・社会的包摂の促進に関す

る行動アジェンダ(2017)

アルゼンチンプレジデンシー(2018)

閣僚理事会議長声明(2018)閣僚会議

共同声明(2017)

全体像

不平等、失業、持続的な貧困、技術進歩の負の側面、高齢化などの諸課題や、中間層拡大という状況の変化を念頭に置き、包摂性促進を経済・金融・社会の各観点から検討している。

2030年までにより包摂的なAPECコミュニティを実現することを目標としている。

女性についてデジタル・金融分野での包摂を保証すること、技術革新を包摂的にすることにのみ触れており、扱う対象が先進的なものに偏っている。

企業家精神の強化や、DX時代の訓練/教育などの先進的な領

域及びジェンダー的な平等を念頭に置いている。

Inclusivenessにはあまり触れておらず、デジタル貿易(越境EC)

の重要性を認識したに留まっている。

女性

職業訓練及び雇用に対する障壁を取り除く施策を実施し,積極的な労働市場政策を強化し,労働市場の需要と教育能力をつなぐ人材開発を支援することにより,女性などの経済機会・就労を強化する。

真の開発とは、ジェンダーによる不平等を終わらせ、女性の仕事及びデジタル・金融分野における包摂を保証するものでなければならない。

少女たちに質の高い教育や学習を提供することは、ジェンダーにおける平等と、包摂的な成長を促進するために極めて重要である。

-

MSMEs(国際化/GVCへの

参加等)

貿易促進や市場アクセスの改善,零細・中小企業の国際化等により,地域統合を深化し,貿易・投資を増加させる。

貿易投資の結びつきを高めるための効率的な仕組みを再考することは、MSMEsのグローバル

バリューチェーンへの参加などを促進するための重要なタスクである。

『Declaration on Strengthening SMEs and Entrepreneurship for Productivity and Inclusive Growth(生産性と包摂的成長の

ために中小企業と企業家精神を強化する宣言)』を歓迎した。

Eコマースに関連し、MSMEsが

直面している機会と課題を、WTOは認識している。

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Inclusivenessに関する他のフォーラムとの比較:WhyAPEC?の分析

抽象的なテーマである包摂性に対し、バインディングな他フォーラは明確な打ち手を示せていないが、ノンバインディングなAPECはより具体的な解決策を提示できている(2/2)

APEC G20 OECD WTO

声明文のタイトル

APEC地域における経済的・金融的・社会的包摂の促進に関す

る行動アジェンダ(2017)

アルゼンチンプレジデンシー(2018)

閣僚理事会議長声明(2018)閣僚会議

共同声明(2017)

教育

デジタル化の恩恵を活用し,技術革新の影響をより良く理解するためのエコシステムを開発する。それには,教育,訓練,保育の機会へのアクセスを改善することが含まれる。

技術革新を可能な限り包摂的なものにするためには、生活や仕事のための訓練や技術に対して、かなりの投資が必要になる。

教育/訓練政策は、デジタルトラ

ンスフォーメーションを経験し、仕事の性質が変化している社会で暮らすために必要な知識と技術を市民に与えるものでなければならない。

-

デジタル経済の推進

同上

• インフラ投資により成長と生産性向上が促進されるほか、インフラにより、市民が将来の機会を得るための、デジタル領域へのアクセスが提供される。

• イノベーションを阻害しないように、デジタル経済においてどのように、どこで価値が生じ、どのように課税されるべきか、という問題に取り組む必要がある。

OECDは各国内、各国間のデジ

タルフロー(※デジタル世界でのモノ・カネの流れ)の測定について優先度を高め、経済・社会におけるデータの役割をより深く理解するべきである。

多くの加盟国が、グローバルなEC及びそれにより生じる包摂的

な貿易と発展の機会の重要性について、再確認した。

凡例) :Inclusivenessに関連して言及されていないテーマ

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本研究会におけるInclusivenessに関する議論 NRI私見

日本として重要なのは、包摂性を成長戦略と位置づけることであり、これはAPECが2009年以来Inclusive Growthを掲げてきた姿勢にも合致するものである。

今後のイノベーションの中心となる経済のデジタル化のポテンシャルを十分に発揮するには、デジタル化に対応した人材育成等が不可欠である。

また、ボゴール目標に基づく通商・投資の自由化は一定の成果を収めつつあり、貧困層が削減されるとともに、中間層が拡大しつつあるが、女性や遠隔地、中小企業など未だ取り残された層も存在する。今後の一層の成長には、現在は成長の果実を十分に享受できていない層の更なる開拓が必要となる。

以上の観点から、デジタル化への対応、及び成長から取り残された、逆に言えば今後の経済成長のフロンティアとなる人々を取り込んでいくことが、APEC地域の更なる成長には必要となると言える。

このような考えは既に2009年の首脳声明に見られ、それが具体化されてきたと捉えられる。

APECにおける通商・投資の自由化は経済を成長させ、経済成長は着実に貧困削減と中間層の拡大をもたらしてきた。

経済のデジタル化は大きなポテンシャルを持つが、デジタル化に対応した教育等が必要

成長の果実は十全にはいきわたっておらず、取り残された層には更なる成長余地が存在。

包摂性に関する政策を通じ、

①デジタル経済への対応②フロンティアの開拓、③機会の平等確保による格差是正

を行うことで更なる経済成長を実現格差の放置が保護主義に結びつくことで、かえって貿易・投資の自由化を阻害。

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本研究会におけるInclusivenessに関する議論:WhyAPEC? NRI私見

APECのGDP年平均成長率は他フォーラ、他地域と比較しても安定して高く、ルールメイキングなどの前向きな議論が行える状況であるといえる

APEC、及び他地域・他フォーラのGDP年平均成長率(%)(2010~2017)

3.43.2 3.2

2.8

3.4

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

5.0

5.5

6.0

(%)

20142013

4.8

20122010

3.3

2011

3.2

2015 2016 2017

G20APEC

アフリカ

OECDEU

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本研究会におけるInclusivenessに関する議論:WhyAPEC? NRI私見

APECの特徴である、地域単位で、途上国と先進国がミックスされ、ボランタリーでCooperativeな姿勢でできる包摂性への対応は何か、を考えることが重要。

特にデジタル化への対応等、OECDやG20、WTO等の他の国際フォーラムとAPECで議論が重なっている部分がある点は否定できない。

APECの特徴は、地理的な近接性を元に、Connectivityの議論において、具体的な取り残された層の経済への参加のための施策(インフラ整備、教育機会の拡大や人の自由移動など)を取りまとめてきた点にある。

WTOとは、地理的な近接性に基づくよりSpecificな議論ができ、また、議論のスコープが貿易に限られない(構造改革、投資、人の移動等)点で異なっている。

また、OECDとは、途上国が多く参加している点でより多角的な観点から包摂性を議論できる点が異なっている。

また、上記をNon-Bindingな枠組の中で、ベストプラクティスの共有などを通じて達成している点が特徴的であり、ルールメイキングのインキュベータとしての役割を担ってきた。

以上から、一案として、例えばAPECの特色を活かした包摂性の取り組みとして、構造改革や投資、人の自由移動を含めた幅広い実現手段を有している点、それらをNon-Bindingな、Cooperativeな姿勢で、例えばベストプラクティスの共有などを通じて活用していく点を打ち出していくことが考えられる。

また、上記のプラクティス共有などを通じて蓄積された知見を活用し、各国際フォーラムでの議論に対してAPECとしてコミットし、ルールメイクを先導していく点も重要である。

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第1章 はじめに

第2章 APECにおけるビジョン形成に向けたデータ及び論点整理

賢人会議における議論内容

アジア太平洋経済・貿易の構造変動と今後の展望

他フォーラとの比較から見るAPECの特徴

各フォーラのビジョン分析

包摂性に関する調査報告

Inclusivenessに関するSDGsとの比較

パスファインダーに関する調査

第3章 APECビジョン研究会の運営

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SDGsの概要

SDGsは、目標の実現に向けて「誰一人取り残さない」ことを宣言している。

2015年9月の国連サミットで全会一致で採択。

2030年を年限とする17の国際目標である(その下に、169のターゲット、232の指標が定められている)。

前文では、「この共同の旅路に乗り出すにあたり、誰一人取り残さない」ことを誓うとしている。

SDGsの17の目標

出所)国際連合広報センター公開資料よりNRI作成

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SDGsにおけるInclusivenessへの言及

SDGsにおいて、包摂性は、社会、経済、教育、制度等の世界観から、フォローアップ・レビュー等の手段のレベルまで、多様な文脈で用いられている。(1/5)

目標 目標内容 アジェンダ番号 例(アジェンダ番号)包摂性を求める

要素該当する

APECイシュー

• 目標1貧困(a)

あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。

• 21(新アジェンダ)

持続的で包摂的かつ持続可能な経済開発を目指していくための各国の政策余地を尊重する(21)

経済開発 • (経済開発)

• 目標2飢餓

飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する

• 24(新アジェンダ)

世界食料安全保障委員会の重要な役割と包摂的な性格を再確認(24)

食料安全保障• 食糧安全

保障

• 目標4 教育

すべての人々への、包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する

• 25(新アジェンダ)

すべてのレベルにおける包摂的で公正な質の高い教育(25)

教育 • 教育

SDGsにおいて包摂性に言及されている箇所

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SDGsにおけるInclusivenessへの言及

SDGsにおいて、包摂性は、社会、経済、教育、制度等の世界観から、フォローアップ・レビュー等の手段のレベルまで、多様な文脈で用いられている。(2/5)

目標 目標内容 アジェンダ番号 例(アジェンダ番号)包摂性を求める

要素該当する

APECイシュー

• 目標8成長・雇用

包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する

• 3(導入部)

• 9(我々のビジョン)

• 13(原則)

• 27(新アジェンダ)

• 67、68(実施

手段とグローバルパートナーシップ)

包摂的な経済成長…作り出すことを決意する(3)

経済成長

• MSMEs• 女性(経済へ

の包摂)

• 経済的包摂

• (経済成長)

• 目標8成長・雇用

包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する

• 67(実施手段

とグローバルパートナーシップ)

民間企業の活動・投資・イノベーションは、生産性及び包摂的な経済成長と雇用創出を生み出していく上での重要な鍵である(67)

雇用• 教育

(人材養成)

SDGsにおいて包摂性に言及されている箇所

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SDGsにおけるInclusivenessへの言及

SDGsにおいて、包摂性は、社会、経済、教育、制度等の世界観から、フォローアップ・レビュー等の手段のレベルまで、多様な文脈で用いられている。(3/5)

目標 目標内容 アジェンダ番号 例(アジェンダ番号)包摂性を求める

要素該当する

APECイシュー

• 目標9イノベーション

強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的活持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る

• ‐ ‐ 産業化• 教育

(人材養成)

• 目標9イノベーション

強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的活持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る

• 67(実施手段

とグローバルパートナーシップ)

民間企業の活動・投資・イノベーションは、生産性及び包摂的な経済成長と雇用創出を生み出していく上での重要な鍵である(67)

イノベーション

• スタートアップ

企業への援助

• 目標1貧困

• 目標2飢餓

• 目標5ジェンダー

• 目標8成長・雇用

• 目標9イノベーション

• 目標10不平等

あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる(目標1)

ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う(目標5)

各国内及び各国間の不平等を是正する(目標10)

• 27(新アジェンダ)

我々は…金融包摂…において、生産

能力、生産性、生産雇用を増大させる政策を採用する(27)

金融

• 金融的包摂

• MSMEs(金融適格性の向上)

• 農村など周縁部

(金融サービスへのアクセス確保)

SDGsにおいて包摂性に言及されている箇所

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SDGsにおけるInclusivenessへの言及

SDGsにおいて、包摂性は、社会、経済、教育、制度等の世界観から、フォローアップ・レビュー等の手段のレベルまで、多様な文脈で用いられている。(4/5)

目標 目標内容 アジェンダ番号 例(アジェンダ番号)包摂性を求める

要素該当する

APECイシュー

• 目標16 平和

持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する

‐ ‐ 制度 ‐

• 目標16 平和

持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する

• 平和(前文)

• 8(我々のビジョン)

• 13(原則)

• 17(今日の世界)

• 35、37(新アジェンダ)

…公正かつ包摂的な社会を育んでいくことを決意する(平和)

持続可能な開発が意味するところでは、…貧困撲滅、…不平等との戦い、

地球の維持、持続的・包摂的・持続可能な経済成長を作り出すこと、並びに社会的包摂性を生み出すことは、…関連し合っており、相互に依存している(13)

社会

• 社会的包摂

• 弱者(Vulnerablepeople)

SDGsにおいて包摂性に言及されている箇所

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SDGsにおけるInclusivenessへの言及

SDGsにおいて、包摂性は、社会、経済、教育、制度等の世界観から、フォローアップ・レビュー等の手段のレベルまで、多様な文脈で用いられている。(5/5)

目標 目標内容 アジェンダ番号 例(アジェンダ番号)包摂性を求める

要素該当する

APECイシュー

• 目標17実施手段

持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

• 54(持続可能

な開発目標とターゲット)

包摂的な政府間交渉プロセスを経て…われわれが合意した目標とターゲットである(54)

政府間交渉プロセス

• 目標17実施手段

持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

• 74d、77、79、90(フォローアップ)

包摂的なレビューの実施に取り組むことにコミットする(77)

フォローアップ・レビュー

(レビューの実施を「2017年包

摂の促進に関する行動アジェンダ」で宣言)

• 目標17実施手段

持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

• 80(フォローアップ)

包摂的な地域プロセスは、…全世界

レベルでのフォローアップとレビューに貢献するものである(80)

地域プロセス• (地域・経済

統合の推進)

• 目標17実施手段(10)

ドーハ・ラウンド(DDA)交渉の結果を含めたWTOの

下での普遍的でルールに基づいた、差別的でない、公平な多角的貿易体制を促進する

• 68(実施手段

とグローバル・パートナーシップ)

包摂的な多角的貿易体制の促進(68)

多角的貿易体制

• (多角的貿易体制の構築)

SDGsにおいて包摂性に言及されている箇所

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SDGsにおける手段

SDGsでは目標の実現手段として再分配に係る宣言・目標が掲げられており、先進国の富や知見を途上国に提供することが考えられている。

SDGsでは先進国の責任や、先進国と開発途上国間の再分配について言及されている。

宣言 トピック 目標 内容

12 共通だが差異のある責任 ―

• 「環境と開発に関するリオ宣言」にあるように、責任には能力に応じた差異があることを確認する。

※第7原則「(略)先進諸国は、彼等の社会が地球環境へかけている圧力及

び彼等の支配している技術及び財源の観点から、持続可能な開発の国際的な追及において有している義務を再認識する。」

28 持続可能な消費・生産• 8.4(成長・雇用)

• 12.1(生産・消費)

• 開発途上国の状況を勘案しつつ、先進国のリードにより、持続可能な消費と生産に関する枠組みの実施を促進する。

43 ODAの役割、コミットメントの再確認

• 17.2(実施手段)

• ODA供与国において、開発途上国に対するODAをGNI比0.7%(目標)とする。

• ODA供与国において、後発開発途上国に対するODAをGNI比0.15~0.2%(目標)とする。

SDGsにおける再分配に係る宣言・目標

出所)「持続可能な開発のための2030アジェンダ」よりNRI作成

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包摂性に関するAPECの議論の流れ:2017年包摂の促進に関する行動アジェンダ(ベトナム)

(参考)2017年時点では、包摂性を更に促進するため、経済・金融・社会の観点からそれまでの作業を統合する段階に至っており、2030年までの目標が定められた

1. 我々,APEC 首脳は,アジア太平洋地域において一層必要となっている効果的な経済的・金融的・社会的包摂を改めて強調する。貿易・投資の拡大及びデ

ジタル分野における変革により経済成長及び雇用が大きく促進されたが,そうした利益は,我々の社会の各層に均一に広がってこなかった。我々の地域は,根強い不平等,失業,健康,教育及び生活水準に影響する多方面にわたる持続的な貧困,技術進歩の影響といった,経済的・社会的包摂に対する課題に直面している。さらに,APEC の中には高齢化,中間層の拡大といった重要な人口統計上の変化が起きているエコノミーも存在し,そうした変化は包摂的成長の新たな課題となっている。3.経済的・金融的・社会的包摂の促進に関する本行動アジェンダは,現在 APEC において進んでいる包摂に関する作業を統合し,努力が適切で,かつ急速に変化する世界及び地域情勢に対応するものとなるよう新たな要素を加えるものである。我々の最も重要な目標は,2030 年までにより包摂的な APEC コミュニティを実現することである。4.行動アジェンダの 3 つの重要な柱は以下のとおり。

a. 経済的包摂とは,社会の全ての人が,経済に有意義に参加するため,経済機会についての情報の取得及びアクセスにおいて平等であることを指す。b. 金融的包摂とは,個人及び企業が,責任ある持続可能な方法で提供される取引,支払い,貯蓄,信用及び保険といった,自らのニーズを満たす,有益で手

頃な価格の金融商品とサービスに適切にアクセスすることを意味する。c. 社会的包摂は,貧困と社会的排除の危険にさらされている人々のために社会への参加条件を改善し,公平性を高めるプロセスと定義される。

5.行動アジェンダは,以下の APEC の野心的な目的を達成することを目指す。a. 経済的包摂:完全かつ生産的な雇用,若者,高齢者,障害者を含む全ての人への良い仕事の提供,同一労働同一賃金の達成に向けた進捗を促進する。持

続可能な開発のための 2030 アジェンダで描かれているとおり,所得下位 40%の層について,各エコノミーの平均を超える所得成長を漸進的に達成し,持続させる。

b. 金融的包摂:銀行,保険,金融サービスへのアクセスを奨励・拡大し,全ての人の金融リテラシーと金融にアクセスする能力を高めるため,金融機関の能力を強化する。

c. 社会的包摂:社会の全ての人が経済機会を利用できる能力を備えるよう支援する。6.我々は以下の優先分野を特定する。(略)7.行動アジェンダを実施するため,我々は以下の行動にコミットする。・APEC 委員会,フォーラム及びサブフォーラに対し,作業計画や戦略計画に経済的・金融的・社会的包摂を組み込むよう奨励する。・APEC フォーラムに対し,2018 年に少なくとも合計 6 つの新たな取組,すなわち,経済的・金融的・社会的包摂の各分野で 2 つの取組を共同で提案することを求める。(中略)・実務者に対し,2018 年から本件行動アジェンダの実施を開始し,2024 年に進捗に関する中間報告,2030 年に最終的なレビューを行うよう指示する。この取組は,経済及び技術協力に関する SOM 調整委員会を通じて調整されるべきである。

出所)外務省仮訳(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000306944.pdf)

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包摂性に関するAPECの議論の流れ:SDGsへの言及

(参考)APECでは、主に「成長」の文脈において、SDGsに関連した取組を行うことを宣言している。

2016年(ペルー) 首脳宣言(該当箇所引用)ペルーがAPECを初めて主催してから8年が経ち,世界経済の回復は進んでいるが,ますます広範囲,かつ,相互に関連する諸課題に直面して

いる。いくつかのエコノミーにおける不平等,同等でない経済の成長とが重なったこと並びに環境の悪化及び気候変動に伴うリスクが相まって,持続可能な発展への展望に影響を与え,将来への不確実性を高めている。さらに,グローバリゼーションや関連した統合プロセスには,ますます疑問の目が投げ掛けられ,保護主義的な傾向が台頭する一因となっている。

これらの諸課題が、我々共通の野心と目標にリスクを及ぼす可能性がある一方で、我々は、協力を通じて、喫緊の課題に取り組み、将来のアイディアを生み出すインキュベーターであり続けることのできるフォーラムとして、APECがグローバルなリーダーシップを維持できるよう努力することを再度コミットする。この意味において,我々は、国際協力のためのバランスの取れた、包括的な多国間の枠組みを代表するものとして,「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の実施に引き続きコミットしている

2017年(ベトナム) 包摂の促進に関する行動 附属書A2.我々は,包摂を前進させることは、太平洋の両側で南半球・北半球の大小全ての途上・先進エコノミーに広範な影響を与える包摂的成長の達成に死活的に重要であるという考えを共有する。多くのAPEC の取組が,既に包摂の支持に向けて動いていており、地域及び世界の新しい潮流を捉えることを目指すものとなっているが、対処すべき大きな格差は依然として存在する。APEC が包摂の多様な側面を推進するため、全体的な政策及び措置を策定することは不可欠である。この取組は,「持続可能な開発のための2030 アジェンダ」に沿った共同の努力の一環である。.

出所)外務省仮訳(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000306944.pdf)

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第1章 はじめに

第2章 APECにおけるビジョン形成に向けたデータ及び論点整理

賢人会議における議論内容

アジア太平洋経済・貿易の構造変動と今後の展望

他フォーラとの比較から見るAPECの特徴

各フォーラのビジョン分析

包摂性に関する調査報告

Inclusivenessに関するSDGsとの比較

パスファインダーに関する調査

第3章 APECビジョン研究会の運営

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パスファインダーの概要

パスファインダーとは、全エコノミーではなく、対応可能な一部のエコノミーでプロジェクトを先行的に実施できるとする制度であり、ABTC、CBPRなどの活用例がある

パスファインダーの概要

起源 • 2001年の第9回APEC上海首脳会議で採択された「上海アコード」で奨励された。

当初の目的 • ボゴール目標の達成に向けた取組みの活性化

制度の内容

• 全てのAPECエコノミーの参加が得られなくても、参加エコノミーでプロジェクトを先行的に実施できることとする。

• 取り組み開始後に、他エコノミーが参加することも可能である。

実施における特徴• 自主性、包括性、コンセンサスに基づく意思決定、柔軟性、透明性、開かれた地域主義といったAPECの諸原則を遵守するものとする。

担当委員会• 貿易投資委員会(CTI):パスファインダーの全般的な管理と実施を担当している

具体例• ABTC(APECビジネス・トラベル・カード)

• CBPR(クロス・ボーダー・プライバシー・ルールズ)

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参考)上海アコードにおいて提示されたパスファインダーの理念

II. Clarifying the Roadmap to BOGOR

Adopting a pathfinder approach in advancing some APEC initiativesLeaders reaffirm that those economies ready to initiate and implement a cooperative arrangement may proceed to do so, consistent with the Bogor Declaration. Leaders encourage the development of such "pathfinder initiatives' and agree that in adopting such an approach, APEC principles of voluntarism, comprehensiveness, consensus-based decision-making, flexibility, transparency, open regionalism and differentiated timetables for developed and developing economies should be observed. Use of 'pathfinder initiatives' based on a group of members piloting the implementation of the initiatives, will invigorate progress towards the Bogor Goals and provide a framework to encourage broader participation through enhanced capacity building programmes. Leaders also agree that these initiatives should be transparent and open, with clearly defined objectives and framework for implementation to encourage the broadest participation by other APEC members when they are ready to join.

(外務省仮訳) いくつかのAPECイニシアティブの推進におけるパスファインダー・アプローチの採用

首脳は、準備ができているエコノミーは、ボゴール宣言に従って、共同の取り決めを開始することを再確認する。首脳は、そのような「パスファインダー・イニシアティブ」の発展を奨励し、そのようなアプローチを採択する上で、自主性、包括性、コンセンサスに基づく意思決定、柔軟性、透明性、開かれた地域主義及び先進メンバー及び途上メンバーの間での異なるタイム・テーブルといったAPECの諸原則が遵守されるべきであることに意

見の一致をみる。イニシアティブを試験的に実施する複数のメンバーによる「パスファインダー・イニシアティブ」の活用は、ボゴール目標に向けた進展を再活性化し、強化されたキャパシティ・ビルディングのプログラムを通じてより広範な参加を奨励するための枠組みを提供するであろう。首脳は、また、これらのイニシアティブが透明で開かれたものであるべきであり、明確な目的及び後から準備ができた時に参加する他のAPECメンバーの可能な限り広範な参加を奨励するための実施枠組みを備えるべきであるということに意見の一致をみる。

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パスファインダー化の流れ

パスファインダーイニシアティブとして認められるためには、まずイニシアティブが暫定パスファインダーとして認定される必要がある

暫定(interim)パスファインダーの概要

条件 • 参加エコノミーが2つ以上であること。

APECにおける扱い

• 取り組みの実施を進めることは出来るが、次ページの要件を満たさない限り、SOMにパスファインダーとしての認定を求めることはできない。

• CTIまたは適切な作業部会によるレビューを年1回受け、その結果を踏まえプロジェクトの継続の可否が決定される。

パスファインダー化の流れ

パスファインダーイニシアティブ

イニシアティブ 暫定パスファインダー

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パスファインダー認定の条件

暫定パスファインダーがパスファインダーとして認定されるためには、ステータス保持期間、参加エコノミー数、提案文書の提出などの要件を満たす必要がある

暫定パスファインダーがパスファインダーとして認定されるための条件

ステータス保持期間 • イニシアティブは最低1年間暫定パスファインダーのステータスを保持しなければならない

参加エコノミー数

• 25%以上のエコノミーの参加。

• そうでないエコノミーも、最終的な参加を促進するような、キャパシティビルディングへの参加の検討も含め、イニシアティブの立ち上げを支援している必要がある。

※50%以上のエコノミーが参加に同意をした場合、暫定パスファインダーは即座にパスファインダーとなる。

提案文書の作成

• イニシアティブの主導エコノミーは、目的、実施方法、想定される結果を述べた提案文書を作成しなければならない。提案文書は下記の内容を含む。1.イニシアティブがどのようにボゴール目標、閣僚目標、首脳目標の達成を支援するか2.どのように全エコノミーの参加を達成し、一般的なAPECイニシアティブになるのか3.ビジネスがイニシアティブからどのように恩恵を受けるのか、いかに一般的にその恩恵を促進するのか4.他のパスファインダーやイニシアティブによって実施されている取り組みと重複しないようにする方法5.幅広い参加の確保を目的とした、キャパシティビルディングの詳細な計画6.パスファインダーの目的を達成するための活動を記載した作業計画7.パスファインダーの今後の方向性を見極めることを目的とした4年目の評価計画

• その他、提案フォーマットには、下記の内容が含まれる。

①イニシアティブの実施期間および完了予定日(もしあれば)②イニシアティブの進捗状況が測定される指標③開始時の参加エコノミー④ビジネスサイドからの既存の支援の詳細(もしあれば)⑤イニシアティブをビジネスサイド、及びそれ以外の領域のコミュニティに推進するための、コミュニケーション戦略の詳細⑥キャパシティビルディングを含む、他のAPECメンバーによる参加を達成するための戦略の詳細⑦レビューのスケジュール(標準(年1回)と異なる場合)

SOMによる認定

• 暫定パスファインダーが、上記条件を満たした場合、CTIまたはサブフォーラムは、イニシアティブにパスファインダーの地位を付与することをSOMに提案できる。

• CTIの勧告に基づき、SOMはパスファインダーとして認定するかを決定する。

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パスファインダーの存続・解消

パスファインダーは年1回のレビューを受け、SOMにより、現在の形のまま存続するか、軌道修正するか、解消するかが決定される

パスファインダーの存続・解消

年1回のレビュー

• パスファインダーは前ページの提案文書などを参考に、年1回レビューを受ける。

• 主導エコノミーは、CTIまたは関連作業部会に対し、メンバーシップ、実施の態様、ビジネスの観点からの見解、非参加エコノミーが参加した過程について、簡単な進捗報告書を毎年作成する。

SOMによる決定• CTIの勧告に基づき、SOMはパスファインダーを現在の形で継続するか、メンバーの見解により合致させるべく方向性を修正するよう主導エコノミーに忠告するか、決定する。

解消が適切とされるケース

• 4年間パスファインダーとしての地位を取得しているにもかかわらず、参加エコノミーがAPECの50%に満たない場合

• 短期的に見て、参加エコノミーが増加する見込みがほとんどないと思われる場合

• パスファインダーを継続しても、具体的な進捗を達成する見込みがほとんどないと思われる場合

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参考)パスファインダーの具体例 (1/4)

名称 承認年月 目的 参加エコノミー

• (参考)ABTC(APECビジネス・トラベル・カード)

• 1996年首脳会議で3エコノミー

(豪州・韓国・フィリピン)で運用合意

• 1997年当該3エコノミーで運用開始

• ABTC(旅券とABTCのみで出入

国審査を受けることができる)制度の確立と普及

• 暫定参加のカナダ、アメリカを除く19エコノミー(2017年7月時点)

• 電気・電子機器の適合性評価についての相互承認取決め

• 1999• 適合性評価を相互承認することによる電気・電子機器の貿易促進

• Part Ⅰ(情報交換)8エコノミー

オーストラリア、カナダ、中国、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィリピン、台湾、ベトナム

• Part Ⅱ(検査レポートの受入れ)4エコノミー

オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、シンガポール

• Part Ⅲ(認証の受入れ)3エコノミー

オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール

(2018年8月現在)

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参考)パスファインダーの具体例 (2/4)

名称 承認年月 目的 参加エコノミー

• 貿易及びデジタル・エコノミーに関するAPEC政策実施のためのパスファインダー

• 2002 • 電子商取引の発展と経済成長に向けた関税措置

• 20エコノミー(2018年8月現在)

• 技術選択のための原則 • 2006

• 貿易及びデジタル・エコノミーに関するAPEC政策実施のためのパスファインダーの推進

• インターネット利用に係る著作権侵害の防止

• 15エコノミー(2018年8月現在)

• APECデータ・プライバシー・パスファインダー

• 2007年9月• 越境プライバシー・ルール

(CBPR) の確立とその実施

• 16エコノミー

オーストラリア、カナダ、チリ、中国、香港、日本、韓国、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、フィリピン、シンガポール、台湾、タイ、アメリカ、ベトナム(2009年3月時点)

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参考)パスファインダーの具体例 (3/4)

名称 承認年月 目的 参加エコノミー

• 原産地自己証明のパスファインダー・イニシアティブ

• 2009 • 原産地自己証明による手続きの簡略化

• 11エコノミー

オーストラリア、カナダ、日本、韓国、ニュージーランド、シンガポール、アメリカ、ブルネイ、マレーシア、フィリピン、台湾(2018年8月現在)

• 再製造品の貿易円滑化に関するパスファインダー

• 2011 • 再製造品に係る輸入関連措置の規制緩和及び貿易の円滑化

• 12エコノミー

日本、アメリカ、チリ、カナダ、ニュージーランド、台湾、パプアニューギニア、オーストラリア、メキシコ、シンガポール、韓国、マレーシア(2018年8月時点)

• 免税輸入限度額基準の設定によるサプライ・チェーン連結性の強化に対するAPECパスファインダー

• 2011 • より高い免税輸入限度額の提供

• 11エコノミー

ブルネイ、香港、日本、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、ロシア、シンガポール、台湾、アメリカ(2018年8月時点)

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参考)パスファインダーの具体例 (4/4)

名称 承認年月 目的 参加エコノミー

• コンテンツを含む電子送信に係る関税不賦課の永久モラトリアムに関するパスファインダー

• 2016• 関税不賦課によるコンテンツを含む電子送信に係るデジタル貿易の推進

• 12エコノミー

オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、韓国、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、台湾、アメリカ(2018年8月時点)

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参考文献リスト

ABAC日本支援協議会 用語集 Pathfinder Initiative http://www.keidanren.or.jp/abac/glossary/p/pathfinder_initiative.html(2019/02/14閲覧)

上海アコード全文

https://www.apec.org/Meeting-Papers/Leaders-Declarations/2001/2001_aelm/appendix1_shanghai(2019/03/10閲覧)

上海アコード全文(外務省仮訳)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/apec/2001/s_sengen.html(2019/03/10閲覧)

Updated Guidelines for Pathfinder Initiatives (2017 CTI Report to Ministers APPENDIX 8)(APEC#217-CT-01.13)

https://www.apec.org/-/media/APEC/Publications/2017/11/CTI-Annual-Report-2017/TOC/Appendix-8-Updated-Guidelines-for-Pathfinder-Initiatives.pdf(2019/02/14閲覧)

Information on Pathfinder Initiatives Guidelines(2014/SOM2/OFWG/013)

http://mddb.apec.org/Documents/2014/OFWG/OFWG/14_ofwg_013.pdf (2019/02/14閲覧)

星野三喜夫『APECビジネス諮問委員会とAPECパスファインダー・イニシアティブの成功例のABTC』

http://nirr.lib.niigata-u.ac.jp/bitstream/10623/71664/1/49_1-10.pdf (2019/02/14閲覧)

諸外国等における個人情報保護制度の実態調査に関する検討委員会・報告書(平成20年3月)

https://www.ppc.go.jp/files/pdf/personal_report_2003caa_5.pdf (2019/02/15閲覧)

2018 CTI Report to Ministers APPENDIX 9 2018 CTI Pathfinder Initiatives https://www.apec.org/-/media/APEC/Publications/2018/11/2018-CTI-Report-to-Ministers/TOC/Appendix-9---Pathfinder-Initiatives.pdf(2019/03/10閲

覧)

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第1章 はじめに

第2章 APECにおけるビジョン形成に向けたデータ及び論点整理

第3章 APECビジョン研究会の運営

APECビジョン研究会 運営要領

APECビジョン研究会 これまでの議論のまとめ

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APECビジョン研究会運営要領

1.設置趣旨

ボゴール目標の達成期限である2020年以降のAPECのビジョンを展望するための有識者会合「APECビジョン・グループ(AVG)」がAPECで始動。

これを踏まえ、AVGで必要となる基礎情報や我が国の考え方を整理する研究会(「A PECビジョン研究会」)

を設置し、アジア太平洋地域の経済・貿易状況の展望、今後のAPECのあるべき方向性等について議論を実施し、調査報告書を策定する。

ABACにおいてもポスト2020年ビジョンの議論が行われることも踏まえ、本研究会には日本ABAC関係者も交え、AVG、APEC、ABAC、それぞれの議論の状況を共有するとともに、産学官で連携した我が国ポスト2020年ビジョンの形成とA VG及びAPECへのインプットを目指す。

APECビジョン研究会の事務局機能は株式会社野村総合研究所が担う。

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APECビジョン研究会運営要領

2.構成員

座長早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授

浦田 秀次郎(日本AVG委員)

委員

三井物産株式会社 顧問 髙橋 規(ABAC日本委員)

上智大学教授 川瀬 剛志

経済産業省通商政策局通商交渉官(APEC高級実務者)

経済産業省通商政策局アジア太平洋地域協力推進室長

オブザーバ

ABAC日本支援協議会

日本電気株式会社(※第6回研究会)

株式会社みずほ銀行

株式会社みずほ総合研究所

三井物産株式会社

三菱重工業株式会社(※第1回~第5回研究会)

外務省

財務省

経済産業省

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APECビジョン研究会運営要領

3.スケジュール

第1回研究会 2018年7月11日(水)

第2回研究会 2018年8月3日(金)

第3回研究会 2018年9月27日(木)

第4回研究会 2018年12月25日(火)

第5回研究会 2019年2月18日(月)

第6回研究会 2019年3月15日(金)

(参考:APECビジョングループのスケジュール)

第1回AVG会合 2018年5月22日(火)@パプアニューギニア・ポートモレスビー

AVGマルチ・ステークホルダー・ダイアログ 2018年8月15日(水)@パプアニューギニア・ポートモレスビー

第2回AVG会合 2018年8月16日(木)~17日(金)@パプアニューギニア・ポートモレスビー

第3回AVG会合 2019年3月4日(月)~5日(火)@チリ・サンティアゴ

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第1章 はじめに

第2章 APECにおけるビジョン形成に向けたデータ及び論点整理

第3章 APECビジョン研究会の運営

APECビジョン研究会 運営要領

APECビジョン研究会 これまでの議論のまとめ

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APECビジョン研究会 これまでの議論のまとめ

I. APECの特質及び基礎となる考え方

APECのポスト2020ビジョンは、下記のAPECのミッションステートメントに掲げられたAPECのミッションを、デジタル経済化等時代背景の変化を踏まえながら、より一層追求するものであるべきである。

【APECミッションステートメント(NRI仮訳)】

APECはアジア太平洋地域の最も主要な経済フォーラムである。我々の主な目標は、アジア太平洋地域における持続可能な経済成長と繁栄を支援する事にある。

我々は、自由で開かれた貿易と投資の推進、地域経済統合の推進と加速、経済・技術協力の奨励、人間の安全保障の推進、及びビジネスにとって好ましく持続可能なビジネス環境の整備を通じて、一致してダイナミックで調和の取れたアジア太平洋共同体の建設を推進する。我々の取り組みは、政策目標を確固たる結果に、また協定を目に見える利益に結びつけていく。

APECミッションステートメントで強調されているように、APECの大目標は、経済成長と繁栄であるべきであ

る。これは、経済成長と繁栄が、地域の平和と安定につながる強固な基盤を提供し、個人や中小企業を含む全てのステークホルダーに裨益する事となるためである。

上記の大目標を達成するためのAPECの主要な取り組みは、ミッションステートメントにあるとおり、引き続き次ページの三点であるべきである。

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APECビジョン研究会 これまでの議論のまとめ

自由で開かれた貿易と投資の推進

地域経済統合の推進と加速

ビジネスにとって好ましく持続可能なビジネス環境の整備

また、APECはアイデアの「インキュベーター」としての役割を果たし、未解決なままの、そして新たに顕在化

した課題に革新的な解決策やアプローチを提供することでその解決を図り、ビジネスにとって好ましく持続可能なビジネス環境の整備を実現すべきである。

APECは、自発的・非拘束的でエコノミー間のコンセンサスを重視する性質から、新たに顕在化した重要な課

題について真摯な議論を始め、共通の言語を発見し、すべてのエコノミーにとって受けいれられる着地点を見出す、最良かつ議論をリードするフォーラムとなるべきである。

以上の目的の実現に当っては、APECの特徴の1つでもある、ABACを始めとするビジネスコミュニティの積極的な参画を推進し、アジア太平洋地域におけるビジネスの実態を適切に踏まえていくべきである。

以上の基本的な考え方と目標に基づいて、以降、各論点を具体化する。

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APECビジョン研究会 これまでの議論のまとめ

II. 貿易・投資の自由化・円滑化

I.で述べたとおり、貿易・投資の自由化・円滑化は引き続きAPECの主要な目標であり続けるべきである。

ボゴール目標の策定以来、APEC各エコノミーは貿易の自由化や投資の円滑化といった努力を続け、関税の引き下げやビジネス環境の改善が進んでいる。

他方、アジア太平洋地域では、物品・サービス貿易及び投資を制限する非関税措置または非水際措置(behind-the-border measures)の増加、国有企業の優遇、強制技術移転といった重要かつ新たな課題が生じつつあり、これらの新たな挑戦に対してAPECエコノミーが一致して対処していく事が重要である。

III. 地域経済統合

IIで述べた課題を適切に解決することで、従来から高レベルの経済成長を牽引してきたアジア太平洋地域の連結性、特にサプライチェーンの形成を引き続き推進する事が出来る。

APECは、このようなより一層の地域経済統合を通じて、質が高くかつ包括的なアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現を目指していくべきである。

IV. 多角的貿易体制の支持

APECはWTOを中心とする多角的貿易体制とその改革を支持し、多角的貿易体制がルールに基づいた、透明で、無差別的で、自由で開かれたものとなるよう支援するべきである。

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APECビジョン研究会 これまでの議論のまとめ

V. デジタル化への対応

デジタル経済は、グローバル経済のあらゆる側面に対して革新的な影響を与える。APECは、アジア太平洋地域においてデジタル経済のもたらす利益の最大化を図っていくべきである。

デジタルトランスフォーメーションを実現することは、経済成長の主要な源泉の1つとなる。また、デジタルイノ

ベーションとその適用を通じて、生活水準の向上や高齢化といった社会的課題の解決、包摂性の向上につなげられる可能性がある点も強調されるべきである。

VI. 一層の経済構造改革と内なるグローバル化

APECの設立以来、自由で開かれた貿易と投資、及び地域経済統合の推進を通じて、APECの各エコノミーは大きな成長を遂げてきた。一方、ポスト2020ビジョンの対象期間となる我々の将来における更なる経済成

長の源泉は、貿易投資自由化・地域経済統合の更なる推進に加えて、各エコノミーの国内経済のポテンシャルの実現化にあることを忘れてはならない。

APECは、各エコノミーの国内経済のポテンシャルを十全に発揮させ、国内経済がリージョナル及びグローバルな経済に統合されるような取り組みを行っていくべきである。

この「内なるグローバル化」は、構造改革、市場原理の十全な活用による資源の効率的な配分の推進、貿易と投資の自由化を通じて、実現されるべきである。

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APECビジョン研究会 これまでの議論のまとめ

APECは開かれ、透明で、予測可能性があり、競争的なビジネス環境の確立のみならず、地域の全てのビジ

ネスにとってのレベル・プレイング・フィールドの実現を図るべきである。このようなビジネス環境はダイナミックな経済成長の源泉のひとつであるイノベーションを促進する事が出来る。また、適切な知的財産権の保護体制を構築することが、イノベーションの推進には必要不可欠である点にも留意する必要がある。

VII. 包摂性への配慮

成長の果実がAPEC地域のあらゆる個人に行きわたり、生活の質の向上につながるべきである。

この実現のため、上記の取り組みに加えて、発展途上エコノミーが先進エコノミーにキャッチアップできるよう、経済的及び技術的な協力関係を推進する取組が、引き続き行なわれるベきである。

また、中小企業や女性などのグローバルな経済活動への参加を促進することで、経済成長と繁栄をより包摂的かつ社会的に持続可能なものとする事が出来る点にも留意する必要がある。

VIII. ポスト2020ビジョンの対象期間

ポスト2020ビジョンにおける具体的行動目標の設定に当っては、明確な時間軸を設定する事が重要である。

時間軸の設定は目標がどの程度野心的かにも関連するが、あまりに短期の時間軸はビジョンの野心を損なうかもしれないことを考慮すると、2035年が野心的なポスト2020ビジョンの目標年として適切と考える。

また、急速な経済社会活動の変革を踏まえ、ABACは2030年を目標年としている点にも留意すべきである。

以上

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