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3. 札幌圏の降雪状況 本章では、石狩市、札幌市、江別市を中心とした札幌圏での降雪の状況について調査した結
果について報告する。
3.1. 調査方法
(1)調査方法
2010年1月16日から1月18日までの石狩中部地域およびその周辺地域における地上気象観測
地点の観測データ(表 3-1)を入手し、降雪量他の平面分布および時系列変化について調査し
た。降雪量は毎正時の積雪深の値の差から1時間降雪量を算出し、マイナスの場合は0cmとした。
期間合計降雪量は前出の方法により算出した1時間降雪量を対象期間内で単純加算したものと
した。以降、本報告では積雪深差を降雪量と表現する。
表 3-1 調査に用いた地上気象観測データの一覧
機関名 地上気象観測 調査に用いたデータ
気象庁 気象官署、アメダス 積雪深
北海道開発局 道路テレメーター 積雪深
札幌市 マルチセンサー 積雪深
NEXCO 東日本 気象観測局 積雪深、視程、風速
(2)調査地点
調査地点を図 3-1に示す。
気象庁アメダス
北海道開発局道路テレメータ
札幌市マルチセンサー
NEXCO東日本気象観測局
<地点記号凡例>
気象庁アメダス
北海道開発局道路テレメータ
札幌市マルチセンサー
NEXCO東日本気象観測局
<地点記号凡例>
アメダス石狩
図 3-1 地上気象観測地点(ただし積雪深観測地点のみ表示)
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3.2. 調査結果
(1) 降雪の記録
まず今回の降雪が統計的にどの程度の大雪だったのかを把握するために、石狩アメダスにお
ける降雪の統計記録について調査した結果を表 3-2に示す。
表 3-2 石狩アメダスにおける今回の降雪の統計記録
番号 観測要素 観測値 単位 記録順位 統計期間
1 積雪差日合計 54 cm 第 1 位(通年) 1988 年 1 月~2010 年 1 月 2 日降水量 49 mm 第 1 位(1 月) 1991 年 1 月~2010 年 1 月 3 日最大 1 時間降水量 6.5 mm 第 2 位(1 月) 1991 年 1 月~2010 年 1 月 4 月最深積雪 115 cm 第 3 位(1 月) 1988 年 1 月~2010 年 1 月
表 3-2に示すとおり、石狩アメダスでは積雪差日合計が年間を通じて観測史上第一位であり、
日降水量は1月としては観測史上第一位、日最大1時間降水量は1月としては第二位という記録
的な現象であったことがわかる。
(2) 降雪量分布
次に、石狩アメダスを含む図 3-1の領域での降雪量分布について調査した結果を図 3-2から
図 3-8に示す。
図 3-2から図 3-6は2010年1月16日0時から2010年1月17日24時までの12時間降雪量分布であ
る。1月16日12時から24時の期間の降雪量は全体的に10cm未満、1月16日24時から1月17日12時
までの期間の降雪量は多いところで50cmから70cmの量が観測された。一方、降雪量の多かっ
た地域の周辺に位置する札幌市手稲区、西区、南区や岩見沢市、三笠市では5cm未満となって
いた。続く1月17日12時から24時までの期間では岩見沢市や三笠市で20cm近い降雪量が観測さ
れているが、札幌市や江別市での降雪量はほぼ0cmであった。
降雪量が多くなっていた1月17日の0時から12時までの札幌圏の降雪量分布を図 3-6に示す。
降雪量は、筋状の雪雲侵入時によくみられる帯状の分布を呈しているが、石狩市南部から札幌
市北東部、江別市にかけて50cm以上の降雪量を観測した地域が広がり、周辺との差も大きく、
非常に局地的な降雪現象であったことが特徴として挙げられる。
図 3-7および図 3-8は、図3-1から図3-6よりも広い範囲の道央地域での1月17日0時から12時ま
での6時間降雪量分布である。期間の前半(0時から6時)ではやや内陸に入った地域で降雪量
が多くなっているが、期間の後半(6時から12時)には降雪量の多い地域が北にシフトしてい
たことがわかる。この特徴は、2.5(2) に示した札幌レーダから求めた降雪の時空間変動に一致
しているが、降雪の時間変化からも期間の前半と後半での雪の降り方にも違いを調査した結果
を次節に示す。
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1614 11
5
131815
129 6 2
249
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2
2010/1/16 from 0 JST to 12 JSTSNOWFALL (cm)
図 3-2 12 時間降雪量分布図(2010 年 1 月 16 日 0 時から 12 時)
2
02 2
1
1 03
22 2 5
221
2010/1/16 from 12 JST to 24 JSTSNOWFALL (cm)
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5 1
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図 3-3 12 時間降雪量分布図(2010 年 1 月 16 日 12 時から 24 時)
20
0
22 14
19
211824
3729 45 47
4848
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42
55 8
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5 22
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000
1
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2010/1/17 from 0 JST to 12 JSTSNOWFALL (cm)
図 3-4 12 時間降雪量分布図(2010 年 1 月 17 日 0 時から 12 時)
0
00 0
0
0 10
00 0 3
000
0
0
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0
0 0
1
0
001
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0
00
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0
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17
6
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0
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2010/1/17 from 12 JST to 24 JSTSNOWFALL (cm)
図 3-5 12 時間降雪量分布図(2010 年 1 月 17 日 12 時から 24 時)
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0
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2945 4748
4816
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8
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522
57
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00
1
4
45(60)
(66)
(76)
3620
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0
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2
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2010/1/17 from 0 JST to 12 JSTSNOWFALL (cm)
14
0
50cm
40cm
30cm
20cm
図 3-6 札幌圏の 12 時間降雪量等値線図(2010 年 1 月 17 日 0 時から 12 時)
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図 3-7 6 時間降雪量分布図(2010 年 1 月 17 日 0 時から 6 時)
図 3-8 6 時間降雪量分布図(2010 年 1 月 17 日 6 時から 12 時)
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(3) 降雪の時間変化
図 3-7と図 3-8の比較結果から推測した雪の降り方の違いを明らかにするため、図 3-9に、
降雪量がほぼ同じであったA-A’(40cm~50cm)、 B-B’(10cm~20cm)、 C-C’(~10cm)上の3
点を選び、1月17日1時から12時までの時間変化について調査した。
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22
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2118
24
37
2945 4748
4816
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42
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522
57
53
00
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45(60)
(66)
(76)
3620
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0
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38
0
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2010/1/17 from 0 JST to 12 JSTSNOWFALL (cm)
14
0
A’
A
B
B’
C
C’
図 3-9 降雪の時間変化の比較地点
A-A’、B-B'、C-C’上の3地点のグラフの変化がほぼ同じであることから、これらライン上に
沿ったおよそ北西-南東の走向、同じ降雪雲が侵入し、雪を降らせたといえる。ただし、降雪
量の多かったA-A’の3点では降雪が約10時間継続しており、17日4時から8時にかけては1時間降
雪量5cm以上という強い降雪がみられていた。B-B’、C-C’と西側へ行くにつれて、降雪の期間
も短くなり、雪の降り方も弱かったことがわかる(図 3-10~図 3-12)。
なお、A-A’上の3地点を詳しく比較してみると、ラインの南東側に位置する札幌市厚別区土
木センター地点は降雪の継続時間は北西側の他の2地点に比べて短かったが、17日3時から4時
にかけては1時間降雪量10cm以上という非常に強い降雪となっていた。このように12時間降雪
量ではほぼ同じ値であっても、降雪の特徴が異なっていたことがわかる。これは、2.5節で示し
た渦状擾乱の影響である。
24
札幌市マルチセンサー積雪深計による観測値A-A'の3地点の時系列
0
5
10
15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
時刻
前1時間降雪量
(cm
)
札幌市北区土木センター
札幌市東区土木センター
札幌市厚別区土木センター
2010年1月17日 (C)SNET
図 3-10 図 3-9 のA-A’における降雪の時間変化(2010 年 1 月 17 日 0 時から 12 時)
札幌市マルチセンサー積雪深計による観測値B-B'の3地点の時系列
0
5
10
15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
時刻
前1時間降雪量
(cm
)
札幌市中央区土木センター 札幌市豊平区土木センター 札幌市清田区土木センター
2010年1月17日 (C)SNET
図 3-11 図 3-9 のB-B’における降雪の時間変化(2010 年 1 月 17 日 0 時から 12 時)
札幌市マルチセンサー積雪深計による観測値C-C'の3地点の時系列
0
5
10
15
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
時刻
前1時間降雪量
(cm
)
札幌市手稲区土木センター 札幌市西区土木センター
札幌市南区土木センター
2010年1月17日 (C)SNET
図 3-12 図 3-9 のC-C’における降雪の時間変化(2010 年 1 月 17 日 0 時から 12 時)
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3.3. まとめ
通行止めやJRの運休などを引き起こした降雪の実態について、地上気象観測データからその
特徴を調査した。その結果を以下にまとめる。
(1) 降雪は、北西から南東にかけ帯状に分布し、局地的に集中していた。帯状の分布は季
節風卓越時の降雪としては一般的なものであるが、今回の降雪では局地性が非常に強
いことが特徴的である。
(2) 降雪量が局地的に多くなった理由としては、5~10cm/時の強い降雪が長時間(最大
10 時間)にわたり継続していたことがあげられる。
(3) 雪の降り始めから降り終わりまでの間に、降雪量の多い地域が南東側から北東側へ移
動していた。また、この移動は札幌レーダで観測された雪雲の移動と一致していた。
(4) 降雪の時間変化を調査した結果、期間の前半(1 月 17 日 0 時~6 時)では、札幌圏の
ほぼ全域で雪が降っていたのに対して、期間の後半(1 月 17 日 6 時~12 時)は北東
部の地域で強い降雪となっていた。これは 2.5 節に示した石狩平野へ侵入した帯状雲
の特徴の変化と一致していた。