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3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

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3.1. GIS 導入による都市計画業務の効率化・高度化の全体像

3.1.1. GIS 導入による都市計画業務の効率化・高度化の全体像

都市計画 GIS 導入の目的は、その活用により業務の効率化・高度化を図ることである。下図に示

す都市計画関連業務の 7 つの場面に着目し、GIS を用いることで、どのように業務の効率化・高度

化が図れるかを整理する。

■ 都市計画業務の全体像

調査

計画

実施

地図

⑥⑥都都市市計計画画決決定定情情報報のの 公公開開・・提提供供

⑦⑦事事業業分分野野ににおおけけるる活活用用

②②都都市市計計画画決決定定情情報報のの管管理理

調 査 実 施

分 析

計 画 立 案

計 画 決 定

規制・誘導 事 業

都 市 計 画 基 図 作 成

都市計画図 作 成

他 分 野 ・ 他組織活用

①①都都市市計計画画基基図図のの管管理理 ④④都都市市計計画画検検討討にに 関関すするる各各種種分分析析

③③都都市市計計画画基基礎礎調調査査のの実実施施

⑤⑤都都市市計計画画以以外外のの行行政政分分野野ににおおけけるる活活用用

① 都市計画基図の管理

都市計画基図の管理業務では、都市計画基図の保管、印刷・提供、更新において都市計画 GIS

を利用でき、保管スペースの縮小化、デジタルメディアによるデータ提供の簡素化、更新作業のデジ

タル化による省力化等の効果が期待される。

② 都市計画決定情報の管理

都市計画決定情報の管理業務では、都市計画図書の作成、保管、印刷・提供、更新において都

市計画 GIS を利用でき、都市計画図書の複製が容易かつ変色等の劣化防止、必要な内容及び範

囲を即座に出力可能、都市計画決定の変更部分のみの修正が容易等の効果が期待される。

③ 都市計画基礎調査の実施

都市計画基礎調査の調査業務では、都市計画基礎調査の実査、調書作成、図面作成、成果保

管において都市計画 GIS を利用でき、モバイル*用語 56GIS 利用による調査結果の遠隔入力、面積・

延長等の自動計測、集計処理の迅速化、移写作業が容易等の効果が期待される。

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④ 都市計画検討に関する各種分析

都市計画の検討業務では、都市及び地域の現況・動向を把握するための都市情報の対比、定量

化、視覚化といった各種分析において都市計画 GIS を利用でき、主題図の重ね合わせによる情報

の対比が容易で、地図情報の定量化作業が容易かつ複数ケース再現可能、地図表示様式の容易

な変更等の効果が期待される。

⑤ 都市計画以外の行政分野における活用

都市計画以外の業務では、審査・指導業務、計画策定業務、固定資産土地評価業務において都

市計画 GIS を利用でき、規制内容と申請事項の整合確認の迅速化、計画条件等を多角的な検討

を可能にした地区区分等の作業の効率化等の効果が期待される。

⑥ 都市計画決定情報の公開・提供

都市計画の窓口業務では、住民に対する情報提供、縦覧、インターネットによる情報の公開・提

供において都市計画 GIS を利用でき、行政窓口での情報提供及び縦覧の迅速化、インターネット

利用による時間的・空間的制約の解消等の効果が期待される。

⑦ 事業分野における活用

都市計画決定後の事業分野においては、事業評価、事業実施中における進捗状況把握、管理を

定量化する事業マネジメントにおいて都市計画 GIS を利用でき、評価指標の算定の省力化、事業

関連情報の一元管理及び把握を可能にする等の効果が期待される。

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3.2. 都市計画 GIS を利活用する場面

3.2.1. 都市計画基図の管理

① 対象となる業務

都市計画の決定には、都市計画の区域と内容を表した総括図、計画図の作成が必要となるため、

都市計画関連部署では、1/2,500 や 1/10,000 等の都市計画基図を作成し管理している。

都市計画基図は、都市計画の図書の基図として利用されるほか、調査の実施や計画立案など都

市計画業務のみならず、庁内の他部局においても広く利用されている。

また、都市計画基図は印刷図面としても作成されており、役所の利用許可があれば住民にも広く

利用されている。

印刷・提供

保管

都 市 計 画 基 図 原 図

(1/2,500,1/10,000 等)

都市計画基図印刷図(白図)

(1/2,500,1/10,000 等)

作成

更新

② GIS 活用による業務の効率化と高度化

1) 都市計画基図の保管

・従来までの地図は数量が増えるほど保管スペースも増えるが、GIS はデジタルデータである

ため保管スペースが縮小できる。

・従来までの地図の複製には、スペースとコストが必要になるが、GIS はデジタルデータである

ため複製が容易であり、災害時等の地図情報の破損に備え、地図の写しを取って保存する作

業(バックアップ作業)が簡素化され、復旧作業が迅速化される。

・従来までの地図は長期間保管すると変色等劣化するが、GIS はデジタルデータであるため劣

化が無く、保管スペースが縮小できる。

2) 都市計画基図の印刷・提供

・従来までの地図は予め期間とコストを掛けて印刷をしておかなくてはならなかったが、GIS は

図郭と内容に応じて出力が随時可能である。

・CD-ROM 等によるデータ提供も可能であり、利用者はデータを一度購入すれば、何度でも地

形図データ等が利用できる。

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3) 都市計画基図の更新

・紙地図は素材自体が劣化するが、GIS はデジタルデータであり劣化しないため、座標位置の

精度が維持でき、データの精度を保つことができる。

・更新作業をデジタル化でき、成果にバラツキがなく品質を一定に保つことができる。

[事例] 都市計画基図データの CD-ROM による提供事例/東京都

CD-ROM

東京都

↓ (著作物利用許諾)

↓ 民間

DM 地形図 CD-ROM ビューア

出典:東京都 2,500 デジタルマップ[地形図画像]東京都全域 CD-ROM2005 年 1 月,東京デジタルマップ株式会社

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[試算] 都市計画基図(地形図マイラー原図)の図化における DM(デジタルマッピング)*用語 7手法の導入効果

新規図化による DM 手法とアナログ手法、修正図化による DM 手法とアナログ手法の価格差を

概略試算する。(地形の変化率を 20%程度として、国土交通省歩掛りをベースに試算している。) ・km2単価では、概ね以下のような価格である。 単位:円/km2

円/

DM アナログ

現地調査・測量 250,000 現地調査・測量 250,000

新規 数値図化・編集 430,000 図化・編集 300,000

DMデータファイル作成 20,000

原図作成 40,000 原図作成 200,000

小計 740,000 小計 750,000

予察・測量 120,000 現地調査・測量 120,000

数値図化・編集 200,000 図化・編集 180,000

修正 DMデータファイル更新 20,000

原図作成 40,000 原図作成 100,000

小計 380,000 小計 400,000

*サンプル市街地での概略積算

・都市規模を 60km2と想定すると概略のコストは以下のようになる。 単位:円/km2

DM アナログ

新規地形図マイラー原図の作成 44,400,000 45,000,000既存地形図マイラー原図の修正 22,800,000 24,000,000

なお、現在は、ほとんど行なわれていないが、比較として、アナログ手法による新規地形図マイ

ラー原図の作成も掲載した。 都市計画基図を DM による手法のほうが新規作成・修正した場合、アナログより安くなる。

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3.2.2. 都市計画決定情報の管理

① 対象となる業務

都市計画決定情報は、都市計画法第 18 条及び第 19 条に基づく都市計画の決定に関する区域

や内容に関する情報(土地利用、都市施設、市街地開発事業、地区計画等)であり、都市計画基図

に都市計画決定情報を表示した総括図・計画図は行政業務全般にわたって利用されている。

そのため、都市計画決定の情報は、都市計画関連部署だけでなく、住民や行政の他部局でも最

新の情報をいつでも確認できるようにしておくことが必要である。

また、都市計画が決定・更新された際は、庁内の窓口等での閲覧・確認や 53 条許可や用途地域

証明発行等業務に利用できるよう対応していくことが必要である。

印刷・提供

都市計画図総括図

都市計画計画図(1/2,500 彩色図)

更新

保管

作成

都市計画基図

(1/2,500,1/10,000等)

② GIS 活用による業務の効率化と高度化

1) 都市計画図書の作成

・都市計画の図書(計画図)の作成にあたって、都市計画の変更内容が、部分的な変更であっ

ても、従来は変更の必要ない部分を含め 1/2,500 図郭単位で色鉛筆等での彩色が必要であ

ったが、GIS では必要部分のみ修正し、必要図郭をプロッタ出力するだけで対応できる。

・案の縦覧等で、都市計画の変更案に一部修正が生じた場合、上記と同様、都市計画の図書

(計画図)は、従来は 1/2,500 図郭単位で作成することが必要であったが、GIS では必要部

分のみ修正し、プロッタ出力するだけで対応できる。

・都市計画が輻輳している場所の都市計画情報を検索する場合、従来は、複数資料を確認す

るなど一定の経験や時間を必要としていたが、GIS を用いることで、位置の特定作業が迅速化

し、誰もが一括で都市計画情報を把握することが可能になる。

2) 都市計画図書の保管

・従来までの地図は数量が増えるほど保管スペースも増えるが、GIS はデジタルデータである

ため保管スペースの縮小が可能である。

・従来までの地図の複製には、スペースとコストが必要になるが、GIS はデジタルデータである

ため複製が容易であり、災害時等の地図情報の破損に備え、地図の写しを取って保存する作

業(バックアップ作業)が簡素化され、復旧作業が迅速化される。

・従来までの原図(マイラー)は、修正により素材自体が劣化するが、GIS はデジタルデータで

あり、劣化しない。

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3) 都市計画図の印刷・提供

・従来までの地図は予め期間とコストを掛けて印刷をしておかなくてはならなかったが、GIS は

図郭に応じて出力が可能である。

・印刷作業期間の短縮により、最新の都市計画決定の情報を反映して提供することができる。

4) 都市計画決定情報の更新

・紙地図は素材自体が劣化するが、GIS はデジタルデータであり劣化しないため、座標位置の

精度が維持でき、データの精度を保つことができる。

・閲覧・確認用図に部分的に変更決定した内容を反映する場合、従来は部分的な変更であっ

ても、変更の必要ない部分を含め 1/2,500 図郭単位で作成することが必要であったが、GIS

では必要部分のみ修正することができる。

[試算] 都市計画図書の作成における GIS の導入効果

・変更箇所 3 箇所 1/2,500 図郭 3 面分 ・必要図書 計画図(3 面)、総括図(1 面) ・作成部数 4 部(県、土木事務所、国土交通省提出用及び控え 1 部)

手作業 GIS

①元となる原稿図の作成 ・計画図 3 面、総括図 1 面 ・修正箇所の記入及び色鉛筆による彩色 ・作業人日 3 人日 ・人件費単価(30,000 円/日)

3 人日×30,000 円/日 =90,000 円

①データの更新 ・都市計画 GIS データの修正(3 箇所) ・作業人日 2 人日 ・人件費単価(30,000 円/日)

2 人日×30,000 円/日 =60,000 円

②必要部数の作成 ・①の原稿図は控えとして利用 ・提出先の 3 箇所分をカラーコピーで作成

4 面×3 部=12 面 ・カラーコピー単価 10,000 円/(A0 版 1 面)

10,000 円/面×12 面 =120,000 円

②必要部数の出力 ・提出先の 3 箇所及び控え 計 4 部 ・計画図 3 面+総括図 1 面 計 4 面

4 面×4 部=16 面 ・プロッタ出力単価(用紙及びトナー) 500 円/面

500 円/面×16 面 =8,000 円

合計:210,000 円

合計:68,000 円

②必要部数の作成 ②必要部数の出力

①データの更新 ①元となる原稿図の作成

※GIS を導入すると、手作業の約 30%の費用で作業ができる。

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[事例] 都市計画 GIS 導入による都市計画生産緑地地区計画変更業務の委託費の低減 /大阪府泉佐野市

当市では、都市計画生産緑地地区の都市計画変更を毎年1回必ず行っている。 業務では、総括図に「都市計画図」を使用することとされており、原図が「紙」であることから

追加変更する箇所のみならず、変更しない箇所についても毎年記入する必要があった(平成 13 年度は、約 650 箇所の生産緑地地区を記入した)。したがって、都市計画変更に必要な図書作成については、GIS 導入前は、手作業で区域を枠取りしており、膨大な必要図書を短期間に作成する必要性から業者に委託していた。

GIS 導入後(平成 14 年 12 月運用開始)は、職員が GIS で変更図面を作成できるようになったため、業者には必要図面の出力だけを委託し、委託費の軽減を図ることができた。

〔都市計画 GIS 導入による都市計画生産緑地地区計画変更業務の委託費の低減〕

・作成箇所 約 650 箇所(1/2,500 図郭 14 面分) ・作成図書 計画図 14 面、総括図 1 面 ・必要部数 計画図各 2 部、総括図 4 部

手作業 GIS 導入後 ①元となる原稿図の作成

業者に委託し、手作業で修正箇所の記入及び区域

の枠取りを行う。 作成箇所 約 650 箇所

(1/2,500 図郭 14 面分)

①データの更新 職員が GIS を用いて日常業務のなかでデータの更

新を行う。 作成箇所 約 650 箇所

(1/2,500 図郭 14 面分) ②必要部数の複製

業者が作成図面を複製する。 作成図書 計画図14面、総括図1面 必要部数 計画図各2部、総括図4部

②必要部数の出力 データを業者に渡し、業者が出力する。

作成図書 計画図14面、総括図1面 必要部数 計画図各2部、総括図4部

【委託費用】 原図作成費・図面複製費 計 約 200 万円

【委託費用】 出力費・システムメンテナンス費 計 約 30 万円

※GIS を導入して、委託費を約 85%低減できた。

出典:大阪府泉佐野市

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[試算] 図郭にまたがる地区の切り図作成における GIS の導入効果

・都市計画図を下地にした切図を 5 地区分作成する。 ・下図のエリアを図郭にまたがる地区のひとつとし、他 4 地区も概ね同様な地区とする。

対象とする地区が 4 図郭にまたがっている場合

手作業 GIS

・対象地区ごとの繰り返し

・対象地区ごとの繰り返し

①元となる都市計画図をコピー ・対象地区を探す ・都市計画図 4 面をコピー ・約 8 分 計.約 8 分

①GIS で対象地区を表示 ・GIS 機能による地域検索 ・約 1 分 計.約 1 分

②既定サイズに合わせ切り張り ・図郭の整合を合わせながら、コピー図面を切張り ・約 10 分 計.約 10 分

②拡大縮小表示によりレイアウト調整 ・GIS 機能によるレイアウト作成 ・約 2 分 計.約 2 分

③様式原稿に重ねてコピー

・切り張り原稿を再度コピー ・約 2 分 計.約 2 分

③印刷 ・GIS 機能による印刷 ・約 2 分 計.約 2 分

合計.20 分/地区

合計. 5 分/地区

●他 4 地区の繰り返し

20 分×5 地区=約 1.7 時間

●他 4 地区の繰り返し 5 分×5 地区=約 0.45 時間

①元となる都市計画図をコピー

②既定サイズに合わせ切り張り

①GIS で対象地区を表示

②拡大縮小表示によりレイアウト調整

③様式原稿に重ねてコピー ③印刷

※GIS を導入すると、手作業の約 25%の時間で作業できる。

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3.2.3. 都市計画基礎調査の実施

① 対象となる業務

都市計画を立案するにあたって、様々な情報に基づいて計画を立案することが必要である。その

ため地方公共団体では、様々な情報を収集、整理するため都市計画基礎調査(法第 6 条)をはじめ

とする各種調査が実施されている。

都市計画に関する各種調査は、面積や延長を計測、集計し調書にまとめることや調査結果を図面

に表すことによって整理される。これらの計測や集計、図化等の作業は多くの労力を要し、職員の作

業負担が大きく、作業の軽減化が必要となっている。

また、調査結果について計画の立案に有効に活用できるよう、過去の情報を蓄積して経年比較を

可能にすることや調査結果の情報がいつでも迅速に取り出せるように、データを管理しておくことも

必要である。

成果保管

実査(現地調査等各種調査)

調書作成(計測、集計) 図面作成(彩色) 関連

成果データ(図面・調書)

② GIS 活用による業務の効率化と高度化

1) 実査

・モバイル GIS を利用して調査現場から遠隔入力が可能となる。

■ モバイルによる現地調査のイメージ

[ モバイル機器 ] ノートパソコン・PDA 携帯電話・PHS デジタルカメラ及びビデオなど

現 地 調 査

建物用途現況は・・・建物階数は・・・ 建物構造は・・・

モバイルGISの利用

2) 調書作成

・従来までは図面情報と調書情報が人為的に、関連付けされて集計されていたが、GIS は図面

情報と数値化された属性情報の相互がデジタル情報として関連付けられているため、集計処

理の迅速化と集計ミスの発生が抑制できる。

・従来まではプラニメータ等の計測機器により計測して面積等を取得するが、GIS は計測結果

が自動的に数値情報として取得できる。

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3) 図面作成

・従来までは変更がない部分であっても 1/2,500 図郭単位に彩色し、全ての図面を作成する

が、GIS では過年度から変化した部分のみを修正することができる。

・図形情報と属性情報を関連付けた図化が可能であり、図化の迅速化と彩色ミスの発生を抑制

できる。

・複数種類の図面間の整合を図る場合、従来までは一度拡大・縮小によって作業図を作成した

上で移写作業を行うが、GIS はシステム的に整合を図ることができる。

4) 成果保管

・従来までの地図は長期間保管すると変色等劣化するが、GIS はデジタルデータであるため劣

化が無く、保管スペースの縮小が可能である。

・従来は調査結果の成果(紙の図面)は倉庫等に保管されており、利用する際にはこれを探し

出すなどの手間が生じていたが、GIS では、データをコンピュータに保管することになるため、

いつでも迅速に利活用できる。

[参考] 都市計画基礎調査 都市計画基礎調査は、概ね 5 年毎に、当該都市計画区域の都市計画に関する基礎的状況を把握、

整理するもので、都市計画法第 6 条に基づき都道府県が実施するものである。(準都市計画区域については市町村が行う。)都市計画基礎調査の実施は、一般的に都道府県が必要な調査項目・方法等を実施要綱に定め、市町村の協力のもと、調査成果となる図面及び調書を作成する。一部の都道府県においては、土地利用調査や建物調査を中心に GIS を積極的に活用している。国としては、昭和 62 年に旧建設省が都市計画基礎調査実施要綱を定めており、現在でも多くの都道府県が本要綱に準じて調査を実施している。

■ 都市計画基礎調査の実施項目

   調査項目 作成の有無調書 図面 縮尺

1 人口 1) 人口規模 (1) 人口総数及び増加数 ○ ―

(2) 人口増減の内訳 ○ ― (3) 人口の将来見通し ○ ―2) 人口分布 (1) 市街地区分別人口 ○ ― (2) 地区別人口 ○ ―

(3) 地区別人口密度現況 ― ○ 25,000 (4) 地区別人口密度増減 ― ○ 25,0003) 人口構成 (1) 年齢・性別人口 ○ グラフ

(2) 産業大分類別人口 ○ ― (3) 職業第分類別人口 ○ ― (4) 流出・流入別人口 ○ ○ 適当なスケール

2産業 (1) 産業大分類別事業所数及び従業者数 ○ ―(2) 産業中分類別工業出荷額 ○ ―

(3) 産業中分類別商業販売額 ○ ―3住宅 (1) 地区別住宅の所有関係別世帯数 ○ ―

(2) 地区別持家率 ― ○ 25,000(3) 地区別普通世帯の畳数 ○ ―(4) 地区別普通世帯の一人当たり畳数 ― ○ 25,000(5) 住宅状況の市町村単位でのマクロな把握 ― グラフ1) 地形条件

 (1) 地形及び水系 ― ○ 10,0002) 土地利用

 (1) 土地利用状況 ― ○ 10,000 (2) 土地利用別面積 ○ ― (3) 市街地の進展状況 ○ ○ 10,000

 (4) 国公有地現況 ○ ○ 10,000 (5) 非可住地現況 ○ ○ 10,0003) 宅地開発等の状況 (1) 宅地開発等の状況 ○ ○ 25,000

 (2) 面整備実績 ○ ― (3) 農地転用状況 ○ ― (4) 市街化調整区域内開発 ○ ○ 10,000 (5) 宅地開発区域内の市街地形成 ○ ―4) 農林漁業に関する土地利用

 (1) 農地・山林現況 ○ ○ 10,000 (2) 農林漁業関係施策 ○ ○ 10,0005) 災害及び公害 (1) 既往水害の分布 ○ ○ 10,000 (2) 既往火災の分布 ○ ○ 10,000

 (3) 公害現況 ○ ○ 10,0006) 法適用状況 (1) 法適用現況 ○ ○ 25,000 (2) 再開発・高度利用 ― ○ 10,000

 (3) 条例・協定等 ○ ○ 10,000

 (4) 地区計画等 ○ ○ 10,000

4  土地利用  土地利用 条件

   調査項目 作成の有無調書 図面 縮尺

5建物 1) 建物用途別現況 (1) 建物用途別現況 ― ○ 2,500

 (2) 建物特定用途の分布状況 ― ○ 10,0002) 建物新築状況

 (1) 地区別新築状況 ○ ○ 10,0003) 中心市街地の建物現況 (1) 建物構造別,階数別現況 ○ ○ 2,500 (2) 地区別建ぺい率現況 ○ ○ 25,000 (3) 地区別容積率現況 ○ ○ 25,000 (4) 地区別用途別の建物述べ床面積現況 ○ ― (5) 建物年齢別現況 ○ ― 10,000 (6) 建物1階部分の用途別現況 ○ ― 2,500

6歴史

1) 都市形成の沿革

 (1)市街地の形成 ― ○ 10,000 (2)都市計画及び都市開発年表 ○ ―2) 景観・文化財等の分布 (1)良好景観要素の分布 ― ○ 10,000 (2) 文化財等の分布 ○ ○ 10,000

7都市の緑 1) 土地の自然的環境 (1) 気象調査 ○ ―

 (2) 地質土壌調査 ― ○ 10,000 (3) 植生調査 ○ ○ 10,000 (4) 動植物調査 ― ○ 10,000

 (5) 緑地調査 ○ ○ 10,0002) レクリエーション施設 ― ○ 10,000

8地価  (1) 地価分布 ― ○ 25,000 (2) 地価の変動 ○ ―

9施設  (1) 都市施設の整備状況 ○ ○ 25,000 (2) 道路網 ― ○ 10,000 (3) 下水道網 ― ○ 10,000 (4) 上水道の整備状況 ― ○ 25,0001)自動車交通  

 (1) ゾーン間自動車交通量 ― 図 適当なスケール

10交通  (2) 主要道路断面交通量 ― 図 適当なスケール

2) 交通施設の利用状況 (1) 主要駅乗降人数 ○ ―

 (2) バス交通 ― ○ 10,000

出典:都市計画基礎調査実施要綱,昭和 62 年 1 月,旧建設省都市局都市計画課

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[試算] 建物用途別現況図及び建物用途分類別延べ面積の集計作業における GIS の導入効果 ・対象区域:60km2 (1/2,500 図郭 30 面)

※1/2,500 図郭は 3km2であるが行政界は不整形なため面数は増加 ・建物棟数:100,000 棟 (1/2,500 図郭 1 面あたり 3,300 棟) ・調査内容:建物用途、建物階数、床面積

建物用途:前回調査結果を参考に、あらかじめ市街化動向が判る既存資料で建物用途を把握し、住宅概略図で把握しきれない場合は現地調査で把握する。(現地調査対象の建物は 10%とし、10,000 棟とする。)

建物階数:前回調査結果を参考に、変化のない建物は前回調査結果を適用し、新たな建物は、現地調査で把握する。(建物用途と同じとする)

床面積 :建物形状面積×階数で算定する。 ・GIS については、従前に手作業で行っていた調査から GIS を導入する場合を想定している。

手作業 GIS

①現地調査準備 ・市街化動向が判る既存資料を基に予察し、現地

調査対象建物をピックアップし整理する。 ・104 人日(1 棟あたり 30 秒:100,000 棟)

①現地調査準備 (手作業と同じ) ・104 人日(1 棟あたり 30 秒:100,000 棟)

②現地調査・調査結果整理 ・現地調査により、建物用途及び建物階数を把握

する。 ・62 人日(1 棟あたり 3 分:10,000 棟)

②現地調査・調査結果整理 (手作業の場合と同じ) ・62 人日(1 棟あたり 3 分:10,000 棟)

③建物形状面積計測 ・プラニメータにより、図上での建物形状面積を

計測する。 ・52 人日(1 棟あたり 15 秒:100,000 棟)

③建物形状入力 ・GIS で建物形状をポリゴンとして入力する。

*入力と同時に面積が取得される。 ・52 人日(1 棟あたり 15 秒:100,000 棟)

④建物延床面積算定・集計 ・上記計測結果及び階数を表計算ソフトに入力し

延床面積算定後、建物用途別面積を集計(用途、

階数、形状面積の 3 つの入力が必要) ・34 人日(1 棟あたり 10 秒:100,000 棟)

④建物延床面積集計 ・建物用途及び階数調査結果を GIS に入力し延床

面積算定後、建物用途別面積を集計(用途、階数

の 2 つの入力が必要) ・17 人日(1 棟あたり 5 秒:100,000 棟)

⑤建物用途現況図の作成 ・色鉛筆により、建物用途分類毎に地図上の建物

を彩色 ・52 人日(1 棟あたり 15 秒:100,000 棟)

⑤建物用途現況図の作成 ・プロッタによって図面出力する。 ・凡例色等の設定 2 人日 ・プロット出力 1 人日 (30 面程度は1日で出力可)

合計:304 人日

合計:238 人日

①現地調査準備

③建物形状面積計測

②現地調査・調査結果整理

④建物延床面積算定・集計

⑤建物用途現況図の作成

①現地調査準備

③建物形状入力

②現地調査・調査結果整理

④建物延床面積集計

⑤建物用途現況図の作成

※GIS を導入すると、手作業より 66 人日作業期間が短縮できる。

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

69

[参考] 建物用途と土地利用の整合性の向上 土地利用現況のうち、都市的土地利用(道路等は除く)については、建物用途を土地利用へ移行

(共同住宅→住宅用地、官公庁施設→公益施設用地)することによって調査できるものであり、GIS を用いることで整合性の向上が図られる。

DM データを用いた場合の作業手順を以下に示す。

DM データの更新

調査結果の属性 (用途、構造、階数など)のポリゴンへの付与

建物用途から 都市的土地利用を判定

航空写真等から自然的土地利用を判定

土地利用分類別 面積表の作成

GIS の機能 により移行する

土地利用骨格 (道路、河川、鉄道等)のポリゴン化

建物用途別 現況図等の作成

土地利用現況図 の作成

建物用途別 床面積表の作成

建物情報の抽出 及び ポリゴン化

※先進的な地方自治体では、都市計画基礎調査要綱の中で、このような調査を位置付け、実施して

いる。

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

70

3.2.4. 都市計画検討に関する各種分析

① 対象となる業務

都市計画検討に関する各種分析では、客観的な判断根拠に基づき、都市あるいは地域の特性や

課題を把握することが必要になる。

様々な情報を用いて多角的な視点から検討を行うこと(情報の対比)や、面積・延長・箇所数など

による定量的な根拠を示すこと(情報の定量化)、情報を表示・分類し、検討過程や結論をわかりや

すく地図等で表示すること(情報の視覚化)が必要になる。

都市計画の

立案支援 情報の定量化

情報の対比

情報の視覚化

都市計画に関する各種分析

各種

都市情報

② GIS 活用による業務の効率化と高度化

1) 情報の対比 (様々な情報を用いた多角的な視点からの検討)

・情報の対比段階において、従来までの地図は時点、主題、図郭等によって情報が個別に存

在するが、GIS は地図を一元的に座標で管理するため、シームレス(繋ぎ目なく)での表示、レ

イヤ*用語 10 を重ね合せて表示、縮尺変更表示等が容易に行え、目的に応じた情報の参照、比

較ができる。

・情報の対比段階において、過去と現在を対比させて動向を把握しようとする場合、従来は改

めて必要な時点の情報を収集する必要があるが、GIS はデータベース機能を用いて過去から

の情報を一元的に蓄積しておくことが可能なため、必要な時点の情報収集・整理の手間及び、

変化箇所の抽出が簡略化される。

2) 情報の定量化 (面積・延長等の定量的な分析)

・情報の定量化段階において、従来までの地図は、地図情報の定量化(延長、面積、箇所数の

カウント)に多大な労力を要するが、GIS の固有の機能(空間処理機能)を利用して容易に地

図情報の定量化が可能となる。

3) 情報の視覚化 (検討結果の表示)

・情報の視覚化段階において、従来までの地図は表示様式(色、線、デザイン、階層区分など)

を変更するのに相当の手間と技能を必要とするが、GIS は容易に表示様式を変更でき、視覚

的に分かりやすい資料の作成が行える。

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

71

[参考] 各種分析における GIS の活用例(白地地域の連坦地域の設定検討)

500m

市街化調整区域において、個々の建築物で50mの円を描き、これが連坦する範囲を設定。さらに、市街化区域から500mの範囲を設定。

区域案を設定

土地利用現況や法規制、都市基盤整備状況等の各種の情報を重ね合わせて検討し、区域の設定案を作成

・・・・

公共下水道整備計画エリア

土地利用現況

農業振興農用地区域

[参考] 各種分析における GIS の活用例(都市計画公園誘致圏の検討)

年齢別人口を色分け表示し、これに近隣公園の位置を重ねている

近隣公園から 500m 圏域の円を描き、左の図に重ねることで、

公園利用対象年齢の多い区域が把握できる。

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

72

[事例] 防災まちづくりにおける GIS 活用事例/財)都市防災研究所 ■ 防災まちづくり支援システム 国土交通省の総合技術開発プロジェクト「まちづくりにおける防災評価・対策技術の開発」(平

成 10~14 年度)と連携して、地方公共団体等をメンバーとした「防災まちづくり共同研究推進会議」と、民間コンサルタント等をメンバーとする自主的な研究組織「防災まちづくり研究会」により防災まちづくり支援システムの開発が進められた。 このシステムは、住民等とともに木造密集市街地における地震時の被害を軽減するため、地

方公共団体の行政職員等が地区の防災性を評価し、安全な市街地への改善方策を検討するツールとして開発された GIS ソフトウェアである。 平成 16 年度現在、東京都荒川区・目黒区、神奈川県、愛知県等の課題地区のまちづくり協議

会などにおいて活用されている。

■ システムの活用場面と主要機能

■ 延焼シミュレーション結果表示例 ■ 建物の倒壊率と道路閉塞確率の表示例 (出火から延焼着火時間の分布)

出典:防災まちづくり支援システム,財団法人都市防災研究所

http://www.udri.net/bousaipro/index.htm

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

73

[試算] 土地利用現況の面積集計作業における GIS の導入効果 ・都市計画適用検討地区における土地利用分類別面積の集計を行う。 ・適用検討候補地区を 5 地区とする。 ・下図のエリアを適用検討地区のひとつとし、他 4 地区も概ね同様な地区とする。 ・都市計画基礎調査によって土地利用現況図は既に都市計画 GIS データとして整備されている。

〔都市計画適用検討業務で当該作業の位置付け〕

土地利用種別 面積(㎡)その他の空地 978その他の自然地 2,389公共施設用地 1,926工業用地 12,148住宅用地 28,598商業用地 1,858水面 2,754道路用地 737,311畑 6,082総計 794,044

〔面積計測結果〕

都市の現況把握 (マクロな把握)

適用検討候補地区の選定 (5 地区)

○候補地区の現況把握 ○ミクロな把握

都市計画適用の可能性検討

手作業 GIS

・候補地区ごとの繰り返し

・候補地区ごとの繰り返し

①土地利用分類毎の面積計測 ・プラニメータにより面積を計測 ・約 25 分

①候補地区区域界のデータ入力 ・GIS での区域界入力 ・約 1 分

②土地利用分類別面積集計

・計測値の入力及び集計 ・約 5 分

合計.約 30 分/地区

②土地利用分類別面積集計 ・GIS 処理による面積集計 ・約 1 分

合計. 2 分/地区

●他 4 地区の繰り返し 30 分×5 地区=150 分

●他 4 地区の繰り返し 2 分×5 地区=10 分

①土地利用分類毎の面積計測

②土地利用分類別面積集計

①候補地区区域界のデータ入力

②土地利用分類別面積集計

※GIS を導入すると、手作業の約 7%の時間で作業できる。

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

74

3.2.5. 都市計画以外の行政分野における活用

① 対象となる業務

都市計画業務で用いられる都市計画基図、都市計画決定情報及び都市計画基礎調査の成果は、

地方公共団体の他部署において様々な業務に広く活用されている。

これらの情報は、紙地図などアナログ情報媒体により提供されている。例えば、任意の場所におけ

る都市計画制限の内容を確認するためには、都市計画決定図書等の資料を複数参照しなければな

らない。

デジタル化された地図情報をコンピュータ上で参照でき、必要な加工、編集が行える環境が庁内

で整備されていれば、他部署の必要な情報を請求・提供する時間が大幅に軽減できるとともに、図

面の作成・管理や情報の検索・確認が容易となるなど、庁内全体の業務の効率化が期待できる。

② GIS 活用による業務の効率化と高度化

1) 審査・指導業務

・各種審査・指導業務においては、都市計画決定情報を活用しているため、都市計画GISを利

用して位置検索や複数情報の一括確認を行うことにより、規制内容と申請事項の整合を迅速

かつ正確に確認できる。

2) 計画策定業務

・各種計画策定業務においては、人口・土地利用現況情報、都市計画決定情報等、様々な都

市計画情報を活用しているため、都市計画 GIS を利用して重ね合せ表示することにより、計画

条件を多角的に検討できる。

3) 固定資産土地評価業務

・土地評価作業においては、土地利用現況情報や都市計画決定情報を活用しているため、都

市計画 GIS を利用して空間処理を行うことにより、地区区分等の作業が効率化できる。

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

75

[3.2.5.解説] 都市計画以外の行政分野における活用 1) 審査・指導業務への活用 建築確認業務等の各種審査・指導業務においては、窓口事務や検討作業などで都市計画決定情報を

活用しており、都市計画 GIS により業務の効率化・高度化が可能である。

■ 審査・指導業務への活用例

部署名 業務名 活用イメージ

建築指導担当部署 建築確認業務 ・建築確認申請時、都市計画決定情報を一括して表示し、地域地区

や都市計画道路等の都市計画法に基づく規制の内容と申請事項

との整合性を確認する。 ・GIS の図形入力及び外部属性のインポート機能

*用語 25を使い、建

築確認申請の位置情報と建築計画概要書に記載されている属性

情報(受付番号・受付年月日・建築主・建物用途等)をリンクさ

せ、履歴の管理、庁内及び住民・事業者からの問合せに対応する。 開発指導担当部署 開発許可業務 ・開発許可申請時、都市計画決定情報を一括して表示し、申請事項

との整合性を確認する。 ・GIS の図形入力及び外部属性のインポート機能を使い、開発許可

申請の位置情報と開発許可台帳に記載されている属性情報をリ

ンクさせ、履歴の管理、庁内及び住民・事業者からの問合せに対

応する。

■ 任意の地点における都市計画規制の 一括表示イメージ

検索地点 検索結果検索地点 検索結果

■ 建築確認申請位置と属性情報の 一括表示イメージ

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

76

2) 計画策定業務等への活用 下水道計画等の各種計画策定業務においては、現況分析や計画との整合確認などで人口・土地利用

現況情報、都市計画決定情報等、様々な都市情報を活用しており、都市計画 GIS により業務の効率化・

高度化が可能である。

■ 計画策定業務等への活用例

部署名 業務名 活用イメージ

下水道担当部署 下水道計画 策定業務

・地形、河川の状況、用途地域・都市計画道路・土地区画整理事業

の決定状況など複数の地図情報を重ね合せ、下水道計画区域の検

討を行う。 ・GIS の空間重ね合わせ機能を使い、人口の属性情報が付与されて

いる町丁目界と都市計画区域・用途地域界とを重ね合わせ、下水

道計画の人口推計に必要な都市計画区域内・外及び用途地域内・

外の人口情報を作成する。 企画担当部署 国土利用

計画策定業務 ・GIS の空間重ね合わせ機能を使い、都市計画法、農業振興地域の

整備に関する法律、文化財保護法等の土地利用関連法及びその他

の条例等に基づく各種法適用区域などを重ね合わせ、土地利用を

保全すべき区域等の検討を行う。 防災担当部署 地域防災

計画策定業務 ・公園・緑地・広場・その他の公共空地、幅員別道路の状況、沿道

の構造別建物の状況など、複数の地図情報を重ね合せ、避難地・

避難路の見直しや延焼遮断帯の整備等の防災対策を検討する。

■ 町丁目と用途地域の重ね合わせイメージ

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

77

3) 固定資産土地評価業務への活用 土地評価作業においては、地区区分等の作業で土地利用現況情報や都市計画決定情報を活用してお

り、都市計画 GIS により業務の効率化・高度化が可能である。

■ 状況類似地区の区分基準の例

区分基準 データ取得方法

都市計画用途地域 都市計画決定より、都市計画用途地域を調査

建ぺい率・容積率 都市計画決定より、建ペい率・容積率を調査 下水道処理区域 都市計画決定より、下水道の有無を調査

宅地利用上の便 の相違による区分

土地区画整理事業区

域等の開発行為 都市計画決定及び都市計画基礎調査より、開発行為の有

無を調査

街路の状況 道路の系統性 都市計画基図等より、幹線道路と非幹線道路を区分

土地利用の状況 都市計画基礎調査より、土地利用の状況を調査

家屋の密度 都市計画基図等より、家屋の密集の度合いを調査 宅地の利用状況

地形 都市計画基図等より、土地の高低差や傾斜を調査

公共施設等の接近状況 都市計画基図等より、各種の施設(受益施設、嫌悪施設)

からの接近状況を調査

■ 土地評価作業の概略フロー

Ⅰ)用途地区の区分 都市計画用途地域や土地利用の状況等を把握し、宅地の利用状況が共通な地域を区分する。

Ⅱ)状況類似地区の区分 用途地区のうち、都市計画用途地域、建ぺい率・容積率、道路の系統性、土地利用の状況等の地価形成

要因が相違する地域を区分する。

用途地区の区分

状況類似地区の区分

標準宅地の選定

主要な街路への路線価の付設

その他の街路への路線価の付設

各土地の評価額の算出

都市計画 GIS を活用する部分

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

78

3.2.6. 都市計画決定情報の公開・提供

① 対象となる業務

都市計画を円滑に実現するためには、住民の理解と協力が不可欠であり、情報開示を促進するこ

とが求められる。特に、都市計画決定に関する情報(土地利用、都市施設、市街地開発事業、地区

計画等)については、都市計画法上の縦覧(案の縦覧、永久縦覧)の位置づけとしてだけではなく、

住民サービスの向上を図るうえでも積極的に情報を公開・提供していくことが求められる。

GIS では、地図を用いて情報を表現することが可能であり、都市計画決定情報を公開・提供する

ツールとして活用が可能である。また、GIS とインターネットを併用することによって、より一層の効果

が期待される。

■ 情報公開のイメージ

役 所

行政窓口

インターネット

住 民

都市計画決定情報の公開・提供

② GIS 活用による業務の効率化と高度化

1) 行政窓口での情報提供、縦覧

・住所や地番のデジタル情報を管理し、GIS の検索機能を使って住所や地番を指定すれば、

目的とする地図上の位置を迅速に特定することが可能となる。このため、都市計画決定情報を

提供する職員の手間が軽減されるとともに、情報を得る住民にとっても容易に情報を入手でき

るようになる。

・GIS では、都市計画決定の情報を一元的に管理しているため、経験の浅い担当者であっても

土地に係る都市計画の内容を簡単に確認できるようになる。

・必要とする都市計画決定情報を抜き出して調べることや一括して全ての情報を調べることも可

能となり、的確に情報を提供することが可能となる。

・従来まで手間のかかっていた複製作業(例えば、手作業で白地図に彩色・カラーコピーなどの

作業)を省力化することが可能となり、都市計画の変更・決定時から短時間で情報の公開に着

手できる。

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

79

2) インターネットによる情報の公開・提供

・インターネットを活用して情報を公開・提供することにより、役所等に訪れずとも 24 時間行政

情報にアクセスすることが可能になり、住民が行政情報に接する機会が飛躍的に高まることに

なる。 [3.2.6.解説] 都市計画決定情報の公開・提供 1) 行政窓口での情報提供、縦覧

a) 迅速な位置の特定 都市計画課窓口等では、紙地図で都市計画決定案や都市計画決定図書の縦覧に付されている。 この場合、位置を特定するために地図をめくる、目印となる建物等から場所をたどるなど職員の

事務作業量の負担が大きいため、都市計画 GIS を利用することで業務の効率化が可能である。

紙地図では位置を特定するために手間が生じ時間を要していた。

○○町・・・

××丁目・・・

職員

住民

・・・

GIS の導入により・・・

GIS を用いると、住所や地番を指定することで位置特定が迅速に行え、閲覧行為が容易になる。また、端末を複数台設置することにより、一層効率化が図れる。

住民にとっては、待ち時間の短縮が図られる。⇒住民サービスの向上

職員にとっては、事務作業量が軽減される。 ⇒事務の効率化

窓口業務支援GIS導入例

○○町 ××丁目

タッチパネル画面例

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

80

b) 必要な情報を的確に提供 紙地図で都市計画情報を提供する場合、都市計画の内容が重なり輻輳するような場所や複数の地

図で管理している場所は、土地に関わる都市計画の内容を判別するには、手間や経験を要すため、

図郭の概念が無い都市計画 GIS を利用することで業務の効率化が可能である。

GIS の導入により・・・

紙地図では、都市計画の内容

が輻輳する場所では、都市計画

の内容の判別することや土地

に係る全ての都市計画の内容

を一括で調べるには手間と経

験を要していた。

土地区画整理

都市計画道路

用途地域

見比べ

見比べ

経験・・・見比べ

・・・

【一括での情報提供】 【抜き出しての情報提供】

GIS では、都市計画決定の情報を一元的に管理しているため、土地に係る都市計画の内容を

簡単に把握できるとともに、必要とする情報の抜き出しや一括での把握などが可能となり、的

確に情報提供が行える。

用途地域

都市計画道路

土地区画整理

・・・・・

第 1 種住居地域 3.3.1 ○○通線 △△区画整理事業 ・・・・

第 1 種住居地域

串刺し検索 条件検索

用途地域

第 1 種住居

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

81

c) 複製の作成が容易 都市計画決定の情報は、市役所(本庁)だけでなく、区役所や支所など複数の場所でも情報公開・

提供が行われている。この場合、都市計画の変更が生じると計画図等を複製し、これらの場所でも

変更の内容を迅速に確認できる都市計画 GIS を利用することで、業務の効率化が可能である。

紙地図の場合は、複製を作成するためには、カラーコピーや手作

業によって彩色することなどが必要にあり、情報公開にタイムラ

グが生じる。

○○都市計画の 決定・変更【正】 本庁

都市計画課 ○○都市計画の 決定・変更【副】

××支所 ○○都市計画の 決定・変更【副】

△△支所 ○○都市計画の 決定・変更【副】

○○支所

カラーコピー等

カラーコピー等 カラーコピー等

GIS の導入により・・・

GIS の場合は、都市計画決定の情報はデジタルデータとして管理されるため、複製を簡単に

作成でき、都市計画の変更・決定時から短時間で情報の公開に着手できる。

本庁 都市計画課

○○支所

フロッピー等

CD-ROM

都市計画決定の デジタル情報

△△支所

××支所

住民

イントラネット*用語 24

(庁内LAN)

インターネット対応

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

82

2) インターネットによる都市計画決定情報の公開・提供 近年、インターネットが急速に普及し、行政の持つ様々な情報をインターネットに公開・提供する

ことへのニーズが高まってきている。 都市計画分野において先駆的に GIS を活用している地方公共団体では、インターネット技術と GIS

とを連携させた「インターネット型 GIS」を積極的に都市計画決定情報を公開・提供するケースが増

えてきている。 GIS 活用の効果に加え、インターネットの効果により時間的・空間的制約が無くなり、サービスが

向上できる。また、行政窓口や電話での問合せ件数が減少し、行政事務の効率化にも役立っている。

■ インターネット型 GIS の効果

インターネット型GIS

24 時間 閲覧OK!

開庁時間・・・

時間的制約が無くなる。

空間的制約が無くなる。

都市計画の 縦覧・・・

役 所

自宅やオフィス

住民等

なお、インターネットを活用して都市計画決定情報を公開・提供するには、システムの保守・運用や

都市計画 GIS データの作成についての対応方法を検討しておくことが必要である。

<対応案> ・これまでの役所の開庁時間に関係なく

システム運用されるので、情報配信を民

間等に外部委託することにより、職員の

システム保守等の手間を軽減する。 ○保守業務を委託している例:

東京都、横須賀市など

24 時間配信にあたって システムの保守等を行う必要がある。

<対応案> ・インターネットによる情報提供の場合

は、都市計画の案の縦覧(都市計画法第

17 条第 1 項)及び都市計画の縦覧(都

市計画法第 20 条第 2 項)に基づく縦覧

であるか否か、又は縮尺条件等を満たさ

ない参考資料であるか等、情報提供の位

置付けを明示する。 ○利用条件の明示例: 横浜市、さいたま市など

都市計画情報を入手した住民が

誤解しないようにする必要がある。

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

83

[事例] インターネットによる都市計画情報の提供事例/神奈川県横浜市 〔迅速な位置の特定〕 初期画面において、区・町丁目等を指定

〔必要な情報を的確に提供〕 表示される地図上で、ある目的の場所を串刺し検索すると詳細な都市計画情報を表示可能

<初期画面>

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

84

〔複製の作成が容易〕 印刷機能で、都市計画情報の複製物を作成可能。 ※ 但し、横浜市の場合、複製物として利用条 件に同意した場合に利用できる。

出典:横浜市都市計画地図情報 i-マッピー,神奈川県横浜市 HPhttp://wwwm.city.yokohama.jp/tokei/

<印刷プレビュー>

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

85

[試算] インターネットによる都市計画決定状況の縦覧における GIS の導入効果 ・都市計画決定状況を縦覧する箇所を 5 カ所とする。 ・下図のエリアを縦覧場所のひとつとし、他 4 カ所も概ね同様な条件とする。

職員対応 インターネット GIS

・縦覧場所ごとの繰り返し

・縦覧場所ごとの繰り返し

①住民等が役所に出向く ・交通機関等で来庁 ・約 30 分 計.約 0.5 時間

①役所のホームページ検索 ・パソコン起動等 ・検索エンジンによるキーワード検索 ・約 5 分 計.約 5 分

②待ち時間、閲覧、印刷 ・職員が該当資料及び該当場所を探す ・約 10 分 ・住民に場所確認、必要に応じてコピー等 ・約 5 分 計.約 15 分/カ所

②場所検索、印刷 ・GIS 処理による場所検索 ・約 3 分 ・GIS 機能による印刷 ・約 2 分 計.約 5 分/カ所

●他 4 カ所の繰り返し

約 15 分×5 カ所=約 1.25 時間

●他 4 カ所の繰り返し 約 5 分×5 カ所=約 0.45 時間

③住民等が自宅等へ戻る ・交通機関等で来庁 ・約 30 分 計.約 0.5 時間

③パソコンの電源を切る

合計.約 0.5 時間×2(往復)+約 1.25 時間 =約 2.25 時間

合計.約 5 分+約 0.45 時間=約 0.5 時間

①住民等が役所に出向く

②待ち時間、縦覧、印刷

①役所のホームページを検索

②場所検索、印刷

③パソコンの電源を切る ③住民等が自宅等へ戻る

※GIS を導入すると、職員対応に比べて 20%の時間で縦覧が可能。

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

86

[事例] 都市計画窓口システムによる職員の窓口対応時間の低減(その①)/大阪府 A 市 〔導入経緯〕 都市計画情報については「都市計画行政支援システム」のサブシステムである「都市計画窓口シ

ステム」(平成 6 年 9 月運用開始)によって、平成 6 年度より、市民等に対して都市計画決定内容の閲覧や複写による資料の交付を行っている。

〔機能の概要〕 ①提供情報 :下記の 5 区分に関する都市計画決定内容

・用途地域(第 1 種住居地域、商業地域、工業地域 等) ・防火地域(防火地域、準防火地域 等) ・その他の地域地区(高度地区、都市再生特別地区、駐車場整備地区 等) ・市街地開発事業・地区計画等(土地区画整理事業、市街地再開発事業 等) ・都市施設(道路、自動車専用道路、公園・緑地、ごみ焼却場、下水道処理

場 等) ②提供場所 :計画調整局計画部 都市計画広報コーナー ③運用機器 :パソコン 4 台(閲覧用 3 台、管理用 1 台)、プリンター2 台 ④複写費用 :1 枚 200 円(A4 版 カラー)〔閲覧は無料〕 ⑤利用状況 :年間 検索・閲覧件数-約 7 万件

印刷枚数-約 3 万 7 千枚(平成 16 年度実績) コピーサービスにかかる時間は平均的には、1 枚(A4 版カラー)約 2 分弱

〔導入効果〕 ■ 都市計画窓口システムによる職員の窓口対応時間の低減

手作業 窓口支援 GIS

①市民等が電話・来庁

①市民等が来庁

②職員が窓口・電話対応 ・職員が用途地域図などで照会箇所を探し、市民等に場所の確認を行い対応。 (1 日平均約 70 件) 職員対応 約8時間/日

・内容等についての説明(都市計画証明を含

む)も 1 日あたり約 60 件。 職員対応 約 1 時間/日

②市民等がシステムで検索 ・職員の対応は操作説明程度。

職員対応 約 1 時間/日 ・資料については市民等がコピー。

職員対応 0 時間/日

【合計】 職員対応 約 9 時間/日

【合計】 職員対応 約 1 時間/日

※GIS を導入して、職員の対応時間が導入前の 1/9 になった。

出典:大阪府 A 市

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

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[事例] 都市計画窓口システムによる職員の窓口対応時間の低減(その②)/長崎県長崎市 〔導入経緯〕 都市計画 GIS を導入する以前の都市計画情報の照会・閲覧は、用途地域図、都市計画道路計画

図等の図面を用いて職員が個別に窓口来庁者に応対していた。使用する都市計画基本図は 117 面にもなり、照会箇所の図面検索に時間を要し、場合によっては該当地区に関する都市計画の関連図書を探すことも必要となり、来庁者応対そのものに時間がかかっていた。 〔導入効果〕 都市計画 GIS 導入後(平成 8 年 10 月運用開始)は、来庁者自らがシステム上で場所検索する

ことにより都市計画の指定情報入手が可能なため、初めて利用される方への操作説明や、微妙な区域界の確認等を除き窓口応対が必要なくなった。 現在は、1 日あたり数件ではあるが、電話による特定地の用途地域等照会の依頼に対し、電話応

対用に用意した電算機で直接確認のうえ電話口で回答している(ただし、電話であるため、参考として答えている)。

■ 都市計画窓口システムによる職員の窓口対応時間の低減

職員が個別応対 窓口支援 GIS

①住民等が来庁

①住民等が来庁

②職員が窓口対応 職員が用途地域図などで照会箇所を探し、

住民等に確認。 1 日あたりの照会件数約 30 件として、 1 件あたり約 15 分とすると、 職員対応約 0.6 人/日

②利用者がシステムで検索 職員は、操作説明等以外の対応は不要。 そのほか、1 日数件の電話による問合せへの

個別対応がある。 職員対応約 0.1 人/日

③閲覧・複写 必要に応じて職員がコピー。 1 日あたり約 10 件として、 1 件あたり 4~5 分とすると、

職員対応約 0.1 人/日

③閲覧・複写 必要に応じて利用者がコピー。 1 日あたり約 10 件とすると、

職員対応 0 人/日

【合計】 職員対応約 0.7 人/日

【合計】 職員対応約 0.1 人/日

※GIS を導入して、職員の応対時間が導入前の 15%になった。

出典:長崎県長崎市

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

88

3.2.7. 事業分野における活用

① 対象となる業務

都市計画業務は、都市計画決定の後、土地利用についてはゾーニングにより規制・誘導を図り、

都市施設等については個別の各事業が実施される。

昨今の事業マネジメントにおいては、各事業の効果を事業毎に客観的かつ定量的な指標により

評価することが義務付けられている。

この事業評価等は、道路・公園・市街地整備事業など都市計画に関する各事業分野において、

・ 事業実施前(事業採択前)に投資費用に対する便益を貨幣価値に置き換え、定量的に分析

すること(PLAN)

・ 事業計画に基づき事業を実施する過程で、その進捗状況を定量的に把握すること(DO)

・ 事業途中及び事業完了後において、事業の実施効果を定量的に評価すること(CHECK)

・ 直接的・間接的な実施効果により、事業の今後の改善点を定量的な根拠のもと明確にするこ

と(ACTION)

と、継続的なマネジメント・サイクル(PDCA サイクル*用語 54)で運用されており、更に、その評価結果

を住民等に分かり易く情報提供することが求められている。

■ 事業のマネジメント・サイクルと事業評価等における GIS 活用

事業計画<新規採択時評価等> 設定された事業目標の根拠となる費用便益分析

PLAN

GIS で定量的に分析

事業実施<進捗状況把握> 事業期間における年次等の進捗状況を把握

DO

GIS で定量的に把握

事業点検<再評価、事後評価等> 事業途中、完了後における実施効果等を評価

CHECK

情報 公開

都市計画検討に関する各種分析

事業改善<見直し等> 事業の直接的・間接的な実施効果に基づき改善

ACTION

GIS で定量的に根拠付け

視覚化された主題図 (任意の縮尺)

GIS で定量的に評価

② GIS 活用による業務の効率化と高度化

1) 事業評価<事業の計画・実施・完了時>

・都市計画基礎調査データ等の都市計画 GIS データを活用することにより、従来まで手間の掛

かっていた評価指標の算定を省力化することが可能となる。特に、再評価や事後評価などフォ

ローアップとして事業を経年的に評価する際は、概ね 5 年サイクルで実施されている都市計画

基礎調査の成果データを活用することが有効である。

・GIS特有の空間処理機能を用いることにより、現在運用している既存の評価指標とは別に、新

たな評価指標を開発することが可能となる。

・評価結果を GIS により視覚化することにより、住民等に分かり易く公開することが可能となる。

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第 3 章 都市計画 GIS 導入の目的と効果

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2) 事業実施中における進捗状況把握、管理

・事業実施状況を位置的に把握、管理することが可能となり、進捗状況を関係者に報告する手

段として活用することが可能である。

・土地利用転換の状況や用地買収の状況、地元要望等、事業実施に関わる様々な関連情報を

一元的に把握することが可能となり、効率的な事業管理が可能となる。

[3.2.7.解説] 事業分野における活用 1) 事業評価<事業の計画・実施・完了時> 事業評価は、直接的な事業の結果をアウトプット指標(結果指標:例えば、整備された公園面積な

ど)と、事業の成果として社会・生活等への影響などを具体的にイメージできるアウトカム指標(成

果指標:例えば、1 人あたり都市公園等面積の増加による利用者数など)に大別される。 事業評価の際は、GIS を用いることで定量的に指標処理が行え、評価結果を図示できる。

■ アウトカム指標例

政策目標①

政策目標②

政策目標③

住環境、都市生活の質の向上

政策テーマ①

政策テーマ②

政策テーマ③

ゆとりある住環境に必要な

都市公園等を確保する

業績指標

1 人あたり都市公園面積 増加による利用者数

アウトカム指標

出典:国土交通省政策評価基本計画・政策チェックアップ結果(評価書),平成 14 年度,国土交通省

■ アウトカム指標の算定、視覚化イメージ

分類表示 例

業績指標

1 人あたり都市公園面積 増加による利用者数 都市公園等データ

人口データ

調査ゾーンデータ アウトカム指標

都市計画基礎調査データ ゾーン別 1 人あたり都市

公園面積(ランク図)

2) 事業実施中における進捗状況把握、管理

GIS で、対象事業の情報や関連情報をデジタルデータとして一元的に管理し、実施中事業の進捗状

況を定期的に把握、管理することができる。

■ 事業実施状況の把握イメージ

【事業採択時の状況】 【5 年経過後の状況】

計画路線 計画路線

完成路線 ●●km

土地利用転換 事業路線 ●●km