2.音響測定の基礎 -...
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2.音響測定の基礎
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音とは(1/2)
音波とも呼ばれるように、340m/sの速さで伝わる波動現象
波動は、空気の圧力変動(音圧)が連続して生じることにより発生します。
1.高さ(主に音の周波数)
2.大きさ(主に音圧)
3.音色(主に音の重なり)
疎疎 密 疎疎 密 疎疎 密 疎疎 疎疎密 疎疎 密
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音とは(2/2)
音の高さ:周波数
・周波数が高い音は、甲高く
・周波数が低い音は、低く、重々しく
音の大きさ:振幅
・振幅・騒音計で測る
音色・音質
・楽器の種類の聞き分け・音の波形が微妙に異なる?
音色・音質:相対評価計測システム:物理量
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レベルとは?(音圧レベル)
AA0
log10 ( ) B10× d
p02
L = 10× dBp2
log10 ( )
1万円と
100万円は
たった20dB
違うだけ!
LA-2560普通騒音計
LA-5570精密騒音計
LA-5560精密騒音計
dBは音の単位ではない!百分率(%)と同じように何に使ってもよい。
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騒音とは
可聴音(20~20kHz)のうち、比較的耳の感度の良い200~8kHzぐらいを対象とします。普通の会話では、300~3kHzが聴取にとって重要です。
音の強さ(W/m2) 音圧(Pa) 音圧レベル(dB)
ジェットエンジン
地下鉄車内
昼間の街頭
小さい声の会話
閑静な住宅街
深夜の郊外
最小可聴音
1
0.01
10n
100p
1p
1μ
100μ
20
2
0.002
200μ
20μ
0.02
0.2
120
100
40
20
0
60
80
1 94
対数表現すると0.00002~20Paの音圧値を0~120dBで表現できます。
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騒音の種類(1/3)
定常騒音(steady noise)
測定点において、ほぼ一定レベルの騒音が連続しており、騒音計の指示値変動がないか、または多少変動しても変動が僅かである騒音
変動騒音(fluctuating noise)測定点において、騒音レベルが不規
則かつ連続的にかなりの範囲にわたって変動する騒音
例 道路の近くの自動車騒音
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騒音の種類(2/3)
間欠騒音(intermittent noise)ある時間間隔をおいて間欠的に発生す
る騒音のうち、発生時毎の継続時間が数秒以上の騒音
時間間隔は、ほぼ一定の場合もあれば、列車や飛行機の通過のように不規則な場合もある
衝撃騒音(impulsive noise)
1つの騒音発生の継続時間が極めて短い騒音
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騒音の種類(3/3)
分離衝撃騒音(an isolated burst of sound energy)
例えば、パイルハンマが杭を打つときの音のように、個々の騒音が分離できる衝撃騒音
単発の場合も、間欠的に発生する場合もある。
発生毎のレベルがほぼ一定の場合や、かなりの範囲にわたって変化する場合もある
準定常衝撃騒音(quasi-steady impulsive noise)
例えば、ベルや削岩機のように、ほぼ一定レベルの衝撃音が極めて短い時間間隔で繰り返して発生する騒音
感覚的には、定常騒音として受け取られることが少なくない。
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騒音計とは
環境計測器
振動レベル計
騒音計騒音計
濃度計
粉塵計
精密騒音計精密騒音計
普通騒音計普通騒音計
測定精度
積分型騒音計積分型騒音計
JIS C 1502 騒音レベル、音圧レベル
JIS C 1505 騒音レベル、音圧レベル
時間率騒音レベル、等価騒音レベル、単発騒音暴露レベル
普通騒音計と精密騒音計の違い
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マイクロホンとプリアンプ
マイクロホン音を正確にキャッチして、電気信号に変換する。
プリアンプピックアップされた微細な電気信号をあるレベルまで増幅し、インピーダンス変
換をする。
マイクロホンのタイプ:コンデンサ型、ダイナミック型、セラミック型
高抵抗
コンデンサ
偏極電圧
振動膜
背電極表面に貼り付けられた永久電気分解した高分子フィルム
高抵抗
空隙
背極
絶縁物
筐体
バイアス型 バックエレクトレット型
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騒音計の仕組み(ブロックダイヤグラム)
音・振動の世界では、○○レベルといえば、必ず、その交流信号を検波回路によって直流信号に変換したその対数値を指します。
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実効値とピーク値
変動する量を評価するものとして、「実効値」と「ピーク値」があります。
実効値とは瞬時値の二乗を一周期にわたって平均したものの平方根のことです。これに対して突発的に大きくなるその頂点の値をピーク値と呼びます。
正弦波の場合、
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動特性(1/2)
動特性とは、騒音計の指示メータの動きに関してJISC1505に記載されている規定です。主な動特性は、FAST、SLOW、IMP です。
速い動特性(FAST)・耳の時間応答に近似されたもの・時定数:125ms・騒音の測定
遅い動特性(SLOW)・変動する騒音の平均レベルを指示させるためのもの・時定数: 1s
インパルス(IMP)・衝撃音などに対応するため応答速度の速い特性・時定数:35ms立ち上がり、1.5s立下り
騒音計の応答
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動特性(2/2)
時定数FASTとSLOWに、1kHzのトーンバースト信号(バースト継続時間200ms、繰り返し時間3s)を入力したときのレベルの変化
(dB)
(s)
速い動特性(FAST)
遅い動特性(SLOW)
インパルス(IMP)
人間の耳の時感応等に近似した値。立ち上がり、立ち下がりの時定数は125msの値を持つ。
変動する騒音の平均レベルを指示させるためのもの。立ち上がり、立ち下がりの時定数は1sの値を持つ。
衝撃音などに対応するため応答速度の速い特性。時定数が、立ち上がり35ms、立ち下がり1.5sの値である。
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周波数補正(1/2)
周波数補正とは、音圧のような物理量に対して人間の周波数に対する感度が平坦でないことから測定された物理量に対して周波数的な重み付けをすることです。
A特性・人間の聴覚の周波数特性・聴感補正特性と呼ばれることもある
C特性・低周波、高周波が落ちているが、その中間の周波数特性は平坦
FLAT特性・重み付け無し
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周波数補正(2/2)
・人間の耳は周波数が低い音が聞こえにくい・周波数がとても高い音も聞こえにくい・だから人間の耳の特徴に似たフィルタ(A特性)を使う
ことが多い
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等価騒音レベル(JIS Z 8731)
環境騒音についての基本的測定方法はJIS Z 8731に定められています。JIS Z 8731は1957年(昭和32年)9月18日に制定されてか
ら我国における騒音の測定・評価方法の基礎として広く使われてきました。
1997年:計量法の改訂:・ホンからdB単位への変更1999年:環境アセスメント法の制定1999年:環境基本法のL50からLAeq基準への改訂
JIS Z 8731についても、1983年に続き1999年に(国際標準化機構)ISO 1996-1/1982、ISO1996-2/1983を基礎として改訂
国際規格ISOとの整合性をとるため順次改訂
地球環境保全の高まりから世界的に評価基準を統一する流れ
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音圧レベル(Sound Pressure Level)
騒音の分野においては、音波の強弱(音圧)の物理的な尺度として用いられます。単位はdB(デシベル)で表わします。
音圧レベルの大きい音波は強い音、小さい音波は弱い音ということができます。
・音圧レベル0~130dBの範囲が主として対象になります。・なお、周波数補正特性はFLATが使用されます。
人間の最小可聴音圧(基準音圧p0 ):20μPa = 2×10-5
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周波数分析
時間軸の分析では平均値、分散などがあります。
時間軸分析
周波数軸分析
時間・周波数軸分析
信号分析
周波数軸の分析は一般にスペクトル分析と言われるもので、比較的広帯域での分析である定比幅分析と(通常フィルタを用いて行われる)、 FFT(高速フーリエ変換)法によるような定幅(狭帯域)の分析があります。
時間・周波数の2 次元平面での分析法は、ウイグナー分布やウェーブレットによる分析法などがあります。
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オクターブ分析(周波数分析)
騒音対策を行うには、騒音分析=周波数分析が必要です。騒音分析として古くから行われている方法としてオクターブ分析があります。オク
ターブとは2倍の周波数を意味します。計測対象とする騒音に対して25Hz~12.5kHzの周波数範囲において、1/1オクタ
ーブあるいは1/3オクターブの規格に定められたバンドパスフィルタを通して各々の帯域毎の音圧レベルを求めます。(JIS C 1513 に規定)
オクターブとは:音楽用語で、ドから次のドまでを1
オクターブといいます。上限の周波数と、下限の周波数の
範囲をオクターブバンドと呼び、その中心の周波数をオクターブバンド中心周波数と呼んでいます。
また、オクターブバンドを1/3に分割したものを、1/3オクターブバンドとい
います。
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1/1オクターブと1/3オクターブバンドパスフィルタの中心周波数
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バンド幅の計算式
各オクターブバンドに対して、次の関係式が成立します。f1:下限遮断周波数 f2:上限遮断周波数 fm:中心周波数
1/1オクターブ
1/3オクターブ
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オクターブフィルタの周波数特性
フィルタの周波数特性も規定されており、遮断特性の緩やかさの順にI型(簡易測定用)、II型(一般測定用)、III型(精密測定用)の3種類があります。
ただし、JIS C 1513-1983では、オクターブバンドパスフィルタではI型とII型が、1/3オクターブバンドパスフィルタではIIとIII型が採用されています。
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騒音を分類してみると
環境騒音(ambient noise)ある地点で観測される騒音は、さまざまな騒音源からの騒音が重なり合っているため、そ
のレベルの時間変化は複雑な様相を呈します。このように、ある観測点において観測されるあらゆる騒音源からの総合された騒音を環境騒音といいます。
特定騒音(specific noise)環境騒音は一般に複数の騒音源からの騒音で構成されていますが、そのうちのある特
定の騒音源に着目した時それからの騒音を特定騒音といいます。例えば、各種の交通機関からの騒音や生活騒音などが混在している都市環境において、騒音源として鉄道に着目すればこの鉄道騒音が特定騒音となります。
暗騒音(background noise)環境騒音を構成する騒音のうち、ある特定騒音(複数の場合もある)に着目した場合、そ
れ以外のすべての騒音を暗騒音といいます。例えば、ある観測点において鉄道騒音に着目した場合、近くの道路からの交通騒音は、鉄道騒音よりもレベルが大きくても暗騒音に含まれます。
*なお、環境騒音に対して寄与の大きいすべての特定騒音を除いてもなおかつ残っている騒音は、残留騒音(residual noise)と呼ばれます。
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環境騒音
昨今、環境問題意識の高まりもあって、騒音分野での環境への対応がクローズアップされてきています。それに関連する主要な項目は、以下のとおりです。
交通騒音道路の延長や自動車の増加に伴い、特に幹線道路近辺を中心に道路交通に
伴う騒音環境が悪化しつつありその対策が注目されています。また、最近測定方法が騒音レベルの中央値から等価騒音レベルに変更になっ
ています。鉄道騒音も環境問題の一つです。
工場騒音工場などの生産活動や建設現場などでの活動に伴う騒音の発生も近隣の住宅
街などに影響を及ぼします。
航空機騒音飛行場での飛行機の発着は、近隣住民に対して大きな騒音をもたらします。
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機械騒音
工場騒音も個々の機械が動作することによって発生する騒音の集合であり、個別の機械からの騒音を低減できれば全体の低減も実現可能ですし、工場内での労働環境に及ぼす影響にも関連します。
測定するものは、騒音レベルまたは音響パワーレベルです。
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建築騒音(1/2)
主に都市部の集合住宅(マンション)などにおいては、上下階からの騒音問題が深刻になっています。また前述の道路交通騒音も、壁などの遮音性能が重要になっています。
このため、建築物の対騒音性能に関する特性を考慮することは、住環境にとって重要と言えます。
室間音圧レベル差例えば隣室からの音がどれぐらい聞こえてくるかは、室間の壁の遮音性を計る
ものさしです。室間音圧レベル差は、一方の部屋に音源をおき、それぞれの部屋の5個所の音圧レベルを平均し、そのレベル差を計算することにより求めら
れ、この差が大きいほど遮音性能はよいといえます。
音響透過損失室間音圧レベル差は、受音側の部屋の吸音力により、同じ遮音性能でも差が
出てしまいます。これに対して壁あるいはその材料の物理的な遮音性能を表すものが、この音響透過損失である。これは、τ=[材料に入射するパワー/ 透過するパワー]としたとき、TL (Transmission Loss) =10 log τで定義されます。
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建築騒音(2/2)
吸音率建物や部屋がコンクリート打ちっぱなしなどの場合、その内部で音を発生すると、
その音が響いてしまい、会話や音楽鑑賞等に支障のある場合があります。これを改善するには、床にカーペットを敷いたり、壁にクロスやカーテンをかけたりします。このような材料は吸音材と呼ばれ、どれだけ音を吸収するかの度合いが吸音率です(α = [吸音されるパワー/ 材料に入射するパワー])。
ランダム入射吸音率は残響室で、垂直入射吸音率は垂直入射管で測定されます。
床衝撃音例えば、階上の固い床に物を落としたり、子どもが飛び降りたりすると、階下では不
快な騒音として捉えられてしまいます。これを床衝撃音と呼びます。最近普及しているフローリング床などが、この問題の増加に拍車をかけています。測定方法として、タイヤを落下させるバングマシーンと、金属製のハンマヘッドで床を叩くタッピングマシーンによる2つの方法があります。
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音源探査
稼動している機械から異常な音がする場合、故障の有無、騒音対策の観点からその場所を特定することは意味のあることです。また音の漏れてくる場所を探したい場合もあります。
これらを総称して、音源探査と呼んでいます。
音圧分布耳で、あるいは計測器で音圧を検出し、その大きさで音源の場所を特定する手
法です。際立った音源は、これで把握できるケースも多い。
SI(音響インテンシティ)分布SI(音響インテンシティ)は、音のエネルギーに関連します。このため、SIを求め
ることにより、音の発生場所を発見しやすくする助けとすることができます。
音響ホログラフィ音響ホログラフィとは、音圧を位相関係まで含めて測定することにより、測定位
置以外の場所の音響量を推定する技術です。これを用いて音源場所の推定と特定位置に及ぼす騒音量が把握できる特長をもっています。