平成29年度 施 政 方 - Yamato ·...

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- 1 - 平成29年度 本日ここに、平成29年度の予算並びに諸議案をご審議いただくにあたり、私の市 政に対する所信の一端を申し述べ、議員並びに市民の皆様のご理解とご協力を賜り たいと存じます。 AI、いわゆる人工知能に関するニュースは、毎日のように耳目に触れるようにな ってまいりました。実際に、スマートフォンに搭載されている音声応答アプリケーシ ョンやお掃除ロボットをはじめ、車の自動運転技術やがん患者の情報分析など、既に、 我々の生活の様々な分野に人工知能が入り込んできているのです。 そして、テクノロジーの進化がこのまま続けば、「シンギュラリティ」が到来する との予測もなされています。シンギュラリティとは技術的特異点とも表され、人工知 能の能力が人間の知能を超えることを指し、この段階まで技術が進歩すれば、人工知 能は自らの力で、自分の能力を上回る人工知能を作り出すことができるという、およ そ人知の及ばない未来が訪れるのかもしれません。 先月25日には、政府が開催した経済財政諮問会議の中で「2030年展望と改革 タスクフォース報告書」について議論がありました。この報告書では、2030年に 団塊世代が80歳を超え、また、第4次産業革命などを通じ社会の状況が大きく変革 する姿を展望した上で、人工知能やロボット等の先端技術が経済社会に大きな インパクトをもたらすことが指摘されております。そして、狩猟採集社会から農耕社 会、工業社会、情報社会への変遷に続く「超スマート社会」を我が国が世界に先駆け て実現していくために、AI研究やオープンイノベーションを進めていくことが重 要であると示されております。

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平成29年度

施 政 方 針 大 和 市

本日ここに、平成29年度の予算並びに諸議案をご審議いただくにあたり、私の市

政に対する所信の一端を申し述べ、議員並びに市民の皆様のご理解とご協力を賜り

たいと存じます。

AI、いわゆる人工知能に関するニュースは、毎日のように耳目に触れるようにな

ってまいりました。実際に、スマートフォンに搭載されている音声応答アプリケーシ

ョンやお掃除ロボットをはじめ、車の自動運転技術やがん患者の情報分析など、既に、

我々の生活の様々な分野に人工知能が入り込んできているのです。

そして、テクノロジーの進化がこのまま続けば、「シンギュラリティ」が到来する

との予測もなされています。シンギュラリティとは技術的特異点とも表され、人工知

能の能力が人間の知能を超えることを指し、この段階まで技術が進歩すれば、人工知

能は自らの力で、自分の能力を上回る人工知能を作り出すことができるという、およ

そ人知の及ばない未来が訪れるのかもしれません。

先月25日には、政府が開催した経済財政諮問会議の中で「2030年展望と改革

タスクフォース報告書」について議論がありました。この報告書では、2030年に

団塊世代が80歳を超え、また、第4次産業革命などを通じ社会の状況が大きく変革

する姿を展望した上で、人工知能やロボット等の先端技術が経済社会に大きな

インパクトをもたらすことが指摘されております。そして、狩猟採集社会から農耕社

会、工業社会、情報社会への変遷に続く「超スマート社会」を我が国が世界に先駆け

て実現していくために、AI研究やオープンイノベーションを進めていくことが重

要であると示されております。

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目下のところ、人間のように考える人工知能の実現には至っておりませんが、囲碁

やポーカーなどの特定の分野では、既に人間の能力を上回るものもみられるように

なっております。ディープラーニングという技術革新により、コンピュータなどの

テクノロジーが、以前にも増して目まぐるしいスピードで進化している状況に鑑み

れば、近い将来、シンギュラリティの到来が現実のものとなるのかもしれません。

しかしながら、現段階においては、その実現性について論ずることよりも、むしろ、

人工知能を活用し、我々の未来をより豊かにしていくため、国際社会や国において、

人類と人工知能の役割の違いに関する考察を重ねながら、人工知能をコントロール

するルール作りなどを進めていくことが求められていると考えています。また、人工

知能は、自ら考え決断することや物事の意味を理解し、表現することが不得手であり、

高度な価値判断や総合的な意思決定の部分においては、人間に代わることは難しい

とも言われています。来るべき将来に備え、幼いうちから自主性や自立性を育み、読

解力を身に付けることで独自の思考力や想像力を発揮していくことが、今まで以上

に重要になってくるものと考えています。

本市はこれまで、学校図書館のリニューアルやブックスタート事業を実施してき

たほか、小中学校への新聞の配架などにより論理的に構成された文章に接する機会

を増やすことで、こどもたちの読解力を高めるための施策を進めてまいりました。ま

た、昨年11月、文化創造拠点シリウスの中にオープンした図書館は、利用する市民

こそが主役となるよう趣向を凝らしており、これからの技術革新などに対応できる

知恵や、時流の変化に即応できる力を養う泉として、本市の未来を創る象徴的な存在

になるものと確信しています。

夢を見つけにくいと言われる現代社会の中で、人工知能やロボットの進化に向き

合いながら、“幸福観”をどのように創っていくのかが今まさに重要となっており、

基礎自治体である本市としても、自らが考え判断できる力を育むことで、人間の持つ

可能性をさらに引き出し、人工知能が常態化した時代においても生き抜く力を持つ

ことができるよう、一歩一歩着実に施策を展開していく所存でございます。

我が国においては、人口減少というもう一つの重要な課題にも積極果敢に対峙し

ていかなければなりません。

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既に我が国は、2008年のピーク時から、僅か10年足らずの間に100万人の

都市一つが消滅するほどの人口減少時代に突入しており、2050年頃の人口は

1億人の大台を割り込み、高齢化率が40%近くに達することが予想されておりま

す。人口減少により引き起こされる様々な懸念に対しましては、ロボットや人工知能

などの先端技術によってカバーできる部分もあるのかもしれませんが、それでもな

お、単身世帯の増加は続き、いわゆる「おひとりさま」社会は、今後、ますます進展

していくことも予想されます。

この時代の要請に合わせた政策を展開していくため、文化創造拠点シリウスは、

1階から6階までの全ての場所に多くの座席を整備しており、一人でも気軽に

ぷらっと訪れたくなる居場所を創り出すことができたと考えております。このほか、

救急医療情報キットの配布や24時間健康相談の実施、葬儀の生前契約の支援など、

「おひとりさま」にとっても有益な取り組みを進めているところでございますが、今

後も、人口減少による世帯の変化を的確に捉え、市民生活を豊かにしていくために必

要な施策について、積極的に考えてまいります。

人口減少に歯止めをかけるためには、出産の希望が叶う社会の実現が必要です。

明治18年以来、131年もの間、100万人を超えていた我が国の出生数は、

平成28年に100万人を下回り、約98万人になるとの推計が人口動態統計によ

り示されました。

本市の出生数につきましては、年により増減があるものの、この30年は、概ね

2,000人台を維持しながら推移しており、我が国の少子化が進行している中にあ

っては、大変、喜ばしいことと捉えています。特に、平成17年に1.13であった

本市の合計特殊出生率は、年々回復傾向が続いており、平成27年には1.46まで

回復し、神奈川県内の全19市でトップとなりました。東京都を筆頭に1都3県の合

計特殊出生率が低い中、全国平均の1.45を上回る水準にまで回復したことは、本

市がこれまでに進めてまいりました少子化対策の方向性に、間違いがなかったこと

の表れなのかもしれません。

とりわけ、近年、社会的な課題となっております待機児童につきましては、平成

25年度からの3か年で保育所などの重点整備を進め、27施設を増設し、入所定員

を約1,400人拡大することで、平成28年4月1日に本市で初めて待機児童ゼロ

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を実現することができました。また、大和市立病院における産婦人科、小児科医師の

充実をはじめ、不育症・不妊治療費助成制度の創設や、全国に先駆けて進めた予防接

種情報提供サービス「らくらく予防接種」の導入、病児おむかえサービスや親子de

健康診査など、きめ細かな施策を展開し、こどもを産み育てやすい環境づくりに努め

てきたことが成果として実を結んできていると言えるのではないかと思います。

新年度におきましても、今までの好循環の流れを加速させるべく、子育て何でも相

談・応援センターの新設や、産前・産後サポート事業を新たに実施するなど、相談機

能の充実を図りながら、市民の希望が叶う社会の実現に力を注いでまいります。

人工知能の進化と人口減少の進展という二つの大きな命題に対して、私たちのこ

どもや孫の世代が、生き生きと輝ける未来の暮らしを実現するためには、国全体で対

応していかなければならないものと考えております。

しかし、このような時代認識があっても、また、例え、世の中の仕組みが大きく変

わろうとも、私は、「健康」を希望する人の心は決して揺らぐことがないと確信して

おり、市長に就任して以来、人・まち・社会の3つの健康を柱に据え築き上げてまい

りました「健康都市やまと」の基盤をより強固にすることこそ、将来において大きな

財産になるものと考えております。

特に、これからの時代を乗り越えていくためには、人々の心を豊かにする文化芸術

の振興や、市民に楽しさとエネルギーを提供できるスポーツ施策の充実など、市民が

生きがいを感じられる「社会の健康」を高めていくことが重要であり、文化創造拠点

シリウスはそのランドマークになるものと確信しております。今後も、住んでいる人

が楽しいと実感できるまちづくりを進めることで、市民一人ひとりが夢と希望を持

ち続けられるよう様々な施策を展開していく所存でございます。

それでは、健康創造都市の実現に向けて取り組む、総合計画の7つの基本目標に沿

って、新年度における主要な事業についての説明を申し上げます。

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最初の基本目標は、「一人ひとりがいつまでも元気でいられるまち」でございます。

我が国では、平均寿命の延伸により人生80年と言われるようになって久しく、さ

らにここ数年の間には、人生100年という言葉さえも耳にするようになりました。

人の寿命がこれほどまで長くなってきた時代にあっては、充実した人生を送るため

に不可欠なものとして、健康が持つ価値は一層高まっていると認識しております。

健康を維持、増進する上で、適度な運動が重要であることは申し上げるまでもござ

いませんが、その一歩を踏み出すことは思いのほか難しく、また、継続していくこと

は一層ハードルが高いのではないでしょうか。私は予てから、大きな負担がなく日常

生活の中で気軽に実践できる運動として、人間の基本的動作である「歩く」ことに着

目しており、健康遊具の設置や、コミュニティバスの運行拡大などは、外出を促し、

歩くことにもつながるものと期待して施策を展開してまいりました。そして新年度

からは、歩くことが市民の皆様の健康づくりとして定着するよう、健康づくり推進課

に「歩こう担当」を設置し、歩くことの効果の普及啓発や、ゲーム性のある新しい

イベント「やまとウォーキンピック」の開催などに取り組みます。また、今年1月か

ら開始した「ヤマトン健康ポイント」事業も歩こう担当で推進し、皆様が楽しく歩く

ことを総合的にサポートしてまいります。

日頃から健康状態を把握し、ときに生活習慣を見直すことは、病気を未然に防ぐこ

とや介護予防にもつながります。本市では、平成25年度以降、保健師や管理栄養士

が、特定健診の結果などにより、保健指導、栄養指導が必要な方を対象に戸別訪問す

る取り組みを進めてまいりました。現在では、生活習慣病や高齢の方の栄養不足を予

防する好事例となり、特に、栄養指導の取り組みは平成28年版の厚生労働白書にも

取り上げられるまでになっています。新年度は新たに、歯科衛生士も戸別訪問に加わ

り、口腔機能の向上も図りながら、市民の健康維持の効果をさらに高めてまいります。

これまで全国一律で行われていた介護予防のための通所介護・訪問介護が、新年度

から、地域の実情に応じて様々なサービスが受けられる新たな制度へ移行すること

になります。制度移行後は、要支援認定を受けていない方でも、新たに国が定める基

本チェックリストに基づいて必要なサービスを利用できることとなり、新年度から

スムーズにスタートできるよう、調整を進めているところです。今後も、制度の趣旨

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に則り、利用者の意向などをしっかりと捉えながら事業を実施してまいります。

昨年7月、国立がん研究センターは、平成28年にがんと診断される人の数が、初

めて100万人を上回る見込みであるとの予測を発表しました。一方で、早い段階で

発見し、治療を行うことにより、多くの方が社会復帰されていることは、皆様ご存知

のことと思います。本市ではこれまで、無料クーポンの発行や、柔軟に医療機関や受

診日時を選べる施設検診の拡大など、がん検診を受けやすい環境を整えてまいりま

した。新年度には、市で助成対象としている乳がん検診について、マンモグラフィを

受診した結果、高濃度乳腺により診断が難しい場合には、後日、超音波検査を受診で

きるよう、新たに費用の助成を実施してまいります。

本市では、認知症への対応を喫緊の課題と捉え、認知症サポーターの養成や認知症

初期集中支援チームの設置などを行っており、昨年9月には、施策のさらなる推進の

ため「認知症1万人時代に備えるまち やまと」を宣言いたしました。新年度は、認

知症の方やその家族などが自由に語り合う、認知症カフェを定期開催とするほか、簡

単な計算などと運動を一緒に行い、認知機能の向上を図る「コグニサイズ」を体験す

るセミナーを開催します。また、徘徊者を早期発見できるよう、希望するご家族等へ、

小型GPS端末の利用支援を行うなど、認知症施策の充実を図ってまいります。

在宅では介護が難しい方にサービスを提供する、特別養護老人ホームについては、

第6期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画に基づいて新たに100床を整備し

ていく考えであり、新年度には、平成30年度中の開所に向けて事業者が行う、施設

整備に係る費用の一部を支援してまいります。また、介護現場においては、人材不足

が全国的な課題となっており、国は、介護職員の処遇改善の取り組みを進めている状

況です。本市では、昨年11月、介護職員の身体的負担の軽減や業務の効率化につな

がる介護ロボットを導入する事業者に対し、その費用の一部を補助する制度を開始

いたしました。新年度も引き続き、事業者への補助を行うほか、介護ロボットを各種

イベントで展示するなど、事業者のみならず、多くの方へその有用性を発信してまい

ります。

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本市では、障がいの有無によって分け隔てられることなく、誰もが自立した生活を

送ることができるまちの実現に向け、施策を展開しており、今年度から保健福祉

センターの手話通訳者の配置日を週5日に増やしたところです。新年度は、障がい福

祉計画の点字版を作成し、視覚障害がある方が自ら情報を得られる環境を整えてま

いります。

また、こどもの難聴は、友人などとの円滑なコミュニケーションや言語能力の発達

等にも影響を及ぼす可能性があります。このため新年度から、身体障害者手帳の交付

対象とならない軽度・中等度難聴で、18歳未満のこどもの補聴器の購入費について

補助を行い、経済的な負担の軽減を図ってまいります。

市民の健康を守るためには、医療体制を充実することも不可欠な要素の一つです。

地域医療の中核的役割を担っている市立病院においては、新年度、小児科の医師を増

員することにより、一次医療機関で対応が困難な小児救急患者を24時間365日

受け入れることができる体制を整備いたします。小さなお子さんの急な病気などに

対し、深夜の時間帯等においても市立病院が全力で対応してまいります。また、この

ほかにも、手術室の増室や外来診療スペースの拡充等を予定しており、これまで以上

に良質な医療を円滑に提供できるよう努めてまいります。

二番目の基本目標は、「子どもが生き生きと育つまち」でございます。

本市では、妊娠から出産、その後の子育て期にわたる切れ目のない支援を展開して

いるところですが、それぞれの段階に応じた不安などをできる限り解消すべく、

サポート体制を整えていくことにも、一層力を注いでまいりたいと考えています。

新年度には、妊娠中からこどもが1歳を迎えるまでのご家庭に向けて、産婦人科医

や小児科医等が監修した、妊娠生活や子育てについてのアドバイスなどを配信する

「子育て何でも応援メール」を開始いたします。また、初めてのお産にあたって具体

的なアドバイスを必要とする方に向けましては、出産や新生児に関するエキス

パートである助産師が、訪問指導を実施したり相談に応じたりする「産前・産後

サポート事業」を開始いたします。さらに、保健師や管理栄養士が、生後4か月まで

の乳児がいる全てのご家庭を対象に行っている「赤ちゃん訪問」について、新年度に

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は、希望するご家庭に「赤ちゃん訪問プラス」として再度訪問することで、より安心

して子育てに臨んでいただけるよう、支援体制の充実を図ってまいります。

こどもの成長に伴い、必要となる情報やサービスの内容は変化していきます。この

ため、新年度から保健福祉センター内に「子育て何でも相談・応援センター」を開設

し、常駐する保健師や家庭相談員が妊娠、出産、子育ての各時期における様々な相談

に細やかに対応することをはじめとして、市や地域で実施する子育て支援情報の提

供、子育て施設の紹介を行うなど、多様な制度や支援の中から、市民の方が必要とす

るメニューをスムーズに受けられる環境を整備してまいります。

市民の皆様が安心してこどもを預けることができるよう、本市では保育所の建設

や増設などの整備に対し、積極的に支援してまいりました。今年度中もさらなる入所

希望に対応すべく、認可保育所をはじめとする9カ所の開設、既存保育所6カ所の定

員増を図り、計346人分の確保に向けて、間断なく取り組みを続けているところで

す。新年度には、認可保育所1カ所、小規模保育事業所5カ所の開設と、既存保育所

3カ所の定員増により、計180人分を確保するための取り組みを進め、保育環境の

一層の充実を図ってまいります。

併せて本市では、保育所以外の場所でも保育所と同等の時間、こどもを預けること

ができる環境の確保に向け、新年度は幼稚園における預かり保育の拡大を図ります。

また、平成30年4月のオープンに向けて整備を進めている東急中央林間ビル内の

子育て支援施設には、「送迎ステーション」のほか、就学前児童を預かる託児室、子

育て相談室を設置します。送迎ステーションでは、幼稚園や認定こども園の利用時間

の前後に、お子さんをお預かりし、通園バスに橋渡しを行う役割を担ってまいります。

こどものうちから本を読むことは、言葉の正しい理解はもちろん、表現力を高め、

想像力を豊かにすることにもつながります。本市では、4か月児健診で読み聞かせや

絵本のプレゼントをする「やまとブックスタート事業」のほか、小中学校における学

校司書の全校配置など、乳幼児期から読書の楽しさを肌で感じ、成長に応じて読書力

を向上していくための取り組みを推進してきました。このような取り組みにより、こ

ども一人当たりの年間読書冊数は小学生で約148冊、中学生で約54冊となり、ま

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た、学校図書館における本の貸出冊数は平成25年度と比べ、小学校で約1.4倍、

中学校で約2.1倍に増加するなど、こどもたちが本と触れ合う機会は着実に増えて

いると言えます。新年度には、調べ学習の充実を図り、図書の貸し出しと返却の利便

性を高めるため、小学校の学校図書館に配架する新聞の種類を増やすとともに、中学

校を含めた全ての学校図書館でノート型パソコンを増台いたします。

平成26年度にスタートした「放課後寺子屋やまと」は、事業開始以降、こどもた

ちや保護者の皆様から好評の声をいただいています。今年度には、全小学校、全学年

での実施と夏休み期間中の開催を実現し、12月末までに延べ5万8千人を超える

児童が参加しました。また、放課後の学習支援を中学校まで拡大していくため、パイ

ロット校での運用にも取り組んでいるところです。中学校に進学したときに学習形

態の変化やスピードに対応できなくなる、いわゆる「中1ギャップ」や部活動の忙し

さなどにより、学習習慣が途切れてしまうこともあります。こどもたち一人ひとりの

抱える不安にきめ細かに対応できるよう、新年度には市内全ての中学校で授業中の

支援として英語と数学の少人数指導を取り入れるとともに、学び直しや受験に向け

た放課後の学習支援を開始いたします。これにより、市内全ての小中学校で放課後の

学習支援を行う体制が整うこととなりますので、是非ご活用いただければと思いま

す。

情報技術の発展により海外との垣根はなくなりつつあり、近年ではSNSを使え

ば世界中のあらゆる人と簡単に交流できるようになっています。国境を越えた交流

の中で、将来はグローバルに活躍したいと考えるこどもも増えているのではないで

しょうか。こどもたちの未来の選択肢を一つでも増やせるよう、本市では小学校にお

いて英語教育の充実を図っているところであり、新年度には、これまでパイロット校

3校で実施していた英語の短時間学習を全ての小学校に拡大いたします。また、海外

のこどもたちとのビデオ通話により日常会話を楽しむことで、英語力の向上につな

げていけるよう、時差の少ないオーストラリアの学校と調整を進めてまいります。

SNSの進展にはプラスの効果だけでなく、様々なリスクも潜んでおり、家族や教

職員の目につきにくいところで、いじめが進行してしまうような事例も報道される

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ようになっています。こどもたちの充実した生活のためにも、教職員が一人ひとりの

様子を日頃から観察し、僅かな変化に気付くことができる環境を整えることが大切

です。本市では今年度から全ての小中学校でアンケート形式の学級集団アセスメン

トテストを実施し、いじめの早期発見に努めているところですが、教職員がその結果

を効果的に指導に活かしていけるよう、新年度には各学校で外部講師による研修を

導入し、学校ごとの特徴に合わせた対応を進めてまいります。また、新たに不登校児

童支援員による小学生のサポートを開始し、児童の家庭訪問や学習支援、登校に向け

た支援など、不安を抱えるこどもたちに寄り添ってまいります。

三番目の基本目標は、「安全と安心が感じられるまち」でございます。

これからの30年、神奈川県で想定されている地震がどの程度のものかご存知で

しょうか。平成27年5月に県が公表した地震被害想定によると、発生の確率が高く

大きな被害が想定される地震は「都心南部直下地震」で、30年以内の発生確率は最

大70%となっています。大和市における死傷者数は1,400人を超え、避難者数

は15,400人に上るとされていますが、人口密度が高く住宅密集地が点在してい

る本市の特徴に鑑みると、地震発生時の風速や風向きによっては大規模な火災につ

ながり、想定以上の被害が出ることも考えられるのではないかと危惧しているとこ

ろです。

そのため私は、以前から様々な火災対策に力を入れて取り組んでおり、市民の皆様

が初期消火に使うことができるスタンドパイプ消火資機材については、新年度に

30カ所の公園に設置することで合計429台になる予定です。また、プールや防火

水槽の水を使って消火活動ができる可搬式消防ポンプを、今年度から市内の小中学

校に設置しており、新年度までに該当する26校全てに備え付けてまいります。南林

間地区で整備を進めている大和圃場跡地の公園につきましては、新年度からの2か

年で防火水槽や消火設備、防災備蓄倉庫の設置工事を行います。さらに、日頃の住宅

火災も未然に防ぐことができるよう、高齢の方がお住まいの住宅に赴き、防火チェッ

クを実施するほか、「住宅防火モデル地区」を地域ごとに毎年度設定して戸別訪問し、

アンケートによる防火対策の現状把握やタブレット端末を使った注意喚起などに努

めてまいります。

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昨年4月に発生した熊本地震では、短期間に震度7の揺れを2度も観測し、

8,000棟を超える家屋の全壊などによって、多くの被災者の方が避難所での生活

を余儀なくされました。本市は、いち早く被災地の宇土市へ職員を派遣し、災害対策

本部の運営補助や支援物資の受け入れ、配布を行ったほか、現地で活動する中で不足

している品目を把握し、真に必要とされる物資を追加で輸送するなど、被災地支援に

尽力したところです。今回の被災地支援によって、紙おむつや、入浴できない期間に

体を拭くためのウェットティッシュの必要性が再確認されたことから、新年度には、

これまでに備蓄してきた水や食料、携帯トイレ等に加え、各種保健衛生用品の備蓄に

ついて充実を図るとともに、倒壊家屋に閉じ込められた人の救助を行うための電磁

波探査装置と画像探索機を新たに整備してまいります。

大規模災害が発生し、公共交通機関が機能しない状況に陥った場合、時間帯によっ

ては、本市のターミナル駅に多くの帰宅困難者の滞留が想定されます。新年度は大和

駅周辺の帰宅困難者支援マップを作成し、非常時に配布できる体制を整えます。大和

駅周辺の一時滞在施設等を記した地図や、大和駅を中心とした半径10キロメート

ルの広域地図を記載することで、一時避難をする人、徒歩で自宅や次のターミナル駅

を目指す人などをサポートしてまいります。滞留者の速やかな解消は、駅周辺におけ

る緊急車両の円滑な通行にもつながり、本市の災害対応に役立つものと考えます。

地域防災において中核的な役割を担う消防団の皆様が、安全に活動を行うことが

できるよう、新年度には防火ズボンや連絡用スマートフォン、ヘッドライトを整備い

たします。また、新年度に活動する少年消防団の入団対象を中学生まで拡大したとこ

ろ、団発足以来最多となる189人の小中学生から応募がありました。大和市の未来

を担うこどもたちが消防に関する技術を学び、正しい知識を身に付けていくことを

期待しております。

身近にいる人が突然倒れたとき、AEDを使用することで救える命があります。本

市では公共施設やコンビニエンスストアなど、市内各地にAEDの整備を進めてい

るところであり、新年度、大規模集合住宅などに15台を設置することで、

合計398台となる予定です。今後も引き続き、市民の皆様がいざというときに迅速

にAEDを活用できるよう、設置場所や使用方法の周知啓発を図ってまいります。

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本市では、安心して日々の暮らしを送ることができるよう、市民の皆様にご協力い

ただきながら、犯罪の発生しにくい環境づくりに向けた取り組みを、積極的に進めて

まいりました。防犯灯には、夜の帳が下りたまちの犯罪抑止はもちろん、行き交う

人々に安心感を与える効果もあることから、平成34年度にかけて大幅に増設して

いく考えであり、その皮切りとして新年度には、600灯を新設いたします。また、

市長就任以来、着実に整備を進めてきた街頭防犯カメラは、新年度にも50台を増設

して一層の充実を図ることにより、その累計は540台に上ることとなります。さら

に、ソフト面からのアプローチによっても治安を向上させていくことを目的に、新年

度には、「(仮称)健康防犯パトロール」を開始いたします。これは、市民の皆様に

ウォーキングやジョギング、ペットの散歩といった日常の外出の中でパトロールに

ご協力いただくことで、まちの安心感を市域全体に広めようとする取り組みです。安

全安心なまちづくりに向け、是非、皆様のお力添えをいただければと思います。

青天の霹靂という言葉があるように、災害や事件、事故は突如襲ってくるものでは

ありますが、自分の身を守る的確な行動をとるためには、命綱とも言える情報を迅速

かつ正確に得られること、そして、必要となる情報を事前にキャッチし、十分に備え

ができていることの両面が必要になってきます。本市では新年度、スマートフォン用

の「(仮称)ヤマトSOS支援アプリ」の提供を開始いたします。このアプリでは

マップ機能を使い、近くにある避難所やスタンドパイプ、AEDまでのルートを検索

できるほか、やまとPSメールと連動し、交通事故や犯罪、防災に関する情報をお知

らせします。さらには、停電時や防犯対策に活用できるライトとブザーも備えており、

緊急時、市民の皆様の生命を守る一助になるものと考えています。申し上げるまでも

なく、このようなアプリやラジオなどのツールは、切迫した状況にあっても確実に使

いこなせるかが極めて重要です。そのため、日頃から情報機器を操作し、慣れ親しむ

情報訓練にも取り組み、もしもの時に備えていただきたいと思います。

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四番目の基本目標は、「環境を守り育てるまち」でございます。

「気候変動に関する政府間パネル」、通称IPCCは、温室効果ガスの吸収や排出

削減の対策を、これまで以上に実施しなければ、2100年における世界の平均気温

が、産業革命前の水準と比べ最大4.8℃上昇し、我々人類のみならず生態系全体に

深刻な影響を及ぼすことになると警鐘を鳴らしています。

私たちの暮らしが、地球からもたらされる様々な恩恵を享受して成り立っている

のは疑いようのない事実であることを踏まえますと、環境への負荷をできる限り減

らし、将来にわたって豊かな自然環境を引き継いでいくことが、今を生きる我々に課

せられた責務であると言えるのではないでしょうか。

太陽光、風力、水力などを利用する再生可能エネルギーの普及は、温室効果ガスの

排出抑制による環境への負荷の低減はもちろん、非常時のエネルギーの確保にもつ

ながります。このため本市では、市民が住宅用太陽光発電システム等を設置する費用

を助成しているほか、事業者が自家消費のために設置する太陽光発電設備について

税制優遇を行っています。また、新年度は、コミュニティセンター緑野会館に太陽光

発電設備と蓄電池設備を設置し、公共施設への再生可能エネルギーの導入も着実に

推進してまいります。

環境負荷の低減を図る上では、ごみの資源化も、大変重要です。資源として回収し

ている「その他プラスチック製容器包装」については、平成31年度の全量資源化に

向けて段階的に取り組みを進めており、新年度には、資源化率を現在の30%から

40%へと引き上げてまいります。この「その他プラスチック製容器包装」は、資源

化にあたって、ベール化と呼ばれる圧縮・梱包処理が必要であり、現在は全て外部業

者に委託していますが、市においてもその一部を処理していくことで、将来的な費用

の削減につながるものと試算しています。このため、新年度には、環境管理センター

内へのベール化設備の設置に向けた実施設計を行います。また、これまで燃やせるご

みとしていた剪定枝の資源化にも着手しており、新年度、環境管理センター内に剪定

枝の一時保管場所を整備して、実証事業を進めてまいります。

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都市農業は、地域への新鮮な食料の提供だけでなく、防災や良好な景観の形成など

の役割を持ち合わせていることから、国は、都市農業の安定的な継続を図るため、

平成27年4月に都市農業振興基本法を制定し、また、昨年5月には、法に基づき都

市農業振興基本計画を策定しました。本市においては、こうした動向をしっかりと捉

え、引き続き、農地の保全を図ってまいります。

農業への理解を深めるとともに、自ら野菜を育て、食べるという独特の喜びを体験

できる市民農園においては、例年、募集区画を上回る申し込みがあるなど、大変好評

をいただいております。こうした市民ニーズに対応するため、新年度には新たに83

区画を増やし、合計943区画を確保することで、より多くの皆様に緑や土に親しん

でいただくとともに、農作業などにより体を動かす中で、健康づくりにもつなげてい

ただければと思います。

五番目の基本目標は、「快適な都市空間が整うまち」でございます。

本市の街づくりは、この度、二つの大きな節目を迎えました。

一つは、大和駅東側第4地区の市街地再開発事業の完了でございます。本市初とな

る、組合施行による市街地再開発事業の道程は、今にして思えば決して平坦なもので

はございませんでしたが、幾多の課題を乗り越え、昨年、無事に再開発ビルの完成を

迎えることができました。

そしてもう一つは、渋谷南部地区の土地区画整理事業でございます。平成5年の事

業認可から長きにわたって実施してきたこの事業も、今年度末をもって、事業の肝と

も言える建物移転を全て完了いたします。新年度は、新しい土地の権利を確定させる

換地処分や、町界町名地番整理により定められた新住所への変更作業を行っていく

ほか、引き続き、電線地中化や修景整備など、事業の仕上げに向けた歩みを着実に進

めてまいります。

「中央のまち」、「南のまち」の大きな発展に続き、いよいよ「北のまち」の顔であ

る中央林間駅周辺の街づくりも、新年度、本格的な整備に突入してまいります。旧市

営緑野住宅跡地においては、平成30年8月の開館を目指し、スポーツを中心とした

誰もが利用しやすい交流拠点の建設に取り掛かってまいります。この施設は、日常的

な健康維持や屋内球技を楽しむことができるアリーナのほか、こどもたちの好奇心

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や冒険心を掻き立てる大型遊具等を屋外に設置した子ども広場、会議室や多目的室、

市民交流スペースを備えた学習センターで構成するとともに、災害発生時への対応

も想定し、防災備蓄倉庫なども併設してまいります。また、民間施設である東急中央

林間ビルの3階にも、都市機能を高めるための公共施設の設置に向け、取り組みを進

めてまいります。このほか、平成30年度以降には駅前広場の整備や駅北側の踏切拡

幅などを予定しており、新年度は、それらに向けた実施設計などを行ってまいります。

中央林間駅周辺の全体的な整備が完成を迎えるまでには、今しばらく時間を要す

ところですが、地域の皆様には、是非、ご期待とともに、事業の進展を温かく見守っ

ていただければ幸いでございます。

そのほかにも、下鶴間山谷南地区においては、今月、土地区画整理事業を実施する

組合が設立され、新年度から造成工事などが始まる予定であり、また、今年度から実

施されている下福田地区の土地区画整理事業においては、引き続き各種整備が行わ

れます。両組合に対しましては、良好な住環境等の整備につながるよう、しっかりと

支援してまいります。

都市の骨格を形成する道路は、市民の皆様の安全かつ円滑な移動を支えるために

適切に整備していく考えであり、本市の主要道路である福田相模原線については、新

年度も引き続き南林間地区と上草柳地区において、歩道の拡幅に向けた用地買収と

工事を実施し、着実な進捗を図ってまいります。

また、私は、平坦な大和市の道路の特性に着目し、気軽に利用することができ、健

康づくりにも寄与する自転車の可能性を、最大限引き出すことにも注力してきたと

ころです。青色で塗装したレーンとナビマークによる自転車通行帯は、新年度の整備

によってその延長が約60キロメートル、整備率は100%に達する見込みです。さ

らに新年度は、車との分離を図る自転車道を、下鶴間桜森線の鶴間駅西側に250

メートル整備するほか、市内の歩道上には、自転車の車道通行を促すポールや

路面シートを設置していきます。これに加え、新年度から「自転車見廻りサポーター」

を募集し、危険運転の自転車に注意を促していただくとともに、今年度、全国に先駆

けて導入した、大和市立の小学校5、6年生への自転車保険を中学校3年生まで拡大

するなど、自転車利用環境のさらなる向上に努めてまいります。

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人口密度が県内で2番目に高く、都市化が進んだ本市において、公園は、大変貴重

なスペースであり、市民の皆様の多様なニーズに対応できるよう、機能の充実に取り

組んでいます。平成26年度からは、こどもたちが気兼ねなくボール遊びを楽しめる

環境の創出に力を入れており、今年度末には、合計6カ所の公園で利用できるように

なります。地域の方から、公園で遊ぶこどもが増えたこと、他の地区からも遊びに来

ていることなどを伺いますと、ボール遊びへのニーズは大きいものと捉えていると

ころです。新年度は、旧生涯学習センターのホール跡地とやまと公園のほか、

11カ所の公園にボール遊びができるスペースを新設し、より多くのこどもが身近

な公園でボールを使って遊ぶことができるよう環境を整えてまいります。

また、誰でも気軽にストレッチや簡単な筋力トレーニングなどの運動ができる健

康遊具の設置も進めており、新年度は、新たに25カ所の公園に導入いたします。こ

れにより、目標としていた100カ所の公園への設置が完了することとなり、設置台

数は合わせて303台となります。健康遊具を効果的にご活用いただくために、引き

続き、保健師や理学療法士による体験会も実施し、皆様の健康づくりをサポートでき

るよう取り組んでまいります。

泉の森は、年間を通じて様々な植物や野鳥を観察できる貴重な緑地であり、また、

駅から徒歩圏にあるという好立地も手伝って、市内外から多くの人が訪れる観光資

源にもなっています。これまでも、大和駅から泉の森までの経路に、距離や方向を示

した案内サインなどを配置し、アプローチしやすくなるよう努めているところです

が、新年度にも、東原桜森線沿いの入口に、泉の森を示す大きな看板を設置して、誰

にも分かりやすい玄関口とするなど、取り組みを進めてまいります。

市の南部に位置する大和ゆとりの森は、こどもが思いっきり遊べるわんぱく広場、

レジャーシートなどを広げてくつろげるピクニック広場があるほか、サッカー、

テニスなどを楽しむ人で大変賑わっています。ゆとりの森の開放的な雰囲気や

バラエティに富んだ遊具などを、より多くの方に満喫していただけるよう、新年度か

ら公園南側に、200台程度の駐車場を確保するための工事を開始し、利便性の向上

を図ってまいります。

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六番目の基本目標は、「豊かな心を育むまち」でございます。

昨年11月3日、澄み渡った秋の青空の下、本市の文化芸術活動の大いなる飛躍、

明日へ続く英知の輝き、市民の皆様の夢や希望を乗せ、文化創造拠点シリウスが

オープンを迎えました。オープン当日は、大変多くのお客様が、午後1時の開館に向

け長蛇の列を作りながらお待ち下さり、最終的には、1日で1万5千人を超える方々

にご来館いただきました。その光景を目の当たりにし、やはり市民の皆様は文化の薫

りを渇望されていたのだと、改めて確信したことが今でもはっきりと思い出されます。

その後も、オープンからひと月も経たない11月28日に、来館者数の累計が本市

の人口である23万4千人に達するやいなや、今月の18日には、既に80万人を上

回っており、来月中にも100万人に到達しようかという、大変なご好評をいただい

ているところです。今後も、より一層多くの方々に文化創造拠点シリウスをご利用い

ただき、皆様の「豊かな心」の醸成につなげられるよう、創意に満ちた取り組みを積

極的に進めてまいりたいと思います。また、新年度には、図書返却ポストをつきみ野

駅、桜ケ丘駅、高座渋谷駅に設置し、市内の全ての駅で貸し出し図書の返却を可能に

するなど、市民の皆様が、身近な場所や、ふとした日常の一コマで、気軽に読書や図

書館とのつながりを感じることができる環境を充実させてまいりたいと思います。

新たな施設の整備に加え、今ある施設の適正な管理、利便性向上も等しく重要です。

昭和59年の開館から、長い間、地域の皆様に愛されております桜丘学習センターは、

新年度、リニューアル工事を実施いたします。利用者の皆様には、改修期間中、ご不

便をおかけいたしますが、ご理解下さいますようお願いいたします。併せて、大和ス

タジアムにおいても、スコアボードのリニューアルを進めてまいります。プレーヤー

はもとより観客の皆様にも、より魅力的な球場となるよう、新年度は更新に向けた設

計を行ってまいります。

本市初のホームタウンチームとなった、女子サッカーチーム「大和シルフィード」

は、今年度、全国への挑戦2年目にして、「チャレンジリーグ」全国2位という好成

績を収めてくれました。その結果、上部リーグである「なでしこリーグ2部」への挑

戦権を獲得、続く入れ替え戦に臨みましたが、惜しくも昇格を果たすことは叶いませ

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んでした。しかしながら、道は、まだ始まったばかりです。シルフィードの選手たち

が大和市の名とともに全国へ力強くはばたいていけるよう、引き続き支援を行って

まいります。

七番目の基本目標は、「市民の活力があふれるまち」でございます。

平成27年の国勢調査結果によると、我が国における一世帯当たりの人員は

2.33人となっており、戦後から続く核家族化の進行と超高齢社会の到来が相俟っ

て、世帯の縮小化を招いています。家族という単位での生活において、介護や子育て

を含めた様々な課題が顕在化してきている状況にあっては、地域における人と人と

の結び付きや、支え合いがますます重要になってくるのではないでしょうか。

自治会は防犯、防災や環境美化など、私たちの暮らしの様々なシーンにおいて活動

されているほか、地域住民の親睦を深める役割も果たされており、住みよいまちの形

成になくてはならない存在です。新年度も引き続き、掲示板の更新などの活動支援を

着実に行うほか、地域の皆様が集まる自治会館については、1館の新設と11館の修

繕費用に加え、新たに施設の耐震診断に係る費用も助成する考えであり、安心してご

活動いただけるよう、しっかりと支えてまいります。

文化創造拠点シリウスへ、その役割を引き継いだ旧図書館、旧生涯学習センターに

ついては、平成30年4月のリニューアルオープンに向けて、新年度も引き続き整備

を進めてまいります。旧図書館には、各種活動を行う市民団体の拠点として活用でき

る大学の部室のようなスペースや、起業を志す市民のワークスペースを整備するほ

か、周囲の利用者と垣根なく自由に交流することのできるフリースペースなどを設

けます。また、現在、他に所在している市民活動センターや、シルバー人材センター、

青少年センター、青少年相談室がこちらの建物に移転するとともに、県人会連合会の

活動拠点を新設いたします。併せて、旧生涯学習センター北館については、現在、市

役所第一分庁舎にて業務を行っている国際化協会とスポーツ・よか・みどり財団が移

転してくるとともに、こちらにも、多目的に利用できるスペースを整備いたします。

このように、旧図書館、旧生涯学習センターは、バラエティに富んだ方々が様々な活

動を行いながら、時に出会い、交差する施設へと変身してまいります。それぞれの施

設、組織が持つ機能が適切に効果を発揮することはもちろん、多彩な市民交流が活発

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に行われることにより、想像もつかない化学変化が生まれることなども期待しなが

ら、開館に向けて着実に整備してまいります。

交流人口を増やすとともに、定住志向を高めるなど、市内で行われる魅力的な

イベントがもたらす効果は多岐にわたるものと捉えています。本市最大のイベント

と言える「大和市民まつり」は、新年度、第40回という、大変おめでたい節目を迎

えます。「笑顔」と「健康」をテーマに、市内外から多くの来訪者を迎えるべく現在

準備が進められている市民まつりが、盛況を博し、本市の大きな賑わいの創出につな

がるよう支援してまいります。

活発な経済活動には、まちの魅力を高め、雇用を生み出すだけでなく、市民の皆様

に買い物や外食の場を提供するなど、暮らしに彩を添える効果も期待されます。本市

では、独創的な商品や新規サービスの開発を支援する「連携型チャレンジ事業」や、

自社製品等のPRに向けた展示会などへの出展に係る費用を助成する「企業活動促

進支援事業」を実施するなど、意欲ある商工業者の支援に向け、様々な取り組みを展

開しているところです。健康都市として歩み続けている本市といたしましては、従業

員に向けた健康づくりなどに取り組んでいる企業を、今後、積極的に応援していきた

いと考えています。そうした市内中小企業に向けましては、新年度から産業人表彰の

対象とし、事業資金融資制度における利子補給や信用保証料の補助率を引き上げて

いくほか、健康増進に関する商品等を展開している企業については、ホームページや

ポスターの作成をはじめとする広告宣伝費用についても助成を行い、「人の健康」と

「社会の健康」を同時に推進してまいります。

市役所のロビー、文化創造拠点シリウスのエントランス、それに健康都市図書館で

お出迎えしている「Pepper」の3人組も、すっかりお馴染みになったのではな

いでしょうか。新年度も引き続き、さがみロボット産業特区の加入後に開始した、生

活支援ロボットの研究開発に関する費用への支援を継続していくほか、ロボット

エンジニアの育成講座を市内企業に向けて開催するなど、技術革新が訪れる未来を

見据えて、取り組みを進めてまいります。

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最後に、基地対策について申し上げます。

戦後の厚木基地の歴史は、昭和20年に連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサー

元帥が厚木基地に降り立ったことに始まります。その後、昭和48年には空母ミッド

ウェイが横須賀に入港し、その艦載機が厚木基地に飛来したことから、基地周辺に甚

大な騒音被害を及ぼすこととなりました。一方、本市は、昭和34年の市制施行後、

高度経済成長期を経て、現在、人口23万人余りの県内でも有数の人口密集都市とな

りました。本市が目覚ましい成長を続けてきた一方で、市民は空母艦載機による耐え

難い騒音被害に昼夜を違わず苦しんでまいりました。この騒音被害につきましては、

これまで四度にわたり騒音訴訟が提起され、その都度、司法の判断は航空機騒音が基

地周辺住民にいかに深刻な影響を及ぼしているかを示すものでした。

本市といたしましても、この航空機騒音問題を市の最重要課題の一つとして位置

づけ、これまで数十年にわたり議会や市民の皆様とともに、その解消に向け様々な取

り組みを進めてきたところでございます。このような中、在日米軍再編に伴い、

平成18年(2006年)に空母艦載機の移駐が示されました。当初、平成26年

(2014年)までに完了するとされたこの移駐は、施設整備等の遅れから

平成29年(2017年)頃になるとされ、市民は未だ甚大な騒音被害に苦しんでお

ります。こうした中、今年1月、米海軍から空母艦載機部隊の段階的移駐が早ければ

今年7月以降に開始され、来年5月頃には完了する予定である旨の発表がございま

した。移駐の具体的時期が示され、移駐実現への道筋が見えたことは、これまでの長

きにわたる取り組みの成果であると捉えております。

しかし一方で、移駐後の厚木基地の運用等については未だ明らかにされておらず、

まだこれに関連する課題等も残されており、移駐の完了までには一定の時間を要す

ると考えております。

厚木基地は、これまでも国内外の安全保障環境等の変化や影響を受け、変貌を遂げ

てまいりましたが、まさに今、我が国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増すばかり

です。アジア太平洋地域においては、中国の海洋進出や北朝鮮による核、ミサイル開

発など、領土・権益をめぐる動きや平和を揺るがす事態が生じています。そして、米

国では新たにトランプ政権が誕生し、大統領就任以来、次々に新たな政策を打ち出す

中、先日の日米首脳会談においては、改めて日米安全保障体制の重要性が再確認され

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ております。こうした米国の、今後の外交・軍事政策の展開に、今、世界の注目が集

まっております。

国内外における社会情勢の変化は、少なからず我が国の外交・防衛政策や在日米軍

等に影響を与えることから、基地対策に取り組む上では幅広い視野を持ち、適宜適切

に対応していくことも肝要と考えます。

本市といたしましては、今後も基地を取り巻く状況を的確に捉えながら、厚木基地

の所在に起因する様々な課題にしっかりと向き合い、まずは今年一年、市民に甚大な

騒音被害を及ぼす空母艦載機の移駐を一日も早く確実に完了させ、市民が騒音被害

の軽減を実感できるよう力を尽くしてまいりたいと考えております。そして、本市の

将来を見据え、安全と安心が感じられるまち、こどもたちが健康で幸せに過ごせるま

ちの実現を使命として、引き続き基地対策に全力で取り組んでまいります。

以上、健康創造都市を実現するための所信並びに主要な事業について、申し述べ

てまいりました。

平成19年に市長に就任して以来、一貫して進めてまいりました健康を基軸とし

た予算編成も、新年度で10年目の節目を迎えることとなりました。この間、本市

が実施する一つひとつの取り組みを健康というキーワードで有機的に結合させ、健

康都市の実現に向け、半歩でも一歩でも前進できるよう市政運営に邁進してまいり

ました。

そのような中、昨年11月、中国、上海において、WHOがヘルス・プロモーシ

ョン国際会議を開催しました。9回目となるこの会議ですが、今回初めて、健康に

力を入れている「都市」がテーマとなり、数多ある我が国の都市の中から、大和市

が招待されました。

世界各国の関係者が一堂に会するこの場に、我が国の自治体の長として唯一出席

した私は、思わず、平成20年にWHOの健康都市連合に加盟し、健康都市の実現

に向けて市政の舵を切ったあの頃へと想いが至り、会議初日の健康都市国際市長

フォーラムにおいて、「健康都市やまと」の取り組みを世界に向けて発信した時に

は、万感胸に迫るものがございました。

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本市の健康都市の取り組みについては、近年、国内外から高い評価をいただくよ

うになりましたが、健康都市を実現していくためには、議員や市民の皆様のご理解

とご協力があって初めて可能になるものでございますので、これまでの評価に甘ん

じることなく、今後も、市民にとって真に必要な施策をしっかりと見極めながら、

住んでいて楽しい、住んでいて良かったと思われるまちづくりに向けて、全力を注

いでまいる所存でございます。

今後とも、議員並びに市民の皆様のさらなるご理解とご協力を賜りますようお願

い申し上げて、平成29年度の施政方針といたします。