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平成29年度 特許出願技術動向調査報告書(概要) リチウム二次電池 平成30年2月 問い合わせ先 特許庁総務部企画調査課 知財動向班 電話:03-3581-1101(内線:2155)

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平成29年度

特許出願技術動向調査報告書(概要)

リチウム二次電池

平成30年2月

特 許 庁

問い合わせ先

特許庁総務部企画調査課 知財動向班

電話:03-3581-1101(内線:2155)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第1章 調査概要

第1節 調査目的

リチウム二次電池は、1990 年代に上市され、現在、携帯電話やモバイル機器を中心に広く

用いられている電池である。また近年、容量の増大化とともに、高付加価値特性の向上、さ

らなる安全性確保の研究も進んできたことで、HV(ハイブリッド自動車:Hybrid Vehicle)、

EV(電気自動車:Electric Vehicle)等、自動車のエネルギー供給デバイスの一つとしても

実用化され、定置用電源等、様々な用途に用いられるようになっている。

平成 21年度、平成 24年度にリチウム二次電池に関する特許出願技術動向調査を行ったが、

その後 5 年の間にも、さらにリチウム二次電池に関する注目度は増しており、各方面から特

許出願動向、研究開発動向、各国の戦略の動向に関し、更新調査の必要性が指摘されている

ところである。

このような背景のもと、リチウム二次電池に関する特許の動向を調査し、技術革新の状況、

技術競争力の状況と今後の展望について検討する必要がある。

そこで本調査では、国内外の技術発展状況、研究開発状況を含む技術動向を明らかにし、

日本及び外国の技術競争力、産業競争力を明らかにし、日本企業や政府機関が取り組むべき

課題を整理し、今後目指すべき研究開発の方向性を明らかとすることを目的とする。

第2節 技術概要

1.技術の変遷

(1) リチウム金属、リチウム合金を用いた初期の研究

リチウム二次電池の研究開発は、プロピレンカーボネート(PC)を溶媒とする電解液か

らリチウムが電析されることをはじめて示した米国カリフォルニア大学(バークレー校)、

W.R.Harris の博士論文(1958 年)まで遡ることができる。

1970 年代リチウム一次電池として実用化された。しかし、二次電池とするためには充電

中、負極上に生成するリチウムデンドライトに起因する安全性と寿命に関わる問題が解決

できなかった。

電解質に関しては、1975 年、英国シェフィールド大学の P.V.Wright によって、ポリエ

チレンオキシド(PEO)にリチウム塩を溶解させた固体電解質が見いだされた。1979 年

にはフランスの国立科学研究センター(CNRS)の M.B.Armand がリチウム金属電池にこ

れを適用したが、常温での伝導度が不十分で、実用的な電流を取り出すためには PEO の

溶融温度(約 65℃)以上に加温する必要があった。

(2) リチウムイオン電池の登場と大型化、高容量化

携帯電話やノートパソコンなどで現在使用されているリチウムイオン電池に直接繋がる

研究は、1979 年当時、英国オックスフォード大学に在籍していた J.B.Goodenough、水島

らが、コバルト、またはニッケルとの層状複酸化物をリチウム電池正極として用いること

を提案したことに始まる。彼らが提案した層状岩塩型構造をもつ LiCoO2、LiNiO2は、有

機電解液中で基本構造を保持したままリチウムイオンを電気化学的に吸蔵、放出するイン

サーション化合物であり、高い電位(3~4 V)と可逆性を示した。彼らの提案は、その後

のリチウムイオン電池の正極活物質開発の主要テーマとなり、多くの研究者が参入するこ

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資料編

第6部

ととなり、現在に至っている。

その後、1991 年にソニーから、正極に LiCoO2、負極にコークスを用いたリチウムイオ

ン電池が世界で初めて市販され、同社製の家庭用ビデオカメラ、携帯電話などに利用され

た。この電池で適用されたアルミニウム箔正極集電体、ポリオレフィン微多孔膜セパレー

タなどは、現在でもすべてのリチウムイオン電池に共通して使われている基本技術となっ

ている。

電池のエネルギー密度は毎年増加を続け、円筒型(18650 型)で比較すると、発売当初は

900mAh ほどの容量であったが、現在は 3500mAh を超えるものが市販されるようになっ

ている。

時代は前後するが、1997 年に米国テキサス大学では、Goodenough らがオリビン型構造

を有するリン酸鉄リチウム(LFP)を正極材料に用いることを開示していた。

米国 MIT の Y.M.Chiang らが、ナノレベルに微細化された LFP 粒子表面を炭素で被覆

することによって、実用的なレベルまで導電性が付与できることを示してから、急速に実

用化へ向かって開発が進められた。この LFP の容量は大きくないものの、酸素がリン原子

と共有結合しているため、発熱時における安全性に優れている。現在の代表的なメーカー

は台湾 Changs Ascending Enterprise Co., Ltd. (CAEC)、中国 China Sun Group、中国

BYD 等で、中国での電気自動車向けに量産されている。

負極においては、黒鉛質、非晶質の炭素系材料が使われてきたが、正極材として開発さ

れたスピネル型 Li4Ti5O12(LTO)系が負極にも適用されるようになった。2008 年東芝に

よって導電性向上を図った LTO を負極活物質とするリチウムイオン電池の量産が開始さ

れた。良好なサイクル特性だけでなく、金属リチウムの析出の恐れのない負極電位のため、

急速充電が可能であり、安全性にも優れていると考えられている。2012 年までに本田技研

や三菱自動車の電気自動車に搭載された。

近年は、Si 系材料を負極に適用する研究が盛んになってきている。黒鉛負極の理論容量

が 372mAh/g であるのに対し、シリコン負極は 4200mAh/g もの非常に高い理論容量を示

す。資源も豊富に存在することから、これまで多くの研究開発がなされている。

(3) 革新的な電池材料

リチウムイオン電池は他の電池に比べて多くの利点を持つ。しかし、安全性に関しては

重大な問題を抱えており、可燃性有機溶媒を用いることにその原因がある。そのため、固

体電解質や難燃性のイオン液体に関する基礎研究が続けられてきたが、近年、ブレークス

ルーとなる重要な発見が相次いでいる。

無機固体電解質の研究の歴史は古く、リチウムヨウ素電池は、1968 年に米国 Catalyst

Research 社によって発明され、米国 Wilson Greatbatch 社と共同開発によって完成した。

2000 年代半ばになって実用レベルのイオン伝導性を持つ化合物が相次ぎ報告されるよ

うになり、現在は有機電解液のイオン伝導度を凌駕するようになっている。2005 年、大阪

府立大学の辰巳砂らによって、Li2S-P2S5 ガラスの熱処理から準安定相 Li7P3S11 が発見さ

れた。さらに 2011 年、東京工業大学の菅野らはトヨタ自動車との共同研究によって、チ

オリシコン系から新たな三次元構造を有する Li10GeP2S12 のような液体系と同等のイオン

伝導度(27 ℃で 0.012S/cm)を示す化合物を発見した。その後も希少元素ゲルマニウム

を含まない Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3(27 ℃で 0.025S/cm)が報告され、イオン伝導性はす

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第4部

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第6部

でに実用域に達している。

実用電解液の電解質濃度は 1mol/L ほどであるが、飽和濃度に近い溶質を溶解させた高

濃度電解液の特異な電気化学的性質が多くの革新的リチウム電池のかかえる問題を解決で

きるのではないかと関心が高まっている。

2010 年、横浜国立大学の渡辺らは、グライム(CH3(OC2H4)xOCH3)(GX)と同モル量

のイオン性液体との混合で得られる、[Li(G3)1][TFSA]などを「溶媒和イオン液体」と

名付け、耐高電圧性や正極におけるアルミニウム集電体の腐食抑制、Mn 系遷移金属酸化

物の Mn イオン溶出や硫黄(理論容量 1670mAh/g)からのポリスルフィド溶出抑制、さ

らに、負極のリチウムデンドライト生成も生じ難いなどの多くのメリットがあることを示

した。

近年、東京大学の山田らは PC、グライムに限ることなく、アセトニトリル系

(LiN(CF3SO2)2/AN)をはじめとし、水に至るまでさまざまな溶媒、電解質の組み合わせ

における高濃度領域において、様々な電解液の電池に好ましい電気化学的性を有すること

を見い出している。

2.技術俯瞰

(1) リチウム二次電池の分類

図 1- 1 にリチウム二次電池の技術俯瞰図を示す。

図 1- 1 リチウム二次電池の技術俯瞰図

応用産業

産業用(定置型等)(負荷平準・電力貯蔵・産業機器)

車載用(電気自動車・ハイブリッド車)

小型民生用(携帯電話・ノートPC)

リチウムイオン電池(高エネルギー密度、メモリー効果無し)

次世代リチウム二次電池(空気電池は対象外)

全固体電池、Li-S電池、Si系負極、高濃度電解液、他

リチウム二次電池の技術俯瞰図

エネルギー密度Up

安全・長寿命

課題 (a)容量、出力特性の向上 (b)信頼性、安全性の向上 (c)低価格化

外装 (a)(b)

正極活物質(a~c)

バインダ(b)

導電助剤(a)

集電体(Al) (b)

電解質(a)(b)

セパレータ(b)(c)

負極活物質(a)(c)

バインダ(b)

導電助剤(a)

集電体(Cu)(b)

正極 負極

単電池(汎用)

設計・製造技術(構造、部材製造、組立、…)

電極・電極タブ・端子構造、単電池封止・絶縁、単電池・モジュール格納容器、冷却・放熱構造、直列・並列組合せ、耐振動・耐衝撃構造、部材・単電池・モジュールの生産性向上、他

制御技術(充放電管理、暴走防止、…)

安全弁・圧力検知、温度検知・制御、電圧電流検知・制御、他

モジュール(高電圧、大容量)

装着・モジュール (b)

巻回型

材料技術(電極活物質、電解質、セパレータ、… )

電極活物質(LNO、三元系、LMO、LNMO、LCO、LFP、Si系、黒鉛質炭素、非晶質炭素、LTO、他)、電解質(有機溶媒系、固体電解質、他)、セパレータ(ポリオレフィン系、他)、他

積層型

構造・構成要素(技術

分)

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第1部

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第4部

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第6部

リチウム二次電池はその形状や外観から分類することができ、「コイン、ボタン型」、「円

筒型」、「角型」、「パウチ型」、「その他」に分けられる。携帯電話、ノートパソコンなどの

ポータブル機器や電動工具などでは、円筒型(18650 型)、角型、ラミネート袋を外装に

用いたパウチ型などが用いられ、単セル、もしくは小型の電池パックとして提供されてい

る。また、近年は電動車両や電力貯蔵用途に 10kWh を超える大型モジュールが実用化さ

れている。

リチウム二次電池は、「リチウムイオン電池」、「リチウム金属電池」に分けられる。「リ

チウムイオン電池」なる用語はリチウムの電子状態が充放電を通じて、特に負極上におい

ても常にイオン状態であることに由来する。

(2) 電池特性、安全性、コスト

二次電池に求められる主な電池特性には、容量特性、出力特性、寿命特性がある。容量

特性は、電気量[Ah]で示される場合もあるが、電池の重量当たりのエネルギーの大きさ

(重量エネルギー密度)や体積当たりの大きさで(体積エネルギー密度)で評価され、そ

れぞれ Wh/kg、Wh/L という単位で表される。容量特性は、正負電極活物質固有の物性に

大きく依存するため、電極活物質自体の改良が盛んに行われてきたが、他の電池部材の軽

量化、たとえば、集電体の薄型化や筐体内への電極部材の収納方法などによっても向上が

図られている。

寿命特性はサイクル寿命(充放電可能回数)とカレンダー寿命(経時劣化)に分けられ

る。前者は充放電サイクルに伴う活物質の電気化学的可逆性と結晶構造変化の可逆性など

に支配され、後者はもっぱら構成材料の化学的安定性に依存している。

安全性はリチウム二次電池にとっては深刻かつ重要な技術課題といってよい。リチウム

二次電池はエネルギー密度が高く、可燃性の有機溶媒を用いているため多重の安全対策が

施されている。市販の単電池には PTC(Positive Temperature Coefficient)素子が、単電

池及びバッテリーパック、モジュールには保護回路が設けられている。保護回路では過充

電保護電圧、過放電保護電圧、充放電中の過電流保護電流などが設定される。

また、コスト低減も重要な課題である。車載用リチウム二次電池のように大型電池につ

いては、普及のために重要な課題である。民生用小型電池は、小型民生用電池についても

携帯機器の広い普及と韓国、中国の電池メーカーとの価格競争によって相当な価格低下が

見られるため、やはりコスト低減が重要な課題である。

(3) 単電池の製造技術

実用化当初から市販されている一般的なリチウム二次電池では、正極活物質にコバルト

酸リチウム(LiCoO2)、負極活物質に黒鉛質炭素(グラファイト)を、電解質は環状、鎖

状のカーボネート系混合溶媒に六フッ化リン酸リチウムを溶解させた非水電解液を含浸さ

せて用いている。

正極板は、正極活物質と導電助剤(カーボンブラックなど)、結着剤、ポリビニリデンフ

ロリド(PVDF)などを N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散させたスラリーを集

電体となるロール状のアルミ箔に連続塗布した後、これをプレス、裁断、乾燥させて製造

する。負極板も負極活物質に炭素、集電体として銅箔を用いる以外は正極板と同様な製造

プロセスとなる。しかし、最近は結着剤としてカルボキシメチルセルロース-スチレン・

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ブタジエン・ラバー(SBR)を使用した水溶液系のスラリーが負極板製造工程で用いられ

ることが多くなり、さらに正極への適用も始まっている。

各電極は乾燥後、電極タブが取り付けられ、セパレータとともに積層、または巻回され、

筐体に収納される。この際の電極構造により巻回型と積層型に分類される。

(4) 正極

現在、正極活物質に用いられている遷移金属酸化物は、コバルト酸リチウム(LCO)、

Ni の一部を Co、Al に置換したニッケル酸リチウム(NCA)、スピネル型マンガン酸リチ

ウム(LMO)、そのMnの一部をNiに置換したニッケル置換マンガン酸リチウム(LNMO)、

ほぼ同量の Ni、Co、Mn を含有する三元系型(NCM)、および、オリビン型リン酸鉄リチ

ウム(LFP)がある。

次世代酸化物正極としては固溶体系遷移金属酸化物(Li2MnO3(=Li[Li1/3Mn2/3]O2)と

LiMO2、(M=Ni、Co、Fe、Mn)などとの固溶体)(=リチウム過剰系)、硫黄化合物、高

分子化合物、フッ化鉄のようなコンバージョン型化合物がある。いずれも基礎研究段階に

ある。

(5) 負極

負極活物質は依然として黒鉛質材料が主流であるが、黒鉛上での電解液の分解の抑制や、

出力特性改善のために非晶質炭素による黒鉛の被覆や混合などが継続的に行われてきてい

る。しかし、理論上、黒鉛質炭素はこれ以上容量の向上が望めないため、非晶質炭素や Si

系材料との複合化等が進められている。

大型電池用としてスピネル型チタン酸リチウム Li4Ti5O12(LTO)が導電性を付与した

うえで実用化されている。この活物質は炭素負極に対して 1.5Vほど貴な電位であるため、

リチウム金属の析出の恐れがなく、満充電まで大電流で充電することができる。

他の高容量材料としては、酸化鉄(Fe2O3)のようなコンバージョン型負極材料が注目

を集めている。

(6) 電解質

リチウム電池用電解液に対しては、混合溶媒が利用されている。典型的な混合溶媒は誘

電率が大きく、リチウム塩の解離能力の高いエチレンカーボネートやプロピレンカーボネ

ートと、低誘電率であるが粘性の低いジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エ

チルメチルカーボネート等を適当な比率で混合したものが使用されている。溶質としては

六フッ化リン酸リチウムが用いられている。

無機固体電解質も全固体電池を実現するための重要な要素技術であり、主要なものは酸

化物系化合物と硫化物系化合物がある。硫化物系の方がイオン伝導度は高く、室温におい

て電解液のイオン伝導度を上回る化合物が見つかっている。

実用化されている電解液の電解質濃度は 1~1.5mol/L ほどであるが、飽和濃度に近い電

解質を溶解させた高濃度電解液は特異な電気化学的性質を示す。既存の有機電解液と比べ

て高濃度電解液は低い揮発性、難燃性を示す溶媒和イオン液体、および、高濃度電解液は、

グライム(GX)と同モル量のイオン性液体トリスルホニルとの混合で得られる[Li(G3)1]

[TFSI]やアセトニトリルに高濃度LiN(CF3SO2)2を溶解させたLiTFSI/ANなどがある。

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(7) セパレータ

セパレータは正極板と負極板の間におかれる電気絶縁性の膜で、電解液をその細孔に含

浸、保持させることでイオン伝導性が付与される。有機電解液は水溶液と比較してイオン

伝導度が低く、電池内部抵抗を下げるためにセパレータは 20μm程度の薄膜であることが

要求される。他にも耐酸化性、耐還元性、電解液との親和性、耐溶剤性も要求される。

その要求をもっとも満足するセパレータは、延伸加工したポリオレフィン製の微多孔膜

とされている。製造方法によって、湿式と乾式に分類される。

また、ポリオレフィン製セパレータは、何らかの理由で電池が発熱した場合、PE の融

点 130℃を超えた温度で溶融し、細孔が塞がるためイオン導電性を失い、正負極を電気的

に孤立させることができる。これはシャットダウン機能と呼ばれ、異常時の安全性を確保

するための重要な機能である。

特に電池の大型化、高容量化に対応して、湿式セパレータにチタニアなどのセラミック

微粒子を混合したり、表面を耐熱性のある樹脂や微粒子を用いてコーティグすることで安

全性を高めることは必須である。

(8) モジュール

電池使用機器に応じて必要な電圧、容量を確保するために、複数の電池(単セル)を直

列、並列に組み合わせた組電池(電池パック、電池モジュール)が用いられる。

エネルギー密度を高めるためには、限られたスペースの中に多数の電池をできる限りコ

ンパクトに収納しなければならないため、充放電で発生した熱をモジュール外部へ導くた

めの放熱経路が重要とされる。放熱には冷媒を循環させる方法が優れているが、コストや

保守面では受動的な冷媒を用いない構造も用いられている。

単電池を直列結合した場合に問題となるのがセルバランスである。単セルの容量をすべ

て同じように製造することは難しく、単セルごとに数%のバラツキがある。また、劣化の

進行度合いも単セルごとに異なる。したがって、単セル一つひとつすべてを規定の充放電

電圧内で安全に制御するためにはすべての単セルをモニターし、バイパス回路等も設けら

れるが、そのコスト削減が求められている。

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第2章 市場環境調査

第1節 リチウム二次電池の市場動向

2015 年の世界の二次電池(リチウム二次電池、NAS 電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池

など)の市場規模は約 6.5 兆円であり、そのうちリチウム二次電池の市場規模は約 2.1 兆円

である。二次電池全体の市場規模は 2020 年には約 8.1 兆円になり、そのうちリチウム二次

電池は約 3.2 兆円になると予想されている1。

二次電池市場全体の規模(金額ベース)は、今後も拡大すると予想される。モバイル端末

の生産台数はノートブックパソコンやタブレット端末が減少傾向にあり、多くの二次電池メ

ーカーは車載用途や産業用途の市場拡大を期待している。数量ベースでの拡大が大きいため、

単価の下落があるものの、市場規模(金額ベース)でも大きく拡大すると考えられる。特に

今一番期待されているのが、車載用のリチウム二次電池であり、車載用途のシリンダー型、

車載専用タイプとも大幅な市場拡大が期待されている。2017 年~2018 年にかけて多くの自

動車メーカーが電動自動車(EV、HV、PHV など)のラインナップを拡充させることや中国

政府が電動自動車の普及に本腰を入れていることが、この市場拡大の背景にある。

小型民生用電池はノートブックパソコンやタブレット端末が市場縮小していくと予測され

る一方、小型民生用電池でも、ラミネート型については、スマートフォン、あるいはブルー

トゥースヘッドセットやウエアラブルデバイスなどの新規用途で需要が増加している。

車載用電池は、世界的な環境対応車需要の増加により大きく拡大を続けるとみられる。中

国が国策として電動自動車の普及に注力しており、中国市場が車載用電池の拡大を後押しし、

2020 年には小型民生用電池の市場規模を上回る見通しである。中国政府は、補助金などによ

って中国製電池を搭載する EV や PHV の普及促進を進めており、中国電池メーカーが中心

の市場構造となっている。

産業用電池(定置用蓄電池、無停電電源装置)についても今後の期待感が年々増している。

リチウム二次電池の用途別の市場規模推移を図 2- 1 に示す。

1 株式会社富士経済 「2016 電池関連市場実態総調査 上巻」(2016 年 7 月発行)

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図 2- 1 リチウム二次電池の用途別市場規模推移(金額ベース)

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

2014年

(実績)

2015年

(実績)

2016年

(予測)

2017年

(予測)

2018年

(予測)

2019年

(予測)

2020年

(予測)

(億円)産業用

車載用

小型民生用

(出典:株式会社富士経済 「2016 電池関連市場実態総調査 上巻」

(2016 年 7 月発行)を基に作成)

第2節 リチウム二次電池メーカー動向

2016 年のリチウム二次電池の出荷量シェアは、1 位パナソニック(22.8%)、2 位サムスン

SDI(20.8%)、3 位 LG 化学(14.0%)、4 位 ATL2(新能源)(10.8%)、5 位ソニー(7.9%)の順と

なった。米テスラモーターズの EV 向け販売が伸びたパナソニックのシェアが 1 位に上昇し

た。リチウム二次電池の世界シェア(2016 年)を図 2- 2 に示す。

図 2- 2 リチウム二次電池の世界シェア(2016 年)

パナソニッ

ク,

22.8%

サムソン

SDI,

20.8%LG化学,

14.0%

ATL,

10.8%

ソニー,

7.9%

その他,

23.7%

(出典:日経産業新聞 2017 年 6 月 26 日を基に作成)

2 2011 年に小型民生用電池メーカーATL から CATL が分離独立した。CATL は車載用電池を得意としている。

ATL シェアには CATL は含まれていない。

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第3章 政策動向調査

リチウム二次電池の用途は大きく分けて、①小型民生用(ノートパソコン、携帯端末など)、

②車載用(ハイブリッド自動車、電気自動車など)、③産業用(電力貯蔵システム用、未停電電

源装置用、バックアップ電源用など)となる。

第1節 日本の政策

①小型民生用リチウム二次電池に関する研究開発は、1980 年代から民間主導で行われてき

た。

一方、②車載用リチウム二次電池や③産業用リチウム二次電池に関する研究開発は、経済

産業省、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を中心とし、内閣府、文部科学省、

日本学術会議(JSPS:科学研究費補助金)、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推

進事業の各種競争的研究資金によって蓄電技術の一部として実施されてきた。

2017 年 6 月に閣議決定された「未来投資戦略 2017」では、エネルギー・環境制約の克服

と投資の拡大のために「2030 年までに乗用車の新車発売に占める次世代自動車の割合を 5~

7 割とすることを目指す」としている。この戦略の中で、車載用蓄電池については現在の液

系リチウム二次電池よりも安全面で性能が高い全固体リチウム二次電池等の開発・実用化を

加速することが記載されている。さらに、この戦略の中期工程表において、国内企業による

先端蓄電池の市場獲得規模を、2020 年には年間 5,000 億円(世界市場の 5 割程度)を目指

すとしている。また、産業用である系統用蓄電池のコストを半分以下(2.3 万円/kWh 以下)

にするとしている。

日本の基礎研究や応用研究については、科学技術振興機構(JST)による「研究開発の俯

瞰報告書ナノテクノロジー・材料分野(2017 年)」(2017 年 3 月発行)に次のように記載さ

れている。

「日本の基礎研究は、次世代リチウム二次電池、ポストリチウム二次電池ともにトップレ

ベルを維持している。独創性の高い材料開発や高度解析技術開発では欧米に遅れをとってき

たが、大型のプロジェクトの設置により、独創性の高い材料開発や高度解析技術開発も欧米

並みに進んできている。これらのプロジェクトではポストリチウム二次電池開発がメインで

あり、次世代リチウム二次電池の基礎研究は他国に少し遅れを取り始めているので注意が必

要とされている。

また、日本の応用研究はおもに電池メーカー、自動車メーカー、材料メーカーで行われて

おり、現状ではトップレベルにあるが、学界での研究はほとんどなされていない。次世代リ

チウム二次電池やポストリチウム二次電池の実用化に際しては、企業と大学との共同研究の

連携により、学界で見いだされた新材料、新技術を産業に結びつける仕組みの強化が必要と

されている。」

さらに、日本の産業化については、定置用および車載用や電力貯蔵用途も含め、標準品か

らハイエンドに至るまで幅広い実製品化を行っており、材料メーカーの参画も含め世界的に

最も産業化が進展している。世界で市場が急拡大しており、今後はより高いレベルでの産業

化が必要である。足元の LIB(リチウムイオン電池:Lithium-Ion Battery)の低コスト高

性能化のみならず、次世代二次電池の開発・実用化についても、産官学が連携し研究成果の

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

迅速な実用化展開が必要となるが、多くの関係組織の力の統合を促進する政策が必要となっ

ている。

内閣府では、平成 28 年 1 月に閣議決定された「第 5 期科学技術基本計画(平成 28 年度~

平成 32 年度)」においては、新しい価値やサービスが次々と創出される「超スマート社会」

を世界に先駆けて実現するための一連の取組を更に深化させつつ「Society 5.0」として強力

に推進することが記載されている。これを受け、平成 29 年 6 月に閣議決定された「科学技

術イノベーション総合戦略 2017」では、エネルギーバリューチェーンの最適化技術として「電

気エネルギーを有効に貯蔵する次世代蓄電技術」が採り上げられている。第 5 期科学技術基

本計画(Society 5.0)では内閣府の「エネルギー・環境イノベーション戦略」と連携し、次

世代二次電池として「全固体電池」を採り上げている。

文部科学省では、温室効果ガス排出の低減を目指し低炭素技術開発に特化した研究プログ

ラムである先端的低炭素化技術開発(ALCA:Advanced Low Carbon Technology Research

and Development Program )が実施されている。 JST の ALCA 次世代蓄電池

(ALCA-SPRING:ALCA-Specially Promoted Research for Innovative Next Generation

Batteries)は、ALCA の特別重点技術領域として、平成 25 年に発足した。ALCA-SPRING

は、各々の電池について、活物質・電解質・セパレータなどの個別材料や要素技術の開発、

メカニズムの解明にとどまらず、蓄電池として最大のパフォーマンスが発揮できるよう、電

池の最適化研究を重視して研究開発が遂行されている。

経済産業省では、「エネルギー基本計画」(2014 年 4 月 11 日閣議決定)において、「技術

開発ロードマップ」を策定することが明記され、「環境エネルギー技術革新計画」(2013 年 9

月総合科学技術会議決定)等も踏まえ、「技術開発ロードマップ」が 2014 年 12 月に策定さ

れた。このロードマップでは、当該技術を必要とする背景を明確にするとともに、社会への

実装化に向けた課題を整理することで、各技術開発に関する政策上の位置付けを明確化し、

実現可能性をしっかりと踏まえることで、現実的なエネルギー政策の企画・立案に寄与でき

る戦略の策定を目指した。また、リチウム二次電池のロードマップとしては、2010 年 5 月

に策定された「NEDO 二次電池技術開発ロードマップ(Battery RM2010)」がある。これは

2013 年 8 月に改定され、「NEDO 二次電池技術開発ロードマップ 2013(Battery RM2013)」

として策定された。

第2節 海外の政策

米国 DOE(エネルギー省:Department of Energy)において、EFRCs(エネルギー先端

研究センター:Energy Frontier Research Centers)や ARPA-E(エネルギー高等研究計画

局:Advanced Research Projects Agency-Energy)、エネルギー・イノベーション・ハブ

(battery & energy storage hub)など、基礎から応用・実証に至るまでの研究開発が戦略

的に推進されている。グリーン政策の影響もあり、スマートグリッドなど再生可能エネルギ

ーの負荷平準化などに利用する大規模定置型蓄電池の研究開発が盛んである。米国の基礎研

究は、DOE を中心に大きな研究費が配布されており、多くの研究者が参画している。米国

では LIB の研究よりも、次世代二次電池に関わる基礎研究が盛んである。米国国内の国立の

研究所のほとんどが多かれ少なかれ研究を行っており、大きな基礎研究体を形成している。

特にアルゴンヌ国立研究所は DOE と密接に関係し米国の基礎研究をマネジメントしている。

DOE における車載用蓄電池の技術開発については、技術の成熟度の高いものから順に、VTO

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

(自動車技術局:Vehicle Technology Office)、ARPA-E、SC(科学局:Office of Science)

が担当している。

欧州では EU 連合の中で電池プロジェクトが立ち上がっている。また、ドイツやフランス

などでは個別に自国の電池研究をバックアップしている。これまで基礎研究面では、世界的

な潮流を作る新しい電極材料の発明、インターカレーション反応や相変化型電極反応などの

固体電気化学分野での新しい現象の発見などは、欧米の研究機関から出てきているものが多

い。欧州の基礎研究は、LIB およびポスト LIB について、各国が協力して基礎研究を進めて

いる。欧州共同体として強みを生かしたプロジェクトがあり、材料を中心に基礎研究が進展

しているといえる。EU においては、欧州委員会、欧州投資銀行、産業界等から官民パート

ナーシップ「欧州グリーンカー・イニシアティブ」(EGCI:European Green Cars Initiative)

に対して拠出される資金を使い、数多くの車載用蓄電池の技術開発プロジェクトを推進して

いる。

中国は、電池の「生産大国」から「技術強国」へ転換しようとしている。そのために、2017

年 2 月 8 日に中国化学と物理電源産業協会が 2016~2020 年までの「電池産業 5 カ年計画」

を公表した。この計画では、(1)2020 年までに電池製品の生産高を 4000~5000 億元(約 6

兆 4000 億円~8 兆円)に向上させ、年間平均成長率を 10~20%にする、(2)鉛蓄電池の成

長率を 10~20%、リチウム二次電池は 20~30%にする、(3)電池の輸出額は年間平均で 10

~15%増加させ、その中でリチウム二次電池の比率は 55%にする、といった目標を定めてい

る。また、年間売上高が 500 億元(約 8000 億円)を超える企業を 5 つまで育てる計画であ

る。中国におけるリチウム二次電池の研究開発プロジェクトは、1986 年に始まった国家ハイ

テク研究発展計画(863 計画)の中で実施されてきた。この計画は中国政府における五カ年

計画の中の科学技術主体計画の中に組み込まれており、2006 年から、第 11 次五カ年計画

(2006~2010 年)が実施された。2011 年からは第 12 次五カ年計画(2011~2015 年)が実

施された。

韓国では、WPM (World Premium Material)において電池開発のプログラムが進められ、

サムソンを中心に研究が進展している。日本での NEDO の RISING プロジェクトなどに比

べて、韓国ではより電池システム側に立った研究開発が進展しているようであり、日本のプ

ロジェクトとは異なる面を有する。韓国の基礎研究は、ポスト LIB 系について、Li-S 系など

で独創的な基礎研究が行われている例があるが、国の政策は産業化への重点化が見られる。

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第3部

第4部

第5部

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第6部

第4章 特許出願動向

第1節 調査の方法

特許情報データベースは、米国クラリベイト・アナリティクス社が提供する Derwent

Innovation (Thomson Innovation から 2017 年 5 月に改名)を用いた。対象期間は優先権

主張年ベースで 2009~2015 年とした。出願先国(地域)は、日本、米国、欧州、中国、韓

国および PCT 出願とした。該当件数はファミリーで 60,903 件。国内外の内訳は、国内パテ

ントファミリーが 28,620 件、日本を含まないパテントファミリーが 32,283 件である。

技術区分解析にあたっては、日本公報または英語公報があるパテントファミリーについて

は、一次文献である明細書まで詳細解析し、その他の言語の公報しかないパテントファミリ

ーについては Derwent Innovation の英文抄録と代表図面及び明細書の図面を解析する他、

発行国によっては適宜明細書の自動翻訳結果を援用した。

第2節 全体動向

1.日米欧中韓への出願動向

調査対象期間(優先権主張 2009~2015 年)における、リチウム二次電池に関する特許の

日米欧中韓への出願先国別出願件数推移及び出願件数比率を図 4- 1 に示す。日米欧中韓への

出願件数合計は 93,467 件である。出願先では日本への 28.4%と中国への 27.3%が首位を競

っており、次いで米国 17.4%、韓国 15.7%、欧州への出願が 11.2%と続いている。合計件数

の推移は増加傾向にあるものの、2011 年以降は伸び率が鈍化している。個別の出願先国別の

推移は、日米欧が頭打ちになっている一方、中韓は増加傾向にある。

図 4- 1 出願先国別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願)

9,974

12,427

14,74915,772 16,017

13,843

10,685

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

20,000

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 合計

出願先国・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本

26,569件

28.4%

米国

16,232件

17.4%

欧州

10,496件11.2%

中国

25,537件

27.3%

韓国

14,633件15.7%

合計

93,467件

日米欧中韓への出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率を図 4- 2 に示す。日本国籍が

45.1%と最多で、韓国籍 20.4%、中国籍 16.8%、欧州国籍 9.5%、米国籍 6.8%が続く。アジ

ア勢が中心で、日中韓で約8割を占めている。個別の出願人国籍別推移を見ると、日本国籍

は 2011 年の 7000 件台から 2013 年の 6000 件台へと減少傾向になっている一方、中韓は増

加基調を保っている。米欧は横ばい傾向にある。

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図 4- 2 出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願)

9,974

12,427

14,74915,772 16,017

13,843

10,685

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

出願人国籍・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本国籍

42,181件45.1%

米国籍

6,319件

6.8%

欧州国籍

8,882件

9.5%

中国籍

15,667件

16.8%

韓国籍

19,065件

20.4%

その他

1,353件1.4%

合計

93,467件

日米欧中韓への出願先国別-出願人国籍別出願件数を図 4- 3 に示す。日本国籍の出願を初

めとして米国籍、欧州国籍、韓国籍の出願は出願先が幅広い地域となっているのに対して、

中国籍の出願は自国向けが主で他地域への出願が極めてすくないことが対照的である。

図 4- 3 出願先国別-出願人国籍別出願件数(日米欧中韓への出願)

22,846

6,710

2,916

5,956

3,753

636

2,938

1,040

1,092

613

945

1,614

4,191

1,323

809

191

582

171

14,609

114

1,761

3,864

1,984

2,245

9,211

190

524

194

312

133

出願先国(地域)

出願人国籍(地域)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

日本

米国

欧州

中国

韓国

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2.出願先国別-出願人国籍別の出願件数収支

日米欧中韓で出願先国別-出願人国籍別出願件数収支を図 4- 4 に示す。矢印の太さは件数

に比例している。日本が他の全ての国との間で収支がプラスであり、特に米国・中国につい

ては収支のプラスが著しく、かつ件数の絶対値も大きい。対照的に中国は全ての国との間で

収支がマイナスである。韓国は、日本以外の 3 地域に対してプラス収支であり、中でも米国

に対する出願はプラス収支幅も件数の絶対値も大きい。米国からは欧州・中国への出願が日

韓へよりも多く、また欧州からは米国・中国への出願が日韓への出願より多い。米国・欧州

は、いずれも欧米中の 3 地域を重要視していることが伺える。

中国から他の国・地域への出願は極めて少なく自国向けがほとんどである。

図 4- 4 出願先国別-出願人国籍別出願件数収支

日本国籍

3,753件

25.6% 米国籍

613件

4.2%

欧州国籍

809件

5.5%中国籍

114件

0.8%

韓国籍

9,211件

62.9%

その他

133件

0.9%

韓国への出願

14,633件

1,984件

809件

日本国籍

5,956件

23.3%

米国籍

1,092件

4.3%

欧州国籍

1,323件

5.2%

中国籍

14,609件

57.2%

韓国籍

2,245件

8.8%

その他

312件

1.2%

中国への出願

25,537件

2,245件

171件

114件

1,323件

日本国籍

2,916件

27.8%

米国籍

1,040件

9.9%

欧州国籍

4,191件

39.9%

中国籍

171件

1.6%

韓国籍

1,984件

18.9%

その他

194件

1.8%

欧州への出願

10,496件

日本国籍

22,846件

86.0%

米国籍

636件

2.4%

欧州国籍

945件

3.6%

中国籍

191件

0.7%

韓国籍

1,761件

6.6%

その他

190件

0.7% 日本への出願

26,569件

6,710件

5,956件

3,753件

2,916件

1,761件

945件

636件

191件

日本国籍

6,710件

41.3%

米国籍

2,938件

18.1%

欧州国籍

1,614件

9.9%

中国籍

582件

3.6%

韓国籍

3,864件

23.8%

その他

524件

3.2%

米国への出願

16,232件

3,864件

1,614件

1,040件

1,092件

613件

582件

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3.出願人別動向

2009~2015 年に日米欧中韓に出願された 93,467 件のファミリー件数 52,794 件を母集団

とする出願人別ファミリー数上位ランキングを表 4- 1 に示す。首位 LG 化学は 3,501 件、2

位トヨタ自動車の 2,896 件、以下 Samsung Group3の 2,322 件、パナソニックグループ4の

1,974 件、豊田自動織機の 1,137 件と上位 5 社が 11,830 件を出願し、全体の 22.4%を占めて

いる。出願人の国籍を見ると、上位 20 位中、日本国籍が 13 社と 6 割以上を占めている。他

は韓国籍が 3 社、欧州国籍と中国籍がそれぞれ 2 社・機関である。

表 4- 1 出願人別ファミリー件数上位ランキング(日米欧中韓への出願)

順位

出願人名称ファミリー件数

1 LG化学(韓国) 3,501

2 トヨタ自動車株式会社 2,896

3 Samsung Group(韓国) 2,322

4 パナソニックグループ 1,974

5 豊田自動織機 (TICO) 1,137

6 Robert Bosch(ドイツ) 831

7 日産自動車株式会社 735

8 株式会社GSユアサ 734

9 中国科学院 (CAS)(中国) 596

10 日立マクセル株式会社 536

11 株式会社東芝 531

12 ソニー株式会社 491

13 ATL group(中国) 486

14 NECグループ 482

15 三菱ケミカル株式会社 410

16 Daimler(ドイツ) 373

17 株式会社日立製作所 359

18 SK group(韓国) 350

19 日本ゼオン株式会社 347

20株式会社半導体エネルギー研究所

310

日米欧中韓への出願

3 Samsung Group:サムスン SDI(韓国)、サムスン電子(韓国)、株式会社サムスン日本研究所(日本) 4 パナソニックグループ:パナソニック株式会社(日本)、パナソニック IPマネジメント株式会社(日本)、三洋電

機株式会社(日本)、松下能源(无锡)有限公司(中国)、三洋電機(米国)

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表 4- 2、表 4- 3 には、出願先国別の出願件数上位ランキングを示す。上位 20 社に占める

自国籍の出願人の数は、日本が 18、米国が 4、欧州が 7、中国が 10、韓国が 7 である。

日米欧中韓の 5 ケ国への出願で首位の LG 化学と 3 位の Samsung Group は米中韓で上位

2 位を占め、それぞれ欧州で 3、2 位、日本で 5、7 位と偏りなく出願している。

全体で 3 位のトヨタ自動車は日本で首位、他の 4 国・地域で 6 位内に入っている。また、

全体で 4 位のパナソニックグループは日本で 2 位、他の 4 国・地域では 4 位から 10 位の間

にランキングされている。全体で 5 位の Robert Bosch は欧州で首位、米国で 5 位、中国で 7

位であるが、日本及び韓国では上位 20 位以内にはランキングされていない

表 4- 2 出願人別出願件数上位ランキング(日本、米国、欧州への出願)

順位

出願人名称出願件数

1 トヨタ自動車株式会社 2,891

2 パナソニックグループ 1,946

3 豊田自動織機 (TICO) 1,165

4 株式会社GSユアサ 802

5 LG化学(韓国) 782

6 日産自動車株式会社 723

7 Samsung Group(韓国) 684

8 日立マクセル株式会社 560

9 株式会社東芝 553

10 ソニー株式会社 497

10 NECグループ 497

12 三菱ケミカル株式会社 457

13 株式会社日立製作所 359

14 日本ゼオン株式会社 356

14株式会社半導体エネルギー研究所

356

16 旭化成株式会社 303

17 日立化成株式会社 302

18 株式会社デンソー 286

19 TDK株式会社 280

20日立オートモティブシステムズ株式会社

274

日本への出願

順位

出願人名称出願件数

1 Samsung Group(韓国) 2,124

2 LG化学(韓国) 1,046

3 パナソニックグループ 856

4 トヨタ自動車株式会社 847

5 Robert Bosch(ドイツ) 332

6 ソニー株式会社 314

7 株式会社東芝 283

8株式会社半導体エネルギー研究所

282

9 株式会社GSユアサ 268

10 NECグループ 230

11General Motors(GM) group(米国)

218

12 日産自動車株式会社 215

13United States Department ofEnergy (DOE)(米国)

174

14Ford Global Technologies LLC.(米国)

142

15 株式会社日立製作所 141

16フランス原子力・ 代替エネルギー庁(CEA)(フランス)

128

17Hyundai-Kia Motors group(韓国)

122

18 Johnson Controls group(米国) 121

19 Daimler(ドイツ) 119

20 住友化学株式会社 118

米国への出願

順位

出願人名称出願件数

1 Robert Bosch(ドイツ) 972

2 Samsung Group(韓国) 879

3 LG化学(韓国) 823

4 Daimler(ドイツ) 481

5フランス原子力・ 代替エネルギー庁(CEA)(フランス)

308

6 トヨタ自動車株式会社 283

7 Volkswagen group(ドイツ) 229

8 株式会社GSユアサ 208

9 日産自動車株式会社 194

10 パナソニックグループ 179

11 BMW(ドイツ) 154

12General Motors(GM) group(米国)

140

13 株式会社東芝 135

14Ford Global Technologies LLC.(米国)

111

15 BASF group(ドイツ) 104

16 Renault SAS(フランス) 94

17 東レ株式会社 89

18 NECグループ 81

19 ソニー株式会社 70

20Hyundai-Kia Motors group(韓国)

62

欧州への出願

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- 17 -

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 4- 3 出願人別出願件数上位ランキング(中国、韓国への出願)

順位

出願人名称出願件数

1 Samsung Group(韓国) 904

2 LG化学(韓国) 898

3 トヨタ自動車株式会社 802

4 パナソニックグループ 704

5 中国科学院 (CAS)(中国) 596

6 ATL group(中国) 461

7 Robert Bosch(ドイツ) 337

8 ソニー株式会社 288

9 BYD(比亜迪)group(中国) 281

10 中南大学(中国) 250

11 株式会社GSユアサ 233

12 株式会社東芝 202

13海洋王照明科技股份有限公司(中国)

201

13 日産自動車株式会社 201

15 清華大学(中国) 199

16 浙江大学(中国) 173

17合肥国軒高科動力能源有限公司(Hefei Guoxuan High-TechPower Energy Co. Ltd.)(中国)

172

18 Chery (奇瑞汽車) group(中国) 153

19 Shanshan (杉杉) group(中国) 151

20General Motors(GM) group(米国)

149

中国への出願

順位

出願人名称出願件数

1 LG化学(韓国) 3,632

2 Samsung Group(韓国) 2,253

3 トヨタ自動車株式会社 474

4 SK group(韓国) 346

5 日産自動車株式会社 250

6Hyundai-Kia Motors group(韓国)

226

7 パナソニックグループ 206

8 POSCO group(韓国) 151

9 株式会社GSユアサ 142

10 東レ株式会社 135

11 日本ゼオン株式会社 128

12 住友化学株式会社 120

13株式会社半導体エネルギー研究所

107

14蔚山科学技術大学校 (UNIST)(韓国)

103

14 昭和電工グループ 103

16 ソニー株式会社 102

17 漢陽大学校(韓国) 87

18 Daimler(ドイツ) 81

19 三菱ケミカル株式会社 80

19 BASF group(ドイツ) 80

韓国への出願

図 4- 5 に出願人別ファミリー数上位ランキング 10 位の企業及び世界の主要電気自動車メ

ーカーについての出願先国別出願件数を示す。各企業とも自国・地域への出願が一番多い。

また、中国科学院 (CAS)は自国である中国への出願がほとんどで、中国以外への国・地域へ

の出願が極めて少ない。欧州の主要電気自動車メーカーは、各社ともそれぞれ自国・地域で

ある欧州への出願が最も多い。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 4- 5 注目出願人別-出願先国別出願件数

782

2,891

684

1,946

1,165

91

723

802

4

560

11

15

17

113

3

1,046

847

2,124

856

118

332

215

268

20

60

39

56

25

119

14

823

283

879

179

33

972

194

208

6

10

154

229

94

481

2

898

802

904

704

62

337

201

233

596

76

54

58

22

105

7

3,632

474

2,253

206

23

53

250

142

5

68

7

25

16

81

1

注目出願人

出願先(地域)

日本 米国 欧州 中国 韓国

LG化学

トヨタ自動車株式会社

Samsung Group

パナソニックグループ

豊田自動織機(TICO)

Robert Bosch

日産自動車株式会社

株式会社GSユアサ

中国科学院 (CAS)

日立マクセル株式会社

BMW

Volkswagen group

Renault SAS

Daimler

TESLA Inc.

図 4- 6~図 4- 10 に日米欧中韓への上位出願人 5 社について出願先国別出願件数推移及び

出願件数比率を示す。以下、これら 5 社について出願傾向を述べる。

首位の LG Group をはじめ各企業とも自国へ一番多く出願している。

各社の外国への出願をみると、首位の LG 化学は米国が最も多いが、中国、欧州、日本へ

も同程度に万遍なく出願している。2 位のトヨタ自動車は米国と中国への出願が多い。3 位

の Samsung Group は米国に自国向けと同程度の件数を出願しており、中国、欧州、日本へ

の出願数も他社に比較して比率が高い。4 位のパナソニックグループは米国と中国が主で欧

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

州・韓国への出願比率は小さい。5 位の豊田自動織機は 1~4 位の各社に比べると外国出願比

率が低いが、その中では米国が多い。

出願件数推移でみると、韓国勢である首位の LG 化学はかなり高い増加率を示しているの

に対して、3 位の Samsung Group は横ばい傾向にある。一方、日本企業では、2 位のトヨ

タ自動車が横這い傾向であるのに対し、4 位のパナソニックグループが減少傾向、一方 5 位

の豊田自動織機において増勢が著しい。

図 4- 6 出願先国別出願件数推移及び出願件数比率(LG 化学)

403

705865

1,335

1,912

1,091

870

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 合計

出願先国・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

日本

782件

10.9% 米国

1,046件14.6%

欧州

823件

11.5%中国

898件

12.5%

韓国

3,632件

50.6%

合計

7,181件

図 4- 7 出願先国別出願件数推移及び出願件数比率(トヨタ自動車)

656 678

968

789

567

822 817

0

200

400

600

800

1,000

1,200

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 合計

出願先国・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本

2,891件54.6%米国

847件

16.0%

欧州

283件

5.3%

中国

802件15.1%

韓国

474件

8.9%

合計

5,297件

図 4- 8 出願先国別出願件数推移及び出願件数比率(Samsung Group)

1,045 1,066

897974

1,119

850893

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 合計

出願先国・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本

684件

10.0%

米国

2,124件

31.0%

欧州

879件

12.8%

中国

904件

13.2%

韓国

2,253件

32.9%

合計

6,844件

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 4- 9 出願先国別出願件数推移及び出願件数比率(パナソニックグループ)

917 889

715

496408

272194

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 合計

出願先国・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本

1,946件

50.0%米国

856件22.0%

欧州

179件

4.6%

中国

704件

18.1%

韓国

206件

5.3%

合計

3,891件

図 4- 10 出願先国別出願件数推移及び出願件数比率(豊田自動織機)

40 38

158

319

348329

169

0

50

100

150

200

250

300

350

400

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 合計

出願先国・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本

1,165件

83.2%

米国

118件

8.4%

欧州

33件

2.4%

中国

62件

4.4%

韓国

23件

1.6%

合計

1,401件

4.日米欧中韓での登録動向

調査対象期間における日米欧中韓での出願先国別登録件数推移及び登録件数比率を図 4-

11 に示す。日米欧中韓での登録件数合計は 35,761 件である。出願先国別の内訳は、比率が

高い順に日本 30.1%、中国 28.6%、米国 17.3%、韓国 17.2%、欧州 6.8%であり、出願件数

における出願先国の比率(図 4- 1)と同様の傾向となっている。

図 4- 11 出願先国別登録件数推移及び登録件数比率(日米欧中韓での登録)

1,835 2,275 2,527 2,219 1,298 428185

1,230 1,451 1,419 1,146 644248 45

472 580 585 450 26571 17

1,255 1,767 2,070 1,879 1,595 1,283 380

857 1,047 1,020 1,207 1,101 666 244

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

出願年(優先権主張年)

日本

米国

欧州

中国

韓国

優先権主張:2009~2015年

日本

10,767件30.1%

米国

6,183件17.3%

欧州

2,440件6.8%

中国

10,229件28.6%

韓国

6,142件17.2%

合計

35,761件

注)調査時点で審査請求前や審査中の出願が存在するため、2015年に近づくにつれて件数が減少することに注意すること。

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- 21 -

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第3節 電池の用途

大区分 B(型式・種類)「用途」の各中区分についての日米欧中韓への出願人国籍別ファミ

リー件数を図 4- 12 に示す。車載用だけでなく、小型民生用も多い。用途分野の記載が無い

ものも多い。

図 4- 12 出願人国籍別ファミリー件数(用途、日米欧中韓への出願)

8,184

10,733

1,907

6,146

2,208

136

857

1,258

291

920

200

85

699

1,874

196

1,027

147

35

4,871

5,456

544

6,431

898

84

4,609

4,405

699

2,264

547

50

250

195

23

240

29

9

(型式・種類)用途

出願人国籍(地域)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

小型民生用

車載用

産業用

用途分野の記載なし

用途分野に関し非限定

その他の用途分野

第4節 課題と解決手段

1.課題と解決手段の概観

(1) 課題(中区分)

課題に関する大区分 I「容量・特性」、J「信頼性」、K「コスト」、L「その他の課題」の

各中区分についての出願人国籍別ファミリー件数を図 4- 13 に示す。

各国籍、地域籍とも耐久性・保存性、安全性が最も多い。日本国籍は、エネルギー密度

向上、出入力(充放電)特性、コストが次に多い。中国籍、韓国籍は、コストが次に多く、

その次がエネルギー密度向上、出入力(充放電)特性である。

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- 22 -

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第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 4- 13 出願人国籍別ファミリー件数(課題(中区分)容量・特性、信頼性、コスト、その他の課題)、日米欧中韓への出願)

5,358

4,865

1,596

950

8,986

6,991

1,964

963

5,009

243

861

1,511

1,027

511

141

73

1,166

937

172

111

806

57

165

166

853

381

130

92

1,131

1,347

238

138

1,241

76

242

199

5,280

4,608

1,716

617

8,283

2,865

2,503

493

7,641

586

494

409

2,597

1,770

765

212

3,743

3,380

638

327

2,962

116

522

436

177

116

36

15

234

240

30

22

199

20

39

65

課題(中区分)

出願人国籍(地域)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

エネルギー密度向上

出入力(充放電)特性

温度特性

その他の容量・特性

耐久性・保存性

安全性

品質管理

その他の信頼性

コスト

環境対策

省スペース

その他の課題

(2) 解決手段

大区分 α「当該特許の主たる技術内容」の各小区分についての出願人国籍別ファミリー

件数を図 4- 14 に示す。

日本国籍は、幅広く万遍なく出願している。単電池・外装、装着・モジュールがやや多

い。中国籍は、正極、負極の出願が多く、単電池・外装、装着・モジュールが比較的少な

い。正極、負極とも活物質より製造技術のほうが多い。韓国籍、欧州国籍、米国籍は、単

電池・外装、装着・モジュールが特に多い。

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第2部

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第4部

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図 4- 14 出願人国籍別ファミリー件数(主たる技術内容、日米欧中韓への出願)

3,424

2,774

2,720

2,597

3,147

1,880

1,021

692

4,090

4,557

361

377

331

355

402

192

66

50

394

785

318

275

242

239

335

160

58

31

750

1,313

2,993

4,883

1,754

3,119

1,411

872

240

116

2,229

1,231

1,237

1,072

944

952

872

547

235

169

2,255

2,464

93

95

52

62

47

28

13

9

130

201

当該特許の主たる技術内容

出願人国籍(地域)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

正極活物質

正極の製造技術

負極活物質

負極の製造技術

電解質,電解液,添加剤

セパレータ

集電体

結着剤及び分散液

単電池・外装

装着・モジュール

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2.課題

大区分 J(課題)「信頼性」/中区分 J01「耐久性・保存性」の各小区分についての日米欧

中韓への出願人国籍別ファミリー件数を図 4- 15 に示す。

各国籍、地域籍ともサイクル寿命の向上が圧倒的に多い。日本国籍は活物質の膨張収縮に

よる劣化抑制、電極・集電体の溶出抑制も多い。

図 4- 15 出願人国籍別ファミリー件数(信頼性(耐久性・保存性)、日米欧中韓への出願)

5,764

672

175

605

723

1,120

558

856

133

46

76

57

109

59

672

196

48

111

76

69

53

6,889

1,044

243

364

184

207

138

2,440

556

67

287

213

450

219

163

32

6

18

3

29

7

耐久性・保存性

出願人国籍(地域)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

サイクル寿命の向上

カレンダー寿命の向上

自己放電の減少

液漏れ防止

電解液の劣化抑制

活物質の膨張収縮による劣化抑制

電極・集電体の溶出抑制

大区分 K(課題)日米欧中韓への出願において、「コスト」/中区分 K01「コスト」の各

小区分を集計したものについて、その出願人国籍別ファミリー件数を図 4- 16 に示す。

日本国籍は、各課題に一定規模の出願がある。

中国は、部材の生産性向上が圧倒的に多い。次に安価素材の使用、単電池の生産性向上が

多い。

韓国は、部材の生産性向上、モジュールの組み立て作業性向上、単電池の生産性向上の順

で多い。日本、中国、米国、欧州に比べるとモジュールの組み立て作業性向上、単電池の生

産性向上が相対的に多い。

リサイクル・リユース・回収は各国・地域とも多くはないが、中国籍が最も多い。

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- 25 -

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第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

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第6部

図 4- 16 出願人国籍別ファミリー件数(用途(車載用限定)-課題(コスト)、日米欧中韓への出願)

2,080

1,363

1,080

419

493

104

371

155

206

52

96

31

451

293

416

133

115

37

5,515

936

508

230

1,556

256

1,236

837

856

216

193

55

87

48

56

10

22

7

コスト(リサイクル・リユース・回収含む。)

出願人国籍(地域)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

部材の生産性向上

単電池の生産性向上

モジュールの組み立て作業性向上

モジュール部品の削除

安価素材の使用

リサイクル・リユース・回収

3.課題間の関係

日米欧中韓への出願において、日米欧中韓への大区分 I(課題)「容量・特性」の中区分、

大区分(課題)J「信頼性」の中区分、大区分 K(課題)「コスト」、大区分 L(課題)「その

他の課題」の中区分が各々重複しているものの件数を図 4- 17 に示す。

エネルギー密度向上、出入力(充放電)特性と耐久性・保存性は関係が深いといえる。

「コスト」と「耐久性・保存性」、「安全性」や「エネルギー密度向上」、「出入力(充放電)

特性」も関係が深いといえる。

図 4- 17 課題間の関係(日米欧中韓への出願)

8311 2139 14197 4424 1437 7113 354 1275

2089 11076 3037 1216 4633 258 323

4280 2018 349 1318 60 122

8647 2484 9464 571 892

1405 6643 258 1675

4156 189 224

964 1893

21

課題

課題

出入力(充放電)特性

温度特性耐久性・保存

性安全性 品質管理 コスト 環境対策 省スペース

エネルギー密度向上

出入力(充放電)特性

温度特性

耐久性・保存性

安全性

品質管理

コスト

環境対策

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- 26 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

4.課題に関する分析まとめ

① 中区分では、各国・地域籍とも小区分では「耐久性・保存性」、「安全性」が最も多い

(図 4- 13)。日本国籍は、「安全性」の出願が多い。日本国籍、米国籍、欧州国籍は、

「エネルギー密度向上」、「出入力(充放電)特性」が次に多い(図 4- 13)。「エネル

ギー密度向上」、「出入力(充放電)特性」を含む大区分の「容量・特性」と、「耐久

性・保存性」、「安全性」を含む大区分「信頼性」は重複する特許が多く(図 4- 17)、

両者の関係が強いことを示唆している。「コスト」と「耐久性・保存性」、「安全性」

や「エネルギー密度向上」、「出入力(充放電)特性」も関係が深い。

② 中区分の「耐久性・保存性」の中では、各国・地域籍とも小区分「サイクル寿命の向

上」が圧倒的に多い(図 4- 15)。日本国籍と韓国籍は、小区分「活物質の膨張収縮に

よる劣化抑制」が比較的多く(図 4- 15)、後述の Si 系負極材の件数が比較的多い(図

4- 24)ことと関係している可能性がある。

③ 中区分では、中国籍、韓国籍は、「コスト」が 2 番目に多いことが日本国籍、米国籍、

欧州国籍と異なっている(図 4- 13)。中国、韓国とも急速に生産体制を拡大している

ことと関係している可能性がある。

④ 大区分「コスト」では、日本国籍、米国籍、欧州国籍は様々な小区分に分散している

が、中国籍、韓国籍は生産性向上、作業性向上の出願が多い(図 4- 16)。正極材では

Co が急騰しており、今後安価素材の使用の必要性が増してくると考えられるが、現

段階では、まだ多くはない。

第5節 正極の特許技術動向分析

1.正極活物質

大区分 C(型式・種類)「正極」/中区分 C01「正極活物質の主な材料5」の各小区分につ

いての日米欧中韓への出願人国籍別ファミリー件数を図 4- 18 に示す。日本国籍は、Ni 系、

三元系、Co 系、Mn 系が多い。次にリン酸鉄リチウムが多い。中国籍は、リン酸鉄リチウム

が非常に多い。次に Mn 系、三元系、Co 系が多い。韓国籍は、日本に近い傾向である。欧

州国籍、米国籍、中国籍は、硫黄および硫黄化合物が相対的に多い。

5 正極活物質として用いられる「基本的組成の化合物や元素」を「正極活物質の主な材料」とした。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 4- 18 出願人国籍別ファミリー件数(正極活物質の主な材料、日米欧中韓への出願)

1,206

1,026

1,157

1,323

263

148

196

727

421

137

335

29

201

148

61

115

96

210

183

24

36

26

118

28

15

38

14

151

33

30

80

91

140

123

23

17

47

148

41

14

33

8

131

36

10

403

1,012

867

1,115

264

191

122

1,836

540

115

282

33

433

145

189

458

454

498

539

113

105

66

256

119

18

143

12

142

31

29

26

25

43

41

6

1

9

73

21

3

12

3

5

5

4

正極活物質の主な材料

出願人国籍(地域)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

Ni系酸化物のリチウム塩(Ni主成分)

Ni、Co、Mn、三元系酸化物のリチウム塩

Co系酸化物のリチウム塩

マンガン酸リチウム

Ni置換マンガン酸リチウム

リチウム過剰正極(Li2MnO3-LiMetO2

固溶体)

Ti系酸化物のリチウム塩

リン酸鉄リチウム

リン酸鉄リチウム以外のリン酸系リチウ

ム塩

ケイ酸リチウム塩

他の金属酸化物のリチウム塩

遷移金属カルコゲナイド

硫黄および硫黄化合物

導電性高分子・導電性有機化合物

コンバージョン反応型化合物

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

大区分 C(型式・種類)「正極」/中区分 C01「正極活物質の主な材料」についての日米

欧中韓への出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率を図 4- 19 に示す。

日本国籍が 40.2%、中国籍が 27.1%、韓国籍が 16.0%と上位 3 位を占めている。また日本

国籍、米国籍、欧州国籍の出願は件数が横ばいであるのに対し、中国籍と韓国籍の出願は増

加傾向にある。

図 4- 19 出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(正極活物質の主な材料、日米欧中韓への出願)

2,644

3,036

3,523

4,2764,108

3,531

2,600

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

出願人国籍・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本国籍

9,544件

40.2%

米国籍

1,659件

7.0%

欧州国籍

1,913件

8.1%

中国籍

6,421件

27.1%

韓国籍

3,802件

16.0%

その他

379件1.6%

合計

23,718件

「Ni 系酸化物のリチウム塩」(小区分 C0101、図 4- 20)では、日本国籍、韓国籍は、年

度による変動が大きい。日本からの出願が過半数を占めるが、2013 年以後中国からの出願が

増加傾向である。また韓国籍の比率が比較的高い。

図 4- 20 出願人国籍別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(Ni 系酸化物のリチウム塩、日米欧中韓への出願)

328

291

201

377 389

338364

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

出願人国籍・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本国籍

1,206件

52.7%

米国籍

115件

5.0%

欧州国籍

80件

3.5%

中国籍

403件

17.6%

韓国籍

458件

20.0%

その他

26件1.1%

合計

2,288件

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

「Ni、Co、Mn、三元系酸化物のリチウム塩」(小区分 C0102、図 4- 21)では、日本国籍

が横ばいなのに対し、中国籍、韓国籍は増加傾向であり特に中国籍の増加が著しい。

図 4- 21 出願人国籍別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(Ni、Co、Mn、三元系酸化物のリチウム塩、日米欧中韓への出願)

168

247

354

466

544501

424

0

100

200

300

400

500

600

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

出願人国籍・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本国籍

1,026件

37.9%

米国籍

96件

3.6%欧州国籍

91件

3.4%

中国籍

1,012件

37.4%

韓国籍

454件16.8%

その他

25件0.9%

合計

2,704件

「リン酸鉄リチウム」(小区分 C0108、図 4- 22)では、中国籍が最も多いが、各国・地域

籍とも横ばいである。

図 4- 22 出願人国籍別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(リン酸鉄リチウム、日米欧中韓への出願)

319

371

608

522562

407369

0

100

200

300

400

500

600

700

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

出願人国籍・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本国籍

727件

23.0%米国籍

118件

3.7%

欧州国籍

148件4.7%中国籍

1,836件

58.1%

韓国籍

256件

8.1%

その他

73件

2.3%

合計

3,158件

「硫黄および硫黄化合物」(小区分 C0113、図 4- 23)では、中国籍は、比率が高く増加が

著しい。韓国籍も増加傾向である。日本国籍は、やや減少傾向である。米国籍、欧州国籍は

増加傾向である。

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本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 4- 23 出願人国籍別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(硫黄および硫黄化合物、日米欧中韓への出願)

4563

125

184 189

217

240

0

50

100

150

200

250

300

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

出願人国籍・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本国籍

201件

18.9%

米国籍

151件

14.2%

欧州国籍

131件

12.3%

中国籍

433件

40.7%

韓国籍

142件

13.4%

その他

5件

0.5%

合計

1,063件

2.出願人別動向

正極活物質の主な材料(中区分 C01)についての、日米欧中韓への出願における出願人別

ファミリー件数上位ランキングを表 4- 4 に示す。

ファミリー件数上位ランキングと出願件数上位ランキングの両者で、上位 5 位内に韓国の

2 社(LG 化学、Samsung Group)と日本の 2 社(トヨタ自動車、パナソニックグループ)

が入っている。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 4- 4 出願人別ファミリー件数上位ランキング(正極活物質の主な材料、日米欧中韓への出願)

順位

出願人名称ファミリー件数

1 LG化学(韓国) 707

2 トヨタ自動車株式会社 612

3 パナソニックグループ 399

4 Samsung Group(韓国) 367

5 中国科学院 (CAS)(中国) 285

6 豊田自動織機 (TICO) 179

7 住友金属鉱山株式会社 169

8 日産自動車株式会社 165

9 日立マクセル株式会社 142

10 株式会社GSユアサ 140

11 中南大学(中国) 138

12 株式会社東芝 135

13 NECグループ 134

14 ATL group(中国) 125

15 ソニー株式会社 121

16 Robert Bosch(ドイツ) 106

17合肥国軒高科動力能源有限公司(Hefei Guoxuan High-TechPower Energy Co. Ltd.)(中国)

102

18 清華大学(中国) 100

19株式会社半導体エネルギー研究所

99

20 旭硝子株式会社(AGC) 96

日米欧中韓への出願

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第6節 負極の特許技術動向分析

1.負極活物質

大区分 D(型式・種類)「負極」/中区分 D01「負極活物質の主な材料6」の各小区分につ

いての日米欧中韓への出願人国籍別ファミリー件数を図 4- 24 に示す。

日本国籍は、黒鉛質炭素が最も多く同程度に Si 系が多い。韓国籍、欧州国籍、米国籍は

Si 系が最も多い。中国籍は、コンバージョン反応型化合物が他の国籍に比べて多い。

図 4- 24 出願人国籍別ファミリー件数(負極活物質の主な材料、日米欧中韓への出願)

1,732

379

344

100

79

351

1,575

445

585

522

131

88

203

21

18

64

21

28

269

84

73

163

42

26

158

22

20

31

8

30

186

43

81

129

16

14

1,207

489

141

416

118

302

803

383

745

291

151

426

564

220

169

99

56

132

623

163

190

204

32

47

43

7

5

13

8

12

36

17

16

17

4

4

負極活物質の主な材料

出願人国籍(地域)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

黒鉛質炭素

天然黒鉛由来

非晶質炭素

ナノカーボン

炭素繊維

その他炭素系

Si系(Si主成分)

Sn系

Ti系酸化物のリチウム塩

金属リチウム(合金を含む)

導電性高分子・導電性有機化合物

コンバージョン反応型化合物

6 負極活物質として用いられる「基本的組成の化合物や元素」を「負極活物質の主な材料」とした。

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- 33 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

大区分 D(型式・種類)「負極」/中区分 D01「負極活物質の主な材料」についての日米

欧中韓への出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率を図 4- 25 に示す。

日本国籍が 44.8%、中国籍が 21.8%、韓国籍が 16.3%と上位 3 位を占めている。また日本

国籍、米国籍、欧州国籍の出願は件数が横ばいであるのに対し、中国籍と韓国籍の出願は増

加傾向にある。

図 4- 25 出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(負極活物質の主な材料、日米欧中韓への出願)

2,2082,380

2,848

3,738

3,359

3,022

2,418

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

出願人国籍・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本国籍

8,952件

44.8%

米国籍

1,579件

7.9%

欧州国籍

1,564件

7.8%

中国籍

4,346件

21.8%

韓国籍

3,250件

16.3%

その他

282件1.4%

合計

19,973件

「黒鉛質炭素」(小区分 D0101、図 4- 26)では、日本国籍は横ばいであるのに対し、中国

籍、韓国籍は増加傾向である。

図 4- 26 出願人国籍別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(黒鉛質炭素、日米欧中韓への出願)

442 433487

617

715

567

646

0

100

200

300

400

500

600

700

800

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

出願人国籍・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本国籍

1,732件

44.3%

米国籍

203件

5.2%

欧州国

158件4.0%

中国籍

1,207件

30.9%

韓国籍

564件

14.4%

その他

43件

1.1%

合計

3,907件

「Si 系(Si 主成分)」(小区分 D0107、図 4- 27)では、日本国籍は横ばいなのに対し、中

国籍、韓国籍は増加傾向である。

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- 34 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 4- 27 出願人国籍別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(Si 系(Si 主成分)、日米欧中韓への出願)

238

318

466

623 615641

591

0

100

200

300

400

500

600

700

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

出願人国籍・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本国籍

1,575件

45.1%

米国籍

269件

7.7%

欧州国籍

186件

5.3%

中国籍

803件

23.0%

韓国籍

623件

17.8%

その他

36件1.0%

合計

3,492件

「Sn 系」(小区分 D0108、図 4- 28)では、日本国籍、韓国籍は横ばいなのに対し、中国

籍は増加傾向である。中国籍は比率も比較的高い。

図 4- 28 出願人国籍別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(Sn 系、日米欧中韓への出願)

151

113

169

205

175

150

172

0

50

100

150

200

250

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

出願人国籍・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本国籍

445件

39.2%

米国籍

84件

7.4%

欧州

国籍

43件3.8%

中国籍

383件

33.7%

韓国籍

163件

14.4%

その他

17件

1.5%

合計

1,135件

「金属リチウム」(小区分 D0110、図 4- 29)では、日本国籍は、2008 年に大量に出願し

た後は横ばいである。中国籍、韓国籍、欧州国籍、米国籍とも増加傾向である。

図 4- 29 出願人国籍別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(金属リチウム、日米欧中韓への出願)

230

117

149

238207

191 194

0

50

100

150

200

250

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

出願人国籍・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本国籍

522件

39.4%

米国籍

163件

12.3%

欧州国籍

129件

9.7%

中国籍

291件

21.9%

韓国籍

204件

15.4%

その他

17件

1.3%

合計

1,326件

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- 35 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

2.出願人別動向

負極活物質の主な材料(中区分 D01)についての、日米欧中韓への出願における出願人別

ファミリー件数上位ランキングを表 4- 5 に示す。

ファミリー件数ランキングと出願件数ランキングの両者で、上位 5 位内に韓国の 2 社(LG

化学、Samsung Group)と日本の 2 社(トヨタ自動車、パナソニックグループ)がともに

入っている。

表 4- 5 出願人別ファミリー件数上位ランキング(負極活物質の主な材料、日米欧中韓への出願)

順位

出願人名称ファミリー件数

1 トヨタ自動車株式会社 539

2 LG化学(韓国) 507

3 パナソニックグループ 376

4 Samsung Group(韓国) 357

5 株式会社東芝 238

6 中国科学院 (CAS)(中国) 196

7 日産自動車株式会社 172

8 NECグループ 171

9 豊田自動織機 (TICO) 168

10 三菱ケミカル株式会社 152

11 日立マクセル株式会社 140

12 ソニー株式会社 132

13 信越化学工業株式会社 121

14 浙江大学(中国) 114

14 ATL group(中国) 114

16株式会社半導体エネルギー研究所

107

17 日立化成株式会社 97

18 Shanshan (杉杉) group(中国) 94

19 Robert Bosch(ドイツ) 88

20 清華大学(中国) 85

日米欧中韓への出願

第7節 電解質の特許技術動向分析

1.電解質材料

大区分 E(型式・種類)「電解質」/中区分 E01「主な電解質材料7」の各小区分について

の日米欧中韓への出願人国籍別ファミリー件数を図 4- 30 に示す。

日本国籍は、他国籍に比べ無機固体電解質(硫化物系、酸化物系)が圧倒的に多い。

7 電解質として用いられる「基本的組成の化合物」を「主な電解質材料」とした。

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- 36 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 4- 30 出願人国籍別ファミリー件数(主な電解質材料、日米欧中韓への出願)

3,555

380

704

385

647

211

57

601

278

67

126

51

20

48

24

135

271

51

86

45

13

27

8

129

1,152

109

385

76

31

51

57

840

886

68

262

87

83

52

10

398

38

7

20

2

1

2

1

15

主な電解質材料

出願人国籍(地域)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

有機溶媒系(非水系)

イオン液体(融解塩)

高分子固体電解質・ゲル電解質(非水

系)

酸化物系無機固体電解質

硫化物系無機固体電解質

他の無機固体電解質

水溶液系

新規リチウム塩及びリチウム塩の混合

大区分 E(型式・種類)「電解質」/中区分 E01「主な電解質材料」についての日米欧中

韓への出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率を図 4- 31 に示す。

日本国籍が過半数の 57.3%を占め、韓国籍の 15.1%、中国籍の 11.2%がこれに続いている。

また日本国籍の件数が横ばいであるのに対し、米国籍、欧州国籍、中国籍及び韓国籍のもの

はいずれも増加傾向にある。

図 4- 31 出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(主な電解質材料、日米欧中韓への出願)

2,023

2,409

2,878 2,7943,019

2,373

2,060

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

出願人国籍・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本国籍

10,052件

57.3%

米国籍

1,262件

7.2%

欧州国籍

1,457件

8.3%

中国籍

1,963件

11.2%

韓国籍

2,649件

15.1%

その他

173件1.0%

合計

17,556件

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- 37 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

「硫化物系無機固体電解質」(小区分 E0105、図 4- 32)では、韓国籍、中国籍とも件数は

少ないが増加傾向である。

図 4- 32 出願人国籍別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(硫化物系無機固体電解質、日米欧中韓への出願)

64

99

128

146

124

111

123

0

20

40

60

80

100

120

140

160

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

出願人国籍・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本国籍

647件

81.4%

米国籍

20件

2.5%

欧州国籍

13件

1.6%

中国籍

31件

3.9%

韓国籍

83件

10.4%

その他

1件

0.1%

合計

795件

「酸化物系無機固体電解質」(小区分 E0104、図 4- 33)では、日本国籍が横ばいなのに対

し、韓国籍、中国籍は増加傾向である。

図 4- 33 出願人国籍別ファミリー件数推移及びファミリー件数比率(酸化物系無機固体電解質、日米欧中韓への出願)

43

55

7885

118

133 134

0

20

40

60

80

100

120

140

160

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

出願人国籍・地域

優先権主張

2009-2015年

注)2014年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれ等で、全出願データを

反映していない可能性がある。

日本国籍

385件

59.6%

米国籍

51件

7.9%

欧州国籍

45件

7.0%

中国籍

76件

11.8%

韓国籍

87件

13.5%

その他

2件

0.3%

合計

646件

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- 38 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

大区分 N(解決手段)「液体電解質」/中区分 N01「液体電解質材料物性」の各小区分に

ついての日米欧中韓への出願人国籍別ファミリー件数を図 4- 34 に示す。

高濃度電解液は、日本国籍が圧倒的に多いが、中国籍、韓国籍、欧州国籍、米国籍も一定

規模の出願件数がある。

図 4- 34 出願人国籍別ファミリー件数(液体電解質材料物性、日米欧中韓への出願)

33

150

298

362

65

81

4

16

41

93

9

30

11

11

50

90

8

30

25

47

110

181

99

63

9

57

108

183

17

36

2

6

10

2

3

液体電解質材料物性

出願人国籍(地域)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

純度

分子量・重合度

電解質濃度(高濃度電解液)

イオン伝導度・粘性率・溶解度

耐電圧・電位窓

引火点・沸点・凝固点

2.出願人別動向

主な電解質材料(中区分 E01)についての、日米欧中韓への出願における出願人別ファミ

リー件数上位ランキングを表 4- 6 に示す。

ファミリー件数ランキングと出願件数ランキングの両者で、上位 5 位内に日本の 2 社(ト

ヨタ自動車、パナソニックグループ)と韓国の 2 社(LG 化学、Samsung Group)がともに

入っている。

Page 41: 平成29年度 特許出願技術動向調査報告書(概要) - …...² G } è%±F¸ Ø è%±G D F¸ 2.技術俯瞰 (1) リチウム二次電池の分類 図1- 1 にリチウム二次電池の技術俯瞰図を示す。

- 39 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 4- 6 出願人別ファミリー件数上位ランキング(主な電解質材料、日米欧中韓への出願)

順位

出願人名称ファミリー件数

1 トヨタ自動車株式会社 878

2 パナソニックグループ 471

3 LG化学(韓国) 418

4 Samsung Group(韓国) 363

5 三菱ケミカル株式会社 206

6 ソニー株式会社 202

7 日立マクセル株式会社 156

8 NECグループ 146

9 株式会社東芝 140

10 旭化成株式会社 135

11 株式会社GSユアサ 126

12 中国科学院 (CAS)(中国) 117

13 住友電気工業株式会社 115

14 ATL group(中国) 113

15 日産自動車株式会社 103

16 出光興産株式会社 101

17海洋王照明科技股份有限公司(中国)

99

18 豊田自動織機 (TICO) 92

19 TDK株式会社 83

20 株式会社日立製作所 79

日米欧中韓への出願

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- 40 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第8節 セパレータの特許技術動向分析

大区分 F(型式・種類)「セパレータ」/中区分 F01「セパレータ材料」の各小区分につい

ての日米欧中韓への出願人国籍別ファミリー件数を図 4- 35 に示す。

ポリオレフィン系が最も多い。

図 4- 35 出願人国籍別ファミリー件数(セパレータ材料、日米欧中韓への出願)

121

152

1,128

346

271

273

9

13

79

42

44

35

2

2

71

28

49

52

53

66

698

165

173

184

33

20

400

139

88

128

1

1

24

4

4

3

主なセパレータ材料

出願人国籍(地域)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

ポリオレフィン系(湿式)

ポリオレフィン系(乾式)

ポリオレフィン系(湿式、乾式記載なし)

耐熱ポリマー系

他のポリマー系

無機・ガラス系

第9節 単電池、装着・モジュール、電極構造の特許技術動向分析

1.単電池

大区分 T(解決手段)「単電池・外装」/中区分 T01「単電池・外装の材料・製造技術・構

造・制御」の各小区分についての日米欧中韓への出願人国籍別ファミリー件数を図 4- 36 に

示す。

中国籍は、製造技術が多い。中国籍、韓国籍は、電圧電流検知・制御が相対的に少なめで

ある。

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- 41 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 4- 36 出願人国籍別ファミリー件数(単電池、日米欧中韓への出願)

2,372

1,207

1,355

343

921

291

147

315

185

100

184

15

106

38

20

47

460

197

279

58

148

130

56

58

667

476

1,271

99

338

131

51

60

1,455

713

899

135

784

158

71

149

74

35

46

4

33

16

9

15

単電池・外装の材料・製造技術・構造・制御

出願人国籍(地域)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

単電池の外装・収納容器(材料・構造)

封止・絶縁方法

単電池製造技術(封止・絶縁方法は除く)

安全弁・圧力検知

電極タブ・端子の構造・材料

冷却、放熱の材料・構造

温度検知・制御

電圧電流検知・制御

2.装着・モジュール

大区分 U(解決手段)「装着・モジュール」/中区分 U01「装着・モジュールの材料・構

造・制御」の各小区分についての日米欧中韓への出願人国籍別ファミリー件数を図 4- 37 に

示す。

日本国籍は、幅広く出願している。韓国籍の出願が多い。

Page 44: 平成29年度 特許出願技術動向調査報告書(概要) - …...² G } è%±F¸ Ø è%±G D F¸ 2.技術俯瞰 (1) リチウム二次電池の分類 図1- 1 にリチウム二次電池の技術俯瞰図を示す。

- 42 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 4- 37 出願人国籍別ファミリー件数(装着・モジュールの材料・構造・制御、日米欧中韓への出願)

2,681

613

72

475

883

996

777

366

499

525

141

22

114

150

235

90

36

108

935

249

25

177

179

398

126

63

233

892

260

31

134

114

345

71

63

206

1,751

389

35

236

404

575

415

153

360

141

40

4

19

36

62

23

11

23

装着・モジュールの材料・構造・制御

出願人国籍(地域)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

モジュール格納容器(構造・材料)

直列・並列組合せ

高出力型と高容量型の蓄電素子組合

温度検知・制御

電圧電流検知・制御

冷却、放熱の材料・構造

外部端子

安全弁・排気ダクト

耐振動、耐衝撃構造・材料

第10節 解決手段に関する分析まとめ

① 主たる技術内容としては、日本国籍は、幅広く万遍なく出願しているが(図 4- 14)、

単電池・外装、装着・モジュールがやや多い。中国籍は、正極、負極の出願が多く、

正極、負極とも活物質より製造技術のほうが多い(図 4- 14)。これは、中国が急速に

生産体制を拡大していることと関係している可能性がある。中国籍は、単電池・外装、

装着・モジュールは比較的少ない(図 4- 14)。韓国籍、欧州国籍、米国籍は、単電池・

外装、装着・モジュールが特に多い(図 4- 14)。韓国籍は、電池・モジュールの市場

でのシェアを拡大していることと関係している可能性がある。

② 正極については、日本国籍は、Ni 系、三元系、Co 系、Mn 系が多い。次にリン酸鉄

リチウム(LFP)が多い(図 4- 18)。中国籍は、LFP が非常に多く(図 4- 18)、次に

Mn 系、三元系、Co 系が多い(図 4- 18)。また、中国籍は、補助金等の政策で LFP

の需要が急速に拡大したが、近年は件数が頭打ちである(図 4- 22)。欧州国籍、米国

籍、中国籍は、硫黄および硫黄化合物が相対的に多く(図 4- 18)、容量等で優位の

Ni 系、三元系の出願が急速に増加している(図 4- 20、図 4- 21)。硫黄および硫黄化

合物も急速に増加している(図 4- 23)。

③ 負極については、日本国籍は、黒鉛質炭素と同程度に Si 系が多い(図 4- 24)。中国

籍、韓国籍、欧州国籍、米国籍は、炭素系と相対的に比較した Si 系、Sn 系、金属リ

チウムの出願が日本より多く(図 4- 24)、Si 系については、中国籍、韓国籍が、Sn

系については中国籍が増加傾向である(図 4- 27~図 4- 29)。中国籍は、コンバージ

ョン反応型化合物が非常に多い(図 4- 24)。

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- 43 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

④ 電解質については、日本国籍は、他国籍に比べ固体電解質が圧倒的に多い(図 4- 30)。

固体電解質は、日本国籍が横ばいなのに対し、韓国籍、中国籍は増加傾向である(図

4- 32 図 4- 33、)。高濃度電解液は、日本国籍が圧倒的に多いが、中国籍、韓国籍、欧

州国籍、米国籍も一定規模の出願件数がある(図 4- 34)。

Page 46: 平成29年度 特許出願技術動向調査報告書(概要) - …...² G } è%±F¸ Ø è%±G D F¸ 2.技術俯瞰 (1) リチウム二次電池の分類 図1- 1 にリチウム二次電池の技術俯瞰図を示す。

- 44 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第5章 研究開発動向

第1節 全体動向調査

リチウム二次電池に関する、研究者所属機関国籍別の論文発表件数比率と論文発表件数推

移とを図 5-1 に示す。中国籍の研究機関からの論文発表件数が世界のほぼ半分を占めている。

また、全体の発表件数は 2012 年から増加しているが、殆ど、中国籍研究機関からの発表件

数増加によると見て取れる。

図 5-1 研究者所属機関国籍別の論文発表件数比率と推移

2,275

3,063

3,737

4,423 4,319

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

5,000

2012 2013 2014 2015 2016

論文件数

発表年

日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計

研究者所属機関国籍・地域

日本国籍

862件

4.8%米国籍

2,302件

12.9%

欧州国籍

2,072件

11.6%

中国籍

8,969件

50.3%

韓国籍

1,537件

8.6%

その他

2,075件

11.6%

合計

17,817件

第2節 技術区分別動向調査

1.論文と特許との技術区分別件数比率の比較

学術論文と特許とでは研究開発の担い手に違いがある。このため、対象とする研究開発内

容も異なると考えられ、それは論文と特許とで対象とする技術区分の違いとして現れる。

図 5-2 は論文と特許との技術区分別件数比率8比較を、論文/特許の主たる技術内容、用途、

課題、解決手段のそれぞれについて行った結果である。論文/特許の主たる技術内容では、特

許は「単電池・外装」、「装着・モジュール」のファミリー数比率(以下、件数比率と略)が

大きいのに対して、学術論文では正極及び負極の活物質に関する発表件数比率(以下、件数

比率と略)が大きく、傾向が大きく異なる。用途では、学術論文の殆どが用途非限定であり、

特許と比べて基礎的な課題に取り組んでいることを示している。課題では、特許で件数比率

の大きい「安全性」や「コスト」が学術論文では小さく、安全性やコストが学術論文の対象

になりにくいと言える。

8 図 5-2 と図 5-3 は、当該技術区分に属するサブ区分のうち最も特許ファミリー数又は論文発表件数の多いもの

を 100%としてサブ区分の比率を算出した。例えば、技術区分が解決手段の場合、論文では「負極」の論文発表

件数が最も多いので、これを 100%として他の区分の比率を算出した。一方、特許では「正極」のファミリー数

が最も多く、これを 100%としている。当該技術区分全体の特許ファミリー数又は論文発表件数を母数とする比

率に比べて、図示した場合に論文と特許との技術区分比率の違いが分かり易くなる。

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- 45 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 5-2 論文と特許との技術区分別件数比率の比較-1【論文/特許の主たる技術内容、用途、課題、解決手段】

0 50 100

正極活物質

正極の製造技術

負極活物質

負極の製造技術

電解質、添加剤

セパレータ

集電体

結着剤、分散液

単電池・外装

装着・モジュール

その他

技術区分比率:論文の主たる技術内容

論文件数比率

6,915件=100

(全17,817件が

対象)

特許ファミリー数

比率

10,551件=100

(全52,793件が

対象)

0 50 100

小型民生用

車載用

産業用

用途非限定

技術区分比率:用途

論文件数比率

16,639件=100

(全17,817件が

対象)

特許ファミリー数

比率

23,921件=100

(全52,793件が

対象)

0 50 100

エネルギー密度向上

充放電特性

温度特性

他の容量・特性

耐久性・保存性

安全性

品質管理

他の信頼性

コスト

環境対策

省スペース

その他の課題

技術区分比率:課題

論文件数比率

11,113件=100

(全17,817件が

対象)

特許ファミリー数

比率

23,543件=100

(全52,793件が

対象)

0 50 100

正極

負極

結着剤・分散液

液体電解質

固体電解質

セパレータ

集電体

単電池・外装

装着・モジュール

技術区分比率:解決手段

論文件数比率

8,289件=100

(全17,817件が

対象)

特許ファミリー数

比率

14,724件=100

(全52,793件が

対象)

図 5-3 は、リチウム二次電池の主要部材である、正極活物質、負極活物質、電解質におい

て、論文と特許との件数比率を比較したものである。正極活物質の主な材料では、学術論文

では、「Ni 系酸化物 Li 塩」、「三元系酸化物 Li 塩」、「Co 系酸化物 Li 塩」、「マンガン酸 Li 塩」、

「リン酸鉄 Li 塩(LFP)」発表件数が比較的少なく、「他の主材料」が最多発表件数となる。

また、「S 及び S 化合物」の件数比率も大きいことが特徴的であるが、これは Li-S 電池関連

と見なすことができる9。学術論文では、実用化済あるいは実用化が近い正極活物質の改良よ

りも、Li-S 電池関連や新規材料の提案に力点が置かれていると言えよう。負極活物質の主な

材料でも同じ傾向であり、「コンバージョン反応型化合物」が最多発表件数となり、「他の主

材料」がそれに続く。電解質の主な材料では、特許に比べて学術論文は、イオン液体電解質、

リチウムポリマー電池、無機全固体リチウム二次電池、に関する学術論文の件数比率が、特

許に比べて高い。

9 第 4 節 注目論文の調査で述べるように、被引用回数の多い論文 50 件のうち Li-S 電池論文が 24 件を占め、そ

の全てが S正極に関している。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 5-3 論文と特許との技術区分別件数比率の比較-2【正極物質の主な材料、負極活物質の主な材料、主な電解質材料】

0 50 100

有機溶媒系(非水系)

イオン液体(溶融塩)

高分子固体・ゲル電解質

酸化物系固体電解質

硫化物系固体電解質

他の無機固体電解質

水溶液系

新規Li塩、Li塩の混合

その他の電解質材料

主な電解質材料

論文件数比率

671件=100

(全1,970件が

対象)

特許ファミリー数

比率

6,180件=100

(全9,552件が

対象)

0 50 100

Ni系酸化物Li塩

三元系酸化物Li塩

Co系酸化物Li塩

マンガン酸Li塩

Ni置換マンガン酸Li塩

Li過剰正極

Ti系酸化物Li塩

リン酸鉄Li塩(LPF)

LPF以外のリン酸Li

ケイ酸リチウム塩

他の金属酸化物Li塩

遷移金属カルコゲナイド

S及びS化合物

導電性高分子等

コンバージョン反応型化…

他の主材料

正極活物質の主な材料

論文件数比率

1,847件=100

(全7,154件が

対象)

特許ファミリー数

比率

3,324件=100

(全14,492件が

対象)

コンバージョン反応型

化合物

0 50 100

黒鉛質炭素

天然黒鉛由来

非晶質炭素

ナノカーボン

炭素繊維

その他炭素系

Si系(Si主成分)

Sn系

Ti系酸化物Li塩

金属リチウム

導電性高分子等

コンバージョン反応…

他の主材料

負極活物質の主な材料

論文件数比率

3,392件=100

(全9,081件が

対象)

特許ファミリー数

比率

3,907件=100

(全11,638件が

対象)

コンバージョン反応型

化合物

2.正極及び負極の研究開発動向

正極及び負極の活物質に関する論文件数は、中国籍機関が他の国を圧倒して最多である(図

5-4、図 5- 5)。その中では、正極活物質の「Ni 系酸化物 Li 塩」と「Ni 置換マンガン酸 Li

塩」が若干中国籍機関の比率は少ない。負極活物質では、「天然黒鉛由来」、「Si 系(Si 主成

分)」、「金属リチウム(合金を含む)」の中国籍機関の論文比率は若干少ないが、「Ti 系酸化

物 Li 塩」、「導電性高分子・導電性有機化合物」、「コンバージョン反応型化合物」は世界の

60%以上を占め、他を圧倒している。

3.コンバージョン反応型化合物の研究開発動向

学術論文では、正極、負極の活物質としてコンバージョン反応型化合物に関する発表件数

が比較的多い。コンバージョン反応型化合物は多様であり、数多くの化合物が提案されてい

る。論文件数の多いコンバージョン反応型化合物を表 5-1 にまとめた。負極活物質又は正極・

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

負極非特定の論文件数が大多数であるが、正極活物質の論文もかなりある。また、特定の化

合物、V2O5、TiO2、SnO2、Fe2O3、Fe3O4、Co3O4等への論文件数集中も特徴として挙げら

れる。

図 5-4 「正極活物質の主な材料」の研究者所属機関国籍別論文発表件数

17

49

86

57

25

27

13

67

24

13

26

5

38

12

33

80

34

68

69

80

69

53

14

106

30

10

23

8

215

28

81

157

25

84

54

77

53

35

31

205

45

25

30

5

117

26

69

171

109

410

167

355

172

190

88

564

354

76

126

12

566

183

327

925

38

69

55

53

25

28

12

73

40

9

15

1

75

25

34

131

正極活物質の主な材料

研究者所属機関国籍(地域)

日本 米国 欧州 中国 韓国

Ni系酸化物Li塩(Ni主成分)

Ni、Co、Mn、三元系酸化物Li塩

Co系酸化物のLi塩

マンガン酸Li塩

Ni置換マンガン酸Li塩

Li過剰正極(Li2MnO3-LiMetO2固溶体)

Ti系酸化物LI塩

リン酸鉄Li(LPF)

LPF以外のリン酸系LI塩

ケイ酸リチウム塩

他の金属酸化物のLi塩

遷移金属カルコゲナイド

S及びS化合物

導電性高分子等

コンバージョン反応型化合物

他の主材料

表 5-1 論文件数の多いコンバージョン反応型化合物

論文件数 論文件数の多いコンバージョン反応型化合物(件数)

正極活物質 630 件

V2O5(126)、FeF3(42)、TiO2(40)、MnO2(34)、MoO3(21)、

LiV3O8(17)、MnO(16)、FeS2(15)、MoS2(14)、

VO2(14)

負極活物質又は正

極・負極特定せず 3,652 件

TiO2(587)、SnO2(305)、Fe2O3(277)、Fe3O4(264)、Co3O4

(234)、MoS2(194)、NiO(174)、MnO(141)、CuO(131)、

ZnO(116)、MnO2(90)、CoO(68)、MoO2(59)、ZnFe2O4

(50)、TiN(48)、Mn3O4(46)、V2O5(45)、NiCo2O4(45)、

MoO3(41)、CoFe2O4(40)、ZnCo2O4(35)、ZnMn2O4(33)、

Cu2O(31)、GeO2(27)、Mn2O3(22)、FeS2(21)、WS2(21)、

MnS(18)、Nb2O5(17)、CoS2(14)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 5- 5 負極活物質の主な材料の研究者所属機関国籍別技術区分別論文発表件数

68

17

7

16

5

6

82

23

24

29

5

50

37

126

13

10

104

10

39

298

68

39

109

29

236

197

156

27

4

45

12

41

196

93

75

56

28

224

205

481

47

82

502

69

285

525

480

435

128

299

2,380

1,344

87

12

9

79

8

41

234

65

43

31

55

327

225

負極活物質の主な材料

研究者所属機関国籍(地域)

日本 米国 欧州 中国 韓国

黒鉛質炭素

天然黒鉛由来

非晶質炭素

ナノカーボン

炭素繊維

その他炭素系

Si系(Si主成分)

Sn系

Ti系酸化物のLi塩

金属リチウム(合金を含む)

導電性高分子等

コンバージョン反応型化合物

他の主材料

第3節 研究者所属機関・研究者別動向調査

研究者所属機関別の学術論文発表件数ランキング(対象:世界全体の研究機関)と、特許

における出願人別の日米欧中韓へのファミリー件数ランキングと表 5-2 をに併記した。学術

論文は大学や公的研究機関、特許は企業の研究開発成果が、それぞれ主に反映されている。

また、特許ファミリー件数ランキングでは、日本の企業が比較的上位を占めているが、論文

発表件数のランキングでは、中国の大学や公的研究機関が他の国を圧倒しているのが、特徴

である。

第4節 注目論文の調査

本調査では注目論文として、2012 年~2016 年の各年において、被引用回数ランキング 10

位までの論文 50 件を先ず選んだ(表 5-3)。これには、Li-S 電池論文が 24 件を占めたので、

これを除いた被引用回数 10 位/年以内の論文 50 件を別途注目論文とした(表 5-4)。また、

別途、被引用回数ランク 4 位/年以内無機全固体リチウム二次電池論文 20 件も、注目論文とし

た。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 5-2 特許と学術論文との出願人/研究機関の出願/発表件数ランキング比較

日米欧中韓への特許ファミリー件数

ランキング

論文発表件数

ランキング

順 位 出願人名称ファミリー件数

1 LG化学(韓国) 3,501

2 トヨタ自動車株式会社 2,896

3 Samsung Group(韓国) 2,322

4 パナソニックグループ 1,974

5 豊田自動織機 (TICO) 1,137

6 Robert Bosch(ドイツ) 831

7 日産自動車株式会社 735

8 株式会社GSユアサ 734

9 中国科学技術院 (CAS)(中国) 596

10 日立マクセル株式会社 536

11 株式会社東芝 531

12 ソニー株式会社 491

13 ATL group(中国) 486

14 NECグループ 482

15 三菱ケミカル株式会社 410

16 Daimler(ドイツ) 373

17 株式会社日立製作所 359

18 SK group(韓国) 350

19 日本ゼオン株式会社 347

20 株式会社半導体エネルギー研究所 310

順位 所属研究機関発表件数

1 中国科学院(CAS)(中国) 1439

2 中国教育部(中国) 1246

3 中南大学(中国) 545

4 清華大学(中国) 468

5 南洋理工大学(シンガポール) 396

6 中国科学技術大学(中国) 384

7Argonne National Laboratory

(米国)355

8 浙江大学(中国) 349

9 ハルビン工業大学(中国) 323

10 北京理工大学(中国) 286

11 上海交通大学(中国) 277

12 復旦大学(中国) 273

13 山東大学(中国) 269

14 ソウル大学校(韓国) 268

15University of Texas at Austin

(米国)267

16 天津大学(中国) 259

17 シンガポール国立大学(シンガポール) 252

18 漢陽大学校(韓国) 240

19Lawrence Berkeley National

Laboratory(米国)231

20University of Wollongong

(豪州)230

表 5-3 被引用回数 10 位以内/年の論文の技術分野別件数

論文数 備考

24件 全てS正極に関する

S正極:金属酸化物・硫化物・炭化物との複合

8件

CoS2/S-C、中空ナノ構造金属硫化物/C、多硫化Li/金属酸化物-ナノ粒子炭素、S/二重シェル構造水酸化Co、酸化Mnナノシート、S/Ti2C複合体、S/Ti4O7、S/TiO2 yolk-

shellナノ構造S正極:ナノ炭素・多孔質炭素

との複合11件

S/グラフェン:6件(Nドープ、発泡体、二層、サンドイッチ構造他)、S/多孔質炭素:4件、S/CNT

S正極:その他の含S活物質 3件S-炭素・S-Polymer複合体、S8の代りにS2-4を使う、S/

ポリアニリンナノチューフセパレータや中間層との複合

体2件

S/グラフェン/セパレータ複合体、S正極/ミクロ多孔質炭素中間層/電解液

0件

18件

5件

3件その他

対象:2012~2016年発行の被引用回数ランクが毎年10位以内のオリジナル論文、合計50件

技術分野

Li-S電池

内訳

正極活物質(S系以外)

負極活物質

活物質(正極、負極、非特定)表5-4参照

(備考欄に本表の具体的内容も包含して記載)

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第6部

表 5-4 Li-S 電池以外の被引用回数 10 位以内/年の論文の技術分野別件数

論文数 備考

37件

コンバージョン反応型化合物 19件SnO2:3件、MoS2:2件、α -Fe2O3:5件、Fe3O4:2件、

MnO、 Co3O4:3件、中空NiO/Ni/グラフェン、NiOナノシート/グラフェン、MnxOy/carbon yolk-shell ナノロッド

炭素系 6件Nドープ:3件、Pドーフ、メソ多孔質炭素-赤燐、Banana peel

pseudographite

Si系 5件 Siナノ粒子:3件、Siナノチューブ:2件

Sn系 3件Sn/グラフェン、Sn/メソ多孔質炭素、Snナノ粒子/Nドープ多孔

質炭素

金属リチウム 4件Li/グラフェン、中空ナノ炭素被覆、デンドライト抑制SEI層、デン

ドライト抑制中間層

1件 Li1.211Mo0.467Cr0.3O2

8件NiCo2O4:3件、ZnCo2O4、メソ多孔質TiO2ナノ結晶/グラフェン、中空構造酸化金属、CoSx/CNT、Li-phosphorene

1件 Liデンドライト生成抑制、ポリサルファイド溶解抑制

2件 コスト分析、特性比較

1件 低弾性シリコ-ンエラストマー使用

高濃度電解液

車載用バッテリーパック

伸縮できるリチウム二次電池

対象:Li-S電池以外の、2012~2016年発行の被引用回数ランクが毎年10位以内のオリジナル論文、合計50件

技術分野

負極活物質

内訳

正極活物質(S系以外)

活物質(正極、負極、非特定)

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第6章 提言

平成 24 年度の調査では、「日本の強みを活かす技術開発と戦略的な特許出願」、「企業と大学・

研究機関との連携強化」および「次世代技術の研究開発、特許出願」の 3 つが提言とされた。

諸外国の研究開発と特許出願が活発になってきたこと、電気自動車のように応用分野の実用化

がより具体的になったことから、より個別技術に踏み込んだ提言を行う。

以前より競争が激化し、海外勢は積極的に特許の権利活用を行っていることも踏まえ、基本

特許候補について強い権利を獲得すべきことも提言に盛り込んだ。

1.日本がリードする研究の早期実用化と市場・技術戦略と適合した特許出願

地球温暖化対策として、国内では「NEDO 二次電池技術開発ロードマップ(Battery

RM2013)」に基づき、2030 年に車載用は航続距離 500km、エネルギー密度 500Wh/kg が

目標とされ、産学官連携で活発な研究開発が行われている。また、主要各国においても、環

境・気候変動・エネルギー政策の一環として、EV・PHV を 2020 年から 2030 年にかけて数

100 万~数 1,000 万台規模で普及させる目標が掲げられ、政府主導の技術開発プロジェクト

において研究開発が進められている。

本調査における特許出願動向からも、リチウム二次電池の課題として、容量特性(エネル

ギー密度)・出力特性・寿命特性(サイクル寿命)等の基本特性の向上は、依然として重要な

課題であり、正負極の活物質、電解質、セパレータの主要部材について活発な研究活動が継

続している様子が伺える。

各主要部材について、調査期間における累計件数では、日本からの出願件数が首位を保っ

ているものの、中国・韓国からの出願件数は伸びが非常に大きい。特に正極活物質では、中

国からの出願数は、近年日本と同程度以上であり、また、従来のリン酸鉄リチウム以外にも

Ni 系、三元系(NCM)と幅広い種類の活物質について出願がなされており、部材における

競争環境は厳しくなっていると言える。さらに、中国はコンバージョン反応型化合物の特許

出願や研究が多く、幅広い特許出願、研究活動が窺える。

実用化が近いとされる部材として、容量特性の改善が期待される Si 系負極や硫化物系固体

電解質は、日本の研究が他国をリードしている分野だが、中国からの出願が増加傾向である。

日本メーカーによって早期に実用化がなされ、市場に供給することができれば、日本メーカ

ーが市場おける優位性を確保することができると思われる。

これらの部材は、他国においても開発が進められており、技術的な優位性を保てる期間は

限られると考えられることから、民生用、車載用について今後の市場や技術の方向性を分析

して綿密な市場戦略を構築し、それに適合した特許出願を行うことが望まれる。

実用化が近いとされる Si系負極や硫化物系固体電解質は、日本の研究が他国を

リードしている分野であり、優位性を確保するため早期に実用化し、市場に供

給することが重要である。

日本の研究が他国をリードしている分野でも他国では開発が進められており、

民生用、車載用について今後の市場や技術の方向性を分析して綿密な市場戦略

を構築し、それに適合した特許出願を行うことが望まれる。

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第6部

2.安全性向上のための研究開発の促進およびコスト競争力の強化

リチウム二次電池の市場は、2020 年には 3.2 兆円になることが予想されており、中でも電

気自動車の普及が急速に進むことで車載用の伸びが大きいとされている。また、「NEDO 二

次電池技術開発ロードマップ(Battery RM2013)」で目標とされている車載用二次電池のコス

トは 2020 年に 50~80 万円、2030 年に 40 万円であり普及価格帯の自動への適用が想定さ

れている。

車載用では、そのサイズの大きさから、民生用よりも一段と電池の基本特性(容量特性等)

の向上が要求されるが、それに加えて、安全性・低コスト化が求められている。

安全性は、特に事故が起きた際の一般メディアにおける注目度が大きい技術であるが、日

本において他国よりも積極的に開発が進められており、技術的にリードできる分野といえる。

今後もこの優位性を維持し消費者にも積極的にアピールするために、安全性の向上を更に進

める研究開発が望まれる。

また、各国における研究開発が活発になる中、単純な価格競争に陥ることなく市場競争力

を確保するには、電池セル単体ではなく、部材原料となる資源や、組電池モジュール及びそ

のシステム、使用済み製品の再活用・再資源化を含めたライフサイクル全般に及ぶコスト評

価は重要である。現時点でリサイクル等に関連する技術への特許出願は各国とも活発ではな

いが、出願人別動向における上位の出願人の状況からもわかるように、日本は電池メーカー、

自動車メーカー、材料メーカーに及ぶ幅広い業種が応用研究を行っていることから、この地

の利を生かして、自社の強みを流出させないよう注意をしつつ、単電池やモジュールにおけ

る設計仕様を共有していく等、重複する研究開発の予防や、生産・再生産工程の効率化によ

りコスト競争力を高めていく必要がある。

安全性は、日本において他国よりも積極的に開発が進められており、技術的にリ

ードできる分野といえ、安全性の向上を更に進める研究開発が望まれる。

他国と比較して、日本は各種部材・製品・用途に及ぶ幅広い業種を関連企業とし

て国内に抱えており、この地の利を生かして、自社の強みを流出させないよう注

意をしつつ、単電池やモジュールにおける設計仕様を共有していく等、重複する

研究開発の予防や生産工程の効率化によりコスト競争力を高めていく必要があ

る。

Page 55: 平成29年度 特許出願技術動向調査報告書(概要) - …...² G } è%±F¸ Ø è%±G D F¸ 2.技術俯瞰 (1) リチウム二次電池の分類 図1- 1 にリチウム二次電池の技術俯瞰図を示す。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

3.国内外での特許権の積極的な取得と活用

今回の調査で明らかとなったように、学術論文数は、2012 年以降に爆発的な伸びをみせ世

界一となった中国だけでなく、日本を上回るペースで米国、欧州、韓国とも増加しており、

研究機関における研究開発活動が世界的に活発化している。また、中国、韓国を中心として

他国においては積極的な特許出願がなされ、他国の特許は、質的量的に日本のリチウム二次

電池に対する技術的優位性を脅かす存在となっている。

日本では「NEDO 二次電池技術開発ロードマップ(Battery RM2013)」に基づき、「革新型

蓄電池先端科学基礎研究事業(通称 RISING)」、「次世代蓄電池 ALCA-SPRING」等が産学

官連携で活発な研究開発が行われており、次世代の技術として期待される酸化物系・硫化物

系の無機固体電解質、高濃度電解液といった先端分野では注目特許にもつながるような画期

的な研究成果が発表されているが、競争の激化に伴う相対的優位性の低下は避けられない状

況にある。

一方、この分野における権利の活用状況については、欧米では、米国アルゴンヌ国立研究

所による三元系(NCM)正極活物質の特許侵害訴訟や、加ハイドロ・ケベック社、加モント

リオール大学、フランス国立科学研究センターで構成される LiFePO4+C ライセンシングな

ど、取得した権利を積極的に活用する動きが見られる。

このような状況下、市場拡大が見込まれる重要分野において、日本が技術的優位性を維持

するためには、大学等の研究機関に対して、諸外国に対抗できる充実した研究資金の投入が

必要である。そして、大学等の研究機関で行われる新規物質の発見や先端技術の創出等の独

創性の高い研究は、基本特許に結びつきやすく、そのような研究成果について、大学等の研

究機関は、国内のみならず、海外においても確実な権利取得を進めることが望まれる。

また、市場における競争力を確保するためには、大学等の研究機関と企業との連携が欠か

せず、大学等の研究機関は独創性の高い研究に基づく強い基本特許を取得する、企業はその

基本特許に基づき強固な特許網を構築するというように、それぞれの立場で、権利の活用・

保護にも積極的に取り組むことも望まれる。

大学等の研究機関に対しては充実した研究資金の投入が必要であり、また、独創

性の高い研究は、基本特許に結びつきやすく、そのような研究成果については、

大学等の研究機関が、国内外において確実に権利取得することが望まれる。

大学等の研究機関と企業との連携を強固なものとし、大学等の研究機関は、独創

性の高い研究に基づく基本特許を取得する、企業はその基本特許に基づき強固な

特許網を構築するというように、それぞれの立場で、権利の活用・保護に積極的

に取り組むことが望まれる。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

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